説明

単一ドメイン抗原結合分子の製剤

本発明は、単一ドメイン抗原結合分子、たとえばナノボディ分子の製剤、特にTNF結合ナノボディ分子の製剤に関する。単一ドメイン抗原結合分子には、1つまたは複数の標的タンパク質と相互作用する、たとえば結合する、1つまたは複数の単一結合ドメインが含まれ得る。製剤は、たとえば医薬製剤として有用である。たとえばTNF関連障害を処置するための、本明細書中に記載の製剤を調製および使用する方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容の全体が本明細書中に参照により組み込まれている、2008年10月29日に出願の米国特許出願第61/109,474号の優先権を主張するものである。
【0002】
配列表
本出願は、EFS−Webにより提出されており、その全体が本明細書中に参照により組み込まれている配列表を含有する。2009年10月27日に作成された前記のASCIIコピーは、名称がW22373WO.txtであり、大きさが8,343バイトである。
【背景技術】
【0003】
生命工学の進歩により、組換えDNA技法を用いて医薬に応用するための様々なタンパク質の生成が可能となった。タンパク質は伝統的な有機および無機薬物よりも大きくかつ複雑となる傾向があるため、そのようなタンパク質の製剤は特別な問題を引き起こす。タンパク質が生物活性を保つためには、製剤は、タンパク質のアミノ酸の少なくともコア配列のコンフォメーション完全性を保存する一方で、同時にタンパク質の複数の官能基を分解から保護しなければならない。タンパク質の分解経路は、化学的不安定性(すなわち、結合の形成もしくは切断によるタンパク質の改変の結果、新しい化学実体を生じることを含む任意のプロセス)または物理的不安定性(すなわち、タンパク質の高次構造の変化)を含むことができる。化学的不安定性は、たとえば、脱アミド化、ラセミ化、加水分解、酸化、ベータ脱離またはジスルフィド交換から生じる可能性がある。物理的不安定性は、たとえば、変性、凝集、沈殿または吸着から生じる可能性がある。3つの一般的なタンパク質分解経路は、タンパク質の凝集、脱アミド化および酸化である(Clelandら、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、10(4):307〜377(1993))。
【0004】
フリーズドライとは、タンパク質を保存するために一般的に用いられている技法であり、目的のタンパク質調製物から水を除去する役割を果たす。フリーズドライ、すなわち凍結乾燥は、乾燥させる材料を最初に凍結し、その後、氷または凍結した溶媒を昇華によって真空環境下で除去するプロセスである。フリーズドライプロセス中の安定性を増強させるため、および/または貯蔵する際の凍結乾燥生成物の安定性を改善させるために、賦形剤を凍結乾燥前の製剤中に含めることがある(Pikal,M.、Biopharm.、3(9)26〜30(1990)およびArakawaら、Pharm.Res.、8(3):285〜291(1991))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、長期貯蔵および配送において安定な、特に皮下投与のためのタンパク質製剤を開発する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(本明細書中で「SDAB分子」とも称される単一ドメイン抗原結合分子の製剤に関する(たとえばナノボディ分子、特にTNF結合ナノボディ分子の製剤)。SDAB分子には、1つまたは複数の標的タンパク質と相互作用する、たとえば結合する、1つまたは複数の単一抗原結合ドメインが含まれてもよい。製剤は、たとえば医薬製剤として、対象、たとえばヒトに投与するために有用である。たとえばTNF関連障害を処置または予防するための、本明細書中に記載の製剤を調製および使用する方法も開示する。
【0007】
[注釈:ナノボディ(Nanobody)(商標)およびナノボディ(Nanobodies)(商標)はAblynx N.V.の登録商標である]
【0008】
したがって、一態様では、本発明は、(a)SDAB分子、たとえばナノボディ分子(たとえばTNF結合ナノボディ分子)、(b)凍結乾燥保護剤、(c)(任意選択で)界面活性剤、(d)(任意選択で)増量剤、(e)(任意選択で)等張性調整剤、(f)(任意選択で)安定化剤、(g)(任意選択で)保存料、および(h)製剤のpHが約5.0〜7.5となるような緩衝液が含まれる製剤を特徴とする。一部の実施形態では、製剤は、液体製剤、凍結乾燥製剤、再構成した凍結乾燥製剤、エアロゾル製剤、または大量貯蔵製剤(たとえば凍結した大量貯蔵製剤)である。特定の実施形態では、製剤は、注射(たとえば、皮下、血管内、筋肉内もしくは腹腔内)によって、または吸入によって対象に投与する。
【0009】
特定の実施形態では、製剤中のSDAB分子、たとえばナノボディ分子(たとえばTNF結合ナノボディ分子)の濃度は、約0.5mg/mL〜約350mg/mL、約0.5mg/mL〜約300mg/mL、約0.5mg/mL〜約250mg/mL、約0.5mg/mL〜約150mg/mL、約1mg/ml〜約130mg/mL、約10mg/ml〜約130mg/mL、約50mg/ml〜約120mg/mL、約80mg/ml〜約120mg/mL、約88mg/ml〜約100mg/mL、または約10mg/ml、約25mg/ml、約50mg/ml、約80mg/ml、約100mg/mL、約130mg/ml、約150mg/ml、約200mg/ml、約250mg/mlもしくは約300mg/mlである。
【0010】
他の実施形態では、製剤の凍結乾燥保護剤は、糖、たとえば、スクロース、ソルビトール、またはトレハロースである。たとえば、凍結乾燥保護剤は、約2.5%〜約10%、約5%〜約10%、約5%〜約8%、または約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、もしくは約9%(重量/体積)の濃度のスクロース、ソルビトール、またはトレハロースとすることができる。
【0011】
さらに他の実施形態では、製剤中の緩衝液は、約5mM〜約50mM、約5mM〜約40mM、約5mM〜約30mM、約10mM〜約20mM、または約10mM、約20mM、もしくは約30mMの濃度のヒスチジン緩衝液である。他の実施形態では、製剤中の緩衝液は、約5mM未満〜約50mM、約5mM〜約40mM、約5mM〜約30mM、約10mM〜約20mM、または約10mM、約20mM、もしくは約30mMの濃度で存在するトリス緩衝液である。製剤の緩衝液のpHは、概して約5〜7である。一部の特定の実施形態では、製剤の緩衝液のpHは、約5〜約7.5、約5.5〜約7.2である。たとえば、緩衝液のpHは、約5、5.5、5.8〜6.1、6、6.1、6.5または7とすることができる。
【0012】
一部の実施形態では、製剤には、約0.001%〜0.6%、たとえば、約0.01%〜0.6%、約0.1%〜0.6%、約0.1%〜0.5%、約0.1%〜0.4%、約0.1%〜0.3%、約0.1%〜0.2%、または約0.01%〜0.02%の濃度の界面活性剤が(任意選択で)含まれる。一部の場合では、製剤は、0%より高く約0.6%まで(たとえば約0.1%〜0.2%のポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート85、ポロキサマー188、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリラウリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸(trioleaste)ソルビタン、またはその組合せを含有する。特定の実施形態では、製剤は、約0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、0.01%〜0.02%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.1%〜0.2%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%または0.2%のポリソルベート80を含有する。あるいは、製剤に、ポロキサマー188を約0.01%〜0.6%、約0.1%〜0.6%、約0.1%〜0.5%、約0.1%〜0.4%、約0.1%〜0.3%、または約0.1%〜0.2%含めることができる。
【0013】
特定の実施形態では、製剤には、約10〜約200mM、約25〜約175mM、約50〜約150mM、約75〜約125mM、または約100mMの濃度の増量剤、たとえばグリシンが(任意選択で)含まれる。
【0014】
他の実施形態では、製剤には、等張性調整剤、たとえば、製剤をヒト血液と実質的に等張または等浸透圧にする分子が(任意選択で)さらに含まれる。例示的な等張性調整剤には、スクロース、ソルビトール、グリシン、メチオニン、マンニトール、デキストロース、イノシトール、塩化ナトリウム、アルギニンおよびアルギニン塩酸塩が含まれる。
【0015】
さらに他の実施形態では、製剤には、安定化剤、たとえば、目的のタンパク質(たとえばSDAB分子)と合わせた場合に、凍結乾燥、液体または貯蔵形態の目的のタンパク質の化学的および/または物理的不安定性を実質的に防止または低下させる分子が(任意選択で)さらに含まれる。例示的な安定化剤には、スクロース、ソルビトール、グリシン、イノシトール、塩化ナトリウム、メチオニン、アルギニン、およびアルギニン塩酸塩が含まれる。特定の実施形態では、製剤には、以下の範囲のうちの1つまたは複数の安定化剤が含まれる:スクロースは約1%〜約12%(たとえば、約5%、約7.5%、約8%または約10%)、ソルビトールは約1%〜約7%(たとえば、約3%、約4%、約5%)、イノシトールは約1%〜約5%、グリシンは約10mM〜約125mM(たとえば、約25mM〜100mM、約80mM、約90mM、または約100mM)、塩化ナトリウムは約10mM〜150mM(たとえば、約25mM〜100mM、約55mM)、メチオニンは約10mM〜約100mM(たとえば、約10mM、約20mM、約100mM)、アルギニンは約10mM〜約125mM(たとえば、約25mM〜約120mM、または約100mM)、アルギニン塩酸塩は約10mM〜約70mM(たとえば、約10mM〜約65mM、または約55mM)。
【0016】
他の実施形態では、製剤には、さらにメチオニンが約10〜約200mM、約25〜約175mM、約50〜約150mM、約75〜約125mM、または約100mMの濃度で含まれ得る。
【0017】
一実施形態では、製剤の一構成成分が、凍結乾燥保護剤、等張性調整剤および/または安定化剤のうちの1つまたは複数として機能することができる。たとえば、構成成分、たとえばスクロースの濃度に応じて、凍結乾燥保護剤、等張性調整剤および/または安定化剤のうちの1つまたは複数として役割を果たすことができる。製剤中で構成成分のうちのいくつかが必要な他の実施形態では、様々な構成成分を使用する。たとえば、製剤が凍結乾燥保護剤、等張性調整剤および安定化剤を必要とする場合は、様々な構成成分を使用する(たとえば、スクロース、グリシンおよびイノシトールを組み合わせて使用することができ、その結果、それぞれ凍結乾燥保護剤、等張性調整剤および安定化剤の組合せが生じる)。
【0018】
一実施形態では、製剤には、(a)約0.5〜約300mg/mL、たとえば、約1mg/mL、約10mg/mL、約25mg/mL、約50mg/mL、約80mg/mL、約88mg/mL、約100mg/mL、約118mg/mL、約130mg/mL、約150mg/mL、または約250mg/mLの濃度のSDAB分子、たとえばナノボディ分子(たとえばTNF結合ナノボディ分子)、(b)約5%〜約10%、たとえば、約5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約10%の濃度のスクロース、(c)約0〜約0.6%、たとえば、0.01%、0.02%、0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、または0.6%の濃度のポリソルベート80、(d)(任意選択で)約0〜約100mM、たとえば100mMの濃度のグリシン、(e)(任意選択で)約0〜約100mM、たとえば100mMの濃度のメチオニン、および(f)製剤のpHが約5.0〜7.5、たとえば、5、5.5、5.8〜6.1、6、6.1、6.5、または7となるような、ヒスチジン緩衝液(約10mM〜約20mMの濃度)またはトリス緩衝液(約20mMの濃度)が含まれる。
【0019】
一実施形態では、製剤は液体製剤である。1つの代表的な実施形態では、液体製剤には、a)約10〜約150mg/mL、たとえば、約25mg/mL、約50mg/mL、約80mg/mL、約88mg/mL、約100mg/mL、約118mg/mL、約130mg/mLの濃度のSDAB分子、たとえばナノボディ分子(たとえばTNF結合ナノボディ分子)、(b)約5%〜約10%、たとえば約7%〜約8%、たとえば7.5%の濃度のスクロース、または約1%〜約7%(たとえば、約3%、約4%、約5%)のソルビトール(c)たとえば約0.01%〜0.02%(たとえば0.01%)の濃度のポリソルベート80、(d)(任意選択で)約0〜約100mM、たとえば100mMの濃度のグリシン、(e)(任意選択で)約0〜約100mM、たとえば100mMの濃度のメチオニン、および(f)製剤のpHが約5〜7.5、たとえば、5、5.5、5.8〜6.1、6、6.1、6.5、または7となるような、ヒスチジン緩衝液(約10mM〜約20mMの濃度)またはトリス緩衝液(約20mMの濃度)が含まれる。液体製剤は、使用説明書と共にデバイス、シリンジまたはバイアルなどの製品中に存在することができる。特定の実施形態では、シリンジまたはバイアルは、ガラス、プラスチック、または環状オレフィンポリマーもしくはコポリマーなどのポリマー材料でできている。他の実施形態では、製剤は、注射用デバイス(たとえば注射用シリンジ、たとえば充填済み注射用シリンジ)中に存在することができる。シリンジは、たとえば、自己注射器(たとえばペン型注射デバイス)および/または使用説明書が含まれる単一バイアル系として、個々の投与用に適応させ得る。製剤は、対象、たとえば患者に、注射、たとえば末梢投与(たとえば、皮下、血管内、筋肉内または腹腔内投与)によって投与することができる。
【0020】
他の実施形態では、製剤は凍結乾燥製剤である。1つの代表的な実施形態では、凍結乾燥製剤には、a)約10〜約150mg/mL、たとえば、約25mg/mL、約50mg/mL、約80mg/mL、約88mg/mL、約100mg/mL、約118mg/mL、約130mg/mLの濃度のSDAB分子、たとえばナノボディ分子(たとえばTNF結合ナノボディ分子)、(b)約5%〜約10%、たとえば約4%〜約7%、たとえば5%の濃度のスクロース、(c)たとえば約0.01%〜0.02%(たとえば0.01%)の濃度のポリソルベート80、(d)(任意選択で)約0〜約100mM、たとえば100mMの濃度のグリシン、(e)(任意選択で)約0〜約100mM、たとえば100mMの濃度のメチオニン、および(f)製剤のpHが約5〜7.5、たとえば、5、5.5、5.8〜6.1、6、6.1、6.5または7となるような、ヒスチジン緩衝液(約10mM〜約20mM、たとえば約20mMの濃度)またはトリス緩衝液(約20mMの濃度)が含まれる。凍結乾燥製剤は、凍結乾燥物を適切な水性組成物と混合することによって再構成することができる。
【0021】
さらに他の実施形態では、製剤は大量貯蔵製剤である。1つの代表的な実施形態では、大量貯蔵製剤には、a)約80mg/mL〜300mg/ml、たとえば、約150mg/mL、約175mg/mL、約200mg/mL、約250mg/mL、約275mg/mL、または約300mg/mLの濃度SDAB分子、たとえばナノボディ分子(たとえばTNF結合ナノボディ分子)、(b)約5%〜約10%、たとえば、約4%〜約8%、たとえば、5%、または7.5%の濃度のスクロース、(c)たとえば約0.01%〜0.02%の濃度のポリソルベート80、(d)(任意選択で)約0〜約100mM、たとえば100mMの濃度のグリシン、(e)(任意選択で)約0〜約100mM、たとえば100mMの濃度のメチオニン、および(f)製剤のpHが約5〜7.5、たとえば、5、5.5、5.8〜6.1、6、6.1、6.5または7となるような、ヒスチジン緩衝液(約10mM〜約20mMの濃度)またはトリス緩衝液(約20mMの濃度)が含まれる。大量貯蔵製剤は凍結することができる。特定の実施形態では、大量貯蔵製剤は、たとえば、10リットルを超える、50リットル、100、150、200リットルまたはそれ以上の大規模で調製することができる。
【0022】
特定の実施形態では、製剤のSDAB分子、たとえばナノボディ分子(たとえばTNF結合ナノボディ分子)には、1つまたは複数の単一結合ドメイン(たとえば1つまたは複数のナノボディ)が含まれる。たとえば、ナノボディ分子は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメイン(1、2または3個の相補性決定領域(CDR)が含まれる)を含むポリペプチド、たとえば単鎖ポリペプチドを含む、またはそれからなることができる。SDAB分子の例には、軽鎖を天然に欠く分子(たとえば、VHH、ナノボディ、またはラクダ科由来の抗体)が含まれる。そのようなSDAB分子は、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカおよびグアナコなどのラクダ科動物から誘導するまたは得ることができる。他の実施形態では、SDAB分子には、それだけには限定されないが、サメ単一ドメインポリペプチド(IgNAR)、および単一ドメイン足場(たとえばフィブロネクチン足場)などの他の天然に存在する単一ドメイン分子を含めた単一ドメイン分子が含まれ得る。単一ドメイン分子はサメ由来であってもよい。
【0023】
一実施形態では、製剤のSDAB分子は、1つまたは複数の単一ドメイン分子で構成されている単鎖ポリペプチドである。実施形態では、ナノボディ分子は一価または多価(たとえば、二価、三価、もしくは四価)である。他の実施形態では、ナノボディ分子は単一特異性または多特異性(たとえば、二重特異性、三重特異性もしくは四重特異性)である。SDAB分子は、組換えの、CDR移植した、ヒト化した、ラクダ化した、脱免疫化した、および/またはin vitroで作製した(たとえばファージディスプレイによって選択した)、1つまたは複数の単一ドメイン分子を含み得る。たとえば、SDAB分子は、1つまたは複数の標的抗原と結合する1つまたは複数の単一ドメイン分子を含む単鎖融合ポリペプチドとすることができる。典型的には、標的抗原は、哺乳動物、たとえばヒトのタンパク質である。特定の実施形態では、SDAB分子は、血清アルブミン(ヒト血清アルブミン(HSA))、フィブリン、フィブリノーゲン、またはトランスフェリンのうちの1つまたは複数から選択される血清タンパク質、たとえばヒト血清タンパク質と結合する。
【0024】
1つの例示的な実施形態では、製剤のSDAB分子は、標的抗原、たとえば腫瘍壊死因子α(TNFα)と結合する2つの単一ドメイン分子(たとえば2つのラクダ科可変領域)と、血清タンパク質、たとえばHSAと結合する1つの単一ドメイン分子(たとえばラクダ科可変領域)との単鎖ポリペプチド融合体からなる、三価の二重特異性分子である。SDAB分子の単一ドメイン分子は、N末端からC末端まで以下の順序で配列させることができる:TNFα結合単一ドメイン分子−HSA結合単一ドメイン分子−TNFα結合単一ドメイン分子。1つまたは複数の標的に対する単一ドメイン分子の任意の順序または組合せを、本明細書中に記載の通り製剤化できることが理解されるであろう。
【0025】
一実施形態では、製剤のSDAB分子は、本明細書中で「ATN−103」とも称され、図30に示すアミノ酸配列(配列番号1)、またはそれに実質的に同一なアミノ酸配列(たとえば、図30に示すアミノ酸配列と比較して少なくとも85%、90%、95%もしくはそれ以上同一である、または20、15、10、5、4、3、2、1個までのアミノ酸変化(たとえば、欠失、挿入もしくは置換(たとえば保存的置換)を有するアミノ酸配列)を含む、またはそれからなる。本明細書中に記載の通り製剤化することができるさらなる三価の二重特異性ナノボディ分子の例には、WO2006/122786号の表29に開示されているTNF24、TNF25、TNF26、TNF27、TNF28、TNF60およびTNF62が含まれる。
【0026】
特定の実施形態では、TNFαと結合する、製剤のSDAB分子の単一ドメイン分子のうちの少なくとも1つは、DYWMY(配列番号2)(CDR1)、EINTNGLITKYPDSVKG(配列番号3)(CDR2)および/またはSPSGFN(配列番号4)(CDR3)のアミノ配列を有する、または前記CDRのうちの1つと3、2または1個未満のアミノ酸置換(たとえば保存的置換)によって異なるCDRを有する、1、2、または3個のCDRが含まれる。他の実施形態では、単一ドメイン分子は、図30のアミノ酸約1〜115のアミノ酸配列、またはそれに実質的に同一なアミノ酸配列(たとえば、図30に示すアミノ酸配列と比較して少なくとも85%、90%、95%またはそれ以上同一である、または20、15、10、5、4、3、2、1個までのアミノ酸変化(たとえば、欠失、挿入もしくは置換(たとえば保存的置換)を有するアミノ酸配列)を有する可変領域を含む。実施形態では、TNFα結合単一ドメイン分子は、図30に示すTNFα結合単一ドメイン抗体分子の1つまたは複数の生物活性を有する。たとえば、TNFα結合単一ドメイン分子は、図30に示すTNFα結合単一ドメイン分子によって認識されるエピトープと同じまたは類似のエピトープと結合する(たとえば、三量体形態のTNFαと結合する、TNF受容体と接触したTNFα部位と結合する、第1のTNF単量体(単量体A)の88位にGlnを含み、90位にLysを含み、第2のTNF単量体(単量体B)の146位にGluを含むTNFα三量体中のエピトープ、またはWO06/122786号に開示されているエピトープと結合する)。他の実施形態では、TNFα結合単一ドメイン分子は、WO06/122786号に開示されているTNFα結合単一ドメイン分子のいずれかに類似の活性(たとえば、結合親和性、解離定数、結合特異性、TNF−阻害活性)を有する。
【0027】
他の実施形態では、TNFα結合ナノボディ分子は、WO2006/122786号に開示されているナノボディのうちの1つまたは複数を含む。たとえば、TNFα結合ナノボディ分子は、WO2006/122786号に開示されている一価、二価、三価TNFα結合ナノボディ分子とすることができる。例示的なTNFα結合ナノボディには、それだけには限定されないが、TNF1、TNF2、TNF3、そのヒト化形態(たとえば、TNF29、TNF30、TNF31、TNF32、TNF33)が含まれる。一価TNFα結合ナノボディのさらなる例は、WO2006/122786号の表8に開示されている。例示的な二価TNFα結合ナノボディ分子には、それだけには限定されないが、TNF55およびTNF56が含まれ、これは、ペプチドリンカーを介して連結された単一の融合ポリペプチドを形成する2つのTNF30ナノボディを含む(WO2006/122786号に開示されている)。二価TNFα結合ナノボディ分子のさらなる例は、TNF4、TNF5、TNF6、TNF7、TNF8としてWO2006/122786号の表19に開示されている)。
【0028】
他の実施形態では、HSAと結合する、製剤のSDAB分子の単一ドメイン分子のうちの少なくとも1つは、SFGMS(配列番号5)(CDR1)、SISGSGSDTLYADSVKG(配列番号6)(CDR2)および/またはGGSLSR(配列番号7)(CDR3)アミノ配列を有する、または前記CDRのうちの1つと3、2または1個未満のアミノ酸置換(たとえば保存的置換)によって異なるCDRを有する、1、2、または3個のCDRが含まれる。他の実施形態では、単一ドメイン分子は、図30(配列番号1)のアミノ酸約125〜239のアミノ酸配列、またはそれに実質的に同一なアミノ酸配列(たとえば、図30に示すアミノ酸配列(配列番号1)と比較して少なくとも85%、90%、95%またはそれ以上同一である、または20、15、10、5、4、3、2、1個までのアミノ酸変化(たとえば、欠失、挿入もしくは置換(たとえば保存的置換)を有するアミノ酸配列)を有する可変領域を含む。実施形態では、HSA結合単一ドメイン分子は、図30(配列番号1)に示すHSA結合単一ドメイン分子の1つまたは複数の生物活性を有する。たとえば、HSA結合単一ドメイン分子は、図30(配列番号1)に示すHSA結合単一ドメイン分子によって認識されるエピトープと同じまたは類似のエピトープと結合する。他の実施形態では、HSA結合単一ドメイン分子は、WO06/122786号に開示されているHSA結合単一ドメイン分子のうちの任意のものに類似の活性(たとえば、結合親和性、解離定数、結合特異性)を有する。
【0029】
他の実施形態では、HSA結合SDAB分子は、WO2006/122786号に開示されているナノボディのうちの1つまたは複数を含む。たとえば、HSA結合SDAB分子は、WO2006/122786号に開示されている一価、二価、三価のHSA結合ナノボディ分子であってもよい。他の実施形態では、HSA結合SDAB分子は、HSAと結合する結合特異性のうちの少なくとも1つを有する、単一特異性または多特異性の分子であってもよい。例示的なTNFα結合ナノボディには、それだけには限定されないが、WO06/122786号に開示されているALB1、そのヒト化形態(たとえば、ALB6、ALB7、ALB8、ALB9、ALB10)が含まれる。
【0030】
他の実施形態では、SDAB分子の単一ドメイン分子のうちの2つ以上を、連結基を用いてまたは用いずに、遺伝子またはポリペプチド融合体として融合する。連結基は当業者に明らかな任意の連結基とすることができる。たとえば、連結基は1〜100個の原子の長さの生体適合性ポリマーとすることができる。一実施形態では、連結基には、ポリグリシン、ポリセリン、ポリリシン、ポリグルタミン酸、ポリイソロイシン、もしくはポリアルギニン残基、またはその組合せが含まれる、またはそれからなる。たとえば、ポリグリシンまたはポリセリンリンカーには、少なくとも5、7、8、9、10、12、15、20、30、35および40個のグリシンおよびセリン残基が含まれてもよい。使用することができる例示的なリンカーには、Gly−Ser反復、たとえば、1、2、3、4、5、6、7回またはそれ以上の反復の(Gly)−Ser(配列番号8)反復が含まれる。実施形態では、リンカーは(Gly)−Ser−(Gly)−Ser(配列番号9)または((Gly)−Ser)n(配列番号10)の配列を有し、nは4、5、または6である。
【0031】
本発明の製剤には、第2の部分を、たとえば共有または非共有結合させることによって改変したSDAB分子が含まれてもよい。たとえば、ナノボディ分子は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)またはその誘導体(メトキシポリ(エチレングリコール)すなわちmPEGなど)等の適切な薬理学的に許容されるポリマーと共有結合させることができる。peg化したナノボディ分子の例は、WO06/122786号にTNF55−PEG40、TNF55−PEG60、TNF56−PEG40およびTNF56−PEG60として開示されている。
【0032】
別の実施形態では、本発明の製剤は、約2℃〜約25℃(たとえば約4℃または25℃)の温度で少なくとも3、6、9、12カ月(たとえば、少なくとも24、30、36カ月)の間安定である。特定の実施形態では、SDAB分子の完全性は、約2℃〜約25℃(たとえば約4℃または25℃)の温度で少なくとも3、6、9、12カ月(たとえば、少なくとも24、30、36カ月)の間製剤中で貯蔵した後に維持される。たとえば、製剤中のSDAB分子は、約2℃〜約25℃(たとえば約4℃または25℃)の温度で貯蔵した後にSDAB分子の少なくとも50%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%のまたは100%までの生物活性、たとえば結合活性を保持する。一部の実施形態では、製剤には、約2℃〜約25℃(たとえば約4℃または25℃)の温度で少なくとも3、6、9、12カ月(たとえば、少なくとも24、30、36カ月)の間製剤中で貯蔵した後に、10%、9%、5%、4%、3%、2%、1%未満またはそれ以下未満の高分子量(HMW)種が含まれる。他の実施形態では、製剤には、約2℃〜約25℃(たとえば約4℃または25℃)の温度で少なくとも3、6、9、12カ月(たとえば、少なくとも24、30、36カ月)の間製剤中で貯蔵した後に、10%、9%、5%、4%、3%、2%、1%未満またはそれ以下未満の低分子量(HMW)種が含まれる。さらに他の実施形態では、製剤には、約2℃〜約25℃(たとえば約4℃または25℃)の温度で少なくとも3、6、9、12カ月(たとえば、少なくとも24、30、36カ月)の間製剤中で貯蔵した後に、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%未満またはそれ以下未満の酸性種が含まれる。さらに他の実施形態では、製剤には、約2℃〜約25℃(たとえば約4℃または25℃)の温度で少なくとも3、6、9、12カ月(たとえば、少なくとも24、30、36カ月)の間製剤中で貯蔵した後に、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%未満またはそれ以下未満の塩基性種が含まれる。HMW、LMW、酸性および塩基性種は、本明細書中に記載のサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)などの標準の技法を用いて、製剤中で検出することができる。
【0033】
一部の実施形態では、凍結乾燥SDAB製剤を再構成した際、製剤は、凍結乾燥前の製剤と比較してSDAB構造の少なくとも80%、90%、95%またはそれ以上を保持する。SDAB構造は、たとえば、結合アッセイ、バイオアッセイ、またはHMW種対LMW種の比によって決定する。
【0034】
また、本発明の製剤には、TNF−α関連障害、たとえば、それだけには限定されないが、関節リウマチ(RA)(たとえば中等度から重度の関節リウマチ)、関節炎状態(たとえば、乾癬性関節炎、多関節若年性特発性関節炎(JIA)、強直性脊椎炎(AS)、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、および/または多発性硬化症を含めた炎症性または自己免疫性障害の治療に有用な第2の薬剤、たとえば、第2の治療上または薬理学的に活性な薬剤も含めることができる。たとえば、第2の薬剤は、抗TNF抗体またはそのTNF結合断片であってよく、第2のTNF抗体は製剤のTNF結合SDAB分子とは異なるエピトープと結合する。TNF結合SDAB分子と共製剤化することができる薬剤の他の非限定的な例には、それだけには限定されないが、サイトカイン阻害剤、成長因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、細胞毒性剤、および細胞分裂抑制剤が含まれる。一実施形態では、さらなる薬剤は、それだけには限定されないが、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、プレドニゾロン、プレドニゾン、コルチゾン、およびトリアムシノロンを含めたコルチコステロイド、メトトレキサート、ヒドロキシクロロキン(Plaquenil)およびスルファサラジンなどの疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)、レフルノミド(Arava(登録商標))、エタネルセプト(Enbrel(登録商標))、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))(メトトレキサートを含むまたは含まない)、およびアダリムマブ(Humira(登録商標))を含めた腫瘍壊死因子阻害剤、抗CD20抗体(たとえばRituxan(登録商標))、アナキンラ(Kineret(登録商標))などの可溶性インターロイキン1受容体、金、ミノサイクリン(Minocin(登録商標))、ペニシラミン、ならびにアザチオプリン、シクロホスファミド、およびシクロスポリンを含めた細胞毒性剤を含めた、関節炎の標準的な治療である。そのような併用療法では、より低い用量の投与される治療剤を有利に利用して、様々な単独療法に関連する潜在的な毒性または合併症が回避され得る。
【0035】
賦形剤および/または第2の治療剤の代替の組合せは、本明細書中に提供する指針に従って特定および試験することができる。
【0036】
さらに別の実施形態では、本明細書中に記載の製剤は、たとえばヒト対象(たとえばTNFα関連障害に罹患している患者)に投与するために適している。製剤は、注射(たとえば、皮下、血管内、筋肉内もしくは腹腔内)または吸入によって対象に投与することができる。
【0037】
別の態様では、本発明は、本明細書中に記載の製剤を調製する方法またはプロセスを特徴とする。この方法またはプロセスには、SDAB分子を細胞培養物中で発現させることと、たとえば、SDAB分子をクロマトグラフィー精製ステップ、限外濾過/ダイアフィルトレーションステップのうちの少なくとも1つに通すことによって、SDAB分子を精製することと、本明細書中に記載の凍結乾燥保護剤、界面活性剤および緩衝液、たとえば、約5%〜約10%、たとえば約5%、約10%の濃度のスクロース、約0〜約0.02%、たとえば、0.01%、0.02%の濃度のポリソルベート80、(任意選択で)約0〜約100mM、たとえば100mMの濃度のグリシン、(任意選択で)約0〜約100mM、たとえば100mMの濃度のメチオニン、および(f)製剤のpHが約5〜7.5、たとえば、5、5.5、5.8〜6.1、6、6.1、6.5または7となるような、ヒスチジン(約10〜約20mMの濃度)またはトリス緩衝液(約20mMの濃度)を含有する製剤中で、SDAB分子の濃度をたとえば約10〜250mg/mLに調整することとが含まれる。
【0038】
別の態様では、本発明は、本明細書中に記載のSDAB分子、たとえばTNF結合SDAB分子を含有する再構成した製剤を調製する方法またはプロセスを特徴とする。この方法には、SDAB分子、凍結乾燥保護剤、界面活性剤および緩衝液の混合物を凍結乾燥することによって、凍結乾燥した混合物を形成することと、凍結乾燥した混合物を希釈剤中で再構成することによって、本明細書中に記載の製剤を調製することとが含まれる。一実施形態では、製剤には、(a)約0.5〜約200mg/mL、たとえば、約1mg/mL、約50mg/mL、約80mg/mL、約88mg/mL、約100mg/mL、約118mg/mLの濃度のSDAB分子、たとえばTNF結合ナノボディ分子、(b)約5%〜約10%、たとえば、約5%、約10%の濃度のスクロース、(c)約0〜約0.02%、たとえば、0.01%、0.02%の濃度のポリソルベート80、(d)(任意選択で)約0〜約100mM、たとえば100mMの濃度のグリシン、(e)(任意選択で)約0〜約100mM、たとえば100mMの濃度のメチオニン、および(f)製剤のpHが約5〜7.5、たとえば、5、5.5、5.8〜6.1、6、6.1、6.5または7となるような、ヒスチジン(約10〜約20mMの濃度)またはトリス緩衝液(約20mMの濃度)が含まれる。
【0039】
別の態様では、本発明は、対象(たとえばヒト対象)において、TNFα関連障害、たとえば、それだけには限定されないが、関節リウマチ(RA)(たとえば中等度から重度の関節リウマチ)、関節炎状態(たとえば、乾癬性関節炎、多関節若年性特発性関節炎(JIA)、強直性脊椎炎(AS)、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、および/または多発性硬化症を含めた炎症性または自己免疫性障害を治療または予防する方法に関する。この方法には、対象、たとえばヒト患者に、本明細書中に記載のTNF結合SDAB製剤、たとえばTNF結合SDAB分子を含有する製剤が含まれる医薬組成物を、単独でまたは本明細書中に記載の併用療法のうちの任意のものと組み合わせて、TNFα関連障害の症状の1つまたは複数が低下するような量で投与することが含まれる。
【0040】
別の態様では、本発明は、本明細書中に記載の製剤を含有するデバイス、シリンジまたはバイアルが含まれるキットまたは製品を特徴とする。キットまたは製品には、使用説明書が含まれていてもよい。特定の実施形態では、シリンジまたはバイアルは、ガラス、プラスチック、または環状オレフィンポリマーもしくはコポリマーなどのポリマー材料でできている。他の実施形態では、製剤は、注射用デバイス(たとえば注射用シリンジ、たとえば充填済み注射用シリンジ)中に存在することができる。シリンジは、たとえば、自己注射器(たとえばペン型注射デバイス)および/または使用説明書が含まれる単一バイアル系として、個々の投与用に適応させ得る。一実施形態では、注射用デバイスは、使用および投与の説明書が添付されていてもよい、充填済みペンまたは他の適切な自己注射用デバイスである。
【0041】
特定の実施形態では、注射(たとえば皮下、血管内、筋肉内もしくは腹腔内)による投与(たとえば自己投与)に関する説明書と共にあらかじめ包装した、キットまたは製品(たとえば、単一または複数用量単位を含む充填済みペンまたはシリンジ)を、対象、たとえば患者または医療提供者に提供する。
【0042】
他の実施形態では、本発明は、本明細書中に記載の製剤を経鼻、経皮、静脈内投与するためのデバイスを提供することを特徴とする。たとえば、本明細書中に記載の製剤を投与するための経皮パッチを提供する。さらに他の場合では、本明細書中に記載の製剤を投与するための静注バッグを提供する。実施形態では、静注バッグは、生理食塩水または5%デキストロースと共に提供する。
【0043】
別の態様では、本発明は、SDAB分子、たとえばTNFαナノボディ分子を必要としている患者(たとえばヒト患者)に、本明細書中に記載の製剤をどのように投与するかを指示する方法を特徴とする。この方法には、(i)患者に、本明細書中に記載のSDAB分子の製剤の少なくとも1つの単位用量を提供することと、(ii)患者に、少なくとも1つの単位用量を、たとえば注射(たとえば、皮下、血管内、筋肉内または腹腔内)によって自己投与することを指示することとが含まれる。一実施形態では、患者は、TNFα関連障害、たとえば、本明細書中に記載の炎症性または自己免疫性障害に罹患している。
【0044】
別の態様では、本発明は、レシピエントに、本明細書中に記載のTNFαナノボディ分子の製剤の投与について指示する方法を特徴とする。この方法には、レシピエント(たとえば、最終使用者、患者、医師、小売りもしくは卸売りの薬局、流通業者、または病院、養護施設クリニックもしくはHMOの院内薬局)に、製剤をどのように患者に投与すべきかを指示することが含まれる。
【0045】
別の態様では、本明細書中に記載のSDAB分子、たとえばTNFαナノボディ分子の製剤の流通方法を提供する。この方法には、レシピエント(たとえば、最終使用者、患者、医師、小売りもしくは卸売りの薬局、流通業者、または病院、養護施設クリニックもしくはHMOの院内薬局)に、患者を少なくとも6、12、24、または36カ月間、処置するために十分な単位投薬量のSDAB分子、たとえばTNFαナノボディ分子を含有する包装品を提供することが含まれる。
【0046】
別の態様では、本発明は、SDAB分子、たとえばTNFαナノボディ分子を含有する本明細書中に記載の製剤の包装品または包装品のロットの品質を評価する方法またはプロセスを特徴とする(たとえば、有効期限が切れているかどうかを判定するため)。この方法には、包装品の有効期限が切れているかどうかを評価することが含まれる。有効期限は、製造、アッセイ、または包装などの事前に選択された事象から少なくとも6、12、24、36、または48カ月であり、たとえば、24または36カ月より長い。一部の実施形態では、決断またはステップを分析の結果として行い、たとえば、生成物の有効期限が切れているかどうかによって、包装品中のSDAB分子を、使用もしくは廃棄、分類、選択、出荷もしくは保留、輸送、新しい場所に移動、商取引に出荷、販売もしくは売り出す、商取引から撤退または売り出しをやめる。
【0047】
別の態様では、本発明は、本明細書中に記載のSDAB分子、たとえばTNFナノボディ分子の製剤を貯蔵、流通、または使用する方法を特徴とする。この方法には、製剤を一定期間、所定の温度、たとえば25℃未満、たとえば、凝固点未満または15℃、10℃、または4℃未満で貯蔵することが含まれる。実施形態では、この方法には、製剤をレシピエント、たとえば最終使用者、たとえば患者または医療提供者に、類似または異なる条件下(たとえば、最初の貯蔵期間よりも高い温度)で貯蔵するために提供することがさらに含まれる。製剤は、液体製剤、凍結乾燥製剤または再構成した製剤とすることができる。
【0048】
別の態様では、本発明は、生成物またはプロセス、たとえば製造プロセスを分析する方法を特徴とする。この方法には、本明細書中に記載のSDAB分子、たとえばTNFナノボディ分子の製剤を提供することと、色(たとえば、無色からわずかに黄色、または無色から黄色)、透明度(たとえば、透明からわずかに乳白色または透明から乳白色)、または粘度(たとえば、20℃〜30℃、たとえば25℃などの周囲温度で測定した場合に約1〜5cP)、本明細書中に記載の1つまたは複数のHMW、LMW、酸性および/または塩基性種の量等の製剤のパラメータを評価することとが含まれる。1つまたは複数のパラメータの評価が含まれてもよい。任意選択で、パラメータが事前に選択された基準を満たすかどうかの判定を決定する、たとえば、事前に選択された基準が存在するか、または事前に選択された範囲で存在するかどうかを判定し、それによってプロセスを分析する。
【0049】
一実施形態では、プロセスの評価には、SDAB分子製剤の安定性の測定が含まれる。抗体製剤の安定性は、たとえば、凝集体の形成によって測定することができ、これは、たとえば、サイズ排除高圧液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)によって、本明細書中に記載のように色、透明度、または粘度によってアッセイする。製剤は、事前に設定された期間にわたって、任意選択で所定の温度で、アッセイパラメータの変化が約10%、5%、3%、2%、1%、0.5%、0.05%、もしくは0.005%未満またはそれ以下未満である場合に、安定であると判定することができ、したがってさらなる加工または流通が許容される。
【0050】
一実施形態では、この方法には、決定された値を参照値と比較することによって、製造プロセスを分析することが含まれる。
【0051】
一実施形態では、この方法には、分析に少なくとも部分的に基づいて製造プロセスを維持することがさらに含まれる。一実施形態では、この方法には、分析に基づいて製造プロセスを変更することがさらに含まれる。
【0052】
別の実施形態では、この方法には、本明細書中に記載の方法または分析に基づいてプロセスに関する決定を行うことが含まれる、選択されたプロセスによって作製されたSDAB分子、たとえばTNFナノボディ分子の製剤のプロセス、たとえば製造プロセスを評価することが含まれる。一実施形態では、この方法には、方法または分析に少なくとも部分的に基づいて製造プロセスを維持または変更することがさらに含まれる。したがって、別の実施形態では、評価を行う団体は本明細書中に記載の方法または分析を実施せず、本明細書中に記載の方法または分析によって得られる結果を使用するのみである。
【0053】
別の実施形態では、この方法には、バッチ間の変動を監視もしくは制御する方法または調製物を参照標準と比較する方法において、2つ以上の調製物を比較することが含まれる。
【0054】
さらに別の実施形態では、この方法には、判定に少なくとも部分的に基づいて、調製物を、たとえば、分類、選択、受入または廃棄、出荷または保留、薬物製品へと加工、輸送、異なる場所に移動、製剤化、ラベル貼付、包装、商取引への出荷、販売または売出しを行うという決断を行うことがさらに含まれてもよい。
【0055】
別の態様では、本発明は、たとえば品質管理または出荷の規格分析において、本明細書中に記載のSDAB分子、たとえばTNFナノボディ分子の製剤の品質を評価する方法を特徴とする。この方法には、SDAB分子製剤を色(たとえば、無色からわずかに黄色、または無色から黄色)、透明度(たとえば、透明からわずかに乳白色または透明から乳白色)、または粘度(たとえば、20℃〜30℃、たとえば25℃などの周囲温度で測定した場合に約1〜5cP)等のパラメータについての評価を提供することが含まれる。評価には、上記パラメータのうちの1つまたは複数の評価が含まれてもよい。また、この方法には、溶液パラメータが事前に選択された基準を満たすかどうか、たとえば、事前に選択された基準が存在するか、または事前に選択された範囲で存在するかどうかを判定することが含まれていてもよい。観察された溶液パラメータが事前に選択された値の範囲内にあるか、または事前に選択された標準の基準を満たす場合は、調製物を包装、使用、販売、商取引への出荷、廃棄などについて選択する。
【0056】
別の態様では、本発明は、規制要件、たとえば、規制機関、たとえばFDAの承認後要件を順守する方法を特徴とする。この方法には、本明細書中に記載のパラメータについて抗体製剤の評価を提供することが含まれる。承認後要件には、上記パラメータのうちのさらに1つの測定が含まれてもよい。また、この方法には、任意選択で、観察された溶液パラメータが事前に選択された基準を満たすか、またはパラメータが事前に選択された範囲内にあるかどうかを判定することと、任意選択で、分析の値もしくは結果を提出すること、または、たとえば値もしくは結果を規制機関に送信することによって、機関と通信することとが含まれる。
【0057】
別の態様では、本発明は、たとえば、出荷の規格、ラベルの要件、または公定要件、たとえば本明細書中に記載の特性を満たす、事前に選択された特性を有する、SDAB分子、たとえばTNFナノボディ分子の製剤のバッチを作製する方法を特徴とする。この方法には、試験製剤を提供することと、試験製剤を本明細書中に記載の方法に従って分析することと、試験製剤が事前に選択された基準を満たすかどうか、たとえば、参照値、たとえば本明細書中に開示した1つまたは複数の参照値と事前に選択された関係性を有するかどうかを判定することと、試験抗体調製物を選択して生成物のバッチを作製することとが含まれる。
【0058】
別の態様では、本発明は、SDAB分子、たとえばTNFナノボディ分子の製剤の複数のバッチを特徴とし、それぞれのバッチの1つまたは複数のパラメータ(たとえば、本明細書中に記載の方法によって決定された値または溶液パラメータ)は、事前に選択された所望の参照値または基準、たとえば本明細書中に記載の範囲または基準から事前に選択された範囲より狭い範囲でしか変動がない。一部の実施形態では、製剤の1つまたは複数のバッチの1つまたは複数のパラメータを決定し、その決定の結果としてバッチまたは複数のバッチが選択される。一部の実施形態には、決定の結果を事前に選択された値または基準、たとえば参照標準と比較することが含まれる。他の実施形態には、たとえば値またはパラメータの決定の結果に基づいて、投与するバッチの用量を調整することが含まれる。
【0059】
別の態様では、本発明は、報告を受信する実体に報告を提供すること、SDAB分子、たとえばTNFナノボディ分子の製剤の試料を、参照標準、たとえばFDAの要件の順守について評価すること、SDAB分子の調製物が何らかの事前に定義された要件を満たすという別の団体からの表示を求めること、またはSDAB分子の調製物に関する情報を別の団体に提出することのうちの、1つまたは複数の方法を特徴とする。例示的な受信実体または他の団体には、政府、たとえば米国連邦政府、たとえば政府機関、たとえばFDAが含まれる。この方法には、第1の国、たとえば米国においてSDAB分子の水性製剤を作製および/または試験するステップ、試料の少なくとも一定分量を第1の国の外に送ること、たとえば、米国外である第2の国に送ること、SDAB分子の調製物の構造に関するデータ、たとえば、本明細書中に記載の構造および/または鎖に関連するデータ、たとえば、本明細書中に記載の方法のうちの1つまたは複数によって作成されたデータが含まれる報告を、準備または受信するステップ、ならびに前記報告を、報告を受信する実体に提供するステップのうちの1つもしくは複数(またはすべて)が含まれる。
【0060】
一実施形態では、報告を受信する実体は、データが所定の要件または参照値を満たしているかどうかを判定することができ、たとえばSDAB分子の製剤の製造者、流通業者または販売者が、報告を受信する実体からの応答を受けてもよい。一実施形態では、記録を受信する実体から承認を受けた後、SDAB分子の製剤の調製物の選択、包装、または商取引を行う。
【0061】
別の態様では、本発明は、SDAB分子の製剤を評価する方法を特徴とする。この方法には、たとえば本明細書中に記載の1つまたは複数の方法によって準備した、SDAB分子の存在またはレベルに関連するデータを受信することと、前記データが含まれ、任意選択でSDAB分子のバッチの識別情報が含まれる記録を提供することと、前記記録を決定者、たとえば政府機関、たとえばFDAに提出することと、任意選択で、前記決定者から通信を受信することと、任意選択で、決定者からの通信に基づいてSDAB分子のバッチを出荷または市場取引するかどうかを判定することとが含まれる。一実施形態では、この方法には、試料を出荷することがさらに含まれる。
【0062】
本明細書中で引用するすべての出版物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれている。
【0063】
別段に定義しない限り、本明細書中で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を持つ。本明細書中に記載のものに類似または等価の方法および材料を、本発明の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。加えて、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定することを意図しない。
【0064】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】乾燥粉末(DP)調製物として6カ月まで貯蔵した、10U/mgのTNF結合ナノボディ(ATN−103)の凍結乾燥製剤の生物活性の結果を示す図である。製剤は示した温度で貯蔵した。
【図2】TNF結合ナノボディ(ATN−103)の凍結乾燥製剤のヒト血清アルブミン(HSA)結合活性の結果を示す図である。結果はTNF結合ナノボディ参照標準のパーセンテージ(%)として示す。
【図3】凍結乾燥製剤の高分子量(HMW)種の%に関して、サイズ排除−HPLC(SE−HPLC)の結果を示す図である。
【図4】凍結乾燥製剤の%TNF結合ナノボディに関して、SDS−キャピラリー電気泳動(SDS−CE)の結果を示す図である。
【図5】対照および頑健性の凍結乾燥サイクルに供した製剤の%HMW種のSE−HPLCの結果を示す図である。
【図6】高濃度液体製剤で6カ月まで貯蔵した後の10U/mgのTNF結合ナノボディの生物活性の結果を示す図である。
【図7】示した温度で6カ月まで貯蔵した高濃度液体製剤のヒト血清アルブミン(HSA)結合活性(TNF結合ナノボディ参照標準のパーセンテージ)の結果を示す図である。
【図8】示した温度で6カ月まで貯蔵した後の高濃度液体製剤の%HMW種のSE−HPLCの結果を示す図である。
【図9】示した温度で6カ月まで貯蔵した後の高濃度液体製剤の%LMW種のSE−HPLCの結果を示す図である。
【図10】示した温度で6カ月まで貯蔵した後の高濃度液体製剤の%ATN−103のSDS−CEの結果を示す図である。
【図11】充填済みシリンジ中の高濃度液体製剤の%HMW種のSE−HPLCの結果を示す図である。
【図12】充填済みシリンジ中の高濃度液体製剤の%LMW種のSE−HPLCの結果を示す図である。
【図13】充填済みシリンジ中の高濃度液体製剤のCEX−HPLCによる%酸性種の結果を示す図である。
【図14】充填済みシリンジ中の高濃度液体製剤のCEX−HPLCによる%塩基性種の結果を示す図である。
【図15】高濃度液体製剤−他の製剤の%HMW種のSE−HPLCの結果を示す図である(他の安定化および不安定化賦形剤の特定)。
【図16】TNF結合ナノボディの高濃度液体の%HMW種のSE−HPLCの結果を示す図である。
【図17】TNF結合ナノボディの高濃度液体の%LMW種のSE−HPLCの結果を示す図である。
【図18】TNF結合ナノボディの高濃度液体の%酸性種CEX−HPLCの結果を示す図である。
【図19】TNF結合ナノボディの高濃度液体の%塩基性種CEX−HPLCの結果を示す図である。
【図20】10×凍結解凍サイクル後のTNF結合ナノボディの高濃度液体の%HMW種のSE−HPLCの結果を示す図である。
【図21】10×凍結解凍サイクル後のTNF結合ナノボディの高濃度液体の%LMW種のSE−HPLCの結果を示す図である。
【図22】10×凍結解凍サイクル後のTNF結合ナノボディの高濃度液体の濁度(455nmでの吸光度)の結果を示す図である。
【図23】10×凍結解凍サイクル後のTNF結合ナノボディの高濃度液体の濃度(280nmでのUV吸光度による)の結果を示す図である。
【図24】TNF結合ナノボディの高濃度液体製剤:製造プロセスにおいて潜在的に遭遇する短期間の熱ストレス後のSE−HPLCによる%HMWを示す図である。
【図25】pHおよび製剤の関数としての低濃度液体製剤の%HMW種のSE−HPLCの結果を示す図である(40℃)。
【図26】pHおよび製剤の関数としての低濃度液体製剤の%LMW種のSE−HPLCの結果を示す図である(40℃)。
【図27】pHおよび製剤の関数としての低濃度液体製剤の%HMW種のSE−HPLCの結果を示す図である(4℃)。
【図28】振盪後のpHおよび製剤の関数としての低濃度液体製剤の%HMW種のSE−HPLCの結果を示す図である。
【図29】ATN−103の予測された構造を示す模式図である。
【図30】ATN−103ポリペプチド鎖のアミノ酸配列(配列番号1)を示す図である。
【図31】示されている条件下で貯蔵した、約100mg/mlのATN−103を含有する示した製剤(HST、HSGT、HSGMT、HSorbおよび対照)の、SE−HPLCによって検出されたHMW種の%を示す棒グラフである。
【図32】示されている条件下で貯蔵した、約100mg/mlのATN−103を含有する示した製剤(HST、HSGT、HSGMT、HSorbおよび対照)の、SE−HPLCによって検出されたLMW種の%を示す棒グラフである。開始時点または4℃で2週間後では、LMW種は検出されなかった。
【発明を実施するための形態】
【0066】
SDAB分子、たとえばナノボディ分子(たとえばTNF結合ナノボディ分子)が含まれる安定な製剤は、高濃度および低濃度のSDAB分子(「製剤」)の貯蔵に適していることが特定された。製剤化されるSDAB分子は、好ましくは本質的に純粋であり、望ましくは本質的に均質である(すなわち、夾雑タンパク質などを含まない)。「本質的に純粋」なタンパク質とは、組成物の全重量に基づいて少なくとも約90重量%のタンパク質、好ましくは少なくとも約95重量%を含む組成物を意味する。「本質的に均質」なタンパク質とは、組成物の全重量に基づいて少なくとも約99重量%のタンパク質を含む組成物を意味する。
【0067】
製剤中のSDAB分子の完全性は、様々な条件下で液体または凍結乾燥した生成物として長期貯蔵した後に一般に維持される。たとえば、SDAB分子の完全性は、広範囲の貯蔵温度(たとえば−80℃〜40℃)、剪断応力(たとえば振盪)および界面応力(凍結解凍サイクル)に曝した後に十分に維持される。
【0068】
さらに、凍結乾燥材料では、SDAB分子の完全性は再構成のプロセス中に十分に維持される。さらに、様々な温度(たとえば−80℃〜40℃)での長期貯蔵(たとえば12カ月まで)後のLMW種およびHMW種の比較的低い蓄積、in vitroの生物活性、in vitroの結合活性によって実証されるように、SDAB分子の完全性は医薬品として使用するために十分に維持される。
【0069】
本発明がより容易に理解され得るために、特定の用語を最初に定義する。さらなる定義は詳細な説明の全体にわたって記載する。
【0070】
本明細書中で使用する冠詞「a」および「an」とは、1つまたは複数(たとえば少なくとも1つ)の冠詞の文法上の目的語をいう。
【0071】
本明細書中で使用する用語「または(or)」とは、内容により明らかにそうでないと指定される場合以外は、用語「および/または」を意味し、それと交換して使用可能である。
【0072】
用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は本明細書中で交換して使用可能である。
【0073】
「約(about)」および「約(approximately)」とは、一般に、測定した量の、測定の性質または精度を考慮して許容される度合の誤差を意味する。例示的な誤差の度合は、所定の値または値の範囲の20パーセント(%)以内、典型的には10%以内、より典型的には5%以内である。
【0074】
SDAB分子の「安定な」製剤は、長期間、たとえば、6、12カ月、24カ月、36カ月またはより長くにわたって、凝集、断片化、脱アミド化、酸化、または生物活性の変化のうちの任意の1つまたは複数の徴候をわずかにしか示さない、または示さない。たとえば、一実施形態では、SDAB分子の10%未満しか凝集、断片化、または酸化されない。凝集、沈殿、および/または変性は、色および/もしくは透明度の視覚的検査などの既知の方法、またはUV光散乱またはサイズ排除クロマトグラフィーによって評価することができる。タンパク質がその生物活性を保持する能力は、抗体の化学的に変更された形態を検出および定量することによって評価することができる。たとえばサイズ排除クロマトグラフィーおよび/またはSDS−PAGEを用いて評価することができるサイズ改変(たとえば切取り)。他の種類の化学的変更には荷電の変更(たとえば脱アミド化の結果として起こるもの)が含まれ、これは、たとえばイオン交換クロマトグラフィーによって評価することができる。
【0075】
たとえば抗原結合アッセイで決定された所定の時点での分子の生物活性が、医薬製剤を調製した時点で示された生物活性の約50%以上の範囲内である場合に、SDAB分子は医薬製剤中で「その生物活性を保持」している。
【0076】
「再構成した」製剤とは、凍結乾燥したタンパク質製剤を、タンパク質が再構成した製剤中に分散されるように希釈剤に溶かすことによって調製されたものである。再構成した製剤は、目的のタンパク質で処置する患者への投与(たとえば非経口または末梢投与)に適しており、本発明の特定の実施形態では、皮下投与に適したものであり得る。
【0077】
「等張」または「等浸透圧」とは、目的の製剤がヒト血液と類似または本質的に同じ浸透圧を有することを意味する。等張または等浸透圧の製剤は、一般に約250〜350mOsmの浸透圧を有する。等張性は、たとえば蒸気圧または氷凍結型の浸透圧計を用いて測定することができる。
【0078】
「等張性調整剤」とは、製剤をヒト血液と実質的に等張または等浸透圧にする化合物をいう。例示的な等張性調整剤は、スクロース、ソルビトール、グリシン、メチオニン、マンニトール、デキストロース、イノシトール、塩化ナトリウム、アルギニン、またはアルギニン塩酸塩である。典型的には、等張性調整剤は、全体的な製剤がヒト血液に類似の浸透力を発揮するような量で加える。たとえば、ヒト血液は約300mMの溶質を含有する。典型的には、医薬生成物は、300mMの全モル濃度を標的とする。これは約300〜310mOsmの浸透圧に相当し、典型的な範囲は250mOsm〜350mOsmである。必要な等張性調整剤の量は、計算によって最初に推定することができる。全モル濃度への寄与は、賦形剤分子の分子量、および分子の既知の特性、たとえば、分子が2つのイオン性種に分離するのか、または分子が非イオン性であるのか(分離しない)から推定することができる。さらに、具体的なタンパク質分子の浸透圧性寄与をタンパク質濃度の関数として理解することが必要である。このパラメータは実験によって決定することができる。
【0079】
たとえば、100mg/mLの抗TNFナノボディタンパク質濃度を有する、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80の製剤(等張性を補正していない)から開始して、最初のステップとして、開始製剤の推定モル濃度は以下のように計算することができる:
10mMのヒスチジン=10mM
5%のスクロースは約146mMに相当する
5%=5g/100mL=50g/L→(50g/L)/(342.3g/mol)=0.146mol/L=146mM
0.01%のポリソルベート80は本質的に0モル濃度を及ぼし、無視することができる。
100mg/mLのタンパク質:実験により、100mg/mLの抗TNFナノボディタンパク質は約48mMに相当する浸透圧を及ぼすことが決定された。
【0080】
したがって、初期製剤中のモル濃度へのすべての寄与を合計すると、
10mM+146mM+48mM=204mM
であり、標的モル濃度が310mMである場合は、標的の残りを構成するための対応するモル濃度の量は、
310mM−204mM=106mM
である。
【0081】
したがって、等張性調整剤の推奨される量は、106mMの非イオン性等張性調整剤、または53mMの、2つのイオン種に完全に分離するイオン性等張性調整剤である。
【0082】
等張性調整剤の初期推定値を決定した後、製剤を実験によって試験することが推奨される。したがって、提供した例では、100mMのグリシンを初期製剤に加えた。(単純にするために推奨される106mMの端数を切り捨てて100mMとした)。予想されるモル浸透圧濃度は、
10mMのヒスチジン+146mMのスクロース+48mMのタンパク質+100mMのグリシン=304mMであり、
製剤の実験による浸透圧値=305mOsm
である。
【0083】
「凍結乾燥保護剤」とは、目的のタンパク質と合わせた場合に、凍結乾燥および続く貯蔵の際にタンパク質の化学的および/または物理的不安定性を顕著に防止または低下させる分子である。例示的な凍結乾燥保護剤には、スクロース、ソルビトール、またはトレハロースなどの糖、グルタミン酸一ナトリウムまたはヒスチジンなどのアミノ酸、ベタインなどのメチルアミン、硫酸マグネシウムなどのリオトロピック塩、三価以上の糖アルコール、たとえば、グリセリン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどのポリオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、Pluronic、ならびにその組合せが含まれる。典型的には、凍結乾燥保護剤は、トレハロースまたはスクロースなどの非還元糖である。凍結乾燥保護剤は凍結乾燥前の製剤に「凍結乾燥保護する量」で加え、これは、凍結乾燥保護する量の凍結乾燥保護剤の存在下でタンパク質を凍結乾燥した後、タンパク質は凍結乾燥および貯蔵の際にその物理的および化学的安定性ならびに完全性を本質的に保持することを意味する。
【0084】
「安定化剤」とは、目的のタンパク質(たとえばSDAB分子)と合わした場合に、凍結乾燥、再構成、液体または貯蔵形態の目的のタンパク質の化学的および/または物理的不安定性を実質的に防止または低下させる分子をいう。例示的な安定化剤には、スクロース、ソルビトール、グリシン、イノシトール、塩化ナトリウム、メチオニン、アルギニン、およびアルギニン塩酸塩が含まれる。
【0085】
本明細書における目的の「希釈剤」とは、薬学的に許容でき(ヒトへの投与に安全かつ無毒性)、再構成した製剤の調製に有用なものである。例示的な希釈剤には、滅菌水、静菌性注射用水(BWFI)、pH緩衝溶液(たとえばリン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンゲル液またはデキストロース溶液が含まれる。
【0086】
「保存料」とは、再構成した製剤中の細菌作用を本質的に低下させ、したがって、たとえば複数回使用の再構成した製剤の生成を容易にする、希釈剤に加えることができる化合物である。潜在的な保存料の例には、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物である塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムの混合物)、および塩化ベンゼトニウムが含まれる。他の種類の保存料には、フェノール、ブチルおよびベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レソルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、ならびにm−クレゾールが含まれる。本明細書において最も好ましい保存料はベンジルアルコールである。
【0087】
「増量剤」とは、凍結乾燥した混合物の質量を増し、凍結乾燥したケークの物理的構造に寄与する(たとえば、解放気孔構造を維持する本質的に均一な凍結乾燥したケークの生成を容易にする)化合物である。例示的な増量剤には、マンニトール、グリシン、ポリエチレングリコールおよびキソルビトール(xorbitol)が含まれる。
【0088】
本発明の方法および組成物には、指定した配列を有するポリペプチド(polyeptide)および核酸、またはそれに実質的に同一もしくは類似の配列、たとえば、指定した配列と少なくとも85%、90%、95%もしくはそれより高く同一である配列が包含される。アミノ酸配列のコンテキストでは、本明細書中で使用する用語「実質的に同一」とは、第1および第2のアミノ酸配列が共通の構造的ドメインおよび/または共通の機能的活性を有することができるように、第2のアミノ酸配列中のアラインメントしたアミノ酸残基にi)同一である、またはii)その保存的置換である、十分なまたは最小限の数のアミノ酸残基を含有する第1のアミノ酸をいう。たとえば、参照配列に対して少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する共通の構造的ドメインを含有するアミノ酸配列。他の実施形態では、アミノ酸配列は、1つまたは複数のアミノ酸の挿入、欠失、または置換(たとえば保存的置換)を含有して、参照配列に対して少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性の同一性パーセンテージに達することができる。
【0089】
ヌクレオチド配列のコンテキストでは、本明細書中で使用する用語「実質的に同一」とは、第1および第2のヌクレオチド配列が、共通の機能的活性を有するポリペプチドがコードしている、または共通の構造的ポリペプチドドメインもしくは共通の機能的ポリペプチド活性をコードしているように、第2の核酸配列中のアラインメントしたヌクレオチドと同一である、十分なまたは最小限の数のヌクレオチドを含有する第1の核酸配列をいう。たとえば、参照配列に対して少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するヌクレオチド配列。
【0090】
また、前述のポリペプチドの断片、誘導体、類似体、または変異体、およびその任意の組合せも、本発明のポリペプチドとして含まれる。本発明のタンパク質に言及する際の用語「断片」、「変異体」、「誘導体」および「類似体」には、対応するネイティブ抗体またはポリペプチドの機能的特性の少なくとも一部を保持する、任意のポリペプチドが含まれる。本発明のポリペプチドの断片には、本明細書中の他の箇所に記述した特定の抗体断片に加えて、タンパク質分解断片および欠失断片が含まれる。本発明のポリペプチドの変異体には、上述の断片、およびアミノ酸の置換、欠失、または挿入が原因でアミノ酸配列が変更されたポリペプチドが含まれる。変異体は、天然に存在するまたは天然に存在しないものであってよい。天然に存在しない変異体は、当技術分野で知られている突然変異誘発技法を用いて生成し得る。変異体ポリペプチドは、保存的または非保存的なアミノ酸の置換、欠失または付加を含み得る。本発明の断片の誘導体は、ネイティブポリペプチド上には見つからない追加の特徴を示すように変更されたポリペプチドである。例には融合タンパク質が含まれる。また、変異体ポリペプチドは本明細書中で「ポリペプチド類似体」とも呼び得る。本明細書中で使用するポリペプチドの「誘導体」とは、機能的側鎖の反応によって化学的に誘導体化した1つまたは複数の残基を有する対象ポリペプチドをいう。また、20種の標準のアミノの1つまたは複数の天然に存在するアミノ酸誘導体を含有するポリペプチドも、「誘導体」として含まれる。たとえば、4−ヒドロキシプロリンでプロリンを置換してよく、5−ヒドロキシリシンでリシンを置換してよく、3−メチルヒスチジンでヒスチジンを置換してよく、ホモセリンでセリンを置換してよく、オルニチンでリシンを置換してよい。
【0091】
用語「機能的変異体」とは、天然に存在する配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有する、または実質的に同一のヌクレオチド配列によってコードされており、天然に存在する配列の1つまたは複数の活性を有することができるポリペプチドをいう。
【0092】
配列間の相同性または配列同一性(これらの用語は本明細書中で交換して使用可能である)の計算は以下のように行う。
【0093】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するために、配列を最適な比較目的のためにアラインメントする(たとえば、最適アラインメントのために第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、比較目的のために非相同配列は無視することができる)。好ましい実施形態では、比較目的のためにアラインメントする参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。その後、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列中の位置が第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有されている場合、分子はその位置で同一である(本明細書中で使用するアミノ酸または核酸の「同一性」は、アミノ酸または核酸の「相同性」と等価である)。
【0094】
2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適アラインメントのために導入しなければならないギャップの数およびそれぞれのギャップの長さを考慮して、配列が共有する同一の位置の数の関数である。
【0095】
2つの配列間の配列の比較およびパーセント同一性の決定は数学アルゴリズムを用いて達成することができる。好ましい実施形態では、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、Blossum62マトリックスまたはPAM250マトリックスのどちらかを用い、ギャップの重み付け16、14、12、10、8、6、または4および長さの重み付け1、2、3、4、5、または6を用いて、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれているNeedlemanおよびWunsch((1970)J.Mol.Biol.、48:444〜453)のアルゴリズムを用いて決定する(http://www.gcg.comで利用可能)。さらに別の好ましい実施形態では、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、NWSgapdna.CMPマトリックスならびにギャップの重み付け40、50、60、70、または80および長さの重み付け1、2、3、4、5、または6を用いて、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを用いて決定する(http://www.gcg.comで利用可能)。特に好ましいパラメータ組(別段に指定しない限りは使用すべきものである)は、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、およびフレームシフトギャップペナルティ5を用いたBlossum62スコア付けマトリックスである。
【0096】
2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、PAM120の重み付け残基表、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.MeyersおよびW.Miller((1989)CABIOS、4:11〜17)のアルゴリズムを用いて決定することができる。
【0097】
本明細書中に記載の核酸およびタンパク質配列は、たとえば他のファミリーメンバーまたは関連する配列を特定するために、公開データベースに対して検索を行うための「クエリー配列」として使用することができる。そのような検索は、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.、215:403〜10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて行うことができる。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて行って、本発明の核酸(配列番号1)分子に相同的なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて行って、本発明のタンパク質(配列番号1)タンパク質分子に相同的なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でギャップ付きアラインメントを得るために、Altschulら(1997)Nucleic Acids Res.、25:3389〜3402に記載のようにギャップ付きBLASTを利用することができる。BLASTおよびギャップ付きBLASTプログラムを利用する場合は、それぞれのプログラム(たとえばXBLASTおよびNBLAST)の初期設定パラメータを使用することができる。
【0098】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(たとえば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(たとえば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(たとえば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖(たとえば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ−分枝側鎖(たとえば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(たとえば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。
【0099】
本発明の様々な態様を以下に詳述する。
【0100】
単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子
単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子には、その相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である分子が含まれる。例には、それだけには限定されないが、重鎖可変ドメイン、軽鎖を天然に欠く結合分子、慣用の4本鎖抗体に由来する単一ドメイン、操作したドメインおよび抗体に由来するもの以外の単一ドメイン足場が含まれる。SDAB分子は、当技術分野の任意のもの、または任意の将来の単一ドメイン分子であり得る。SDAB分子は、それだけには限定されないが、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、サカナ、サメ、ヤギ、ウサギ、およびウシを含めた任意の種に由来するものであり得る。また、この用語には、ラクダ科(Camelidae)およびサメ以外の種に由来する天然に存在する単一ドメイン抗体分子も含まれる。
【0101】
本発明の一態様では、SDAB分子は、サカナ中に見つかる免疫グロブリンの可変領域に由来することができる、たとえば、サメの血清中に見つかる新規抗原受容体(NAR)として知られる免疫グロブリンアイソタイプに由来するものとすることができる。NARの可変領域に由来する単一ドメイン分子(「IgNAR」)を産生する方法は、WO03/014161号およびStreltsov(2005)Protein Sci.、14:2901〜2909に記載されている。
【0102】
本発明の別の態様によれば、SDAB分子は、軽鎖を欠く重鎖として知られる、天然に存在する単一ドメイン抗原結合分子である。そのような単一ドメイン分子は、たとえば、WO9404678号およびHamers−Casterman,C.ら(1993)Nature、363:446〜448に開示されている。明確にする理由のために、軽鎖を天然に欠く重鎖分子に由来するこの可変ドメインは、慣用の4本鎖免疫グロブリンのVHと区別するために、VHHまたはナノボディとして知られる。そのようなVHH分子は、ラクダ科(Camelidae)種、たとえば、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカおよびグアナコから誘導することができる。ラクダ科(Camelidae)以外の他の種も軽鎖を天然に欠く重鎖分子を生じる場合があり、そのようなVHHは本発明の範囲内にある。
【0103】
SDAB分子は、以下により詳細に記載するように、組換えの、CDR移植した、ヒト化した、ラクダ化した、脱免疫化したおよび/またはin vitroで作製した(たとえばファージディスプレイによって選択した)ものとすることができる。
【0104】
用語「抗原結合」には、標的抗原またはそのエピトープと結合する界面を形成する決定要因を含むポリペプチドの一部、たとえば本明細書中に記載の単一ドメイン分子が含まれることを意図する。タンパク質(またはタンパク質模倣体)に関して、抗原結合部位には、典型的には、標的抗原と結合する界面を形成する1つまたは複数のループ(少なくとも4個のアミノ酸またはアミノ酸模倣体からなる)が含まれる。典型的には、ポリペプチド、たとえば単一ドメイン抗体分子の抗原結合部位には、少なくとも1もしくは2個のCDR、またはより典型的には少なくとも3、4、5もしくは6個のCDRが含まれる。
【0105】
用語「免疫グロブリン可変ドメイン」は、しばしば、当技術分野ではヒトまたは動物起源のVLまたはVHドメインと同一または実質的に同一であると理解される。免疫グロブリン可変ドメインは、特定の種、たとえばサメおよびラマにおいて、アミノ酸配列がヒトまたは哺乳動物のVLまたはVHとは異なるように進化している場合があることを理解されたい。しかし、これらのドメインが抗原結合に主に関与している。用語「免疫グロブリン可変ドメイン」には、典型的には、少なくとも1もしくは2個のCDR、またはより典型的には少なくとも3個のCDRが含まれる。
【0106】
「定常免疫グロブリンドメイン」または「定常領域」には、ヒトまたは動物起源のCL、CH1、CH2、CH3、またはCH4ドメインと同一または実質的に類似である免疫グロブリンドメインが含まれることを意図する。たとえばCharles A HasemannおよびJ.Donald Capra、Immunoglobulins:Structure and Function、William E.Paul編、Fundamental Immunology、第2版、209、210〜218(1989)を参照されたい。用語「Fc領域」とは、免疫グロブリンドメインCH2およびCH3またはこれらに実質的に類似の免疫グロブリンドメインが含まれる定常免疫グロブリンドメインのFc部分をいう。
【0107】
特定の実施形態では、SDAB分子は、一価、または多特異性の分子(たとえば、二価、三価、もしくは四価の分子)である。他の実施形態では、SDAB分子は、単一特異性、二重特異性、三重特異性または四重特異性分子である。分子が「単一特異性」であるか「多特異性」、たとえば「二重特異性」であるかは、結合ポリペプチドが反応する異なるエピトープの数をいう。多特異性分子は、本明細書中に記載の標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であり得るか、または標的ポリペプチドおよび異種ポリペプチドもしくは固体支持体材料などの異種エピトープに特異的であり得る。
【0108】
本明細書中で使用する用語「結合価」とは、SDAB分子中に存在する潜在的な結合ドメイン、たとえば抗原結合ドメインの数をいう。それぞれの結合ドメインは1つのエピトープと結合する。SDAB分子が複数の結合ドメインを含む場合、それぞれの結合ドメインは、「二価単一特異性」と呼ばれる2つの結合ドメインを有する抗体では同じエピトープと特異的に結合してよく、または「二価二重特異性」と呼ばれる2つの結合ドメインを有するSDAB分子では異なるエピトープと特異的に結合してよい。また、SDAB分子は、それぞれの特異性について二重特異性かつ二価であってもよい(「二重特異性四価分子」と呼ばれる)。二重特異性二価分子およびそれらを作製する方法は、たとえば、そのすべての開示が本明細書中に参照により組み込まれている、米国特許第5,731,168号、第5,807,706号、第5,821,333号、ならびに米国出願公開第2003/020734号および第2002/0155537号に記載されている。二重特異性四価分子およびそれらを作製する方法は、たとえば、そのどちらの開示も本明細書中に参照により組み込まれている、WO02/096948号およびWO00/44788号に記載されている。一般に、PCT公開WO93/17715号、WO92/08802号、WO91/00360号、WO92/05793号、Tuttら、J.Immunol.、147:60〜69(1991)、米国特許第4,474,893号、第4,714,681号、第4,925,648号、第5,573,920号、第5,601,819号、Kostelnyら、J.Immunol.、148:1547〜1553(1992)を参照されたい。
【0109】
特定の実施形態では、SDAB分子は、1つまたは複数の標的抗原と結合する相補的可変ドメインまたは免疫グロブリンの定常、たとえばFc領域を欠く、1つまたは複数の単一ドメイン分子(たとえばナノボディ)を含む単鎖融合ポリペプチドである。抗原結合ポリペプチドによって認識される例示的な標的抗原には、腫瘍壊死因子α(TNFα)が含まれる。特定の実施形態では、抗原結合単一ドメイン分子は、血清タンパク質、たとえば、血清アルブミン(ヒト血清アルブミン(HSA))またはトランスフェリン(transferin)のうちの1つまたは複数から選択されるヒト血清タンパク質と結合する。
【0110】
TNFα
腫瘍壊死因子アルファは、当技術分野において関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎および多発性硬化症などの炎症性障害に関連していることで知られている。TNFaならびに受容体(CD120aおよびCD120b)はどちらも非常に詳細に研究されている。生物活性型のTNFaは三量体である。抗TNFa抗体を用いてTNFaの作用と拮抗するいくつかの戦略が開発されており、Remicade(登録商標)およびHumira(登録商標)などが現在市販されている。TNFaに対する抗体分子が知られている。TNFa結合単一ドメイン抗原結合分子(たとえばナノボディ)の数々の例は、そのすべての内容がその全体で本明細書中に参照により組み込まれている、WO2004/041862号、WO2004/041865号、WO2006/122786号に開示されている。単一ドメイン抗原結合分子のさらなる例は、そのすべての内容がその全体で本明細書中に参照により組み込まれている、US2006/286066号、US2008/0260757号、WO06/003388号、US05/0271663号、US06/0106203号に開示されている。他の実施形態では、TNFaおよび血清タンパク質、たとえばHSAに対する単一、二重、三重および他の多特異的な単一ドメイン抗体が、これらの参考文献中に開示されている。
【0111】
特定の実施形態では、TNFα結合ナノボディ分子は、WO2006/122786号に開示されているナノボディのうちの1つまたは複数を含む。たとえば、TNFα結合ナノボディ分子は、WO2006/122786号に開示されている一価、二価、三価TNFα結合ナノボディ分子とすることができる。例示的なTNFα結合ナノボディには、それだけには限定されないが、TNF1、TNF2、TNF3、そのヒト化形態(たとえば、TNF29、TNF30、TNF31、TNF32、TNF33)が含まれる。一価TNFα結合ナノボディのさらなる例は、WO2006/122786号の表8に開示されている。例示的な二価TNFα結合ナノボディ分子には、それだけには限定されないが、TNF55およびTNF56が含まれ、これは、ペプチドリンカーを介して連結された単一の融合ポリペプチドを形成する2つのTNF30ナノボディを含む(WO2006/122786号に開示されている)。二価TNFα結合ナノボディ分子のさらなる例は、TNF4、TNF5、TNF6、TNF7、TNF8としてWO2006/122786号の表19に開示されている)。
【0112】
他の実施形態では、HSA結合ナノボディ分子は、WO2006/122786号に開示されているナノボディのうちの1つまたは複数を含む。たとえば、HSA結合ナノボディ分子は、WO2006/122786号に開示されている一価、二価、三価のHSA結合ナノボディ分子とすることができる。他の実施形態では、HSA結合ナノボディ分子は、HSAと結合する結合特異性のうちの少なくとも1つを有する、単一特異性または多特異性の分子とすることができる。例示的なTNFα結合ナノボディには、それだけには限定されないが、WO06/122786号に開示されているALB1、そのヒト化形態(たとえば、ALB6、ALB7、ALB8、ALB9、ALB10)が含まれる。
【0113】
他の実施形態では、ナノボディ分子の単一ドメイン分子のうちの2つ以上を、連結基を用いてまたは用いずに、遺伝子またはポリペプチド融合体として融合する。連結基は当業者に明らかな任意の連結基とすることができる。たとえば、連結基は1〜100個の原子の長さの生体適合性ポリマーであってもよい。一実施形態では、連結基には、ポリグリシン、ポリセリン、ポリリシン、ポリグルタミン酸、ポリイソロイシン、もしくはポリアルギニン残基、またはその組合せが含まれる、またはそれからなる。たとえば、ポリグリシンまたはポリセリンリンカーには、少なくとも5、7、8、9、10、12、15、20、30、35および40個のグリシンおよびセリン残基が含まれてもよい。使用することができる例示的なリンカーには、Gly−Ser反復、たとえば、1、2、3、4、5、6、7回またはそれ以上の反復の(Gly)−Ser(配列番号8)反復が含まれる。実施形態では、リンカーは、(Gly)−Ser−(Gly)−Ser(配列番号9)または((Gly)−Ser)n(配列番号10)の配列を有し、nは4、5、または6である。
【0114】
1つの例示的な実施形態では、本明細書中で「ATN−103」と呼ぶ、標的抗原、たとえば、腫瘍壊死因子アルファ(TNFa)と結合する2つの単一ドメイン抗体分子(たとえば2つのラクダ科可変領域)と、血清タンパク質、たとえばHSAと結合する1つの単一ドメイン抗体分子(たとえばラクダ科可変領域)との単鎖ポリペプチド融合体からなる抗原結合ポリペプチドが、タンパク質Aまたはその機能的変異体と結合することが示された。ATN−103は、ヒト化した三価の二重特異的なTNFaを阻害する融合タンパク質である。このタンパク質の抗原は腫瘍壊死因子−アルファ(TNF)である。図29は、ATN−103の予測される構造の模式図を提供する。この融合タンパク質はラクダ科に由来し、ヒト免疫グロブリンVHドメインと高度の配列および構造的な相同性を有する。その単一のポリペプチド鎖は、TNFαに対する2つの結合ドメインおよびヒト血清アルブミン(HSA)に対する1つの結合ドメインからなり、2つの9個のアミノ酸のG−Sリンカーがドメインを接続している。ATN−103の詳細な説明はWO06/122786号に提供されている。
【0115】
対応する発現ベクターのDNA配列から予測されたATN−103ポリペプチド鎖の完全なアミノ酸配列を図30に示す(残基は、NH末端を配列番号1の残基番号1として開始して番号付けされている)。DNA配列によってコードされている最後のアミノ酸残基はS363であり、タンパク質のCOOH末端を構成する。ジスルフィド結合したATN−103の予測された分子質量(翻訳後修飾なし)は38434.7Daである。ATN−103はN−連結グリコシル化コンセンサス配列を含有しない。ナノエレクトロスプレーイオン化四重極飛行時間質量分析によって優勢なアイソフォームで観察された分子質量は38433.9Daに対応し、翻訳後修飾が存在しないことが確認された。
【0116】
図30では、相補性決定領域(CDR)に下線を引いた。予測される分子内ジスルフィド結合は、関与するシステイン残基の接続によって図示した。TNFとの結合ドメインを太字で示し、HSAとの結合ドメインを太字の斜体で示す。これらの結合ドメインを接続するアミノ酸リンカーは斜体である。ポリペプチド鎖についてシグナルペプチド(−19MGW・・・VHS−1)も示す。
【0117】
SDAB分子の調製
SDAB分子は、組換えの、CDR移植した、ヒト化した、ラクダ化した、脱免疫化した、および/またはin vitroで作製した(たとえばファージディスプレイによって選択した)、1つまたは複数の単一ドメイン分子(たとえばナノボディ)からなり得る。抗体およびSDAB分子を作製する技法、ならびに組換えによってそれらを改変する技法は当技術分野で知られており、以下に詳述する。
【0118】
当業者に知られている数々の方法が抗体を得るために利用可能である。たとえば、モノクローナル抗体は、既知の方法に従ってハイブリドーマを作製することによって産生し得る。その後、この様式で形成したハイブリドーマを酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および表面プラズモン共鳴(BIACORE(商標))分析などの標準の方法を用いてスクリーニングして、指定した抗原と特異的に結合するナノボディを産生する1つまたは複数のハイブリドーマを特定する。指定した抗原の任意の形態、たとえば、組換え抗原、天然に存在する形態、任意の変異体またはその断片、ならびにその抗原ペプチドを免疫原として使用し得る。
【0119】
抗体およびSDAB分子を作製する1つの例示的な方法には、タンパク質発現ライブラリ、たとえば、ファージまたはリボソームディスプレイライブラリのスクリーニングが含まれる。ファージディスプレイは、たとえば、Ladnerら、米国特許第5,223,409号、Smith(1985)Science、228:1315〜1317、WO92/18619号、WO91/17271号、WO92/20791号、WO92/15679号、WO93/01288号、WO92/01047号、WO92/09690号、およびWO90/02809号に記載されている。
【0120】
ディスプレイライブラリの使用に加えて、指定した抗原を用いて非ヒト動物、たとえばげっ歯類、たとえば、マウス、ハムスター、またはラットを免疫化することができる。一実施形態では、非ヒト動物にはヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部が含まれる。たとえば、ヒトIg遺伝子座の大きな断片を用いてマウス抗体産生を欠くマウス株を遺伝子工学的に作製することが可能である。ハイブリドーマ技術を用いて、所望の特異性を有する遺伝子に由来する抗原に特異的なモノクローナル抗体を産生および選択し得る。たとえば、XENOMOUSE(商標)、Greenら(1994)Nature Genetics、7:13〜21、US2003−0070185号、1996年10月31日公開のWO96/34096号、および1996年4月29日出願のPCT出願PCT/US96/05928号を参照されたい。
【0121】
別の実施形態では、SDAB分子を非ヒト動物から得て、その後、改変する、たとえば、ヒト化、脱免疫化、キメラを、当技術分野で知られている組換えDNA技法を用いて生成し得る。キメラ抗体およびSDAB分子を作製するための様々な手法が記載されている。たとえば、Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、81:6851、1985、Takedaら、Nature、314:452、1985、Cabillyら、米国特許第4,816,567号、Bossら、米国特許第4,816,397号、Tanaguchiら、欧州特許公開EP171496号、欧州特許公開0173494号、英国特許GB2177096B号を参照されたい。また、ヒト化抗体およびSDAB分子は、たとえば、ヒトの重鎖および軽鎖遺伝子を発現するが、内在性マウス免疫グロブリンの重鎖および軽鎖遺伝子を発現することができないトランスジェニックマウスを用いても産生させ得る。Winterは、本明細書中に記載のヒト化抗体およびSDAB分子の調製に使用し得る例示的なCDR移植方法を記載している(米国特許第5,225,539号)。特定のヒト抗体のすべてのCDRを非ヒトCDRの少なくとも一部分で置き換えてよく、または、CDRの一部のみを非ヒトCDRで置き換えてもよい。ヒト化抗体およびSDAB分子と所定の抗原との結合に必要なCDRの数だけを置き換える必要がある。
【0122】
ヒト化抗体は、抗原結合に直接関与していないFv可変ドメインの配列を、ヒトFv可変ドメインの等価の配列で置き換えることによって作製することができる。ヒト化抗体またはその断片を作製する例示的な方法は、Morrison(1985)Science、229:1202〜1207、Oiら(1986)BioTechniques、4:214、ならびにUS5,585,089号、US5,693,761号、US5,693,762号、US5,859,205号、およびUS6,407,213によって提供されている。これらの方法には、少なくとも1つの重鎖または軽鎖からの免疫グロブリンFv可変ドメインの全体または一部をコードしている核酸配列を、単離する、操作する、および発現させることが含まれる。そのような核酸は、上述の所定の標的に対するナノボディを産生するハイブリドーマおよび他の供給源から得られ得る。その後、ヒト化したSDAB分子、たとえばナノボディ分子をコードしている組換えDNAを適切な発現ベクター内にクローニングすることができる。
【0123】
特定の実施形態では、ヒト化したSDAB分子、たとえばナノボディ分子を、保存的置換、コンセンサス配列置換、生殖系列置換および/または復帰突然変異の導入によって最適化する。そのような変更された免疫グロブリン分子は当技術分野で知られているいくつかの技法の任意のものによって作製することができ(たとえば、Tengら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、80:7308〜7312、1983、Kozborら、Immunology Today、4:7279、1983、Olssonら、Meth.Enzymol.、92:3〜16、1982)、PCT公開WO92/06193号またはEP0239400号の教示に従って作製し得る)。
【0124】
SDAB分子、たとえばナノボディ分子をヒト化する技法はWO06/122786号に開示されている。
【0125】
また、SDAB分子、たとえばナノボディ分子は、WO98/52976号およびWO00/34317号に開示されている方法によるヒトT細胞エピトープの特異的な欠失または「脱免疫化」によっても改変し得る。手短に述べると、たとえばナノボディの重鎖および軽鎖可変ドメインを、MHCクラスIIと結合するペプチドについて分析することができる。これらのペプチドは潜在的なT細胞エピトープを表す(WO98/52976号およびWO00/34317号に定義)。潜在的なT細胞エピトープの検出には、WO98/52976号およびWO00/34317号に記載のように、「ペプチドスレッディング」と呼ばれるコンピュータモデリング手法を適用することができ、さらに、ヒトMHCクラスII結合ペプチドのデータベースを、VおよびV配列中に存在するモチーフについて検索することができる。これらのモチーフは18種の主要なMHCクラスII DRアロタイプのうちの任意のものと結合し、したがって潜在的なT細胞エピトープを構成する。検出された潜在的なT細胞エピトープは、可変ドメイン中の少数のアミノ酸残基を置換することによって、または好ましくは単一のアミノ酸置換によって排除することができる。典型的には、保存的置換を行う。排他的ではないが、多くの場合、ヒト生殖系列抗体配列中の位置に共通のアミノ酸を使用し得る。たとえば、ヒト生殖系列配列は、Tomlinsonら(1992)J.Mol.Biol.、227:776〜798、Cook,G.P.ら(1995)Immunol.Today、第16巻(5):237〜242、Chothia,D.ら(1992)J.Mol.Biol.、227:799〜817、およびTomlinsonら(1995)EMBO J.、14:4628〜4638に開示されている。V BASEディレクトリは、ヒト免疫グロブリン可変領域配列の包括的なディレクトリを提供する(Tomlinson,I.A.ら、MRC Centre for Protein Engineering、Cambridge、英国によって蓄積)。これらの配列は、ヒト配列源として、たとえば、フレームワーク領域およびCDRに使用することができる。また、たとえばU.S.6,300,064号に記載のように、コンセンサスヒトフレームワーク領域も使用することができる。
【0126】
SDAB分子、たとえばナノボディ分子は、タンパク質を産生するように遺伝子操作した宿主生細胞によって産生させることができる。細胞を遺伝子操作してタンパク質を産生させる方法は当技術分野で周知である。たとえばAusabelら編(1990)、Current Protocols in Molecular Biology(Wiley、New York)を参照されたい。そのような方法には、タンパク質をコードしておりその発現を可能にする核酸を宿主生細胞内に導入することが含まれる。これらの宿主細胞は、培養物中で成長させた細菌細胞、真菌細胞、または、好ましくは動物細胞とすることができる。細菌宿主細胞には、それだけには限定されないが大腸菌(Escherichia coli)細胞が含まれる。適切な大腸菌(E.coli)株の例には、HB101、DH5a、GM2929、JM109、KW251、NM538、NM539、および外来DNAを切断することができない任意の大腸菌(E.coli)株が含まれる。使用することができる真菌宿主細胞には、それだけには限定されないが、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)およびアスペルギルス属(Aspergillus)の細胞が含まれる。使用することができる動物細胞系のいくつかの例は、CHO、VERO、BHK、HeLa、Cos、MDCK、293、3T3、およびWI38である。当業者に周知の方法(たとえば、形質転換、ウイルス感染症、および/または選択)によって新しい動物細胞系を確立することができる。任意選択で、タンパク質は宿主細胞によって培地内に分泌されてもよい。
【0127】
改変SDAB分子
本発明の製剤は、フレームワーク領域のうちの1つ中の少なくとも1つのアミノ酸位置が、天然に存在するドメイン、たとえばVHドメインのアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有する、少なくとも1つのSDAB分子、たとえばナノボディ分子を含有し得る。
【0128】
ヒト化SDAB分子などの本発明のSDAB分子の一部のアミノ酸配列は、フレームワーク領域のうちの少なくとも1つ中の少なくとも1つのアミノ酸位置が、天然に存在するドメイン、たとえば天然に存在するVHI−Iドメインのアミノ酸配列と異なってもよいことを理解されたい。
【0129】
また、本発明には、SDAB分子の誘導体の製剤も含まれる。そのような誘導体は、一般に、SDAB分子および/または本明細書中に開示したSDAB分子を形成するアミノ酸残基のうちの1つもしくは複数の修飾によって、特に化学的および/または生物学的(たとえば酵素的)修飾によって得ることができる。
【0130】
そのような修飾の例、およびそのような様式(すなわち、タンパク質主鎖上であってもよいが、好ましくは側鎖上)で修飾することができるSDAB分子配列内のアミノ酸残基の例、そのような修飾を導入するために使用することができる方法および技法、ならびにそのような修飾の潜在的な使用および利点は、当業者に明らかであろう。
【0131】
たとえば、そのような修飾は、SDAB分子内または上への1つまたは複数の官能基、残基または部分、特に、SDAB分子に1つまたは複数の所望の特性または機能性を与える1つまたは複数の官能基、残基または部分の導入(たとえば、共有結合または他の適切な様式による)を含み得る。そのような官能基の例は当業者に明らかであろう。
【0132】
たとえば、そのような修飾は、SDAB分子の半減期、溶解度および/もしくは吸収を増加させる、SDAB分子の免疫原性および/もしくは毒性を低下させる、SDAB分子の任意の望ましくない副作用を排除もしくは減弱させる、ならびに/またはSDAB分子に他の有利な特性を与えるおよび/もしくはその望ましくない特性を低下させる、または前述のうちの2つ以上の任意の組合せの、1つまたは複数の官能基の導入(たとえば、共有結合または任意の他の適切な様式による)を含み得る。そのような官能基およびそれらを導入する技法の例は当業者に明らかであり、本明細書中上記で引用した一般的な背景技術中に言及したすべての官能基および技法、ならびにそれ自体が医薬タンパク質の修飾、特に抗体または抗体断片(ScFvおよび−148−単一ドメイン抗体が含まれる)の修飾のために知られている官能基および技法を広く含むことができ、これについてたとえばRemington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、Mack Publishing Co.、Easton、PA(1980)を参照する。そのような官能基は、やはり当業者に明らかなように、本発明のナノボディに直接(たとえば共有)連結していてよく、または適切なリンカーもしくはスペーサーを介していてもよい。
【0133】
半減期を増加させるおよび/または医薬タンパク質の免疫原性を低下させるための1つの幅広く使用されている技法は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)またはその誘導体(メトキシポリ(エチレングリコール)すなわちmPEGなど)等の適切な薬理学的に許容されるポリマーの付着を含む。一般に、当技術分野で抗体ならびに抗体断片(それだけには限定されないが、(単一)ドメイン抗体およびScFvが含まれる)に使用されるpeg化などの、peg化の任意の適切な形態を使用することができ、たとえば、Chapman、Nat.Biotechnol.、54、531〜545(2002)、VeroneseおよびHarris、Adv.Drug Deliv.Rev.、54、453〜456(2003)、HarrisおよびChess、Nat.Rev.Drug.Discov.、2、(2003)およびWO04/060965号に言及されている。タンパク質をpeg化するための様々な試薬も、たとえばNektar Therapeutics、米国から市販されている。
【0134】
好ましくは、部位特異的peg化、特にシステイン残基を介したものを使用する(たとえばYangら、Protein Engineering、16、10、761〜770(2003)を参照。たとえば、この目的のために、PEGはSDAB分子中に天然に存在するシステイン残基に付着していてよく、SDAB分子は、すべてそれ自体が当業者に知られているタンパク質工学の技法を用いて、PEGと付着するための1つもしくは複数のシステイン残基が適切に導入されるように修飾してもよく、または、PEGの付着のための1つもしくは複数のシステイン残基を含むアミノ酸配列を本発明のナノボディのNおよび/もしくはC末端と融合させてもよい。
【0135】
好ましくは、SDAB分子では、5000より大きい、たとえば10,000より大きく200,000未満、たとえば100,000未満、たとえば20,000〜80,000の範囲の分子量を有するPEGを使用する。
【0136】
peg化に関して、一般に、本発明には、1つまたは複数のアミノ酸位置でpeg化されており、好ましくは前記peg化が、(1)in vivo半減期を増加させる、(2)免疫原性を低下させる、(3)peg化のそれ自体知られている1つもしくは複数のさらなる有益な特性を提供する、(4)SDAB分子の親和性に本質的に影響を与えない(たとえば、以下の実施例に記載したものなどの適切なアッセイによって決定したところ、前記親和性を90%以下、好ましくは50%以下、および10%以下しか低下させない)、ならびに/または(4)SDAB分子の他の所望の特性のいずれにも影響を与えないものである、任意のSDAB分子も包含されることにも注意するべきである。適切なPEG基およびそれらを特異的または非特異的に付着させる方法は、当業者に明らかであろう。
【0137】
別の、通常はあまり好ましくない修飾は、SDAB分子の発現に使用する宿主細胞に応じて、通常は翻訳時および/または翻訳後修飾の一部としての、N−連結またはO−連結グリコシル化を含む。
【0138】
製剤
SDAB分子、たとえばナノボディ分子の製剤には、SDAB分子、凍結保護剤として役割を果たすことができる化合物、および緩衝液が含まれる。製剤のpHは、一般にpH5.5〜7.0である。一部の実施形態では、製剤は液体として貯蔵する。他の実施形態では、製剤は液体として調製し、その後、貯蔵の前に、たとえば、凍結乾燥または噴霧乾燥によって乾燥させる。乾燥製剤は、乾燥化合物、たとえばエアロゾルもしくは粉末として使用するか、または、その元のもしくは別の濃度まで、たとえば、水、緩衝液、もしくは他の適切な液体を用いて再構成することができる。
【0139】
SDAB分子精製プロセスは、SDAB分子を凍結液としての長期貯蔵およびその後のフリーズドライに適した製剤中に移すことが許容されるように設計する(たとえばヒスチジン/スクロース製剤を用いる)。製剤は特定の濃度でタンパク質と共に凍結乾燥する。その後、凍結乾燥製剤を、必要に応じて適切な希釈剤(たとえば水)で再構成して、元の製剤の構成成分を所望の濃度まで、一般に凍結乾燥前の濃度と比較して同じまたはより高い濃度まで、再溶解させることができる。
【0140】
凍結乾燥製剤を再構成して、元々フリーズドライした液体の体積に対する、凍結乾燥物に加えた水または希釈剤の量に応じて、元の濃度(すなわち凍結乾燥前)とは異なる濃度を有する製剤を生成してもよい。適切な製剤は、抗体の完全性の1つまたは複数のパラメータをアッセイすることによって特定することができる。アッセイしたパラメータは、一般に、HMW種のパーセンテージまたはLMW種のパーセンテージである。
【0141】
HMW種またはLMW種のパーセンテージは、製剤中の全タンパク質含有量パーセンテージとして、または経時的な(すなわち貯蔵中の)増加パーセンテージの変化のどちらかとして決定する。許容される製剤中のHMW種の全パーセンテージは、凍結乾燥物または液体として−20℃〜40℃(たとえば、−20℃〜25℃、−20℃〜15℃、2℃〜8℃、約2℃、または約25℃)で少なくとも1年間貯蔵した後に10%以下のHMW種、または凍結乾燥物または液体として−20℃〜40℃で少なくとも1年間貯蔵した後に約10%以下のLMW種である。「約」とは、言及した数値の±20%を意味する。したがって、「約20℃」とは16℃〜24℃を意味する。
【0142】
典型的には、安定性プロファイルは、冷蔵生成物では2°〜8℃、および室温の生成物では25℃において、10%未満のHMW/LMWである。HMW種またはLMW種は、凍結乾燥物として貯蔵した製剤において、凍結乾燥物を再構成した後にアッセイする。40℃とは、安定性を試験するため、および、たとえば輸送中に生成物を移す間に起こり得る非貯蔵条件への短期間の曝露における安定性を決定するために、一般に使用する加速条件である。
【0143】
アッセイしたパラメータがHMW種またはLMW種のパーセンテージ変化である場合、貯蔵後の一方または両方の種中の全タンパク質のパーセントを、貯蔵前(たとえば製剤を調製した際)の一方または両方の種中のパーセント全タンパク質と比較する。パーセンテージの差異を決定する。一般に、液体製剤中のHMW種またはLMW種中のタンパク質のパーセンテージの変化は、2℃〜8℃または25℃で約18〜24カ月間貯蔵した後に、10%以下、たとえば、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、または約3%以下である。「約」とは、所定の値または値の範囲の言及した数値の±20%、典型的には10%以内、より典型的には5%以内を意味する。したがって、約10%とは8%〜12%を意味する。凍結乾燥した生成物として貯蔵した製剤化粒は、再構成後、または液体製剤中で、−30℃〜8℃(たとえば4℃または−20℃)で約6、9、10、12、15、18〜24カ月間貯蔵した後に、一般に、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、もしくは約1%未満のHMW種、または約5%未満、約4%未満、約3%未満、もしくは約2%未満、もしくは約1%未満のLMW種を有する。
【0144】
SDAB分子(たとえばTNF結合ナノボディ分子)の製剤は、凍結液体製剤または凍結乾燥物として、たとえば、少なくとも6、9、10、12カ月間、または少なくとも2年間、少なくとも3年間、少なくとも4年間、もしくは少なくとも5年間貯蔵することができる。一例では、TNF結合ナノボディ分子製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、50mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH6.0を有する。別の例では、TNF結合ナノボディ分子製剤は、20mMのヒスチジン、7.5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、50mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH6.0を有する。別の例では、製剤は、20mMのヒスチジン、10%のスクロース、0.02%のポリソルベート80、100mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH6.0を有する。別の例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、50mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH6.0を有する。さらに別の例では、製剤は、20mMのヒスチジン、10%のスクロース、100mg/mLのTNF結合ナノボディを含有し、pH6.0を有する。別の例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、約80mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH6.0を有する。さらに別の例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、100mMのアルギニン(塩基)、88〜100mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH5.8を有する。別の例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、55mMのNaCl、88〜100mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH6.1を有する。さらに別の例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、55mMのアルギニンHCl、88〜100mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH6.1を有する。別の例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、100mMのグリシン、88〜100mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH6.0を有する。さらに別の例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、100mMのメチオニン、88〜100mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH6.0を有する。別の例では、製剤は、10mMのヒスチジン、8%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、88〜100mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH6.0を有する。さらに別の例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、88〜100mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH6.0を有する。別の例では、製剤は、20mMのヒスチジン、5%のスクロース、118mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH6.0を有する。さらに別の例では、製剤は、20mMのトリス、5%のスクロース、117mg/mLのTNF結合ナノボディ分子、pH7.2を有する。別の例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、約80mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH6.0を有する。さらに別の例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、約50mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH6.0を有する。一例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のTween−80、約1mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH5.5を有する。別の例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のTween−80、150mMのアルギニンHCl、約1mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH5.5を有する。さらに別の例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のTween−80、75mMの塩化ナトリウム、約1mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH5.5を有する。一例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のTween−80、約1mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH6.0を有する。別の例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のTween−80、150mMのアルギニンHCl、約1mg/mLのTNF結合ナノボディを含有し、pH6.0を有する。さらに別の例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のTween−80、75mMの塩化ナトリウム、約1mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH6.0を有する。一例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のTween−80、約1mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH6.5を有する。別の例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のTween−80、150mMのアルギニンHCl、約1mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH6.5を有する。さらに別の例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のTween−80、75mMの塩化ナトリウム、約1mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH6.5を有する。一例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のTween−80、約1mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH7.0を有する。別の例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のTween−80、150mMのアルギニンHCl、約1mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH7.0を有する。さらに別の例では、製剤は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のTween−80、75mMの塩化ナトリウム、約1mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH7.0を有する。さらに別の例では、TNF結合ナノボディ分子製剤は、20mMのヒスチジン、7.5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、250mg/mLのTNF結合ナノボディ分子を含有し、pH6.0を有する。
【0145】
製剤の構成成分および製剤中のSDAB分子、たとえばTNF結合ナノボディ分子の完全性をアッセイする方法に関するさらなる詳細を、以下に提供する。
【0146】
製剤中のSDAB分子の濃度は、一般に、約0.1mg/mL〜約350mg/mL、たとえば、0.5mg/mL〜約350mg/mL、約0.5mg/mL〜約300mg/mL、約0.5mg/mL〜約250mg/mL、約0.5mg/mL〜約150mg/mL、約1mg/ml〜約130mg/mL、約10mg/ml〜約130mg/mL、約50mg/ml〜約120mg/mL、約80mg/ml〜約120mg/mL、約88mg/ml〜約100mg/mLまたは約10mg/ml、約25mg/ml、約50mg/ml、約80mg/ml、約100mg/mL、約130mg/ml、約150mg/ml、約200mg/ml、約250mg/mlもしくは約300mg/mlである。範囲についての文脈では、「約」とは、言及した範囲の下限の数値の−20%および言及した範囲の上限の数値の+20%を意味する。たとえば約10mg/mL〜約100mg/mLの範囲についての文脈では、これは8mg/mL〜120mg/mLを意味する。一部の場合では、製剤中のSDAB分子の濃度は、たとえば、0.1mg/mL〜200mg/mL、たとえば、0.5mg/mL〜100mg/mL、0.5mg/mL〜1.0mg/mL、0.5mg/mL〜45mg/mL、1mg/mL〜10mg/mL、10mg/mL〜40mg/mL、10mg/mL〜50mg/mL、50mg/mL〜100mg/mL、100mg/mL〜200mg/mLとすることができる。そのようなSDAB分子製剤を治療剤として使用することができる。したがって、製剤中のSDAB分子の濃度は、処置する対象によって寛容され、投与方法に適切である製剤の体積中の用量を提供するために十分なものである。1つの非限定的な例では、体積制限が小さい(たとえば1回の注射あたり約1ml〜1.2ml)皮下で高用量を供給するためには、SDAB分子の濃度は、一般に、少なくとも100mg/mL以上、たとえば、100mg/mL〜500mg/mL、100mg/mL〜250mg/mL、または100mg/mL〜150mg/mLである。そのような高濃度を、たとえば、凍結乾燥製剤を適切な体積の希釈剤(たとえば、滅菌注射用水、緩衝生理食塩水)中で再構成することによって達成することができる。一部の場合では、再構成した製剤の濃度は約100mg/mL〜300mg/mL(たとえば、100mg/mL、125mg/mL、150mg/mL、175mg/mL、200mg/mL、250mg/mL、275mg/mL、300mg/mL)である。高濃度、たとえば250mg/mLまでを、長期貯蔵、たとえば、SDAB分子の大量調製物の凍結貯蔵に使用することができる。
【0147】
吸入を介した送達には、製剤は、一般に、吸気用のエアロゾルの制限された体積中で十分な用量を提供するために、多少濃縮されている(たとえば約100mg/mL〜500mg/mL)。一部の場合では、低濃度(たとえば約0.05mg/mL〜1mg/mL)を使用する。送達する用量を送達方法に適用させる方法、たとえばジェット噴霧器または計量エアロゾルが、当技術分野で知られている。
【0148】
緩衝液および凍結保護剤
本明細書中に記載の製剤のpHは、一般に、pH約5.0〜約7.0、たとえばpH約5.5〜約6.5、pH約5.5〜約6.0、pH約6.0〜約6.5、pH5.5、pH6.0、またはpH6.5である。一般に、溶液をpH5.5〜6.5に維持することができる緩衝液、たとえば約6.0のpKAを有する緩衝液を用いて製剤を調製する。適切な緩衝液には、それだけには限定されないが、ヒスチジン緩衝液、トリス、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、カコジレート、ホスフェート、アセテート、スクシネート、およびシトレートが含まれる。緩衝液の濃度は約4mM〜約60mM、たとえば約5mM〜約25mMであり、たとえば、ヒスチジンは一般に60mMの濃度で使用する。一部の場合では、ヒスチジン緩衝液は約5mM、約10mMまたは約20mMの濃度で使用する。他の場合では、アセテートまたはスクシネート緩衝液は約5mMまたは約10mMの濃度で使用する。
【0149】
凍結保護剤は当技術分野で知られており、たとえば、スクロース、トレハロース、およびグリセロールが含まれる。生物系において低い毒性を示す凍結保護剤を一般に使用する。凍結保護剤は、製剤中に約0.5%〜15%、約0.5%〜2%、約2%〜5%、約5%〜10%、約10%〜15%、および約5%(重量/体積)の濃度で含まれる。
【0150】
TNF結合ナノボディ製剤中で緩衝液として使用することができるヒスチジン緩衝液は、凍結保護特性を有し得る。本発明の一部の実施形態では、ヒスチジン緩衝液は、糖、たとえばスクロースなどの凍結保護剤と併せて使用する。本発明の製剤は、たとえば、製剤の緩衝液も凍結保護構成成分もヒスチジンでないなど、実質的な量のヒスチジンの使用を特に排除することができる。
【0151】
製剤の粘度は、一般に、製剤の投与経路に適合するものである。一部の実施形態では、製剤の粘度は、1cP〜4cP、たとえば約2cP〜3.5cPである。他の実施形態では、製剤の粘度は約5cP〜約40cPである。特定の実施形態では、製剤の粘度は、約1cP、2cP、2.4cP〜2.8cP、3cP、3.1cP〜3.2cP、4cP、5cP、10cP、15cP、20cP、25cP、30cP、35cP、または40cPである。
【0152】
界面活性剤
特定の実施形態では、界面活性剤を製剤中に含める。界面活性剤の例には、それだけには限定されないが、ポリソルベート(たとえば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、またはポリソルベート85)などの非イオン性界面活性剤、Triton(商標)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウレル(laurel)硫酸ナトリウム、オクチルグリコシドナトリウム、ラウリル−スルホベタイン、ミリスチル−スルホベタイン、リノレイル−スルホベタイン、ステアリル−スルホベタイン、ラウリル−サルコシン、ミリスチル−サルコシン、リノレイル−サルコシン、ステアリル−サルコシン、リノレイル−ベタイン、ミリスチル−ベタイン、セチル−ベタイン、ラウロアミドプロピル−ベタイン、コカミドプロピル−ベタイン、リノレアミドプロピル−ベタイン、ミリスタミドプロピル−ベタイン、パルミドプロピル−ベタイン、イソステアラミドプロピル−ベタイン(たとえばラウロアミドプロピル)、ミリスタルニドプロピル(myristarnidopropyl)−、パルミドプロピル−、またはイソステアラミドプロピル−ジメチルアミン、メチルココイルタウリン酸ナトリウム、またはメチルオフェイル(ofeyl)タウリン酸二ナトリウム、ならびにMonaquat(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.、Paterson、N.J.)、ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、およびエチレンとプロピレングリコールとのコポリマー、たとえばポロキサマー(たとえばポロキサマー188)が含まれる。
【0153】
加える界面活性剤の量は、たとえばHMW種またはLMW種のSEC−HPLCを用いてアッセイして、許容されるレベルまで再構成したタンパク質の凝集を低下させ、TNF結合ナノボディ製剤の凍結乾燥物の再構成後に粒子の形成を最小限にするような量である。また、界面活性剤の添加は、TNF結合抗体の凍結乾燥製剤の再構成時間も減少させ、溶液の脱気を援助することも示されている。たとえば、界面活性剤は、製剤(液体または凍結乾燥前)中で、約0.001%〜0.6%、たとえば、約0.005%〜0.05%、約0.005%〜約0.2%、および約0.01%〜0.2%の量で存在することができる。
【0154】
製剤への添加
製剤は、無菌溶液または無菌凍結乾燥物として貯蔵する。また、製剤中の微生物作用の防止は、少なくとも1つの抗菌剤および/または抗真菌剤、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどを製剤中に含めることによっても達成することができる。一部の場合では、凍結乾燥物を静菌水(たとえば0.9%のベンジルアルコールを含有する水)で再構成する。保存料を製剤中に包含させる際の考慮事項は当技術分野で知られており、特定の製剤および送達方法に適合する保存料を特定する方法も知られている(たとえばGuptaら(2003)、AAPS Pharm.Sci.、5:論文8、ページ1〜9を参照)。
【0155】
一部の場合では、製剤は等張である。一般に、当技術分野で知られている、溶液のモル浸透圧濃度/等張性に寄与する任意の構成成分を製剤に加えることができる(たとえば、塩、糖、ポリアルコール、またはその組合せ)。等張性は、一般に、塩基性製剤の構成成分(スクロースなど)を等張濃度で使用することによって、または糖、マンニトール(manitol)もしくはソルビトールなどの多価アルコール、または塩化ナトリウムなどの塩等の追加の構成成分を加えることによって達成する。
【0156】
一部の場合では、たとえば、等張性を達成するまたは製剤のTNF結合ナノボディの完全性を増加するために、塩をTNF結合ナノボディ製剤中で使用する。使用に適した塩は上述されている。塩の濃度は0mM〜約300mMとすることができる。
【0157】
特定の場合では、界面変性を減少させるために、Tween(たとえば、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)80)を用いて製剤を調製する。Tweenの濃度は約0.001%〜約0.05%とすることができる。一例では、Tween80は製剤中に0.01%の濃度で使用する。
【0158】
特定の他の場合では、アルギニンを用いて製剤を調製する。製剤中のアルギニンの濃度は約0.01%〜約5%とすることができる。一例では、アルギニンは製剤中に2%の濃度で使用する。一部の場合では、Tweenおよびアルギニンをどちらも本明細書中に記載のTNF結合製剤に加える。
【0159】
さらに他の場合では、ソルビトール、グリシン、メチオニン、または塩化ナトリウムの少なくとも1つを用いて製剤を調製し得る。ソルビトールを製剤中に含める場合は、約1%〜約10%の濃度まで加えることができる。一例では、ソルビトールは5%の濃度で製剤中に見つかる。グリシンを製剤中に含める場合は、約0.1%〜約2%の濃度まで加えることができる。一例では、グリシンは製剤中に1%の濃度で見られる。メチオニンを製剤中に含める場合は、約5mM〜約150mMの濃度まで加えることができる。一例では、メチオニンは100mMの濃度で製剤に加える。別の例では、メチオニンは、約10mM、約20mMまたは約70mMの濃度で製剤に加える。塩化ナトリウムを製剤中に含める場合は、約5mM〜約100mMの濃度まで加えることができる。一例では、塩化ナトリウムは55mMの濃度で製剤に加える。
【0160】
貯蔵および調製方法
凍結
一部の場合では、抗体を含有する製剤を貯蔵のために凍結する。したがって、製剤は、凍結解凍サイクル下を含めたそのような条件下で比較的安定であることが望ましい。製剤の適切性を判定する1つの方法は、試料製剤を、少なくとも2回、たとえば、3回、4回、5回、8回、10回、またはそれ以上のサイクルの凍結(たとえば−20℃または−80℃で)および解凍(たとえば、37℃の水浴中の急速解凍または2℃〜8℃の緩徐解凍による)に供し、凍結解凍サイクル後に蓄積されるLMW種および/またはHMW種の量を決定し、凍結解凍手順の前に試料中に存在するLMW種またはHMW種の量と比較することである。LMWまたはHMW種の増加が安定性の減少を示す。
【0161】
凍結乾燥
製剤は凍結乾燥後に貯蔵することができる。したがって、凍結乾燥後の製剤のタンパク質構成成分の安定性について製剤を試験することは、製剤の適切性の判定に有用である。この方法は、凍結について上述したものと同様であるが、試料製剤を凍結する代わりに凍結乾燥し、その元の体積まで再構成し、LMW種および/またはHMW種の存在について試験する。凍結乾燥した試料製剤を凍結乾燥しなかった対応する試料製剤と比較する。対応する試料と比較した凍結乾燥試料中のLMWまたはHMW種の増加が、凍結乾燥した試料の安定性の減少を示す。
【0162】
一般に、凍結乾燥プロトコルには、凍結乾燥機内に試料を入れること、予冷期間、凍結、真空開始、一次乾燥温度への勾配、一次乾燥、二次乾燥温度への勾配、二次乾燥、および試料に栓をすることが含まれる。凍結乾燥プロトコルについて選択することができるさらなるパラメータには、真空度(たとえばミクロン)およびコンデンサー温度が含まれる。温度の適切な勾配率は、約0.1℃/分〜2℃/分、たとえば、0.1℃/分〜1.0℃/分、0.1℃/分〜0.5℃/分、0.2℃/分〜0.5℃/分、0.1℃/分、0.2℃/分、0.3℃/分、0.4℃/分、0.5℃/分、0.6℃/分、0.7℃/分、0.8℃/分、0.9℃/分、および1.0℃/分である。凍結乾燥サイクルの凍結中の適切な棚温度は、一般に、約−55℃〜−5℃、−25℃〜−5℃、−20℃〜−5℃、−15℃〜−5℃、−10C〜−5℃、−10℃、−11℃、−12℃、−13℃、−14℃、−15℃、−16℃、−17℃、−18℃、−19℃、−20℃、−21℃、−22℃、−23℃、−24℃、または−25℃である。棚温度は一次乾燥および二次乾燥で異なってもよく、たとえば、一次乾燥は二次乾燥よりも低い温度で行うことができる。非限定的な例では、一次乾燥を0℃で実施し、二次乾燥を25℃で実施することができる。
【0163】
一部の場合では、凍結中および真空開始前に徐冷プロトコルを使用する。そのような場合では、徐冷時間を選択しなければならず、温度は一般に組成物のガラス転移温度よりも高い。一般に、徐冷時間は、約2〜15時間、約3〜12時間、約2〜10時間、約3〜5時間、約3〜4時間、約2時間、約3時間、約5時間、約8時間、約10時間、約12時間、または約15時間である。徐冷の温度は、一般に、約−35℃〜約−5℃、たとえば、約−25℃〜約−8℃、約−20℃〜約−10℃、約−25℃、約−20℃、約−15℃、約0℃、または約−5℃である。一部の場合では、徐冷温度は、一般に、−35℃〜0℃、たとえば、−25℃〜−8℃、−20℃〜−10℃、−25℃、−20℃、−15℃、0℃である。
【0164】
本明細書中に記載の製剤の安定性は、−25℃〜30℃の一次乾燥棚温度、および2時間〜9時間、0℃〜30℃の二次乾燥期間を含めた、様々な凍結乾燥パラメータを用いて試験することができる。
【0165】
1つの非限定的な例では、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、pH6.0の、50mg/mLのTNF結合ナノボディのタンパク質濃度の製剤を大量に製剤化し、凍結乾燥した。凍結乾燥後、タンパク質を100mg/mLで送達するために生成物を充填体積の約半分で再構成する。TNF抗体は、生成物温度において極端に凍結乾燥させた後に頑健であることが実証された。50℃で4週間貯蔵した後の安定性プロファイルは、様々なフリーズドライサイクルを用いて調製した材料と同一であり(たとえば図16〜20を参照)、その一部は一次乾燥中に10℃近くの生成物温度の差があった(たとえば図13)。一般に、凍結乾燥サイクルは、10時間〜100時間、たとえば、20時間〜80時間、30時間〜60時間、40時間〜60時間、45時間〜50時間、50時間〜65時間、実行することができる。
【0166】
抗体製剤を貯蔵する温度範囲の非限定的な例は、約−20℃〜約50℃、たとえば、約−15℃〜約30℃、約−15℃〜約20℃、約5℃〜約25℃、約5℃〜約20℃、約5℃〜約15℃、約2℃〜約12℃、約2℃〜約10℃、約2℃〜約8℃、約2℃〜約6℃、ならびに約2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、10℃、15℃、25℃、または30℃である。貯蔵温度にかかわらず、特定の場合では、試料は、そのような組成物に関して予想することができる、貯蔵および輸送の条件中に一時的に起こり得る温度変化の下で安定である。
【0167】
噴霧乾燥
一部の場合では、製剤を噴霧乾燥し、その後に貯蔵する。噴霧乾燥は当技術分野で知られている方法を用いて実施し、液体または凍結の噴霧乾燥を使用するように改変することができる(たとえば、Niro Inc.(Madison、WI)、Upperton Particle Technologies(Nottingham、英国)、もしくはBuchi(Brinkman Instruments Inc.、Westbury、NY)、または米国特許公開第20030072718号および第20030082276号などの方法を用いる)。
【0168】
SDAB分子の完全性決定
LMW種およびHMW種の蓄積は、抗体安定性の有用な測定である。製剤中のLMWまたはHMWのいずれかの蓄積は、製剤の一部として貯蔵されるタンパク質の不安定性の指標である。HPLCを伴ったサイズ排除クロマトグラフィーを用いてLMWおよびHMW種の存在を決定することができる。そのような測定のための適切な系は当技術分野で知られており、たとえばHPLC系(Waters、Milford,MA)である。当技術分野で知られている他の系、たとえば、SDS−PAGE(HMWおよびLMW種を監視するため)、抗体活性のバイオアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ、精製した標的タンパク質(たとえばTNFα)と結合する能力、ならびに陽イオン交換−HPLC(CEX−HPLC、変異体を検出し、表面荷電を監視するため)を用いて、製剤中の抗体の完全性を評価することができる。一例では、バイオアッセイは、生物活性を実証するためにTNFα依存性の活性の阻害を様々な濃度の製剤化したナノボディ分子の存在下で検査する、細胞に基づくアッセイである。
【0169】
製品
また、本出願は、本明細書中に記載の製剤が含まれる製品も提供し、製剤の使用説明書を提供する。
【0170】
たとえば医薬品として対象に投与するために使用する製剤は、無菌でなければならない。これは、当技術分野で知られている方法を用いて、たとえば滅菌濾過膜を通した濾過によって、液体の製剤化または凍結乾燥および再構成の前、またはその後に達成する。あるいは、構造に損傷を与えない場合は、製剤の構成成分をオートクレーブによって滅菌し、その後、濾過または照射によって滅菌した構成成分と組み合わせて、製剤を生成することができる。
【0171】
医薬製剤は、皮下注射または複数チャンバのシリンジを含めたシリンジなどの経皮送達デバイスを用いて投与することができる。一実施形態では、デバイスは、付属または一体型の針を備えた、充填済みシリンジである。他の実施形態では、デバイスは、針が付属されていない、充填済みシリンジである。針を充填済みシリンジと共に梱包することができる。一実施形態では、デバイスは、自己注射デバイス、たとえば自己注射シリンジである。別の実施形態では、注射デバイスはペン型注射器である。さらに別の実施形態では、シリンジは、固定針(staked needle)シリンジ、ルアーロックシリンジ、またはルアースリップシリンジである。他の適切な送達デバイスには、ステント、カテーテル、顕微針、および埋め込み型の徐放デバイスが含まれる。組成物は、たとえば、インラインフィルターを備えたまたは備えない静脈内チューブを含めた、標準の静脈内装備を用いて静脈内投与することができる。
【0172】
特定の実施形態では、シリンジは自己注射デバイスと共に使用するために適している。たとえば、自己注射デバイスには、液剤を送達するためのペン型注射デバイスなどの単一バイアル系が含まれてもよい。そのようなデバイスは、たとえば、Becton Dickensen(Franklin Lakes、N.J.)、Ypsomed(Burgdorf、スイス、www.ypsomed.com、Bioject、Portland、Oreg.、National Medical Products、Weston Medical(Peterborough、英国)、Medi−Ject Corp(Minneapolis、Minn.)、およびZogenix,Inc、Emeryville、CAによって作製または開発されており、BD Pens、BD Autojector(登録商標)、Humaject(登録商標)、NovoPen(登録商標)、B−D(登録商標)Pen、AutoPen(登録商標)、およびOptiPen(登録商標)、GenotropinPen(登録商標)、Genotronorm Pen(登録商標)、Humatro Pen(登録商標)、Reco−Pen(登録商標)、Roferon Pen(登録商標)、Biojector(登録商標)、Iject(登録商標)、Jチップ無針注射器(J−tip Needle−Free Injector)(登録商標)、DosePro(登録商標)、Medi−Ject(登録商標)などが製造者から市販されている。二重バイアル系を含む認識されているデバイスには、HumatroPen(登録商標)などの、再構成した溶液を送達するためのカートリッジ中で凍結乾燥した薬物を再構成するためのペン型注射器系が含まれる。
【0173】
製品には、製剤を含有するために適した容器が含まれてもよい。適切な容器は、それだけには限定されないが、デバイス、ボトル、バイアル、シリンジ、試験管、噴霧器(たとえば超音波もしくは振動メッシュ噴霧器)、静脈溶液バッグ、または吸入器(たとえば定量吸入器(MDI)もしくはドライパウダー吸入器(DPI))とすることができる。容器は、ガラス、金属、またはポリカーボネート、ポリスチレン、もしくはポリプロピレンなどのプラスチック等の任意の適切な材料で作ることができる。たとえば、容器(たとえばシリンジまたはバイアル)は、ガラス、プラスチック、環状オレフィンコポリマー、または環状オレフィンポリマーで作ることができる。容器(たとえばシリンジまたはバイアル)は、栓、たとえばゴム栓を有していてもよい。本発明の製剤を貯蔵するための容器の特定の実施形態には、(i)ゴム栓を備えたガラス製バイアル中の液体、(ii)ゴム製プランジャーを備えたガラス製の事前充填可能なシリンジ中の液体、(iii)ゴム製プランジャーを備えた事前充填可能なポリマー製シリンジ、たとえば環状オレフィンコポリマー(COC)、または環状オレフィンポリマー(COP)中の液体が含まれる。
【0174】
一般に、容器は、合物からの顕著な量のタンパク質を吸着せず、製剤の構成成分と反応性のない材料の容器である。
【0175】
一部の実施形態では、容器は、栓、たとえばWest 4432/50 1319のシリコン処理した灰色の栓またはWest 4023 Durafluor栓を備えた透明なガラス製バイアルである。一部の実施形態では、容器はシリンジである。特定の実施形態では、製剤は、100mg/mLのTNF結合ナノボディ、20mMのヒスチジン、7.5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、pH6.0を、充填済みシリンジ中に含む。別の実施形態では、製剤は、約10mg/mL、約100mg/mLのTNF結合ナノボディ、20mMのヒスチジン、7.5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、pH6を、事前充填可能な環状オレフィン製シリンジおよびWest 4432/50のシリコン処理した灰色のゴム製プランジャー中に含む。他の実施形態では、製剤には、約10mg/mL、約50mg/mL、約100mg/mLのTNF結合ナノボディ、20mMのヒスチジン、7.5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、pH6が、事前充填可能なガラス製シリンジおよびWest 4432/50のシリコン処理した灰色のゴム製プランジャーまたはWest 4023/50のDaikyo Flourotec/B2でコーティングしたゴム製プランジャー中に含まれる。
【0176】
本明細書中に記載の製品には、包装材料をさらに含めることができる。包装材料は、使用または投与の情報に加えて、たとえば、生成物を使用することができる条件に関して規制機関によって要求される情報を提供する。たとえば、包装材料は、患者に、どのようにして本明細書中に記載の製剤を含有する充填済みシリンジを注射するか、または、どのようにして指定した期間内、たとえば2〜24時間またはそれより長い期間にわたって凍結乾燥製剤を水性希釈剤中で再構成して溶液を形成するかについての指示を提供することができる。本明細書中で特許請求した製剤は、ヒトの医薬生成物の使用に有用である。
【0177】
特定の実施形態では、製剤は噴霧器として投与することができる。噴霧器の例には、非限定的な例として、ジェット噴霧器、超音波噴霧器、および振動メッシュ噴霧器が含まれる。これらのクラスでは、様々な方法を用いてエアロゾルを液体から生じる。一般に、これらの製剤中でタンパク質の完全性を維持することができる任意のエアロゾル発生デバイスが、本明細書中に記載の製剤の送達に適している。
【0178】
他の実施形態では、医薬組成物は医療用デバイスを用いて投与することができる。たとえば、医薬組成物は、米国特許第5,399,163号、第5,383,851号、第5,312,335号、第5,064,413号、第4,941,880号、第4,790,824号、または第4,596,556号に開示されているデバイスなどの無針皮下注射デバイスを用いて投与することができる。周知の埋込錠およびモジュールの例には、制御された速度で医薬品を分注するための埋め込み型の微量注入ポンプを開示している米国特許第4,487,603号、皮膚を介して医薬品を投与するための治療用デバイスを開示している米国特許第4,486,194号、医薬品を正確なインフュージョン速度で送達するための医薬品注入ポンプを開示している米国特許第4,447,233号、連続的な薬物送達のための可変流の埋め込み型インフュージョン器具を開示している米国特許第4,447,224号、複数チャンバ区画を有する浸透圧薬物送達系を開示している米国特許第4,439,196号、および浸透圧薬物送達系を開示している米国特許第4,475,196号が含まれる。また、治療的組成物は、皮下または筋肉内投与のための生分解性または非生分解性の持続放出製剤の形態とすることもできる。たとえば、米国特許第3,773,919号および第4,767,628号ならびにPCT出願WO94/15587号を参照されたい。また、連続投与は、埋め込み型または外部のポンプを用いて達成することもできる。また、投与は、断続的に、たとえば単一の1日1回の注射で、または連続的に低用量で、たとえば持続放出製剤で実施することもできる。送達デバイスは、SDAB分子の投与に最適に適切であるように改変することができる。たとえば、シリンジは、SDAB分子の貯蔵および送達に最適な程度までシリコン処理することができる。もちろん、多くの他のそのような埋込錠、送達系、およびモジュールも知られている。また、本発明は、第1および第2の薬剤を投与するためのデバイスも特徴とする。デバイスには、たとえば、医薬調製物を貯蔵するための1つまたは複数のハウジングが含まれてもよく、単位用量の第1および第2の薬剤を送達するように構成することができる。第1および第2の薬剤は、同じまたは別々の区画中に貯蔵することができる。たとえば、投与前にデバイスで薬剤を合わせることができる。また、第1および第2の薬剤を投与するために異なるデバイスを使用することも可能である。
【0179】
投与および処置方法
本発明の製剤は、対象(たとえばヒト対象)に、単独でまたは第2の薬剤、たとえば第2の治療上もしくは薬理学的に活性な薬剤と組合せて、TNFα関連障害、たとえば炎症性または自己免疫性障害を治療または予防する(たとえばそれに関連する1つまたは複数の症状を低下または寛解させる)ために投与される。用語「処置する」とは、治療剤を、統計的に有意な度合までまたは当業者が検出可能な度合まで、障害に関連する状態、症状、もしくはパラメータを改善させる、または障害の進行を妨げるために有効な量、様式、および/またはモードで、投与することをいう。有効な量、様式、またはモードは対象に応じて変動する場合があり、対象に合わせ得る。
【0180】
処置することができる免疫障害の非限定的な例には、それだけには限定されないが、自己免疫障害、たとえば、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、ループス関連関節炎または強直性脊椎炎が含まれる)、強皮症、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、血管炎、多発性硬化症、自己免疫甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹性皮膚炎が含まれる)、重症筋無力症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、大腸炎、真性糖尿病(I型)、たとえば皮膚の炎症状態(たとえば乾癬)、急性炎症状態(たとえば、内毒血症、敗血症、菌血症を伴う敗血症(septicaemia)、毒素ショック症候群および感染症)、移植片拒絶ならびにアレルギーが含まれる。一実施形態では、TNFα関連障害は、関節炎障害、たとえば、関節リウマチ、若年性関節リウマチ(RA)(たとえば中等度から重度の関節リウマチ)、骨関節炎、乾癬性関節炎、もしくは強直性脊椎炎、多関節若年性特発性関節炎(JIA)、または乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、および/または多発性硬化症のうちの1つまたは複数から選択される障害である。
【0181】
特定の実施形態では、製剤には第2の治療剤が含まれる。たとえば、TNF−ナノボディでは、第2の薬剤は、抗TNF抗体またはそのTNF結合断片であってよく、第2のTNF抗体は製剤のTNF結合SDAB分子とは異なるエピトープ特異性を有する。TNF結合SDABと共製剤化することができる薬剤の他の非限定的な例には、たとえば、サイトカイン阻害剤、成長因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、細胞毒性剤、および細胞分裂抑制剤が含まれる。一実施形態では、追加の薬剤は、それだけには限定されないが、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、プレドニゾロン、プレドニゾン、コルチゾン、およびトリアムシノロンを含めたコルチコステロイド、メトトレキサート、ヒドロキシクロロキン(Plaquenil)およびスルファサラジンなどの疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)、レフルノミド(Arava(登録商標))、エタネルセプト(Enbrel(登録商標))、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))(メトトレキサートを含むまたは含まない)、およびアダリムマブ(Humira(登録商標))を含めた腫瘍壊死因子阻害剤、抗CD20抗体(たとえばRituxan(登録商標))、アナキンラ(Kineret)などの可溶性インターロイキン−1受容体、金、ミノサイクリン(Minocin(登録商標))、ペニシラミン、ならびにアザチオプリン、シクロホスファミド、およびシクロスポリンを含めた細胞毒性剤を含めた、関節炎の標準の処置である。そのような併用療法では、低用量の投与した治療剤を有利に利用して、様々な単独療法に関連する潜在的な毒性または合併症が回避され得る。
【0182】
本発明の製剤は、液体溶液の形態とすることができる(たとえば、注射用およびインフュージョン用の液剤)。そのような組成物は、非経口モード(たとえば、皮下、腹腔内、もしくは筋肉内注射)、または吸入によって投与することができる。本明細書中で使用する語句「非経口投与」および「非経口投与した」とは、経腸および外用投与以外の、通常は注射による投与形式を意味し、皮下または筋肉内投与、ならびに静脈内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、表皮下、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内の注射およびインフュージョンが含まれる。一実施形態では、本明細書中に記載の製剤を皮下投与する。
【0183】
医薬製剤は、製造および貯蔵条件下で無菌的かつ安定である。また、投与における規制および業界の標準を満たすことを保証するために、医薬組成物を試験することもできる。
【0184】
医薬製剤は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高いタンパク質濃度に適した他の規則的な構造として製剤化することができる。滅菌注射用液剤は、本明細書中に記載の薬剤を、所要量で、必要に応じて上述した成分のうちの1つまたは組合せと共に、適切な溶媒中に取り込ませ、続いて滅菌濾過することによって、調製することができる。一般に、分散液は、本明細書中に記載の薬剤を、塩基性分散媒を含有する無菌ビヒクルおよび上述したもののうちの所用の他の成分内に取り込ませることによって調製する。溶液の適正な流動性は、たとえば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散液の場合は所用の粒子径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって、維持することができる。注射用組成物の持続吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、たとえばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0185】
一部の実施形態では、製剤を説明するパラメータ、たとえば製品のラベル上に見られ得るパラメータを特徴づける。そのようなパラメータには、たとえば、色(典型的には、無色からわずかに黄色、または無色から黄色)、透明度(典型的には、透明からわずかに乳白色、または透明から乳白色)、および粘度(典型的には、20℃〜30℃などの周囲温度で測定した場合に約1〜5cP)が含まれる。そのようなパラメータは当技術分野で知られている方法によって測定することができる。たとえば、透明度は、市販の乳白標準(たとえば、Hach Company、Loveland,CO、80539から入手可能)を用いて測定することができる。
【実施例】
【0186】
本発明を以下の実施例によってさらに例示する。実施例は例示目的のみで提供する。これらは、いかなる様式でも本発明の範囲または内容を限定すると構成されるべきでない。
【0187】
(実施例1)
ATN−103の高濃度の凍結乾燥製剤の安定性(6カ月期間)
たとえば治療的用途のために使用する抗体を貯蔵する一方法は、凍結乾燥によって調製した乾燥粉末としての方法である。したがって、凍結乾燥TNF結合製剤の長期安定性を研究した。
【0188】
手短に述べると、ヒト化TNF結合ナノボディ(50mg/ml)、10mMのヒスチジン、5%のスクロース(重量/体積)、0.01%のポリソルベート80、pH6.0を含有する製剤を滅菌濾過によって調製し、5mlの発熱物質除去したガラス製チューブバイアル内に分注し、その後、凍結乾燥した。製剤を4℃、25℃、または40℃で1カ月、3カ月、および6カ月間貯蔵し、その後、滅菌水(USP)中で再構成して、製剤が100mg/mlのTNF結合ナノボディ、20mMのヒスチジン、10%のスクロース、0.02%のポリソルベート80、pH6.0であるような、再構成した製剤をもたらした。
【0189】
高濃度液体の安定性は、生物活性、ヒト血清アルブミン(HSA)結合、SE−HPLCによるHMWのパーセンテージおよびLMWのパーセンテージ、SDS−CEによるTNF結合ナノボディのパーセンテージおよび生成物ではない不純物のパーセンテージ、ならびに相対的保持時間のCEX−HPLC評価および溶出プロファイルとTNF結合ナノボディ参照標準との比較性によって評価した。
【0190】
凍結乾燥TNF結合ナノボディ製剤を、WO2006/122786号に開示されているアッセイを用いて、生物活性についてアッセイした。図1は、そのようなバイオアッセイの組のデータを例示する。データは1ミリグラムあたりの単位として表した。試料は、貯蔵前に約5〜5.5×10U/mgであり、インキュベーション後に約4.5〜5.5×10U/mgであった。全体的に、どの試料でも6カ月間の貯蔵後に生物活性の量に実質的な変化はなかった。したがって、製剤は、生物活性によって決定したところ、少なくとも6カ月の間、凍結乾燥製剤の貯蔵に適している。
【0191】
また、凍結乾燥TNF結合ナノボディ製剤を、ヒト血清アルブミン(HSA)結合活性についてもアッセイした。図2は、そのような結合アッセイの組のデータを例示する。製剤の初期結合活性は参照試料の約100%であり、どの試料でも6カ月間の試験期間にわたって実質的に変化しなかった。したがって、製剤は、HSA結合活性によって決定したところ、少なくとも6カ月の間、凍結乾燥製剤の貯蔵に適している。
【0192】
SE−HPLCを用いてHMW種のパーセンテージをアッセイした。凍結乾燥および再構成前の製剤中のHMW種のパーセンテージは、製剤中の全タンパク質の約0.1%であり、また、4℃および25℃で貯蔵したすべての試料中でも約0.1%〜0.2%であった(図3)。40℃で6カ月間の貯蔵の後、製剤は約0.35%のHMW種であった(図3)。したがって、4℃および25℃で6カ月間貯蔵した試料中のHMW種レベルに実質的な増加はなかった。
【0193】
SE−HPLCを用いてLMW種のパーセンテージをアッセイした。製剤中のLMW種のパーセンテージは、4℃、25℃および40℃の温度で6カ月まで、検出限界未満(すなわち0.0%)であった。
【0194】
SDS−CEを用いてTNF結合ナノボディのパーセンテージをアッセイした。製剤中の初期TNF結合ナノボディのパーセンテージは約100%であり、どの試料でも6カ月間の試験期間にわたって実質的に変化しなかった(図4)。
【0195】
SDS−CEを用いて生成物ではない不純物のパーセンテージをアッセイした。4℃、25℃および40℃の温度で6カ月までの製剤で、SDS−CEによって無視できる量の生成物ではない不純物しか観察されなかった。
【0196】
また、凍結乾燥TNF結合ナノボディ製剤を、CEX−HPLCを用いて同一性についても試験した。製剤の溶出プロファイルは、4℃、25℃および40℃の温度で6カ月まで、参照標準と比較可能であった。指定したピークの相対的保持時間は、4℃、25℃および40℃の温度で6カ月まで、1.00標準で変化していなかった。
【0197】
凍結乾燥TNF結合ナノボディ製剤の再構成特性に対する、ポリソルベート80を添加する効果も試験した。以下の表に見ることができるように、ポリソルベート80を凍結乾燥した生成物に添加することで、凍結乾燥粉末の外見および溶解を改善させることによって生成物の品質が改善する。
【0198】
【表1】

【0199】
本明細書中に記載のデータは、分解生成物の限定的な変化を様々な温度で貯蔵時間の関数として示す。
【0200】
(実施例2)
凍結乾燥に対するTNF結合ナノボディ製剤の頑健性
標的凍結乾燥サイクルを適用することによって凍結乾燥製剤に加えて(実施例1)、2つの追加の「頑健性」凍結乾燥サイクルを同じ製剤に適用することによって、2つの追加の薬物製品のロットを調製した。2つの「頑健性」凍結乾燥サイクルは、製造の設定において起こり得る顕著なプロセスの逸脱を模倣する。標的(対照)凍結乾燥サイクル研究と同じ薬物製品の製剤を頑健性研究で使用した:10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、50mg/mLのTNF結合ナノボディ、pH6.0。再構成した後(凍結乾燥前の充填された生成物の約半分の体積の再構成希釈剤を使用)、ATN−103製剤は以下の通りであった:20mMのヒスチジン、10%のスクロース、0.02%のポリソルベート80、100mg/mLのTNF結合ナノボディ、pH6.0。
【0201】
顕著なプロセスの逸脱を模倣した2つの頑健性凍結乾燥サイクルを、「高水分」および「攻撃的」と称する。図5は、頑健性凍結乾燥サイクルに供した製剤が、標的(対照)サイクルのそれと匹敵する安定性を示すことを実証している。凍結乾燥頑健性製剤のバイアルを対照凍結乾燥サイクルと並べて加速安定性上に置き、SE−HPLCによって分析した。
【0202】
これらのデータは、ATN−103凍結乾燥製剤は、生成物に影響を与えずに顕著なプロセスの逸脱に対して頑健であることを実証している。
【0203】
SE−HPLCを用いて、対照および頑健性の凍結乾燥サイクルに供した製剤のLMW種のパーセンテージをアッセイした。凍結乾燥TNF結合ナノボディの、SE−HPLCによるLMW種のパーセンテージは、tおよび50℃で1カ月までにおいて、3つのサイクルすべてで検出限界未満(すなわち0.0%)であった。
【0204】
凍結乾燥の実施
すべての実行において、凍結乾燥機内の放射を最小限にするために、扉の前のアルミニウム箔遮蔽および63mmの棚の高さを使用した。すべての実行において、凍結乾燥機に対して一定の負荷を維持するために1つのトレイを完全に満たした。すべてのタンパク質バイアルについて栓をオートクレーブし、乾燥させた。タンパク質試料のすべてのバイアルを脱イオン水ですすぎ、発熱物質を除去した。トレイの残りの部分を埋めるために使用したバイアルおよび栓は未処理であった。
【0205】
TNF結合ナノボディ製剤を播種したバイアルを、バイオセーフティキャビネット中、160mg/バイアルの標的で無菌的に調製した。それぞれの実行の前に、安定性研究用のバイアルを3.2mlの新鮮な製剤で満たした(事前に凍結乾燥していない材料)。凍結乾燥中、凍結乾燥機に対して一定の負荷を維持するために、追加のバイアルを標的凍結乾燥サイクルと適合性のある適切な緩衝液で満たした。凍結乾燥はタンパク質アレイ内で熱電対を使用することによって監視した。
【0206】
変調示差走査熱量測定(mDSC)
mDSC用のすべての試料は、0.5℃の振幅および100秒間の期間の変調モードで実行した。凍結乾燥後の粉末には、試料を2℃/分で150℃まで加熱した。すべての粉末試料は窒素をパージしたグローブボックスを用いて調製した。液体試料には、すべての温度勾配を0.5℃/分で行い、温度を凍結乾燥サイクルで利用したものと一致させた。最終加熱勾配は2℃/分で行ってガラス転移を拡大した。液体試料は実験室ベンチ上で調製した。
【0207】
水分分析
カールフィッシャー滴定を用いて凍結乾燥した試料中の水分をアッセイした。凍結乾燥した試料は3mlのメタノールで再構成した。
【0208】
2つ組または3つ組の、500μLの注入を行った。適合性確認のために、使用後に1%の水標準を注入した。
【0209】
フーリエ変換赤外線分光分析(FTIR)
FTIRにより、乾燥粉末状態の抗体の二次構造を測定した。300mgのKBr中に分散させた約1mgの製剤化した乾燥タンパク質を含有するペレットを圧延し、200回走査した。データ収集後、分析はスクロースプラセボのスペクトル減算、ベースライン補正、補整、二次導関数、および面積の正規化を含む。
【0210】
安定性
製剤中の凍結乾燥した抗体の安定性を貯蔵時間および温度の関数として評価した。凍結乾燥したTNF結合ナノボディの試料を、凍結乾燥後、2℃〜8℃で4週間の貯蔵後、ならびに50℃で2週間および4週間の貯蔵後にアッセイした。冷蔵試料はウォークイン型の冷蔵した冷室中で貯蔵した。高温試料は50℃に設定したLab Line Imperial Incubator中で貯蔵した。適切な時点で、試料を貯蔵から取り出し、アッセイ前に室温まで加温または冷却した。
【0211】
再構成および視覚的外見
凍結乾燥後分析および貯蔵安定性分析のどちらからの凍結乾燥製剤のバイアルも、1.3mlの滅菌注射用水で再構成する前、その間、およびその後に視覚的に検査した。バイアルを、ライトボックス中で黒および白色の背景の両方に対して、再構成前のケーク色、完全性、水分、粒子、および欠陥について検査した。凍結乾燥したケークを視覚検査した後、クリンプ除去装置(de−crimper)を使用して蓋およびクリンプシールをバイアルから取り外した。栓を取り外し、適切なピペットを用いて滅菌注射用水をバイアル内にゆっくりと分注した。ケークを完全に湿らせることを確実にするために回旋動作を用いて希釈剤を分注した。希釈剤を完全に分注した後、標準の実験室タイマーを用いて再構成の測時を開始し、バイアルに再度栓をした。最後の固体片が溶けた際に再構成が完了した。バイアルを手の間で回転させることで再構成が促進された。凍結乾燥したケークが再構成の過程にある間、透明度、気泡発生、および発泡などの、溶解中の溶液の状態に関する観察を記録した。再構成が完了した後、再構成時間を記録し、生じた溶液が定着し、再構成中に形成された気泡の大部分が散逸されることを可能にするために、バイアルをベンチ上に数分間静置した。その後、再構成した溶液を、ライトボックス中で黒および白色の背景の両方に対して、色、透明度、および粒子について検査した。
【0212】
高速サイズ排除クロマトグラフィー(SEC−HPLC)
2マイクロリットルのTNF結合ナノボディ製剤のニートな試料を、保護カラムを備えたG3000swxlカラム上に注入した(TosoHaas部品番号08541および08543)。移動相は、250mMの塩化ナトリウムを加えたリン酸緩衝液(PBS)であった。流速は0.75ml/分であり、実行時間は30分間であった。紫外線吸光度を280nmの波長で監視した。Waters Empower(商標)ソフトウェアを用いて、主なTNF結合ナノボディピークを高および低分子量種から分離するためにクロマトグラムを積分した。
【0213】
濃度決定のための紫外線−可視吸光度分光分析(A280
100mg/mlの濃度の抗体を有する製剤の試料を、10μlの試料をそれぞれ1990μlおよび3990μlの10mMのヒスチジン、5%のスクロース、pH6.0に加えることによって約0.5mg/mLおよび0.25mg/mLまで希釈した。200マイクロリットルの生じた溶液を、96ウェルマイクロプレート中の個々のウェル中に緩衝液ブランクと共に入れた。プレートを、Spectramax(登録商標)Plusプレートリーダーで280nmおよび320nmの波長の紫外線吸光度について読み取った。320nmの吸光度を280nmの吸光度から減算し、消光係数(1.405mL/mg−cm)×経路長(1cm)によって除算することで、それぞれのウェル中の溶液のタンパク質濃度が決定された。適切な希釈係数を適用し、平均タンパク質濃度を決定した。
【0214】
光散乱のための紫外線−可視吸光度分光分析(A420
200マイクロリットルの分析するそれぞれのTNF結合ナノボディ試料を、96ウェルマイクロプレート上の個々のウェル内に一定分量で入れた。緩衝液ブランクが対照として役割を果たした。プレートを、Spectramax Plusプレートリーダーで420nmの波長の可視吸光度について読み取った。
【0215】
サイクル開発戦略
一連の連続的なステップ(以下に記載)を使用して凍結乾燥サイクルを開発した。
【0216】
生成物臨界温度の特定
TNF結合ナノボディの生成物臨界温度は変調示差走査熱量(mDSC)によって特定した。この方法は、凍結した生成物のガラス転移温度を特定するために使用する(mDSC)。一次乾燥中に生成物をこの温度未満に維持する凍結乾燥サイクルにより、インタクトなケーク構造が得られるはずである。最低温度の適切な温度は−25℃であると推定され、したがって、この温度は、一般に、本明細書中に記載の抗体の製剤およびその凍結乾燥方法を開発する際に条件および製剤を試験するために設計された手順に含まれる。
【0217】
凍結乾燥サイクルの実行
上述した研究の結果に基づいて、3つの異なる凍結乾燥サイクルを行って、貯蔵に適した凍結乾燥製剤を調製するための適切な凍結乾燥手順または他の手順を開発における、3つの目的のパラメータを検査した。検査した第1のパラメータは対照サイクルであり、以前の安定性研究からのサイクルを繰り返す。すべての以前の開発上の安定性サイクルでこのサイクルを利用したため、これがこの分析の出発点として役割を果たした。
【0218】
試験した第2のパラメータは、高い残留水分含量を有する凍結乾燥したケークを作製するために二次乾燥ステップを行わないことの影響であった。この凍結乾燥サイクルは、高い残留水分含量に対するTNF結合ナノボディ製剤の感受性の評価として役割を果たし、正式な凍結乾燥頑健性研究を実行する前の、初期の臨床ロット中の製造の逸脱の評価に使用することができる。
【0219】
試験した第3のパラメータは攻撃的サイクルであった。一次乾燥温度を対照サイクルの設定点よりも大幅に高く増加させることで、一次乾燥中のTNF結合ナノボディ製剤の生成物温度を大幅に増加させることができる。この凍結乾燥サイクルは、凍結乾燥中の生成物温度に対するTNF結合ナノボディ製剤の感受性の評価として役割を果たし、正式な凍結乾燥頑健性研究を実行する前の、初期の臨床ロット中の製造の逸脱の評価に使用することができる。
【0220】
凍結乾燥サイクルの評価
TNF結合ナノボディ製剤に対する選択した凍結乾燥サイクルの評価は、2つの側面、すなわち、凍結乾燥後に行った試験に基づく即時比較、および加速条件下でインキュベーションした後に引き起こされる潜在的な長期的影響に分割して行った。
【0221】
生成物臨界温度の特定
TNF結合ナノボディ製剤生成物は、ほぼ50%のタンパク質を含有していた。したがって、タンパク質が凍結および凍結乾燥した状態の物理特性を支配すると予測された。凍結乾燥前に、周囲以下の変調示差走査熱量(mDSC)により、製剤の凍結濃縮した非晶質相のガラス転移温度を検索した。攻撃的凍結乾燥開発サイクルのデータに基づいて、−12℃の生成物温度が、凍結乾燥中にそれ未満に保つ臨界温度として選択された。
【0222】
(実施例3)
TNF結合ナノボディの高濃度液体製剤の安定性(6カ月期間)
一部の場合では、TNF結合ナノボディ製剤を液体様式で貯蔵することが望ましい。したがって、比較的高濃度のTNF結合ナノボディを含有する液体TNF結合製剤の長期安定性を研究した。手短に述べると、ヒト化TNF結合ナノボディ(約80mg/mL)、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、pH6.0を含有する製剤を、製剤を発熱物質除去したステンレス鋼製容器中で滅菌濾過することによって貯蔵用に調製した。製剤を−20℃または4℃で約3カ月および6カ月間貯蔵した。高濃度液体の安定性は、生物活性、ヒト血清アルブミン(HSA)結合、SE−HPLCによるHMWのパーセンテージおよびLMWのパーセンテージ、SDS−CEによるATN−103のパーセンテージおよび生成物ではない不純物のパーセンテージ、ならびに相対的保持時間のCEX−HPLC評価および溶出プロファイルとTNF結合ナノボディ参照標準との比較性によって評価した。
【0223】
生物活性アッセイを高濃度液体TNF結合ナノボディ製剤の安定性パラメータとして使用した。アッセイを上記実施例1中に記載のように実施した。試料を−20℃および4℃で約3カ月および6カ月間貯蔵した。データは1ミリグラムあたりの単位として表した(図6)。試料は、貯蔵前に約6×10U/mgであり、インキュベーション後に約4.5〜5×10U/mgであった。これは、貯蔵中に試料の生物活性が本質的に変化しないことを反映している。値の変動はアッセイ固有の変動を反映する。試料中の生物活性の量は減少していないため、これらのデータは、TNF−結合の貯蔵について製剤が適切であることのさらなる支持を提供する。
【0224】
高濃度液体TNF結合ナノボディ製剤を用いて、さらに別の安定性パラメータ、結合活性のそれを検査した。これらの実験では、−20°および4℃で6カ月間貯蔵した後の製剤の結合活性のパーセンテージを対照と比較した。このアッセイは、TNFとヒト血清アルブミン(HSA)との結合の結合親和性を特に監視する。製剤の初期結合活性は参照試料の約100%であり、どの試料でも6カ月間の試験期間にわたって実質的に変化しなかった(図7)。測定された結合活性は参照の約110%までであり、このアッセイで一般に観察される誤差を考慮すると、これは、経時的に試料の結合活性が本質的に変化しないことを反映しており、結合の結果において温度に関連する傾向はなかった。
【0225】
SEC−HPLCを用いてHMW種のパーセンテージをアッセイした。貯蔵前の高濃度液体製剤中の高分子量種のパーセンテージは製剤中の全タンパク質の0.1%〜0.15%であり、6カ月まで貯蔵した際、−20℃で貯蔵した試料中で約0.1%であり、4℃で貯蔵した試料中で約0.2%であった(図8)。したがって、−20℃および4℃で少なくとも6カ月間貯蔵した試料においてHMW種レベルの実質的な増加はなかった。
【0226】
高濃度液体TNF結合ナノボディ製剤中のLMW種のパーセンテージも、TNF結合ナノボディ液体製剤中でアッセイした。製剤中のLMW種のパーセンテージは、6カ月まで、−20℃の温度で検出限界未満(すなわち0.0%)であり、4℃で貯蔵した試料中で約0.1%であった(図9)。したがって、−20℃および4℃で少なくとも6カ月間貯蔵した試料においてLMW種のレベルの実質的な増加はなかった。
【0227】
SE−HPLCを用いてLMW種のパーセンテージをアッセイした。高濃度液体製剤中のLMW種のパーセンテージは、4℃、25℃および40℃の温度で6カ月まで検出限界未満(すなわち0.0%)であった。
【0228】
SDS−CEを用いてTNF結合ナノボディのパーセンテージをアッセイした。高濃度液体製剤中の初期TNF結合ナノボディのパーセンテージは約100%であり、どの試料でも6カ月間の試験期間にわたって実質的に変化しなかった(図10)。
【0229】
SDS−CEを用いて生成物ではない不純物のパーセンテージをアッセイした。液体高濃度TNF結合ナノボディ製剤では、−20℃および4℃の温度で6カ月まで、SDS−CEによって無視できる量の生成物ではない不純物しか観察されなかった。
【0230】
また、高濃度液体製剤を、CEX−HPLCを用いて同一性についても試験した。CEX−HPLCは同一性の試験として用いる。高濃度液体製剤のTNF−結合の溶出プロファイルは、−20℃および4℃の温度で6カ月まで、参照標準と比較可能であった。指定したピークの相対的保持時間は、−20℃および4℃の温度で6カ月まで、1.00標準で変化していなかった。
【0231】
本明細書中に記載のデータは、分解生成物の限定的な変化を様々な温度で貯蔵時間の関数として示す。
【0232】
(実施例4)
液体の充填済みシリンジ中のTNF結合ナノボディの高濃度液体製剤の安定性(12カ月期間)
10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、約80mg/mLのTNF結合ナノボディ、pH6.0の製剤で充填済みシリンジ内に満たしたTNF結合ナノボディの高濃度液体の安定性を、SE−HPLCによるHMWのパーセンテージおよびLMWのパーセンテージ、CEX−HPLCによる酸性および塩基性種のパーセンテージ、ならびに相対的保持時間の評価および溶出プロファイルとTNF結合ナノボディ参照標準との比較性によって評価した。製剤を4℃で12カ月、25℃で3カ月、および40℃で2カ月間貯蔵した。
【0233】
開始時点では、約0.7%のHMW種が存在していた。4℃で12カ月後には、約0.8%のHMW種までの最小限の増加が存在していた。25℃で3カ月後には、HMW種は約1.8%まで増加した。40℃で2カ月後、HMW種は経時的に約27%まで増加していた(図11)。
【0234】
開始時点では、約0.1%のLMW種が存在していた。4℃で12カ月後には、0.25%のLMW種までの最小限の増加が存在していた。25℃で3カ月後には、約0.5%のLMWまでのわずかな増加が存在していた。40℃で2カ月後、分解は経時的に約1.4%のLMW種まで増加していた(図12)。
【0235】
開始時点では、約6%の酸性種が存在していた。4℃で12カ月後には、約7.5%の酸性種が存在していた。25℃で3カ月後には、約7.3%の酸性種が存在しており、酸性種は経時的に増加していた。40℃で2カ月後、酸性種は経時的に約8.3%まで増加していた(図13)。
【0236】
開始時点では、約1.7%の塩基性種が存在していた。4℃で12カ月後には、約2.9%の塩基性種が存在していた。25℃で3カ月後には、約2.9%の塩基性種が存在しており、塩基性種は経時的に増加していた。40℃で2カ月後、塩基性種は経時的に約27%まで増加していた(図14)。
【0237】
すべての試料の相対的保持時間および溶出プロファイルはTNF結合ナノボディ参照標準と比較可能であった。
【0238】
データは、分解生成物の限定的な変化を4℃および25℃での貯蔵時間の関数として示し、製剤が充填済みシリンジ中の液体として適していることが示されている。分解生成物の一部の注目すべき変化が、液体のストレス条件である40℃で観察された。
【0239】
(実施例5)
ATN−103の高濃度液体−他の製剤の安定性(他の安定化および不安定化賦形剤の特定)
TNF結合ナノボディ液体製剤の可能な賦形剤をスクリーニングするために、他の高濃度のTNF結合ナノボディ液体製剤の安定性を検査した。さらなる安定性を提供し、製剤を等張(ヒト対象への注射に適切)にするために、様々な賦形剤を用いた補足研究を行った。TNF結合ナノボディの濃度は88mg/mL〜100mg/mLの範囲であった。
【0240】
検査した製剤は以下の通りである:
1.10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、100mMのアルギニン(塩基)、pH5.8
2.10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、55mMのNaCl、pH6.1
3.10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、55mMのアルギニンHCl、pH6.1
4.10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、100mMのグリシン、pH6.0
5.10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、100mMのメチオニン、pH6.0
6.10mMのヒスチジン、8%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、pH6.0
対照:10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、pH6.0
【0241】
初期溶液特性を、pH、重量モル浸透圧濃度、濃度、濁度、および粘度について分析した。すべての製剤が等張溶液をもたらし、A455の測定によって許容される透明度および低い粘度(2.4cP〜3.1cP)が示され、充填済みシリンジおよび自己注射の実現可能性が示された。
【0242】
【表2】

【0243】
高濃度液体の安定性は、SE−HPLCによるHMWのパーセンテージおよびLMWのパーセンテージによって評価した。これらの材料を、5℃、25℃および40℃で3カ月の間、安定にした。40℃で2週間のデータを図15に示す。
【0244】
分解生成物の一部の注目すべき変化が、液体のストレス条件である40℃で観察された。手短な加速した安定性(40℃で2週間)により、製剤4、5および6が、対照(10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、pH6.0)と比較して、比較可能または改善された安定性をもたらすことが示された。製剤1、2および3は安定性に負の影響を与えると考えられる。
【0245】
データは、グリシン、メチオニン、および増加したスクロースが高濃度TNF結合ナノボディ液体製剤に対して安定化させることを示す。データは、アルギニン塩基、アルギニン塩酸塩および塩化ナトリウムが、一部の条件下で高濃度TNF結合ナノボディ液体製剤に対して不安定化させ得ることを示す。
【0246】
(実施例6)
高濃度液体製剤TNF結合ナノボディ、短期間(2週間の期間)、ヒスチジンおよびトリス緩衝液の安定性
液体としてのTNF結合ナノボディの安定性を以下の図16〜19に例示する。2つの製剤、すなわち、20mMのヒスチジン、5%のスクロース、pH6.0中の118mg/mLのATN−103、および20mMのトリス、5%のスクロース、pH7.2中の117mg/mLのATN−103を検査した。製剤の安定性を、SE−HPLCによるHMWのパーセンテージおよびLMWのパーセンテージ、ならびにCEX−HPLCによる酸性のパーセンテージおよび塩基性種のパーセンテージによって評価した。データは、分解生成物の限定的な変化を4℃での貯蔵時間の関数として示す。分解生成物の一部の注目すべき変化が、液体のストレス条件である40℃で観察された。データは、ヒスチジンおよびトリス緩衝液中のTNF結合ナノボディの安定性がこれらの製剤化条件下で本質的に同様であることを示し、ヒスチジンがわずかにより有利な性能を有する(わずかに少ないLMW)。後に、製剤化前の活性により上昇したpH(7以上)がより高度のLMW形成をもたらすことが決定され、このことが以下で観察される利点を説明している。
【0247】
(実施例7)
TNF結合ナノボディの高濃度液体製剤の安定性:界面ストレス(凍結/解凍)の評価
図20〜23は、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、pH6.0中の約80mg/mLの液体TNF結合ナノボディ製剤の安定性を実証している。評価は−80℃および37℃の複数の凍結解凍サイクル後のサイズ排除−HPLC、濁度、および濃度の評価に基づく。
【0248】
データは、−80℃および37℃の複数の凍結解凍サイクルの関数としての、安定性の限定的な変化を示す。
【0249】
(実施例8)
TNF結合ナノボディの高濃度液体製剤の安定性:製造プロセスにおいて潜在的に遭遇する短期間の熱ストレスの評価
図24は、液体TNF結合ナノボディが原薬および薬物製品の製造プロセス中に潜在的に遭遇し得る短期間の熱ストレスに対して頑健であることを実証する。高濃度液体を、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、pH6.0中、約80mg/mLおよび50mg/mLで研究した。評価は、40℃で8時間、25℃で7日間、および5℃で29日間曝露させた後の、サイズ排除HPLCによるHMWのパーセンテージおよびLMWのパーセンテージに基づく。データは、凝集体の限定的な変化を5℃および25℃での貯蔵時間の関数として示す。凝集体の一部の変化が、液体のストレス条件である40℃で観察された。
【0250】
TNF結合ナノボディの高濃度液体の、SE−HPLCによるLMW種のパーセンテージは、示した温度および期間で検出限界未満(すなわち0.0%)であった。
【0251】
(実施例9)
ATN−103の低濃度液体製剤の安定性:最適pHおよび製剤化の評価
図25〜28は、pH5.5、6.0、6.5、および7.0で緩衝した、低濃度(約1mg/mL)の液体TNF結合ナノボディ製剤の安定性を実証する。低濃度液体TNF結合ナノボディの安定性を、40℃の温度への曝露などのストレス(図25および26)、振盪(図28)、ならびに凍結/解凍に応答した、製剤化およびpHの関数として検査した。3つの以下の製剤、すなわち、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のTween−80、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のTween−80、150mMのアルギニンHCl、および10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のTween−80、75mMの塩化ナトリウムのそれぞれについて、4つのpHを評価した。このデータ組では、Tween−80をポリソルベート80の別名として使用している。研究試料はSE−HPLCおよびUVを用いて評価した(濃度および濁度−A455によって測定)。
【0252】
図の符号:
HST:10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のTween−80
HSTA:10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のTween−80、150mMのアルギニンHCl
HSTS:10mMのヒスチジン、5%のスクロース、0.01%のTween−80、75mMの塩化ナトリウム
【0253】
結果により、5.5〜7.0のpH範囲が製剤に適切であることが示される。データは、一部の条件下では、pH7.0がある程度の有害な効果(増加した低分子量種)を示し得ることを示す。データは、アルギニンHClまたは塩化ナトリウムを原薬製剤に加えることで顕著な利益は存在せず、一部の場合では不安定化が存在し得ることを示す。
【0254】
図27は、4℃で貯蔵した後のTNF結合ナノボディのSE−HPLCによるHMW種のパーセンテージを示し、4週間後に本質的な変化がないことが観察された。低濃度のTNF結合ナノボディの、SE−HPLCによるLMW種のパーセンテージは、4℃で試験したすべての溶液条件において検出限界未満(すなわち0.0%)であった。複数の凍結解凍サイクルの結果として、SE−HPLCによるHMWもしくはLMW種、またはUV A280もしくはA455では顕著な変化は観察されなかった。
【0255】
(実施例10)
低濃度TNF結合ナノボディ液体:pHおよび製剤化の関数としての振盪の効果の評価
また、TNF結合ナノボディがこのpH範囲にわたって300rpmで4時間(15℃)の振盪に感受性があることを示すデータも提示する(図28)。塩化ナトリウムおよびアルギニンを含有する製剤が振盪に対して特に感受性がある。ヒスチジン、スクロース、tween−80の製剤が、それぞれのpH群内で最も少ない高分子量分解を示した。pH6.0および7.0のヒスチジン、スクロース、tween−80の製剤が最も少ないHMW分解を示した。
【0256】
振盪後の低濃度TNF結合ナノボディのUV吸光度を、280nm(濃度を監視するため)および455nm(濁度を監視するため)で監視した。振盪の結果として顕著な変化は観察されなかった。
【0257】
SE−HPLCならびに280nm(濃度を監視するため)および455nm(濁度を監視するため)でのUV分析によって、低濃度TNF結合ナノボディ溶液を複数の凍結解凍サイクル後に検査した。複数の凍結解凍サイクルの結果としてSE−HPLCまたはUV A280もしくはA455の顕著な変化は観察されなかった。
【0258】
(実施例11)
高濃度液体製剤のTNF結合ナノボディの安定性、短期間(2週間の期間)、等張性調整剤の検査
液体としてのTNF結合ナノボディの安定性を以下に例示する。
【0259】
5個の製剤を図31および32に示すように検査し、本明細書中でHST、HSGT、HSGMT、HSorbおよび対照と称する。検査した製剤のそれぞれを以下に記載する。
【0260】
【表3】

【0261】
製剤は、液体として4℃および40℃(ストレス条件)で2週間、ゴム製プランジャーを備えたポリプロピレン製チューブおよび環状オレフィンコポリマー製充填済みシリンジ中で貯蔵した。
【0262】
製剤の安定性は、図31および32に示すようにSE−HPLCによるHMWのパーセンテージおよびLMWのパーセンテージによって評価した。データは、分解生成物の限定的な変化を4℃での貯蔵時間の関数として示す。図32に示す試料では、開始時点または4℃で2週間後では、LMWは検出されなかった。LMWは40℃(ストレス)試料でのみ検出された。データは、5個すべての製剤が、分解生成物の比較可能な変化をストレス条件40℃での貯蔵時間の関数として示していること示す。したがって、データは、すべての製剤が液体剤形に適切であることを示す。
【0263】
(実施例12)
低濃度および高濃度の液体製剤でのTNF結合ナノボディの安定性、標的製剤の確認、ならびに一次包装容器の検査
液体としてのTNF結合ナノボディの安定性を以下に例示する。
【0264】
3個の製剤を検査した:
(a)10mg/mLのTNF結合ナノボディ、20mMのヒスチジン、7.5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、
(b)50mg/mLのTNF結合ナノボディ、20mMのヒスチジン、7.5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、
(c)100mg/mLのTNF結合ナノボディ、20mMのヒスチジン、7.5%のスクロース、0.01%のポリソルベート80。
【0265】
製剤は以下の一次包装容器中で調製した:
(a)1つの販売業者からの事前充填可能なI型医薬グレードのガラス製シリンジおよびWest 4432のシリコン処理した灰色のゴム製プランジャー
(b)第2の販売業者からの事前充填可能なガラス製のI型医薬グレードのシリンジおよびWest 4432のシリコン処理した灰色のゴム製プランジャー
(c)事前充填可能な環状オレフィンコポリマーおよびWest 4432のシリコン処理した灰色のゴム製プランジャー。
【0266】
製剤をt=0で分析し、満足できるものであることが判明した。製剤は4℃、25℃および40℃で3カ月貯蔵したものであった。
【0267】
均等物
本明細書中で言及したすべての参考文献は、それぞれの個々の出版物または特許もしくは特許出願が、その全体がすべての目的ために参照により組み込まれていると明確にかつ個別に示されている場合と同じ程度に、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書中に組み込まれている。
【0268】
本発明は、本明細書中に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際、本明細書中に記載のものに加えて、本発明の様々な改変が、前述の説明および添付の図から当業者に明らかであろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲内にあることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)約10mg/mL〜約250mg/mLの濃度のTNF結合ナノボディ分子、
(b)約5%〜約10%の濃度の、スクロース、ソルビトール、またはトレハロースから選択される凍結乾燥保護剤、
(c)約0.01%〜0.6%の濃度の、ポリソルベート80またはポロキサマー188から選択される界面活性剤、および
(d)製剤のpHが約5.0〜7.5となるような、約10〜約20mMの濃度のヒスチジン緩衝液または約20mMの濃度のトリス緩衝液から選択される緩衝液、
を含み、製剤中のTNF結合ナノボディ分子が、4℃で少なくとも3カ月間貯蔵した後にその結合活性の少なくとも約70%を保持している製剤。
【請求項2】
(i)4℃で少なくとも12カ月間貯蔵した後に5%未満の高分子量(HMW)種、
(ii)4℃で少なくとも12カ月間貯蔵した後に5%未満の低分子量(LMW)種、
(iii)4℃で少なくとも12カ月間貯蔵した後に10%未満の酸性種、および/または
(iv)4℃で少なくとも12カ月間貯蔵した後に5%未満の塩基性種
を有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
液体形態、凍結乾燥形態、再構成した凍結乾燥形態、または凍結した大量貯蔵形態である、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
(a)約10mg/mL〜約130mg/mLの濃度のTNF結合ナノボディ分子、
(b)約5%〜約10%の濃度のスクロース、
(c)約0.01%〜0.02%の濃度のポリソルベート80、および
(d)製剤のpHが約5.0〜7.5となるような、約10〜約20mMの濃度のヒスチジン緩衝液からなる群から選択される緩衝液、
を含む液体製剤または凍結乾燥製剤である、請求項1から3のいずれかに記載の製剤。
【請求項5】
(a)約80mg/mL〜約280mg/mLの濃度のTNF結合ナノボディ分子、
(b)約5%〜約10%の濃度のスクロース、
(c)約0.01%〜0.02%の濃度のポリソルベート80、および
(d)製剤のpHが約5.0〜7.5となるような、約10〜約20mMの濃度のヒスチジン緩衝液からなる群から選択される緩衝液、
を含む大量貯蔵製剤であり、少なくとも100リットルの製剤が凍結条件で貯蔵される、請求項1から3のいずれかに記載の製剤。
【請求項6】
製剤のpHが、5、5.5、5.8〜6.1、6.0、6.1、6.5および7からなる群から選択される、請求項1から5のいずれかに記載の製剤。
【請求項7】
スクロース、ソルビトールまたはトレハロースの濃度が、約5%、約7.5%、または約10%である、請求項1から6のいずれかに記載の製剤。
【請求項8】
TNF結合ナノボディ分子が、1つまたは複数の単一ドメイン分子で構成される単鎖ポリペプチドである、請求項1から7のいずれかに記載の製剤。
【請求項9】
TNF結合ナノボディ分子が一価または多価である、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
TNF結合ナノボディ分子が単一特異性または多特異性である、請求項8に記載の製剤。
【請求項11】
1つまたは複数の単一ドメイン分子が、CDR移植した、ヒト化した、ラクダ化した、脱免疫化した、またはファージディスプレイによって選択したものである、請求項8に記載の製剤。
【請求項12】
TNF結合ナノボディ分子が、腫瘍壊死因子α(TNFα)と結合する1つまたは複数の単一ドメイン分子と、ヒト血清アルブミン(HSA)タンパク質と結合する1つの単一ドメイン分子とを含む単鎖融合ポリペプチドである、請求項8に記載の製剤。
【請求項13】
TNF結合ナノボディ分子が、図30に示すアミノ酸配列(配列番号1)、またはそれに少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1から7のいずれかに記載の製剤。
【請求項14】
TNF結合ナノボディ分子の単一ドメイン分子のうちの少なくとも1つが、DYWMY(配列番号2)(CDR1)、EINTNGLITKYPDSVKG(配列番号3)(CDR2)およびSPSGFN(配列番号4)(CDR3)のアミノ配列を有する、または前記CDRのうちの1つと1個の保存的アミノ酸置換によって異なるCDRを有する3個のCDRを含む、請求項1から7のいずれかに記載の製剤。
【請求項15】
TNF結合ナノボディ分子の単一ドメイン分子のうちの少なくとも1つが、図30(配列番号1)のアミノ酸約1〜115のアミノ酸配列を有する可変領域、または前記可変領域と10個までのアミノ酸が異なる可変領域を含む、請求項1から7のいずれかに記載の製剤。
【請求項16】
TNF結合ナノボディ分子が、HSAと結合する少なくとも1つの単一ドメイン分子をさらに含み、SFGMS(配列番号5)(CDR1)、SISGSGSDTLYADSVKG(配列番号6)(CDR2)およびGGSLSR(配列番号7)(CDR3)のアミノ配列を有する、または前記CDRのうちの1つと1個の保存的アミノ酸置換によって異なるCDRを有する3個のCDRを含む、請求項1から7のいずれかに記載の製剤。
【請求項17】
TNF結合ナノボディ分子の単一ドメイン分子のうちの少なくとも1つが、HSAと結合し、図30(配列番号1)のアミノ酸約125〜239のアミノ酸配列を有する可変領域、または前記可変領域と10個までのアミノ酸が異なる可変領域を含む、請求項1から7のいずれかに記載の製剤。
【請求項18】
TNF結合ナノボディを細胞培養物中で発現させることと、
TNF結合ナノボディを、クロマトグラフィー精製ステップ、または限外濾過/ダイアフィルトレーションステップのうちの少なくとも1つに通すことによって、TNF結合ナノボディを精製することと、
約5%〜約10%の濃度のスクロース、約0.01%、0.02%の濃度のポリソルベート80、および、製剤のpHが約5〜7.5となるような、約10〜約20mMの濃度のヒスチジン緩衝液または約20mMの濃度のトリス緩衝液を含有する製剤中で、TNF結合ナノボディの濃度を約10〜250mg/mLに調整することと
を含む、TNF結合ナノボディの製剤を調製する方法またはプロセス。
【請求項19】
TNF結合ナノボディ分子と凍結乾燥保護剤、界面活性剤、および緩衝液との混合物を凍結乾燥することによって、凍結乾燥した混合物を形成することと、
凍結乾燥した混合物を希釈剤中で再構成することによって、(a)約10mg/mL〜約130mg/mLの濃度のTNF結合ナノボディ分子、(b)約5%〜約10%の濃度の、スクロースまたはトレハロースからなる群から選択される凍結乾燥保護剤、(c)約0.01%〜0.02%の濃度の、界面活性剤としてのポリソルベート80、および(d)製剤のpHが約5.0〜7.5となるような、約10〜約20mMの濃度のヒスチジン緩衝液または約20mMの濃度のトリス緩衝液を含む、再構成した製剤を調製することと
を含む、TNF結合ナノボディ分子を含有する再構成した製剤を調製する方法。
【請求項20】
請求項1から17のいずれかに記載の製剤と使用説明書とを含有する容器を含む、キットまたは製品。
【請求項21】
製剤がバイアルまたは注射用シリンジ中に存在する、請求項20に記載のキットまたは製品。
【請求項22】
製剤が充填済み注射用シリンジ中に存在する、請求項20に記載のキットまたは製品。
【請求項23】
シリンジまたはバイアルが、ガラス、プラスチック、または環状オレフィンポリマーもしくはコポリマーから選択されるポリマー材料でできている、請求項21に記載のキットまたは製品。
【請求項24】
対象に、請求項1から17のいずれかに記載の製剤を含む医薬組成物を投与することによって、TNF関連障害に関連する1つまたは複数の症状を低下させることを含む、TNF関連障害を治療または予防する方法。
【請求項25】
TNF関連障害が炎症性または自己免疫性障害である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
TNF関連障害が、関節リウマチ(RA)、関節炎状態(たとえば、乾癬性関節炎、多関節若年性特発性関節炎(JIA)、強直性脊椎炎(AS)、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、または多発性硬化症から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
請求項1から17のいずれかに記載の製剤の試料を提供することと、
色、透明度、粘度、または1つもしくは複数のHMW、LMW、酸性もしくは塩基性種の量から選択される製剤のパラメータを評価することと、
パラメータが事前に選択された基準を満たすかどうかを判定することによって、プロセスを分析することと
を含む、製造プロセスを分析する方法。
【請求項28】
バッチ間の変動を監視もしくは制御する方法または試料を参照標準と比較する方法において2つ以上の試料製剤を比較することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記比較に基づいて、製剤を分類、選択、受入もしくは廃棄、出荷もしくは保留、薬物製品へと加工、輸送、異なる場所に移動、製剤化、ラベル貼付、包装することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
製剤の評価したパラメータに関するデータが含まれ、製剤のバッチの識別情報が任意選択により含まれる記録を提供することと、前記記録を決定者に提出することと、任意選択で、前記決定者から通信を受信することと、任意選択で、決定者からの通信に基づいて製剤のバッチを出荷または市場取引するかどうかを判定することとをさらに含む、請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公表番号】特表2012−507553(P2012−507553A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534779(P2011−534779)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/062611
【国際公開番号】WO2010/077422
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】