説明

単一ナノクレセントSERSプローブを使用したプロテアーゼおよびプロテアーゼ活性の検出

本発明は、少なくともナノモル感度を有する、単一ペプチドコンジュゲートナノクレセント表面増強ラマン散乱(SERS)プローブを使用する、プロテアーゼのin vitro検出に関する。このプローブは、非常に小さな体積および低濃度でのタンパク質分解活性の検出を可能にする。特定の実施形態では、プローブは活性プロテアーゼを検出するためのインジケーターを含み、このインジケーターはペプチドと結合したナノクレセントを含み、前記ペプチドはプロテアーゼ認識部位およびペプチドと結合したラマンタグを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、あらゆる目的でその全容が参照により本明細書に組み込まれている、2006年5月3日に出願されたUSSN60/797,525の特典および優先権を主張するものである。
【0002】
連邦政府支援の研究および開発の下でなされた本発明に対する権利に関する陳述
本研究はDARPA、NIH Grant R1 CA95393、UCSF Prostate Cancer SPORE award(NIH Grant P50 CA89520)、およびPO1 CA72006によって支援された。本研究は、契約番号DE-AC02-05CH11231でUniversity of California/Lawrence Berkeley National Laboratoryにおいて、米国エネルギー省の後援によって一部分は実施された。米国政府は本発明において特定の権利を有するものである。
【0003】
本発明は、プロテアーゼを検出するためにナノプローブを使用する表面増強ラマン散乱(SERS)の分野に関する。本発明は、具体的には、前立腺癌における診断用途の前立腺特異抗原(PSA)およびタンパク質分解活性を有するPSAの検出に関する。
【背景技術】
【0004】
前立腺癌は、欧州および北アメリカでは男性の最も一般的な癌である(Crawford(2003)Urology62: 3〜12; Gronberg et al.92003)Lancet361: 859〜864; Pienta et al.(2006)Urology48: 676〜683)。前立腺癌用の臨床診断ツールの1つは、前立腺内腔上皮細胞から通常分泌される大きなカリクレイン(hK)プロテアーゼファミリーのメンバーである、前立腺特異抗原(PSAまたはhK3)の血漿中タンパク質濃度の測定である(総説に関しては、例えばYousef and Diamandis(2001)Endocr.Rev.、22: 184〜204; Denmeade and Isaacs(2002)Nat.Rev.Cancer2: 389〜396; Denmeade and Isaacs(2004)BJU Int93 Suppl1: 10〜15を参照)。他のカリクレインファミリーのメンバーとは異なり、PSAはキモトリプシン様セリンプロテアーゼである(Robert et al.(1997)Biochemistry36: 3811〜3819)。前立腺癌において、PSAはタンパク質分解活性による助力によって、細胞外マトリクスに対する組織再編成に関与し、腫瘍の侵襲または進行に対する重要な制御機構に関与する。他のプロテアーゼも癌において同様の役割を果たす。
【0005】
1980年代以来の血漿中PSAのスクリーニングの導入は、前立腺癌の診断、段階付け、および管理を大幅に改善してきているが(Denmeade and Isaacs(2002)Nat.Rev.Cancer2: 389〜396)、しかしながら、血漿中PSA濃度の測定は前立腺癌患者と良性前立腺肥大を有する患者を区別せず、高い偽陽性率、より広範囲のバイオプシー、およびさらに不要な外科手術手順に関する必要性をもたらす(Denmeade and Isaacs(2004)BJU Int93 Suppl1: 10〜15; Robert et al.(1997)Biochemistry36: 3811〜3819)。前立腺癌を早期検出するためのPSAの臨床的価値を高めるための努力は、PSAの様々な分子イソ型の特徴付けを含んでいる(Mikolajczyk et al.(2004)Clin.Chem.、50: 1017〜1025; Mikolajczyk and Rittenhouse(2003)Keio J.Med.52: 86〜91; Mikolajczyk et al.(2004)Clin.Biochem.37: 519〜528)。これらの様々なイソ型の中で、タンパク質分解活性を有するPSAの亜集団は、血清中PSA濃度より有用な腫瘍マーカーおよび悪性予測因子として容認されている(Wu et al.(2004)Prostate58: 345〜353; Wu et al.(2004)Clin.Chem.、50: 125〜129)。伝統的な免疫染色法によるPSAの存在の単純な検出はPSAのタンパク質分解活性を明らかにすることができない;したがって、タンパク質分解活性を有するイソ型を区別するための新たな方法を開発することが非常に重要である。精液は多量のタンパク質分解活性を有するPSAを有することが実証されており、プロテアーゼ活性アッセイ用のPSAの生物学的供給源である(Brillard-Bourdet et al.(2002)Eur.J.Biochem.、269: 390〜395; Rehault et al.(2002)Biochim.Biophys.Acta1596: 55〜62)。精液中のタンパク質分解活性を有するPSAの濃度は10〜150μMであり(Rehault et al.(2002)Biochim.Biophys.Acta1596: 55〜62)、一方血漿中のその濃度は、健康な個体では0.lnM未満よりはるかに低く、前立腺疾患を有する患者ではlnMより高い(Rittenhouse et al.(1998)Crit.Rev.Clin.Lab.Sci.、35: 275〜368)。しかしながら、精液または細針吸引由来のバイオプシーサンプル中のPSAのタンパク質分解活性を測定するアッセイは、タンパク質分解活性の急速な衰退、および年老いた患者またはバイオプシーサンプルから入手可能な精液の限られた量が原因で、依然として広くは容認されていない。
【0006】
現在の検出法の感度は、PSAタンパク質に関してナノモル未満の濃度に達するが(Acevedo et al.(2002)Clin.Chum.Acta317: 55〜63; Charrier et al.(1999)Electrophoresis20: 1075〜1081; Bjartell et al.Prostate Cancer PD2: 140〜147)(大部分が、PSAへの抗体の結合親和性によって測定される)、比較的大きなサンプル体積(ミリリットル)が必要とされる。しかしながら、酵素アッセイは、同じような感度の向上を享受していない。
【特許文献1】USSN60/797,525
【特許文献2】米国特許第5,306,403号
【特許文献3】米国特許第6,002,471号
【特許文献4】米国特許第6,174,677号
【非特許文献1】Crawford(2003)Urology62: 3〜12
【非特許文献2】Gronberg et al.92003)Lancet361: 859〜864
【非特許文献3】Pienta et al.(2006)Urology48: 676〜683
【非特許文献4】Yousef and Diamandis(2001)Endocr.Rev.、22: 184〜204
【非特許文献5】Denmeade and Isaacs(2002)Nat.Rev.Cancer2: 389〜396
【非特許文献6】Denmeade and Isaacs(2004)BJU Int93 Suppl1: 10〜15
【非特許文献7】Robert et al.(1997)Biochemistry36: 3811〜3819
【非特許文献8】Mikolajczyk et al.(2004)Clin.Chem.、50: 1017〜1025
【非特許文献9】Mikolajczyk and Rittenhouse(2003)Keio J.Med.52: 86〜91
【非特許文献10】Mikolajczyk et al.(2004)Clin.Biochem.37: 519〜528
【非特許文献11】Wu et al.(2004)Prostate58: 345〜353
【非特許文献12】Wu et al.(2004)Clin.Chem.、50: 125〜129
【非特許文献13】Brillard-Bourdet et al.(2002)Eur.J.Biochem.、269: 390〜395
【非特許文献14】Rehault et al.(2002)Biochim.Biophys.Acta1596: 55〜62
【非特許文献15】Rittenhouse et al.(1998)Crit.Rev.Clin.Lab.Sci.、35: 275〜368
【非特許文献16】Acevedo et al.(2002)Clin.Chum.Acta317: 55〜63
【非特許文献17】Charrier et al.(1999)Electrophoresis20: 1075〜1081
【非特許文献18】Bjartell et al.Prostate Cancer PD2: 140〜147
【非特許文献19】Liu et at.(2006)Nat Mater5: 27〜32
【非特許文献20】Liu et al.(2005)Adv.Mater.17: 2683〜2688
【非特許文献21】Aizpurua et al.(2003)Phys.Rev.Lett.90: 057401
【非特許文献22】Lu et al.(2005)Nano Lett5、119〜124
【非特許文献23】Paetzel et al.(1997)Trends Biochem.Sci.22: 28〜31
【非特許文献24】Spinelli et al.(1991)Biochemie73: 1391〜1396
【非特許文献25】Altschuh et al.(1994)Prot.Eng.7: 769〜75、1994
【非特許文献26】Klimpel et al.(1994)Mol.Microbiol.13: 1093〜1100
【非特許文献27】Schecter and Berger、(1967)Biochem.Biophys.Res.Commun.27: 157〜62
【非特許文献28】Earnshaw et al.(1999)Annu.Rev.Biochem.、68: 383〜424
【非特許文献29】Denmeade、et al.(1997)Cancer Res57: 4924〜4930
【非特許文献30】Denmeade et al.(2003)J.Natl.Cancer Inst.95: 990〜1000
【非特許文献31】Lerner et al.(1981)Proc.Nat.Acad.Sci.(USA)、78: 3403〜3407
【非特許文献32】Kitagawa et al.(1976)J.Biochem.、79: 233〜236
【非特許文献33】Birch and Lennox(1995)Chapter4 in Monoclonal Antibodies: Principles and Applications、Wiley-Liss、N.Y.
【非特許文献34】Malm et al.(2000)Prostate45: 132〜139
【非特許文献35】Raman(1928)Nature121: 619〜619
【非特許文献36】Lu et al.(2005)Nano Lett.5: 5〜9
【非特許文献37】Haes et al.(2005)J.Am.Chem.Soc.127: 2264〜2271
【非特許文献38】Jackson and Halas(2004)Proc.Natl.Acad.Sci、USA、101: 17930〜17935
【非特許文献39】Nie and Emory91997)Science275: 1102〜1106
【非特許文献40】Liu and Lee(2005)Appl.Phys.Lett.87: 074101
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
特定の実施形態では、本発明は、少なくともナノモル感度を有する、単一ペプチドコンジュゲートナノクレセント表面増強ラマン散乱 (SERS)インジケーター(プローブ) (single peptide-conjugate nanocrescent surface enhanced Raman scattering (SERS) indicator (probe))を使用する、プロテアーゼのin vitro検出を実証する。このインジケーターは、非常に小さな体積でのタンパク質分解活性の検出を可能にする。特定の実施形態では、検出体積は約80フェムトリットル未満、好ましくは約50フェムトリットル未満、より好ましくは約40または30フェムトリットル未満、およびさらにより好ましくは約20または15フェムトリットル未満である。特定の実施形態では、高度に収束した励起源を使用することによって、わずか約10フェムトリットルである体積を検出することができる。様々な実施形態において、ナノモルサンプルの実際のプロテアーゼ分子の数は約40分子未満、好ましくは約40分子未満、より好ましくは約30、20、または10分子未満であり、および特定の実施形態では、単一分子レベルに近い。他の癌のバイオマーカー検出アッセイと比較すると、本発明のバイオコンジュゲート化ナノクレセントは、フェムトリットル体積中のナノモル濃度のタンパク質分解活性プロテアーゼ分子の検出を可能にし、これは特に1つの癌細胞レベルでの癌のスクリーニングに重要である。
【0008】
小さな体積を用いる主な利点および適用例の1つは、単一細胞レベルでの癌細胞の前立腺特異抗原(PSA)活性などのプロテアーゼを検出する際にそれが有用であることである。小さな体積による測定に要求されることおよび感度レベルによって、転移の徴候に関する捕捉した循環前立腺癌細胞におけるPSA活性の検出が可能となり、これは従来の技法では実現可能ではない。精液中では、PSA濃度は10〜150μMであり、約3分の2のPSAは酵素活性がある。ナノクレセントPSAプローブを用いて得られる感度レベル(ナノモル範囲)は精液ベースのアッセイに充分であり、したがって本明細書に記載するナノクレセントSERSプラットホームは臨床用途に有用である。
【0009】
特定の実施形態では、基材はナノクレセント表面増強ラマン散乱(SERS)プローブである。この表面増強ラマン散乱(SERS)プローブは、ナノクレセントのコアおよび殻と結合したペプチドからなり、このプローブは、ラマン活性タグと結合した、プロテアーゼによって特異的に切断することができる配列(例えば、プロテアーゼ認識部位)を特徴とする。したがって、このペプチドコンジュゲート化ナノクレセントは、生物サンプル中の前立腺特異抗原(PSA)などの様々な癌のバイオマーカーだけには限られないが、これらを含めた1つまたは複数のプロテアーゼの存在、濃度およびタンパク質分解活性に関する情報を提供するための特異的なスクリーニングツールとして使用することができる。
【0010】
一実施形態では、ナノクレセントはコアおよび殻を含み、ナノクレセントの表面と結合または連結したペプチドを有する。ペプチドは、検出される対応するプロテアーゼによって特異的に認識および切断される基質を含む。
【0011】
特定の実施形態では、プロテアーゼに特異的な他のペプチド基質をナノプローブに使用することができる。優れたカイネティクス特性を有する基質ペプチドを使用して検出プロセスを促進することができる、幾つかの状況が存在し得る。一実施形態では、PSAに対する優れた特異性を有する他のペプチドを使用して、優れた精度でPSAを検出することもできる。
【0012】
様々な実施形態において、リアルタイムの反応モニタリングは、タンパク質の存在を単に測定するのではなく、プロテアーゼ活性に関する情報も提供する。異なるラマンタグ分子を使用することができ、これらを実施例中で良好な結果を伴って使用し、それによって2つ以上の型の癌関連(または他の)プロテアーゼの検出は、ペプチドコンジュゲート化ナノクレセントを多重化することによって実施することができることを実証する。特定の実施形態では、コアは磁性物質を含み、個々のナノ粒子を空間的に処理することができる。
【0013】
特定の実施形態では、互いに直交するか、あるいは特異性がわずかに重複する異なるペプチド基質を使用して、対応するプロテアーゼを検出することができる。ペプチドライブラリーをナノクレセントプローブと結合させ、ランダムアレイまたは規則正しいマイクロアレイ形式のいずれかで空間的に分離することが可能である。ペプチド-ナノクレセントハイブリッドプローブの多重化アレイを使用して、多数のプロテアーゼを同時に検出することができる。
【0014】
ナノクレセントをレーザーまたは磁場によって操作して、高精度で空間的に処理することもできるので(Liu et at.(2006)Nat Mater5: 27〜32)、したがってナノクレセントは、高密度アレイとして多重化することができる(マイクロリットル体積未満で)。さらに、磁性またはレーザー操縦性は所望の位置でのバイオセンシングを可能にし(Liu et al.(2005)Adv.Mater.17: 2683〜2688)、細胞内でin situ測定値を得るのに有用である。
【0015】
特定の実施形態において、本発明は、活性プロテアーゼを検出するためのインジケーター(プローブ)を提供する。インジケーターは典型的にはペプチド(基質)と結合したナノクレセントを含み、ペプチドはプロテアーゼの認識部位を含む。特定の実施形態では、インジケーターはペプチドと結合したラマン標識をさらに含む。適切なラマン標識にはフルオロフォア、発色団、量子ドット、蛍光ミクロスフェア、ビオチンなどがあるが、これらだけには限られない。特定の実施形態では、ラマン標識はローダミン、フルオレセイン、または外来化学分子を含む。特定の実施形態では、ラマン標識はTRIT(テトラメチルローダミンイソチオール)、NBC(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール)、テキサスレッド色素、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレシルファストバイオレット(cresyl fast violet)、クレシルブルーバイオレット(cresyl blue violet)、ブリリアントクレシルブルー(brilliant cresyl blue)、パラ-アミノ安息香酸、エリスロシン、ビオチン、ジゴキシゲニン、5-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン、5-カルボキシ-2',4',5',7'-テトラクロロフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、5-カルボキシローダミン、6-カルボキシローダミン、6-カルボキシテトラメチルアミノフタロシアニン、6-カルボキシ-X-ローダミン、アゾメチン、シアニン、キサンチン、スクシニルフルオレセイン、アミノアクリジン、およびシアン化物(CN)、チオール(SH)、塩素(Cl)、臭素(Br)、メチル、リン(P)、イオウ(S)、SN、Al、Cd、Eu、およびTeからなる群から選択される部分を含む。ラマン標識はペプチドと直接、あるいはリンカーによって結合させることが可能である。同様に、ペプチドはナノクレセントと直接、あるいはリンカーによって結合することが可能である。特定の実施形態では、ナノクレセントはコアを有さない殻を含む。特定の実施形態では、ナノクレセントはコアおよび殻を含む。様々な実施形態において、コアは一定のラマンスペクトルをもたらす物質を含む(例えば、プラスチック(例えばポリスチレン)、シリカまたは他のIII族、IV族、またはV族の物質、デキストラン、磁性物質など)。特定の実施形態では、ナノクレセントはGa、Au、Ag、Cu、Al、Ta、Ti、Ru、Ir、Pt、Pd、Os、Mn、Hf、Zr、V、Nb、La、Y、Gd、Sr、Ba、Cs、Cr、Co、Ni、Zn、Ga、In、Cd、Rh、Re、W、Moからなる群から選択される金属、およびその酸化物、および/または合金、および/または混合物、および/または窒化物、および/または焼結マトリクスを含む。特定の実施形態では、ナノクレセントは約20〜約800nmの範囲の外半径を有する。特定の実施形態では、ナノクレセントは約10nm〜約500nmの内半径を有する。特定の実施形態では、ナノクレセントは内半径r、および外半径R、ならびに内半径rと外半径Rによって定義される円の中心の間の中心間距離によって特徴付けられ、この場合rは約10nm〜約500nmの範囲であり、Rは約20nm〜約800nmの範囲であり、dは約5nm〜約300nmの範囲である。特定の実施形態では、ナノクレセントは内半径r、および外半径R、および内半径rと外半径Rによって定義される円の中心の間の中心間距離によって特徴付けられ、この場合rは約25nm〜約500nmの範囲であり、Rは約20nm〜約800nmの範囲であり、dは約5nm〜約200nmの範囲である。様々な実施形態において、ペプチドはセリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、およびグルタミン酸プロテアーゼからなる群から選択されるプロテアーゼの認識部位を含む。特定の実施形態では、ペプチドはアポトーシス経路におけるプロテアーゼ(例えばカスパーゼ)の認識部位を含む。特定の実施形態では、ペプチドはカスパーゼ-8、カスパーゼ-9、カスパーゼ-3、カスパーゼ-6、およびカスパーゼ-7からなる群から選択されるカスパーゼの認識部位を含む。特定の実施形態では、ペプチドはトロンビンの認識部位を含む。特定の実施形態では、ペプチドはセリンプロテアーゼの認識部位を含む。特定の実施形態では、ペプチドはPSA認識部位(例えばHSSKLQ(配列番号1))を含む。様々な実施形態において、ペプチドは2アミノ酸〜10、20、または30アミノ酸の長さの範囲である。特定の実施形態では、ペプチドはチオール基によってナノクレセントと結合している。特定の実施形態では、2つの異なる基質(例えばペプチド)がナノクレセントと結合している。特定の実施形態では、3つ以上の異なるペプチドがナノクレセントと結合している。特定の実施形態では、インジケーターはラマン活性基材の構成要素である。
【0016】
特定の実施形態において、本発明は活性ヌクレアーゼを検出するためのインジケーターを提供する。これらのインジケーターは、ペプチド(基質)が核酸(例えば、二本鎖または一本鎖核酸)に置換されていること以外、前に記載したプロテアーゼインジケーターとほぼ同じである。特定の実施形態において、核酸は1つまたは複数のヌクレアーゼ認識/切断部位(例えば、制限部位)を含む。
【0017】
特定の実施形態において、ナノクレセントと結合した基質(例えばペプチド、核酸、糖、炭水化物など)は、例えば、同系結合パートナー(例えば、受容体、核酸結合タンパク質、リガンドなど)を検出するための(制限部位ではなく)1つまたは複数の結合部位を含み得る。
【0018】
サンプル中の少なくとも1つのプロテアーゼの存在、量、または活性を検出または定量化する方法も提供する。この方法は、(例えば前述のように)プロテアーゼの認識部位を含むペプチドと結合したナノクレセントを含むインジケーターとサンプルを接触させる段階、および検出した表面ラマン散乱スペクトルのスペクトル特性の差異をモニターする段階であって、差異がサンプル中に存在するプロテアーゼの存在、量、または活性の指標である段階を含む。様々な実施形態において、サンプルは全血、血液分画、リンパ、脳脊髄液、口腔液、粘液、尿、糞便、気管支洗浄液、腹水、精液、骨髄穿刺液、胸水、尿、および腫瘍細胞または組織からなる群から選択される物質を含む。様々な実施形態において、インジケーターは、ペプチドと結合したラマン標識をさらに含む。適切なラマン標識にはフルオロフォア、発色団、量子ドット、蛍光ミクロスフェア、ビオチンなどがあるが、これらだけには限られない。特定の実施形態では、ラマン標識はローダミン、フルオレセイン、または外来化学分子を含む。特定の実施形態では、ラマン標識はTRIT(テトラメチルローダミンイソチオール)、NBC(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール)、テキサスレッド色素、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレシルファストバイオレット、クレシルブルーバイオレット、ブリリアントクレシルブルー、パラ-アミノ安息香酸、エリスロシン、ビオチン、ジゴキシゲニン、5-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン、5-カルボキシ-2',4',5',7'-テトラクロロフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、5-カルボキシローダミン、6-カルボキシローダミン、6-カルボキシテトラメチルアミノフタロシアニン、6-カルボキシ-X-ローダミン、アゾメチン、シアニン、キサンチン、スクシニルフルオレセイン、アミノアクリジン、およびシアン化物(CN)、チオール(SH)、塩素(Cl)、臭素(Br)、メチル、リン(P)、イオウ(S)、SN、Al、Cd、Eu、およびTeからなる群から選択される部分を含む。ラマン標識はペプチドと直接、あるいはリンカーによって結合させることが可能である。同様に、ペプチドはナノクレセントと直接、あるいはリンカーによって結合させることが可能である。特定の実施形
態では、ナノクレセントはコアを有さない殻を含む。特定の実施形態では、ナノクレセントはコアおよび殻を含む。様々な実施形態において、コアは一定のラマンスペクトルをもたらす物質を含む(例えば、プラスチック(例えばポリスチレン)、シリカまたは他のIII族、IV族、またはV族の物質、デキストラン、磁性物質など)。特定の実施形態では、ナノクレセントはGa、Au、Ag、Cu、Al、Ta、Ti、Ru、Ir、Pt、Pd、Os、Mn、Hf、Zr、V、Nb、La、Y、Gd、Sr、Ba、Cs、Cr、Co、Ni、Zn、Ga、In、Cd、Rh、Re、W、Moからなる群から選択される金属、およびその酸化物、および/または合金、および/または混合物、および/または窒化物、および/または焼結マトリクスを含む。特定の実施形態では、ナノクレセントは約20〜約800nmの範囲の外半径を有する。特定の実施形態では、ナノクレセントは約10nm〜約500nmの内半径を有する。特定の実施形態では、ナノクレセントは内半径r、および外半径R、および内半径rと外半径Rによって定義される円の中心の間の中心間距離によって特徴付けられ、この場合rは約10nm〜約500nmの範囲であり、Rは約20nm〜約800nmの範囲であり、かつdは約5nm〜約300nmの範囲である。特定の実施形態では、ナノクレセントは内半径r、および外半径R、および内半径rと外半径Rによって定義される円の中心の間の中心間距離によって特徴付けられ、この場合rは約25nm〜約500nmの範囲であり、Rは約20nm〜約800nmの範囲であり、かつdは約5nm〜約200nmの範囲である。様々な実施形態において、ペプチドはセリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、およびグルタミン酸プロテアーゼからなる群から選択されるプロテアーゼの認識部位を含む。特定の実施形態では、ペプチドはアポトーシス経路におけるプロテアーゼ(例えばカスパーゼ)の認識部位を含む。特定の実施形態では、ペプチドはカスパーゼ-8、カスパーゼ-9、カスパーゼ-3、カスパーゼ-6、およびカスパーゼ-7からなる群から選択されるカスパーゼの認識部位を含む。特定の実施形態では、ペプチドはトロンビンの認識部位を含む。特定の実施形態では、ペプチドはセリンプロテアーゼの認識部位を含む。特定の実施形態では、ペプチドはPSA認識部位(例えばHSSKLQ、配列番号1)を含む。様々な実施形態において、ペプチドは2アミノ酸〜10、20、または30アミノ酸の長さの範囲である。特定の実施形態では、ペプチドはチオール基によってナノクレセントと結合している。特定の実施形態では、2つの異なる基質(例えばペプチド)がナノクレセントと結合している。特定の実施形態では、3つ以上の異なるペプチドがナノクレセントと結合している。特定の実施形態では、インジケーターはラマン活性基材の構成要素である。
【0019】
2つ以上の活性プロテアーゼの存在または活性を検出するためのライブラリーも提供する。これらのライブラリーは、典型的には、例えば前記に記載のペプチドと結合したナノクレセントを含む複数のプロテアーゼインジケーターであって、ペプチドがプロテアーゼの認識部位を含み、異なるナノクレセントが異なるプロテアーゼを検出するように、異なるナノクレセントが異なるペプチドと結合しているプロテアーゼインジケーターを含む。様々な実施形態において、ライブラリーを、異なるプロテアーゼに特異的なプロテアーゼインジケーターが基材上の異なる位置に局在するように空間的に処理する。様々な実施形態において、ライブラリーを、異なるプロテアーゼに特異的なプロテアーゼインジケーターが異なるシグナルを生成するように光学的に処理する。特定の実施形態では、ライブラリーは少なくとも3個以上、好ましくは少なくとも10個以上、より好ましくは少なくとも20、40、80、または100個以上の異なるプロテアーゼインジケーターを含む。特定の実施形態では、ナノクレセントは磁性コアを含み、インジケーターの空間的分離は磁場によってもたらされる。特定の実施形態では、インジケーターは基材とイオン結合もしくは化学結合、および/または吸着している。
【0020】
活性プロテアーゼを検出するためのキットも提供する。キットは、典型的には、(例えば、本明細書に記載の)ペプチドと結合したナノクレセントを含む容器であって、ペプチドがプロテアーゼの認識部位を含む容器を含む。特定の実施形態では、キットはペプチドと結合したラマン標識をさらに含む。特定の実施形態では、キットは表面増強ラマン散乱(SERS)を使用して活性プロテアーゼの存在、濃度または活性を検出するためのインジケーターの使用を教示する教示書をさらに含む。
【0021】
特定の実施形態では、本発明はヌクレアーゼを検出するためのインジケーターを提供する。このインジケーターは、(例えば、本明細書に記載の)一本鎖または二本鎖オリゴヌクレオチドと結合したナノクレセントであって、オリゴヌクレオチドがヌクレアーゼの認識部位を含むナノクレセントを含む。特定の実施形態では、インジケーターはオリゴヌクレオチドと結合したラマン標識をさらに含む。
【0022】
検体の存在または量を検出する方法も提供する。この方法は、典型的には、検体を含むサンプルとインジケーターを接触させる段階であって、インジケーターが、基質との結合に関して検体と競合するラマン標識部分の存在下で検体と特異的または優先的に結合する基質と結合したナノクレセントを含む段階と、インジケーターのラマンスペクトルを検出する段階であって、基質からのラマン標識部分の解離によって生じるラマンスペクトルの変化がサンプル中の検体の存在または量の尺度をもたらす段階とを含む。特定の実施形態では、基質はペプチドまたは核酸である。
【0023】
特定の実施形態では、ナノクレセントと結合したペプチドは抗体または抗体断片ではない。
【0024】
(定義)
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は本明細書では交互に使用して、アミノ酸残基のポリマーを指す。これらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然のアミノ酸の人工的な化学的類似体であるアミノ酸ポリマー、および天然のアミノ酸ポリマーに適用する。
【0025】
用語「活性プロテアーゼ」は、そのプロテアーゼの活性を助長する条件下で基質とプロテアーゼが接触するときに、そのプロテアーゼの基質中のペプチド結合を切断(加水分解)することができる形であるプロテアーゼを指す。
【0026】
用語「ナノクレセント」は、その横断面プロファイルが鋭利な縁部を有する三日月と似ているナノ粒子を指す。
【0027】
本明細書で使用する「検体」は、本発明を使用して検出される試験サンプル中の物質である。検体は任意の物質、例えば特異的結合要素が存在する酵素、例えば特異的結合要素を調製することができる基質であってよく、かつ検体はアッセイ中1つまたは複数の特異的結合要素と結合することができる。用語「検体」は、任意の酵素、抗原物質、ハプテン、抗体、およびこれらの組合せも含む。検体は、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、炭水化物、ホルモン、ステロイド、ビタミン、治療目的で投与される薬剤および不正目的で投与される薬剤を含めた薬剤、細菌、ウイルス、および任意の前述の物質の代謝産物またはそれらに対する抗体だけには限られないが、これらを含む。
【0028】
本明細書で使用する「放射線」は、試験混合物に施すと、その中のラマン活性標識によってラマンスペクトルを生成させ、さらに粒子表面と結合状態になるラマン活性標識による金属表面の表面増強ラマン光散乱の助長を引き起こす、電磁放射線の形態のエネルギーである。
【0029】
「ラマン標識」、「ラマンタグ」、または「ラマン活性標識」は、適切な波長の放射線を照射すると存在する他の要素のラマンスペクトルと区別可能である、検出可能なラマンスペクトルを生成する物質である。ラマン活性標識に関する他の用語は、色素およびレポーター分子を含み得る。
【0030】
本明細書で使用する「特異的結合要素」は、特異的結合対、すなわち分子の1つが化学的または物理的手段によって第二の分子と特異的に結合している2つの異なる分子の要素である。抗原および抗体-特異的結合対以外に、他の特異的結合対は、ビオチンとアビジン、炭水化物とレクチン、相補的ヌクレオチド配列(標的核酸配列を検出するためのDNAハイブリダイゼーションアッセイにおいて使用するプローブおよび捕捉核酸配列を含む)、相補的ペプチド配列、エフェクター分子と受容体分子、酵素補助因子と酵素、酵素阻害剤と酵素などを含む。さらに、特異的結合対は、元の特異的結合要素の類似体である要素を含み得る。例えば、検体の誘導体または断片、すなわち検体-類似体は、それが検体と共通の少なくとも1つのエピトープを有する限り使用することができる。免疫反応性特異的結合要素は、抗原、ハプテン、抗体、および組換えDNA法またはペプチド合成によって形成される複合体を含めたこれらの複合体を含む。
【0031】
用語「試験混合物」は、試験サンプル中の検体の検出のために本発明を適用するのに使用する、試験サンプルおよび他の物質の混合物を指す。これらの物質の例には、特異的結合要素、付随的結合要素、検体-類似体、ラマン-活性標識、バッファー、希釈剤、および表面増強ラマン分光を引き起こし得る表面を有する粒子、およびその他がある。
【0032】
本明細書で使用する用語「試験サンプル」は、本発明を使用して検出およびアッセイする検体を含むサンプルを意味する。試験サンプルは検体以外の他の要素を含むことができ、液体、または固体の物理的特性を有することができ、かつ例えば移動液体流を含めた任意の大きさまたは体積であってよい。試験サンプルは、他の物質が特異的結合要素の特異的結合または検体もしくは検体-類似体に干渉しない限り、検体以外の任意の物質を含むことができる。試験サンプルの例には、血清、血漿、痰、精液、尿、他の体液、組織および細胞サンプル(例えば、腫瘍サンプル、臓器サンプルなど)、および地下水または廃水、土壌浸出液および残留農薬などの環境サンプルがあるが、これらだけには限られない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
様々な実施形態において本発明は、サンプル中の1つまたは複数のプロテアーゼの存在および/または量および/または活性の測定を提供する、新規のインジケーターに関する。特定の実施形態では、これらのインジケーターは、1つまたは複数のプロテアーゼ分子についての基質(例えば、ポリペプチド) と結合した1つまたは複数のナノクレセント構造を含む(例えば図1A参照)。インジケーターは、基質と結合した1つまたは複数のラマンタグを場合によってはさらに含むことができる。インジケーターは、ラマン散乱検出システム用の非常に感度の良いプローブ(例えば、表面増強ラマン散乱(SERS)プローブ)として機能する。
【0034】
特定の実施形態では、本発明はペプチドコンジュゲートナノクレセント表面増強ラマン散乱(SERS)プローブを使用する、in vitro、in situ、または幾つかの場合in vivoでのタンパク質分解活性を有する生物分子の検出に関する。本明細書に記載するプローブは少なくともナノモルの感度を得ることができ、それによって非常に低い濃度(例えば、1個または数個の分子)および/または非常に小さな体積(例えば、フェムトリットル体積)におけるタンパク質分解(または他の生物)活性の検出が可能となる。様々な実施形態において、ナノスケール寸法のインジケーターおよびインジケーターの充分な局所電磁場の増強(図1C)は、その表面上の生物分子反応の高感度の光学的検出を可能にする。
【0035】
幾つかの好ましい実施形態では、インジケーターはナノクレセント表面増強ラマン散乱(SERS)プローブを含む。表面増強ラマン散乱(SERS)プローブはナノクレセントの構造(例えば、ナノクレセントのコアおよび殻)とコンジュゲート化したペプチドを含むことができ、このペプチドは、プロテアーゼ(プロテアーゼ認識部位)によって認識および切断される特異的アミノ酸配列を含む。様々な実施形態において、ペプチドはラマンタグと結合している。「標的」プロテアーゼによるペプチドの切断は、容易に検出されるラマンスペクトルの強烈な変化をもたらす。したがって、ペプチドコンジュゲート化ナノクレセントは、生物サンプル中の1つまたは複数のプロテアーゼ、例えば癌のバイオマーカー、前立腺特異抗原(PSA)などの存在、濃度およびタンパク質分解活性に関する情報を提供するための特異的なスクリーニングツールとして使用することができる。
【0036】
(ナノクレセントの組成および製造)
本発明のインジケーターは、生物分子、好ましくはペプチドと結合した1つまたは複数のナノクレセントを典型的には含む。特定の実施形態において、ナノクレセントはコアおよび殻を含むことができる。存在する場合、コアはプラスチック(例えばポリスチレン)、シリカまたは他の物質、または他のIII族、IV族、またはV族の物質、デキストラン、磁性物質、またはほぼ一定のラマンスペクトルを有する任意の他の物質からなり得る。
【0037】
ナノクレセント「月形」構造は、ナノチップと、局所電磁場の増強を可能にするナノリングとの両方の特徴を有する(図2A)。横断面図では、ナノクレセント月形の形状は鋭利な先端を有する三日月形のナノムーン(nanomoon)と似ており、したがってナノクレセント月形の鋭利な縁部は鋭利な先端と回転類似性を有し、図2B中に示すように、このことにより、先端から輪状線までSERS「ホットサイト」が広がる(すなわち、一群のナノチップ)。上面図から、ナノクレセント月形の形状は前に示したナノリングより高い鋭利性を有するナノリングと似ており(Aizpurua et al.(2003)Phys.Rev.Lett.90: 057401)、したがってナノクレセント月形の輪状の鋭利な縁部は、より強い場の放射または「アンテナ」効果を有し得る。
【0038】
様々な実施形態において、金のナノフォトニック三日月形は、図2C中に示すように10nm未満の鋭利な縁部を有する。
【0039】
特定の実施形態では、図4中に示すような形状(一部分が重複する2つの円として示され、rが内半径であり、Rが外半径であり、かつdが中心間距離である)によって、ナノクレセントを特徴付けることができる。様々な実施形態において、Rは約20nm〜約800nm、好ましくは約40nm〜約600nm、より好ましくは約50nm〜約500または400nm、および最も好ましくは約100nm〜約200nm300nmの範囲である。様々な実施形態において、rは約10nm〜約500nm、好ましくは約20nm〜約400nm、より好ましくは約50nm〜約300nm、および最も好ましくは約100nm〜約200nmの範囲である。様々な実施形態において、dは約10nm〜約400nm、好ましくは約20nm〜約200nmまたは300nm、より好ましくは約30nm、40nmまたは50nm〜約100または150nmの範囲である。
【0040】
ナノクレセントの殻は、金属(例えば金、銀、タングステン、プラチナ、チタン、鉄、マンガンなど、あるいはその酸化物または合金)、半導体材料、金属の多層、金属の酸化物、合金、ポリマー、カーボンナノ材料などからなり得る。特定の実施形態では、ナノクレセントの殻は以下の:タングステン、タンタル、およびニオブ、Ga、Au、Ag、Cu、Al、Ta、Ti、Ru、Ir、Pt、Pd、Os、Mn、Hf、Zr、V、Nb、La、Y、Gd、Sr、Ba、Cs、Cr、Co、Ni、Zn、Ga、In、Cd、Rh、Re、W、Mo、およびその酸化物、合金、混合物、および/または窒化物の1つまたは複数を含む。
【0041】
様々な実施形態において、コアは約30nm〜約500nm、好ましくは約50nm〜約200nm、300nm、または400nm、より好ましくは約50nm〜約100nmまたは150nmの直径の範囲であり、殻は好ましくは3nm〜約80nm、より好ましくは約5nm〜約50nm、さらにより好ましくは約8nm〜約20または30nm、および最も好ましくは約10nm〜約20nmまたは25nmである。異なるコアの大きさおよび殻の厚さを選択することによって、プラズモン共鳴波長および表面増強因子を調整して、様々な用途に適合させることが可能である。
【0042】
図1Aは本発明のナノクレセントインジケーターの一実施形態を図式的に示し、その電子顕微鏡写真を提供する。特定の実施形態では、参照により本明細書に組み込まれているLu et al.(2005)Nano Lett5、119〜124によって記載されたように、回転ナノ粒子(例えば、ポリスチレンナノ粒子の鋳型)上へのナノクレセント物質(例えば銀、金など)の傾斜蒸着によって、ナノクレセントを製造することが好ましい。製造手順は図3中に図式的に示す。図3中に示すように、この方法はフォトレジストをコーティングした基板(例えば、ガラス基板)上への球状コア物質(例えば、ポリスチレンコロイド)の単層のキャスティングを含む。ナノクレセントの殻物質(例えば金、銀など)は、電子ビーム蒸着によってコアの表面上にコーティングする。蒸着中は金(または他の物質)標的に対して一定角度でサンプルを回転し続ける。ナノクレセント月形の形状は、コア構造(例えば、ポリスチレン球体)の大きさ以外に蒸着角に依存する。コーティングしたナノクレセントは、適切な溶剤(例えばアセトン)を使用して基板から離脱させることが可能である。コアは場合によっては、適切な溶剤(例えばトルエン)を使用することによってナノクレセントから除去することができる。次いでナノクレセント月形を回収し、基板上に置くことができる。
【0043】
例示的な一実施形態では、ナノクレセントは100nmのポリスチレンコアおよび10〜20nmの金の三日月形の殻を含む。ナノスケールのAu層をポリスチレンナノ粒子に蒸着させて、高い光密度を示す三日月形の先端を有する図1C中のTEM画像で示すようなAuナノクレセントを形成する。特定の実施形態では、ナノ粒子のコアは除去せず、SERS検出における内部対照として用いる。
【0044】
この製造手順は例示的であって制限的ではない。本明細書で提供される教示を使用して、本発明のプロトコルの変形および他のナノクレセント製造法は当業者により理解されるはずである。
【0045】
(プロテアーゼ基質)
本明細書に記載するナノクレセントインジケーターは、検出することが望ましい任意のプロテアーゼの1つまたは複数の認識部位を含むポリペプチド配列を利用することができる。プロテアーゼ(タンパク質分解活性)は正常な細胞機能の維持に必要とされるだけでなく、さらに様々なヒト疾患の病因の中核をなす。寄生虫(例えば、住血吸虫およびマラリア)、真菌(C.albicansなど)およびウイルス感染(例えばHIV、ヘルペスおよび肝炎)、およびさらに癌、炎症、呼吸器、心臓血管およびアルツハイマー病を含めた神経変性疾患は、進行するのにタンパク質分解活性が必要である。プロテアーゼの存在、量、または活性の検出は、疾患の存在または可能性に関する診断/予後マーカーとしてしたがって有用である。さらに、プロテアーゼ活性(またはその阻害)の検出は、幾つかの病状を治療するためのプロテアーゼ阻害剤療法をスクリーニングする際に有用である。
【0046】
本発明によって検出および/または定量化することができる「プロテアーゼ」は、エンドプロテアーゼとも呼ばれる、ポリペプチド鎖中に位置するアミノ酸の対の間のペプチド結合を典型的には加水分解する酵素である。プロテアーゼは典型的には、酵素の触媒中心の求核基を参照することによって定義される。最も一般的な求核基はセリン、アスパラギン酸、およびシステインの側鎖から生じ、セリンプロテアーゼ(Paetzel et al.(1997)Trends Biochem.Sci.22: 28〜31)、アスパルチルプロテアーゼ(Spinelli et al.(1991)Biochemie73: 1391〜1396)、およびシステインプロテアーゼ(Altschuh et al.(1994)Prot.Eng.7: 769〜75、1994)などのプロテアーゼのファミリーをもたらす。メタロプロテアーゼは通常、触媒部位に亜鉛触媒金属イオンを含む(Klimpel et al.(1994)Mol.Microbiol.13: 1093〜1100)。これらのプロテアーゼファミリーの各々のメンバーの例示的な例を表1中に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
「プロテアーゼ認識部位」は、特定のプロテアーゼによって加水分解されるペプチド結合によって結合した一対のアミノ酸を含む、ペプチド結合によって結合したアミノ酸の連続配列である。場合によっては、プロテアーゼ認識部位は、加水分解されるペプチド結合の両側の1つまたは複数のアミノ酸(ここに、プロテアーゼの触媒部位がさらに結合する)を含む可能性があり(Schecter and Berger、(1967)Biochem.Biophys.Res.Commun.27: 157〜62)、あるいはプロテアーゼ基質上の認識部位と切断部位は、1つまたは複数(例えば、2〜4個)のアミノ酸によって隔てられる2つの異なる部位であってよい。
【0049】
プロテアーゼ認識部位におけるアミノ酸の特異的配列は、プロテアーゼの活性部位における官能基の性質によって定義されるプロテアーゼの触媒機構に典型的には依存する。例えばトリプシンは、ポリペプチド鎖の長さまたはアミノ酸配列とは無関係に、そのカルボニル官能基がリシンまたはアルギニン残基のいずれかによって与えられるペプチド結合を加水分解する。しかしながら、因子Xaは特異的配列Ile-Glu-Gly-Arg(配列番号19)を認識し、ArgのC末端側のペプチド結合を加水分解する。
【0050】
したがって、様々な実施形態において、プロテアーゼ認識部位は少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10個あるいはそれ以上のアミノ酸を含むことができる。場合によっては、さらなるアミノ酸が認識部位のN末端および/またはC末端に存在する可能性がある。本発明によるプロテアーゼ認識部位は、それがプロテアーゼによって認識/切断される限り、知られているプロテアーゼの認識部位の変形であってもよい。
【0051】
様々な好ましいプロテアーゼの認識部位には、セリンプロテアーゼファミリー、またはメタロプロテアーゼ由来のプロテアーゼ、またはシステインプロテアーゼファミリー、および/またはアスパラギン酸プロテアーゼファミリー、および/またはグルタミン酸プロテアーゼファミリー由来のプロテアーゼのプロテアーゼの認識部位があるが、これらだけには限られない。特定の実施形態では、好ましいセリンプロテアーゼ認識部位には、キモトリプシン様プロテアーゼ、および/またはサブチリシン様プロテアーゼ、および/またはα/βヒドロラーゼ、および/またはシグナルペプチダーゼの認識部位があるが、これらだけには限られない。特定の実施形態では、好ましいメタロプロテアーゼ認識部位には、メタロカルボキシペプチダーゼまたはメタロエンドペプチダーゼの認識部位があるが、これらだけには限られない。
【0052】
プロテアーゼ認識部位は当業者にはよく知られている。ほぼ各々の知られているプロテアーゼに関して認識部位が同定されてきている。したがって例えば、カスパーゼの認識部位(ペプチド基質)は、参照により本明細書に組み込まれているEarnshaw et al.(1999)Annu.Rev.Biochem.、68: 383〜424によって記載されている(表2も参照)。
【0053】
【表2】

【0054】
PSAを検出するための例示的な一実施形態では、ペプチド設計は、PSAによって認識され得るセリン残基および隣接配列を有するPSA特異的ペプチドの活性部位のアミノ酸配列を組み込む。したがって、例えば一実施形態では、タンパク質分解活性を有するPSAに対して非常に高い特異性を有することが示されてきている配列HSSKLQ-LAAAC(配列番号36)をペプチドは含む(例えば、Denmeade、et al.(1997)Cancer Res57: 4924〜4930を参照)。マウスモデルではHSSKLQ-L(配列番号37)は、in vivoにおいて任意の他のプロテアーゼではなくPSAによって切断されることが示されてきている(Denmeade et al.(2003)J.Natl.Cancer Inst.95: 990〜1000)。したがって他の実施形態では、各々がHSSKLQ-LAAAC(配列番号36)またはHSSKLQ-L(配列番号37)の特異的配列を組み込む限り、各々がランダムまたは知られている配列部分を有する多数のペプチドを生成することができる。
【0055】
例示的な一実施形態では、PSA消化部位はペプチドHSSKLQ-LAAAC(配列番号36)におけるグルタミン(Q)残基とロイシン(L)残基の間に存在する。ペプチドは2つの断片、HSSKLQ(配列番号1)およびLAAAC(配列番号38)に消化される。ペプチドは、ペプチドがPSA酵素から立体的に妨害されず、およびそれによって最適にアクセス可能であるように、ナノクレセント表面と結合することが好ましい。基質ペプチド配列HSSKLQ-LAAAC(配列番号36)とCys(C)残基の間に位置する更なるスペーサーは、表面上へのPSAの基質ペプチドHSSKLQ(配列番号1)の提示を改善することが可能であり、およびそれによって検出感度を増大させることが可能であることが予期される。しかしながらそうすることによって、ナノクレセント表面からのラマンタグ分子の距離が遠くなり、低いラマン強度レベルをもたらす可能性がある。しかしながら、コイル様の短いペプチド構造は、遠位のラマンタグ分子がナノクレセント表面と接触する高い確率をもたらす。
【0056】
特定の実施形態では、ペプチドは少なくとも1個のプロテアーゼ認識部位を含む。様々な実施形態において、ペプチドは2、3個、あるいはそれ以上のプロテアーゼ認識部位を含むことができる。これらの部位は同じプロテアーゼの部位であってよく、いずれもそのプロテアーゼによって認識される異なるモチーフを有し得る。特定の実施形態では、部位は同一であってよい。特定の実施形態では、ペプチドは各々が異なるプロテアーゼの多数の認識部位を含むことができ、したがって数個のプロテアーゼのいずれか1個の存在または活性の検出または定量化が可能である。
【0057】
典型的には、ペプチドは所望のプロテアーゼ認識部位を組み込むのに充分な長さである。特定の実施形態では、ペプチドはプロテアーゼ認識部位より長く、かつ他のアミノ酸残基を含み、あるいは例えばスペーサーとして働き、かつ/あるいはプロテアーゼによる認識を容易にするはずである。典型的には、ペプチドは約2、3、4、5、6、8、または10アミノ酸のいずれか〜約20、30、50、80、または100アミノ酸のいずれかの長さの範囲であるはずである。特定の実施形態では、基質ペプチドは約3〜12、または約4〜12、または約6〜12、または約8〜12、または約10〜12アミノ酸残基長のオリゴペプチドである。しかしながら、特定の実施形態では、ペプチドは4アミノ酸残基ほど短く、100アミノ酸ほど長くてよい。
【0058】
(ラマンタグ)
様々な実施形態において、1つまたは複数のラマン標識(ラマンタグ)を、ナノクレセントと結合した基質(例えば、ポリペプチド)と結合させることが可能である。このようなラマンタグの存在は、ペプチドの切断によって生じるラマンシグナルの変化を増大させることができる。
【0059】
様々なラマン標識が当技術分野で知られており(例えば、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,306,403号、米国特許第6,002,471号、米国特許第6,174,677号)、任意のこれらの知られているラマン標識を使用することができる。標識は典型的には、特徴的(例えば独特)で非常に目立つ/検出可能な光学的形跡を有する。タグ分子の非制限的な例には、TRIT(テトラメチルローダミンイソチオール)、NBC(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール)、テキサスレッド色素、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレシルファストバイオレット、クレシルブルーバイオレット、ブリリアントクレシルブルー、パラ-アミノ安息香酸、エリスロシン、ビオチン、ジゴキシゲニン、5-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン、5-カルボキシ-2',4',5',7'-テトラクロロフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、5-カルボキシローダミン、6-カルボキシローダミン、6-カルボキシテトラメチルアミノフタロシアニン、6-カルボキシ-X-ローダミン、アゾメチン、シアニン、キサンチン、スクシニルフルオレセイン、アミノアクリジン、およびシアン化物(CN)、チオール(SH)、塩素(Cl)、臭素(Br)、メチル、リン(P)、イオウ(S)、SN、Al、Cd、Eu、およびTe、およびこのような部分を含む化合物がある。特定の実施形態では、カーボンナノチューブ、量子ドット(例えば、Evident Technologies、Troy N.Y.;Invitrogen/Molecular Probesなどを参照)、またはミクロスフェア(例えば、蛍光ミクロスフェア(例えば、Invitrogen/Molecular ProbesからのTransfluosphres(登録商標)を参照)をラマンタグとして使用することができる。
【0060】
多くのラマン標識が市販されており(例えば、Invitrogen/Molecular Probesから)、リンカーと結合させて、および/または1つまたは複数の官能基で誘導体化して他の部分とのカップリングを容易にした状態で提供されることが多い。
【0061】
(基質とナノクレセントのカップリング)
ペプチド(プロテアーゼ基質)および/または存在する場合ラマン標識を、当業者に知られている幾つかの方法のいずれかによって互いに結合させることが可能である。ペプチド(または他の基質)は、例えば基質(ペプチド)および/またはナノクレセント上の反応基を介してナノクレセントと直接結合させることが可能であり、あるいはペプチド(または他の基質)は、リンカーを介してナノクレセントと結合させることが可能である。
【0062】
同様に、存在する場合ラマン標識を、ペプチド(または他の基質)と直接(例えば、官能基を介して)、あるいはリンカーを介しても結合させることが可能である。
【0063】
例えば、特定の実施形態では、ペプチドのカルボキシ末端におけるシステイン基を使用しペプチドと金表面を結合させることによって、共有結合を形成するための金チオール反応を利用することによって、基質ペプチドを金ナノクレセント殻の表面上に固定する。様々な実施形態において、ナノクレセント(例えばAu)表面および/または基質(例えば、プロテアーゼ基質)を例えばアミン、カルボキシル基、アルキル基、アルキン基、ヒドロキシル基、または他の官能基で誘導体化することができ、したがってペプチド(または他の基質)は、ナノクレセント表面および/またはラマン標識と直接結合させることが可能であり、あるいはリンカーを介して結合させることが可能である。他の実施形態では、ナノ粒子を例えばシリカ殻およびアミン、カルボキシル、または他の官能基でコーティングして、ペプチド(または他の基質)と結合させることが可能である。
【0064】
適切なリンカーには、各々の結合パートナー(すなわち、ラマンタグ、ペプチド(または他の基質)、ナノクレセント表面またはその上の官能基など)と互いに共有結合を形成することができる2個以上の反応部位を含むヘテロまたはホモ二官能性分子があるが、これらだけには限られない。このような部分との結合に適したリンカーは当業者にはよく知られている。例えば、ペプチドリンカー、直鎖または分岐炭素鎖リンカーだけには限られないがこれらを含めた、様々なリンカーのいずれかによって、あるいは複素環炭素リンカーによって、タンパク質分子を容易に結合させることが可能である。N-エチルマレイミドの活性エステルなどのヘテロ二官能性架橋試薬が、タンパク質と他の部分を結合させるために広く使用されてきている(例えば、Lerner et al.(1981)Proc.Nat.Acad.Sci.(USA)、78: 3403〜3407; Kitagawa et al.(1976)J.Biochem.、79: 233〜236; Birch and Lennox(1995)Chapter4 in Monoclonal Antibodies: Principles and Applications、Wiley-Liss、N.Y.などを参照)。
【0065】
特定の実施形態では、ナノクレセントおよび/またはラマン標識をペプチド(または他の基質)と接合させて、ビオチン/アビジン相互作用を利用することが可能である。特定の実施形態では、例えば光解離性保護基を有するビオチンまたはアビジンをナノクレセントに加えることができる。対応するアビジンまたはストレプトアビジン、またはビオチンを有する所望の部分の存在下でのナノクレセントの照射は、その部分とナノクレセントのカップリングをもたらす。
【0066】
1つまたは複数の部分(例えば、ナノクレセント、ペプチド(または他の基質、および/またはラマン標識)が反応基を有するか、あるいは誘導体化されて反応基を有する場合、多数の結合法が容易に利用可能である。したがって、例えば遊離アミノ基は、当業者によく知られている広く様々なカルボキシル活性化リンカー延長によるアシル化反応の影響を受けやすい。リンカー延長をこの段階で実施して、活性エステル、イソシアネート、マレイミドなどの末端活性基を生成することができる。例えば、テレフタル酸などのビスカルボン酸のホモ二官能性N-ヒドロキシスクシンイミドエステルの一端とペプチドまたはアミノ誘導体化ナノクレセントの反応によって、アミンとの結合に有用な安定状態のN-ヒドロキシスクシンイミドエステル末端リンカー付加物が生成するはずである。リンカー延長はマレイミドアルカン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルなどのヘテロ二官能性試薬を用いて実施して、チオール基との後の結合用の末端マレイミド基を生成することもできる。アミノ末端リンカーは、反応して一端にアミド結合および他端に遊離または保護チオールを形成するヘテロ二官能性チオール化試薬を用いて延長することができる。当技術分野でよく知られているこの型のチオール化試薬の幾つかの例は、2-イミノチオラン(2-IT)、スクシンイミジルアセチルチオプロピオネート(SATP)およびスクシンイミド2-ピリジルジチオプロピオネート(SPDP)である。初期チオール基を脱保護後に次いで利用して、マレイミドまたはブロモアセチル化部分を有するチオールエーテルを形成する、あるいは金表面と直接相互作用させることが可能である。様々な実施形態において、例えばペプチドのチロシン残基だけには限られないがこれらなどの適切な求核部分としたがって反応性がある、酸の存在下でのアルカリ金属亜硝酸塩との反応によって、例えばアミノ末端リンカーのアミノ基はジアゾニウム基に、およびそれゆえ物質をジアゾニウム塩に転換することができる。このようなジアゾニウム塩に転換するのに適したアミノ末端リンカーの例には、芳香族アミン(アニリン)があるがこれだけには限らず、アミノカプロン酸および前述したのと同様の物質も含み得る。このようなアニリンは、利用可能なヒドロキシル基と前に論じたN保護アミノ酸、アミノ基が芳香族アミン、すなわちアニリン、および例えば当技術分野でよく知られている方法を使用して次いで脱保護されるN-アセチルまたはN-トリフルオロアセチル基として適切に保護されたアミンを構成する対応するアミノ酸の間のカップリング反応に置き換えることによって容易に得ることができる。ジアゾニウム塩への他の適切なアミン前駆体は、有機合成の分野の当業者には連想されるはずである。
【0067】
他の好ましい型のヘテロ二官能性リンカーは、スクシンイミド-オキシカルボニル-ブチリルクロリドなどの混合型活性エステル/酸塩化物である。リンカーの酸塩化物末端の反応性が高いほど、例えばペプチド上のアミノまたはヒドロキシル基を優先的にアシル化してN-ヒドロキシスクシンイミジルエステルリンカー付加物を直接与える。
【0068】
本発明において有用なさらに他の型の末端活性基は、アルデヒド基である。(例えば、ペプチドまたは誘導体化ナノクレセントにおける)遊離ヒドロキシルと、保護アルデヒド基、アセタール基など、1,3-ジオキソラン-2-イルまたは1,3-ジオキサン-2-イル部分などでオメガ位置(遠位端)において置換されたアルキルまたはアリール酸のカップリング、次に当技術分野でよく知られている方法を使用する基の脱保護によって、アルデヒド基を生成することができる。様々な実施形態において、保護ヒドロキシ、例えばアセトキシ部分などでオメガ位置において置換したアルキルまたはアリールカルボン酸を、カップリング反応、次にヒドロキシの脱保護、および対応するアルデヒドを得るための適切な溶剤、好ましくは塩化メチレン中での重クロム酸ピリジニウムなどの試薬を用いた軽度の酸化において使用することができる。アルデヒド末端物質を生成する他の方法は、当業者には明らかであるはずである。
【0069】
特定の実施形態では、各々が同じであるかあるいは異なる多数のペプチドが、ナノクレセントの表面と結合する。様々な実施形態において、約5〜500、より好ましくは約10〜約400、さらにより好ましくは約20、30、または40〜約200、250、または300、および最も好ましくは約50〜約150個の基質分子(例えばペプチド)がナノクレセントと結合する。一実施形態では、約100個のペプチドが、ペプチド上でのAuとチオール基の間の直接の反応によってナノクレセントと結合する。
【0070】
様々な実施形態において、タンパク質分解活性を有するプロテアーゼによって特異的に切断され得る基質、例えばペプチドを、ナノクレセントの表面に結合または固定する。好ましい実施形態では、基質ペプチドは約10〜12アミノ酸残基長のオリゴペプチドである。しかしながら、様々な実施形態において、ペプチドは4アミノ酸残基ほど短く、100アミノ酸ほど長くてよい。様々な実施形態において、ペプチドは対応するプロテアーゼによって特異的に認識および切断される基質を含む。ペプチドは工業的に合成および入手することができ、あるいはペプチドは実施例1中に記載する方法によって作製することができる。特定の実施形態では、ペプチドのアミノ末端において、ビオチン(図1A)またはローダミン6G(R19)(図1A)などのラマン活性分子を、短いポリエチレングリコールまたはアミノ吉草酸リンカーによって結合させることが好ましい。
【0071】
前述のカップリング法は、限定的ではなく例示的であることを意味する。本明細書で提供される教示を使用すると、基質とナノクレセント、および場合によってはラマン標識と基質をカップリングさせる多数の方法が当業者には理解されるはずである。
【0072】
(ラマンインジケーターの検出)
ラマン分光法においておそらく使用される様々な検出装置は当技術分野で知られており、任意の知られているラマン検出装置を使用することができる。ラマン検出装置の非制限的な例は、米国特許第6,002,471号中に開示されている。この例では、Nd:YAGレーザー、532nm(ナノメートル)波長またはTi:サファイアレーザー、365nm波長のいずれかによって励起ビームが生じる。パルスレーザービームまたは連続レーザービームを使用することができる。励起ビームは共焦点光学系および顕微鏡の対物レンズを通過し、結合した生物分子標的を含む基板に集束し得る。顕微鏡の対物レンズ、およびスペクトル分離用のモノクロメーターと結び付けた共焦点光学系によって、ラマン発光標的を集束することができる。共焦点光学系はバックグラウンドシグナルを低下させるために二色フィルター、バリアフィルター、共焦点ピンホール、レンズ、およびミラーの組合せを含むことができる。標準的な全視野計測光学系および共焦点光学系を使用することができる。
【0073】
ラマン発光シグナルはラマン検出器によって検出することができる。検出器はシグナルの計数およびデジタル化用にコンピューターに適合したアバランシェフォトダイオードを含むことができる。標的のアレイを分析する場合、光学検出系を設計して、チップまたはグリッド上のラマンシグナルを検出し特定の位置を同定することができる。例えば、検出視野内の多重ピクセルまたはピクセル群からの発光を同時に測定することができるCCD(電荷結合素子)カメラまたは他の検出器に、放射された光を伝えることができる。
【0074】
単一光子計数モードで操作されるガリウムヒ素光電子増倍管(RCAモデルC31034またはBurle IndustriesモデルC3103402)を備えるSpexモデル1403二重構造回折格子分光光度計を含めた、ラマン検出装置の他の例は、例えば米国特許第5,306,403号中に開示されている。励起源はSpectraPhysics、モデル166からの514.5nmラインのアルゴンイオンレーザー、および647.1nmラインのクリプトンイオンレーザー(Innova70、Coherent)である。
【0075】
様々な励起源には、337nmでの窒素レーザー(Laser Science Inc.)および325nmでのヘリウム-カドミウムレーザー(Liconox)(米国特許第6,174,677号)があるが、これらだけには限られない。励起ビームはバンドパスフィルター(Corion)でスペクトルを精製することができ、6倍対物レンズ(Newport、モデルL6X)を使用して基板140に集束させることが可能である。対物レンズを使用してインジケーターを励起させること、およびホログラフィックビームスプリッター(Kaiser Optical Systems、Inc.、モデルHB647-26N18)を使用して励起ビームの直角形状および発光ラマンシグナルを生成することによって、ラマンシグナルを集束させることの両方が可能である。ホログラフィックノッチフィルター(Kaiser Optical Systems、Inc.)を使用して、レーリー散乱放射線を減らすことができる。他のラマン検出器には、赤外線増強電荷結合素子(RE-ICCD)検出系を備えるISAHR-320分光器(Princeton Instruments)があるが、これだけには限られない。電荷注入装置、フォトダイオードアレイまたはフォトトランジスタアレイなどの、他の型の検出器を使用することができる。
【0076】
顕微鏡システムおよびラマン分光計を含む図5中に示す1つの典型的な実験系形態を使用して、一種のナノクレセントからラマン散乱スペクトルを得た。一実施形態ではこの系は、デジタルカメラおよびスペクトログラフCCDカメラを有するモノクロメーター、レーザー源および光学レンズを備えるCarl Zeiss Axiovert200(Carl Zeiss、ドイツ)などの倒立顕微鏡からなる。様々な実施形態において、レーザー波長は可視および近赤外領域に存在し得る。好ましい一実施形態では、785nmの半導体レーザーをラマン散乱の励起源として使用し、40倍対物レンズによってナノクレセントにレーザービームを集束させる。785nmまたは他の近赤外光源は、サンプル中の生物組織による不充分な吸収、および低い蛍光バックグラウンドを確実にすることができる。しかしながら、幾つかの適用例に関して、低い波長の励起光が一層有利である可能性があり、およびさらにUV光の励起を幾つかの適用例に使用することができる。励起出力を光度計により測定して、特定の実施形態では、0.5〜1.0mWの出力を保証することもできる。ラマン散乱光はロングパスフィルターを介して同じ光学経路によって集束させ、分光計によって分析することが可能である。
【0077】
様々な実施形態において、生物サンプル中のプロテアーゼの存在、および/または濃度、および/または活性を測定する。生物サンプルは、アッセイすることが望ましいほぼ任意の生体材料を含み得る。このような生体材料には、例えば血液または血液分画、リンパ、脳脊髄液、精液、尿、口腔液などの生体液、組織サンプル、細胞サンプル、組織または臓器バイパシーまたは吸引物、組織標本などがあるが、これらだけには限られない。
【0078】
様々な実施形態において、ペプチドコンジュゲート化ナノクレセントは、好ましくは閉じた透明な中が見えるマイクロチャンバー内で、プロテアーゼ分子を含む疑いがあるサンプルと共にインキュベートする。マイクロチャンバーは、ナノ粒子を可視化するための暗視野照明をしながら、倒立ラマン顕微鏡上のサーマルプレートに取り付ける(例えば37℃で)。斜角から暗視野照明を使用して、挿入図中に示す明るい点としてナノクレセントを可視化する。顕微鏡の対物レンズによってナノクレセントに励起レーザーを集束させる。SERSシグナルを同じ対物レンズによって集束させ、分光計によって分析する。挿入図は、1つのナノクレセントに集束した0.8mWまでの励起レーザースポットを示す。
【0079】
消化反応のリアルタイム検出は30分以内で実施することができる。しかしながら、特定の実施形態では、インキュベーションは1〜5分ほど短く、24時間ほど長く、適用例がさらに長いインキュベーション時間を必要とする場合、あるいはそれより長くてよい。最初の遠心分別後、粗製細胞溶解物、尿サンプル、精液、脳脊髄液、血液、または他のサンプル物質中の可溶性含有物は、プローブと共に直接インキュベートすることができる。毎回1個または数個のプローブのみを調べるので、プローブの濃度は重要ではない。コンジュゲート化ペプチドのプロテアーゼ介在のタンパク質分解を特異的に阻害するために、プロテアーゼを加える前にプロテアーゼ阻害剤を導入することができる。例えば、PSAによるペプチド消化は、同じ実験条件を与えると阻害剤を加えた後90%を超えて抑制される。
【0080】
プロテアーゼの存在、濃度および活性に関する1つの検出スキームを図1B中に示す。この方法では、ペプチドコンジュゲート化SERSプローブを溶液またはサンプルに与える。タンパク質分解反応の前に、ペプチドコンジュゲート化ナノクレセントのSERSスペクトルは、ラマンタグ分子、ポリスチレンナノ粒子、およびペプチド由来の特徴的なピークを含む。プロテアーゼによる消化反応は、所定の切断部位でペプチドを切断するはずである。例えば、PSAによる消化反応中、ペプチドHSSKLQ-L(配列番号37)は、Q残基とL残基の間(ここでは横線によって示す)で切断される。人工ペプチドのSERSスペクトルはプロテアーゼによる切断後に変化する、何故ならラマンタグ分子を含む切断断片はナノクレセント表面から拡散し、一方、他の断片はナノクレセント表面に残るからである。ラマン活性タグを有する分子部分の特徴的なSERSピークは、ペプチド消化後のナノクレセント表面から溶液中へのタグ分子の拡散転位のために消失する;したがって溶液中のタンパク質分解活性を有するPSAの存在および濃度は、ペプチドコンジュゲート化ナノクレセントのSERSスペクトルをモニターすることによって調べることができる。結合ペプチドのラマン散乱シグナルは次いでナノクレセントによって増幅させ、ラマン分光計を含む記載した顕微鏡システムにより検出して、一種のナノクレセントからラマン散乱スペクトルを得る。ラマン分光計はコンピューターと結び付き、それによって分光計を制御することができ、スペクトルを得ることができ、スペクトログラフを観察することができることが好ましい。
【0081】
消化反応の動態は、時間分解SERSスペクトルの収集によってモニターすることができる。例えば、図6A中のビオチンからの525cm-1におけるピークおよび図6B中のR19からの1183cm-1などの、ラマンタグ分子からのピークがスペクトログラフにおいて見られ、これらは消化反応が終了した後にほぼ完全に消失する(図6AおよびB)。図6A中の経時的SERSスペクトルにおいて示されるように、525cm-1におけるビオチンピークの消失によってモニターした各ナノクレセントにおけるペプチドの消化は、420nMのPSA濃度で最大30分かかる。ラマンタグ分子としてR19を有するペプチドに関しては、1183cm-1におけるR19のピークの消失は、420nMのPSAによる消化後に観察することもできる(図6B)。したがって、ペプチドの消化はラマンタグ分子の放出およびそのラマンピークの消失によって確認することができる。リアルタイム測定の時間分解能は約数秒である可能性があり、反応は通常10〜20分間続く。スペクトルの検出は、通常のスペクトルポリクロメーターおよび冷却CCDカメラを用いて行うことができる。モニターするラマンピークの波長は400cm-1〜2000cm-1の範囲である。
【0082】
特定の実施形態では、消化反応におけるナノクレセントSERSプローブ中のラマン活性タグのラマンピークの経時的強度を、それぞれプロテアーゼ、プロテアーゼおよび阻害剤、および陰性対照を用いて得る。全てのピーク強度値は、内部対照ピーク(例えば、ポリスチレンコアに関して測定したピーク強度は1003cm-1である)、および陽性または陰性対照のいずれかの波長における初期ピーク強度に標準化する。陰性対照は、その中でペプチドは当該のプロテアーゼの基質ではなく、試験中のプロテアーゼによって切断される可能性がない、ナノクレセント-ペプチドハイブリッドであってよい。これらの結果は、ラマン活性タグのピーク強度の段階的消失から、ペプチドがPSAにより効率良く特異的に切断されることを示すはずである。
【0083】
ナノクレセント粒子はラマンシグナル増幅器として働き、ナノクレセント粒子の表面上に固定された全てのペプチドからのラマンシグナルを検出した。特定の実施形態では、最大100個のペプチド分子がナノクレセント1個当たりに結合し、最高SERSシグナルを有するナノクレセント表面は完全には利用することができず、わずかな割合のペプチドのみが、電磁場中の最大の増強をもたらす領域と結合する可能性がある(図1C)。数値シミュレーション(図1C)は、局所電場の振幅は、特に鋭利な縁部周辺では20dB(100倍)近くまで増強することが可能であることを示す。電場振幅とラマン増大係数の間の4乗の関係により、ペプチドのラマンシグナルはナノクレセントの108倍増幅することができた。
【0084】
さらに、数十〜数百のペプチドがそれぞれのナノクレセントに関する結合反応において平均して使用されるため、タグ分子からの特徴的なラマンピークの消失は急ではない。増大する場の大部分は、ナノクレセントの全領域の1/6までを占める先端領域近辺に集中しているので、結合効率が100%であると仮定した場合でも、この高増大領域中のラマン散乱シグナルに貢献する実際の分子数は20未満である。
【0085】
特定の実施形態では、様々なプロテアーゼ(例えばPSA)濃度に関するPSAの消化時間の関数として、陽性対照のラマンピークの強度を、サンプル中のプロテアーゼ(例えばPSA)の存在または活性を検出する前に得る。PSAコンジュゲート用に陽性対照ビオチンおよびR19ラマンタグ分子を用いた、ペプチドコンジュゲート化ナノクレセントの典型的なSERSスペクトルを、図6Aおよび6B中にそれぞれ示す。ペプチド消化実験の前と2時間後にSERSスペクトルを比較することによって、ナノクレセントコアからのラマンピークは一定状態であり(例えばポリスチレンコア、例えば1003cm-1)、したがって内部対照として働くこともできる。消化率はPSA濃度と関係があり、PSA活性は濃度1nMに関して典型的には30分間観察される(ビオチンシグナル強度の50%までの低下を伴う、データ示さず)。消化後にナノクレセント表面上に残存する一部のアミノ酸側鎖からの幾つかのラマンピークがスペクトル中に依然として出現する可能性があるが、ペプチド切断による考えられる立体配座の変化ために、ピーク位置にはわずかな変化がありピーク強度は低下する。
【0086】
特定の実施形態では、陰性対照を実施して、ペプチドがサンプル中に存在するプロテアーゼによって特異的に切断されることを示す。実施例1は、陰性対照として働くことができるグランザイムBなどの他のセリンプロテアーゼを使用して、PSAに対するコンジュゲートペプチドの特異性を示す。図7Cおよび7Dは、それぞれPSA阻害剤、およびPSAと直交する基質特異性を有するセリンプロテアーゼであるグランザイムBを用いた2つの対照実験における、R19タグ分子を用いた場合の、PSA-コンジュゲート化ナノクレセントの経時的SERSスペクトルを示す。420nMのグランザイムBによるペプチド消化の対照実験では、反応率は阻害剤処理反応と統計上有意な差を示さなかった。PSAがin vivoではHSSKLQ-LAAAC(配列番号36)配列の唯一のプロテアーゼであることが示されているので、グランザイムBがペプチドを切断できないことがさらに予想される。
【0087】
様々な実施形態において、ペプチドコンジュゲート化ナノクレセントは、PSAなどのプロテアーゼ癌バイオマーカー、および臨床設定で患者から得る生物サンプル中の他のバイオマーカーの濃度およびタンパク質分解活性に関する情報を提供するための、特異的なスクリーニングツールとして使用することができる。
【0088】
本明細書に記載するインジケーターの一適用例は、サンプル送達および洗浄プロセスを自動化し容易にすることができるマイクロ流体デバイスへの、ナノクレセント粒子の取り込みであることが企図される。ナノクレセント粒子はリアルタイムで送達し、あるいはデバイスに固定することも可能である。
【0089】
他の適用例には、リアルタイムで細胞または組織内のプロテアーゼ活性を測定することができるような、生きた細胞または組織中へのナノクレセント粒子の導入がある。
【0090】
これらの実施例は、制限的ではなく例示的であることを意図する。本明細書で提供される教示を使用すると、当業者には他の使用およびアッセイが利用可能であるはずである。
【0091】
(他のインジケーター)
前述の考察は活性プロテアーゼを検出するためのナノクレセント-ペプチドコンジュゲート(インジケーター)の使用に関するものであったが、同じ手法を使用して、他の加水分解生物分子の存在を検出することができることは理解されるはずである。したがって、例えばペプチドプロテアーゼ基質は一本鎖または二本鎖核酸(RNAまたはDNA)で置換することができ、インジケーターは活性ヌクレアーゼの存在を検出および/または定量化することができる。このような場合、核酸基質は典型的にはヌクレアーゼ(例えば、制限エンドヌクレアーゼ)の1つまたは複数の認識部位を含むはずである。ヌクレアーゼ認識部位は典型的には約3bp、4bp、5bp、6bp、7bp、8bp、9bpまたは10bp〜約15bp、20bp、25bp、または30bp長の範囲である。様々な実施形態において、核酸は約3bp〜約200bp、好ましくは約4bp〜約100bp、より好ましくは約6、8、10、16、または20bp〜約80、60、40、または30bp長の範囲である可能性がある。
【0092】
本発明のインジケーターはさらに、単に加水分解/タンパク質分解活性の検出に限定されるわけではない。インジケーターを使用して、結合相互作用(例えば、タンパク質/タンパク質相互作用、タンパク質/DNA相互作用、抗体/抗原相互作用、受容体/リガンド相互作用など)を検出および/または定量化することもできる。
【0093】
したがって例えば、1つまたは複数のナノクレセントと結合したタンパク質、および/または糖、および/または複合炭水化物、および/または脂質、および/または核酸「基質」を提供することができる。基質が認識され同系結合パートナーによって結合すると、ラマンスペクトルは変化するはずであり、相互作用が検出される。
【0094】
したがって例えば、核酸が例えばDNA結合タンパク質の1つまたは複数の認識部位を含む、ナノクレセントと結合した核酸基質を与えることができる。DNA結合タンパク質による核酸の結合はラマンスペクトルを変え、それによって検出可能なシグナルを生成する。特定の実施形態では、基質は前に記載した1つまたは複数のラマン標識をさらに有する。単純な結合相互作用においてラマン標識が切断される可能性はないが、結合部分によってもたらされる高い立体障害がラマン標識とナノクレセントの結合を低下させ、それによってラマンスペクトルが実質的に変化する。
【0095】
他の実施形態は、結合アッセイ用に「競合」アッセイ形式を利用する。このようなアッセイでは、検体が、基質と結合したナノクレセント上の結合部位に関して、ラマン標識を有する同様の部分と競合する。アッセイに供したサンプル中において、標的検体によって、基質上のその結合位置からラマン標識部分が取り除かれることによって、サンプル中に存在する検体の量の尺度であるラマンスペクトルの検出可能な変化がもたらされる。
【0096】
これらのアッセイは、制限的ではなく例示的であることを意図する。本明細書で提供される教示を使用すると、当業者には他のアッセイ形式が利用可能であるはずである。
【0097】
(キット)
他の実施形態では、本発明は本明細書に記載する方法を実施するためのキットを提供する。キットは典型的には、本明細書に記載するナノクレセントを含む容器を含む。キットは1つまたは複数の基質(例えば、プロテアーゼ基質、核酸基質など)を追加的に含むことができる。基質はナノクレセントとの後の結合用に別個の容器中に提供することができ、あるいは基質はナノクレセント結合体として提供することができる。キットは1つまたは複数のラマン標識を追加的に含むことができる。標識は別個に提供することもでき、あるいは基質-ナノクレセント結合体の構成要素として提供することもできる。
【0098】
様々な実施形態において、キットは、本明細書に記載する1つまたは複数の対照試薬(例えば、非切断性基質と結合したナノクレセント)を場合によっては含み得る。
【0099】
様々な実施形態において、キットは、生物サンプルの収集および/または処理用に、デバイス(例えばシリンジ、スワブなど)およびまたは試薬(例えば、希釈剤および/またはバッファー)を場合によっては含む。
【0100】
さらにキットは、本明細書に記載する方法を実施するための標識および/または指示を提供する教示書(すなわち、プロトコル)を場合によっては含む。特定の実施形態では、教示書は、プロテアーゼの存在または活性を検出および/または定量化するための、本発明の1つまたは複数のインジケーターの使用を記載する。様々な実施形態において、教示書は、核酸分解および加水分解反応を検出するためのインジケーターおよびSERS検出スキームの使用を教示する。ヌクレアーゼおよびヒドロラーゼなどの様々な酵素の存在、濃度および活性を検出することができる。
【0101】
教示書は文書化または印刷された資料を典型的には含むが、そのように制限されるわけではない。このような教示書を保存しそれらをエンドユーザーに伝えることができる任意の媒体が、本発明によって企図される。このような媒体には、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えばCDROM)などがあるが、これらだけには限られない。このような媒体は、このような教示書を提供するインターネットサイトのアドレスを含み得る。
【0102】
(実施例)
以下の実施例は、特許請求する本発明を制限するためではなく例示するために提供される。
【0103】
(実施例1:プロテアーゼの光学的検出用のペプチド-ナノクレセントハイブリッドSERSプローブ)
プロテアーゼ酵素のリアルタイムのin situ検出は、初期段階の癌のスクリーニングおよび細胞シグナル伝達経路の研究に不可欠である。しかしながら、このような検出を、小さな体積(例えば1nL未満)で蛍光または放射活性プローブを使用して実現するのは難しい。この実施例において我々は、ナノクレセント粒子ペプチドおよび人工タグ分子を組み込んだハイブリッド光学プローブの使用を実証する。我々は、最も有名な前立腺癌マーカーの1つであるPSA、および患者の精液および血清中に存在するセリンプロテアーゼを使用して実際に可能である試験を実施した。タグ分子からのラマンスペクトルシグナルはナノクレセントによって増大し、1つのタンパク質分解活性PSA分子に近いレベルでフェムトリットル反応体積中のペプチド切断のインジケーターとして、シグナルをモニターした。ペプチドの高い反応特異性およびモニターしたラマンシグナルによっても、他のセリンプロテアーゼおよびバックグラウンドのラマンシグナルの誤検出を最少にすることができ、これによってナノ/マイクロ流体デバイスに容易に組み込むことができる高忠実度かつ高いシグナル対ノイズ比の癌用ナノプローブをもたらした。
【0104】
ここで我々は、わずかなサンプル体積(フェムトリットル)で使用することができ、マイクロ流体中に組み込むことができ、あるいは細胞内に導入することができ、リアルタイムでPSAのタンパク質分解反応を光学的にモニターするために使用することができる、三日月形のラマンナノプローブと結合したPSA特異的基質ペプチド(Robert et al.(1997)Biochemistry36: 3811〜3819; Wu et al.(2004)Clin.Chem.、50: 125〜129; Brillard-Bourdet et al.(2002)Eur.J.Biochem.、269: 390〜395; Rehault et al.(2002)Biochim.Biophys.Acta1596: 55〜62; Malm et al.(2000)Prostate45: 132〜139)に基づく、PSAのタンパク質分解活性の新たな光学的分光検出法を導入する。ナノクレセントは、個々の表面増強ラマン散乱(SERS)基質として働くことができる(Lu et al.(2005)Nano Lett5: 119〜124)。ラマンは、フルオロフォア標識なしで豊富な原子レベルの情報を用いて生化学的組成物をプローブ処理するための分光検出法であるが(Raman(1928)Nature121: 619〜619)、しかしながらラマンシグナル強度(散乱断面)は蛍光よりはるかに低い。基材表面上の化学および生物分子の検出において弱いラマン散乱シグナルを数桁程度増大させるために、様々なSERS基材が開発されてきている(Lu et al.(2005)Nano Lett5: 119〜124; Lu et al.(2005)Nano Lett5: 119〜124; Lu et al.(2005)Nano Lett.5: 5〜9; Haes et al.(2005)J.Am.Chem.Soc.127: 2264〜2271; Jackson and Halas(2004)Proc.Natl.Acad.Sci、USA、101: 17930〜17935; Nie and Emory91997)Science275: 1102〜1106; Liu and Lee(2005)Appl.Phys.Lett.87: 074101)。
【0105】
ナノクレセントは100nmのポリスチレンコアおよび10〜20nmの金の三日月形の殻からなる。図1Aは、ナノクレセントの概略および透過電子顕微鏡写真を示す。回転するポリスチレンナノ粒子の鋳型上への傾斜Au蒸着によってナノクレセントを製造する(Lu et al.(2005)Nano Lett5、119〜124)。製造の詳細は前に記載した(上記)。この実施例では、ポリスチレンナノ粒子のコアは除去せず、それはSERS検出における内部対照として用いる。次いで我々は、タンパク質分解活性を有するPSAによって特異的に切断され得る基質ペプチドをAuナノクレセントの表面に固定する。このペプチドは、タンパク質分解活性を有するPSAに対して非常に高い特異性を有することが示されているHSSKLQの配列(配列番号37)を含む(Denmeade、et al.(1997)Cancer Res57: 4924〜4930)。マウスモデルではHSSKLQ-L(配列番号37)は、in vivoにおいて任意の他のプロテアーゼではなくPSAによって切断されることが示されている(Denmeade et al.(2003)J.Natl.Cancer Inst.95: 990〜1000)。共有結合を形成するための金チオール反応を利用することによって、ペプチドのカルボキシ末端におけるシステイン基を使用しペプチドとAu金表面を結合させる。ペプチドのアミノ末端において、ビオチン(図1A)またはローダミン6G(R19)(図1B)などのラマン活性分子を、短いポリエチレングリコールまたはアミノ吉草酸リンカーを介して結合させる。その検出スキームは図1B中に示す。人工ペプチドのSERSスペクトルはPSAによる切断後に変化し、ビオチンまたはR19タグを有する分子部分の特徴的なSERSピークは、ペプチド消化後のナノクレセント表面から溶液中へのタグ分子の拡散転位のために消失する;したがって溶液中のタンパク質分解活性を有するPSAの存在および濃度は、ペプチドコンジュゲート化ナノクレセントのSERSスペクトルをモニターすることによって調べることができる。結合ペプチドのラマン散乱シグナルは次いでナノクレセントによって増幅する。我々の数値シミュレーション(図1C)は、局所電場の振幅は、特に鋭利な縁部周辺では20dB(100倍)近くまで増強することが可能であることを示す。電場振幅とラマン増大係数の間の4乗の関係により、ペプチドのラマンシグナルはナノクレセントの108倍増幅することができた。
【0106】
図5はその実験システムの配置を示す。ペプチドコンジュゲート化ナノクレセントは、閉じた透明なマイクロチャンバー内でPSA分子と共にインキュベートした。マイクロチャンバーは、ナノ粒子を可視化するための暗視野照明をしながら、倒立ラマン顕微鏡上のサーマルプレートに37℃で取り付ける。挿入図は、1つのナノクレセントに集束した0.8mWまでの励起レーザースポットを示す。
【0107】
ビオチンおよびR19ラマンタグ分子を用いた、ペプチドコンジュゲート化ナノクレセントの典型的なSERSスペクトルを、図6Aおよび6B中にそれぞれ示す。ペプチド消化実験の前と2時間後にSERSスペクトルを比較することによって、ポリスチレンコアからのラマンピーク、例えば1003cm-1は一定状態であり、このピークを内部対照として用いる。消化後にナノクレセント表面上に残存する一部のアミノ酸側鎖からの幾つかのラマンピークが存在し、スペクトル中に依然として出現するが、ペプチド切断後の考えられる立体配座の変化のために、ピーク位置にはわずかな変化がありピーク強度は低下する。図6A中のビオチンからの525cm-1におけるピーク、および図6B中のR19からの1183cm-1などのラマンタグ分子からのピークは、消化反応が終了した後にほぼ完全に消失する(図6AおよびB)。
【0108】
消化反応の動態は、時間分解SERSスペクトルの収集によってモニターすることができる。最大百個のペプチドがそれぞれのナノクレセントに関する結合反応において平均して使用されるため、タグ分子からの特徴的なラマンピークの消失は急ではない。増大する場の大部分は、ナノクレセントの全領域の1/6までを占める先端領域近辺に集中しているので、結合効率が100%であると仮定した場合でも、この高増大領域中のラマン散乱シグナルに貢献する実際の分子数は20未満である(図1C)。図6A中の経時的SERSスペクトルにおいて示されるように、525cm-1におけるビオチンピークの消失によってモニターした各ナノクレセントにおけるペプチドの消化は、420nMのPSA濃度で最大30分かかる。ラマンタグ分子としてR19を有するペプチドに関しては、1183cm-1におけるR19のピークの消失は、420nMのPSAによる消化後に観察することもできる(図6B)。
【0109】
コンジュゲートペプチドのPSA介在タンパク質分解を特異的に阻害するために、420nMのPSAを加える前にプロテアーゼ阻害剤を導入した。我々はさらに、ここで陰性対照として働くグランザイムBなどの他のセリンプロテアーゼを使用して、PSAに対するコンジュゲートペプチドの特異性を試験した。図7Cおよび7Dは、それぞれPSA阻害剤、およびPSAと直交する基質特異性を有するセリンプロテアーゼであるグランザイムBを用いた前述の2つの対照実験における、R19タグ分子を有するナノクレセントの経時的SERSスペクトルを示す。PSAによるペプチド消化は、同じ実験条件の場合、阻害剤を加えた後90%を超えて抑制される。420nMのグランザイムBによるペプチド消化の対照実験では、反応率は阻害剤処理反応と統計上有意な差を示さなかった。PSAがin vivoではHSSKLQ(配列番号1)の配列の唯一のプロテアーゼであることが示されているので、グランザイムBがペプチドを切断できないことは、予想されることであった(Denmeade et al.(2003)J.Natl.Cancer Inst.95: 990〜1000)。
【0110】
消化率はPSA濃度と関係があり、我々は濃度1nMに関して30分間PSA活性を観察した(ビオチンシグナル強度の50%までの低下を伴う、データ示さず)。ナノクレセント1個当たり最大100個のペプチド分子が結合するので、最高SERSシグナルを有するナノクレセント表面は完全には利用することができず、わずかな割合のペプチドのみが、電磁場中の最大の増強をもたらす領域と結合する可能性がある(図1C)。図8Aは、0M(バッファー溶液)、4.2nM、42nMおよび420nMのPSA濃度に関するPSA消化時間の関数としての525cm-1におけるビオチンのラマンピーク強度を示す。図8Bは、それぞれ420nMのPSA、420nMのPSAおよび阻害剤、および420nMのグランザイムBを用いた消化反応中の1183cm-1におけるR19のラマンピークの経時的強度を示す。全てのピーク強度値は、1003cm-1における内部対照ピークおよび525または1183cm-1における初期ピーク強度に標準化する。これらの結果は、ペプチドはPSAによって効率良く特異的に切断されることを示し、したがって、このペプチドコンジュゲート化ナノクレセントは、癌のバイオマーカーPSAの濃度およびタンパク質分解活性に関する情報を提供するための、特異的なスクリーニングツールとして使用することができることを示す。
【0111】
結論として、我々は、少なくともナノモル感度で、1つのペプチドコンジュゲートナノクレセントSERSプローブを使用する、タンパク質分解活性を有するPSAのin vitro検出を実証した。我々は高度に収束したレーザービームを我々の励起源として使用するので、検出体積はわずか約10フェムトリットルである。ナノモルサンプルの実際のPSA分子の数は単一分子レベルに近い。他の癌のバイオマーカー検出アッセイと比較すると、我々のバイオコンジュゲート化ナノクレセントは、フェムトリットル体積中のナノモル濃度のタンパク質分解活性PSA分子の検出を可能にし、これは特に1つの癌細胞レベルでの癌のスクリーニングに重要である。小さな体積による測定に要求されることおよび感度レベルによって、転移の徴候に関する捕捉した循環前立腺癌細胞におけるPSA活性の検出が可能となり、これは従来の技法では実現可能ではない。精液中では、PSA濃度は10〜150μMであり、約3分の2のPSAは酵素活性がある(Malm et al.(2000)Prostate45: 132〜139)。
【0112】
ナノクレセントPSAプローブを用いて得られる感度レベル(ナノモル範囲)は精液ベースのアッセイに充分であり、したがって本明細書のナノクレセントSERSプラットホームはおそらく臨床用途を有する可能性がある。現在の作成設計では、PSA消化部位はグルタミン(Q)残基とロイシン(L)残基の間に存在し、Au表面の非常に近くに存在することから、PSAペプチドはPSA酵素から立体的に妨害され、最適にアクセス可能ではない可能性がある。基質ペプチド配列HSSKLQ(配列番号1)とCys残基の間で合成した他のスペーサーを用いて、表面上のPSAの基質ペプチドHSSKLQ(配列番号1)の提示を改善することが可能であり、およびそれによって検出感度を増大させることが可能であると、我々は想定する。リアルタイムの反応モニタリングは、タンパク質の存在を測定するだけでなくPSA活性に関する重要な情報も提供する。
【0113】
2つの異なるラマンタグ分子を本明細書では良好な結果で使用することができたので、このことは、2つ以上の型の癌関連プロテアーゼを検出するペプチドコンジュゲート化ナノクレセントの多重化の可能性を示す。コアは磁性物質で作られていてよく、個々のナノ粒子を空間的に処理することができる(Liu et al.(2005)Adv.Mater.17: 2683〜2688)。ナノクレセントをレーザーによって操作して、高精度で空間的に処理することもできるので(Liu et at.(2006)Nat Mater5: 27〜32)、したがってナノクレセントは、高密度アレイとして多重化することができる(マイクロリットル体積未満で)。マイクロアレイまたはナノアレイ形式での多種のプロテアーゼに関する他の空間的多重化も考えられる。さらに、磁性またはレーザー操縦性は所望の位置でのバイオセンシングを可能にし(Liu et al.(2005)Adv.Mater.17: 2683〜2688)、それは細胞内でin situ測定値を得るのに有用であろう。
【0114】
(材料および方法)
(PSAの調製)
PSAはCalBiochem(サンディエゴ、CA)から購入した。Auナノクレセント上に固定した基質ペプチドの切断は50mMのTris-HCl、pH8.0、100mMのNaCl、および0.1mMのEDTAのバッファー中で実施し、37℃においてリアルタイムで反応をモニターした。PSA阻害剤はCalBiochemから入手し、最終反応溶液が5μMのAEBSF、4.2nMのアプロチニン、200nMのElastatinalおよび10nMのGGACKを含むように、製造者の教示書に従い反応溶液に加えた。
【0115】
(ペプチド合成)
(ビオチン-Ttds-HSSKLQLAAAC-NH2(1)(配列番号36))
200mg(0.140mmol)のリンクアミドAMポリスチレン樹脂(充填0.69mmol/g)を6mLのフリットシリンジに加え、DMF(4mL)を用いて膨張させた。フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護基を除去し[20%ピペリジンを用いてDMF(2mL)中で25分間処理]、樹脂を濾過しDMFで洗浄した(3x3mL)。α-アミノ酸残基を充填するために、カップリング条件、次にDMFの洗浄(3x3mL)、Fmocの脱保護[20%ピペリジンを用いてDMF(2mL)中で25分間処理]、および再度の洗浄(3x3mL)の反復サイクルを樹脂に施した。α-アミノ酸と樹脂のカップリングに使用した条件は、10分間のDIC(100μL、0.640mmol)およびHOBt(98mg、0.64mmol)DMF(1.5mL)中とのインキュベーションによって予め活性化した適切に保護された酸[Fmoc-Cys(Trt、トリチル)-OH(375mg)、Fmoc-Ala-OH(199mg)、Fmoc-Leu-OH(226mg)、Fmoc-Gln(Trt)-OH(391mg)、Fmoc-Lys(Boc、tert-ブトキシカルボニル)-OH(300mg)、Fmoc-Ser(O-t-Bu)-OH(245mg)、またはFmoc-His(Trt)-OH(397mg)](0.640mmol)の0.4M溶液への樹脂の施用であった。それぞれのカップリングは4時間進行させた。最終α-アミノ酸残基のカップリングおよび脱保護後、10分間のDIC(88μL、0.56mmol)およびHOBt(86mg、0.56mmol)DMF(1.2mL)中とのインキュベーションによって予め活性化したFmoc-Ttds-OH(303mg、0.560mmol)の0.4M溶液への樹脂の施用によってTtdsリンカーを加えた。カップリングは一晩進行させた。樹脂をDMFで洗浄し(3x3mL)、Fmoc保護基を除去し、樹脂をDMFで再度洗浄した(3x3mL)。無水DMF(1.5mL)に溶かしたビオチン(137mg、0.560mmol)、PyBOP(281mg、0.540mmol)、およびi-Pr2NEt(94μL、0.54mmol)のスラリーを樹脂に加えることによって、ビオチン基を取り込ませた。一晩樹脂を攪拌した後、20%ピペリジンDMF中(1x4mL)、DMF(3x4mL)、THE(3x4mL)、MeOH(3x4mL)、THE(3x4mL)、およびCH2Cl2(3x4mL)を用いて樹脂を完全に洗浄した。基質は94:2:2:2TFA/トリイソプロピルシラン/H2O/エタンジチオール(3mL)の溶液との1時間のインキュベーションによって樹脂から切断し、予備C18逆相HPLC(CH3CN/H2O-0.1%TFA、5〜60%で50分間、8mL/分、210/220/254nm検出100分間、tR=31.8分)を使用して精製し、凍結乾燥させた。純度はHPLC-MS分析によって調べた(CH3CH/H2O-0.1%TFA、5〜95%で14分間、0.4mL/分、220nm検出22分間、tR=6.5分)。C71H121N19022S2に関して計算したMS(ESI)、m/z: 1655.8.Found:m/z828.2(M+2H)2+
【0116】
(R19-Ava-HSSKLQLAAAC-NH2(2)(配列番号36))
401mg(0.277mmol)のリンクアミドAMポリスチレン樹脂(充填0.69mmol/g)を12mLのフリットシリンジに加え、N-メチルピロリジノン(NMP)(4mL)を用いて膨張させた。Fmoc保護基は30分間1:2:2ピペリジン/NMP/CH2Cl2溶液(3mL)を用いた処理によって除去し、樹脂を濾過しNMP(3x3mL)およびCH2Cl2(3x3mL)で洗浄した。α-アミノ酸残基を充填するために、カップリング条件(方法Aまたは方法B)、次に洗浄(5x3mLのNMP、5x3mLのCH2Cl2)、Fmocの脱保護[1:2:2ピペリジン/NMP/CH2Cl2溶液(3mL)を用いて30分間処理]、およびNMP(5x3mL)およびCH2Cl2(5x3mL)による再度の洗浄の反復サイクルを樹脂に施した。1:1NMP/CH2Cl2(2mL)に溶かしたFmoc-Cys(Trt)-OH(1.17g、2.00mmol)、PyBOP(1.04g、2.00mmol)、およびHOBt(270mg、2.00mmol)の事前作製溶液を樹脂に加えることによって最初のα-アミノ酸残基を樹脂に充填し、生成したスラリーは手動シェーカーで5分間攪拌し、次にi-Pr2EtN(0.55mL、4.0mmol)を加えた。反応は5時間進行させた。次いで樹脂を濾過し、洗浄し(5x3mLのNMP、5x3mLのCH2Cl2)、高真空下で乾燥させた。Cysの充填は0.60mmol/gであったと測定した(収率78%)。方法Aまたは方法Bのいずれかによって連続的カップリングを得た。方法Aは、NMP/CH2Cl2(1:1、2mL)に溶かしたFmoc-保護アミノ酸[Fmoc-Cys(Trt)-OH(1.17g、2.00mmol)、Fmoc-Ala-OH(622mg、2.00mmol)、Fmoc-Leu-OH(707mg、2.00mmol)、Fmoc-Gln(Trt)-OH(1.22g、2.00mmol)、Fmoc-Ser(tBu)-OH(767mg、2.00mmol)、およびFmoc-His(Trt)-OH(1.24g、2.00mmol)]、PyBOP(1.04g、2.00mmol)、およびHOBt(270mg、2.00mmol)の事前作製溶液の添加、次にi-Pr2EtN(0.55mL、4.0mmol)の添加からなる。反応は少なくとも4時間進行させた。方法Bは、10分間のDIC(130μL、0.84mmol)およびHOBt(108mg、0.800mmol)DMF(2mL)中とのインキュベーションによって予め活性化した、適切に保護された酸[Fmoc-Lys(Boc)-OH(375mg)]の0.4M溶液への樹脂の施用からなる。カップリングは4時間進行させた。それぞれのカップリングの後、樹脂を濾過し、洗浄し(NMP:5x3mL、CH2Cl2:5x3mL)、次にFmoc保護基を除去した。最終α-アミノ酸残基のカップリングおよび脱保護後、10分間のDIC(120μL、0.80mmol)およびHOBt(108mg、0.800mmol)NMP(1mL)中とのインキュベーションによって予め活性化したFmoc-S-Ava-OH(272mg、0.800mmol)の0.4M溶液への樹脂の施用によってアミノ吉草酸リンカーを加えた。カップリングは一晩進行させた。樹脂を濾過し、洗浄し(5x3mLのNMP、5x3mLのCH2Cl2)、Fmoc保護基を除去し、樹脂を再度洗浄した。10分間のDIC(130μL、0.84mmol)およびHOBt(108mg、0.800mmol)NMP(2mL)中とのインキュベーションによって予め活性化したローダミン19(412mg、0.8mmol)の0.4M溶液を加えることによって、ローダミン基を取り込ませた。反応は6時間進行させ、カップリング手順をもう一度繰り返し、反応を一晩進行させた。基質は94:2:2:2TFA/トリイソプロピルシラン/H2O/エタンジチオール(3mL)の溶液との2時間のインキュベーションによって樹脂から切断し、予備C18逆相HPLC(CH3CH/H2O-0.1%TFA、5〜95%で50分間、20mL/分、220/254/280nm検出100分間、tR=24.3分)を使用して精製し、凍結乾燥させた。C78H116N19017Sに関して計算したMS(MALDI)、m/z:1622.85.Found:m/z1623.90。
【0117】
(SERS分光法)
顕微鏡システムおよびラマン分光計を使用して、一種のナノクレセントからラマン散乱スペクトルを得た。この系は、デジタルカメラおよび300mmの集束長のモノクロメーター(Acton Research、MA)および1024x256ピクセルの冷却スペクトログラフCCDカメラ(Roper Scientific、NJ)を備えるCarl Zeiss Axiovert200倒立顕微鏡(Carl Zeiss、ドイツ)からなっていた。785nmの半導体レーザーを我々の実験におけるラマン散乱の励起源として使用し、40倍顕微鏡対物レンズによってナノクレセントにレーザービームを集束させた。光度計(Newport、CA)により励起出力は最大0.8mWであると測定した。ラマン散乱光を次いでロングパスフィルターを介して同じ光学経路によって集束させ、分光計によって分析した。
【0118】
本明細書に記載する実施例および実施形態は単なる例示目的であること、および本発明に照らした様々な変更形態または変形は当業者には連想されるはずであり、それらは本出願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれることは理解される。本明細書に列挙する全ての刊行物、特許、および特許出願は、あらゆる目的で、かつ各々が具体的および個々に参照により組み込まれる場合と同程度で、その全容が参照により本明細書に組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1A】PSA検出、製造手順、および検出に関してペプチドコンジュゲート化ナノクレセントを示す図である。図1A:製造手順。ナノスケールのAu層をポリスチレンナノ粒子に蒸着させて、高い光密度を示す三日月形の先端を有するAuナノクレセント(TEM画像で示す)を形成した。ペプチドは特異的なPSA基質配列HSSKLQ(配列番号1)を用いて合成し、それぞれラマンタグ分子、ビオチンまたはR19(示さず)、両方の型のタグペプチドに関してシステインによって終結させた。ペプチドはAu-S結合を介してナノクレセントのAu表面とコンジュゲート化させた。
【図1B】PSA検出、製造手順、および検出に関してペプチドコンジュゲート化ナノクレセントを示す図である。図1B:PSA検出スキーム。タンパク質分解反応の前に、ペプチドコンジュゲート化ナノクレセントのSERSスペクトルは、ラマンタグ分子、ポリスチレンナノ粒子、およびペプチド由来の特徴的なピークを含み、PSAによる消化反応後に、ペプチドはQの後で切断される。ラマンタグ分子を含む切断断片はナノクレセント表面から拡散し、一方で、他の断片はナノクレセント表面に残る。ペプチドのSERSスペクトルは異なる状態になり、ラマンタグ分子由来の特徴的なピークは消失する。
【図1C】PSA検出、製造手順、および検出に関してペプチドコンジュゲート化ナノクレセントを示す図である。図1C:(1)シミュレーションした局所電場の、ナノクレセントによる振幅増強。ナノクレセントの先端領域は、100倍の電磁的増大係数を有する。(2)ナノクレセントにおける分極電場のエネルギー分布。ほぼ100%のエネルギーが、ナノクレセントの全領域の約1/6を占める先端領域近辺に集中している。
【図2A】鋭利な縁部を有する金のナノクレセント月形を示す図である。図2A:ナノクレセント月形のSERS基材の概念図。金の表面は生物分子リンカーで官能化して、特定の生物分子を認識させることが可能である。ナノクレセント月形の鋭利な縁部は、ラマン散乱強度を増大し、その結果、その上の生物分子を検出することが可能である。
【図2B】鋭利な縁部を有する金のナノクレセント月形を示す図である。図2B:ナノクレセント月形の形状図。鋭利な縁部を有する金のナノクレセント月形は、ナノリングの球形およびナノチップを統合したものである。
【図2C】鋭利な縁部を有する金のナノクレセント月形を示す図である。図2C:2つのナノクレセント月形の透過電子顕微鏡画像。示すナノクレセント月形はいずれも300nmの内径、100nmの底厚であるが、異なる配向である。スケールバーは100nmである。
【図3】ナノクレセント月形に関する製造手順を示す図である。(a)フォトレジストでコーティングしたガラス基板上への単層の球状ポリスチレンコロイドのキャスティング。(b)電子ビーム蒸着によるポリスチレンコロイドの表面上での金層のコーティング。蒸着中は金標的に対して一定角度でサンプルを回転し続ける。ナノクレセント月形の形状は、ポリスチレン球体の大きさ以外に蒸着角に依存する。(c)基板からの金でコーティングしたポリスチレン球体の離脱。(d)金のナノクレセント月形の走査型電子顕微鏡による検鏡。コロイド粒子の溶解によって、ナノクレセント月形が懸濁液中に放出される。次いでナノクレセント月形を回収し、基板上に置く。SEMにおける実証の便宜上、我々の光学的実験で使用したナノクレセント月形と同様に、示したナノクレセント月形は水希釈液には施さなかった。スケールバーは200nmである。
【図4】一部分が重複する2つの円として示したナノクレセント月形(rが内半径であり、Rが外半径であり、かつdが中心間距離である)の形状を示す図である。
【図5】SERS顕微分光法システムおよびナノクレセントの可視化を示す図である。ペプチドコンジュゲート化ナノクレセントは、隔離した透明な中が見えるマイクロチャンバー内で反応バッファー中に懸濁させる。斜角からの暗視野照明を使用して、挿入図中に示す明るい点としてナノクレセントを可視化することができる。顕微鏡対物レンズによってナノクレセントに励起レーザーを集束させる。SERSシグナルを同じ対物レンズによって集束させ、分光計によって分析する。
【図6A】ラマンタグ分子としてビオチンを用いたPSA消化反応前後の、ペプチドコンジュゲート化ナノクレセントの典型的なSERSスペクトルを示す図である。
【図6B】それぞれラマンタグ分子としてR19を用いたPSA消化反応前後の、ペプチドコンジュゲート化ナノクレセントの典型的なSERSスペクトルを示す図である。
【図7A】PSA消化反応における時間分解SERSスペクトルを示す図である。図7A:ラマンタグ分子としてビオチンを用いた場合の、420nMのPSAによるペプチド消化におけるSERSスペクトル。
【図7B】PSA消化反応における時間分解SERSスペクトルを示す図である。図7B:ラマンタグ分子としてR19を用いた場合の、420nMのPSAによるペプチド消化におけるSERSスペクトル。
【図7C】PSA消化反応における時間分解SERSスペクトルを示す図である。図7C:ラマンタグ分子としてR19を用いた場合の、阻害剤存在下での420nMのPSAによるペプチド消化におけるSERSスペクトル。
【図7D】PSA消化反応における時間分解SERSスペクトルを示す図である。図7D:ラマンタグ分子としてR19を用いた場合の、420nMのグランザイムBによるペプチド消化におけるSERSスペクトル。
【図8A】PSA消化反応における時間依存性のラマンピーク強度を示す図である。図8A:それぞれ0M(バッファー溶液)、4.2nM、42nMおよび420nMのPSAを用いた消化反応中の525cm-1におけるビオチンのラマンピーク強度。
【図8B】PSA消化反応における時間依存性のラマンピーク強度を示す図である。図8B:それぞれ420nMのPSA、420nMのPSAおよび阻害剤、および420nMのグランザイムBを用いた消化反応中の1183cm-1におけるR19のラマンピーク強度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性プロテアーゼを検出するためのインジケーターであって、
ペプチドと結合したナノクレセントを含み、前記ペプチドが前記プロテアーゼの認識部位を含むインジケーター。
【請求項2】
前記ペプチドと結合したラマン標識をさらに含む、請求項1に記載のインジケーター。
【請求項3】
前記ラマン標識がフルオロフォア、発色団、量子ドット、蛍光ミクロスフェア、およびビオチンからなる群から選択される、請求項2に記載のインジケーター。
【請求項4】
前記ラマン標識がローダミン、フルオレセイン、または外来化学分子を含む、請求項2に記載のインジケーター。
【請求項5】
前記ラマン標識がTRIT(テトラメチルローダミンイソチオール)、NBC(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール)、テキサスレッド色素、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレシルファストバイオレット、クレシルブルーバイオレット、ブリリアントクレシルブルー、パラ-アミノ安息香酸、エリスロシン、ビオチン、ジゴキシゲニン、5-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン、5-カルボキシ-2',4',5',7'-テトラクロロフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、5-カルボキシローダミン、6-カルボキシローダミン、6-カルボキシテトラメチルアミノフタロシアニン、6-カルボキシ-X-ローダミン、アゾメチン、シアニン、キサンチン、スクシニルフルオレセイン、アミノアクリジン、およびシアン化物(CN)、チオール(SH)、塩素(Cl)、臭素(Br)、メチル、リン(P)、イオウ(S)、SN、Al、Cd、Eu、およびTeからなる群から選択される部分を含む、請求項2に記載のインジケーター。
【請求項6】
前記ラマン標識が前記ペプチドと直接結合している、請求項2に記載のインジケーター。
【請求項7】
前記ラマン標識がリンカーによって前記ペプチドと結合している、請求項2に記載のインジケーター。
【請求項8】
前記ナノクレセントがコアを有さない殻を含む、請求項1から7のいずれかに記載のインジケーター。
【請求項9】
前記ナノクレセントがコアおよび殻を含む、請求項1から7のいずれかに記載のインジケーター。
【請求項10】
前記コアが一定のラマンスペクトルをもたらす物質を含む、請求項9に記載のインジケーター。
【請求項11】
前記コアがプラスチック、シリカまたは他のIII族、IV族、またはV族の物質、デキストラン、および磁性物質からなる群から選択される物質を含む、請求項10に記載のインジケーター。
【請求項12】
前記コアがポリスチレンを含む、請求項11に記載のインジケーター。
【請求項13】
前記ナノクレセントがGa、Au、Ag、Cu、Al、Ta、Ti、Ru、Ir、Pt、Pd、Os、Mn、Hf、Zr、V、Nb、La、Y、Gd、Sr、Ba、Cs、Cr、Co、Ni、Zn、Ga、In、Cd、Rh、Re、W、Moからなる群から選択される金属、およびその酸化物、合金、混合物、および/または窒化物を含む、請求項9に記載のインジケーター。
【請求項14】
前記ナノクレセントが約20〜約800nmの範囲の外半径を有する、請求項9に記載のインジケーター。
【請求項15】
前記ナノクレセントが約10nm〜約500nmの内半径を有する、請求項9に記載のインジケーター。
【請求項16】
前記ナノクレセントが内半径r、および外半径R、ならびに前記内半径rと前記外半径Rによって定義される前記円の中心の間の中心間距離によって特徴付けられ、
rが約10nm〜約500nmの範囲であり、
Rが約20nm〜約800nmの範囲であり、
dが約5nm〜約300nmの範囲である、請求項9に記載のインジケーター。
【請求項17】
前記ナノクレセントが内半径r、および外半径R、ならびに前記内半径rと前記外半径Rによって定義される前記円の中心の間の中心間距離によって特徴付けられ、
rが約25nm〜約500nmの範囲であり、
Rが約20nm〜約800nmの範囲であり、
dが約5nm〜約200nmの範囲である、請求項9に記載のインジケーター。
【請求項18】
前記ペプチドがセリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、およびグルタミン酸プロテアーゼからなる群から選択されるプロテアーゼの認識部位を含む、請求項9に記載のインジケーター。
【請求項19】
前記ペプチドがアポトーシス経路におけるプロテアーゼの認識部位を含む、請求項9に記載のインジケーター。
【請求項20】
前記ペプチドがカスパーゼの認識部位を含む、請求項19に記載のインジケーター。
【請求項21】
前記ペプチドがカスパーゼ-8、カスパーゼ-9、カスパーゼ-3、カスパーゼ-6、およびカスパーゼ-7からなる群から選択されるカスパーゼの認識部位を含む、請求項19に記載のインジケーター。
【請求項22】
前記ペプチドがトロンビンの認識部位を含む、請求項18に記載のインジケーター。
【請求項23】
前記ペプチドがセリンプロテアーゼの認識部位を含む、請求項18に記載のインジケーター。
【請求項24】
前記ペプチドがPSA認識部位を含む、請求項23に記載のインジケーター。
【請求項25】
前記ペプチドがアミノ酸配列HSSKLQ(配列番号1)を含む認識部位を含む、請求項23に記載のインジケーター。
【請求項26】
前記ペプチドが2アミノ酸〜30アミノ酸の長さの範囲である、請求項9に記載のインジケーター。
【請求項27】
前記ペプチドが2アミノ酸〜10アミノ酸の長さの範囲である、請求項26に記載のインジケーター。
【請求項28】
前記ペプチドが前記ナノクレセントと直接結合している、請求項9に記載のインジケーター。
【請求項29】
前記ペプチドがリンカーによって前記ナノクレセントと結合している、請求項9に記載のインジケーター。
【請求項30】
前記ペプチドがチオール基によって前記ナノクレセントと結合している、請求項9に記載のインジケーター。
【請求項31】
2つの異なるペプチドが前記ナノクレセントと結合している、請求項2に記載のインジケーター。
【請求項32】
3つ以上の異なるペプチドが前記ナノクレセントと結合している、請求項2に記載のインジケーター。
【請求項33】
前記インジケーターがラマン活性基材の構成要素である、請求項1に記載の部分。
【請求項34】
サンプル中の少なくとも1つのプロテアーゼの存在、量、または活性を検出または定量化する方法であって、
ペプチドと結合したナノクレセントを含むインジケーターと前記サンプルを接触させる段階であって、前記ペプチドが前記プロテアーゼの認識部位を含む段階と、
検出した表面ラマン散乱スペクトルのスペクトル特性の差異をモニターする段階であって、前記差異がサンプル中に存在するプロテアーゼの存在、量、または活性の指標である段階と
を含む方法。
【請求項35】
前記インジケーターが前記ペプチドと結合したラマン標識をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記モニターする段階が表面増強ラマン散乱(SERS)をモニターする段階を含む、請求項34または35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記サンプルが全血、血漿、血清、滑液、脳脊髄液、気管支洗浄液、腹水、精液、骨髄穿刺液、胸水、尿、および腫瘍細胞または組織からなる群から選択されるサンプルからなる群から選択される物質を含む、請求項34または35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記ペプチドが癌の存在または進行のマーカーであるプロテアーゼの認識部位を含む、請求項34または35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記ペプチドがPSAの認識部位を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ペプチドがアミノ酸配列HSSKLQ(配列番号1)を含む認識部位を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記サンプルが全血、血液分画、リンパ、脳脊髄液、口腔液、粘液、尿、糞便、および精液からなる群から選択される物質を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
2つ以上の活性プロテアーゼの存在または活性を検出するためのライブラリーであって、
ペプチドと結合したナノクレセントを含む複数のプロテアーゼインジケーターであって、前記ペプチドが前記プロテアーゼの認識部位を含み;異なるナノクレセントが異なるプロテアーゼを検出するように、異なるナノクレセントが異なるペプチドと結合しているプロテアーゼインジケーター
を含むライブラリー。
【請求項43】
異なるプロテアーゼに特異的なプロテアーゼインジケーターが基材上の異なる位置に局在するように空間的に処理された、請求項42に記載のライブラリー。
【請求項44】
異なるプロテアーゼに特異的なプロテアーゼインジケーターが異なるシグナルを生成するように光学的に処理された、請求項42に記載のライブラリー。
【請求項45】
前記ライブラリーが少なくとも3個以上の異なるプロテアーゼインジケーターを含む、請求項42または43のいずれか一項に記載のライブラリー。
【請求項46】
前記ライブラリーが少なくとも10個以上の異なるプロテアーゼインジケーターを含む、請求項42または43のいずれか一項に記載のライブラリー。
【請求項47】
前記ナノクレセントが磁性コアを含み、インジケーターの空間的分離が磁場によってもたらされる、請求項42または43のいずれか一項に記載のライブラリー。
【請求項48】
前記インジケーターが基材とイオン結合または化学結合している、請求項42または43のいずれか一項に記載のライブラリー。
【請求項49】
前記インジケーターが基材に吸着している、請求項42または43のいずれか一項に記載のライブラリー。
【請求項50】
活性プロテアーゼを検出するためのキットであって、前記インジケーターが
ペプチドと結合したナノクレセントを含む容器であって、前記ペプチドが前記プロテアーゼの認識部位を含む容器
を含むキット。
【請求項51】
前記キットが前記ペプチドと結合したラマン標識をさらに含む、請求項50に記載のキット。
【請求項52】
前記キットが、表面増強ラマン散乱(SERS)を使用して活性プロテアーゼの存在、濃度または活性を検出するための前記インジケーターの使用を教示する教示書をさらに含む、請求項50に記載のキット。
【請求項53】
ヌクレアーゼを検出するためのインジケーターであって、
一本鎖または二本鎖オリゴヌクレオチドと結合したナノクレセントであって、前記オリゴヌクレオチドが前記ヌクレアーゼの認識部位を含むナノクレセント
を含むインジケーター。
【請求項54】
前記インジケーターが前記オリゴヌクレオチドと結合したラマン標識をさらに含む、請求項1に記載のインジケーター。
【請求項55】
検体の存在または量を検出する方法であって、
前記検体を含むサンプルとインジケーターを接触させる段階であって、前記インジケーターが、基質との結合に関して前記検体と競合するラマン標識部分の存在下で前記検体と特異的または優先的に結合する基質と結合したナノクレセントを含む段階と、
前記インジケーターのラマンスペクトルを検出する段階であって、前記基材からの前記ラマン標識部分の解離によって生じるラマンスペクトルの変化が前記サンプル中の前記検体の存在または量の尺度をもたらす段階と
を含む方法。
【請求項56】
前記基材がペプチドまたは核酸である、請求項55に記載の方法。

【図2C】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図7D】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2009−535060(P2009−535060A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509709(P2009−509709)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/010722
【国際公開番号】WO2008/018933
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】