説明

単一位相流体インプリント・リソグラフィ法

本発明は、基板上に付着した粘性液体層に存在するガス・ポケットを大幅に減少させることによって、インプリンティング層におけるパターン歪みを軽減する方法を対象とする。そのため、この方法には、粘性液体に近接した位置にあるガスの輸送を変更するステップが含まれている。すなわち、パターンが記録されることになる基板に近接した大気が、付着している粘性液体に対して、溶解性が高いか、拡散性が高いか、あるいは、その両方であるガスで飽和させられる。大気の飽和に加えて、又は、その代わりに、大気圧を低下させることも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、インプリント・リソグラフィに関するものである。とりわけ、本発明は、インプリント層に存在するガスを除去するとはいかないまでも、低減することによって、インプリント・リソグラフィ中のパターンの歪みを軽減することを対象とするものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロファブリケーションには、例えば、マイクロメートル以下のオーダのフューチャを備える極小構造の製作が必要になる。マイクロファブリケーションがかなりの影響を及ぼす領域の1つは、集積回路の処理である。半導体処理産業は、引き続き、より多くの製品歩留まりを追及し、同時に、基板上に形成される単位面積当り回路数を増加させようとしているので、マイクロファブリケーションは、ますます重要になる。マイクロファブリケーションによれば、工程管理がより厳密に行われ、同時に、形成される構造の最小フューチャ寸法を縮小させることができる。マイクロファブリケーションが用いられてきた他の開発領域には、バイオテクノロジ、光テクノロジ、機械システム等がある。
【0003】
典型的なマイクロファブリケーション技法については、先行技術文献に記載がある(例えば、特許文献1参照)。この文献には、ある構造にレリーフ像を形成する方法が開示されている。この方法には、転写層を備える基板を設けるステップが含まれる。転写層は、重合可能流体配合物で被覆される。モールドが、重合可能流体と機械的に接触する。モールドには、レリーフ構造が含まれており、重合可能流体配合物によって、レリーフ構造が充填される。重合可能流体配合物は、次に、それを固化させて、重合させる条件にさらされ、モールドのレリーフ構造と相補性のレリーフ構造を含む固化高分子材料が転写層に形成される。次に、固形高分子材料からモールドが引き剥がされ、モールドのレリーフ構造のレプリカが、固化高分子材料に形成される。転写層と固化高分子材料は、固化高分子材料に関する転写層への選択的エッチングを施す環境にさらされて、転写層にレリーフ像が形成される。必要とされる時間、この技法によって可能となる最小フューチャ寸法は、とりわけ、重合可能材料の組成によって決まる。
【0004】
先行技術文献の1つ(特許文献2参照)には、基板にコーティングされた薄膜に超微細(25nm未満)パターンを生成するためのリソグラフィック法及び装置が開示されており、この場合、少なくとも1つの隆起したフューチャを備えるモールドが基板に支持された薄膜に圧入される。モールドの隆起したフューチャによって、薄膜の凹部が形成される。薄膜からモールドが除去される。次に、薄膜に処理が施されて、凹部内の薄膜が除去され、下方の基板が露出する。こうして、薄膜内にモールドのパターンが複製され、リソグラフィが完了する。薄膜内のパターンは、後続のプロセスにおいて、基板内に、又は、基板に付加される別の材料に再現される。
【0005】
先行技術文献の1つ(非特許文献1)に、レーザ応用直接インプリント(LADI)・プロセスと呼ばれる、もう1つの先行インプリント・リソグラフィ技法が開示されている。このプロセスでは、基板のある領域が、レーザでその領域を加熱することによって、流動性にされる、例えば、液化される。その領域が所望の粘度に達すると、パターンが形成されたモールドが、その領域に接触するように配置される。流動性領域は、パターンの輪郭と形状が一致し、その後、冷却されて、パターンが基板に固化される。上述の技法に関する問題は、流動性領域に近接した大気の存在に起因するパターンの歪みを伴うことにある。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,334,960号明細書
【特許文献2】米国特許第5,772,905号明細書
【非特許文献1】Chou他、「Ultrafast and Direct Imprint of Nanostructures in Silicon」、Nature、2002年6月、第417巻、p.835−837
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、インプリント・リソグラフィック技法を用いて形成されるパターンの歪みを軽減するシステムを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板上に付着した粘性液体層に存在するガス・ポケットを大幅に減少させることによって、パターン歪みを軽減する方法を対象とする。そのため、この方法には、粘性液体のさまざまな輸送特性によって、モールドに近接したガスを分配するステップが含まれている。すなわち、基板に近接した大気は、付着した粘性液体に対して、可溶性が高いか、拡散性が高いか、あるいは、その両方であるガスで飽和状態である。さらに、あるいは上述の大気を用意する代わりに、大気圧を低下させることも可能である。これらの方法を利用することによって、歪みのないインプリントの迅速な製作が容易になる。以上の及びその他の実施態様については、さらに詳細に後述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1には、ブリッジ14を備える一対の間隔をあけたブリッジ支持体12と、その間に延びるステージ支持体16を含む、本発明の実施形態の1つによるリソグラフィック・システム10が描かれている。ブリッジ14とステージ支持体16は、間隔をあけて位置している。ブリッジ14には、ブリッジ14からステージ支持体16に向かって延び、Z軸に沿って移動するインプリント・ヘッド18が結合されている。移動ステージ20が、インプリント・ヘッド18に向かい合って、ステージ支持体16上に配置されている。移動ステージ20は、ステージ支持体16に対しX軸及びY軸に沿って移動するように構成されている。もちろん、インプリント・ヘッド18は、Z軸だけではなく、X軸及びY軸に沿った移動も可能であり、移動ステージ20は、X軸及びY軸だけではなく、Z軸における移動も可能である。本発明の譲受人に譲渡され、参考までにそっくりそのまま本明細書で援用されている、2002年7月11日提出の、「Step and Repeat Imprint Lithography Systems」と題する米国特許出願公開第10/194,414号明細書には典型的な移動ステージ装置が開示されている。リソグラフィック・システム10には、移動ステージ20に化学線を当てるため、放射線源22が結合されている。図示のように、放射線源22は、ブリッジ14に結合されており、放射線源22に接続された発電機23を含んでいる。リソグラフィック・システム10の動作は、一般に、それとのデータのやりとりをするプロセッサ25によって制御される。
【0010】
図1及び図2の両方を参照すると、モールド28を取り付けたテンプレート26が、インプリント・ヘッド18に接続されている。モールド28には、間隔をあけた複数の凹部28aと隆起部28bによって形成された複数のフューチャが含まれている。この複数のフューチャによって、移動ステージ20に配置された基板30に転写すべき元のパターンが形成される。そのため、インプリント・ヘッド18及び/又は移動ステージ20によって、モールド28と基板30との距離「d」を変化させることが可能である。こうして、さらに詳細に後述するように、モールド28のフューチャを基板30の流動性領域にインプリントすることが可能になる。放射線源22は、モールド28が放射線源22と基板30の間に位置するように配置されている。結果として、モールド28は、放射線源22によって生じる放射線に対してほぼ透明にすることが可能な材料から製作される。
【0011】
図2及び図3の両方を参照すると、インプリンティング層34のような流動性領域が、ほぼ平面状の輪郭を示す表面32の一部に配置されている。流動性領域は、参考までに本明細書においてそっくりそのまま援用されている、米国特許第5,772,905号明細書に開示の高温エンボス加工、又は、Chou他、「Ultrafast and Direct Imprint of Nanostructures in Silicon」、Nature、2002年6月、第417巻、p.835−837に記載のタイプのレーザ応用直接インプリンティング(LADI)といった、任意の既知の技法を利用して形成することが可能である。さらに、流動性領域には、成形又は硬化を施すことによって、剛性レプリカを形成することが可能になる、スピン・コーティングされた粘性流体の薄膜を含むことも可能である。しかし、本実施形態の場合、流動性領域は、さらに詳細に後述するように、ある材料36aによる複数の間隔をあけた離散的小滴36として基板30上に付着させられた、インプリンティング層34から構成される。本発明の譲受人に譲渡され、参考までにそっくりそのまま本明細書で援用されている、2002年7月9日提出の、「System and Method for Dispensing Liquids」と題する米国特許出願公開第10/191,749号明細書には、小滴36を付着させるための典型的なシステムが開示されている。インプリンティング層34は、選択的に重合させ、架橋結合させて、もとのパターンを記録し、記録されたパターンを形成することが可能な材料36aから形成されている。参考までにそっくりそのまま本明細書で援用されている、2003年6月16日提出の、「Method to Reduce Adhesion Between a Conformable Region and a Pattern of a Mold」と題する米国特許出願公開第10/463,396号明細書には、材料36aの典型的な組成が開示されている。図4には、ポイント36bにおいて架橋結合されて、架橋結合高分子材料36cを形成する、材料36aが示されている。
【0012】
図2、図3、図5を参照すると、インプリンティング層34に記録されるパターンが、部分的に、モールド28との機械的接触によって形成される。そのため、距離「d」を縮めて、小滴36とモールド28を機械的に接触させ、小滴36が拡散して、表面32上に連続して形成される材料36aによって、インプリンティング層34を形成させることが可能である。実施形態の1つでは、距離「d」を縮めて、インプリンティング層34の小部分34aを凹部28a内に移入させ、充填することが可能である。
【0013】
凹部28aの充填を容易にするため、材料36aには、凹部28aを完全に充填し、同時に、連続して形成される材料36aによって表面32を覆うのに不可欠な特性が付与されている。本実施形態の場合、隆起部28bの上に重なったインプリンティング層34の小部分34bは、所望の、通常は最短の、距離「d」に達した後も残留し、厚さt1の小部分34aと厚さt2の小部分34bが残される。厚さ「t1」と「t2」は、用途に応じた、任意の所望の厚さとすることが可能である。一般に、t1は、図5により明確に示されているように、小部分34aの幅uのわずか2倍、すなわち、t1≦2uにしかならないように選択される。
【0014】
図2、図3、図4を参照すると、所望の距離「d」に達した後、放射線源22によって、材料36aを重合させ、架橋結合させて、架橋結合高分子材料36cを形成する化学線が放出される。結果として、インプリンティング層34の組成によって、材料36aが架橋結合高分子材料36cに変換され、固化される。すなわち、架橋結合高分子材料36cが固化されて、図5により明確に示されるように、インプリンティング層34の34c側にモールド28の表面28cの形状に一致する形状が生じる。インプリンティング層34が、図4に示すように、架橋結合高分子材料36cからなるように変換された後、図2に示すインプリント・ヘッド18は、モールド28とインプリンティング層34の間隔があくように、距離「d」を広げるため、移動させられる。
【0015】
図5を参照すると、追加処理を用いて、基板30のパターン形成を完成することが可能である。例えば、インプリンティング層34と基板30にエッチングを施して、インプリンティング層34のパターンを基板30に転写し、図6に示すパターン形成された表面32aが得られるようにすることが可能である。エッチングを容易にするため、インプリンティング層34が形成される材料を変更して、要望どおりの、基板30に対する相対的エッチング速度を決めることが可能である。インプリンティング層34と基板30の相対的エッチング速度は、約1.5:1〜約100:1とすることが可能である。
【0016】
代わりに、あるいはさらに、インプリンティング層34に、選択的に付着させたフォトレジスト材料(不図示)に対してエッチング差をつけることが可能である。既知の技法を利用して、フォトレジスト材料(不図示)を塗布し、インプリンティング層34にさらにパターン形成することも可能である。所望のエッチング速度と、基板30やインプリンティング層34を形成する基礎的成分に応じて、任意のエッチング・プロセスを用いることが可能である。典型的なエッチング・プロセスには、プラズマ・エッチング、反応性イオン・エッチング、化学ウェット・エッチング等を含むことが可能である。
【0017】
図7、図8を参照すると、モールド28が存在するテンプレート26が、チャック本体42を含むチャッキング・システム40によって、インプリント・ヘッド・ハウジング18aに結合されている。チャック本体42は、真空技法を用いて、モールド28が取り付けられているテンプレート26を保持する。そのため、チャック本体42には、流体供給システム70のような圧力制御システムと流体で通じている1つ以上の凹部42aが含まれている。流体供給システム70には、正圧と負圧の両方を供給するための1つ以上のポンプや、図5に示すインプリンティング層34内への空気のようなガスの閉じ込めを阻止できないまでも、その低減を促進する流体供給源を含むことが可能である。本発明の譲受人に譲渡され、参考までにそっくりそのまま本明細書において援用されている、「Chucking System For Modulating Shapes of Substrates」と題する、米国特許出願公開第10/293,224号明細書には、典型的なチャッキング・システムの1つが開示されている。
【0018】
上述のように、インプリント中、テンプレート26、従って、モールド28は、領域77に配置されたインプリンティング材料36aへのパターン形成前に、基板30のすぐ近くにまで移動させられる。すなわち、テンプレート26は、基板30から数十ミクロン以内、例えば、およそ15ミクロン以内に移動させられる。テンプレート26と領域77の両方に近接した大気78の局所制御を実施するのが望ましいことが分っている。例えば、インプリンティング材料36a内に存在する、及び/又は、パターン形成されたインプリンティング層34に後で閉じ込められるガス、及び/又は、ガス・ポケットの悪影響を回避するため、大気78内の流体組成、及び/又は、大気78の圧力を制御するのが有効であることが分っている。
【0019】
図9を参照すると、大気78の制御を容易にするため、チャック本体42は、モールド28に近接した流体の通過を促進するように設計されており、インプリント・ヘッド18には、テンプレート26を包囲するバッフル100が含まれている。すなわち、バッフル100は、インプリント・ヘッド18から突き出して、表面26aが位置する平面内にある最下部102が末端をなしている。この方法では、モールド28が、最下部102を越えて突き出し、領域77との接触を容易にする。チャック本体42には、1つ以上の通路が含まれており、そのうちの2つが104、106として示されている。通路104、106のアパーチャ104a、106aは、それぞれ、テンプレート26とバッフル100の間に配置された、周辺表面100aと呼ばれるチャック本体42の表面に配置されている。通路104、106によって、アパーチャ104a、106aは流体供給システム70と流体で通じている。バッフル100は、モールド28から離れる、アパーチャ104a、106aを出る流体の動きを減速する働きをする。そのため、バッフル100には、第1と第2の反対側の表面102a、102bが含まれている。第1の反対側表面102aは、基板30から離れ、最下部102から延びて、テンプレート26の方を向いている。第2の反対側表面102bは、基板30から離れ、最下部102から延びて、モールド28から外に向いている。必要というわけではないが、第1の反対側表面102aは、図示のように、第2の反対側表面102bに対して斜めに延びている。この構成の場合、大気78は、アパーチャ104a、106aを介した流体の導入又は排出によって制御可能である。また一方、第1及び第2の反対側表面102a、102bは、最下部102から互いに平行に延びることも可能である。
【0020】
図3及び図9を参照すると、実施形態の1つにおいて、大気78は、領域77のインプリンティング材料36aを通り抜ける大気に含まれるガスの輸送が、空気に関連した輸送に対して増大するようにつくられる。輸送という用語は、インプリンティング材料36aを通り抜けるガスの伝播を促進する任意のメカニズム、例えば、溶解性の向上、拡散の増大、透過性の向上等を生じることになるものと定義される。そのため、流体供給システム70には、蒸気の形態のインプリンティング材料36a又はその成分の供給源を含むことが可能である。流体供給システム70とデータのやりとりをするプロセッサ25の制御下において、アパーチャ104a、106aを介して、インプリンティング材料36aを導入し、大気78をインプリンティング材料36aで飽和させることが可能である。これは、インプリント・プロセス中にインプリンティング層34に閉じ込められた空気のようなガスを完全に除去するとはいかないまでも、その量を減少させることが明らかになった。これは、インプリンティング層34に存在する空気が望ましくないボイドを生じることが分っているので、有益である。あるいはまた、大気78を二酸化炭素及び/又はヘリウムで飽和させると、図5に示すインプリンティング層34に空気が閉じ込められないようにするとまではいかないまでも、その量が大幅に減少し、その結果、望ましくないボイドの形成をなくすとはいかないにせよ、減少させるということが判明した。さらに、上述の大気78を用いることによって、望ましくないボイドの数が減少するか、又は、無くなるだけではなく、許容可能な最低レベルのパターン欠陥の実現に必要な時間が大幅に短縮されることも明らかになった。もちろん、図3に示すインプリンティング材料36a、二酸化炭素、及び/又は、ヘリウムの混合物を図9に示す大気78に導入して、図5に示すインプリンティング層34に閉じ込められる空気の量を減少させることが可能である。
【0021】
図9、図10を参照すると、流体の導入に関して遭遇する問題は、アパーチャ104a、106aを出る流体流104b、106b中の分子がそれぞれ、モールド28と小滴36との間に位置する大気の領域まで、小滴36とモールド28の接触前に移動することであった。この大気78の領域は、処理領域78aと呼ばれる。図示のように、アパーチャ104a、106aは、処理領域78aから間隔をあけた周辺表面100aの付近に配置されている。領域77からモールド28までの離隔距離がミクロンのオーダであると仮定すると、処理領域78aへの前述の分子の進入は実現が困難である。
【0022】
前述の問題を克服するための方法の1つは、上述の所望の分子混合物を含む大気78中に流体流104b、106bを律動的に送り込むのに適した制御ソフトウェア(不図示)がプログラムされたプロセッサ25の制御の下に、流体供給システム70をおくことである。こうして、流体流104b、106bの層流を回避することが可能になる。流体流104b、106bに乱流を生じさせることによって、それに含まれる十分な量の分子が処理領域78aに到達して、インプリンティング層34(不図示)に閉じ込められるガスの存在を回避するとまではいかなくても、減少させる確率が高まる。そのため、流体を律動的に送って、アパーチャ104a、106aの両方を通過させることもできるし、あるいは、順次通過させることも可能である、すなわち、第1の流体をアパーチャ104aに導入し、その後、アパーチャ106aに導入し、次に、もう一度アパーチャ104aに導入し、...、このプロセスが、ある所望の時間にわたって、又は、全インプリンティング・プロセスの間中、繰り返されるようにすることが可能である。さらに、モールド28と小滴36とが接触する前に、ガスに含まれている十分な量の分子が処理領域78aに到達することが望ましいので、処理領域78aにガスが流入するタイミングが重要になる。
【0023】
あるいはまた、流体を律動的に送って、アパーチャの一方、例えば、アパーチャ104aを通過させ、次に、残りのアパーチャ、例えば、アパーチャ106aを介して排出することも可能である。こうして、流体は、処理領域78aを横切って流されることになる。流体を律動的に送って、アパーチャ104a、106aの両方を同時に通過させ、次に、アパーチャ104a、106aの両方を介して同時に排出するのが有利である場合もあり得る。しかし、流体の流量は、小滴36の移動を回避するとはいかないまでも、最小限の抑えるように設定するのが望ましい。
【0024】
アパーチャ104a、106aを出る流体が処理領域78aを横切るのを確実にするため、流体を律動的に同時に送って、アパーチャ104a、106aの両方を同時に通過させ、次に、アパーチャ104a、106aの一方を介して交互に排出するのが有利である場合もあり得る。アパーチャ104a、106aの両方を介して流体を同時に導入することによって、大気78の飽和に必要な時間が最短に抑えられる。アパーチャ104a、106aの一方を介して交互に流体を排出することによって、流体が処理領域78aを確実に通過することになる。例えば、第1のステップには、アパーチャ104a、106aの両方を介して大気78中に流体を導入することが含まれることになる。第2のステップには、アパーチャ104a、106aの一方、例えば、アパーチャ104aを介して流体を排出することが含まれることになる。その後の第3のステップでは、アパーチャ104a、106aの両方を介して、流体が大気78中に同時に導入されることになる。第4のステップでは、流体を除去する前回のステップに用いられなかった、アパーチャ104a、106aの一方、例えば、アパーチャ106aを介して、流体が排出される。もちろん、流体が、アパーチャ104a、106aの一方を介して導入されている間に、排出が、アパーチャ104a、106aの残りのアパーチャを介して行われることもあり得る。あるいはまた、大気78中への流体の流入がないときに、排出が行われることもあり得る。望ましい結果は、大気78中への流体の進入及びそこからの大気の排出が行われて、所望の濃度の流体になるということである。
【0025】
もう1つの実施形態の場合、周辺表面100a付近に複数のアパーチャを配置して、一対のアパーチャが、それぞれ、テンプレート26の反対側において互いに向かい合う位置につくようにすることが可能である。これが、テンプレート26の反対側において互いに向かい合う位置についたアパーチャ対104a、106aによって示されている。第2のアパーチャ対が、108a、110aとして示されている。アパーチャ108a、110aは、テンプレート26の反対側に互いに向かい合うように配置されている。
【0026】
図示のように、アパーチャ104a、106a、108a、110aは、それぞれ、隣接アパーチャとの間隔が90°あくようにして、共通円上に位置するように配置されている。こうして、アパーチャ104a、106a、108a、110aは、それぞれ、チャック本体42の異なる象限への/からの流体の流入/流出を促進するように配置されている。すなわち、アパーチャ104aは、象限Iへの/からの流体の流入/流出を促進し、アパーチャ106aは、象限IIへの/からの流体の流入/流出を促進し、アパーチャ108aは、象限IIIへの/からの流体の流入/流出を促進し、アパーチャ110aは、象限IVへの/からの流体の流入/流出を促進する。しかし、例えば、象限当り2つ以上といった、任意の数のアパーチャを用いて、異なる象限が、所望の任意の空間配置をなすように構成された、異なる数のアパーチャを備えるようにすることも可能である。これらの構成は、それぞれ、大気78中に流入する複数の流体流の導入及び/又は排出を促進し、複数の流れの一部がテンプレート26付近の異なる領域に導入されるようにするのが望ましい。流体流の複数の流れを導入すると、大気78内に流体の乱流が生じると考えられる。これによって、流体流中の分子が図9に示す処理領域78aに到達することになる確率が高まるものと考えられる。しかし、アパーチャ104a、106a、108a、110aのそれぞれを介した大気78への流体の流入、それらを介した大気78からの流体の排出は、上述の任意の方法によって行うことが可能である。
【0027】
図9、10、11を参照すると、もう1つの実施形態では、アパーチャ104a、106a、108a、110aのそれぞれに流体流を順次導入し、テンプレート26と領域77の間にフロー・セル112を生じさせることが可能である。フロー・セル112によって、処理領域78aへの流体流中の分子の進入が促進され、上述の利点が得られることになる。例えば、第1の流体流をアパーチャ104aに導入し、その後、終了することが可能である。アパーチャ104aを通る流体流の終了後、アパーチャ106aを通る流体流が開始され、大気78中に流体が導入される。その後、アパーチャ106aを通る流体流は終了する。アパーチャ106aを通る流体流の終了後、アパーチャ108aを通る流体流が開始され、大気78中に流体が導入される。その後、アパーチャ108aを通る流体流は終了する。アパーチャ108aを通る流体流の終了後、アパーチャ110aを通る流体流が開始され、大気78中に流体が導入される。こうして、流体は、任意の時間に単一象限を介して大気78中に導入される。しかし、2つ以上の象限に流体を導入するのが望ましい場合もあり得る。これによって、フロー・セル112の生成が妨げられる可能性があるが、それは本発明の範囲内である。
【0028】
あるいはまた、アパーチャ104a、106a、108a、110aを介した順次導入及び排出を行って、フロー・セル112を生成することも可能である。これには、アパーチャ104a、106a、108a、110aの1つ以上に同時に流体を導入することが含まれる。その後、アパーチャ104a、106a、108a、110aのそれぞれを介して、順次排出を行い、フロー・セル112を生成することが可能である。例えば、チャック本体42の全てのアパーチャを介して、流体を同時に導入することが可能である。その後、アパーチャ104a、106a、108a、110aのそれぞれから、1つずつ、流体を排出することが可能である。以前は、アパーチャ104a、106a、108a、110aを介して導入される流体の大気78中における濃度が、排出のため、所望のレベル未満に降下した。従って、アパーチャ104a、106a、108a、110aの1つ又は全てを介して、再度、流体を導入し直し、このプロセスを繰り返して、フロー・セル112の生成及び/又は維持を行うことが可能である。
【0029】
上述の本発明の実施形態は典型的なものである。上述の開示に多くの変更及び修正を施し、それにもかかわらず、本発明の範囲内に留まることが可能である。従って、本発明の範囲は、上記説明によって制限されるべきではなく、代わりに、付属の請求項、並びに、その同等物の全範囲に準拠して定めるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明によるリソグラフィック・システムの斜視図である。
【図2】図1に示すリソグラフィック・システムの略立面図である。
【図3】重合及び架橋結合前の、図2に示すインプリンティング層を構成する材料の略図である。
【図4】放射線にさらされた後、図3に示す材料が変換される架橋結合高分子材料の略図である。
【図5】インプリンティング層のパターン形成後における、図1に示すインプリンティング層から間隔をあけたモールドの略立面図である。
【図6】第1のインプリンティング層におけるパターンの転写後に、図5に示す基板上に配置される追加インプリンティング層の略立面図である。
【図7】図1に示すプリント・ヘッドの詳細斜視図である。
【図8】本発明によるチャッキング・システムの断面図である。
【図9】図7に示すインプリント・ヘッドの詳細断面図である。
【図10】図9に示すインプリント・ヘッドの上向き斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
22 放射線源、25 プロセッサ、26 テンプレート、28 モールド、28a 凹部、28b 隆起部、30 基板、32 表面、34 インプリンティング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に付着した粘性液体層に存在するガスを減少させるための方法であって、
前記粘性液体中における前記ガスの輸送を増すために、前記粘性液体に近接したガスの組成を変更するステップを含む方法。
【請求項2】
変更するステップが、さらに、前記粘性液体中における前記ガスの溶解度を高めるステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
変更するステップが、さらに、前記粘性液体中における前記ガスの拡散を促進するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
変更するステップが、さらに、前記粘性液体中における前記ガスの透過性を高めるステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
変更するステップが、さらに、前記粘性液体で飽和した大気中に流体を導入して、前記基板に近接した大気を制御するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
さらに、前記基板に近接した大気の圧力を低下させるステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
変更するステップが、さらに、大気中に流体を導入することによって、前記基板に近接した大気を制御し、前記粘性液体中における前記ガスの前記輸送を促進させるステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
さらに、二酸化炭素とヘリウムから構成される1組の流体から選択された前記流体を導入するステップを含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
テンプレートに配置されたモールドと基板との間に流体を導入する方法であって、
前記モールドと前記基板の間での流れにおいて前記流体の一部を移動させるために、前記基板と前記テンプレートの間に前記流体の乱流を生じさせるように、前記テンプレートに近接して前記流体の流れを導入するステップを含む方法。
【請求項10】
導入するステップに、さらに、前記テンプレートに隣接し、前記基板に重なる領域に、前記流体の前記流れを律動的に送り込むステップを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
導入するステップに、さらに、前記流体の前記流れを律動的に送るステップが含まれ、前記律動的に送るステップに、前記テンプレート周辺付近の異なる位置にある複数領域に順次前記流体を注入して、前記モールドと前記基板の間に位置する大気中にフロー・セルを生じさせるステップを含む請求項9に記載の方法。
【請求項12】
テンプレート上に配置されたモールドと基板の間に流体の流れを導入するためのシステムであって、
流体供給システムと、
バッフル、第1、第2のアパーチャを備えるチャック本体とが含まれており、前記第1、第2のアパーチャが、前記バッフルと前記テンプレートの間の前記チャック本体表面に配置されており、前記第1、第2のアパーチャが前記流体供給システムと流体で通じていて、前記モールドと前記基板の間に前記流体の乱流を生じさせる、前記システム。
【請求項13】
前記チャック本体に、さらに、前記バッフルと前記テンプレートの間における前記チャック本体の前記表面に配置された複数のアパーチャを含む請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記チャック本体に、前記バッフルと前記テンプレートの間における前記チャック本体の前記表面に配置された複数のアパーチャが含まれており、前記複数のアパーチャに、互いに向かい合って配置された一対のアパーチャを含む請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記チャック本体に、さらに、前記バッフルと前記テンプレートの間における前記チャック本体の前記表面に配置された複数のアパーチャが含まれ、その複数のアパーチャが、複数の象限を備える共通の円内に位置し、前記複数の象限のうちの1つの象限に、前記複数のアパーチャのうちの1組のアパーチャが含まれ、前記複数の象限の異なる象限に、前記複数のアパーチャのうちの異なる組をなすアパーチャを含む請求項12に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−509769(P2007−509769A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533980(P2006−533980)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/031408
【国際公開番号】WO2005/033797
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(503193362)モレキュラー・インプリンツ・インコーポレーテッド (94)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】