説明

単一使用のための注射器

充填材料(15)を1回計量するように設計された注射器(1)は、充填材料(15)を受ける格納チャンバ(5、6、7)を有し、格納チャンバ(5)は、充填材料を分配する送出端部(28)と、送出端部(28)の反対側に配置された搬送端部(29)と、を有し、格納チャンバ(5、6、7)は、閉塞可能な送出素子(13)を有し、充填材料は、格納チャンバ(5、6、7)内で格納可能である。結合素子(10)は、格納チャンバ(5、6、7)を充填材料(15)で充填するために格納チャンバ(5、6、7)をカートリッジ(2)に接続するために設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射器に、特に複数の成分を処理する注射器に関する。このような注射器は、単一使用のために設計されており、すなわち、特有の用途に通常必要な正確な量の充填材料を収容する。注射器は、特に、使用前に混合される少なくとも2つの成分を同時に分配することに適している。さらに、注射器の操作についての方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来の注射器は、非常に少量の充填材料を計量するために使用される。注射器は、その最も簡素な形態において、先端を有する管である。管部は、充填材料のための格納チャンバとして機能する。管部は、分配端部において先端部内に開口している。ピストンは、管部内で往復移動可能であり、搬送端部と称すべきである反対側に位置する端部に位置する。先端部は、充填材料が噴流として連続的にまたは滴状に非連続的に出る送出開口部を有する。充填材料を分配するため、ユーザは、先端部の方向にピストンを押圧する。充填材料は、先端部を通って注射器から出て、ユーザによって所望場所に塗布される。後続の処理は、注射器に充填材料を充填する工程に関して予め行われている。ピストンは、搬送処理を終えた後にそれが適用される所定位置、すなわち先端部からの間隔が最小である位置に至る。注射器の先端部は、充填材料の容器内に浸漬される。その間に、ピストンは、先端部から離間して移動され、充填材料は容器内に吸引される。
【0003】
このため、注射器は、ユーザに対して、少量かつ非常に少量の充填材料を正確に所定点まで適用する機能を主として果たす。特に、この充填材料が化学的に安定でない場合、充填材料は、容器内に所望量で提供されることができない。これは、充填材料が注射器自体に格納可能な状態で、予め充填した態様でこのような注射器をユーザに提供する必要があることを意味する。
【0004】
したがって、充填デバイスを用いて充填した注射器がある。充填デバイスは、その最も簡素な形態において、容器に接続されて注射器の搬送端部に結合されたホースである。注射器の格納チャンバには、ホースに接続されたポンプ装置を用いて充填材料が充填されている。充填の完了時に、注射器の先端部は、閉塞され、注射器の搬送端部は、ピストンで閉塞される。注射器は、このとき、使用の準備が整う。
【0005】
ユーザが使用前に直接注射器を充填したい場合、彼は、充填材料の容器を準備させておく可能性がある。この解決法は、特別な調整を充填材料の取り扱い及び格納に、例えば環境的に危険であるまたは有害である成分を含む充填材料に適用する場合に、不利である。したがって、このような充填材料を少量または不規則な時間間隔でのみ必要とするユーザは、予め充填された注射器の解決法を利用することに左右される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第0730913号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
充填空間は、充填した注射器を利用する場合に、ユーザに対して予め定められている。しかしながら、彼が別の充填空間を必要とする場合、彼は、それに応じて異なる充填空間を有する複数の充填した注射器を取っておかなければならない。この保管は、充填材料、特に化学的に不安定でそれに応じて有効期間が制限されている充填材料に対して必要性が小さいまたは不規則であるユーザにとって問題である。
【0008】
したがって、本発明の目的は、これを用いてユーザが、複雑なかつ/またはコストのかかる保管を行うこと及び危険な充填材料の保管に関する費用のかかる安全的な調整を順守する必要なく、所望量の充填材料を有する解決法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、充填材料の1回の計量のために設計された注射器によって満足される。注射器は、充填材料を受容する格納チャンバを有し、格納チャンバは、充填材料を分配する送出端部と、送出端部の反対側に配置された搬送端部と、を有する。格納チャンバは、その送出端部において閉塞可能な送出素子を有し、充填材料は、格納チャンバ内に格納可能である。結合素子は、格納チャンバを充填材料で充填するカートリッジに格納チャンバを接続するために設けられている。カートリッジは、充填材料を収容し、充填素子は、カートリッジから供給チャンバに充填材料を充填することを予測する。
【0010】
注射器と異なり、カートリッジは、大量の充填材料を計量するために使用される。注射器とカートリッジとの間を区別する制限は、25mlである。充填体積が25ml未満である場合、それを計量する器具は、注射器と称され、充填体積がこれを超える場合、計量する対応する器具は、カートリッジと称される。
【0011】
好ましい形態において、格納チャンバは、第1流動性成分を収容する第1部分チャンバと、第2流動性成分を収容する第2部分チャンバと、を有する。この形態において、注射器は、2以上の流動性成分を計量するために使用されてもよい。
【0012】
複数の流動性成分を計量する注射器の結合素子は、第1部分チャンバをカートリッジに接続する第1入口端部と、第2部分チャンバをカートリッジに接続する第2入口端部と、を有する。
【0013】
第1入口端部は、特に、第1管状スタブとして形成され、第2入口端部は、カートリッジに接続するように設計された第2管状スタブとして形成されており、第1管状スタブは、第1経路を有し、第2管状スタブは、第2経路を有する。第1経路は、第1部分チャンバに接続されており、第2経路は、第2部分チャンバに接続されている。
【0014】
第1及び第2管状スタブそれぞれは、カートリッジの第1送出素子または第2送出素子それぞれを受ける第1封止素子及び第2封止素子を有する。送出素子は、特に、管状に形成されている。カートリッジの送出素子は、第1送出経路と第2送出経路とを有する。第1及び第2管状スタブそれぞれは、これに替えて、カートリッジの第1管状送出素子または第2管状送出素子の内部で受ける第1封止素子及び第2封止素子を有してもよい。
【0015】
放出素子は、格納チャンバ内に配置され、充填材料を格納チャンバから分配する。
【0016】
複数の流動性成分のための注射器としての形態における注射器の放出素子は、第1ピストンと、少なくとも1つの第2ピストンと、を有する。第1ピストンは、第1部分チャンバ内で移動可能に受けられており、第2ピストンは、第2部分チャンバ内で移動可能に受けられており、第1または第2ピストンの少なくとも一方が移動すると、第1及び第2流動性成分は、同時に分配される。
【0017】
第1及び第2ピストンは、好ましい形態におけるプランジャを用いて移動可能である。プランジャは、第1または第2ピストンと一部品で形成されている。
【0018】
混合器は、送出端部に接続されているまたは接続される準備が整っている。これに関して、格納チャンバまたは第1及び第2部分チャンバは、送出端部において混合器内に開口する。混合器は、特に、静的混合器として形成されている。混合器を使用することは、特に、注射器が複数の流動性成分で形成された充填材料について使用する場合に有利である。特に好ましい形態において、混合器は、第1及び第2部分チャンバを有するハウジングの一部として形成されている。ハウジングに接続される混合ハウジングは、混合器の周囲に配置されている。接続には、これに関して、ネジ接続、ラッチ接続、スナップ接続またはバイオネット接続が挙げられる。混合ハウジングは、特に、混合器に対して移動可能に配置されており、混合器に対する混合ハウジングの第1位置において、第1及び第2流動性成分のための経路開口部は、解放される一方、第2位置において、この経路開口部は、逆に、閉塞される。このため、混合ハウジングは、この形態において、閉塞可能な送出素子として形成される。
【0019】
格納チャンバまたは第1及び第2部分チャンバは、少なくとも部分的に透光性を有しており、充填レベルは、観測される。ハウジングは、特に、透光性材料、例えば透光性プラスチックで形成されており、注射器の充填時にユーザがどの程度の充填材料がすでに格納チャンバにあるかを視覚的に認識する。充填体積における第1または第2流動性成分の一部がどの高さにあるかを第1または第2部分チャンバそれぞれに対して同じ方法で認識可能である。目盛りを格納チャンバのまたは第1もしくは第2部分チャンバの領域においてハウジングの外側に取り付けており、この目盛りは、どの程度充填体積がすでに充填物質で充填されているかのユーザに対する表示部を有する。
【0020】
したがって、同様に、充填体積の一部のみを必要とする場合、注射器のみを充填することが可能である。接着剤をまたは封止合成物を分配することは、このような用途の例として指定される。接着点のまたは封止する点のサイズに応じて、注射器には、この目的で必要な充填材料量が正確に、または、接着点のまたは封止する点で必要な複数の流動性成分が正確に、充填される。
【0021】
特に歯科部門のように充填材料のコストにかかわる場合、注射器を所望量の充填材料で正確に充填する可能性は、ユーザにとって関心がある。ユーザが充填状態で購入する従来の注射器であって規定された量の充填材料を収容する注射器を彼が使用する場合、彼は、注射器と共に充填材料を過剰に分配しなければならない。コスト要因に加え、この変化は、充填材料の浪費を意味し、これは、さらに、さらなる分配コストを発生させる。
【0022】
しかしながら、上述の形態において、ユーザは、合計で注射器の充填体積の複数倍になる量の充填材料を収容する利用可能なカートリッジを有するが、別個の充填システムへの導入よりもより管理しやすい。特に、充填材料が少ないまたは不定期な要求であるユーザにとって、このような充填システムは、これが連続的に作動せずこのため上述した場合に関して経済的に使用しないので、適していない。
【0023】
カートリッジは、例えば注射器の充填体積の5倍から50倍の範囲、好ましくは注射器の充填体積の5倍から40倍、特に好ましくは充填体積の5倍から25倍の充填体積を有する。
【0024】
ここで、ユーザが規定した充填材料量を必要とする場合、彼は、カートリッジを注射器の結合素子に接続し、注射器を後述の方法にしたがって充填する。
【0025】
特に上述の形態の1つにおける注射器を操作する方法であって、注射器を充填材料で充填する工程と、充填材料を分配する工程と、を有し、充填する工程が、以下の工程、
注射器の搬送端部に配置された格納チャンバの入口端部をカートリッジの送出素子に接続することによってカートリッジに注射器を結合する工程と、
通気開口部を開放し、空気が供給チャンバから出る工程と、
充填材料を格納チャンバ内に導入する工程と、
供給チャンバを充填材料で充填するとすぐに通気開口部を閉塞する工程と、
送出端部において閉塞可能な送出素子を用いて充填した供給チャンバを閉塞する工程と、
搬送チャンバにおいて放出素子を用いて充填した格納チャンバを閉塞する工程と、
を有する。
【0026】
充填材料を分配する工程は、以下の工程、
充填した供給チャンバの閉塞可能な送出素子を開放する工程と、
充填材料を分配する工程であって、放出素子が移動されて供給チャンバの充填体積が減少する目的で、充填材料が供給チャンバ内で加圧される、工程と、
を有する。
【0027】
注射器は、複数の流動性成分のために操作されるべきであり、第1流動性成分及び第2流動性成分は、充填中に、第1部分チャンバ内に及び第2部分チャンバ内に導入される。分配中に、第1流動性成分及び第2流動性成分は、第1及び第2チャージチャンバから送出され、第1及び第2ピストンは、移動可能なプランジャによって移動される一方、対応する第1または第2部分チャンバに圧力を掛け、充填体積は、第1及び第2部分チャンバそれぞれにおいて減少する。
【0028】
第1及び第2流動性成分は、第1及び第2部分チャンバから送出された後に混合される。
【0029】
本発明は、図面を参照しながら以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態における注射器を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態における注射器を示す図である。
【図3】注射器がカートリッジに配置された第2実施形態における注射器を示す図である。
【図4】注射器を配置したカートリッジを示す断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態における注射器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明における第1実施形態における注射器1を示しており、この注射器は、充填材料15の1回計量のために設計されている、すなわち単一使用のために設計されている。このような注射器は、特に、少量及び非常に少量の充填材料15を計量するために使用される。注射器1は、充填材料15を収容する格納チャンバ5を有する。格納チャンバ5は、充填材料15を分配する送出端部28と、送出端部28の反対側に配置された搬送端部29と、を有する。このため、格納チャンバ5は、図1において、搬送端部と送出端部との間の管状セクションに延在する。格納チャンバ5は、ハウジング34で囲まれており、充填材料15は、格納チャンバ5内に収容される。格納チャンバ5は、閉塞可能な送出素子13と、搬送側にある閉塞素子と、を有し、充填材料は、自由な態様で格納チャンバ5から送出されない。閉塞素子は、放出素子30として示されている。閉塞可能な送出素子13は、その閉塞位置にあり、放出素子は、入口端部35内に挿入され、充填材料15は、少なくとも制限された期間にわたって格納チャンバ5内に格納可能である。閉塞可能な送出素子13は、送出端部28を封止的に閉塞するプラグ36を有し、この送出端部では、プラグが、閉塞可能な送出素子13の内面において液密な態様で位置する。また、閉塞可能な送出素子13は、内ネジを有し、この内ネジは、対応する外ネジが形成されたプラグを受ける。
【0032】
閉塞可能な送出素子13は、同様に、送出端部28が完全に開放されていないプラグ36と共に中間位置を採用する。この中間位置において、通気開口部33は、開放し、空気は、妨げられていない格納チャンバ5から送出される。別の実施形態において、通気開口部は、同様に、送出端部自体によって形成されてもよい。これに替えて、閉塞可能な通気開口部または通気バルブをプラグに適用してもよく、これら通気開口部または通気バルブは、図示されない。
【0033】
充填材料は、閉塞可能な送出素子13がその閉塞位置にあり入口端部35が同様に放出素子30によって閉塞されていると、格納チャンバ5内に格納可能である。
【0034】
結合素子10は、格納チャンバ5を充填材料15で充填するためにカートリッジ2に格納チャンバ5を接続するために設けられている。結合素子10は、例えば入口端部35を有するハウジング34の延長部として形成されている。入口端部35によって取り囲まれた空間は、充填空間に属していないが、むしろカートリッジの送出素子32を収容する機能を果たす。
入口端部35と格納チャンバ5との間に示される突出部37は、格納チャンバ5の入口側の境界を示す。突出部37は、ハンドルとして形成されている。このハンドルは、それぞれ一本の指のための2つの接触面38、39を有する。これら接触面38、39は、2つの指で注射器1を空にするときに、親指で保持された放出素子30に逆圧を形成するために使用される。
【0035】
図2は、単一使用を意図した複数の成分のための本発明における第2実施形態の注射器1を示す。注射器1は、第1成分8のための第1部分チャンバ6と、第2成分9のための第2部分チャンバ7と、を有する。第1部分チャンバ6は、第2部分チャンバ7から分離しており、2つの成分は、互いに接触しない。このような成分は、通常、これらが互いに接触すると、化学反応が起こる状態で、すぐに互いに相互作用する。成分の相互作用は、通常、所定用途において必要な効果であるが、この相互作用は、成分をこれらの意図する枠組み内で使用しない限り望ましくない。
【0036】
注射器は、頻繁に、保存されかつ使用前に移送され、実際には以下で格納状態と称される充填状態に部分的にある。これは、格納状態の全期間にわたって2つの成分8、9が互いに接触しないことを確実にする。
【0037】
図2及び図3における実施形態は、とりわけ、結合素子10が第1部分チャンバ6をカートリッジ2に接続するための第1入口端部11と第2部分チャンバ7をカートリッジ2に接続するための第2入口端部12とを有する点で、図1における実施形態と異なる。第1入口端部11は、第1管状スタブ16として形成されており、第2入口端部12は、カートリッジに接続するように設計された第2管状スタブ17として形成されており、第1管状スタブ16は、第1経路18を有し、第2管状スタブ17は、第2経路19を有する。第1経路は、第1部分チャンバ6に接続されており、第2経路は、第2部分チャンバ7に接続されている。
【0038】
第1及び第2管状スタブ16、17それぞれは、カートリッジ2の第1または第2送出素子22、23それぞれを受容する第1及び第2封止素子24、25を有する。このため、カートリッジの送出素子22、23それぞれは、管状スタブとして同様に形成される。このようなカートリッジは、例えば欧州特許第0730913号明細書に示されている。
【0039】
図1のように、放出素子30(図1参照)は、部分チャンバ6、7それぞれに配置されており、対応する流動性成分8、9が部分チャンバ6、7から送出される。図2において、放出素子30は、第1ピストン3及び第2ピストン4で形成されている。図2には、ピストン3のみが示されており、このピストンは、部分チャンバ6を受容するために設けられている。
【0040】
第1ピストン3は、第1部分チャンバ6内で移動可能に受容されており、第2ピストン4は、第2部分チャンバ7内で移動可能に受容されており、第1または第2ピストン3、4の少なくとも一方が移動していると、第1及び第2流動性成分8、9は、同時に送出される。このため、第1ピストン3及び第2ピストン4とプランジャ27とは、一部品として形成されているまたは連結素子43を介して互いに接続されており、これらは、同時に移動可能である。
【0041】
第1及び第2ピストン3、4は、封止縁部として特に形成された少なくとも1つの封止素子41を有する。
【0042】
図4は、注射器が配置されたカートリッジを通る断面図である。注射器の入口端部11、12のみが示されており、この注射器は、部分チャンバ6、7によって結合されており、搬送端部29に位置する。第1入口端部11は、第1管状スタブ16として形成されており、第2入口端部12は、第2管状スタブ17として形成されている。カートリッジ2の第1送出素子22は、第1管状スタブ16内に係合し、カートリッジ2の第2送出素子23は、第2管状スタブ17内に係合する。第1送出素子22は、第1送出経路20を有し、第2送出素子は、第2送出経路21を有する。封止素子24、25それぞれは、管状スタブ16、17それぞれと対応する送出素子22、23との間に配置されている。
【0043】
図5は、本発明における第3実施形態の注射器を示す。注射器1は、第1成分8及び第2成分9を同時に分配するために使用される。第1及び第2成分8、9は、カートリッジ(図4参照)の送出素子22、23それぞれを接続することによって第1部分チャンバ6及び第2部分チャンバ7内に充填されている。注射器は、必要に応じて、部分的にまたは完全に充填されている。注射器を充填すると、閉塞可能な送出素子は、その開放位置にある。この実施形態において、閉塞可能な送出素子13は、混合ハウジング42によって形成されている。混合器31は、混合ハウジング42内に配置されており、ハウジング34と一部品で形成されている。混合器31は、特に静的混合器として設計されている。混合ハウジング42は、個別の対応する封止素子を有しており、この封止素子を用いて、注射器における送出端部28にある対応する送出開口部は、閉塞可能となる。
【0044】
混合ハウジング42は、ハウジング34と係合するように設計された連結素子43を有する。連結素子43は、送出端部28を囲む係合素子44によって受けられる。係合素子44は、ハウジング34の一部として形成されている。連結素子43は、係合素子44に関して移動可能であり、混合ハウジングは、混合器にかつ送出端部28に関して閉塞位置または開放位置で保持される。混合ハウジング42は、例えば、充填中に開放位置で保持され、第1または第2部分チャンバ6、7に存在する空気は、送出端部28に至る送出開口部を介して出る。混合ハウジング42は、充填を実行して連続した充填をより困難とする圧力が第1または第2部分チャンバ6、7で高まることを回避するように、長期間その開放位置で保持される。充填を完了すると、混合ハウジング42は、その閉塞位置に移動され、この閉塞位置において、送出開口部は、送出端部に近接して保持される。第1及び第2部分チャンバ6、7は、搬送側29において第1及び第2ピストン3、4によって閉塞されている。
【0045】
第1及び第2ピストン3、4は、プランジャ27を用いて移動可能であり、2つの成分8、9を同時に分配する。プランジャ27は、それが第1及び第2ピストン3、4に位置するように特に設計されている。プランジャ27は、この実施形態において一部品としてピストン3、4に接続されている。分配の開始において、混合ハウジング42は、その閉塞位置からその開放位置まで移動される。この位置において、送出開口部は、送出端部において混合ハウジングの内部に延在する混合空間と連通する。第1及び第2成分8、9と任意の空気とは、混合器に導入される。空気は、混合ハウジングの送出開口部を通って出る。混合器31による第1及び第2成分8、9の攪拌は、同時に起こる。第1または第2ピストンと充填材料との間で取り囲まれた空気に関して、図5に示さない通気孔または通気溝は、対応するピストンにまたは対応するチャンバの内壁部に設けられている。
【0046】
格納チャンバ5、6、7の少なくとも1つは、各実施形態において少なくとも部分的に透光性を有し、充填材料8、9、15の充填レベルは、対応する格納チャンバ5、6、7において観測される。
【0047】
注射器1の操作は、注射器1に充填材料8、9、15を充填する工程と、充填材料を分配する工程と、を有する。
【0048】
注射器1が上述した実施形態において充填される場合、充填する工程は、以下の工程、
注射器1の搬送端部29に配置された供給チャンバ5、6、7の入口端部11、12をカートリッジ2の送出素子22、23、32に接続することによって、注射器1をカートリッジ2に結合する工程と、
通気開口部33を開口し、空気が供給チャンバ5、6、7から出る工程と、
充填材料8、9、15を格納チャンバ5、6、7内に導入する工程と、
供給チャンバ5、6、7を充填材料8、9、15で充填するとすぐに通気開口部33を閉塞する工程と、
送出端部28において閉塞可能な送出素子13を用いて充填した供給チャンバ5、6、7を閉塞する工程と、
搬送端部29において放出素子3、4、30を用いて充填した供給チャンバ5、6、7を閉塞する工程と、
を有する。
【0049】
注射器の送出端部28において充填材料のための送出開口部は、特に、通気開口部33として意味する。特に、ハウジングが透光性を有する、すなわち透光性材料で形成されているまたは透光性材料を有する開口部を少なくとも有するために充填する処理がいつでも視認可能である場合、ユーザは、いつでも充填度合いを決定することができ、このため、充填材料が送出端部28から時期を早めで出ることを確実に回避する。あるいはまたはこれに加えて、閉塞可能な送出素子13は、通気開口部を有するまたはハウジング34と組み合わせて通気開口部を形成する。通気開口部33のサイズは、設定可能であり、例えば、ハウジング34との閉塞可能な送出素子13の組み合わせは、少なくとも1つの円錐面が設けられかつ有する。円錐面の領域における閉塞可能な送出素子13とハウジング34との間の空間は、円錐面が閉塞状態で液密な態様で開口部を閉塞し、部分開放状態において少量の空気の送出を可能とし、そして完全な開放位置において大量の空気の送出を可能とするまたは充填材料の送出を可能とするように、設計されている。
【0050】
これに替えてまたはこれに加えて、通気開口部33は、ピストン3、4に設けられている。通気開口部は、この場合において、空気を送出するために圧力を受けて開口部を解放する薄膜、または圧力を受けてもしくはプランジャと接触して開口する通気バルブを有する。これに替えて、開口部または溝部は、ハウジングの内壁部にまたはピストンのジャケット領域に形成されており、このジャケット領域は、ピストンのジャケット領域とハウジングの内壁部との間の空気の送出を防止する。
【0051】
充填材料8、9、15を分配する工程は、以下の工程、
充填した供給チャンバ5、6、7の閉塞可能な送出素子13を開放する工程と、
充填材料8、9、15を分配する工程であって、供給チャンバ5、6、7の充填体積が減少するように放出素子3、4、30を移動させる目的で、充填材料を供給チャンバ5、6、7内で加圧する工程と、
を有する。
【0052】
充填材料を分配する少なくとも開始時において、開放状態にある通気開口部は、充填材料とピストンとの間でまだ取り囲まれている空気が出ることを可能にする。
【0053】
充填中において、第1流動性成分8及び第2流動性成分9は、第1部分チャンバ6内に及び第2部分チャンバ7内に導入され、分配中において、第1及び第2流動性成分8、9は、第1及び第2部分チャンバ6、7から送出され、第1及び第2ピストン3、4それぞれは、移動可能なプランジャ27によって移動される一方、対応する第1または第2部分チャンバ6、7に圧力を掛け、充填体積は、第1及び第2部分チャンバ6、7それぞれにおいて減少する。
【符号の説明】
【0054】
1 注射器、2 カートリッジ、3 第1ピストン,放出素子、4 第2ピストン,放出素子、5 供給チャンバ、6 第1部分チャンバ,供給チャンバ、7 第2部分チャンバ,供給チャンバ、8 第1流動性成分,充填材料、9 第2流動性成分,充填材料、10 結合素子、11 第1入口端部、12 第2入口端部、13 送出素子、15 充填材料、16 第1管状スタブ、17 第2管状スタブ、18 第1経路、19 第2経路、22 第1送出素子、23 第2送出素子、27 プランジャ、28 送出端部、30 放出素子、31 混合器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填材料(15)を1回計量することを目的とし、前記充填材料(8、9、15)を受ける供給チャンバ(5、6、7)を有する注射器(1)であって、
前記供給チャンバ(5、6、7)が、前記充填材料(8、9、15)を分配するための送出端部(28)と、前記送出端部(28)の反対側に配置された搬送端部(29)と、を有し、前記供給チャンバ(5、6、7)が閉塞可能な送出素子(13)を有し、前記充填材料(8、9、15)が前記供給チャンバ(5、6、7)内で格納可能であり、
前記供給チャンバ(5)が、第1流動性成分(8)を有する第1部分チャンバ(6)を有し、かつ第2流動性成分(9)を有する第2部分チャンバ(7)を有し、
前記供給チャンバ(5、6、7)を前記充填材料(8、9、15)で充填するために前記供給チャンバ(5、6、7)をカートリッジ(2)に接続する結合素子(10)が設けられており、
前記カートリッジ(2)が、前記充填材料(8、9、15)を収容し、
充填素子が、前記カートリッジ(2)から前記供給チャンバ(5)を前記充填材料(8、9、15)で充填することを予測することを特徴とする注射器。
【請求項2】
閉塞可能な前記送出素子(13)に混合素子が取付可能であることを特徴とする請求項1に記載の注射器(1)。
【請求項3】
前記結合素子(10)が、前記第1部分チャンバ(6)を前記カートリッジ(2)に接続する第1入口端部(11)と、前記第2部分チャンバ(7)を前記カートリッジ(2)に接続する第2入口端部(12)と、を有することを特徴とする請求項2に記載の注射器(1)。
【請求項4】
前記第1入口端部(11)が、第1管状スタブ(16)として形成されており、
前記第2入口端部(12)が、前記カートリッジ(2)に接続することを目的とした第2管状スタブ(17)として形成されており、
前記第1管状スタブ(16)が、第1経路(18)を有し、前記第2管状スタブ(17)が、第2経路(19)を有し、前記第1経路が、前記第1部分チャンバ(6)に接続され、前記第2経路(19)が、前記第2部分チャンバ(7)に接続されることを特徴とする請求項3に記載の注射器。
【請求項5】
前記第1及び第2管状スタブ(16、17)それぞれが、前記カートリッジ(2)の個別の第1または第2送出素子(22、23)を受ける第1及び第2封止素子(24、25)を有することを特徴とする請求項4に記載の注射器(1)。
【請求項6】
前記供給チャンバ(5、6、7)に放出素子(3、4、30)が配置され、前記充填材料を前記供給チャンバ(5、6、7)から分配することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の注射器(1)。
【請求項7】
前記放出素子(30)が、第1ピストン(3)及び第2ピストン(4)の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項6に記載の注射器(1)。
【請求項8】
前記第1ピストン(3)が、前記第1部分チャンバ(6)内で移動可能に受けられており、
前記第2ピストン(4)が、前記第2部分チャンバ(7)内で移動可能に受けられており、
前記第1または第2ピストン(3、4)の少なくも一方が移動すると、前記第1及び第2流動性成分(8、9)が、同時に分配されることを特徴とする請求項7に記載の注射器(1)。
【請求項9】
前記第1及び第2ピストン(3、4)が、プランジャ(27)を用いて移動可能であることを特徴とする請求項8に記載の注射器(1)。
【請求項10】
混合器(31)が、前記送出端部(28)に接続されることがあるまたは接続されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の注射器(1)。
【請求項11】
前記第1ピストン(3)の少なくとも1つと前記第2ピストン(4)の少なくとも1つと前記プランジャ(27)の少なくとも1つとが、一部品で形成されていることを特徴とする請求項9または10に記載の注射器(1)。
【請求項12】
前記供給チャンバ(5、6、7)が、少なくとも部分的に透光性を有し、前記供給チャンバ(5、6、7)における前記充填材料(8、9、15)の充填レベルが、観測されることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の注射器(1)。
【請求項13】
最大25mlの充填材料(8、9、15)を計測する装置であって、
カートリッジ(2)と、請求項1から12のいずれか1項に記載の注射器(1)と、を有することを特徴とする装置。
【請求項14】
注射器を操作する方法であって、
前記注射器(1)を充填材料(8、9、15)で充填する工程と、前記充填材料を分配する工程と、を有し、
前記充填する工程が、以下の工程、
前記注射器(1)の搬送端部(29)に配置された供給チャンバ(5、6、7)の入口端部(11、12)をカートリッジ(2)の送出素子(22、23、32)に接続することによって、前記注射器(1)を前記カートリッジ(2)に結合する工程と、
通気開口部(33)を開放し、空気が前記供給チャンバ(5、6、7)から出る工程と、
前記充填材料(8、9、15)を前記供給チャンバ(5、6、7)内に導入し、前記供給チャンバ(5、6、7)を前記充填材料(8、9、15)で充填するとすぐに前記通気開口部(33)を閉塞する工程と、
前記送出端部(28)において閉塞可能な送出素子(13)を用いて充填した前記供給チャンバ(5、6、7)を閉塞する工程と、
前記送出端部(29)において放出素子(3、4、30)を用いて充填した前記供給チャンバ(5、6、7)を閉塞する工程と、
を有し、
前記充填材料(8、9、15)を分配する工程が、以下の工程、
充填した前記供給チャンバ(5、6、7)の閉塞可能な前記送出素子(13)を開放する工程と、
前記充填材料(8、9、15)を分配する工程であって、前記放出素子(3、4、30)を移動させて前記供給チャンバ(5、6、7)内の充填体積を減少させることを目的として、前記充填材料を加圧する、工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項15】
充填中において、第1流動性成分(8)と第2流動性成分(9)とが、第1部分チャンバ(6)内に及び第2部分チャンバ(7)内に導入され、
分配中において、前記第1及び第2流動性成分(8、9)が、前記第1及び第2部分チャンバ(6、7)から送出され、
前記第1及び第2ピストン(3、4)それぞれが、移動可能なプランジャ(27)によって移動される一方、対応する前記第1または第2部分チャンバ(6、7)に圧力を掛け、前記充填体積が、前記第1及び第2部分チャンバ(6、7)それぞれにおいて減少することを特徴とする請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−521235(P2012−521235A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501261(P2012−501261)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053625
【国際公開番号】WO2010/108868
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(509287946)ズルツァー ミックスパック アーゲー (14)
【Fターム(参考)】