説明

単一光子の供給方法

【課題】従来の単一光子の供給方法では、高頻度にかつ一定間隔で単一光子を供給することができなかった。
【解決手段】単一光子光源101から単一光子を発生させ、それに適切な遅延を与えた後、周期性を有する蓄積装置103に蓄積し、十分な蓄積が行なわれた後で単一光子を供給することで上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子通信や量子計算などに利用可能な単一光子の供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子状態を利用して盗聴できない通信を行なう量子暗号通信や、同じく量子状態を用いて高速で計算をおこなう量子計算など、量子情報処理とよばれる技術が近年盛んに研究されている。量子状態として光を利用し、これら量子情報処理を行なうためには、基本的にたった一つの光子からなる状態、いわゆる単一光子状態を利用しなければならない。もし単一光子の代わりに複数の光子が含まれる状態を利用した場合、盗聴される危険性が生じたり、計算エラーが発生したりするためである。
【0003】
従来の光通信などに利用されるレーザー等の光源から出る光には、非常に多数の光子が含まれている。したがって、それらをそのまま量子情報処理に利用することはできず、単一光子を発生させる光源を用いなければならない。
【0004】
量子情報処理研究の初期段階で最もよく用いられたのが、ほとんど単一光子しか含まれない水準まで通常のレーザー光を減衰させる方法である。この方法は実施は簡便ではあるが、得られる出力はあくまで擬似的な単一光子であり、本来の単一光子ではない。この方法の場合、原理的に複数の光子が含まれる状態を除去することが不可能であること、また、単一光子が含まれているパルスの約9倍もの時間ほとんど光子が存在しない状態となるため、高頻度で単一光子を出力させることができないこと、また光子の出力される時刻がばらつくためこれを制御できず一定間隔で単一光子を供給できないといった問題があり、基礎研究には利用できても高い信頼性を必要とする商業用途に用いることは困難である。
【0005】
そこで、現在研究が進められているのが、擬似的ではなく真正の単一光子を発生させる光源の開発である。この単一光子の発生方法としては、量子ドットを用いる方法や、パラメトリックダウンコンバージョンにより生成される相関光子対を用いる方法などが知られている。
【0006】
まず、量子ドットを用いる方法の原理について説明する。半導体において電子と正孔が近接した状態にあると、それらは結合し、光子を放出して消滅する。基本的に一組の電子と正孔からは、一つの光子しか放出されない。したがって、ある時刻に一組の電子正孔対しか存在しないようにすれば、単一光子を生成することができる。
【0007】
電子正孔対を一組に限定するために、量子ドットを利用することができる。量子ドットとは、半導体など電子および正孔を保持できる材料の周囲を、それよりもバンドギャップが大きい材料などからなる絶縁材料で取り囲んだものである。量子ドットのサイズをナノメーターから数十ナノメートル程度にすると、電子間相互作用によりただ一組の電子と正孔のみが閉じ込められている状態をつくることができる。
【0008】
そこで、量子ドットに閉じ込めた電子と正孔対の結合による発光を利用すれば、単一光子を生成することができる。量子ドット内での電子正孔対の生成は、その量子ドットを形成する半導体のバンドギャップよりも大きなエネルギーを持つレーザーの照射などで行なうことができる。このような原理を用いた単一光子光源については、 非特許文献1および特許文献1に詳細を見ることができる。
【0009】
次にパラメトリックダウンコンバージョンを用いる方法について説明する。
【0010】
レーザー光などの強い光を、非線形光学媒体とよばれる特殊な材料に入射すると、ある確率で2つのペアとなった2つの光子が生成される。この過程をパラメトリックダウンコンバージョンと呼び、生成されたペアをなす光子を相関光子対と呼ぶ。この光の一方をシグナル光、他方をアイドラー光と呼ぶ。なお、この相関光子対を発生させるために非線形光学媒質に照射した光をポンプ光と呼ぶ。相関光子対をなすそれぞれの光子はその名のとおり強い相関を持つため、一方の光子が単一光子であることを確認できれば、対をなす光子も確実に単一光子であることが保証される。したがって、非線形光学媒体から出力される光子対の一方を検出する測定器を用意し、その測定器が単一光子を確認できた場合のみ、もう一方の光子が出力されるような装置構成をとれば、確実に単一光子のみを取り出すことができる。
【0011】
また、このように取り出した単一光子群を、クロックに同期したゲートにより間引くことにより、一定の間隔で単一光子を出力することもできる。このような単一光子の供給方法は特許文献2に詳しい記載がある。
【特許文献1】特開2001-230445号公報
【特許文献2】特開2000-292821 号公報
【非特許文献1】Japanese Journal of Applied Physics Vol.44, No.20, 2005, pp.L620-L622
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
量子ドットを用いる方法にせよ、パラメトリックダウンコンバージョンを用いる方法にせよ、現在の技術では、高頻度に単一光子を発生させることは非常に困難である。
【0013】
従来の方法では、単一光子の発生頻度を上回る頻度で単一光子を利用することも不可能である。特に単一光子をクロックに同期させたゲートで間引く方法の場合、もともと発生した単一光子発生頻度よりも少ない頻度でしか利用することができない。
【0014】
量子ドットを用いる方法にせよ、パラメトリックダウンコンバージョンを用いる方法にせよ、単一光子の発光過程は量子力学的な時間揺らぎに支配されており、その発光間隔を一定とすることができない。
【0015】
一方、単一光子を利用した量子情報処理の効率を上げるためには、決まった時間間隔で、かつ高頻度に単一光子を供給できる光源が必要とされる。量子暗号通信では単一光子発生頻度がそのまま通信速度を制限する要因となっている。たとえば1Gbpsで通信をしたい場合、1秒間に1E9個以上の単一光子を発生させなければならない。つまり光子発生頻度として1GHzが要求される。ところが、高頻度に単一光子を供給できる光源がないために、従来の光通信に比べてきわめて遅い通信速度しか得られていない。
【0016】
光源の発光間隔がばらつくため、クロックと同期した通信ができない。
【0017】
量子計算では単一光子を適切に相互作用させなければならないが、相互作用の制御には時刻の同期が必須であり、単一光子の供給間隔が不定の光源の場合、計算に必要な光子相互作用制御が困難である。もちろん、クロックと同期してゲートで光子を間引く方法であれば、従来の方法であっても単一光子を一定間隔で供給可能ではあったが、供給頻度が光源の発光頻度よりも低くなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明では、
a) 単一光子を発生させる光源、
b) 遅延を与えずに単一光子を蓄積装置に導入した場合に、蓄積装置に導入される時刻を決定することができる時刻を検出する時刻検出装置、
c) 装置に単一光子を入力すると、特定の周期でその光子の出力が可能となる蓄積装置であり、かつ入力する光子の位相時刻を分離しておけば、複数の単一光子を蓄積した後に分離して出力することのできる蓄積装置、
d) 蓄積装置c)の単一光子の蓄積状態を記録するための記録装置、
e)単一光子を蓄積装置に入力する時刻を指定した値に基づき遅延させるか、もしくは単一光子を破棄できる遅延調整および単一光子破棄装置、および
f) 装置b)で検出した時刻と、装置d)に記録されている光子の蓄積状況の情報から、光子を分離して取り出せるように蓄積装置c)に入力すべき時刻を計算し、それを実現するために遅延調整装置e)に指定すべき値を計算し、適切な遅延時間が無い場合には光子破棄の判断を下す計算装置
からなる単一光子供給装置を利用し、
光源a)を用いて単一光子を発生させる第一のステップと
検出装置b)を用いて単一光子の発生時刻を検出する第二のステップと
蓄積装置c)の蓄積状態を確認する第三のステップと
蓄積状態と単一光子の発生時刻から、光子を分離して蓄積できるように蓄積装置に入力すべき遅延時間を算出し、適切な時間が無い場合に光子破棄の判断を計算装置f)を利用してくだす第四のステップと
装置f)で算出した結果に基づき単一光子を遅延装置e)で遅延させた後、蓄積装置c)に入力する、もしく光子を破棄する第五のステップと
光子を蓄積装置c)に入力したことによる蓄積状態の変化に基づき、記録装置d)の情報を更新する第六のステップと
必要な蓄積状態が得られているかを確認する第七のステップと
確認できるまで第一から第七のステップを繰り返すステップと、
確認できた場合に蓄積した単一光子を分離して出力する第八のステップと
光子を取り出したことによる蓄積状態の変化に基づき、記録装置d)の情報を更新する第九のステップと
を有する単一光子の供給方法を用いることで上記課題を解決する。
【0019】
特に第一の実施形態としては、第二のステップをおこなうために、第一のステップで光源において相関光子対からなる単一光子対を発生させ、対の一方を時刻検出に利用する。
【0020】
第二の実施形態では、第二のステップにおいて光子数のQND測定を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施により、光源の発光頻度を上回り、かつ一定間隔での単一光子供給が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態は、単一光子光源としてパラメトリックダウンコンバージョンを用いる方法である。
【0023】
(第一の実施形態に必要な装置)
まず本発明の実施に必要な装置の説明を行なう。
【0024】
第一の実施形態には図1のような装置を用いる。
【0025】
この装置は以下の要素から構成される:
単一光子からなる相関光子対を発生させる光源101
時刻検出装置102
蓄積装置103
単一光子の蓄積状態を記録するための記録装置104
遅延調整および単一光子破棄装置105
光子の遅延時間を計算し、場合によっては破棄を決定する装置106。
【0026】
次にこれらの各要素について説明を行なう。
【0027】
(1) 単一光子からなる相関光子対を発生させる光源101
第一の実施形態では光源は、単一光子からなる相関光子対を発生できる必要がある。これはパラメトリックダウンコンバージョンを用いれば実現可能である。相関光子対やパラメトリックダウンコンバージョンの意味については後で説明する。なお、パラメトリックダウンコンバージョンを用いて単一光子からなる相関光子対を発生させる方法の詳細については、特開2000-292820号公報に詳しい記載があり、本発明の単一光子光源もこの特許の方法にならって構成すればよい。
【0028】
ただし、特開2000-292820号公報においては、パラメトリックダウンコンバージョンを用いて単一光子を発生させた後、クロックと同期したゲート開閉操作を行なうことにより一定間隔での単一光子の供給を可能としているが、本発明の実施の一要素である単一光子光源ではこのクロックと同期したゲート操作は必要ない。逆にクロックと同期したゲート操作は利用可能な単一光子数を減少させることとなるので、本発明では行なわないことが好ましい。
【0029】
パラメトリックダウンコンバージョンを用いた単一光子からなる相関光子対を発生させる光源の基本的な構成図を図2に示す。
【0030】
この光源は
ポンプ光光源201
非線形光学媒質202
アイドラー光が単一光子であることを確認する装置203
アイドラー光が単一光子であることを確認できた場合のみ、対となるシグナル光を外部に通過させるゲート204
からなる。
【0031】
ただしアイドラー光が単一光子であることを確認する装置203は、時刻検出装置102と機能を兼ねているので、図1にしめした単一光子からなる相関光子対を発生させる光源101に対応するのは201、202、204から構成されている部分である。
【0032】
パラメトリックダウンコンバージョンとは、非線形光学媒質に光を照射した際に、入射した光子のエネルギーと、エネルギーの総和が等しくなる光子対が出力される現象である。この時、入射する光をポンプ光、出力される光の一方をシグナル光、他方をアイドラー光とよぶ。図2ではポンプ光が210、シグナル光が211、アイドラー光が212である。
【0033】
ポンプ光210としては通常のレーザー光源を用いることができる。なお、エネルギー保存則の関係から、ポンプ光210の光子のエネルギーはシグナル光211の光子のエネルギーとアイドラー光212の光子のエネルギーの和となり、それぞれのエネルギーは負とならないから、シグナル光211の光子のエネルギーは必ずポンプ光210のそれよりも小さくなる。すなわちシグナル光211の波長はポンプ光210の波長よりも長い。
【0034】
また、シグナル光211の波長は、用いるポンプ光210および非線形光学媒質により定まる。たとえば非線形光学媒質としてβ-バリウムボレート(BBO)を用い、ポンプ光210として波長351.1nmのアルゴンレーザーを用いれば、シグナル光211、アイドラー光212ともに702.2nmの波長の光が得られる。そこで発明の実施の際には、ポンプ光210の光源と非線形光学媒質として、シグナル光211が所望の波長を持つように、適切なものを選択しておく。量子情報処理でよく用いられているシグナル光211とアイドラー光212が同じ波長を持ついわゆる縮退パラメトリック過程の場合、シグナル光211の波長はポンプ光210の波長の1/2となる。そのような場合にはシグナル光211として利用したい波長の1/2の波長をもつポンプ光210を利用する。
【0035】
シグナル光211とアイドラー光212の組は、相関光子対と呼ばれる。これは両者が量子力学的に強い相関を持つためである。相関は量子力学的なものにとどまらず、エネルギーや光子数といった古典的な物理量にも存在する。例えば、シグナル光211の光子数とアイドラー光212の光子数は必ず一致している。したがって、アイドラー光212を測定し、それが単一光子であることが確認できれば、それと対となるシグナル光211が単一光子であることを保証することができる。そこで、アイドラー光212が単一光子であるかを確認する測定器203と、シグナル光211の経路上にゲート204を設け、単一光子であることを確認できた場合のみゲート204を開けるようにすれば、単一光子213のみを取り出すことができる。単一光子であるかを確認する測定器は、光子数が1である場合とその他である場合で出力が変化する検出器であればよい。たとえばこれはアバランシェフォトダイオードを用いることができる。その技術的詳細についても特開2000-292820号公報に開示がなされている。
【0036】
(2)時刻検出装置102
本発明の実施には、遅延を与えずに単一光子を蓄積装置103に導入した場合に、蓄積装置103に導入される時刻を決定することができる時刻を検出する必要がある。これは、遅延を与えなかった場合に蓄積装置103に到達するまでかかる時間が既知の位置に、単一光子が来る時刻を測定すればよい。この時刻検出は、最終的に供給することになる単一光子を破壊しない方法でなされる必要がある。
【0037】
この時刻検出方法としては、大きく分けて2つのものが考えられる。1つは相関光子対のアイドラー光212を利用する方法であり、もう1つは単一光子の非破壊測定(QND測定)を行なう方法である。第一の実施例では前者の方法を用いる。なお、後者については第二の実施例で説明する。
【0038】
パラメトリックダウンコンバージョンにより発生するシグナル光211とアイドラー光212は、エネルギー保存則等を満たすためにかならず同時に発生している。また、運動量保存則を満たすために、アイドラー光212の運動量とシグナル光211の運動量の和は、ポンプ光210の運動量に等しい。つまり、ポンプ光210の進行方向を含む面に対してシグナル光211とアイドラー光212は鏡像をなす方向に進む。
【0039】
したがって、アイドラー光212を場所を決めてそこに到達した時刻を測定すれば、シグナル光211を遅延を与えずに蓄積装置103に導入した場合に、蓄積装置103に導入される時刻を決定することができる。なお、このアイドラー光212の検出装置は、もちろんアイドラー光212が単一光子であることを確認するための検出装置と共用すればよい。
【0040】
(3)蓄積装置103
蓄積装置103は、本発明の実施には、特定の周期でその光子の出力が可能となる蓄積装置103であり、かつ入力する光子の位相時刻を分離しておけば、複数の単一光子を蓄積した後に分離して出力することのできるものである必要がある。光子の位相時刻とは、蓄積装置103のもつ出力特性の周期性に対する位相に対応する時刻という意味であり、詳しくは後で説明する。
【0041】
蓄積装置103は図3にしめすように
周期的蓄積部301
入力部302
出力部303
光子数検証部304
から構成されている。ただし、蓄積中の光子の消失が実用上問題にならない程度にしか起こらない場合には、光子数検証部を省略することも可能である。
【0042】
周期的蓄積部301は例えば、閉ループを構成する光ファイバーを用いて構成することができる。閉ループに光を入射すると、光はそのループ内を繰り返しまわる。ループの光路長がLであり、その中を進む光の速度がC'である場合、L/C' 時間ごとに光出力部にその光が来ることになる。例えばL=2.99792458kmとし、C' を真空中の光速度(299792458 m/s)とすれば、10マイクロ秒ごとに光子は繰り返し同じ出力部に来る事になる。このよう周期的現象の繰り返しが起こる時間を周期と呼び、本装置ではこの周期で光子の出力が可能となる。なお、以下の説明では光ファイバーの長さを光が移動に要する時間を基準にし、真空中での光速度に対する距離に換算して説明する。
【0043】
つまり、真空中の光速度をCとすれば、以下の説明での光路長L'は
L' = (C/C')*L
を意味する。
【0044】
同じ光ファイバー内で同じ波長をもつ光子はすべて同じ速度で移動するため、すでに閉ループ内に存在する光子と衝突しないように、つまりループ内に存在している光子が入力部にいないタイミングで新たな光子を入射してやれば、複数の光子を同時に閉ループに蓄積することができ、かつ分離して取り出すことができる。このように周期性を持つ現象の周期内での違いを特定する量を位相とよぶ。また、ある基準となる状態に対応する時刻、たとえば光子を入力した時刻等を位相時刻とよぶ。位相時刻は定義から0以上、周期以下の値をとる。
【0045】
たとえば光路長2.99792458kmの光ファイバーに光路長29.9792458 cm間隔で平行して光子を飛行させて蓄積した場合10,000個の光子を蓄積することができる。なお、29.9792458cm間隔とは位相時刻にして1ナノ秒の差に相当し、1GHzでの単一光子供給頻度に相当する。もちろん光ファイバーの光路長を伸ばしたり、光子の位相時刻間隔を狭めることにより、より多数の光子を蓄積することができる。この周期的蓄積部の周期、つまり光子が一周するのに要する時間は、基準となる位相時間間隔の整数倍であることが望ましい。このように整数倍としておけば、蓄積装置103内に均等に光子を詰め込むことができるためである。
【0046】
入力部302および出力部303は、周期的蓄積部301に希望した場合のみ外部から光を入力したり、光を出力できるようにする機構である。これはいわゆる光スイッチを用いれば実現可能である。光スイッチとは、外部からの制御信号により光の経路を制御する装置である。通常は光の経路を閉ループ側にしておき、光を入力したい場合および光を出力したい場合にのみ光スイッチを用いて光の経路を閉ループから外部とつながるものに切り替えるようにすれば、目的を達することができる。
【0047】
光スイッチとしては、光ファイバー等をアクチュエーターで動かす機械式、微小なミラーなどを動かすMEMS式、熱や光、電気などにより屈折率が変化する材料を用いて導波路特性を制御する導波路式などが実用化されている。本発明では光子の出力頻度に対応できるだけの応答速度をもつ光スイッチであればどの方式でもかまわない。なお、入力部302に関しては、図4にしめすようなY字型の合流光経路を形成することで光スイッチなしに光子を蓄積部に導入することもできる。なぜなら光は散乱などがない場合、基本的に逆流しないからである。
【0048】
光子数検証部304は、一旦蓄積部に蓄積した光子が何らかの原因で消失していないかを検証するための機構である。この機構は、光子数の非破壊測定(QND測定)技術を用いれば実現可能である。なお、光子の消失が実用上問題にならない程度しか発生しない場合には、この光子数検証部は省略することもできる。
【0049】
非破壊測定(QND測定)とは、対象となる量子状態を破壊せずに測定を行なう方法に対する総称である。ここで必要となるのは、中でも、光子数が0であるか1であるかを非破壊で、つまり測定対象となる光子を破壊せずに測定するものである。QND測定は、一般に測定対象となる量子状態とは別の、プローブと呼ばれる量子状態を用意し、測定対象とプローブ間に相関関係を成立させ、プローブ側のみを測定することで行なう。光子数のQND測定については、1989年のPHYSICAL REVIEW A誌Volume39 Number2 Page 675からに掲載されている井元らによる論文に詳細が記載されている。そこで、本明細書では概要だけを述べる。
【0050】
光子数のQND測定は、図5にしめすように、非線形光学媒質の一種であるカー媒質501を用いて行なうことができる。カー媒質とは、光が通過している間、その光が持つ電場の影響でその光学定数が変化する特性を持った媒質である。そこで光子数を測定したいビーム502をこの媒質に入射すると、光子が含まれている場合と、含まれていない場合でカー媒質501の光学定数が変化する。この光学定数の変化は、測定対象となるビームとは別の光である、プローブ光503を用いて検出することができる。プローブ光503をカー媒質を通過させた場合、媒質の光学定数によって通過後の光の位相が異なる。そこでマッハツェンダー干渉計504などを用いてプローブ光の位相を測定してやれば、この位相の違いにより測定光の単一光子カー媒質を通過中にプローブ光が同じカー媒質を通過していたのかを知ることができる。マッハツェンダー干渉計504とは、1つの光をハーフミラーにより2つに分岐し、一方の経路にのみ位相変調が加わるようにした後、再度ハーフミラーで合流、干渉させ、そこからでてくる2つの光の強度を調べることで、一方の経路の光に加わった位相変調を検出する装置である。
【0051】
このプローブ光503自体は単一光子である必要はなく、連続的な光を用い、常にその位相を測定しておけば、単一光子がカー媒質を通過した時刻にその媒質を通過したプローブ光の位相だけが変化する。この測定において、プローブ光自体は破壊されてしまうが、測定対象である単一光子は破壊されない。あらかじめ蓄積した光子がカー媒質に到達する時刻にプローブ光の位相変化が検出されなければ、光子が消失していることを検知することができる。もちろん、光子が消失していなかった場合、この測定によりそれを確認しても蓄積している光子は破壊されない。
【0052】
(4)単一光子の蓄積状態を記録する装置104
蓄積状態を記録する装置104は、周期性を有する蓄積装置103のどの位相に光子が蓄積されているかを記録する装置である。蓄積装置103に光子を入力した場合は、どの位相に光子を入力したかの情報113をうけとり、また、蓄積装置103から光子を出力した場合には、どの位相から光子を出力したかの情報114をうけとり、記録情報を更新する機能を有する。蓄積装置103に光子数検証装置109が取り付けられている場合には、そこで検出した光子消滅情報115もうけとり、記録情報を更新する。
【0053】
この記録装置104は、光子の遅延時間を計算し場合によっては破棄を決定する装置103からの要求により、記録情報111を出力できる機能もまた有する。これらの機能は、一般的なコンピュータおよびデータベースプログラムを用いて構成することができる。
【0054】
(5)遅延調整および単一光子破棄装置105
遅延調整および単一光子破棄装置105は、光子の遅延時間を計算し、場合によっては破棄を決定する装置106から出された指示に従い、単一光子光源から出た光を蓄積装置103に入力する時間を遅延させるか場合により破棄する機能を有する装置である。この機能を有する装置の構成の一例を図6に示す。この例の場合、遅延調整および単一光子破棄装置装置105は
光路長の異なる複数の光ファイバー601
光子吸収体602
光スイッチ603
から構成されている。
【0055】
光は真空中の速度であれば、1ナノ秒の間に29.9792458 cm移動する。したがって、単一光子光源から蓄積装置103を光ファイバーで接続した場合、そのファイバーの光路長を余計に長くすることにより、29.9792458 cmあたり1ナノ秒の遅延を与えることができる。なお、1ナノ秒は1GHzの一クロックに相当する。無論、遅延量はファイバーの光路長に比例するから、光路長の異なる光ファイバーを複数用意し、それらのうちどれを用いて単一光子光源から蓄積装置103に光を導くかを選択すれば、遅延を調整することができる。なお、単一光子光源から発生した単一光子を遅延を与えずに蓄積装置103に入力した場合の位相時刻は、蓄積装置103の基準位相時間の整数倍になるとは限らない。この整数倍でない値は、それを補償し整数化する遅延時間を与えれば整数化することができる。たとえば、位相時刻が0.5ナノ秒となるものがあった場合、0.5ナノ秒の遅延をあたえれば1ナノ秒にすることができる。また位相時刻が1.72ナノ秒となるものがあれば、0.28ナノ秒の遅延を与えれば2ナノ秒にすることができる。なお、単一光子光源から発生した単一光子を遅延を与えずに蓄積装置103に入力した場合の位相時刻は連続的に自由な値をとりえるので、遅延により完全に整数化するためには任意の連続的な遅延量を与えられる必要がある。これは複数の光ファイバーを切り替える方法では実現不可能であるが、実用上は完全に位相時刻が整数である必要は無く、整数となる時刻の前後にある程度の時間的誤差を持つことが許される。この誤差範囲については単一光子の利用目的により異なるので、本発明の実施においては利用目的が要求する誤差範囲に収まるように、それだけの種類の遅延を与えられるだけの光路長の異なる光ファイバーを用意しておく。
【0056】
光子吸収体602は、単一光子破棄に用いられる。これは、その波長の単一光子を吸収する特性をもった材料で構成されており、例えばその光子が持つエネルギーよりも狭いバンドギャップを持つ半導体などをその材料とすることができる。このように光子吸収体に光を導けば、その光子は蓄積装置103に入力することなく破棄することができる。
【0057】
光スイッチ603は、光子の遅延時間を計算し、場合によっては破棄を決定する装置106からの指示112に従い、どの光路長の光ファイバーに光を導くか、もしくは光子吸収体に光を導くかを制御するために用いられる。光スイッチについては蓄積装置103の部分で説明をおこなっており、原理的には同じものを用いればよい。ただし、蓄積装置103に用いる光スイッチは、2つの光経路を切り替えられればよかったが、こちらの場合は、複数の光経路を切り替えられる必要がある。技術的ないしはコスト等の商業的理由により、必要な数の光経路に対応するだけの光スイッチが利用できない場合には、より少ない経路に対応する光スイッチを図7にしめすようにカスケード状に接続すれば目的を達することができる。
【0058】
なお、調整可能な遅延時間範囲が大きいほど、光子が破棄される割合は少なくなる。例えば、蓄積装置103の周期まで遅延させることが可能な装置の場合、蓄積装置103が満杯で無い限りは必ず光子を蓄積できることになる。したがって、できる限り遅延時間範囲の大きい遅延装置が望ましい。
【0059】
(6) 光子の遅延時間を計算し、場合によっては破棄を決定する装置106
この装置は、記録装置104から受け取った蓄積装置103内の光子の蓄積情報111と、時刻検出装置102から受け取った時刻情報110を元に、遅延調整および単一光子破棄装置105を利用してどれだけの遅延を単一光子にあたえるか、もしくは破棄すべきかを計算により求め、遅延調整および単一光子破棄装置に指示112を与える機能を有する装置である。
【0060】
この機能を有する装置は、通常のコンピューター等の論理回路を用いて構成することができる。どのように遅延時間もしくは破棄を決定するかという手順については単一光子の供給手順の部分で説明する。
【0061】
(単一光子の供給手順)
次に本発明で上記の装置を用いて単一光子を供給する手順について述べる。なお本実施例の供給手順をフローチャート化したものが図11である。
【0062】
この実施例では2.99792458kmの光路長をもつ周期蓄積装置103を用い、位相時刻間隔1ナノ秒で光子を蓄積する場合について説明する。つまり周期蓄積装置103内には1万個の単一光子が蓄積可能である。なお、単一光子光源から平均1kHzで単一光子が発生する場合を例にとり説明する。
【0063】
まず第一のステップとして、単一光子光源101を用いて単一光子121と単一光子124からなる相関光子対を発生させる。これは装置の部分で説明したように、ここではパラメトリックダウンコンバージョンを用いて発生させる。すなわち、非線形光学媒質にポンプ光210としてレーザー光を照射し、そこから発生する相関光子対のアイドラー光212が単一光子であるかを確認し、確認できた場合のみゲートをあけることでシグナル光211が出力されるようにすることで、単一光子を発生させる。
【0064】
この発生させた単一光子は、レンズやミラー、光ファイバーなどの光学部品を用いて遅延調整および単一光子破棄装置105に入力される。
【0065】
第二のステップとして、第一のステップで発生させた単一光子が遅延を行なわなかった場合に蓄積装置103に入力されることになる時刻を決定することができる時刻を、時刻検出装置102を用いて測定する。
【0066】
これは、時刻検出装置102でアイドラー光212が単一光子であることを確認した時刻を測定することで実施可能である。なぜならアイドラー光212とシグナル光211は同時に発生しており、かつその進行方向がポンプ光210を含む平面に対し鏡像をなすものであるため、アイドラー光212を測定する測定器の位置を固定しておけば、シグナル光211はアイドラー光212がその測定器に達した時刻にその鏡像位置に本来到達しているからである。
【0067】
ただし、シグナル光211とアイドラー光212はそれぞれ別のファイバーやミラーなどの光学部品により経路を変えられているので、実空間において鏡像位置にいるわけではない。
【0068】
しかしながら、アイドラー光212が単一光子であることを確認した時刻から、シグナル光211が蓄積装置103に遅延を行なわなかった場合に到達するまでに要する時間は、それら装置構成でさだまる定数であり単一光子の発生時刻によらず一定である。
【0069】
したがってあらかじめ実験によりアイドラー光212が単一光子であることを確認した時刻から、シグナル光211が蓄積装置103に遅延を行なわなかった場合に到達するまでに要する時間を一度測定しておけば、後はアイドラー光212が単一光子であることを確認した時刻を検出しそれにあらかじめ求めておいた値を加えるだけで、シグナル光211が蓄積装置103に遅延を行なわなかった場合に到達するまでに要する時刻を特定することができる。
【0070】
例えばアイドラー光212が単一光子であることを確認した時刻が1038518.6ナノ秒であったとする。また、アイドラー光212が単一光子であることを確認した時刻から、シグナル光211に遅延を与えなかった場合にシグナル光211が蓄積装置103に達する時間が33.3ナノ秒であるとすると、シグナル光211は遅延を与えない場合1038551.9ナノ秒に蓄積装置103に達することになる。
【0071】
この情報110は、遅延時間を計算し場合により光子破棄を決定する計算装置106に送られる。
【0072】
第三のステップとして、記録装置104に記録されている蓄積装置103の光子蓄積情報を確認する。この実施例の場合には、記録装置104には蓄積装置103に蓄積可能な1万個の各位相時刻に光子が蓄積されているか否かの情報が記録されている。蓄積装置103には、基準位相時刻の整数倍の位相時刻に光子が蓄積されていくので、ここではその整数の値をキーとして用いる。つまり、1から10000までの値が個々の位相時刻を表すキーとなり、それぞれに光子が蓄積されているか否かの情報が記録されているものとする。これはそれまでの蓄積装置103への光子入力情報、蓄積装置103からの光子出力情報が記録装置104に入力されており、この記録装置104内に光子の蓄積状態が記録されているので、この記録装置104に問い合わせすればよい。この問い合わせ結果111は、遅延時間を計算し場合により光子破棄を決定する計算装置106に送られる。
【0073】
第四のステップとして、計算装置106を用いて、蓄積状態と単一光子が遅延を行なわなかった場合に蓄積装置103に入力されることになる位相時刻から、光子を分離して蓄積できるように入力すべき遅延時間を算出し、適切な時間が無い場合には光子破棄の判断を下す。遅延時間の計算は次のようにしておこなう。
【0074】
ステップ i)単一光子が遅延を行なわなかった場合に蓄積装置103に入力されることになる時刻を、蓄積装置103の位相時刻に換算する。これは以下の手順で行なうことができる。
【0075】
ステップi-1)単一光子が遅延を行なわなかった場合に蓄積装置103に入力されることになる時刻T1から、蓄積装置103の位相時刻の原点に対応する時刻T0を引いた値T2=T1-T0を求める。
【0076】
ステップi-2)T2を蓄積装置103の周期Tで割り、その余りを求める。この余りが蓄積装置103の位相時刻である。
【0077】
ここに現れる数値T0は運用者が自由に設定できる定数でる。ただしT0は一旦決定したら、本発明実施の一連の流れを通じて1つの値に固定しておく。Tは装置構成で定まる定数であり、これはあらかじめ測定をすることで求めておく。
【0078】
例えばT1=1038551.9ナノ秒となる光子の場合、T0=0ナノ秒、Tを10000ナノ秒とすれば、
T2=1038551.9-0=1038551.9
T2=103*10000+8551.9
であるので、位相時刻は8551.9ナノ秒である。
【0079】
ステップii)単一光子が遅延を行なわなかった場合に蓄積装置103に入力されることになる位相時刻に、遅延装置で調整可能な遅延時間の値の組をそれぞれ足すことで、蓄積装置103に入力可能な位相時刻の値の組を計算する。
【0080】
ステップiii)その値の組から、光子が蓄積されておらず、かつ光子の位相時刻が基準となる位相時刻間隔の整数倍となる位相時刻を蓄積情報を元に探す。基準となる位相時刻間隔はあらかじめ定めておくもので、これが最大頻度で単一光子を供給している際の時間間隔に対応する。例えば位相時刻間隔として1ナノ秒を選択すれば、供給頻度の最大値は1GHzとなる。単一光子の供給頻度は、この基準となる位相時刻間隔の整数倍をとるから、利用したい供給頻度を基準として、その要求を満たすように位相時刻間隔を設定しておく。ここでは、1ナノ秒を基準となる位相時刻間隔とした場合について説明する。
【0081】
分岐) もし条件を満たす位相時刻が見つからない場合には、光子破棄の判断を下す。
条件を満たす位相時刻が見つかったら、そのうちの1つの位相時刻に光子を蓄積装置103に入力するために必要な遅延時間を計算結果とする
以上が遅延時間の計算もしくは光子破棄判定手順である。
【0082】
たとえば、遅延を与えない場合1038551.9ナノ秒に入力部に光が到達することになる場合、位相時刻は8551.9ナノ秒となる。遅延装置で与えられる遅延時間の組が{0, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.5, 0.6, 0.7, 0.8, 0.9}ナノ秒の10種類であった場合、入力可能な位相時刻の組は[8551.9, 8552.0, 8552.1, 8552.2, 8552.3, 8552.4, 8552.5, 8552.6, 8552.7, 8552.8, 8552.9]の10種類となる。このうち基準位相時間の整数倍となっているのは0.1ナノ秒の遅延を与えた8552.0である。この位相時刻に光子がすでに蓄積されているかを確認し、蓄積されていないことが確認できたら遅延時間として0.1ナノ秒を計算結果とする。ここでは蓄積されていなかったものとする。
【0083】
この結果112は、遅延調整および単一光子破棄装置105に送られる。
【0084】
次に第五のステップとして、第四のステップで計算された遅延時間もしくは破棄の決定112に従い、遅延調整および単一光子破棄装置105により、光子に指定された時間の遅延を与える、もしくは破棄を行なう。遅延を与えた場合には、その光子122を蓄積装置103に入力する。
【0085】
遅延を与えない場合1038551.9ナノ秒に入力部に到達することになる光子は、0.1ナノ秒の遅延を与えられ位相時刻8552に蓄積される。
【0086】
次に第六のステップとして、第五のステップにおいて新たに光子を蓄積した場合には、その情報113を蓄積状態記録装置104に入力し、蓄積情報を更新する。もし第五のステップにおいて光子破棄を行なった場合には蓄積情報は更新しない。
【0087】
今の例では位相時刻8552の光子蓄積情報が未蓄積から蓄積有りに変更される。
【0088】
もし第五のステップで光子を蓄積装置103に入力した場合には、蓄積装置103内の光子が一つ増える。第一から第六までのステップを繰り返せば、蓄積装置103内の単一光子数は増加していく。
【0089】
蓄積装置103に光子数検証装置109が搭載されている場合には、この光子蓄積のステップと平行して、光子数検証を行なう。これは光子数検証装置109で検出した単一光子が存在する時刻情報115と、記録装置104に記録されている光子の蓄積情報を照合することで行なう。つまり、記録装置104の記録上では光子が存在しているにもかかわらず、光子数検証装置でその光子の存在が検証できなかった場合には、当該光子が消滅したものとして記録装置104内の光子蓄積情報を更新する。
【0090】
第四のステップにおいて、単一光子を蓄積装置103内で基準となる位相時刻間隔の整数倍となる位相時刻に対して入力しているので、蓄積されている光子はすべて位相時刻間隔の整数倍の位相時刻を有する。しかし、これだけではまだ、単一光子の一定間隔での出力を保証することはできない。
【0091】
例えば、光子が蓄積開始から
1038518.6, 1988771.7, 3030413.0, 4016159.4, 4988837.3, 6000552.3, 6991940.0, 7978365.6, 8985160.8, 9968318.5
の時刻に発生したとする。ただし単位はナノ秒である。これらの光子の発生時刻間隔は、
950253.1, 1041641.3, 985746.4, 972677.9, 1011715.0, 991387.6, 986425.6, 1006795.2, 983157.7
ナノ秒であり、およそ1ミリ秒である。
【0092】
しかし、蓄積装置103の周期性によりこれらの光子の位相時刻は
8551.9, 8805.0, 446.3, 6192.7, 8870.7, 585.7, 1973.3, 8398.9, 5194.1, 8351.8
となり、遅延回路により整数化した後は
8552, 8805, 447, 6193, 8871, 586, 1974, 8399, 5195, 8352
(単位ナノ秒)となる。これらはすべて異なっているので、これら単一光子はすべて蓄積されることとなる。
【0093】
これらを小さい順に並べると、
447, 586, 1974, 5195, 6193, 8352, 8399, 8552, 8805, 8871
(ナノ秒)であり、それら蓄積された光子の位相時刻間隔は
139, 1388, 3221, 998, 2159, 47, 153, 253, 66, 1576
(ナノ秒)となり、マイクロ秒から数ナノ秒の値となっている。つまり、周期的蓄積装置103に導入することにより、光子の時間間隔は小さくなっている。しかしながら、その光子の位相時間間隔は、蓄積の初期段階では光子の位相時間は一定ではない。つまり、この段階ではまだ一定の間隔での出力ができない。
【0094】
単一光子の一定間隔での出力を保証するには、出力する間隔で並ぶ位相時刻の組に、利用したいだけの数の単一光子が隙間なしに収められている必要がある。もちろん、利用する間隔は、蓄積されている位相間隔の整数倍である必要はあるが、一致する必要はない。例えば単一光子を利用する間隔を、蓄積されている位相間隔の2倍とすれば、たとえば偶数の位相時刻にさえ単一光子が蓄積されていればよい。また、蓄積装置103が蓄積可能な最大数まで単一光子が蓄積されるのを待つ必要もない。例えば最高頻度で5個の単一光子が必要な場合、連続する5つの位相時間に光子が蓄積されていれば利用が可能である。このように、利用可能な状態になっているかを第七のステップとして確認する。この確認は記録装置104の記録情報を参照すれば可能である。利用可能な状態になっていない場合には第一のステップから第七のステップを繰り返す。もし利用可能になっていることが確認できたら、第八のステップとして蓄積した光子123を出力する。この時、光子の供給間隔の最大値は蓄積装置103内の基準位相時刻間隔となる。すなわち今の例では1GHzでの供給が可能である。これはもともとの光源における単一光子の発生頻度1kHzの100万倍高い値である。また、光子の供給間隔はすべて許容誤差範囲内で一定となっている。このように供給した光子は量子暗号や量子計算などに利用できる。光子を出力した場合は、第九のステップとして、その情報114を記録装置104に入力し、光子の蓄積情報を更新する。
【0095】
なお、第一から第七までのステップと、第八から第九までのステップはそれぞれ平行して行なってもよい。つまり、それまでの光子を出力しつつ、平行して蓄積してもよい。
【0096】
単一光子が蓄積装置103内での自然消滅を上回る速度で装置内に蓄積される限り、蓄積装置103内で光子が蓄積されている位相時刻は増えていき、最終的にすべての位相時刻が単一光子で占められることになる。光子の自然消滅は、光ファイバーの吸収係数が小さくなるように質を改善する、光ファイバーの吸収係数が小さい波長の光を用いる、という方法により低減することができる。もちろん、単一光子光源の改良により蓄積装置103への単一光子供給速度は高めることができる。
【0097】
図8に蓄積装置103内で光子が蓄積されている割合の時間変化のシミュレーション結果801を示す。ただし、このシミュレーションでは光子の発生頻度は1kHz、遅延調整時間は最長1ナノ秒、周期10000ナノ秒を仮定し、また光子の自然消滅はないものと仮定した。この場合、約60秒ですべての位相時刻に光子が充填されているのがわかる。充填率の伸びが途中で緩やかになるのは、遅延調整時間が最長1ナノ秒と非常に短いため、充填率が高まるとともに、調整可能な範囲のすべての位相時刻がすでに占有されている確率が高くなり、破棄される光子が増えるためである。同じ図に、遅延時間の最長値が周期10000ナノ秒と一致している場合の充填率の時間変化802もプロットした。こちらの場合は、充填率が100%になるまで破棄はおこらず、10秒ですべての位相時刻に光子が充填される。遅延調整時間の最長値が1ナノ以上、10000ナノ以下である場合には、この中間の充填率時間変化を示す。
【0098】
光子が蓄積されている位相時刻が増えれば、充填率が100%にならずとも、供給条件を満たす位相の組が現れるようになる。そこで、記録装置104の記録情報を利用し、単一光子が利用できる状態まで蓄積されていることを確認できるまで上記ステップを繰り返す。
【0099】
この実施形態では、光子を蓄積する光子を蓄積することにより、高頻度で光子を出力することを可能としている。例えば、単一光子光源の単一光子発生頻度がたとえ1ミリ秒に一回つまり1kHzであろうとも、十分な蓄積をした後は1GHzでの供給が可能になる。しかも、その供給間隔は一定である。
【0100】
ただし、蓄積装置103からの光子の出力頻度が入力頻度を上回れば、からなず途中で光子の枯渇が起こり、その時点で高頻度光子供給ができなくなる。10000個の単一光子を蓄積できる装置では、10000ビットの出力を行なった時点で単一光子が枯渇する。1GHzの頻度で供給した場合、10マイクロ秒で完全に枯渇することになる。したがって、本発明は、常に高頻度での光子供給を必要とする用途には向かない。しかしながら、単一光子の用途はこのようなものばかりではない。
【0101】
例えば、単一光子を利用する技術の代表である量子暗号通信の一種BB84の場合、通信の基本的な流れは以下のようなものである。
【0102】
ステップ1)送信者は、2種類の偏光基底(A,B)それぞれに2つづつある固有状態つまり合計4つの偏光状態(A0,A1,B0,B1)のうち1つ選択し、その偏光状態をもつ単一光子を順次生成し、受信者に送信する。送信すべき光子数は、後述する暗号鍵を生成するために必要な量で定まる。原理的に、生成すべき暗号鍵のビット数の倍以上の数の単一光子が必要になる。倍以上のどれだけが必要であるかは、途中でどれだけの光子が消滅するか、受信者側の測定効率がどの程度かなどにより変化するが、最も理想的な状態であればほぼ2倍でよく、多くても数倍程度である。
【0103】
ステップ2)受信側で2種類の基底(A,B)から1つをランダムに選択し、単一光子の偏光を順次測定する。
【0104】
ステップ3)古典的な通信経路を用いて、受信側が選択した基底を送信側に開示する。送信側と受信側で基底が一致した単一光子の測定結果を暗号鍵とする。
【0105】
ステップ4)ステップ3で生成した暗号鍵を用いて、送信したい文を数学的に暗号化する。
【0106】
ステップ5)送信者は数学的に暗号化した文を、古典的な通信経路を用いて送信する。
【0107】
ステップ6)受信者は古典的な通信経路を用いて送られてきた暗号文を受信する。
【0108】
ステップ7)受信者はステップ3で生成した暗号鍵を用いて暗号を解読する。なお、古典的通信経路とは単一光子を必要としない、通常の光通信や電話線通信、無線通信などである。
【0109】
この量子暗号通信の流れのうち、単一光子の供給が必要となるのはステップ1だけである。つまり、残りのステップを実行している間は単一光子を消費しない。また、単一光子の供給頻度を高めれば、同じ長さの鍵を生成するために必要なステップ1およびステップ2の時間は短くなる。ステップ3からステップ7までに要する時間は、単一光子の供給頻度の影響を受けないから、ステップ1および2が短くなるだけで通信全体に必要となる時間が短くなる。たとえば1kHzの供給頻度を持つ単一光子光源をそのまま使えば10000ビットの単一光子を送信するのに10秒要する。これに対し、本発明の方法を用いて、1ナノ秒を基準間隔として蓄積した後送信すれば同じ量の単一光子を送信するのに10マイクロ秒しかかからない。ステップ2から7までは単一光子の供給方法によらないから、全体で約10秒の短縮ができることになる。
【0110】
なお、10000ビット分の単一光子を再度1kHzの供給頻度をもつ単一光子光源を用いて補充するにはおよそ10秒から60秒程度あればよい。したがって、単一光子を利用していないステップがこれだけの長さあれば、たとえ量子暗号通信であっても継続的に通信が行なうことができ、かつ通信に要する時間を短縮することができる。
【0111】
実際には、常に継続して通信を行なうことは少なく、例えば夜間などは通信頻度が下がるのが一般的である。これら通信のアイドル時間を利用できるだけの蓄積装置103を準備すれば、実際に通信を行なう時間に高頻度の単一光子の供給が可能になる。
【0112】
もちろん、蓄積装置103への単一光子の供給速度が、蓄積装置103からの出力速度を上回る場合には光子の枯渇が生じない可能性がある。この場合には光源を上回る供給頻度という効果をえることができないが、供給頻度を一定にするという効果は得ることができる。例えば量子計算の場合には単一光子の供給頻度も重要であるが、それよりも光子の供給間隔が一定であることが要求される。これは光子間で適切な相互作用を発生させ、演算を行なうために必要であるからである。本発明では遅延を制御することにより、間隔を一定にすることができるので、この用途にも適する。
【0113】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態は、光子数のQND測定を利用することによりパラメトリックダウンコンバージョン以外の方法で単一光子を発生させる場合においても本発明を実施することを可能とするものである。
【0114】
第二の実施形態に用いる装置構成を図9に示す。
【0115】
この装置は、
単一光子からなる相関光子対を発生させる光源901
時刻検出装置902
蓄積装置103
単一光子の蓄積状態を記録するための記録装置104
遅延調整および単一光子破棄装置105
光子の遅延時間を計算し、場合によっては破棄を決定する装置 106
から構成されている。
【0116】
各構成要素のうち、103から106は第一の実施形態と同じである。異なるのは、1)光源901が相関光子対ではなく、単一光子を生成するものである点と、2)時刻検出装置902が、光子数のQND測定技術を用いたものであり、最終的に外部に供給する単一光子そのものの通過時刻を光子を破壊することなく検出するものである点の2点である。
【0117】
単一光子光源としては、第一の実施例同様パラメトリックダウンコンバージョンを用いてもかまわない。しかし、第一の実施例ではパラメトリックダウンコンバージョンを用いるものに限定されているのに対し、第二の実施例ではそれ以外の方法でもよい。そこで、本実施例では量子ドットを利用する方法について説明する。
【0118】
(量子ドットを用いた単一光子光源)
量子ドットを用いた単一光子光源の構成図を図10に示す。この単一光子光源は基本構成要素として
量子ドット1001
絶縁材料 1002
励起光源 1003
を持つ。
【0119】
なお、図には示していないが、光源から出た光が、光ファイバーなどに適切に導かれるように、反射鏡やレンズなどの光学部品を必要に応じて付け加える。
【0120】
量子ドット1001は、実際に単一光子が発生する領域である。効率よく発光させるために、この量子ドット1001の材料として、直接遷移型の半導体を用いる。また、基本的に材料の持つバンドギャップにより単一光子の波長が定まるので、利用したい波長に対応した材料を選択しておく必要がある。たとえば通信用光ファイバーで高い透過率が得られるCバンドの波長は1530-1565nmであり、この波長の光を発生させることができる材料としてはInAs系が知られている。量子ドット1001のサイズは大きすぎると複数の電子・正孔対が同時に存在できるようになるので、単一光子光源として用いることができなくなる。したがって、その大きさは数ナノメートルから数十ナノメートルである必要がある。なお、1つの単一光子光源デバイスに複数の量子ドット1001が含まれる場合には、複数の量子ドット1001が同時に発光してしまい単一光子とならない危険が生じる。したがって、光源デバイスには理想的には1つだけの量子ドット1001が含まれていることが好ましい。ただし、それぞれの量子ドット1001の発光頻度が低い場合、数個のドットが含まれていても複数のドットが同時に発光する確率は低くなる。したがって、同時発光確率が、単一光子利用者側が要求する水準から許容できるものであれば、複数のドットが含まれていても良い。
【0121】
絶縁材料1002は、量子ドット1001内に電子・正孔対を閉じ込める役割を果たす。したがって、その制限は電気伝導度で規定されるものではなく、量子ドット1001の材料よりも高い伝導帯準位をもち、より低い価電子帯準位を持つ材料であれば半導体でもよい。例えばInAsに対してはInPをその材料として用いることができる。
【0122】
励起光源1003は、量子ドット1001内に電子・正孔対を発生させる役割に用いられるものである。電子・正孔対を生成するためには、量子ドット1001のバンドギャップよりも高いエネルギーを持つ光を照射する必要がある。InAs量子ドット1001を用いて1.5μm近傍の波長の光を発光させる場合、780nmの波長を持つTiサファイアレーザーなどを用いることができる。
【0123】
(時刻検出装置)
第二の実施例の場合、遅延を与えずに単一光子を蓄積装置103に導入した場合に、蓄積装置103に導入される時刻を決定することができる時刻を検出する行為を、最終的に外部に供給する単一光子そのものの通過時刻を検出することで行なう。したがって、この時刻検出は単一光子を破壊しない方法で行なう必要がある。この目的は光子数のQND測定技術により達成可能である。つまり、単一光子光源から出た光を遅延調整もしくは単一光子破棄装置に導入する経路上において、位置を決めて光子数のQND測定を行ない、そこで単一光子が通過した時刻を検出すれば目的を達することができる。光子数のQND測定技術については、第一の実施形態の光子数検証部において説明したものを用いればよい。
【0124】
(単一光子の供給手順)
第二の実施例における単一光子の供給手順は、基本的に第一の単一光子の供給手順とほぼ同じである。本実施例の供給手順をフローチャート化したものが図12である。
【0125】
以下に具体的な手順を説明する。
【0126】
まず第一のステップとして、複数の単一光子光源を用いて、それぞれで単一光子を発生させる。量子ドット1001を用いた光源の場合、量子ドット1001に励起光1004を照射し、ドット内に電子・正孔対を生成させる。この電子・正孔対は結合し、量子ドット1001外に単一光子1005を放出する。この単一光子をレンズなどで集光し、時刻検出装置に送る。
【0127】
なお、量子ドット1001のサイズ効果により、連続的に励起レーザーを照射していても、量子ドット1001内に電子・正孔対が1つ存在している間は追加で電子・正孔対が生成されることはない。電子・正孔対の結合は時間的ばらつきをもった現象であり、励起レーザーは連続的に照射しても、ランダムな間隔をもって間歇的に単一光子が生成される。なお、励起レーザーはパルス的に照射してもかまわない。その場合は、基本的にレーザーを照射している間において、やはりランダムな間隔で間歇的に単一光子が生成される。
【0128】
次に第二のステップとして、第一のステップで発生させた単一光子121を遅延を与えずに蓄積装置103に導入した場合に、蓄積装置103に導入される時刻を決定することができる時刻110を検出する。これは第一のステップで発生させた単一光子を光源から遅延調整もしくは単一光子破棄装置105に送る経路上において、光子数のQND測定を行ない、その検出時刻をもとめることで実施できる。ただし、QND測定を行なう位置から遅延を与えずに単一光子を蓄積装置103に導入する場合にかかる時間については定数であり、それはあらかじめ求めておくものとする。
【0129】
単一光子を遅延調整および単一光子破棄装置105に送る一方、検出した時間を遅延時間を計算し場合により光子破棄を決定する計算装置106に送る。
【0130】
次に第三のステップとして、蓄積装置103の光子蓄積状態を確認する。これはそれまでの蓄積装置103への光子入力情報、蓄積装置103からの光子出力情報が記録装置104に入力されており、この記録装置104内に光子の蓄積状態が記録されているので、この記録装置104に問い合わせすればよい。この問い合わせ結果は、遅延時間を計算し場合により光子破棄を決定する計算装置106に送られる。
【0131】
第四のステップとして、計算装置111を用いて、蓄積状態と単一光子が遅延を行なわなかった場合に蓄積装置103に入力されることになる位相時刻から、光子を分離して蓄積できるように入力すべき遅延時間を算出し、適切な時間が無い場合には光子破棄の判断を下す。遅延時間の計算方法および破棄判断の下し方については第一の実施例と同じ方法を用いる。
【0132】
第五のステップとして、第四のステップで計算された遅延時間もしくは破棄の決定112に従い、遅延調整および単一光子破棄装置105により、光子に指定された時間の遅延を与える、もしくは破棄を行なう。遅延を与えた場合には、その光子122を蓄積装置103に入力する。
【0133】
第六のステップとして、第五のステップにおいて新たに光子を蓄積した場合には、その情報113を蓄積状態記録装置104に入力し、蓄積情報を更新する。もし第五のステップにおいて光子破棄を行なった場合には蓄積情報は更新しない。
【0134】
蓄積装置103に光子数検証装置109が搭載されている場合には、この光子蓄積のステップと平行して、光子数検証を行なう。これは光子数検証装置109で検出した単一光子が存在する時刻情報115と、記録装置104に記録されている光子の蓄積情報を照合することで行なう。つまり、記録装置104の記録上では光子が存在しているにもかかわらず、光子数検証装置でその光子の存在が検証できなかった場合には、当該光子が消滅したものとして記録装置104内の光子蓄積情報を更新する。
【0135】
単一光子が利用できる状態まで蓄積されているかを第七のステップとして確認し、確認できるまで上記ステップを繰り返す。確認方法も第一の実施例と同じである。
【0136】
必要な蓄積状態となったことを確認した後に、第八のステップとして蓄積した光子123を出力する。この光子は量子暗号や量子計算などに利用できる。光子を出力した場合は、第九のステップとして、その情報114を記録装置104に入力し、光子の蓄積情報を更新する。
【0137】
なお、第一から第七までのステップと、第八から第九までのステップは平行して行なってもよい。つまり、それまでの光子を出力しつつ、平行して蓄積してもよい。
【0138】
第二の実施例においても、第一の実施例同様、光源の発光頻度を上回り、かつ一定の頻度で単一光子の供給が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の単一光子の供給方法は、量子暗号通信や量子計算などの量子情報処理に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】第一の実施形態に用いる単一光子供給装置を示す図
【図2】パラメトリックダウンコンバージョンを用いて単一光子を発生させる装置を示す図
【図3】蓄積装置103を示す図
【図4】スイッチを用いない光子入力部を示す図
【図5】光子数のQND測定装置を示す図
【図6】遅延調整および単一光子破棄装置を示す図
【図7】光スイッチのカスケード接続を示す図
【図8】蓄積装置内での光子の充填率の時間変化を示す図
【図9】第二の実施形態に用いる単一光子供給装置を示す図
【図10】量子ドットを用いた単一光子光源を示す図
【図11】第一の実施形態における供給手順を示す図
【図12】第二の実施形態における供給手順を示す図
【符号の説明】
【0141】
101 単一光子からなる相関光子対を発生させる光源
102 時刻検出装置
103 光子の遅延時間を計算し、場合によっては破棄を決定する装置
104 単一光子の蓄積状態を記録するための記録装置
105遅延調整および単一光子破棄装置
106 蓄積装置
107 入力部
108 出力部
109 光子数検証部
110遅延を与えずに単一光子を蓄積装置に導入した場合に、蓄積装置に導入される時刻を決定することができる時刻
111 光子の蓄積情報
112 遅延もしくは光子破棄の指示
113 光子を入力したという情報
114 光子を出力したという情報
115 光子数検証結果
201 ポンプ光光源
202 非線形光学媒質
203 アイドラー光が単一光子であることを確認する装置
204 アイドラー光が単一光子であることを確認できた場合のみ、対となるシグナル光を外部に通過させるゲート
210 ポンプ光
211 シグナル光
212 アイドラー光
213 単一光子
301 周期的蓄積部
302 入力部
303 出力部
304 光子数検証部
401 すでに蓄積されていた光の経路
402 合流後の光の経路
403 新たに導入する光の経路
501 カー媒質
502 測定対象のビーム
503 プローブ光
504 マッハツェンダー干渉計
601 光路長の異なる複数の光ファイバー
602 光子吸収体
603光スイッチ
801 遅延調整可能範囲が1ナノの場合の充填率の時間変化
802遅延調整可能範囲が10000ナノの場合の充填率の時間変化
901 単一光子光源
902 時刻検出装置
1001 量子ドット
1002 絶縁材料
1003 励起光源
1004 励起光
1005 単一光子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一光子を発生させる光源、
遅延を与えずに単一光子を蓄積装置に導入した場合に、蓄積装置に導入される時刻を決定することができる時刻を検出する時刻検出装置、
単一光子を入力すると、特定の周期でその光子の出力が可能となる蓄積装置であり、かつ入力する光子の位相時刻を分離しておけば、複数の単一光子を蓄積した後に分離して出力することのできる蓄積装置、
蓄積装置の単一光子の蓄積状態を記録するための記録装置、単一光子を蓄積装置に入力する時刻を指定した値に基づき遅延させるか、もしくは単一光子を破棄できる遅延調整および単一光子破棄装置、および
時刻検出装置で検出した時刻と、記録装置に記録されている光子の蓄積状況の情報から、光子を分離して取り出せるように蓄積装置に入力すべき時刻を計算し、それを実現するために遅延調整および単一光子破棄装置に指定すべき値を計算し、適切な遅延時間が無い場合には光子破棄の判断を下す計算装置
を有する単一光子供給装置を利用した単一光子の供給方法であって、
光源を用いて単一光子を発生させる第一のステップと、
時刻検出装置を用いて第一のステップで発生させた単一光子に遅延を与えずに蓄積装置に導入した場合に、蓄積装置に導入される時刻を決定する時刻を検出する第二のステップと、
記録装置に記録されている蓄積装置の蓄積状態を確認する第三のステップと、
蓄積状態と第二のステップで検出した時刻から、光子を分離して蓄積できるように蓄積装置に入力すべき遅延時間を算出し、適切な時間が無い場合に光子破棄の判断を計算装置を利用してくだす第四のステップと、
計算装置で算出した結果に基づき単一光子を遅延調整および単一光子破棄装置で遅延させた後、蓄積装置に入力する、もしく光子を破棄する第五のステップと、
光子を蓄積装置に入力したことによる蓄積状態の変化に基づき、記録装置の情報を更新する第六のステップと、
単一光子が利用可能な状態になっていることを確認する第七のステップと、
確認できるまで第一から第七のステップを繰り返すステップと、
利用可能であることを確認できた場合に蓄積した単一光子を分離して出力する第八のステップと、
光子を取り出したことによる蓄積状態の変化に基づき、記録装置の情報を更新する第九のステップ
を有する単一光子の供給方法。
【請求項2】
単一光子からなる相関光子対を発生させる光源、
遅延を与えずに単一光子を蓄積装置に導入した場合に、蓄積装置に導入される時刻を決定することができる時刻を検出する時刻検出装置、
装置に単一光子を入力すると、特定の周期でその光子の出力が可能となる蓄積装置であり、かつ入力する光子の位相時刻を分離しておけば、複数の単一光子を蓄積した後に分離して出力することのできる蓄積装置、
蓄積装置の単一光子の蓄積状態を記録するための記録装置、
単一光子を蓄積装置に入力する時刻を指定した値に基づき遅延させるか、もしくは単一光子を破棄できる遅延調整および単一光子破棄装置、および
時刻検出装置で検出した時刻と、記録装置に記録されている光子の蓄積状況の情報から、光子を分離して取り出せるように蓄積装置に入力すべき時刻を計算し、それを実現するために遅延調整および単一光子破棄装置に指定すべき値を計算し、適切な遅延時間が無い場合には光子破棄の判断を下す計算装置
を有する単一光子供給装置を利用した単一光子の供給方法であって、
光源を用いて単一光子からなる相関光子対を発生させる第一のステップと、
時刻検出装置を用いて相関光子対の一方の光子を検出しその時刻を検出する第二のステップと、
記録装置に記録されている蓄積装置の蓄積状態を確認する第三のステップと、
蓄積状態と時刻検出装置で検出した時刻から、光子を分離して蓄積できるように蓄積装置に入力すべき遅延時間を算出し、適切な時間が無い場合に光子破棄の判断を計算装置を利用してくだす第四のステップと、
計算装置で算出した結果に基づき単一光子を遅延調整および単一光子破棄装置で遅延させた後、蓄積装置に入力する、もしく光子を破棄する第五のステップと、
光子を蓄積装置に入力したことによる蓄積状態の変化に基づき、記録装置の情報を更新する第六のステップと、
単一光子が利用可能な状態になっていることを確認する第七のステップと、
確認できるまで第一から第七のステップを繰り返すステップと、
利用可能であることを確認できた場合に蓄積した単一光子を分離して出力する第八のステップと、
光子を取り出したことによる蓄積状態の変化に基づき、記録装置の情報を更新する第九のステップ
を有する単一光子の供給方法。
【請求項3】
単一光子を発生させる光源、
遅延を与えずに単一光子を蓄積装置に導入した場合に、蓄積装置に導入される時刻を決定することができる時刻を検出する時刻検出装置であり、光子数を破壊することなくその通過時刻を検出することが可能な時刻検出装置、
装置に単一光子を入力すると、特定の周期でその光子の出力が可能となる蓄積装置であり、かつ入力する光子の位相時刻を分離しておけば、複数の単一光子を蓄積した後に分離して出力することのできる蓄積装置、
蓄積装置の単一光子の蓄積状態を記録するための記録装置、単一光子を蓄積装置に入力する時刻を指定した値に基づき遅延させるか、もしくは単一光子を破棄できる遅延調整および単一光子破棄装置、および
時刻検出装置で検出した時刻と、記録装置に記録されている光子の蓄積状況の情報から、光子を分離して取り出せるように蓄積装置に入力すべき時刻を計算し、それを実現するため遅延調整および単一光子破棄装置に指定すべき値を計算し、適切な遅延時間が無い場合には光子破棄の判断を下す計算装置
を有する単一光子供給装置を利用した単一光子の供給方法であって、
光源を用いて単一光子を発生させる第一のステップと、
時刻検出装置を用いて第一のステップで発生させた単一光子の通過時刻を光子数を破壊しない方法で検出する第二のステップと、
記録装置に記録された蓄積装置の蓄積状態を確認する第三のステップと、
蓄積状態と時刻検出装置で検出した時刻から、光子を分離して蓄積できるように蓄積装置に入力すべき遅延時間を算出し、適切な時間が無い場合に光子破棄の判断を計算装置を利用してくだす第四のステップと、
計算装置で算出した結果に基づき単一光子を遅延調整および単一光子破棄装置で遅延させた後、蓄積装置に入力する、もしく光子を破棄する第五のステップと、
光子を蓄積装置に入力したことによる蓄積状態の変化に基づき、記録装置の情報を更新する第六のステップと、
単一光子が利用可能な状態になっていることを確認する第七のステップと、
確認できるまで第一から第七のステップを繰り返すステップと、
利用可能であることを確認できた場合に蓄積した単一光子を分離して出力する第八のステップと、
光子を取り出したことによる蓄積状態の変化に基づき、記録装置の情報を更新する第九のステップ
を有する単一光子の供給方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−94087(P2007−94087A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284327(P2005−284327)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】