説明

単一化合物による白色発光照明装置及び白色発光有機EL素子

【課題】新規な単一の白色発光化合物の少なくとも一種を発光材料として利用したところの、大きな輝度で白色に発光させることができ、発光寿命の長い白色発光照明装置及び白色発光有機EL素子を提供すること。
【解決手段】電極を形成した基板上に、発光材料を含有する発光層を備えて成る発光装置であって、前記発光材料として特定のキナクリドン骨格及びカルバゾール骨格を有する新規物質である白色発光化合物を採用したことを特徴とする発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は単一化合物による白色発光照明装置及び白色発光有機EL素子に関し、さらに詳しくは、新規な単一の白色発光化合物の少なくとも一種を発光材料として利用したところの、大きな輝度で白色に発光させることができ、発光寿命の長い、単一化合物による白色発光照明装置及び白色発光有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、白色発光を目指す照明装置及び有機EL素子は例えば、一対の電極間に、赤(R)を発光させる赤色発光化合物、緑(G)を発光させる緑色発光化合物、及び青(B)を発光させる青色発光化合物を介在させてなる発光層を有する。前記三種の発光化合物の発光色を混色して白色発光を実現しようとするものであった。
【0003】
しかしながら、三種の発光化合物それぞれから発せられる色のバランスを調節するのが困難であった。しかも、赤を発光させる化合物は劣化し易いので、製造当初は三色のバランスを調整して白色発光可能な白色発光照明装置又は有機EL素子であっても、時間の経過と共に赤発光の化合物が劣化することにより、着色した発光又は照明光となり、また輝度も小さいと言う問題があった。一方、単一化合物で白色発光を発する化合物は、殆ど知られていない。また、従来の発光化合物は発光寿命が短いと言う問題もあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、白色に発光可能な、単一化合物である白色発光化合物を利用した、発光寿命が長くて長期間に亘って白色発光の可能な、単一化合物による白色発光照明装置及び白色発光有機EL素子を提供することにある。この発明の他の課題は、白色に発光可能な、単一化合物である白色発光化合物を利用した、発光寿命が長くて長期間に亘って白色発光の可能な面状白色発光照明装置及び管状白色発光照明装置を提供することにある。
【0005】
この課題を解決するために鋭意研究した結果、従来においてはR、G、Bの三原色色素及び複数の色素を発光させ、これらを混色することにより白色発光を実現していたが、白色発光が可能な単一蛍光新化合物を発見し、この単一蛍光新化合物はその発光寿命が長く、しかも大きな輝度で発光することを見出して、この発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段は、
電極を形成した基板上に、発光材料を含有する発光層を備えて成る白色発光照明装置であって、前記発光材料が式(1)で示される白色発光化合物であることを特徴とする単一化合物による白色発光照明装置である。
【0007】
【化1】

【0008】
但し、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を示す。
【0009】
この発明の単一化合物による白色発光照明装置の好適な態様において、
前記単一化合物による白色発光照明装置は、前記基板と、前記基板上に設けられたところの、前記式(1)で示される白色発光化合物を含有する発光層とを有する一層型有機EL素子である。
【0010】
この発明の白色発光照明装置の好適な態様において、
前記白色発光照明装置は、前記透明基板に、ホール輸送層、前記基板上に設けられたところの、前記式(1)で示される白色発光化合物を含有する発光層、及び電子輸送層を積層してなる多層型有機EL素子であり、
前記発光層は、前記白色発光化合物を高分子中に分散してなる層であり、
前記発光層は、前記白色発光化合物を前記基板上に蒸着してなる層であり、
前記白色発光照明装置が面状発光照明装置又は管状発光照明装置である。
【0011】
前記課題を解決するための他の手段は、
電極を形成した基板上に、発光材料を含有する発光層を備えて成る白色発光有機EL素子であって、前記発光材料が式(1)で示される白色発光化合物であることを特徴とする単一化合物による白色発光有機EL素子である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によると、単一物質でありながら400〜700nmの可視部発光領域を有し、輝度が2,000Cd/m以上であり、白色発光可能な単一の白色発光化合物を利用した白色発光照明装置を提供することができ、この白色発光照明装置をディスプレイ、照明装置等とすることにより白色に発光し、照明させることができる。また、夜間広告装置、道路標識装置等にも十分に使用されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明に係る単一化合物による白色発光照明装置(以下、単に白色発光照明装置と称することがある。)につき、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、一層型有機EL素子でもある白色発光照明装置の断面構造を示す説明図である。図1に示されるように、この白色発光照明装置Aは、透明電極2を形成した基板1上に、発光材料を含有する発光層3及び電極層4をこの順に積層して成る。この白色発光照明装置Aは、その基板が平面状に広がって全体として平面状となった形態を有するのであれば、面状発光照明装置となり、図1における基板1を円筒形に形成して全体として管状となった形態を有するのであれば、蛍光灯と同様の管状発光照明装置となる。尚、この管状発光照明装置は、直管状であっても、サークラインと俗に称される蛍光灯のような環状であっても良い。
【0015】
基板1としては、透明電極2をその表面に形成することができる限り、公知の基板を採用することができる。この基板1として、例えばガラス基板、プラスチックシート、セラミック、表面に絶縁塗料層を形成する等の、表面を絶縁性に加工してなる金属板等を挙げることができる。この基板1が不透明であるときには、この白色発光照明装置は、基板1とは反対側に白色光を照射することができる片面照明装置である。また、この基板1が透明であるときには、白色発光照明装置の基板1側及びその反対側の面から、白色光を照射することができる両面照明装置である。
【0016】
前記透明電極2としては、仕事関数が大きくて透明であり、電圧を印加することにより陽極として作用して前記発光層3にホールを注入することができる限り様々の素材を採用することができる。具体的には、透明電極2は、ITO、In23、SnO2、ZnO、CdO等、及びそれらの化合物等の無機透明導電材料、及びポリアニリン等の導電性高分子材料等で形成することができる。
【0017】
この透明電極2は、前記基板1上に、化学気相成長法、スプレーパイロリシス、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタ法、イオンビームスパッタ法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法、その他の方法により形成されることができる。
【0018】
なお、基板が不透明部材で形成されるときには、基板上に形成される電極は透明電極である必要はない。
【0019】
発光層3は、この発明における特定の白色発光化合物を含有する層である。前記白色発光化合物については、後述する。この発光層3は、この発明における特定の白色発光化合物を高分子中に分散してなる高分子膜として形成することができ、また、前記白色発光化合物を前記透明電極2上に蒸着してなる蒸着膜として形成することができる。
【0020】
前記高分子膜における高分子としては、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3−アルキレンチオフェン)、アリールアミンを含有するポリイミド、ポリフルオレイン、ポリフェニレンビニレン、ポリ−α−メチルスチレン、ビニルカルバゾール/α−メチルスチレン共重合体等を挙げることができる。これらの中でも好ましいのは、ポリビニルカルバゾールである。
【0021】
前記高分子膜中における前記白色発光化合物の含有量は、通常、0.01〜2重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0022】
前記高分子膜の厚みは、通常30〜500nm、好ましくは100〜300nmである。高分子膜の厚みが薄すぎると発光光量が不足することがあり、高分子膜の厚みが大きすぎると、駆動電圧が高くなりすぎて好ましくないことがあり、また、面状体、管状体、湾曲体、環状体とするときの柔軟性に欠けることがある。
【0023】
前記高分子膜は、前記高分子とこの発明における白色発光化合物とを適宜の溶媒に溶解してなる溶液を用いて、塗布法例えばスピンキャスト法、コート法、及びディップ法等により形成することができる。
【0024】
前記発光層3が蒸着膜であるとき、その蒸着膜の厚みは、発光層における層構成等により相違するが、一般的には0.1〜100nmである。蒸着膜の厚みが小さすぎるとき、あるいは大きすぎるときには、前述したのと同様の問題を生じることがある。
【0025】
前記電極層4は、仕事関数の小さな物質が採用され、例えば、MgAg、アルミニウム合金、金属カルシウム等の、金属単体又は金属の合金で形成されることができる。好適な電極層4はアルミニウムと少量のリチウムとの合金電極である。この電極層4は、例えば基板1の上に形成された前記発光層3を含む表面に、蒸着技術により、容易に形成することができる。
【0026】
塗布法及び蒸着法のいずれを採用して発光層を形成するにしても、電極層と発光層との間に、バッファ層を介装するのが好ましい。
【0027】
前記バッファ層を形成することのできる材料として、例えば、フッ化リチウム等のアルカリ金属化合物、フッ化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、酸化アルミニウム等の酸化物、4,4’−ビスカルバゾールビフェニル(Cz−TPD)を挙げることができる。また、例えばITO等の陽極と有機層との間に形成されるバッファ層を形成する材料として、例えばm−MTDATA(4,4’,4''−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、フタロシアニン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体、無機酸化物例えば酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化バナジウム、フッ化リチウムを挙げることができる。これらのバッファ層は、その材料を適切に選択することにより、白色発光照明装置である有機EL素子の駆動電圧を低下させることができ、発光の量子効率を改善することができ、発光輝度の向上を達成することができる。
【0028】
次に、発光層3に含まれる白色発光化合物について詳述する。
【0029】
この白色発光化合物は、式(1)で示される新規な化合物である。
【0030】
この発明における前記式(1)で示される白色発光化合物はいずれも、式(3)で示されるキナクリドン骨格を有する。
【0031】
【化2】

【0032】
前記式(3)で示される化合物は、キナクリドン又はピグメントバイオレット19と称される顔料として周知である。このキナクリドンは、例えばジエチルスクシニルスクシナートとアニリンとを主原料として、例えば縮合、閉環、酸化を行って合成される。キナクリドン自体は、堅牢性、耐候性及び耐熱性に優れる(「色材工学ハンドブック」(社)色材協会編集、P402)。
【0033】
また、この発明における式(1)で示される白色発光化合物は、クナクリドン骨格とカルバゾール骨格又はカルバゾール類似骨格とを有する。
【0034】
したがって、式(1)で示される白色発光化合物は、化学構造として堅固な骨格を備えているので、堅牢性、耐候性、耐光性及び耐熱性に優れる。このようなクナクリドン骨格とカルバゾール骨格又はカルバゾール類似骨格とを有するところの、式(1)で示される化合物は、しかも発光特性及び構造安定にすぐれている全く新規な化合物である。
【0035】
式(1)において、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を示す。このアルキル基としては、例えば炭素数が1〜30のアルキル基を挙げることができ、特にメチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素数が1〜5である低級アルキル基が好ましい。2個のRは同一であっても相違していても良い。Rがアリール基であるときのそのアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスラニル基、ビフェニル基並びにこれらの芳香環にアルキル基及びアルコキシ基等の置換基が結合した基を挙げることができる。Rがアリールアルキル基であるときのそのアリールアルキル基としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基、5−フェニルブチル基等を挙げることができ、フェニル基には更にアルキル基等の置換基が置換していても良い。好ましいアリールアルキル基は、ベンジル基である。
【0036】
式(1)において、2個のR2はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基であり、それぞれ同一の基であっても相違する基であっても良い。このアルキル基としては、例えば炭素数が1〜30のアルキル基を挙げることができ、特にメチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素数が1〜5である低級アルキル基が好ましい。2個のRは同一であっても相違していても良い。Rがアリール基であるときのそのアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスラニル基、ビフェニル基並びにこれらの芳香環にアルキル基及びアルコキシ基等の置換基が結合した基例えばp−アルコキシフェニル基等を挙げることができる。Rがアリールアルキル基であるときのそのアリールアルキル基としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基、5−フェニルブチル基等を挙げることができ、フェニル基には更にアルキル基等の置換基が置換していても良い。好ましいアリールアルキル基は、ベンジル基である。
【0037】
式(2)において、Rは、前記式(1)において言及された意味と同じである。
【0038】
前記式(1)で示される白色発光化合物は、R、R、R及びRの置換基を有することにより、溶媒に対する溶解性が向上し、したがって、適宜の溶媒に溶解することによる塗布性が向上し、また昇華温度が低下するので蒸着による加工性が向上し、さらに、高分子化合物との相溶性が向上するので高分子膜中に含めることができるようになる。
【0039】
式(1)で示される白色発光化合物は、例えば、以下の反応式に従って製造することができる。
【0040】
【化3】

【0041】
上記式中、Rは低級アルキル基であり、R及びRは前記と同様の意味を有する。上記反応式は、例えば、ジアルキル 2,5−ジヒドロキシ−1,4−シクロヘキサジエン−1.4−ジカルボキシレート(上記反応式中の化合物(4))と3−アミノ−9−アルキルカルバゾール等の化合物(5)とを適宜の溶媒中で加熱することにより進行する。脱水反応が進行して、アミノ基で架橋した化合物(6)が得られる。脱水反応には、適宜の脱水剤例えば濃硫酸等を使用することができる。
【0042】
上記脱水反応生成物をさらに濃硫酸等で処理すると、次式のように脱水素反応が起こる。
【0043】
【化4】

【0044】
が水素原子の場合には、前記脱水素反応生成物に、例えばDMF中でRHal(ただし、式中、Halはハロゲン原子を示す。)を反応させることにより、前記脱水素反応生成物をアルキル化させることができる。
【0045】
次いで、次の反応式により閉環反応を行う。
【0046】
【化5】

【0047】
閉環反応は、適宜の溶媒中で加熱することにより、好ましくはp−トルエンスルホン酸等の有機酸触媒の存在下に適宜の溶媒例えばジクロロベンゼン等の不活性高沸点有機溶媒中で加熱することにより、進行する。閉環した化合物として上記式(8)で示されるカルバゾール骨格含有の白色発光化合物がある。
【0048】
上記反応式において(8)で示される化合物はまた、前記式(1)で示されるところの、この発明に係る白色発光化合物である。
【0049】
この発明における白色発光化合物は、電磁波エネルギーを与えることにより、赤、緑及び青にそれぞれ相当する三つの蛍光スペクトルを有し、全体として400〜700nmの領域にわたる可視部発光が見られ、典型的には図18に示されるような発光スペクトル及び蛍光スペクトルを有し、白色発光可能な有機EL素子に利用することができる。
【0050】
このような単一化合物であり、しかも白色発光可能な蛍光化合物を発光層に含有するところの、図1に示される白色発光照明装置は、透明電極2及び電極層4に電流を通電すると、白色に発光する。
【0051】
発光は、前記透明電極2と前記電極層4との間に電界が印加されると、電極層4側から電子が注入され、透明電極2から正孔が注入され、更に電子が発光層3において正孔と再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出する現象である。
【0052】
図1に示される白色発光照明装置Aは、その全体形状を大面積の平面形状にすると、例えば壁面、あるいは天井に装着して、大面積壁面白色発光照明装置、あるいは大面積天井面白色発光照明装置とすることができる。つまり、この白色発光照明装置は、従来の蛍光灯のような線光源あるいは電球と言った点光源に代えて面光源として利用されることができる。特に、居住のための室内、事務用の室内、車両室内等の壁面、天井面、あるいは床面をこの白色発光照明装置により面光源として発光ないし照明することができる。さらに、この白色発光照明装置Aをコンピュータにおける表示画面、携帯電話における表示画面、金銭登録機における数字表示画面等のバックライトに使用することができる。その他、この白色発光照明装置Aは、直接照明、間接照明等の様々の光源として使用されることができ、また、夜間に発光させることができて視認性が良好である広告装置、道路標識装置、及び発光掲示板、更には自動車等の車両におけるブレーキランプ等の光源に使用されることもできる。しかも、この白色発光照明装置Aは、特定の化学構造を有する白色発光化合物を発光層に有するので、発光寿命が長い。したがって、この白色発光照明装置Aにより発光が長寿命である光源とすることができる。
【0053】
また、この白色発光照明装置Aを、筒状に形成された基板1と、その基板1の内面側に透明電極2、発光層3及び電極層4をこの順に積層してなる管状発光体とすることができる。この白色発光照明装置Aは、水銀を使用していないので、従来の水銀を使用する蛍光灯に代替して環境に優しい光源とすることができる。
【0054】
次にこの発明に係る白色発光照明装置の第2の例を図に示す。図2は多層型有機EL素子である白色発光照明装置の断面を示す説明図である。
【0055】
図2に示すように、この白色発光照明装置Bは、基板1の表面に、透明電極2、ホール輸送層5、発光層3a,3b、電子輸送層6及び電極層4をこの順に積層してなる。
【0056】
基板1、透明電極2、及び電極層4については、図1に示された白色発光照明装置Aにおけるのと、同様である。
【0057】
図2に示される白色発光照明装置Bにおける発光層は発光層3a及び発光層3bよりなり、発光層3aはこの発明における白色発光化合物の蒸着膜である。発光層3bは、DPVBi層である。このDPVBi層は、ホスト材料的な機能を有する層である。
【0058】
前記ホール輸送層5に含まれるホール輸送物質としては、トリフェニルアミン系化合物例えばN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(m−トリル)−ベンジジン(TPD)、及びα−NPD等、ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、複素環系化合物、π電子系スターバースト正孔輸送物質等を挙げることができる。
【0059】
前記電子輸送層6に含まれる電子輸送物質としては、前記電子輸送性物質としては、例えば、2−(4−tert−ブチルフェニル)−5−(4−ビフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体及び2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、並びに2,5−ビス(5’−tert−ブチル−2’−ベンゾキサゾリル)チオフェン等を挙げることができる。また、電子輸送性物質として、例えばキノリノールアルミ錯体(Alq3)、ベンゾキノリノールベリリウム錯体(Bebq2)等の金属錯体系材料を好適に使用することもできる。
【0060】
図2における白色発光照明装置Bでは、電子輸送層6はAlq3を含有する。
【0061】
各層の厚みは、従来から公知の多層型有機EL素子におけるのと同様である。
【0062】
図2に示される白色発光照明装置Bは、図1に示される白色発光照明装置Aと同様に作用し、発光する。したがって、図2に示される白色発光照明装置Bは、図1に示される白色発光照明装置Aと同様の用途を有する。
【0063】
図3に、この発明に係る白色発光照明装置の第3の例を示す。図3は、多層型有機EL素子である白色発光照明装置の断面を示す説明図である。
【0064】
図3に示される白色発光照明装置Cは、基板1の表面に、透明電極2、ホール輸送層5、発光層3、電子輸送層8及び電極層4をこの順に積層してなる。
【0065】
この図3に示す白色発光照明装置Cは前記白色発光照明装置Bと同様である。
【0066】
図4に白色発光照明装置の他の例を示す。この図4に示す白色発光照明装置Dは、基板1、電極2、ホール輸送層5、発光層3及び電極層4をこの順に積層してなる。
【0067】
前記図1〜4に示される白色発光照明装置の外に、基板上に形成された透明電極である陽極と電極層である陰極との間に、ホール輸送性物質を含有するホール輸送層と、この発明における白色発光化合物含有の電子輸送性発光層とを積層して成る二層型有機低分子発光素子(例えば、陽極と陰極との間に、ホール輸送層と、ゲスト色素としてこの発明における白色発光化合物及びホスト色素を含有する発光層とを積層して成る二層型色素ドープ型発光素子)、陽極と陰極との間に、ホール輸送性物質を含有するホール輸送層と、この発明における白色発光化合物と電子輸送性物質とを共蒸着してなる電子輸送性発光層とを積層して成る二層型有機発光素子(例えば、陽極と陰極との間に、ホール輸送層と、ゲスト色素としてこの発明における白色発光化合物及びホスト色素とを含有する電子輸送性発光層とを積層して成る二層型色素ドープ型有機発光素子)、陽極と陰極との間に、ホール輸送層、この発明における白色発光化合物含有の発光層及び電子輸送層を積層して成る三層型有機発光素子を挙げることができる。
【0068】
この発光素子における電子輸送性発光層は、通常の場合、50〜80%のポリビニルカルバゾール(PVK)と、電子輸送性発光剤5〜40%と、この発明に係る白色発光化合物0.01〜20%(重量)とで形成されていると、白色発光が高輝度で起こる。
【0069】
また、前記発光層中には、増感剤としてルブレンが含有されているのが好ましく、特に、ルブレンとAlq3とが含有されているのが好ましい。
【0070】
この発明に係る白色発光化合物を利用した白色発光照明装置は、例えば一般に直流駆動型の有機EL素子として使用することができ、また、パルス駆動型の有機EL素子及び交流駆動型の有機EL素子としても使用することができる。
【実施例】
【0071】
(製造例1)
<脱水反応>
1000mlの3口フラスコに3−アミノ−9−エチルカルバゾール 25.0g(1.2×10−1mol)と式(10)で示される化合物 15.4g(6.0×10−2mol)とを加えて、更に酢酸、エチルアルコール各々200ml加えた。シリコーンオイルバスを用いて120℃まで加熱攪拌し、4時間反応した。反応終了後、室温まで冷却し、氷の中に投入した。
【0072】
【化6】

【0073】
ガラスフィルターを用いて濾過した。フィルター内に残った固形物を5℃に冷却したメチルアルコール、及び石油エーテルで順次に洗浄した後、真空乾燥してレンガ色の粉体(35.2g)を得た。
【0074】
前記粉体のIRチャートを図5に示した。このレンガ色粉体は以下の式(11)で示される。
【0075】
【化7】

【0076】
<脱水素反応>
1000mlの3口フラスコに、前記脱水反応で得られた粉体25.0gを入れ、o−ジクロロベンゼン500mlを加えて、室温95%硫酸1.0gを徐々に滴下し30分間攪拌した後、シリコーンオイルバスを用いて160℃までに加熱攪拌し、2時間反応した。反応終了後、室温まで冷却し、氷の中に投入した。
【0077】
分液ロートを用いてクロロホルム抽出を3回行い、水洗浄を2回行った後硫酸ナトリウムを入れ水分の除去したものを濾過し、エバポレーターを用いて濃縮乾固させた。得られた固形物を酢酸エチル、及び石油エーテルで順次に洗浄した後、真空乾燥して赤色粉体(13.1g)を得た。
【0078】
この赤色粉体のIRチャートを図6に示し、NMRチャートを図7に示した。この赤色粉体は以下の式(12)で示される。
【0079】
【化8】

【0080】
<閉環反応>
500mlの3口フラスコに前記赤色粉体10.0g(1.6×10−2mol)を入れ、p−トルエンスルホン酸−水和物13.7g(7.2×10−2mol)を加え、更に、O−ジクロロベンゼン200mlを加えた。シリコーンオイルバスを用いて160℃まで加熱攪拌し、20時間反応した。反応終了後、エバポレーターを用いて濃縮乾固させた。得られた固形物を5℃に冷却したメチルアルコール、アセトン、及び石油エーテルで順次に洗浄した後、真空乾燥して褐色粉体(9.4g)を得た。精製する為に、1000mlマイヤーにキシレン700mlを入れ、得られた褐色粉体2.0g、活性炭2.0g加え、マントルヒーターを用いて3分間沸騰させ、熱時濾過した濾液をエバポレーターを用いて濃縮乾固させた。
【0081】
得られた固形分を石油エーテルで洗浄した後、真空乾燥させてあずき色粉体を得た。このあずき色粉体のIRチャートは図8に示し、NMRチャートを図9に示した。
【0082】
このあずき色粉体は、以下の式(1a)で示される構造式を有する。
【0083】
【化9】

【0084】
(実施例1)
5mlのメスフラスコに、ポリビニルカルバゾール70mg、t−ブチルフェニル−ジフェニル−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)29.7mg、及び前記製造例1で得られたあずき色粉体(化合物(1a)) 0.3mgを秤量し、ジクロロエタンを加えて5mlになるように白色発光化合物含有溶液を調製した。この白色発光化合物含有溶液は、超音波洗浄器((株)エスエヌディ製、US−2)で超音波を20分間照射することにより、十分に均一なものにされた。ITO基板(50×50mm、ITO透明電極の厚み200μm、三容真空工業(株)製)をアセトンで10分間超音波洗浄した後に2−プロパノールで10分間超音波洗浄し、窒素でブローして乾燥させた。その後に、UV照射装置((株)エム・ディ・エキシマ製、波長172nm)で30秒間UVを照射して洗浄した。スピンコータ(ミカサ(株)製、1H−D7)を用いて洗浄乾燥の終了したITO基板に、調製しておいた前記白色発光化合物含有溶液を滴下し、回転数1,500rpm、回転時間3秒にてスピンコートして乾燥厚が100μmとなるように製膜した。製膜した基板を、50℃の恒温槽中で30分乾燥させた後に、真空蒸着装置(大亜真空技研(株)製、VDS−M2−46型)でアルミ合金(Al:Li=99:1重量比、(株)高純度化学研究所製)電極を、4×10-6Torrで約150nmの厚みに蒸着し、図1に示される構造の白色発光照明装置を製作した。
【0085】
この白色発光照明装置は、(株)トプコン製のBM−7 Fastで徐々に電圧を上げながら輝度及び色度を測定した。その結果、電圧24V及び電流32.8mAで輝度が2,100Cd/m、色度Xが0.35及び色度Yが0.34の結果が得られた。
【0086】
<発光特性>
混合キシレンに前記白色発光化合物(1a)を10mg/Lの濃度になるように溶解して試料液を調製した。この試料液を、島津製作所製のF−4500型分光蛍光光度計に装填して、以下の条件にて蛍光スペクトルを測定した。得られた蛍光スペクトルを図10に示した。
【0087】
測定条件
測定モード 波長スキャン
励起波長 365nm
蛍光開始波長 400nm
蛍光終了波長 700nm
スキャンスピード 1200nm/分
励起側スリット 5.0nm
蛍光側スリット 5.0nm
ホトマル電圧 700V
図10から判るように、この実施例で得られた白色発光化合物は、400〜700nm蛍光発光が見られ全領域をカバーしている。
【0088】
(製造例2)
<ベンジル化反応>
前記製造例1において製造されたのと同じ式(12)で示される構造を有する化合物10.0g(1.6×10−2mol)を500mlの耐圧瓶に入れ、ベンジルブロミド17.1g(7.6×10−2mol)を更に加え、次いでN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)200mlを加えた。シリコーンオイルバスを用いて耐圧瓶内を150℃まで撹拌下に加熱し、20時間反応させた。反応終了後、室温にまで冷却し、エバポレータを用いて濃縮した後に、氷水に投入し、更に水酸化ナトリウムで中性にした。分液ロートを用いてクロロホルム抽出を3回行い、水洗浄を2回行った。次いで、硫酸ナトリウムを入れて水分を除去し、濾過し、エバポレータを用いて濃縮乾固させた。得られた固形物を石油エーテルで洗浄した後に、真空乾燥して茶褐色粉体を得た。この茶褐色粉体のIRチャートを図11に示した。この茶褐色粉体は式(16)で示される構造を有する。
【0089】
【化10】

【0090】
<閉環反応>
500mlの三口フラスコに、上記式(16)で示される閉環化合物5.0g(6.1×10−3mol)を入れ、p−トルエンスルホン酸一水和物5.2g(2.7×10−2mol)を加え、更にo−ジクロロベンゼン200mlを加えた。シリコーンオイルバスで160℃にまで加熱撹拌し、20時間反応させた。反応終了後、エバポレータを用いて濃縮乾固した。得られた固形物を5℃に冷却したメチルアルコール、アセトン及び石油エーテルで洗浄した後に、真空乾燥させて褐色固体を得た。
【0091】
ソクスレー抽出装置を用いて前記褐色固体1.0gをキシレン250mlで24時間かけて抽出した。抽出終了後にエバポレータを用いて濃縮乾固し、得られた固形物を石油エーテルで洗浄し、真空乾燥し、茶色粉体を得た。この茶色粉体のIRチャートを図12に示した。この褐色固体は式(1b)で示す構造を有する化合物であった。
【0092】
【化11】

【0093】
(実施例2)
前記実施例1におけるように、「5mlのメスフラスコに、ポリビニルカルバゾール70mg、t−ブチルフェニル−ジフェニル−1,3,4−オキサジアゾール29.7mg、及び前記あずき色粉体(化合物(1a)) 0.3mgを秤量し、ジクロロエタンを加えて5mlになるように白色発光化合物含有溶液」を調製する代わりに、5mlのメスフラスコに、ポリビニルカルバゾール70mg、式(17)で示される構造を有するBND 29.7mg及び前記式(1b)で示される白色発光化合物0.3mgをジクロロエタンを加えて5mlになるように白色発光化合物含有溶液を調製した。この白色発光化合物含有溶液を用いて、前記実施例1におけるのと同様にして図1に示される構造の白色発光照明装置を製作し、この白色発光照明装置につき(株)トプコン製の分光放射計SR−3にて輝度及び色度を測定した。
【0094】
【化12】

【0095】
その結果、電圧21V及び電流35.3mAで輝度が2,200Cd/m、色度Xが0.32及び色度Yが0.36の結果が得られた。また、この分光放射計でこの白色発光化合物の分光放射輝度グラフを図13に示した。この分光放射輝度グラフにより、肉眼では十分に白色発光していたと認めることができる。
【0096】
(実施例3)
ITO基板(50×50mm、ITO透明電極層の厚み200nm、三容真空工業(株)製)をアセトンで10分間かけて超音波洗浄した後に2−プロパノールで10分間超音波洗浄し、窒素でブローして乾燥させた。その後に、UV照射装置((株)エム・ディ・エキシマ製、波長172nm)で30秒間UVを照射してITO基板の洗浄を完了した。
【0097】
洗浄されたITO基板を真空蒸着装置(大亜真空技研(株)製、UDS−M2−46型)にセットし、4×10-6torr以下の減圧下にN、N’−ジフェニル−N,N−ジ(m−トリル)−ベンジジン(TPD)を63nmの厚みに蒸着し、次いで、前記白色発光化合物(1b)を0.5nmの厚みに蒸着し、更に、以下の式(18)で示される構造を有するDPVBiを35nmの厚みに蒸着し、最後にトリス(8−キノリナート)アルミニウム(Alq3)を150nmの蒸着し、最後にアルミ合金製電極(Al:Li=99:1重量比、(株)高純度化学研究所製)を150nmの厚みに蒸着することにより、図2に示される白色発光照明装置を製作した。
【0098】
【化13】

【0099】
この白色発光照明装置につき、前記実施例1におけるのと同様にして輝度及び色度を測定した。
【0100】
その結果、電圧16V及び電流23.2mAで輝度が5500Cd/m、色度Xが0.31及び色度Yが0.34の結果が得られた。また、この分光放射計でこの白色発光化合物の分光放射輝度グラフを図14に示した。この分光放射輝度グラフにより、肉眼では十分に白色発光していたと認めることができる。
【0101】
(実施例4)
N、N’−ジフェニル−N,N−ジ(m−トリル)−ベンジジン(TPD)を59nmの厚みに蒸着し、次いで、前記白色発光化合物(1b)を0.7nmの厚みに蒸着し、更に、前記式(18)で示される構造を有するDPVBiを36nmの厚みに蒸着した外は前記実施例3におけるのと同様にして、図3に示される構造の白色発光照明装置を製造した。前記実施例3におけるのと同様に発光特性を測定したところ、電圧20V及び電流31.2mAで輝度が3100Cd/m、色度Xが0.33及び色度Yが0.34の結果が得られた。
【0102】
(実施例5)
厚み188μmの透明ポリエステルフィルム基板上に蒸着法により200nmのITO透明電極を形成し、その上に蒸着法によりα−NPD(di-(naphtyl-phenylamino)diphenyl)66nm、前記白色発光化合物(1b)の蒸着層0.3nm、DPVBi層40nm及びAlq3層40nmをこの順に積層し、さらにその上にアルミ合金製電極(Al:Li=99:1重量比、(株)高純度化学研究所製)を150nmの厚みに蒸着して、図2に示される積層構造の白色発光照明装置を製造した。なお、前記白色発光化合物(1b)の蒸着層とDPVBi層とで図2における発光層3が形成されている。
【0103】
前記実施例3におけるのと同様に発光特性を測定したところ、電圧16V及び電流22.6mAで輝度が7500Cd/m、色度Xが0.30及び色度Yが0.37の結果が得られた。
【0104】
(実施例6)
TPD層64nm、前記白色発光化合物(1a)0.6nm、DPVBi層35nm及びAlq3層38nmをこの順に積層した外は前記実施例5と同様にして図2に示されるのと同様の積層構造を有する白色発光照明装置を製造した。なお、前記白色発光化合物(1a)の蒸着層とDPVBi層とで図2における発光層3が形成されている。
【0105】
前記実施例3におけるのと同様に発光特性を測定したところ、電圧14V及び電流27.9mAで輝度が5100Cd/m、色度Xが0.30及び色度Yが0.33の結果が得られた。
【0106】
(製造例3)
<メチルベンジル化反応>
前記製造例1において製造されたのと同じ式(12)で示される構造を有する化合物10.0g(1.6×10−2mol)を500mlの耐圧瓶に入れ、α−クロロ−p−キシレン 15.8g(1.1×10−1mol)を更に加え、次いでN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)200mlを加えた。シリコーンオイルバスを用いて耐圧瓶内を150℃まで撹拌下に加熱し、20時間反応させた。反応終了後、室温にまで冷却し、エバポレータを用いて濃縮した後に、氷水に投入し、更に水酸化ナトリウムで中性にした。分液ロートを用いてクロロホルム抽出を3回行い、水洗浄を2回行った。次いで、硫酸ナトリウムを入れて水分を除去し、濾過し、エバポレータを用いて濃縮乾固させた。得られた固形物を石油エーテルで洗浄した後に、真空乾燥して茶褐色粉体を得た。この茶褐色粉体のIRチャートを図19に示した。この茶褐色粉体は式(19)で示される構造を有する。
【0107】
【化14】

【0108】
<閉環反応>
500mlの三口フラスコに、上記式(19)で示される閉環化合物5.0g(5.4×10−3mol)を入れ、p−トルエンスルホン酸一水和物8.0g(4.1×10−2mol)を加え、更にo−ジクロロベンゼン200mlを加えた。シリコーンオイルバスで160℃にまで加熱撹拌し、20時間反応させた。反応終了後、エバポレータを用いて濃縮乾固した。得られた固形物を5℃に冷却したメチルアルコール、アセトン及び石油エーテルで洗浄した後に、真空乾燥させて褐色固体を得た。
【0109】
ソクスレー抽出装置を用いて前記褐色固体1.0gをキシレン250mlで24時間かけて抽出した。抽出終了後にエバポレータを用いて濃縮乾固し、得られた固形物を石油エーテルで洗浄し、真空乾燥し、茶色粉体を得た。この茶色粉体のIRチャートを図20に示した。この褐色固体は式(1c)で示す構造を有する化合物であった。
【0110】
【化15】

【0111】
(実施例7)
α−NPD層45nm、製造例3で示される前記白色発光化合物(1c)4.4%をDPVBi中にドーピングしてなる層18nm及びAlq3層21nmをこの順に積層した外は前記実施例3と同様にして図3に示されるのと同様の積層構造を有する白色発光照明装置を製造した。
【0112】
前記実施例3におけるのと同様に発光特性を測定したところ、電圧18V及び電流30.9mAで輝度が10720Cd/m、色度Xが0.35及び色度Yが0.39の結果が得られた。
【0113】
(実施例8)
α−NPD層46nm、前記白色発光化合物(1c)2.9%を式(20)で示される構造を有するCBP中にドーピングしてなる層31nm及びAlq層19nmをこの順に積層した外は前記実施例3と同様にして図3に示されるのと同様の積層構造を有する白色発光照明装置を製造した。
【0114】
前記実施例3におけるのと同様に発光特性を測定したところ、電圧17V及び電流36.1mAで輝度が10120Cd/m、色度Xが0.32及び色度Yが0.35の結果が得られた。
【0115】
【化16】

【0116】
(製造例4)
<メチル化反応>
前記製造例1において製造されたのと同じ式(12)で示される構造を有する化合物10.0g(1.6×10−2mol)を500mlの耐圧瓶に入れ、ヨードメタン10.8g(7.6×10−2mol)を更に加え、次いでN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)200mlを加えた。シリコーンオイルバスを用いて耐圧瓶内を150℃まで撹拌下に加熱し、20時間反応させた。反応終了後、室温にまで冷却し、エバポレータを用いて濃縮した後に、氷水に投入し、更に水酸化ナトリウムで中性にした。分液ロートを用いてクロロホルム抽出を3回行い、水洗浄を2回行った。次いで、硫酸ナトリウムを入れて水分を除去し、濾過し、エバポレータを用いて濃縮乾固させた。得られた固形物を石油エーテルで洗浄した後に、真空乾燥して茶褐色粉体を得た。この茶褐色粉体のIRチャートを図15に示した。この茶褐色粉体は式(21)で示される構造を有する。
【0117】
【化17】

【0118】
<閉環反応>
500mlの三口フラスコに、上記式(20)で示される閉環化合物5.0g(7.5×10−3mol)を入れ、p−トルエンスルホン酸一水和物8.0g(4.2×10−2mol)を加え、更にo−ジクロロベンゼン200mlを加えた。シリコーンオイルバスで160℃にまで加熱撹拌し、20時間反応させた。反応終了後、エバポレータを用いて濃縮乾固した。得られた固形物を5℃に冷却したメチルアルコール、アセトン及び石油エーテルで洗浄した後に、真空乾燥させて褐色固体を得た。
【0119】
ソクスレー抽出装置を用いて前記褐色固体1.0gをキシレン250mlで24時間かけて抽出した。抽出終了後にエバポレータを用いて濃縮乾固し、得られた固形物を石油エーテルで洗浄し、真空乾燥し、茶色粉体を得た。この茶色粉体のIRチャートを図16に示した。この褐色固体は式(1d)で示す構造を有する化合物であった。
【0120】
【化18】

【0121】
(実施例9)
<発光特性>
前記<発光特性>におけるのと同様にして、ITO基板上に、TPDを71nmの厚みに蒸着し、次いで、前記白色発光化合物(1d)を0.6nmの厚みに蒸着し、更に、DPVBiを40nmの厚みに蒸着し、最後にトリス(8−キノリナート)アルミニウム(Alq3)を41nmの厚みに蒸着し、最後にアルミ合金製電極(Al:Li=99:1重量比、(株)高純度化学研究所製)を150nmの厚みに蒸着することにより、EL素子を製作した。
【0122】
このEL素子につき、輝度及び色度を測定した。
【0123】
その結果、電圧16V及び電流17.5mAで輝度が5000Cd/m、色度Xが0.36及び色度Yが0.37の結果が得られた。また、この分光放射計でこの白色発光化合物の分光放射輝度グラフを図17に示した。この分光放射輝度グラフにより、肉眼では十分に白色発光していたと認めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、この発明の一例である白色発光照明装置の積層構造を示す説明図である。
【図2】図2は、この発明の他の一例である白色発光照明装置の積層構造を示す説明図である。
【図3】図3は、この発明のその他の一例である白色発光照明装置の積層構造を示す説明図である。
【図4】図4は、この発明の更にその他の一例である白色発光照明装置の積層構造を示す説明図である。
【図5】図5は、製造例1における、ジメチル1、4−シクロヘキサンジオン−2、5−ジカルボキシレイトと3−アミノ−9−エチルカルバゾールとを脱水反応させて得られる化合物を示すIRチャートである。
【図6】図6は、製造例1における、脱水反応物を閉環反応させて得られた閉環化合物を示すIRチャートである。
【図7】図7は、製造例1における閉館化合物を示すNMRチャートである。
【図8】図8は、製造例1における、閉環化合物を脱水素反応させて得られる白色発光化合物を示すIRチャートである。
【図9】図9は、製造例1における白色発光化合物を示すNMRチャートである。
【図10】図10は、製造例1における白色発光化合物の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図11】図11は、式(16)の構造を有する化合物のIRチャートである。
【図12】図12は、式(1b)の構造を有する化合物のIRチャートである。
【図13】図13は、式(1b)の構造を有する化合物を利用した有機EL素子による発光特性を示す分光放射輝度グラフである。
【図14】図14は、式(1b)の構造を有する化合物を利用した有機EL素子による発光特性を示す分光放射輝度グラフである。
【図15】図15は、式(21)の構造を有する化合物のIRチャートである。
【図16】図16は、式(1d)の構造を有する化合物のIRチャートである。
【図17】図17は式(1d)の構造を有する化合物を利用した有機EL素子による発光特性を示す分光放射輝度グラフである。
【図18】図18は、この発明における白色発光化合物の典型的な発光スペクトル及び蛍光スペクトルを示すスペクトルチャートである。
【図19】図19は、式(19)の構造を有する化合物のIRチャートである。
【図20】図20は、式(1c)の構造を有する化合物のIRチャートである。
【符号の説明】
【0125】
A,B,C・・・白色発光照明装置、1・・・基板、2・・・透明電極、3・・・発光層、4・・・電極層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を形成した基板上に、発光材料を含有する発光層を備えて成る白色発光照明装置であって、前記発光材料が式(1)で示される白色発光化合物であることを特徴とする単一化合物による白色発光照明装置。
【化1】

(但し、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記単一化合物による白色発光照明装置は、前記基板と、前記基板上に設けられたところの、前記式(1)で示される白色発光化合物を含有する発光層とを有する一層型有機EL素子である前記請求項1に記載の単一化合物による白色発光照明装置。
【請求項3】
前記白色発光照明装置は、前記透明基板に、ホール輸送層、前記基板上に設けられたところの、前記式(1)で示される白色発光化合物を含有する発光層、及び電子輸送層を積層してなる多層型有機EL素子である前記請求項1に記載の単一化合物による白色発光照明装置。
【請求項4】
前記発光層は、前記白色発光化合物を高分子中に分散してなる層である前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の単一化合物による白色発光照明装置。
【請求項5】
前記発光層は、前記白色発光化合物を前記基板上に蒸着してなる層である前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の単一化合物による白色発光照明装置。
【請求項6】
前記白色発光照明装置が面状発光照明装置又は管状発光照明装置である前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の単一化合物による白色発光照明装置。
【請求項7】
電極を形成した基板上に、発光材料を含有する発光層を備えて成る白色発光有機EL素子であって、前記発光材料が式(1)で示される白色発光化合物であることを特徴とする単一化合物による白色発光有機EL素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2006−191138(P2006−191138A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53493(P2006−53493)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【分割の表示】特願2002−10895(P2002−10895)の分割
【原出願日】平成14年1月18日(2002.1.18)
【出願人】(504108875)ヒロセエンジニアリング株式会社 (8)
【Fターム(参考)】