単一単位結晶格子1個のサイズまたは10個以下の単一単位結晶格子のサイズに相当する骨格厚さの、規則的または不規則的に配列された、多重または単一板状構造のゼオライトナノシート及び類似物質
本発明は、ゼオライトの合成組成に有機界面活性剤を添加して合成した、単一単位結晶格子厚さの結晶性骨格が単一または多重板状構造で層が規則的または不規則的に整列されたマイクロ多孔性分子篩物質及び類似分子篩物質に関する。さらに、本発明は、脱アルミニウム化、イオン交換、それ以外の他の後処理によって活性化されるか、または官能化されたマイクロ−メソ多孔性分子篩物質及びその触媒としての使用に関する。このような新規な物質は、ナノスケール厚さの骨格によって外表面積が飛躍的に増加し、これによって分子拡散が増進されて、触媒及びイオン交換樹脂として従来のゼオライトよりも高い活性を有する。特に、本発明の物質は有機分子の炭素−炭素カップルリング反応、アルキル化、アシル化などの様々な有機反応において非常に高い反応性と飛躍的に増進された触媒寿命を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一単位結晶格子(single unit cell)厚さの骨格からなる単一または多重の板状構造からなるMFI(国際ゼオライト協会の3−letter codeに基づく)ゼオライト及び類似分子篩物質、そしてこれらの物質の製造方法に関する。より詳しくは、単一単位結晶格子厚さの骨格を有する物質であって不規則的に並んだ単一板状構造を含む物質、及び、単一単位結晶格子厚さの骨格を有する物質であって規則的に並んだ多重板状構造を含む物質、ならびにこれら物質の製造方法に関する。本発明の物質は、骨格が単一単位結晶格子1個を含む物質のみならず、骨格が10個以下の単一単位結晶格子のつながりで形成されている物質も含む。また、本発明は、ゼオライトの合成組成に2個以上のアミンまたはアンモニウム官能基を有する有機界面活性剤を添加して製造した新規なゼオライト物質、及び前記物質の製造方法、並びにこのように製造されたゼオライト及び類似分子篩の触媒としての応用に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、規則的に配列された分子サイズの均一なマイクロ気孔(0.3<直径<2nm)を含む骨格構造の結晶性アルミノシリケート(aluminosilicate)物質と定義される。ゼオライトは、分子サイズの直径のマイクロ気孔を有しているので、分子を選択的に吸着、拡散させることが可能な分子篩(molecular sieve)機能がある。このような分子篩の効果により、ゼオライトによって分子選択的吸着、イオン交換及び触媒反応が可能である(C.S.Cundyの他,Chem.Rev.2003,103,663)。しかし、ゼオライトのマイクロ気孔の直径は非常に小さいので、ゼオライト内での分子拡散速度は遅く、様々な応用において反応速度を制約している。そのため、ゼオライトの骨格の厚さを減らしてゼオライト粒子の外表面積を増加させて、ゼオライトマイクロ気孔内への分子拡散を増進させようとする試みがなされてきている。
【0003】
比表面積の大きいゼオライトを合成するために、ゼオライトをナノメートル厚さの微細結晶に合成しようとする試みがなされてきている。ゼオライトの合成組成を調節して、結晶化温度を低くすることによって、ナノメートルサイズ(10nm以上)のコロイド(colloid)状態のゼオライトを合成する方法(L.Toshevaの他、Chem.Mater.2005,17,2494)。しかし、このような合成法は、ゼオライトの結晶性及び合成収率が低く、合成後に濾過法ではなく遠心分離により分離しなければならないという制約があった。また、ゼオライト結晶の内部に、より大きな直径を有する気孔、すなわち、メゾ気孔(2<直径<50nm)及びマクロ気孔(50nm<直径)を構成して、ゼオライトの比表面積を増加させようとする他の試みがなされてきている。アンダーソン(Anderson)と彼の共同研究者たちは、ゼオライト種結晶(seed crystal)を用いた珪藻土を結晶化して、マクロ気孔を有するゼオライトを合成した(Anderson,M.W.他、Angew.Chem.Int.Ed.2000,39,2707)。近年、炭素ナノ粒子及びナノ繊維、球状高分子のような様々な固体鋳型内で、ゼオライトを合成した後、前記鋳型を焼成してゼオライト結晶中にメゾ気孔を形成させる方法が発表された。スタイン(Stein)と彼の共同研究者たちは、100ミクロン程度の均一なサイズを有する球状ポリスチレンを用いてメゾ多孔性分子篩を合成する技術を発表した(米国特許第6680013、B1号)。ヤコブセン(Jacobson)は、炭素を鋳型にして10〜100nmの広い気孔分布を示すメソ多孔性ゼオライトを合成した(米国特許第6620402、B2号)。さらに、固体マトリックスを用いて製造された物質は、メソ気孔により分子拡散が良好になるため、改善された触媒活性を示すと報告された(Christensen,C.H.の他、J.Am.Chem.Soc.2003,125,13370)。近年、有機シランをゼオライトの合成組成に添加することによって、メソ気孔をゼオライト結晶内に生成させる技術が発表された(韓国特許第10−0727288号)。また、コルマ(Corma)と研究員たちは、層状構造を有するFERゼオライト及びMWWゼオライトを単層のゼオライト薄膜に剥離する方法を発表した(A.Cormaの他、Nature 1998,396,353)。(A.Cormaの他、スペイン特許第9502188号(1996)PCT−WO Patent 97/17290(1997))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先に言及したように、単一単位格子10個以下からなるほど薄い骨格を有し、比表面積が飛躍的に増加されたゼオライトを合成することによって、ゼオライト内部への分子拡散を最大にすることができる。理論的に、分子拡散は、ゼオライト骨格厚さを単一単位結晶格子厚さまで減らすことで最大にすることができる。しかし、単一単位結晶格子厚さのゼオライト物質を実際に合成することは熱力学的に非常に困難である。ゼオライト結晶化は、結晶表面のエネルギーを最小化させるための過程が関与しており、その結果、結晶を一定のサイズ以上に成長させる(Ostwald ripening)。結晶が小さくなるほど、このような現象は顕著である。このような現象のため、これまで報告された合成法で5〜100nm程度の骨格厚さを有するゼオライトは合成することができるが、単一単位結晶格子厚さ及び単一単位結晶格子が10個以下からなるほど極微細の骨格厚さからなるナノサイズ厚さのゼオライトを合成することはできない。このため、本発明者らは、単一単位結晶格子厚さ又は10個以下の単一単位結晶格子の厚さの極微細の厚さの板状構造を有するゼオライト物質または類似分子篩を製造するために、鋭意研究努力をしてきた。その結果、ゼオライト合成溶液に、2個またはそれ以上のアンモニウム官能基を有する、構造を誘導する有機界面活性剤を添加することにより、単一単位結晶格子厚さのナノサイズ骨格構造を有するゼオライトを合成することができることを確認し、本発明を完成するに至った。これにより、本発明の課題は、ゼオライト骨格の厚さが単一単位結晶格子の厚さに相当するゼオライト及びその製造方法を提供することである。また、本発明は、このように生成された物質の触媒としての応用にも関する。この他にも、本発明は、有機界面活性剤のアンモニウムやアミン官能基の個数を調節して、板状構造物の骨格厚さが単一単位結晶格子が数個積み重なった物質に相当する厚さに製造されたゼオライト及びその製造方法に関する。また、有機界面活性剤の構造を調節することにより、MFIゼオライトのみならず、MTWゼオライトの合成が可能であり、類似ゼオライト物質(zeotype material)であるアルミノホスフェート(AIPO)までも合成が可能である。本発明の合成方法によれば、MFIゼオライト、MTWゼオライト、AIPO以外の構造のゼオライトまたは類似ゼオライト物質を合成することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、複数個のアンモニウム官能基を有する有機界面活性剤をゼオライトの合成ゲルに添加した後、酸性または塩基条件で結晶化させ、最後に有機物を選択的に取り除くことによって、単一単位結晶格子厚さを有するかまたは単一単位結晶格子の10個以下の積み重なりからなる単一または多重板状構造からなる様々なゼオライト物質とその類似物質を合成した。ここで、類似物質とは、本発明の新規なゼオライト物質をピラリング(pillaring)、剥離処理(delamination)、脱アルミニウム(dealumination)、アルカリ処理、陽イオン交換工程などの通常の後処理に付与して得られた物質を意味し、前述の類似ゼオライト物質とは異なる。以下、新規なゼオライト物質と類似物質の製造方法をステップ別に分けてより具体的に説明することにする。
【0006】
第1ステップ:有機−官能化シリカ前駆体をシリカやアルミナのような他のゲル前駆体と共に重合して有機−無機複合ゲルを形成する。この時、疎水性有機物領域が、ファンデルワールス力、双極子−双極子の相互作用、イオンの相互作用などの非共有結合によって無機物領域間で自己組立されて形成される。この時、有機物の構造や濃度によってゲル領域は連続的にまたは局部的に規則的な配列となる。
【0007】
第2ステップ:この後、有機物領域によって安定化されたナノサイズの無機ゲル領域は、結晶化過程を通じて有機界面活性剤の構造やそれに含まれているアンモニウム官能基の個数によって単一単位結晶格子厚さを有するまたは単一単位結晶格子の10個以下の積み重なりからなる単一または多重板状構造のゼオライトに変換される。この時、各ゼオライトを取り囲んでいる有機物の安定化効果のため、ゼオライトの成長が抑制され、結晶サイズが10nm以下の極微細厚さに調節されるようになる。この時、結晶化過程は、熱水合成、乾式−ゲル合成(dry−gel)、マイクロ波合成(microwave synthesis)などの従来のいずれの方法で行ってもよい。
【0008】
第3ステップ:結晶化過程のあと、ゼオライトは、濾過法や遠心分離などの通常の方法で得ることができる。このように得られた物質は、焼成または化学的反応に付与され、有機物のみを選択的に完全または部分的に取り除くことができる。本発明で用いられる2個のアンモニウム官能基または1個のアンモニウム官能基と1個のアミン官能基とを同時に含んでいる純粋な有機界面活性剤は下記の化学式[1]または[2]で表すことができる。
【0009】
【化1】
【化2】
【0010】
ここで、Xは、ハロゲン(Cl、Br、Iなど)またはヒドロキシド(OH)基であり、C1、C2、C3は、それぞれ独立して置換または無置換のアルキル基である。また、C3は、アルケニル基または周期律表上の炭素以外の他の原子が置換された様々な分子構造が可能である。アンモニウム官能基は、2個またはそれ以上にも拡張が可能で、概念的に、より様々な構造の物質へ拡張利用され得、C1は炭素原子8〜22個、C2は炭素原子3〜6個、C3は炭素原子1〜8個からなっている。
【0011】
本発明において、有機界面活性剤は、C1の炭素数−C2の炭素数−C3の炭素数によってC1−C2−C3の順に一般化した形式で表示する(例、22−6−6:C1が炭素原子22個、C2が炭素原子6個、C3が炭素原子6個であり、アンモニウム官能基2個からなる;22−6−0:C1が炭素原子22個、C2が炭素原子6個であり、1個のアンモニウム官能基と1個のアミン官能基からなる)。Xがハロゲンではないヒドロキシドである場合、別途に一般化表示の隣に(OH−)を表示する。特に、この有機界面活性剤の構造や、アンモニウムまたはアミン官能基の個数を調節することによって、1個の単一板状構造が含む単一単位結晶格子の個数が調節され得るということを本発明において初めて見出した。単一単位結晶格子厚さを有するかまたは単一単位結晶格子の10個以下に積み重なりからなる単一または多重板状構造の本発明のゼオライトを合成するにおいて、最も重要な因子は、有機−無機複合ゲルの形成時に自己組立(self−assembly)が可能であり、2個以上のアンモニウム官能基を同時に有する有機界面活性剤を用いるということである。これをゼオライト合成ゲルに入れれば、2個のアンモニウム官能基がゼオライト骨格形成を誘導し、疎水性アルキルの尾部分はこれ以上のゼオライト成長を抑制する。また、これらの疎水性アルキルの尾は、生成された板状構造のゼオライト骨格の自己組立、及びこれによるゼオライト結晶間のメソ気孔(2<直径<50nm)の形成に寄与する。
【0012】
本発明で合成された物質は、ゼオライトのマイクロ気孔構造に対応する特徴的なX線回折及び電子回折様式を示す。また、本発明者らは、窒素吸着法を用いて、本発明の物質がゼオライト本来のマイクロ気孔と共に大きな体積のメソ気孔を含んでいることを確認した。さらに、本発明者らは、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて、マイクロ気孔からなっている結晶性骨格が、単一単位結晶格子厚さを有するかまたは単一単位結晶格子が10個以下の積み重なりからなる、不規則に並んだ単一板状構造か、または規則的に整列された多重板状構造であることを見出した。これにより、本発明の物質においては、マイクロ気孔が規則的に配列されていて、メソ気孔は不規則または規則的に配列されていることが確認された。本発明で合成されたゼオライトは、ナノサイズ骨格構造により非常に広い比表面積(500〜800m2/g)を有し、このような比表面積は、300〜450m2/gの比表面積を有する従来のMFIゼオライト物質に比べて飛躍的に高い。走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察すると、本発明の物質が、完璧な結晶相からなっており、非結晶相が別に分離されて生成されていないことが確認される。本発明に従って製造されたゼオライトは、ゼオライトの骨格に含まれるAlによって50〜60ppm領域で27Al MAS NMRピークが観察され、骨格外部に位置するAlのピークに対応する0〜10ppm領域ではピークが観察されなかった。このようなX線回折とNMRの結果は、本発明の新規な物質がAl位置の周囲に均一な化学的環境を有する完璧な結晶性構造を有していることを示唆している。
【発明の効果】
【0013】
上記にて説明して立証したように、本発明は、単一単位結晶格子厚さの多重または単一板状構造のゼオライト及び類似分子篩の製造方法を提供する。本発明で証明したように、本発明の物質は単一単位結晶格子厚さからなる多重または単一板状構造のMFIゼオライト物質と10.0nm以下のナノサイズ厚さの多重または単一板状構造のMTWゼオライト物質及びアルミノホスフェート(AIPO)物質である。本発明のゼオライト物質及び類似ゼオライト物質は、従来のゼオライト物質に比べて顕著に増加した比表面積を有し、これにより、非常に増加された分子拡散速度と遥かに増進された触媒活性を示す。また、本発明の物質は、巨大有機分子の吸着、分離及び触媒反応、石油の改質反応において、非常に高い活性を示す。従来のゼオライト物質と異なる骨格厚さによって様々な産業的、科学的分野で応用されて新たな物性を示すことが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例1により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成前のSEMイメージである。
【図2】図2は、実施例1により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成前のTEMイメージである。
【図3】図3は、実施例1により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成前の広い面のTEMイメージ(a)と電子回折パターン(b)である。
【図4】図4は、実施例1により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成前の低角X線回折データである。
【図5】図5は、実施例1により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成前の高角X線回折データである。
【図6】図6は、実施例1により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成前の27Al MAS NMRスペクトルを示す。
【図7】図7は、実施例2により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成後のTEMイメージである。
【図8】図8は、実施例2により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成後の窒素吸着等温線である。
【図9】図9は、実施例3により製造されたシリカ柱(pillar)により支持された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成後のTEMイメージである。
【図10】図10は、実施例4により製造された、剥離処理された、単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成後のTEMイメージである。
【図11】図11は、実施例5により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成前の低角X線回折データである。
【図12】図12は、実施例5により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成後の高角X線回折データである。
【図13】図13は、実施例6により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIシリケートの焼成後の高角X線回折データである。
【図14】図14は、実施例7により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIチタノシリケートの焼成後の高角X線回折データである。
【図15】図15は、実施例8により製造された単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成後のSEMイメージである。
【図16】図16は、実施例8により製造された単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成後のTEMイメージである。
【図17】図17は、実施例8により製造された単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成後の窒素吸着等温線を示す。
【図18】図18は、実施例9により製造された5.0nm以下の厚さの骨格からなる多重板状構造のMTWアルミノシリケートの焼成後のSEMイメージである。
【図19】図19は、実施例9により製造された5.0nm以下の厚さの骨格からなる多重板状構造のMTWアルミノシリケートの焼成後のTEMイメージである。
【図20】図20は、実施例9により製造された5.0nm以下の厚さの骨格からなる多重板状構造のMTWアルミノシリケートの焼成後の高角X線回折データである。
【図21】図21は、実施例10により製造された5.0nm以下の厚さの骨格からなる多重板状構造のアルミノホスフェートの焼成前の低角と高角X線回折データである。
【図22】図22は、実施例10により製造された5.0nm以下の厚さの骨格からなる多重板状構造のアルミノホスフェートの焼成前のTEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施例を通じて本発明をより詳しく説明する。これらの実施例は、ただ、本発明をより具体的に説明し、現時点での本発明の最良の形態を記載するための目的のものであると理解されるべきである。本発明の範囲は以下の実施例によりどのような意味でも制限されない。
【0016】
実施例1:単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの合成
有機界面活性剤22−6−6(化学式[1]のC1が炭素原子22個、C2が炭素原子6個、C3が炭素原子6個であり、アンモニウム官能基2個からなる有機界面活性剤)をテトラエチルオルソシリケート(tetraethylorthosilicate,TEOS)、NaOH、Al2(SO4)3、H2SO4及び蒸留水と混合して混合ゲルを製造した。合成ゲルのモル組成は次のとおりである。
1Al2O3:30Na2O:100SiO2:4000H2O:18H2SO4:10 22−6−6有機界面活性剤
上記混合ゲルを室温で3時間撹拌した後、最終混合物をステンレスオートクレーブに入れた後、150℃に5日間置いた。オートクレーブを室温に冷却させた後、生成物を濾過して蒸留水で数回洗浄した。得られた生成物を110℃で乾燥させた。
【0017】
このように合成されたゼオライトのSEMイメージは、ゼオライトがナノ単位(20〜50nm)厚さの板状構造模様の結晶に成長したことを示す(図1)。図2は、このような板状構造結晶の断面の透過電子顕微鏡(TEM)イメージであり、それぞれの板状型結晶が2.0nm厚さのゼオライト薄膜と2.6nmの界面活性剤層が交互に積み重なって多重板状構造をなしていることを示す。また、図2は、ゼオライト薄膜と界面活性剤層がMFI結晶構造のb−軸に垂直になるように積み重なっていることを示す。図3は、板状構造結晶での広い面のTEM写真及び電子回折パターンであるが、ゼオライト薄膜の広い面がゼオライト結晶面でのa−c面、すなわち、(010)面であることを示す。電子顕微鏡の分析に基づくと、本物質は、a−c結晶面は広く、b−軸への厚さは単一単位結晶格子厚さ(2.0nm)に相当するゼオライト薄膜が規則的に整列された多重板状構造からなっている。
【0018】
この物質の低角X線回折パターン(図4)は、ゼオライト薄膜と界面活性剤層が多重板状構造をなして規則的に配列されていることを示す。高角X線回折(図5)は、高い結晶性を有するMFI分子篩の構造と一致した。しかし、このゼオライト物質は、b−結晶軸に単一単位結晶格子長さを有しているので、h01回折に該当する回折パターンのみが鮮やかに表われる。このMFIゼオライトの27Al MAS NMRスペクトル(図6)は57〜65ppm領域の化学シフトに対応するピークを示すが、これは結晶性フィルムゼオライト構造から見られる四面体配位Alの化学シフトと一致した。ゼオライトの骨格外部に存在するAl(八面体配位)に対応する0〜10ppm領域のNMRピークは観察されなかった。
【0019】
実施例2:有機界面活性剤を焼成により除去することによる単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの合成
実施例1で合成された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートを550℃で4時間の焼成することにより有機界面活性剤層を取り除いた。図7のTEMイメージから分かるように、界面活性剤が除去されたあと、界面活性剤層に分離されていたゼオライト薄膜が不規則的な構造で縮合(condensation)された。しかし、不規則的なゼオライト薄膜間の縮合にもかかわらず、依然としてゼオライト骨格はb−結晶軸に2〜5nmのマイクロ厚さを有し、ゼオライト層間に不規則的なメソ気孔を含んでいた。窒素吸着等温線(図8)を通じて、焼成処理した生成物の気孔構造を分析した結果、直径が2〜5nmで気孔体積が0.7mL/gであるメソ気孔を含んでいることが示された。このゼオライト物質は、520m2/gのBET表面積を示し、ICPを用いて生成物のSi/Alの割合が43であることが確認された。
【0020】
実施例3:層と層の間にシリカ柱(pillar)により支持された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの合成
実施例1で製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケート1gにTEOS4gを加えた後、密閉されたプラスチックボトルに入れて室温で24時間撹拌した。反応終了後、得られた物質をさらに洗浄することなく濾過して、室温で24時間乾燥させた後、蒸留水20gを加えて100℃で12時間加熱した。その後、濾過、洗浄し、ろ過を通じて得られ洗浄された。110℃で乾燥した後、550℃で4時間焼成することにより有機界面活性剤を取り除いた。焼成後得られた物質は、ゼオライト層の間に非晶質シリカ柱を有していた。したがって、実施例3で得られた物質は、実施例2で特別な処理なしに得た物質に比べてゼオライトの層の間がより規則的に配列されており、初期の多重板状構造の積み重なりが完璧な状態で維持されていた(図9)。ゼオライト層は、焼成前と同様に2nm厚さで維持されており、ゼオライト層の間には2〜3nmのメソ気孔が存在していた。このゼオライト物質は、600m2/gのBET表面積を示し、ICPを用いて生成物のSi/Alの割合が40であることが確認された。
【0021】
実施例4:小片に剥離処理された単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIアルミノシリケートの合成
実施例1で製造された5gの単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートを120gのH2O、30gのヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、13gのテトラプロピルアンモニウムヒドロキシドの混合溶液に分散させた。この溶液を80℃で16時間反応した後、濾過して蒸留水で洗浄した。110℃で乾燥した後、550℃で4時間の焼成過程を通じてすべての有機物を取り除いた。
図10のTEMイメージから見られるように、上記のように製造された物質は、多重板状構造に積み重なっているゼオライト物質が細かく壊されて別々に存在する、剥離処理された単一板状構造のゼオライト層である。このゼオライト物質は、600m2/gのBET表面積を示し、ICPを用いて生成物のSi/Alの割合が45であることが確認された。
【0022】
実施例5:単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの合成
実施例1で用いた22−6−0有機界面活性剤の代わりに、アンモニウム官能基1個とアミン官能基1個からなる22−6−0有機界面活性剤を用いて、実施例1で得られた単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの合成が可能であることを確認した。22−6−6有機界面活性剤(化学式[2]のC1が炭素原子22個、C2が炭素原子6個であり、1個のアンモニウム官能基と1個のアミン官能基からなる有機界面活性剤)をTEOS、Al2(SO4)3、H2SO4及び蒸留水と混合して混合ゲルを製造した。混合ゲルのモル比は次のとおりである。
1Al2O3:30Na2O:100SiO2:4000H2O:18H2SO4:10 22−6−0有機界面活性剤
上記混合ゲルを室温で3時間撹拌した後、最終混合物をステンレスオートクレーブに入れ、150℃に5日間置いた。オートクレーブを室温に冷却した後、生成物を濾過して蒸留水で数回洗浄した。得られた生成物を110℃で乾燥させた。
この物質の低角X線回折パターン(図11)は、ゼオライト薄膜と界面活性剤層が多重板状構造をなして規則的に配列されていることを示す。高角X線回折(図12)は、MFI分子篩が、実施例1で得られた物質のような高い結晶性を有する構造と同じ構造を有することを示す。
【0023】
実施例6:単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの合成
実施例1で製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの合成組成からアルミニウムを除く場合、シリカのみで構成される単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIシリケートを合成することができた。22−6−6有機界面活性剤をTEOS、H2SO4及び蒸留水と混合して混合ゲルを製造した。混合ゲルのモル比は次のとおりである。
30Na2O:100SiO2:4000H2O:18H2SO4:10 22−6−6有機界面活性剤
上記混合ゲルを室温で3時間撹拌した後、最終混合物をオートクレーブに入れ、150℃に5日間置いた。オートクレーブを室温に冷却した後、生成物を濾過して蒸留水で数回洗浄した。得られた生成物を110℃で乾燥させた後、有機物を550℃で4時間焼成して取り除いた。
この物質の高角X線回折(図13)は、実施例1で得られた物質のような高い結晶性を有するMFI分子篩と同じ構造を有することを示す。このゼオライト物質は、530m2/gのBET表面積を示し、ICPを用いて生成物が純粋なシリケートのみからなっていることが確認された。
【0024】
実施例7:単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIチタノシリカライトの合成
MFIチタノシリカライトの合成のための混合ゲルは22−6−6(OH−)、TEOS、チタン(IV)ブトキシド、蒸留水を混合して製造した。合成混合物のモル組成は次のとおりである。
0.2TiO2:100SiO2:4000H2O:15 22−6−6(OH−)有機界面活性剤
上記で得られた透明なゾルをステンレスオートクレーブに入れて、封じて、170℃で2日間加熱した。実施例1で記述したように、分子篩を濾過した後、焼成処理した。生成物の高角X線回折(図14)は、高い結晶性を有するMFI分子篩と同じ構造を有することを示す。このゼオライト物質は、535m2/gのBET表面積を示し、ICPを用いてSi/Tiの割合が42であることが確認された。
【0025】
実施例8:単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIアルミノシリケートの合成
22−6−6(OH−)有機界面活性剤を乾式シリカ(fumed silica)、Al2(SO4)3及び蒸留水と混合して混合ゲルを製造した。合成ゲルのモル比は次のとおりである。
1Al2O3:100SiO2:6000H2O:3H2SO4:15 22−6−6(OH−)有機界面活性剤
上記混合ゲルを室温で3時間撹拌した後、最終混合物をオートクレーブに入れ、150℃に5日間置いた。オートクレーブを室温に冷却した後、生成物を濾過して蒸留水で数回洗浄した。得られた生成物を110℃で乾燥させた後、有機物を550℃で4時間の焼成過程を通じて取り除いた。
SEMイメージ(図15)は、ゼオライト結晶が単一板状構造の形態に成長したことを示す。TEMイメージ(図16)は、それぞれの単一板状構造結晶が単一単位結晶格子厚さのMFIゼオライト骨格からなっていることを示す。実施例1で得られた物質と同様に、本物質は単一単位格子サイズ(2.0nm)のb−結晶軸を有すると同時に結晶成長が20nmより低く抑制されているa−軸及びc−軸を有する。窒素吸着等温線(図17)を通じてこの物質の気孔構造を分析した結果、直径が2〜10nmで、気孔体積が0.9mL/gであるメソ気孔を含んでいることが示された。このゼオライト物質は、700m2/gのBET表面積を示し、ICPを用いて生成物のSi/Alの割合が46であることが確認された。
【0026】
実施例9:10nm以下の極微細厚さで構成された単一または多重板状構造のMTWアルミノシリケートの合成
実施例1〜8で用いられた有機界面活性剤の構造を調節することにより、MFIではない、他の構造のゼオライトまたは類似分子篩物質を合成することができた。すなわち、下記の化学式[3]の22−6−CH2−(p−フェニレン)−CH2−6−22有機界面活性剤を用いて、10nm以下のナノスケール厚さで構成される単一または多重板状構造のアルミノシリケートを合成することができた。ここで、Xはハロゲン(Cl、Br、Iなど)またはヒドロキシド(OH)基であり、C1、C2はそれぞれ独立して置換または無置換のアルキル基である。合成のために、22−6−CH2−(p−フェニレン)−CH2−6−22有機界面活性剤をTEOS、NaOH、Al2(SO4)3、H2SO4及び蒸留水と混合して混合ゲルを製造した。混合ゲルのモル比は次のとおりである。
【0027】
【化3】
1Al2O3:23Na2O:100SiO2:6000H2O:3H2SO4:5 22−6−CH2−(p−フェニレン)−CH2−6−22有機界面活性剤
【0028】
上記混合ゲルを室温で3時間撹拌した後、最終混合物をオートクレーブに入れ、140℃に10日間置いた。オートクレーブを室温に冷却した後、生成物を濾過して蒸留水で数回洗浄した。得られた生成物を110℃で乾燥させた。
SEMイメージは、ゼオライトがナノスケール(20〜50nm)厚さの板状構造の形態に成長したことを示す(図18)。図19は、このような板状構造結晶の断面のTEMイメージを示すが、それぞれの板状型結晶が10.0nmの厚さの極微細厚さからなるゼオライト薄膜と2.0nmの界面活性剤層が交互に規則的に積み重なって多重板状構造(図19a)をなすか、または単一板状構造(図19b)からなっていることを示す。高角X線回折(図20)は、高い結晶性を有するMTW分子篩と同じ構造を有することを示す。
【0029】
実施例10:10nm以下の極微細厚さで構成される単一または多重板状構造のアルミノホスフェートの合成
22−6−6(OH−)有機界面活性剤をアルミニウムイソプロポキシド(及び蒸留水と混合した後、リン酸を添加して混合ゲルを製造した。混合ゲルのモル比は次のとおりである。
1Al2O3:1P2O5:250H2O:0.5 22−6−6(OH−)有機界面活性剤
上記混合ゲルを室温で3時間撹拌した後、最終混合物をオートクレーブに入れ、150℃に4日間置いた。オートクレーブを室温に冷却した後、生成物を濾過して蒸留水で数回洗浄した。得られた生成物を110℃で乾燥させた後、有機物を550℃で4時間の焼成を通じて取り除いた。
この物質の焼成前の低角X線回折パターン(図21、左)は、ゼオライト薄膜と界面活性剤層とが多重板状構造をなして規則的に配列されていることを示し、高角X線回折パターン(図21、右)は、この物質がアルミノホスフェート骨格からなっていることを示す。TEMイメージ(図22)は、2.0nm以下の極微細厚さのアルミノホスフェート骨格と界面活性剤層が交互に配列されていることを示す。実施例1で得られた高い結晶性を示すものと同じ構造を有するMTW分子篩の元素分析を通じて生成物のAl/Pの割合が1であることを確認した。
【0030】
実施例11:単一単位結晶格子厚さの多重または単一板状構造のMFIアルミノシリケートの脱アルミニウム化(dealumination)反応
実施例2〜4、8で製造された単一単位結晶格子厚さの多重または単一板状構造のMFIアルミノシリケート1gにそれぞれ2Mシュウ酸40mL溶液を加えて、65℃で1時間還流条件で撹拌した。反応終了後、それぞれのゼオライトを濾過して蒸留水で洗浄して110℃で乾燥させた後、最終的に550℃の焼成処理をした。ICPを用いてSi/Alの比は、脱アルミニウム化反応後、実施例2の場合43から64に、実施例3の場合40から60に、実施例4の場合45から66に、実施例8の場合46から69に増加したことを確認した。一方、MFI構造のXRD回折は依然として維持された。
【0031】
実施例12:単一単位結晶格子厚さの多重または単一板状構造のMFIアルミノシリケートのアルカリ処理工程
実施例2〜4、8で製造された単一単位結晶格子厚さの多重または単一板状構造のMFIアルミノシリケート1gをそれぞれ0.1M NaOH 100mL溶液に加えて、分散液を6時間撹拌させた。ゼオライトを濾過して蒸留水で洗浄して110℃で乾燥させた。アルカリ処理された単一単位結晶格子厚さの多重または単一板状構造のMFIアルミノシリケートのメソ気孔の直径が全て2〜3nmから4〜5nmに増加した。
【0032】
実施例13:硝酸アンモニウム溶液を用いた単一単位結晶格子厚さの多重または単一板状構造のMFIアルミノシリケートの陽イオン交換
実施例2〜4、8で製造された単一単位結晶格子厚さの多重または単一板状構造のMFIアルミノシリケート1gをそれぞれ0.1M硝酸アンモニウム水溶液40mLに加えて、5時間還流条件で撹拌した。その後、ゼオライトを濾過して蒸留水で洗浄して110℃で乾燥させた。最終的に550℃で焼成処理をした。ICP分析により、実質的にゼオライトマイクロ気孔内の全てのNa+イオンはこの工程を通じてH+イオンに交換されたことが確認された。
【0033】
実施例14:次の実施例に含まれる5種類の触媒反応は、単一単位結晶格子厚さの板状構造多重または単一MFI分子篩とその製造法にのみ極限されておらず、これらの物質を用いた様々な触媒工程に適用され得ることを示すために実施された。
A.気相メタノールの改質触媒として、単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIアルミノシリケートの応用
実施例8で製造された単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIアルミノシリケートを実施例13を通じてH+イオンで交換し、粉末を結合剤なしに圧縮して、ペレット(pellet)を挽いて14〜20メッシュ(mesh)サイズの分子篩粒子を得た。また、ゼオライト触媒性能の比較のために、通常のMFIゼオライト(ZSM−5)を製造した。メタノールの改質反応は、自主作製した流動化ステンレス反応器(内部直径=10mm、外部直径=11mm、長さ=45cm)を用いて行い、反応結果物は、ステンレス鋼反応器に連結されたオンラインガスクロマトグラフィーを用いて分析した。反応過程は、まず、反応熱の発散を助けるために、100mgの触媒を500mgの20メッシュサイズの砂と混合して、ステンレス反応器の触媒装置(1/2”フィルターGSKT−5u)に安着させた。触媒を8時間550℃で窒素流れの下に活性化し、反応器を反応温度である325℃に下げた後、メタノールを走査ポンプを通じて0.02mL/mの流速で投入した。この時、窒素気体の流速は20mL/mに維持し、生成物は周期的にオンラインガスクロマトグラフィーを用いて分析した。生成物の分布結果を表1に示した。本発明の単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIアルミノシリケート物質は、従来のMFI触媒と著しく異なる生成物分布図を示した。
【0034】
【表1】
【0035】
B.ベンゼンのイソプロピル化反応
実施例14Aで用いた同一物質を流量反応器に安着させた後、550℃で活性化した。反応器を反応温度の210℃に下げた後、ベンゼン、イソプロピルアルコール(モル比6.5:1)混合物を走査ポンプを通じて0.005mL/mの流速で注入した。この時、窒素の流速は20mL/mに維持し、試料は周期的にオンラインガスクロマトグラフィーを用いて分析した。生成物の分布結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
C.ベンズアルデヒドと2−ヒドロキシアセトフェノンとの液状縮合反応
実施例14Aで用いたものと同一物質につき還流凝縮器付きのパイレックス(Pyrex)反応器で触媒反応を行った。0.1gの触媒粉末を180℃で2時間活性化し、20mmolの無水2−ヒドロキシアセトフェノンと20mmolのベンズアルデヒドが入った反応器に添加した。反応は、140℃でヘリウム雰囲気下、撹拌して行った。反応生成物は、周期的にオンラインガスクロマトグラフィーを用いて分析した。生成物の分布結果を表3に示す。本発明の単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIゼオライト物質は、従来のゼオライトに比べて遥かに改善された触媒活性を示した。
【0038】
【表3】
【0039】
D.廃プラスチックの改質を通じた炭化水素の合成
実施例14Aで用いたものと同一の物質を用いた。本実施例では安定化されていない直線型低密度ポリエチレンの固体粉末が標準反応物として用いられた。10gのポリエチレンと0.1gの触媒の混合物をセミ−バッチ(semi−batch)パイレックス反応器に入れた後、物理撹拌を実施した。この時、反応器の温度は、室温から340℃まで6℃/mの速度で増加させて2時間、維持させた。反応から揮発性生成物は、窒素フロー(流速=35mL/m)を用いて反応器から取り除き、生成物を反応器の隣に付けた氷トラップと気体袋を用いて、それぞれ液状と気相で収集した。反応後、この液状と気体状の生成物はガスクロマトグラフィーを用いて分析した。生成物の分布結果を表4に示した。この実施例でも、本発明の単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIゼオライト物質は、従来のゼオライトに比べて非常に改善された触媒活性を示した。
【0040】
【表4】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一単位結晶格子(single unit cell)厚さの骨格からなる単一または多重の板状構造からなるMFI(国際ゼオライト協会の3−letter codeに基づく)ゼオライト及び類似分子篩物質、そしてこれらの物質の製造方法に関する。より詳しくは、単一単位結晶格子厚さの骨格を有する物質であって不規則的に並んだ単一板状構造を含む物質、及び、単一単位結晶格子厚さの骨格を有する物質であって規則的に並んだ多重板状構造を含む物質、ならびにこれら物質の製造方法に関する。本発明の物質は、骨格が単一単位結晶格子1個を含む物質のみならず、骨格が10個以下の単一単位結晶格子のつながりで形成されている物質も含む。また、本発明は、ゼオライトの合成組成に2個以上のアミンまたはアンモニウム官能基を有する有機界面活性剤を添加して製造した新規なゼオライト物質、及び前記物質の製造方法、並びにこのように製造されたゼオライト及び類似分子篩の触媒としての応用に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、規則的に配列された分子サイズの均一なマイクロ気孔(0.3<直径<2nm)を含む骨格構造の結晶性アルミノシリケート(aluminosilicate)物質と定義される。ゼオライトは、分子サイズの直径のマイクロ気孔を有しているので、分子を選択的に吸着、拡散させることが可能な分子篩(molecular sieve)機能がある。このような分子篩の効果により、ゼオライトによって分子選択的吸着、イオン交換及び触媒反応が可能である(C.S.Cundyの他,Chem.Rev.2003,103,663)。しかし、ゼオライトのマイクロ気孔の直径は非常に小さいので、ゼオライト内での分子拡散速度は遅く、様々な応用において反応速度を制約している。そのため、ゼオライトの骨格の厚さを減らしてゼオライト粒子の外表面積を増加させて、ゼオライトマイクロ気孔内への分子拡散を増進させようとする試みがなされてきている。
【0003】
比表面積の大きいゼオライトを合成するために、ゼオライトをナノメートル厚さの微細結晶に合成しようとする試みがなされてきている。ゼオライトの合成組成を調節して、結晶化温度を低くすることによって、ナノメートルサイズ(10nm以上)のコロイド(colloid)状態のゼオライトを合成する方法(L.Toshevaの他、Chem.Mater.2005,17,2494)。しかし、このような合成法は、ゼオライトの結晶性及び合成収率が低く、合成後に濾過法ではなく遠心分離により分離しなければならないという制約があった。また、ゼオライト結晶の内部に、より大きな直径を有する気孔、すなわち、メゾ気孔(2<直径<50nm)及びマクロ気孔(50nm<直径)を構成して、ゼオライトの比表面積を増加させようとする他の試みがなされてきている。アンダーソン(Anderson)と彼の共同研究者たちは、ゼオライト種結晶(seed crystal)を用いた珪藻土を結晶化して、マクロ気孔を有するゼオライトを合成した(Anderson,M.W.他、Angew.Chem.Int.Ed.2000,39,2707)。近年、炭素ナノ粒子及びナノ繊維、球状高分子のような様々な固体鋳型内で、ゼオライトを合成した後、前記鋳型を焼成してゼオライト結晶中にメゾ気孔を形成させる方法が発表された。スタイン(Stein)と彼の共同研究者たちは、100ミクロン程度の均一なサイズを有する球状ポリスチレンを用いてメゾ多孔性分子篩を合成する技術を発表した(米国特許第6680013、B1号)。ヤコブセン(Jacobson)は、炭素を鋳型にして10〜100nmの広い気孔分布を示すメソ多孔性ゼオライトを合成した(米国特許第6620402、B2号)。さらに、固体マトリックスを用いて製造された物質は、メソ気孔により分子拡散が良好になるため、改善された触媒活性を示すと報告された(Christensen,C.H.の他、J.Am.Chem.Soc.2003,125,13370)。近年、有機シランをゼオライトの合成組成に添加することによって、メソ気孔をゼオライト結晶内に生成させる技術が発表された(韓国特許第10−0727288号)。また、コルマ(Corma)と研究員たちは、層状構造を有するFERゼオライト及びMWWゼオライトを単層のゼオライト薄膜に剥離する方法を発表した(A.Cormaの他、Nature 1998,396,353)。(A.Cormaの他、スペイン特許第9502188号(1996)PCT−WO Patent 97/17290(1997))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先に言及したように、単一単位格子10個以下からなるほど薄い骨格を有し、比表面積が飛躍的に増加されたゼオライトを合成することによって、ゼオライト内部への分子拡散を最大にすることができる。理論的に、分子拡散は、ゼオライト骨格厚さを単一単位結晶格子厚さまで減らすことで最大にすることができる。しかし、単一単位結晶格子厚さのゼオライト物質を実際に合成することは熱力学的に非常に困難である。ゼオライト結晶化は、結晶表面のエネルギーを最小化させるための過程が関与しており、その結果、結晶を一定のサイズ以上に成長させる(Ostwald ripening)。結晶が小さくなるほど、このような現象は顕著である。このような現象のため、これまで報告された合成法で5〜100nm程度の骨格厚さを有するゼオライトは合成することができるが、単一単位結晶格子厚さ及び単一単位結晶格子が10個以下からなるほど極微細の骨格厚さからなるナノサイズ厚さのゼオライトを合成することはできない。このため、本発明者らは、単一単位結晶格子厚さ又は10個以下の単一単位結晶格子の厚さの極微細の厚さの板状構造を有するゼオライト物質または類似分子篩を製造するために、鋭意研究努力をしてきた。その結果、ゼオライト合成溶液に、2個またはそれ以上のアンモニウム官能基を有する、構造を誘導する有機界面活性剤を添加することにより、単一単位結晶格子厚さのナノサイズ骨格構造を有するゼオライトを合成することができることを確認し、本発明を完成するに至った。これにより、本発明の課題は、ゼオライト骨格の厚さが単一単位結晶格子の厚さに相当するゼオライト及びその製造方法を提供することである。また、本発明は、このように生成された物質の触媒としての応用にも関する。この他にも、本発明は、有機界面活性剤のアンモニウムやアミン官能基の個数を調節して、板状構造物の骨格厚さが単一単位結晶格子が数個積み重なった物質に相当する厚さに製造されたゼオライト及びその製造方法に関する。また、有機界面活性剤の構造を調節することにより、MFIゼオライトのみならず、MTWゼオライトの合成が可能であり、類似ゼオライト物質(zeotype material)であるアルミノホスフェート(AIPO)までも合成が可能である。本発明の合成方法によれば、MFIゼオライト、MTWゼオライト、AIPO以外の構造のゼオライトまたは類似ゼオライト物質を合成することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、複数個のアンモニウム官能基を有する有機界面活性剤をゼオライトの合成ゲルに添加した後、酸性または塩基条件で結晶化させ、最後に有機物を選択的に取り除くことによって、単一単位結晶格子厚さを有するかまたは単一単位結晶格子の10個以下の積み重なりからなる単一または多重板状構造からなる様々なゼオライト物質とその類似物質を合成した。ここで、類似物質とは、本発明の新規なゼオライト物質をピラリング(pillaring)、剥離処理(delamination)、脱アルミニウム(dealumination)、アルカリ処理、陽イオン交換工程などの通常の後処理に付与して得られた物質を意味し、前述の類似ゼオライト物質とは異なる。以下、新規なゼオライト物質と類似物質の製造方法をステップ別に分けてより具体的に説明することにする。
【0006】
第1ステップ:有機−官能化シリカ前駆体をシリカやアルミナのような他のゲル前駆体と共に重合して有機−無機複合ゲルを形成する。この時、疎水性有機物領域が、ファンデルワールス力、双極子−双極子の相互作用、イオンの相互作用などの非共有結合によって無機物領域間で自己組立されて形成される。この時、有機物の構造や濃度によってゲル領域は連続的にまたは局部的に規則的な配列となる。
【0007】
第2ステップ:この後、有機物領域によって安定化されたナノサイズの無機ゲル領域は、結晶化過程を通じて有機界面活性剤の構造やそれに含まれているアンモニウム官能基の個数によって単一単位結晶格子厚さを有するまたは単一単位結晶格子の10個以下の積み重なりからなる単一または多重板状構造のゼオライトに変換される。この時、各ゼオライトを取り囲んでいる有機物の安定化効果のため、ゼオライトの成長が抑制され、結晶サイズが10nm以下の極微細厚さに調節されるようになる。この時、結晶化過程は、熱水合成、乾式−ゲル合成(dry−gel)、マイクロ波合成(microwave synthesis)などの従来のいずれの方法で行ってもよい。
【0008】
第3ステップ:結晶化過程のあと、ゼオライトは、濾過法や遠心分離などの通常の方法で得ることができる。このように得られた物質は、焼成または化学的反応に付与され、有機物のみを選択的に完全または部分的に取り除くことができる。本発明で用いられる2個のアンモニウム官能基または1個のアンモニウム官能基と1個のアミン官能基とを同時に含んでいる純粋な有機界面活性剤は下記の化学式[1]または[2]で表すことができる。
【0009】
【化1】
【化2】
【0010】
ここで、Xは、ハロゲン(Cl、Br、Iなど)またはヒドロキシド(OH)基であり、C1、C2、C3は、それぞれ独立して置換または無置換のアルキル基である。また、C3は、アルケニル基または周期律表上の炭素以外の他の原子が置換された様々な分子構造が可能である。アンモニウム官能基は、2個またはそれ以上にも拡張が可能で、概念的に、より様々な構造の物質へ拡張利用され得、C1は炭素原子8〜22個、C2は炭素原子3〜6個、C3は炭素原子1〜8個からなっている。
【0011】
本発明において、有機界面活性剤は、C1の炭素数−C2の炭素数−C3の炭素数によってC1−C2−C3の順に一般化した形式で表示する(例、22−6−6:C1が炭素原子22個、C2が炭素原子6個、C3が炭素原子6個であり、アンモニウム官能基2個からなる;22−6−0:C1が炭素原子22個、C2が炭素原子6個であり、1個のアンモニウム官能基と1個のアミン官能基からなる)。Xがハロゲンではないヒドロキシドである場合、別途に一般化表示の隣に(OH−)を表示する。特に、この有機界面活性剤の構造や、アンモニウムまたはアミン官能基の個数を調節することによって、1個の単一板状構造が含む単一単位結晶格子の個数が調節され得るということを本発明において初めて見出した。単一単位結晶格子厚さを有するかまたは単一単位結晶格子の10個以下に積み重なりからなる単一または多重板状構造の本発明のゼオライトを合成するにおいて、最も重要な因子は、有機−無機複合ゲルの形成時に自己組立(self−assembly)が可能であり、2個以上のアンモニウム官能基を同時に有する有機界面活性剤を用いるということである。これをゼオライト合成ゲルに入れれば、2個のアンモニウム官能基がゼオライト骨格形成を誘導し、疎水性アルキルの尾部分はこれ以上のゼオライト成長を抑制する。また、これらの疎水性アルキルの尾は、生成された板状構造のゼオライト骨格の自己組立、及びこれによるゼオライト結晶間のメソ気孔(2<直径<50nm)の形成に寄与する。
【0012】
本発明で合成された物質は、ゼオライトのマイクロ気孔構造に対応する特徴的なX線回折及び電子回折様式を示す。また、本発明者らは、窒素吸着法を用いて、本発明の物質がゼオライト本来のマイクロ気孔と共に大きな体積のメソ気孔を含んでいることを確認した。さらに、本発明者らは、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて、マイクロ気孔からなっている結晶性骨格が、単一単位結晶格子厚さを有するかまたは単一単位結晶格子が10個以下の積み重なりからなる、不規則に並んだ単一板状構造か、または規則的に整列された多重板状構造であることを見出した。これにより、本発明の物質においては、マイクロ気孔が規則的に配列されていて、メソ気孔は不規則または規則的に配列されていることが確認された。本発明で合成されたゼオライトは、ナノサイズ骨格構造により非常に広い比表面積(500〜800m2/g)を有し、このような比表面積は、300〜450m2/gの比表面積を有する従来のMFIゼオライト物質に比べて飛躍的に高い。走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察すると、本発明の物質が、完璧な結晶相からなっており、非結晶相が別に分離されて生成されていないことが確認される。本発明に従って製造されたゼオライトは、ゼオライトの骨格に含まれるAlによって50〜60ppm領域で27Al MAS NMRピークが観察され、骨格外部に位置するAlのピークに対応する0〜10ppm領域ではピークが観察されなかった。このようなX線回折とNMRの結果は、本発明の新規な物質がAl位置の周囲に均一な化学的環境を有する完璧な結晶性構造を有していることを示唆している。
【発明の効果】
【0013】
上記にて説明して立証したように、本発明は、単一単位結晶格子厚さの多重または単一板状構造のゼオライト及び類似分子篩の製造方法を提供する。本発明で証明したように、本発明の物質は単一単位結晶格子厚さからなる多重または単一板状構造のMFIゼオライト物質と10.0nm以下のナノサイズ厚さの多重または単一板状構造のMTWゼオライト物質及びアルミノホスフェート(AIPO)物質である。本発明のゼオライト物質及び類似ゼオライト物質は、従来のゼオライト物質に比べて顕著に増加した比表面積を有し、これにより、非常に増加された分子拡散速度と遥かに増進された触媒活性を示す。また、本発明の物質は、巨大有機分子の吸着、分離及び触媒反応、石油の改質反応において、非常に高い活性を示す。従来のゼオライト物質と異なる骨格厚さによって様々な産業的、科学的分野で応用されて新たな物性を示すことが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例1により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成前のSEMイメージである。
【図2】図2は、実施例1により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成前のTEMイメージである。
【図3】図3は、実施例1により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成前の広い面のTEMイメージ(a)と電子回折パターン(b)である。
【図4】図4は、実施例1により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成前の低角X線回折データである。
【図5】図5は、実施例1により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成前の高角X線回折データである。
【図6】図6は、実施例1により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成前の27Al MAS NMRスペクトルを示す。
【図7】図7は、実施例2により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成後のTEMイメージである。
【図8】図8は、実施例2により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成後の窒素吸着等温線である。
【図9】図9は、実施例3により製造されたシリカ柱(pillar)により支持された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成後のTEMイメージである。
【図10】図10は、実施例4により製造された、剥離処理された、単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成後のTEMイメージである。
【図11】図11は、実施例5により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成前の低角X線回折データである。
【図12】図12は、実施例5により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成後の高角X線回折データである。
【図13】図13は、実施例6により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIシリケートの焼成後の高角X線回折データである。
【図14】図14は、実施例7により製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIチタノシリケートの焼成後の高角X線回折データである。
【図15】図15は、実施例8により製造された単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成後のSEMイメージである。
【図16】図16は、実施例8により製造された単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成後のTEMイメージである。
【図17】図17は、実施例8により製造された単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIアルミノシリケートの焼成後の窒素吸着等温線を示す。
【図18】図18は、実施例9により製造された5.0nm以下の厚さの骨格からなる多重板状構造のMTWアルミノシリケートの焼成後のSEMイメージである。
【図19】図19は、実施例9により製造された5.0nm以下の厚さの骨格からなる多重板状構造のMTWアルミノシリケートの焼成後のTEMイメージである。
【図20】図20は、実施例9により製造された5.0nm以下の厚さの骨格からなる多重板状構造のMTWアルミノシリケートの焼成後の高角X線回折データである。
【図21】図21は、実施例10により製造された5.0nm以下の厚さの骨格からなる多重板状構造のアルミノホスフェートの焼成前の低角と高角X線回折データである。
【図22】図22は、実施例10により製造された5.0nm以下の厚さの骨格からなる多重板状構造のアルミノホスフェートの焼成前のTEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施例を通じて本発明をより詳しく説明する。これらの実施例は、ただ、本発明をより具体的に説明し、現時点での本発明の最良の形態を記載するための目的のものであると理解されるべきである。本発明の範囲は以下の実施例によりどのような意味でも制限されない。
【0016】
実施例1:単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの合成
有機界面活性剤22−6−6(化学式[1]のC1が炭素原子22個、C2が炭素原子6個、C3が炭素原子6個であり、アンモニウム官能基2個からなる有機界面活性剤)をテトラエチルオルソシリケート(tetraethylorthosilicate,TEOS)、NaOH、Al2(SO4)3、H2SO4及び蒸留水と混合して混合ゲルを製造した。合成ゲルのモル組成は次のとおりである。
1Al2O3:30Na2O:100SiO2:4000H2O:18H2SO4:10 22−6−6有機界面活性剤
上記混合ゲルを室温で3時間撹拌した後、最終混合物をステンレスオートクレーブに入れた後、150℃に5日間置いた。オートクレーブを室温に冷却させた後、生成物を濾過して蒸留水で数回洗浄した。得られた生成物を110℃で乾燥させた。
【0017】
このように合成されたゼオライトのSEMイメージは、ゼオライトがナノ単位(20〜50nm)厚さの板状構造模様の結晶に成長したことを示す(図1)。図2は、このような板状構造結晶の断面の透過電子顕微鏡(TEM)イメージであり、それぞれの板状型結晶が2.0nm厚さのゼオライト薄膜と2.6nmの界面活性剤層が交互に積み重なって多重板状構造をなしていることを示す。また、図2は、ゼオライト薄膜と界面活性剤層がMFI結晶構造のb−軸に垂直になるように積み重なっていることを示す。図3は、板状構造結晶での広い面のTEM写真及び電子回折パターンであるが、ゼオライト薄膜の広い面がゼオライト結晶面でのa−c面、すなわち、(010)面であることを示す。電子顕微鏡の分析に基づくと、本物質は、a−c結晶面は広く、b−軸への厚さは単一単位結晶格子厚さ(2.0nm)に相当するゼオライト薄膜が規則的に整列された多重板状構造からなっている。
【0018】
この物質の低角X線回折パターン(図4)は、ゼオライト薄膜と界面活性剤層が多重板状構造をなして規則的に配列されていることを示す。高角X線回折(図5)は、高い結晶性を有するMFI分子篩の構造と一致した。しかし、このゼオライト物質は、b−結晶軸に単一単位結晶格子長さを有しているので、h01回折に該当する回折パターンのみが鮮やかに表われる。このMFIゼオライトの27Al MAS NMRスペクトル(図6)は57〜65ppm領域の化学シフトに対応するピークを示すが、これは結晶性フィルムゼオライト構造から見られる四面体配位Alの化学シフトと一致した。ゼオライトの骨格外部に存在するAl(八面体配位)に対応する0〜10ppm領域のNMRピークは観察されなかった。
【0019】
実施例2:有機界面活性剤を焼成により除去することによる単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの合成
実施例1で合成された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートを550℃で4時間の焼成することにより有機界面活性剤層を取り除いた。図7のTEMイメージから分かるように、界面活性剤が除去されたあと、界面活性剤層に分離されていたゼオライト薄膜が不規則的な構造で縮合(condensation)された。しかし、不規則的なゼオライト薄膜間の縮合にもかかわらず、依然としてゼオライト骨格はb−結晶軸に2〜5nmのマイクロ厚さを有し、ゼオライト層間に不規則的なメソ気孔を含んでいた。窒素吸着等温線(図8)を通じて、焼成処理した生成物の気孔構造を分析した結果、直径が2〜5nmで気孔体積が0.7mL/gであるメソ気孔を含んでいることが示された。このゼオライト物質は、520m2/gのBET表面積を示し、ICPを用いて生成物のSi/Alの割合が43であることが確認された。
【0020】
実施例3:層と層の間にシリカ柱(pillar)により支持された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの合成
実施例1で製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケート1gにTEOS4gを加えた後、密閉されたプラスチックボトルに入れて室温で24時間撹拌した。反応終了後、得られた物質をさらに洗浄することなく濾過して、室温で24時間乾燥させた後、蒸留水20gを加えて100℃で12時間加熱した。その後、濾過、洗浄し、ろ過を通じて得られ洗浄された。110℃で乾燥した後、550℃で4時間焼成することにより有機界面活性剤を取り除いた。焼成後得られた物質は、ゼオライト層の間に非晶質シリカ柱を有していた。したがって、実施例3で得られた物質は、実施例2で特別な処理なしに得た物質に比べてゼオライトの層の間がより規則的に配列されており、初期の多重板状構造の積み重なりが完璧な状態で維持されていた(図9)。ゼオライト層は、焼成前と同様に2nm厚さで維持されており、ゼオライト層の間には2〜3nmのメソ気孔が存在していた。このゼオライト物質は、600m2/gのBET表面積を示し、ICPを用いて生成物のSi/Alの割合が40であることが確認された。
【0021】
実施例4:小片に剥離処理された単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIアルミノシリケートの合成
実施例1で製造された5gの単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートを120gのH2O、30gのヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、13gのテトラプロピルアンモニウムヒドロキシドの混合溶液に分散させた。この溶液を80℃で16時間反応した後、濾過して蒸留水で洗浄した。110℃で乾燥した後、550℃で4時間の焼成過程を通じてすべての有機物を取り除いた。
図10のTEMイメージから見られるように、上記のように製造された物質は、多重板状構造に積み重なっているゼオライト物質が細かく壊されて別々に存在する、剥離処理された単一板状構造のゼオライト層である。このゼオライト物質は、600m2/gのBET表面積を示し、ICPを用いて生成物のSi/Alの割合が45であることが確認された。
【0022】
実施例5:単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの合成
実施例1で用いた22−6−0有機界面活性剤の代わりに、アンモニウム官能基1個とアミン官能基1個からなる22−6−0有機界面活性剤を用いて、実施例1で得られた単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの合成が可能であることを確認した。22−6−6有機界面活性剤(化学式[2]のC1が炭素原子22個、C2が炭素原子6個であり、1個のアンモニウム官能基と1個のアミン官能基からなる有機界面活性剤)をTEOS、Al2(SO4)3、H2SO4及び蒸留水と混合して混合ゲルを製造した。混合ゲルのモル比は次のとおりである。
1Al2O3:30Na2O:100SiO2:4000H2O:18H2SO4:10 22−6−0有機界面活性剤
上記混合ゲルを室温で3時間撹拌した後、最終混合物をステンレスオートクレーブに入れ、150℃に5日間置いた。オートクレーブを室温に冷却した後、生成物を濾過して蒸留水で数回洗浄した。得られた生成物を110℃で乾燥させた。
この物質の低角X線回折パターン(図11)は、ゼオライト薄膜と界面活性剤層が多重板状構造をなして規則的に配列されていることを示す。高角X線回折(図12)は、MFI分子篩が、実施例1で得られた物質のような高い結晶性を有する構造と同じ構造を有することを示す。
【0023】
実施例6:単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの合成
実施例1で製造された単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIアルミノシリケートの合成組成からアルミニウムを除く場合、シリカのみで構成される単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIシリケートを合成することができた。22−6−6有機界面活性剤をTEOS、H2SO4及び蒸留水と混合して混合ゲルを製造した。混合ゲルのモル比は次のとおりである。
30Na2O:100SiO2:4000H2O:18H2SO4:10 22−6−6有機界面活性剤
上記混合ゲルを室温で3時間撹拌した後、最終混合物をオートクレーブに入れ、150℃に5日間置いた。オートクレーブを室温に冷却した後、生成物を濾過して蒸留水で数回洗浄した。得られた生成物を110℃で乾燥させた後、有機物を550℃で4時間焼成して取り除いた。
この物質の高角X線回折(図13)は、実施例1で得られた物質のような高い結晶性を有するMFI分子篩と同じ構造を有することを示す。このゼオライト物質は、530m2/gのBET表面積を示し、ICPを用いて生成物が純粋なシリケートのみからなっていることが確認された。
【0024】
実施例7:単一単位結晶格子厚さの多重板状構造のMFIチタノシリカライトの合成
MFIチタノシリカライトの合成のための混合ゲルは22−6−6(OH−)、TEOS、チタン(IV)ブトキシド、蒸留水を混合して製造した。合成混合物のモル組成は次のとおりである。
0.2TiO2:100SiO2:4000H2O:15 22−6−6(OH−)有機界面活性剤
上記で得られた透明なゾルをステンレスオートクレーブに入れて、封じて、170℃で2日間加熱した。実施例1で記述したように、分子篩を濾過した後、焼成処理した。生成物の高角X線回折(図14)は、高い結晶性を有するMFI分子篩と同じ構造を有することを示す。このゼオライト物質は、535m2/gのBET表面積を示し、ICPを用いてSi/Tiの割合が42であることが確認された。
【0025】
実施例8:単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIアルミノシリケートの合成
22−6−6(OH−)有機界面活性剤を乾式シリカ(fumed silica)、Al2(SO4)3及び蒸留水と混合して混合ゲルを製造した。合成ゲルのモル比は次のとおりである。
1Al2O3:100SiO2:6000H2O:3H2SO4:15 22−6−6(OH−)有機界面活性剤
上記混合ゲルを室温で3時間撹拌した後、最終混合物をオートクレーブに入れ、150℃に5日間置いた。オートクレーブを室温に冷却した後、生成物を濾過して蒸留水で数回洗浄した。得られた生成物を110℃で乾燥させた後、有機物を550℃で4時間の焼成過程を通じて取り除いた。
SEMイメージ(図15)は、ゼオライト結晶が単一板状構造の形態に成長したことを示す。TEMイメージ(図16)は、それぞれの単一板状構造結晶が単一単位結晶格子厚さのMFIゼオライト骨格からなっていることを示す。実施例1で得られた物質と同様に、本物質は単一単位格子サイズ(2.0nm)のb−結晶軸を有すると同時に結晶成長が20nmより低く抑制されているa−軸及びc−軸を有する。窒素吸着等温線(図17)を通じてこの物質の気孔構造を分析した結果、直径が2〜10nmで、気孔体積が0.9mL/gであるメソ気孔を含んでいることが示された。このゼオライト物質は、700m2/gのBET表面積を示し、ICPを用いて生成物のSi/Alの割合が46であることが確認された。
【0026】
実施例9:10nm以下の極微細厚さで構成された単一または多重板状構造のMTWアルミノシリケートの合成
実施例1〜8で用いられた有機界面活性剤の構造を調節することにより、MFIではない、他の構造のゼオライトまたは類似分子篩物質を合成することができた。すなわち、下記の化学式[3]の22−6−CH2−(p−フェニレン)−CH2−6−22有機界面活性剤を用いて、10nm以下のナノスケール厚さで構成される単一または多重板状構造のアルミノシリケートを合成することができた。ここで、Xはハロゲン(Cl、Br、Iなど)またはヒドロキシド(OH)基であり、C1、C2はそれぞれ独立して置換または無置換のアルキル基である。合成のために、22−6−CH2−(p−フェニレン)−CH2−6−22有機界面活性剤をTEOS、NaOH、Al2(SO4)3、H2SO4及び蒸留水と混合して混合ゲルを製造した。混合ゲルのモル比は次のとおりである。
【0027】
【化3】
1Al2O3:23Na2O:100SiO2:6000H2O:3H2SO4:5 22−6−CH2−(p−フェニレン)−CH2−6−22有機界面活性剤
【0028】
上記混合ゲルを室温で3時間撹拌した後、最終混合物をオートクレーブに入れ、140℃に10日間置いた。オートクレーブを室温に冷却した後、生成物を濾過して蒸留水で数回洗浄した。得られた生成物を110℃で乾燥させた。
SEMイメージは、ゼオライトがナノスケール(20〜50nm)厚さの板状構造の形態に成長したことを示す(図18)。図19は、このような板状構造結晶の断面のTEMイメージを示すが、それぞれの板状型結晶が10.0nmの厚さの極微細厚さからなるゼオライト薄膜と2.0nmの界面活性剤層が交互に規則的に積み重なって多重板状構造(図19a)をなすか、または単一板状構造(図19b)からなっていることを示す。高角X線回折(図20)は、高い結晶性を有するMTW分子篩と同じ構造を有することを示す。
【0029】
実施例10:10nm以下の極微細厚さで構成される単一または多重板状構造のアルミノホスフェートの合成
22−6−6(OH−)有機界面活性剤をアルミニウムイソプロポキシド(及び蒸留水と混合した後、リン酸を添加して混合ゲルを製造した。混合ゲルのモル比は次のとおりである。
1Al2O3:1P2O5:250H2O:0.5 22−6−6(OH−)有機界面活性剤
上記混合ゲルを室温で3時間撹拌した後、最終混合物をオートクレーブに入れ、150℃に4日間置いた。オートクレーブを室温に冷却した後、生成物を濾過して蒸留水で数回洗浄した。得られた生成物を110℃で乾燥させた後、有機物を550℃で4時間の焼成を通じて取り除いた。
この物質の焼成前の低角X線回折パターン(図21、左)は、ゼオライト薄膜と界面活性剤層とが多重板状構造をなして規則的に配列されていることを示し、高角X線回折パターン(図21、右)は、この物質がアルミノホスフェート骨格からなっていることを示す。TEMイメージ(図22)は、2.0nm以下の極微細厚さのアルミノホスフェート骨格と界面活性剤層が交互に配列されていることを示す。実施例1で得られた高い結晶性を示すものと同じ構造を有するMTW分子篩の元素分析を通じて生成物のAl/Pの割合が1であることを確認した。
【0030】
実施例11:単一単位結晶格子厚さの多重または単一板状構造のMFIアルミノシリケートの脱アルミニウム化(dealumination)反応
実施例2〜4、8で製造された単一単位結晶格子厚さの多重または単一板状構造のMFIアルミノシリケート1gにそれぞれ2Mシュウ酸40mL溶液を加えて、65℃で1時間還流条件で撹拌した。反応終了後、それぞれのゼオライトを濾過して蒸留水で洗浄して110℃で乾燥させた後、最終的に550℃の焼成処理をした。ICPを用いてSi/Alの比は、脱アルミニウム化反応後、実施例2の場合43から64に、実施例3の場合40から60に、実施例4の場合45から66に、実施例8の場合46から69に増加したことを確認した。一方、MFI構造のXRD回折は依然として維持された。
【0031】
実施例12:単一単位結晶格子厚さの多重または単一板状構造のMFIアルミノシリケートのアルカリ処理工程
実施例2〜4、8で製造された単一単位結晶格子厚さの多重または単一板状構造のMFIアルミノシリケート1gをそれぞれ0.1M NaOH 100mL溶液に加えて、分散液を6時間撹拌させた。ゼオライトを濾過して蒸留水で洗浄して110℃で乾燥させた。アルカリ処理された単一単位結晶格子厚さの多重または単一板状構造のMFIアルミノシリケートのメソ気孔の直径が全て2〜3nmから4〜5nmに増加した。
【0032】
実施例13:硝酸アンモニウム溶液を用いた単一単位結晶格子厚さの多重または単一板状構造のMFIアルミノシリケートの陽イオン交換
実施例2〜4、8で製造された単一単位結晶格子厚さの多重または単一板状構造のMFIアルミノシリケート1gをそれぞれ0.1M硝酸アンモニウム水溶液40mLに加えて、5時間還流条件で撹拌した。その後、ゼオライトを濾過して蒸留水で洗浄して110℃で乾燥させた。最終的に550℃で焼成処理をした。ICP分析により、実質的にゼオライトマイクロ気孔内の全てのNa+イオンはこの工程を通じてH+イオンに交換されたことが確認された。
【0033】
実施例14:次の実施例に含まれる5種類の触媒反応は、単一単位結晶格子厚さの板状構造多重または単一MFI分子篩とその製造法にのみ極限されておらず、これらの物質を用いた様々な触媒工程に適用され得ることを示すために実施された。
A.気相メタノールの改質触媒として、単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIアルミノシリケートの応用
実施例8で製造された単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIアルミノシリケートを実施例13を通じてH+イオンで交換し、粉末を結合剤なしに圧縮して、ペレット(pellet)を挽いて14〜20メッシュ(mesh)サイズの分子篩粒子を得た。また、ゼオライト触媒性能の比較のために、通常のMFIゼオライト(ZSM−5)を製造した。メタノールの改質反応は、自主作製した流動化ステンレス反応器(内部直径=10mm、外部直径=11mm、長さ=45cm)を用いて行い、反応結果物は、ステンレス鋼反応器に連結されたオンラインガスクロマトグラフィーを用いて分析した。反応過程は、まず、反応熱の発散を助けるために、100mgの触媒を500mgの20メッシュサイズの砂と混合して、ステンレス反応器の触媒装置(1/2”フィルターGSKT−5u)に安着させた。触媒を8時間550℃で窒素流れの下に活性化し、反応器を反応温度である325℃に下げた後、メタノールを走査ポンプを通じて0.02mL/mの流速で投入した。この時、窒素気体の流速は20mL/mに維持し、生成物は周期的にオンラインガスクロマトグラフィーを用いて分析した。生成物の分布結果を表1に示した。本発明の単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIアルミノシリケート物質は、従来のMFI触媒と著しく異なる生成物分布図を示した。
【0034】
【表1】
【0035】
B.ベンゼンのイソプロピル化反応
実施例14Aで用いた同一物質を流量反応器に安着させた後、550℃で活性化した。反応器を反応温度の210℃に下げた後、ベンゼン、イソプロピルアルコール(モル比6.5:1)混合物を走査ポンプを通じて0.005mL/mの流速で注入した。この時、窒素の流速は20mL/mに維持し、試料は周期的にオンラインガスクロマトグラフィーを用いて分析した。生成物の分布結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
C.ベンズアルデヒドと2−ヒドロキシアセトフェノンとの液状縮合反応
実施例14Aで用いたものと同一物質につき還流凝縮器付きのパイレックス(Pyrex)反応器で触媒反応を行った。0.1gの触媒粉末を180℃で2時間活性化し、20mmolの無水2−ヒドロキシアセトフェノンと20mmolのベンズアルデヒドが入った反応器に添加した。反応は、140℃でヘリウム雰囲気下、撹拌して行った。反応生成物は、周期的にオンラインガスクロマトグラフィーを用いて分析した。生成物の分布結果を表3に示す。本発明の単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIゼオライト物質は、従来のゼオライトに比べて遥かに改善された触媒活性を示した。
【0038】
【表3】
【0039】
D.廃プラスチックの改質を通じた炭化水素の合成
実施例14Aで用いたものと同一の物質を用いた。本実施例では安定化されていない直線型低密度ポリエチレンの固体粉末が標準反応物として用いられた。10gのポリエチレンと0.1gの触媒の混合物をセミ−バッチ(semi−batch)パイレックス反応器に入れた後、物理撹拌を実施した。この時、反応器の温度は、室温から340℃まで6℃/mの速度で増加させて2時間、維持させた。反応から揮発性生成物は、窒素フロー(流速=35mL/m)を用いて反応器から取り除き、生成物を反応器の隣に付けた氷トラップと気体袋を用いて、それぞれ液状と気相で収集した。反応後、この液状と気体状の生成物はガスクロマトグラフィーを用いて分析した。生成物の分布結果を表4に示した。この実施例でも、本発明の単一単位結晶格子厚さの単一板状構造のMFIゼオライト物質は、従来のゼオライトに比べて非常に改善された触媒活性を示した。
【0040】
【表4】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの軸に沿って単一単位結晶格子厚さに相当する骨格を有する、規則的に並んだ多重板状構造または不規則的に並んだ単一板状構造を含むゼオライトまたは類似ゼオライト物質。
【請求項2】
多重板状構造または単一板状構造の骨格を有するゼオライトまたは類似ゼオライト物質であって、前記骨格が少なくとも1つの軸に沿って10個以下の単一単位結晶格子の連続で形成されているゼオライトまたは類似ゼオライト物質。
【請求項3】
前記骨格がMFI骨格である請求項1または2に記載のゼオライト。
【請求項4】
前記骨格がMTW骨格である請求項1または2に記載のゼオライト。
【請求項5】
前記骨格がAIPO(アルミノホスフェート)骨格または他の骨格である請求項1または2に記載の類似ゼオライト物質。
【請求項6】
前記ゼオライトがアルミノシリケート、純粋なシリケートまたはチタノシリケートの化学的組成を有する請求項1または2に記載のゼオライト。
【請求項7】
請求項1または2によるゼオライトまたは類似ゼオライト物質の焼成または化学的処理によってメソ気孔が導入された結晶性分子篩物質。
【請求項8】
BET面積が450〜1000m2/gであり、マイクロ気孔体積が0.03〜0.15mL/gであり、かつメソ気孔体積が0.10〜1.0mL/gである請求項7に記載の結晶性分子篩物質。
【請求項9】
剥離処理、ピラリング、塩基水溶液処理、イオン交換、脱アルミニウム化、金属担持または有機官能化から選ばれる後処理反応を用いた請求項1または2に記載のゼオライトまたは類似ゼオライト物質の活性化物または改質化物。
【請求項10】
A)有機界面活性剤をシリカまたはアルミナから選ばれる他のゲル前駆体と共に重合して有機−無機複合ゲルを形成すること;
B)有機ゲル領域によって安定化されたナノメートルサイズの無機ゲル領域を結晶化プロセスによりゼオライトに変換すること;及び
C)前記Bステップで得られた物質から有機ゲル領域を選択的に取り除くことを含む結晶性分子篩物質の製造方法。
【請求項11】
前記有機界面活性剤が下記の化学式[1]〜[3]のうちから選ばれる請求項10に記載の方法:
【化1】
(ここで、Xは、ハロゲン(Cl、Br、I)またはヒドロキシド(OH)基であり;
C1は、C8−22の置換または無置換のアルキル基であり;
C2は、C3−6の置換または無置換のアルキル基であり;
C3は、C1−8の置換または無置換のアルキル基またはアルケニル基であるか、または周期律表上の炭素以外の他の原子で置換された様々な分子構造であってもよく;
アンモニウム官能基は、2以上に拡張されてもよく、様々な構造の置換された物質に拡張されてもよい。)。
【請求項12】
化学式[1]〜[3]の化合物から選択される有機界面活性剤を用いて製造された多重板状構造または単一板状構造の骨格を有するゼオライトまたは類似ゼオライト物質であって、前記骨格が少なくとも1個の軸に沿って10個以下の単一単位結晶格子のつながりで形成されているゼオライトまたは類似ゼオライト物質:
【化2】
(ここで、Xは、ハロゲン(Cl、Br、I)またはヒドロキシド(OH)基であり;
C1は、C8−22の置換または無置換のアルキル基であり;
C2は、C3−6の置換または無置換のアルキル基であり;
C3は、C1−8の置換または無置換のアルキル基またはアルケニル基であるか、または周期律表上の炭素以外の他の原子で置換された様々な分子構造であってもよく;
アンモニウム官能基は、2以上に拡張されてもよく、様々な構造の置換された物質に拡張されてもよい。)。
【請求項13】
剥離処理、ピラリング、塩基水溶液処理、イオン交換、脱アルミニウム化、金属担持または有機官能化から選ばれる後処理反応を用いた請求項10または11の方法により製造されたゼオライトまたは類似ゼオライト物質の活性化物または改質化物。
【請求項14】
前記Aステップにおいて、有機−無機複合ゲルにさらに他の界面活性剤、高分子、無機塩または添加剤を添加して気孔構造を調節する請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記結晶化プロセスが熱水合成法、マイクロ波加熱または乾式−ゲル合成法を用いる請求項10に記載の方法。
【請求項16】
請求項1または2に記載のゼオライトまたは類似ゼオライト物質を用いて炭化水素やその置換形態を改質する触媒プロセス。
【請求項17】
前記炭化水素が気相、液相、固相、またはその混合相である請求項16に記載の触媒プロセス。
【請求項1】
少なくとも1つの軸に沿って単一単位結晶格子厚さに相当する骨格を有する、規則的に並んだ多重板状構造または不規則的に並んだ単一板状構造を含むゼオライトまたは類似ゼオライト物質。
【請求項2】
多重板状構造または単一板状構造の骨格を有するゼオライトまたは類似ゼオライト物質であって、前記骨格が少なくとも1つの軸に沿って10個以下の単一単位結晶格子の連続で形成されているゼオライトまたは類似ゼオライト物質。
【請求項3】
前記骨格がMFI骨格である請求項1または2に記載のゼオライト。
【請求項4】
前記骨格がMTW骨格である請求項1または2に記載のゼオライト。
【請求項5】
前記骨格がAIPO(アルミノホスフェート)骨格または他の骨格である請求項1または2に記載の類似ゼオライト物質。
【請求項6】
前記ゼオライトがアルミノシリケート、純粋なシリケートまたはチタノシリケートの化学的組成を有する請求項1または2に記載のゼオライト。
【請求項7】
請求項1または2によるゼオライトまたは類似ゼオライト物質の焼成または化学的処理によってメソ気孔が導入された結晶性分子篩物質。
【請求項8】
BET面積が450〜1000m2/gであり、マイクロ気孔体積が0.03〜0.15mL/gであり、かつメソ気孔体積が0.10〜1.0mL/gである請求項7に記載の結晶性分子篩物質。
【請求項9】
剥離処理、ピラリング、塩基水溶液処理、イオン交換、脱アルミニウム化、金属担持または有機官能化から選ばれる後処理反応を用いた請求項1または2に記載のゼオライトまたは類似ゼオライト物質の活性化物または改質化物。
【請求項10】
A)有機界面活性剤をシリカまたはアルミナから選ばれる他のゲル前駆体と共に重合して有機−無機複合ゲルを形成すること;
B)有機ゲル領域によって安定化されたナノメートルサイズの無機ゲル領域を結晶化プロセスによりゼオライトに変換すること;及び
C)前記Bステップで得られた物質から有機ゲル領域を選択的に取り除くことを含む結晶性分子篩物質の製造方法。
【請求項11】
前記有機界面活性剤が下記の化学式[1]〜[3]のうちから選ばれる請求項10に記載の方法:
【化1】
(ここで、Xは、ハロゲン(Cl、Br、I)またはヒドロキシド(OH)基であり;
C1は、C8−22の置換または無置換のアルキル基であり;
C2は、C3−6の置換または無置換のアルキル基であり;
C3は、C1−8の置換または無置換のアルキル基またはアルケニル基であるか、または周期律表上の炭素以外の他の原子で置換された様々な分子構造であってもよく;
アンモニウム官能基は、2以上に拡張されてもよく、様々な構造の置換された物質に拡張されてもよい。)。
【請求項12】
化学式[1]〜[3]の化合物から選択される有機界面活性剤を用いて製造された多重板状構造または単一板状構造の骨格を有するゼオライトまたは類似ゼオライト物質であって、前記骨格が少なくとも1個の軸に沿って10個以下の単一単位結晶格子のつながりで形成されているゼオライトまたは類似ゼオライト物質:
【化2】
(ここで、Xは、ハロゲン(Cl、Br、I)またはヒドロキシド(OH)基であり;
C1は、C8−22の置換または無置換のアルキル基であり;
C2は、C3−6の置換または無置換のアルキル基であり;
C3は、C1−8の置換または無置換のアルキル基またはアルケニル基であるか、または周期律表上の炭素以外の他の原子で置換された様々な分子構造であってもよく;
アンモニウム官能基は、2以上に拡張されてもよく、様々な構造の置換された物質に拡張されてもよい。)。
【請求項13】
剥離処理、ピラリング、塩基水溶液処理、イオン交換、脱アルミニウム化、金属担持または有機官能化から選ばれる後処理反応を用いた請求項10または11の方法により製造されたゼオライトまたは類似ゼオライト物質の活性化物または改質化物。
【請求項14】
前記Aステップにおいて、有機−無機複合ゲルにさらに他の界面活性剤、高分子、無機塩または添加剤を添加して気孔構造を調節する請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記結晶化プロセスが熱水合成法、マイクロ波加熱または乾式−ゲル合成法を用いる請求項10に記載の方法。
【請求項16】
請求項1または2に記載のゼオライトまたは類似ゼオライト物質を用いて炭化水素やその置換形態を改質する触媒プロセス。
【請求項17】
前記炭化水素が気相、液相、固相、またはその混合相である請求項16に記載の触媒プロセス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図11】
【図12】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2012−530680(P2012−530680A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517373(P2012−517373)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【国際出願番号】PCT/KR2010/003759
【国際公開番号】WO2010/150996
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(502318478)コリア アドバンスド インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジィ (27)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【国際出願番号】PCT/KR2010/003759
【国際公開番号】WO2010/150996
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(502318478)コリア アドバンスド インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジィ (27)
【Fターム(参考)】
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