説明

単子葉蟻散布植物の育成方法およびこの方法に用いる単子葉蟻散布植物育成用雑草防除マット

【課題】競合雑草や蟻が出現し得るエリアであっても、単子葉蟻散布植物の種子からの良好かつ容易な育成を実現することのできる単子葉蟻散布植物の育成方法およびこの方法に用いる単子葉蟻散布植物育成用雑草防除マットを提供すること。
【解決手段】地面Gに単子葉蟻散布植物の種子1aを配置する単子葉蟻散布植物の育成方法であって、単子葉蟻散布植物の通芽を許容する不織布3によって種子1aを上方から覆った状態とすることにより、不織布3に対する単子葉蟻散布植物よりも葉幅の平均値の大きい植物の通芽と、蟻による種子1aの移動とを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、ムカデシバ等の単子葉蟻散布植物の育成に用いられる単子葉蟻散布植物の育成方法およびこの方法に用いる単子葉蟻散布植物育成用雑草防除マットに関する。
【背景技術】
【0002】
単子葉蟻散布植物であるムカデシバ(イネ科ムカデシバ属)は、比較的草丈が低いため、草刈メンテナンスの実施回数削減や不要化が望まれる水田畦畔や法面といった場所の省力管理用グランドカバープランツとして多く利用されるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−261124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ムカデシバは、種子からの生育速度が遅く、種子を用いて緑化を行おうとした場合に、生育の早い競合雑草が先に繁茂してしまうことがあり、こうなると、競合雑草に被圧されるため、ムカデシバの健全な生育は望めない。
【0005】
また、ムカデシバは蟻散布植物であり、種子表面に分泌するエライオソームにより、蟻を誘引して種子を運搬させてその生息域を広げようとする特性を有する。従って、播種後、付近に蟻が存在すると、蟻によって種子が持ち去られてしまうので、特に蟻の多いエリアでは人為的に所定の場所へ密集させてムカデシバを種子から育成するのが困難である。
【0006】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、競合雑草や蟻が出現し得るエリアであっても、単子葉蟻散布植物の種子からの良好かつ容易な育成を実現することのできる単子葉蟻散布植物の育成方法およびこの方法に用いる単子葉蟻散布植物育成用雑草防除マットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る単子葉蟻散布植物の育成方法は、地面に単子葉蟻散布植物の種子を配置する単子葉蟻散布植物の育成方法であって、前記単子葉蟻散布植物の通芽を許容する不織布によって前記種子を上方から覆った状態とすることにより、前記不織布に対する前記単子葉蟻散布植物よりも葉幅の平均値の大きい植物の通芽と、蟻による前記種子の移動とを抑制する(請求項1)。
【0008】
上記育成方法が、片面に少なくとも前記種子が装着された前記不織布を、該片面が地面側を向くように地面に敷設して行われるものであってもよい(請求項2)。
【0009】
上記育成方法において、前記不織布が有する繊維間空隙幅の平均が1〜5mmであることが望ましい(請求項3)。
【0010】
上記育成方法において、前記不織布の厚みが3〜20mmであり目付量が20〜100g/mであることが望ましい(請求項4)。
【0011】
上記育成方法において、前記不織布において地面に敷設したときに上側となる面に、補強用のネットが設けられていてもよい(請求項5)。
【0012】
上記育成方法において、前記不織布に、殺虫成分または虫忌避成分を付与してあってもよい(請求項6)。
【0013】
一方、上記目的を達成するために、本発明に係る単子葉蟻散布植物育成用雑草防除マットは、請求項1〜6の何れか一項に記載の単子葉蟻散布植物の育成方法に用いられ、請求項1〜6の何れか一項に記載の不織布を備えた(請求項7)。
【発明の効果】
【0014】
本願発明では、競合雑草や蟻が出現し得るエリアであっても、単子葉蟻散布植物の種子からの良好かつ容易な育成を実現することのできる単子葉蟻散布植物の育成方法およびこの方法に用いる単子葉蟻散布植物育成用雑草防除マットが得られる。
【0015】
すなわち、本願の各請求項に係る発明の育成方法では、単子葉蟻散布植物の競合雑草であって葉幅(子葉及び本葉の葉幅)の平均値が単子葉蟻散布植物よりも大きい植物(主に双子葉植物)が通過不能な不織布を用いる。また、単子葉蟻散布植物の種子のエライオソームに蟻が誘引された場合でも、不織布により蟻が種子と接触することを物理的に防ぐことができる。従って、競合雑草や蟻が出現し得るエリアにおいても単子葉蟻散布植物を健全に発芽生育させることができ、単子葉蟻散布植物の単一群落を容易に形成することができる。そして、単子葉蟻散布植物は密生するため、初期に優勢な単子葉蟻散布植物群落が一度形成されればその後に競合雑草が繁茂する可能性は極めて低くなり、また、単子葉蟻散布植物は比較的草丈が低い種であるため、草刈などの維持管理手間の削減にもつながる。
【0016】
請求項2に係る発明の育成方法では、地面への不織布(単子葉蟻散布植物育成用雑草防除マット)の敷設とは別に単子葉蟻散布植物の種子を配置する作業を行う必要がなく、作業の簡易化を図ることができる。
【0017】
請求項3、4に係る発明の育成方法では、個体差は若干有るものの発芽直後の葉幅(子葉の葉幅)は2mm以下であり本葉の葉幅も細い(1〜5mm程度)ムカデシバのような単子葉蟻散布植物を集中的に育成しつつ、この育成を阻害する競合雑草の生育や蟻の侵入を効果的に抑制することができる。
【0018】
請求項5に係る発明の育成方法では、補強用のネットにより不織布(単子葉蟻散布植物育成用雑草防除マット)の耐久性の向上を図ることができる。
【0019】
請求項6に係る発明の育成方法では、蟻による単子葉蟻散布植物の種子の持ち去りを一層効果的に予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係る単子葉蟻散布植物の育成方法に用いる単子葉蟻散布植物育成用雑草防除マットの構成を概略的に示す説明図である。
【図2】(A)及び(B)は、前記単子葉蟻散布植物の育成方法を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら以下に説明する。
【0022】
本実施の形態に係る単子葉蟻散布植物の育成方法(以下、「本育成方法」と略称する)では、単子葉蟻散布植物(本例ではムカデシバ)を種子から育成するために、図1に示す単子葉蟻散布植物育成用雑草防除マット(以下、「防除マット」と略称する)2を用いる。
【0023】
防除マット2は、一方の面(片面)3aに少なくとも単子葉蟻散布植物の種子1aが装着される不織布3と、この不織布3の他方の面3bに設けられる補強用のネット(樹脂製ネット)4とを備えたものである。本例では、不織布3の一方の面3aに、種子1aの他に肥料や各種土壌改良材を装着する。本例ではまた、不織布3の一方の面3aに対する種子1aや肥料等の装着と、他方の面3bに対するネット4の一体化(装着)とを、それぞれ水溶性接着剤(例えばポリビニルアルコール)を用いた接着により行う。
【0024】
そして、本育成方法では、図2(A)に示すように、不織布3の一方の面3a(種子1a装着面)が地面(下)側を向き、他方の面3b(ネット4装着面)が天(上)側を向くように、防除マット2(不織布3)を地面Gに敷設する。このとき、例えばアンカーピン等の部材を用いる適宜の手法により、防除マット2を地面Gに密着させつつ固定する。
【0025】
ここで、防除マット2の上記敷設により、種子1aは不織布3によって上方から覆われた状態となるが、種子1aが発芽・生育しても、その上方に存在する不織布3を通芽(通過)することが許容されなければ、種子1a(単子葉蟻散布植物)の育成を十分に図れない。また、不織布3に対する単子葉蟻散布植物(種子1a)の通芽が許容される場合でも、この単子葉蟻散布植物の競合雑草による不織布3の通芽も同じく許容されたり、蟻による種子1aの持ち去りが許容されたりすると、種子1aの良好な育成を確実に図ることが困難となる。
【0026】
そこで、本育成方法に用いる防除マット2では、不織布3の厚みを3〜20mmとし、目付量を20〜100g/mとして、不織布3が有する繊維間空隙幅の平均が1〜5mmとなるようにするのが好ましく、本例では、目付量45g/mで厚みを6mmとした不織布3を用いる。
【0027】
すなわち、不織布3に3〜20mmの厚みを持たせつつも目付量を20〜100g/mとし、不織布3が有する繊維間空隙幅の平均が1〜5mmとなるようにすることにより、個体差は若干有るものの発芽直後の葉幅(子葉の葉幅)は2mm以下であり本葉の葉幅も細い(1〜5mm程度)単子葉蟻散布植物は不織布3を通過し、単子葉蟻散布植物の競合雑草であって葉幅(子葉及び本葉の葉幅)の平均値が単子葉蟻散布植物よりも大きい植物(主に双子葉植物であり、以下、「双子葉植物等」という)は不織布3を通過せず、その結果、視認可能な植物(不織布3上にまで延びる植物)の殆どを単子葉蟻散布植物とすることができる。
【0028】
尚、図2(A)に示すように、防除マット2の下側に、双子葉植物等の種子5aが混入していた場合でも、双子葉植物等が不織布3を通芽することは不可能であるため、種子5aが発芽したとしても不織布3の下側にしか幼苗5bの生育スペースは形成されず(図2(B)参照)、故に単子葉蟻散布植物が双子葉植物等によって被圧されることはなく、種子5aが発芽して不織布3を持ち上げたとしても、不織布3や単子葉蟻散布植物による被覆効果により以後の生育は抑制される。
【0029】
また、周囲からの飛来種子が地面Gに着地することは不織布3によって防止されると共に、不織布3の表面に飛来種子が留まっても、不織布3は目付量が比較的低く(20〜100g/m)厚手(厚みが3〜20mm)であるために表面は乾燥し易く、従って、飛来種子は、その発芽生育が抑制され、発芽したとしても乾燥によってやがて枯死することになる。
【0030】
更には、単子葉蟻散布植物の種子1aのエライオソームに蟻が誘引された場合でも、厚手で繊維間空隙幅の小さい不織布3が種子1aと共に地面Gに密着することにより、蟻が種子1aと接触することを物理的に防ぐことができ、蟻が種子1aに到達するのは極めて困難となり、仮に蟻が種子1aにまで到達することができたとしても、種子1aを咥えて運ぶには不織布3の繊維間空隙幅は小さ過ぎるため、蟻による種子1aの持ち運びを効果的に抑制することが可能となる。また、不織布3が地面Gに密着することにより、地面Gの侵食が防止されることにもなる。
【0031】
不織布3の厚みが3mm未満であると、地面Gから水分が蒸発し易く、地面Gは乾燥状態になり易くなる。また、不織布3の厚みが20mmを超えると、単子葉蟻散布植物の通芽率が低下し、不織布3が単子葉蟻散布植物の生育をも抑制してしまい、降水を地山(地面G)に通し難くもなり、コスト面でも不利となる。しかし、厚みが3〜20mmである本実施形態の不織布3では、地面Gからの水分の蒸発を抑制するとともに、降水が地山にまで通り易い構造となっているので、天候の影響を受け難く、単子葉蟻散布植物の生育に必要な水分条件が十分に満たされ、ひいては不織布3が保温性を有することも相まって単子葉蟻散布植物の生育環境を高いレベルで整えることができる。特に種子1aが配置される不織布3と地面Gとの境界部分では、不織布3によって保温されるとともに湿潤な状態となることから、種子1aの発芽率は向上し、種子1aの発芽までの期間は短縮する。
【0032】
また、単子葉蟻散布植物より葉幅の大きい植物の通芽阻止と蟻による種子1aの持ち運び阻止とを図る上で、不織布3の繊維間空隙の大きさは重要な要素であり、不織布3の繊維間空隙の平均が1mmよりも小さいと、単子葉蟻散布植物の通芽率を極端に低下させてしまうため不適であり、5mmを超えると、単子葉蟻散布植物の競合雑草の通芽率を高めてしまうと共に、蟻が種子1aを運び出し易くなってしまう。
【0033】
そして、不織布3の厚みが3〜20mm、目付量が20〜100g/mであり、不織布3の繊維間空隙の平均が1〜5mmであれば、単子葉蟻散布植物の初葉(子葉)及び本葉の葉幅は小さいため、不織布3の空隙を縫うように通過して不織布3の裏面から表面にまで到達可能となる。
【0034】
この際、図2(B)に示すように、単子葉蟻散布植物の匍匐茎1bの伸長パターンは、防除マット2の上面を這うように伸長する上方伸長パターンと、防除マット2の下側(地面G上)を這うように伸長する下方伸長パターンとの二パターンに大きく分けることができる。そして、何れのパターンでも当初発芽した箇所の根1cが地中に伸長し、また、不織布3は根1cの通過を可能とする目付量及び繊維間空隙を有するため、根1cを通じて地面から水分が各匍匐茎1bに供給されることになり、単子葉蟻散布植物の生育に支障を来すことは無い。
【0035】
ここで、上方伸長パターンをとる匍匐茎1bについては、下方伸長パターンをとる匍匐茎1bと比較して、匍匐茎1bの伸長が早いことが種々の試験により確認されている。この現象のメカニズムについて詳細は不明であるが、不織布3表面が地面Gよりも高温となるため植物に適度なストレスが掛かり生存本能から遠くの生育好適地を目指すべく伸長することと、不織布3は根1cの伸長に対して幾分の抵抗となるため植物は無理に根1cを伸ばそうとはせずにその成長エネルギーを匍匐茎1bの伸長に利用することとが、上記現象をもたらす原因として考えられる。そして、本育成方法によれば、この現象を利用することによって、より早期に緑化対象地を単子葉蟻散布植物で被覆することができる。
【0036】
上記の構成を有する防除マット2を用いた本育成方法によれば、単子葉蟻散布植物を健全に発芽生育させ、その匍匐茎1bの成長も促進されるので、競合雑草や蟻が出現し得るエリアにおいても広範囲にわたって単子葉蟻散布植物の単一群落を容易に形成することができる。そして、単子葉蟻散布植物は密生するため、初期に優勢な単子葉蟻散布植物群落が一度形成されればその後に競合雑草が繁茂する可能性は極めて低くなり、また、単子葉蟻散布植物は比較的草丈が低い種であるため、草刈などの維持管理手間の削減にもつながる。
【0037】
また、本実施形態では、不織布3に対する種子1aの装着とネット4の一体化とを水溶性接着剤を用いて行っているので、防除マット2の運搬時等に種子1aやネット4が不織布3から脱落するのが効果的に防止され、その取扱い利便性は良好となる。また、防除マット2の敷設後、降雨や散水によって防除マット2に水が供給されると、種子1aは不織布3から離脱して地面Gに着地(接地)した状態になる一方、不織布3に対するネット4の拘束力が弱まり、単子葉蟻散布植物が不織布3を通芽する際に不織布3を動かし易くなる。斯かる不織布3からの種子1aの離脱とネット4による不織布3の拘束の緩和ないし解除とは、ともに単子葉蟻散布植物の通芽率の向上に寄与することになる。
【0038】
そして、防除マット2が上記各効果の奏功に適合するように、防除マット2(不織布3及びネット4)の構成素材や製法等を選択・採用すればよい。
【0039】
すなわち、不織布3の構成素材には、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、植物性繊維、リサイクル繊維等の適宜の繊維(フリース)を採用することができ、本例ではポリエステル繊維を用いている。また、フリース(繊維)どうしの結合方法にも種々の方法を採用可能であり、例えばケミカルボンド法では繊維どうしの摩擦力が低くなってしまうため繊維が雨水で分散してしまう可能性があるのに対し、ニードルパンチ法では繊維どうしを強固に絡めることで侵食防止効果を高めることができる、といった観点から、これら二つの製法を比較すればニードルパンチ法の方が望ましい、といった選択が可能である。
【0040】
また、互いに融点の異なる三種以上の繊維を混合して不織布3を形成し、これに熱を加えて例えば最も融点の低い繊維のみを溶融させ、繊維の一部を熱融着させて強度を高めることが望ましい。勿論、加熱温度をより上昇させて不織布3を構成する繊維全ての接点を熱融着させてもよいが、本実施形態では一部の接点のみを融着させ、繊維どうしが絡んでいるだけの部分を故意に形成することにより、単子葉蟻散布植物が通芽する際に繊維間の空隙を押し広げられるようにし、その通芽率を高めている。
【0041】
さらに、不織布3を構成する繊維を暗色系(例えば光沢の無い黒色、グレー、ダークグリーン等)のものとし、不織布3の蓄熱性をより高めることが単子葉蟻散布植物の生育にとって好適である。そして、このように不織布3の蓄熱性を高めた場合、寒冷期において温度は植物の生育に好適な程度まで高くなるものの、所定の目付量と厚みを持つ不織布3には適度な空隙が存在しているため猛暑期でも輻射熱によって単子葉蟻散布植物が枯損するまでには至らず、年間を通して通芽した個体の生育に適した環境となり、また、不織布3の温度が高まると、不織布3によりもたらされる地山側の良好な水分条件と相まって、単子葉蟻散布植物の旺盛な生長が可能になり、匍匐茎1bを四方に展開し、特に上記上方伸長パターンをとる匍匐茎1bの伸長の増進が顕著となる。
【0042】
ネット4の構成素材には、例えば、腐食性素材(綿、絹、麻、ジュート等の植物性繊維、ビスコースレーヨン等の再生繊維など)、耐食性素材(ポリエチレンやポリプロピレン等の合成繊維、強力レーヨン、防腐処理を施した腐食性素材など)、腐食性の繊維と耐食性の繊維とからなる混紡繊維を使用することができる。また、ネット4の目合いは、単子葉蟻散布植物の発芽生育を邪魔しない大きさであればよい。
【0043】
表1に、本実施品である防除マット2と、比較品としての植生シート(ネットと、レーヨンの薄綿と、種子・肥料とを上側からこの順で設けたシート)及びヤシ繊維ネット(ヤシ繊維ネットの下側に種子・肥料を配置したもの)とをそれぞれ用いて、ムカデシバ(他子葉蟻散布植物の一例)の植生を図った試験の結果を示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1から明らかなように、比較品を用いた場合より、本実施品である防除マット2を用いた場合の方が、雑草の生育は効果的に抑えられ、ムカデシバの生育は非常に旺盛となる。
【0046】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0047】
種子1aと共に、ノシバ等の蟻散布植物ではない単子葉植物の種子を不織布3の一方の面3aに装着する(担持させる)ようにしてもよい。
【0048】
上記実施形態では、水溶性接着剤によって種子1aを不織布3に装着しているが、種子1aの装着には、例えば、薄いシート状体(水溶性の紙や極薄の不織布など)と不織布3によって種子1aを挟み込み、シート状体と不織布3とは糊・縫合・ステープル止めなどの適宜手段で一体化させるようにする、不織布3の空隙に種子1aを押し込んで保持させる、予め種子1aを装着したシート状体を不織布3に適宜手段(糊・縫合・ステープル止めなど)により装着する、といった他の装着方法を採用可能である。
【0049】
種子1aを不織布3に装着せず、先に地面Gに対する種子1aの播種及び肥料等の配置(散布等)を行い、その上から不織布3(防除マット2)を敷設するようにしてもよい。また、地面Gが肥沃である場合などには肥料等の装着や配置は省略してもよい。
【0050】
上記実施形態では、不織布3において地面Gに敷設したときに上側となる面にネット4を設けてあるが、これに限らず、例えばネット4を設けなくてもよく、不織布3の敷設後にその上からネット4を敷設するようにしてもよい。また、上記実施形態では、水溶性接着剤によってネット4を不織布3に装着しているが、ネット4の装着には、例えば、縫合、ステープル止め、といった他の装着方法を採用可能である。
【0051】
不織布3に、殺虫成分または虫忌避成分を付与してあってもよい。その付与方法としては、例えば、不織布3を構成する繊維や繊維に塗布する塗料にそれらの成分を混入する、それらの成分を含む液に不織布3を含浸する、その液を不織布3に吹き付ける、といった方法が挙げられる。
【0052】
なお、本実施形態の説明中や説明後に述べた変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0053】
1a (単子葉蟻散布植物の)種子
1b (単子葉蟻散布植物の)匍匐茎
1c (単子葉蟻散布植物の)根
2 防除マット(単子葉蟻散布植物育成用雑草防除マット)
3 不織布
3a 一方の面
3b 他方の面
4 ネット
5a (双子葉植物等の)種子
5b (双子葉植物等の)幼苗
G 地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に単子葉蟻散布植物の種子を配置する単子葉蟻散布植物の育成方法であって、前記単子葉蟻散布植物の通芽を許容する不織布によって前記種子を上方から覆った状態とすることにより、前記不織布に対する前記単子葉蟻散布植物よりも葉幅の平均値の大きい植物の通芽と、蟻による前記種子の移動とを抑制することを特徴とする単子葉蟻散布植物の育成方法。
【請求項2】
片面に少なくとも前記種子が装着された前記不織布を、該片面が地面側を向くように地面に敷設する請求項1に記載の単子葉蟻散布植物の育成方法。
【請求項3】
前記不織布が有する繊維間空隙幅の平均が1〜5mmである請求項1または2に記載の単子葉蟻散布植物の育成方法。
【請求項4】
前記不織布の厚みが3〜20mmであり目付量が20〜100g/mである請求項1〜3の何れか一項に記載の単子葉蟻散布植物の育成方法。
【請求項5】
前記不織布において地面に敷設したときに上側となる面に、補強用のネットが設けられている請求項1〜4の何れか一項に記載の単子葉蟻散布植物の育成方法。
【請求項6】
前記不織布に、殺虫成分または虫忌避成分を付与してある請求項1〜5の何れか一項に記載の単子葉蟻散布植物の育成方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の単子葉蟻散布植物の育成方法に用いられ、請求項1〜6の何れか一項に記載の不織布を備えた単子葉蟻散布植物育成用雑草防除マット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−85536(P2013−85536A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231300(P2011−231300)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000231431)日本植生株式会社 (88)
【出願人】(597165618)株式会社ネクスコ東日本エンジニアリング (18)
【Fターム(参考)】