説明

単層又は複数層を有する濾過材及びその製造方法

単層又は複数層を有する濾過材は、セルロース、ガラス繊維、合成繊維又はこれらの混合物を含む少なくとも単一の層を有し、エポキシド樹脂と硬化剤とからなる接着剤中に浸漬される。硬化剤は、より低い温度以上で架橋を行う第1の硬化剤と、より高い温度以上で架橋を行う第2の硬化剤とを含み、エポキシド樹脂は、温度に応じて段階的に硬化可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造時にも使用時にもフェノール又はホルムアルデヒドを環境中に放出しない含浸濾過材(フィルタ材料)、この濾過材から製造される濾過部材及びこの濾過材の製造方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
自動車分野及び産業応用に使用される濾過材は、通常セルロース(繊維素)及び/又は合成繊維により構成される。主に、燃料、油(オイル)、気体(ガス)、水及びこれらの混合物の濾過に濾過材が用いられる。湿潤状態と乾燥状態での高破裂強度と高剛性とが濾過材に求められる。また、過酷な環境条件とより高い温度に対する耐性が濾過材に要求される。
【0003】
セルロース、ガラス繊維、合成繊維又はこれらの混合物を含む多孔性織物が用いられる。適切な繊維の種類を選択する条件は、主に、製造する濾過材の基礎材料の多孔性、空気透過率及び密度に依存するので、選択される種類の繊維は、しばしば強度が不十分の場合がある。
【0004】
しかしながら、特に、湿潤状態で必要な強度と剛性とを達成し、高温時でも特性を劣化する環境に対して耐性を有する濾過材を生成するために、濾過材は、接着剤で処理される。フェノールレゾール樹脂又はフェノールノヴォラック樹脂は、長年に渡り適切な接着剤として実証され、後者は、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミン又はこれ以外のホルムアルデヒドドナー(例えば、レゾール、メチロール基含有ポリマー)に関連付けて実証されてきた。接着剤の一例として、フェノール樹脂系接着剤は、下記特許文献1中に記載される。
【0005】
セルロース及び/又は合成繊維を含む多孔性織物は、樹脂系接着剤溶液中に浸漬され、その後乾燥される。適切な溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びアセトンを含む低級アルコール及びケトンであるが、水でもよい。
【0006】
乾燥の際に、乾燥温度レベルと乾燥時間間隔により、樹脂系接着剤の部分的硬化が制御される。設定される硬化程度により、濾過材の所定の初期強度が達成されるが、濾過材は、更に加工する必要がある。特に重要な点は、縦長方向に細溝を濾過材に形成する際の初期強度である。細溝を維持するように十分な剛性を濾過材に付与しなければならないが、一方では、部分硬化後の加工時(例えば、折り曲げ加工時)に壊れる程濾過材が脆弱であってはならない。しかしながら、硬化反応を容易に制御することができず、樹脂は、過硬化することがある。従って、濾過材は、脆弱化する。濾過材を製造するとき、濾過材は、全体的に押圧成形(プレス成形)され、蛇腹状に折り曲げ加工される。過硬化の濾過材は脆く、加工工程中に亀裂又は損傷が発生する。
【0007】
押圧成形(プレス成形)及び折り曲げ加工工程後、蛇腹状の濾過材は、硬化用加熱炉内に配置され、樹脂系接着剤は、完全に硬化される。これにより、濾過材の応用に必須となる強度と剛性が、乾燥状態でも湿潤状態でも達成され、濾過材は、高温での特性を劣化する環境に対しても耐性を有する。樹脂系接着剤溶液中に多孔性織物を浸漬した後の乾燥時にも、蛇腹状の濾過材の製造後の樹脂系接着剤の硬化時にも、健康に有害な著しい量のフェノールやホルムアルデヒドが環境に放出されない。フェノールとホルムアルデヒドの一部分は、汚染物質として樹脂自身中に含有される。しかし、ホルムアルデヒドの大部分は、架橋反応時に反応生成物として放出される。
【0008】
従って、フェノール及びホルムアルデヒドのない接着剤でフェノール樹脂を置換する努力が過去になされた。フェノール樹脂の代替物として、水性合成樹脂分散系接着剤、一般にアクリレート樹脂が益々用いられる。この分散系接着剤は、本来遊離フェノールを含有せず、結合ホルムアルデヒド又は遊離ホルムアルデヒドを含有しない。しかしながら、特に、湿潤状態に必要な強度と剛性とを達成すると同時に、特性を劣化する環境(例えば、高温エンジンオイル)に対して耐性を付与するために、接着剤を充分に硬化する必要がある。合成樹脂ポリマーのマトリックス中にある反応基により、接着剤は、通常熱的に硬化される。熱架橋を伴う有力な反応基は、N−メチロールアクリルアミドであるが、これも、架橋反応時にホルムアルデヒドを分離する。合成樹脂分散系接着剤を濾過材に使用する際の他の欠点は、硬化時又は乾燥時に既にフィルムを形成する接着剤の特性にある。フィルムは、2つ又はそれ以上の繊維間に形成される間隙を充填して透孔の孔径を減少するため、濾過作用を行う繊維素及び繊維により主として構成される濾過媒体(濾材)の透過率を低下するいわゆる帆布を構成する。濾過材中の接着剤の割合が増加するほど、透過率が低下する欠点は、より顕著になる。逆に、明らかに分子の鎖長の短いフェノール樹脂は、硬化時又は乾燥時にフィルムを形成しないので、濾過すべき濾過媒体の透過率を低減しない。フェノール樹脂を含浸する濾過媒体に比べて、この種の合成樹脂分散系接着剤を「含浸する」濾過媒体の化学的安定性と機械的安定性は、劣るので、燃料及びオイルでの応用には殆ど不十分である。
【0009】
フェノール及びホルムアルデヒドを周囲に全く排出しない濾過材を製造する更なる可能性は、エポキシド樹脂(エポキシ樹脂)を使用することにある。エポキシド樹脂も同様に、遊離フェノール及びホルムアルデヒドを含有しない製造条件もある。種々の架橋反応で、ホルムアルデヒドが分離されず、周囲に排出されない。しかしながら、エポキシド樹脂系接着剤は、濾過媒体への含浸(飽和)と後続の乾燥(硬化)の際に、フェノール樹脂系接着剤に比べて、顕著な欠点がある。エポキシド樹脂は、硬化に常に硬化剤を必要とする。硬化剤には、実質的に2つの型が存在する。冷却架橋用硬化剤と加熱架橋用硬化剤である。冷却時のみ架橋する硬化剤を用いるエポキシド樹脂での含浸は、非常に迅速に反応し、濾過材は、乾燥後既に完全に硬化し又は数時間以内に室温で硬化する場合がある。これにより、濾過材は、脆弱化し、後続の加工工程に非常に困難な条件が必要になる。従って、濾過材の押圧成形(プレス成形)と折り曲げ加工は、非常に困難になる。
【0010】
加熱時にのみ架橋する硬化剤を用いるエポキシド樹脂含浸は、フェノール樹脂系接着剤を用いる場合よりも明らかに遅い速度で反応が発生する。後続の加工工程に必要な硬化程度を達成するために、フェノール樹脂含浸(飽和)濾過材よりも明らかに長い時間、エポキシド樹脂含浸濾過媒体を乾燥機中に保持しなければならない。従って、エポキシド樹脂含浸濾過材は、従来では非常にまれにしか採用されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許公開第94165A2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、フェノール及びホルムアルデヒドを決して周囲に排出せず、特に、高温時でも特性を劣化する環境に対する耐性と、乾燥状態及び湿潤状態で高強度及び高剛性とを有しかつ後続の加工工程を良好に実施できる優れた濾過特性を有する特に自動車用及び産業用フィルタの濾過材を提供することにある。また、改良された濾過部材及び前記濾過材を容易に製造できる製造方法を提供すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、本発明では、請求項1、10及び15の特徴により達成される。本発明のより有用な実施の形態は、他の従属請求項に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による濾過材は、多孔性の繊維面構造体と、エポキシド樹脂(エポキシ樹脂)含浸形式の接着剤とを有し、エポキシド樹脂含浸は、冷却架橋用硬化剤と加熱架橋用硬化剤との組み合わせにより、段階的に硬化することができる。本明細書では、用語「冷却架橋」は、所定の温度(比較的低くありえるが、いずれにしても、加熱架橋用硬化剤よりも、より低い温度)以上で初めて硬化剤が架橋を開始することを意味する。例えば、0℃以下、特に、約0℃から約100℃で冷却架橋用硬化剤の架橋が開始する。「加熱架橋」用硬化剤の架橋は、より高い温度、特に130℃以上で開始される。このより高い温度未満では、加熱架橋用硬化剤は、架橋を行わない。フェノール及びホルムアルデヒドのない物質を使用しかつ架橋反応時にホルムアルデヒドを分離しない硬化剤を使用するので、本発明の濾過材は、決してフェノール又はホルムアルデヒドを周囲に排出しない。
【0015】
ビスフェノールA及びFの列に該当する2つ以上のエポキシド基及び/又はビスフェノールA及びFのグリシジルエーテルを有するエポキシド樹脂並びに2以上のエポキシド基を有する脂肪族エポキシド樹脂を含浸することが有用である。これは、所望割合の低級アルコール及びケトン(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びアセトン)中で可溶性である。少なくとも2つの異なる種類の硬化剤が、エポキシド樹脂に添加される。
【0016】
第1の硬化剤の種類は、冷却架橋用硬化剤である。その添加量は、エポキシド樹脂に対する化学量論比30〜80%、特に50%が好ましい。本発明に使用する濾過媒体は、乾燥後の加工時に十分な強度を有する程度に硬化するものが好ましいが、乾燥後の加工時に破壊せずに押圧成形(プレス成形)でき、蛇腹状に折り曲げ加工でき又は材料織物に対して横断方向の波形を形成するのに十分な可塑性を有する程度に硬化するように硬化剤の量が選択される。
【0017】
第2の硬化剤の種類は、加熱架橋用硬化剤である。第2の硬化剤の添加量では、エポキシド樹脂に対する化学量論比30〜80%、特に50%が好ましい。第2の硬化剤は、130℃、特に150℃以上で反応し、蛇腹状の折り曲げ加工が既に完全に完了した後、硬化用加熱炉中に配置する際に初めて効果を発揮することが好ましい。
【0018】
第1の硬化剤の種類は、脂肪族硬化剤(例えば、ポリアミドアミン、ポリアミド)、変性脂肪族硬化剤、脂環式アミン硬化剤、芳香族アミン、ケチミン及び酸無水物であることが好ましい。
【0019】
第2の硬化剤の種類は、窒素含有硬化剤であり、例えば、ジシアンジアミド、グアナミン、グアニジン、シアナミン、トリアジン、トリアゾール、シアナミド又はイミダゾールであることが好ましい。特に、ジシアンジアミド及びジシアンジアミドと、例えばイミダゾール等の促進剤との混合物であることが好ましい。
【0020】
第2の硬化剤によりほぼ達成される最終的な硬化により、濾過媒体に対して、湿潤状態及び乾燥状態に必要な強度と剛性が与えられ、特性を劣化する環境に対する良好な耐性も与えられる。濾過材に作用する特性を劣化する環境は、例えば約150℃の高温エンジンオイル又は約80℃の高温燃料である。これらの液体中の添加剤により、劣化作用が更に強化される。フェノール樹脂で含浸した比較例の濾過材と、それ以外は同一の本発明による濾過材とを比較すると、高温エンジンオイル、高温空気、アドブルー、ディーゼル及びバイオディーゼル等の燃料並びにその他の濾過すべき液状材料及び気体材料に対して、本発明の濾過材は、フェノール樹脂含浸濾過材より高い耐性を備える点で顕著に優れている。2つの材料に関する他の物理的値及びフィルタ技術的な値を比較することができる(表1)。
【0021】
例えば、湿式法、空気流(エアレイ)法、メルトブロー法又はスパンボンド法により本発明による濾過材の多孔性の繊維面構造体を製造できる。また、開孔発泡体からも製造できる。
【0022】
湿式法は、通常の製紙法である。湿式法では、短繊維と水とから作られる懸濁液は、製紙の際に通常用いられる補助剤を更に配合することができる。濾過機内に懸濁液を収容して、水分が除去される。その後、生成される多孔性繊維面構造体を乾燥し、ロール上に巻き上げる。
【0023】
空気流(エアレイ)法では、短繊維を空気流中で旋回させ、同様に濾過器上に配置する。次に、多孔性繊維面構造体をニードル(針)で突き刺し、噴射水で突き刺し、加熱する等の方法により硬化して、ロール上に巻き上げる。
【0024】
スパンボンド法では、押出機中で溶解させた熱可塑性ポリマーを紡糸ノズルから押し出す。紡糸ノズルの毛細管中に形成される無限長繊維は、ノズルから押し出された後に延伸され、排出路中で旋回され、ベルトコンベヤー上に織物状に配置される。続いて、押型機を用いて加圧下高温で濾過織物を硬化させる。
【0025】
メルトブロー法では、押出機中で溶解された熱可塑性ポリマーを紡糸ノズルを通じて押し出す。紡糸ノズルの毛細管中で形成される無限長繊維は、高温空気と共にノズルから押し出された後に延伸され、ベルトコンベヤー上に織物状に配置される。
【0026】
メルトブロー法及びスパンボンド法用のポリマーは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、硫化ポリフェニレン、ポリカーボネート又はこれらのコポリマーもしくは混合物であることが好ましい。
【0027】
湿式法及び空気流(エアレイ)法に適する繊維は、例えば、セルロース、再生セルロース、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維、多成分繊維、ガラス繊維、炭素繊維等である。
【0028】
本発明の濾過材は、通常、用途に応じて、DIN EN ISO 536による面積当たりの質量が10〜400g、DIN EN ISO9237による空気透過率が2〜10000リットル/m2s、DIN EN ISO534による厚みが0.3〜5.0mmである。
【0029】
本発明の濾過材は、1層でも複数層でもよいが、本発明では、少なくとも単一の層がエポキシド樹脂含浸により処理される。
【0030】
例えば、浸漬含浸、片面又は両面のローラ塗布又は噴霧塗布等通常行われる全ての方法が含浸法の考慮の対象になる。
【実施例1】
【0031】
面積当たり質量100g/m2、空気透過率860リットル/m2sの紙を、押圧成形濾過製紙機械で製造し、実験室フーラード上で含浸させ、対流式乾燥加熱炉内で15分間80℃で乾燥させた。下記混合物を用いて含浸を行った。
エポキシド樹脂:10g、ハンツマン(Huntsman)社製、アラルディット(Araldit) GY250
硬化剤1:2g、S.I.Q社製、SIQ アミン(Amin) 2030
硬化剤2:2g、アルツヒェム(Alzchem)社製、ジシアンジアミド
促進剤:0.5g、BASF社製、2−メチルイミダゾール
メタノール:100g
【0032】
含浸剤の含有量は、含浸した濾過媒体の面積当たりの質量に対して19重量%であった。その後、濾過媒体の破裂強度、空気透過率、面積当たりの質量、曲げ剛性(湿潤時、縦)、曲げ剛性(乾燥時、縦)、再乾燥特性、高温オイルに対する耐性、後の測定特性、フェノール放出量及びホルムアルデヒド放出量を測定した。測定結果を表1に示す。
【比較例】
【0033】
実施例1と同一条件で、下記調剤により標準的なフェノール樹脂を実施例1の紙に含浸させた。
ディニア(Dynea)社製フェノール樹脂3195:10g
メタノール:100g
【0034】
含浸剤の含有量は、含浸した濾過媒体の面積当たりの質量に対して19重量%であった。その後、濾過媒体の破裂強度、空気透過率、面積当たりの質量、曲げ剛性(湿潤、縦)、曲げ剛性(乾燥、縦)、再乾燥特性、高温オイルに対する耐性、後の測定特性、フェノール放出量及びホルムアルデヒド放出量を測定した。測定結果を表1に示す。
【0035】
空気透過率、DIN EN ISO9237による
破裂強度、ミューレン(Mullen)及びDIN EN ISO2758による
面積当たりの質量、DIN EN ISO536による
曲げ剛性(湿潤時、乾燥時)、シュレンカー(Schlenker)及びDIN53864による
【0036】
高温エンジンオイルに対する耐性
高温エンジンオイルに対する耐性を測定するために、10分間165℃で、対流式加熱炉中で濾過材を硬化させた。その後、硬化させた平坦な濾過材をシェル・へリックス・ウルトラ(Shell Helix Ultra)5W30のエンジンオイル中150℃で3週間貯蔵し、続いて、更に24時間、DIN EN ISO 20187による標準気候中で温度や湿度を調節した。最後に、DIN EN ISO 2758による処理した濾過材の破裂強度を測定し、未処理の濾過材の破裂強度と比較した。
【0037】
後特性測定
対流式加熱炉中に検査すべき試料を24時間160℃で貯蔵した。DIN EN ISO 20187による温度及び湿度を調節した後、DIN EN ISO 2758による破裂強度を測定した。
【0038】
再乾燥特性
まず、DIN EN ISO 20187による温度及び湿度を調節した試料のDIN EN ISO 9237による空気透過率を測定した。その後、10分間蒸留水中に試料を浸漬し、続いて、2つの吸取紙間に挟持して、5分間水分を吸収した。その後、再びDIN EN ISO9237による空気透過率を測定したが、この際、この試料は、元の空気透過率の値が再度得られるまで、スイッチを入れた機器中に配置した。この期間中、差圧を200Paに保持した。機器中に試料を入れた直後と30秒後毎に空気透過率の値を読み取った。
【0039】
ホルムアルデヒド含有量の測定
調査すべき材料約0.3gを加熱炉内に配置した。ガス採取器内4分間、180℃で蒸留水中の放出物を採取した。続いて、ホルムアルデヒドと4−アミノ−3−ヒドラジノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾールとの反応(ドイツ技術者協会(VDI)3862シート4)を利用して比色分析でホルムアルデヒドを測定した。
【0040】
フェノール含有量の測定
加熱炉内に調査すべき材料約0.3gを投入した。4分間、180℃でガス採取器で希釈苛性ソーダ中の放出物を採取した。続いて、フェノールとp−ニトロアニリンとの反応(ドイツ技術者協会(VDI)3485)を利用して、比色分析でフェノールを測定した。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に示す結果から、本発明による濾過材(実施例1)は、フェノール樹脂で含浸する従来の濾過材(比較例)よりも良好であることが、明らかとなろう。ただ、曲げ剛性(湿潤時、縦)のみは、本発明の濾過材の値がわずかに下回るが、この値は、依然として前記濾過材の通常の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース、ガラス繊維、合成繊維又はこれらの混合物により構成される少なくとも単一の層をエポキシド樹脂と硬化剤とを含む接着剤中に浸漬する単層又は複数層の濾過材において、
硬化剤は、より低い温度で架橋を行う第1の硬化剤と、より高い温度で架橋を行う第2の硬化剤とを含み、エポキシド樹脂は、温度に応じて段階的に硬化可能であることを特徴とする濾過材。
【請求項2】
第1の硬化剤は、温度0℃以上で架橋を開始する請求項1に記載の濾過材。
【請求項3】
第2の硬化剤は、温度130℃以上で架橋を開始する請求項1に記載の濾過材。
【請求項4】
第1の硬化剤は、エポキシド樹脂に対する化学量論比30〜80%で接着剤中に存在する請求項1〜3の何れか1項に記載の濾過材。
【請求項5】
第2の硬化剤は、エポキシド樹脂に対する化学量論比30〜80%で接着剤中に存在する請求項1〜4の何れか1項に記載の濾過材。
【請求項6】
第1の硬化剤は、脂肪族硬化剤及び/又は脂環式アミン硬化剤から誘導される請求項1〜5の何れか1項に記載の濾過材。
【請求項7】
第1の硬化剤は、ポリアミドアミンである請求項6に記載の濾過材。
【請求項8】
第2の硬化剤は、窒素含有硬化剤である請求項1〜7の何れか1項に記載の濾過材。
【請求項9】
第2の硬化剤は、ジシアンジアミド、グアナミン又はイミダゾールである請求項8に記載の濾過材。
【請求項10】
第2の硬化剤は、促進剤を含有する請求項8に記載の濾過材。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の単一又は複数の濾過材から作成されることを特徴とする濾過部材。
【請求項12】
濾過材にひだを付けられる請求項11に記載の濾過部材。
【請求項13】
濾過材に縦長方向に細溝を付けられる請求項11に記載の濾過部材。
【請求項14】
濾過材は、押圧成形される請求項11に記載の濾過部材。
【請求項15】
濾過材は、横断方向の波形が形成される請求項11に記載の濾過部材。
【請求項16】
a) より低い温度以上で架橋を行う第1の硬化剤及びより高い温度以上で架橋を行う第2の硬化剤を含む硬化剤と、エポキシド樹脂とにより構成されて、温度に応じて段階的に硬化可能な接着剤を準備する工程と、
b) セルロース、ガラス繊維、合成繊維又はこれらの混合物を含む少なくとも単一の層を有する濾過材を接着剤中に浸漬する工程と、
c) 少なくとも、より低い温度に該当しかつより高い温度には満たない温度に濾過材を曝露して濾過材を予め硬化させる工程と、
d) 前記層を形成する工程と、
e) より高い温度以上の温度に濾過材を曝露して、濾過材を硬化させる工程とを含むことを特徴とする単層又は複数層を有する濾過材の製造方法。
【請求項17】
0℃と120℃との間の温度で濾過材を予め硬化させる工程と、
一方、130℃以上の温度で硬化させる工程とを含む請求項16に記載の濾過材の製造方法。

【公表番号】特表2012−516225(P2012−516225A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546603(P2011−546603)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007934
【国際公開番号】WO2010/085992
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(511183515)ネーナー・ゲッスナー・ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】