説明

単独、またはリファムピンと組み合わせたチゲサイクリンの、骨髄炎および/または敗血症性関節炎を治療するための使用

本発明は、単独、またはリファマイシン抗生物質と組み合わせた抗生物質チゲサイクリンの投与によって、骨または骨髄感染、関節感染、または関節を囲う組織の感染を治療する方法に施行される。好ましい具体例において、骨または骨髄感染は骨髄炎を引き起こす。もう1つの具体例において、関節の感染または関節を囲う組織の感染は敗血症性関節炎を引き起こす。また、本発明は、単独、またはリファムピンと組み合わせたチゲサイクリンでの、骨および/または骨髄感染、または関節感染および/または関節を囲う組織における感染に対する薬剤の製造に向けられる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、出典を明示してその内容を本明細書の一部とする、2003年9月5日に出願された米国仮出願第60/500,474号に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、細菌感染によって、またはその結果として引き起こされた骨髄炎および敗血症性関節炎を治療する新規な方法に関する。また、本発明は、骨、骨髄、関節、および滑液の細菌感染の治療に関する。本発明は、さらに、これらの病気および組織における抗生物質耐性細菌感染の治療に関する。
【0003】
(背景技術)
20世紀の後半には、抗菌剤の開発の大きな進歩が見られた。この成功により、細菌病はどの主要疾患よりも容易に治癒されるという認識が育まれたが、1990年代における多剤耐性微生物の出現の結果、公衆衛生に関する深刻な影響が生じた。耐性は先に感受性微生物に広がり、いくつかの微生物は全ての認可された抗菌剤に対して実質的に耐性がある。
【0004】
抗生物質のグリシルサイクリンクラスに属するチゲサイクリンは、微生物耐性の既存メカニズムを回避する。チゲサイクリンは広い抗菌活性スペクトルを示し、多剤耐性のグラム陽性、グラム陰性、および嫌気性菌を阻害する。チゲサイクリンは最も一般的な病原体に対して活性である。チゲサイクリンはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、(エンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)を含む)バンコマイシン耐性腸球菌、ペニシリン耐性/マクロライド耐性肺炎球菌、プレボテラ種(Prevotella spp.)、ペプトストレプトコッカス、マイコバクテリア、およびミノサイクリン耐性微生物のような病原体に対して活性である(Boucher et al., Antimicrob Agents Chemother 2000;44(8):2225-2229, Gales et al., Antimicrob Agents Chemother. 2000;46:19-36, Goldstein et al., Antimicrob Agents Chemother.2000;44(10):2747-2751)。チゲサイクリンは肺炎連鎖球菌(ペニシリン感受性およびペニシリン耐性)、インフルエンザ菌、クラミジアニューモニエ(Chlamydia pneomoniae)、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(メチシリン感受性およびメチシリン耐性)、好気性グラム陰性桿菌、および腸球菌(バンコマイシン感受性およびバンコマイシン耐性腸球菌)のような呼吸器系病原体の治療で有用である。イン・ビボの結果は非常に有望であり、血清中の最小阻止濃度(MIC)を超える時間は予測されたものよりも良好であった。チゲサイクリンは安全な抗菌剤であると観察されている。
【0005】
メチシリン耐性ブドウ球菌は骨および関節の感染において最も一般的な微生物である(Waldvogel, Infectious Diseases 1988:1339-1344)。これらの微生物による感染の治療法の選択肢は限られ、キノロン、クリンダマイシン、コトリモキサゾールおよびリファムピンに対する臨床株の感受性は可変的であり、感受性はしばしば非経口経路によって投与されなければならない糖ペプチドに制限される。ブドウ球菌の糖ペプチドに対する耐性はすでに記載されており、主要な懸案事項に相当する。というのは、それらの薬剤はメチシリン耐性ブドウ球菌による深刻な感染に対する治療の判断基準と考えられているからである(Smith, et al., N Engl J Med 1999;340:493-501)。
【0006】
キヌプリスチン−ダルフォプリスチンおよびリネゾリドのようなメチシリン耐性ブドウ球菌の感染の治療用新規薬物が臨床実践に最近導入された(Johnson, et al., Lancet 1999;354:2012-2013, Livermore, J Antimicrob Chemother 2000;46:347-350)。しかしながら、骨髄炎の治療に対する臨床的研究において何も十分には調べられていない。
【0007】
急性および慢性整形外科感染の治療は、一つには感染の多くが抗生物質耐性病原体に由来するという事実により、さらに一つには感染の場所により困難である。しばしば療法は長期の抗生物質療法および外科的処置を必要とする(Lazzarini et al., Curr Infect Dis Rep 2002:4:439-445)。さまざまな研究が、骨髄炎の種々の動物モデルを用いて行われてきた(Rissing, Infect Dis Clin North Am 1990;4:377-390)。長期の抗生物質治療にもかかわらず、生菌が依然として骨で見出され得る。骨からのより多くの細菌の根絶は抗生物質治療の長期持続と関連付けられてきた(Norden, Rev Infect Dis 1988;10:103-110)。4週間の抗生物質治療後、抗生物質レジメンの大部分は骨からブドウ球菌を根絶できなかった。
【0008】
骨髄炎に対する抗生物質治療は伝統的には静脈内経路によって投与される。しかしながら、骨髄炎に対する経口レジメンは臨床試験においてテストされ成功した(Bell, Lancet 1968;10:295-297, Feigin et al., Pediatr 1975;55:213-223, Slama et al., Am J Med 1987;82(Suppl 4A):259-261)。残念ながら、経口抗微生物剤の選択は、多剤耐性微生物を取り扱う場合には制限されており、これらの多剤耐性微生物の処置は非経口薬物の使用を必要とする(Tice, Infect Dis Clin North Am 1998;12:903-919)。
【0009】
従って、細菌感染によって引き起こされた骨髄炎および/または敗血症性関節炎、特に抗生物質耐性菌株によって引き起こされたものを治療する方法の要望残る。本発明はこの長期にわたる要望を満足するものである。
【0010】
(発明の概要)
本発明は、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、骨または骨髄感染(しばしば骨髄炎ともいわれる)および/または関節感染および周囲組織の感染(しばしば敗血症性関節炎という)を治療する方法を提供する。該方法は薬理学上有効量のチゲサイクリンおよび/またはリファマイシン、リファムピン、リファペンチン、リファキシミン、またはストレプトバリシンよりなる群から選択される抗微生物剤を哺乳動物に投与して、該感染を治療することを含む。好ましくは、該抗微生物剤はリファムピンである。
【0011】
該感染はグラム陰性菌、グラム陽性菌、嫌気性細菌、および好気性細菌よりなる群から選択される病原体によって引き起こされ得る。例示的な細菌はブドウ球菌、アシネトバクター、マイコバクテリウム、ヘモフィルス、サルモネラ、連鎖球菌、腸内細菌科、腸球菌、大腸菌類、シュードモナス、ナイセリア、リケッチア、肺炎球菌、プレボテラ、ペプトストレプトコッカス、バクテロイデス・レジオネラ、ベータ溶血性連鎖球菌、B群連鎖球菌およびスピロヘータを含む。好ましくは、該感染はナイセリア、マイコバクテリウム、ブドウ球菌およびヘモフィルスからなり、より好ましくは、髄膜炎菌、結核菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、肺炎連鎖球菌、インフルエンザ菌、またはライ菌からなる。
【0012】
好ましい具体例において、感染は抗生物質耐性を呈する病原体のものである。例示的な抗生物質耐性はメチシリン耐性、糖ペプチド耐性、テトラサイクリン耐性、オキシテトラサイクリン耐性、ドキシサイクリン耐性;クロルテトラサイクリン耐性、ミノサイクリン耐性、グリシルサイクリン耐性、セファルスポリン耐性、シプロフロキサチン耐性、ニトロフラントイン耐性、トリメトプリム−スルファ耐性、ピペラシリン/タゾバクタム耐性、モキシフロキサチン耐性、バンコマイシン耐性、テイコプラニン耐性、ペニシリン耐性、およびマクロライド耐性を含む。
【0013】
好ましい糖ペプチド耐性はバンコマイシン耐性である。もう1つの好ましい具体例において、感染は糖ペプチド耐性、テトラサイクリン耐性、ミノサイクリン耐性、メチシリン耐性、バンコマイシン耐性、およびチゲサイクリン以外のグリシルサイクリン抗生物質に対する耐性からなる群から選択される耐性を呈する黄色ブドウ球菌(S.aureus)からなる。
【0014】
もう1つの具体例において、感染はセファルスポリン耐性、シプロフロキサチン耐性、ニトロフラントイン耐性、トリメトプリム−スルファ耐性、およびピペラシリン/タゾバクタム耐性からなる群から選択される抗生物質耐性を呈するまたは呈さない非発酵陰性桿菌からなる。
【0015】
もう1つの具体例において、感染はモキシフロキサチン耐性を呈するまたは呈さない非定型抗酸菌からなる。他の具体例において、感染はインフルエンザ菌、エンテロコッカスフェシウム、大腸菌、淋菌、発疹チフスリケッチア、発疹熱リケッチア、または斑点熱リケッチアからなる。
【0016】
また、本発明は、哺乳動物における骨髄炎および/または敗血症性関節炎を治療するための薬理学上有効量のチゲサイクリンの使用を提供する。もう1つの具体例において、本発明は、骨髄炎および/または敗血症性関節炎を治療するための薬理学上有効量のチゲサイクリン、およびリファマイシン、リファムピン、リファペンチン、リファキシミン、またはストレプトバリシンからなる群から選択される抗微生物剤の使用を提供する。もう1つの具体例において、本発明は、哺乳動物における骨髄炎および/または敗血症性関節炎の治療用薬物の製造のための薬理学上有効量のチゲサイクリンの使用を提供する。もう1つの具体例において、哺乳動物における骨髄炎および/または敗血症性関節炎の治療用薬物の製造のための薬理学上有効量のチゲサイクリン、およびリファマイシン、リファムピン、リファペンチン、リファキシミン、またはストレプトバリシンからなる群から選択される抗微生物剤の使用を提供する。
【0017】
図面は、本発明のある具体例を示し、断じて本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0018】
(発明の詳細な説明)
本発明は、哺乳動物において骨および骨髄の感染を治療する方法を対象とする。好ましくは、哺乳動物はヒトである。好ましい具体例において、骨または骨髄の感染は骨髄炎を引き起こす。骨髄炎は骨および/または骨髄の急性または慢性感染であって、化膿性菌での感染による骨およびその構造の関連炎症プロセスを含む。骨髄炎に伴う感染は局所化され得るか、あるいはそれは骨膜、皮質、骨髄および海綿状組織を介して拡大し得る。骨髄炎を引き起こす通常の細菌病原体は、患者の年齢および感染のメカニズムに基づいて変化する。急性骨髄炎は2つの主なカテゴリー:血行性骨髄炎および直接的または隣接的接種骨髄炎を含む。
【0019】
血行性骨髄炎は血液からの細菌の播種によって引き起こされる感染である。急性血行性骨髄炎は、遠隔源からの骨内への細菌の播種によって引き起こされる急性感染によって特徴付けられる。血行性骨髄炎は主として小児に起こる。最も一般的な部位は、急速に成長し、血管の多い成長骨の骨幹端である。血管が遠位骨幹端において鋭角をなす場合の血流の見掛けの遅延または血球凝集は血管に血栓症を、骨自体に限局性壊死および細菌の播種を起こしやすくする。骨構造のこれらの変化はx線イメージによって見ることができる。急性血行性骨髄炎は、その名称に関わらず、ゆっくりとした臨床的発展および潜行性の発症を有し得る。
【0020】
直接的または隣接的接種骨髄炎は、外傷または手術の間における組織および細菌の直接的接触によって引き起こされる。直接的接種(隣接局部)骨髄炎は、直接の外傷からの微生物の接種、感染の隣接局部からの拡大、または外科的手法後における敗血症による二次的な骨における感染である。直接的接種による骨髄炎の臨床症状は血行性骨髄炎のものよりも局所化されており、多数の微生物/病原体に関連する傾向がある。
【0021】
さらなるカテゴリーは、慢性骨髄炎、および末梢血管病による二次的な骨髄炎を含む。慢性骨髄炎は、その最初の原因および/またはメカニズムにかかわらず、積極的な介入にかかわらず執拗に存在または再発する。病因としてリストされているが、末梢血管病は、現実には、感染の真の原因よりはむしろ素因因子である。
【0022】
骨髄炎の兆候は、しばしば、高熱、疲労、刺激および倦怠感を含む。運動は通常感染した四肢または関節に制限され得る。局所的浮腫、紅斑、および圧痛には、一般に感染が伴い、患部領域の周りには熱感があり得る。感染の後期段階では、瘻孔ドレナージも存在し得る。血行性骨髄炎は、通常、兆候の遅い潜行性進行示すが、慢性骨髄炎は非治癒性潰瘍、瘻孔ドレナージ、慢性疲労および倦怠感を含む。直接的骨髄炎は、一般により局所化された領域における顕著な症状および兆候を示す。
【0023】
ある種の病状は患者に骨髄炎を起こりやすくすることが知られている。これらは真性糖尿病、鎌状赤血球病、後天性免疫不全症候群(AIDS)、IV薬物乱用、アルコール中毒、慢性的ステロイドの使用、免疫抑制、および慢性関節病を含む。加えて、補綴整形外科デバイスの存在は、最近の整形外科処置または開放骨折のように独立危険因子である。
【0024】
いくつかの細菌病原体は急性および直接的骨髄炎を引き起こすことが一般的に知られている。例えば、新生児(4ヶ月以下)における急性血行性骨髄炎は、しばしば、黄色ブドウ球菌、エンテロバクター種、およびA群およびB群の連鎖球菌種によって引き起こされる。4ヶ月齢ないし4歳の小児においては、急性血行性骨髄炎は、一般的に、黄色ブドウ球菌、A群の連鎖球菌種、インフルエンザ菌、およびエンテロバクター種によって引き起こされる。4歳ないし成人までの小児および青年おいては、急性血行性骨髄炎は、一般的に、黄色ブドウ球菌(80%)、A群の連鎖球菌種、インフルエンザ菌、およびエンテロバクター種によって引き起こされる。成人においては、急性血行性骨髄炎は、一般的に、黄色ブドウ球菌および、場合によっては、エンテロバクターまたは連鎖球菌種によって引き起こされる。主な治療は、従来、ペニシリナーゼ耐性合成ペニシリンおよび第三世代のセファロスポリンの併用を含んだ。代替療法はバンコマイシンまたはクリンダマイシンおよび第三世代のセファロスポリンを含む。これらの前記抗菌剤に加えて、シプロフロキサチンおよびリファムピンが成人患者への併用療法で用いられてきた。グラム陰性菌の感染の証拠がある場合には、第三世代のセファロスポリンがしばしば投与される。
【0025】
直接的骨髄炎は、一般には、黄色ブドウ球菌、エンテロバクター種、およびシュードモナス種によって引き起こされる。しばしば、直接的骨髄炎は競技用シューズによる穿刺創傷によって引き起こされる。これらの場合には、直接的骨髄炎は、一般的に、黄色ブドウ球菌およびシュードモナス種によって引き起こされる。このシナリオにおける主な抗生物質はセフタジジムまたはセフェピムを含む。シプロフロキサチンは、しばしば、代替処置として用いられる。鎌状赤血球病の患者では、直接的骨髄炎は、一般的に、黄色ブドウ球菌およびサルモネラ種によって引き起こされ、治療に対する主な選択はフルオロキノロン抗生物質である(小児においてはこうではない)。第三世代のセファロスポリン(例えば、セフトリアキソン)は代替選択である。
【0026】
外傷による骨髄炎を持つ患者では、感染菌は、通常、黄色ブドウ球菌、大腸菌型桿菌(coliform bacilli)、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を含む。主な抗生物質はナフシリンおよびシプロフロキサチンである。代替物は、抗シュードモナス活性を持つバンコマイシンおよび第三世代のセファロスポリンを含む。
【0027】
従って、本明細書および特許請求の範囲で使われる用語「骨髄炎」は血行性骨髄炎、直接的または隣接的接種骨髄炎、慢性骨髄炎、および末梢血管病による二次的な骨髄炎を含む。骨髄炎は前記病原体のいずれかによって引き起こされた感染の結果であり得るが、骨、骨髄、関節または周囲の組織を感染する能力を有する他の病原体も含む。
【0028】
用語「骨髄炎を治療する」は、当業者によって適切な措置として選択されるように、骨髄炎に関連する元となる感染を引き起こす病原体/細菌の根絶、細菌増殖の阻害、細菌濃度の低下、感染からの回復時間の短縮、腫れ、壊死、発熱、苦痛、衰弱および/または他の指標など感染の兆候の改善、排出または低下を含む。
【0029】
現在、骨髄炎に対する主な治療は骨および関節腔内に浸透させる非経口抗生物質である。治療には少なくとも4ないし6週間必要とする。抗生物質の静脈内投与が入院患者ベースで開始された後、外来患者ベースに対して、感染のタイプおよび位置に応じて、抗生物質の静脈内投与または経口抗生物質で治療は継続することができる。
【0030】
例えば、黄色ブドウ球菌感染によって引き起こされた骨髄炎は、一般に、少なくとも最初の14日間または最大6週間の全治療コースの間に、6時間毎に静脈内または非経口投与による2グラムのクロキサシリンで治療される。他の治療は、6週間8時間毎の1ないし2グラムで投与されるセファゾリン、または6週間8時間毎の600mgのクリンダマイシンがある。
【0031】
ベータ溶血性連鎖球菌によって引き起こされた骨髄炎は、一般に、2ないし4週間4ないし6時間毎にベンジルペニシリン200万IUで静脈内または非経口投与により処置される。サルモネラ種による感染は、6週間12時間毎のシプロフロキサシン750mgの経口投与により処置される。
【0032】
小児におけるインフルエンザ菌によって引き起こされた骨髄炎の治療は、一般に、4ないし6日間4ないし6時間毎のクロキサシリン25ないし50mgの静脈内または非経口投与および4ないし6日間24時間毎に50ないし75mg/kgのセフトリアキソンで治療される。この処置に続いて、15mg/kgのアモキシシリンおよび4週間8時間毎の経口クラブラン酸(最大500mg)がある。
【0033】
新生児における治療は、4ないし6日間4ないし6時間毎の25ないし50mg/kgの静脈内または非経口クロキサシリンおよび4ないし6日間8時間毎の50ないし75mg/kgの静脈内または非経口セフォタキシムにより達成される。治療に続いて、15mg/kgのアモキシシリンおよび4週間8時間毎の経口クラブラン酸(最大500mg)がある。
【0034】
小児における黄色ブドウ球菌での感染は、一般に、4ないし6日間4ないし6時間毎のクロキサシリン25ないし50mgおよび4ないし6日間24時間毎の50ないし75mg/kgのセフトリアキソンの静脈内または非経口投与により治療される。この治療に続き、3ないし4週間6時間毎の12.5mg/kgのクロキサシリンの経口投与を行う。
【0035】
小児におけるサルモネラ種での治療は、病原体の感受性に依存する。治療選択はクロキサシリンとセフトリアキソン、続いて6週間12時間毎の20mg/kgのスルファメトキサゾールおよび4mg/kgのトリメトプリムの経口投与、または6週間12時間毎の7.5ないし15mg/kgのアモキシシリンの経口投与、または4ないし6日間4ないし6時間毎の10ないし15mg/kgのシプロフロキサシンと4ないし6日間8時間毎の50ないし75mg/kgのセフォタキシムの静脈内投与のいずれか、続いてスルファメトキサゾールおよびトリメトプリムまたはアモキシシリンまたはシプロフロキサシンを含む。
【0036】
本発明のもう1つの具体例は、哺乳動物における関節感染および/または周囲組織感染を治療する方法を提供する。好ましくは、哺乳動物はヒトである。好ましい具体例において、関節感染および/または周囲組織感染は敗血症性関節炎を引き起こす。
【0037】
敗血症性関節炎は関節および周囲組織の感染であり、関節内の生菌の存在によって引き起こされる関節炎症をもたらす。敗血症性関節炎は、最も一般的には、骨髄炎、特に小児期の骨髄炎により二次的に起こり、細菌感染の結果として起こる。
【0038】
関節の感染はいくつかの経路によって起こり得る。最も一般的に感染性病原体の拡大は血行性である。頻繁には、敗血症性関節炎は皮膚における感染または膿傷から生じる。口および歯の、または歯科処置後の、または呼吸管や尿生殖路の感染に関連する敗血症も敗血症性関節炎に至り得る。鋭い物体または大きな外傷からの関節への直接的貫通性外傷は、同様に、関節の感染に至り得る。関節の吸引または注射、および関節置換術などの外科的処置もまた関節感染をもたらし得る。加えて、骨髄炎は、しばしば、拡大して関節を伴う。これは、幼児において特に一般的である。最後に、炎症した嚢または腱鞘のような、関節に隣接する柔軟組織の感染は拡大して、関節腔を伴う。血液経路による感染の拡大は、依然として、関節敗血症の最も頻繁な原因である。
【0039】
敗血症性関節炎の兆候は倦怠感および発熱、急性炎症を伴う急性熱性関節または複数関節:腫れおよび関節染出、赤変、疼痛および機能の喪失を含む。
【0040】
敗血症性関節炎の最も一般的な原因生物は黄色ブドウ球菌である。新生児の敗血症性関節炎においては大腸菌およびインフルエンザ菌もまた一般的な病原体である。5歳児において、インフルエンザ菌は血行性関節敗血症の最も一般的な原因である。グラム陰性腸細菌もまた老人、および真性糖尿病または補綴関節を持つ者において一般的な病原体である。貫通性外傷の場合には、および静脈内薬物乱用者においては、緑膿菌または表皮ブドウ球菌での感染がしばしば見出される。健康で若い成人においては、淋菌または髄膜炎菌感染は、時々、敗血症関節症の原因である。慢性低グレード敗血症性関節炎、特に脊髄においては、マイコバクテリアまたはウシ流産菌(Brucella abortus)のような微生物での感染の結果であり得る。さらに、後天性免疫不全症候群罹患者内では、関節病原体の範囲は多様である。
【0041】
最も一般的な敗血症性関節炎病原体のいくつかは、限定されるものではないが、(1)グラム陽性:黄色ブドウ球菌(80%の場合)、化膿性連鎖球菌/肺炎;(2)グラム陰性:インフルエンザ菌、淋菌/髄膜炎、緑膿菌、バクテロイデスフラジリス(Bacteroides fragilis)、ブルセラ(Brucella)種、サルモネラ種、紡錘状細菌;(3)耐酸細菌:結核菌、非典型的マイコバクテリア;および(4)スピロヘータ:黄疸出血性レプトスピラ(Leptospira icterohaemorrhagica)を含む。
【0042】
従って、本明細書および特許請求の範囲にて用いられる用語「敗血症性関節炎」は、前記リストの病原体、ならびに関節および周囲組織の感染する能力を有するいずれかの他の病原体によって引き起こされた関節および周囲組織の感染を含む。周囲組織は、限定されるものではないが、周囲筋肉、関連する腱、結合骨、嚢、腱鞘、滑膜、滑液、および関連する軟骨を含む。
【0043】
用語「敗血症性関節炎を治療する」は、当業者による適切な措置として選択されるように、敗血症性関節炎に関連する元となる感染を引き起こす病原体/細菌の根絶、細菌増殖の阻害、細菌濃度の低下、感染からの回復時間の短縮、腫れ、壊死、発熱、疼痛、衰弱、および/または他の指標など感染の兆候の改善、排出または低下を含む。
【0044】
敗血症関節は、通常、4ないし6週間で治療されるが、感染した関節形成は4週間ないし6週間以上の間に治療される(Calhoun et al., Am.J.of Surgery 1989;157:443-449, Calhoun et al., Archives of Otolaryngology-Head and Neck Surgery 1988;114:1157-1162, Gordon et al., Antimicrob Agents Chemother 2000;44(10):2747-2751, Mader et al., West J Med 1988;148:(5)568, Mader et al., Orthopaedic Review 1989;18:581-585, Mader et al. Drugs & Aging 2000;16(1):67-80)。これらの長期の抗生物質治療は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌のような薬物耐性細菌が存在する場合にはなおさら問題になる。
【0045】
病原体の特徴付けに先立ち、成人における敗血症性関節炎の治療は、通常、24時間毎に1ないし2gmセフトリアキソンと6時間毎に静脈内または筋肉内投与される2gmクロキサシリンの併用で開始する。月齢2ヶ月を過ぎた小児における治療は、24時間毎に最大2gmのセフトリアキソン25ないし50mg/kgと6時間毎に最大2gmの静脈内または筋肉内投与されるクロキサシリン25ないし50mg/kgを含む。新生児における治療は、8時間毎に静脈内投与最大2gmまでの50ないし75mg/kgにおける静脈内または筋肉内投与されるクロキサシリンを含む。他の抗生物質治療はセフォタキシム、フルクロキサシリン、ベンジルおよびペニシリンを含む。
【0046】
一旦病原体が同定されれば、治療の一般的なコースは存在する感染性病原体に基づく。例えば、感染が黄色ブドウ球菌を含むと決定された場合、敗血症性関節炎は通常6時間毎に静脈内投与されるクロキサシリン、または8時間毎のセファゾリン、または8時間毎のクリンダマイシンで治療され、選択された治療は2ないし3週間継続する。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は、非経口投与されるバンコマイシンで治療される。
【0047】
骨髄炎および敗血症性関節炎の抗生物質治療は、依然として、医師にとって挑戦である。多くの整形外科的感染は院内環境で感染する(Holtom et al., Clin Orthop 2002;403:38-44)。さらに、そのような感染の原因物質はしばしば多剤耐性である。ブドウ球菌は最も一般的な院内および薬物耐性生物であるが、グラム陰性病原体が同様に関与し得る(Cunha, Clin Infect Dis 2002;35:287-293)。
【0048】
メチシリン感受性黄色ブドウ球菌による感染と比較して、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌による感染は治療するのがより困難であって、より悪い予後を有し得る(Cosgrove et al., Clin Infect Dis 2003;36:53-59)。これらの感染に対する治療法の選択肢は制限される。骨感染の治療で広範囲に調べられてきた、全てのブドウ球菌株に対する一定の効果を持つ唯一の薬物は、糖ペプチドである。残念ながら、これらの抗生物質に対する耐性は、グラム陽性病原体の治療における主要な問題として既に認識されている。バンコマイシンに対する腸球菌耐性は世界中に拡散しており、そのような耐性は、イン・ビトロで他のグラム陽性菌に潜在的に伝達可能であると証明されている(Noble, et al., FEMS Microbiology Letters 1992;72:195-198)。さらに、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌の散発性株はいくつかの国で単離されている(Hiramatsu, Am J Med 1998;104:7S-10S, Hamilton-Miller, Infection 2002;30:118-124)。従って、多剤耐性病原体の治療に対する代替抗微生物剤の入手可能性はかなり重要である。
【0049】
チゲサイクリン(以前および今もしばしば「GAR-936」といわれる)は、グリシルサイクリンと呼ばれる抗生物質の新しいクラスの9-t-ブチルグリシルアミド合成誘導体である。テトラサイクリン誘導体のこの新しいクラスは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(エンテロコッカスフェカリスを含む)、ペニシリン耐性/マクロライド耐性肺炎球菌、プレボテラ属、ペプトストレプトコッカス、およびマイコバクテリウム種を含む、非常に多数のグラム陽性およびグラム陰性、好気性および嫌気性生物に対する優れたイン・ビトロ活性を示した(Boucher et al., Antimicrob Agents Chemother. 2000;44(8):2225-2229, Gales et al., Antimicrob Agents Chemother. 2000;46:19-36, Goldstein et al., Antimicrob Agents Chemother.2000;44(10):2747-2751)。テトラサイクリンは、細菌蛋白質合成を阻害するように作用する静菌剤である。グリシルサイクリンは、テトラサイクリンに対する耐性の細菌メカニズムを克服するために開発されたが、それらの正確な作用メカニズムは未だ決定されていない(Rasmussen et al., Antimicrob Agents Chemother. 1995;38:1658-1660)。
【0050】
チゲサイクリンは骨、骨髄、関節、および滑液ならびに注目する多くの他の器官および組織に濃縮する。さらに、チゲサイクリンは前記組織の感染した部分に濃縮することが見出されている。ヒトにおける静脈内チゲサイクリンの薬物動態学の研究は、長期の半減期(40ないし60時間)および定常状態における高容量の分布(7ないし14L/kg)を伴う迅速な分布相があることを示した。放射性標識チゲサイクリンに関する動物実験は、この迅速な分布相および定常状態における高容量分布が、肺および骨を含む組織へのチゲサイクリンの浸透を表すことを示唆している。
【0051】
例えば、ラット組織におけるチゲサイクリンの分布は、30分のIV注入による3mg/kgの用量において[14C]チゲサイクリンを投与した場合にSprague-Dawleyラットで示された。一般に、放射能はほとんどの組織によく分布し、全暴露の最高は骨で観察された。最高濃度を示す組織中での暴露は以下の通りであった:骨>骨髄>唾液腺、甲状腺、脾臓、および腎臓。これらの組織の各々において、血漿中の濃度−時間曲線下面積(AUC)に対する組織中のAUCの比率は10を超えた。この実験において、血漿中のAUCに対するラット肺におけるAUCの比率は4.4であった。加えて、静脈内投与されたチゲサイクリンはヒトにおいて骨組織に浸透し、静脈内投与は経時的にヒトにおける滑液中のチゲサイクリンの濃度を拡大する。
【0052】
本発明者らは、チゲサイクリンが骨髄炎および敗血症性関節炎に有用な治療であることを見出した。院内での骨および関節感染で見出される全ての病原体を含む抗微生物スペクトラムは広い。該薬物は毎日2回投与され得るので、薬物動態学特性は好都合である。さらに、骨浸透および最小阻止濃度(MIC)を超える薬物レベルが、収集されたほとんど毎試料で見出された。最小阻止濃度は、細菌増殖を阻害する際に化合物の有効性を決定する方法である。それは、微生物の増殖を阻害する抗微生物剤の最小濃度であり多くの最小処置に対する哺乳動物の血清に必要とされる濃度に対応する。加えて、チゲサイクリンはヒトにおいて良好な安全性プロフィールを提供し、これは、抗微生物剤が整形外科的感染に対する臨床試験で適当であることを示す。
【0053】
従って、本発明の1つの態様は、薬理学上有効な量のチゲサイクリンを哺乳動物に投与することによって、骨、骨髄、関節および周囲組織の感染を治療する方法、および哺乳動物において骨髄炎および/または敗血症性関節炎を治療する方法を提供する。骨、骨髄、関節および周囲組織の感染および骨髄炎および/または敗血症性関節炎はグラム陰性菌、グラム陽性菌、嫌気性細菌および好気性細菌を含む、前記病原体のような通常に見出される病原体のいずれかによって引き起こされ得る。例えば、感染は、限定されるものではないが、ブドウ球菌、アシネトバクター、マイコバクテリウム、ヘモフィルス、サルモネラ、連鎖球菌、腸内細菌科、腸球菌、大腸菌類、シュードモナス、ナイセリア、リケッチア、肺炎球菌、プレボテラ、ペプトストレプトコッカス、バクテロイデス・レジオネラ、ベータ溶血性連鎖球菌、およびB群連鎖球菌を含み得る。好ましい具体例において、感染はナイセリア、マイコバクテリウム、ブドウ球菌およびヘモフィルスを含む。より好ましい具体例において、感染は大腸菌、髄膜炎菌、淋菌、結核菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、肺炎連鎖球菌、インフルエンザ菌、エンテロコッカスフェシウム、発疹チフスリケッチア、発疹熱リケッチア、斑点熱リケッチア、ライ菌、非定型抗酸菌、または肺炎マイコプラズマよりなる。
【0054】
本発明の1つの具体例において、医薬上有効量のチゲサイクリンを投与することによって、骨、骨髄、関節および周囲組織の感染を治療する方法、および抗生物質耐性を示す(前記した菌株)菌株によって引き起こされた骨髄炎および/または敗血症性関節炎を治療する方法が提供される。例えば、示された耐性は、限定されるものではないが、メチシリン耐性、糖ペプチド耐性、テトラサイクリン耐性、オキシテトラサイクリン耐性、ドキシサイクリン耐性;クロルテトラサイクリン耐性、ミノサイクリン耐性、グリシルサイクリン耐性、セファロスポリン耐性、シプロフロキサシン耐性、ニトロフラントイン耐性、トリメトプリム−スルファ耐性、ピペラシリン/タゾバクタム耐性、モキシフロキサチン、バンコマイシン耐性、テイコプラニン耐性、ペニシリン耐性、およびマクロライド耐性であり得る。
【0055】
好ましい具体例において、糖ペプチド耐性はバンコマイシン耐性である。もう1つの好ましい具体例において、感染は糖ペプチド耐性、テトラサイクリン耐性、ミノサイクリン耐性、メチシリン耐性、バンコマイシン耐性、またはチゲサイクリン以外のグリシルサイクリン抗生物質に対する耐性いずれかからの耐性を呈する黄色ブドウ球菌からなる。
【0056】
もう1つの好ましい具体例において、感染は、セファロスポリン耐性、シプロフロキサチン耐性、ニトロフラントイン耐性、トリメトプリム−スルファ耐性、およびピペラシリン/タゾバクタム耐性のような抗生物質耐性を呈しても呈しなくてもよい非発酵陰性桿菌を含む。もう1つの具体例において、感染は、モキシフロキサチン耐性を呈しても呈しなくてもよい非定型抗酸菌よりなる。
【0057】
ヒトおよび他の哺乳動物の治療において、チゲサイクリンは最も一般的には静脈内投与されるが、他の投与経路が当業者に利用可能である。1時間の注入で投与される最大用量100mgがヒト対象において容認される。注入30分前に食餌が与えられた対象へ毎日2回200ml注入で1時間にわたり75mg以上を9日間投与した結果、全ての対象において吐気および嘔吐を含めた胃腸の不耐をもたらした。200ml注入で1時間にわたる25ないし50mgの毎日2回投与が容認された。また、100mgの単一注入が容認され、0.9ないし1.1マイクログラム/mlの平均ピーク血清濃度がもたらされた。
【0058】
ニュージーランドシロウサギへの毎日2回の14mg/kgの投与の結果、最小阻止濃度よりも高い定常的なレベルがもたらされた。この実験で用いられたMRSA株でのチゲサイクリンに対する最小阻止濃度(MIC)および最小殺菌濃度(MBC)は、各々、0.2μg/mlおよび0.2μg/ml未満であった。MBCの測定は、細菌を殺すにおいて化合物の効率を決定する方法を提供する。MBC技術は、標準接種において生物の少なくとも99.9%を殺す殺菌剤の最低レベルを確立する。MICおよびMBCはバンコマイシン耐性エンテロコッカスフェシウム(E.faecium)に対するチゲサイクリンにつき、各々、0.125μg/ml、および16および32μg/mlの間であるとMercier et al.によって決定された。黄色ブドウ球菌では、最小阻止濃度および最小殺菌濃度は、各々、0.25および1μg/mlおよび16および64μg/mlの間であった。特別な使用実験において、本発明者らは、ヒト患者における非定型抗酸菌(M.abcessus)に対するチゲサイクリンの最小阻止濃度は0.25μg/mlであることを見出した。
【0059】
哺乳動物においては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は毎日2回の5mg/kgないし60mg/kg、より好ましくは10mg/kgないし40mg/kg、より好ましくは12mg/kgないし20mg/kgの範囲においてチゲサイクリンで治療することができる。他の病原体の治療に対する適当な用量は当業者に明らかであろう。
【0060】
例外的使用実験では、1人のヒト患者が結果として麻痺を伴う二分脊椎に罹患した。患者はスルファ薬物に対してひどいアレルギー性があって、感染した踝床擦れからのメチシリン耐性菌血症が供された。該患者は右坐骨にわたって皮膚の損傷も有した。潰瘍は切除したが、治癒しなかった。MRIは骨髄炎を明らかとし、骨の断面は非発酵陰性桿菌からの感染に対して陽性であった。
【0061】
該非発酵陰性桿菌(A.baumannii)はセファロスポリン、シプロフロキサチン、ニトロフラントインに対して耐性であって、トリメトプリム−スルファおよびピペラシリン/タゾバクタムに対して中程度の耐性を示した。該生物はイミペネム、ゲンタマイシンおよびトブラマイシンに対して感受性であった。患者はメロペネムおよびトブラマイシンで治療した。メロペネムは後に好酸球増加症のためアズトレオナムで置き換えた。アズトレオナムは後に執拗な好酸球増加症のため中断した。トブラマイシンもまたクレアチニン増加のため中断した。次いで、患者を12時間毎に50mgまたは24時間毎に50mgのいずれかで2ヶ月間チゲサイクリンで治療した。チゲサイクリンでの治療受診1ヶ月以内に、MRIは骨髄炎の治癒を示し、顕著な改良が右坐骨領域から集めた流体で見られた。患者はチゲサイクリンでの治療投与後10週間は順調であったと報告された。
【0062】
もう1つの例外的使用実験において、免疫不全と共に無汗性外胚葉性形成異常を持つ患者は、3年半の非定型抗酸菌感染での脊椎骨髄炎の病歴を有した。創面切除は、ハードウェアの設置にて感染の1年後に達成された。患者はセフォキシタム、クラリスロマイシンおよびアミカシンで幾分改善を示した。アミカシンは腎臓損傷のために後に中断した。リノゾリドおよびアジスロマイシンは後に治療レジメンに加えた。生物はモキシフロキサシンに耐性であると決定された。
【0063】
患者は、後に、古い感染の部位の丁度上方に新しい脊椎骨髄炎を示した。バイオプシーを行い、さらなる創面切除は必要ないと決定された。該生物はセフォキシチンのみに対して感受性であることが判明した。さらなる抗微生物剤が助けとなると判断され、生物はチゲサイクリンに対して感受性であることが判明した。チゲサイクリンはMIC 最大0.25マイクログラム/mlまで投与された。患者の白血球数は正常であるが、低ガンマグロブリン血症が存在し、リンパ球機能が減少した。該患者はまたIL−12での治療下にあったが、IL−12は抗生物質治療の間継続された。患者は治療後1年は順調であったと報告された。
【0064】
本発明のもう1つの具体例は、薬理学上有効量のチゲサイクリン、および抗生物質のリファマイシンおよびストレプトバリシン群を含むアンサマイシンファミリーからの抗微生物剤を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、骨、骨髄、関節および周囲組織の感染を治療する方法、および骨髄炎および/または敗血症性関節炎を治療する方法を提供する。リファマイシンファミリーはリファムピン、リファペンチン、リファキシミン、および好ましくはリファムピンを含む。これらの大環状抗生物質は、RNAポリメラーゼへの結合においてそれらの性質のため殺菌活性を有する。これらの抗生物質は細菌蛋白質合成において異なる工程に影響し、それらはチゲサイクリンと組み合わせて有用である。リファマイシンはRNAポリメラーゼの活性を影響し、メッセンジャーRNAの生産を制限するが、チゲサイクリンはリボソームの活性およびメッセンジャーRNAからの蛋白質の生産に影響する。チゲマイシンの作用の態様は、テトラサイクリンよりも幾分異なった配向を持つ30Sリボソームサブユニット中のテトラサイクリン結合部位への結合を介する70Sリボソームの不活化に関連するように見える(Bauers et al., J.Antimicrob Chemother. 2004;53(4):592-599)。
【0065】
本発明者らは、抗微生物剤のリファマイシンクラスの抗生物質と組み合わせたチゲサイクリンが感染した組織において相加的抗微生物効果を提供することを見出した。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌で脛骨を接種したウサギでの調査において、リファムピンと組み合わせたチゲサイクリンでの骨髄炎の治療は10匹のウサギにおいて骨の感染を示さず、他方、対照は15匹のウサギのうち11匹で感染を示した。また、骨髄における治療は10匹のウサギにおいて感染を示さず、他方、対照はテストした15匹のウサギのうち5匹のウサギの感染を示した。さらに、チゲサイクリン単独での骨髄炎の治療は10匹のウサギのうち1匹の骨において感染を示し、骨髄において感染は示さなかった。
【0066】
哺乳動物において、リファムピン治療は毎日2回の10mg/kgないし100mg/kgの範囲であって、より好ましくは、毎日2回の20mg/kgないし70mg/kgの範囲であって、より好ましくは、毎日2回の30mg/kgないし50mg/kgの範囲である。MRSAで感染させたニュージーランドシロウサギにおいて、40mg/kgの治療の結果、殺菌活性が得られた。MRSA株に対するリファムピンについての最小阻止濃度および最小殺菌濃度レベルは、各々、0.78μg/mlおよび1.56μg/mlであり、0.5の比率を生じた。
【0067】
リファムピンのヒト経口投与は150および300mgのカプセルが利用できる。健康なヒト成人における単一の600mg用量に続いて、ピーク血清濃度は平均して7マイクログラム/mlであったが、4ないし30マイクログラム/mlの広い偏差を伴った。30分間にわたる健康なヒト成人への600mgの静脈内投与の結果、約17マイクログラム/mlの平均ピーク血清濃度をもたらした。
【0068】
チゲサイクリンの投与は好ましくは静脈内または筋肉内投与されるが、リファムピンは静脈内、筋肉内、経口、または減頬、肺内または経皮送達システムのような当該分野で知られた他の投与手段で投与することができる。共投与はこれらの方法のいずれかの組合せを含むことができる。例えば、チゲサイクリンは静脈内投与できるが、リファムピンは経口投与できる。共投与はいずれかの順番の同時または順次投与を含み、必ずしも、同時または同日または同一時間コーススケジュールでの投与を意味しない。好ましくは、チゲサイクリンおよびリファムピン双方の濃度は、共に最小阻止濃度を十分に超え維持される。
【0069】
本発明者らによる試験において、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌で感染し、チゲサイクリンで治療したウサギの群は、感染した未処理対照群、または治療器官の最後にバンコマイシンで治療した群よりも骨および骨髄においてより低いコロニー形成単位を示した。チゲサイクリンについてのMICおよびMBC(0.2μg/ml)は、バンコマイシン(0.39μg/mlおよび0.78μg/ml)よりも低く、これは骨髄炎感染の解消により導く。チゲサイクリンおよびリファムピンの関連性により骨および骨髄からの細菌の完全な根絶を可能とするが、バンコマイシン+リファムピン群においては、試料は依然として陽性であった。図3参照。治療は、毎日2回のチゲサイクリンの14mg/kgの皮下投与、および毎日2回の40mg/kgのリファムピンの経口投与で成功した。これらのデータは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染を持つウサギにおける骨髄炎がチゲサイクリンおよびリファムピンの組合せで効果的に治療されることを示す。
【0070】
従って、前記した特別な使用実験で用いた用量および治療レジメン(すなわち、投与の長さおよび態様、および治療の時間コース)、リストされた病原体での感染を治療するために患者に投与される通常の抗生物質の通常用量および治療レジメン、およびウサギ実験で用いた用量および治療レジメンのような本明細書中で提示した開示を仮定すれば、当業者であれば、哺乳動物に投与してチゲサイクリンおよび/またはリファムピンのようなさらなる抗微生物剤の薬理学上有効量を得て、骨髄炎および/または敗血症性関節炎を治療するのに適当な用量および治療レジメンを認識するであろう。当業者であれば、感染の程度、患者の健康全般、体重および年齢のような因子が望まれる用量および治療レジメンに影響するであろうことを認識するであろう。
【0071】
用語「薬理学上有効量」は、当該分野で知られた考慮と合致して、当業者によって適切な措置として選択される、限定されるものではないが、細菌増殖の阻害、細菌濃度の低下、感染からの回復時間の短縮、腫れ、壊死、発熱、疼痛、衰弱、および/または他の指標など感染または他の病気の兆候の改善、排出または低下を含む、過度な有害な副作用無くして薬理学的効果または治療的改善を達成するのに有効な抗微生物剤の量を意味する。
【0072】
本発明のもう1つの具体例は、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて骨、骨髄、関節および周囲組織の感染、および骨髄炎および/または敗血症性関節炎の治療用薬剤の製造のための、リファマイシン、リファムピン、リファペンチン、リファキシメン、またはストレプトバリシン(好ましくはリファムピン)よりなる群から選択される抗微生物剤と共に、またはそれ無くしてのチゲサイクリンの使用を提供する。
【0073】
もう1つの具体例は、リファマイシン、リファムピン、リファペンチン、リファキシミン、またはストレプトバリシン(好ましくはリファムピン)よりなる群から選択される抗微生物剤と共にまたはそれ無くしてのチゲサイクリン、および薬剤および動物処方で慣用的に用いられる医薬上許容される希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/または担体を含む、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて骨、骨髄、関節および周囲組織の感染、および骨髄炎および/または敗血症性関節炎の治療のための薬剤組成物を提供する。本発明の医薬処方はヒトおよび/または動物への投与のために適合させることができる。
【0074】
本発明のもう1つの具体例は、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて骨、骨髄、関節および周囲組織の感染、および骨髄炎および/または敗血症性関節炎の治療用薬剤の製造のための、リファマイシン、リファムピン、リファペンチン、リファキシミン、またはストレプトバリシン(好ましくはリファムピン)よりなる群から選択される抗微生物剤と共に、またはそれ無くしてのチゲサイクリンの使用を提供する。
【0075】
本発明の種々の具体例において、チゲサイクリンおよび/またはリファムピンまたは他の抗微生物剤はその医薬上許容される試薬として供することができるのは理解されるべきである。例えば、そのような塩は、限定されるものではないが、塩酸塩、硫酸塩またはリン酸塩を含むことができる。また、それらは、例えば、酢酸塩、クエン酸塩または乳酸塩も含むことができる。
【0076】
薬剤または薬剤組成物は、薬理学上有効量のチゲサイクリン、およびリファマイシン、リファムピン、リファペンチン、リファキシミン、またはストレプトバリシン(好ましくはリファムピン)よりなる群から選択される抗微生物剤の薬理学上有効量を達成する用量で投与される。薬剤組成物および/または薬剤は、さらに、医薬上許容される賦形剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/または担体を含む。これらは、限定されるものではないが、サッカロース、マンニトール、ソルビトール、レシチン、ポリビニルピロリドン、マイクロクリスタリンセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース;澱粉、ポリアクリレート、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびそれらの誘導体、トリアセチン、ジブチルフタレート、ジブチルセバケート、クエン酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、ラクトース、スクロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリコーン油を含むことができる。
【0077】
経口投与では、医薬処方は、例えば、錠剤、カプセル、エマルジョン、溶液、シロップまたは懸濁液として利用することができる。非経口投与では、処方はアンプルとして、またはそうでなければ水性または油性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンとして利用することができる。懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤に対する必要性は、勿論、特定の具体例で用いられるビヒクル中での活性化合物の溶解度を考慮する。加えて、処方は、生理学的に適合する保存剤および抗酸化剤を含有することができる。
【0078】
また、医薬処方は、カカオバターまたは他のグリセリドのような慣用的な坐薬基剤を含む坐薬として利用することもできる。別法として、処方は、予め選択された時間にわたって身体中でゆっくりと活性組成物を放出するデポ形態で利用できるようにすることができる。
【0079】
以下の実施例は、本発明の種々の具体例を説明する目的のために掲げるものであって、断じて本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0080】
実施例1:チゲサイクリンでのウサギにおける骨髄炎の治療
本実施例は、チゲサイクリン、およびリファムピンと組み合わせたチゲサイクリンでのウサギにおける骨髄炎の治療を示す。バンコマイシン、およびバンコマイシンとリファムピンの組合せでの比較実験も行った。データは、バンコマイシンよりも優れたチゲサイクリン、およびリファムピンと組み合わせたバンコマイシンよりも優れたリファムピンと組み合わせたチゲサイクリンでの改良された抗微生物効果を示す。加えて、リファムピンと組み合わせたチゲサイクリンは、そのテスト群内でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌に対する完全な保護を供した。
【0081】
拡散バイオアッセイについての標準曲線の作成
正常NZWウサギ血清(Fisher Scientific)および正常な未感染ウサギ脛骨を用いて、チゲサイクリン(Wyeth-Ayerst Research, Pearl River, New York)、バンコマイシン(Abbott Laboratories, Chicago, Illinois)、およびリファムピン(Merrell Pharmaceuticals Inc., Kansas, Missouri)に対する標準曲線を作成した。バイオアッセイを各薬物で行って、血清および/または脛骨中の抗生物質濃度について標準曲線を作成した。
【0082】
バイオアッセイで用いた生物はセレウス菌(Bacillus cereus)ATCC11778であった。いずれかの抗生物質での2倍系列希釈を用いて血清標準を調製して、正常NWZウサギ血清中の25μg/mlないし0.20μg/ml薬物の濃度を得た。骨溶出物標準は、滅菌ヒュームフード中70%エタノールで非感染ウサギ脛骨を徹底的に洗浄することによってチゲサイクリンに対して調製した。各脛骨をグラインダーを用いてほぼ0.5cmの小さなチップに破砕した。該チップを滅菌した50ml遠心チューブに入れ、秤量した。1ミリリットルの滅菌0.9%規定生理食塩水を骨チップの各グラムにつき加えた。溶液を2分間徹底的に渦巻かせた。得られた骨溶出物を180rpmにおいて4℃の冷たい場所にて12時間振盪した。試料をアッセイする前に4000rpmにて3分間遠心して、チップをペレット化した。
【0083】
各ウェルの周りの増殖阻害ゾーンの直径をミリメートル単位で測定した。血清および骨溶出物双方におけるチゲサイクリン濃度および血清中のバンコマイシンにおける得られた阻外ゾーンの大きさに対する既知の抗生物質濃度をプロットすることによって標準曲線を作成した。
【0084】
チゲサイクリンの薬物動態学
6匹の未感染ウサギのベースライン群に、滅菌水中で復元した14mg/kgチゲサイクリンを8日間12時間毎に皮下投与した。血液試料を以下の近似的間隔(初期抗生物質後処置):1時間、3時間、6時間、12時間、171時間および180時間(犠牲の時間)で抜いた。1/2ミリリットルの血液を標準技術で収集した。試料を直ちに滅菌した1.5ml遠心チューブに入れた。安楽死に続いて、双方の脛骨を70%エタノールで徹底的に洗浄し、次いで、全ての柔軟組織の除去後に得た。脛骨を別々の滅菌した50ml遠心チューブに入れ、−70℃で保存した。
【0085】
血清試料を、バイオアッセイを行うまで−70℃で貯蔵した。骨試料は先に記載したように調製した。シードした寒天プレートを調製し、試料が三連でシードしたプレートに置かれ、30℃にて18時間インキュベートした。各ウェルの周りの増殖阻外ゾーンの直径を測定し、チゲサイクリンの濃度を標準曲線から外挿した。
【0086】
最小阻止濃度および最小殺菌濃度の決定
チゲサイクリン、バンコマイシンおよびリファムピンの最小阻止濃度(MIC)は、抗生物質2倍チューブ希釈法を用いて決定した。最小殺菌濃度も決定した。この方法の検出限界は25μg/mlないし0.20μg/mlであった。
【0087】
脛骨骨髄炎の誘発
局所化された黄色ブドウ球菌骨髄炎を全6つの実験群内で全てのウサギの左側脛骨の骨幹端に経皮的に誘発した。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の株は治療を受けている骨髄炎を持つ患者から得た。
【0088】
感染性培地の調製:37℃にて、40μg/mlのオキサシリンで急増したミューラー・ヒントン・ブロス(Difco Laboratories, Detroit, Michigan)中で黄色ブドウ球菌を一晩インキュベートした。培養の細菌濃度を10CFU/mlに調整した。
【0089】
ウサギ感染手法:8ないし12週齢の2.0ないし3.5kgの体重のニュージーランドシロウサギ(Ray Nicholl's Rabbitry, Lumberton, Texas)を実験で利用した。安楽死後、18−ゲージ針を左脛骨の骨幹端の外側面を通じて骨髄内腔に経皮挿入した。次に、0.15mlの5%モルイン酸ナトリウム(American Reagent Laboratories, Inc., Shirley, New York)、0.1mlの黄色ブドウ球菌(10CFU/ml)、および0.2mlの滅菌規定生理食塩水、0.9%を順次注入した。注入は2週間行わせ、その時点で、骨髄炎の重症度をラジオグラフィーにより決定した(表1)。
【0090】
処理群:感染後2週間の最後に、局所化された脛骨近位端骨髄炎(グレード2ないし4とラジオグラフィーにより確認)を持つウサギを6つの実験群に分けた。群1(対照群):感染させたが、実験の持続の間は未処理のままであった。群2:ウサギを毎日2回の30mg/kgの皮下バンコマイシンで4週間処理した。群3:ウサギを毎日2回の30mg/kgの皮下バンコマイシン+0.5%メチルセルロース中で毎日2回の40mg/kgのリファムピンで処理した。群4:ウサギを毎日2回の14mg/kgの皮下チゲサイクリンで4週間処理した。群5:ウサギを群4と同一用量の皮下チゲサイクリン+0.5%メチルセルロース中で毎日2回の40mg/kgの経口リファムピンで4週間処理した。経口リファムピンを受けるウサギ(群3および5)には毎日経口栄養サプリメント(Ensure Plus(登録商標), Abbott Laboratories, Columbus, Ohio)およびLactobacillus spp.調製物(Kvvet Supply, 3190 NRoad, David City, Nebraska)を与えた。群6:ウサギを群4と同一の用量の皮下チゲサイクリンで1週間処理したが、最後の用量の投与から3時間後に犠牲にした。その時点で、血液および感染した骨試料を集め、チゲサイクリン濃度を測定した。群1ないし5は実験の処理段階後2週間未処理のままとし、感染から8週間後に犠牲にした。
【0091】
ラジオグラフィー評価
両側脛骨のラジオグラフを治療開始において(感染から2週間)、抗生物質療法の最後において(感染から6週間後)および犠牲時において(感染から8週間後)採取した。ラジオグラフは、各人が処理群に対して知らされていない3人の調査者によって視覚スケールに従ってスコア取りし(表1)、グレードを平均した。
【0092】
【表1】

【0093】
抗生物質の血清レベルの測定
抗生物質のピークおよびトラフレベルを初期抗生物質投与後1時間(ピーク)および12時間(トラフ)に群2および4について測定した。図5Aおよび5B参照。抗生物質濃度はバイオアッセイによって測定した。抗生物質拡散分析は前記したように行った。抗生物質の濃度は各標準曲線から外挿した。
【0094】
骨および骨髄のグラム当たりの細菌濃度の測定
犠牲にした後、総培養を右および左脛骨について行った。左脛骨および骨髄のグラム当たりのCFUで表した黄色ブドウ球菌の定量的カウントを全ての実験群で測定した。
【0095】
培養の調製:両側脛骨の骨髄および骨髄内の管を、左側脛骨の総培養分析および右側脛骨の品質保証チェックのために滅菌綿チップアプリケーターで拭った。接種したアプリケーターを血液プレート上に画線培養し、次いで、5mlの滅菌TSBに入れた。次いで、プレートおよびチューブを37℃にて24時間インキュベートし、増殖および/または濁度を記録した。
【0096】
骨髄を滅菌50ml遠心チューブに入れ、秤量した。骨断片を0.5cmのチップに破砕し、滅菌50ml遠心チューブに入れ、最終生成物を秤量した。滅菌規定生理食塩水0.9%を3:1の比率(3ml生理食塩水/骨または骨髄のグラム)で加え、懸濁液を2分間渦巻かせた。各懸濁液の6つの10倍希釈を滅菌正常生理食塩水0.9%で調製した。初期懸濁液を含む各希釈の20マイクロリットル試料を三連で血液寒天プレート上に平板培養し、37℃にて24時間インキュベートした。CFUを各脛骨試料について最大希釈にてカウントした。黄色ブドウ球菌濃度は骨または骨髄のグラム当たりのCFUにて計算した。計算された結果を骨試料については3倍し、骨髄については4倍して、生理食塩水中へのそれらの初期希釈および生理食塩水への骨髄の吸着を説明した。各々についての黄色ブドウ球菌濃度の平均logを計算した。
【0097】
実験データの統計学的解析
平均の標準偏差および標準誤差を、ディスク拡散測定、重量偏差、ラジオグラフグレード、および細菌数を含めた全ての生データについて計算した。直線回帰分析、最小二乗法を、抗生物質濃度の底10のlogを用いて抗生物質拡散標準曲線について行って、濃度(μg/ml単位)対測定された阻外ゾーン(ミリメートル単位)をプロットした。最小二乗計算から得られた傾きおよびy接点を利用して、次の全拡散測定を標準曲線からの抗生物質濃度のマイクログラム/ミリリットルに外挿した。
【0098】
最小阻止濃度および最小殺菌濃度
実験で用いたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の株(10CFU/mlの接種物)では、チゲサイクリンについての最小阻止濃度および最小殺菌濃度は、各々、0.2μg/ml未満および0.2μg/mlであった。バンコマイシンについての最小阻止濃度および最小殺菌濃度レベルは、各々、0.39μg/mlおよび0.78μg/mlであり、0.5のMIC/MBC比率を得た。リファムピンについての最小阻止濃度および最小殺菌濃度は、各々、0.78μg/mlおよび1.56μg/mlであり、0.5の比率を生じた。
【0099】
骨および血清における薬物キネティックレベル
抗生物質の全ての濃度は各標準曲線から求めた。未感染動物群の血清におけるチゲサイクリン(毎日2回の14mg/kg)の濃度の対数傾向を図1に示す。図1に示すように、チゲサイクリンはゆっくりと排出され、12時間まで(トラフ)MIC(0.2μg/ml)よりも高い定常的レベルを維持する。各薬物の投与後における感染したウサギの血清におけるチゲサイクリン(毎日2回の14mg/kg)およびバンコマイシン(毎日2回の30mg/kg)のピークおよびトラフを図5aおよび5bに示す。感染したウサギ群におけるチゲサイクリン(14mg/kg、Bid)の骨濃度は処理の最後において感染した脛骨で別々に測定し、それらは平均して0.78μg/ml+/−0.01μg/ml、未感染脛骨においては、それらは平均して0.49μg/ml+/−0.01μg/mlであった。差は統計学的に有意であった(p<0.05)。
【0100】
ラジオグラフによる知見
表1によると、段階2ないし4の骨髄炎は全ての感染した動物で誘発された。初期のラジオグラフグレードは群の間で同様であった。=14日におけるチゲサイクリン、チゲサイクリン+リファムピン、およびバンコマイシン+リファムピン群について平均グレードは、t=56日における平均グレードよりも有意に大きかった(p<0.05)。対照群は、バンコマイシン(0.5+/−0.2または25%)、チゲサイクリン(0.9+/−0.1または40.9%)、バンコマイシン+リファムピン(0.9+/−0.1または40.9%)またはチゲサイクリン+リファムピン(0.8+/−0.1または40.0%)群と比較すると、最小量の改善がラジオグラフィーにより示された(0.2+/−0.2または9.1%)。
【0101】
図2は、t=14およびt=56日における各群についての平均ラジオグラフの重症度を示す。実験の最後(t=56日)において、平均ラジオグラフのグレードを異なる群の間で比較した。t=56日におけるチゲサイクリン群、チゲサイクリン+リファムピン群およびバンコマイシン+リファムピン群についての平均グレードは、t=56日における対照群についての平均グレードよりも有意に低かった(t<0.05)。図2についての凡例は以下の通りである:対照=対照群、処理なし;バンコマイシン=皮下バンコマイシン処理群;Van+Rifam=経口リファムピンと共に皮下バンコマイシン処理群;Gar-93=皮下Gar-936処理群;Gar+Rifam=経口リファムピンを併用した皮下Gar-936処理群。
【0102】
骨培養
未処理の感染した対照(n=15)からの脛骨の高いパーセンテージは、9.21×10CFU/グラム骨の平均濃度におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌についての陽性培養(80%)を明らかにした。未処理対照と比較すると、バインコマイシン群(n=11)、チゲサイクリン群およびチゲサイクリン+リファムピン群は、全て、有意に低いパーセンテージの陽性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染を示した。バンコマイシン群においては、11の試料のうち2(18.2%)はMRSAに対して陽性であり、該群の平均細菌濃度は1.4×10CFU/グラム骨であった(p<0.05)。チゲサイクリン群においては、10の試料のうち1つがメチシリン耐性黄色ブドウ球菌に対して陽性であって、該群における平均細菌濃度は20CFU/グラム骨であり、対照またはバンコマイシン群いずれかよりも低い(p<0.05)。バンコマイシン+リファムピン群における1匹のウサギは対照よりも高い細菌濃度を示した。チゲサイクリン+リファムピン処理を受けるウサギの群は、脛骨から細菌の完全な根絶を示した(全ての試料において0.0CFU/グラム骨)。図3は、全ての群の間のCFU/グラム骨髄および骨を比較する。図3は、チゲサイクリン、およびリファムピンと組み合わせたチゲサイクリンが、対照に対して骨の感染および骨髄の感染について効果的な処理であることを示す。
【0103】
図3についての凡例は以下の通りである:対照=対照群、処理なし;バンコマイシン=皮下バンコマイシン処理群;Gar-936=皮下Gar-936処理群;バンコマイシン+リファムピン=経口リファムピンと共に皮下バンコマイシン処理群;Gar-936+リファムピン=経口リファムピンを併用した皮下Gar-936処理群。
【0104】
有害な事象
66匹の感染したウサギのうち、合計6匹が処理の完了の前に死亡した。チゲサイクリン処理群で死亡した5匹のウサギのうち1匹は重度の栄養障害のため19日に安楽死させた。もう1匹のウサギは胃腸炎のためチゲサイクリン処理の17日に死亡した。この群におけるウサギのうち3匹は胃腸炎および麻酔剤に対する過敏症のため28日に死亡した。チゲサイクリン+リファムピン群の1匹のウサギは胃腸炎のため15日の処理の間に死亡した。胃腸炎は大腸の正常なフローラーの変化によって引き起こされたというのが最も高い。全てのウサギは体重偏差につき毎週モニターした。対照群は最大の平均体重増加を示し(0.58kg+/−0.27)、バンコマイシンはその次に大きな体重増加を示し(0.39kg+/−0.26)、バンコマイシン+リファムピン群は3番目に大きな体重増加を示した(0.21kg+/−0.32)。チゲサイクリン群(−0.05kg+/−0.32)およびチゲサイクリン+リファムピン(−0.39+/−0.31)群は共に抗生物質処理の後に体重が減少した。チゲサイクリン群およびチゲサイクリン+リファムピン群におけるほとんど全てのウサギは、食欲低下、脱水、下痢および/または体重減少を含む胃機能障害の軽度から重度の兆候を抗生物質開始からほぼ1.0ないし1.5週間後に示した。図4AおよびBは全ての群の間の体重偏差を示す。図4AおよびBについての凡例は以下の通りである:対照=対照群、処理なし;バンコマイシン=皮下バンコマイシン処理群;Vanco+リファムピン=経口リファムピンを併用した皮下バンコマイシン処理群;Gar-936=皮下Gar-936処理群;Gar-936+リファムピン=経口リファムピンを併用した皮下Gar-936処理群。
【0105】
安全性に関しては、より多数の死亡および副作用がチゲサイクリンで処理したウサギの群で観察された。チゲサイクリンによる結腸炎は、腸の正常な微生物フローラーの多数の破壊によって引き起こされたのであろう。該兆候は経口プロバイオティックの投与において減少した。バンコマイシンのより狭い範囲とは対照的にチゲサイクリンの広い抗微生物スペクトルは処理群の間で観察された差を説明する助けになるであろう。
【0106】
結果
各組織における各動物についてのカウントデータを表2に挙げる。表中のカウントは各組織についてなされた三連測定の平均である。表2におけるデータの精査は、テスト品で処理した処理群においては、ほとんどまたは全ての動物におけるカウントがゼロであったことを明らかにする。対照群において非ゼロカウントは、15匹の動物のうちの5匹からの骨髄、および15匹の動物のうち11匹からの骨で測定された。特に骨について、対照群において非ゼロカウントの大きさにかなりの変動があった。
【0107】
各処理群における陽性および陰性培養の数、および対照との比較から求められたp-値は以下の通りであった。
【0108】
【表2−1】

【0109】
【表2−2】

【0110】
チゲサイクリン、バンコマイシン、およびリファムピンのウサギ骨髄炎比較からのデータ
骨髄においては、チゲサイクリンおよびチゲサイクリン+リファムピン処理群における陽性培養の割合は0であり、これは、対照群における0.33(5/15)の割合と比較して、通常のp=0.05レベルにおいてほとんど統計学的に有意であった(p=0.06)。バンコマイシンおよびバンコマイシン+リファムピン群における割合は対照群とは統計学的に有意な差はなかった。骨においては、テスト品で処理した群の各々における陽性培養の割合は、対照群における割合よりも統計学的に著しく低かった。
【0111】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の動物モデル、心内膜炎においては、14mg/kg bidチゲサイクリンは40mg/kgバンコマイシンよりも効果的であることを示された(Murphy, Antimicrob Agents Chemother 2000;44(11):3022−3027)。ラットモデルにおいては、80mg/kg/日と高い用量を投与した。しかしながら、本実験に用いるウサギモデルにおいては、1日当たり14mg/kgよりも高い用量の投与が動物において関連罹患率および死亡率を引き起こした(データは示さず)。従って、前記引用の用量は本実験で用いられた。目標はウサギにおけるチゲサイクリンの薬物動態学を調べることではなかったが、いくつかの薬物レベル測定を行って、適切な用量が動物モデルで用いられていることを確認した。データは、血清における薬物レベルが依然として最後の投与から12時間後に用いたブドウ球菌株のMICを超えたことを確認する。さらに、薬物は関連骨貫通を呈し、チゲサイクリンの治療レベルが感染したおよび未感染の骨で見出された。感染した骨で見出された薬物の高い濃度はもう1つの関連する所見があり、これはさらなる実験を要する。
【0112】
実施例2:100mgの単一静脈内投与後におけるヒト組織でのチゲサイクリンの分布
本実施例は、チゲサイクリンの単一静脈内投与後におけるヒト対象での選択された組織の貫通を示す。データは、長期の半減期、および定常状態における高容量の分布を伴う迅速な分布相を示す。それらは、さらに、ヒト対象における骨、滑液、肺、膀胱および結腸の貫通を立証する。貫通は骨および関節の感染の治療を改良する。
【0113】
ヒトにおける静脈内チゲサイクリンの薬物動態学の実験は、長期の半減期(40ないし60時間)および定常状態における高容量の分布と共に、迅速な分布相があることを示した。放射性標識チゲサイクリンでの動物実験は、この迅速な分布相および定常状態における高容量の分布が、肺および骨を含む組織へのチゲサイクリンの貫通を表すことを示唆する。Sprague-Dawleyラット(18匹の雄)には30分の注入によって3mg/kgの用量の炭素−14チゲサイクリンを与えた。濃度または放射能を、注入の最後、および注入の最後の後1、8、24、72および168時間での3ラット/時点の組織で測定した。全ての組織について、ピークの放射能濃度は注入の最後に観察された。一般に、放射能はほとんどの組織によく分布し、最高濃度は以下のとおりである:骨>骨髄>唾液腺、甲状腺、脾臓および腎臓。これらの組織の各々において、血漿における濃度−時間曲線下面積に対する組織における濃度−時間曲線下面積の比率は>10であった。
【0114】
本実験の目的は、肺、結腸、膀胱組織、骨および滑液における選択された時点でのチゲサイクリンの組織および対応する血清濃度を決定することであった。試料は、単一用量のチゲサイクリンが静脈内投与された肺、結腸、膀胱、または骨の外科的処置、または腰椎穿刺を計画された対象から採取した。
【0115】
肺、結腸、膀胱、骨および滑液いずれかの予め特定した組織/流体サンプリングを、30分間にわたって投与した100mgチゲサイクリンの単一用量の開始から4時間、8時間、12時間または24時間後に外科的処置の間に各対象で行った。血清は0時間(初回投与の前)、ほぼ30分(注入の終わり)、および組織/流体収集に対応する時点において全ての対象から収集した。組織および血清濃度は後に記載する方法に従って測定した。
【0116】
血清試料についての調査パラメータ
チゲサイクリンを受けた実験対象からのヒト血清および組織の試料は、すでに有効化されている方法に従って分析した。血清試料および滑液(0.2ml)をアセトニトリル中の0.6ml内部標準と混合し、上清を蒸発乾固し、残渣を200マイクロリットルの移動相において復元した。復元した試料のアリコット(10マイクロリットル)をLC/MS/MSに注入した。
【0117】
データはPE SCIEX「Analyst」バージョン1.3ソフトウエアによって取得し、解析した。1/x重み付けでの直線回帰を用いて、較正曲線のためのデータの最良適合を得た。定量の下方限界は血清および滑液試料では10ng/mlであり、結腸および膀胱試料では10ng/gであり、骨試料では30ng/gであった。
【0118】
ヒト血清中で調製した、低(25ng/ml)、中(500ng/ml)および高(1500ng/ml)における質対照試料(2組)を血清試料の各組と共に分析した。結腸、膀胱および肺試料では、25、500および1500ng/gにおける質対照試料の2組を組織試料の各組と共に分析した。骨では、100、500および1500ng/gにおける質対照試料の2組を組織試料の各組と共に分析した。
【0119】
曲線は、血清および滑液については10ないし200ng/mlの範囲で、および組織については定量の下方限界から2000ng/gの範囲で直線であった。もしたった2つの質対照試料が標的の85ないし115%の範囲外であって、同一濃度における2つの質対照試料がその範囲外にあれば、ランは成功したと考えられた。もし同一濃度における2つの質対照試料がその範囲外であれば、残存する質対照試料の間の濃度のみを報告した。
【0120】
血清試料についての材料および方法
チゲサイクリンはLC/MS/MS方法を用いてヒト血清で測定した。チゲサイクリンの一次ストック溶液はメタノールに溶解させることによって1mg/mlで調製した。第二のストック溶液は、アセトニトリルでほぼ40,000ng/mlの濃度まで希釈することによって一次ストック溶液から調製した。該ストック溶液は使用中でない場合には−20℃で貯蔵した。Tert-ブチル-d9-チゲサイクリンの一次内部標準溶液はメタノール中で1mg/mlの濃度で調製した。第二の内部標準ストック溶液は、0.1%トリフルオロ酢酸を加えたアセトニトリル中で一次ストック溶液を100マイクログラム/mlの濃度まで希釈することによって調製した。一次および第二のストック溶液は−20℃で貯蔵した。希釈内部標準は、アセトニトリル/0.1%トリフルオロアセテートで容量まで希釈することによって調製した。希釈内部標準は使用中でない場合には4℃にて貯蔵した。分析の日に、第二のストック溶液を使用前に室温に戻して、標準曲線希釈溶液を調製した。標準曲線は、ブランクヒト血清への系列希釈によって、ほぼ2000、1600、1000、500、250、100、50、20および10ng/mlで調製した。
【0121】
抽出手法は以下の通りであった:200マイクロリットルのキャリブレーター、質対照または試料に、600マイクロリットルの内部標準希釈溶液を加え、渦巻かせて混合した。試料を13000rpmで10分間遠心して、相を分離し、上清を培養チューブに移した。試料をSpeed Vac中で蒸発乾固させた。残渣は、200マイクロリットルの移動相中で音波処理することによって復元し、10マイクロリットルをLC/MS/MS中に注入した。
【0122】
該LC/MS/MSは、4500mvにおけるイオンエネルギー、および450℃のイオンスプレイ温度にて、ネビュライザーガス、カーテンガス、および衝突ガスとして6psiの窒素を用い、低分解能において、16%アセトニトリル、6%メタノール、78%水、および0.1%テトラフルオロアセテートの移動相、流速ほぼ0.35ml/分、注入容量10マイクロリットル、ディテクター条件:周期的に119スキャン、MRMスキャンタイプ、正の極性、ターボイオンスプレイ源にて、HPLC(Agilent 1100)、マススペクトロメーター(Applied Biosystems API3000)、カラム(Aquasil C18、50×2.0mm I.S.、5ミクロン(ThermoKeyStone))から構成された。ディテクターはチゲサイクリンおよび内部標準をモニターした。
【0123】
試料は3つの分析ランにわたって分析した。試料分析の各日に、質対照試料および実験対象試料と共に完全な標準曲線を作成した。最高キャリブレーターよりも大きな測定濃度を有する試料は、100マイクロリットルの試料を900マイクロリットルのブランクヒト血清と混合し、既に記載したように200マイクロリットルの混合物を分析することによって希釈した。血清中のチゲサイクリンの定量は、適当なマトリックスで調製した標準曲線と比較することによって達成され、(1/濃度)重み付け因子を用いて計算した。
【0124】
チゲサイクリンについての定量の限界は10ng/mlであった。チゲサイクリン異性体のいずれかの決定に干渉するピークは事前の用量試料のいずれにおいても検出されなかった。全てのキャリブレーターおよび質対照試料は範囲内であった(標的の85ないし115%)。試料の結果を表1に示す。標準曲線およびキャリブレーターの結果を表4に示す。
【0125】
組織試料についての調査パラメーター
ストック溶液および内部標準溶液は、前記血清試料の調査パラメーターにより調製した。標準曲線希釈溶液はほぼ10000、8000、5000、2500、500、250、100および50mg/mlで調製した。分析の日に、40マイクロリットルの希釈標準溶液を200mgの組織に加えて、2000、1600、1000、500、250、100、50、25および10ng/mlにおいてキャリブレーターを作成した。イヌ組織をヒト組織に置き換えて、キャリブレーターおよび質対照試料を調製した。イヌ膀胱の入手が難しいため、イヌ結腸を用いて、ヒト膀胱の分析用の標準曲線を作成した。結腸は、膀胱試料の分析用の適切な代替マトリックスであることが示された。
【0126】
抽出手法は以下の通りであった:200mgのキャリブレーター、質対照または試料に3mlの内部標準希釈溶液を加え、ハンドホモジナイザーを用いて試料をホモジナイズした。試料を14000rpmにおいて10分間遠心して、相を分離し、上清を遠心チューブに移した。試料をSpeed Vac中で蒸発乾固させた。200マイクロリットルの移動相中で音波処理することによって残渣を復元し、10マイクロリットルをLC/MS/MSに注入した。LC/MS/MS条件は血清試料を分析するのに用いたのと同一であった。滑液試料は血清試料と同一の方法で抽出した。
【0127】
試料は数回の分析ランにわたって分析した。試料分析の各日に、質対照試料および組織と共に完全な標準曲線を作成した。標準曲線は分析すべき組織試料に適切な代替マトリックスで調製した。最高キャリブレーター(200ng/g)よりも大きな測定濃度を有する試料を、標準曲線で用いる濃度の10ないし20倍にて内部標準と共にホモジナイズした。アリコット(300マイクロリットル)(10倍希釈)を蒸発乾固させ、ピーク面積比率およびピーク面積が標準曲線の範囲内となるように試料を復元した。
【0128】
組織におけるチゲサイクリンの定量は、適当なマトリックスにおいて作成した標準曲線との比較によって達成され、(1/濃度)の重み付け因子を用いて計算した。滑液では、キャリブレーターはリン酸緩衝生理食塩水で調製した。キャリブレーターの第二の組は、以下の成分よりなる人工滑液で調製した:100mmol/Lグルコース、2.03ないし2.26g/LヒアルロネートおよびpH7.4に調整した約8g/Lアルブミン。PBSおよび該回復で作成された較正曲線、補正因子は、PBSからの人工滑液試料の測定濃度対力の関係式(y=y0+axb)を用いる試料の理論的濃度の直線回帰を行うことによって計算された。実験対象試料の測定濃度は較正曲線の低い範囲にあったので、20ないし500ng/mlのキャリブレーターのみを用いて、この回帰を計算した。この回帰の結果は強い相関(r=0.9996)を示し、ASFキャリブレーターの逆算濃度は標準曲線の完全な範囲にわたって(20ないし2000ng/ml)それらの標的値の94および122%の間であった。次いで、回帰方程式を、PBS標準曲線からの実験対象試料の濃度に適応し、滑液試料中のチゲサイクリンの修正された濃度を決定した。
【0129】
チゲサイクリンについての定量の限界は10ng/mlであった。チゲサイクリンの測定可能な濃度は分析した全てのマトリックスで見出された。試料と同様な濃度における全てのキャリブレーターおよび質対照試料は範囲内にあった(標的の85ないし115%)。試料の結果を表4(組織)および表5(滑液)に掲げる。
【0130】
結果
データは、長期の半減期、および定常状態における高容量の分布と共に迅速な分布相を示す。それらは、さらに、ヒト対象における骨、滑液、肺、膀胱、および結腸の貫通を確立する。加えて、滑液における濃度は、同様な時点における血清からのデータと比較して、チゲサイクリンの迅速な分布および滞留を示す。
【0131】
【表3−1】

【表3−2】

【0132】
【表4−1】

【表4−2】

【0133】
【表5】

【0134】
実施例3:チゲサイクリンで処理したラットにおける組織分布
本実験を行って、雄Sprague-DawleyおよびLong-Evansラットへの[14C]-チゲサイクリンの単一の30分の3mg/kg静脈内注入に続き、蛍光画像を用いる全身オートラジオグラフィーによって組織における[14C]-チゲサイクリン由来放射能を定量した。
【0135】
材料および方法
チゲサイクリンはAnalytical Department, Wyeth-Ayerst Research, Montreal, カナダ国によって供給された。[14C]-チゲサイクリンはAmersham(Boston, MA)によって供給された。バルク[14C]-チゲサイクリンの放射化学的純度および特異的活性は、各々、98%および93.6マイクロCi/mgであった。
【0136】
滅菌水を用いて、静脈内投与用液を作成した。血漿および尿中の放射能をカウントするのに用いた液体シンチレーションカクテルはUltima Cold(Packard Instruments Co., Meriden, CT)であった。
【0137】
Oximate-80 Robotic Automatic Sampler(Canberra-Packard Co., Downers Grove, IL)を装備したモデル3078 Tri-Carb Sample Oxidizerを血液試料の燃焼で用いた。Permafluor E液体シンチレーションカクテル(Packard Instruments Co., Meridan, CT)、Carbo-Sorb-E(Packard Instruments Co., Meridan CT)二酸化炭素吸収剤および脱イオン水を用いて、オキシダイザー中での試料の燃焼によって生じた放射性二酸化炭素を捕獲した。血液アリコットを、燃焼のためにコンブスト−コーンおよびカバーパッド(Canberra-Packard Co., Downers Grove, IL)に移した。
【0138】
全ての放射能測定(量、血液および血漿)は、Ultima Goldまたはトルエン標準曲線と共にTri-Carbモデル2700TR液体シンチレーションカウンター(Canberra-Packard Co., Downers Grove, IL)を用いて行った。1分当たりのカウント(CPM)は、既知の放射能の外部標準を用いることによって1分当たりの崩壊(DPM)に変換した。各標準のクエンチは、外部放射性標準(TSIE)の変換されたスペクトル指標によって決定した。検出の下方限界はバックグラウンドの2倍と定義された。
【0139】
雄Sprague-DawleyおよびLong-EvansラットはCharles River Breeding Laboratries, Raleigh, NCから入手し、実験の開始に先立って少なくとも1週間隔離した。静脈内投与用液(1.02mg/ml)は、6.90mgの標識チゲサイクリンおよび5.30mgの[14C]-チゲサイクリンを12mlの滅菌水に溶解させることによって調製した。投与用液を希釈し、Ultima Gold シンチレーションカウンティングカクテル(Packard Inc.)中で直接ラジオアッセイを行った。合計放射能の全ての測定は、Packard 2700TR液体シンチレーションスペクトロメーター(Canberra-Packard Co.)で行った。
【0140】
ラット体重は0.206ないし0.301kgの範囲であった。全てのラットには、Harvard注入ポンプ22(Harvard Appartus, Southnatick, MA)を用いて頸静脈カニューレを介して単一の30分間の静脈内注入投与の[14C]-チゲサイクリングを受けさせた(3ml/kg、活性部位として3mg/kg、40マイクロCi/kg)。全てのポンプを化合物の投与に先立って較正した。ラットを投与後の所定の時間に心臓穿刺放血に先立ってイソフルランで麻酔した。Sprague-DawleyおよびLong-Evansラットを投与から0.5、8.5、23、72、168および336時間後に時点当たり1匹を犠牲にした。
【0141】
対照全血は雄Sprague-Davleyラットから、ヘパリナトリウムを含有する試験管へ収集した。プール血液を用いて、較正標準および質対照試料を調整した。標準を用いて、全血定温セクションの組織における放射性標識薬物分布の低容量の標準曲線を作成した。各ラットに関して同一CMCブロックに包埋された質対照を、ラット全身定温セクションの厚みの断面内および断面間変動を評価するために用いられた。
【0142】
14C]-グルコース(New England Nuclar, Boston, MA)の200マイクロCi/mlストック溶液を雄SPrague Devleyラットからの全血で系列希釈して、以下の濃度の14の標準を得た:832、485、250、122、48.6、24.3、12.0、4.72、2.36、0.853、0.638、0.405、0.327、および0.221nCi当量/ml。低、中、および高GC濃度は12.39、25.9および508nCi当量/mlであった。
【0143】
安楽死の直後に、各ラットを凍結するまでヘキサンおよびドライアイス(−75℃)浴に全部を浸漬した。各死体を乾燥し、包埋するまで−30℃で貯蔵した。低粘度の10%カルボキシメチルセルロース(CMC)を加えることによって型(15cm×45cm)に包埋し、ヘキサン−ドライアイス混合物中にステージを入れることによって凍結させた。
【0144】
凍結したブロックをJung Cryomacrocut 3000(Leica Instruments GmbH, Nussloch, ドイツ国)に移し、セクショニングの前に少なくとも12時間、クリオトーム内温に対して一晩平衡化させた。
【0145】
各凍結されたラットを-20℃にて矢状方向にセクション化した。十分な数のセクションを集め、注目する全ての組織のサンプリングを確実とした。セクションをクリオチャンバー中で一晩脱水し、次いで、CaSOを含有するデシケーターに迅速に移して、室温に平衡化させつつ雰囲気水分の凝縮を防いだ。セクションを板紙上に設置し、ユニークな識別番号が付された[14C]-標識黒色インクで標識した。放射性インクは等容量のIndia Incおよび[14C]-CL-284846(100マイクロCi/ml)で調製した。Scotchテープの小さなピースを乾燥した放射性インク上において、貯蔵蛍光スクリーンの汚染を防いだ。
【0146】
蛍光画像プレート、BAS-SR2025(Fuji Photo Film Co., Japan)を、IPイレーザー(Raytest, USA Inc., New Castle, DE)を用いて明るい可視光線に20分間暴露して、バックグラウンド放射を除去した。セクションおよび較正血液標準を、同時に、Ipsと直接接触させ、7日間暴露した。全てのセクションを鉛遮蔽ボックス中で室温にて貯蔵して、バックグラウンドレベルを最小化した。蛍光画像は、Fujifilm BAS-5000 Bio-Imaging Analyzerを用いて生じさせ、MCID M2ソフトウエア、バージョン3.2(Imaging Research Inc., St.Catherines, Ontario, カナダ)によって定量した。MCIDソフトウエアプログラム中の円状サンプリングツールを用いてSTDおよびQCを分析した。全身セクション中の注目する領域を、領域サンプリングツールにて手動で描いて、カウントデータを出した。
【0147】
選択された組織における放射能濃度は、較正曲線に基づいて得られたオートラジオグラムのデジタル解析によって決定された。各標準について光刺激を受けた光/mm(PSL/mmからバックグラウンドを差し引いてnCi/gに変換)、示された濃度(nCi/g)対MCID応答の較正曲線は、重み付けした(1×x)直線回帰解析によって作成した。次いで、直線回帰曲線を用いて、実験試料の未知の放射能濃度を決定した。可視的に放射能のレベルを呈した注目する領域(ROI)を個々に概略を示し、またはサンプリングツールで自動スキャンして、放射能の濃度を得た。QWBARについての定量の限界を決定するために、テストされた血液標準からの偏差の係数を決定し、定量の限界は、偏差の係数が15%を超えない最低濃度と定義した。
【0148】
血漿アリコットを10mlのUltima Gold(商標)シンチレーションカウンティングカクテル(Packard Inc.)と合わせ、直接的にカウントした。モデル307試料オキシダイザー(Packard Instrument Company)を用いて血液試料を燃焼させた。得られた[14C]OをCarbo-Sorb(登録商標)に捕獲し、シンチレーションカクテル(PermaFlour(登録商標)E+)を加え、試料をLSCによって定量した。
【0149】
試料を、Packard 2700TR液体シンチレーション分光光度計(Canberra-Packard Co.)にて10分間または0.2シグマの間カウントした。1分当たりのカウントを、既知の放射能の外部標準から作成したクエンチ曲線を用いることによって1分当たりの崩壊に変換した。各標準および試料のクエンチは、十分なスペクトルシフトによって決定した。LSCについての定量の限界(LOQ)はバックグラウンドの2倍と定義された。
【0150】
14C]-GAR-936-由来放射能についての薬物動態学的パロメーターは、Gibaldi and Perrierに記載されたモデル独立性アプローチおよび標準手法を適用する、静脈内注入(モデル202)、Non-Compartment Analysis Module of WinNonlin, ver.1.1(Scientific Consultants, Inc. Research Triangle Park, NC)を用いて計算した。平均濃度を決定するにおいて、定量の限界(5.10ng当量/g)未満であるいずれかの値の代わりに0で置き換えた。IV注入投与では、C30分は30分(最初のサンプリング時点)における濃度であった。IV投与の後における最大血漿濃度(Cmax)およびピーク濃度の対応する時間は、個々の濃度−時間データからの数値の精査によって直接的に得られた。末端半減期はln2/λzの比率によって計算し、ここに、λzは濃度時間曲線の末端傾きから求めた。ゼロから無限大までの血漿濃度対時間下面積は、台形則を用いて計算し、ここに、C最後は最後の測定可能な血漿濃度である。血漿濃度に対する組織濃度の比率は以下の方程式に従って計算した:C組織/C血漿、ここに、C組織は組織中の薬物濃度(ng当量/g)と等しく、C血漿は血漿中の薬物濃度と等しい(ng当量/g)。
【0151】
14C]-チゲサイクリン(ベース)の特異的活性は、重力アッセイによって43.94μCi/mgであると決定された(表1)。用量溶液の濃度は1.02mg/mlであった。動物は、3mg/kgの標的用量と比較して3.09±0.11/kgの平均用量を受けた。
【0152】
結果
14C]-チゲサイクリンの3mg/kg IV注入に続いての、Sprague-Dawleyラットの組織における合計放射能の個々の濃度(ng当量/g)を表6に示す。組織における薬物動態学パラメーターを表7に示す。血漿に対する組織の比率を表8に示す。
【0153】
合計放射能の個々のピーク濃度(Cmax)は実質的に全て組織について注入の最後に起こった。放射能の最高濃度を持つ組織は腎臓(7601ng当量/g)、肝臓(7300ng当量/g)および脾臓(6627ng当量/g)であった(表7)。放射能の最低ピーク濃度を持つ組織は脳(54ng当量/g)および目(108ng当量/g)であった(表7)。Cmaxはほとんどの(70%)組織につき2000ng当量/gよりも大きかった。Cmaxにおけるチゲサイクリン由来放射能は、脳、目、脂肪および精巣を除いて全ての組織で血漿においてより低かった(表7)。24時間までは、全ての組織は目を除いて血漿よりも高い濃度の[14C]-チゲサイクリン由来放射能を有した(表6)。
【0154】
ほとんどの組織についての168時間における放射能の個々の組織濃度は、骨、腎臓、肝臓、皮膚、脾臓および甲状腺を除いて、それらのCmaxに対して1%以下まで減少した(表6)。336時間までほとんどの組織は骨、腎臓、皮膚および甲状腺を除いて定量限界(5.10ng当量/g)未満の濃度を有した。しかしながら、これらの組織(骨、甲状腺、腎臓および皮膚)における濃度はCmaxから大きく低下した。一般に、骨、腎臓、皮膚および甲状腺における336時間での[14C]-チゲサイクリン−由来放射能の組織濃度は、各々、Cmaxの19%、0.18%、0.43%および6%であった。
【0155】
組織負荷の尺度としてAUCを用い、骨および甲状腺はいずれかの他の組織よりもかなり大きな負荷を有した。最高AUC値は骨(794704ng当量・時間/g)、甲状腺(330047ng当量・時間/g)、唾液腺(110979ng当量・時間/g)、腎臓(70704ng当量・時間/g)、甲状腺(33047ng当量・時間/g)、脾臓(70522ng当量・時間/g)および肝臓(53527ng当量・時間/g)におけるものであった。最低の負荷を持つ組織は脳(2865ng当量・時間/g)、脂肪(3500ng当量・時間/g)および精巣(10303ng当量・時間/g)であった。骨におけるAUC暴露は、最高の次の組織(甲状腺)よりも2倍高かった。組織:血漿AUC比率の値は組織の大部分について1よりも大きかった(表7)。
【0156】
14C]-チゲサイクリン由来放射能についての末端半減期は、24時間の血漿t1/2と比較して、脂肪における短い5時間から骨および甲状腺における200時間以上の範囲であった(表7)。最長の排出半減期を持つ組織は甲状腺(804時間)、骨(217時間)、皮膚(182時間)および腎臓(118時間)であった(表7)。
【0157】
組織:血漿濃度比率(表8)は、0.5時間および8.5時間の時点における脳、目、精巣および脂肪を除いて大部分の組織につき1よりも大きかった。24時間においては、全ての比率は1よりも大きかった。血漿に対する最高組織の比率は72時間においていくつかの組織で起こった:骨(414)、甲状腺(56)、皮膚(19.3)、脾臓(16.7)、および腎臓(11.1)。血液:血漿比率は全ての時点につき1よりも大きく、これは、[14C]-チゲサイクリン由来放射能の血液細胞への実質的な分配があることを示唆した。
【0158】
Long-Evansラットにおけるメラニン含有組織(皮膚および眼球血管膜)に対する[14C]-チゲサイクリン由来放射能の分布もまた投与から336時間後まで見積もった。Long-Evansラットにおける[14C]-チゲサイクリン由来放射能の血液および血漿濃度はSprague-Dawleyラットと同様であった(表2および5)。ピーク放射能濃度(Cmax)は皮膚、眼球血管膜、血漿および血液については注入の最後(0.5時間)で観察された(表9)。皮膚および眼球血管膜における[14C]-チゲサイクリン由来放射能のCmaxは、各々、1997および2052ngであった。皮膚および眼球血管膜における[14C][14C]-チゲサイクリン由来放射能のAUCは、各々、109296および233288ng当量・時間/gであった。皮膚および眼球血管膜についての末端半減期は、各々、473および20時間であった(表10)。半減期値は疑わしい意味のものであった。というのは、濃度−時間プロフィールにおける排出相は確実に同定できなかったからである。これは、眼球血管膜および皮膚についてのAUCデータの外挿にも反映されている。
【0159】
組織:血漿濃度の比率は、全ての時点において、皮膚および眼球血管膜について1を超えていた(表7)。血漿に対する全最高組織比率は皮膚(179)および眼球血管膜(393)において72時間で起こった。組織:血漿AUC比率は、各々、皮膚および眼球血管膜につき8.45および18.0であり、これは、これらの組織が有意な濃度の[14C]-チゲサイクリン由来放射能を選択的に保持することを示す。データは、放射能が、ラットの目のメラニン含有領域に選択的に分配されたことを示唆する。皮膚および眼球血管膜についての336時間における放射能の平均組織濃度は、各々、Cmaxの8および1%まで減少した。
【0160】
【表6】

【0161】
【表7】

【0162】
【表8】

【0163】
【表9】

【0164】
【表10】

【0165】
【表11】

【0166】
考察
放射能の組織への分布は、Sprague-DawleyおよびLong-Evansラットへの[14C]-チゲサイクリンの単一の30分間の静脈内注入(3mg/kg)に続いて評価した。放射能は、ほとんどの組織について注入の最後(0.5時間)に観察されたCmaxを伴って迅速に組織に分布された。組織濃度は、組織切開方法によって予め行われた実験と同様であった。種々の組織へのチゲサイクリンの広範な分布は、非常に大きな容量の分布を示唆する。この知見は、ラットおよびイヌにおける高容量の分布の以前の所見を裏付ける。一般に、組織のほとんどからの放射能の排出は血漿からの速度よりも遅かった。
【0167】
Sprague-Dawleyラットの組織における[14C]-チゲサイクリン誘導放射能の濃度はほとんどの時点において血漿よりも高かった。ほとんどの組織について168時間における放射能の組織濃度は、注入値の各終点に対して、1%以下まで減少した。336時間まで骨、甲状腺、腎臓および皮膚における濃度は、各々、Cmax値の19%、6.25%、0.18%および0.43%まで減少した。
【0168】
平均AUC値によって示された、Sprague-Dawleyラットにおける暴露の最大レベルを持つ組織は骨、甲状腺、唾液腺、腎臓および脾臓であった。排出半減期はかなり長く(5ないし217時間)、骨、皮膚および甲状腺は最長の排出半減期を有する。甲状腺組織についての半減期の値は問題がある。というのは、濃度−時間プロフィールにおける排出相は確実性をもって同定できなかったからである。これはAUCデータのAUCへの外挿にも反映されている。
【0169】
血漿に対する組織、および血漿に対する血液の比率は全ての時点につき1よりも大きく、これは、[14C]-チゲサイクリン由来放射能の組織および血液細胞への実質的な分配があることを示唆する。この実験からの血漿に対する組織の比率の結果は、ミノサイクリンのIV投与の後におけるラットからの血漿に対する組織の比率の結果と同様である。
【0170】
理論に拘束されるつもりはないが、骨における高い放射能濃度はチゲサイクリンのカルシウムへのキレート化によるものであろう。カルシウムまたは他の金属イオンとでキレート化錯体を形成し、それにより、骨に接着するテトラサイクリン(ミノサイクリン、クロロレテトラサイクリン)の能力は文献に記載されている。本研究においては、[14C]-チゲサイクリン由来放射能は骨において有意に保持され、AUCは794704ng当量・時間/gであった。この値は血漿よりもほぼ75倍大きい。217時間の見掛けの排出半減期も骨で観察された。骨における放射能の滞留は、5mg/kg静脈内投与に続いて観察された雄Sprague-Dawleyにおける質量バランス実験での[14C]-チゲサイクリンの幾分不完全な回収(89.4±2.50%)を説明するであろう。骨における暴露(AUC)は次に高い組織(甲状腺)よりも2.5倍高かった。[14C]-チゲサイクリン由来放射能は骨および甲状腺組織につき強力な親和性および長い半減期を示し、これは他の既知のテトラサイクリンと同様である。
【0171】
14C]-チゲサイクリン由来放射能濃度は腎臓においては336時間まで検出可能であり、骨および甲状腺を除いて他の組織よりも高かった。しかしながら、質量バランス実験ならびに胆嚢および尿排泄実験においては、[14C]-チゲサイクリン誘導放射能のほとんどは最初の48時間以内に排出され、これは、いくらかの[14C]-チゲサイクリン誘導放射能が腎臓組織に対する高い親和性でもって結合できることを示唆する。腎臓組織への結合もテトラサイクリンで知られている。
【0172】
QWBARによって測定されるように、ラット眼組織に存在する放射能は、Long-Evansラットにおける皮膚に加えて眼球血管膜のメラニン含有組織に選択的に分配されるに過ぎなかった。眼球血管膜は0.5時間後に全ての時点において比較的高い放射能濃度を有し、これは、暴露の有意なレベルおよび長い半減期を示唆する。組織切開方法を用いる以前に行われた実験において、無傷眼球の評価はこの器官に存在したが、いずれかの特異的眼組織に対してこの放射能の位置を関連させることができなかった。
【0173】
慣用的液体シンチレーション計測(LSC)によって測定された14の標準および28のQCSの濃度は、これらの同一の標準についてのQWBAR評価のそれと同様であった。14の異なる貯蔵蛍光スクリーンへのこれら標準の暴露の結果、信頼性のあるMCID応答が得られ、これはLSCで決定された特異的活性と相関し、日内および日間変動が非常に低いことを示唆する。QWBAR方法のCVおよび精度は許容される限界内であった(=20%)。MCID応答の再現性、および慣用的LSCおよびQWBARの間の特異的活性の良好な相関は、RBC標準が均一な濃度の放射能のものであったことを示す。本実験で観察された変動は、低温セクショニング、QWBAR技術およびイメージング分析の種々の態様に関連すると考えられた。QWBARは0.221nCi/g(定量の下方限界)の感度でもって再現可能であることが示された。動的範囲は、0.221ないし832nCi/gの4桁の大きさにわたって直線状であった。
【0174】
結論として、[14C]-チゲサイクリン由来放射能の組織濃度は、血漿濃度と比較してほとんどの組織でより高かった。一般に、組織のほとんどからの放射能の排出は血漿からの速度よりも遅かった。AUCは血漿よりもほとんどの組織でより高く、これは、組織のほとんどが[14C]-チゲサイクリン由来放射能を排出するのが遅いことを示唆する。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】図1は、14mg/kgのチゲサイクリンでの処理後12時間にわたって最小阻止濃度を超える血清レベルを確立する正常なニュージーランドシロウサギにおけるチゲサイクリンの薬物動態学を示す。
【図2】図2は、x線イメージにおいて観察される骨感染の程度の調査者によるグレーディングを示す。該データは、対照よりも優れた、チゲサイクリン、およびリファムピンと組合わせたチゲサイクリンによる骨髄炎の効果的な治療を示す。
【図3】図3は、処理の各々における骨髄および骨のグラム当たりのコロニー形成単位を示し、これは、チゲサイクリン、およびリファムピンと組み合わせたチゲサイクリンは対照に対する骨の感染、および骨髄の感染についての効果的な処置であったことを示す。
【図4A】図4Aは、種々の抗菌剤の投与の時間コースを通じてのウサギの体重のグラフ表示を示す。
【図4B】図4Bは、種々の抗菌剤の投与の時間コースを通じてのウサギの体重偏差のグラフ表示を供する。
【図5A】図5Aは、各薬物の投与の後における、感染したウサギの血清中のチゲサイクリン(1日2回の14mg/kg)およびバンコマイシン(毎日2回の30mg/kg)のピークおよびトラフを示す。該データは、抗生物質血清レベルが処理を通じて最小阻止濃度を超えることを示す。
【図5B】図5Bは、各薬物の投与の後における、感染したウサギの血清中のチゲサイクリン(1日2回の14mg/kg)およびバンコマイシン(毎日2回の30mg/kg)のピークおよびトラフを示す。該データは、抗生物質血清レベルが処理を通じて最小阻止濃度を超えることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬理学上有効量のチゲサイクリンを哺乳動物に投与することを特徴とする、哺乳動物において骨または骨髄における感染を治療する方法。
【請求項2】
さらに、リファマイシン、リファムピン、リファペンチン、リファキシミン、またはストレプトバリシンよりなる群から選択される抗微生物剤を投与することを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
該抗微生物剤はリファムピンである請求項2記載の方法。
【請求項4】
該感染がグラム陰性菌、グラム陽性菌、嫌気性細菌、および好気性細菌よりなる群から選択される病原体からなる請求項1、2または3記載の方法。
【請求項5】
該病原体が、ブドウ球菌(Staphylococcus)、アシネトバクター(Acinetobacter)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、ヘモフィルス(Haemophilus)、サルモネラ(Salmonella)、連鎖球菌(Streptococcus)、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、腸球菌(Enterococcus)、大腸菌類(Escherichia)、シュードモナス(Pseudomonas)、ナイセリア(Neisseria)、リケッチア(Rickettsia)、肺炎球菌(Pneumococci)、プレボテラ(Prevotella)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococci)、バクテロイデス・レジオネラ(Bacteroides Legionella)、ベータ溶血性連鎖球菌、B群連鎖球菌およびスピロヘータよりなる群から選択される請求項4記載の方法。
【請求項6】
該感染がナイセリア、マイコバクテリウム、ブドウ球菌およびヘモフィルスからなる請求項5記載の方法。
【請求項7】
該感染が、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ライ菌(Mycobacterium leprae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、またはインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)からなる請求項6記載の方法。
【請求項8】
該病原体が抗生物質耐性を呈する請求項4記載の方法。
【請求項9】
該抗生物質耐性がメチシリン耐性、糖ペプチド耐性、テトラサイクリン耐性、オキシテトラサイクリン耐性、ドキシサイクリン耐性;クロルテトラサイクリン耐性、ミノサイクリン耐性、グリシルシクリン耐性、セファロスポリン耐性、シプロフロキサチン耐性、ニトロフラントイン耐性、トリメトプリム−スルファ耐性、ピペラシリン/タゾバクタム耐性、モキシフロキサチン耐性、バンコマイシン耐性、テイコプラニン耐性、ペニシリン耐性、およびマクロライド耐性よりなる群から選択される請求項8記載の方法。
【請求項10】
該糖ペプチド耐性がバンコマイシン耐性である請求項9記載の方法。
【請求項11】
該病原体が、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、または化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)よりなる群から選択される請求項5記載の方法。
【請求項12】
該感染が黄色ブドウ球菌からなる請求項11記載の方法。
【請求項13】
該黄色ブドウ球菌が糖ペプチド耐性、テトラサイクリン耐性、ミノサイクリン耐性、メチシリン耐性、バンコマイシン耐性およびチゲサイクリン以外のグリシルサイクリン抗生物質に対する耐性よりなる群から選択される抗生物質耐性を呈する請求項12記載の方法。
【請求項14】
該感染が非発酵陰性桿菌(Acinetobacter baumannii)からなる請求項5記載の方法。
【請求項15】
該非発酵陰性桿菌がセファロスポリン耐性、シプロフロキサチン耐性、ニトロフラントイン耐性、トリメトプリム−スルファ耐性、およびピペラシリン/タゾバクタム耐性よりなる群から選択される抗生物質耐性を呈する請求項14記載の方法。
【請求項16】
該感染が非定型抗酸菌(Mycobacterium abscessus)からなる請求項5記載の方法。
【請求項17】
該非定型抗酸菌がモキシフロキサチン耐性を呈する請求項16記載の方法。
【請求項18】
該感染がインフルエンザ菌からなる請求項5記載の方法。
【請求項19】
該感染がエンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)からなる請求項5記載の方法。
【請求項20】
該感染が大腸菌(Escherichia coli)からなる請求項5記載の方法。
【請求項21】
該感染が淋菌(Neisseria gonorrhoeae)からなる請求項5記載の方法。
【請求項22】
該感染が発疹チフスリケッチア(Rickettsia prowazekii)、発疹熱リケッチア(Rickettsia typhi)または斑点熱リケッチア(Rickettsia rickettsii)からなる請求項5記載の方法。
【請求項23】
該感染が骨髄炎を引き起こす請求項4記載の方法。
【請求項24】
薬理学上有効量のチゲサイクリンを哺乳動物に投与することを特徴とする、哺乳動物において関節の感染または該関節の周囲組織の感染を治療する方法。
【請求項25】
さらに、リファマイシン、リファムピン、リファペンチン、リファキシミンまたはストレプトバリシンよりなる群から選択される抗微生物剤を投与することを含む請求項1記載の方法。
【請求項26】
該抗微生物剤がリファムピンである請求項25記載の方法。
【請求項27】
該感染がグラム陰性菌、グラム陽性菌、嫌気性細菌、および好気性細菌よりなる群から選択される病原体からなる請求項24、25または26記載の方法。
【請求項28】
該病原体がブドウ球菌、アシネトバクター、マイコバクテリウム、ヘモフィルス、サルモネラ、連鎖球菌、腸内細菌科、腸球菌、大腸菌類、シュードモナス、ナイセリア、リケッチア、肺炎球菌、プレボテラ、ペプトストレプトコッカス、バクテロイデス・レジオネラ、ベータ溶血性連鎖球菌、B群連鎖球菌およびスピロヘータよりなる群から選択される請求項27記載の方法。
【請求項29】
該感染がナイセリア、マイコバクテリウム、ブドウ球菌およびヘモフィルスからなる請求項28記載の方法。
【請求項30】
該感染が髄膜炎菌、結核菌、ライ菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、またはインフルエンザ菌からなる請求項29記載の方法。
【請求項31】
該病原体が抗生物質耐性を呈する請求項27記載の方法。
【請求項32】
該抗生物質耐性がメチシリン耐性、糖ペプチド耐性、テトラサイクリン耐性、オキシテトラサイクリン耐性、ドキシサイクリン耐性、クロルテトラサイクリン耐性、ミノサイクリン耐性、グリシルサイクリン耐性、セファロスポリン耐性、シプロフロキサチン耐性、ニトロフラントイン耐性、トリメトプリム−スルファ耐性、ピペラシリン/タゾバクタム耐性、モキシフロキサチン耐性、バンコマイシン耐性、テイコプラニン耐性、ペニシリン耐性、およびマクロライド耐性よりなる群から選択される請求項31記載の方法。
【請求項33】
該糖ペプチド耐性がバンコマイシン耐性である請求項32記載の方法。
【請求項34】
該病原体が黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、または化膿性連鎖球菌よりなる群から選択される請求項28記載の方法。
【請求項35】
該感染が黄色ブドウ球菌からなる請求項34記載の方法。
【請求項36】
該黄色ブドウ球菌が糖ペプチド耐性、テトラサイクリン耐性、ミノサイクリン耐性、メチシリン耐性、バンコマイシン耐性、およびチゲサイクリン以外のグリシルサイクリン抗生物質に対する耐性よりなる群から選択される抗生物質耐性を呈する請求項35記載の方法。
【請求項37】
該感染が非発酵陰性桿菌からなる請求項28記載の方法。
【請求項38】
該非発酵陰性桿菌がセファロスポリン耐性、シプロプロキサチン耐性、ニトロフラントイン耐性、トリメトプリム−スルファ耐性、およびピペラシリン/タゾバクタム耐性よりなる群から選択される抗生物質耐性を呈する請求項37記載の方法。
【請求項39】
該感染が非定型抗酸菌からなる請求項28記載の方法。
【請求項40】
該非定型抗酸菌がモキシフロキサチン耐性を呈する請求項39記載の方法。
【請求項41】
該感染がインフルエンザ菌、エンテロコッカスフェシウム、大腸菌、淋菌、発疹チフスリケッチア、発疹熱リケッチア、または斑点熱リケッチアよりなる群から選択される病原体からなる請求項28記載の方法。
【請求項42】
該関節感染または該関節の周囲組織の感染が敗血症性関節炎を引き起こす請求項27記載の方法。
【請求項43】
薬理学上有効量のチゲサイクリンの、哺乳動物において骨、骨髄または関節の感染を治療するための使用。
【請求項44】
薬理学上有効量のチゲサイクリン、およびリファマイシン、リファムピン、リファペンチン、リファキシミン、またはストレプトバリシンよりなる群から選択される抗微生物剤の、哺乳動物において骨、骨髄または関節の感染を治療するための使用。
【請求項45】
薬理学上有効量のチゲサイクリンの、哺乳動物において骨、骨髄または関節の感染の治療用の薬剤を製造するための使用。
【請求項46】
薬理学上有効量のチゲサイクリン、およびリファマイシン、リファムピン、リファペンチン、リファキシミンまたはストレプトバリシンよりなる群から選択される抗微生物剤の、哺乳動物において骨、骨髄または関節の感染の治療用の薬剤を製造するための使用。
【請求項47】
該骨または骨髄感染が骨髄炎を引き起こす請求項43ないし45記載の使用。
【請求項48】
該関節感染または該関節を囲う組織の感染が敗血症性関節炎を引き起こす請求項43ないし45記載の使用。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate


【公表番号】特表2007−504249(P2007−504249A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525504(P2006−525504)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/028980
【国際公開番号】WO2005/023263
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】