説明

単独運転検出方法、単独運転検出装置、及びプログラム

【課題】系統連系システムにおいて、たとえ連系インバータの出力電力等に与えた能動的な変動の影響が系統周期に出現しづらい場合でも、より確実に電源の単独運転を検出することが可能な単独運転検出手法を提供する。
【解決手段】計測部332が系統電源の系統周期を1周期ごとに計測し、平均化処理部334が計測部332で計測された系統周期に基づいて予め定められた周期分ごとの平均系統周期を算出し、判定部336が平均化処理部334で算出された直近の複数の平均系統周期それぞれと、予め定められた周期分だけ過去のそれぞれの平均系統周期との偏差をそれぞれ算出し、算出された各偏差それぞれが、予め設定されているそれぞれの閾値を超えている場合に、電源が単独運転状態であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型電源等の電源からの直流電力をインバータを介して交流電力に変換して系統電源と連系して出力する系統連系システムにおける単独運転検出方法、単独運転検出装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電などによる電源と系統電源(商用電源)とをインバータを介して逆潮流可能な構成で連系し、電源だけでは電力を賄えない場合に、不足電力を系統電源側から供給するようにした系統連系システムが開発されている。
【0003】
この種の系統連系システムでは、系統電源側の不測の停電時や作業停止時等において、電源から系統電源側への逆潮流を防止する必要がある。したがって、系統連系システムでは、系統電源側からの電力の供給が停止され、電源が単独で運転を開始した場合には、その単独運転を検出して電源と系統電源とを切り離すとともに、系統電源と連系されたインバータ(以下、「連系インバータ」と称す)の駆動を停止させるような制御が行われている。
【0004】
このような単独運転を検出する方式としては、連系運転から単独運転に移行したときの電圧波形や位相などの変化を捉えて単独運転を検出する受動的方式と、連系インバータの出力に変動要因を与えておき、連系運転時にはその変動要因が出力に現れず、単独運転時には現れるようにして検出する能動的方式とがある。
【0005】
特許文献1には、連系インバータの出力電力や出力周波数などに微小な変動を与え、単独運転時に、系統電源側の電圧(系統電圧)の微小な変動が増大することを利用して単独運転を検出する所謂能動的方式の単独運転検出手法について開示されている。正常な連系運転時には、系統電圧は連系インバータの影響を受けづらいので、連系インバータの出力電力等に微少な変動を与えてもその影響が系統電圧に出現しづらい。しかし、単独運転時にはその影響が現れやすい。特許文献1では、その影響を系統電圧の周期(系統周期)の変動により検知することで、単独運転の有無を判定している。
【0006】
より具体的は、特許文献1では、単独運転の高速検出を課題として、直近の複数の系統周期それぞれと、所定系統周期分だけ過去の系統周期との偏差をそれぞれ求め、各偏差が、偏差毎に最新の系統周期ほど大きい値が設定されたそれぞれの閾値を超えている場合に、単独運転を検出している。
【特許文献1】特開2007−215392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、連系インバータの出力電力や出力周波数などに能動的に微小な変動を与えている間に、単独運転が開始されたとしても、その変動の影響が系統周期に出現しづらい場合がある。例えば、系統連系システムに変圧器等が配置されている場合、変圧器等における励磁電流の増加に伴う磁気飽和の影響で電圧歪みを起こすなどして系統周期にノイズが発生し、そのノイズの影響により単独運転の有無を検知しづらい場合がある。また、系統連系システムに発電容量が比較的大きい発電機が配置されている場合、その発電機の発電の影響により、連系インバータにおける変動の影響が系統周期に出現しづらい場合がある。
【0008】
本発明は、系統連系システムにおいて、たとえ連系インバータの出力電力等に与えた能動的な変動の影響が系統周期に出現しづらい場合でも、より確実に電源の単独運転を検出することが可能な単独運転検出手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る単独運転検出方法は、電源からの直流電力をインバータを介して交流電力に変換して系統電源と連系して出力する系統連系システムにおいて前記電源が単独運転状態か否かを検出する単独運転検出方法であって、前記系統電源の系統周期を予め定められた期間毎に計測する系統周期計測工程と、前記系統周期計測工程で計測された系統周期に基づいて予め定められた周期分ごとの平均系統周期を算出する平均系統周期算出工程と、前記平均系統周期算出工程で算出された直近の複数の平均系統周期それぞれと、予め定められた周期分だけ過去のそれぞれの平均系統周期との偏差をそれぞれ算出する偏差算出工程と、偏差算出工程で算出された各偏差それぞれが、予め設定されているそれぞれの閾値を超えている場合に、前記電源が単独運転状態であると判定する判定工程と、を含むことを特徴する。
【0010】
本発明に係る単独運転検出方法によれば、直近の複数の平均系統周期それぞれと、予め定められた周期分だけ過去のそれぞれの平均系統周期との偏差に基づいて電源の単独運転を検出するので、所謂能動的方式では検出できなかった電源の単独運転を検出することができるようになる。
【0011】
本発明に係る単独運転検出方法の一つの態様では、前記インバータの出力電力に対して能動信号を与えることで出力電力に変動を生じさせる変動工程を含み、前記判定工程では、前記系統電源側の電力に前記能動信号成分に基づく変動が生じていることを検出した場合にも、前記電源が単独運転状態であると判定する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る単独運転検出方法の一つの態様によれば、受動的方式と能動的方式とを並行に行うことでより確実に単独運転を検出することができる。
【0013】
本発明に係る単独運転検出装置は、電源からの直流電力をインバータを介して交流電力に変換して系統電源と連系して出力する系統連系システムにおいて前記電源が単独運転状態か否かを検出する単独運転検出装置であって、前記系統電源の系統周期を予め定められた期間毎に計測する系統周期計測部と、前記系統周期計測部で計測された系統周期に基づいて予め定められた周期分ごとの平均系統周期を算出する平均系統周期算出部と、前記平均系統周期算出部で算出された直近の複数の平均系統周期それぞれと、予め定められた周期分だけ過去のそれぞれの平均系統周期との偏差をそれぞれ算出し、算出された各偏差それぞれが、予め設定されているそれぞれの閾値を超えている場合に、前記電源が単独運転状態であると判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る単独運転検出装置によれば、直近の複数の平均系統周期それぞれと、予め定められた周期分だけ過去のそれぞれの平均系統周期との偏差に基づいて電源の単独運転を検出するので、所謂能動的方式では検出できなかった電源の単独運転を検出できるようになる。
【0015】
本発明に係る単独運転検出装置の一つの態様では、前記インバータの出力電力に対して能動信号を与えることで出力電力に変動を生じさせる変動手段を備え、前記判定部は、前記系統電源側の電力に前記能動信号成分に基づく変動が生じていることを検出した場合にも、前記電源が単独運転状態であると判定する、ことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る単独運転検出装置の一つの態様によれば、受動的方式と能動的方式とを並行に行うことでより確実に単独運転を検出することができる。
【0017】
本発明に係るプログラムは、電源からの直流電力をインバータを介して交流電力に変換して系統電源と連系して出力する系統連系システムにおいて前記電源が単独運転状態か否かを検出する単独運転検出装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記系統電源の系統周期を予め定められた期間毎に計測する系統周期計測部と、前記系統周期計測部で計測された系統周期に基づいて予め定められた周期分ごとの平均系統周期を算出する平均系統周期算出部と、前記平均系統周期算出部で算出された直近の複数の平均系統周期それぞれと、予め定められた周期分だけ過去のそれぞれの平均系統周期との偏差をそれぞれ算出し、算出された各偏差それぞれが、予め設定されているそれぞれの閾値を超えている場合に、前記電源が単独運転状態であると判定する判定部と、して前記コンピュータを機能させることを特徴とする。
【0018】
本発明に係るプログラムによれば、直近の複数の平均系統周期それぞれと、予め定められた周期分だけ過去のそれぞれの平均系統周期との偏差に基づいて電源の単独運転を検出するので、所謂能動的方式では検出できなかった電源の単独運転を検出できるようになる。
【0019】
本発明に係るプログラムの一つの態様では、前記コンピュータを前記インバータの出力電力に対して能動信号を与えることで出力電力に変動を生じさせる変動部としても機能させ、前記判定部は、前記系統電源側の電力に前記能動信号成分に基づく変動が生じていることを検出した場合にも、前記電源が単独運転状態であると判定する、ことを特徴とする。
【0020】
本発明に係るプログラムの一つの態様によれば、受動的方式と能動的方式とを並行に行うことでより確実に単独運転を検出することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、直近の複数の平均系統周期それぞれと、予め定められた周期分だけ過去のそれぞれの平均系統周期との偏差に基づいて電源の単独運転を検出するので、所謂能動的方式では検出できなかった電源の単独運転を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」と称す)について、以下図面を用いて説明する。
【0023】
図1は、本実施形態に係る系統連系システムの全体構成を示す図である。本実施形態に係る系統連系システムは、系統電源50からの電力と、電源10からパワーコンディショナ20を介して出力される電力とを同期させて、家庭用電気機器等の負荷52に電力を印加することができる。
【0024】
図1において、電源10は、太陽電池、燃料電池等や、連系インバータを含んだ電源システムである分散型電源等の直流電源である。パワーコンディショナ20は、電源10で発電した直流電力を系統電源50と同期のとれた交流電力に変換するインバータ22と、インバータ22からの出力電流を検知する電流センサ26と、インバータ22からの出力電圧を検知する電圧センサ32と、電流センサ26や電圧センサ32の測定値等に基づいてインバータ22の駆動を制御するインバータ制御部24と、電源10と系統電源50との電気的な接続を遮断する連系リレー34と、電圧センサ32からの測定値に基づいて電源10の単独運転を検知した場合に連系リレー34を開放させ、電源10と系統電源50との電気的な接続を遮断させる単独運転検出部30とを備える。
【0025】
図2は、単独運転検出部30の機能ブロックを示す図である。図2において、単独運転検出部30は、CPU310、ROM312、RAM314、記憶装置320、連系リレーインタフェース352、電圧センサインタフェース354、及び通信バス360を備える。CPU310、ROM312、RAM314、記憶装置320、連系リレーインタフェース352、及び電圧センサインタフェース354は、それぞれ通信バス360を介して接続されている。なお、本実施形態では、単独運転検出部30を1つのマイクロコンピュータで構成する例について説明するが、例えば、インバータ制御部24と単独運転検出部30とを1つのマイクロコンピュータで構成しても構わない。
【0026】
CPU310は、ROM112に記憶されたBIOSプログラムなどの基本的な制御プログラムをRAM114に展開して、通信バス360を介して各部を制御する。記憶装置320は、単独運転の有無の判定を行うためのプログラム330等を記憶する。
【0027】
本実施形態では、記憶装置320には、プログラム330として、計測部332と、平均化処理部334と、判定部336とが記憶されている。これらプログラムは、CPU310によって読み出され、RAM314に展開され、実行されることで各種処理を実行する。さらに、記憶装置320は、プログラム330を実行する際にCPU310によってアクセスされる、系統周期記憶部340、平均系統周期記憶部342、閾値パターン記憶部344を有する。
【0028】
計測部332は、電圧センサ32で検知される電圧信号を電圧センサインタフェース354を介して取得し、取得した電圧信号の零電圧を基準として1サイクル(1周期)毎の時間C(n)(nは正の整数であり、1サイクル毎にインクリメントされる値とする)を常時、予め定められた期間毎(例えば、1周期毎、半周期毎、整数倍周期毎など)に計測し、それらの値をそれぞれ系統周期として、順次、系統周期記憶部340に記憶する。例えば、系統電源50を50Hzの商用電源とした場合、計測部332は、1サイクル20msの間隔で、系統周期を計測する。図3は、系統周期記憶部340に記憶される系統周期Cnの例を示す。図3では、C0からC69までの70サイクル分の系統周期を表している。
【0029】
平均化処理部334は、系統周期記憶部340に記憶された系統周期に基づいて、予め定められた複数周期分の系統周期ごとに、平均系統周期CA(i)(iは、正の整数であり、平均系統周期を算出するごとにインクリメントされる値とする)を算出し、平均系統周期記憶部342に記憶する。平均化処理部334は、図4に示すように、例えば、7サイクル分の系統周期ごとに、その7サイクル分の系統周期{C(n)〜CA(n+6)}のうち、最大値と最小値とを除いた5サイクル分の系統周期に基づいて単純移動平均等により平均系統周期CA(i)を算出する。なお、最大周期と最大周期の値を平均系統周期の算出の際に用いないのは、ノイズなどの影響で誤差の多いデータを排除するためである。
【0030】
判定部336は、平均系統周期記憶部342に記憶された平均系統周期CAと、閾値パターン記憶部344に記憶されている閾値THとに基づいて電源10による単独運転の有無を判定する。より具体的には、判定部336は、例えば、図5に示すように、直近の5つの平均系統周期{CA(9),CA(8),CA(7),CA(6),CA(5)}それぞれと、5周期分だけ過去のそれぞれの系統周期{CA(4),CA(3),CA(2),CA(1),CA(0)}との偏差{CA(9)−CA(4),CA(8)−CA(3),・・・CA(5)−CA(0)}をそれぞれ算出する。さらに、判定部336は、算出された各偏差が、各偏差に対して割り当てられたそれぞれの閾値TH4〜TH0を超えるか否かを判定し、すべての偏差がそれぞれの閾値を超える場合に電源10が単独運転状態であると判定する。なお、閾値パターン記憶部344に記憶されている閾値は、例えば、図6に示すように、最新の平均系統周期に対する偏差ほど大きい値となるように設定されている。つまり、判定部336は、偏差{CA(5)−CA(0)}が閾値TH0を超えているか否か、偏差{CA(6)−CA(1)}が閾値TH2を超えているか否かというように、順次偏差毎に、各偏差に対応する閾値THと比較して、すべての偏差がそれぞれの閾値THを超えている場合に、電源10が単独運転状態であると判定する。
【0031】
図7は、平均化処理部334が、系統周期記憶部340に記憶された系統周期に基づいて平均系統周期CA(i)を算出する手順の一例を示すフローチャートである。
【0032】
図7において、平均化処理部334は、まず変数nおよび変数iを初期値として「0」に設定し(S100)、系統周期記憶部340から7サイクル分の系統周期{C(n)〜C(n+6)}を取得する(S102)。さらに、平均化処理部334は、7サイクル分の系統周期{C(n)〜C(n+6)}から最大周期と最大周期の値を除いた5サイクル分の系統周期に基づいて例えば単純移動平均により平均系統周期CA(i)を算出し(S104)、算出された平均系統周期CA(i)を平均系統周期記憶部342に登録する(S106)。
【0033】
次いで、平均化処理部334は、変数nに「7」を加算し、変数iに「1」を加算した後(S108)、系統周期C(n+6)が系統周期記憶部340に記憶されているか否かを判定する(S110)。つまり、平均化処理部334は、次の平均系統周期を算出するのに必要な7サイクル分の系統周期{C(n)〜C(n+6)}が系統周期記憶部340に記憶されているか否かを判定する。判定の結果、系統周期C(n+6)が記憶されている場合には(ステップS110の判定結果が、肯定「Y」)、次の平均系統周期を算出可能と判断してステップS102以降の処理を繰り返す。一方、系統周期C(n+6)が記憶されていない場合には(ステップS110の判定結果が、否定「N」)、所定期間(例えば、ステップS106の処理が終了してから、7サイクル分の期間)が経過しているか否かを判定する(S212)。所定期間経過していなければ(ステップS212の判定結果が、否定「N」)、平均化処理部334はまだ系統周期記憶部340に次の7サイクル分の系統周期が記録されていないと判断して、系統周期記憶部340に次の7サイクル分の系統周期が記録されるまで待機する。一方、所定期間経過していれば(ステップS21の判定結果が、肯定「Y」)、平均化処理部334は、系統周期記憶部340に新たな7サイクル分の系統周期が記録されないと判断して、処理を終了する。
【0034】
以上の処理を平均化処理部334が実行することで、系統周期記憶部340に予め定められた周期分、例えば7サイクル分の系統周期が記憶される毎に順次平均系統周期CA(i)が算出され、平均系統周期記憶部342に登録される。
【0035】
図8、図9、図10は、判定部336によって実行される電源の単独運転の有無の判定手順の一例を示すフローチャートである。
【0036】
まず、図8において、判定部336は、変数iを初期値「0」(なお、記憶されている平均系統周期の途中の周期から単独運転の判定を行う場合には、単独運転の判定有無の対象となる平均系統周期のうち最も古い周期に対応する値を初期値として設定する)に設定し(S202)、平均系統周期記憶部342から平均系統周期CA(i)と平均系統周期CA(i)の5周期分後の平均系統周期CA(i+5)を取得する(S302)。次いで、偏差{CA(i+5)−CA(i)}を算出し(S204)、その偏差が正か負かを判定する(S206)。判定の結果、正の場合(ステップ206の判定結果が、肯定「Y」)、後述の図9に示す正パターン判定処理により単独運転の有無の判定を行う(S208)。一方、負の場合(ステップS206の判定結果が、否定「N」)、後述の図10に示す負パターン判定処理により単独運転の有無の判定を行う(S210)。
【0037】
続いて、図9を参照して、正パターン判定処理の手順について説明する。
【0038】
図9において、判定部336は、まず変数i及び変数Mをともに初期値「0」に設定する(S300)。なお、判定を再開する場合など、記憶されている平均系統周期の途中の周期から単独運転の判定を行う場合には、変数iについては、単独運転の判定有無の対象となる平均系統周期のうち最も古い周期に対応する値を初期値として設定する。次いで、判定部336は、平均系統周期記憶部342からCA(i)とCA(i+5)を取得し(S302)、偏差{CA(i+5)−CA(i)}を算出する(S306)。判定部336は、さらに閾値パターン記憶部344から閾値THiを取得し、偏差{CA(i+5)−CA(i)}が閾値THiを超えているか否かを判定する(S308)。判定の結果、超えていなければ(ステップS308の判定結果が、否定「N」)、判定部336は、単独運転は行われないと判定し(S310)、処理を終了する。その後、判定部336は、所定時間が経過した後、改めて図8に示す処理を開始し、継続的に単独運転の判定を行う。
【0039】
一方、超えている場合(ステップS308の判定結果が、肯定「Y」)、判定部336は、変数Mをインクリメントし(S312)、変数Mが5に達していなければ(ステップS314の判定結果が、否定「N」)、判定部336は、変数iをインクリメントして(S316)、ステップ302以降の処理を繰り返す。一方、インクリメント後の変数Mが5に達していれば(ステップS314の判定結果が、肯定「Y」)、平均系統周期が5つ連続してそれぞれの閾値を超えたと判断して、判定部336は、単独運転状態であると判定する(S318)。単独運転状態であると判定した場合、判定部336は、連系リレー34を開放し、電源10と系統電源50との電気的な接続を遮断する。
【0040】
図10は、負パターン判定処理の手順を示す。図9では、CA(i)とCA(i+5)との偏差を{CA(i)−CA(i+5)}により求めている点で、偏差を{CA(i+5)−CA(i)}により求めている正パターン判定処理と異なるが、他の処理は同様なため、説明を割愛する。
【0041】
以上の通り、本実施形態によれば、判定部336が、直近の5つの平均系統周期それぞれと、それぞれ5周期分だけ過去の系統周期との偏差をそれぞれ算出し、算出されたすべての偏差がそれぞれの閾値を超える場合に電源10が単独運転状態であると判定する。
【0042】
このように、平均系統周期の偏差に基づいて単独運転状態の有無の判定を行うことで、所謂能動的方式では検知しづらかった次のような現象が起きている場合に、単独運転状態の不検知を防止することができる。
【0043】
すなわち、系統連系システムに変圧器等が配置されている場合、変圧器等における励磁電流の増加に伴う磁気飽和の影響で電圧歪みを起こすなどして、系統周期にばらつきが生じることがある。このような場合、図11に示すように、直近の複数の系統周期と、所定系統周期分だけ過去の系統周期との偏差は、ばらつきが生じる場合がある。この場合、単独運転が開始されていたとしても、図12に示すように、各偏差は、閾値パターンを連続して超えないため、単独運転を検知することができない場合がある。
【0044】
一方、本実施形態のように、複数周期分の系統周期を平均化した後に、その平均化した平均系統周期により単独運転の検知を行うことで、図13に示すように、偏差のばらつきが抑えられるため、平均化しない場合に比べて、単独運転を検知しやすくなる。
【0045】
また、系統連系システムに発電容量が比較的大きい発電機が配置されている場合、その発電機の発電の影響により、注入された高調波信号、無効電力、有効電力等の能動信号に基づくインバータ出力の変動が吸収され、能動信号を注入しても、系統周期が図14に示すように変化がなめらかになり、単独運転を行っていたとしても系統周期に出現しづらい場合がある。この場合、図15に示すように、直近の複数の系統周期と、所定系統周期分だけ過去の系統周期との偏差も変化が少なく、各偏差が閾値パターンを連続して超えないため、単独運転を検知することができない場合がある。
【0046】
一方、本実施形態のように、複数周期分の系統周期を平均化した後に、その平均化した平均系統周期により単独運転の検知を行うことで、図16に示すように、偏差の変化が比較的顕著になり、平均化しない場合に比べて、単独運転を検知しやすくなる。
【0047】
以上、上記の実施形態では、パワーコンディショナ20の内部に単独運転検出部30を設ける場合について説明した。しかし、例えば、パワーコンディショナ20とは独立した単独運転検知装置を系統連系システムに設けても構わない。
【0048】
図17は、本実施形態の変形例として、パワーコンディショナとは独立して単独運転検知装置40を設けた場合の系統連系システムのブロック構成を示す図である。
【0049】
本変形例の系統連系システムでは、上記の実施形態で示した所謂受動的方式による単独運転の検知のほかに、能動的方式による単独運転の検知も並行して行う。
【0050】
図17において、単独運転検出部30は、インバータ制御部44に対して電力系統に周期的に高調波信号、無効電力、有効電力等の能動信号を注入するための制御信号を入力する。インバータ制御部44は、制御信号に基づいてインバータ42を駆動して電力ライン54に出力される無効電力を変動させる。単独運転検出部30は、上記の受動的方式の単独運転の検知とともに、例えば、能動的方式として、直近の複数の系統周期それぞれと、所定系統周期分だけ過去の系統周期との偏差をそれぞれ求め、各偏差が、偏差毎に最新の系統周期ほど大きい値が設定されたそれぞれの閾値を超えている場合に、単独運転を検出する。単独運転検出部30は、受動的方式或いは能動的方式のいずれかの方式で単独運転を検出した場合、分散型電源12を電力ライン54から遮断させる連系リレー34と、インバータ42を電力ライン54から遮断させる連系リレー36とをそれぞれ開放状態として、逆潮流を防止する。
【0051】
なお、能動的方式では、1周期ごとに偏差を求めれば、比較的早い段階で単独運転を検出することができる。一方、本実施形態に係る受動的方式では、平均値を求めた後偏差を求めるため、例えば7周期分の系統周期が測定できるまで偏差を求めることができない。つまり、能動的方式に比べると単独運転の検出は遅くなってしまう。しかし、受動的方式と能動的方式とでは異なる現象を捉えて単独運転を検出することができる。よって、受動的方式と能動的方式とを並行に行うことでより確実に単独運転を検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、平均系統周期の偏差に基づいて単独運転状態の有無の判定を行うことで、所謂能動的方式では検知しづらかった電源の単独運転を検知することができるので、電源からの直流電力をインバータを介して交流電力に変換して系統電源と連系して出力する系統連系システムにおいて電源が単独運転状態か否かを検出する単独運転検出装置等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態に係る系統連系システムの全体構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る単独運転検出部の機能ブロックを示す図である。
【図3】系統周期記憶部に記憶される系統周期の一例を示す図である。
【図4】系統周期に基づいて平均系統周期を求める手順について説明する際の説明図である。
【図5】平均系統周期に基づいて偏差を求める手順について説明する際の説明図である。
【図6】閾値パターン記憶部に記憶される閾値の一例を示す図である。
【図7】平均化処理部が、系統周期記憶部に記憶された系統周期に基づいて平均系統周期を算出する手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】判定部によって実行される電源の単独運転の有無の判定手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】判定部によって実行される電源の単独運転の有無の判定手順の一例を示すフローチャートである。
【図10】判定部によって実行される電源の単独運転の有無の判定手順の一例を示すフローチャートである。
【図11】電圧歪みによりノイズが発生している系統周期の一例を示す図である。
【図12】ノイズが発生している系統周期に基づいて能動的方式により電源の単独運転の検出を行った場合における不具合について説明するための図である。
【図13】平均系統周期と閾値との関係を示す図である。
【図14】注入された能動信号に基づくインバータ出力の変動が発電機等の影響で吸収され、変動が滑らかになった系統周期の一例を示す図である。
【図15】変動が滑らかになった系統周期に基づいて能動的方式により電源の単独運転の検出を行った場合における不具合について説明するための図である。
【図16】平均系統周期と閾値との関係を示す図である。
【図17】本実施形態の変形例に係る系統連系システムの全体構成を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
10 電源
20 パワーコンディショナ
22 インバータ
24 インバータ制御部
26 電流センサ
30 単独運転検出部
32 電圧センサ
34,36 連系リレー
40 単独運転検知装置
42 インバータ
44 インバータ制御部
50 系統電源
52 負荷
54 電力ライン
310 CPU
312 ROM
314 RAM
320 記憶装置
330 プログラム
332 計測部
334 平均化処理部
336 判定部
340 系統周期記憶部
342 平均系統周期記憶部
344 閾値パターン記憶部
352 連系リレーインタフェース
354 電圧センサインタフェース
360 通信バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの直流電力をインバータを介して交流電力に変換して系統電源と連系して出力する系統連系システムにおいて前記電源が単独運転状態か否かを検出する単独運転検出方法であって、
前記系統電源の系統周期を予め定められた期間毎に計測する系統周期計測工程と、
前記系統周期計測工程で計測された系統周期に基づいて予め定められた周期分ごとの平均系統周期を算出する平均系統周期算出工程と、
前記平均系統周期算出工程で算出された直近の複数の平均系統周期それぞれと、予め定められた周期分だけ過去のそれぞれの平均系統周期との偏差をそれぞれ算出する偏差算出工程と、
偏差算出工程で算出された各偏差それぞれが、予め設定されているそれぞれの閾値を超えている場合に、前記電源が単独運転状態であると判定する判定工程と、
を含む単独運転検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の単独運転検出方法において、
前記インバータの出力電力に対して能動信号を与えることで出力電力に変動を生じさせる変動工程を含み、
前記判定工程では、前記系統電源側の電力に前記能動信号成分に基づく変動が生じていることを検出した場合にも、前記電源が単独運転状態であると判定する、
ことを特徴とする単独運転検出方法。
【請求項3】
電源からの直流電力をインバータを介して交流電力に変換して系統電源と連系して出力する系統連系システムにおいて前記電源が単独運転状態か否かを検出する単独運転検出装置であって、
前記系統電源の系統周期を予め定められた期間毎に計測する系統周期計測部と、
前記系統周期計測部で計測された系統周期に基づいて予め定められた周期分ごとの平均系統周期を算出する平均系統周期算出部と、
前記平均系統周期算出部で算出された直近の複数の平均系統周期それぞれと、予め定められた周期分だけ過去のそれぞれの平均系統周期との偏差をそれぞれ算出し、算出された各偏差それぞれが、予め設定されているそれぞれの閾値を超えている場合に、前記電源が単独運転状態であると判定する判定部と、
を備える単独運転検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の単独運転検出装置は、
前記インバータの出力電力に対して能動信号を与えることで出力電力に変動を生じさせる変動手段を備え、
前記判定部は、前記系統電源側の電力に前記能動信号成分に基づく変動が生じていることを検出した場合にも、前記電源が単独運転状態であると判定する、
ことを特徴とする単独運転検出装置。
【請求項5】
電源からの直流電力をインバータを介して交流電力に変換して系統電源と連系して出力する系統連系システムにおいて前記電源が単独運転状態か否かを検出する単独運転検出装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
前記系統電源の系統周期を予め定められた期間毎に計測する系統周期計測部と、
前記系統周期計測部で計測された系統周期に基づいて予め定められた周期分ごとの平均系統周期を算出する平均系統周期算出部と、
前記平均系統周期算出部で算出された直近の複数の平均系統周期それぞれと、予め定められた周期分だけ過去のそれぞれの平均系統周期との偏差をそれぞれ算出し、算出された各偏差それぞれが、予め設定されているそれぞれの閾値を超えている場合に、前記電源が単独運転状態であると判定する判定部と、
して前記コンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のプログラムは、
前記コンピュータを前記インバータの出力電力に対して能動信号を与えることで出力電力に変動を生じさせる変動部としても機能させ、
前記判定部は、前記系統電源側の電力に前記能動信号成分に基づく変動が生じていることを検出した場合にも、前記電源が単独運転状態であると判定する、
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−142081(P2010−142081A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318689(P2008−318689)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】