説明

単環式ヘテロアリール化合物

本発明は下記一般式(I) (式中、各記号の意味は明細書に記載した通り)で示される化合物並びにその製造及び用途に関する。
【化51】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な群のアセチレン性ヘテロアリール化合物、並びにがん、骨疾患、代謝異常、炎症性疾患及び他の疾患の治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼは多様な細胞プロセスの調節に中心的な役割を果たす大きな群のタンパク質である。そのようなキナーゼの一部の制限的ではないリストとしては、abl、Akt、bcr−abl、Blk、Brk、c−kit、c−met、c−src、CDK1、CDK2、CDK3、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8、CDK9、CDK10、cRaf1、CSK、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、Erk、Pak、fes、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FGFR5、Fgr、flt−1、Fps、Frk、Fyn、Hck、IGF−1R、INS−R、Jak、KDR、Lck、Lyn、MEK、p38、PDGFR、PIK、PKC、PYK2、ros、tie、tie2、TRK及びZap70が挙げられる。異常なプロテインキナーゼ活性は、乾癬のような生命を脅かさない疾患から「がん」のような極めて深刻な疾患に及ぶいくつかの疾患に関係してきた。
【0003】
プロテインキナーゼの数の多さと付随する疾患とを考えると、関連疾患の治療に有用であるかもしれない各種プロテインキナーゼに対して選択的な新規阻害剤に対する要望は常に存在している。
【発明の開示】
【0004】
1.本発明の化合物の一般的説明
本発明の化合物は、多様な疾患を治療するための薬剤組成物及び治療方法におけるその使用を可能にする広範囲の生物学的及び薬理学的活性を有する。そのような疾患としては、例えば、代謝異常、骨疾患(例、骨粗鬆症、ページェット病等)、炎症(リウマチ様関節炎を含む、とりわけ炎症性疾患)、並びにがん(充実性腫瘍と白血病とを含む、特にSrc又はkdrのような1種もしくは2種以上のキナーゼにより、又はAbl及びその突然変異物のようなキナーゼの異常調節(dysregulation)により媒介されるもの)が挙げられ、とりわけ、進行がん並びに1種もしくは2種以上の他の治療法に耐性又は治療抵抗性の症例を含む。
【0005】
本発明は下記一般式Iで示される化合物、その互変異性体、その個々の単独異性体、複数異性体の混合物、又はその薬剤に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物を包含する:
【0006】
【化7】

【0007】
式中、
環Tは、O、N及びSから選ばれた1〜3個のヘテロ原子を含み、場合により1〜3個のRt基で置換されていてもよい、5員単環式ヘテロアリール環を表し;
環Aは、場合により1〜4個のRa基で置換されていてもよい5又は6員アリール又はヘテロアリール環を表し;
環Bは、場合により1〜5個のRb基で置換されていてもよい5又は6員アリール又はヘテロアリール環を表し;
1は、NR1C(O)及びC(O)NR1から選ばれ;
a、Rb、Rtは、出てくる毎に独立して、ハロゲン、−CN、−NO2、−R4、−OR2、−NR23、−C(O)YR2、−OC(O)YR2、−NR2C(O)YR2、−SC(O)YR2、−NR2C(=S)YR2、−OC(=S)YR2、−C(=S)YR2、−YC(=NR3)YR2、−YP(=O)(YR4)(YR4)、−Si(R4)3、−NR2SO22、−S(O)r2、−SO2NR23、及び−NR2SO2NR23よりなる群から選ばれ、ここで各Yは独立して単結合、−O−、−S−、又は−NR3−であり;
1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環基(=ヘテロ環基)及びヘテロアリールから選ばれ;
或いは、NR23部分は、N、O及びS(O)rから選ばれた追加のヘテロ原子0〜2個を含有する、場合により置換されていてもよい、飽和、部分飽和又は不飽和の5又は6員環であってもよく;
4は、出てくる毎に独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環基及びヘテロアリールから選ばれ;
上記のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環基及びヘテロアリールの各基は場合により置換されていてもよく;
mは0、1、2、3又は4であり;
nは0、1、2又は3であり;
pは0、1、2、3、4又は5であり;そして
rは0、1又は2である。
【0008】
上記の各定義は、下記にさらに精密化及び例示され、特に指定のない範囲内においてその後に出てくる場合にもいつも適用される。
2.化合物の特定化された種類とそれらの用途、一般説明
本発明の化合物において、環Tは、炭素及び/又はヘテロ原子でよいその1〜3個の環原子が、独立して選ばれたRt基で場合により置換されていてもよい。環Tは、それらに制限されないが、下記の種類から選んだものでもよい。
【0009】
【化8】

【0010】
式中、nは0、1、2又は3である。置換基Rtの総数は、普通に利用可能な原子価を超えることはないことは当然である。従って、例えば、環Tがピロール環である場合、それは1〜3個の置換基で場合により置換されうる(即ち、nは0、1、2又は3である)。これに対して、環Tがピラゾール又はイミダゾール環である場合には、それは場合により最大2個の置換基で置換されうる(即ち、nは0、1又は2である)。環Tが非置換である場合、特に式には出てこないが、水素原子の存在によって所望の原子価を満たしていることも当然である。
【0011】
そのような化合物の実例としては、環Tが次に示すものである化合物が挙げられる。
【0012】
【化9】

【0013】
以上に述べた種類(クラス)及び下位種(サブクラス)の化合物について、本発明の全ての化合物でもそうであるように、環A及び環Bはパート1におけるのと同様に定義される。
【0014】
置換された環Aの実例は次の通りである。
【0015】
【化10】

【0016】
環Bは、パート1で既に定義したように5又は6員環アリール又はヘテロアリール環を意味する。置換された環Bの実例は次の通りである。
【0017】
【化11】

【0018】
特に興味があるのは、パート1において上述した通りの一般式Iにおいて、Rb置換基の1つが、炭素原子とO、N及びS(O)rから独立して選ばれた1〜3個のヘテロ原子とを含む5又は6員環(環C)(これはヘテロアリール環又は複素環でよい)である、別の種類の化合物であり、環Cは、場合により炭素又はヘテロ原子上で1〜5個のRc置換基により置換されていてもよい、
この種類の化合物は下記の一般式IIで示される化合物、並びにその互変異性体、その単独異性体、その複数異性体の混合物、又はその薬剤に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物により表される。
【0019】
【化12】

【0020】
式中、既に定義した可変記号、例えば、n、m、A、B、T、L1、R1、Rt、Ra及びRbはパート1において上述した通りであり、そして
cは、出てくる毎に独立して、ハロゲン、=O、=S、−CN、−NO2、−R4、−OR2、−NR23、−C(O)YR2、−OC(O)YR2、−NR2C(O)YR2、−Si(R4)3、−SC(O)YR2、−NR2C(=S)YR2、−OC(=S)YR2、−C(=S)YR2、−YC(=NR3)YR2、−YP(=O)(YR4)(YR4)、−NR2SO22、−S(O)r2、−SO2NR23、及び−NR2SO2NR23よりなる群から選ばれ、ここで各Y、r、R2、R3及びR4はパート1において既に定義した通りであり;tは0、1、2、3又は4であり、そしてvは0、1、2、3、4又は5である。
【0021】
場合により1〜5個のRc基により置換されていてもよい環C系の実例としては、それらに限られないが、下記のタイプが挙げられる:
【0022】
【化13】

【0023】
式中、v及びRcは上に定義した通りであり、置換基Rcの総数は正常な原子価を超えることはない。
【0024】
この種類の化合物の具体的な制限を意図しない実例としては下記のもの挙げられる。
【0025】
【化14】

【0026】
上の構造式には、−[環A]−[L1]−[環B]−[環C]部分のいくつかの例が示されている。
【0027】
興味ある化合物としては、とりわけ、一般式IIにおいて、環Cが非置換であるか、又は1若しくは2以上のRc基で置換されているヘテロアリール環である化合物が挙げられる。現時点で特に興味があるのは、この下位種において、環Cがイミダゾール環である化合物である。さらに興味があるのはこの下位種において、環Cが1個の低級アルキル(例、メチル)Rc基を有する化合物である。
【0028】
本発明の別の側面は、パート1において述べた通りの一般式Iにおいて、Rb置換基の1つが−[L2]−[環D]である化合物に関する。この種の化合物は、下記一般式IIIで示される。
【0029】
【化15】

【0030】
式中、可変記号、例えば、n、m、環T、環A、環B、L1、R1、Rt、Ra及びRbはパート1において上述した通りであり、
2は、(CH2)z、O(CH2)x、NR3(CH2)x、S(CH2)x及び(CH2)xNR3C(O)(CH2)xから選ばれ、このリンカー(結合鎖)部分L2は、どちら向きの方向にも位置させることができ;
環Dは、複数の炭素原子と独立してO、N及びS(O)rから選ばれた1〜3個のヘテロ原子とを含む5〜6員環の複素環又はヘテロアリール環を意味し、環Dは場合により炭素原子又はヘテロ原子上において1〜5個のRd基で置換されていてもよく、
dは、出てくる毎に独立して、ハロゲン、=O、=S、−CN、−NO2、−R4、−OR2、−NR23、−Si(R4)3、−C(O)YR2、−OC(O)YR2、−NR2C(O)YR2、−SC(O)YR2、−NR2C(=S)YR2、−OC(=S)YR2、−C(=S)YR2、−YC(=NR3)YR2、−YP(=O)(YR2)(YR2)、−NR2SO22、−S(O)r2、−SO2NR23、及び−NR2SO2NR23よりなる群から選ばれ、ここで各Yは独立して単結合、−O−、−S−、又は−NR3−であり;ここで、Y、r、R2、R3及びR4はパート1において既に定義した通りであり;
wは0、1、2、3、4又は5であり;
xは0、1、2又は3であり;
zは1、2、3又は4であり;
tは0、1、2、3又は4である。
【0031】
一般式IIIで示される化合物における−[環B]−[L2]−[環D]部分の制限を意図しない実例としては、とりわけ下記のものが挙げられる。
【0032】
【化16】

【0033】
この種類の化合物の制限を意図しない実例としては下記化合物が挙げられる。
【0034】
【化17】

【0035】
興味ある化合物としては、とりわけ、一般式IIIにおいて、環Dが、場合により窒素上でRdにより置換されていてもよい、ピペラジン環のようなヘテロアリール環であり、かつL2が−CH2である化合物が挙げられる。現時点で特に興味あるのは、この下位種において、Rdが置換もしくは非置換の低級アルキル(即ち、炭素数1〜6のアルキル)である化合物である。
【0036】
興味ある他の化合物としては、とりわけ、一般式IIIにおいて、環Dが非置換であるか、又は1若しくは2以上のRd基で置換されたヘテロアリール環である化合物が挙げられる。
【0037】
本発明で使用するのに特に興味あるのは、一般式II及び一般式IIIにおいて環A及びBがアリールである化合物である。
別の興味ある下位種は、一般式II及び一般式IIIにおいて、環Tが、ハロゲン、低級アルキル、アルコキシ、アミノ、−NH−アルキル、−C(O)NH2、−C(O)O−アルキル、−C(O)NH−アルキル、−NHC(O)−アルキル、−NHC(O)−複素環、−NHC(O)NH−アルキル、−NHC(O)NH−(CH2)−複素環、−NHC(NH)−アルキル、−NHC(NH)NH2、−NHC(NH)O−アルキル、−NH(CH2)−ヘテロアリール、−NH(CH2)−複素環、−NH(CH2)−アリール又は−(CH2)C(O)NH2から選ばれた1または2以上のRt部分で場合により置換されている化合物であり、ここでxは0〜3の整数であり、アルキルは直鎖(即ち、非分岐かつ非環式)、分岐及び環式のアルキル基を包含し、かつ場合により置換されていてもよく、また、アリール環、ヘテロアリール環、及び複素環も場合により置換されていてもよい。
【0038】
この下位種の化合物の制限を意図しない実例としては、一般式II及びIIIにおいて環Tが下記のいずれかである化合物が挙げられる。
【0039】
【化18】

【0040】
現時点で興味のある下位種の化合物としては、下記の一般式IIa,IIb,IIc,IIIa,IIIb及びIIIcの化合物が挙げられる。
【0041】
【化19】

【0042】
式中、既に定義された可変記号、例えば、Ra、Rb、Rc、Rd、Rt、n、m及びtは、例えばパート1において既に定義した通りであり、ここで(Rd)0-1とは0又は1個のRd基を意味する。環Dが非置換である場合、当業者には自明であるように、水素原子が示されたRd基の代わりに入って、必要な原子価を満たす。置換基Rt、Rc及びRdの数は正常な原子価を超えることはない。
【0043】
やはり特に興味があるのは、一般式II及び一般式IIIにおいて環Tが、場合により1又は2以上のRtで置換されていてもよいイミダゾールである下位種の化合物である。この下位種の中でも特に興味があるのは、Rtが存在しないか、又はRtが独立して、ハロゲン、低級アルキル、アルコキシ、アミノ、−NH−アルキル、−C(O)NH2、−C(O)NH−アルキル、−NHC(O)−アルキル、−NHC(O)NH−アルキル、−NHC(NH)−アルキル、−NHC(O)CH2N(アルキル)2、−NHC(NH)NH2、又は−(CH2)C(O)NH2から選ばれる化合物であり、ここで、アルキルは直鎖(即ち、非分岐若しくは非環式)、分岐及び環式のアルキル基を包含し、かつ場合により置換されていてもよい。
【0044】
この下位種の化合物の制限を意図しない実例は、置換された環Tが下記のものである化合物である。
【0045】
【化20】

【0046】
興味ある1つの種類としては、一般式IIa,IIb及びIIcにおいて、mが1、tが1、vが1、Rtが独立して、不存在であるか、又はRtが−C(O)NH2、−C(O)NH−アルキル、NH2、及び低級アルキル(例、−CH3)から選ばれ、Raが低級アルキル(例、−CH3)、Rbがイソプロピル又はCF3、そしてRcが存在しないか、又はメチルである化合物が挙げられる。
【0047】
別の興味ある下位群としては、一般式IIIa,IIIb及びIIIcにおいて、mが1、tが1、Rtが独立して、不存在であるか、又は−C(O)NH2、−C(O)NH−アルキル、NH2、及び低級アルキル(例、−CH3)から選ばれ、Raが低級アルキル(例、−CH3)、Rbがイソプロピル又はCF3、そしてRdがメチル又はCH2CH2OHである化合物が挙げられる。
【0048】
特に興味ある本発明の化合物としては、下記特徴の1又は2以上を備えるものが挙げられる:
・分子量が質量単位1000未満、好ましくは750未満、より好ましくは600未満(溶媒和もしくは共結晶化種がある場合のその重量、塩である場合の対イオンの重量を含まずに);或いは
・野生型もしくは変異型(特に臨床に関連する変異型)キナーゼ、特にSrc、Yes、Lyn、又はLckのようなSrc族キナーゼ;VEGF−R1(Flt−1)、VEGF−R2(kdr)又はVEGF−R3のようなVEGF−R;PDGF−R;Ablキナーゼ又は興味ある他のキナーゼに対する阻害活性が、(任意の科学的に許容されるキナーゼ阻害検定を用いて測定した)IC50値で、1μM以下であり、IC50値は好ましくは500nM又はそれより良好、最適にはIC50値は250nM又はそれより良好;或いは
・ある特定のキナーゼに対する阻害活性のIC50値が、興味ある他のキナーゼに対するそのIC50値より少なくとも100倍は低い;或いは
・Src及びkdrの両方に対する阻害活性のIC50値がそれぞれに対して1μM又はそれより良好;或いは
・in vitroで維持されるがん細胞系に対する、又は科学的に許容されるがん細胞異種移植片モデルを用いた動物試験における、細胞毒性又は細胞増殖阻害効果(特に好ましいのは、培養K562細胞の増殖を、比較試験により測定してグリーベック(Gleevec)と少なくとも同等の高さの効力で、好ましくはグリーベックの少なくとも2倍の効力で、より好ましくはグリーベックの少なくとも10倍の効力で阻害する本発明の化合物である)。
【0049】
やはり提供されるのは、本発明の少なくとも1種の化合物又はその塩、水和物もしくは他の溶媒和物と、少なくとも1種の薬剤に許容される賦形剤又は添加剤とを含有する組成物である。このような組成物は、がんの増殖、発生及び/又は転移を阻害するために、そして広義には、本発明の化合物により阻害される1種又は2種以上のキナーゼが媒介する疾患又は望ましくない症状(状態)の治療及び予防のために、それを必要とする個体に対して投与することができる。「がん」は、充実性腫瘍(例、特に乳がん、大腸がん、膵臓がん、CNS及び頭部及び頸部がん)並びに各種形態の白血病を含み、グリーベック又は他のキナーゼ阻害剤による治療に対して耐性のがんをはじめとする、他の治療に対して耐性の白血病及び他のがんを含む。
【0050】
本発明のがん治療方法は、レシピエントにおける充実性腫瘍又は白血病のような他の形態のがんを含むがんの増殖、発生又は広がりの阻害、遅速化又は逆転のために、それを必要とするヒト又は動物に治療有効量の本発明の化合物を投与する(単独療法として、或いは1種又は2種以上の他の抗がん剤、1種又は2種以上の副作用改善剤、放射線等と組み合わせて)ことを含む。このような投与は、ここに開示した化合物の1種又はその薬剤に許容される誘導体により阻害される1種又は2種以上のキナーゼが媒介する疾患の治療又は予防方法となる。本発明の化合物の「投与」は、ここに説明するように任意の適当な処方組成物又は投与経路を用いて、ここに記載した種類の化合物又はそのプロドラッグもしくは他の薬剤に許容される誘導体をレシピエントに送り込むことを包含する。典型的には、本化合物は月に1回以上、多くは週に1回以上、例えば、毎日、隔日、週に5回などの頻度で、投与される。経口及び静脈内投与が現在特に興味がある。
【0051】
ここで用いた「薬剤に許容される誘導体」とは、かかる化合物の任意の薬剤に許容される塩、エステル、又はかかるエステルの塩、或いは任意の他の付加生成物又は誘導体であって、患者に投与されると、ここに記載された化合物、又はその代謝産物若しくは残基(MW>300)を供給(直接的又は間接的に)することができるものを意味する。従って、薬剤に許容される誘導体は、とりわけプロドラッグを包含する。プロドラッグとは、in vivoで除去され易い追加部分を含んだ目的化合物の誘導体であって、この除去により薬理学的活性種である親分子を生ずる、通常は薬理学的活性が著しく低い誘導体のことである。プロドラッグの1例は、in vivoで開裂して対象の化合物を生ずるエステルである。多様な化合物のプロドラッグ、並びに親化合物を誘導体化してプロドラッグを作成するための材料及び方法は公知であり、本発明に適用されうる。
【0052】
親化合物の特に好ましい誘導体及びプロドラッグは、親化合物に比べて、哺乳動物に投与した時の化合物の生物学的利用能を増大させる(例、経口投与後の血液中への吸収の増大により)又は対象となる生物学的部位(例、脳又はリンパ系)への送り込みを増大させる誘導体及びプロドラッグである。好ましいプロドラッグとしては、親化合物に比べて水溶性又は腸管膜を通る能動輸送が増大している本発明の化合物の誘導体が挙げられる。
【0053】
本発明の1つの重要な側面は、本発明の化合物を含有する治療有効量の組成物を、治療を必要とする個体に投与することからなる、該個体におけるがんの治療方法である。こうして治療しうる各種のがんが本明細書の他の個所にも記載されているが、とりわけ、グリーベック、イレッサ、タルセバ又は本明細書に記載した他の薬剤のいずれかといった別の抗がん剤に対して耐性であるか耐性になってしまったがんが挙げられる。治療は1種又は2種以上の他のがん治療法と併用して実施してもよい。他の治療法としては、手術、放射線治療(例、ガンマ線、中性子線放射線治療、電子線放射線治療、陽子線治療、小線源治療、及び全身放射性同位元素治療等)、内分泌療法、生体応答調節剤(例、インターフェロン、インターロイキン、及びいくつもないが腫瘍壊死因子(TNF))、温熱療法、低温療法、副作用軽減剤(例、制吐剤)、並びに他のがん化学療法薬が挙げられる。他の薬剤は、本発明の化合物で使用するのと同じ又は異なる処方組成物、投与経路及び投与計画を用いて投与されうる。
【0054】
このような他の薬剤としては、それらに制限されないが、下記の1種又は2種以上が挙げられる:抗がん性アルキル化又はインターカレーティング(挿入)剤(例、メクロレサミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、及びイフォスファミド);代謝拮抗剤(例、メトトレキセート);プリン拮抗剤又はピリミジン拮抗剤(例、6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビン、及びゲムシタビン);紡錘体毒(例、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン及びパクリタキセル);ポドフィロトキシン(例、エトポシド、イリノテカン、トポテカン);抗生物質(例、ドキソルビシン、ブレオマイシン及びミトマイシン);ニトロソウレア(例、カルムスチン、ロムスチン);無機イオン(例、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンもしくはオキシプラチン);酵素(例、アスパラギナーゼ);ホルモン(例、タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド及びメゲストロール);mTOR阻害剤(例、シロリムス(ラパマイシン)、テムシロリムス(CCI779)、エベロリムス(RAD001)、AP23573又は米国特許第7,091,213号に開示の他の化合物);プロテアソーム阻害剤(例えば、ベルケイド、他のプロテアソーム阻害剤(例、WO 02/096933を参照)又は他のNF−kB阻害剤(例、lkK阻害剤を含む)):他のキナーゼ阻害剤(例、下記キナーゼの阻害剤:Src、BRC/Abl、kdr、flt3、オーロラ2、グリコーゲン合成キナーゼ3(GSK−3),EGF−Rキナーゼ(例、イレッサ、タルセバ等)、VEGF−Rキナーゼ、PDGF−Rキナーゼ等);がんに関係する受容体又はホルモンに対する抗体、可溶性受容体又は他の受容体拮抗剤(EGFR、ErbB2、VEGFR、PDGFR、及びIGF−Rなどの受容体;並びにヘルセプチン、アバスチン、エルビタクス等の薬剤を含む);など。最新のがん治療のより包括的な説明については http://www.nci.nih.gov/を、FDA認可腫瘍薬のリストはhttp://www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htm及び The Merck Manual, 第17版, 1999年を参照(その全内容をここに参考文献として援用する)。
【0055】
他の治療剤の例は本明細書のいずれかに記載されているが、とりわけ、ザイロプリム、アレムツズマブ、アルトレタミン、アミフォスチン、ナストロゾール、前立腺特異的膜抗原の抗体(MLN−591、MLN591RL及びMLN2704など)、三酸化ヒ素、ベキサロテン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、グリアデル・ウェーハ、セレコキシブ、クロラムブシル、シスプラチン−エピネフリン・ゲル、クラドリビン、シタラビンリポゾマール、ダウノルビシンリポゾマール、ダウノルビシン、ダウノマイシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エリオットB液、エピルビシン、エストラムスチン、リン酸エトポシド、エトポシド、エキセメスタン、フルダラビン、5−FU、フルベストラント、ゲムシタビン、ゲムツヅマブ−オゾガミシン、酢酸ゴセレリン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イダマイシン、イフォスファミド、イマチニブ・メシレート、イリノテカン(もしくはMLN576(XR11576)のような抗体をはじめとする他のトポイソメラーゼ阻害剤)、レトロゾール、ロイコボリン、ロイコボリン・レバミゾール、リポゾマールダウノルビシン、メルファラン、L−PAM、メンサ、メトトレキセート、メトクスサレン、ミトマイシンC、ミトキサントロン、MLN518もしくはMLN608(もしくはflt−3受容体チロシンキナーゼの他の阻害剤、PDFG−R又はcキット)、イトキサントロン、パクリタキセル、ペガデマーゼ、ペントスタチン、プロフィマー・ナトリウム、リツキシマブ(リツキサン<登録商標>)、タルク、タモキシフェン、テモゾラミド、テニポシド、VM−26,トポテカン、トレミフェン、2C4(もしくはHER2媒介シグナル化を妨げる他の抗体)、トレチノイン、ATRA、バルルビシン、ビノレルビン、又はパミドロネート、ゾレドロネート又は他のビスホスホネートが挙げられる。
【0056】
本発明はさらに、式I、II、III、IIa、IIb、IIc、IIIa、IIIb、IIIcの化合物、又は本発明の他の任意の化合物の製造をさらに包含する。
本発明はまた、がん(原発性又は転移性の充実性腫瘍及び白血病を含み、本明細書のいずれかに記載されたようながんを含み、かつ1又は2以上の他の治療法に対して耐性又は抵抗性のがんを含む)の急性又は慢性治療用の医薬の製造における本発明の化合物又は薬剤に許容されるその誘導体の使用も包含する。本発明の化合物は抗がん薬の製造に有用である。本発明の化合物はまた、Src、kdr、abl等の1種又は2種以上のキナーゼの阻害を介して疾患(異常)を緩和又は予防するための医薬の製造にも有用である。
【0057】
本発明の化合物により治療しうる他の疾患としては、代謝異常、炎症性疾患及び骨粗鬆症その他の骨疾患が挙げられる。そのような場合、本発明の化合物を単独治療として使用してもよく、或いはその疾患の別の薬剤、例えば、骨粗鬆症その他の骨関連疾患の場合にはビスホスホネートと併用して投与してもよい。
【0058】
本発明はさらに、とりわけ好ましくは治療有効量の本発明の化合物(上述した種類もしくは下位種の任意の化合物を含み、上記一般式の任意の化合物を含む)を、少なくとも1種の薬剤に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と組み合わせて含有する組成物をさらに包含する。
【0059】
本発明の化合物はまた各種のキナーゼ、それに制限されないが特にkdr及びSrc族キナーゼの特性決定を行うための、並びに生物学的及び病理学的現象におけるかかるキナーゼの役割を研究するための、かかるキナーゼにより媒介される細胞内情報伝達経路を研究するための、新規キナーゼ阻害剤の比較評価のための、そして細胞系及び動物モデルにおける各種がんの研究のための標準物質及び試薬としても有用である。
【0060】
3.定義
本書を読むにあたって、特に指示がない限り、下記の情報及び定義があてはまる。また、特に指示がない限り、2つ出てくる記号が互いに同じでも異なっていてもよいことを単に示すためにスラッシュ又はダッシュ(')記号を使用する(例、R、R'、R”及びY、Y'、Y”)ことによって読者が時に気づかされるように、何回か出てくる官能基はすべて独立して選ばれる。
【0061】
「アルキル」なる用語は、直鎖(すなわち、非分岐又は非環式)、分岐、環式又は多環式の非芳香族炭化水素基を包含する意味であり、場合により1又は2以上の官能基で置換されていてもよい。特に指定しない限り、アルキル基は、1〜8個、好ましくは1〜6個の炭素原子を含有する。C1-6アルキルとはC1、C2、C3、C4、C5、及びC6アルキル基を包含する意味である。低級アルキルとは炭素数1〜6のアルキルを意味する。アルキルの例としては、それらに制限されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、シクロブチル、ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシルなどが挙げられる。アルキルは置換でも非置換でもよい。置換アルキル基の例としては、それらに制限されないが、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、ベンジル、置換ベンジル、フェネチル、置換フェネチルなどが挙げられる。
【0062】
「アルコキシ」なる用語は、上に定義した通りの指定炭素数のアルキル基が酸素架橋を介して結合しているアルキルの下位群を表す。例えば、「アルコキシ」は−O−アルキル基を意味し、ここでアルキル基は直鎖、分岐又は環式形態の1〜8個の炭素原子を含有する。「アルコキシ」の例としては、それらに制限されないが、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、t−ブトキシ、n−ブトキシ、s−ペントキシなどが挙げられる。
【0063】
「ハロアルキル」は、1又は2以上の炭素がハロゲンで置換されている分岐及び直鎖の両方の飽和炭化水素を包含するものである。ハロアルキルの例としては、それらに制限されないが、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチルなどが挙げられる。
【0064】
「アルケニル」なる用語は、炭素鎖又は環に沿った任意の安定な箇所において可能な1又は2以上の不飽和炭素−炭素結合を有する、直鎖、分岐又は環式形態の炭化水素鎖を包含するものである。特に指定しない限り、「アルケニル」は通常は炭素数2〜8、多くは炭素数2〜6の基を意味する。例えば、「アルケニル」は、プロプ−2−エニル、ブト−2−エニル、ブト−3−エニル、2−メチルプロプ−2−エニル、ヘキス−2−エニル、ヘキス−5−エニル、2,3−ジメチルブト−2−エニルなどを意味しうる。また、アルケニル基は置換されていても、非置換でもよい。
【0065】
「アルキニル」なる用語は、炭素鎖に沿った任意の安定な箇所において可能な1又は2以上の不飽和炭素−炭素三重結合を有する、直鎖又は分岐のいずれかの形態の炭化水素鎖を包含するものである。特に指定しない限り、「アルキニル」基は炭素数2〜8、好ましくは2〜6の基を意味する。「アルキニル」の例としては、これらに限られないが、プロプ−2−イニル、ブト−2−イニル、ブト−3−イニル、ペント−2−イニル、3−メチルペント−4−イニル、ヘキス−2−イニル、ヘキス−5−イニル等が挙げられる。また、アルキニル基は置換されていても、非置換でもよい。
【0066】
シクロアルキルはアルキルの下位群であって、いずれも飽和の炭素数3〜13の安定な任意の環式又は多環式炭化水素基を包含する。このようなシクロアルキルの例としては、これらに限られないが、シクロプロピル、ノルボルニル、[2.2.2]ビシクロオクタン、[4.4.0]ビシクロデカンなどが挙げられ、これらは他のアルキル基の場合と同様に場合により置換されていてもよい。用語「シクロアルキル」は用語「カルボサイクル」(炭素環)と交換可能に使用されうる。
【0067】
シクロアルケニルはアルケニルの下位群であって、環に沿ったいずれの地点でも可能な1又は2以上の炭素−炭素二重結合を含有する炭素数3〜13、好ましくは5〜8の安定な任意の環式又は多環式炭化水素基を包含する。このようなシクロアルケニキルの例としては、これらに限られないが、シクロペンテニル、シクロヘキセニルなどが挙げられる。
【0068】
シクロアルキニルはアルキニルの下位群であって、環に沿ったいずれの地点でも可能な1又は2以上の炭素−炭素三重結合を含有する炭素数5〜13の安定な任意の環式又は多環式炭化水素基を包含する。他のアルケニル及びアルキニル基の場合と同様に、シクロアルキル及びシクロアルケニルは場合により置換されていてもよい。
【0069】
ここで用いた用語「複素環」(又は「ヘテロ環」)、「ヘテロサイクリル」又は「複素環式」は、1個以上、好ましくは1〜4個の環炭素原子がN、O、又はSのようなヘテロ原子によりそれぞれ置換されている、環原子数が5〜14、好ましくは5〜10の非芳香族環系を意味する。複素環(基)の制限を意図しない例としては、3−1H−ベンズイミダゾール−2−オン、(1−置換)−2−オキソ−ベンズイミダゾール−3−イル、2−テトラヒドロフラニル、3−テトラヒドロフラニル、2−テトラヒドロチオフェニル、3−テトラヒドロチオフェニル、2−モルホリニル、3−モルホリニル、4−モルホリニル、2−チオモロホリニル、3−チオモルホリニル、4−チオモルホリニル、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、4-チアゾリジニル、ジアゾロニル、N−置換ジアゾロニル、1−フタルイミジニル、ベンゾオキサニル、ベンゾピロリジニル、ベンゾピペリジニル、ベンゾオキソラニル、ベンゾチオラニル及びベンゾチアニルが挙げられる。ここに用いた用語「複素環」又は「複素環式」基にやはり包含されるのは、インドリニル、クロマニル、フェナントリジニル又はテトラヒドロキノリニルのように、非芳香族ヘテロ原子含有環が1又は2以上の芳香族又は非芳香族環に縮合している基であって、基部すなわち結合位置が非芳香族ヘテロ原子含有環上にある基である。「複素環」、「ヘテロサイクリル」又は「複素環式」基もまた、飽和と部分的不飽和のいずれであろうと、場合により置換されていてもよい環を意味する。
【0070】
「アリール」なる用語は、単独で使用されるか、或いは「アラルキル」、「アラルコキシ」、又は「アリールオキシアルキル」のように、より大きな基の部分として使用されるが、いずれもフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントラシル及び2−アントラシルのように、6〜14の環原子を有する芳香族環基を意味する。「アリール」環は1又は2以上の置換基を含有しうる。「アリール」なる用語は「アリール環」なる用語と互換可能に使用されうる。「アリール」はまた、芳香環が1又は2以上の環に縮合している縮合多環芳香環系も包含する。有用なアリール環基の制限しない例としては、フェニル、ヒドロキシフェニル、ハロフェニル、アルコキシフェニル、ジアルコキシフェニル、トリアルコキシフェニル、アルキレンジオキシフェニル、ナフチル、フェナントリル、アントリル、フェナントロなど、並びに1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントラシル及び2−アントラシルが挙げられる。ここで用いた用語「アリール」の範囲内にやはり包含されるのは、インダニル、フェナントリジニル又はテトラヒドロナフチルのように、芳香環が1又は2以上の非芳香環に縮合している基であって、基部すなわち結合位置が芳香環上にあるものである。
【0071】
ここで用いた用語「ヘテロアリール」は、5〜14の環原子を有する安定な複素環式及び多複素環式の芳香族基を意味する。ヘテロアリール基は置換でも非置換でもよく、1または2以上の環を含みうる。代表的なヘテロアリール環の例としては、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、フリル、イソチアゾリル、フラザニル、イソオキサゾリル、チアゾリル等の5員単環基;ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル等の6員単環基;並びにベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3−b]チエニル、チアントレニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチエニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、ベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール、テトラヒドロキノリン、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、フェノキサジニルなどの多環複素環基が挙げられる(例えば、Katritzky 複素環化学ハンドブック (Handbook of Heterocyclic Chemistry)を参照)。
【0072】
ヘテロアリール環のさらなる具体例としては、2−フラニル、3−フラニル、N−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−オキサジアゾリル、5−オキサジアゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ピリミジル、3−ピリダジニル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、5−テトラゾリル、2−トリアゾリル、5−トリアゾリル、2−チエニル、3−チエニル、カルバゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、インドリル、キノリニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、イソキノリニル、インドリル、イソインドリル、アクリジニル又はベンゾイソオキサゾリルが挙げられる。
【0073】
ヘテロアリール基はさらに、ヘテロ芳香族環が1又は2以上の芳香族又は非芳香族環に縮合している基であって、基部すなわち結合位置がヘテロ芳香族環上にある基も包含する。例としては、テトラヒドロキノリン、テトラヒドロイソキノリン、並びにピリド[3,4−d]ピリミジニル、イミダゾ[1,2−a]ピリミジル、イミダゾ[1,2−a]ピラジニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、イミダゾ[1,2−c]ピリミジル、ピラゾロ[1,5−a] [1,3,5]トリアジニル、ピラゾロ[1,5−c]ピリミジル、イミダゾ[1,2−b]ピリダジニル、イミダゾ[1,5−a]ピリミジル、ピラゾロ[1,5−b] [1,2,4]トリアジン、キノリル、イソキノリル、キノキサリル、イミダゾトリアジニル、ピロロ[2,3d]ピリミジル、トリアゾロピリミジル、ピリドピラジニルが挙げられる。「ヘテロアリール」なる用語はまた、任意に置換されている基も意味する。「ヘテロアリール」なる用語は、「ヘテロアリール環」又は「ヘテロ芳香族」なる用語と互換可能に使用されうる。
【0074】
アリール基(アラルキル、アラルコキシ、又はアリールオキシアルキル基などのアリール部位も包含する)或いはヘテロアリール基(ヘテロアラルキル又はヘテロアリールアルコキシ基等のヘテロアリール部位も包含する)は、1又は2以上の置換基を含んでいてもよい。アリール又はヘテロアリール基の不飽和炭素原子上の適当な置換基の例としては、ハロゲン(F,Cl,Br又はI)、アルキル、アルケニル、アルキニル、−CN、−R4、−OR2、−S(O)r2、(ここでrは0、1又は2の整数)、−SO2NR23、−NR23、−(CO)YR2、−O(CO)YR2、−NR2(CO)YR2、−S(CO)YR2、−NR2C(=S)YR2、−OC(=S)YR2、−C(=S)YR2が挙げられる。ここで、各Yは、出てくるごとに独立して−O−、−S−、−NR3又は化学的単結合であり、従って、−(CO)YR2は、−C(=O)R2、−C(=O)OR2及び−C(=O)NR23を包含する。追加の置換基としては、−YC(=NR3)YR2、−COCOR2、−COMCOR2(式中、Mは炭素数1〜6のアルキル基)、YP(=O)(YR4)(YR4)(とりわけ、−P(=O)(R4)2を含む)、−Si(R4)3、−NO2,−NR2SO22、及び−NR2SO2NR23が挙げられる。
【0075】
さらに例示すると、Yが−NR3である置換基としては、従って、とりわけ、−NR3C(=O)R2、−NR3C(=O)NR23、−NR3C(=O)OR2、及び−NR3C(=NH)NR23が挙げられる。R4置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素環基から選ばれ;R2及びR3置換基は、出てくる毎にそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環基から選ばれ、R2、R3、及びR4置換基は、それら自体が置換されていても、非置換でもよい。R2、R3及びR4上で可能な置換基の例としては、とりわけ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノカルボニル、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、炭素環基、複素環基、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノカルボニルオキシ、ジアルキルアミノカルボニルオキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ基が挙げられる。別の例をさらに挙げると、保護OH(アシルオキシなど)、フェニル、置換フェニル、−O−フェニル、−O−(置換)フェニル、ベンジル、置換ベンジル、−O−フェネチル(即ち、−OCH2CH265)、−O−(置換)フェネチルが挙げられる。
【0076】
置換R2、R3、又はR4基の制限を意図しない例としては、ハロアルキル及びトリハロアルキル、アルコキシアルキル、ハロフェニル、−M−ヘテロアリール、−M−複素環基、−M−アリール、−M−OR2、−M−SR2、−M−NR23、−M−OC(O)NR23、-M−C(=NR2)NR23、−M−C(=NR2)OR3、−M−P(O)R23、−Si(R2)3、−M−NR2C(O)R3、−M−NR2C(O)OR2、−M−C(O)R2、−M−C(=S)R2、−M−C(=S)NR23、−M−C(O)NR23、−M−C(O)NR2−M−NR23、−M−NR2C(NR3)NR23−M−NR2C(S)NR23−M−S(O)23、−M−C(O)R3、−M−OC(O)R3、−MC(O)SR2、−M−S(O)2NR23、−C(O)−M−C(O)R2、−MCO22、−MC(=O)NR23、−M−C(=NH)NR23及び-M−OC(=NH)NR23(式中、Mは炭素数1〜6のアルキル基である)が挙げられる。
【0077】
より具体的な例の一部を挙げると、それらに制限されないが、クロロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、メトキシエチル、アルコキシフェニル、ハロフェニル、−CH2−アリール、−CH2−複素環、−CH2C(O)NH2、−C(O)CH2N(CH3)2、−CH2CH2OH、−CH2OC(O)NH2、−CH2CH2NH2、−CH2CH2CH2NEt2、−CH2OCH3、−C(O)NH2、−CH2CH2−複素環、−C(=S)CH3、−C(=S)NH2、−C(=NH)NH2、−C(=NH)OEt、−C(O)NH−シクロプロピル、C(O)NHCH2CH2−複素環、−C(O)NHCH2CH2OCH3、−C(O)CH2CH2NHCH3、−CH2CH2F、−C(O)CH2−複素環、−CH2C(O)NHCH3、−CH2CH2P(O)(CH3)2、Si(CH3)3などである。
【0078】
アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル基もしくは非芳香族複素環基も、従って1又は2以上の置換基を含有しうる。かかる基の適当な置換基の例としては、これらに制限されないが、アリール又はヘテロアリール基の炭素原子に対する置換基として上に列挙したものが挙げられ、それに加えて、飽和炭素原子に対しては下記の置換基も挙げられる:=O、=S、=NH、=NNR23、=NNHC(O)R2、=NNHCO22、又は=NNHSO22。ここで、R2及びR3は、出てくる毎に独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環基から選ばれる。
【0079】
脂肪族、ヘテロ脂肪族又は複素環基上の置換基の代表例としては、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノカルボニル、ハロゲン、アルキル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノカルボニルオキシ、ジアルキルアミノカルボニルオキシ、アルコキシ、ニトロ、−CN、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、−OH、ハロアルコキシ、又はハロアルキル基が挙げられる。
【0080】
例えば、ヘテロアリール又は非芳香族複素環における窒素上の置換基の例としては、−R4、−NR23、−C(=O)R2、−C(=O)OR2、−C(=O)SR2、−C(=O)NR23、−C(=NR2)NR23、−C(=NR2)OR2、−C(=NR2)R3、−COCOR2、−COMCOR2、−CN、−SO23、−S(O)R3、−P(=O)(YR2)(YR2)、−NR2SO23及び−NR2SO2NR23が挙げられる。ここで、R4は、出てくる毎に独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環基から選ばれ、R2及びR3は、出てくる毎にそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環基から選ばれる。
【0081】
環系(例、シクロアルキル、複素環、アリール又はヘテロアリール)が特に定義された範囲内で変動しうる複数の置換基で置換されている場合、置換基の総数は、当然ながら、その化合物の条件下で正常な利用可能な原子価を超えることはない。例えば、p個の置換基(ここで、pは0〜5の範囲内)で置換されたフェニル環は、0〜5個の置換基を有することができるのに対し、p個の置換基で置換されたピリジニル環は、当然ながら0〜4の範囲内の置換基数を有する。本発明の化合物におけるある群の化合物が有することができる置換基の最大数は容易に決定することができる。
【0082】
本発明は、安定又は化学的に可能な化合物を生ずる置換基及び可変記号の組み合わせだけを包含する。安定な化合物又は化学的に可能な化合物とは、その合成及び検出を可能にするのに十分な安定性を有するものである。本発明の好ましい化合物は、湿気又は他の化学的に反応性の条件の不存在下で40℃以下の温度で少なくとも1週間保管された時に実質的に変質を生じないだけの十分な安定性を有する。
【0083】
本発明の一部の化合物は互変異性体の形態で存在しうる。本発明は、特に指定しない限り、それらの化合物のそのような互変異性体の全てを包含する。
特に説明しない限り、ここに示した構造は、その構造の全ての立体化学的形態、すなわち、各不斉中心に対してR配置とS配置の両方、を包含するものである。従って、本発明の化合物の単独の立体化学異性体並びにエナンチオマー(鏡像異性体)混合物及びジアステレオマー混合物が本発明の範囲内である。すなわち、本発明は、他の異性体を実質的に含まないそれぞれのジアステレオマー又はエナンチオマー(モル基準で90%超、好ましくは95%超が他の立体異性体を含まない)、並びにこのような異性体の混合物を包含する。
【0084】
常法に従ったラセミ混合物の分割、例えば、ジアステレオ異性体塩の生成により、又は光学活性の酸もしくは塩基での処理により、特定の光学異性体を得ることができる。適当な酸の例は、酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、及びショウノウスルホン酸であり、次いで結晶化(晶析)によりジアステレオ異性体の混合物を分離した後、これらの塩から光学活性の塩基を遊離させる。光学異性体の別の分離方法は、エナンチオマーの分離を最大にするように最適に選択されたキラルクロマトグラフィーカラムを使用する方法である。さらに別の方法は、本発明の化合物を活性化形態の光学的に純粋な酸又は光学的に純粋なイソシアネートと反応させることにより共有ジアステレオ異性体分子を合成する方法である。合成されたジアステレオ異性体は、クロマトグラフィー、蒸留、結晶化又は昇華のような常套手段により分離した後、加水分解してエナンチオマーとして純粋な化合物を遊離させることができる。
【0085】
本発明の光学活性な化合物は、活性な出発物質を使用することにより得ることもできる。これらの異性体は遊離酸、遊離塩基、エステル又は塩の形態をとりうる。
本発明の化合物は、放射化標識(放射性同位体標識)された形態でも存在しうる。すなわち、該化合物は、自然界に通常見られる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を持つ1又は2以上の原子を含有していてもよい。水素、炭素、リン、フッ素及び塩素の放射性同位体としては、それぞれ3H,14C,32P,35S,43F,及び36Clが挙げられる。このような放射性同位体及び/又は他の原子の他の放射性同位体を含有する本発明の化合物も本発明の範囲内である。トリチウム化、すなわち、3Hと、炭素14、すなわち、14Cが、製造及び検出が容易であることから特に好ましい放射性同位体である。
【0086】
本発明の放射化標識化合物は一般に当業者に周知の方法により製造することができる。好都合には、このような放射化標識化合物は、非放射化標識試薬に代えて、容易に入手可能な放射化標識試薬を使用することを除いて、ここに開示した合成手順を実施することにより製造することができる。
【0087】
4.合成の概括
当業者は、Rt、Ra、Rb、Rc、Rd、Re並びに環T、A、B、C及びDの各種の選択枝を含む化合物を包含する本発明の化合物の合成、回収及び特性決定に対して有用な合成戦略、保護基並びに他の材料及び方法の指針について、後述の実施例に含まれる情報と組み合わせて採用されうる、複素環及び他の関連する化学的変換、回収及び精製技術についての確立した文献を持っている。
【0088】
下に反応式を示す手法を含む各種の合成手法を用いてここ(本明細書)に記載した化合物を製造することができる。当業者であれば、これらの手法に保護基を使用してもよいことは理解していよう。「保護基」は、多官能性の化合物において、潜在的に反応性の部位(例、アミン、ヒドロキシ、チオール、アルデヒド等)での化学反応を一時的に阻止して、反応が別の部位で選択的に行われることができるようにするのに使用される部分(基)である。好適態様においては、保護基は、計画した反応に適した保護置換基を生ずるように良好な収率で選択的に反応し;保護基は、存在する他の官能基を過度に攻撃しない容易に入手できる好ましくは無毒な試薬によって良好な収率で選択的に除去可能であり;保護基は、好ましくは容易に分離可能な誘導体を(より好ましくは新たな立体異性中心を発生させずに)形成し;そして保護基は、好ましくは反応の別の部位の複雑化を避けるために追加の官能基を最小限しか有していない。
【0089】
多様な保護基、並びにそれらを配置及び除去するための戦略、試薬及び条件は、本技術分野において知られている。例えば、T.W. Greene及びP.G. Wuts編、「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」第3版, John Wiley & Sons, New York, 1999を参照。ここに記載した化合物を製造するのに有用な保護基の方法論(保護及び脱保護の材料、方法及び戦略)及び他の合成化学変換については、R. Larock「有機変換総論(Comprehensive Organic Transformations)」 VCH Publishers (1989); T.W. Greene及びP.G.M. Wuts編、「有機合成における保護基」第3版, John Wiley & Sons (1999); L. Fieser and M. Fieser「フィーザー及びフィーザーの有機合成試薬(Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis)」John Wiley & Sons (1994); 及びL. Paquette編「有機合成試薬辞典(Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis)」John Wiley & Sons (1995)を参照。これらの文献の全内容をここに参考文献として援用する。
【0090】
また、所望の同位体、例えば、水素の代わりに重水素(ジューテリウム)が富化された試薬を選択して、そのような同位体を含有する本発明の化合物を作成することもできる。1又は2以上の位置において水素の代わりに重水素を含有するか、或いはC,N,P,及びOの各種同位体を含有する化合物も本発明に包含され、例えば、その化合物の代謝及び/又は組織分布を研究するため、或いは代謝速度もしくは経路又は生物学的機能の他の側面を変化させるために使用できる。
【0091】
本発明の化合物は、下に説明する方法を、有機合成化学の分野で公知の合成法と組み合わせて、又は当業者には理解されるその変更により合成することができる。好ましい方法としては、それらに限られないが、下に説明する方法が挙げられる。反応は、使用する試薬及び材料に適切で、かつ行われる転化に適した溶媒中で行われる。分子上に存在する官能性は、提案された転化(化学反応)と適合すべきであることは有機合成の分野の当業者にとっては理解されよう。そのため、本発明の所望の化合物を得るために、合成工程の順序を変更するか又は他の方法ではなくある特定の方法を選択するように何らかの判断が必要となることがあるかもしれない。
【0092】
本発明の化合物は反応式(スキーム)Iから反応式XVIIに概観されるようにして、当業者に公知の標準的方法を用いて合成することができる。
「上部」の環Tを「下部」の[環A]−[L1]−[環B]部分に結合させるには、反応式I及びIIに示すように、パラジウム触媒によるソノガシラ(薗頭)カップリング反応が使用される。反応式Iでは、ソノガシラカップリング反応は、アセチレン性の「上部」の環Tと、反応性基Wの存在により予め活性化された[環A]−[L1]−[環B]部分とによって行われる。Wは、目的のカップリング反応を可能にするI(ヨージド)、Br(ブロミド)、又はその他の反応性基である。中間体のW−[環A]−[L1]−[環B]における変動因子(可変記号)の意味は先に定義した通りである。環A及びBはそれぞれ可能な置換基Ra及びRbにより場合により置換されていてもよい。
【0093】
【化21】

【0094】
別のカップリング反応は反応式IIに記載されており、ここでは環Tの方が反応性基W(I又はBrのような)の存在によって「活性化」されており、これが同様のパラジウム触媒によるカップリング条件下で、「下部の」アセチレン性[環A]−[L1]−[環B]に結合される。
【0095】
【化22】

【0096】
反応式I及びIIに記載されたソノガシラカップリング反応条件は、本発明の全ての単環式ヘテロアリール環Tに適用可能であって、本発明の全ての化合物の合成に使用することができる。
【0097】
アセチレン性環T部分の調製に対する公知の化学変換反応に基づくいくつかの総合的合成手法の実例を下記反応式III〜VIに例示する。
【0098】
【化23】

【0099】
【化24】

【0100】
【化25】

【0101】
【化26】

【0102】
当業者なら認めるように、各種置換基を有するアセチレン性の環Tグループの調製のためのこれらの方法は、ここに示されていない各種の他の単環式ヘテロアリール環にも広く適用可能である。
【0103】
次に示す反応式VII〜XIは、反応式I及びIIに説明したカップリング反応における有用な中間体である、式:W−[環A]−[L1]−[環B]で示される化合物の合成を示す。いうまでもないが、次式で示される中間体は、「上部」ヘテロアリール環とのそのカップリング反応が本発明の化合物を生ずることから特に興味がある。
【0104】
【化27】

【0105】
上の式において、変更可能な基A、L1及びBは、先に定義した通りであり、場合により本書に記載したように置換されていてもよく、WはIであるか、又は目的のカップリング反応を可能する他の反応性基である。
【0106】
このような中間体の実例としては、とりわけ下記構造のものが挙げられる。
【0107】
【化28】

【0108】
式中、可変記号、例えば、Ra、Rb、Rc及びRdは既に定義した通りである。例えば、Raは一部の態様ではとりわけF又はアルキル、例えば、Meから選ばれ、Rbは一部の態様ではとりわけCl、F、Me、t−ブチル、−CF3、又は−OCF3から選ばれる。可能な各種の置換基を有する式:W−[環A]−[L1]−[環B]で示される上記及びその他の化合物は、本書に開示した各種の一般式、種類及び下位種に規定されるような本発明の対応する化合物の製造に有用である。
【0109】
試薬及び代表的な中間体の製造のための合成経路の実例の一部を次に示す。
反応式VIIは、環A及びBが共にフェニルであり、L1がNHC(O)であるW−[環A]−[L1]−[環B]中間体の典型的な合成を示す。
【0110】
【化29】

【0111】
反応式VIIIは、環Bが2−ピリジンであり、L1がC(O)NH(即ち、上とは逆方向)である上記中間体の変更例の合成を示す。
【0112】
【化30】

【0113】
下の反応式IX及びXは、環A及びBが共にフェニルであり、環Cがヘテロアリール環であるW−[環A]−[L1]−[環B]−[環C]中間体の合成を示す。これらの中間体は一般式IIで示される化合物の製造に有用である。
【0114】
より具体的には、下記反応式IXは環Cがイミダゾール環である中間体の調製を説明する。
【0115】
【化31】

【0116】
下記反応式Xは、環Cがピロール又はオキサゾール環である中間体の調製を説明する。
【0117】
【化32】

【0118】
下記反応式XIは、環A及びBが共にフェニルであり、Rb置換基が−[L2]−[環D]であるW−[環A]−[L1]−[環B]中間体の合成を示す。この種の中間体は、環Dが1又は2個のヘテロ原子を含有する5又は6員環の複素環である一般式IIIで示される化合物の製造に有用である。
【0119】
【化33】

【0120】
この反応式において、環Bの置換基Rbの制限を意図しない例は、ハロゲン、例えば、Cl、低級アルキル基、例えば、イソプロピル、並びに置換低級アルキル基、例えば、−CF3であり、環Dの制限を意図しない例は、N,N−ジメチルピロリジン、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、及びN−メチルピペラジンである。
【0121】
上掲の各種合成反応式に示されているような中間体:W−[環A]−[L1]−[環B]は、全体反応式Iに示されているソノガシラカップリング条件を用いてアセチレン性の環Tと反応させることができる。
【0122】
1例を下の反応式XIIに示す。ここで、環T部分は,ソノガシラカップリング工程の後でさらに誘導体化して、本発明の各種の興味ある置換類似化合物を形成することができる。
【0123】
【化34】

【0124】
あるいは、W−[環A]−[L1]−[環B]中間体をトリメチルシリルアセチレンとソノガシラカップリング条件下で反応させてから、その他の点では全体反応式IIに示したようにして,ヨード又はブロモで活性化された環Tとカップリングさせることもできる。
【0125】
1例を下記反応式XIIIに示す。
【0126】
【化35】

【0127】
別の態様では、これらの工程を異なる順序で行うことができる。例えば、下記の反応式XIVに示すように、、ソノガシラカップリング反応を用いて環Tを環Aに結合させてから、結合で得られた部分を環B及び/又は[環B]−[L2]−[環D]及び/又は[環B]−[環C]に結合させることもできる。
【0128】
【化36】

【0129】
環A及び環Bがフェニルであり、L1がCONHである制限しない例において、下記反応式XVは、アセチレン性の環Tを3−ヨード−4−メチル安息香酸(環A部分)とソノガシラカップリングさせて[環T]−[環A]中間体を生成させ、これを次いで、場合により置換されていてもよい環B部分とアミド結合させる手法を説明する。
【0130】
【化37】

【0131】
この手法は、アセチレン性の環T(即ち、5−エチニル−1−メチル−1H−イミダゾール−2−カルボキサミド)を置換W−[環A](即ち、3−ヨード−4−メチル安息香酸)と結合させた後、得られた[環T]−[環A]−COOH中間体を、H2N−[環B]−L2−[環C]部分(即ち、4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチルアニリン))とアミド結合させる反応手順を示す下記の反応式XVIに例示される。
【0132】
【化38】

【0133】
或いは、当業者の組み立てオプションの範囲内の別の例として、次の反応式XVIIに示すように、3−ヨード−4−メチル安息香酸−環A中間体を、トリメチルシリルアセチレンとソノガシラカップリング反応させた後、シリル基の脱保護を行い、次いで活性化された環Tと第2のソノガシラカップリング反応を行うこともできる。
【0134】
【化39】

【0135】
前述したような合成手法を後述する実施例、本書に述べた別の情報、並びに従来の方法及び材料と組み合わせることにより、当業者であれば本書に開示したすべての範囲の化合物を合成することができる。
【0136】
5.用途、処方組成物、投与
医薬用途;適応症
本発明は、キナーゼが関与している可能性のある疾患、かかる疾患の徴候、又はキナーゼが媒介する他の生理学的事象の作用を治療又は改善するのに有益となる生物学的性質を有する化合物を提供する。例えば、本発明の多くの化合物は、Src及びablのチロシンキナーゼ活性、とりわけ、がんの成長(増殖)、発生及び/又は転移を媒介すると考えられているチロシンキナーゼを阻害することが示された。本発明の多くの化合物はまた、とりわけK−562白血病細胞を含むがん細胞系に抗する強力なin vitro活性を有することが認められた。観察された効力は、K562細胞による慣用の増殖抑制検定において、グリーベックより10倍程度以上もより強力であった。
【0137】
従って、このような化合物はがんの治療に有益であって、がんとしては、原発性と転移性の両方のがんを含み、充実性がん並びにリンパ腫及び白血病(CML、AML及びALLを含む)を含み、かつグリーベック、タルセバもしくはイレッサのようなキナーゼ阻害剤の投与をはじめとする他の治療法を包含する他の治療法に対して耐性のがんを含む。
【0138】
このようながんとしては、とりわけ、胸部(乳がん)、子宮頚部、結腸及び直腸、肺、卵巣、膵臓、前立腺、頭部及び頚部、胃腸間質のがん、並びにメラノーマ、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、メラノーマ、胃がん、及び白血病(例、骨髄性、リンパ性、骨髄球性及びリンパ芽球性白血病)が挙げられ、これらは、とりわけグリーベック、タルセバもしくはイレッサを含む1又は2以上の他の治療法に耐性である場合を含む。
【0139】
各種抗がん剤への耐性は、タンパク質の薬剤結合性、リン酸結合性、タンパク質結合性、自己調節又は他の特性の変質に関係する、がんのメディエーター又はエフェクターにおける1又は2以上の突然変異(例、Src又はAblのようなキナーゼの突然変異)から生ずることがある。例えば、慢性骨髄性白血病(CML)に関係するキナーゼであるBCR−Ablの場合、グリーベックに対する耐性は、とりわけキナーゼ活性サイトでの薬剤占有の立体障害、リン酸結合Pループの変形性の変質、活性サイトを包囲する活性化ループのコンフォメーションへの影響などを含む多様な機能上の結果につながる多様なBCL/Abl突然変異にマッピングされた。
【0140】
薬剤耐性に関係するBcr/Ablのこのような突然変異の代表例については、例えば、Shah et al, 2002, Cancer Cell 2, 117-125、及びAzam et al, 2003, Cell 112, 831-843並びにそこに引用されている文献を参照。BCR/Ablに関する追加の背景情報、そのCMLにおける機序的役割及び薬剤耐性付与メカニズム並びに突然変異については下記の文献も参照。
【0141】
Kurzrock et al, フィラデルフィア染色体陽性白血病:基本メカニズムから分子治療まで (Philadelphia chromosome-positive leukemias: from basic mechanisms to molecular therapeutics), Ann Intern Med. 2003-05-20; 138(10): 819-30;
O'Dwyer et al., メシル酸イマチニブにより誘発される主な細胞遺伝的反応における慢性骨髄性白血病患者のフィラデルフィア染色体陰性異常クローンの証明 (Demonstration of Philadelphia chromosome negative abnormal clones in patients with chronic myelogenous leukemia during major cytogenetic responses iNCIuded by imatinib mesylate), Leukemia, 2003-3月; 17(3): 481-7;
Hochhaus et al., イマチニブ(STI571)治療に対する耐性の分子及び染色体でのメカニズム (Molecular and chromosomal mechanisms of resistance to imatinib (STI571) therapy), Leukemia, 2002-11月; 16(11):2190-6;
O'Dwyer et al., 促進期CMLにおけるメシル酸イマニチブ(STI571)反応に及ぼすクローン発生の影響 (The impact of clonal evolution on response to imatinib mesylate (STI571) in accelerated phase CML), Blood 2002-09-01; 100(5): 1628-33;
Braziel et al., メシル酸イマニチブ治療慢性骨髄性白血病患者における血液病理学的及び細胞遺伝学的知見: 14ヶ月の経験 (Hematopathologic and cytogenetic findings in iminitib mesylate-treated chronic myelogenousleukemica patients: 14 months' experience), Blood, 2002-07-15; 100(2): 435-41;
Corbin et al., STI571によるABlキナーゼ阻害の特異性の構造に基づく解析 (Analysis of the structural basis of specificity of inhibition of the Abl kinase by STI571) J Biol Chem, 2002-08-30; 277(35): 32214-9;
Wertheim et al., BCR-ABL誘導融合欠陥はチロシンキナーゼ非依存性 (BCR-ABL-induced adhesion defects are tyrosine kinase-independent) Blood, 2002-06-01; 99(11): 4122-30。
【0142】
Kantarjian et al., 慢性骨髄性白血病におけるメシル酸イマチニブへの血液学的及び細胞遺伝学的反応 (Hematologic and cytogenetic responses to imatinib mesylate in chronic myelogenous luekemia), N. Engl J Med, 2002-02-28; 346(9): 645-52; 正誤表 N Engl J Med, 2002-06-13; 346(24): 1923;
Hochhaus et al., STI-571がん治療に対する臨床耐性の原因 (Roots of clinical resistance to STI-571 cancer therapy), Science, 2001-09-21; 293(5538): 2163;
Druker et al., フィラデルフィア染色体を持つ慢性骨髄性白血病及び急性リンパ芽球性白血病の芽球発症(急性転化)におけるBCR-ABLチロシンキナーゼの特異的阻害剤の活性 (Activity of a specific inhibitor of the BCR-ABL tyrosine kinase in the blast crisis of chronic myeloid leukemia and acute lymphoblastic leukemia with the Philadelphiachromosome), N Engl J Med, 2001-04-05; 344(14): 1038-42; 正誤表 N Engl J Med, 2001-07-19; 345(3): 232;
Mauro et al., 慢性骨髄性白血病 (Chronic myelogenous leukemia), Curr Opin Oncol, 2001-01月, 13(1): 3-7, レビュー;
Kolibaba et al., BCR-ABLへのCRKL結合及びBCR-ABL転換 (CRKL binding to BCR-ABL and BCR-ABL transformation), Leuk Lymphoma, 1999-03月; 33(1-2): 119-26
Bhat et al., p62(dok)とp210(bcr-abl)との相互作用及びBcr-Abl関連タンパク質 (Interactions of p62(dok) with p210(bcr-abl) and Bcr-Abl-associated proteins), J Biol Chem, 1998-11-27; 273(48): 32360-8;
Senechal et al., 繊維芽細胞及び造血細胞におけるCrklアダプタータンパク質の機能の構造要件 (Structural requirements for function of the Crkl adapter protein in fibroblasts and hematopoietic cells), Mol Cell Biol, 1998-09月, 18(9): 5082-90;
Kolibaba et al., タンパク質チロシンキナーゼ及びがん (Protein tyrosine kinases and cancer), Biochem Biophys Acta, 1997-12-09; 1333(3): F217-48, レビュー;
Heaney et al., BCR-ABLへのCRKLの直接結合はBCR-ABL転換に必要ない (Direct binding of CRKL to BCR-ABL is not required for BCR-ABL transformation), Blood, 1997-01-01; 89(1): 297-306;
Hallek et al., 骨髄細胞におけるレセプターチロシンキナーゼp145キットとp210bcr/ablキナーゼとの相互作用 (Interaction of the receptor tyrosine kinase p145-kit with the p210bcr/abl kinase in myeloid cells), Br J Haematol, 1996-07月; 94(1): 5-16;
Oda et al., マウス骨髄細胞系におけるBCR-ABL誘発ファクター非依存性増殖にABLのSH2ドメインは必要ない (The SH2 domain of ABL is not required for factor-independent growth induced by BCR-ABL in a murine myeloid cell line), Leukemia, 1995-02月; 9(2): 295-301;
Carlesso et al., ファクター依存性マウス骨髄細胞系の増殖に及ぼすp210BCR-ABLチロシンキナーゼの生物学的作用を規定するための温度感受性突然変異の使用 (Use of a temperature-sensitive mutant to define the biological effects of the p210BCR-ABL tyrosine kinase on proliferation of a factor-dependent murine myeloid cell line), Oncogene, 1994-01月; 9(1): 149-56。
【0143】
また、本発明の化合物は、単独療法と併用(組み合わせ)療法のいずれの場合でも、具体的にはグリーベックその他のキナーゼ阻害剤をはじめとする他の抗がん剤に全体的又は部分的に耐性があるものを含む白血病その他のがん、及び具体的には、それらに限られないが前述した刊行物のいずれかに記載されているものを含む、キナーゼドメインの内部又は外部でBCR/Ablに1又は2以上の突然変異がある白血病を含む白血病その他のがんに有用であると考えられる。とりわけ、薬剤結合クレフト(cleft)、リン酸結合Pループ、活性化ループ、キナーゼβ−3シートの保存VAVK、小Nローブの触媒α−1ヘリックス、大Cローブ内の長いα−3ヘリックス、及び活性化ループの下流のCローブ内領域における突然変異を含む、BCR/Ablのそのような突然変異の例については、特に前記Azam et alの文献とそこに引用されている文献を参照。
【0144】
製薬学的手法:
本発明の方法は、必要とする個体に治療有効量の本発明の化合物を投与することからなる。
【0145】
「治療有効量」とは、がん細胞の成長(増殖)又は広がり、腫瘍の大きさ又は数、或いはがんのレベル、ステージ、進行又は重症度に関する他の尺度の検出可能な消滅又は抑制(阻害)に有効な量である。厳密な必要量は、個体の種、年齢、及び全身状態、病状の重症度、抗がん剤の種類、その投与方式、他の療法との併用治療などに応じて、個体ごとに変動しよう。
【0146】
本化合物又は本化合物を含有する組成物は、腫瘍又は他の形態のがんの成長を消滅又は抑制するのに有効な任意の量及び任意の投与経路を用いて投与しうる。
本発明の抗がん剤化合物は、好ましくは投与の容易さと投与量の均一さのために単位剤形の形態で処方される。ここで用いた「単位剤形」とは、治療される患者に適した抗がん剤の物理的に分かれている単位を意味する。普通そうであるように、本発明の化合物及び組成物の総日用量は、健全な医学的判断への通常の信頼性を用いて主治医により決定されよう。任意の個々の患者又は生体に対する具体的な治療有効投与量レベルは、治療される疾患の種類;その疾患の重症度;採用された具体的化合物の効力;採用された具体的組成物;患者の年齢、体重、全身健康状態、性別及び食事;投与の経路及び計画;その化合物の代謝及び/又は排泄の速度;治療期間;本発明の化合物の投与と組み合わせて又は同時に使用される薬剤;並びに医学分野で周知の同様な因子を包含する多様な因子に応じて変動しよう。
【0147】
また、所望の投薬量で適当な薬剤に許容される担体を用いて処方された後、本発明の組成物を、経口、直腸、非経口、槽内(くも膜下槽内)、鞘膜内もしくは膣内、腹腔内、局所(経皮パッチ、散剤、軟膏、もしくは滴剤など)、舌下、バッカル、口もしくは鼻スプレイ剤、その他の経路でヒトその他の動物に投与することができる。
【0148】
本化合物の有効全身用量は典型的には患者体重1kg当たり0.01〜500mg、好ましくは0.1〜125mg/kg、場合によっては1〜25mg/kgの範囲内であり、それを1回又は多数回で投与する。一般に、本化合物はそのような治療を必要とする患者に一人あたり約50〜2000mgの日用量範囲内で投与されうる。投与は1日に1回又は複数回、1週間(又は他の数日おき間隔)ごと、或いは間欠的投与計画でよい。例えば、本化合物の投与を、1週間基準(例、月曜ごと)で1日に1回又は複数回、期限を定めずに、又はある一定の週数(例、4〜10週)にわたって行ってもよい。別の方法として、その化合物を、一定の日数(例、2〜10日)にわたって毎日投与した後、一定の日数(例、1〜30日)はその投与を行わず、このサイクルを、期限を定めずに、又は所定の反復数だけ(例、4〜10サイクル)反復するのでもよい。1例として、本発明の化合物を5日間毎日投与した後、9日間中止し、次いでさらに5日間毎日投与した後、9日間中止するというサイクルで、このサイクルを、期限を定めずに、又は合計4〜10回繰り返すのでもよい。
【0149】
ある特定の障害又は症状の治療又は予防に有効な化合物の量は、投薬量に影響する周知の因子に部分的には依存しよう。また、最適の投与量範囲を確定するのを助けるために、in vitro又はin vivo検定を場合により採用してもよい。有効用量の大まかな目安を、in vitro又は動物モデル試験システムから得られた用量−反応曲線から外挿してもよい。正確な投与量レベルは主治医又は他の健康管理提供者により決定されるべきであり、投与経路、並びに個体の年齢、体重、性別及び全身健康状態;疾患の性質、重症度及び臨床段階;併用療法の使用の有無;並びに患者の細胞の遺伝子工学の性質及び程度を含む周知の因子に応じて変動しよう。
【0150】
特定の疾病状態又は障害の治療又は阻害のために投与する場合、本発明の化合物の有効投与量は、利用する化合物の種類、投与方式、治療する症状の種類とその重症度、並びに治療される個体に関係する各種の身体的因子に依存して変動することがある。多くの場合、本化合物を約0.01mg/kg〜500mg/kg、好ましくは0.1〜125mg/kg、そしてより好ましくは1〜25mg/kgの日用量で投与すると満足すべき結果を得ることができよう。決定される日用量は投与経路により変動することが予測される。例えば、非経口投与量は経口投与量水準のほぼ10〜20%の水準となることが多い。
【0151】
本発明の化合物を併用投与計画の一部として使用する場合、併用される各成分の投与量が所望の治療期間中それぞれ投与される。併用される複数成分は、それら両成分を含んだ一体化した単一の剤形で、又は別々の剤形単位として、同時に投与してもよく、或いは併用される複数成分をそれぞれ治療期間中の異なる時点で投与することもでき、また一方の成分を他方の成分のための予備治療として投与してもよい。
【0152】
本化合物に関して:
本発明の化合物は、治療のために遊離形態で存在することができ、或いは、適当であれば、薬剤に許容される塩又は他の誘導体として存在することもできる。ここで用いた用語「薬剤に許容される塩」は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等を伴わずにヒト及び下等動物の組織との接触に使用するのに適していて、妥当な便益/危険比と釣り合っている塩を意味する。アミン、カルボン酸、リン酸エステルもしくは塩、並びに他の種類の化合物の薬剤に許容される塩は本技術分野において周知である。例えば、S.M. Berge et alは、ここに参考文献として援用する J. Pharmaceutical Science, 66: 1-19 (1977)において、薬剤に許容される塩について詳述している。塩は、本発明の化合物の単離及び精製中にその場で調製するか、又は遊離塩基もしくは遊離酸形態の本発明の化合物をそれぞれ適当な酸もしくは塩基と反応させることにより別に調製することができる。
【0153】
薬剤に許容される無毒な酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸のような無機酸又は酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸のような有機酸との反応により形成された、或いはイオン交換のような本技術分野で使用されている他の方法を用いて形成された、アミノ基の塩である。他の薬剤に許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオネート(lactobionate)、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモイン酸塩(パモエート)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。
【0154】
代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの塩が挙げられる。さらなる薬剤に許容される塩としては、適当であれば、ハロゲンイオン、水酸イオン、カルボン酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、低級アルキルスルホン酸イオン、及びアリールスルホン酸イオンなどの対イオンを用いて形成された、無毒なアンモニウム、第4級アンモニウム及びアミンカチオンの塩が挙げられる。
【0155】
また、ここで用いた用語「薬剤に許容されるエステル」は、好ましくはin vivoで加水分解し、ヒトの体内で容易に分解して親化合物又はその塩を遊離させるものを含むエステルを意味する。適当なエステル基として、例えば、薬剤に許容されるに脂肪族カルボン酸、特にアルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸及びアルカン二酸から誘導されたものが挙げられる。ここで、各アルキル又はアルケニル部分は遊離には炭素数6以下のものである。具体的なエステルの例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アクリル酸及びエチルコハク酸のエステルが挙げられる。もちろん、エステルは本発明の化合物のヒドロキシル基又はカルボン酸基から形成することができる。
【0156】
さらに、ここで用いた用語「薬剤に許容されるプロドラッグ」は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等を伴わずにヒト及び下等動物の組織との接触に使用するのに適していて、妥当な便益/危険比と釣り合っており、その意図した用途に有用な本発明の化合物のプロドラッグ、並びに可能であれば両性イオン形態の本発明の化合物を意味する。「プロドラッグ」とは、in vivoで、例えば、血中での加水分解により、上式の親化合物を生ずるように変換される化合物を意味する。例えば、T. Higuchi and V. Stella, 新規薬剤供給システムとしてのプロドラッグ(Pro-drugs as Novel Delivery Systems), A.C.S Symposium Series, Vol. 14及びEdward B. Roche編、薬剤設計における生可逆的担体(Bioreversible Carriers in Drug Design), アメリカ製薬協会(American Pharmaceutical Association)及びPergamon Press, 1987 (両者をここに参考文献として援用する)を参照。
【0157】
組成物:
本発明により、本書に記載した化合物(又はそのプロドラッグ、薬剤に許容される塩もしくは他の薬剤に許容されるに誘導体)のいずれかに記載の1種と、1種又は2種以上の薬剤に許容される担体又は賦形剤とを含有する組成物が提供される。これらの組成物は場合により1種又は2種以上の追加の治療剤をさらに含有していてもよい。或いは、本発明の化合物を、1種又は2種以上の他の治療計画(例、グリーベック又は他のキナーゼ阻害剤、インターフェロン、骨髄移植、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ビスホスホネート、サリドマイド、がんワクチン、ホルモン療法、抗体、放射線など)の投与又は適用と組み合わせて、必要な患者に投与してもよい。例えば、本発明の化合物との共同投与又は薬剤組成物中の共通含有のための別の治療剤は、別の1種又は2種以上の抗がん剤でもよい。
【0158】
ここに記載したように、本発明の組成物は、本発明の化合物を薬剤に許容される担体と一緒に含有する。ここで用いた「担体」は、所望の具体的な剤形に適していれば、溶媒、希釈剤、もしくは他のビヒクルもしくは賦形剤、分散もしくは懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘もしくは乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑剤などの全てを包含する。Remington's Pharmaceutical Science、第15版、E.W. Martin (Mack Publishing Co., ペンシルバニア州イーストン、1975) は、薬剤組成物の処方に使用される各種担体と、その製造のための公知技法とを開示している。従来の担体媒体が本発明の化合物と不適合である、例えば、何らかの望ましくない生物学的作用を生ずる、或いは薬剤組成物の何らかの他の成分と有害な相互作用を起こすといった場合を除いて、どの担体の使用も本発明の範囲内であるとされる。
【0159】
薬剤に許容される担体として使用しうる材料の例をいくつか挙げると、それらに限られないが、乳糖、ブドウ糖及び蔗糖のような糖;コーンスターチ及び馬鈴薯デンプンのようなデンプン;セルロースやナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及び酢酸セルロースのようなその誘導体;粉末化トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオ脂及び座剤ワックスのような賦形剤;落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油などの油;プロピレングリコールのようなグリコール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルのようなエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムのような緩衝剤;アルギン酸:発熱物質を含有しない水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;及びリン酸緩衝液;並びに他の無毒で適合性の滑剤(ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなど)がある。また、着色剤、離型剤、被覆剤、甘味剤、香味料及び芳香剤、保存剤、及び酸化防止剤も組成物中に存在させることができる。
【0160】
処方(組成物):
本発明は、本発明の活性な化合物を、1種又は2種以上の薬剤に許容される担体及び/又は希釈剤及び/又は佐剤(アジュバント)(これらをここでは「担体」材料と総称する)並びに所望により他の活性な成分と一緒に含有する種類の組成物もまた包含する。本発明の活性な化合物は、任意に適当な経路により、好ましくはそのような経路に適合した薬剤組成物の形態で、かつ目的とする治療に有効な用量で投与されうる。本発明の化合物及び組成物は、例えば、経口、粘膜、局所、直腸、吸入スプレーのような肺、又は血管内、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、胸骨内、及び輸注法を含む非経口の経路で、慣用の薬剤に許容される担体、佐剤及び賦形剤を含有する投与量単位の製剤(処方組成物)として投与されうる。
【0161】
本発明の薬剤として活性な(有効な)化合物は、ヒト及び他の哺乳動物を含む患者に投与するための医薬品を製造するための慣用の調剤又は製剤方法に従って処理することができる。
【0162】
経口投与用としては、薬剤組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、懸濁液剤又は液剤の形態でよい。薬剤組成物は特定量の有効成分を含有する投与量単位(dosage unit)の形態で調製することが好ましい。
【0163】
このような投与量単位の例は錠剤又はカプセル剤である。例えば、それらは約1〜2000mg、好ましくは約1〜500mg、より 普通には約5〜200mgの量の有効成分を含有しうる。ヒト又は他の哺乳動物の適当な日用量は患者の状態及び他の因子に応じて変動しうるが、前述の通り、通常の方法を用いて決定されうる。
【0164】
本発明の化合物及び/又は組成物によりある疾患症状を治療するための化合物の投与量及び投与計画は、その個体の年齢、体重、性別及び医学的状態、疾患の種類、疾患の重症度、投与の経路と頻度、並びに採用する化合物の種類を含む多様な因子に応じて変動する。従って、投与計画は広範囲に変動しうるが、標準的な方法を用いて日常的に決定することができる。典型的な日用量は、体重1kg当たり化合物0.01〜500mgの範囲内、好ましくは0.1〜125mg/kg体重、場合によっては1〜25mg/kg体重である。既に述べたように、日用量は1回の投与で投薬されることができ、或いは2、3、4又はそれ以上の回数に分けることもできる。
【0165】
治療目的のために、本発明の活性な化合物を、指示された投与経路に適した1種又は2種以上の佐剤、賦形剤又は担体と普通のやり方で組み合わせる。経口投与されるなら、本化合物を乳糖、蔗糖、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸及び硫酸のナトリウム塩及びカルシウム塩、ゼラチン、アカシア(アラビア)ゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、及び/又はポリビニルアルコールと混合した後、慣用の投与のために錠剤への打錠又はカプセル封入することができる。かかるカプセル剤又は錠剤は、活性化合物のヒドロキシプロピルメチルセルロース中の分散において提供されうるような、制御放出(徐放)処方組成物を含有しうる。
【0166】
皮膚症状の場合、本発明の化合物の局所製剤を患部に1日に2〜4回塗布することが好ましいかもしれない。
局所投与に適した処方組成物としては、皮膚を通した浸透に適した液体又は半液体製剤(例、擦剤[リニメント]、ローション、軟膏、クリーム、又はペースト)並びに眼、耳もしくは鼻への投与に適した滴剤が挙げられる。本発明の化合物の有効成分の適当な局所用量は0.1〜150mgで、日に1〜4回、好ましくは1又は2回投与される。局所投与のためには、有効成分は製剤 (処方組成物) の0.001〜10%w/w、例えば、1〜2重量%の含有量でよい。含有量は処方組成物の10%w/wといった高さとすることもできるが、好ましくは5%w/w以下であり、より好ましくは0.1〜1%である。
【0167】
軟膏として処方する場合、有効成分をパラフィン系又は水混和性のいずれかの軟膏基剤と共に使用してもよい。あるいは、有効成分を水中油型クリーム基剤と共にクリームとして処方してもよい。所望により、クリーム基剤の水性相は、例えば、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、ポリエチレングリコール及びそれらの混合物のような多価アルコールを30%w/w以上含有していてもよい。局所用処方組成物は、望ましくは皮膚又は他の患部を通る有効成分の吸収又は浸透を高める化合物を含有していてもよい。このような皮膚浸透向上剤としてはジメチルスルホキシド及び関連類似物が挙げられる。
【0168】
本発明の化合物は経皮器具により投与することもできる。好ましくは、貯槽/多孔質膜型又は固体マトリックス型のいずれかのパッチを用いて経皮投与が達成されよう。いずれの場合も、活性剤は、貯槽又はマイクロカプセルから膜を介して、レシピエントの皮膚又は粘膜に接触している活性剤透過性の粘着剤へと連続的に送り込まれる。活性剤が皮膚から吸収される場合には、制御かつ予定された流量の活性剤がレシピエントに投与される。マイクロカプセルの場合は、カプセル化(封入)剤は膜としても機能しうる。
【0169】
本発明のエマルジョン剤の油相は公知の成分から公知の方法で構成されうる。この相は単に乳化剤から構成してもよいが、少なくとも1種の乳化剤と脂肪もしくは油又は脂肪と油の両方との混合物から構成してもよい。好ましくは、親水性乳化剤を、安定剤として作用する親油性乳化剤と一緒に含有させる。油と脂肪の両方を含有させることも好ましい。また、安定剤が共存又は共存していない乳化剤がいわゆる乳化ワックスを構成し、このワックスが油及び脂肪と一緒に、クリーム処方組成物の油性分散相を形成するいわゆる乳化軟膏基剤を構成することも好ましい。本発明の処方組成物に使用するのに適した乳化剤及び乳化安定剤としては、Tween 60、Span80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ラウリル硫酸ナトリウム、二ステアリン酸グリセリルの単独使用、又はワックスとの併用、或いは他の本技術分野で周知の材料が挙げられる。
【0170】
薬用エマルジョン処方組成物に使用される可能性のある大部分の油中における本活性化合物の溶解度は非常に低いので、処方組成物のための適当な油又は脂肪の選択は所望の美容上の特性を達成することに基づく。すなわち、クリームは、油ぎっておらず、しみができず、洗い落とすことが可能なものとすべきであり、かつチューブ又は他の容器からの漏れを避けるのに適した稠度(コンシステンシー)を有したものであることが好ましい。ジイソアジペート、ステアリン酸イソセチル、ヤシ油脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル又は分岐鎖エステルの混合物のような直鎖又は分岐鎖の一塩基性又は二塩基性アルキルエステルを使用してもよい。これらは必要な特性に応じて単独で、又は組み合わせて使用することができる。
【0171】
或いは、白色軟質パラフィン(ワセリン)及び/又は流動パラフィンもしくは他の鉱油のような高融点脂質を使用することができる。
眼への局所投与に適した処方組成物は、有効成分を適当な担体、特に有効成分のための水性溶媒に溶解又は懸濁させた点眼剤も包含する。本有効成分は、かかる処方組成物中に0.5〜20%w/w、有利には0.5〜10%、特に約1.5%の濃度で存在することが好ましい。
【0172】
非経口投与用の処方組成物は、水性又は非水の等張滅菌注射用溶液剤又は懸濁液剤の形態でよい。これらの溶液剤又は懸濁液剤は、滅菌粉末又は顆粒から、経口投与用の処方での使用に対して上述した1種又は2種以上の担体又は希釈剤を用いて、或いは他の適当な分散若しくは湿潤剤並びに懸濁剤を用いて調製することができる。本化合物は、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、コーン油、綿実油、落花生油、ゴマ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、トラガカントゴム及び/又は各種緩衝液に溶解させてもよい。
【0173】
他の佐剤及び投与方式も製薬技術分野で広くよく知られている。本有効成分は、食塩水、デキストロース、又は水をはじめとする適当な担体を用いた組成物、或いはシクロデキストリン(例、Captisol)、共溶媒可溶化(例、プロピレングリコール)、又はミセル可溶化(例、Tween 80)を用いた組成物として注射により投与してもよい。
【0174】
滅菌注射製剤は、無毒な非経口投与に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射溶溶液剤又は懸濁液剤、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液剤であってもよい。使用しうる許容できるビヒクル及び溶媒としては、水、リンゲル液、及び等張食塩水がある。また、滅菌固定油も溶媒又は懸濁用媒質として便利に使用される。この目的には、合成モノ又はジグリセリドをはじめとする任意の銘柄の固定油を使用しうる。また、オレイン酸のような脂肪酸も注射液の調製に有用である。
【0175】
肺投与のために、本薬剤組成物はエアゾール(剤)の形態で、又は乾燥粉末エアゾールを入れた吸入器により投与してもよい。
薬剤の直腸投与のための座剤は、常温では固体であるが、直腸温度では液体となり、したがって直腸内で融解して薬剤を放出する、カカオバター及びポリエチレングリコール類のような適当な非刺激性賦形剤と薬剤を混合することにより調製することができる。
【0176】
本薬剤組成物は、滅菌のような慣用の製剤操作に付してもよく、及び/又は保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤などの慣用の佐剤を含有していてもよい。錠剤及び丸剤は腸溶被覆を用いて製剤化することもできる。かかる組成物は、湿潤剤、甘味剤、香味剤、及び香料のような佐剤を含有していてもよい。
【0177】
本発明のある種の薬剤組成物は、ここに記載した一般式の化合物又はその薬剤に許容される塩;キナーゼ阻害剤(小分子、ポリペプチド、抗体等)、免疫抑制剤、抗がん剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、抗真菌剤、抗生物質、及び抗血管過剰増殖化合物から選択された追加の薬剤;並びに薬剤に許容される任意の担体、佐剤又はビヒクルを含有する。
【0178】
本発明の別の薬剤組成物は、ここに記載した一般式の化合物又はその薬剤に許容される塩;並びに薬剤に許容される担体、佐剤若もしくはビヒクルを含有する。かかる組成物は、場合により、例えば、キナーゼ阻害剤(小分子、ポリペプチド、抗体等)、免疫抑制剤、抗がん剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、抗真菌剤、抗生物質、又は抗血管過剰増殖化合物を包含する1種又は2種以上の追加の治療剤を含有しうる。
【0179】
「薬剤に許容される担体又は佐剤」とは、本発明の化合物と一緒に患者に投与することができ、かつ本発明の化合物の治療有効量を供給するのに十分な量で投与された時に無毒で、その薬理学的活性を損なうことがない担体又は佐剤を意味する。
【0180】
本発明の薬剤組成物に使用しうる薬剤に許容される担体、佐剤及びビヒクルとしては、これらに限られないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、d−アトコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネートのような自己乳化性薬剤供給系(SEDDS)、Tween類その他の高分子薬剤供給マトリックスのような製剤に使用される界面活性剤、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク質、リン酸塩のような緩衝性物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物油脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩のような塩もしくは電解質、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、並びに羊毛脂などが挙げられる。α−、β−、及びγ−シクロデキストリンのようなシクロデキストリン類、並びに2−及び3−ヒドロキシプロピルシクロデキストリンをはじめとするヒドロキシアルキルシクロデキストリンのようなその化学変性誘導体、或いは他の可溶化誘導体も、ここに記載した一般式の化合物の供給を高めるのに使用するのが有利であることがある。
【0181】
本発明の薬剤組成物は、それらに限られないが、カプセル剤、錠剤、エマルジョン及び水性懸濁液、分散液並びに溶液を含む任意の経口に許容される剤形で経口投与することができる。経口用の錠剤の場合、一般に使用される担体としては、乳糖及びコーンスターチがある。ステアリン酸マグネシウムのような滑剤も典型的には添加される。カプセル形態での経口投与に対しては、有用な希釈剤としては、乳糖及び乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液及び/又はエマルジョンを経口投与する場合には、有効成分を乳化剤及び/又は懸濁液剤と組み合わせて油相中に懸濁液又は溶解させてもよい。
【0182】
所望により、ある種の甘味剤及び/又は香味剤及び/又は着色剤を添加してもよい。
本発明の薬剤組成物はリポソーム又はマイクロカプセル化技術を利用した処方も包含しうる。その各種の例が本技術分野で知られている。
【0183】
本発明の薬剤組成物は、鼻用エアゾール又は吸入により投与してもよい。かかる組成物は薬剤組成物の分野で周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールもしくは他の適当な保存剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は他の可溶化もしくは分散剤(その例も本技術分野では周知である)を用いて、食塩水中の溶液剤として調製してもよい。
【0184】
併用 (組み合わせ)
本発明の化合物は唯一の有効薬剤成分として投与することもできるが、本発明の1種又は2種以上の他の化合物或いは1種又は2種以上の他の薬剤と組み合わせた併用剤として使用することもできる。組み合わせ(併用剤)として投与する場合、それら複数の治療剤は、同時に又は異なる時点で逐次的に投与される別個の組成物として処方することができ、或いはそれら治療剤を単一の組成物として投与することもできる。
【0185】
本発明の化合物を別の薬剤と一緒に使用することを意味する「併用治療」又は「組み合わせ治療」とは、実質的に同時となるやり方で各薬剤を共投与する場合と、逐次的なやり方で各薬剤を投与する場合の両方を意味し、いずれの場合も薬剤の組み合わせの有益な効果を与える投与計画による。共投与は、例えば、これらの有効薬剤の比率が固定された単一の錠剤、カプセル剤、注射又は他の剤形での同時供給、並びにそれぞれ各薬剤について別々の剤形の同時供給、をとりわけ包含する。
【0186】
従って、本発明の化合物の投与は、放射線治療又は細胞増殖抑制剤、細胞毒性剤、他の抗がん剤、並びにがんの症状若しくは任意の薬剤の副作用を改善する他の薬剤といったがんの予防又は治療において当業者に公知の追加の治療と併用してもよい。
【0187】
固定された用量として処方する場合、このような併用製品は本発明の化合物を許容された投与量範囲内で使用する。本発明の化合物はまた、併用処方が不適当であれば、他の抗がん剤又は細胞毒性剤と逐次的に投与してもよい。本発明は投与順序については制限されず、本発明の化合物は他の抗がん剤又は細胞毒性剤の前に、同時に、又は後に投与することができる。
【0188】
現在、原発性腫瘍の標準的な治療は、適切であれば外科的切除と、その後の放射線又は、典型的には静脈内(IV)により投与される化学療法のいずれかである。典型的な化学療法計画は、DNAアルキル化剤、DNAインターカレート剤、CDK阻害剤、又は微小管毒剤からなる。化学療法の使用用量は最大耐量(許容用量)よりわずかに少ない量であるので、用量制限毒性の症状として、典型的には悪心、嘔吐、下痢、脱毛、好中球減少などが挙げられる。
【0189】
併用薬剤化学療法によるがん治療に対して選択されうる、市販品、臨床評価中及び臨床前開発中の利用可能な抗腫瘍薬は多数にのぼる。このような抗腫瘍薬には、いくつかの主要カテゴリーがある。即ち、抗生物質型薬剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、ホルモン剤、免疫剤、インターフェロン型薬剤、並びにその他薬剤のカテゴリーである。
【0190】
本発明の化合物と併用(組み合わせ使用)されうる第1の種類の抗腫瘍薬は、代謝拮抗型/チミジレート・シンターゼ阻害剤抗腫瘍薬を包含する。適当な代謝拮抗抗腫瘍薬としては、これらに制限されないが、下記よりなる群から選ぶことができる:5-FUフィブリノーゲン、アカンサス葉酸(acanthifolic acid)、アミノチアジアゾール、ブレキナー・ナトリウム、カルモフール、チバ・ガイギーCGP-30694、シクロペンチル・シトシン、リン酸シタラビンステアレート、シタラビン共役物、リリー(Lilly) DATHF、メレル・ダウDDFC、デザグアニン、ジデオキシシチジン、ジデオキシグアノシン、ジドックス、吉富DMDC、ドキシフルリジン、ウェルカムEHNA、メルク社EX-015、ファザラビン、フロクスウリジン、リン酸フルダラビン、5-フルオロウラシル、N-(21-フラニジル)フルオロウラシル、第一製薬FO-152、イソプロピルピロリジン、リリーLY-188011、リリーLY-264618、メトベンザプリム、メトトレキセート、ウェルカムMZPES、ノルスペルミジン、NCI NSC-127716、NCI NSC-264880、NCI NSC-39661、NCI NSC-612567、ワーナー・ランバートPALA、ペントスタチン、ピリトレキシム、プリカマイシン、Asahi Chemical PL-AC、武田TAC788、チオグアニン、チアゾフリン、エルバモントTIF、トリメトレキセート、チロシンキナーゼ阻害剤、大鵬UFT、及びウリシチン。
【0191】
本発明の化合物と併用しうる第2の種類の抗腫瘍薬はアルキル化剤型抗腫瘍薬からなる。適当なアルキル化剤型抗腫瘍薬は、これらに制限されないが、下記よりなる群から選ぶことができる:シオノギ254-S、アルドホスファミド・アナログ、アルトレタミン、アナキシロン、ベーリンガー・マンハイムBBR-2207、ベストラブシル、ブドチタン、湧永CA-102、カルボプラチン、カルムスチン、キノイン-139、キノイン-153、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、アメリカン・シアナミドCL-286558、サノフィCY-233、サイプラテート、デグサD384、住友DACHP(Myr)2、ジフェニルスピロムスチン、二白金サイトスタチン、エルバ・ジスタマイシン誘導体、中外DWA-2114R、ITI E09、エルムスチン、エルバモントFCE-24517、リン酸エストラムスチンナトリウム、フォテムスチン、ウニメドG M、キノインGYKI-17230、ヘプスルファム、イフォスファミド、イプロプラチン、ロムスチン、マフォスファミド、ミトラクトルフ、日本化薬NK-121、NCI NSC-264395、NCI NSC-342215、オキサリプラチン、アップジョンPCNU、プレドニムスチン、プロターPTT-119、ラニムスチン、セムスチン、スミスクラインSK&F-101772、ヤクルト本社SN-22、スピロムスチン、田辺製薬TA-077、タウロムスチン、テモゾロミド、テロキシロン、テトラプラチン及びトリメラモール。
【0192】
本発明の化合物と併用しうる第3の種類の抗腫瘍薬は抗生物質型抗腫瘍薬からなる。適当な抗生物質型抗腫瘍薬は、これらに制限されないが、下記よりなる群から選ぶことができる:大鵬4181-A、アクラルビシン、アクチノマイシンD、アクチノプラノン、エルバモントADR-456、アエロプリシニン誘導体、味の素AN II、味の素AN3、日本曹達アニソマイシン類、アントラサイクリン、アジノマイシンA、ビスカベリン、ブリストル・マイヤーズBL-6859、ブリストル・マイヤーズBMY-25067、ブリストル・マイヤーズBNY-25551、ブリストル・マイヤーズBNY-26605、ブリストル・マイヤーズBNY-27557、ブリストル・マイヤーズBMY-28438、硫酸ブレオマイシン、ブリオスタチン-1、大鵬C-1027、カリケマイシン、クロモキシマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、協和発酵DC-102、協和発酵DC-79、協和発酵DC-88A、協和発酵DC89-Al、協和発酵DC92-B、ジトリサルビシンB、シオノギDOB-41、ドキソルビシン、ドキソルビシン-フィブリノーゲン、エルサミシン-A、エピルビシン、エルブスタチン、エソルビシン、エスペラミシン-Al、エスペラミシン-Alb、エルバモントFCE21954、藤沢FK-973、フォストリエシン、藤沢FR-900482、グリドバクチン、グレガチン-A、グリンカマイシン、ヘルビマイシン、イダルビシン、イルジン類、カズサマイシン、ケサリロージン類、協和発酵KM-5539、キリンビールKRN-8602、協和発酵KT-5432、協和発酵KT-5549、協和発酵KT-6149、アメリカン・シアナミドLL-D49194、明治製菓ME2303、メノガリル、ミトマイシン、ミトキサントロン、スミスクラインM-TAG、ネオエナクチン、日本化薬NK-313、日本化薬NKT-01、SRIインターナショナルNSC-357704、オキサリシン、オキサウノマイシン、ペプロマイシン、ピラチン、ピラルビシン、ポロスラマイシン、ピリンダマイシンA、トビシRA-1、ラパマイシン、リゾキシン、ロドルビシン、シバノミシン、シウェンマイシン、住友SM5887、雪印SN-706、雪印SN-07、ソランギシン-A、スパルソマイシン、エスエス製薬SS-21021、エスエス製薬SS-7313B、エスエス製薬SS-9816B、ステフィマイシンB、大鵬4181-2、タリソマイシン、武田TAN-868A、テルペンテシン、トラジン、トリクロザリンA、アップジョンU-73975、協和発酵UCN-10028A、藤沢WF-3405、吉富Y-25024及びゾルビシン。
【0193】
本発明の化合物と併用しうる第4の種類の抗腫瘍薬は、チューブリン相互作用剤、トポイソメラーゼII阻害剤、トポイソメラーゼI阻害剤、及びホルモン剤を含む雑多な群の抗腫瘍薬からなる。これらは、それに限られないが、下記よりなる群から選ぶことができる:α-カロテン、α-ジフルオロメチルアルギニン、アシトレチン、ビオテックAD-5、杏林AHC-52、アルストニン、アモナフィド、アンフェチニル、アムサクリン、アンギオスタット、アンキノマイシン、アンチネオプラストンA10、アンチネオプラストンA2、アンチネオプラストンA3、アンチネオプラストンA5、アンチネオプラストンAS2-1F、ヘンケルAPD、グリシン酸アフィジコリン、アスパラギナーゼ、アバロール、バッカリン、バトラシリン、ベンフルロン、ベンゾトリプト、イプセン・ボーフールBIM-23015、ビスアントレン、ブリストル・マイヤーズBNY-40481、ベスター・ボロン-10、ブロモフォスファミド、ウェルカムBW-502、ウェルカムBW-773、カラセミド、カルメチゾール塩酸塩、味の素CDAF、クロルスルファキノキサロン、ケメスCHX-2053、ケメックスCHX-100、ワーナー・ランバートCI-921、ワーナー・ランバートCI-937、ワーナー・ランバートCI-941、ワーナー・ランバートCI-958、クランフェヌール、クラビリデノン、ICN化合物1259、ICN化合物4711、コントラカン、ヤクルト本社CPT-11、クリスナトール、クラデルム、シトチャラシンB、シタラビン、シトシチン、メルズD-609、マレイン酸DABIS、ダカルバジン、ダテリプチニウム、ジデムニン-B、ジヘマトポルフィリンエーテル、ジヒドロレンペロン、ジナリン、ジスタマイシン、東洋ファルマDM-341、東洋ファルマDM-75、第一製薬DN-9693、ドセタキセル、エリプラビン、酢酸エリプチニウム、津村EPMTC、エポチロン類、エルゴタミン、エトポシド、エトレチネート、フェンレチニド、藤沢FR-57704t、硝酸ガリウム、ゲンカダフニン、中外GLA-43、グラクソGR-63178、グリフォランNMF5N、ヘキサデシルホスホコリン、グリーン・クロスHO-221、ホモハリントニン、ヒドロキシ尿素、BTG ICRF-187、イルモフォシン、イソグルタミン、イソトレチノイン、大塚JI-36、ラモットK-477、大塚K-76COONa、呉羽化学K-AM、MECT社KI-8110、アメリカン・シアナミドL-623、ロイコレグリン、ロニダミン、ルンドベックLU 1121、リリーLY-186641、NCI (US) MAP、マリシン、メレル・ダウMDL-27048、メドコMEDR-340、メルバロン、メロシアニン誘導体、メチルアニリノアクリジン、モレキュラー・ジェネティックスMGI136、ミナクチビン、ミトナフィド、ミトキドン、モピダモール、モトレチニド、全薬工業MST-16、N-(レチノイル)アミノ酸、日清製粉N-021、N-アシル化デヒドロアラニン類、ナファザトロム、大正NCU-190、ノコダゾール誘導体、ノルモサング、NCI NSC-145813、NCI NSC-361456、NCI NSC-604782、NCI NSC-95580、オクレオチド、小野ONO-112、オキザノシン、アクゾOrg-10172、パクリタキセル、パンクラチスタチン、パゼリプチン、ワーナー・ランバートPD-111707、ワーナー・ランバートPD-115934、ワーナー・ランバートPD-131141、ピエール・ファーブルPE-1001、ICRTペプチドD、ピロキサントロン、ポリヘマトポルフィリン、ポリプレイン酸、エファモル・ポルフィリン、プロビマン、プロカルバジン、プログルミド、インビトロン・プロテアーゼ・ネキシンI、トビシRA-700、ラゾキサン、札幌ビールRBS、レストリクチン-P、レテリプチン、レチノイン酸、ローヌ・プーランRP-49532、ローヌ・プーランRP-56976、スミスクラインSK&F-104864、住友SM-108、クラレSMANCS、シーファームSP10094、スパトール、スピロシクロプロパン誘導体、スピロゲルマニウム、ユニメド、エスエス製薬SS-554、ストリポルジノン、スチポルジオン、サントリーSUN 0237、サントリーSUN 2071、スーパーオキシド・ディスムターゼ、富山T-506、富山T-680、タキソール、帝人TEI-0303、テニポシド、タリブラスチン、イーストマン・コダックTJB-29、トコトリエノール、トポテカン、トポスチン、帝人TT82、協和発酵UCN-01、協和発酵UCN-1028、ウクライン、イーストマン・コダックUSB-006、硫酸ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビネストラミド、ビノレルビン、ビントリプトール、ビンゾリジン、ウイザノリド並びに山ノ内YM。
【0194】
或いは、本化合物は他の抗腫瘍薬との共治療に使用してもよい。そのような抗腫瘍薬の例としては、下記を挙げることができる:アセマンナン、アクラルビシン、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アルトレタミン、アミフォスチン、アミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アンサー(ANCER)、アンセスチン、アルグラビン、三酸化ヒ素、BAM 002 (ノベロス)、ベキサロテン、ビカルタミド、ブロクスウリジン、カペシタビン、セルモロイキン、セトロレリックス、クラドリビン、クロトリマゾール、シタラビン・オクホスフェート、DA 3030 (Dong-A)、ダクリズマブ、デニロイキン・ディフィトックス、デスロレリン、デクスラゾキサン、ジラゼプ、ドセタキセル、ドコサノール、ドキセルカルシフェロール、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、ブロモクリプチン、カルムスチン、シタラビン、フルオロウラシル、HIT ジクロフェナック、インターフェロンα、ダウノルビシン、ドキソルビシン、トレチノイン、エデルフォシン、エドレコロマブ、エフロルニチン、エミテフール、エピルビシン、エポエチンβ、リン酸エトポシド、エキセメスタン、エキシスリンド、ファドロゾール、フィルグラスチム、フィナステリド、リン酸フルダラビン、フォルメスタン、フォテムスチン、硝酸ガリウム、ゲムシタビン、ゲムツズマブ・オゾガマイシン、ギメラシル/オテラシル/テガフール配合剤、グリコピン、ゴセレリン、ヘプタプラチン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎児性αフェトプロテイン、イバンドロン酸、イダルビシン、イミキモド、インターフェロンα、天然インターフェロンα、インターフェロンα-2、インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα-NI、インターフェロンα-n3、インターフェロンα-con1、天然インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1b、インターフェロンγ、天然インターフェロンγ-1a、インターフェロンγ-1b、インターロイキン-1β、イオベングアン、イリノテカン、イルソグラジン、ランレオチド、LC 9018 (ヤクルト)、レフルノミド、レノグラスチム、硫酸レンチナン、レトロゾール、白血球αインターフェロン、ロイプロレリン、レバミゾール+フルオロウラシル、リアロゾール、ロバプラチン、ロニダミン、ロバスタチン、マソプロコール、メラルソプロール、メトクロプラミド、ミフェプリストン、ミルテフォシン、ミリモスチム、不適合二本鎖RNA、ミトグアゾン、ミトラクトール、ミトキサントロン、モルグラモスチム、ナファレリン、ナロキソン+ペンタゾシン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ニルタミド、ノスカピン、新規赤血球産生刺激性タンパク質、NSC 631570、オクトレオチド、オプレルベキン、オサテロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロン酸、ペガスパルガーゼ、ペグインターフェロンα-2b、ペントサン多硫酸ナトリウム、ペントスタチン、ピシバニル、ピラルビシン、ウサギ抗胸腺細胞ポリクローナル抗体、ポリエチレングリコールインターフェロンα-2a、ポルフィマー・ナトリウム、ラロキシフェン、ラルチトレキセド、ラスブリカーゼ、レニウム(Re 186)エチドロナート、RIIレチナミド、リツキシマブ、ロムルチド、サマリウム(153 Sm)レキシドロナム、サルグラモスチム、シゾフィラン、ソブゾキサン、ソネルミン、塩化ストロンチウム-89、スラミン、タソネルミン、タゾロテン、テガフール、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テトラクロロデカオキシド、サリドマイド、チマルファシン、チロトロピンα、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ−ヨウ素131、トラスツズマブ、トレオスルファン、トレチノイン、トリロスタン、トリメトレキセート、トリプトレリン、天然腫瘍壊死因子α、ウベニメクス、膀胱がんワクチン、丸山ワクチン、メラノーマ溶解産物ワクチン、バルルビシン、ベルテポルフィン、ビノレルビン、ビルリジン、ジノスタチン・スティマラマー(stimalamer)、又はゾレドロン酸;アバラリックス、AE 941 (エテルナ)、アンバムスチン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、bcl-2 (ゲンタ)、APC 8015 (デンドレオン)、セツキシマブ、デシタビン、デキサミノグルテチミド、ジアジコン(diaziquone)、EL 532 (エラン)、EM 800 (アンドルシェルシュ)、エニルウラシル、エタニダゾール、フェンレチニデル、フィルグラスチム SDO1 (アムジェン)、フルベストラント、ガロシタビン、ガストリン17免疫原、HLA-17遺伝子治療 (ビカル)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、二塩酸ヒスタミン、イブリツモマブ・チウキセタン、イロマスタット、IM 862 (サイトラン)、インターロイキン・イプロキシフェン、LDI 200 (ミルクハウス)、レリジスチム、リンツズマブ、CA 125 MAb (バイオミラ)、がんMAb (日本薬品開発)、HER-2及びFc MAb (メダレックス)、イディオタイプ105AD7 MAb (CRCテクノロジー)、イディオタイプCEA MAb (トリレックス)、LYMヨウ素131 MAb (テクニクローン)、多形上皮ムチン−イットリム90 MAb (アンチゾーマ)、マリマスタット、メノガリル、ミツモマブ、モテキサフィン、ガドリニウム、MX 6 (ガルデルマ)、ネララビン、ノラトレキセド、P 30タンパク質、ペグビゾマント、ペメトレキセド、ポルフィロマイシン、プリノマスタット、RL 0903 (シャイア)、ルビテカン、サトラプラチン、フェニル酢酸ナトリウム、スパルフォシック・アシッド、SRL 172 (SRファーマ)、SU 5416 (スジェン)、SU 6668 (スジェン)、TA 077 (田辺)、テトラチオモリブデート、サリブラスチン、トロンボポイエチン、錫エチル・エチオプルプリン、チラパザミン、がんワクチン (バイオミラ)、メラノーマ・ワクチン (ニューヨーク大学)、メラノーマ・ワクチン (スローン・ケッタリング研究所)、メラノーマ腫瘍溶解物(oncolysate)ワクチン (ニューヨーク医大)、ウイルス性メラノーマ細胞溶解物ワクチン (王立ニューキャッスル病院)、又はバルスポダール。
【0195】
治療キット
別の態様では、本発明は、本発明に係る方法を便利かつ効果的に実施するためのキットに関する。一般に、薬剤パック又はキットは、本発明の薬剤組成物の1又は2以上の成分を満たした1又は2以上の容器を含んでいる。このようなキットは、特に錠剤又はカプセルのような固体経口剤形の供給に適している。この種のキットは好ましくは複数の単位剤形を含んでいて、それらの剤形の意図する使用順序に向けられたカードを含んでいてもよい。所望により、その剤形を投与することができる治療スケジュールの日にちを指定する、例えば、数字、字、もしくは他のマークの形態、又はカレンダーページを記憶援助具として提供することができる。場合によりかかる容器に組み合わせることができるのは、医薬品の製造、使用又は販売を規制する監督官庁により規定された形態の注意書きであり、この注意書きはヒト用医薬品の製造、使用又は販売官庁による認可事項を反映する。
【0196】
以下の代表的な実施例は、本発明の各種態様及びその均等態様の実施に適用することができる重要な追加情報、例示及び指針を含んでいる。これらの実施例は本発明の例示を助けることを意図したものであり、その範囲を制限することを意図しておらず、そのように解すべきものでもない。実際、ここに示しかつ説明した態様に加えて、本発明の各種変更及びその多くのさらなる実施態様が、以下の実施例並びに本書に引用した科学文献及び特許文献への言及を含む本書の検討により当業者には明らかとなろう。現状技術の例示を助けるために、明細書中で引用した文献の内容をここに参考として援用する。また、本発明の目的にとって、化学元素は、Handbook of Chemistry and Physics, 第75版、内表紙に掲げられたCAS版の元素周期表に従って指定される。さらに、有機化学の原則並びに具体的な官能基若しくは部分及び反応性は、「Organic Chemistry」Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito: 1999及び「Organic Chemistry」Morrison & Boyd (第3版)に説明されており、この両方の全内容をここに参考のために援用する。
【実施例】
【0197】
下記実施例に記載した化合物の一部は、HCl塩(塩酸塩)に転化された。HCl塩を生成させるための一般的手法は次の通りである:
得られた最終生成物に、HCl(ガス)を飽和させたMeOHを、溶解にちょうど十分な量だけ添加し、0℃に0.5〜1時間冷却した後、濾過し、得られた固体を、氷冷MeOH、次にEt2Oで洗浄し、得られた固体を減圧デシケータで乾燥すると、大分部の場合トリス塩酸塩が生成する。
【0198】
(実施例1)
3−(1H−ピラゾール−1−カルボキサミド−N−メチル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド
【0199】
【化40】

【0200】
1−(ブロモメチル)−4−ニトロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゼン:
CCl4(40 mL) 中の2−メチル−5−ニトロベンゾトリフルオリド (3.90 g, 19 mmol)、N−ブロモスクシンイミド (NBS, 3.56 g, 20 mmol)、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル) (AIBN, 94 mg, 0.6 mmol)の懸濁液をN2下で16時間還流させた。HPLCは約50%の転化率を示した。追加のNBS (10 mmol) 及びAIBN (0.6 mmol) を加え、得られた混合物をさらに14時間還流させた。HPLCは約80%の転化率を示した。この反応混合物を冷却し、固体を濾別し、EtOAcで洗浄した。合わせた濾液をNaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、回転蒸発器 (rotovap) で濃縮し、さらに減圧乾燥した。1H NMRは、目的生成物:未反応2−メチル−5−ニトロベンゾトリフルオリドの比率が75:25であることを示した。この材料は精製せずに次工程にそのまま使用した。
【0201】
1−メチル−4−(4−ニトロ−2−(トリフルオロメチル)ベンジル)ピペラジン:
DCM (10 mL) 中の粗製1−(ブロモメチル)−4−ニトロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゼン (13.33 mmol, 純度75%) の溶液に、Et3N (1.4 mL, 10 mmol) 及び1−メチルピペラジン (1.1 mL, 10 mmol) を加えた。室温で3時間撹拌した後、NaHCO3水溶液を加え、混合物をDCMで抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過し、濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー (10%MeOH/DCMで溶離) により精製して、淡黄色油状物の生成物2.21 gを得た。
【0202】
4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)アニリン:
アセトン及び水(1:1, 20 mL)中の1−メチル−4−(4−ニトロ−2−(トリフルオロメチル)ベンジル)ピペラジン (1.23 g, 4 mmol) 及びヒドロ亜硫酸ナトリウム (7.0 g, 純度85%、Aldrich製, 40 mmol) の懸濁液を3時間還流させた。冷却後、揮発性成分 (主にアセトン) を回転蒸発器で除去し、得られた混合物を濾過にかけた。濾別された固体をEtOAcでよく洗浄した。合わせた濾液をn-BuOH (4倍量) で抽出し、合わせた有機層を飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、乾燥し (Na2SO4)、濾過し、濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー (5%MeOH/DCMで溶離、MeOHはアンモニアガスで前飽和した) で精製すると、淡黄色固体の生成物0.71 gが得られた。
【0203】
3−ヨード−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド:
3−ヨード−4−メチル安息香酸とSOCl2との反応 (既に説明の通り) から調製された3−ヨード−4−メチルベンゾイルクロリド (0.48 g, 1.7 mmol) を、THF (10 mL) 中の4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)アニリン (0.47 g, 1.7 mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン (0.26 g, 2.0 mmol)、及び触媒量のDMAPの溶液に添加した。室温で2時間撹拌した後、反応を水で停止させた。EtOAcを加えて分液した。合わせた有機層を濃縮乾固し、シリカゲルクロマトグラフィー (5%MeOH/DCMで溶離、MeOHはアンモニアガスで前飽和) で精製すると、オフホワイト色の固体生成物0.51 gが得られた。
【0204】
4−メチル−N−[4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−3−トリフルオロメチル−フェニル]−3−トリメチルシラニルエチニル−ベンズアミド:
3−ヨード−4−メチル−N−[4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−3−トリフルオロメチルフェニル]ベンズアミド (2.59 g, 5 mmol)、Pd[(PPh3)]4(289 mg, 0.25 mmol)、CuI (71 mg, 0.375 mmol) を、シュレンク・フラスコに入れた。フラスコに減圧−N2再充填のサイクルを3回受けさせた。この混合物に、無水N,N−ジイソプロピルエチルアミン (1.1 mL, 6 mmol)、DMF (5 mL)、及びトリメチルシリルアセチレン (0.92 mL、 6.5 mmol) を加えた。この溶液を室温で24時間撹拌した。反応混合物に水とEtOAcを加えて、抽出を促進した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過した後、回転蒸発器で濃縮し、残渣をシリカゲルカラム (溶離剤: 5%MeOH/CH2Cl2中、MeOHはアンモニアガスで前飽和) により精製すると、淡黄色固体状の目的生成物が収率82% (2.0 g) で得られた。
【0205】
3−エチニル−4−メチル−N−[4−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−3−トリフルオロメチル−フェニル]−ベンズアミド:
THF (15 mL) 中の4−メチル−N−[4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−3−トリフルオロメチル−フェニル]−3−トリメチルシラニルエチニル−ベンズアミド (2.0 g, 4.1 mmol) の溶液に、THF中のTBAF (1.0 M) 5 mLを添加した。室温で1時間撹拌した後、混合物をH2OとEtOAcとの間で分配した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過した後、回転蒸発器で濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラム (溶離剤: 10%MeOH/CH2Cl2中、MeOHはアンモニアガスで前飽和) により精製すると、淡黄色固体状の目的生成物が収率78% (1.33 g) で得られた。
【0206】
1H−ピラゾール−1−N−メチル・カルボキサミド
乾燥CH2Cl2 (20 mL) 中の4−ヨードピラゾール (3 g, 15.5 mmol) に、CH2Cl2(30 mL) 中のクロロギ酸p−ニトロフェニル (3.43 g, 17 mmol) を加え、次いでTEA (2.5 mL, 18.6 mmol) を加えた。この混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を次いで過剰のCH2Cl2(60 mL) で希釈し、10% NaHCO3水溶液で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を蒸発させ、得られた固体をEt2Oから再結晶させると白色固体 (5 g) が得られた。THF (12 mL) 中の得られた固体 (1 g, 2.79 mmol) をMeNH2の溶液 (2 mL, THF中2 M) で10分間処理した。有機層を蒸発させ、得られた固体をDCMに溶解し、5% NaOHで洗浄した。有機層を乾燥し、濾過し、エーテルを用いて摩砕すると、無色の光沢のあるフレーク状生成物 (0.55 g) が得られた。
【0207】
3−(1H−ピラゾール−1−カルボキサミド−N−メチル)−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド:
3−エチニル−4−メチル−N−[4−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−3−トリフルオロメチル−フェニル]−ベンズアミド (91 mg, 0.22 mmol)、1H−ピラゾール−1−N−メチル・カルボキサミド (0.2 mmol)、Pd[(PPh3)]4 (11.6 mg, 0.01 mmol)、及びCuI (2.9 mg, 0.015 mmol)を、ゴム栓を嵌めたバイアルに入れた。このバイアルに減圧−N2再充填のサイクルを3回受けさせた。この混合物に、無水N,N−ジイソプロピルエチルアミン (0.1 mL、0.6 mmol) 及びDMF (1.0 mL) を加えた。得られた溶液を80℃で24時間撹拌した。反応混合物を冷却した後、水及びEtOAcを加えて抽出を促進した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過した後、回転蒸発器で濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラム (溶離剤: 10%MeOH/CH2Cl2中、MeOHはアンモニアガスで前飽和) により精製すると、淡黄色固体状の目的生成物が56%の収率 (63.0 mg) で得られた。MS (M+H)+ 538。
【0208】
(実施例2)
1−メチル−5−(2−メチル−5−[4−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−3−トリフルオロメチル−フェニルカルバモイル]−フェニルエチニル)−1H−イミダゾール−2−カルボン酸アミド
【0209】
【化41】

【0210】
5−エチニル−1−メチル−1H−イミダゾール−2−カルボン酸アミド:
THF (30 mL) 中の1−メチル−5−トリメチルシラニルエチニル−1H−イミダゾール (1.78 g, 10 mmol) の溶液に、−78℃でn-BuLiのヘキサン溶液 (2.5 M, 4.4) を加え、得られた懸濁液を同じ温度で1時間撹拌した。この懸濁液に、トリメチルシリルイソシアネート (Aldrich製、純度85%、11.76 mmol、1.6 mL) を−78℃で徐々に添加した。−78℃でさらに30分間撹拌した後、冷却浴を取り除いて、反応混合物を室温までゆっくり昇温させた。水 (2 mL) とMeOH (1 mL) とを加えて反応を停止させ、この混合物を一晩撹拌した。抽出を促進するために追加の水とEtOAcを加えた。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過し、回転蒸発器で濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラム (溶離剤:ヘキサン中40〜60%EtOAc/ヘキサン中) で精製すると、白色固体状の目的生成物が収率26% (387 mg) で得られた。
【0211】
1−メチル−5−(2−メチル−5−[4−(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−3−トリフルオロメチル−フェニルカルバモイル]−フェニルエチニル)−1H−イミダゾール−2−カルボン酸アミド:
5−エチニル−1−メチル−1H−イミダゾール−2−カルボン酸アミド (33 mg, 0.22 mmol)、実施例1で調製した3−ヨード−4−メチル−N−(4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド (103.4 mg, 0.2 mmol)、Pd[(PPh3)]4 (11.6 mg, 5モル%)、及びCuI (2.9 mg, 7.5 モル%) を、ゴム栓を嵌めたバイアルに入れた。このバイアルに減圧−N2再充填のサイクルを3回受けさせた。この混合物に、DMF (1.0 mL) 及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン (53 μL、0.3 mmol) を加えた。この混合物を室温で16時間撹拌し、反応をH2Oで停止させた。抽出のためにEtOAc及び追加の水を加えた。合わせた有機層を乾燥し(Na2SO4)、濾過し、濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (溶離剤: 5%MeOH/塩化メチレン中、MeOHはアンモニアガスで前飽和) により精製すると、オフホワイト固体状の標題化合物が得られた (65%、75 mg)。MS (M+H)+ 539。
【0212】
(実施例3)
1−メチル−5−(2−メチル−5−[3−(4−メチル−イミダゾール−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニルカルバモイル]−フェニルエチニル)−1H−イミダゾール−2−カルボン酸アミド
【0213】
【化42】

【0214】
標題化合物は、5−エチニル−1−メチル−1H−イミダゾール−2−カルボン酸アミドと3−ヨード−4−メチル−N−(3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−5−(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミドとを用いて実施例2に記載したようにして調製された:MS (M+H)+ 507。
【0215】
3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−5−(トリフルオロメチル)ベンゼンアミン:
圧力管に収容した乾燥DMSO (20 mL) 中の3−ブロモ−5−(トリフルオロメチル)アニリン (4.8 g, 20 mmol)、4−メチルイミダゾール (1.97 g, 24 mmol)、炭酸カリウム (3.04 g, 22 mmol)、CuI (0.57 g, 3 mmol)、及び8−ヒドロキシキノリン (0.44 g, 3 mmol)の懸濁液を、この懸濁液に撹拌しながらN2を10分間吹き込むことによって脱気した。圧力管をしっかり密封した。この混合物を120℃ (油浴温度) に15時間加熱した。混合物を45〜50℃に冷却し、14%NH4OH水溶液 (20 mL) を加えた。混合物をこの温度に1時間保持した。室温に冷却後、水と酢酸エチルとを加えた。水層を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を短いシリカゲルカラムに通して、緑/青色の銅塩の大部分を除去した。濾液を硫酸ナトリウムで乾燥し、回転蒸発器で濃縮した。得られた粗生成物をEtOAc/ヘキサンから再結晶させると、純粋な淡黄色針状結晶が得られた。母液を濃縮して、残渣をシリカゲルカラム (5%メタノール/塩化メチレン) で精製すると、淡黄色針状結晶がさらに得られた。
【0216】
3−ヨード−4−メチル−N−(3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−5−(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド:
3−ヨード−4−メチル安息香酸 (2.62 g, 10 mmol) をSOCl2 (10 mL) 中で1時間還流させた。揮発性成分を回転蒸発器で除去し、残渣をベンゼン (10 mL) に溶解し、回転蒸発器で濃縮乾固し、さらに減圧乾燥した。得られたアシル塩化物を、THF (20 mL) 中の3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−5−(トリフルオロメチル)ベンゼンアミン (2.46 g,10.2 mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン (1.56 g, 12 mmol)、及び触媒量のDMAPの溶液に添加した。室温で2時間撹拌した後、反応を水で停止させた。EtOAcを加えて分液した。合わせた有機層を濃縮乾固し、精製せずにカップリング工程に使用した。
【0217】
(実施例4)
5−[5−(3−イミダゾール−1−イル−5−トリフルオロメチルフェニルカルバモイル)−2−メチル−フェニルエチニル]−1−メチル−1H−イミダゾール−2−カルボン酸アミド
【0218】
【化43】

【0219】
本化合物は、5−エチニル−1−メチル−1H−イミダゾール−2−カルボン酸アミドとN−(3−(1H−イミダゾール−1−イル)−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−3−ヨード−4−メチルベンズアミドとを用いて実施例2に記載したようにして調製された:MS (M+H)+ 493。
【0220】
3−(1H−イミダゾール−1−イル)−5−(トリフルオロメチル)アニリン:
DMSO(アルゴンで約10分間脱気ずみ)17 mL中の3−アミノ−5−ブロモベンゾトリフルオリド (4.0 g, 0.0167 mol)、8−ヒドロキシキノリン (0.362 g, 0.0025 mol)、CuI (0.476 g, 0.025 mol)、イミダゾール (1.36 g, 0.0199 mol)、及び炭酸カリウム (2.52g, 0.0183 mol) をアルゴン雰囲気下で120℃に15時間加熱した。HPLCは出発物質が存在しないことを示した。冷却した混合物に14%水酸化アンモニウム水溶液を添加し、これを室温で1時間撹拌した。水 (5 mL) 及びEtOAc (200 mL) を添加し、水層をEtOAc (3×30 mL)で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥し、濃縮した。この粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー (EtOAc/ヘキサンで溶離)により精製すると、2.51 gの生成物が得られた。
【0221】
N−(3−(1H−イミダゾール−1−イル)−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−3−ヨード−4−メチルベンズアミド:
3−ヨード−4−メチル安息香酸 (3.07 g, 0.0117 mol) に、塩化チオニル (10 mL)を加えて、2時間還流させた。過剰の塩化チオニルを慎重に除去し、得られた酸塩化物を2時間減圧乾燥した。この残渣を次いでDCM(無水、25 mL)中に溶解し、氷冷した。この冷却溶液にDCM中の3−(1H−イミダゾール−1−イル)−5−(トリフルオロメチル)アニリン(3.46 g, 0.0152 mol) を加え、次いでジイソプロピルエチルアミン (8.2 mL, 0.047 mol) を滴下した。これを室温で21時間撹拌した。析出した白色固体を濾過し、水洗し、乾燥すると、生成物4.65 gが得られた。濾液からも、濃縮及びシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー (EtOAc/ヘキサンで溶離) による精製後に追加の生成物を得ることができた。
【0222】
(実施例5)
3−[(2−アミノ−1,3−チアゾール−5−イル)エチニル]−4−メチル−N−[3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−5−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド
【0223】
【化44】

【0224】
{5−[(トリメチルシリル)エチニル]−1,3−チアゾール−2−イル}カルバミン酸tert−ブチル:
DMF (10 mL) 中の(5−ブロモ−1,3−チアゾール−2−イル)カルバミン酸tert−ブチル (2.79 g, 10 mmol)、エチニルトリメチルシラン (1.27 g, 13 mmol)、Pd(PPh3)4 (578 mg, 0.5 mmol)、CuI (143 mg, 0.75 mmol)、及びジイソプロピルエチルアミン (1.94 g, 15 mmol) の混合物をN2雰囲気下50℃に一晩加熱した。室温に冷却後、反応混合物を濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー (20%EtOAc/ヘキサンで溶離) により精製すると、黄色固体 (2.55 g, 86%) が得られた。
【0225】
{5−[(2−メチル5−{[3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−5−(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイル}フェニル)エチニル]−1,3−チアゾール−2−イル}カルバミン酸tert−ブチル:
DMF 3.0 mL 中の{5−[(トリメチルシリル)エチニル]−1,3−チアゾール−2−イル}カルバミン酸tert−ブチル (166 mg, 0.56 mmol)、3−ヨード−4−メチル−N−(3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−5−(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミド (247 mg, 0.51 mmol)、Pd(PPh3)4 (29 mg, 0.025 mmol)、CuI (7.1 mg, 0.0375 mmol)、TBAF (THF中1.0 M, 0.62 mL, 0.62 mmol) 及びジイソプロピルエチルアミン (0.14 mL, 0.78 mmol) の混合物をN2雰囲気下室温で一晩撹拌した。反応をH2Oで停止させた。抽出のためにEtOAc及び追加の水を加えた。合わせた有機層を乾燥し(Na2SO4)、濾過し、濃縮し、得られた残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー (CH2Cl2中10%MeOHで溶離) により精製すると、目的生成物が褐色固体 (216 mg, 73%)として得られた。
【0226】
3−[(2−アミノ−1,3−チアゾール−5−イル)エチニル]−4−メチル−N−[3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−5−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド:
TFA/CH2Cl2(10 mL, 1:1) 中の{5−[(2−メチル5−{[3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−5−(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイル}フェニル)エチニル]−1,3−チアゾール−2−イル}カルバミン酸tert−ブチル (216 mg) の溶液を室温で1時間撹拌した。揮発性成分を回転蒸発器で除去し、残渣をEtOAcとNaHCO3水溶液との間で分配した。合わせた有機層を乾燥し (Na2SO4)、濾過し、濃縮し、得られた残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー (CH2Cl2中10%MeOHで溶離) により精製すると、褐色固体状の目的生成物 (170 mg, 95%) が得られた。m/z (M+H) 482。
【0227】
(実施例6)
3−{[2−(アセチルアミノ)−1,3−チアゾール−5−イル]エチニル}−4−メチル−N−[3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−5−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド
【0228】
【化45】

【0229】
Ac2O (10 mL) 中の3−[(2−アミノ−1,3−チアゾール−5−イル)エチニル]−4−メチル−N−[3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−5−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド (100 mg) の溶液を130℃に2時間加熱した。室温に冷却後、揮発性成分を減圧除去し、残渣をEtOAcとNaHCO3水溶液との間で分配した。合わせた有機層を乾燥し (Na2SO4)、濾過し、濃縮し、得られた残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー (CH2Cl2中10%MeOHで溶離) により精製すると、褐色固体状の目的生成物 (105 mg, 96%) が得られた。m/z (M+H) 524。
【0230】
(実施例7)
4−[(5−{[3−{2−[(ジメチルアミノ)メチル]−1H−イミダゾール−1−イル}−5−(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイル}−2−メチルフェニル)エチニル]−N−メチル−1H−ピラゾール−1−カルボキサミドの可能な合成
【0231】
【化46】

【0232】
標題化合物は、1H−ピラゾール−1−N−メチル−カルボキサミドとN−[3−{2−[(ジメチルアミノ)メチル]−1H−イミダゾール−1−イル}−5−(トリフルオロメチル)フェニル]−3−エチニル−4−メチルベンズアミドとから実施例1に記載した方法と同様にして合成することができる。
【0233】
1−(1H−イミダゾール−2−イル)−N,N−ジメチルメタンアミン:
還流冷却器と均圧滴下漏斗とを取り付けた二口丸底フラスコに、MeOH (60 mL) 中の2−イミダゾールカルボキシアルデヒド (6 g, 62.5 mmol) を入れた。この懸濁液 (室温)に、ジメチルアミン溶液 (40%水溶液、 60 mL) を速い滴下速度 (20分) で添加した。添加終了後、固体のホウ水素化ナトリウム (7 g, 186.8 mmol) を45分かけて少しずつ慎重に添加した。添加ごとに泡立ちが起こった。内部温度は、外部冷却を使用せずに約50℃を保持するようにした。反応混合物を次いで65℃に3時間加熱し、一晩かけて室温に放冷した。反応の内容物を減圧濃縮し、得られた残渣をEtOAc (2×30 mL) にとり、食塩水で洗浄し、CHCl3 (4×100 mL) で抽出した。EtOAc抽出液を捨てた。CHCl3抽出液はNa2SO4で乾燥し、濾過し、減圧濃縮すると、ワックス様固体として目的生成物3.7 gが得られた。
【0234】
3−{2−[(ジメチルアミノ)メチル]−1H−イミダゾール−1−イル}−5−(トリフルオロメチル)アニリン:
3−アミノ−5−ブロモベンゾトリフルオリド (6 g, 25 mmol) 及び1−(1H−イミダゾール−2−イル)−N,N−ジメチルメタンアミン (3.7 g,29.6 mmol) を、無水DMSO (25 mL) に溶解した。これに、CuI (0.95 g, 7.5 mmol)、8−ヒドロキシキノリン (0.72 g, 7.5 mmol)、及びK2CO3 (6.9g, 50 mmol) を加えた。この混合物を激しく撹拌し、N2下で15分間脱気した。フラスコに次いで冷却器を取り付け、120℃に18時間加熱した。得られた不均質混合物を室温に冷却し、14%NH4OH水溶液 (100 mL) 中に投入し、EtOAc (3×300 mL) で抽出した。合わせた抽出液をNa2SO4で乾燥し、減圧濃縮した。残渣をMeOH/DCM (5:95) で溶離するシリカゲルでクロマトグラフィー処理すると、黄褐色物質として目的生成物3.5 gが得られた。m/z (M+H) 285。
【0235】
N−[3−{2−[(ジメチルアミノ)メチル]−1H−イミダゾール−1−イル}−5−(トリフルオロメチル)フェニル]−3−ヨード−4−メチルベンズアミド:
約5℃のTHF (30 mL) 中の3−{2−[(ジメチルアミノ)メチル]−1H−イミダゾール−1−イル}−5−(トリフルオロメチル)アニリン (1.5 g, 5.5 mmol)、DIPEA (2.1 mL, 11.8 mmol) の溶液に、無水THF (13 mL) にとかした3−ヨード−4−メチルベンゾイルクロリド (2.2 g, 7.88 mmol) を滴下した。得られた溶液を室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧除去し、得られた粗製残渣をCH2Cl2に再溶解し、1N NaOHで洗浄した。有機層を次いで水、次に食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥してから減圧濃縮した。得られた褐色残渣を次いでヘキサン/DCMの混合物で摩砕して、目的生成物1.4 gをオフホワイト色粉末として析出させた。m/z (M+H) 529。
【0236】
N−[3−{2−[(ジメチルアミノ)メチル]−1H−イミダゾール−1−イル}−5−(トリフルオロメチル)フェニル]−4−メチル−3−[(トリメチルシリル)エチニル]ベンズアミドの可能な合成:
N−[3−{2−[(ジメチルアミノ)メチル]−1H−イミダゾール−1−イル}−5−(トリフルオロメチル)フェニル]−3−ヨード−4−メチルベンズアミド (5 mmol)、Pd(PPh3)4 (289 mg, 0.25 mmol)、及びCuI (71 mg, 0.375 mmol)をシュレンク・フラスコに入れる。フラスコに減圧/N2再充填のサイクルを3回受けさせる。この混合物に、無水N,N−ジイソプロピルエチルアミン (1.1 mL, 6 mmol)、DMF (5 mL)、及びトリメチルシリルアセチレン (0.92 mL、 6.5 mmol) を加える。この溶液を室温で24時間撹拌する。反応混合物に水とEtOAcを加えて、抽出を促進する。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過した後、回転蒸発器で濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラム (溶離剤: 5%MeOH/CH2Cl2中、MeOHはアンモニアガスで前飽和) により精製すると目的生成物がえられる。
N−[3−{2−[(ジメチルアミノ)メチル]−1H−イミダゾール−1−イル}−5−(トリフルオロメチル)フェニル]−3−エチニル−4−メチルベンズアミドの可能な合成:
THF (15 mL) 中のN−[3−{2−[(ジメチルアミノ)メチル]−1H−イミダゾール−1−イル}−5−(トリフルオロメチル)フェニル]−4−メチル−3−[(トリメチルシリル)エチニル]ベンズアミド (4.1 mmol) の溶液に、THF中のTBAF (1.0 M) 5 mLを添加する。室温で1時間撹拌した後、混合物をH2OとEtOAcとの間で分配する。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過した後、回転蒸発器で濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラム (溶離剤: 10%MeOH/CH2Cl2中、MeOHはアンモニアガスで前飽和) により精製すると目的生成物が得られる。
【0237】
(実施例8)
N−{3−クロロ−4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)メチル]フェニル}−4−メチル−3−[(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)エチニル]ベンズアミドの可能な合成
【0238】
【化47】

【0239】
標題化合物は、5−エチニル−1−メチル−1H−イミダゾール(1−メチル−5−トリメチルシラニルエチニル−1H−イミダゾールの保護基脱離により調製)とN−{3−クロロ−4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)メチル]フェニル}−3−ヨード−4−メチルベンズアミドとから、実施例2に準じて合成することができる。
【0240】
1−(ブロモメチル)−2−クロロ−4−ニトロ−ベンゼン:
CCl4120 mL 中の2−クロロ−4−ニトロトルエン (10.0 g, 58.3 mmol)、N−ブロモスクシンイミド (NBS, 10.9 g, 61.2 mmol)、及び2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル) (AIBN, 0.29 g, 1.75 mmol) の懸濁液を、N2雰囲気下12時間還流加熱した。反応混合物を室温に冷却し、析出固体を濾別し、EtOAcで洗浄した。合わせた濾液をNaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、回転蒸発器で濃縮し、更に減圧乾燥した。1H NMRは目的生成物と未反応の2−クロロ−4−ニトロトルエンとの比率が50:50であることを示した。この材料をそのまま次工程に使用した。
【0241】
1−(2−クロロ−4−ニトロベンジル)−4−メチルピペラジン:
DCM 30 mL中の粗製1−(ブロモメチル)−2−クロロ−4−ニトロベンゼン (29.1 mmol, 純度50%) の溶液にEt3N (4.2 mL, 30 mmol) 及び1−メチルピペラジン (3.4 mL, 30 mmol) を加えた。室温で3時間撹拌した後、NaHCO3水溶液を加え、得られた混合物をDCM で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過し、濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー (5%MeOH/DCMで溶離) により精製して、濃黄色油状物の生成物6.80 gを得た。
【0242】
3−クロロ−4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)アニリン:
MeOH/水 (4:1, 50 mL) 中の1−(2−クロロ−4−ニトロベンジル)−4−メチルピペラジン (0.96 g, 3.6 mmol) の溶液に、NH4Cl 1.80 g (33.7 mmol)及びFe末1.47 g (26.3 mmol) を添加し、この混合物をN2雰囲気下で2時間還流加熱した (HPLCがそれ以上の反応進行を示さなかった)。これに、氷酢酸4 mLを加え、混合物をさらに2時間還流加熱した。反応混合物を室温に冷却し、濾過し、濾液を濃縮した。残渣をEtOAcと飽和NaHCO3水溶液との間で分配し、分液した水層をEtOAcで抽出し、合わせた有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー (5〜7%MeOH/DCMで溶離、シリカゲルは1%トリエチルアミン/DCMで失活させた) により精製して、生成物0.53 gを得た。
【0243】
N−{3−クロロ−4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)メチル]フェニル}−4−メチル−3−[(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)エチニル]ベンズアミドの別の可能な合成
5−エチニル−1−メチル−1H−イミダゾール:
1−メチル−5−トリメチルシラニルエチニル−1H−イミダゾール (1.39 mol) を10倍量の酢酸エチルと1.5倍量のメタノールとに溶解した溶液に、室温で2.5当量の炭酸カリウムを加え、この溶液を1時間撹拌する。炭酸カリウムを濾去し、有機層を水と飽和塩化ナトリウム溶液 (2回以上) で洗浄する。水層を合わせて酢酸エチルで再抽出することができる。次に有機層を合わせ、約0.5 Lまで減圧濃縮することができる。濃縮後に固体を析出させることができる。生じたスラリーを、例えば約−5℃に冷却し、一晩貯蔵し、濾過し、約0.3 Lの冷酢酸エチルで洗浄する。この固体をその後、減圧乾燥することができる。
【0244】
4−メチル−3−[(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)エチニル]安息香酸: この化合物は、ソノガシラ反応について上述したのと同様に調製することができる。5−エチニル−1−メチル−1H−イミダゾールと3−ヨード−4−メチル安息香酸を結合相手成分として使用する。また、溶媒(DMF)を酢酸エチルに代えることができ、塩基(ヒューニッヒ塩基)をトリエチルアミンに代えることができる。生成物は粗製反応混合物の濾過により単離することができる。濾過ケーキを、順に酢酸エチルのような溶媒、次に水で洗浄し、次に減圧オーブン内で乾燥する。さらに精製するために、この固体を濃HClの添加によりpH 3に調整された水中にスラリー化してもよい。濾過と水洗後に生成物を減圧オーブン内で乾燥することができる。
【0245】
N−{3−クロロ−4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)メチル]フェニル}−4−メチル−3−[(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)エチニル]ベンズアミド:
4−メチル−3−[(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イル)エチニル]安息香酸(18 mmol) を塩化メチレン (100 mL) に溶解する。この溶液に、3当量の4−メチルモルホリン (NMM)、次に1.05当量の塩化オキサリルを添加する。室温で30分間撹拌した後、0.8当量の3−クロロ−4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)アニリン (上で調製) を5モル%のDMAPと一緒に加える。まず室温で撹拌した後、混合物を還流状態とし、一晩撹拌する。16時間後、追加の0.2当量の上記アニリン化合物を添加し、合計添加量を1当量にする。この混合物をその後、さらに2時間撹拌し、水を加えて反応を停止させ、分液することができる。水層を塩化メチレン (2×50 mL) で抽出することができ、合わせた抽出液を水洗することができる。合わせた塩化メチレン層を次いで蒸発させることができ、残渣を100 mLの酢酸エチル (20 mL) に溶解する。1時間放置後、生成物を結晶化させる。混合物を例えば0℃に冷却し、濾過し、固体生成物を冷酢酸エチルで洗浄する。
【0246】
(実施例9)
3−[(2−アミノ−1,3−チアゾール−5−イル)エチニル]−N−{3−シクロプロピル−4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)メチル]フェニル}−4−メチルベンズアミドの可能な合成
【0247】
【化48】

【0248】
標題化合物は、(5−エチニル−1,3−チアゾール−2−イル)カルバミン酸tert−ブチルと、N−{3−シクロプロピル−4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)メチル]フェニル}−3−ヨード−4−メチルベンズアミドとから、実施例2に記載したのと同様の方法で合成することができる(ニトロ基還元は、実施例8に記載したのと同様の方法で実施される、MeOH/10%AcOH中0.25 M)。t-Boc基の脱保護 (保護基脱離) は、実施例5に記載しようにしてカップリング後に実施できる。
【0249】
(5−エチニル−1,3−チアゾール−2−イル)カルバミン酸tert−ブチルの可能な合成:
{5−[(トリメチルシリル)エチニル]−1,3−チアゾール−2−イル}カルバミン酸tert−ブチル(実施例5の場合と同様に調製、1.39 mol) を10倍量の酢酸エチルと1.5倍量のメタノールとに溶解した溶液に、室温で2.5当量の炭酸カリウムを加え、この溶液を1時間撹拌する。炭酸カリウムを濾去し、有機層を水と飽和塩化ナトリウム溶液 (2回以上) で洗浄する。水層を合わせて酢酸エチルで再抽出することができる。次に有機層を合わせ、約0.5 Lまで減圧濃縮することができる。濃縮後に固体を析出させることができる。生じたスラリーを、例えば約−5℃に冷却し、一晩貯蔵し、濾過し、約0.3 Lの冷酢酸エチルで洗浄する。この固体をその後、減圧乾燥することができる。
【0250】
1−(2−シクロプロピル−4−ニトロベンジル)−4−メチルピペラジン:
トルエン/水 (5:1) 18 mL中の1−(2−ブロモ−4−ニトロベンジル)−4−メチルピペラジン (0.94 g, 3.0 mmol)、シクロプロピルホウ酸0.77 g (9.0 mmol)、Pd(OAc)2 0.067 g (0.30 mmol)、K3PO4 2.87 g (13.5 mmol)、及びトリシクロヘキシルホスフィン0.168 g (0.60 mmol) の混合物を、N2雰囲気下で19時間還流加熱した。反応混合物を濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー (5%MeOH/DCMで溶離、MeOHはアンモニアガスで前飽和) で精製すると、生成物0.80gが得られた。
【0251】
(実施例10)
1−メチル−5−({2−メチル−5−[({4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)メチル]−3−(トリフルオロメチル)フェニル}カルボニル)アミノ]フェニル}エチニル)−1H−イミダゾール−2−カルボキサミドの可能な合成
【0252】
【化49】

【0253】
標題化合物は、5−エチニル−1−メチル−1H−イミダゾール−2−カルボン酸アミドと、N−(3−ヨード−4−メチルフェニル)−4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)ベンズアミドとから、実施例2について述べたのと同様の方法で合成することができる。5−エチニル−1−メチル−1H−イミダゾール−2−カルボン酸アミドは実施例2におけるのと同様に調製される。
【0254】
N−(3−ヨード−4−メチルフェニル)−4−((4−メチルピペラジン−1−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)ベンズアミド:
4−[(4−メチル−1−ピペラジニル)メチル]−3−(トリフルオロメチル)安息香酸 (CAS# 859027-02-4; Asaki T. et al., Bioorg. Med. Lett. (2006), 16, 1421-1425に準じて調製) 1.0 g (2.67 mmol)、3−ヨード−4−メチルアニリン0.62 g (2.67 mmol)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N'−エチルカルボジイミド塩酸塩 (EDAC) 0.77 g (4.0 mmol)、及びN−ヒドロキシベンゾトリアゾール一塩酸塩 (HOBt・H2O) 0.43 g (3.2 mmol)を入れたフラスコに、DCM 5 mL及びトリエチルアミン5 mLを添加した。この溶液をN2雰囲気下、室温で3日間撹拌し、濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー (100%EtOAc、次に10%MeOH/EtOAcで溶離) により精製すると、白色固体として生成物0.69 gが得られた。
【0255】
(実施例11)
5−[(5−{[4−{[(3R)−3−(ジメチルアミノ)ピロリジン−1−イル]メチル}−3−(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイル}−2−メチルフェニル)エチニル]−1−メチル−1H−イミダゾール−2−カルボキサミドの可能な合成
【0256】
【化50】

【0257】
標題化合物は、5−エチニル−1−メチル−1H−イミダゾール−2−カルボン酸アミドと、(R)−N−(4−((3−(ジメチルアミノ)ピロリジン−1−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3−ヨード−4−メチルベンズアミドとから、実施例2に記載された方法と同様にして合成することができる。5−エチニル−1−メチル−1H−イミダゾール−2−カルボン酸アミドは実施例2におけるのと同様に調製される。
【0258】
1−(ブロモメチル)−4−ニトロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゼン:
CCl4(40 mL) 中の2−メチル−5−ニトロベンゾトリフルオリド (3.90 g,19 mmol)、N−ブロモスクシンイミド (NBS, 3.56 g, 20 mmol)、及び2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル) (AIBN, 0.094 g, 0.6 mmol)の懸濁液を、N2下16時間還流加熱した。HPLCは約50%の転化率を示した。追加のNBS (10 mmol) 及びAIBN (0.6 mmol) を加え、混合物をさらに14時間還流加熱した。HPLCは約80%の転化率を示した。この反応混合物を冷却し、固体を濾別し、EtOAcで洗浄した。合わせた濾液をNaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、回転蒸発器で濃縮し、さらに減圧乾燥した。1H NMRは目的生成物と未反応の2−メチル−5−ニトロベンゾトリフルオリドとの比率が75:25であることを示した。この材料をそのまま次工程に使用した。
【0259】
(R)−N,N−ジメチル−1−(4−ニトロ−2−(トリフルオロメチル)ベンジル)ピロリジン−3−アミン:
DCM 40 mL中の粗製1−(ブロモメチル)−4−ニトロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゼン (17.5 mmol, 純度75%) の溶液に、Et3N (2.69 mL, 19.3 mmol) 及び(R)−(+)−3−(ジメチルアミノ)ピロリジン (2.0 g, 17.5 mmol) を加えた。N2雰囲気下、室温で一晩撹拌した後、反応混合物を濃縮し、NaHCO3水溶液 (100 mL) を加え、得られた混合物をDCM (4×50 mL) で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過し、濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー (0〜10%MeOH/DCMで溶離) により精製して、黄色油状物の生成物3.35 gを得た。
【0260】
(R)−1−(4−アミノ−2−(トリフルオロメチル)ベンジル)−N,N−ジメチルピロリジン−3−アミン:
湿EtOH 20 mL 中の(R)−N,N−ジメチル−1−(4−ニトロ−2−(トリフルオロメチル)ベンジル)ピロリジン−3−アミン (1.20 g, 3.79 mmol) の溶液にPd/C (C担持10%Pd) 0.26 gを加え、この混合物をパー (Parr) 装置 (H2で十分パージされた圧力反応容器、圧力は常時45 psiに調節) 内で2〜3時間振盪した。反応混合物をセライトの小パッドで濾過し、EtOAcで洗浄し、合わせた有機層を濃縮して定量的収率で淡黄色油状物を得た。この材料を次工程にそのまま使用した。
【0261】
(R)−N−(4−((3−(ジメチルアミノ)ピロリジン−1−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3−ヨード−4−メチルベンズアミド:
DCM 14 mL 中の(R)−1−(4−アミノ−2−(トリフルオロメチル)ベンジル)−N,N−ジメチルピロリジン−3−アミン (3.79 mmol) の冷 (0℃) 溶液に、N2雰囲気下で、3−ヨード−4−メチルベンゾイルクロリド (1.17 g, 4.17 mmol; CAS#52107-98-9、3−ヨード−4−メチル安息香酸とSOCl2との反応から調製) を添加し、次にN,N−ジイソプロピルエチルアミン (2.64 mL,15.2 mmol) を滴下した。室温で1.5時間撹拌した後、反応混合物を濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー (0〜8%MeOH/DCMで溶離、MeOHはアンモニアガスで前飽和) で精製すると、粘稠な黄色油状物の生成物0.71 gが得られた。
【0262】
5−[(5−{[4−{[(3R)−3−(ジメチルアミノ)ピロリジン−1−イル]メチル}−3−(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイル}−2−メチルフェニル)エチニル]−1−メチル−1H−イミダゾール−2−カルボキサミドの可能な合成
DMF 3.5 mL中の5−エチニルピリミジン (0.34 mmol)、(R)−N−(4−((3−(ジメチルアミノ)ピロリジン−1−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3−ヨード−4−メチルベンズアミド 0.150 g (0.28 mmol)、Pd(PPh3)4 0.016 g (0.014 mmol)、CuI 0.004 g (0.021 mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン0.09 mL (0.51 mmol) の混合物を、N2雰囲気下、室温で3日間撹拌する (反応試薬をさらに追加し、80℃に加熱して反応を完了に押し進める)。得られた反応混合物を濃縮し、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー (0〜10%MeOH/DCMで溶離、MeOHはアンモニアガスで前飽和) で精製すると、標題化合物が得られる。
【0263】
(実施例12)
化合物の生物学的評価
本発明の化合物は、それらの生物学的活性を測定するために多様な検定(アッセイ)により評価される。例えば、本発明の化合物を、興味ある各種プロテインキナーゼを阻害するそれらの能力について試験することができる。試験した化合物の一部は、下記キナーゼに対して強力なナノモル活性を示した:Abl、Abl T315I、Src、及びFGFR。さらに、これらの化合物のいくつかは、野生型Bcr−Abl又はBcr−Abl T315I変異株のいずれかが形質移入されたBaF3細胞における抗増殖活性についてスクリーニングしたところ、1〜100nMの範囲内の活性が実証された。
【0264】
本化合物はまた、例えば、以下により詳しく説明し、かついくつかの代表的化合物については上に示したように、興味ある腫瘍細胞に対するそれらの細胞毒性又は増殖阻害効果について評価することができる。例えば、WO 03/000188, 115〜136頁(その全体をここに参考として援用する)を参照。
【0265】
いくつかの代表的化合物を下に示す。
【0266】
【表1−1】

【0267】
【表1−2】

【0268】
キナーゼ阻害
より具体的には、本書に記載した化合物は次のようにしてキナーゼ阻害活性についてスクリーニングされる。下記のプロトコルに用いるのに適したキナーゼとしては、それらに制限されないが、次のものが挙げられる:Abl,Lck,Lyn,Src,Fyn,Syk,Zap−70,ltk,Tec,Btk,EGFR,ErbB2,Kdr,Flt1,Flt−3,Tek,c−Met,InsR及びAKT。
【0269】
キナーゼは、グルタチオンS-トランスフェラーゼ (GST) に融合されたキナーゼドメイン又は全長構築物として、あるいはE. coli又はバクロウイルス−High Five発現系のいずれかにおけるポリヒスチジンのタグ付き融合タンパク質として発現される。それらは、既に文献に述べられているように (Lehr et al., 1996; Gish et al., 1995)、アフィニティークロマトグラフィーにより均質近くまで精製される。場合により、キナーゼは活性測定の前に精製又は不完全精製された調節ポリペプチドと共発現又は混合される。
【0270】
キナーゼ活性及び阻害は、確立されたプロトコル (例、Braunwarlder et al., 1996)により測定される。略述すると、微量定量 (マイクロタイター) プレートの生理活性表面に結合された合成基質poly(Glu, Tyr) 4:1又はpoly(Arg, Ser) 3:1へのATPからの33PO4の移動を酵素活性の指標とする。インキュベーション期間の後、まずプレートを0.5%リン酸で洗浄し、液体シンチラントを添加した後、液体シンチレーション検出器で計数することによって、移動したリン酸基の量を測定する。プレートに結合された基質上に取り込まれた33Pの量の50%減少を生ずる化合物の濃度によってIC50を求める。
【0271】
1つの方法では、活性化キナーゼを、本発明の化合物の存在下又は不存在下において、ビオチニル化基質ペプチド(tyrを含有)と共にインキュベーションする。キナーゼアッセイインキュベーション時間の経過後、キナーゼ反応を止めるために過剰のキナーゼ阻害剤を、ユーロピウム標識抗ホスホチロシン抗体(Eu−Ab)及びアロフィコシアニン−ストレプトアビジン(SA−APC)と共に添加する。溶液中のビオチニル化基質ペプチド(リン酸化チロシンを含有又は不含有)はビオチン−アビジン結合を介してSA−APCに結合する。Eu−Abはリン酸化チロシンを含んだ基質だけに結合する。この溶液を615nmで励起すると、ユーロピウムからAPCへのエネルギー移転が、それらが近接している場合(即ち、ビオチニル化及びリン酸化基質ペプチドの同じ分子に結合している場合)に起こる。その後、APCは665nmで波長の蛍光を発する。励起及び発光は、Wallac Victor2 V型プレートリーダーで行い、プレートを蛍光計で読み取り、615及び665nmでの吸光度を記録する。これらのデータをExcelプレートプロセッサで処理して、蛍光を作成されたリン酸化基質の量に変換し、リン酸化基質の発生を50%阻害するのに必要な試験化合物の濃度(IC50)を求めることにより試験化合物のIC50値を算出する。
【0272】
チロシン、セリン、スレオニン又はヒスチジンを単独で、或いはこれらどうし又は他のアミノ酸との混合物として含有する、溶液状又は固定 (即ち、固相) のペプチド又はポリペプチド基質へのリン酸基の移動を利用する他の方法も有用である。
【0273】
例えば、ペプチド又はポリペプチドへのリン酸基の移動は、シンチレーション・プロキシミティー、蛍光偏光、及び均質時間分解蛍光を用いて検出することもできる。或いは、キナーゼ活性の測定を、抗体又はポリペプチドを試薬として用いてリン酸化標的ポリペプチドを検出する抗体型の方法を用いて行うこともできる。
【0274】
そのような検定方法のさらなる背景情報は、例えば、Braunwalder et al., 1996, Anal. Biochem. 234(1): 23; Cleveland et al., 1990, Anal. Biochem. 190(2): 249; Gish et al., (1995) Protein Eng.8(6): 609; Kolb et al., (1998) Drug Discov. Toda V. 3: 333; Lehr et al., (1996) Gene 169(2): 27527-87; Seethala et al., (1998) Anal. Biochem. 255(2): 257; Wu et al., (2000) を参照。
【0275】
Src,Abl及びkdrを包含する各種キナーゼに対する本発明の化合物についての低いナノモル範囲内のIC50値が観測された。
細胞系検定:
本発明の或る種の化合物はまた、腫瘍又は他のがん細胞系に対する細胞毒性又は増殖阻害効果があることも実証されたので、がん及び他の細胞増殖型の疾患の治療に有用である可能性がある。化合物は、当業者には周知のin vivo又はin vitro検定を用いて抗腫瘍活性について検定される。一般に、抗がん薬候補を見つけるための化合物の初期スクリーニングは細胞検定により行われる。このような細胞系検定において抗増殖活性を有すると認められた化合物は、次いで、抗腫瘍活性と毒性に対して完全生体を使ってその後の検定を受けることができる。一般に、細胞系スクリーニングは、完全生体を使う検定に比べてより迅速かつ低コストで行うことができる。本発明の目的にとって、「抗腫瘍」活性と「抗がん」活性の用語は互換可能に使用される。
【0276】
抗増殖活性を測定するための細胞系の方法は周知であり、本発明の化合物の相対的な特性決定に使用することができる。一般に、細胞増殖及び細胞生存性検定は、細胞が代謝活性である時に検出可能な信号を与えるように設計される。化合物は、化合物への細胞の露出後の細胞の代謝活性の何らかの認められる低下を測定することによって抗増殖活性について試験することができる。よく使用される方法としては、例えば、膜一体性 (細胞生存性の指標として)の測定 (例、トリパン青の排除を使用)、又はDNA合成の測定 (例、BrdU若しくは3H−チミジンの取り込みの測定により)が挙げられる。
【0277】
一部の細胞増殖検定法は、細胞増殖中に検出可能な化合物に転化される試薬を使用する。特に好ましい化合物はテトラゾリウム塩であり、制限されないが、MTT (3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド; Sigma-Aldrich, セントルイス、ミズーリ)、MTS (3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム)、XTT (2,3−ビス(2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム−5−カルボキシアニリド)、INT、NBT、及びNTV (Bernas et al., Biochem. Biophys. Acta 1451(1):73-81, 1999)を挙げることができる。テトラゾリウム塩を利用した好ましい検定は、分光法により容易に検出される青色のホルマザン誘導体へのテトラゾリウム塩の酵素転化の生成物を検出することにより細胞増殖を検出する (Mosman, J. Immunol. Methods. 65:55-63, 1983)。
【0278】
一般に、細胞増殖の好ましい検定法は、試験すべき化合物を含有し、及び含有しない所望の増殖培地中で細胞をインキュベーションすることを含む。各種の原核細胞及び真核細胞に対する増殖条件が当業者には周知である (Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley and Sons, 1999; Bonifacino et al., Current Protocols in Cell Biology, Wiley and Sons, 1999, 両方を参考としてここに援用)。細胞増殖を検出するには、インキュベーションした培養細胞にテトラゾリウム塩を添加して、検出可能な産物への活性細胞による酵素転化を生じさせる。細胞を処理し、細胞の光学密度をホルマザン誘導体の量を測定することによって求める。また、試薬とプロトコル (試験説明書) が入っている市販キットが、例えば、Promega社 (マジソン、ウィスコンシン)、Sigma-Aldrich (セントルイス、ミズーリ)、及びTrevigen (ゲイザーズバーグ、メリーランド) から入手可能である。
【0279】
より具体的には、我々が現在行っている細胞増殖アッセイは、CellTiter 96 Aqueous One Solution Cell Proliferationアッセイキット (Promega社、Cat#G3581) を使用している。このアッセイは、増殖又は細胞毒性アッセイにおける生存細胞数を求めるための比色分析法である。テトラゾリウム塩を用いるこのアッセイは、テトラゾリウム塩から青いホルマザン誘導体への酵素転化率 (Wallac Victor2 V型プレートリーダー (Perkin Elmer) における490nmでの吸光度により測定できる) の結果を検出することにより細胞増殖を検出する。
【0280】
細胞系検定の1例を次に示す。本アッセイに使用した細胞系は、マウス・プロB(murine pro-B)細胞系であるBa/F3であり、これには全長野生型Bcr−Abl又は多様なキナーゼドメイン点突然変異(T3511,Y253F,E255K,H396P,M351Tなどを含む)を持つBcr−Abl構築物が安定的に形質移入されていた。親のBA/F3細胞系を対照として使用する。これらの細胞系はBrian J. Druker (Howard Hughes Medical Institute, Oregon Health and Science University、米国オレゴン州ポートランド) から入手した。Bcr−Abl又はBcr−Abl突然変異体を発現するBa/F3細胞は、200μM L−グルタミン、10%FCS、ペニシリン (200 U/mL)、及びストレプトマイシン (200 μg/mL) を添加したPRMI1640増殖培地中で維持された。親Ba/F3細胞は10 ng/mL IL−3を添加した上と同じ培地中で培養された。
【0281】
親Ba/F3細胞(IL−3添加)又はWT又は突然変異Bcr−Ablを発現するBa/F3細胞を、培地中の異なる濃度の試験化合物と共に、96ウェルプレートに1×104細胞/ウェルで2回平板培養する。試験化合物は、まずDMSOに溶解及び希釈して4倍希釈の希釈液を調製する。次に、同じ容積のDMSO希釈化合物を培地に移し、その後、細胞プレートに移す。最終の化合物濃度は10μMから始まり、6nMまでである。対照として同じ割合のDMSOを使用する。化合物を細胞と一緒に3日間インキュベーションした後、活性細胞数を、CellTiter 96 Aqueous One Solution Cell Proliferationアッセイキットを用いて、キットの指示に従って測定する。基本的には、テトラゾリウム塩をインキュベーションした培養細胞に加えて、検出可能な産物への活性細胞による酵素転化を生じさせる。細胞を処理し、細胞の光学密度を求めてホルマザン誘導体の量を測定する。2つのウェルから平均±SD(標準偏差)を求め、対照の吸光%として報告する。IC50値は、Micorsoft Excel-fitソフトウェアを用いてベストフィット曲線において算出する。
【0282】
また、多様な細胞型を用いて化合物を抗増殖活性についてスクリーニングすることができる。そのような例として、とりわけ下記細胞系を挙げることができる:COLO 205 (大腸がん)、DLD−1 (大腸がん)、HCT−15 (大腸がん)、HT29 (大腸がん)、HEP G2 (肝細胞がん、ヘパトーマ)、K562 (白血病)、A549 (肺)、NCI−H249 (肺)、MCF7 (乳)、MDA−MB−231 (乳)、SAOS−2 (骨肉腫)、OVCAR−3 (卵巣)、PANC−1 (膵臓)、DU−145 (前立腺)、PC−3 (前立腺)、ACHN (直腸)、CAK−1 (直腸)、MG−63 (肉腫)。
【0283】
細胞系は好ましくは哺乳動物のものであるが、酵母のような下級真核細胞も化合物のスクリーニングのために使用することができる。好ましい哺乳動物細胞系は、ヒト、ラット、マウス、ウサギ、サル、ハムスター、及びモルモットに由来するものである。これらの生体に由来する細胞系は十分に研究され、特性決定されているからである。しかし、他の細胞もまた使用しうる。
【0284】
適当な哺乳動物細胞系は腫瘍に由来することが多い。例えば、下記の腫瘍細胞型が細胞培養のための細胞供給源となりうる:メラノーマ (黒色腫)、骨髄性白血病、肺がん、乳がん、卵巣がん、大腸がん、腎臓がん、前立腺がん、膵臓がん及び精巣がん、心筋細胞、内皮細胞、上皮細胞、リンパ球 (T細胞及びB細胞)、肥満細胞、好酸球、血管内膜細胞、肝(実質)細胞、単核白血球を含む白血球、造血、神経、皮膚、肺、腎臓、肝臓、及び筋細胞の幹細胞のような幹細胞 (分化及び脱分化の因子に対するスクリーニングに使用)、破骨細胞、軟骨細胞及び他の結合組織細胞、表皮細胞 (ケラチノサイト)、メラノサイト (メラニン形成細胞)、肝細胞、腎細胞、並びに脂肪細胞。研究者によって広く使用されてきた哺乳動物細胞系の制限しない例としては、HeLa、NIH/3T3、HT1080、CHO、COS−1、293T、WI−38及びCV1/EBNA−1が挙げられる。
【0285】
代謝活性の細胞を検出するためにリポーター遺伝子に依存する別の細胞検定も使用しうる。リポーター遺伝子発現系の制限ではない例としては、緑色蛍光タンパク質 (GFP)、及びルシフェラーゼがある。潜在的抗腫瘍薬のスクリーニングのためのGFPの使用例として、Sandman et al (Chem. Biol. 6: 541-51; 参考としてここに援用) は、GFPの誘導性変異体を含有するHeLa細胞を用いて、GFPの発現を阻害し、従って、細胞増殖を阻害する化合物を検出した。
【0286】
このような細胞検定によって抗細胞増殖活性を有すると同定された化合物は、その後、完全生体において抗腫瘍活性について試験される。好ましくは、生体は哺乳動物である。がん研究のための十分に特性決定された哺乳動物系としては、ラット及びマウスのような齧歯動物が挙げられる。典型的には、対象となる腫瘍を、拒絶反応の可能性を低減させるためにその腫瘍に対して免疫学的応答を引き起こす能力を低減させたマウスに移植する。このようなマウスとしては、例えば、ヌードマウス (無胸腺) 及びSCID (重症複合型免疫不全) マウスがある。腫瘍遺伝子含有マウスのような他の形質転換 (トランスジェニック) マウスを本検定に使用してもよい (例えば、USP 4,736,868及びUSP 5,175,383を参照)。抗腫瘍薬試験に対する齧歯動物モデルの使用についての概説及び解説は、Kerbel (Cancer Metastasis Rev. 17: 301-304, 1898-99)を参照。
【0287】
一般に、対象となる腫瘍は試験動物の好ましくは皮下に移植される。腫瘍を含有させた生体を候補の抗腫瘍化合物の各種用量で処置する。腫瘍の大きさを定期的に測定して、腫瘍に対する試験化合物の効果を求める。一部の腫瘍型は、皮下位置以外の位置 (例、腹腔内位置) に移植され、生存日数が終点として測定される。一般的なスクリーニングにより検定されるパラメータとしては、腫瘍モデルの種類、各種の腫瘍及び薬剤経路、並びに投与の量とスケジュールが挙げられる。抗腫瘍化合物の検出におけるマウスの使用の概説については、Corbett et al., (Invest New Drugs, 15:207-218, 1997; ここに参考として援用) を参照。
【0288】
(実施例8)
薬剤組成物:
下記に例示するような本発明の化合物の代表的な製剤剤形 (本発明の化合物である有効成分を単に「化合物」という)が、ヒトにおける治療及び予防用に提供される。
【0289】
(a) 錠剤1 mg/錠
化合物 100
乳糖 (欧州薬局方) 182.75
クロスカルメロースナトリウム 12.0
コーンスターチペースト (5% w/v ヘ゜ースト) 2.25
ステアリン酸マグネシウム 3.0。
【0290】
(b) 錠剤2 mg/錠
化合物 50
乳糖 (欧州薬局方) 223.75
クロスカルメロースナトリウム 6.0
コーンスターチ 15.0
ポリビニルピロリドン (5% w/v ヘ゜ースト) 2.25
ステアリン酸マグネシウム 3.0。
【0291】
(c) 錠剤3 mg/錠
化合物 1.0
乳糖 (欧州薬局方) 93.25
クロスカルメロースナトリウム 4.0
コーンスターチペースト (5% w/v ヘ゜ースト) 0.75
ステアリン酸マグネシウム 1.0〜76。
【0292】
(d) カプセル剤 mg/カプセル
化合物 10
乳糖 (欧州薬局方) 488.5
マグネシウム 1.5。
【0293】
(e) 注射液1 (50 mg/mL)
化合物 5.0% w/v
1M 水酸化ナトリウム溶液 15.0% w/v
0.1M 塩酸 (pH 7.6に調整する量)
ポリエチレングリコール400 4.5% w/v
注射用蒸留水を加えて 100%。
【0294】
(f) 注射液2 (10 mg/mL)
化合物 1.0% w/v
リン酸ナトリウムリBP 3.6% w/v
0.1M 水酸化ナトリウム溶液 15.0% w/v
注射用蒸留水を加えて 100%。
【0295】
(g) 注射液3 (1 mg/mL、pH 6に緩衝)
化合物 0.1% w/v
リン酸ナトリウムリBP 2.26% w/v
クエン酸 0.38% w/v
ポリエチレングリコール400 3.5% w/v
注射用蒸留水を加えて 100%。
【0296】
(h) エアゾール1 mg/mL
化合物 10.0
ソルビタントリオレエート 13.5
トリクロロフルオロメタン 910.0
ジクロロジフルオロメタン 490.0。
【0297】
(i) エアゾール2 mg/mL
化合物 0.2
ソルビタントリオレエート 0.27
トリクロロフルオロメタン 70.0
ジクロロジフルオロメタン 280.0
ジクロロテトラフルオロエタン 1094.0。
【0298】
(j) エアゾール3 mg/mL
化合物 2.5
ソルビタントリオレエート 3.38
トリクロロフルオロメタン 67.5
ジクロロジフルオロメタン 1086.0
ジクロロテトラフルオロエタン 191.6。
【0299】
(k) エアゾール4 mg/mL
化合物 2.5
大豆レクチン 2.7
トリクロロフルオロメタン 67.5
ジクロロジフルオロメタン 1086.0
ジクロロテトラフルオロエタン 191.6。
【0300】
(l) 軟膏 mL
化合物 40 mg
エタノール 300 μL
水 300 μL
1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン 50 μL
プロピレングリコールを加えて 1 mL。
【0301】
(注)上記の処方組成物は、製薬技術分野で周知の慣用手法を用いて製剤化される。錠剤(a)〜(c)は、例えば、セルロースアセテートフタレートによる被覆錠剤としたい場合には、慣用手段により腸溶性被覆を施してもよい。エアゾール処方組成物(h)〜(k)は、標準的な計量投与エアゾール・ディスペンサーと組み合わせて使用することができ、懸濁剤のソルビタントリオレエート及び大豆レシチンは、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリソルベート80、ポリグリセロールオレエート、又はオレイン酸などの別の懸濁剤で置換してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式Iで示される化合物、その互変異性体、その単独異性体、その複数異性体の混合物、又はその薬剤に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物:
【化1】

式中、
環Tは、O、N及びSから選ばれた1〜3個のヘテロ原子を含み、場合により1〜3個のRt基で置換されていてもよい、5員単環式ヘテロアリール環を表し;
環Aは、場合により1〜4個のRa基で置換されていてもよい5又は6員アリール又はヘテロアリール環を表し;
環Bは、場合により1〜5個のRb基で置換されていてもよい5又は6員アリール又はヘテロアリール環を表し;
1は、NR1C(O)及びC(O)NR1から選ばれ;
a、Rb、Rtは、出てくる毎に独立して、ハロゲン、−CN、−NO2、−R4、−OR2、−NR23、−C(O)YR2、−OC(O)YR2、−NR2C(O)YR2、−SC(O)YR2、−NR2C(=S)YR2、−OC(=S)YR2、−C(=S)YR2、−YC(=NR3)YR2、−YP(=O)(YR4)(YR4)、−Si(R4)3、−NR2SO22、−S(O)r2、−SO2NR23、及び−NR2SO2NR23よりなる群から選ばれ、ここで各Yは独立して単結合、−O−、−S−、又は−NR3−であり;
1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環基及びヘテロアリールから選ばれ;
或いは、NR23部分は、N、O及びS(O)rから選ばれた追加のヘテロ原子0〜2個を含有する、場合により置換されていてもよい、飽和、部分飽和又は不飽和の5又は6員環であってもよく;
4は、出てくる毎に独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環基及びヘテロアリールから選ばれ;
上記のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環基及びヘテロアリールの各基は場合により置換されていてもよく;
mは0、1、2、3又は4であり;
nは0、1、2又は3であり;
pは0、1、2、3、4又は5であり;そして
rは0、1又は2である。
【請求項2】
環Tが下記から選ばれた単環5員環であり、場合により炭素又はヘテロ原子上で1〜3個のRt基により置換されていてもよい、請求項1に記載の化合物。
【化2】

【請求項3】
次式で示される請求項1に記載の化合物:
【化3】

式中、
環Cは、炭素原子とO、N及びS(O)rから選ばれた1〜3個のヘテロ原子とを含有する、場合により炭素又はヘテロ原子上で1〜5個のRc基により置換されていてもよい、5又は6員環の複素環又はヘテロアリール環を表し;
cは、出てくる毎に独立して、ハロゲン、=O、=S、−CN、−NO2、−R4、−OR2、−NR23、−C(O)YR2、−OC(O)YR2、−NR2C(O)YR2、−SC(O)YR2、−NR2C(=S)YR2、−OC(=S)YR2、−C(=S)YR2、−YC(=NR3)YR2、−YP(=O)(YR4)(YR4)、−Si(R4)3、−NR2SO22、−S(O)r2、−SO2NR23、及び−NR2SO2NR23よりなる群から選ばれ、ここでYは独立して単結合、−O−、−S−、又は−NR3−であり;
2及びR3は、それぞれ独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環基及びヘテロアリールから選ばれ;
或いは、NR23部分は、N、O及びS(O)rから選ばれた追加のヘテロ原子0〜2個を含有する、場合により置換されていてもよい、飽和、部分飽和又は不飽和の5又は6員環であってもよく;
4は、出てくる毎に独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環基及びヘテロアリールから選ばれ;
上記のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環基のそれぞれは場合により置換されていてもよく;
vは0、1、2、3、4又は5であり;そして
tは0、1、2、3又は4である。
【請求項4】
環A及びBがアリールである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
環Cがヘテロアリール環である、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
環Cがイミダゾール環である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
下記一般式IIa、IIb及びIIcから選ばれる請求項3に記載の化合物。
【化4】

【請求項8】
tが独立して−CH3及び−C(O)NH2から選ばれ、vが1、nが0又は1、mが1、tが1、Raが−CH3、RbがCF3、そしてRcが−CH3である請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
下記一般式で示される、請求項1に記載の化合物:
【化5】

式中、
環Dは、炭素原子と独立してN、O及びS(O)rから選ばれた1〜3個のヘテロ原子とを含有する、場合により1〜5個のRd基で置換されていてもよい、5又は6員環の複素環又はヘテロアリール環を表し;
2は、(CH2)z、O(CH2)x、NR3(CH2)x、S(CH2)x、又は(CH2)xNR3C(O)(CH2)xであり、この結合単位はいずれの方向で使用してもよく;
dは、出てくる毎に独立して、ハロゲン、=O、=S、−CN、−NO2、−R4、−OR2、−NR23、−C(O)YR2、−OC(O)YR2、−NR2C(O)YR2、−SC(O)YR2、−NR2C(=S)YR2、−OC(=S)YR2、−C(=S)YR2、−YC(=NR3)YR2、−YP(=O)(YR4)(YR4)、−Si(R4)3、−NR2SO22、−S(O)r2、−SO2NR23、及び−NR2SO2NR23よりなる群から選ばれ、ここで各Yは独立して単結合、−O−、−S−、又は−NR3−であり;
2及びR3は、それぞれ独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環基及びヘテロアリールから選ばれ;
或いは、NR23部分は、N、O及びS(O)rから選ばれた追加のヘテロ原子0〜2個を含有する、場合により置換されていてもよい、飽和、部分飽和又は不飽和の5又は6員環であってもよく;
4は、出てくる毎に独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環基及びヘテロアリールから選ばれ;
上記のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環基のそれぞれ は場合により置換されていてもよく;
wは0、1、2、3、4又は5であり;
xは0、1、2又は3であり;
zは1、2、3又は4であり;そして
tは0、1、2、3又は4である。
【請求項10】
環A及びBがアリールである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
環Dが置換又は非置換ピペラジン環であって、L2がCH2である、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
環Dが置換又は非置換ヘテロアリールである、請求項9に記載の化合物。
【請求項13】
下記一般式IIIa、IIIb及びIIIcから選ばれる請求項11に記載の化合物。
【化6】

【請求項14】
tが独立して−CH3及び−C(O)NH2から選ばれ、nが0又は1、mが1、tが1、Raがメチル、RbがCF3、Rdの1つがメチル及びCH2CH2OHから選ばれる、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
治療を必要とする哺乳動物のがんの治療方法であって、治療有効量の請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物又はその薬剤に許容される塩、溶媒和物、もしくは水和物を該哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物又はその薬剤に許容される塩、溶媒和物、もしくは水和物と、薬剤に許容される担体、希釈剤又はビヒクルとを含む組成物。

【公表番号】特表2009−536652(P2009−536652A)
【公表日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509821(P2009−509821)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/011136
【国際公開番号】WO2007/133562
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(500430383)アリアド・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】