単相あるいは三相インバータおよびそれを用いた空気調和機
【課題】誘導負荷に使用される単相あるいは三相インバータにおいて、単方向スイッチと双方向性スイッチを組合せ、インバータ損失の低減と簡単なゲート駆動回路構成による低コスト化を目的とする。
【解決手段】上アームを単方向スイッチ17、下アームに双方向スイッチ1を接続したハーフブリッジ回路18を並列に接続してインバータを構成し、唯一のゲート駆動電源22にて各単方向スイッチ17、および双方向スイッチ1の駆動電源を共用することで簡単な回路構成にて駆動することができるインバータ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】上アームを単方向スイッチ17、下アームに双方向スイッチ1を接続したハーフブリッジ回路18を並列に接続してインバータを構成し、唯一のゲート駆動電源22にて各単方向スイッチ17、および双方向スイッチ1の駆動電源を共用することで簡単な回路構成にて駆動することができるインバータ装置を提供することを目的とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン用や圧縮機用のモータに使用される単相あるいは三相インバータおよびそれを用いた空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の普及がさらに拡大傾向にあるが、同時に電子機器の消費電力増加、引いては地球温暖化などが発生しており、社会的な問題と認識されている。このような社会的背景から、電子機器の低消費電力化の要求も高くなっており、根幹となる電源回路、あるいは電子機器の主たる機能を実現するためのアクチュエータなど待機電力、運転のための電力の何れの電力消費についても技術革新による消費削減が期待されている。
【0003】
従来、この種の低消費電力化のための技術としては、使用する電圧に応じて、適宜半導体デバイスをMOSFETあるいはIGBTの使い分ける、あるいは新しい半導体デバイスとして、双方向性スイッチを利用した電力変換回路が提案されている。そういった背景のもと、双方向性スイッチを構成して還流ダイオードのロス低減を図るインバータが知られている。
【0004】
以下、そのインバータ回路について、特許文献1を一例として説明する。
【0005】
図7に示すように、特許文献1における電力変換装置に適用したインバータ回路では、各スイッチング素子T1〜T15のうち、T1〜T4、T6〜T9、T11〜T14は2個一対で双方向性スイッチを構成している。双方向性スイッチのゲート駆動電源構成は、非絶縁の2電源にて構成しており、各スイッチング素子T1〜T15のスイッチングに応じて、電流経路が形成され、コンデンサC1〜C12に充電することが示されている。具体的には、コンデンサC1、C3、C5、C7、C9、C11はスイッチング素子T5、T10、T15が各オンした際に電源EdrvからダイオードD1、D3、D5、D7、D9、D11を介して充電することになる。また、コンデンサC2、C4、C6、C8、C10、C12は、スイッチング素子T2、T4、T7、T9、T12、T14が各オンした際に、コンデンサC1、C3、C5、C7、C9、C11からダイオードD2、D4、D6、D8、D10、D12を介して充電することになる。
【0006】
また、特許文献1以外では、各双方向スイッチの各ゲート端子に対して、絶縁電源を形成して駆動電源を供給するものや、ブートストラップ回路を構成し、直流部の電圧を基準としてゲート端子を駆動するゲート端子のみチャージポンプ回路を採用して駆動するものなどが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−246617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような特許文献1における従来のインバータ装置においては、双方向性スイッチを上下に配して構成していたので、例えばインバータを矩形波駆動する場合、上アームの還流ダイオードに通流する時間は短く、還流ダイオードのロスは下アームが大半を占めるため、上下アーム共に双方向性スイッチにて構成することによる効果と、ゲート駆動電源の複雑化、ゲート信号生成が通常の2倍になること等によるデメリットが用途によってはコスト的に負担になるという課題を有していた。
【0009】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、上アームを単方向スイッチ、下アームを双方向スイッチにて構成することで、下アームの還流電流に対してダイオードを介さず双方向に導通するモードにて駆動して主たる導通損失の低減を図りつつ、上アームのゲート駆動電源を下アームの上側ゲート端子の駆動電源を共用することで簡単な回路構成にて駆動することができるインバータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、この目的を達成するために、本発明は、高電位側に単方向スイッチを配し、低電位側に双方向スイッチを配したハーフブリッジ回路を並列に配してなる単相あるいは三相インバータであって、前記双方向スイッチは、基板の上に形成されたチャネルを有する半導体層積層体と、前記半導体層積層体の上に互いに間隔をおいて形成された第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極との間に、前記第1のオーミック電極側から順に形成された、第1のゲート電極及び第2のゲート電極と、前記半導体層積層体と第1のゲート電極との間に形成された第1のp型半導体層と、前記半導体層積層体と第2のゲート電極との間に形成された第2のp型半導体とを有し、前記第1のオーミック電極と前記第1のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第一ゲート端子と、前記第2のオーミック電極と前記第2のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第二ゲート端子と、前記第1のオーミック電極に接続されたドレイン端子と、前記第2のオーミック電極に接続されたソース端子を備え、前記第一ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けてオン状態の双方向デバイスと逆方向ダイオードが直列接続された半導体として動作する第一モード、前記第二ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けて順方向ダイオードとオン状態の双方向デバイスが直列接続された半導体として動作する第二モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作する第三モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオフすると順逆双方向に電流を遮断する第四モードを有し、前記単方向スイッチおよび双方向スイッチのゲート駆動電源は、唯一の電源による構成としたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高電位側に単方向スイッチを配し、低電位側に双方向スイッチを配したハーフブリッジ回路を並列に配してなる単相あるいは三相インバータであって、前記双方向スイッチは、基板の上に形成されたチャネルを有する半導体層積層体と、前記半導体層積層体の上に互いに間隔をおいて形成された第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極との間に、前記第1のオーミック電極側から順に形成された、第1のゲート電極及び第2のゲート電極と、前記半導体層積層体と第1のゲート電極との間に形成された第1のp型半導体層と、前記半導体層積層体と第2のゲート電極との間に形成された第2のp型半導体とを有し、前記第1のオーミック電極と前記第1のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第一ゲート端子と、前記第2のオーミック電極と前記第2のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第二ゲート端子と、前記第1のオーミック電極に接続されたドレイン端子と、前記第2のオーミック電極に接続されたソース端子を備え、前記第一ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けてオン状態の双方向デバイスと逆方向ダイオードが直列接続された半導体として動作する第一モード、前記第二ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けて順方向ダイオードとオン状態の双方向デバイスが直列接続された半導体として動作する第二モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作する第三モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオフすると順逆双方向に電流を遮断する第四モードを有し、前記単方向スイッチおよび双方向スイッチのゲート駆動電源は、唯一の電源による構成にしたことにより、ゲート駆動電源の低コスト化を図ることができるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1の双方向スイッチの構成図
【図2】同双方向スイッチの等価回路図((a)第1、第2のトランジスタで構成する等価回路図、(b)第2のトランジスタの等価回路図、(c)第2のトランジスタをダイオードとみなした場合の等価回路図)
【図3】同双方向スイッチの電圧・電流の相関図
【図4】同双方向スイッチの動作モードを示す図
【図5】同単相インバータの構成図
【図6】本発明の実施の形態2の三相インバータの構成図
【図7】従来の特許文献1における三相インバータを示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の請求項1記載の単相あるいは三相インバータは、高電位側に単方向スイッチを配し、低電位側に双方向スイッチを配したハーフブリッジ回路を並列に配してなる単相あるいは三相インバータであって、前記双方向スイッチは、基板の上に形成されたチャネルを有する半導体層積層体と、前記半導体層積層体の上に互いに間隔をおいて形成された第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極との間に、前記第1のオーミック電極側から順に形成された、第1のゲート電極及び第2のゲート電極と、前記半導体層積層体と第1のゲート電極との間に形成された第1のp型半導体層と、前記半導体層積層体と第2のゲート電極との間に形成された第2のp型半導体とを有し、前記第1のオーミック電極と前記第1のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第一ゲート端子と、前記第2のオーミック電極と前記第2のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第二ゲート端子と、前記第1のオーミック電極に接続されたドレイン端子と、前記第2のオーミック電極に接続されたソース端子を備え、前記第一ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けてオン状態の双方向デバイスと逆方向ダイオードが直列接続された半導体として動作する第一モード、前記第二ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けて順方向ダイオードとオン状態の双方向デバイスが直列接続された半導体として動作する第二モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作する第三モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオフすると順逆双方向に電流を遮断する第四モードを有し、前記単方向スイッチおよび双方向スイッチのゲート駆動電源は、唯一の電源を備える構成を有する。これにより、ゲート駆動のための電源を簡略化することができ、構成する部品が減少することとなるので、ゲート駆動電源の低コスト化を図ることができるという効果を奏する。
【0014】
また請求項2記載の単相あるいは三相インバータは、単方向スイッチと双方向スイッチの第一ゲート端子の駆動電源としての電力蓄積部は、それぞれ設け、低電位側をハーフブリッジ回路の負荷への出力点に接続、高電位側を電源側に接続し、前記双方向スイッチの第一ゲート端子の駆動電源として電力蓄積部は、前記単方向スイッチの駆動電源にダイオードを介して接続した構成にしても良い。これにより、双方向スイッチの第一ゲート端子の駆動電源は、単方向スイッチの駆動電源から電力の供給も受けることができ、第一ゲート端子をより安定して駆動することができる。そして、電力蓄積部の共用化を図ることができることとなり、より簡単な構成で低コスト化を図ることができるという効果を奏する。
【0015】
また請求項3記載の単相あるいは三相インバータは、単方向スイッチと双方向スイッチの第一ゲート端子の駆動電力源としての電力蓄積部は、低電位側を各ハーフブリッジ回路の負荷への出力点に接続、高電位側を電源に接続し、第二ゲート端子をオンした際に前記電力蓄積部へ充電する構成にしても良い。これにより、電力蓄積部の共用化を図ることができることとなるので、より簡単な構成で低コスト化を図ることができるという効果を奏する。
【0016】
また請求項4記載の単相あるいは三相インバータは、双方向スイッチの第一ゲート端子は常時オンとなるように制御する構成にしても良い。これにより、双方向スイッチのゲート駆動信号を唯一とすることができることとなるので、駆動信号の伝送回路と駆動信号生成部を簡単な構成で低コスト化を図ることができるという効果を奏する。
【0017】
また請求項5記載の単相あるいは三相インバータは、双方向スイッチは、単相あるいは三相インバータの出力側に誘導性負荷が接続され、還流電流を流す場合、少なくとも単方向スイッチがターンオフするよりも以前に第一ゲート端子をターンオンするように制御する構成にしても良い。これにより、単方向スイッチがターンオフした直後の還流電流を流す経路が確保できることとなるので、還流電流が不連続とならず、回路部品の過電圧を防止することができるという効果を奏する。
【0018】
また請求項6記載の単相あるいは三相インバータは、双方向スイッチは、単相あるいは三相インバータの出力側に誘導性負荷が接続され、還流電流を流す場合、少なくとも単方向スイッチがターンオフした後に第二ゲート端子をターンオンさせる構成にしても良い。これにより、単方向スイッチの順方向の導通と、双方向スイッチの順方向の導通を同時に発生することを防止することとなるので、上下短絡の発生を防止することができるという効果を奏する。
【0019】
また請求項7記載の単相あるいは三相インバータは、電力蓄積部への充電頻度を高めるように双方向スイッチの変調を決定する構成にしても良い。これにより、双方向スイッチの第二ゲート端子がオンしたタイミングでのみ充電することができる電力蓄積部への充電頻度を高めることとなるので、単方向スイッチのゲート端子と双方向スイッチの第一ゲート端子を駆動するために充分な電力蓄積部の蓄積電力を確保することができるという効果を奏する。
【0020】
また請求項8記載の単相あるいは三相インバータは、双方向スイッチと並列にダイオードを配し、ソース端子側にアノードを接続し、ドレイン側にカソードを接続する構成にしても良い。これにより、双方向スイッチの初期立ち上げ時、ゲート端子に電源供給できない状態にあっても通電する経路が確保することとなるので、特別な初期立ち上げ処理を不要とし、簡単な構成で低コスト化を図ることができるという効果を奏する。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
(実施の形態1)
まず、双方向スイッチ1について、図1を参照しながら構成について説明する。図1に示すように、双方向スイッチ1は、第一ゲート端子2と第二ゲート端子3とドレイン端子4とソース端子5により構成されている。双方向スイッチ1は、シリコン(Si)からなる基板6の上に厚さが10nm窒化アルミニウム(AlN)と厚さが10nmの窒化ガリウム(GaN)とが交互に積層されてなる厚さが1μmのバッファ層7が形成され、その上に半導体層積層体8が形成されている。半導体層積層体8は、第1の半導体層とこの第1の半導体層と比べてバンドギャップが大きい第2の半導体層とが基板側から順次積層されている。第1の半導体層は、厚さが2μmのGaN(アンドープの窒化ガリウム)層9であり、第2の半導体層は、厚さが20nmのn型のAlGaN(窒化アルミニウムガリウム)層10である。GaN層9のAlGaN層10とのヘテロ界面近傍には、自発分極及びピエゾ分極による電荷が生じる。これにより、シートキャリア濃度が1×1013cm―2以上で且つ移動度が1000cm2V/sec以上の2次元電子ガス(2DEG)層であるチャネル領域が生成されている。つまり、半導体層積層体8は、2次元電子ガス(2DEG)層であるチャネル領域を有し、基板の上に形成されている。半導体層積層体8の上には、互いに間隔をおいて第1のオーミック電極11Aと第2のオーミック電極11Bとが形成されている。第1のオーミック電極11A及び第2のオーミック電極11Bは、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)とが積層されており、チャネル領域とオーミック接合を形成している。また、コンタクト抵抗を低減するために、AlGaN層10の一部を除去すると共にGaN層9を40nm程度掘り下げて、第1のオーミック電極11A及び第2のオーミック電極11BがAlGaN層10とGaN層9との界面に接するように形成した例を示している。なお、第1のオーミック電極11A及び第2のオーミック電極11Bは、AlGaN層10の上に形成してもよい。n型のAlGaN層10の上における第1のオーミック電極11Aと第2のオーミック電極11Bとの間の領域には、第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bが互いに間隔をおいて選択的に形成されている。第1のp型半導体層12Aの上には第1のゲート電極13Aが形成され、第2のp型半導体層12Bの上には第2のゲート電極13Bが形成されている。第1のゲート電極13A及び第2のゲート電極13Bは、それぞれパラジウム(Pd)と金(Au)とが積層されており、第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bとオーミック接触している。AlGaN層10及び第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bを覆うように窒化シリコン(SiN)からなる保護膜14が形成されている。保護膜14を形成することで、いわゆる電流コラプスの原因となる欠陥を保障し、電流コラプスを改善することが可能となる。第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bは、それぞれ厚さが300nmで、マグネシウム(Mg)がドープされたp型のGaNからなる。第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bと、AlGaN層10とによりPN接合がそれぞれ形成される。これにより、第1のオーミック電極11Aと第1のゲート電極13Aとの間の電圧が例えば0Vでは、第1のp型GaN層からチャネル領域中に空乏層が広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができ、同様に、第2のオーミック電極11Bと第2のゲート電極13Bとの間の電圧が例えば0V以下のときには、第2のp型GaN層からチャネル領域中に空乏層が広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができ、いわゆるノーマリーオフ動作をする半導体素子を実現している。第1のオーミック電極11Aの電位をV1、第1のゲート電極13Aの電位をV2、第2のゲート電極13Bの電位をV3、第2のオーミック電極11Bの電位をV4とする。この場合において、V2がV1より1.5V以上高ければ、第1のp型半導体層12Aからチャネル領域中に広がる空乏層が縮小するため、チャネル領域に電流を流すことができる。同様にV3がV4より1.5V以上高ければ、第2のp型半導体層12Bからチャネル領域中に広がる空乏層が縮小し、チャネル領域に電流を流すことができる。つまり、第1のゲート電極13Aのいわゆる閾値電圧及び第2のゲート電極13Bのいわゆる閾値電圧は共に1.5Vである。以下においては、第1のゲート電極13Aの下側においてチャネル領域中に広がる空乏層が縮小し、チャネル領域に電流を流すことができるようになる第1のゲート電極13Aの閾値電圧を第1の閾値電圧とし、第2のゲート電極13Bの下側においてチャネル領域中に広がる空乏層が縮小し、チャネル領域に電流を流すことができるようになる第2のゲート電極13Bの閾値電圧を第2の閾値電圧とする。また、第1のp型半導体層12Aと第2のp型半導体層12Bとの間の距離は、第1のオーミック電極11A及び第2のオーミック電極11Bに印加される最大電圧に耐えられるように構成する。第1のオーミック電極11Aと第1のゲート電極13Aとの間にゲート駆動信号(すなわち、第一ゲート端子2への制御信号)を入力するようになっている。第2のオーミック電極11Bと第2のゲート電極13Bとの間も同様にゲート駆動信号(すなわち、第二ゲート端子3への制御信号)を入力するようになっている。なお、ドレイン端子4は第1のオーミック電極11Aに接続され、ソース端子5は第2のオーミック電極11Bに接続され、第一ゲート端子2は第1のゲート電極13Aに接続され、第二ゲート端子3は第2のゲート電極13Bに接続されている。
【0023】
次に、双方向スイッチ1の動作について説明する。説明のため、第1のオーミック電極11Aの電位を0Vとし、第一ゲート端子2に印加する電圧をVg1、第二ゲート端子3に印加する電圧をVg2、第2のオーミック電極11Bと第1のオーミック電極11Aとの間の電圧をVs2s1、第2のオーミック電極11Bと第1のオーミック電極11Aとの間に流れる電流をIs2s1とする。
【0024】
V4がV1よりも高い場合、例えば、V4が+100Vで、V1が0Vの場合において、第一ゲート端子2と第二ゲート端子3の入力電圧であるVg1及びVg2をそれぞれ第1の閾値電圧及び第2の閾値電圧以下の電圧、例えば0Vとする。これにより、第1のp型半導体層12Aから広がる空乏層が、チャネル領域中を第2のp型GaN層の方向へ向けて広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができる。従って、V4が正の高電圧であっても、第2のオーミック電極11Bから第1のオーミック電極11Aへ流れる電流を遮断する遮断状態を実現できる。一方、V4がV1よりも低い場合、例えばV4が−100Vで、V1が0Vの場合においても、第2のp型半導体層12Bから広がる空乏層が、チャネル領域中を第1のp型半導体層12Aの方向へ向けて広がり、チャネルに流れる電流を遮断することができる。このため、第2のオーミック電極11Bに負の高電圧が印加されている場合においても、第1のオーミック電極11Aから第2のオーミック電極11Bへ流れる電流を遮断することができる。すなわち、双方向スイッチ1の双方向の電流を遮断することが可能となる。
【0025】
以上のような構造及び動作において、耐圧を確保するためのチャネル領域を第1のゲート電極13Aと第2のゲート電極13Bとが共有する。この素子は、1素子分のチャネル領域の面積で双方向スイッチ1が実現可能であり、双方向スイッチ1全体を考えると、2つのダイオードと2つのノーマリーオフ型のAlGaN/GaN−HFETとを用いた場合と比べてチップ面積をより少なくすることができ、双方向スイッチ1の低コスト化及び小型化が可能となる。
【0026】
次に、第一ゲート端子2、第二ゲート端子3の入力電圧であるVg1及びVg2が、それぞれ第1の閾値電圧及び第2の閾値電圧よりも高い電圧、例えば5Vの場合には、第1のゲート電極13A及び第2のゲート電極13Bに印加される電圧は、共に閾値電圧よりも高くなる。従って、第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bからチャネル領域に空乏層が広がらないため、チャネル領域は第1のゲート電極13Aの下側においても、第2のゲート電極13Bの下側においてもピンチオフされない。その結果、第1のオーミック電極11Aと第2のオーミック電極11Bとの間に双方向に電流が流れる導通状態を実現できる。
【0027】
次に、Vg1を第1の閾値電圧よりも高い電圧とし、Vg2を第2の閾値電圧以下とした場合の動作について説明する。第一ゲート端子2、第二ゲート端子3を備えた双方向スイッチ1を等価回路で表すと図2(a)に示すように第1のトランジスタ15と第2のトランジスタ16とが直列に接続された回路とみなすことができる。この場合、第1のトランジスタ15のソース(S)が第1のオーミック電極11A、第1のトランジスタ15のゲート(G)が第1のゲート電極13Aに対応し、第2のトランジスタ16のソース(S)が第2のオーミック電極11B、第2のトランジスタ16のゲート(G)が第2のゲート電極13Bに対応する。このような回路において、例えば、Vg1を5V、Vg2を0Vとした場合、Vg2が0Vであるということは第2のトランジスタ16のゲートとソースが短絡されている状態と等しいため、双方向スイッチ1は図2(b)に示すような回路とみなすことができる。
【0028】
さらに、図2(b)に示す第2のトランジスタ16のソース(S)をA端子、ドレイン(D)をB端子、ゲート(G)をC端子として説明を行う。図に示すB端子の電位がA端子の電位よりも高い場合には、A端子がソースでB端子がドレインであるトランジスタとみなすことができ、このような場合、C端子(ゲート)とA端子(ソース)との間の電圧は0Vであり、閾値電圧以下のため、B端子(ドレイン)からA端子(ソース)に電流は流れない。一方、A端子の電位がB端子の電位よりも高い場合には、B端子がソースでA端子がドレインのトランジスタとみなすことができる。このような場合、C端子(ゲート)とA端子(ドレイン)との電位が同じであるため、A端子の電位がB端子を基準として閾値電圧以下の場合にはA端子(ドレイン)からB端子(ソース)へ電流を通電しない。A端子の電位がB端子を基準として閾値電圧以上となると、ゲートにB端子(ソース)を基準として閾値電圧以上の電圧が印加され、A端子(ドレイン)からB端子(ソース)へ電流を流すことができる。つまり、トランジスタのゲートとソースとを短絡させた場合、ドレインがカソードでソースがアノードのダイオードとして機能し、その順方向立上り電圧はトランジスタの閾値電圧となる。そのため、図2(a)に示す第2のトランジスタ16の部分は、ダイオードとみなすことができ、図2(c)に示すような等価回路となる。図2(c)に示す等価回路において、双方向スイッチ1のドレイン端子4の電位がソース端子5の電位よりも高い場合、第1のトランジスタ15の第一ゲート端子2に5Vが印加されている場合には、第1のトランジスタ15はオン状態であり、S2からS1へ電流を流すことが可能となる。ただし、ダイオードの順方向立上り電圧によるオン電圧が発生する。また、双方向スイッチ1のS1の電位がS2の電位よりも高い場合、その電圧は第2のトランジスタ16からなるダイオードが担い、双方向スイッチ1のS1からS2へ流れる電流を阻止する。つまり、第一ゲート端子2に閾値電圧以上の電圧を与え、第二ゲート端子3に閾値電圧以下の電圧を与えることにより、いわゆる双方向素子をオンした状態とドレイン側にダイオードのカソード側を直列接続した動作が可能なスイッチが実現できる。
【0029】
図3は、双方向スイッチ1のVs2s1とIs2s1との関係であり、(a)は、Vg1とVg2とを同時に変化させた場合を示し、(b)はVg2を第2の閾値電圧以下の0Vとし、Vg1を変化させた場合を示し、(c)はVg1を第1の閾値電圧以下の0VとしてVg2を変化させた場合を示している。なお、図3において横軸であるS2−S1間電圧(Vs2s1)は、第1のオーミック電極11Aを基準とした電圧であり、縦軸であるS2−S1間電流(Is2s1)は第2のオーミック電極11Bから第1のオーミック電極11Aへ流れる電流を正としている。図3(a)に示すように、Vg1及びVg2が0Vの場合及び1Vの場合には、Vs2s1が正の場合にも負の場合にもIs2s1は流れず、双方向スイッチ1は遮断状態となる。また、Vg1とVg2とが共に閾値電圧よりも高くなると、Vs2s1に応じてIs2s1が双方向に流れる導通状態となる。一方、図3(b)に示すように、Vg2を第2の閾値電圧以下の0Vとし、Vg1を第1の閾値電圧以下の0Vとした場合には、Is2s1は双方向に遮断される。しかし、Vg1を第1の閾値電圧以上の2V〜5Vとした場合には、Vs2s1が1.5V未満の場合にはIs2s1が流れないが、Vs2s1が1.5V以上になるとIs2s1が流れる。つまり、第2のオーミック電極11Bから第1のオーミック電極11Aにのみに電流が流れ、第1のオーミック電極11Aから第2のオーミック電極11Bには電流が流れない逆阻止状態となる。また、Vg1を0Vとし、Vg2を変化させた場合には図3(c)に示すように、第1のオーミック電極11Aから第2のオーミック電極11Bにのみに電流が流れ、第2のオーミック電極11Bから第1のオーミック電極11Aには電流が流れない逆阻止状態となる。
【0030】
以上より、双方向スイッチ1は、そのゲートバイアス条件により、双方向の電流を遮断・通電する機能を有すると共に、ダイオード動作も可能であり、そのダイオードの電流が通電する方向も切り換えることができる。以上、説明したように双方向スイッチ1の第一ゲート端子2と第二ゲート端子3のオンあるいはオフ条件に応じて、図4示す4つの動作モードで動作することができる。すなわち、前記第一ゲート端子2のみをオンすると、前記ドレイン端子4から前記ソース端子5間に向けてオン状態の双方向デバイスと逆方向ダイオードが直列接続された半導体として動作する第一モード、前記第二ゲート端子3のみをオンすると、前記ドレイン端子4から前記ソース端子5間に向けて順方向ダイオードとオン状態の双方向デバイスが直列接続された半導体として動作する第二モード、前記第一ゲート端子2および前記第二ゲート端子3をオンすると、前記ドレイン端子4から前記ソース端子5間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作する第三モード、前記第一ゲート端子2および前記第二ゲート端子3をオフすると順逆双方向に電流を遮断する第四モードを有するものである。本構造はJFETに類似しているが、キャリア注入を意図的に行うという点で、ゲート電界によりチャネル領域内のキャリア変調を行うJFETとは全く異なった動作原理により動作する。具体的には、ゲート電圧が3VまではJFETとして動作するが、pn接合のビルトインポテンシャルを超える3V以上のゲート電圧が印加された場合には、ゲートに正孔が注入され、前述したメカニズムにより電流が増加し、大電流且つ低オン抵抗の動作が可能となる。
【0031】
また、双方向スイッチ1は、第1のゲート電極13Aがp型の導電性を有する第1のp型半導体層12Aの上に形成され、第2のゲート電極13Bがp型の導電性を有する第2のp型半導体層12Bの上に形成されている。このため、第1の半導体層と第2の半導体層との界面領域に生成されるチャネル領域に対して、第1のゲート電極13A及び第2のゲート電極13Bから順方向のバイアスを印加することにより、チャネル領域内に正孔を注入することができる。窒化物半導体においては正孔の移動度は、電子の移動度よりもはるかに低いため、チャネル領域に注入された正孔は電流を流す担体としてほとんど寄与しない。このため、第1のゲート電極13A及び第2のゲート電極13Bから注入された正孔は同量の電子をチャネル領域内に発生させるので、チャネル領域内に電子を発生させる効果が高くなり、ドナーイオンのような機能を発揮する。つまり、チャネル領域内においてキャリア濃度の変調を行うことが可能となるため、動作電流が大きいノーマリーオフ型の窒化物半導体層双方向スイッチを実現することが可能となる。
【0032】
次に、高電位側に単方向スイッチ17(例えばMOSFET)を配し、低電位側に双方向スイッチ1を配したハーフブリッジ回路18を並列に配してなる双方向スイッチ1を使用した単相インバータ19の構成について、図5を参照しながら説明する。図に示すように、単相インバータ19は、双方向スイッチ1a、1cを低電位側に接続し、高電位側には単方向スイッチ17b、17dを接続して、各第一ゲート端子2a、2c、各第二ゲート端子3a、3c、単方向スイッチ17b、17dのゲート端子20b、20dへの各信号を制御する制御部21を備えている。また、第一ゲート端子2a、2c、第二ゲート端子3a、3cおよびゲート端子20b、20dの駆動は、唯一の電源として備えたゲート駆動電源22で行なえるように構成している。その動作について、以下説明する。双方向スイッチ1a、1cが各々第二ゲート端子3a、3cをオンした際に第一ゲート端子2a、2cへの駆動電流の供給および接続された電力蓄積部としてのコンデンサ23a〜23dに充電されるようになっている。つまり、コンデンサ23a、23cは、それぞれ低電位側を各ハーフブリッジ回路18a、18bの負荷への出力点30、31に接続し、高電位側をゲート駆動電源22側に接続している。また、コンデンサ23b、23dもそれぞれ同様に出力点30、31に接続し、高電位側はダイオード32、33を介してゲート駆動電源22側に接続している。つまり、コンデンサ23b、23dは、コンデンサ23a、23dの高電位側に対して、それぞれダイオード32、33を介して接続されている。そして、双方向スイッチ1a、1cの第二ゲート端子3a、3cをオンした際にコンデンサ23a〜23dへ充電するように構成している。また、充電されたコンデンサ23a、23cの電力は、高電位側に配した単方向スイッチ17b、17dの駆動電力として使用し、コンデンサ23b、23dは、低電位側に配した双方向スイッチ1a、1cの第一ゲート端子2a、2cを駆動するための電力として使用する。ここで、双方向スイッチ1a、1cの第一ゲート端子2a、2cは常時オンするような構成であり、単方向スイッチ17b、17dのゲート端子20b、20dの駆動電力に対して、オンしている期間が長いことから、コンデンサ23a、23cの容量に対して、コンデンサ23b、23dは、より大きい容量(少なくともコンデンサ23a、23cの容量に対して、単方向スイッチ17b、17dのゲート消費電力と双方向スイッチ1a、1cの比率を乗算し、その比例演算した結果に対して1.5〜3倍の容量)としている。双方向スイッチ1a、1cおよび単方向スイッチ17b、17dのスイッチングを制御することでインバータ出力に任意の波形を生成することが可能となる。
【0033】
また、双方向スイッチ1a、1cは、単相インバータ19の出力側に誘導性負荷が接続され、還流電流を流す場合、単方向スイッチ17bあるいは17dがターンオフするよりも以前に第一ゲート端子2aあるいは2cをターンオンするように制御部21から信号出力するようになっている。第一ゲート端子2aあるいは2cをターンオンさせることを先に行なうため、誘導負荷接続時の還流電流は、単方向スイッチ17b、あるいは17dのターンオフにより電流経路を遮断された場合であっても、通流させる経路を確保することができることとなる。さらに、双方向スイッチ1a、1cは、少なくとも単方向スイッチ17b、17dがターンオフした後に第二ゲート端子3a、3cをターンオンするように制御部21から信号出力するようになっている。第二ゲート端子3aあるいは3cをターンオンさせることを後に行なうため、単方向スイッチ17b、17dと双方向スイッチ1a、1cの導通状態の重複、すなわちアーム短絡状態を回避することができることとなる。
【0034】
さらに、第一ゲート端子2a、2cに接続したコンデンサ23b、23dは第一ゲート端子2a、2cが常時オンさせるため、電力消費が大きくなり、電圧が低下することで、第一ゲート端子2a、2cをターンオンできなくなる恐れがあるしかし、双方向スイッチ1a、1cに対して還流電流が流れる際に第二ゲート端子3a、3cをターンオンさせることで、双方向スイッチ1a、1cは双方向の導通状態となって、コンデンサ23b、23dの低電位側はゲート駆動電源の低電位側と導通させることができ、ゲート駆動電源22からの充電経路を生成することができる。これにより電圧低下を避けることができ、コンデンサ23b、23dは充分な蓄積容量を確保することができることとなる。
【0035】
また、この双方向スイッチ1a、1cに対して還流電流が流れる際に第二ゲート端子3a、3cをターンオンさせる制御は、コンデンサ23b、23dへの充電する頻度を高めることを意図しており、還流電流が流れるタイミングで双方向スイッチ1a、1cの変調を決定する制御に相当するものである。
【0036】
このような構成によれば、ゲート駆動電源を唯一の電源とすることにより、ゲート駆動のための電源を簡略化することができ、絶縁電源を複数個構成する必要がなく、構成する部品が減少することとなるので、ゲート駆動電源の低コスト化を図ることができる。
【0037】
また、コンデンサ23b、23dは、それぞれダイオード32、32を介してゲート駆動電源22に側に接続されていることで、蓄積された電力は第一ゲート端子2a、2cの駆動にのみ使用されることとなるので、双方向スイッチ1a、1cの第一ゲート端子2a、2cをより安定してオン状態に保つことができる。
【0038】
また、コンデンサ23b、23dは、コンデンサ23a、23dの高電位側に対して、それぞれダイオード32、33を介して接続されていることにより、コンデンサ23a、23dからも電力の供給を受けることもできるので、蓄積容量を確保することが容易になる。
【0039】
なお、実施の形態において、単相インバータ構成にて説明したが、三相インバータ構成であっても良い。
【0040】
(実施の形態2)
図6において、図5と同様の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0041】
図6は、空調ファン用として構成した単方向スイッチ17と双方向スイッチ1を組み合わせた三相インバータ24を示し、図6において双方向スイッチ1a、1c、1eは、並列にダイオード25a、25b、25cを備え、三相インバータ24の出力側にモータ等の誘導負荷が接続された際に流れる還流電流を流す経路を確保できることとなる。初期立ち上げ時には、双方向スイッチ1a、1c、1eの第一ゲート端子2a、2c、2eに接続したコンデンサ23b、23d、23fは充電されていないため、第一ゲート端子2a、2c、2eをターンオンさせることはできず、還流電流は25a、25b、25c側を流れるが、出力周波数が上昇した際には、コンデンサ23b、23d、23fへの充放電が可能となることより、双方向スイッチ1a、1c、1f側を還流電流が流れることとなる。
【0042】
上記構成において、初期立ち上げ時にゲート端子に電源供給できない状態にあっても通電する経路が確保することとなるので、特別な初期立ち上げ処理を不要とし、簡単な構成で低コスト化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明にかかる単相あるいは三相インバータおよびそれを用いた空気調和機は、インバータのゲート駆動電源を唯一の電源による構成とすることを可能とするものであるので、空気調和機に使用されるモータ駆動部の低損失化を図りつつ、低コスト化を図るためのインバータとして有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 双方向スイッチ
1a、1c、1e 双方向スイッチ
2 第一ゲート端子
2a、2c、2e 第一ゲート端子
3 第二ゲート端子
3a、3c 第二ゲート端子
4 ドレイン端子
5 ソース端子
6 基板
7 バッファ層
8 半導体層積層体
9 GaN層
10 AlGaN層
11A 第1のオーミック電極
11B 第2のオーミック電極
12A 第1のp型半導体層
12B 第2のp型半導体層
13A 第1のゲート電極
13B 第2のゲート電極
14 保護膜
15 第1のトランジスタ
16 第2のトランジスタ
17 単方向スイッチ
17b、17d 単方向スイッチ
18 ハーフブリッジ回路
18a、18b ハーフブリッジ回路
19 単相インバータ
20b、20d ゲート端子
21 制御部
22 ゲート駆動電源
23a〜23f コンデンサ
24 三相インバータ
25a、25b、25c ダイオード
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン用や圧縮機用のモータに使用される単相あるいは三相インバータおよびそれを用いた空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の普及がさらに拡大傾向にあるが、同時に電子機器の消費電力増加、引いては地球温暖化などが発生しており、社会的な問題と認識されている。このような社会的背景から、電子機器の低消費電力化の要求も高くなっており、根幹となる電源回路、あるいは電子機器の主たる機能を実現するためのアクチュエータなど待機電力、運転のための電力の何れの電力消費についても技術革新による消費削減が期待されている。
【0003】
従来、この種の低消費電力化のための技術としては、使用する電圧に応じて、適宜半導体デバイスをMOSFETあるいはIGBTの使い分ける、あるいは新しい半導体デバイスとして、双方向性スイッチを利用した電力変換回路が提案されている。そういった背景のもと、双方向性スイッチを構成して還流ダイオードのロス低減を図るインバータが知られている。
【0004】
以下、そのインバータ回路について、特許文献1を一例として説明する。
【0005】
図7に示すように、特許文献1における電力変換装置に適用したインバータ回路では、各スイッチング素子T1〜T15のうち、T1〜T4、T6〜T9、T11〜T14は2個一対で双方向性スイッチを構成している。双方向性スイッチのゲート駆動電源構成は、非絶縁の2電源にて構成しており、各スイッチング素子T1〜T15のスイッチングに応じて、電流経路が形成され、コンデンサC1〜C12に充電することが示されている。具体的には、コンデンサC1、C3、C5、C7、C9、C11はスイッチング素子T5、T10、T15が各オンした際に電源EdrvからダイオードD1、D3、D5、D7、D9、D11を介して充電することになる。また、コンデンサC2、C4、C6、C8、C10、C12は、スイッチング素子T2、T4、T7、T9、T12、T14が各オンした際に、コンデンサC1、C3、C5、C7、C9、C11からダイオードD2、D4、D6、D8、D10、D12を介して充電することになる。
【0006】
また、特許文献1以外では、各双方向スイッチの各ゲート端子に対して、絶縁電源を形成して駆動電源を供給するものや、ブートストラップ回路を構成し、直流部の電圧を基準としてゲート端子を駆動するゲート端子のみチャージポンプ回路を採用して駆動するものなどが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−246617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような特許文献1における従来のインバータ装置においては、双方向性スイッチを上下に配して構成していたので、例えばインバータを矩形波駆動する場合、上アームの還流ダイオードに通流する時間は短く、還流ダイオードのロスは下アームが大半を占めるため、上下アーム共に双方向性スイッチにて構成することによる効果と、ゲート駆動電源の複雑化、ゲート信号生成が通常の2倍になること等によるデメリットが用途によってはコスト的に負担になるという課題を有していた。
【0009】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、上アームを単方向スイッチ、下アームを双方向スイッチにて構成することで、下アームの還流電流に対してダイオードを介さず双方向に導通するモードにて駆動して主たる導通損失の低減を図りつつ、上アームのゲート駆動電源を下アームの上側ゲート端子の駆動電源を共用することで簡単な回路構成にて駆動することができるインバータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、この目的を達成するために、本発明は、高電位側に単方向スイッチを配し、低電位側に双方向スイッチを配したハーフブリッジ回路を並列に配してなる単相あるいは三相インバータであって、前記双方向スイッチは、基板の上に形成されたチャネルを有する半導体層積層体と、前記半導体層積層体の上に互いに間隔をおいて形成された第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極との間に、前記第1のオーミック電極側から順に形成された、第1のゲート電極及び第2のゲート電極と、前記半導体層積層体と第1のゲート電極との間に形成された第1のp型半導体層と、前記半導体層積層体と第2のゲート電極との間に形成された第2のp型半導体とを有し、前記第1のオーミック電極と前記第1のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第一ゲート端子と、前記第2のオーミック電極と前記第2のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第二ゲート端子と、前記第1のオーミック電極に接続されたドレイン端子と、前記第2のオーミック電極に接続されたソース端子を備え、前記第一ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けてオン状態の双方向デバイスと逆方向ダイオードが直列接続された半導体として動作する第一モード、前記第二ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けて順方向ダイオードとオン状態の双方向デバイスが直列接続された半導体として動作する第二モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作する第三モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオフすると順逆双方向に電流を遮断する第四モードを有し、前記単方向スイッチおよび双方向スイッチのゲート駆動電源は、唯一の電源による構成としたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高電位側に単方向スイッチを配し、低電位側に双方向スイッチを配したハーフブリッジ回路を並列に配してなる単相あるいは三相インバータであって、前記双方向スイッチは、基板の上に形成されたチャネルを有する半導体層積層体と、前記半導体層積層体の上に互いに間隔をおいて形成された第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極との間に、前記第1のオーミック電極側から順に形成された、第1のゲート電極及び第2のゲート電極と、前記半導体層積層体と第1のゲート電極との間に形成された第1のp型半導体層と、前記半導体層積層体と第2のゲート電極との間に形成された第2のp型半導体とを有し、前記第1のオーミック電極と前記第1のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第一ゲート端子と、前記第2のオーミック電極と前記第2のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第二ゲート端子と、前記第1のオーミック電極に接続されたドレイン端子と、前記第2のオーミック電極に接続されたソース端子を備え、前記第一ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けてオン状態の双方向デバイスと逆方向ダイオードが直列接続された半導体として動作する第一モード、前記第二ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けて順方向ダイオードとオン状態の双方向デバイスが直列接続された半導体として動作する第二モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作する第三モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオフすると順逆双方向に電流を遮断する第四モードを有し、前記単方向スイッチおよび双方向スイッチのゲート駆動電源は、唯一の電源による構成にしたことにより、ゲート駆動電源の低コスト化を図ることができるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1の双方向スイッチの構成図
【図2】同双方向スイッチの等価回路図((a)第1、第2のトランジスタで構成する等価回路図、(b)第2のトランジスタの等価回路図、(c)第2のトランジスタをダイオードとみなした場合の等価回路図)
【図3】同双方向スイッチの電圧・電流の相関図
【図4】同双方向スイッチの動作モードを示す図
【図5】同単相インバータの構成図
【図6】本発明の実施の形態2の三相インバータの構成図
【図7】従来の特許文献1における三相インバータを示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の請求項1記載の単相あるいは三相インバータは、高電位側に単方向スイッチを配し、低電位側に双方向スイッチを配したハーフブリッジ回路を並列に配してなる単相あるいは三相インバータであって、前記双方向スイッチは、基板の上に形成されたチャネルを有する半導体層積層体と、前記半導体層積層体の上に互いに間隔をおいて形成された第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極との間に、前記第1のオーミック電極側から順に形成された、第1のゲート電極及び第2のゲート電極と、前記半導体層積層体と第1のゲート電極との間に形成された第1のp型半導体層と、前記半導体層積層体と第2のゲート電極との間に形成された第2のp型半導体とを有し、前記第1のオーミック電極と前記第1のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第一ゲート端子と、前記第2のオーミック電極と前記第2のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第二ゲート端子と、前記第1のオーミック電極に接続されたドレイン端子と、前記第2のオーミック電極に接続されたソース端子を備え、前記第一ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けてオン状態の双方向デバイスと逆方向ダイオードが直列接続された半導体として動作する第一モード、前記第二ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けて順方向ダイオードとオン状態の双方向デバイスが直列接続された半導体として動作する第二モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作する第三モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオフすると順逆双方向に電流を遮断する第四モードを有し、前記単方向スイッチおよび双方向スイッチのゲート駆動電源は、唯一の電源を備える構成を有する。これにより、ゲート駆動のための電源を簡略化することができ、構成する部品が減少することとなるので、ゲート駆動電源の低コスト化を図ることができるという効果を奏する。
【0014】
また請求項2記載の単相あるいは三相インバータは、単方向スイッチと双方向スイッチの第一ゲート端子の駆動電源としての電力蓄積部は、それぞれ設け、低電位側をハーフブリッジ回路の負荷への出力点に接続、高電位側を電源側に接続し、前記双方向スイッチの第一ゲート端子の駆動電源として電力蓄積部は、前記単方向スイッチの駆動電源にダイオードを介して接続した構成にしても良い。これにより、双方向スイッチの第一ゲート端子の駆動電源は、単方向スイッチの駆動電源から電力の供給も受けることができ、第一ゲート端子をより安定して駆動することができる。そして、電力蓄積部の共用化を図ることができることとなり、より簡単な構成で低コスト化を図ることができるという効果を奏する。
【0015】
また請求項3記載の単相あるいは三相インバータは、単方向スイッチと双方向スイッチの第一ゲート端子の駆動電力源としての電力蓄積部は、低電位側を各ハーフブリッジ回路の負荷への出力点に接続、高電位側を電源に接続し、第二ゲート端子をオンした際に前記電力蓄積部へ充電する構成にしても良い。これにより、電力蓄積部の共用化を図ることができることとなるので、より簡単な構成で低コスト化を図ることができるという効果を奏する。
【0016】
また請求項4記載の単相あるいは三相インバータは、双方向スイッチの第一ゲート端子は常時オンとなるように制御する構成にしても良い。これにより、双方向スイッチのゲート駆動信号を唯一とすることができることとなるので、駆動信号の伝送回路と駆動信号生成部を簡単な構成で低コスト化を図ることができるという効果を奏する。
【0017】
また請求項5記載の単相あるいは三相インバータは、双方向スイッチは、単相あるいは三相インバータの出力側に誘導性負荷が接続され、還流電流を流す場合、少なくとも単方向スイッチがターンオフするよりも以前に第一ゲート端子をターンオンするように制御する構成にしても良い。これにより、単方向スイッチがターンオフした直後の還流電流を流す経路が確保できることとなるので、還流電流が不連続とならず、回路部品の過電圧を防止することができるという効果を奏する。
【0018】
また請求項6記載の単相あるいは三相インバータは、双方向スイッチは、単相あるいは三相インバータの出力側に誘導性負荷が接続され、還流電流を流す場合、少なくとも単方向スイッチがターンオフした後に第二ゲート端子をターンオンさせる構成にしても良い。これにより、単方向スイッチの順方向の導通と、双方向スイッチの順方向の導通を同時に発生することを防止することとなるので、上下短絡の発生を防止することができるという効果を奏する。
【0019】
また請求項7記載の単相あるいは三相インバータは、電力蓄積部への充電頻度を高めるように双方向スイッチの変調を決定する構成にしても良い。これにより、双方向スイッチの第二ゲート端子がオンしたタイミングでのみ充電することができる電力蓄積部への充電頻度を高めることとなるので、単方向スイッチのゲート端子と双方向スイッチの第一ゲート端子を駆動するために充分な電力蓄積部の蓄積電力を確保することができるという効果を奏する。
【0020】
また請求項8記載の単相あるいは三相インバータは、双方向スイッチと並列にダイオードを配し、ソース端子側にアノードを接続し、ドレイン側にカソードを接続する構成にしても良い。これにより、双方向スイッチの初期立ち上げ時、ゲート端子に電源供給できない状態にあっても通電する経路が確保することとなるので、特別な初期立ち上げ処理を不要とし、簡単な構成で低コスト化を図ることができるという効果を奏する。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
(実施の形態1)
まず、双方向スイッチ1について、図1を参照しながら構成について説明する。図1に示すように、双方向スイッチ1は、第一ゲート端子2と第二ゲート端子3とドレイン端子4とソース端子5により構成されている。双方向スイッチ1は、シリコン(Si)からなる基板6の上に厚さが10nm窒化アルミニウム(AlN)と厚さが10nmの窒化ガリウム(GaN)とが交互に積層されてなる厚さが1μmのバッファ層7が形成され、その上に半導体層積層体8が形成されている。半導体層積層体8は、第1の半導体層とこの第1の半導体層と比べてバンドギャップが大きい第2の半導体層とが基板側から順次積層されている。第1の半導体層は、厚さが2μmのGaN(アンドープの窒化ガリウム)層9であり、第2の半導体層は、厚さが20nmのn型のAlGaN(窒化アルミニウムガリウム)層10である。GaN層9のAlGaN層10とのヘテロ界面近傍には、自発分極及びピエゾ分極による電荷が生じる。これにより、シートキャリア濃度が1×1013cm―2以上で且つ移動度が1000cm2V/sec以上の2次元電子ガス(2DEG)層であるチャネル領域が生成されている。つまり、半導体層積層体8は、2次元電子ガス(2DEG)層であるチャネル領域を有し、基板の上に形成されている。半導体層積層体8の上には、互いに間隔をおいて第1のオーミック電極11Aと第2のオーミック電極11Bとが形成されている。第1のオーミック電極11A及び第2のオーミック電極11Bは、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)とが積層されており、チャネル領域とオーミック接合を形成している。また、コンタクト抵抗を低減するために、AlGaN層10の一部を除去すると共にGaN層9を40nm程度掘り下げて、第1のオーミック電極11A及び第2のオーミック電極11BがAlGaN層10とGaN層9との界面に接するように形成した例を示している。なお、第1のオーミック電極11A及び第2のオーミック電極11Bは、AlGaN層10の上に形成してもよい。n型のAlGaN層10の上における第1のオーミック電極11Aと第2のオーミック電極11Bとの間の領域には、第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bが互いに間隔をおいて選択的に形成されている。第1のp型半導体層12Aの上には第1のゲート電極13Aが形成され、第2のp型半導体層12Bの上には第2のゲート電極13Bが形成されている。第1のゲート電極13A及び第2のゲート電極13Bは、それぞれパラジウム(Pd)と金(Au)とが積層されており、第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bとオーミック接触している。AlGaN層10及び第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bを覆うように窒化シリコン(SiN)からなる保護膜14が形成されている。保護膜14を形成することで、いわゆる電流コラプスの原因となる欠陥を保障し、電流コラプスを改善することが可能となる。第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bは、それぞれ厚さが300nmで、マグネシウム(Mg)がドープされたp型のGaNからなる。第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bと、AlGaN層10とによりPN接合がそれぞれ形成される。これにより、第1のオーミック電極11Aと第1のゲート電極13Aとの間の電圧が例えば0Vでは、第1のp型GaN層からチャネル領域中に空乏層が広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができ、同様に、第2のオーミック電極11Bと第2のゲート電極13Bとの間の電圧が例えば0V以下のときには、第2のp型GaN層からチャネル領域中に空乏層が広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができ、いわゆるノーマリーオフ動作をする半導体素子を実現している。第1のオーミック電極11Aの電位をV1、第1のゲート電極13Aの電位をV2、第2のゲート電極13Bの電位をV3、第2のオーミック電極11Bの電位をV4とする。この場合において、V2がV1より1.5V以上高ければ、第1のp型半導体層12Aからチャネル領域中に広がる空乏層が縮小するため、チャネル領域に電流を流すことができる。同様にV3がV4より1.5V以上高ければ、第2のp型半導体層12Bからチャネル領域中に広がる空乏層が縮小し、チャネル領域に電流を流すことができる。つまり、第1のゲート電極13Aのいわゆる閾値電圧及び第2のゲート電極13Bのいわゆる閾値電圧は共に1.5Vである。以下においては、第1のゲート電極13Aの下側においてチャネル領域中に広がる空乏層が縮小し、チャネル領域に電流を流すことができるようになる第1のゲート電極13Aの閾値電圧を第1の閾値電圧とし、第2のゲート電極13Bの下側においてチャネル領域中に広がる空乏層が縮小し、チャネル領域に電流を流すことができるようになる第2のゲート電極13Bの閾値電圧を第2の閾値電圧とする。また、第1のp型半導体層12Aと第2のp型半導体層12Bとの間の距離は、第1のオーミック電極11A及び第2のオーミック電極11Bに印加される最大電圧に耐えられるように構成する。第1のオーミック電極11Aと第1のゲート電極13Aとの間にゲート駆動信号(すなわち、第一ゲート端子2への制御信号)を入力するようになっている。第2のオーミック電極11Bと第2のゲート電極13Bとの間も同様にゲート駆動信号(すなわち、第二ゲート端子3への制御信号)を入力するようになっている。なお、ドレイン端子4は第1のオーミック電極11Aに接続され、ソース端子5は第2のオーミック電極11Bに接続され、第一ゲート端子2は第1のゲート電極13Aに接続され、第二ゲート端子3は第2のゲート電極13Bに接続されている。
【0023】
次に、双方向スイッチ1の動作について説明する。説明のため、第1のオーミック電極11Aの電位を0Vとし、第一ゲート端子2に印加する電圧をVg1、第二ゲート端子3に印加する電圧をVg2、第2のオーミック電極11Bと第1のオーミック電極11Aとの間の電圧をVs2s1、第2のオーミック電極11Bと第1のオーミック電極11Aとの間に流れる電流をIs2s1とする。
【0024】
V4がV1よりも高い場合、例えば、V4が+100Vで、V1が0Vの場合において、第一ゲート端子2と第二ゲート端子3の入力電圧であるVg1及びVg2をそれぞれ第1の閾値電圧及び第2の閾値電圧以下の電圧、例えば0Vとする。これにより、第1のp型半導体層12Aから広がる空乏層が、チャネル領域中を第2のp型GaN層の方向へ向けて広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができる。従って、V4が正の高電圧であっても、第2のオーミック電極11Bから第1のオーミック電極11Aへ流れる電流を遮断する遮断状態を実現できる。一方、V4がV1よりも低い場合、例えばV4が−100Vで、V1が0Vの場合においても、第2のp型半導体層12Bから広がる空乏層が、チャネル領域中を第1のp型半導体層12Aの方向へ向けて広がり、チャネルに流れる電流を遮断することができる。このため、第2のオーミック電極11Bに負の高電圧が印加されている場合においても、第1のオーミック電極11Aから第2のオーミック電極11Bへ流れる電流を遮断することができる。すなわち、双方向スイッチ1の双方向の電流を遮断することが可能となる。
【0025】
以上のような構造及び動作において、耐圧を確保するためのチャネル領域を第1のゲート電極13Aと第2のゲート電極13Bとが共有する。この素子は、1素子分のチャネル領域の面積で双方向スイッチ1が実現可能であり、双方向スイッチ1全体を考えると、2つのダイオードと2つのノーマリーオフ型のAlGaN/GaN−HFETとを用いた場合と比べてチップ面積をより少なくすることができ、双方向スイッチ1の低コスト化及び小型化が可能となる。
【0026】
次に、第一ゲート端子2、第二ゲート端子3の入力電圧であるVg1及びVg2が、それぞれ第1の閾値電圧及び第2の閾値電圧よりも高い電圧、例えば5Vの場合には、第1のゲート電極13A及び第2のゲート電極13Bに印加される電圧は、共に閾値電圧よりも高くなる。従って、第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bからチャネル領域に空乏層が広がらないため、チャネル領域は第1のゲート電極13Aの下側においても、第2のゲート電極13Bの下側においてもピンチオフされない。その結果、第1のオーミック電極11Aと第2のオーミック電極11Bとの間に双方向に電流が流れる導通状態を実現できる。
【0027】
次に、Vg1を第1の閾値電圧よりも高い電圧とし、Vg2を第2の閾値電圧以下とした場合の動作について説明する。第一ゲート端子2、第二ゲート端子3を備えた双方向スイッチ1を等価回路で表すと図2(a)に示すように第1のトランジスタ15と第2のトランジスタ16とが直列に接続された回路とみなすことができる。この場合、第1のトランジスタ15のソース(S)が第1のオーミック電極11A、第1のトランジスタ15のゲート(G)が第1のゲート電極13Aに対応し、第2のトランジスタ16のソース(S)が第2のオーミック電極11B、第2のトランジスタ16のゲート(G)が第2のゲート電極13Bに対応する。このような回路において、例えば、Vg1を5V、Vg2を0Vとした場合、Vg2が0Vであるということは第2のトランジスタ16のゲートとソースが短絡されている状態と等しいため、双方向スイッチ1は図2(b)に示すような回路とみなすことができる。
【0028】
さらに、図2(b)に示す第2のトランジスタ16のソース(S)をA端子、ドレイン(D)をB端子、ゲート(G)をC端子として説明を行う。図に示すB端子の電位がA端子の電位よりも高い場合には、A端子がソースでB端子がドレインであるトランジスタとみなすことができ、このような場合、C端子(ゲート)とA端子(ソース)との間の電圧は0Vであり、閾値電圧以下のため、B端子(ドレイン)からA端子(ソース)に電流は流れない。一方、A端子の電位がB端子の電位よりも高い場合には、B端子がソースでA端子がドレインのトランジスタとみなすことができる。このような場合、C端子(ゲート)とA端子(ドレイン)との電位が同じであるため、A端子の電位がB端子を基準として閾値電圧以下の場合にはA端子(ドレイン)からB端子(ソース)へ電流を通電しない。A端子の電位がB端子を基準として閾値電圧以上となると、ゲートにB端子(ソース)を基準として閾値電圧以上の電圧が印加され、A端子(ドレイン)からB端子(ソース)へ電流を流すことができる。つまり、トランジスタのゲートとソースとを短絡させた場合、ドレインがカソードでソースがアノードのダイオードとして機能し、その順方向立上り電圧はトランジスタの閾値電圧となる。そのため、図2(a)に示す第2のトランジスタ16の部分は、ダイオードとみなすことができ、図2(c)に示すような等価回路となる。図2(c)に示す等価回路において、双方向スイッチ1のドレイン端子4の電位がソース端子5の電位よりも高い場合、第1のトランジスタ15の第一ゲート端子2に5Vが印加されている場合には、第1のトランジスタ15はオン状態であり、S2からS1へ電流を流すことが可能となる。ただし、ダイオードの順方向立上り電圧によるオン電圧が発生する。また、双方向スイッチ1のS1の電位がS2の電位よりも高い場合、その電圧は第2のトランジスタ16からなるダイオードが担い、双方向スイッチ1のS1からS2へ流れる電流を阻止する。つまり、第一ゲート端子2に閾値電圧以上の電圧を与え、第二ゲート端子3に閾値電圧以下の電圧を与えることにより、いわゆる双方向素子をオンした状態とドレイン側にダイオードのカソード側を直列接続した動作が可能なスイッチが実現できる。
【0029】
図3は、双方向スイッチ1のVs2s1とIs2s1との関係であり、(a)は、Vg1とVg2とを同時に変化させた場合を示し、(b)はVg2を第2の閾値電圧以下の0Vとし、Vg1を変化させた場合を示し、(c)はVg1を第1の閾値電圧以下の0VとしてVg2を変化させた場合を示している。なお、図3において横軸であるS2−S1間電圧(Vs2s1)は、第1のオーミック電極11Aを基準とした電圧であり、縦軸であるS2−S1間電流(Is2s1)は第2のオーミック電極11Bから第1のオーミック電極11Aへ流れる電流を正としている。図3(a)に示すように、Vg1及びVg2が0Vの場合及び1Vの場合には、Vs2s1が正の場合にも負の場合にもIs2s1は流れず、双方向スイッチ1は遮断状態となる。また、Vg1とVg2とが共に閾値電圧よりも高くなると、Vs2s1に応じてIs2s1が双方向に流れる導通状態となる。一方、図3(b)に示すように、Vg2を第2の閾値電圧以下の0Vとし、Vg1を第1の閾値電圧以下の0Vとした場合には、Is2s1は双方向に遮断される。しかし、Vg1を第1の閾値電圧以上の2V〜5Vとした場合には、Vs2s1が1.5V未満の場合にはIs2s1が流れないが、Vs2s1が1.5V以上になるとIs2s1が流れる。つまり、第2のオーミック電極11Bから第1のオーミック電極11Aにのみに電流が流れ、第1のオーミック電極11Aから第2のオーミック電極11Bには電流が流れない逆阻止状態となる。また、Vg1を0Vとし、Vg2を変化させた場合には図3(c)に示すように、第1のオーミック電極11Aから第2のオーミック電極11Bにのみに電流が流れ、第2のオーミック電極11Bから第1のオーミック電極11Aには電流が流れない逆阻止状態となる。
【0030】
以上より、双方向スイッチ1は、そのゲートバイアス条件により、双方向の電流を遮断・通電する機能を有すると共に、ダイオード動作も可能であり、そのダイオードの電流が通電する方向も切り換えることができる。以上、説明したように双方向スイッチ1の第一ゲート端子2と第二ゲート端子3のオンあるいはオフ条件に応じて、図4示す4つの動作モードで動作することができる。すなわち、前記第一ゲート端子2のみをオンすると、前記ドレイン端子4から前記ソース端子5間に向けてオン状態の双方向デバイスと逆方向ダイオードが直列接続された半導体として動作する第一モード、前記第二ゲート端子3のみをオンすると、前記ドレイン端子4から前記ソース端子5間に向けて順方向ダイオードとオン状態の双方向デバイスが直列接続された半導体として動作する第二モード、前記第一ゲート端子2および前記第二ゲート端子3をオンすると、前記ドレイン端子4から前記ソース端子5間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作する第三モード、前記第一ゲート端子2および前記第二ゲート端子3をオフすると順逆双方向に電流を遮断する第四モードを有するものである。本構造はJFETに類似しているが、キャリア注入を意図的に行うという点で、ゲート電界によりチャネル領域内のキャリア変調を行うJFETとは全く異なった動作原理により動作する。具体的には、ゲート電圧が3VまではJFETとして動作するが、pn接合のビルトインポテンシャルを超える3V以上のゲート電圧が印加された場合には、ゲートに正孔が注入され、前述したメカニズムにより電流が増加し、大電流且つ低オン抵抗の動作が可能となる。
【0031】
また、双方向スイッチ1は、第1のゲート電極13Aがp型の導電性を有する第1のp型半導体層12Aの上に形成され、第2のゲート電極13Bがp型の導電性を有する第2のp型半導体層12Bの上に形成されている。このため、第1の半導体層と第2の半導体層との界面領域に生成されるチャネル領域に対して、第1のゲート電極13A及び第2のゲート電極13Bから順方向のバイアスを印加することにより、チャネル領域内に正孔を注入することができる。窒化物半導体においては正孔の移動度は、電子の移動度よりもはるかに低いため、チャネル領域に注入された正孔は電流を流す担体としてほとんど寄与しない。このため、第1のゲート電極13A及び第2のゲート電極13Bから注入された正孔は同量の電子をチャネル領域内に発生させるので、チャネル領域内に電子を発生させる効果が高くなり、ドナーイオンのような機能を発揮する。つまり、チャネル領域内においてキャリア濃度の変調を行うことが可能となるため、動作電流が大きいノーマリーオフ型の窒化物半導体層双方向スイッチを実現することが可能となる。
【0032】
次に、高電位側に単方向スイッチ17(例えばMOSFET)を配し、低電位側に双方向スイッチ1を配したハーフブリッジ回路18を並列に配してなる双方向スイッチ1を使用した単相インバータ19の構成について、図5を参照しながら説明する。図に示すように、単相インバータ19は、双方向スイッチ1a、1cを低電位側に接続し、高電位側には単方向スイッチ17b、17dを接続して、各第一ゲート端子2a、2c、各第二ゲート端子3a、3c、単方向スイッチ17b、17dのゲート端子20b、20dへの各信号を制御する制御部21を備えている。また、第一ゲート端子2a、2c、第二ゲート端子3a、3cおよびゲート端子20b、20dの駆動は、唯一の電源として備えたゲート駆動電源22で行なえるように構成している。その動作について、以下説明する。双方向スイッチ1a、1cが各々第二ゲート端子3a、3cをオンした際に第一ゲート端子2a、2cへの駆動電流の供給および接続された電力蓄積部としてのコンデンサ23a〜23dに充電されるようになっている。つまり、コンデンサ23a、23cは、それぞれ低電位側を各ハーフブリッジ回路18a、18bの負荷への出力点30、31に接続し、高電位側をゲート駆動電源22側に接続している。また、コンデンサ23b、23dもそれぞれ同様に出力点30、31に接続し、高電位側はダイオード32、33を介してゲート駆動電源22側に接続している。つまり、コンデンサ23b、23dは、コンデンサ23a、23dの高電位側に対して、それぞれダイオード32、33を介して接続されている。そして、双方向スイッチ1a、1cの第二ゲート端子3a、3cをオンした際にコンデンサ23a〜23dへ充電するように構成している。また、充電されたコンデンサ23a、23cの電力は、高電位側に配した単方向スイッチ17b、17dの駆動電力として使用し、コンデンサ23b、23dは、低電位側に配した双方向スイッチ1a、1cの第一ゲート端子2a、2cを駆動するための電力として使用する。ここで、双方向スイッチ1a、1cの第一ゲート端子2a、2cは常時オンするような構成であり、単方向スイッチ17b、17dのゲート端子20b、20dの駆動電力に対して、オンしている期間が長いことから、コンデンサ23a、23cの容量に対して、コンデンサ23b、23dは、より大きい容量(少なくともコンデンサ23a、23cの容量に対して、単方向スイッチ17b、17dのゲート消費電力と双方向スイッチ1a、1cの比率を乗算し、その比例演算した結果に対して1.5〜3倍の容量)としている。双方向スイッチ1a、1cおよび単方向スイッチ17b、17dのスイッチングを制御することでインバータ出力に任意の波形を生成することが可能となる。
【0033】
また、双方向スイッチ1a、1cは、単相インバータ19の出力側に誘導性負荷が接続され、還流電流を流す場合、単方向スイッチ17bあるいは17dがターンオフするよりも以前に第一ゲート端子2aあるいは2cをターンオンするように制御部21から信号出力するようになっている。第一ゲート端子2aあるいは2cをターンオンさせることを先に行なうため、誘導負荷接続時の還流電流は、単方向スイッチ17b、あるいは17dのターンオフにより電流経路を遮断された場合であっても、通流させる経路を確保することができることとなる。さらに、双方向スイッチ1a、1cは、少なくとも単方向スイッチ17b、17dがターンオフした後に第二ゲート端子3a、3cをターンオンするように制御部21から信号出力するようになっている。第二ゲート端子3aあるいは3cをターンオンさせることを後に行なうため、単方向スイッチ17b、17dと双方向スイッチ1a、1cの導通状態の重複、すなわちアーム短絡状態を回避することができることとなる。
【0034】
さらに、第一ゲート端子2a、2cに接続したコンデンサ23b、23dは第一ゲート端子2a、2cが常時オンさせるため、電力消費が大きくなり、電圧が低下することで、第一ゲート端子2a、2cをターンオンできなくなる恐れがあるしかし、双方向スイッチ1a、1cに対して還流電流が流れる際に第二ゲート端子3a、3cをターンオンさせることで、双方向スイッチ1a、1cは双方向の導通状態となって、コンデンサ23b、23dの低電位側はゲート駆動電源の低電位側と導通させることができ、ゲート駆動電源22からの充電経路を生成することができる。これにより電圧低下を避けることができ、コンデンサ23b、23dは充分な蓄積容量を確保することができることとなる。
【0035】
また、この双方向スイッチ1a、1cに対して還流電流が流れる際に第二ゲート端子3a、3cをターンオンさせる制御は、コンデンサ23b、23dへの充電する頻度を高めることを意図しており、還流電流が流れるタイミングで双方向スイッチ1a、1cの変調を決定する制御に相当するものである。
【0036】
このような構成によれば、ゲート駆動電源を唯一の電源とすることにより、ゲート駆動のための電源を簡略化することができ、絶縁電源を複数個構成する必要がなく、構成する部品が減少することとなるので、ゲート駆動電源の低コスト化を図ることができる。
【0037】
また、コンデンサ23b、23dは、それぞれダイオード32、32を介してゲート駆動電源22に側に接続されていることで、蓄積された電力は第一ゲート端子2a、2cの駆動にのみ使用されることとなるので、双方向スイッチ1a、1cの第一ゲート端子2a、2cをより安定してオン状態に保つことができる。
【0038】
また、コンデンサ23b、23dは、コンデンサ23a、23dの高電位側に対して、それぞれダイオード32、33を介して接続されていることにより、コンデンサ23a、23dからも電力の供給を受けることもできるので、蓄積容量を確保することが容易になる。
【0039】
なお、実施の形態において、単相インバータ構成にて説明したが、三相インバータ構成であっても良い。
【0040】
(実施の形態2)
図6において、図5と同様の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0041】
図6は、空調ファン用として構成した単方向スイッチ17と双方向スイッチ1を組み合わせた三相インバータ24を示し、図6において双方向スイッチ1a、1c、1eは、並列にダイオード25a、25b、25cを備え、三相インバータ24の出力側にモータ等の誘導負荷が接続された際に流れる還流電流を流す経路を確保できることとなる。初期立ち上げ時には、双方向スイッチ1a、1c、1eの第一ゲート端子2a、2c、2eに接続したコンデンサ23b、23d、23fは充電されていないため、第一ゲート端子2a、2c、2eをターンオンさせることはできず、還流電流は25a、25b、25c側を流れるが、出力周波数が上昇した際には、コンデンサ23b、23d、23fへの充放電が可能となることより、双方向スイッチ1a、1c、1f側を還流電流が流れることとなる。
【0042】
上記構成において、初期立ち上げ時にゲート端子に電源供給できない状態にあっても通電する経路が確保することとなるので、特別な初期立ち上げ処理を不要とし、簡単な構成で低コスト化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明にかかる単相あるいは三相インバータおよびそれを用いた空気調和機は、インバータのゲート駆動電源を唯一の電源による構成とすることを可能とするものであるので、空気調和機に使用されるモータ駆動部の低損失化を図りつつ、低コスト化を図るためのインバータとして有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 双方向スイッチ
1a、1c、1e 双方向スイッチ
2 第一ゲート端子
2a、2c、2e 第一ゲート端子
3 第二ゲート端子
3a、3c 第二ゲート端子
4 ドレイン端子
5 ソース端子
6 基板
7 バッファ層
8 半導体層積層体
9 GaN層
10 AlGaN層
11A 第1のオーミック電極
11B 第2のオーミック電極
12A 第1のp型半導体層
12B 第2のp型半導体層
13A 第1のゲート電極
13B 第2のゲート電極
14 保護膜
15 第1のトランジスタ
16 第2のトランジスタ
17 単方向スイッチ
17b、17d 単方向スイッチ
18 ハーフブリッジ回路
18a、18b ハーフブリッジ回路
19 単相インバータ
20b、20d ゲート端子
21 制御部
22 ゲート駆動電源
23a〜23f コンデンサ
24 三相インバータ
25a、25b、25c ダイオード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電位側に単方向スイッチを配し、低電位側に双方向スイッチを配したハーフブリッジ回路を並列に配してなる単相あるいは三相インバータであって、前記双方向スイッチは、基板の上に形成されたチャネルを有する半導体層積層体と、前記半導体層積層体の上に互いに間隔をおいて形成された第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極との間に、前記第1のオーミック電極側から順に形成された、第1のゲート電極及び第2のゲート電極と、前記半導体層積層体と第1のゲート電極との間に形成された第1のp型半導体層と、前記半導体層積層体と第2のゲート電極との間に形成された第2のp型半導体とを有し、前記第1のオーミック電極と前記第1のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第一ゲート端子と、前記第2のオーミック電極と前記第2のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第二ゲート端子と、前記第1のオーミック電極に接続されたドレイン端子と、前記第2のオーミック電極に接続されたソース端子を備え、前記第一ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けてオン状態の双方向デバイスと逆方向ダイオードが直列接続された半導体として動作する第一モード、前記第二ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けて順方向ダイオードとオン状態の双方向デバイスが直列接続された半導体として動作する第二モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作する第三モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオフすると順逆双方向に電流を遮断する第四モードを有し、前記単方向スイッチおよび双方向スイッチのゲート駆動電源は、唯一の電源にて構成することを特徴とする単相あるいは三相インバータ。
【請求項2】
単方向スイッチと双方向スイッチの第一ゲート端子の駆動電源としての電力蓄積部は、それぞれ設け、低電位側をハーフブリッジ回路の負荷への出力点に接続、高電位側を電源側に接続し、前記双方向スイッチの第一ゲート端子駆動電源として電力蓄積部は、前記単方向スイッチの駆動電源にダイオードを介して接続した請求項1記載の単相あるいは三相インバータ。
【請求項3】
単方向スイッチと双方向スイッチの第一ゲート端子の駆動電力源としての電力蓄積部は、低電位側を各ハーフブリッジ回路の負荷への出力点に接続、高電位側を電源に接続し、第二ゲート端子をオンした際に前記電力蓄積部へ充電する構成とした請求項1記載の単相あるいは三相インバータ。
【請求項4】
双方向スイッチの第一ゲート端子は常時オンとなるように制御する構成とした請求項1記載の単相あるいは三相インバータ。
【請求項5】
双方向スイッチは、単相あるいは三相インバータの出力側に誘導性負荷が接続され、還流電流を流す場合、少なくとも単方向スイッチがターンオフするよりも以前に第一ゲート端子をターンオンするように制御する構成とした請求項1記載の単相あるいは三相インバータ。
【請求項6】
双方向スイッチは、単相あるいは三相インバータの出力側に誘導性負荷が接続され、還流電流を流す場合、少なくとも単方向スイッチがターンオフした後に第二ゲート端子をターンオンさせる構成とした請求項1記載の単相あるいは三相インバータ。
【請求項7】
電力蓄積部への充電頻度を高めるように双方向スイッチの変調を決定する構成とした請求項1記載の単相あるいは三相インバータ。
【請求項8】
双方向スイッチと並列にダイオードを配し、ソース端子側にアノードを接続し、ドレイン側にカソードを接続した請求項1から7のいずれか一つに記載の単相あるいは三相インバータ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一つに記載の単相あるいは三相インバータを用いた空気調和機。
【請求項1】
高電位側に単方向スイッチを配し、低電位側に双方向スイッチを配したハーフブリッジ回路を並列に配してなる単相あるいは三相インバータであって、前記双方向スイッチは、基板の上に形成されたチャネルを有する半導体層積層体と、前記半導体層積層体の上に互いに間隔をおいて形成された第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極との間に、前記第1のオーミック電極側から順に形成された、第1のゲート電極及び第2のゲート電極と、前記半導体層積層体と第1のゲート電極との間に形成された第1のp型半導体層と、前記半導体層積層体と第2のゲート電極との間に形成された第2のp型半導体とを有し、前記第1のオーミック電極と前記第1のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第一ゲート端子と、前記第2のオーミック電極と前記第2のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第二ゲート端子と、前記第1のオーミック電極に接続されたドレイン端子と、前記第2のオーミック電極に接続されたソース端子を備え、前記第一ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けてオン状態の双方向デバイスと逆方向ダイオードが直列接続された半導体として動作する第一モード、前記第二ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けて順方向ダイオードとオン状態の双方向デバイスが直列接続された半導体として動作する第二モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作する第三モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオフすると順逆双方向に電流を遮断する第四モードを有し、前記単方向スイッチおよび双方向スイッチのゲート駆動電源は、唯一の電源にて構成することを特徴とする単相あるいは三相インバータ。
【請求項2】
単方向スイッチと双方向スイッチの第一ゲート端子の駆動電源としての電力蓄積部は、それぞれ設け、低電位側をハーフブリッジ回路の負荷への出力点に接続、高電位側を電源側に接続し、前記双方向スイッチの第一ゲート端子駆動電源として電力蓄積部は、前記単方向スイッチの駆動電源にダイオードを介して接続した請求項1記載の単相あるいは三相インバータ。
【請求項3】
単方向スイッチと双方向スイッチの第一ゲート端子の駆動電力源としての電力蓄積部は、低電位側を各ハーフブリッジ回路の負荷への出力点に接続、高電位側を電源に接続し、第二ゲート端子をオンした際に前記電力蓄積部へ充電する構成とした請求項1記載の単相あるいは三相インバータ。
【請求項4】
双方向スイッチの第一ゲート端子は常時オンとなるように制御する構成とした請求項1記載の単相あるいは三相インバータ。
【請求項5】
双方向スイッチは、単相あるいは三相インバータの出力側に誘導性負荷が接続され、還流電流を流す場合、少なくとも単方向スイッチがターンオフするよりも以前に第一ゲート端子をターンオンするように制御する構成とした請求項1記載の単相あるいは三相インバータ。
【請求項6】
双方向スイッチは、単相あるいは三相インバータの出力側に誘導性負荷が接続され、還流電流を流す場合、少なくとも単方向スイッチがターンオフした後に第二ゲート端子をターンオンさせる構成とした請求項1記載の単相あるいは三相インバータ。
【請求項7】
電力蓄積部への充電頻度を高めるように双方向スイッチの変調を決定する構成とした請求項1記載の単相あるいは三相インバータ。
【請求項8】
双方向スイッチと並列にダイオードを配し、ソース端子側にアノードを接続し、ドレイン側にカソードを接続した請求項1から7のいずれか一つに記載の単相あるいは三相インバータ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一つに記載の単相あるいは三相インバータを用いた空気調和機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2011−160559(P2011−160559A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20067(P2010−20067)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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