説明

単票処理装置

【課題】 単票搬送路内の単票の検出精度を向上させ、処理内容の正確性を高めた単票処理装置を提供する。
【解決手段】 単票待機位置P1に待機させた単票に、印字位置Ppで印字する際、待機位置センサShの検出結果にかかわらず、搬送ローラR10,R11を吸入方向Diに回転させ、単票センサStで単票を検出する。単票センサStで所定時間以上単票を検出しない場合、単票が存在しないものと判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単票に任意の処理をする単票処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、通帳及び単票に印字することが可能な単票・通帳プリンタが使用されている。通常の単票・通帳プリンタは、単票挿入口と通帳挿入口を別個に備え、単票挿入口と通帳挿入口は、各々単票搬送路と通帳搬送路に接続している。この構造により、単票・通帳プリンタは、単票と通帳を同時に単票・通帳プリンタ内に取り込むことを可能としている。単票挿入口と通帳挿入口から挿入された単票や通帳は、各々単票搬送路と通帳搬送路を介して、単票・通帳プリンタ内の印字装置により印字可能な位置(以下、「印字位置」と呼ぶ)に搬送される。
【0003】
単票・通帳プリンタは、単票と通帳に印字可能であるが、印字装置は1つであるため、単票と通帳の両方に同時に印字することは不可能である。そのため、通帳への印字処理中は、単票を単票搬送路中の所定の待機位置に保持する。ところで、単票・通帳プリンタを小型化するために、単票搬送路は短く設計されており、待機位置に存在する単票は、一端を単票挿入口から露出させることもある。
【0004】
そのため、単票は印字処理に備えて待機しているにもかかわらず、オペレータが単票への印字処理は済んだものと誤解して、単票を単票・通帳プリンタから引き抜く可能性がある。言い換えれば、単票が印字処理前に待機位置に存在しなくなることがある。そのため、単票への印字処理前に待機位置に単票が存在するか否かを光学センサで検出し、存在するか否かにより、次の処理内容を決定していた。以下、ここでいう光学センサは、単票が待機位置に存在するか否かを検出するセンサであるから、待機位置センサと呼ぶ。
【0005】
【特許文献1】特開2001−240266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、待機位置センサの検出結果が誤っている場合があった。以下、待機位置センサの検出結果が誤りになる2つの例を図7と図8によって示す。図7は、単票搬送路内に存在する単票を示す説明図である。図7(a)は待機位置に存在する単票10の正面図である。単票10には、貫通孔11aと貫通孔11bがある。図7(b)は、図7(a)の単票10の側面図である。図7(a)の黒点Shaは、図7(b)における待機位置センサShAの読み取り箇所を示している。
【0007】
図7(c)は、単票搬送路110Aの待機位置に存在する単票10を示した説明図である。ここで、矢印A1で示す方向に単票10が引かれた場合、単票10は待機位置からずれる。以下、単票が待機位置からずれることを単に位置ずれという。
【0008】
図7(d)と図7(e)は、位置ずれが生じた後の、単票10と待機位置センサShAの位置関係を示す説明図である。図7(d)は単票10の正面図であり、図7(e)は単票10の側面図である。図7(d)と図7(e)では、単票10が待機位置からずれることにより、待機位置センサShAの読み取り箇所Shaが、丁度、単票10の貫通孔11aの位置になっている。この場合、待機位置センサShAは、単票搬送路110A内に単票10が存在しても単票10を検出しないで、単票は「無」という検出結果を出す。つまり、待機位置センサShAの検出結果は誤りになる。
【0009】
図8は、単票搬送路内に存在する単票を示す説明図である。図8(a)は待機位置に存在する単票20の正面図である。この単票20はミシン目22を備えており、ミシン目22で、手によっても簡単に単票20を分断することができるようになっている。
【0010】
図8(b)は、図8(a)の単票20の側面図である。図8(c)は、単票搬送路110Aの待機位置に存在する単票20を示した説明図である。ここで、矢印A2で示す方向に単票20が引かれた場合、単票20はミシン目22で単票の左部分20aと単票の右部分20bに分断される場合もある。
【0011】
図8(c)は、単票20が分断された場合を示す説明図である。図8(c)では、単票20が分断されることにより、待機位置センサShAの読み取り箇所Shaが、左部分20aと右部分20bの間の隙間を通っている。この場合、待機位置センサShAは単票搬送路110A内に単票20が存在しても単票20を検出しないで、単票は「無」という検出結果を出す。つまり、待機位置センサShAの検出結果は誤りになる。
【0012】
このように、待機位置センサShAの検出結果に誤りがあると、待機位置センサShAの検出結果に従って行われる次の処理内容にも誤りが生じる可能性がある。例えば、実際には単票が存在しても、待機位置センサShAの検出結果が単票は「無」と示していることを信じて単票の挿入を要求して、単票が挿入されると、複数の単票が単票搬送路内に存在することになり、障害が発生する恐れがある。障害が発生すると、障害発生前に行なった全ての処理を取り消し、再度始めから処理を行なう必要があるため、手間がかかる。
【0013】
こういった、待機位置センサShAの検出精度に関する問題は、単票・通帳プリンタに限らず、一般に、単票に所定の処理をする単票処理装置に共通の問題であった。
【0014】
本発明は、上記した問題点を解決するためになされたものであり、単票搬送路内の単票の検出精度を向上させて、単票処理装置の誤動作の可能性を低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題の少なくとも一部を解決するため、本発明による単票処理装置は、単票の挿入口を備えた単票搬送路と、前記単票搬送路内の単票を搬送する搬送装置と、前記単票搬送路に設けられ、前記単票搬送路内の所定の処理位置に存在する単票に所定の処理を行なう処理装置と、前記単票搬送路内の所定の待機位置近傍に存在する単票の有無を検出するための単票検出装置と、前記待機位置から前記処理位置への単票の搬送を開始する際に、前記単票検出装置による単票検出の有無にかかわらず、前記搬送装置を所定量動作させて前記単票検出装置によって単票が検出されるか否かを調べる検出結果取得部と、前記検出結果取得部が調べた結果、単票が検出された場合には当該単票を前記処理位置に搬送させて前記処理装置に前記処理を実行させるとともに、単票が検出されない場合には所定の非検出対応処理を実行する処理実行部とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、単票検出の有無にかかわらず搬送装置を所定量動作させて単票の有無を検出するので、動作前には検出されなかった単票の有無も含めて検出することが可能である。つまり、単票の検出精度を向上させ、単票処理装置の誤動作の可能性を低減することができる。
【0017】
前記単票検出装置は、前記待機位置に単票が存在するか否かを検出する第1の単票検出装置と、前記待機位置よりも前記処理位置に近い位置に設けられた第2の単票検出装置とを含み、前記検出結果取得部は、前記単票の搬送を開始する際に、前記第1の単票検出装置による単票検出の有無にかかわらず、前記搬送装置を所定量動作させて前記第2の単票検出装置によって単票が検出されるか否かを調べるものとしても良い。
【0018】
これによれば、待機位置から処理位置へ向かう方向に搬送装置を動作させ、単票が検出されるか否かを調べるので、単票が検出された場合、検出された単票を検出された位置からそのまま処理位置まで搬送可能である。つまり、単票処理装置の動作を簡便にすることができる。
【0019】
前記待機位置は、前記挿入口から前記処理位置までの間であって、前記非検出対応処理は、単票が前記挿入口の方向に移動するように前記搬送装置を動作させる処理であるものとしても良い。
【0020】
搬送装置を動作させても、単票が小さいなどの理由により、処理位置に向かう方には単票が搬送されず、単票検出装置により検出されない場合もある。このような単票も、処理位置と反対方向の挿入口の方には搬送可能であることもある。もし単票を挿入口の方へ搬送できれば、ユーザが単票の存在を直接確認することができる。
【0021】
上記した単票処理装置であって、前記非検出対応処理は、前記単票を前記挿入口から挿入することを示唆する情報を出力する処理であるものとしても良い。
【0022】
これによれば、単票の挿入を促すことができる。単票が挿入されれば、単票への処理を続行することも可能になる。
【0023】
なお本発明は種々の形態で実現可能であり、例えば、単票処理装置を制御する方法または単票処理装置の機能を実現させるためのコンピュータプログラム、そのプログラムを記録した記録媒体等の形態で実現可能である。
【0024】
本発明をコンピュータプログラムまたはそのプログラムを記録した記録媒体等として構成する場合には、単票処理を制御するプログラム全体として構成するものとしてもよいし、本発明の機能を果たす部分のみを構成するものとしてもよい。また、記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印字された印字物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置などコンピュータが読み取り可能な種々の媒体を利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、単票処理装置の実施例としての単票・通帳プリンタ100を示す説明図である。単票・通帳プリンタ100は、内部に印字キャリアモータPM及び印字ヘッドPHを備えており、単票または通帳に印字可能な装置である。印字キャリアモータPM及び印字ヘッドPHは、本発明の処理装置に相当する。ここでいう通帳は、銀行の預金通帳などであり、単票は、B6サイズ〜A4サイズの多様な種類の単票である。多様な種類の単票の中には、上記した貫通孔11a,11bがある単票10やミシン目22がある単票20も含まれる。
【0026】
単票・通帳プリンタ100は、単票挿入口111を備えた単票搬送路110と、通帳挿入口121を備えた通帳搬送路120と、共通搬送路130を備えている。
【0027】
単票・通帳プリンタ100は、更に、搬送路切替ソレノイドSn及び搬送路切替板Ptを備えている。搬送路切替ソレノイドSnは、搬送路切替板Ptを動かして、図の実線で示す単票搬送状態または図の破線で示す通帳搬送状態で静止させる。搬送路切替板Ptが単票搬送状態の際には、単票搬送路110と共通搬送路130が接続する。そして、通帳搬送路120は、単票搬送路110や共通搬送路130と接続しない。接続した状態の単票搬送路110と共通搬送路130が、本発明の単票搬送路に相当する。一方、搬送路切替板Ptが通帳搬送状態の際には、通帳搬送路120と共通搬送路130が接続する。そして、単票搬送路110は、通帳搬送路120や共通搬送路130と接続しない。
【0028】
単票・通帳プリンタ100は、更に、搬送モータRM及び搬送ローラR10,R11,R20,R21,R30,R31(以下、単に搬送ローラRnと呼ぶ)を備えている。単票・通帳プリンタ100は、搬送モータRMを駆動させて得られる動力により、搬送ローラRnを、吸入方向Diまたは排出方向Doに回転させる。
【0029】
なお、搬送路切替板Ptが単票搬送状態の際には、搬送ローラR10,R11,R30,R31のみが回転し、搬送ローラR20,R21は回転しない。また、搬送路切替板Ptが通帳搬送状態の際には、搬送ローラR20,R21,R30,R31のみが回転し、搬送ローラR10,R11は回転しない。但し、搬送路切替板Ptの状態にかかわらず、すべての搬送ローラRnが回転するものとしても良い。搬送モータRM及びローラR10,R11,R30,R31は、本発明の搬送装置に相当する。
【0030】
単票・通帳プリンタ100は、更に、待機位置センサShと、単票センサStと、印字位置センサSpを備えている。待機位置センサShは、本発明の第1の単票検出装置に相当し、単票センサStは、本発明の第2の単票検出装置に相当する。各センサは、図の点線で示す読み取り箇所に単票が存在する場合に単票が「有」と検出し、存在しない場合に単票は「無」と検出する。
【0031】
単票・通帳プリンタ100は、更に、単票吸入要求表示器151と通帳吸入要求表示器152を備えている。単票吸入要求表示器151と通帳吸入要求表示器152はランプである。単票・通帳プリンタ100は、ユーザに単票の挿入要求をする際、単票吸入要求表示器151を点灯させ、通帳の挿入要求をする際、通帳吸入要求表示器152を点灯させる。単票吸入要求表示器151は、ランプに限らず、単票を挿入口から挿入することを示唆する情報を出力するものであれば良く、「単票を挿入してください」といったメッセージを表示する表示器であっても良い。オペレータは、単票吸入要求表示器151が点灯していれば単票を、通帳吸入要求表示器152が点灯していれば通帳を、各挿入口から挿入する。
【0032】
図2は、単票・通帳プリンタ100の機能ブロックを示す説明図である。図示した機能ブロックの機能は、単票・通帳プリンタ100に備えられた図示しないCPUやメモリを用いて実現される。
【0033】
単票・通帳プリンタ100は、送受信制御部166を備える。送受信制御部166は、単票・通帳プリンタ100における上位装置200とのデータの送受信を制御する。ここでいう上位装置200とは、単票・通帳プリンタ100に対して、印字指示を出力する装置である。印字指示とは、少なくとも印字対象と印字内容と印字位置を指定する情報であり、単票・通帳プリンタ100は、この印字指示に従って印字処理を実行する。また、印字対象とは「単票」または「通帳」である。以下、印字対象が「単票」である印字指示を単票印字指示と呼び、印字対象が「通帳」である印字指示を通帳印字指示と呼ぶ。
【0034】
送受信制御部166は、上位装置200から印字指示を受信すると、印字指示を、単票・通帳プリンタ100内部で処理可能な情報に変換し、主制御部167に送信する。なお、印字指示は、上位装置200から受信するものに限らず、例えば、単票・通帳プリンタ100に直接入力されるものであっても構わない。
【0035】
主制御部167は、図示した機能ブロックの各制御機能を司る役割を果たしており、送受信制御部166から印字指示を受信すると、指示内容に従って、各機能ブロックに命令を出す。各機能ブロックは、主制御部167の命令に従い、以下の処理を行なう。
【0036】
出力部165は、単票吸入要求表示器151や通帳吸入要求表示器152を点灯させる。搬送制御部164は、各センサの検出結果を取得しつつ、搬送路切替ソレノイドSn及び搬送モータRMを制御し、単票や通帳を搬送する。本発明における検出結果取得部の機能は搬送制御部164が実現する。
【0037】
印字制御部170は、印字キャリアモータPMを制御し、画像作成部171は印字ヘッドPHを制御して、単票または通帳に印字する。本発明における処理実行部の機能は、搬送制御部164と、出力部165と、印字制御部170と、画像作成部171が実現する。
【0038】
図3は、単票・通帳プリンタ100における単票と通帳を交互に印字する機能(以下、交互印字機能と呼ぶ)を示す説明図である。交互印字機能は、上位装置200から、単票印字指示と通帳印字指示が交互に出力されることで実現される。図3(a)は、単票・通帳プリンタ100が単票吸入要求表示器151を点灯させ、ユーザにより単票が挿入された状態を示す説明図である。単票・通帳プリンタ100は、挿入された単票に印字するため、単票を印字位置Pp(図1の印字位置Pp参照)に搬送する。図3(b)は、単票が印字位置Ppに搬送された状態を示している。単票・通帳プリンタ100の搬送制御部164は、単票に印字後、搬送モータRMを制御して、単票を単票待機位置P1(図1の単票待機位置P1参照)まで搬送する。図3(c)は、単票が単票待機位置P1に搬送された状態を示している。
【0039】
ここで、引き続き通帳に印字するため、単票・通帳プリンタ100は、通帳吸入要求表示器152を点灯させ、通帳の挿入を要求する。図3(d)は、通帳吸入要求表示器152が点灯し、通帳が挿入された状態を示している。単票・通帳プリンタ100は、挿入された通帳に印字するため、図3(e)で示すように搬送路切替板Ptを通帳搬送状態にして、通帳を印字位置Pp(図1の印字位置Pp参照)に搬送する。図3(e)は、通帳が印字位置Ppに搬送された状態を示している。単票・通帳プリンタ100は、通帳に印字後、図3(f)で示すように通帳を通帳待機位置P2(図1の通帳待機位置P2参照)まで搬送する。
【0040】
ここで、図3(c)〜図3(f)のように、単票が単票待機位置P1に存在する場合は、単票が誤って引き抜かれるなどして、単票が単票待機位置P1に存在しなくなる恐れもある。そこで、単票・通帳プリンタ100は、単票印字指示を受信したら、単票が存在するか否かを確認してから印字処理に移行する、単票が存在するか否かを確認してから印字処理を行なう処理を単票印字処理と呼ぶ。
【0041】
図4は、単票印字処理を示すフローチャートである。送受信制御部166が、単票印字指示を受信すると(ステップS10)、搬送制御部161は、搬送路切替ソレノイドSnを制御して搬送路切替板Ptを単票搬送状態にさせる(ステップS20)。次に、搬送制御部161は、フラグFを0としてから(ステップS30)、待機位置センサShの検出結果を取得する。検出結果が「無」と示している場合は(ステップS40:NO)、フラグFを1とする(ステップS50)。フラグFは、後に使用する。詳しくは後述する。
【0042】
次に、搬送制御部161は、搬送モータRMを制御して搬送ローラR10,R11,R30,R31を吸入方向Diに回転させ(ステップS60)、単票センサStの検出結果を取得する。
【0043】
搬送制御部161は、取得した検出結果が、所定時間t1内に「無」から「有」に変化した場合(ステップS70:YES)、単票が存在すると判断し、搬送モータRMを制御して搬送ローラR10,R11,R30,R31を吸入方向Diに回転させ、単票を印字位置Ppまで搬送する(ステップS80)。ここで、搬送制御部161は、印字位置センサSpの検出結果を確認することにより、単票を印字位置Ppまで搬送したと判断する。搬送が終了したら、印字制御部170は、印字キャリアモータPMを制御し、画像作成部171は印字ヘッドPHを制御して、単票に印字する(ステップS90)。次に、搬送制御部161は、印字後の単票を単票待機位置P1に搬送する(ステップS100)。ここで、搬送制御部161は、待機位置センサShの検出結果を確認することにより、単票を単票待機位置P1まで搬送したと判断する。
【0044】
図5は、単票10について、図4における単票印字処理のステップ10〜ステップ100を行なった場合を示す説明図である。図5(a)と図5(b)は、処理が行なわれる前の単票10の状態を示す説明図である。この例では、処理が行なわれる前、図5(b)で示すように、単票10は単票待機位置P1付近に存在するが、図5(a)で示すように待機位置センサShの読み取り箇所と貫通孔11aの位置が一致している。この場合、待機位置センサShによって単票は「無」と検出される。
【0045】
ここで、単票印字処理を実行すると、ステップS60により、単票10は矢印5(図5(a))の方向に搬送される。すると、図5(c)と図5(d)で示すように、単票センサStの読み取り箇所に単票が存在するようになり、単票センサStの検出結果は「無」から「有」に変化する。ちなみに、所定時間t1としては、単票が存在すれば、単票センサStが単票を検出できるだけの十分な値が設定されている。単票センサStの検出結果は「無」から「有」に変化するので、ステップS70で「YES」となり、ステップS80とステップS90により、単票10に印字が行なわれる。つまり、ステップS40における待機位置センサShの検出結果にかかわらず、単票10が存在すれば、単票10に印字処理を行なうことができる。
【0046】
一方、図6は、単票20について、図4における単票印字処理を行なった場合を示す説明図である。図6(a)は、単票印字処理が行なわれる前の状態を示す説明図である。単票20は、ミシン目22で単票の左部分20aと単票の右部分20bに分断されている。この場合、図6(a)で示すように、左部分20aが実線で示される位置に存在すれば、待機位置センサShによって単票が「有」と検出される。また、左部分20aが点線で示される位置に存在すれば、待機位置センサShによって単票が「無」と検出される。
【0047】
図6(b)と図6(c)は、単票20について、図4における単票印字処理のステップS10〜ステップS100を行なった場合を示す説明図である。単票印字処理においては、待機位置センサShの検出結果にかかわらず、ステップS60の処理が実行される。ステップS60の処理を実行すると、図6(b)と図6(c)で示すように、単票20は矢印5aの方向に搬送される。しかし、右部分20bの長さL1は、搬送ローラR10と搬送ローラR11との間隔L2より短いので、右部分20bは搬送ローラR11まで届かず、単票センサStの読み取り箇所に至るまで搬送されない。つまり、所定時間t1内に単票センサStは「無」から「有」に変化しないので(ステップS110:NO)、単票20には、ステップS110以降が実行される。
【0048】
図4に戻り説明する。搬送制御部161は、取得した検出結果が、所定時間t1内に「無」から「有」に変化しなかった場合(ステップS70:NO,ステップS110:YES)、つまり、単票センサStにより単票が検出されない場合は、搬送モータRMを制御して、搬送ローラR10,R11,R30,R31を所定時間t2、排出方向Doに回転させ(ステップS120)、待機位置センサShの検出結果を取得する。出力部165は、搬送制御部161が取得した検出結果が、所定時間t2で「有」になった場合(ステップS130:YES)、単票を単票挿入口111まで搬送したものとして、単票吸入要求表示器151を点灯させ(ステップS140)、単票の再挿入を要求し、上位装置200に単票吸入待ち状態であることを報告する。
【0049】
図6(d)と図6(e)は、単票20について、図4における単票印字処理のステップS110以降の処理を行なった場合を示す説明図である。先に示した単票20において、ステップS120が実行されると、図6(d)で示すように右部分20bは矢印6の方向に搬送される。左部分20aも、右部分20bに押されて搬送される。そして、右部分20bは、図6(e)で示すように、単票挿入口111の位置に来る。左部分20aは、右部分20bに押されて、単票・通帳プリンタ100から排出されている。このとき、待機位置センサShの読み取り箇所に右部分20bが存在するので、待機位置センサShの検出結果は、所定時間t2内に「有」になる。よって、出力部165は、ステップS140を実行し、単票吸入要求表示器151を点灯させる。なお、出力部165は、単票を単票挿入口から挿入することを示唆する情報を出力するものであれば良く、「単票が分断されました。単票を張り合わせて再挿入してください」といったメッセージを表示させるものであっても良い。
【0050】
再度、図4に戻り説明する。出力部165は、搬送制御部161が取得した検出結果が、所定時間t2内に「有」にならなかった場合(ステップS130:NO)、つまり、搬送ローラR10,R11,R30,R31を、吸入方向Diに回転させても(ステップS60)、排出方向Doに回転させても(ステップS120)、単票が検出されない場合、フラグFが1であれば(ステップS150:YES)、単票印字処理前から単票は存在しなかったものと判断する。そして、出力部165は、単票吸入要求表示器151を点灯させて(ステップS140)、単票の再挿入を要求し、上位装置200に単票吸入待ち状態であることを報告する。
【0051】
出力部165は、フラグFが1でなければ(ステップS150:NO)、上位装置にエラーメッセージを送信する(ステップS160)。なぜなら、処理前に単票は存在したにもかかわらず(ステップS40:YES)、搬送ローラR10,R11,R30,R31を吸入方向Diに回転させても(ステップS60)、排出方向Doに回転させても(ステップS120)、単票が検出されないのであるから、処理中に紙詰まりなどの障害が起きたものと判断するからである。エラーメッセージの内容は、例えば「単票・通帳プリンタ100内部で紙詰まりが発生している恐れがあります」といった内容である。
【0052】
このように、本実施例によれば、待機位置センサShによる単票検出の有無にかかわらず、搬送モータRMを所定時間t1だけ動作させて単票の有無を検出するので、動作前には検出されなかった単票10の有無も含めて検出することが可能であり、単票の検出精度を向上することができる。検出精度が向上すれば、単票処理装置の誤動作の可能性を低減することができる。例えば、単票が単票搬送路110内に存在するにもかかわらず、単票の再挿入を要求することがなくなるので、単票が複数挿入されることにより、障害が発生することを防ぐことができる。
【0053】
更に、本実施例によれば、分断されて小さくなったため搬送できずに、単票センサStにより検出されない単票20を、単票挿入口111の方向に搬送することができる。単票挿入口111付近まで搬送できれば、ユーザが単票を確認することもできる。ユーザが、単票20が分断されて排出されていることに気付けば、単票が複数挿入されることによる障害の発生を抑制することも可能となる。更に、単票・通帳プリンタ100は、単票挿入口付近に存在する単票20が手で引き抜かれ、張り合わされるなどして再挿入されれば、そのまま単票処理を続行することができる。つまり、単票処理の前に実施済みの処理、たとえば通帳に対する印字処理からやり直す必要もないという利点がある。
【0054】
また、本実施例によれば、オペレータに引き抜かれたなどの理由で処理前から単票が存在しないのか、紙詰まりなどの障害が発生したのかを区別して判断し、各々の場合に適した対応をすることができる。処理前から単票が存在しないと判断した場合は、単票の再挿入を要求する(ステップS140)。要求により、単票が再挿入されれば、通帳に対する印字処理など、単票印字処理前に行なわれていた処理からやり直す必要もないという利点がある。
【0055】
その他の実施例:
(1)単票センサStは、図1で示した設置場所に限らず、単票待機位置P1から印字位置Ppに至るまでの間に設置されていれば良い。すなわち、単票センサStは、単票待機位置P1よりも印字位置Ppに近い位置に設けられていれば良い。このとき、搬送制御部164は、単票が単票待機位置P1から印字位置Ppへ向かう方向に搬送モータRMを動作させ、単票センサStの検出結果を取得するものとしても良い。印字位置センサSpは印字位置Ppに設置されたセンサであるから、単票センサStに代用可能である。印字位置センサSpを単票センサStに代用する場合、単票センサStを省略することが可能である。
【0056】
また、単票センサStの機能を待機位置センサShに行なわせることも可能である。このとき、搬送制御部164は、待機位置センサShによる単票検出の有無にかかわらず、搬送モータRMを動作させ(ステップS60)、待機位置センサShによって単票が検出されるか否かを調べる(ステップS70)。この構成によっても、搬送モータRMの動作前には検出されなかった単票10の有無も含めて検出することが可能であり、単票の検出精度を向上することができる。
【0057】
逆に、待機位置センサShを省略して、その機能を単票センサStに行なわせることも可能である。この場合は、図4のステップS40やステップS130の処理を省略するものとしても良い。待機位置センサShを省略した場合には、ステップS70で単票センサShによって単票が検出されない場合に、単票が存在しないものと判断し、単票吸入要求表示器151を点灯させるものとしても良い。すなわち、単票検出装置により単票が検出されない場合には、非検出対応処理として、単票を単票挿入口111から挿入することを示唆する情報を出力するものとしても良い。単票が挿入されれば、単票処理を続行することも可能になる。
【0058】
待機位置センサShは、ステップS40の判断では単票待機位置P1の単票の有無を検出するセンサとして、ステップS130の判断では単票挿入口111の単票の有無を検出するセンサとして使用されているが、単票待機位置P1の単票を検出するセンサと単票挿入口111の単票を検出するセンサを別個に備えるものとしても良い。別個に備える場合は、ステップS130の判断に、単票挿入口111の単票の有無を検出するセンサの検出結果を用いるものとしても良い。
【0059】
上記実施例では単票センサStは1つであるが、複数設置されていても良い。この場合、ステップS70においては、単票の有無を判断する際、複数の単票センサStによる検出結果を取得し、検出結果の少なくとも1つが単票は「有」と示す場合に、単票は存在するものとして、ステップS90の印字処理を実行するものとしても良い。複数の検出結果により判断することで、更に検出精度を向上することができる。
【0060】
以上の説明から理解できるように、本発明の単票処理装置は、単票搬送路内の所定の待機位置近傍に存在する単票の有無を検出する単票検出装置を備えていれば良い。上記実施例では、単票検出装置は、待機位置センサShと単票センサStの2つのセンサを含んでいる。但し、上述したように、これらの2つのセンサSh,Stの一方を省略することも可能である。
【0061】
また、上記実施例では、待機位置から処理位置への単票の搬送を開始する際に、搬送装置を所定量動作させて単票検出を行なっても単票が検出されない場合には、搬送モータRMの逆転(図4のステップS120)や単票吸入要求表示器151の点灯(ステップS140)やエラーメッセージの送信(ステップS160)を含む特定の処理(「非検出対応処理」と呼ぶ)を行なうこととしていたが、この非検出対応処理としては、これ以外の任意の処理を実行することができる。例えば、非検出対応処理として、搬送モータの逆転と単票吸入要求表示器151の点灯とエラーメッセージの送信のうち少なくとも1つを行なうこととしても良い。更に、非検出対応処理は省略することも可能である。
【0062】
(2)実施例では、ステップS40で待機位置センサShによって単票が検出されず、ステップS70で単票センサShによって単票が検出されず、ステップS130で待機位置センサShによって単票が検出されない場合に、はじめて単票が単票印字処理前から存在しなかったものと判断している。これに代え、ステップS130を省略し、ステップS40で待機位置センサShによって単票が検出されず、ステップS70で単票センサShによって単票が検出されない場合は、単票が単票印字処理前から存在しなかったものと判断し、単票吸入要求表示器151を点灯させるものとしても良い。
【0063】
(3)搬送制御部164は、単票検出の有無にかかわらず、搬送モータRMを動作させる(ステップS60)。「単票検出の有無にかかわらず」とは、単票の検出結果が「有」であるか「無」であるかにかかわらず、という意味と、単票の検出が行なわれたか否かにかかわらず、という意味とを両方含んでいる。単票の検出を行なわなくても良く、ステップS30〜ステップS50の処理は適宜省略可能である。
【0064】
(4)実施例においては、搬送制御部164は、印字後の単票を単票待機位置P1に搬送しているが、これに限らず、搬送制御部164は、挿入直後の単票を単票待機位置P1に搬送するものとしても良い。
【0065】
(5)単票挿入口111と単票待機位置P1と印字位置Ppの位置関係は、実施例で示したものに限らず、単票挿入口111,印字位置Pp,単票待機位置P1の順であっても良い。
【0066】
(6)実施例では、本発明の所定量として所定時間t1を用いているが、所定量は、時間に限らず、搬送ローラRnの回転数などであっても良い。
【0067】
(7)実施例では、センサとして光学センサを用いているが、光学センサに限らず、機械的センサを使用するものとしても良い。
【0068】
(8)実施例では、単票・通帳プリンタ100について示したが、本発明の単票処理装置は、少なくとも単票を処理することが可能であれば良い。つまり、単票・通帳プリンタ100は単票プリンタであっても良く、通帳の処理に関する装置及び制御機能はなくても良い。
【0069】
(9)実施例では、単票の印字処理について示したが、処理の内容は印字に限らず、押印や切断など様々に適用可能である。
【0070】
以上、実施例に基づき本発明に係る単票処理装置、単票処理装置を制御する方法および単票処理装置の機能を実現させるためのプログラムを説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】単票処理装置の実施例としての単票・通帳プリンタ100を示す説明図。
【図2】単票・通帳プリンタ100の機能ブロックを示す説明図。
【図3】単票・通帳プリンタ100における単票と通帳を交互に印字する機能を示す説明図。
【図4】単票印字処理を示すフローチャート。
【図5】単票10について単票印字処理を行なった場合を示す説明図。
【図6】単票20について単票印字処理を行なった場合を示す説明図。
【図7】単票搬送路内に存在する単票を示す説明図。
【図8】単票搬送路内に存在する単票を示す説明図。
【符号の説明】
【0072】
5...矢印
5a...矢印
6...矢印
10...単票
11a,11b...貫通孔
20...単票
20a...左部分
20b...右部分
22...ミシン目
100...単票・通帳プリンタ
110...単票搬送路
111...単票挿入口
120...通帳搬送路
121...通帳挿入口
130...共通搬送路
151...単票吸入要求表示器
152...通帳吸入要求表示器
161...搬送制御部
164...搬送制御部
165...出力部
166...送受信制御部
167...主制御部
170...印字制御部
171...画像作成部
200...上位装置
PH...印字ヘッド
PM...印字キャリアモータ
Rn,R10,R11,R20,R21,R30,R31...搬送ローラ
RM...搬送モータ
Sh...待機位置センサ
Sp...印字位置センサ
St...単票センサ
Di...吸入方向
Do...排出方向
P1...単票待機位置
P2...通帳待機位置
Pp...印字位置
Pt...搬送路切替板
Sn...搬送路切替ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単票処理装置であって、
単票の挿入口を備えた単票搬送路と、
前記単票搬送路内の単票を搬送する搬送装置と、
前記単票搬送路に設けられ、前記単票搬送路内の所定の処理位置に存在する単票に所定の処理を行なう処理装置と、
前記単票搬送路内の所定の待機位置近傍に存在する単票の有無を検出するための単票検出装置と、
前記待機位置から前記処理位置への単票の搬送を開始する際に、前記単票検出装置による単票検出の有無にかかわらず、前記搬送装置を所定量動作させて前記単票検出装置によって単票が検出されるか否かを調べる検出結果取得部と、
前記検出結果取得部が調べた結果、単票が検出された場合には当該単票を前記処理位置に搬送させて前記処理装置に前記処理を実行させるとともに、単票が検出されない場合には所定の非検出対応処理を実行する処理実行部と
を備えた単票処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の単票処理装置であって、
前記単票検出装置は、
前記待機位置に単票が存在するか否かを検出する第1の単票検出装置と、
前記待機位置よりも前記処理位置に近い位置に設けられた第2の単票検出装置と
を含み、
前記検出結果取得部は、前記単票の搬送を開始する際に、前記第1の単票検出装置による単票検出の有無にかかわらず、前記搬送装置を所定量動作させて前記第2の単票検出装置によって単票が検出されるか否かを調べる
単票処理装置。
【請求項3】
請求項1記載の単票処理装置であって、
前記待機位置は、前記挿入口から前記処理位置までの間であって、
前記非検出対応処理は、単票が前記挿入口の方向に移動するように前記搬送装置を動作させる処理である
単票処理装置。
【請求項4】
請求項1記載の単票処理装置であって、
前記非検出対応処理は、前記単票を前記挿入口から挿入することを示唆する情報を出力する処理である単票処理装置。
【請求項5】
単票処理装置を制御する方法であって、
単票処理装置は、
単票の挿入口を備えた単票搬送路と、
前記単票搬送路内の前記単票を搬送する搬送装置と、
前記単票搬送路に設けられ、前記単票搬送路内の所定の処理位置に存在する単票に所定の処理を行なう処理装置と、
前記単票搬送路内の所定の待機位置近傍に存在する単票の有無を検出するための単票検出装置と
を備え、
前記方法は、
前記待機位置から前記処理位置への単票の搬送を開始する際に、前記単票検出装置による単票検出の有無にかかわらず、前記搬送装置を所定量動作させて前記単票検出装置によって単票が検出されるか否かを調べる検出結果取得工程と、
前記検出結果取得工程で調べた結果、単票を検出した場合には当該単票を前記処理位置に搬送させて前記処理装置に前記処理を実行させるとともに、単票を検出しない場合には所定の非検出対応処理を実行する処理実行工程と
を備えた方法。
【請求項6】
単票処理装置の機能を実現させるためのコンピュータプログラムであって、
単票処理装置は、
前記単票の挿入口を備えた単票搬送路と、
前記単票搬送路内の前記単票を搬送する搬送装置と、
前記単票搬送路に設けられ、前記単票搬送路内の所定の処理位置に存在する単票に所定の処理を行なう処理装置と、
前記単票搬送路内の所定の待機位置近傍に存在する単票の有無を検出するための単票検出装置と
を備え、
前記コンピュータプログラムは、
前記待機位置から前記処理位置への単票の搬送を開始する際に、前記単票検出装置による単票検出の有無にかかわらず、前記搬送装置を所定量動作させて前記単票検出装置によって単票が検出されるか否かを調べる検出結果取得機能と、
前記検出結果取得機能で調べた結果、単票を検出した場合には当該単票を前記処理位置に搬送させて前記処理装置に前記処理を実行させるとともに、単票を検出しない場合には所定の非検出対応処理を実行する処理実行機能と
を実現させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−26999(P2006−26999A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207144(P2004−207144)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】