説明

単糖類の製造方法

【課題】セルロースから直接その構成単位である単糖類、特にグルコースおよび/または5−(ヒドロキシメチル)−2−フルフラール等の単糖類を製造する方法を提供すること。
【解決手段】本発明の方法は、イオン液体、周期律表5〜13族から選ばれる少なくとも1種の金属触媒および水の存在下にセルロースを加水分解することを含む単糖類の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースからの単糖類の製造方法に関する。特に、セルロースから直接単糖類を製造する方法に関する。本発明において製造される単糖類は、特に好ましくは、グルコースおよび/または5−(ヒドロキシメチル)−2−フルフラールである。
【背景技術】
【0002】
従来、グルコースなどの単糖類は、さとうきびや、とうもろこしなどを原料として製造されている。しかし、将来的な食料問題を考慮した場合、食料として利用されないその他のバイオマスを有効利用して単糖類を製造することが望まれる。
【0003】
この点に鑑み、近年、セルロースなどの木質系糖ポリマーから水溶性オリゴ糖やグルコースを製造することが試みられている。
例えば、特許文献1(特開2002−85100号公報)には、ランタノイドイオン触媒の存在下、セルロースを加圧熱水で処理して加水分解する手法が開示され、これにより、水溶性オリゴ糖類および少量の単糖を含むドープが得られることが示されている。
【0004】
特許文献2(特開2005−229822号公報)には、セルロース系バイオマスを段階的に硫酸で処理して糖化させて単糖を製造する手法が開示されている。
特許文献3(特開2006−149343号公報)には、木質系バイオマスを、微粉化および脱リグニン化した後、セルラーゼ酵素で処理してグルコースを製造する手法が開示されている。
【0005】
しかし、上記特許文献1の手法は、高温の加圧熱水を使用するため、多大なエネルギーを必要とする。これは、CO2削減というバイオマス利用の目的と矛盾している。また、セルロースの加水分解を促進するための加熱温度が220〜270℃と非常に高く、水の沸点以上の温度における処理となるため、圧力釜などの大型設備が必要となる。
【0006】
特許文献2の手法は、セルロースを65〜85質量%硫酸中において処理する必要があるため、酸の取扱いに危険が伴い、また酸の廃棄処分の工程も必要となる。また、硫酸処理を2段階に分けて行う必要があるため、更に工程数が増加することが考えられる。
【0007】
特許文献3の手法は、微粉化および脱リグニン化処理が必要であるうえに、酵素反応であるため長時間を要し、温度やpH等の種々の条件が限られる。また、酵素自体が高価である。
【0008】
さらに、最近、イオン液体中でセルロースを分解する際に各種添加剤を用いる手法が報告されている。
例えば、特許文献4(国際公開第2007/101811号パンフレット)には、酸添加によるセルロース分解法が、特許文献5(国際公開第2007/101812号パンフレット)には、水添加によるセルロース分解法が、特許文献6(国際公開第2007/101813号パンフレット)には、求核剤添加によるセルロース分解法が開示されている。
【0009】
これらの文献には、クロマトグラム測定により低分子量組成が確認され、セルロースが完全に分解されたことが記載されているが、実際に糖質(グルコースなど)を単離・同定した実施例は皆無である。
【0010】
また、特許文献7(特開2009−201394号公報)には、4級窒素原子を有するカチオンおよび塩化物イオン(Cl-)からなるイオン液体と糖ポリマーとを、水の存在下、かつ、所定の添加剤の存在下または酸性条件下で接触させることで、糖ポリマーが分解し、単糖類が得られることが開示されているが、金属触媒の使用については開示がない。
【0011】
また、特許文献8(国際公開第2007/100052号パンフレット)には、セルロースを前処理することなく直接加水分解・水素化する単糖類の製造方法が開示されている。これによれば、担持金属触媒により水中、水素加圧下においてセルロースの加水分解と水素化反応が進行して、単糖類(ソルビトールとマニトール)を得ている。しかしながら、当該発明実施例においてはすべて水素含有雰囲気でセルロースの加水分解および加水分解生成物であるグルコースの還元反応が逐次行われてしまい、その結果マンニトールやソルビトールを得ており、有用なグルコースを直接得ることはできない。
【0012】
一方、セルロースの構成単位であるグルコースを温和な条件下で、非可食材料の代表例であるセルロースから直接得る有用な方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−85100号公報
【特許文献2】特開2005−229822号公報
【特許文献3】特開2006−149343号公報
【特許文献4】国際公開第2007/101811号パンフレット(参考=特表2009−531024号公報)
【特許文献5】国際公開第2007/101812号パンフレット(参考=特表2009−529075号公報)
【特許文献6】国際公開第2007/101813号パンフレット
【特許文献7】特開2009−201394号公報
【特許文献8】国際公開第2007/100052号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、セルロースを前処理することなく、セルロースから直接その構成単位である単糖類、特にグルコースおよび/または5−(ヒドロキシメチル)−2−フルフラール等の単糖類を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らが上記課題を解決するために鋭意検討したところ、イオン液体の存在下で適当な金属触媒を用いることによりセルロースから直接グルコースおよび/または5−(ヒドロキシメチル)−2−フルフラール等の単糖類が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明の方法は以下の通りである。
[1]イオン液体、周期律表5〜13族から選ばれる少なくとも1種の金属触媒および水の存在下にセルロースを加水分解することを含む単糖類の製造方法。
[2]前記金属触媒の金属がアルミニウム、鉄、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、白金、ニオブから選択される少なくとも1種である前記1に記載の単糖類の製造方法。
[3]前記水として、使用されるセルロースに付着している水以外の水の存在下にセルロースを加水分解する前記1または2のいずれかに記載の単糖類の製造方法。
[4]前記金属触媒の使用量がセルロース中のグルコース単位に対して0.1〜50モル%である前記1〜3のいずれかに記載の単糖類の製造方法。
[5]前記水の使用量がセルロースに対して0.5〜50当量である前記1〜4のいずれかに記載の単糖類の製造方法。
[6]前記加水分解を50〜200℃の加熱下で行う前記1〜5のいずれかに記載の単糖類の製造方法。
[7]前記金属触媒がイオン液体および/または水に可溶である前記1〜6のいずれかに記載の単糖類の製造方法。
[8]前記加水分解をさらに酸触媒の存在下で行う前記1〜7のいずれかに記載の単糖類の製造方法。
[9]前記単糖類がグルコースおよび/または5−(ヒドロキシメチル)−2−フルフラールである前記1〜8のいずれかに記載の単糖類の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、イオン液体の存在下で適当な金属触媒を用いてセルロースを加水分解することにより、温和な条件で効率よく、グルコースおよび/または5−(ヒドロキシメチル)−2−フルフラール等の単糖類を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明では、イオン液体の存在下、かつ周期律表5〜13族から選ばれる少なくとも1種の金属触媒の存在下にセルロースを加水分解することにより、単糖類を製造する。
【0019】
・イオン液体
本発明において、用いるイオン液体は、以下の(A)および/または(B)で表される塩の単独または混合物である。
(A)一般式(I)
[A]n+[Y]n- (I)
[式中、nは、1、2、3または4であり、[A]+は、第四級アンモニウム陽イオン、オキソニウム陽イオン、スルホニウム陽イオンまたはホスホニウム陽イオンであり、[Y]n-は、一価、二価、三価または四価の陰イオンである。]
の塩、
(B)一般式(II)
[A1+[A2+[Y]n- (IIa)、式中、n=2;
[A1+[A2+[A3+[Y]n- (IIb)、式中、n=3;又は
[A1+[A2+[A3+[A4+[Y]n- (IIc)、式中、n=4;
[式中、[A1+、[A2+、[A3+および[A4+は、独立して[A]+で特定された基から選択され、[Y]n-は、(A)に基づいた意味を有する。]
の混合塩。
【0020】
イオン液体は、180℃以下の融点を有することが好ましい。特に、融点は、−50℃〜150℃、特に−20℃〜120℃およびとりわけ100℃以下が好ましい。
イオン液体の陽イオン[A]+を形成するのに適切な化合物は、例えば、ドイツ特許出願公開第102 02 838(A1)号から公知である。従って、このような化合物は、酸素、リン、硫黄、または特に窒素原子、例えば、少なくとも1個の窒素原子、好ましくは1〜10個の窒素原子、特に好ましくは1〜5個の窒素原子、非常に特に好ましくは1〜3個の窒素原子および特に1個または2個の窒素原子を含むことができる。場合により、酸素、硫黄またはリン原子などのさらなるヘテロ原子も含むことができる。窒素原子は、イオン液体の陽イオンとしての適切な正電荷の担体であり、この中で電気的中性分子を生成するためにプロトンまたはアルキル基を陰イオンに平衡に移動することができる。
【0021】
窒素原子がイオン液体の陽イオンとしての正電荷の担体である場合、まず、例えば、イオン液体の合成においてアミンまたは窒素複素環の窒素原子を四級化することにより、陽イオンを生成することができる。窒素原子のアルキル化により、四級化を行うことができる。使用されるアルキル化試薬に応じて、様々な陰イオンを有する塩が得られる。四級化において所望の陰イオンを形成できない場合、合成のさらなるステップにおいて、これを行うことができる。例えば、ハロゲン化アンモニウムから出発し、ハロゲン化物をルイス酸と反応させ、ハロゲン化物およびルイス酸から錯陰イオンを形成することができる。それの可能な代替例は、所望の陰イオンによるハロゲン化物イオンの置き換えである。これは、イオン交換器により、または強酸(ハロゲン化水素の遊離)によるハロゲン化物イオンの置換により、金属塩を添加し、形成された金属ハロゲン化物を析出することにより実現することができる。適切な方法は、例えば、Angew.Chem.2000,112,pp.3926−3945およびその中で引用された参考文献に記載される。
【0022】
アミンまたは窒素複素環の窒素原子を例えば、四級化することができる適切なアルキル基は、C1−C18−アルキル、好ましくはC1−C10−アルキル、特に好ましくはC1−C6−アルキルおよび非常に特に好ましくはメチルである。アルキル基を非置換し、または1個もしくは複数個の同一もしくは異なる置換基を有することができる。
【0023】
少なくとも1個の5または6員の複素環、特に5員の複素環を含む化合物が好ましく、これは、少なくとも1個の窒素原子およびさらに、場合により、酸素または硫黄原子を有する。同様に、少なくとも1個の5または6員の複素環を含む化合物が好ましく、これは、窒素原子1個、2個または3個および硫黄原子または酸素原子を有し、非常に特に好ましくは、窒素原子2個を有するものを含む。さらに、芳香族複素環が好ましい。
【0024】
特に好ましい化合物は、1000g/mol以下、非常に特に好ましくは500g/mol以下および特に350g/mol以下の分子量を有するものである。
さらに、式(IIIa)〜(IIIw)の化合物およびこれらの構造を含むオリゴマーから選択される陽イオンが好ましい。
【0025】
【化1】

【0026】
【化2】

【0027】
【化3】

さらに適切な陽イオンは、一般式(IIIx)および(IIIy)の化合物およびさらにこれらの構造式を含むオリゴマーである。
【0028】
【化4】

上記式(IIIa)〜(IIIy)において、
R基は、水素または炭素原子1個〜20個を有する、飽和または不飽和の、非環状または環状、脂肪族、芳香族または芳香脂肪族基であり、無置換あるいはヘテロ原子または官能基1〜5個により置換されることができ、
1〜R9基は、それぞれ互いに独立して、水素、スルホ基または炭素原子1〜20個を有する、飽和または不飽和の、非環状または環状、脂肪族、芳香族または芳香脂肪族基であり、無置換あるいはヘテロ原子または官能基1〜5個により置換されることができ、この場合、上述の式(III)の炭素原子に結合する(およびヘテロ原子に結合しない)R1〜R9基は、さらにハロゲンまたは官能基であってよく、または
1〜R9からなる群由来の2個の隣接基はともに、炭素原子1〜30個を有する、二価の、飽和または不飽和、非環状または環状、脂肪族、芳香族または芳香脂肪族基も形成し、無置換あるいはヘテロ原子または官能基1〜5個により置換されることができる。
【0029】
RおよびR1〜R9基の定義において、可能なヘテロ原子は、おもに−CH2−基、−CH=基、−C≡基または=C=基を正式に置き換えることができる全てのヘテロ原子である。炭素含有基がヘテロ原子を含む場合、この時、酸素、窒素、硫黄、リンおよびケイ素が好ましい。好ましい基は、特に、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−NR´−、−N=、−PR´−、−PR´3および−SiR´2−であり、この場合、R´基は、炭素含有基の残りの部分である。R1〜R9基が上述の式(I)の炭素原子に結合する(およびヘテロ原子ではない)場合、これらまた、ヘテロ原子を介して直接結合することができる。
【0030】
適切な官能基は、おもに炭素原子またはヘテロ原子に結合することができる全ての官能基である。適切な例は、−OH(ヒドロキシ)、=O(特にカルボニル基として)、−NH2(アミノ)、−NHR´、−NHR2´、=NH(イミノ)、NR´(イミノ)、−COOH(カルボキシ)、−CONH2(カルボキサミド)、−SO3H(スルホ)および−CN(シアノ)である。官能基およびヘテロ原子もまた、直接隣接することができ、そのため、複数の隣接原子、例えば−O−(エーテル)、−S−(チオエーテル)、−COO−(エステル)、−CONH−(第二級アミド)または−CONR´−(第三級アミド)の結合もまた、例えば、ジ−(C1−C4−アルキル)アミノ、C1−C4−アルコキシカルボニルまたはC1−C4アルキルオキシを含む。R´は、炭素含有基の残留部である。
【0031】
ハロゲンとして、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素がある。
R基は、1個または複数個のヒドロキシ、ハロゲン、フェニル、シアノ、C1−C6−アルコキシカルボニルおよび/またはSO3Hにより無置換または置換され、合計1〜20個の炭素原子を有することができる非分岐または分岐鎖C1−C18−アルキル、例えば、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、1−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−2−ブチル、3−メチル−2−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2−メチル−3−ペンチル、3−メチル−3−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、2,3−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、2,3−ジメチル−2−ブチル、3,3−ジメチル−2−ブチル、1−ヘプチル、1−オクチル、1−ノニル、1−デシル、1−ウンデシル、1−ドデシル、1−テトラデシル、1−ヘキサデシル、1−オクタデシル、2−ヒドロキシエチル、ベンジル、3−フェニルプロピル、2−シアノエチル、2−(メトキシカルボニル)エチル、2−(エトキシカルボニル)エチル、2−(n−ブトキシカルボニル)エチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヘプタフルオロイソプロピル、ノナフルオロブチル、ノナフルオロイソブチル、ウンデシルフルオロペンチル、ウンデシルフルオロイソペンチル、6−ヒドロキシヘキシルおよびプロピルスホン酸、グリコール、ブチレングリコールおよび1〜100単位を有するそのオリゴマーならびに末端基として水素またはC1−C8−アルキル、例えば、RAO−(CHRB−CH2−O)m−CHRB−CH2またはRAO−(CH2CH2CH2CH2O)m−CH2CH2CH2CH2O−[式中、RAおよびRBは、それぞれ水素、メチルまたはエチルが好ましく、mは、0〜3が好ましい。]、特に、3−オキサブチル、3−オキサペンチル、3,6−ジオキサヘプチル、3,6−ジオキサオクチル、3,6,9−トリオキサデシル、3,6,9−トリオキサウンデシル、3,6,9,12−テトラオキサトリデシルおよび3,6,9,12−テトラオキサテトラデシル、ビニル、1−プロペン−1−イル、1−プロペン−2−イルおよび1−プロペン−3−イルならびにN,N−ジメチルアミノおよびN,N−ジエチルアミノなどのN,N−ジ−C1−C6−アルキルアミノが好ましい。
【0032】
R基は、非分岐および無置換C1−C18−アルキル、例えば、メチル、エチル、1−プロピル、1−ブチル、1−ペンチル、1−ヘキシル、1−ヘプチル、1−オクチル、1−デシル、1−ドデシル、1−テトラデシル、1−ヘキサデシル、1−オクタデシル、1−プロペン−3−イル、特に、メチル、エチル、1−ブチルおよび1−オクチルまたはCH3O−(CH2CH2O)m−CH2CH2−およびCH3CH2O−(CH2CH2O)m−CH2CH2−[式中、mは0〜3である。]が特に好ましい。
【0033】
1〜R9基は、それぞれ互いに独立して、水素、ハロゲン、官能基、場合により官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子および/または複素環により置換され、かつ/または1個または複数個の酸素および/または硫黄原子ならびに/あるいは1個または複数個の置換または無置換イミノ基により中断されることができるC1−C18−アルキル、場合により官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子および/または複素環により置換され、かつ/または1個または複数個の酸素および/または硫黄原子ならびに/あるいは1個または複数個の置換または無置換イミノ基により中断されることができるC2−C18−アルケニル、場合により官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子および/または複素環により置換されることができるC6−C12−アリール、場合により官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子および/または複素環により置換されることができるC5−C12−シクロアルキル、場合により官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子および/または複素環により置換されることができるC5−C12−シクロアルケニルまたは場合により官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子および/または複素環により置換されることができる5または6員の酸素、窒素および/または硫黄含有複素環が好ましく、または、2個の隣接基とともに、場合により官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子および/または複素環により置換されることができ、場合により1個または複数個の酸素および/または硫黄原子ならびに/あるいは1個または複数個の置換または無置換イミノ基により中断されることができる不飽和、飽和または芳香族環を形成する。
【0034】
場合により官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子および/または複素環により置換されることができるC1−C18−アルキルは、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、2−メチル−1−プロピル(イソブチル)、2−メチル−2−プロピル(tert−ブチル)、1−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−2−ブチル、3−メチル−2−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2−メチル−3−ペンチル、3−メチル−3−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、2,3−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、2,3−ジメチル−2−ブチル、3,3−ジメチル−2−ブチル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、2,4,4−トリメチルペンチル、1,1,3,3−テトラ−メチルブチル、1−ノニル、1−デシル、1−ウンデシル、1−ドデシル、1−トリデシル、1−テトラデシル、1−ペンタデシル、1−ヘキサデシル、1−ヘプタデシル、1−オクタデシル、シクロペンチルメチル、2−シクロペンチルエチル、3−シクロペンチルプロピル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、3−シクロヘキシルプロピル、ベンジル(フェニルメチル)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル)、トリフェニルメチル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、α,α−ジメチルベンジル、p−トリルメチル、1−(p−ブチルフェニル)エチル、p−クロロベンジル、2,4−ジクロロベンジル、p−メトキシベンジル、m−エトキシベンジル、2−シアノエチル、2−シアノプロピル、2−メトキシカルボニル−エチル、2−エトキシカルボニルエチル、2−ブトキシカルボニルプロピル、1,2−ジ−(メトキシカルボニル)エチル、メトキシ、エトキシ、ホルミル、1,3−ジオキソラン−2−イル、1,3−ジオキサン−2−イル、2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、6−ヒドロキシヘキシル、2−アミノエチル、2−アミノプロピル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、6−アミノヘキシル、2−メチルアミノエチル、2−メチルアミノプロピル、3−メチルアミノプロピル、4−メチルアミノブチル、6−メチルアミノヘキシル、2−ジメチルアミノエチル、2−ジメチルアミノプロピル、3−ジメチルアミノプロピル、4−ジメチルアミノブチル、6−ジメチルアミノヘキシル、2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルエチル、2−フェノキシエチル、2−フェノキシプロピル、3−フェノキシプロピル、4−フェノキシブチル、6−フェノキシヘキシル、2−メトキシエチル、2−メトキシプロピル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、6−メトキシヘキシル、2−エトキシエチル、2−エトキシプロピル、3−エトキシプロピル、4−エトキシブチル、6−エトキシヘキシル、アセチル、Cm2(m-a)+(1-b)2a+b[式中、mは、1〜30、0≦a≦mおよびb=0または1である(例えば、CF3、C25、CH2CH2−C(m-2)2(m-2)+1、C613、C817、C1021、C1225)]、クロロメチル、2−クロロエチル、トリクロロメチル、1,1−ジメチル−2−クロロエチル、メトキシメチル、2−ブトキシエチル、ジエトキシメチル、ジエトキシエチル、2−イソプロポキシエチル、2−ブトキシプロピル、2−オクチルオキシエチル、2−メトキシイソプロピル、2−(メトキシカルボニル)エチル、2−(エトキシカルボニル)エチル、2−(n−ブトキシ−カルボニル)エチル、ブチルチオメチル、2−ドデシルチオエチル、2−フェニルチオエチル、5−ヒドロキシ−3−オキサペンチル、8−ヒドロキシ−3,6−ジオキサオクチル、11−ヒドロキシ−3,6,9−トリオキサウンデシル、7−ヒドロキシ−4−オキサヘプチル、11−ヒドロキシ−4,8−ジオキサウンデシル、15−ヒドロキシ−4,8,12−トリオキサペンタデシル、9−ヒドロキシ−5−オキサノニル、14−ヒドロキシ−5,10−ジオキサテトラデシル、5−メトキシ−3−オキサペンチル、8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチル、11−メトキシ−3,6,9−トリオキサウンデシル、7−メトキシ−4−オキサヘプチル、11−メトキシ−4,8−ジオキサウンデシル、15−メトキシ−4,8,12−トリオキサペンタデシル、9−メトキシ−5−オキサノニル、14−メトキシ−5,10−ジオキサテトラデシル、5−エトキシ−3−オキサペンチル、8−エトキシ−3,6−ジオキサオクチル、11−エトキシ−3,6,9−トリオキサウンデシル、7−エトキシ−4−オキサヘプチル、11−エトキシ−4,8−ジオキサウンデシル、15−エトキシ−4,8,12−トリオキサペンタデシル、9−エトキシ−5−オキサノニルまたは14−エトキシ−5,10−オキサテトラデシルが好ましい。
【0035】
場合により官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子および/または複素環により置換され、かつ/または1個または複数個の酸素および/または硫黄原子ならびに/あるいは1個または複数個の置換または無置換イミノ基により中断されることができるC2−C18−アルケニルは、ビニル、2−プロペニル、3−ブテニル、cis−2−ブテニル、trans−2−ブテニルまたはCm2(m-a)-(1-b)2a-b[式中、m≦30、0≦a≦mおよびb=0または1]が好ましい。
【0036】
場合により官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子および/または複素環により置換されることができるC6−C12−アリールは、フェニル、トリル、キシリル、α−ナフチル、β−ナフチル、4−ジフェニルイル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、トリクロロフェニル、ジフルオロフェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、ジエチルフェニル、イソプロピルフェニル、tert−ブチルフェニル、ドデシルフェニル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、エトキシフェニル、ヘキシルオキシフェニル、メチルナフチル、イソプロピルナフチル、クロロナフチル、エトキシナフチル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,6−ジメトキシフェニル、2,6−ジクロロフェニル、4−ブロモフェニル、2−ニトロフェニル、4−ニトロフェニル、2,4−ジニトロフェニル、2,6−ジニトロフェニル、4−ジメチルアミノフェニル、4−アセチルフェニル、メトキシエチルフェニル、エトキシメチルフェニル、メチルチオフェニル、イソプロピルチオフェニルまたはtert−ブチルチオフェニルあるいはC6(5-a)a[式中、0≦a≦5]が好ましい。
【0037】
場合により官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子および/または複素環により置換されることができるC5−C12−シクロアルキルは、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、ジエチルシクロヘキシル、ブチルシクロヘキシル、メトキシシクロヘキシル、ジメトキシシクロヘキシル、ジエトキシシクロヘキシル、ブチルチオシクロヘキシル、クロロシクロヘキシル、ジクロロシクロヘキシル、ジクロロシクロペンチル、Cm2(m-a)-(1-b)2a-b[式中、m≦30、0≦a≦mおよびb=0または1]または飽和もしくは不飽和二環状系、例えばノルボルニルまたはノルボルネニルが好ましい。
【0038】
場合により官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子および/または複素環により置換されることができるC5〜C12−シクロアルケニルは、3−シクロペンテニル、2−シクヘキセニル、3−シクヘキセニル、2,5−シクロヘキサジエニルまたはCn2(m-a)-3(1-b)2a-3b[式中、m≦30、0≦a≦mおよびb=0または1]が好ましい。
【0039】
場合により官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子および/または複素環により置換されることができる5または6員の、酸素、窒素および/硫黄含有複素環は、フリル、チオフェニル、ピリル、ピリジル、インドリル、ベンゾキサゾリル、ジオキソリル、ジオキシル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、ジメチルピリジル、メチルキノリル、ジメチルピリル、メトキシフリル、ジメトキシピリジルまたはジフルオロピリジルが好ましい。
【0040】
2個の隣接基がともに、場合により官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子および/または複素環により置換されることができ、場合により1個または複数個の酸素および/または硫黄原子ならびに/あるいは1個または複数個の置換または無置換イミノ基により中断されることができる不飽和、飽和または芳香族環を形成する場合、これらは、1,3−プロピレン、1,4−ブチレン、1,5−ペンチレン、2−オキサ−1,3−プロピレン、1−オキサ−1,3−プロピレン、2−オキサ−1,3−プロピレン、1−オキサ−1,3−プロペニレン、3−オキサ−1,5−ペンチレン、1−アザ−1,3−プロペニレン、1−C1−C4−アルキル−1−アザ−1,3−プロペニレン、1,4−ブタ−1,3−ジエニレン、1−アザ−1,4−ブタ−1,3−ジエニレンまたは2−アザ−1,4−ブタ−1,3−ジエニレンを形成することが好ましい。
【0041】
上述の基が、酸素および/または硫黄原子ならびに/あるいは置換または無置換イミノ基を含む場合、酸素および/または硫黄原子ならびに/あるいはイミノ基の数は、少しの制限もされない。一般に、基は、5個以下、好ましくは4個以下および非常に特に好ましくは3個以下であろう。
【0042】
上述の基がヘテロ原子を含む場合、一般に、いずれか2個のヘテロ原子間に少なくとも1個の炭素原子、好ましくは少なくとも2個の炭素原子がある。
1〜R9基は、それぞれ互いに独立して、水素、1個または複数個のヒドロキシ、ハロゲン、フェニル、シアノ、C1−C6−アルキルカルボニルおよび/またはSO3Hにより無置換または置換され、合計1〜20個の炭素原子、例えば、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、1−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−2−ブチル、3−メチル−2−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2−メチル−3−ペンチル、3−メチル−3−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、2,3−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、2,3−ジメチル−2−ブチル、3,3−ジメチル−2−ブチル、1−ヘプチル、1−オクチル、1−ノニル、1−デシル、1−ウンデシル、1−ドデシル、1−テトラデシル、1−ヘキサデシル、1−オクタデシル、2−ヒドロキシエチル、ベンジル、3−フェニルプロピル、2−シアノエチル、2−(メトキシカルボニル)エチル、2−(エトキシカルボニル)エチル、2−(n−ブトキシカルボニル)エチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヘプタフルオロイソプロピル、ノナフルオロブチル、ノナフルオロイソブチル、ウンデシルフルオロペンチル、ウンデシルフルオロイソペンチル、6−ヒドロキシヘキシルおよびプロピルスホン酸を有することができる非分岐または分岐鎖C1−C18−アルキル、グリコール、ブチレングリコールおよび1〜100単位を有するそのオリゴマーならびに末端基として水素またはC1−C8−アルキル、例えば、RAO−(CHRB−CH2−O)m−CHRB−CH2またはRAO−(CH2CH2CH2CH2O)m−CH2CH2CH2CH2−[式中、RAおよびRBは、それぞれ水素、メチルまたはエチルが好ましく、nは、0〜3が好ましい。]、特に、3−オキサブチル、3−オキサペンチル、3,6−ジオキサヘプチル、3,6−ジオキサオクチル、3,6,9−トリオキサデシル、3,6,9−トリオキサウンデシル、3,6,9,12−テトラオキサトリデシルおよび3,6,9,12−テトラオキサテトラデシル、ビニル、1−プロペン−1−イル、1−プロペン−2−イルおよび1−プロペン−3−イルならびに、N,N−ジメチルアミノおよびN,N−ジエチルアミノなどのN,N−ジ−C1−C6−アルキルアミノが特に好ましい。
【0043】
1〜R9基は、それぞれ互いに独立して、水素またはC1−C18−アルキル、例えばメチル、エチル、1−ブチル、1−ペンチル、1−ヘキシル、1−ヘプチル、1−オクチル、フェニル、2−ヒドロキシエチル、2−シアノエチル、2−(メトキシ−カルボニル)エチル、2−(エトキシカルボニル)エチル、2−(n−ブトキシカルボニル)エチル、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、塩素またはCH3O−(CH2CH2O)m−CH2CH2−およびCH3CH2O−(CH2CH2O)m−CH2CH2−[式中、mは0〜3である]であることが非常に特に好ましい。
【0044】
非常に特に好ましいピリジニウムイオン(IIIa)は、
1〜R5基の1個がメチル、エチルまたは塩素であり、残りのR1〜R5基がそれぞれ水素であり、
3がジメチルアミノであり、残りのR1、R2、R4およびR5基がそれぞれ水素であり、
1〜R5基全てが水素であり、
2がカルボキシまたはカルボキサミドであり、残りのR1、R2、R4およびR5基がそれぞれ水素であり、または
1およびR2またはR2およびR3がともに、1,4−ブタ−1,3−ジエニレンであり、残りのR1、R2、R4およびR5基がそれぞれ水素であるもの、および特に、
1〜R5がそれぞれ水素であり、または
1〜R5基の1個がメチルまたはエチルであり、残りのR1〜R5基がそれぞれ水素であるものである。
【0045】
非常に特に好ましいピリジニウムイオン(IIIa)として、1−メチルピリジニウム、1−エチルピリジニウム、1−(1−ブチル)ピリジニウム、1−(1−ヘキシル)ピリジニウム、1−(1−オクチル)ピリジニウム、1−(1−ヘキシル)ピリジニウム、1−(1−オクチル)ピリジニウム、1−(1−ドデシル)ピリジニウム、1−(1−テトラデシル)ピリジニウム、1−(1−ヘキサデシル)ピリジニウム、1,2−ジ−メチルピリジニウム、1−エチル−2−メチルピリジニウム、1−(1−ブチル)−2−メチルピリジニウム、1−(1−ヘキシル)−2−メチルピリジニウム、1−(1−オクチル)−2−メチルピリジニウム、1−(1−ドデシル)−2−メチルピリジニウム、1−(1−テトラデシル)−2−メチルピリジニウム、1−(1−ヘキサデシル)−2−メチルピリジニウム、1−メチル−2−エチルピリジニウム、1,2−ジエチルピリジニウム、1−(1−ブチル)−2−エチルピリジニウム、1−(1−ヘキシル)−2−エチルピリジニウム、1−(1−オクチル)−2−エチルピリジニウム、1−(1−ドデシル)−2−エチルピリジニウム、1−(1−テトラデシル)−2−エチルピリジニウム、1−(1−ヘキサデシル)−2−エチルピリジニウム、1,2−ジメチル−5−エチルピリジニウム、1,5−ジエチル−2−メチルピリジニウム、1−(1−ブチル)−2−メチル−3−エチルピリジニウム、1−(1−ヘキシル)−2−メチル−3−エチルピリジニウムおよび1−(1−オクチル)−2−メチル−3−エチル−ピリジニウム、1−(1−ドデシル)−2−メチル−3−エチルピリジニウム、1−(1−テトラデシル)−2−メチル−3−エチルピリジニウムおよび1−(1−ヘキサデシル)−2−メチル−3−エチル−ピリジニウムがある。
【0046】
非常に特に好ましいピリジニウムイオン(IIIb)は、
1〜R4がそれぞれ水素であり、または
1〜R4基の1個がメチルまたはエチルであり、残りのR1〜R4基がそれぞれ水素であるものである。
【0047】
非常に特に好ましいピリジニウムイオン(IIIc)は、
1が水素、メチルまたはエチルであり、R2〜R4がそれぞれ互いに独立して、水素またはメチルであり、または
1が水素、メチルまたはエチルであり、R2およびR4がそれぞれメチルであり、R3が水素であるものである。
【0048】
非常に特に好ましいピリジニウムイオン(IIId)は、
1が水素、メチルまたはエチルであり、R2〜R4がそれぞれ互いに独立して、水素またはメチルであり、
1が水素、メチルまたはエチルであり、R2およびR4がそれぞれメチルであり、R3が水素であり、
1〜R4がそれぞれメチルであり、または
1〜R4がそれぞれメチルまたは水素であるものである。
【0049】
非常に特に好ましいイミダゾリウムイオン(IIIe)は、
1が、水素、メチル、エチル、1−プロピル、1−ブチル、1−ペンチル、1−ヘキシル、1−オクチル、1−プロペン−3−イル、2−ヒドロキシエチルまたは2−シアノエチルであり、R2〜R4がそれぞれ互いに独立して、水素、メチルまたはエチルであるものである。
【0050】
非常に特に好ましいイミダゾリウムイオン(IIIe)として、1−メチルイミダゾリウム、1−エチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)イミダゾリウム、1−(1−オクチル)イミダゾリウム、1−(1−ドデシル)イミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)イミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)イミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−メチル−イミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−ブチル−イミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−ブチル−イミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1,2−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,4−ジメチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、1,4−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、3−ブチルイミダゾリウム、1,4−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチルイミダゾリウム、1,3,4,5−テトラメチル−イミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−エチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−ブチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−オクチルイミダゾリウムおよび1−(プロパ−1−エン−3−イル)−3−メチルイミダゾリウムがありうる。
【0051】
非常に特に好ましいピラゾリウムイオン(IIIf)、(IIIg)および(IIIg´)は、
1が水素、メチルまたはエチルであり、R2〜R4がそれぞれ互いに独立して、水素またはメチルであるものである。
【0052】
非常に特に好ましいピラゾリウムイオン(IIIh)は、
1〜R4がそれぞれ互いに独立して、水素またはメチルであるものである。
非常に特に好ましい1−ピラゾリニウムイオン(IIIi)は、
1〜R6がそれぞれ互いに独立して、水素またはメチルであるものである。
【0053】
非常に特に好ましい2−ピラゾリニウムイオン(IIIj)および(IIIj´)は、
1が水素、メチル、エチルまたはフェニルであり、R2〜R6がそれぞれ互いに独立して、水素またはメチルのものである。
【0054】
非常に特に好ましい3−ピラゾリニウムイオン(IIIk)および(IIIk´)は、
1およびR2がそれぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチルまたはフェニルであり、R3〜R6がそれぞれ互いに独立して、水素またはメチルであるものである。
【0055】
非常に特に好ましいイミダゾリニウムイオン(IIII)は、
1およびR2がそれぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、1−ブチルまたはフェニルであり、R3およびR4がそれぞれ互いに独立して、水素、メチルまたはエチルであり、R5およびR6がそれぞれ互いに独立して、水素またはメチルであるものである。
【0056】
非常に特に好ましいイミダゾリニウムイオン(IIIm)および(IIIm´)は、
1およびR2がそれぞれ互いに独立して、水素、メチルまたはエチルであり、R3〜R6がそれぞれ互いに独立して、水素またはメチルであるものである。
【0057】
非常に特に好ましいイミダゾリニウムイオン(IIIn)および(IIIn´)は、
1〜R3がそれぞれ互いに独立して、水素、メチルまたはエチルであり、R4〜R6がそれぞれ互い独立して、水素またはメチルであるものである。
【0058】
非常に特に好ましいチアゾリウムイオン(IIIo)および(IIIo´)ならびにオキサゾリウムイオン(IIIp)は、
1が水素、メチル、エチルまたはフェニルであり、R2およびR3がそれぞれ互いに独立して、水素またはメチルであるものである。
【0059】
非常に特に好ましい1,2,4−トリアゾリウムイオン(IIIq)、(IIIq´)および(IIIq´´)は、
1およびR2がそれぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチルまたはフェニルであり、R3が水素、メチルまたはフェニルであるものである。
【0060】
非常に特に好ましい1,2,3−トリアゾリウムイオン(IIIr)、(IIIr´)および(IIIr´´)は、
1が水素、メチルまたはエチルであり、R2およびR3がそれぞれ互いに独立して、水素またはメチルであり、またはR2およびR3がともに、1,4−ブタ−1,3−ジエニレンであるものである。
【0061】
非常に特に好ましいピロリジニウムイオン(IIIs)は、
1が水素、メチル、エチルまたはフェニルであり、R2〜R9がそれぞれ互いに独立して、水素またはメチルであるものである。
【0062】
非常に特に好ましいイミダゾリジニウムイオン(IIIt)は、
1およびR4がそれぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチルまたはフェニルであり、R2およびR3ならびにさらにR5〜R8がそれぞれ互いに独立して、水素またはメチルであるものである。
【0063】
非常に特に好ましいアンモニウムイオン(IIIu)は、
1〜R3がそれぞれ互いに独立して、C1−C18−アルキル、または
1およびR2がともに、1,5−ペンチレンまたは3−オキサ−1,5−ペンチレンおよびR3がC1−C18−アルキル、2−ヒドロキシエチルまたは2−シアノエチルであるものである。
【0064】
非常に特に好ましいアンモニウムイオン(IIIu)は、メチルトリ(1−ブチル)アンモニウム、N,N−ジメチルピペリジニウムおよびN,N−ジメチルモルホリニウムである。
【0065】
上述のR基による四級化により得られることができる一般式(IIIu)の第四級アンモニウムイオン由来の第三級アミンの例は、ジエチル−n−ブチルアミン、ジエチル−tert−ブチルアミン、ジエチル−n−ペンチルアミン、ジエチル−ヘキシルアミン、ジエチルオクチルアミン、ジエチル−(2−エチルヘキシル)アミン、ジ−n−プロピルブチルアミン、ジ−n−プロピル−n−ペンチルアミン、ジ−n−プロピルヘキシルアミン、ジ−n−プロピルオクチルアミン、ジ−n−プロピル−(2−エチルヘキシル)アミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジイソプロピル−n−プロピルアミン、ジイソプロピルブチルアミン、ジイソプロピルペンチルアミン、ジイソプロピルヘキシルアミン、ジイソプロピルオクチルアミン、ジイソプロピル(2−エチルヘキシル)アミン、ジ−n−ブチルエチルアミン、ジ−n−ブチル−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチル−n−ペンチルアミン、ジ−n−ブチルヘキシルアミン、ジ−n−ブチルオクチルアミン、ジ−n−ブチル(2−エチルヘキシル)アミン、N−n−ブチル−ピロリジン、N−sec−ブチルピロリジン、N−tert−ブチルピロリジン、N−n−ペンチルピロリジン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジ−n−ブチルシクロヘキシルアミン、N−n−プロピルピペリジン、N−イソプロピルピペリジン、N−n−ブチルピペリジン、N−sec−ブチルピペリジン、N−tert−ブチルピペリジン、N−n−ペンチルピペリジン、N−n−ブチルモルホリン、N−sec−ブチルモルホリン、N−tert−ブチルモルホリン、N−n−ペンチルモルホリン、N−ベンジル−N−エチルアニリン、N−ベンジル−N−n−プロピルアニリン、N−ベンジル−N−イソプロピルアニリン、N−ベンジル−N−n−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジ−n−ブチル−p−トルイジン、ジエチルベンジルアミン、ジ−n−プロピルベンジルアミン、ジ−n−ブチルベンジルアミン、ジエチルフェニルアミン、ジ−n−プロピルフェニルアミンおよびジ−n−ブチルフェニルアミンである。
【0066】
好ましい第三級アミン(IIIu)は、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチル−tert−ブチルアミン、ジ−イソプロピルブチルアミン、ジ−n−ブチル−n−ペンチルアミン、N,N−ジ−n−ブチルシクロヘキシルアミンおよびさらにペンチル異性体由来の第三級アミンである。
【0067】
特に好ましい第三級アミンは、ジ−n−ブチル−n−ペンチルアミンおよびペンチル異性体由来の第三級アミンである。3個の同一の基を有するさらに好ましい第三級アミンは、トリアリルアミンである。
【0068】
非常に特に好ましいグアニジニウムイオン(IIIv)は、
1〜R5が、それぞれメチルであるものである。
非常に特に好ましいグアニジニウムイオン(IIIv)は、
N,N,N´,N´,N´´,N´´−ヘキサメチルグアニジニウムである。
【0069】
非常に特に好ましいクロリニウムイオン(IIIw)は、
1およびR2がそれぞれ互いに独立して、メチル、エチル、1−ブチルまたは1−オクチルであり、R3が水素、メチル、エチル、アセチル、−SO2OH−または−PO(OH)2であり、
1がメチル、エチル、1−ブチルまたは1−オクチルであり、R2が−CH2−CH2−OR4基であり、R3およびR4がそれぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、アセチル、−SO2OHまたは−PO(OH)2であり、または
1が−CH2−CH2−OR4基であり、R2が−CH2−CH2−OR5基であり、R3〜R5がそれぞれ互いに独立して、水素、メチル、エチル、アセチル、−SO2OHまたは−PO(OH)2であるものである。
【0070】
特に好ましいクロリニウムイオン(IIIw)は、R3が水素、メチル、エチル、アセチル、5−メトキシ−3−オキサペンチル、8−メトキシ−3,6−ジオキサ−オクチル、11−メトキシ−3,6,9−トリオキサウンデシル、7−メトキシ−4−オキサヘプチル、11−メトキシ−4,8−ジオキサウンデシル、15−メトキシ−4,8,12−トリオキサペンタデシル、9−メトキシ−5−オキサノニル、14−メトキシ−5,10−オキサテトラデシル、5−エトキシ−3−オキサペンチル、8−エトキシ−3,6−ジオキサオクチル、11−エトキシ−3,6,9−トリオキサウンデシル、7−エトキシ−4−オキサヘプチル、11−エトキシ−4,8−ジオキサウンデシル、15−エトキシ−4,8,12−トリオキサペンタデシル、9−エトキシ−5−オキサノニルまたは14−エトキシ−5,10−オキサ−テトラデシルから選択されるものである。
【0071】
非常に特に好ましいホスホニウムイオン(IIIx)は、
1〜R3がそれぞれ互いに独立して、C1−C18−アルキル、特にブチル、イソブチル、1−ヘキシルまたは1−オクチルであるものである。
【0072】
上述の複素環陽イオンのうち、ピリジニウムイオン、ピラゾリニウムイオン、ピラゾリウムイオンおよびイミダゾリニウムイオンならびにイミダゾリウムイオンが好ましい。さらにアンモニウムイオンが好ましい。
【0073】
1−メチルピリジニウム、1−エチルピリジニウム、1−(1−ブチル)−ピリジニウム、1−(1−ヘキシル)ピリジニウム、1−(1−オクチル)ピリジニウム、1−(1−ヘキシル)ピリジニウム、1−(1−オクチル)ピリジニウム、1−(1−ドデシル)ピリジニウム、1−(1−テトラデシル)ピリジニウム、1−(1−ヘキサ−デシル)ピリジニウム、1,2−ジメチルピリジニウム、1−エチル−2−メチルピリジニウム、1−(1−ブチル)−2−メチルピリジニウム、1−(1−ヘキシル)−2−メチルピリジニウム、1−(1−オクチル)−2−メチルピリジニウム、1−(1−ドデシル)−2−メチルピリジニウム、1−(1−テトラデシル)−2−メチルピリジニウム、1−(1−ヘキサデシル)−2−メチルピリジニウム、1−メチル−2−エチルピリジニウム、1,2−ジエチルピリジニウム、1−(1−ブチル)−2−エチルピリジニウム、1−(1−ヘキシル)−2−エチルピリジニウム、1−(1−オクチル)−2−エチルピリジニウム、1−(1−ドデシル)−2−エチルピリジニウム、1−(1−テトラデシル)−2−エチルピリジニウム、1−(1−ヘキサデシル)−2−エチルピリジニウム、1,2−ジメチル−5−エチルピリジニウム、1,5−ジエチル−2−メチルピリジニウム、1−(1−ブチル)−2−メチル−3−エチルピリジニウム、1−(1−ヘキシル)−2−メチル−3−エチルピリジニウム、1−(1−オクチル)−2−メチル−3−エチルピリジニウム、1−(1−ドデシル)−2−メチル−3−エチルピリジニウム、1−(1−テトラデシル)−2−メチル−3−エチルピリジニウム、1−(1−ヘキサデシル)−2−メチル−3−エチルピリジニウム、1−メチルイミダゾリウム、1−エチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−イミダゾリウム、1−(1−オクチル)−イミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−イミダゾリウム、1−(1−テトラドデシル)イミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)イミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1,2−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−2,3−ジメチル−イミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−2,3−ジメチルイミダゾリウムおよび1−(1−オクチル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,4−ジメチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、1,4−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、3−ブチルイミダゾリウム、1,4−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチルイミダゾリウム、1,3,4,5−テトラメチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−エチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−ブチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−オクチルイミダゾリウムならびに1−(プロパ−1−エン−3−イル)−3−メチルイミダゾリウムが特に好ましい。
【0074】
陰イオンとして、おもに全ての陰イオンを使用することが可能である。
イオン液体の陰イオン[Y]n-は、例えば、
式:F-、Cl-、Br-、I-、BF4-、PF6-、CF3SO3-、(CF3SO32-、CF3CO2-、CCl3CO2-、CN-、SCN-、OCN-のハロゲン化物およびハロゲン含有化合物の群、
一般式:SO42-、HSO4-、SO32-、HSO3-、RaOSO3-、RaSO3-の硫酸、亜硫酸およびスルホン酸の群、
一般式:PO43-、HPO42-、H2PO4-、RaPO42-、HRaPO4-、RabPO4-のリン酸の群、
一般式:RaHPO3-、RabPO2-、RabPO3-のホスホン酸およびホスフィン酸の群、
一般式:PO33-、HPO32-、H2PO3-、RaPO32-、RaHPO3-、RabPO3-の亜リン酸の群、
一般式:RabPO2-、RaHPO2-、RabPO-、RaHPO-のホスホナイトおよびホスフィナイトの群、
一般式:RaCOO-のカルボン酸の群、
一般式:BO33-、HBO32-、H2BO3-、RabBO3-、RaHBO3-、RaBO32-、B(ORa)(ORb)(ORc)(ORd-、B(HSO4-、B(RaSO4-のホウ酸の群、
一般式:RaBO22-、RabBO-のボロン酸の群、
一般式:SiO44-、HSiO43-、H2SiO42-、H3SiO4-、RaSiO43-、RabSiO42-、RabcSiO4-、HRaSiO42-、H2aSiO4-、HRabSiO4-のケイ酸およびケイ酸エステルの群、
一般式:RaSiO33-、RabSiO22-、RabcSiO-、RabcSiO3-、RabcSiO2-、RabSiO32-、のアルキルシランおよびアリールシラン塩の群、
一般式:
【0075】
【化5】

のカルボン酸イミド、ビス(スルホニル)イミドおよびスルホニルイミドの群、
一般式:
【0076】
【化6】

のメチドの群
[式中、Ra、Rb、RcおよびRdはそれぞれ互いに独立して、水素、C1−C30−アルキル、場合により1個または複数個の隣接しない酸素および/または硫黄原子ならびに/あるいは1個または複数個の置換または無置換イミノ基により中断されることができるC2−C18−アルキル、C6−C14−アリール、C5−C12−シクロアルキルあるいは5または6員の、酸素、窒素および/または硫黄含有複素環であり、この場合、これらのうち2個はともに、場合により1個または複数個の酸素および/または硫黄原子ならびに/あるいは1個または複数個の無置換または置換イミノ基により中断されることができる不飽和、飽和または芳香族環を形成することができ、この場合、上記の基はそれぞれ、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子および/または複素環によりさらに置換されることができる。]
から選択される。
【0077】
本明細書において、場合により官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子および/または複素環により置換されることができるC1−C18−アルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、2,4,4−トリメチルペンチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘタデシル、オクタデシル、1,1−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルブチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、ベンジル、1−フェニルエチル、α,α−ジメチルベンジル、ベンズヒドリル、p−トリルメチル、1−(p−ブチルフェニル)エチル、p−クロロベンジル、2,4−ジクロロベンジル、p−メトキシベンジル、m−エトキシベンジル、2−シアノエチル、2−シアノプロピル、2−メトキシカルボニルエチル、2−エトキシカルボニルエチル、2−ブトキシカルボニルプロピル、1,2−ジ−(メトキシカルボニル)エチル、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、2−ブトキシエチル、ジエトキシメチル、ジエトキシエチル、1,3−ジオキソラン−2−イル、1,3−ジオキサン−2−イル、2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル、2−イソプロポキシエチル、2−ブトキシプロピル、2−オクチル−オキシエチル、クロロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、1,1−ジメチル−2−クロロエチル、2−メトキシイソプロピル、2−エトキシエチル、ブチルチオメチル、2−ドデシルチオエチル、2−フェニルチオエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、6−ヒドロキシヘキシル、2−アミノエチル、2−アミノプロピル、4−アミノブチル、6−アミノヘキシル、2−メチルアミノエチル、2−メチルアミノプロピル、3−メチルアミノプロピル、4−メチルアミノブチル、6−メチルアミノヘキシル、2−ジメチルアミノエチル、2−ジメチルアミノプロピル、3−ジメチルアミノプロピル、4−ジメチルアミノブチル、6−ジメチルアミノヘキシル、2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルエチル、2−フェノキシエチル、2−フェノキシプロピル、3−フェノキシプロピル、4−フェノキシブチル、6−フェノキシヘキシル、2−メトキシエチル、2−メトキシ−プロピル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、6−メトキシヘキシル、2−エトキシエチル、2−エトキシプロピル、3−エトキシプロピル、4−エトキシブチルまたは6−エトキシヘキシルである。
【0078】
場合により1個または複数個の隣接しない酸素および/または硫黄原子ならびに/あるいは1個または複数個の置換または無置換イミノ基により中断されることができるC2−C18−アルキルは、例えば、5−ヒドロキシ−3−オキサペンチル、8−ヒドロキシ−3,6−ジオキサオクチル、11−ヒドロキシ−3,6,9−トリオキサウンデシル、7−ヒドロキシ−4−オキサヘプチル、11−ヒドロキシ−4,8−ジオキサウンデシル、15−ヒドロキシ−4,8,12−トリオキサペンタデシル、9−ヒドロキシ−5−オキサノニル、14−ヒドロキシ−5,10−オキサテトラデシル、5−メトキシ−3−オキサペンチル、8−メトキシ−3,6−ジオキサオクチル、11−メトキシ−3,6,9−トリオキサウンデシル、7−メトキシ−4−オキサヘプチル、11−メトキシ−4,8−ジオキサウンデシル、15−メトキシ−4,8,12−トリオキサペンタデシル、9−メトキシ−5−オキサノニル、14−メトキシ−5,10−オキサテトラデシル、5−エトキシ−3−オキサペンチル、8−エトキシ−3,6−ジオキサオクチル、11−エトキシ−3,6,9−トリオキサウンデシル、7−エトキシ−4−オキサヘプチル、11−エトキシ−4,8−ジオキサウンデシル、15−エトキシ−4,8,12−トリオキサペンタデシル、9−エトキシ−5−オキサノニルまたは14−エトキシ−5,10−オキサテトラデシルである。
【0079】
2個の基が環を形成する場合、これらの基はともに、縮合構成要素として、例えば1,3−プロピレン、1,4−ブチレン、2−オキサ−1,3−プロピレン、1−オキサ−1,3−プロピレン、2−オキサ−1,3−プロペニレン、1−アザ−1,3−プロペニレン、1−C1−C4−アルキル−1−アザ−1,3−プロペニレン、1,4−ブタ−1,3−ジエニレン、1−アザ−1,4−ブタ−1,3−ジエニレンまたは2−アザ−1,4−ブタ−1,3−ジエニレンを形成することができる。
【0080】
隣接しない酸素および/または硫黄原子ならびに/あるいはイミノ基の数はおもに、少しの制限もされず、または基もしくは環状構成要素の大きさにより自動的に制限される。一般に、各基は、5個以下、好ましくは4個以下および非常に特に好ましくは3個以下であるだろう。さらに、一般に、いずれかの2個のヘテロ原子間に、少なくとも1個の炭素原子、好ましくは少なくとも2個の炭素原子がある。
【0081】
置換および無置換イミノ基は、例えば、イミノ、メチルイミノ、イソプロピルイミノ、n−ブチルイミノまたはtert−ブチルイミノであってよい。
本発明において、「官能基」という語句は、例えば以下を指す:カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ジ−(C1−C4−アルキル)アミノ、C1−C4−アルキルオキシカルボニル、シアノまたはC1−C4−アルコキシ。本明細書において、C1−C4−アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチルである。
【0082】
場合により官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子および/または複素環により置換されることができるC6−C14−アリールは、例えば、フェニル、トリル、キシリル、α−ナフチル、β−ナフチル、4−ジフェニリル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、トリクロロフェニル、ジフルオロフェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、ジエチルフェニル、イソプロピルフェニル、tert−ブチルフェニル、ドデシルフェニル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、エトキシフェニル、ヘキシルオキシフェニル、メチルナフチル、イソプロピルナフチル、クロロナフチル、エトキシナフチル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,6−ジメトキシフェニル、2,6−ジクロロフェニル、4−ブロモフェニル、2もしくは4−ニトロフェニル、2,4−もしくは2,6−ジニトロフェニル、4−ジメチルアミノフェニル、4−アセチルフェニル、メトキシエチルフェニルまたはエトキシメチルフェニルである。
【0083】
場合により官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子および/または複素環により置換されることができるC5−C12−シクロアルキルは、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、ジエチルシクロヘキシル、ブチルシクロヘキシル、メトキシシクロヘキシル、ジメトキシシクロヘキシル、ジエトキシシクロヘキシル、ブチルチオシクロヘキシル、クロロシクロヘキシル、ジクロロシクロヘキシル、ジクロロシクロペンチルまたは飽和もしくは不飽和二環状系、例えば、ノルボルニルまたはノルボルネニルである。
【0084】
5または6員の、酸素、窒素および/または硫黄含有複素環は、例えば、フリル、チオフェニル、ピリル、ピリジル、インドリル、ベンゾキサゾリル、ジオキソリル、ジオキシル、べンズイミダゾリル、べンズチアゾリル、ジメチルピリジル、メチルキノリル、ジメチルピリル、メトキシフリル、ジメトキシピリジル、ジフルオロピリジル、メチルチオフェニル、イソプロピルチオフェニルまたはtert−ブチルチオフェニルである。
【0085】
好ましい陰イオンは、ハロゲン化物およびハロゲン含有化合物の群、カルボン酸の群、硫酸、亜硫酸およびスルホン酸の群ならびにリン酸の群、特にハロゲン化物およびハロゲン含有化合物の群、カルボン酸の群、SO42-、SO32-、RaOSO3-およびRaSO3-からなる群ならびにPO43-およびRabPO4-からなる群から選択される。
【0086】
好ましい陰イオンは、塩素、臭素、ヨウ素、SCN-、OCN-、CN-、酢酸、C1−C4−アルキル硫酸、Ra−COO-、RaSO3-、RabPO4-、メタンスルホン酸、トシル酸またはC1−C4−ジアルキルリン酸である。
【0087】
特に好ましい陰イオンは、Cl-、CH3COO-、C25COO-、C65COO-、CH3SO3-、(CH3O)2PO2-または(C25O)2PO2-である。
さらに好ましい実施形態において、式I
[式中、
[A]n+は、1−メチルイミダゾリウム、1−エチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)イミダゾリウム、1−(1−オクチル)−イミダゾリウム、1−1−ドデシル)イミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)イミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)イミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−3−ブチル−イミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−ドデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−テトラデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−エチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−ブチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキサデシル)−3−オクチルイミダゾリウム、1,2−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−ブチル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−ヘキシル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(1−オクチル)−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,4−ジメチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、1,4−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、1,4−ジメチル−3−ブチルイミダゾリウム、1,4−ジメチル−3−オクチル−イミダゾリウム、1,4,5−トリメチルイミダゾリウム、1,3,4,5−テトラメチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−エチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−ブチルイミダゾリウム、1,4,5−トリメチル−3−オクチルイミダゾリウムまたは1−(プロパ−1−エン−3−イル)−3−メチルイミダゾリウムであり、
[Y]n+は、Cl-、CH3COO-、C25COO-、C65COO-、CH3SO3-、(CH3O)2PO2-または(C25O)2PO2-である。]
のイオン液体を使用する。
【0088】
本発明の方法において、式Iのイオン液体または式Iのイオン液体の混合物を使用することができ、式Iのイオン液体を使用することが好ましい。
本発明のさらなる実施形態において、式IIのイオン液体または式IIのイオン液体の混合物を使用することが可能である。
【0089】
本発明のさらなる実施形態において、式IおよびIIのイオン液体の混合物を使用することが可能である。
特に好ましくは、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−(n−ブチル)−3−メチルイミダゾリウムクロライド(1−(1−ブチル)−3−メチルイミダゾリウムクロライドと同義)を用いる。
【0090】
・金属触媒
本発明において用いる金属触媒は、周期律表5〜13族から選ばれる少なくとも1種の金属触媒である。これらの金属の中では、アルミニウム、鉄、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、白金、ニオブから選ばれる少なくとも1種の金属が好ましい。
【0091】
これらの金属触媒は、イオン液体および/または水に可溶であることが好ましく、特に、入手の容易性の観点からハロゲン化物が好ましい。
・酸触媒
また、本発明の方法においては、無機酸、有機酸またはその混合物を、加水分解をより促進させるための酸触媒として、金属触媒と併用することもできる。
【0092】
無機酸の例は、HF、HCl、HBrもしくはHIなどのハロゲン化水素酸、HClO4などの過ハロゲン酸、HClO3などのハロゲン酸、H2SO4などの硫黄含有酸、ポリ硫酸もしくはH2SO3、HNO3などの窒素含有酸またはH3PO4などのリン含有酸、ポリリン酸あるいはH3PO3である。
【0093】
HClもしくはHBrなどのハロゲン化水素酸、H2SO4、HNO3またはH3PO4、特にHCl、H2SO4またはH3PO4を使用することが好ましい。
有機酸の例は、
カルボン酸、例えばC1−C6−アルカンカルボン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、n−ブタンカルボン酸またはピバリン酸、
ジカルボン酸またはポリカルボン酸、例えば、コハク酸、マレイン酸またはフマル酸、
ヒドロキシカルボン酸、例えば、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸またはクエン酸、
ハロゲン化カルボン酸、例えば、C1−C6−ハロアルカンカルボン酸、例えば、フルオロ酢酸、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ジフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、クロロフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、2−クロロプロピオン酸、ペルフルオロプロピオン酸またはペルフルオロブタンカルボン酸、
芳香族カルボン酸、例えば、安息香酸、p−メトキシ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、テレフタル酸、
スルホン酸、例えば、C1−C6−アルカンスルホン酸、例えば、メタンスルホン酸またはエタンスルホン酸、
ハロゲン化スルホン酸、例えば、C1−C6−ハロアルカンスルホン酸、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、
芳香族スルホン酸、例えば、ベンゼンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸、および
スルフィン酸、例えば、C1−C6−アルカンスルフィン酸、例えば、メタンスルフィン酸またはエタンスルフィン酸、
ハロゲン化スルフィン酸、例えば、C1−C6−ハロアルカンスルフィン酸、例えば、トリフルオロメタンスルフィン酸、
芳香族スルフィン酸、例えば、ベンゼンスルフィン酸またはp−トルエンスルフィン酸である。
【0094】
1−C6−アルカンカルボン酸、例えば、酢酸またはプロピオン酸、ハロゲン化カルボン酸、例えば、C1−C6−ハロアルカンカルボン酸、例えば、フルオロ酢酸、クロロ酢酸、ジフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、クロロフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸もしくはペルフルオロプロピオン酸、ジカルボン酸またはポリカルボン酸、例えば、コハク酸、マレイン酸またはフマル酸、ヒドロキシカルボン酸、例えば、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、乳酸、芳香族カルボン酸、例えば、安息香酸、p−メトキシ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、テレフタル酸、スルホン酸、例えば、C1−C6−アルカンスルホン酸、例えば、メタンスルホン酸もしくはエタンスルホン酸、ハロゲン化スルホン酸、例えば、C1−C6−ハロアルカンスルホン酸、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、芳香族スルホン酸、例えば、ベンゼンスルホン酸または4−メチルフェニルスルホン酸、あるいはスルフィン酸、例えば、C1−C6−アルカンスルフィン酸、例えば、メタンスルフィン酸もしくはエタンスルフィン酸、ハロゲン化スルフィン酸、例えば、C1−C6−ハロアルカンスルフィン酸、例えば、トリフルオロメタンスルフィン酸、芳香族スルフィン酸、例えば、ベンゼンスルフィン酸または4−メチルフェニルスルフィン酸を有機酸として使用することが好ましい。
【0095】
酢酸、クロロフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ペルフルオロプロピオン酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、安息香酸、p−メトキシ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルフィン酸、トリフルオロメタンスルフィン酸、またはp−トルエンスルフィン酸を使用することがより好ましい。
酸の使用量は、セルロース中のグルコース単位に対して、0.1〜50モル%である。好ましくは、0.5〜30モル%である。
【0096】
・反応工程
本発明におけるセルロースとしては、広範な種々の原料、例えば綿、麻、ラミー、わら、細菌等またはセルロース富化形態の木もしくはバガス由来のセルロースを使用することができる。特に、非可食のセルロース材料を用いることができる。
【0097】
本発明の方法において、イオン液体にセルロースを溶解して、セルロース溶液を調製する。セルロースの濃度は、広範に変化させることができる。通常、溶液質量の合計に対して0.1〜50質量%、好ましくは0.2〜40質量%、特に好ましくは0.3〜30質量%および非常に特に好ましくは0.5〜20質量%である。
【0098】
本溶解方法を室温または加熱しながら、ただし、イオン液体の融点または軟化温度以上の、通常0〜200℃、好ましくは20〜180℃、特に好ましくは50〜150℃にて実施することができる。しかし、激しく撹拌または混合することにより、およびマイクロウェーブエネルギーもしくは超音波エネルギーの導入により、またはこれらの併用により融解方法を促進することも可能である。
【0099】
次いで、金属触媒及び必要に応じて水をこのようにして得られたセルロース溶液に添加する。使用されるセルロースに付着している水が所望の分解度に達するのに不十分である場合、水の補充が必要となる。水の使用量(セルロースへの付着水量+補充水量)としては特に制限はないが、使用されるセルロース質量の合計に対して0.5〜50当量が好ましい。より好ましくは、1〜20当量である。
【0100】
金属触媒の使用量は、セルロース中のグルコース単位に対して、0.1〜50モル%である。好ましくは、0.5〜30モル%である。
別の実施形態において、イオン液体および場合により、水を予混合し、セルロースを本液体に溶解し、溶液を得る。なお、この段階でセルロースが完全に溶解している必要はない。
【0101】
さらに、1種または複数種の追加の液体を前記溶液に添加し、またはイオン液体および/または酸ならびに/あるいは場合により、水とともに入れることが可能である。本明細書において、使用可能な液体は、セルロースの溶解性に有害事象を有さないもの、例えば、非プロトン性二極性溶剤、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはスルホランである。
【0102】
具体的な実施形態において、前記溶液は、反応混合物質量の合計に対して追加の液体5質量%以下、好ましくは2質量%以下、特に0.1質量%以下を含む。
加水分解は、50〜200℃、好ましくは80〜180℃、特に好ましくは80〜150℃の比較的温和な温度範囲で実施する。このような温度であれば、生成したグルコースが他の化合物に変化することが少ないと考えられるので好ましい。
【0103】
通常、常圧にて反応を実施するが、勿論加圧下に実施することもできる。
一般に、空気中にて反応を実施する。しかし、不活性ガス、すなわち、例えば、N2、希ガス、CO2またはその混合物下において行うことも可能である。水素ガスが存在すると、生成したグルコースが還元されて、グルコースの収量が低減するので、水素ガスの非存在下に行うことが望ましい。
【0104】
通常、反応時間は0.1〜50時間である。好ましくは、0.1〜20時間である。
反応終了後、反応混合物からグルコース等の単糖類を単離、精製する方法は通常の公知の方法、例えば抽出や晶析、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の方法を適宜選択することができる。セルロースの分解が完全でない場合、通常、セルロースをあらかじめセルロースが溶解しない適当な溶媒、例えば水、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール、アセトン等のケトンなどを用いて析出、濾別除去した後の反応混合物を得てから上記方法により単離、精製を行うことが望ましい。なお、上記方法によるセルロースの加水分解反応の後、必要に応じて、たとえば生成したグルコースの水酸基のアセチル化のような反応を連続的に行うことも可能である。
【実施例】
【0105】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
アルゴン雰囲気下、セルロース(cellulose microcrystalline, Merck製, 40mg)とイオン液体1−エチル−3−メチル−1H−イミダゾリ−3−ウムクロライド([EMIM]Cl 1.0g)を丸底フラスコに加え、1時間100℃で攪拌して均一溶液とする。そこに塩化ロジウム3水和物(関東化学製, 13mg、 セルロース中のグルコース単位に対し20モル%)の蒸留水(40mg, セルロース中のグルコース単位に対し10当量)溶液を同じ温度で加えた。得られた茶色の反応溶液をさらに16時間同じ温度で攪拌した(反応時間)。反応液から水を減圧加温下(85℃)留去し、室温まで冷却した。酢酸エチルを用いて抽出した(50mlで3回)。有機層を合わせて飽和食塩水50mlで洗浄した。無水硫酸ナトリウムを用いて溶液を乾燥した後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製し、グルコースを得た。グルコースの収率は高速液体クロマトグラフィーにより算出した。また、5−ヒドロキシメチル−1−フルフラール(HMF)はほとんど観測されなかった。HMFの収率は内部標準としてメシチレンを用いたプロトンNMRにより算出した。結果を表1に示す。
【0106】
[実施例2〜11]
使用する触媒の種類、蒸留水量、反応温度、反応時間を適宜変更した以外は、実施例1と同様に反応を実施した。その結果を表1に示す。
【0107】
【表1】

[実施例9〜11]
使用する蒸留水の量を適宜変更した以外は、実施例3と同様に反応を実施した。結果を表2に示す。
【0108】
【表2】

[実施例12〜16]
使用するイオン液体、反応温度および反応時間を適宜変更した以外は実施例3と同様に反応を実施した。結果を表3に示す。なお、表3中の[BMIM]Clは1−(n−ブチル)−3−メチル−1H−イミダゾリ−3−ウムクロライドを示す。但し、実施例14〜16においては、触媒として、RhCl3・3H2Oの水性溶液(11.6mg触媒/44mg H2O)を使用した。
【0109】
【表3】

[実施例17〜23]
用いる触媒量および反応時間を適宜変更した以外は実施例13と同様にして反応を実施した。但し、実施例21では、セルロースを80mg使用し、実施例22では、セルロース160mg使用した。結果を表4に示す。
【0110】
【表4】

[実施例24〜31]
使用する触媒の種類および反応時間を適宜変更した以外は実施例19と同様にして反応を実施した。結果を表5に示す。
【0111】
【表5】

[実施例32〜35]
反応温度および反応時間を適宜変更した以外は実施例24と同様にして反応を実施した。但し、触媒としては、FeCl3の水溶液を使用した。結果を表6に示す。
【0112】
【表6】

[実施例36〜47]
反応時間を適宜変更した以外は実施例19と同様にして反応を実施した。
結果を表7に示す。
【0113】
【表7】

[実施例48]
使用する触媒の種類および反応時間を適宜変更した以外は実施例19と同様にして反応を実施した。触媒として、三塩化鉄およびパラ−トルエンスルフィン酸(pTSA)をセルロース中のグルコース単位あたりそれぞれ5モル%使用した。結果を表8に示す。
【0114】
【表8】

[実施例49〜60]
使用する触媒の種類を三塩化鉄の代わりに三塩化ロジウム3水和物とし、反応時間を適宜変更した以外は実施例48と同様にして反応を実施した。結果を表9に示す。
【0115】
【表9】

[実施例61〜70]
アルゴン雰囲気下,セルロース(400mg)とイオン液体1−(n−ブチル)−3−メチル−1H−イミダゾリ−3−ウムクロライド([BMIM]Cl、5g)を丸底フラスコに加え、1時間120℃で攪拌して均一溶液とする。そこに塩化ロジウム3水和物(33mg, セルロース中のグルコース単位に対し5モル%)の蒸留水(450mg, セルロースに対し10当量)溶液と表中に示す有機酸(セルロース中のグルコース単位に対し5モル%)を同じ温度で加えた。得られた茶色の反応溶液をさらに同じ温度で攪拌した(この攪拌時間を反応時間とする)。反応液から水を減圧加温下(85℃)留去し、室温まで冷却した。ここに無水ピリジン(6.09ml, セルロースに対し30当量)を加えて0℃に冷却し、無水酢酸(4.7ml、セルロースに対し20当量)を加えた。その反応混合物を22時間室温まで自然昇温しながら攪拌した。0℃に再冷却した後、蒸留水20mlを加えて反応を止め、酢酸エチルを用いて抽出した(50mlで3回)。有機層を合わせて飽和食塩水50mlで洗浄した。無水硫酸ナトリウムを用いて溶液を乾燥した後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製し、アセチル化されたグルコースを得た。収率は高速液体クロマトグラフィーにより算出した。結果を表10に示す。
【0116】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン液体、周期律表5〜13族から選ばれる少なくとも1種の金属触媒および水の存在下にセルロースを加水分解することを含む単糖類の製造方法。
【請求項2】
前記金属触媒の金属が、アルミニウム、鉄、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、白金、ニオブから選択される少なくとも1種である請求項1に記載の単糖類の製造方法。
【請求項3】
前記水として、使用されるセルロースに付着している水以外の水の存在下にセルロースを加水分解する請求項1または2のいずれかに記載の単糖類の製造方法。
【請求項4】
前記金属触媒の使用量がセルロース中のグルコース単位に対して0.1〜50モル%である請求項1〜3のいずれかに記載の単糖類の製造方法。
【請求項5】
前記水の使用量がセルロースに対して0.5〜50当量である請求項1〜4のいずれかに記載の単糖類の製造方法
【請求項6】
前記加水分解を50〜200℃の加熱下で行う請求項1〜5のいずれかに記載の単糖類の製造方法。
【請求項7】
前記金属触媒がイオン液体および/または水に可溶である請求項1〜6のいずれかに記載の単糖類の製造方法。
【請求項8】
前記加水分解をさらに酸触媒の存在下で行う請求項1〜7のいずれかに記載の単糖類の製造方法。
【請求項9】
前記単糖類がグルコースおよび/または5−(ヒドロキシメチル)−2−フルフラールである請求項1〜8のいずれかに記載の単糖類の製造方法。

【公開番号】特開2011−184420(P2011−184420A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54667(P2010−54667)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】