説明

単純ヘルペスウイルス感染の治療および予防用ワクチン

本発明はヘルペスウイルス感染を予防および治療する方法および組成物に関する。本発明は、ヘルペスウイルスに対する免疫応答を活性化することができる抗原性ペプチド、および抗原性ペプチドとアジュバントの複合体を含有する医薬組成物を提供する。本発明はまた、抗原性ペプチドおよび抗原性ペプチドとアジュバントの複合体を調製する方法も提供する。医薬組成物の使用方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 序
本発明は単純ヘルペスウイルス感染を予防および治療するための方法ならびに組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2. 背景
2.1. ヘルペスウイルス感染とワクチン
ヘルペスウイルスとしては、1型(HSV-1)および2型(HSV-2)と名付けられた2種の密接に関連する変異体を含む単純ヘルペスウイルス(HSV)が挙げられる。HSV初感染は健康な成人の生命を脅かすことは滅多にないが、妊娠中に初感染した母体から生まれる新生児に重度の結果をもたらしうる。HSV-1とHSV-2は一部の個体においては頻発性のおよび/または疼痛のある再発と関係があり、それぞれコールドソア(cold sore)および性器水疱として発症する。HSVはヒトにおける性器感染の流行性病因であり、新症例600,000件の年間発生件数が見積もられ、1000万〜2000万の個人が慢性再発疾患の症候を経験している。アシクロビルなどの抗ウイルス薬の連続投与は、急性HSV疾患の重症度を改善しかつ再発事象の頻度と期間を軽減するが、かかる化学療法の介入は、潜伏の確立を中止するものでないしまたは潜伏ウイルスの状態を変えるものでもない。その結果、再発疾患パターンは薬物治療を止めると速やかに再確立される。現在、HSV-1またはHSV-2の予防または治療用の有効なワクチンは存在しない。
【0003】
現在利用しうるワクチン接種のほとんどの手法は、HSV感染の治療用に研究されている。ワクチンを調製する伝統的な方法としては、不活化または弱毒化した病原体の使用が挙げられる。病原性微生物を適切に不活化することにより、その免疫原性を破壊することなく無害な生物学的作用薬を得ることができる。この「死滅した」粒子を宿主中に注入すると、生存微生物による将来の感染を予防することができる免疫応答が惹起されるだろう。しかし、不活化した病原体をワクチンとして使用する上での大きな問題は全ての微生物を不活化できないことにある。これが達成されたとしても、死滅した病原体は宿主中で増殖しないので、あるいは他の未知の理由で、獲得する免疫はしばしば不完全かつ短命であって、多回免疫感作を必要とする。最後に、不活化の方法は微生物の抗原を変質し、その免疫原としての効果を低下しうる。不活化したウイルス粒子から誘導された数種のHSVワクチンが臨床で評価され、無効であったことが証明されている。
【0004】
弱毒化は、本質的に発病能力を喪失した病原性微生物の菌株の調製を意味する。弱毒化した病原体は、宿主細胞中で実際に複製して持続する免疫を惹起するので、優れた免疫原となることが多い。しかし、生ワクチンの使用にはいくつかの問題があり、最も厄介な問題は、不十分な弱毒化および病原性復帰のリスクである。さらに、ヘルペスウイルスの生ワクチンを用いることにより潜伏が確立されうるので、再活性化に関連した疾患または他の慢性疾患を起こす可能性がある。
【0005】
以上の方法に代わる方法はサブユニットワクチンの使用である。これは関係する免疫学的物質を含有する成分だけによる免疫感作に関わる。不活化および弱毒化した病原体にはリスクが伴うので、精製したウイルスタンパク質を含有するサブユニットワクチンは比較的安全な代替ワクチンである。しかし、HSVサブユニットワクチンを用いる従来の臨床経験は期待の持てるものでなかった。Chiron Vaccine Study Groupにより開発されたHSV-2サブユニットワクチンの最近のフェーズIII試験は、感染した個体における発症を予防または遅延させることができなかった(Coreyら, Journal of the American Medical Association 282:331-340,1999)。
【0006】
感染した個体から未感染の個体へのHSV-1およびHSV-2の伝播を排除するかまたは低減する有効なワクチンは非常に望ましい。
【0007】
2.2. ワクチンにおけるアジュバントの使用
ワクチンは様々なアジュバントを用いて製剤化されかつ接種されることが多い。アジュバントは、少量の抗原を用いて、または免疫原だけを投与した場合より少ない用量を用いて、より持続性がありかつより高いレベルの免疫に達するのを助ける。現在、アルミニウム塩系(「ミョウバン(alum)」)アジュバントが米国で承認されたワクチンに使用される唯一の免疫学的アジュバントである。しかし、ヒトのワクチンにおいてミョウバンを増強するかまたはミョウバンと置き換えるために使用することができる様々な新規アジュバントが開発中であって、数十年にわたって前臨床および臨床評価中である。アジュバントの作用機構としては、ワクチン抗原の生物学的または免疫学的半減期を増加すること;抗原提示細胞(APC)への抗原送達およびAPCによる抗原プロセシングと提示を改善すること;ならびに免疫調節性サイトカインの産生を誘導することが挙げられる。
【0008】
2.3. 熱ショックタンパク質
ストレスタンパク質とも呼ばれる熱ショックタンパク質(HSP)は、最初に、熱ショックに応答して細胞により合成されるタンパク質として同定された。HSPは、分子量に基づいて5つのファミリー:HSP100、HSP90、HSP70、HSP60、およびsmHSPに分類されている。これらのファミリーの多くのメンバーは、栄養欠乏、代謝障害、酸素ラジカル、および細胞内病原体による感染を含む他のストレス性刺激に応答して誘導されることがその後分かった(Welch, May 1993, Scientific American 56-64;Young, 1990, Annu. Rev. Immunol. 8:401-420;Craig, 1993, Science 260:1902-1903;Gethingら, 1992, Nature 355:33-45;およびLindquistら, 1988, Annu. Rev. Genetics 22:631-677を参照)。熱ショックタンパク質ファミリーのメンバーにはhsc70、hsp70、hsp90、hsp110、gp96、grp170、およびカルレティキュリンが含まれる。
【0009】
熱ショックおよび他の生理学的ストレスに対する細胞応答に関する研究により、HSPは、これらの悪条件に対する細胞保護だけではなく、非ストレス細胞において必須の生化学的および免疫学的プロセスにも関与することが示された。HSPは、色々な種類のシャペロン機能を果たす。例えば、細胞質、核、ミトコンドリアまたは小胞体に位置するHSP70ファミリーのメンバー(Lindquistら, 1988, Ann. Rev. Genetics 22:631-677)は、免疫系の細胞に対する抗原の提示に関与し、また、正常細胞におけるタンパク質の輸送、折り畳みおよびアセンブリーにも関与する。HSPはタンパク質またはペプチドと結合し、そしてアデノシン三リン酸(ATP)の存在または酸性条件のもとで結合したタンパク質またはペプチドを遊離することができる(UdonoおよびSrivastava, 1993, J. Exp. Med. 178:1391-1396)。
【0010】
Srivastavaらは、近交系マウスのメチルコラントレン誘導肉腫に対する免疫応答を実証した(1988, Immunol. Today 9:78-83)。これらの研究で、これらの腫瘍の個々に異なる免疫原性に関与する分子が、96kDaの糖タンパク質(gp96)および84〜86kDaの細胞内タンパク質(p84/86)であることが分かった(Srivastavaら, 1986, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:3407-3411;Ullrichら, 1986, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:3121-3125)。特定の腫瘍から単離されたgp96またはp84/86でのマウスの免疫感作は、マウスをその特定の腫瘍に対して免疫性にするが、抗原的に異なる腫瘍に対しては免疫性にしない。gp96およびp84/86をコードする遺伝子の単離および特性決定から、それらの間の顕著な相同性が明らかになり、gp96およびp84/86はそれぞれ、同じ熱ショックタンパク質の小胞体および細胞質ゾル対応物であることが示された(Srivastavaら, 1988, Immunogenetics 28:205-207;Srivastavaら, 1991, Curr. Top. Microbiol. Immunol. 167:109-123)。さらに、hsp70は、そのhsp70が単離された腫瘍に対して免疫性を惹起するが、抗原的に異なる腫瘍に対しては免疫性を惹起しないことが示された。しかし、ペプチドが枯渇したhsp70は、その免疫原活性を失うことが分かった(UdonoおよびSrivastava, 1993, J. Exp. Med. 178:1391-1396)。これらの観察は、熱ショックタンパク質がそれ自体で免疫原性でなく、抗原性ペプチドと非共有結合複合体を形成して、その複合体が抗原性ペプチドに対して特異的な免疫性を惹起できることを示唆した(Srivastava, 1993, Adv. Cancer Res. 62:153-177;Udonoら, 1994, J. Immunol., 152:5398-5403;Sutoら, 1995, Science 269:1585-1588)。
【0011】
癌細胞から精製されたHSPとペプチドとの非共有結合複合体は、癌を治療および予防するために使用することができ、1996年4月11日付けのPCT国際公開WO 96/10411号、および1997年3月20日付けのPCT国際公開WO 97/10001号(それぞれ、参照により本明細書にその全文が組み入れられる1998年5月12日発行の米国特許第5,750,119号、および1998年11月17日発行の米国特許第5,837,251号)に記載されている。HSP−ペプチド複合体の、例えば病原体感染細胞からの単離および精製は記載されていて、ウイルスなどの病原体、ならびに細菌、原生動物、真菌および寄生生物を含む他の細胞内病原体が引き起こす感染の治療および予防に使用されている(例えば、1995年9月21日付けのPCT国際公開WO 95/24923号を参照)。免疫原性のストレスタンパク質−抗原複合体はまた、ストレスタンパク質と抗原性ペプチドとのin vitro複合体化によって調製することもでき、かかる複合体を癌および感染性疾患の治療および予防に使用することが、1997年3月20日付けのPCT国際公開WO 97/10000号(2000年2月29日発行の米国特許第6,030,618号)に記載されている。養子免疫療法用に、抗原提示細胞をin vitroで感作するためのストレスタンパク質−抗原複合体の使用が、1997年3月20日付けのPCT国際公開WO 97/10002号(1999年11月16日発行の米国特許第5,985,270号も参照)に記載されている。
【発明の開示】
【0012】
3. 発明の概要
本発明はヘルペスウイルスの抗原性ペプチド、ならびにかかる抗原性ペプチドをヘルペスウイルス、特に単純ヘルペスウイルス(HSV)1型および2型による感染の治療および予防に使用する方法に関する。本発明は感染病原体の抗原性ペプチドおよびアジュバントを含有する医薬組成物であって、感染病原体および感染病原体に感染した細胞に対する動物の免疫応答を刺激することができる上記医薬組成物を提供する。本発明はまた、本発明の医薬組成物を調製する方法も提供する。
【0013】
本発明は、1以上の抗原性ペプチドを含有する組成物、およびアジュバントと組み合わせたまたは複合体化した抗原性ペプチドを含有する組成物を包含する。好ましくは、抗原性ペプチドはストレスタンパク質と複合体化されている。本発明はさらに、アジュバントと組み合わせたまたは複合体化した抗原性ペプチドおよび製薬上許容される担体または賦形剤を含有する医薬組成物を提供する。
【0014】
一実施形態においては、本発明の抗原性ペプチドはHSV-2により発現されるおよび/または提示されるウイルスタンパク質のアミノ酸配列を含有する。本発明者らが選択した102種のヘルペスウイルスペプチドのアミノ酸配列には配列番号1〜配列番号102の番号が付されている。それぞれ35個のアミノ酸から構成されるこれらの102種のヘルペスウイルスペプチドは、それぞれのペプチド中に存在するHLA結合エピトープの数と質に関する予測に基づいて選ばれたものである。本発明はまた、これらのペプチド中に存在する予測エピトープを1個以上含有するヘルペスウイルスペプチドの変異体および断片も提供する。かかるヘルペスウイルスペプチドの変異には、異種の高親和性熱ショックタンパク質結合配列の付加、および場合によってはペプチドリンカーの付加が含まれる。
【0015】
本発明はまた、2種以上の異なる抗原性ペプチドの混合物を含有する組成物も提供するが、抗原性ペプチドは精製されていることが好ましい。様々な実施形態においては、上記混合物は複数の異なる抗原性ペプチドを含有し、その場合、102種のヘルペスウイルスペプチドの1種からのまたはヘルペスウイルスペプチドの選択されたサブセットからのHLA結合エピトープだけが抗原性ペプチド中に存在する。好ましい実施形態においては、複数の抗原性ペプチドの混合物は、配列番号1〜49を有するヘルペスウイルスペプチド中にだけ存在するエピトープを含有する。
【0016】
異なる抗原性ペプチドの混合物を含有する組成物において、異なる抗原性ペプチドは重量またはモル量基準で互いに対してどのような割合で存在してもよい。特定の実施形態においては、混合物の抗原性ペプチドは重量またはモル量基準でほぼ等しい割合で存在する。
【0017】
他の実施形態においては、本発明はアジュバントと混合したまたは複合体化した抗原性ペプチドを含有する組成物を提供する。アジュバントおよび適用する方法に応じて、本発明の抗原性ペプチドはアジュバントとの共有結合または非共有結合による分子複合体を形成することができる。あるいは、抗原性ペプチドをアジュバントと上記組成物中で混合してもよく、複合体の形成を必要としない。好ましい実施形態においては、抗原性ペプチドを熱ショックタンパク質、例えば熱ショックタンパク質ファミリーHSP60、HSP70、HSP90、HSP100、およびsHSPのメンバーと複合体化する。本発明の好ましい実施形態においては、アジュバントはhsc70、hsp70、hsp90、hsp110、gp96、grp170、およびカルレティキュリンからなる群から選択されるストレスタンパク質である。ある特定の実施形態においては、複合体は、抗原性ペプチド(好ましくは、複数の異なる抗原性ペプチド)と非共有結合で複合体化したhsc70を含有する。他の特定の実施形態においては、複合体は、抗原性ペプチド(好ましくは、複数の異なる抗原性ペプチド)と非共有結合で複合体化したhsp70を含有する。他の特定の実施形態においては、複合体は、例えばグルタルアルデヒドまたは紫外光を用いて架橋することにより、抗原性ペプチドと共有結合で複合体化したhsp70を含有する。他の実施形態においては、複合体は、抗原性ペプチドと複合体化した熱ショックタンパク質のペプチド結合性断片または熱ショックタンパク質の機能的活性のある変異体、類似体もしくは誘導体を含有する。
【0018】
従って、一実施形態においては、本発明は、アジュバントおよび複数の異なる抗原性ペプチドを含有する組成物であって、上記異なる抗原性ペプチドはそれぞれ、ヘルペスウイルスペプチド中に存在する少なくとも1つのHLA結合エピトープを含有し、上記ヘルペスウイルスペプチドのアミノ酸配列は配列番号1〜102からなる群から選択される上記組成物を提供する。
【0019】
他の実施形態においては、本発明は、抗原性ペプチドと結合したストレスタンパク質の複合体を含有する組成物であって、上記複合体は抗原性ペプチドの配列が相違しており、それぞれの抗原性ペプチドはヘルペスウイルスペプチド中に存在する少なくとも1つのHLA結合エピトープを含有し、上記ヘルペスウイルスペプチドのアミノ酸配列は配列番号1〜102からなる群から選択される上記組成物を提供する。特定の実施形態においては、それぞれの抗原性ペプチドは、アミノ酸配列が相違するヘルペスウイルスペプチドのなかから選択された異なるヘルペスウイルスペプチドの少なくとも1つのHLA結合エピトープを含有し、それぞれのヘルペスウイルスペプチドのアミノ酸配列は配列番号1〜102からなる群から選択される。本発明の組成物中に存在する異なる抗原性ペプチドの数は2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100から102までで変化してもよく、つまり2〜102の間のいずれの整数であってもよい。好ましくは、複数の異なる抗原性ペプチドがストレスタンパク質と複合体化されている。
【0020】
好ましい実施形態においては、本発明は、抗原性ペプチドと非共有結合または共有結合で結合したストレスタンパク質からなる49種の異なる複合体を含有する組成物であって、上記異なる複合体はそれぞれ、異なる抗原性ペプチドを含有し、上記異なる抗原性ペプチドはそれぞれ、単一のヘルペスウイルスペプチドの1以上のHLA結合エピトープを含有し、上記ヘルペスウイルスペプチドは配列番号1〜49からなる群から選択されるアミノ酸配列で構成される上記組成物を提供する。
【0021】
他の実施形態においては、本発明の組成物は抗原性ペプチドと結合したストレスタンパク質からなる複数の異なる複合体を含有し、ここで、上記異なる複合体はそれぞれ異なる抗原性ペプチドを含有し、上記異なる抗原性ペプチドのそれぞれは選択したヘルペスウイルスペプチドの1つの1以上のHLA結合エピトープを含有する。
【0022】
さらに好ましい実施形態においては、本発明の組成物は抗原性ペプチドと結合したストレスタンパク質からなる49種の異なる複合体を含有し、ここで上記49種の異なる複合体はそれぞれ異なる抗原性ペプチドを含有し、上記異なる抗原性ペプチドのそれぞれはアミノ酸配列が相違するヘルペスウイルスペプチドのなかから選択された異なるヘルペスウイルスペプチドの少なくとも1つのHLA結合エピトープを含有し、それぞれのヘルペスウイルスペプチドのアミノ酸配列は配列番号1〜49からなる群から選択される。
【0023】
他の好ましい実施形態においては、本発明の組成物は、配列番号1〜102からなる群から選択されるアミノ酸配列で構成されるヘルペスウイルスペプチドと結合したストレスタンパク質からなる異なる複合体を含有する。
【0024】
他の好ましい実施形態においては、本発明の組成物は、ヘルペスウイルスペプチドと非共有結合または共有結合で結合したストレスタンパク質からなる49種の異なる複合体を含有し、ここで上記複合体中の上記ストレスタンパク質は、配列番号1〜49からなる群から選択されるアミノ酸配列で構成されるヘルペスウイルスペプチドのそれぞれと結合している。
【0025】
さらに他の実施形態においては、本発明は、in vitroでストレスタンパク質を複数の異なる抗原性ペプチドと複合体化することを含んでなる方法により調製した組成物であって、上記異なる抗原性ペプチドはそれぞれ単一のヘルペスウイルスペプチド中に存在する少なくとも1つのHLA結合エピトープを含有し、ヘルペスウイルスペプチドのアミノ酸配列は配列番号1〜102からなる群から選択される上記組成物を包含する。
【0026】
好ましい実施形態においては、本発明は、in vitroでストレスタンパク質を49種の異なる抗原性ペプチドと複合体化することにより調製した組成物であって、上記49種の異なる抗原性ペプチドのそれぞれは、アミノ酸配列が相違するヘルペスウイルスペプチドのなかから選択された異なるヘルペスウイルスペプチドの1以上のHLA結合エピトープを含有し、上記それぞれのヘルペスウイルスペプチドのアミノ酸配列は配列番号1〜49からなる群から選択される上記組成物を提供する。かかる複合体は、例えば、精製したHSPまたは複数の異なるHSPを抗原性ペプチドの1種と複合体化して、個々のHSP-ペプチド複合体を一緒に混合することにより調製することができる。かかる複合体は、別法として、精製したHSPまたは複数の異なるHSPを混合物中の2種以上の異なる抗原性ペプチドと複合体化することにより調製してもよい。
【0027】
より好ましい実施形態においては、本発明の組成物は、in vitroでストレスタンパク質を配列番号1〜49からなる群から選択されるアミノ酸配列で構成される49種の異なるヘルペスウイルスペプチドと複合体化するステップを含んでなる方法により調製する。
【0028】
様々な実施形態においては、抗原性ペプチドは異種の高親和性熱ショックタンパク質結合配列を含有してもよい。
【0029】
本発明は、生理学的に許容される担体中に、1種以上の異なる本発明の抗原性ペプチド、および免疫賦活性ヌクレオチドまたはサポニン(例えば、QS21)などのアジュバントを含有する医薬組成物を提供する。好ましい実施形態においては、医薬組成物は複数の異なる本発明の抗原性ペプチドと複合体化したhsp70、およびQS21を含有する。他の好ましい実施形態においては、医薬組成物は1種以上の異なる本発明の抗原性ペプチドと複合体化したhsp70、および少なくとも1種の免疫賦活性オリゴヌクレオチドを含有する。最も好ましい実施形態においては、医薬組成物は1種以上の異なる本発明の抗原性ペプチドと複合体化したhsp70、QS21、および少なくとも1種の免疫賦活性オリゴヌクレオチドを含有する。
【0030】
本発明は、先に記載した、抗原性ペプチド、ペプチドとアジュバントの混合物、またはペプチド-アジュバント複合体を含有する組成物を調製する方法を提供する。一実施形態においては、かかる方法は、哺乳動物にHSV-1またはHSV-2に対する免疫応答を惹起させるための組成物を調製することに関し、上記方法は、1種以上の抗原性ペプチドをストレスタンパク質とin vitroで複合体化し、ペプチド-ストレスタンパク質複合体を製薬上許容される担体と組み合わせ、それにより非共有結合のストレスタンパク質-ペプチド複合体を得ることを含んでなる。特定の実施形態においては、1種以上の異なる抗原性ペプチドをそれぞれ化学合成により製造する。他の実施形態においては、ペプチドを1種以上のアジュバントと組み合わせて共有結合複合体を形成させる。他の実施形態においては、異なるペプチドを1種以上のアジュバントと組み合わせて非共有結合複合体を形成させる。本発明はまた、上記医薬組成物および第二の治療様式(例えば、追加のアジュバント、抗ウイルス薬、または生物学的応答改変因子)を含有する組成物も提供する。さらなる特定の実施形態においては、抗ウイルス薬はアシクロビル、バラシクロビル、ペンシクロビル、ファムシクロビル、シドホビル、およびホスホノ蟻酸からなる群から選択される。生物学的応答改変因子はα-インターフェロン、γ-インターフェロン、インターロイキン-2、インターロイキン-4、インターロイキン-6、腫瘍壊死因子およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0031】
本発明はさらにヘルペスウイルス感染の治療または予防に使用するためのキットを包含する。
【0032】
本発明の異なる態様においては、HSV-1またはHSV-2に対する免疫応答を個体において惹起させる方法を提供する。本発明の方法は、少なくとも1種の先に記載した抗原性ペプチドおよび少なくとも1種のアジュバントを含有する、有効量の免疫原性複合体を個体に投与することを含んでなる。本発明はまた、ヘルペスウイルスによる感染、およびヘルペスウイルスが原因であるいずれかの疾患を治療または予防する方法も提供する。本発明の方法は、1種以上の本発明の抗原性ペプチド、または抗原性ペプチドと1種以上のアジュバントを生理学的に許容される担体中に含有する、免疫原性量の医薬組成物を個体に投与するステップを含んでなる。
【0033】
関係する実施形態においては、本発明の方法を、ヘルペスウイルスが原因である感染性疾患を予防するために、かかる感染性疾患の予防を所望する個体に使用する。他の関係する実施形態においては、本発明の方法を、ヘルペスウイルスが原因である感染性疾患を治療するために個体に使用する。この方法の特定の実施形態においては、感染性疾患の原因はHSV-1またはHSV-2である。
【0034】
本発明はさらに、1次HSV感染に関連した疾患の重症度を低減し、潜伏HSVウイルスの再活性化頻度を低減し、再活性化した疾患の重症度を抑制し、または1次もしくは再活性化感染に関わるウイルスの伝播を制限する方法であって、1種以上の先に記載した抗原性ペプチドおよび1種以上のアジュバントを生理学的に許容される担体中に含有する、有効量の免疫原性医薬組成物を個体に投与するステップを含んでなる上記方法を包含する。本発明の方法はまた、個体においてHSV-1またはHSV-2複製を阻害するのに使用することができる。様々な実施形態においては、本発明の治療方法を症状が改善されるまで繰り返す。
【0035】
様々な実施形態においては、本発明の組成物中に存在するアジュバントとしては、限定するものではないが、ストレスタンパク質、サポニン、または少なくとも1つの免疫賦活性ヌクレオチドが挙げられる。本発明の方法の他の実施形態においては、熱ショックタンパク質は少なくとも1つの抗原性ペプチドと非共有結合で複合体化されていて、熱ショックタンパク質はhsc70、hsp70、hsp90、hsp110、gp96、grp170、カルレティキュリン、およびそれらの組成物からなる群から選択される。
【0036】
本発明の他の実施形態においては、抗原性ペプチド-アジュバント複合体は、in vitroで少なくとも1種の抗原性ペプチドを少なくとも1種の熱ショックタンパク質とともに、複合体の形成に十分な条件のもとでかつ十分な時間インキュベートすることにより形成させる。
【0037】
4. 図面の説明
図1A,B: 49種のヘルペスウイルスペプチドとhsp70の複合体は免疫原性がある。図1A: hsp70と49種のヘルペスウイルスペプチドの複合体を含有する医薬組成物を用いて処置したマウス由来の脾細胞は、in vitroでの培養脾細胞の刺激後に、106個の脾細胞当たり約140個のスポット形成細胞(SFC)をもたらした。49種のペプチドを含まないhsp70を用いて処置したマウス由来の脾細胞は、106個の脾細胞当たり5個未満のSFCしかもたらさなかった。hsp70を含まない49種のペプチドを用いて処置したマウス由来の脾細胞は、106個の脾細胞当たり60個未満のSFCをもたらした。図1B: アジュバントを49種のヘルペスウイルスペプチドとhsp70の複合体に加えると、この複合体に対する免疫応答が増強される。hsp70と49種のヘルペスウイルスペプチドの複合体とQS21とを含有する医薬組成物を用いて処置したマウス由来の脾細胞は、106個の脾細胞当たり約450個のSFCをもたらした。49種のペプチドを含まないhsp70を用いて処置したマウス由来の脾細胞は、106個の脾細胞当たり5個未満のSFCしかもたらさなかった。hsp70を含まない49種のペプチドを用いて処置したマウス由来の脾細胞は、106個の脾細胞当たり250個を超えるSFCをもたらした。
【0038】
図2: 49種のヘルペスウイルスペプチドとhsp70の複合体を用いて獲得した免疫応答は持続性がある。0日目および14日目に49種のヘルペスウイルスペプチドとhsp70の複合体とアジュバントとを含有する医薬組成物を用いて免疫感作したマウスから、脾細胞を28日目および84日目に採取した。この脾細胞は、28日目に採取すると106個の脾細胞当たり約400個のSFCをもたらし、84日目に採取すると106個の脾細胞当たり約500個のSFCをもたらした。対照的に、hsp70+アジュバントだけを用いて免疫感作したマウスから採取した脾細胞は、42日目にバックグラウンドレベルのSFCをもたらした。
【0039】
図3A−D: hsp70とHSV抗原性ペプチドの複合体はin vivoでマウスをHSV感染から保護する。雌Swiss Websterマウスを0日目、7日目および14日目に次の製剤を用いて皮内(i.d.)に免疫感作した:(1) GP/CFA、これはフロイントアジュバント(1回目の免疫感作はフロイント完全アジュバントを、その後はフロイント不完全アジュバントを使用)中に製剤化したHSV-2感染細胞ライセート由来の全糖タンパク質であり、免疫感作ポジティブ対照として使用した;(2) 生理食塩水/CFA、これはプラセボを用いて製剤化したフロイントアジュバントであり、免疫感作ネガティブ対照として使用した;(3) マウスHSP70(mHSP70)、100μg/用量のmHSP70;(4) QS-21、10μg/用量のQS-21;(5) 49種のHSV-2ペプチド/QS-21、5.5μgの49種HSV-2ペプチド(複合体調製物中の量に等しい)+10μg/用量のQS-21;または(6) mHSP70/49種HSV-2ペプチド/QS-21、100μg/用量の49種HSV-2ペプチドと複合体化したmHSP70(mHSP70と全ペプチドのモル比1:1)+10μg/用量のQS-21。マウスをデポ・プロベラ(depo-provera)により処置して発情サイクルを同期化し、28日目に腟内に5x105 pfuのHSV-2(186株)でチャレンジした。HSV-2誘導疾患および死亡率を最初のワクチン接種から49日目まで評価した。図3A: GP/CFA(「糖タンパク質/CFA対照」)、生理食塩水/CFA(「プラセボ/CFA対照」)、およびQS-21(「アジュバント」)対照群に対するカプラン・マイヤーの生存率曲線(KaplanおよびMeier, J Am Stat Assoc. 50, 457-481, 1958)。図3B: mHSP70、49種HSV-2ペプチド/QS-21(「49種ペプチド+アジュバント」)、およびmHSP70/49種HSV-2ペプチド/QS-21(「mHSP/49種ペプチド+アジュバント」)群に対するカプラン・マイヤーの生存率曲線(KaplanおよびMeier, J Am Stat Assoc. 50, 457-481, 1958)。矢印は、生理食塩水/CFA(ネガティブ対照)群と比較して、ログランク(Log-Rank)解析によって有意差(P<0.05)のある曲線を示す。図3C: GP/CFA(「糖タンパク質/CFA対照」)、生理食塩水/CFA(「プラセボ/CFA対照」)、およびQS-21(「アジュバント」)対照群における脱毛と紅斑(皮膚発赤)発生。図3D: mHSP70、49種HSV-2ペプチド/QS-21(「49種ペプチド+アジュバント」)、およびmHSP70/49種HSV-2ペプチド/QS-21(「mHSP/49種ペプチド+アジュバント」)群における脱毛と紅斑(皮膚発赤)発生。矢印は、生理食塩水/CFA群と比較して、ログランク(Log-Rank)解析によって有意差(P<0.05)のある曲線を示す。
【0040】
5. 発明の詳細な説明
本発明は感染性疾患、特に単純ヘルペスウイルス(HSV)による感染症を治療および予防するための医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は感染病原体の抗原性ペプチドおよび(感染病原体の抗原性ペプチドに対する動物の免疫応答を刺激することができる)アジュバントを含有する。本発明は本発明の医薬組成物を調製する方法を提供する。本発明はまた、単純ヘルペスウイルス1型および2型(HSV-1およびHSV-2)を含むHSVによる感染を治療および予防する上での本発明の医薬組成物の使用も包含する。
【0041】
本発明は、抗原性ペプチドとアジュバントの本発明者らの選択、ならびに抗原性ペプチドとアジュバントを組み合わせておよび/または複合体化して医薬組成物を調製する方法の本発明者らの選択に基づいている。いずれの理論または作用機構によっても束縛されないが、本発明の医薬組成物の多価性、および抗原提示に効率的であるアジュバントの使用によって、感染病原体に対して被験体に惹起される免疫応答は、伝統的なサブユニットワクチンよりはるかに効果的である。
【0042】
本発明は、1以上の抗原性ペプチドを含有する組成物、およびアジュバントと組み合わせたまたは複合体化した抗原性ペプチドを含有する組成物を提供する。好ましくは、抗原性ペプチドをストレスタンパク質と複合体化する。本発明はさらに、アジュバントと組み合わせたまたは複合体化した抗原性ペプチドおよび製薬上許容される担体または賦形剤を含有する医薬組成物を提供する。
【0043】
一実施形態において、本発明の抗原性ペプチドはHSV-2により発現されたおよび/または提示されたウイルスタンパク質のアミノ酸配列を含有する。本発明者らが選択した102種のヘルペスウイルスペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1〜配列番号102の番号が付されていて、表1に掲げられている。これらの102種のヘルペスウイルスペプチドはそれぞれ35個のアミノ酸から構成される。これらのヘルペスウイルスペプチドは、それぞれのペプチドに存在するHLA結合エピトープの数と質に関する予測に基づいて選択された。また本発明は、これらのペプチド中の1以上の予測エピトープを含有するヘルペスウイルスペプチドの変異体および断片も提供する。本明細書で使用する用語「本発明の抗原性ペプチド」は表1に掲げた102種のヘルペスウイルスペプチドのいずれか1つ、ならびにそれぞれのヘルペスウイルスペプチドの1以上のHLA結合エピトープを含有するこれらのヘルペスウイルスペプチドの変異体および断片を意味する。好ましくは、本発明の抗原性ペプチドは、本発明のヘルペスウイルスペプチドが誘導された単純ヘルペスウイルス2型タンパク質の全アミノ酸配列を含有せず、その一部だけを含有する。それぞれの本発明のヘルペスウイルスペプチドが由来する単純ヘルペスウイルス2型タンパク質のアミノ酸配列は、表1に示したGenbank登録番号により同定される。
【0044】
本発明の抗原性ペプチドは天然供給源から得ることも、または化学合成もしくは組換えDNA技法により調製することもできる。好ましくは、本発明の抗原性ペプチドは精製されている。精製された抗原性ペプチドは、ウイルス中で、細胞中で、細胞抽出物中で、細胞培養培地中で、個体中で、またはペプチド合成反応の反応混合物中で該ペプチドと会合している物質を実質的に含まない。本発明の抗原性ペプチドをコードするヌクレオチド配列、かかるヌクレオチド配列を含有するベクター、およびかかるヌクレオチド配列を含有する発現ベクターも本発明に包含される。本発明はまた、1以上の異なる本発明の抗原性ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有する組換え細胞であって、上記ヌクレオチド配列が少なくとも1つのプロモーターと機能しうる形で連結され、それにより細胞中のヌクレオチド配列の発現が容易となり、本発明の抗原性ペプチドの産生をもたらす上記組換え細胞も包含する。
【0045】
本発明はまた、本発明の抗原性ペプチドの混合物を含有する組成物も提供する。様々な実施形態においては、上記混合物は2以上の異なる本発明の抗原性ペプチドを含有する。上記混合物は少なくとも2、10、20、30、40、49、75、または100の異なる抗原性ペプチド、好ましくは精製した抗原性ペプチドを含有してもよい。様々な実施形態においては、混合物は102種のヘルペスウイルスペプチドの1種に由来するかまたは102種のヘルペスウイルスペプチドの選択されたサブセットに由来するエピトープだけが存在する複数の異なる抗原性ペプチドを含有する。好ましい実施形態においては、混合物中の異なる抗原性ペプチドはそれぞれ、アミノ酸配列が配列番号1〜49であるヘルペスウイルスペプチド中に存在するHLA結合エピトープを1つ以上含有する。
【0046】
様々な実施形態においては、複数の抗原性ペプチド中のそれぞれの抗原性ペプチドが102種のヘルペスウイルスペプチドのいずれか1つのアミノ酸配列に隣接するアミノ酸配列を含まない。
【0047】
様々な実施形態においては、複数の抗原性ペプチドが、配列番号1〜102、または配列番号1〜49のアミノ酸配列で構成される抗原性ペプチド以外の、HSV2タンパク質のエピトープを含有する抗原性ペプチドを含まない。
【0048】
特定の実施形態においては、複数の抗原性ペプチドが細胞またはウイルスから取得または精製されたものではない。
【0049】
様々な実施形態においては、複数の抗原性ペプチド中の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%の抗原性ペプチドは、配列番号1〜102または配列番号1〜49からなる群から選択される異なるヘルペスウイルスペプチドである。
【0050】
異なる抗原性ペプチドの混合物を含有する組成物において、異なる抗原性ペプチドは、重量またはモル量基準で、互いに対してどのような割合で存在してもよい。特定の実施形態においては、混合物の抗原性ペプチドは重量またはモル量基準でほぼ等しい割合で存在する。
【0051】
他の実施形態においては、本発明はアジュバントと混合したまたは複合体化した1種以上の抗原性ペプチドを含有する組成物を提供する。アジュバントおよび適用する方法に応じて、本発明の抗原性ペプチドはアジュバントとの共有結合または非共有結合の分子複合体を形成してもよい。あるいはまた、複合体の形成を要することなく、抗原性ペプチドをアジュバントと上記組成物中で混合してもよい。本発明の様々な実施形態において使用するのに好適なアジュバントは、以下の第5.2節で説明する。
【0052】
好ましい実施形態においては、本発明の抗原性ペプチドは、次の熱ショックタンパク質ファミリーHsp60、Hsp70、Hsp90、Hsp100、およびsHSPのメンバーを含むがこれらに限らない、熱ショックタンパク質と非共有結合で複合体化される。用語「熱ショックタンパク質」は、本明細書において、用語「ストレスタンパク質」と同義で用いられる。好ましい実施形態においては、アジュバントはhsp70、hsc70、hsp90、gp96、カルレティキュリン、hsp110、grp170、および上記の2以上の組み合わせからなる群から選択される熱ショックタンパク質の群から選ばれる。最も好ましい実施形態においては、抗原性ペプチドと複合体化されるアジュバントはhsp70またはhsc70(Genbank登録番号Y00371)である。他の実施形態においては、熱ショックタンパク質のペプチド結合性断片を用いて、抗原性ペプチドとの複合体を形成させる。
【0053】
代わりの実施形態においては、複合体は抗原性ペプチドと熱ショックタンパク質を含有する共有結合の分子複合体である。好ましくは、熱ショックタンパク質はhsp70である。共有結合の複合体は、当技術分野で公知の技術、例えばグルタルアルデヒドまたは紫外光を用いる架橋により形成させることができる。
【0054】
ある特定の実施形態においては、本発明の組成物は異なるストレスタンパク質と異なる抗原性ペプチドの複合体を含有する。例えば、組成物は複数の異なる抗原性ペプチドと複合体化したhsp70およびhsc70の混合物を含有する。
【0055】
本発明はまた、抗原性ペプチドとアジュバントを含有する本発明の組成物を調製する方法も提供する。好ましい実施形態においては、本発明の方法はin vitroで1以上の異なる抗原性ペプチドを熱ショックタンパク質と複合体化して、それにより免疫原性の非共有結合HSP-ペプチド複合体の集団を作製することを含んでなる。
【0056】
さらに他の実施形態においては、ストレスタンパク質などのタンパク質性アジュバントと抗原性ペプチドを含有する融合タンパク質を意図している。かかる融合タンパク質は当技術分野で公知の組換えDNA技法により作製することができる(例えば、参照により本明細書にその全文が組み入れられる米国特許第6,524,825号を参照)。例えば、ストレスタンパク質をコードする核酸を、抗原性ペプチドをコードする核酸配列のいずれか一方の末端と、2つのタンパク質をコードする配列が共通の翻訳読み枠を共有するように接合することができる。接合した核酸配列を、所望の発現特性と宿主細胞の性質に基づいて選択した適当なベクター中に挿入する。宿主細胞での発現後に、融合タンパク質を慣用の生化学的分離技術によりまたは融合タンパク質の一部に対する抗体を用いた免疫アフィニティー法により精製することができる。あるいは、選択したベクターはタグ(例えばオリゴヒスチジンタグ)を融合タンパク質配列に付加することができてタグ付き融合タンパク質の発現を可能にし、これをタグに対して適当に高い親和性を有する抗体または他の物質を用いてアフィニティー法により精製することができる(Sambrookら,「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」, 2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989);Deutscher, M.,「タンパク質精製法酵素学の手引き(Guide to Protein Purification Methods Enzymology)」, vol. 182, Academic Press, Inc., San Diego, Calif. (1990))。融合タンパク質はまた化学的に調製することもできる。
【0057】
さらなる実施形態においては、融合タンパク質はさらに、融合タンパク質を抗原提示細胞にターゲティングさせる成分を含有する。多数のそのようなターゲティング成分が当技術分野で周知であり、抗原性ペプチドとの融合タンパク質を形成させるために利用することができる。
【0058】
様々な実施形態において、本発明は抗原性ペプチド、アジュバント、および生理学的に許容される担体を含有する医薬組成物を提供する。特定の実施形態においては、本発明はさらに、被験体において抗原性ペプチドおよび/または単純ヘルペスウイルスの1つに対する免疫応答を惹起するのに有効である免疫原性量の抗原性ペプチドとアジュバントを含有する医薬組成物を提供する。
【0059】
本発明はまた、単純ヘルペスウイルス、好ましくはHSV-1またはHSV-2が原因である被験体のウイルス疾患を治療または予防する方法も提供する。一実施形態は、かかる感染性疾患を有する被験体におけるまたはかかる感染性疾患の予防を所望する被験体における、かかる感染性疾患を治療または予防する方法であって、生理学的に許容される担体中に複数の抗原性ペプチド、または複数の抗原性ペプチドとアジュバントを含有する、有効量の本発明の医薬組成物を、個体に投与するステップを含んでなる上記方法を提供する。好ましくは、被験体は哺乳動物、そして最も好ましくはヒトである。あまり好ましいとはいえない実施形態では、別の組成物中のアジュバントを、抗原性ペプチドの投与と連続的にまたは同時に被験体に投与する。本発明の様々な実施形態においては、投与を非経口、静脈内、皮内、経皮、経粘膜または経口で行う。本発明の方法はまた、1次HSV感染に関連する疾患の重症度を軽減するために、潜伏HSVウイルスの再活性化頻度を低減するために、再活性化された疾患の重症度を限定するために、または1次もしくは再活性化感染に関連するウイルスの伝播を制限するために利用することができる。さらに他の実施形態においては、被験体におけるHSV-1および/またはHSV-2に対する細胞傷害性T細胞応答を刺激するために本発明の組成物を被験体に投与する。本発明の方法は症状が改善されるまで反復することができる。
【0060】
さらなる実施形態においては、本発明の医薬組成物を1以上の他の治療様式と併用することができる。例えば、かかる治療様式としては、限定するものではないが、抗ウイルス薬などの化学療法剤、抗体、アジュバント、生物学的応答改変因子などが挙げられる。好ましい実施形態においては、抗ウイルス薬はアシクロビル、バラシクロビル、ペンシクロビル、ファムシクロビル、シドホビル、およびホスホノ蟻酸からなる群から選択される。
【0061】
本発明はさらに、HSV感染を治療または予防するためのキットを包含する。
【0062】
5.1. 抗原性ペプチド
本発明は、HSV-2により、特に宿主細胞の感染時に、発現および/または提示されるウイルスタンパク質のアミノ酸配列を含有する抗原性ペプチドを提供する。これらの抗原性ペプチドは合成によりまたは組換えDNA技法により調製するか、または全ウイルスなどの天然供給源から単離することができる。本発明の抗原性ペプチドを本発明のアジュバントと併用して、HSV感染の治療および/または予防に有用である医薬組成物を調製することができる。本発明の抗原性ペプチドを含有する医薬組成物は免疫原性があり、被験体において有益な免疫応答を惹起するのに有効である。
【0063】
本発明の一実施形態においては、本発明者らが選択した配列番号1〜102を付した102種のヘルペスウイルスペプチドのアミノ酸配列を表1に掲げた。ヘルペスウイルスペプチドはそれぞれ35個のアミノ酸から成り、HSV-2タンパク質上に存在すると予測される多数のエピトープを含有する。表1は、それぞれのヘルペスウイルスペプチドが誘導された元のタンパク質、およびウイルスタンパク質内の抗原性ペプチドの位置を示す。表1はさらに、それぞれのペプチド配列内に見出される予測された免疫原性HLA結合エピトープを示す。これらのエピトープに対するアミノ酸位置は、ペプチド配列中の最初のアミノ酸からの番号が付されている。例えば、配列番号1がコードするペプチドRL02-1は予測されたHLA-B702結合エピトープを残基2〜10に有する。これは、RL02-01の全アミノ酸配列(GNPRTAPRSLSLGGHTVRALSPTPPWPGTDDEDDD)の中の残基NPRTAPRSLがHLA-B702と結合すると予測されることを示す。
【0064】
HSV-2とHSV-1のタンパク質は高度に相同性であるので、本発明のヘルペスウイルスペプチドが提示するエピトープの多くはHSV-1によって共有される。従って、本発明の医薬組成物はHSV-2ならびにHSV-1感染症の治療および/または予防に有用である。本明細書で使用する用語「エピトープ」は、被験体の抗体または主要組織適合性(MHC)分子と結合するかまたは結合すると予測される抗原性ペプチドの領域をさす。好ましくは、エピトープは、MHC分子と結合すると、抗原性ペプチドに対する免疫応答をin vivoで刺激する。本発明のペプチドは、選択したMHC分子と結合しかつ免疫応答を誘導することができると予測されるエピトープを含有する。本発明の抗原性ペプチドエピトープは、MHC対立遺伝子がコードするタンパク質との結合に関わる保存された残基を含有する。MHCクラスI分子と結合すると予測される抗原性ペプチドエピトープは典型的には8〜10残基であり、一方MHCクラスII分子と結合すると予測される抗原性ペプチドエピトープは典型的には10〜20残基の範囲である。
【0065】
MHC分子はクラスIまたはクラスII分子のいずれかに分類される。MHCクラスII分子は主に、免疫応答の開始および持続に関わる細胞、例えば樹状細胞、Bリンパ球、マクロファージなどに発現される。クラスII分子はヘルパーTリンパ球により認識され、ヘルパーTリンパ球の増殖と、提示された特定の免疫原性ペプチドに対する免疫応答の増幅とを引き出す。MHCクラスI分子はほとんど全ての有核細胞上に発現され、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)により認識され、次いでCTLは抗原保持細胞を破壊する。細胞傷害性Tリンパ球は特に、腫瘍拒絶において重要であり、またウイルス感染との闘いに重要である。CTLは、無傷の外来抗原それ自体よりもむしろ、MHCクラスI分子と結合したペプチド断片の形態の抗原を認識する。本発明の抗原性ペプチドと結合すると予測された特定のヒトMHC対立遺伝子を表1に示したが、それには次のヒト白血球抗原(HLA)分子:HLA-A1、HLA-A201、HLA-A203、HLA-A3、HLA-A2402、HLA-A26、HLA-B702、HLA-B8、HLA-B1510、HLA-B2705、HLA-B2709、HLA-B4402、およびHLA-B5101が含まれる(Rammenseeら, Immunogenetics 41,178-228, 1995)。MHC分子と結合する能力は、抗原提示の阻害(Setteら, J. Immunol. 141:3893, 1991)、in vitroアセンブリーアッセイ(Townsendら, Cell 62:285, 1990)、およびRMA.Sなどの突然変異細胞を用いたFACSに基づくアッセイ(Meliefら, Eur. J. Immunol. 21:2963, 1991)などによる各種の異なる方法で測定することができる。
【0066】
本明細書で使用する用語「HLA結合エピトープ」は、上記アッセイのいずれかによりHLA分子と結合することが分かったエピトープ、またはソフトウェアプログラム(例えばSYFPEITHI、Rammensee,ら, Immunogenetics 50,213-219, 1999)によりHLA分子と結合すると予測されたエピトープを意味する。他の利用しうる方法としては、次に開示されている方法が挙げられる:Guan, P.ら, (2003) Applied Bioinformatics, 2:63-66;Blythe, M. J.ら, (2002) Bioinformatics, 18:434-439;Flower, D. R.およびDoytchinova, I. A. (2002) Applied Bioinformatics, 1:167-176;Yu, K.ら, (2002) Molecular Medicine, 8:137-48;Brusic, V.ら, (2002) Immunology and Cell Biology, 80:280-285;Jung, G.ら, (2001) Biologicals, 29:179-181(T細胞エピトープ予測プログラムEPIPREDICTを記載);Kwok, W. W.ら, (2001) Trends in Immunology, 22:583-588;Mallios, R. R. (2001) Bioinformatics, 17:942-948;Romish, K. (2001) Trends in Biochemical Sciences, 26:531;Schirle, M.ら, (2001) Journal of Immunological Methods, 257:1-16;Singh, H.およびRaghava, G.P.S. (2001) Bioinformatics, 17:1236-1237;Andersen, M. H.ら, (2000) Tissue Antigens, 55:519-531;Buus, S. (1999);Current Opinion in Immunology, 11:209-213;Mallios, R. R. (1999) Bioinformatics, 15:432-439;な
らびにMaffei, A.およびHarris, P. E. (1998) Peptides, 19:179-198。
【0067】
一実施形態においては、本発明は配列番号1〜102のいずれか1つのアミノ酸配列から実質的に構成される抗原性ペプチドを包含する。本発明のペプチドはまた、アミノ酸の付加または欠失により改変することもできる。例えば、抗原性ペプチドの抗原性もしくは免疫原性が破壊されないことを条件として、数個(1、2、3、4、または5個)のアミノ酸残基をヘルペスウイルスペプチドのいずれか一方の末端またはそれぞれの末端に付加したり、または末端から取り除いたりすることができる。本発明のペプチドはまた、いくつかの残基(例えばHLA結合エピトープ内に位置する残基)の順序または組成を変えることにより改変することもできる。MHC分子と結合するために必須なある特定のアミノ酸残基、例えばエピトープ中の重要な接触部位の残基または保存された残基は、一般的に、免疫原活性に悪影響を与えることなしには変更され得ないことが容易に理解されよう。
【0068】
他の実施形態において、本発明は、それぞれが配列番号1〜102のいずれか1つに存在する少なくとも1つのエピトープを含有する、配列番号1〜102のいずれかの断片を含有する抗原性ペプチドを包含する。好ましくは、上記断片は配列番号1〜102のいずれかに存在する2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上のエピトープを含有する。最も好ましくは、1つの抗原性ペプチドは配列番号1〜102に示したヘルペスウイルスペプチドの1つにのみ存在するHLA結合エピトープを含有する。典型的には、ヘルペスウイルスペプチドに存在するエピトープは実質的に8〜10アミノ酸の配列からなる。本発明のヘルペスウイルスペプチド中に存在するエピトープは互いに重複してもよい。従って、本発明の抗原性ペプチドは、最小8アミノ酸長であって最大34アミノ酸長でありうる、配列番号1〜102のいずれか1つの断片を含有する。中間の長さのヘルペスウイルスペプチドの断片、すなわち、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、または33アミノ酸からなる断片も包含される。
【0069】
さらに他の実施形態においては、本発明は、ウイルスペプチドの変異体である抗原性ペプチドであって、そのアミノ酸配列が配列番号1〜102の1つに対して少なくとも50%、60%、70%、または80%類似している抗原性ペプチドを提供する。好ましくは、その類似性は90%、最も好ましくは95%またはそれ以上である。好ましくは、変異体は、配列番号1〜102のいずれかに存在する2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上のエピトープを含有する。好ましくは、変異体は配列番号1〜102のアミノ酸配列に対して保存的アミノ酸置換を主に含有するか、またはそのようなアミノ酸置換のみを含有する。好ましくは、もしヘルペスウイルスペプチドのエピトープ内にアミノ酸置換があっても少ししかない。一実施形態においては、本発明のいずれの抗原性ペプチドのアミノ酸配列もそれぞれメチオニンで始まる。
【0070】
配列内のアミノ酸の保存的置換はそのアミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択することができる。保存的置換は、アミノ酸残基を生物学的におよび/または化学的に類似する他のアミノ酸残基に、例えばある疎水性残基を他の疎水性残基に、またはある極性残基を他の極性残基に、置き換えることを意味する。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが挙げられる。極性中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが挙げられる。正荷電(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リシンおよびヒスチジンが挙げられる。負荷電(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。かかる改変は周知のペプチド合成手順を用いて行うことができ、かかる手順は、例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Merrifield, Science 232:341-347 (1986)、BaranyおよびMerrifield, 「ペプチド(The Peptides)」, GrossおよびMeienhofer編 (New York, Academic Press), pp.1-284 (1979);ならびにStewartおよびYoung, 「固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis)」, (Rockford, Ill., Pierce), 2d Ed. (1984)に記載されている。
【0071】
さらに他の実施形態においては、本発明は高親和性熱ショックタンパク質結合配列を含有する抗原性ペプチドを包含する。かかる結合配列は、典型的には5〜15個のアミノ酸残基からなる長さであって、当技術分野では周知である。本発明では、かかる結合配列を用いて、in vivoまたはin vitroでの本発明のヘルペスウイルスペプチドHLA結合エピトープを含有するペプチドのセグメントの、熱ショックタンパク質との非共有結合を促進する。かかる結合配列の多くは、HLA結合エピトープが誘導された元のヘルペスウイルスペプチドとは異種のものである。多数のヘルペスウイルスタンパク質中に存在する異種高親和性結合部位を利用することができる。かかる高親和性熱ショックタンパク質結合配列の例は、本明細書に参照によりその全てが組み入れられるPCT/US96/13363に対応するPCT国際公開WO 97/06821号;Blond-Elguindi, S.ら, 「バクテリオファージ上に提示されたペプチドのライブラリーのアフィニティパンニングはBiPの結合特異性を明らかにする(Affinity panning of a library of peptide displayed on bacteriophages reveals the binding specificity of BiP.)」 Cell 75:717-728 (1993);Flynn, G. C.ら,「タンパク質アセンブリーの触媒として示唆されたタンパク質によるペプチドの結合と遊離(Peptide binding and release by proteins implicated as catalysts of protein assembly.)」 Science 245:385-390 (1989);Auger, I.ら,「慢性関節リウマチへの罹病性を担うHLA-DR4およびHLA-DR10モチーフは70-kD熱ショックタンパク質と結合する(HLA-DR4 and HLA-DR10 motifs that carry susceptibility to rheumatoid arthritis bind 70-kD heat schock proteins)」 Nature Medicine, 2:306-310 (1996);およびGragerov, A.ら,「DnaK-ペプチド結合の異なる特異性(Different Specificity of DnaK-peptide binding)」 J. Molec. Biol. 235:848-854 (1994)に開示されている。高親和性熱ショックタンパク質結合配列の使用法は、例えば、本明細書に参照によりその全てが組み入れられる、Moroiら, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 2000, 97:3485に記載されている。
【0072】
高親和性熱ショックタンパク質結合配列の一例は、配列:Hy(Trp/X)HyXHyXHy(配列中、Hyは疎水性アミノ酸残基、特にトリプトファン、ロイシンまたはフェニルアラニンであり、そしてXは任意のアミノ酸である)を有する七量体セグメントである。かかる高親和性熱ショックタンパク質結合配列は、好ましくは、本発明のヘルペスウイルスペプチドHLA結合エピトープを含有するアミノ酸配列のいずれか1つの末端に存在する。場合によっては、高親和性熱ショックタンパク質結合配列は、数個のアミノ酸からなる短いペプチドリンカー(例えば、配列:グリシン-セリン-グリシンを有するトリペプチドリンカー)により、いずれか1つの末端と接合することができる。かかる抗原性ペプチドは、高親和性熱ショックタンパク質結合配列のアミノ酸残基をペプチドの残部とペプチド結合で接合することにより、化学的に合成することができる。あるいは、かかる抗原性ペプチドは、組換えDNA技法により融合ペプチドとして合成することができる。従って、本発明の抗原性ペプチドは、高親和性熱ショックタンパク質結合配列および任意のペプチドリンカーを含有する102種のヘルペスウイルスペプチドの変異体または断片を包含する。
【0073】
本発明の抗原性ペプチドの誘導体または類似体も本発明の範囲に含まれ、かかる誘導体または類似体は、翻訳中または翻訳後に、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、もしくは公知の保護基/ブロック基による誘導体化、またはタンパク分解切断により改変されたものである。多数の化学修飾のいずれかを公知の技術により実施することができ、こうした技法には、限定するものではないが、以下のものが含まれる:遊離NH2基、遊離COOH基、OH基、Trp-、Tyr-、Phe-、His-、Arg-、またはLys-の側鎖基の保護または修飾に有用な試薬;臭化シアン、ヒドロキシルアミン、BNPS-スカトール、酸、またはアルカリ加水分解による特定の化学的切断;トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH4による酵素的切断;アセチル化、ホルミル化、酸化、還元;ツニカマイシンの存在下での代謝的合成など。
【表1】









【0074】
5.1.1. 化学合成による抗原性ペプチドの調製
本発明の抗原性ペプチドは、ペプチド合成機の使用を含む標準の化学的方法により合成することができる。慣用のペプチド合成または当技術分野で周知の他の合成プロトコルを利用することができる。
【0075】
抗原性ペプチドのアミノ酸配列を有するペプチド類は、例えば固相ペプチド合成により、Merrifield, 1963, J. Am. Chem. Soc., 85:2149に記載の方法と類似の手順を利用して合成することができる。合成中、側鎖が保護されているN-α-保護アミノ酸を、不溶性ポリマー支持体(すなわちポリスチレンビーズ)にC末端で連結された、成長しつつあるポリペプチド鎖に段階的に加える。ペプチドは、N-α-脱保護アミノ酸のアミノ基を、N-α-保護アミノ酸のα-カルボキシル基(ジシクロヘキシルカルボジイミドなどの試薬と反応させることにより活性化されている)と連結することにより合成する。遊離アミノ基が活性化カルボキシルと結合すると、ペプチド結合が生じる。最も普通に利用されるN-α-保護基としては、酸に不安定なBocおよび塩基に不安定なFmocが挙げられる。適当な化学、樹脂、保護基、保護アミノ酸および試薬の詳細は当技術分野で周知であるので本明細書中では詳しく説明しない(Atherton,ら, 1989, 「固相ペプチド合成:実用手法(Solid Phase Peptide Synthesis : A Practical Approach)」, IRL Press、およびBodanszky, 1993, 「ペプチド化学、実用教科書(Peptide Chemistry, A Practical Textbook)」, 2nd Ed., Springer-Verlagを参照)。
【0076】
さらに、本発明の抗原性ペプチドのペプチド類似体および誘導体を上記のように化学的に合成することができる。所望であれば、非古典的アミノ酸または化学的アミノ酸類似体をペプチド配列中に置換または付加として導入することができる。非古典的アミノ酸としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:通常のアミノ酸のD-異性体、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、デザイナーアミノ酸(designer amino acids)、例えばβ-メチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、およびNα-メチルアミノ酸。
【0077】
得られたペプチドの精製は慣用の手順、例えばゲル透過、分配および/またはイオン交換クロマトグラフィーを用いる分離用HPLCを利用して実施する。適当なマトリックスと緩衝液の選択は当技術分野で周知であるので本明細書中では詳しく説明しない。
【0078】
5.1.2. 組換えDNA技法を利用した抗原性ペプチドの調製
本発明の抗原性ペプチドはまた、当技術分野で公知の組換えDNA手法により調製することもできる。抗原性ペプチドをコードする核酸配列をアミノ酸配列の逆翻訳により取得し、オリゴヌクレオチド合成機の利用などの標準化学手法により合成することができる。あるいはまた、抗原性ペプチドのコード情報を、特異的に設計したオリゴヌクレオチドプライマーおよびPCR手法を用いて、HSV-2ウイルスのDNAテンプレートから得ることができる。本発明のヘルペスウイルスペプチドの変異体と断片は、抗原的に同等の分子を与える置換、挿入または欠失により配列番号1〜102を改変することにより作ることができる。ヌクレオチドコード配列の縮重によって、配列番号1〜102と同一のアミノ酸配列またはその変異体をコードするDNA配列を本発明の実施において用いることができる。これらには、限定するものではないが、配列内の抗原的に同等のアミノ酸残基をコードする異なるコドンの置換により改変されており、従ってサイレントなまたは保存的変化を生じるヌクレオチド配列が含まれる。抗原性ペプチドをコードする核酸を発現ベクター中に挿入して、宿主細胞中で増殖および発現させることができる。
【0079】
本発明で意図する長さのペプチドのコード配列は、化学的技法、例えばMatteucciら, J. Am. Chem. Soc. 103:3185 (1981)のホスホトリエステル法により合成することができるので、その改変は、天然のペプチド配列をコードする塩基を適当な塩基に置き換えることにより簡単に行うことができる。次いで、そのコード配列に適当なリンカーを付加して、当技術分野で通常利用しうる発現ベクター中にライゲートし、そしてそのベクターを用いて好適な宿主を形質転換することにより所望のペプチドまたは融合タンパク質を産生させることができる。多数のかかるベクターおよび好適な宿主系が現在利用可能である。ペプチドまたは融合タンパク質の発現のためには、コード配列に、開始および停止コドン、プロモーターおよびターミネーター領域、ならびに、通常は複製系、を機能しうる形で結合させて、所望の細胞宿主において発現させるための発現ベクターを取得する。
【0080】
本明細書で使用する用語「発現構築物」は、適当な宿主細胞中でペプチドを発現させることができる1以上の調節領域と機能しうる形で結合された、抗原性ペプチドをコードするヌクレオチド配列を意味する。「機能しうる形で結合された」とは、調節領域と発現されるペプチド配列とが転写および最終的には翻訳を可能にする方法で連結されかつ配置されている結合を意味する。
【0081】
ペプチドの転写に必要な調節領域は発現ベクターにより提供されうる。コグネイト(cognate)開始コドンを欠くペプチド遺伝子配列を発現させるのであれば、翻訳開始コドン(ATG)も提供されうる。適合性の宿主-構築物系においては、RNAポリメラーゼなどの細胞性転写因子が発現構築物上の調節領域に結合すると、宿主生物内でのペプチド配列の転写が起こる。遺伝子発現に必要な調節領域の正確な性質は宿主細胞毎に変化しうる。一般的には、プロモーターが必要とされ、プロモーターはRNAポリメラーゼと結合する能力があり、機能しうる形で結合された核酸配列の転写を促進することができる。かかる調節領域は、転写および翻訳の開始に関わる5'非コード配列、例えばTATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などを含んでもよい。コード配列の3'側にある非コード領域は転写終結調節配列、例えばターミネーターおよびポリアデニル化部位を含有してもよい。
【0082】
調節機能をもつDNA配列(例えばプロモーター)をペプチド遺伝子配列に結合するためにまたはペプチド遺伝子配列をベクターのクローニング部位に挿入するために、適合しうる制限酵素切断部位を提供するリンカーまたはアダプターを、当技術分野で周知の技術により、cDNAの末端にライゲートすることができる(Wuら, 1987, Methods in Enzymol 152:343-349)。制限酵素で切断した後、ライゲーションの前に一本鎖DNA末端を消化するかまたはフィルインすることにより平滑末端を作製するための修飾を行うことができる。あるいはまた、所望の制限酵素切断部位を含有するプライマーを用いたPCRを行ってDNAを増幅することにより、所望の制限酵素切断部位をDNA断片中に導入することができる。
【0083】
調節領域と機能しうる形で結合された抗原性ペプチド配列を含有する発現構築物は、さらなるクローニングなしにペプチドを発現させかつ産生させるのに適した宿主細胞中に直接導入することができる。発現構築物はまた、例えば相同組換えにより、DNA配列を宿主細胞のゲノムに組み込むのを容易にするDNA配列を含有してもよい。この場合には、宿主細胞中でペプチドを増殖させて発現させるために、適当な宿主細胞に適した複製起点を含有する発現ベクターを使用する必要はない。
【0084】
様々な発現ベクターを利用することができ、それらには、限定するものではないが、プラスミド、コスミド、ファージ、ファージミドまたは改変ウイルスが挙げられる。かかる発現ベクターは典型的に、適当な宿主細胞中でベクターを増殖するための機能性の複製起点、ペプチド遺伝子配列を挿入するための1以上の制限酵素切断部位、および1以上の選択マーカーを含有する。発現ベクターは、1以上の本発明の抗原性ペプチドのヌクレオチド配列を担うように構築することができる。発現ベクターは適合しうる宿主細胞とともに使用しなければならず、かかる宿主細胞は、限定するものではないが、細菌、酵母、昆虫、哺乳動物およびヒトを含む原核生物または真核生物から誘導することができる。そのような宿主細胞は1以上の抗原性ペプチドを発現させるように形質転換することができるが、例えば、本発明の抗原性ペプチドのいずれかをコードする1以上のヌクレオチド配列を含有する単一の発現ベクターを用いて宿主細胞を形質転換するか、または異なる本発明の抗原性ペプチドをコードする複数の発現ベクターを用いて宿主細胞を形質転換する。
【0085】
細菌系においては、本発明の抗原性ペプチドを産生させるために、いくつかの発現ベクターを都合よく選択することができる。例えば、医薬組成物を調製するために、かかるタンパク質を大量に生産しようとする場合には、精製の容易な融合タンパク質産物の高レベルの発現を指令するベクターが所望される。かかるベクターとしては、限定するものではないが、大腸菌(E.coli)発現ベクターpUR278(Rutherら, 1983, EMBO J. 2, 1791)(このベクターでは、ペプチドコード配列がlac Zコード領域とインフレームで個々にベクター中にライゲートされて、結果的に融合タンパク質が産生される);pINベクター(InouyeおよびInouye, 1985, Nucleic Acids Res. 13, 3101-3109;Van HeekeおよびSchuster, 1989, J. Biol. Chem 264, 5503-5509)などが挙げられる。pGEXベクターも、これらのペプチドを、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させるために利用することができる。一般的に、かかる融合タンパク質は可溶性であり、溶解した細胞から、グルタチオン-アガロースビーズへの吸着とその後の遊離グルタチオンの存在下での溶出により、容易に精製することができる。pGEXベクターはトロンビンまたは因子Xaプロテアーゼ切断部位を含むように設計されており、その結果、抗原性ペプチドをGST部分から遊離させることができる。
【0086】
あるいはまた、適切にプロセシングされたペプチド複合体を長期間にわたり高収率で産生させるためには、哺乳動物細胞における安定した発現が好ましい。ペプチド複合体を安定して発現する培養細胞株は、選択マーカーを含有するベクターを用いて遺伝子操作することができる。限定でなく例として説明すると、発現構築物の導入後に、遺伝子操作した細胞を富化培地中で1〜2日間増殖させ、次いで選択培地に切替える。発現構築物中の選択マーカーは選択に対する耐性を賦与し、そして最適に、細胞がその染色体中に発現構築物を安定して組み込み、培養下で増殖して、培養細胞株へと増幅することを可能にする。かかる細胞は長期間培養することができ、その間ペプチドを連続して発現する。
【0087】
組換え細胞は標準条件の温度、培養時間、光学密度および培地組成のもとで培養することができる。しかし、組換え細胞を増殖させる条件は、抗原性ペプチドを発現させる条件と異なりうる。ペプチドの産生を高めるために、改変した培養条件と培地を使用することもできる。例えば、ペプチドをそのコグネイト(cognate)プロモーターとともに含有する組換え細胞を、熱もしくは他の環境ストレスまたは化学ストレスに曝すことができる。当技術分野で公知のいずれかの技術を応用して、ペプチド複合体を産生させるための最適条件を確立することができる。
【0088】
本発明の一実施形態においては、メチオニンをコードするコドンを本発明の抗原性ペプチドをコードするヌクレオチド配列の5'末端に付加して、ペプチドの翻訳開始のためのシグナルを与える。このメチオニンは抗原性ペプチドと結合したまま残してもよいし、またはペプチドからのメチオニンの切断を触媒することができる酵素の添加によりメチオニンを除去してもよい。例えば、原核生物と真核生物の両方において、N-末端メチオニンはメチオニンアミノペプチダーゼ(MAP)によって除去される(Tsunasawaら, 1985, J. Biol. Chem. 260, 5382-5391)。メチオニンアミノペプチダーゼは、大腸菌(E.coli)、酵母、およびラットを含む数種の生物から単離されかつクローニングされている。
【0089】
ペプチドは、細菌、哺乳動物もしくはその他の宿主細胞型からまたは培地から当業者に公知の方法により回収することができる(例えば、本明細書に参照によりその全てが組み入れられる、「免疫学の現行プロトコル(Current Protocols in Immunology)」, vol. 2, chapter 8, Coliganら(編), John Wiley & Sons, Inc.;「病原性および臨床微生物学:実験室マニュアル(Pathogenic and Clinical Microbiology: A Laboratory Manual)」, Rowlandら, Little Brown & Co., June 1994を参照)。
【0090】
5.2. ワクチンアジュバントおよび製剤
一実施形態においては、本発明の医薬組成物は本発明の抗原性ペプチド、および製薬上許容される担体または賦形剤を含有する。この実施形態において、抗原性ペプチドは高親和性熱ショックタンパク質結合部位を含有することが好ましく、この結合部位は医薬組成物を被験体に投与した後に抗原性ペプチドと熱ショックタンパク質との結合をin vivoで促進することができる。アジュバントはかかる本発明の抗原性ペプチドとは別に投与することができる。
【0091】
他の実施形態においては、医薬組成物は1以上の異なるアジュバントと分子複合体を形成する本発明の抗原性ペプチド、および製薬上許容される担体または賦形剤を含有する。好ましくは、アジュバントは抗原性ペプチドと非共有結合複合体を形成する熱ショックタンパク質である。この好ましい実施形態は第5.3節に別に記載されている。基本緩衝液の例としては、(i)PBS;(ii)10mM KP04、150mM NaCl;(iii)10mM HEPES、150mM NaCl;(iv)10mMイミダゾール、150mM NaCl;および(v)20mMクエン酸ナトリウムが挙げられる。使用することができる賦形剤としては、(i)グリセロール(10%、20%);(ii)Tween 50(0.05%、0.005%);(iii)9%スクロース;(iv)20%ソルビトール;(v)10mMリシン;または(vi)0.01mM硫酸デキストランが挙げられる。
【0092】
さらに他の実施形態においては、本発明の抗原性ペプチドは1以上のアジュバントと混合した組成物として存在する。多数の異なるアジュバントを本発明の抗原性ペプチドとともに使用することができる。ペプチドとアジュバントを同じ液体量中で一緒に混合してもよいし、またはペプチドとアジュバントの複合体を一組成物内に含有してもよい。
【0093】
様々なアジュバントを、本発明の実施に用いることができ、それらのアジュバントとしては、限定するものではないが、全身性アジュバントおよび粘膜アジュバントが挙げられる。全身性アジュバントは非経口的に送達することができるアジュバントである。全身性アジュバントとしては、デポー(depot)効果をもたらすアジュバント、免疫系を刺激するアジュバントおよび両方の作用をするアジュバントが挙げられる。本明細書で使用する用語「デポー(depot)効果をもたらすアジュバント」とは、抗原を体内で徐々に放出させ、従って抗原への免疫細胞の曝露を長引かせるアジュバントである。このクラスのアジュバントとしては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:ミョウバン(alum)(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム);または鉱油、非鉱油、油中水型もしくは油中水中油型エマルジョン、水中油型エマルジョンを含むエマルジョン系製剤、例えばMontanideアジュバントのSeppic ISAシリーズ(例えば、Montanide ISA 720, AirLiquide, Paris, France);MF-59(Span 85とTween 80を用いて安定化した水中スクアレン型エマルジョン;Chiron Corporation, Emeryville, Calif.);およびPROVAX(安定化界面活性剤およびミセル形成剤を含有する水中油型エマルジョン;IDEC, Pharmaceuticals Corporation, San Diego, Calif.)。
【0094】
他のアジュバントは免疫系を刺激し、例えば、免疫細胞にサイトカインまたはIgGを産生させて分泌させる。このクラスのアジュバントとしては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:免疫賦活性核酸、例えばCpGオリゴヌクレオチド;Q. saponariaの木の樹皮から精製したサポニン、例えばQS21;ポリ[ジ(カルボキシルアトフェンオキシ)ホスファゼン(PCPPポリマー;Virus Research Institute, USA);リポ多糖類の誘導体(LPS)、例えばモノホスホリルリピドA(MPL;Ribi ImmunoChem Research, Inc., Hamilton, Mont.)、ムラミルジペプチド(MDP;Ribi)およびトレオニル-ムラミルジペプチド(t-MDP;Ribi);OM-174(リピドAに関係するグルコサミン二糖;OM Pharma SA, Meyrin, Switzerland);およびリーシュマニア伸長因子(Leishmania elongation factor)(精製したリーシュマニアタンパク質;Corixa Corporation, Seattle, Wash.)。
【0095】
他の全身性アジュバントは、デポー効果をもたらしかつ免疫系を刺激するアジュバントである。これらの化合物は、上記の全身性アジュバントの両方の機能を有する。このクラスのアジュバントとしては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:ISCOMs(混合サポニン、脂質を含有し、かつ抗原を保持できる細孔を有するウイルスサイズの粒子を形成する免疫賦活性複合体;CSL, Melbourne, Australia);SB-AS2(MPLとQS21を含有する水中油型エマルジョンであるSmithKline Beechamアジュバントシステム#2;SmithKline Beecham Biologicals [SBB], Rixensart, Belgium);SB-AS4(ミョウバンとMPLを含有するSmithKline Beechamアジュバントシステム#4;SBB, Belgium);ミセルを形成する非イオン性ブロックコポリマー、例えばCRL 1005(これらはポリオキシエチレン鎖によって挟まれた疎水性ポリオキシプロピレンの直鎖を有する;Vaxcel, Inc., Norcross, Ga.);およびSyntexアジュバント製剤(SAF、Tween 80および非イオン性ブロックコポリマーを含有する水中油型エマルジョン;Syntex Chemicals, Inc., Boulder, Colo.)。
【0096】
本発明によって有用である粘膜性アジュバントは、本発明の複合体と一緒に粘膜表面に投与したとき、被験体において粘膜免疫応答を誘導できるアジュバントである。粘膜性アジュバントとしては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:CpG核酸(例えばPCT公開特許出願WO 99/61056号);細菌毒素、例えばコレラ毒(CT)、CT誘導体、例えば、限定するものではないが、CTBサブユニット(CTB)(Wuら、1998;Tochikuboら、1998);CTD53(Val→Asp)(Fontanaら、1995);CTK97(Val→Lys)(Fontanaら、1995);CTK104(Tyr→Lys)(Fontanaら、1995);CTD53/K63(Val→Asp、Ser→Lys)(Fontanaら、1995);CTH54(Arg→His)(Fontanaら、1995);CTN107(His→Asn)(Fontanaら、1995);CTE114(Ser→Glu)(Fontanaら、1995);CTE112K(Glu→Lys)(Yamamotoら、1997a);CTS61F(Ser→Phe)(Yamamotoら、1997a、1997b);CTS106(Pro→Lys)(Douceら、1997、Fontanaら、1995);およびCTK63(Ser→Lys)(Douceら、1997;Fontanaら、1995)、接着帯毒素(zot)、大腸菌(Escherichia coli)熱不安定性エンテロトキシン、Labile Toxin(LT)、LT誘導体、例えば、限定するものではないが、LTBサブユニット(LTB)(Verweijら、1998);LT7K(Arg→Lys)(Komaseら、1998;Douceら、1995);LT61F(Ser→Phe)(Komaseら、1998);LT112K(Glu→Lys)(Komaseら、1998);LT118E(Gly→Glu)(Komaseら、1998);LT146E(Arg→Glu)(Komaseら、1998);LT192G(Arg→Gly)(Komaseら、1998);LTK63(Ser→Lys)(Marchettiら、1998;Douceら、1997、1998;DiTommasoら、1996);およびLTR72(Ala→Arg)(Giulianiら、1998)、百日咳毒素(PT)(Lyckeら、1992;Spangler BD、1992;FreytagおよびClemments、1999;Robertsら、1995;Wilsonら、1995)、例えば、PT-9K/129G(Robertsら、1995;Cropleyら、1995);毒素誘導体(以下参照)(Holmgrenら、1993;Verweijら、1998;Rappuoliら、1995;FreytagおよびClements、1999);リピドA誘導体(例えば、モノホスホリルリピドA、MPL)(Sasakiら、1998;Vancottら、1998;ムラミルジペプチド(MDP)誘導体(Fukushimaら、1996;Ogawaら、1989;Michalekら、1983;Morisakiら、1983);細菌外膜タンパク質(例えば、Borrelia burgdorferiの外表面プロテインA(OspA)リポタンパク質、ナイセリア髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)の外膜タンパク質)(Marinaroら、1999;Van de Vergら、1996);水中油型エマルジョン(例えば、MF59)(Barchfieldら、1999;Verschoorら、1999;O'Hagan、1998);アルミニウム塩(Isakaら、1998、1999);およびサポニン(例えば、QS21、Aquila Biopharmaceuticals, Inc., Farmington, MA)(Sasakiら、1998;MacNealら、1998)、ISCOMs、MF-59(Span 85とTween 80を用いて安定化した水中スクワレン型エマルジョン;Chiron Corporation、Emeryville、CA);MontanideアジュバントのSeppic ISAシリーズ(例えば、Montanide ISA 720;AirLiquide、Paris、France);PROVAX(安定化界面活性剤およびミセル形成剤を含有する水中油型エマルジョン;IDEC Pharmaceuticals Corporation、San Diego、Calif.);Syntextアジュバント製剤(SAF;Syntex Chemicals、Inc., Boulder、Colo.);ポリ[ジ(カルボキシルアトフェノキシ)]ホスファゼン(PCPPポリマー;Virus Research Institute、USA)およびリーシュマニア伸長因子(Corixa Corporation、Seattle、Wash.)。
【0097】
抗原性ペプチドとアジュバントを多数の方法で組み合わせることができる。例えば、異なるペプチドを混合して最初に混合物を調製し、次いで1種以上のアジュバントと複合体化して組成物を作製することができる。他の例として、異なる抗原性ペプチドを個々に1種以上のアジュバントと複合体化し、次いで得られるペプチド-アジュバント複合体の複数のバッチを混合して組成物を作製することができる。アジュバントを抗原性ペプチドの投与前、投与中、または投与後に、投与してもよい。アジュバントと抗原性ペプチドの投与を同じまたは異なる投与部位に行うことができる。好ましい実施形態においては、本発明の抗原性ペプチドを第5.3節に記載のように熱ショックタンパク質と複合体化する。抗原性ペプチド-HSP複合体は共有結合であっても非共有結合であってもよく;かかる複合体の製造方法は以下の第5.3.2節に記載される。
【0098】
本発明の抗原性ペプチドと複合体化したまたは混合したアジュバントだけでなく、追加のアジュバントを、ペプチドと最初のアジュバントの複合体を含有する組成物に加えて、単一組成物とした投与することができる。あるいは、追加のアジュバントを、ペプチドと最初のアジュバントの複合体と組み合わせて同時投与することができる。かかる追加のアジュバントの好ましい例としては、サポニンおよび免疫賦活性核酸が挙げられる。特定の実施形態においては、HSPと抗原性ペプチドを含有する組成物に加える第2のアジュバントはQS-21である。
【0099】
5.2.1. 医薬組成物の調製
本発明は、HSV-1およびHSV-2を予防および治療するための、本発明の抗原性ペプチドをそれ自体活性成分としてまたは1種以上のアジュバントと組み合わせて含有する医薬組成物を包含する。特定の実施形態においては、本発明はHSPと混合したまたは複合体化した本発明の抗原性ペプチドを含有する医薬組成物を包含する。好ましい実施形態においては、医薬組成物はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて調製する。本発明のワクチン製剤は、安定な、無菌の、好ましくは注入可能な製剤をもたらすいずれかの方法により調製することができる。
【0100】
本発明の医薬組成物に用いるペプチドの濃度は、少なくとも10%重量/容積(w/v)、少なくとも15%(w/v)、少なくとも20%(w/v)、少なくとも25%(w/v)、または少なくとも30%(w/v)でありうる。あるいは、本発明の医薬組成物に用いるペプチドとアジュバントの組み合わせた濃度は、少なくとも10%(w/v)、少なくとも15%(w/v)、少なくとも20%(w/v)、少なくとも25%(w/v)、または少なくとも30%(w/v)でありうる。本発明のワクチン製剤の効力が増強される濃度は、当業者に公知の標準的方法を用いて決定することができ、例えば、対照製剤(例えばペプチドまたはアジュバントを単独で含有する製剤)と比較して、ペプチド-アジュバント混合物または複合体に対する抗体またはT細胞応答により決定することができる。
【0101】
本発明の医薬組成物に用いる抗原性ペプチドとアジュバントの量は、抗原性ペプチドとアジュバントの化学的性質および力価に応じて変化しうる。典型的には、本発明のワクチン製剤中の抗原性ペプチドとアジュバントの出発濃度は、慣用的な投与経路、例えば筋肉内注射を用いて所望の免疫応答を惹起するために通常使用する量である。次いで本発明の医薬組成物中の抗原性ペプチドとアジュバントの濃度は、当技術分野で公知のおよび本明細書に記載の標準的方法により評価して有効な防御免疫応答が達成されるように、例えば希釈剤を用いる希釈により、調整する。
【0102】
本発明の医薬組成物は場合によっては凍結乾燥品として調製してもよく、次いでこれを経口投与用に製剤化するかまたは非経口投与用の液剤に再調製することができる。
【0103】
本発明の医薬組成物はさらに、増量剤、安定剤、緩衝剤、塩化ナトリウム、カルシウム塩、界面活性剤、酸化防止剤、キレート剤、他の賦形剤、およびそれらの組み合わせを含めて、他の作用剤を含有するように製剤化することができる。
【0104】
増量剤はワクチン組成物の凍結乾燥製剤の調製に好ましい。かかる増量剤は凍結乾燥品の結晶部分を形成し、マンニトール、グリシン、アラニン、およびヒドロキシエチルデンプン(HES)からなる群から選択することができる。マンニトール、グリシン、またはアラニンは好ましくは4〜10%の量で存在し、そしてHESは好ましくは2〜6%の量で存在する。
【0105】
安定化剤はスクロース、トレハロース、ラフィノース、およびアルギニンからなる群から選択することができる。これらの薬剤は好ましくは1〜4%の量で存在する。塩化ナトリウムは本発明の製剤中に好ましくは100〜300mM量が含まれてもよく、上記の増量剤なしで用いる場合には、製剤中に300〜500mM量のNaClが含まれてもよい。カルシウム塩としては、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、カルシウムグルビオナート(calcium glubionate)、またはカルシウムグルセプタート(calcium gluceptate)が挙げられる。
【0106】
緩衝剤は、緩衝液として作用する能力のある生理学的に許容される化学物質または化学物質の組み合わせであって、限定するものではないが、ヒスチジン、TRIS[トリス-(ヒドロキシメチル)-アミノメタン]、BIS-Trisプロパン[1,3-ビス-[トリス-(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-プロパン]、PIPES[ピペラジン-N、N'-ビス-(2-エタンスルホン酸)]、MOPS[3-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸]、HEPES[N-2-ヒドロキシエチル-ピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸]、MES[2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸]、およびACES[N-2-アセトアミド-2-アミノエタンスルホン酸]が挙げられる。典型的には、緩衝剤は10〜50mMの濃度で含まれる。界面活性剤は、もし存在する場合、好ましくは0.1%以下の濃度であり、限定するものではないが、ポリソルベート20、ポリソルベート80、プルロニックポリオール、およびBRIJ35(ポリオキシエチレン23ラウレルエーテル)からなる群から選択することができる。酸化防止剤は、もし使用される場合、医薬品製剤としての使用に適合しうるものでなければならず、好ましくは水溶性である。好適な酸化防止剤としては、ホモシステイン、グルタチオン、リポ酸、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox)、メチオニン、チオ硫酸ナトリウム、白金、グリシン-グリシン-ヒスチジン(トリペプチド)、およびブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)が挙げられる。キレート剤は、もしカルシウムが組成物中に使用されていれば、好ましくはカルシウムより大きい親和力で銅および鉄などの金属と結合しなければならない。好ましいキレート剤はデフェロキサミンである。
【0107】
当技術分野で公知の多数の製剤を本発明に使用することができる。例えば、米国特許第5,763,401号は15〜60mMのスクロース、50mM以下のNaCl、5mM以下の塩化カルシウム、65〜400mMのグリシン、および50mM以下のヒスチジンを含有する治療用製剤を記載している。次の特定の製剤は安定であることが確認された:(1)150mM NaCl、2.5mM塩化カルシウム、および165mMマンニトール;ならびに(2)1%スクロース、30mM塩化ナトリウム、2.5mM塩化カルシウム、20mMヒスチジン、および290mMグリシン。
【0108】
米国特許第5,733,873号は、0.01〜1mg/mlの界面活性剤を含有する製剤を開示している。この特許は、次の範囲の賦形剤を有する製剤を開示している:少なくとも0.01mg/ml、好ましくは0.02〜1.0mg/ml量のポリソルベート20または80;少なくとも0.1MのNaCl;少なくとも0.5mMのカルシウム塩;および少なくとも1mMのヒスチジン。さらに特定すれば、次の特定の製剤も開示されている:(1) 14.7-50-65mMヒスチジン、0.31-0.6M NaCl、4mM塩化カルシウム、0.001-0.02-0.025%ポリソルベート80(0.1% PEG4000または19.9mMスクロースを含むまたは含まない);ならびに(2) 20mg/mlマンニトール、2.67mg/mlヒスチジン、18mg/ml NaCl、3.7mM塩化カルシウム、および0.23mg/mlポリソルベート80。
【0109】
低濃度または高濃度の塩化ナトリウムの使用が記載されており、例えば、米国特許第4,877,608号は、比較的低濃度の塩化ナトリウムを含む製剤、例えば0.5mM〜15mM NaCl、5mM塩化カルシウム、0.2mM〜5mMヒスチジン、0.01〜10mMリシン塩酸塩および10%以下のマルトース、10%スクロース、または5%マンニトールを含有する製剤を教示する。
【0110】
米国特許第5,605,884号は、比較的高濃度の塩化ナトリウムを含む製剤を教示している。これらの製剤には、0.35M〜1.2M NaCl、1.5〜40mM塩化カルシウム、1mM〜50mMヒスチジン、および10%以下の糖、例えばマンニトール、スクロースまたはマルトースが含まれる。0.45M NaCl、2.3mM塩化カルシウム、および1.4mMヒスチジンを含有する製剤が例示されている。
【0111】
国際特許出願WO 96/22107号は、糖トレハロースを含有する製剤、例えば:(1) 0.1M NaCl、15mM塩化カルシウム、15mMヒスチジン、および1.27M(48%)のトレハロース;または(2) 0.011%塩化カルシウム、0.12%ヒスチジン、0.002% TRIS、0.002% Tween 80、0.004% PEG 3350、7.5%トレハロース;および0.13%または1.03% NaClを含有する製剤を記載している。
【0112】
米国特許第5,328,694号は、100〜650mM二糖および100mM〜1.0Mアミノ酸を含む製剤、例えば、(1)0.9Mスクロース、0.25Mグリシン、0.25Mリシン、および3mM塩化カルシウム;および(2)0.7Mスクロース、0.5Mグリシン、および5mM塩化カルシウムを含有する製剤を記載している。
【0113】
5.3. 熱ショックタンパク質と使用方法
5.3.1. 熱ショックタンパク質
本発明の実施に当たって有用な熱ショックタンパク質(本明細書においては互換的にストレスタンパク質とも呼ぶ)は、次の判定基準を満たす細胞タンパク質のなかから選択することができる。ストレスタンパク質は他のタンパク質またはペプチドと結合することができ、アデノシン三リン酸(ATP)の存在下でまたは酸性条件下で結合したタンパク質またはペプチドを遊離することができ;かつ上記特性を有するいずれのタンパク質とも少なくとも35%の相同性を示す。好ましくは、細胞がストレスの多い刺激に曝されると、かかるタンパク質の細胞内濃度は増加する。ストレスにより誘導される熱ショックタンパク質だけでなく、HSP60、HSP70、HSP90、HSP100、sHSP、およびPDIファミリーは、配列類似性においてストレス誘導HSPと関係のあるタンパク質(例えば35%を超えるアミノ酸同一性を有するタンパク質)をも含むが、これらのタンパク質の発現レベルはストレスによって変化しない。従って、ストレスタンパク質または熱ショックタンパク質(HSP)の定義は、その細胞内の発現レベルがストレスの多い刺激に応答して増強されるこれらのファミリーのメンバーと少なくとも35%〜55%、好ましくは55%〜75%、そして最も好ましくは75%〜85%のアミノ酸同一性を有する他のタンパク質、その突然変異体、類似体、および変異体を包含することを意図している。
【0114】
以上記載した主なHSPファミリーだけでなく、小胞体に常在するタンパク質であるカルレティキュリンも、抗原性分子と複合体化したとき免疫応答を惹起するのに有用な、さらなる他の熱ショックタンパク質であることが確認されている(BasuおよびSrivastava, 1999, J. Exp. Med. 189:797-202)。本発明に用いることができる他のストレスタンパク質としては、限定するものではないが、grp78(またはBiP)、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、hsp110、およびgrp170が挙げられる(Linら, 1993, Mol. Biol. Cell, 4:1109-1119;Wangら, 2001, J. Immunol., 165:490-497)。これらのファミリーの多数のメンバーは、その後、その他のストレスの多い刺激に応答して誘導されることが分かっており、上記刺激には、限定するものではないが、栄養欠乏、代謝障害、酸素ラジカル、低酸素および細胞内病原体による感染が含まれる(Welch, May 1993, Scientific American 56-64;Young, 1990, Annu. Rev. Immunol. 8:401-420;Craig, 1993, Science 260:1902-1903;Gethingら, 1992, Nature 355:33-45;およびLindquistら, 1988, Annu. Rev. Genetics 22:631-677を参照、これらの文献の開示は本明細書に参照により組み入れられる)。これらのファミリーの全てに属するHSP/ストレスタンパク質は、本発明の実施に使用することができると考えられる。
【0115】
主なHSPはストレスの多い細胞内では非常に高いレベルまで蓄積しうるが、ストレスを受けなかった細胞においては、それらは低〜中程度で存在する。例えば、高度に誘導性の哺乳動物hsp70は通常温度でほとんど検出されないが、熱ショックを受けると細胞内で最も活発に合成されるタンパク質のひとつとなる(Welchら, 1985, J. Cell Biol. 101 :1198-1211)。対照的に、hsp90とhsp60タンパク質は、通常温度でほとんどの(全てではないが)哺乳動物細胞内に豊富に存在し、熱によりさらに誘導される(Laiら, 1984, Mol. Cell. Biol. 4:2802-10;van Bergen en Henegouwen,ら, 1987, Genes Dev. 1:525-31)。
【0116】
様々な実施形態において、あるファミリー内の熱ショックタンパク質または熱ショックタンパク質の変異体をコードするヌクレオチド配列は、HSPをコードするヌクレオチド配列を含むプローブを用いたハイブリダイゼーションによって低ないし中度のストリンジェンシーの条件下で同定しかつ取得することができる。
【0117】
例としてであって限定するものではないが、かかる低ストリンジェンシーの条件を用いる手順は次の通りである(ShiloおよびWeinberg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:6789-6792も参照すること)。DNAを含有するフィルターを、35%ホルムアミド、5 X SSC、50mM Tris-HCl(pH7.5)、5mM EDTA、0.1% PVP、0.1% Ficoll、1% BSA、および500μg/ml変性サケ精子DNAを含有する溶液中で40℃にて6時間前処理する。ハイブリダイゼーションは次の改変を施した上記溶液中で実施する:0.02% PVP、0.02% Ficoll、0.2% BSA、100μg/mlサケ精子DNA、10%(wt/vol)硫酸デキストラン。フィルターをハイブリダイゼーション混合液中で40℃にて18〜20時間インキュベートし、次いで2X SSC、25mM Tris-HCl(pH 7.4)、5mM EDTA、および0.1% SDSを含有する溶液中で55℃にて1.5時間洗浄する。洗浄液を新しい溶液と置き換え、さらに60℃にて1.5時間インキュベートする。フィルターにドライブロットして、シグナル検出のために感光する。必要があれば、シグナル検出前に3回目のフィルター洗浄を65〜68℃にて行う。使用可能な他の低ストリンジェンシー条件は当技術分野で周知である(例えば、交差ハイブリダイゼーションに用いられる条件)。
【0118】
HSPを使用する本発明の様々な実施形態においては、HSPのペプチド結合断片および機能的に活性のあるHSPの誘導体、類似体、および変異体も使用することができる。本明細書で使用する用語「HSPのペプチド結合断片」または「HSPペプチド結合断片」は、ペプチドと非共有結合で結合して複合体を形成し、かつ免疫応答を惹起することができるドメインを含有するが、全長HSPではないポリペプチドをさす。用語「HSPの変異体」は、ペプチドと非共有結合で結合して複合体を形成し、かつ免疫応答を惹起することができるが、HSPと高度の配列類似性を共有するポリペプチドをさす。2つのアミノ酸配列または核酸配列同士の同一性の領域を決定するためには、配列を最適な比較を目的としてアライメントする(例えば、ギャップを第1のアミノ酸配列または核酸配列中に導入して、第2のアミノ酸または核酸配列とのアライメントを最適化することができる)。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1配列のある位置が第2の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドで占有されている場合には、両分子はその位置において同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列が共有する同一位置の数の関数である(すなわち、同一性%=重複する同一位置の数/位置の総数 x 100%)。一実施形態において、2つの配列は同じ長さである。
【0119】
2つの配列間の同一性パーセントの決定はまた、数学的アルゴリズムを用いて実施することもできる。2つの配列を比較するために用いる数学的アルゴリズムの好ましい例は、限定するものではないが、KarlinおよびAltschul, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268に記載のアルゴリズムを、KarlinおよびAltschul, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877に記載のように改変したものである。かかるアルゴリズムはAltschulら, 1990, J. Mol. Biol. 215:403-410に記載のNBLASTおよびXBLASTプログラム中に組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索は、本発明の核酸分子と相同的なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラムを用いて、score=100、wordlength=12で実行することができる。BLASTタンパク質検索は、本発明のタンパク質分子と相同的なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラムを用いて、score=50、wordlength=3で実行することができる。比較目的のためのギャップ付きアライメントを得るためには、Gapped BLASTをAltschulら, 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記載の通り実行することができる。あるいは、PSI-Blastを用いて反復検索を実行し、分子間の遠縁の関係を検出することができる(Altschulら、1997、前掲)。BLAST、Gapped BLAST、およびPSI-Blastプログラムを用いるとき、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターを利用することができる(http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照)。配列比較に用いる数学的アルゴリズムの他の好ましい、限定するものでない例は、MyersおよびMiller, 1988, CABIOS 4:11-17のアルゴリズムである。かかるアルゴリズムは、GCG配列アライメントソフトウェアパッケージの一部分であるALIGNプログラム(バージョン2.0)中に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためのALIGNプログラムを利用する場合は、PAM120 weight residue table、gap length penalty 12、およびgap penalty 4を用いることができる。2配列間の同一性パーセントは、上記と同様の技法を利用して、ギャップを導入してまたは導入しないで、決定することができる。同一性パーセントを計算する際には、典型的には正確に一致したものだけを数える。
【0120】
一実施形態においては、例えば、hsp70およびhsc70のペプチド結合ドメインの誘導体および類似体を設計することができる。Hsp70のペプチド結合部位の三次元構造をコンピューターモデル化することにより、hsc70変異体を含むhsp70ファミリーのメンバーの変異体を設計することができ、この場合、ペプチド結合または構造的に重要な決定要因に関与しないアミノ酸残基を野生型残基の代わりに使用してもよい。
【0121】
特定の実施形態においては、本発明のHSPペプチド結合断片はペプチド結合ドメインを含有し、前記ペプチド結合ドメインはそのN末端側でもともと隣接する可変数のアミノ酸とそのN末端側で連続しており、またそのC末端側でもともと隣接する可変数のアミノ酸とそのC末端側で連続している。例えば、本明細書に参照によりその全てが組み入れられる米国特許公開第2001/0034042号に開示されたHSPのペプチド結合断片を参照されたい。
【0122】
天然のHSPのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は、一般的にGenBankなどの配列データベースにおいて利用可能である。Entrezなどのコンピュータープログラムを利用してデータベースを閲覧し、目的のアミノ酸配列および遺伝子配列データを登録番号により検索することができる。また、これらのデータベースを検索することで、アライメントスコアと統計学によって類似配列をランク付けするFASTAおよびBLASTなどのプログラムを用いて、問い合わせ配列に対して様々な類似度をもつ配列を同定することもできる。本発明のHSPペプチド結合断片の作製に利用しうる、かかるHSPのヌクレオチド配列の非限定的例は、次の通りである:ヒトHsp70:Genbank登録番号NM 005345、Sargentら, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 86:1968-1972;ヒトHsc70:Genbank登録番号P11142、Y00371;ヒトHsp90:Genbank登録番号X15183、Yamazakiら, Nucl. Acids Res., 17:7108;ヒトgp96:Genbank登録番号X15187、Makiら, 1990, Proc. Natl. Acad Sci., 87:5658-5562;ヒトBiP:Genbank登録番号M19645、Tingら, 1988, DNA, 7:275-286;ヒトHsp27:Genbank登録番号M24743、Hickeyら, 1986, Nucleic Acids Res., 14:4127-45;マウスHsp70:Genbank登録番号M35021、Huntら, 1990, Gene, 87:199-204;マウスgp96:Genbank登録番号M16370、Srivastavaら, 1987, Proc. Natl. Acad. Sci., 85:3807-3811;およびマウスBiP、Genbank登録番号U16277、Haasら, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85:2250-2254。本明細書で使用する用語「HSP核酸配列」は、遺伝子コードの縮重によって、自然界に存在するヌクレオチド配列だけでなく、HSPをコードする全ての他の縮重DNA配列を包含する。
【0123】
本発明の医薬製剤中のHSPは、組織からの精製により、または組換えDNA技法により調製することができる。HSPは、後続のステップで1以上の抗原性ペプチドとin vitroで複合体化するために、組織からATPの存在下または酸性条件(pH 1〜pH 6.9)下で精製することができる。本明細書に参照によりその全てが組み入れられるPengら, 1997, J. Immunol. Methods, 204:13-21;LiおよびSrivastava, 1993, EMBO J. 12:3143-3151を参照されたい。精製した熱ショックタンパク質は、細胞中の、細胞抽出物中の、細胞培地中の、または個体中の前記タンパク質と結合している物質を実質的に含まない。
【0124】
所与のHSPまたはそのペプチド結合ドメインの規定されたアミノ酸またはcDNA配列を用いて、宿主細胞にトランスフェクトして発現させる遺伝子構築物を作製することができる。組換え宿主細胞は、宿主細胞内でHSP核酸配列の発現を駆動する調節領域と機能しうる形で結合された、HSPまたはペプチド結合断片をコードする配列を含む核酸配列を1コピー以上含有しうる。組換えDNA技法を利用して容易に組換えHSP遺伝子またはHSP遺伝子の断片を作製することができ、かつ標準技術を利用してかかるHSP遺伝子断片を発現させることができる。HSPペプチド結合ドメインをコードするいずれかの核酸配列(cDNAおよびゲノムDNAを含む)を利用して、本発明のHSPまたはペプチド結合断片を調製することができる。ペプチド結合ドメインを含有するHSP遺伝子断片を適当なクローニングベクター中に挿入し、該ベクターを宿主細胞中に導入して、遺伝子配列を多コピー数で作製することができる。当技術分野で公知の多数のベクター-宿主系、例えば、限定するものではないが、バクテリオファージ、例えばλ誘導体、またはプラスミド、例えばpBR322、pUCプラスミド誘導体、Bluescriptベクター(Stratagene)もしくはpETシリーズのベクター(Novagen)を利用してもよい。当技術分野で公知の突然変異誘発のいずれかの技術を利用して、発現されたペプチド配列中にアミノ酸置換を入れるために、またはさらなる遺伝子操作を容易にする制限酵素切断部位を作製/欠失するために、DNA配列中の個々のヌクレオチドを改変することができる。
【0125】
HSPまたはペプチド結合断片を融合タンパク質として発現させて、それらを発現する細胞からの回収と精製を容易にすることができる。例えば、HSPまたは断片は、培地中への分泌のためにその小胞体膜通過を指令するシグナル配列リーダーペプチドを含有してもよい。さらに、HSPまたは断片は、抗原性ペプチドとの結合に関わらないHSPまたは断片のいずれかの部分(例えば、カルボキシル末端など)に融合した、アフィニティーラベルなどのアフィニティー標識を含有してもよい。アフィニティー標識は、アフィニティーパートナー分子と結合することにより、タンパク質の精製を容易にするために使用される。当技術分野で公知の様々なアフィニティー標識、例えば、限定するものではないが、免疫グロブリン定常領域、ポリヒスチジン配列(Petty, 1996, 「金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(Metal-chelate affinity chromatography)」, in 「分子生物学の現行プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」, Vol. 2, Ed. Ausubelら, Greene Publish. Assoc. & Wiley Interscience)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST;Smith, 1993, Methods Mol. Cell Bio. 4:220-229)、大腸菌(E.coli)マルトース結合タンパク質(Guanら, 1987, Gene 67:21-30)、様々なセルロース結合ドメイン(米国特許第5,496,934号;第5,202,247号;第5,137,819号;Tommeら, 1994, Protein Eng. 7:117-123)などを利用することができる。
【0126】
かかる組換えHSPまたは断片を、免疫応答を惹起するその能力に関する抗原性ペプチド結合活性についてアッセイすることができる(例えば、Klappaら, 1998, EMBO J., 17:927-935を参照)。宿主細胞またはライブラリー細胞中で産生される組換えHSPは、免疫原性組成物の意図するレシピエントと同じ生物種のものであることが好ましい。組換えヒトHSPが最も好ましい。
【0127】
一実施形態においては、組織から単離されるHSPは異なるHSPの混合物、例えばhsp70とhsc70の混合物である。第6節で使用したHSPは、マウス組織から単離したhsp70または組換えヒトhsc70のいずれかであった。最も好ましい実施形態においては、医薬組成物は、例えば、DworniczakおよびMirault, Nucleic Acids Res. 15:5181-5197 (1987) に記載され、またGenbank登録番号P11142および/またはY00371を有するような、ヒトhsc70配列を用いて組換えDNA法により得られた精製ヒトhsc70を含有する。
【0128】
5.3.2. 熱ショックタンパク質-ペプチド複合体の調製
本節に記載したのは、in vitroでHSPを本発明の抗原性ペプチドの一集団と複合体化する例示的方法である。一実施形態においては、複合体化反応によりHSPとペプチドの間に共有結合を形成させることができる。好ましい実施形態では、複合体化反応によりHSPとペプチドの間に非共有結合を形成させる。様々な実施形態において、in vitroで形成した複合体を場合によっては精製する。精製した熱ショックタンパク質と抗原性ペプチドの複合体は、細胞中または細胞抽出物中でかかる複合体と会合している物質を実質的に含まない。精製した熱ショックタンパク質および精製した抗原性ペプチドをin vitroの複合体化反応に使用する場合、熱ショックタンパク質と抗原性ペプチドの「精製した」複合体という用語は、複合体中には含まれない遊離のHSPおよびペプチドを含有する組成物を排除するものでない。
【0129】
複合体化の前に、HSPをATPで前処理するかまたは酸性条件に曝して、目的のHSPと非共有結合で会合している全てのペプチドを除去することができる。酸性条件は、pH 1〜pH 6.9の範囲のいずれかのpHレベルであって、pH 1〜pH 2、pH 2〜pH 3、pH 3〜pH 4、pH 4〜pH 5、pH 5〜pH 6、およびpH 6〜pH 6.9が含まれる。ATP処理を用いる場合、過剰のATPは、Levy,ら, 1991, Cell 67:265-274に記載のように、アピラーゼを加えることにより調製物から除去する。酸性条件を用いる場合、緩衝液はpH改変試薬を加えることにより中性pHに再調整する。それぞれのまたは全ての抗原性ペプチド対HSPのモル比は0.01:1〜102:1のいずれの比であってもよく、限定するものではないが、0.01:1、0.02:1、0.05:1、0.1:1、0.2:1、0.5:1、1:1、2:1、3:1、5:1、10:1、20:1、30:1、40:1、49:1、および最大102:1が含まれる。ペプチド集団とHSPとの非共有結合によるin vitro複合体化の好ましいプロトコルの例を以下に述べる。
【0130】
抗原性ペプチドの集団(1μg)と前処理したHSP(9μg)を混合して、ペプチド(またはタンパク質):HSPのモル比を大体5:1とする。抗原性ペプチドの集団は本発明の異なる抗原性ペプチド種の混合物でありうる。次いで、その混合物を、好適な結合緩衝液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水pH 7.4、または20mMリン酸ナトリウム、pH 7.2、350mM NaCl、3mM MgCl2および1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)を含有する緩衝液)中で15分間〜3時間、4℃〜50℃にてインキュベートする。調製物は次いで、Centricon 10アセンブリー(Millipore)を通しての遠心分離により精製して、未結合のペプチドを除去してもよい。タンパク質/ペプチドとHSPとの非共有結合による会合は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または質量分析計(MS)により試験することができる。
【0131】
hsp70とペプチドとの非共有結合複合体を調製するのに好ましい、本発明の別の実施形態では、精製したhsp70の5〜10μgを、100μlの容積中の20mMリン酸ナトリウム緩衝液pH 7.5、0.5M NaCl、3mM MgCl2および1mM ADP中で、等モル量のペプチドとともに、37℃にて1時間インキュベートする。このインキュベーション混合物は、必要に応じて1回以上、Centricon 10アセンブリー(Millipore)を通して遠心分離して、未結合のペプチドを除去してもよい。
【0132】
gp96またはhsp90とペプチドとの非共有結合複合体を調製するのに好ましい、本発明の別の実施形態では、精製したgp96またはhsp90の5〜10μgを、20mMリン酸ナトリウム緩衝液pH 7.5、0.5M NaCl、3mM MgCl2を含有する緩衝液などの好適な緩衝液中で等モル量または過剰量のペプチドとともに、60〜65℃にて5〜20分間インキュベートする。このインキュベーション混合物を室温まで冷却させ、そして場合によっては、必要に応じて1回以上、Centricon 10アセンブリー(Millipore)を通して遠心分離して、未結合のペプチドを除去することができる。
【0133】
ペプチドとの複合体化後、免疫原性HSP複合体を、場合によっては、例えば、以下に記載の混合リンパ球標的細胞アッセイ(mixed lymphocyte target cell assay:MLTC)を用いてアッセイすることができる。好ましい実施形態においては、複合体を酵素結合免疫スポットアッセイ(enzyme-linked immunospot assay:ELISPOT)(Taguchi T.ら, J Immunol Methods 1990; 128:65-73)により測定する。HSP-ペプチド複合体を単離して希釈したら、これらの複合体は、場合により、以下に述べる好適な投与プロトコルと賦形剤を用いて動物モデルでさらに特徴付けすることができる。
【0134】
HSPとペプチドの非共有結合複合体を作る代わりに、抗原性ペプチドとHSPとを共有結合で結合させてもよい。
【0135】
一実施形態においては、HSPを化学架橋によりペプチドと共有結合させる。化学架橋法は当技術分野で周知である。例えば、好ましい実施形態においては、グルタルアルデヒド架橋を用いることができる。グルタルアルデヒド架橋はペプチドとHSPとの共有結合複合体を形成するのに利用されている(例えば、Barriosら, 1992, Eur. J. Immunol. 22:1365-1372を参照)。好ましくは、1〜2mgのHSP-ペプチド複合体を0.002%のグルタルアルデヒドの存在下で2時間架橋する。次いでリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対して一晩透析することによりグルタルアルデヒドを除去する(Lussowら, 1991, Eur. J. Immunol. 21:2297-2302)。あるいは、HSPとペプチドを紫外光(UV)架橋により当技術分野で公知の条件下で架橋してもよい。
【0136】
別々の共有結合および/または非共有結合複合体化反応から得られたHSPと抗原性ペプチドの複合体は、被験体に投与する前に、組み合わせて1つの組成物としてもよい。特定の実施形態においては、1種のHSPを本発明の49種の抗原性ペプチドと複合体化する。様々な実施形態において、HSPと複合体化した複数の抗原性ペプチド中のそれぞれの抗原性ペプチドは、各ヘルペスウイルスペプチドのそれぞれのアミノ酸配列に連続したヘルペスウイルスアミノ酸配列を含有しない。様々な実施形態において、HSPと複合体化した複数の抗原性ペプチドは、それぞれ、配列番号1〜49のアミノ酸配列を含有する抗原性ペプチド以外に、HSV2タンパク質のエピトープを含有する抗原性ペプチドを含有しない。特定の実施形態において、熱ショックタンパク質と抗原性ペプチドの複数の複合体は、細胞から取得されたものでも、細胞から精製されたものでもない。様々な実施形態において、複合体中の抗原性ペプチドの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%は、配列番号1〜102または配列番号1〜49からなる群から選択された異なるヘルペスウイルスペプチドである。
【0137】
好ましい実施形態においては、hsp70および/またはhsc70を配列番号1〜49のアミノ酸配列を有するヘルペスウイルスペプチドと複合体化する。他の好ましい実施形態においては、本発明の組成物は抗原性ペプチドと非共有結合で結合したストレスタンパク質の49種の異なる複合体を含有し、ここで、上記49種の異なる複合体はそれぞれ異なる抗原性ペプチドを含有し、ここで、上記異なる抗原性ペプチドのそれぞれは配列番号1〜49からなる群から選択されたアミノ酸配列で構成されるそれぞれのヘルペスウイルスペプチドの1以上のHLA結合エピトープを含有する。さらに好ましくは、ストレスタンパク質はヒトhsc70であり、そして最も好ましくは、hsc70と複合体化した抗原性ペプチドは配列番号1〜49のヘルペスウイルスペプチドである。
【0138】
5.4. 用途
本発明はまた、本発明の組成物を利用する方法も提供する。抗原性ペプチド、または抗原性ペプチドとアジュバントを含有する医薬組成物は、ヘルペスウイルスによる感染を治療および/または予防するために使用することができる。本発明の組成物を用いて、HSV感染の治療または予防を所望する個体または被験体による使用のための医薬品およびワクチンを作ることができる。様々な実施形態においては、かかる個体または被験体は、ヘルペスウイルスに感染する可能性がある動物、好ましくは哺乳動物、非ヒト霊長類、そして最も好ましくはヒトである。本明細書で使用する用語「動物」としては、限定するものではないが、愛玩用の動物、例えばネコおよびイヌ;動物園の動物;野生動物、例えばシカ、キツネおよびアライグマ;農場動物、家畜および家禽、例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、七面鳥、カモ、およびニワトリ、ならびに実験動物、例えばげっ歯類、ウサギ、およびモルモットが挙げられる。
【0139】
5.4.1. ヘルペスウイルス感染の治療
急性または慢性(原発または再発)HSV感染を治療するために、本発明の医薬組成物を単独でまたは他の治療法と併用することができる。
【0140】
HSV-1およびHSV-2による感染は、多くの個体では、頻発性のおよび/または疼痛を伴う再発と関係があり、それ自体、皮膚または粘膜の発疹として、特に口腔/口唇コールドソア(cold sore)(HSV-1感染において)または性器水疱(HSV-2感染において)として現れる。生きているウイルスがこれらの小胞から出てくることもある。伝染は通常、接触による。ウイルスは神経細胞に移動することもあり、そこでウイルスは休止潜伏状態のまま存在する。再発の頻度と部位は変わりうる。ウイルスの再活性化と感染および症状の再発は、様々な要因、例えば、発熱、太陽曝露、月経期、免疫抑制、ストレス、または物理的接触により開始しうる。
【0141】
HSV-1による初期感染は、ほぼ10〜14日間持続する口腔びらん(oral sore)が特徴であり、しばしば発熱、頭痛、および身体の疼痛を伴う。HSV-2による初期感染は、多数の痛みのある疱疹が特徴であり、発熱および一般的な病気の感覚を伴う。HSV感染の最初の徴候が現れたときに本発明の医薬組成物を投与すると、その症状の重症度および/または長さを軽減する効果、例えば、びらんの数を少なくし、びらんに伴う疼痛を軽減し、発熱および一般的な病気の感覚を軽減し、かつ/またはヘルペス性びらんが存在する期間を1週以上から数日以下に低減する効果が得られると考えられる。
【0142】
本発明の医薬組成物は、初感染の検出時に、または再発性感染の発症前もしくは発症中に、症状を改善するために投与することができる。この治療法の目標としては、限定するものではないが、初感染に関連する疾患の重症度の軽減;潜伏ウイルスの再活性化の頻度の低減;再活性化疾患の重症度の限定;および初感染または再活性化感染に関連するウイルスの伝播の制限が挙げられる。
【0143】
再発性HSV-1感染は、約1週間持続する口腔コールドソアおよびその領域の赤みと腫脹が特徴である。再発性HSV-2感染は、性器域の刺痛、不快感、かゆみ、または痛みの症状で始まり、続いて数時間〜数日間後に痛みのある疱疹が現れ、そこが崩れて、びらんが残る。性器ヘルペスの典型的な症状は1週間ほど持続する。再発性HSV感染の最初の徴候が現れたときに、好ましくは口腔または性器域に不快感または腫脹の最初の徴候が現れたときに、本発明の医薬組成物を投与すると、その症状の重症度および/または長さの軽減、例えば、びらん数の減少、びらんに伴う疼痛の軽減、および/またはヘルペス性びらんが存在する期間の短縮(1週間から2,3日以下へ)といった治療効果が生じると考えられる。例えば、ヘルペスに関係する水泡形成の最初の徴候が現れたときに本発明のペプチドとアジュバントの医薬製剤を投与すると、かかる水泡の形成および出現を軽減したり消失させる効果があり、それにより、この疾患に関連する不快感が軽減または消滅し、かつまたウイルス流出も低減しうる。
【0144】
投与は、ウイルス感染の最初の徴候時にまたは再活性化時に開始し、続いて、少なくとも症状が実質的に軽減するまでおよびその後のある一定期間にわたりブースター量を投与する。本発明の組成物による感染個体の治療は感染の回復を促進しうる。本発明の組成物は、高頻度再発性感染に罹患しやすい(またはその素因のある)個体の場合に、かかる再発性感染の頻度を低減させる方法において特に有用である。例えば、本発明の組成物は、かかる感染個体が再発性感染を発症させることが知られているかまたは発症させる疑いのある要因(太陽光線への曝露もしくは発熱など)に曝された後に、投与することができる。
【0145】
医薬組成物はまた、症状がないにもかかわらずHSVに感染している個体およびHSVのキャリアである無症状の個体に投与することもできる。かかる個体は、その循環系に抗HSV抗体が存在することにより確認することができる。
【0146】
5.4.2. ヘルペスウイルス感染の予防
本発明の医薬組成物はまた、ヘルペスウイルス、特にHSV-1およびHSV-2に対する免疫にも使用することができる。医薬組成物の個体への予防的投与によって将来のHSV-1またはHSV-2感染に対する防御を与えることができる。例えば、免疫した個体がこのウイルスに曝されても、個体はHSV感染の症状を示さず、かつ/または、免疫した個体においては多数の細胞に感染して増殖的に複製する前にウイルスが不活化される。
【0147】
HSVによる一次感染を予防する方法は、例えば、集団内でのウイルスの伝播を予防するためにまたは流行を抑えるために、集団全体にまたは選択した亜集団に適用することができる。本方法は特に、免疫抑制状態の、免疫無防備状態の、またはHSV罹患リスクの高い個体、例えばヘルスケア提供者、HIV陽性個体またはHSV感染個体の家族および配偶者に適用することができる。
【0148】
5.4.3. 併用療法
「併用療法」は、感染性疾患を予防または治療するために、本発明の医薬組成物を他の治療様式と組み合わせて使用することを意味する。本発明の医薬組成物の投与は抗感染剤の効果を増強することができ、逆もまた同様である。一実施形態においては、このさらなる形態の治療様式は非HSP治療様式であり、すなわち、この治療様式はHSPを一成分として含まない。この手法は通常、併用療法、補助療法または連結療法と呼ばれている(これらの用語は本明細書では互換的に使用される)。併用療法を用いると、相加効力または相加治療効果を認めることができる。治療効果が相加効果より大きい相乗効果を期待することもできる。併用療法の利用はまた、本発明の治療様式または医薬組成物のみの投与の場合より優れた治療プロファイルを提供することもできる。相加または相乗効果は、これらの治療様式のいずれかまたは両方の投薬量および/または投与回数を、望ましくない有害作用が軽減または回避されるように調整することを可能にする。
【0149】
様々な特定の実施形態において、併用療法は、本発明の医薬組成物を、ある治療様式で治療した被験体に投与することを含んでなる。ただし、ある治療様式を単独で施しても被験体を治療するのに臨床上十分ではなく、そのため被験体はさらなる有効な治療法を必要としている(例えば、本発明の医薬組成物を投与しないと、被験体がある治療様式に不応性である)場合である。かかる実施形態には、ある治療様式を受けている被験体(該被験体はその治療様式に応答しているものの、副作用、再発、耐性の発生などに悩まされている)に、本発明の医薬組成物を投与することを含んでなる方法が含まれる。かかる被験体は、その治療様式のみによる治療に対しては非応答性または不応性であり、すなわち、少なくともある相当な部分の病原体が不活化されないか、再発感染の頻度および/または重症度に変化がないままである。本実施形態では、ある治療様式のみでは不応性である被験体に本発明の医薬組成物を投与することを含んでなる本発明の方法は、本発明の方法により意図されるように投与した場合に、その治療様式の治療効果を改善することができる。治療様式の有効性は、当技術分野で公知の方法を用いてin vivoまたはin vitroで測定することができる。一実施形態においては、本発明の医薬製剤を、異なるHSVワクチンを含んでなる第2の治療様式と組み合わせて投与する。かかるHSVワクチンはサブユニットワクチン、DNAワクチン、または弱毒化ウイルスワクチンでありうる。
【0150】
一実施形態において、病変および/または病原体の数が有意に低減しなかったかまたは増加した場合、その感染性疾患は不応性または非応答性である。
【0151】
一実施形態においては、被験体に治療効果をもたらすために、より少ない量の第2の治療様式が必要とされる。特定の実施形態においては、第2の治療様式の量の約10%、20%、30%、40%および50%の低減を達成することができる。ペプチドおよびアジュバントとともに使用すべき第2の治療様式の量は、認められる治療効果をもたらさない範囲の量を含めて、動物モデルで実施する用量応答実験により当技術分野で周知の方法により決定することができる。
【0152】
好ましい一実施形態においては、本発明の医薬組成物を化学療法剤などの第2の治療様式と併用する。現在認可されているHSV治療薬としては、非環状ヌクレオシド類似体アシクロビル、バラシクロビル、ペンシクロビル、およびファムシクロビル、ホスホン酸類似体、例えばシドフォビル、およびピロリン酸類似体、例えばフォスカルネット/ホスホノ蟻酸が挙げられる。これらのヌクレオシド類似体はウイルスのポリメラーゼを標的とする。また使用しうるさらなるHSV治療薬としては、プロテアーゼインヒビター、例えば5-メチルチエノ[2,3-d]オキサジノンのN-アシル類似体;ヘリカーゼインヒビター、例えば2-アミノチアゾール化合物T157602;リボヌクレオチドレダクターゼインヒビター、例えば化合物BILD1633;ウラシル-DNAグリコシラーゼインヒビター、例えば6-(4-オクチルアニリノ)-ウラシル;チミジンキナーゼインヒビター、例えば6-アザピリミジン-2'-デオキシヌクレオシドまたは9-(4-ヒドロキシブチル)-N2-フェニルグアニンを含むN2-フェニルグアニン化合物;およびエナンチオマーヌクレオシドを含む他のウイルスのポリメラーゼインヒビター、例えばD-シクロヘキセニル-GおよびL-シクロヘキセニル-Cが挙げられる(Villareal EC, Progress in Drug Research 60:263-307, 2003に総説されている)。好ましい実施形態において、上記第2の治療様式は、抗ウイルス薬、例えばアシクロビル、バラシクロビル、ペンシクロビル、ファムシクロビル、シドホビル、およびホスホノ蟻酸である。抗原性ペプチドとアジュバントおよび第2の治療様式の同時投与は、ペプチドとアジュバントを第2の治療様式とほどほどに同時に投与することを意味する。この方法は、両者の投与を互いに1分未満から約5分、または最大約60分までの時間枠内で、例えば同じ通院時に実施する。
【0153】
他の実施形態において、本発明の医薬組成物は、限定するものではないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、抗体フラグメント、一本鎖抗体、などを含む1以上の抗体と組み合わせて使用される。好ましくは、抗体はヘルペスウイルス粒子および/またはそれらの成分と結合する。
【0154】
他の実施形態において、本発明の医薬組成物は1以上の生物学的応答改変因子と組み合わせて使用される。生物学的応答改変因子の1つのグループはサイトカインである。かかる一実施形態においては、サイトカインを、本発明の医薬組成物を受け取る被験体に投与する。他のかかる実施形態においては、本発明の医薬組成物を、化学療法剤、例えば抗ウイルス薬、抗体、アジュバント、または生物学的応答改変因子を受け取る被験体に、サイトカインと組み合わせて投与する。様々な実施形態においては、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IFNα、IFNβ、IFNγ、TNFα、TNFβ、G-CSF、GM-CSF、TGF-β、IL-15、IL-18、GM-CSF、INF-γ、INF-α、SLC、内皮単球活性化タンパク質-2(EMAP2)、MIP-3α、MIP-3β、またはHLA-B7などのMHC遺伝子からなる群から選択される1以上のサイトカインを使用することができる。さらに、他のサイトカインの例としてはTNFファミリーの他のメンバー、例えば、限定するものではないが、TNF-α関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、TNF-α関連活性化誘導サイトカイン(TRANCE)、TNF-α関連アポトーシスの弱い誘導物質、(TWEAK)、CD40リガンド(CD40L)、リンホトキシンα(LT-α)、リンホトキシンβ(LT-β)、OX40リガンド(OX40L)、Fasリガンド(FasL)、CD27リガンド(CD27L)、CD30リガンド(CD30L)、41BBリガンド(41BBL)、APRIL、LIGHT、TL1、TNFSF16、TNFSF17、およびAITR-L、またはそれらの機能性部分が挙げられる。例えばTNFファミリーの総説については、Kwonら, 1999, Curr. Opin. Immunol. 11:340-345を参照。好ましくは、本発明の医薬組成物を治療様式の前に投与する。
【0155】
他の実施形態においては、本発明の医薬組成物を、免疫系の様々なリガンド、受容体およびシグナル伝達分子のアゴニストまたはアンタゴニストである1以上の生物学的応答改変因子と併用する。例えば、生物学的応答改変因子としては、限定するものではないが、Toll様受容体(TLR-2、TLR-7、TLR-8およびTLR-9)のアゴニスト;LPS;41BB、OX40、ICOS、およびCD40のアゴニスト;ならびにFasリガンド、PD1、およびCTLA-4のアンタゴニストが挙げられる。これらのアゴニストおよびアンタゴニストは抗体、抗体フラグメント、ペプチド、ペプチドミメチック化合物、多糖類、および小分子であってよい。
【0156】
好ましい実施形態においては、本発明の医薬組成物を1以上のさらなるアジュバント、例えばサポニンおよび免疫賦活性核酸と併用する。例えば、医薬組成物中のアジュバントは本発明の抗原性ペプチドと複合体化したストレスタンパク質であり;併用するさらなるアジュバントとしては、限定するものではないが、サポニン、例えばQS21などであり、それには米国特許第5,057,540号;第5,273,965号;第5,443,829号;第5,650,398号;第6,231,859号;および第6,524,584号に開示されているものが挙げられる。
【0157】
多数の免疫賦活性核酸は、脊椎動物リンパ球に対する分裂促進性がありかつ免疫応答を促進することが公知である、非メチル化CpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチドである。Woolridgeら, 1997, Blood 89:2994-2998を参照。かかるオリゴヌクレオチドは、それぞれ本明細書にその全てが組み入れられる国際特許公開WO 01/22972号、WO 01/51083号、WO 98/40100号およびWO 99/61056号、ならびにそれぞれ本明細書にその全てが組み入れられる米国特許第6,207,646号、第6,194,388号、第6,218,371号、第6,239,116号、第6,429,199号および第6,406,705号に記載されている。免疫賦活性オリゴヌクレオチドの他の種類、例えばYpG-およびCpR-モチーフを含有するホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドは、本明細書に参照によりその全てが組み入れられるKandimallaら, 「オリゴヌクレオチドのCpGモチーフ中のシトシンおよびグアニンの化学修飾の効果:構造−免疫賦活性の関係(Effect of Chemical Modifications of Cytosine and Guanine in a CpG-Motif of Oligonucleotides: Structure-Immunostimulatory Activity Relationships)」 Bioorganic & Medicinal Chemistry 9:807-813 (2001)に記載されている。また、CpGジヌクレオチドを欠く免疫賦活性オリゴヌクレオチドも包含され、これらのオリゴヌクレオチドは粘膜経路(低用量投与を含む)によりまたは高用量にて非経口経路を通して投与すると、しばしばCpG核酸が作用するのと同じように抗体応答を増強するが、その応答はTh2に偏る(IgG1>>IgG2a)。本明細書に参照によりその全てが組み入れられる米国特許公開第20010044416 Al号を参照。免疫賦活性オリゴヌクレオチドの活性を測定する方法は、上記特許および刊行物に記載の通り実施することができる。さらに、活性をモジュレートする目的で、免疫賦活性オリゴヌクレオチドをリン酸骨格、糖、ヌクレオ塩基およびヌクレオチド間結合内で修飾することができる。かかる修飾は当業者に公知である。
【0158】
好ましい実施形態において、本発明は、生理学的に許容される担体中に、1以上の本発明の抗原性ペプチドおよび少なくとも1つの免疫賦活性オリゴヌクレオチドまたはサポニン(例えばQS21)などのアジュバントを含有する医薬組成物を提供する。医薬組成物は1以上の本発明の抗原性ペプチドと複合体化したhsp70をQS21と組み合わせて含有することができる。他の実施形態においては、本発明の医薬組成物は1以上の本発明の抗原性ペプチドと複合体化したhsp70を免疫賦活性オリゴヌクレオチドと組み合わせて含有する。最も好ましい実施形態においては、医薬組成物は1以上の本発明の抗原性ペプチドと複合体化したhsp70をQS21および免疫賦活性オリゴヌクレオチドと組み合わせて含有する。
【0159】
5.4.4. 投与量
抗原性ペプチドの投与量、および、もし併用療法で投与するのであれば、アジュバントなどの追加の治療様式の投与量は、処置する被験体の体重と一般的健康状態ならびに投与するワクチン組成物の量、治療の頻度および投与経路に大きく依存する。この用途に有効な量は疾患の段階と重症度および処方する医師にも依存しうるが、一般的に、最初の免疫感作については(すなわち、治療用投与)、70kg患者に対して約1.0μg〜5000μgの抗原性ペプチドであり、その後、ブースター量については数週〜数ヶ月にわたる追加免疫治療計画に従い、患者血液中の特異的CTL活性を測定することによる患者の応答および症状に応じて約1.0μg〜1000μgの抗原性ペプチドである。投与部位、用量および回数を含む継続療法の治療計画は、最初の応答と臨床判断を手掛かりとすることができる。アジュバントの投与量範囲および治療計画は当業者に公知であり、例えば、VogelおよびPowell, 1995, 「ワクチンアジュバントと賦形剤の概論(A Compendium of Vaccine Adjuvants and Excipients)」; M. F. Powell, M. J. Newman (編), Plenum Press, New York, pp.141-228を参照されたい。
【0160】
好ましいアジュバントとしてはQS21およびCpGオリゴヌクレオチドが挙げられる。QS21の好ましい投与量は1回投与当たり1μg〜200μgである。QS21の最も好ましい投与量は1回投与当たり10、25、および50μgである。
【0161】
抗原性ペプチドと複合体化したHSPを含有する特定の実施形態においては、投与経路と本発明の医薬組成物中のHSPの型に応じて、HSP調製物中のHSPの量は、1回投与当たり、例えば0.1〜1000μgの範囲でありうる。投与するhsp70および/またはgp96複合体の量は、0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、250、300、400、500または600μgである。一実施形態において、gp96またはhsp70の好ましい量は1回投与当たり10〜600μgの範囲にあり、そしてもしHSP調製物を皮内投与するのであれば0.1〜100μgの範囲にある。他の実施形態において、投与するhsp70-および/またはgp96-抗原性ペプチド複合体の量は、ヒト患者に対して約0.1μg〜600μg、好ましくは約1μg〜60μgである。好ましくは、その量は100μg未満である。最も好ましくは、投与するhsp70-および/またはgp96複合体の量は、5μg、25μg、または50μgである。好ましくは、HSPと抗原性ペプチドの複合体は精製されたものである。
【0162】
本発明が提供するヒト患者におけるhsp90-ペプチド複合体の投与量は、約5〜5,000μgの範囲にある。好ましくは、投与するhsp90複合体の量は、5、10、20、25、50、60、70、80、90、100、200、250、500、1000、2000、2500、または5000μgであり、最も好ましい投与量は100μgである。hsp90の皮内投与については、好ましい量は1回投与当たり約5〜50μgである。
【0163】
一実施形態においては、本発明の治療計画について、非ヒト小動物(例えば、マウスまたはモルモット)において有効であることが分かっているのと実質的に等価な投与量がヒト投与に対して有効であり、任意に、かかる哺乳動物とヒトの相対的リンパ節サイズに基づいて50倍増加を超えない補正係数で処理する。具体的には、抗原性分子と非共有結合で結合したまたは混合したストレスタンパク質(またはHSP)のヒト用量に対する種間用量応答等量は、マウスで観察した治療投与量と50倍増加を超えない単一スケール比(single scaling ratio)との積として概算される。
【0164】
他の実施形態においては、本発明は、任意にアジュバントと組み合わせて、外挿により求めた投与量よりはるかに少ない抗原性ペプチドの複合体の投与量を提供する。例えば、本発明によれば、好ましくは、ヒト患者に対してほぼ2μg〜150μgのHsp70-抗原性ペプチド複合体および/またはgp96-抗原性ペプチド複合体の量を投与し、好ましいヒト投与量は25gマウスに用いたのと同じである。本発明が提供するヒト患者におけるhsp90-ペプチド複合体の投与量は、好ましくは、ほぼ10〜1,000μgの範囲であり、好ましい投与量は20μgである。
【0165】
上に挙げた用量を、1回または繰り返して、例えば毎日、1日おき、毎週、毎2週、または毎月、1年以内または1年を超えて与えることができる。用量は好ましくは、週1回、ほぼ4〜6週間与え、そして投与様式または部位は投与ごとに変えることが好ましい。好ましい例では、皮下投与を施し、各投与部位を逐次変えて行う。従って、例示であって限定するものでないが、最初の注入を皮下で左腕に、2回目の注入を右腕に、3回目の注入を左腹に、4回目の注入を右腹に、5回目の注入を左大腿に、6回目の注入を右大腿に、などで行うことができる。同一部位への注入を1回以上とばした後に繰り返してもよい。また、分割注入を行うこともできる。従って、例えば、一部位に半用量を投与し、同日に他の半用量を他の部位に投与することができる。
【0166】
あるいは、投与方式を逐次変更して、例えば、毎週、注入を皮下、皮内、筋肉内、静脈内、または腹腔内に連続して行う。
【0167】
4〜6週後、さらなる注入を、好ましくは、2週間隔で1ヶ月にわたって行う。その後の注入は毎月行ってもよい。その後の注入のペースは、患者の臨床経過および免疫療法に対する応答性に応じて、変更することができる。
【0168】
一実施形態においては、医薬組成物をさらなる1以上の治療様式とほどほどに同時に被験体に投与する。この方法は、両者の投与を互いに1分未満から約5分、または最大約60分までの時間枠内で、例えば同じ通院時に実施する。
【0169】
他の実施形態においては、抗原性ペプチドとアジュバントの複合体と1以上の追加の治療様式を正確に同時に投与する。さらに他の実施形態においては、抗原性ペプチドとアジュバントの複合体および追加の治療様式を順にかつある時間間隔内に投与して、本発明の複合体と1以上の追加の治療様式が一緒に作用して、それらを単独で投与した場合より大きい効果を得ることができるようにする。他の実施形態においては、本発明の複合体と1以上の追加の治療様式を十分に接近した時間に投与して、所望の治療または予防効果を得るようにする。それぞれを同時にまたは別々に、適当な剤形でかついずれかの好適な経路により投与することができる。一実施形態においては、本発明の複合体と1以上の追加の治療様式を異なる投与経路により投与することができる。代わりの実施形態においては、それぞれを同じ投与経路により投与する。本発明の複合体を、同じまたは異なる部位、例えば腕と脚に投与してもよい。同時に投与するとき、本発明の複合体と1以上の追加の治療様式を、混合物でまたは同じ投与部位に同じ投与経路で投与しても投与しなくてもよい。
【0170】
様々な実施形態においては、本発明の複合体と1以上の追加の治療様式を1時間未満の間隔で、ほぼ1時間の間隔で、1時間〜2時間の間隔で、2時間〜3時間の間隔で、3時間〜4時間の間隔で、4時間〜5時間の間隔で、5時間〜6時間の間隔で、6時間〜7時間の間隔で、7時間〜8時間の間隔で、8時間〜9時間の間隔で、9時間〜10時間の間隔で、10時間〜11時間の間隔で、11時間〜12時間の間隔で、24時間以下の間隔で、または48時間以下の間隔で投与する。他の実施形態においては、本発明の複合体とワクチン組成物を2〜4日の間隔で、4〜6日の間隔で、1週間の間隔で、1〜2週間の間隔で、2〜4週間の間隔で、1ヶ月の間隔で、1〜2ヶ月の間隔で、または2ヶ月以上の間隔で投与する。好ましい実施形態においては、本発明の複合体と1以上の追加の治療様式を両方がまだ活性のある時間枠内に投与する。当業者はかかる時間枠を、投与するそれぞれの成分の半減期を測定することにより決定することができるであろう。
【0171】
一実施形態においては、本発明の複合体と1以上の追加の治療様式を同じ患者通院時に投与する。特定の好ましい実施形態においては、本発明の複合体を、1以上の追加の治療様式の投与前に投与する。代わりの特定の実施形態においては、本発明の複合体を、1以上の追加の治療様式の投与後に投与する。
【0172】
ある特定の実施形態においては、本発明の複合体と1以上の追加の治療様式を被験体に周期的に投与する。サイクル療法は、ある期間の本発明の複合体の投与、続いてある期間の治療様式の投与、そしてこの逐次投与の繰返しに関わる。サイクル療法は1以上の療法に対する耐性の発生を低減し、1以上の療法の副作用を回避または低減し、かつ/または治療効果を改善することができる。かかる実施形態において、本発明は、本発明の複合体の投与と、これに続くある治療様式の4〜6日遅れ、好ましくは2〜4日遅れ、さらに好ましくは1〜2日遅れの投与からなる交互投与を包含するものであり、かかるサイクルは所望の回数だけ繰り返してもよい。ある特定の実施形態においては、本発明の複合体と1以上の治療様式を、3週間未満のサイクル、2週毎に1回、10日毎に1回、または毎週1回のサイクルで投与する。特定の実施形態においては、本発明の複合体をある治療様式の投与後1時間〜24時間の時間枠内で被験体に投与する。時間枠は、徐放または連続放出タイプの治療様式送達系を用いるのであれば、数日以上までさらに延長することができる。
【0173】
5.4.5. 投与経路
本発明の一実施形態においては、抗原性ペプチドとアジュバントを所望の投与経路を用いて投与することができる。非粘膜の投与経路としては、限定するものではないが、皮内および局所投与が挙げられる。粘膜の投与経路としては、限定するものではないが、経口、経直腸および経鼻投与が挙げられる。皮内投与の利点としては、低用量および迅速な吸収がそれぞれ挙げられる。皮下または筋肉内投与の利点としては、多数の不溶性懸濁液および油性懸濁液に対する適合性がそれぞれ挙げられる。粘膜投与用の製剤は以下に記載の様々な製剤において好適である。
【0174】
多数の方法を利用して上記の医薬組成物を導入することができ、これらの方法としては、限定するものではないが、経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、および鼻腔内経路が挙げられる。
【0175】
溶解度と投与部位は、本発明の抗原性ペプチドとアジュバントの投与経路を選択するときに考慮すべき要因である。投与様式は様々であってよく、限定するものではないが、例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮内または経粘膜が挙げられる。粘膜経路はさらに経口、経直腸、および経鼻投与の形態をとることができる。
【0176】
もし抗原性ペプチドとアジュバントが水溶性であれば、適当な緩衝液、例えば、リン酸緩衝生理食塩水またはその他の生理学的に適合しうる、好ましくは無菌の溶液を用いて製剤化することができる。あるいは、得られる複合体の水性溶媒中の溶解度が低ければ、例えばTween、またはポリエチレングリコールなどの非イオン界面活性剤を用いて製剤化することができる。従って、本発明の化合物とその生理学的に許容される溶媒和化合物を、(口または鼻のいずれかを通しての)吸入もしくはガス吹送による投与用、または経口、バッカル、非経口もしくは直腸投与用に製剤化することができる。
【0177】
経口投与用の医薬製剤は液体剤形、例えば、溶液、シロップまたは懸濁液であっても、または使用前に水もしくはその他の好適なビヒクルを用いて再調製する医薬品として提供することができる。かかる液体製剤は、通常の方法により製薬上許容される添加剤、例えば懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂肪);乳濁化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油状エステル、または分留食用油);および保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピルまたはソルビン酸)により調製することができる。医薬製剤は例えば、製薬上許容される賦形剤、例えば結合剤(例えば、α化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはグリコールデンプンナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を用いて通常の方法により調製した錠剤またはカプセルの剤形をとることができる。錠剤は当業界で周知の方法によりコーティングしてもよい。
【0178】
経口投与用の抗原性ペプチドとアジュバントは、活性化合物が制御されたおよび/または持続した方法で放出されるよう好適に製剤化することができる。
【0179】
バッカル投与用の抗原性ペプチドとアジュバントの製剤は、通常の方法で製剤化した錠剤またはトローチ剤の形態をとることができる。
【0180】
調製物は注入による(例えばボーラス注入または連続輸液による)非経口投与用に製剤化することができる。注入用の製剤は保存剤とともに、単位投与量剤形で、例えばアンプルで、または多用量容器に入れて提供することができる。調製物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンの剤形をとることができ、懸濁化剤、安定剤および/または分散剤などの製剤用補助剤を含有してもよい。あるいは活性成分が粉末の剤形であって、好適なビヒクル、例えば発熱物質フリーの滅菌水を用いて使用前に調製してもよい。
【0181】
調製物はまた、例えばココアバターもしくは他のグリセリドなどの通常の坐薬用基剤を含有する坐薬または浣腸などの経直腸用製剤として製剤化することもできる。
【0182】
先に記載した製剤だけでなく、調製物はデポー製剤として製剤化することができる。かかる持続作用製剤は、インプラント(例えば、皮下または筋肉内)によりまたは筋肉内注入により投与することができる。従って、例えば、製剤は、好適なポリマーまたは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂、または難溶性誘導体、例えば難溶性塩を用いて製剤化することができる。リポソームおよびエマルジョンは親水性医薬用の送達ビヒクルまたは担体の周知の例である。
【0183】
吸入による投与用には、本発明によって使用する調製物を、加圧パックまたは噴霧器から、好適な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素またはその他の好適なガスを用いて、エーロゾルスプレー提示の形態で送達すると好都合である。加圧エーロゾルの場合、投与単位は、計量した量を送達するバルブを設けることにより決定することができる。吸入器または吹送器に使用する例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、本発明の化合物とラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物を含有するように製剤化する。
【0184】
5.4.6. キット
本発明の予防および治療法を実施するためのキットも提供する。キットは場合によってはキットの様々な構成要素を使用する方法についての説明書を添付することができる。
【0185】
特定の実施形態においては、キットは本発明の抗原性ペプチドを含有する第1容器;および第1容器中のペプチドの投与前に、投与と同時に、または投与後に投与すると、抗原性ペプチドに対する免疫応答を効果的に誘導する1以上のアジュバントを含有する第2容器を含んでなる。他の実施形態においては、本発明の抗原性ペプチドを含有する第1容器;1以上のアジュバントを含有する第2容器;および経口もしくは局所投与用の抗ウイルス剤などの第2の治療様式を含有する第3容器を含んでなる。さらに他の実施形態においては、キットは1つの容器中に抗原性ペプチドとアジュバントの両方を含有する容器、および経口もしくは局所投与用の抗ウイルス剤などの第2の治療様式;または限定するものではないがQS21を含むサポニンなどのさらなるアジュバントを含有する第2容器を含んでなる。併用することができる追加の治療様式用のさらなる容器が存在してもよい。好ましくは、容器中の抗原性ペプチドとアジュバントはHSP-抗原性ペプチド複合体などの複合体の形態である。さらに好ましくは、容器中の抗原性ペプチドとアジュバントは、HSV感染または再発感染の事象を治療または予防するために有効な予め定めた量だけ存在する。所望であれば、医薬組成物は、複合体を含有する1以上の単位投与剤形を含有しうるパックまたはディスペンサー装置で提供することができる。パックは例えば、ブリスターパックなどの金属またはプラスチック箔を含むものであってもよい。パックまたはディスペンサー装置に投与の説明書を添付することができる。
【0186】
5.4.7. 動物モデルにおける特異的免疫応答のモニタリング
HSVの宿主域は広汎であるので、ウイルス潜伏の研究に多数の動物モデルを利用することができる。かかる動物モデルは本発明の医薬組成物の効力の研究のために、または疾患進行の様々な段階を試験し、製剤化しまたは投与量を決定するために利用することができる。HSV感染のマウスモデルは広範に研究されていて、抗ウイルス免疫の機構について豊富な洞察が得られている。Mester JC, Rouse BT, 「マウスモデルと単純ヘルペスウイルスに対する免疫の理解(The mouse model and understanding immunity to herpes simplex virus)」, Rev Infect Dis. 1991 Nov-Dec;13 Suppl 11:S935-45、Rev Infect Dis. 1984 Jan-Feb;6(1):33-50を参照。モルモットもモデルとして利用されている。Hsiung GD, Mayo DR, Lucia HL, Landry ML. 「性器ヘルペス:モルモットモデルにおける病因と化学療法(Genital herpes: pathogenesis and chemotherapy in the guinea pig model)」, Rev Infect Dis. 1984 Jan-Feb; 6(1): 33-50を参照。いずれのモデルも本発明の医薬組成物を研究しかつ力価を決定するのに利用することができる。
【0187】
単純ヘルペスウイルス(HSV)由来の再発性病変は、感覚神経節のニューロンにおける潜伏HSVの再活性化、再活性化ウイルスの軸索輸送、および皮膚上のHSV複製の後に起こる。3つの動物系、すなわちウサギ、モルモット、およびマウスが現在利用しうるHSV潜伏と再活性化に関する膨大な量のデータを作製する手段を提供してきた。
【0188】
ウサギの眼に感染すると潜伏感染を生じ、そのウイルスは指示細胞に外植して共培養した後だけ、三叉神経節から回収することができる。さらに、ウイルスを散発的に眼から潜伏期間後に回収することができる。特に有用な事実は、エピネフリンの眼中へのイオン泳動により再活性化を効率的に誘導できることである(LSU Eye CenterのHillと共同研究者が記載した手順)。このモデルは効率的再活性化のためのLAT(潜伏に関連する転写物)発現の要件を確立する上で非常に重要である。
【0189】
HSV-1またはHSV-2を雌モルモットに膣接種すると、いくらかの死亡率を伴う明らかな一次感染が起こる。回復後、一次感染の生存者は、膣域において周期的に小胞再発を示し、それから感染性ウイルスおよび/またはウイルスのDNAを回収することができる。University of Cincinnati Medical SchoolのL. Stanberryが開発したこのモデル(総説は、Rev. Infect. Dis. 1991, 13 Suppl. 11:S920-3を参照)を本発明の医薬組成物を試験するのに利用することができる。
【0190】
いくつかのHSVマウスモデルがあり、それらとしては:1)フットパッド(foot-pad)/後根神経節モデル;および2)マウス眼/三叉神経節モデルが挙げられる。HSVが神経細胞において潜伏感染を確立しかつ維持する能力は、カリフォルニア大学においてマウスフットパッド感染とその後の脊髄神経節の潜伏感染を用いて直接実証された(University of California, Los Angeles、Javier RTら, Science 1986, 234:746-8)。このモデル系はヒトにおけるHSVの性器感染と概ね類似していて、多くのHSV潜伏感染のパラメーター(潜伏感染の部位としてのニューロンの同定、坐骨神経を介してのウイルスの軸索輸送、非複製ウイルスの潜伏感染を確立する能力、および感染潜伏期における潜伏特異的転写ユニットの制限された転写の特徴付けなど)を説明する上で中心的役割を果たしてきた。フットパッドへの感染後、中枢神経系(CNS)の関与の明らかな確証である局所病理が観察され、回復するマウスは明らかに生理学的に正常である。後根神経節を解剖し、(全体をまたは破壊後に)支持細胞上で培養すると、HSVが誘導した細胞病理を4〜12日内に検出することができる。かかる潜伏感染脊髄神経節からのHSVのこの外植体回収は、対象の組織内のウイルスゲノムの存在を試験するための非常に有用でかつ比較的安価な方法となっている。HSV-1およびHSV-2潜伏に対する第2のマウスモデルは、角膜の感染とその後の三叉神経節におけるウイルス潜伏に関わる。フットパッドモデルにおけるように、潜伏HSVゲノムはこれらを保持するニューロンの部分にLATを発現し、ウイルスは外植神経節の共培養によって回収することができる。
【実施例】
【0191】
6. 実施例
6.1. 抗原性ペプチドの合成
多数の本発明の抗原性ペプチドを第5.1.1節に記載の化学合成により合成した。表2に示すように、配列番号1〜49のアミノ酸配列を有するペプチドをこの方法を用いて首尾よく合成した。合成した後HPLCで85%を超える純度に精製され、さらにペプチドの正体が質量分析計で確認されたペプチドは、「化学合成」の表題を付けた縦列に示したように、合成の純度および確認要件に「合格」したとみなした。表2はまた、これらの抗原性ペプチドの水またはジメチルスルホキシド(DMSO)中での溶解性も掲げる。102種のヘルペスウイルスペプチドのいくつかは、明らかに、試験用材料の実際的な量を得るために、使用した方法で効率的に合成することができない。しかし、そのような本発明の抗原性ペプチドは、第5.1.2節に記載の方法を用いて組換えDNA技法により、または当技術分野で公知の他の異なる化学的製造法により、なお合成することができる。
【0192】
濁度アッセイを用いてペプチドの溶解性を評価した。濁度アッセイは、Varian Caryダブルビーム分光光度計、またはMolecular Devices Spectromax吸収プレートリーダー(ハイスループット実験用)のいずれかを用いた。分光光度計アッセイは340nmと360nmの間で2nm毎に読み取り、それらの値を平均化した。サンプルは、約200μLを収容する石英マイクロキュベットを用いて、2回反復して分析した。プレートリーダーアッセイは96ウェルプレートフォーマットを使用し、340nmと360nmの間で4nm毎に読み取ってそれらの値を平均化した。このアッセイのサンプルは3回反復して試験した。
【0193】
医薬組成物を動物に投与する前に、水溶性ペプチドは2mg/mLで保存し、一方DMSO可溶性ペプチドは10mg/mLで保存した。
【表2】


【0194】
6.2. HSP-抗原性複合体の調製
ヒトhsc70は組換えDNA技術の方法を利用して調製した。簡単に説明すると、ヒトhsc70タンパク質をコードする核酸分子(Genbank登録番号Y00371)を得て、組換えDNA技法により好適な細菌発現ベクター中にサブクローニングした。ヒトHsc70 cDNA(ATCC、カタログ#771252から得た)を含有するpET-24a(+)発現ベクター(Novagen)を、組換えタンパク質の発現のためにコンピテント大腸菌(E.coli)BL21(DE3)株の細胞中に形質転換した。マウスHSP-70はATPアガロースアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。精製方法は次のステップを含んでいた:(a) マウス組織のHepes/MgCl2緩衝液中でのホモジナイゼーション;(b) 遠心分離によるホモジネートの清澄化と、これに続く上清の濾過;(c) NaCl溶液による濾液のコンディショニング;(d) ATP-アフィニティークロマトグラフィー;(e) 緩衝液交換/濾過透析手法を用いるATP-アフィニティーカラム溶出液の脱塩;ならびに(f) DEAE-イオン交換クロマトグラフィーおよび結合したHSP-70のリン酸ナトリウム/NaCl、pH 7.2緩衝液による溶出。これらのhsc70およびhsp70調製物を次いで本発明の抗原性ペプチドと複合体化した。
【0195】
14μMのマウス組織由来のhsp70(mHSP70)を、20mMリン酸ナトリウムpH 7.4および150mM塩化ナトリウムを含有する緩衝液中で、1:1の最終HSP:ペプチド比をもたらす14μMの49種HSV-2ペプチドプール(個々のペプチドをそれぞれ約0.29μM含む)とともに37℃で30分間インキュベートした。次いでHSP-ペプチド複合体を、PBS中の10mg/mL QS21のストック溶液を用いて、10μgのQS21と混合した。
【0196】
6.3. in vitroでのHSP-ペプチド複合体の免疫原性と効力の測定
C57BL/6マウスを、0日目と7日目に、(i) mHSP70と49種HSV-2ペプチドの複合体(mHSP70:49種ペプチドのモル比1:1)、(ii) 5.5μgの49種ペプチドプールのみ(複合体調製物中の量と同等)、または(iii) 100μgのmHSP70のみ、のいずれかを含有し、10μg/用量のQS-21を含まない(図1A)または含む(図1B)医薬製剤100μg/用量を用いて皮内に免疫した。14日目にマウスを安楽死させ、その脾細胞をIFN-γ ELISPOT分析(Fujihashiら, J. Immunol. Methods 160:181-189,1993)にかけた。図1Aおよび1Bに示したのは、(i) 10μg/mlの49種ペプチドのプール、(ii) 10μg/mlのOVAペプチド(無関係な抗原)、または(iii) 培地のみ(抗原なし)によって40時間、in vitroで再刺激した後の1x106バルク脾細胞(3匹のマウスからプールした)当たりのIFN-γ分泌細胞(SFC)の数である。スポットの計量はZellNet Consulting, Inc.(555 North Avenue, Suite 25S, Fort Lee, NJ 07024)が実施した。
【0197】
図1Aに示すように、hsp70と49種ペプチドの複合体を含有する医薬組成物を用いて処置したマウス由来の脾細胞は、106個の脾細胞当たり約140個のSFCを生じた。49種ペプチドを用いずにhsp70を用いて処置したマウス由来の脾細胞は、106個の脾細胞当たり5個未満のSFCしか生じなかった。49種ペプチドを用いてhsp70を用いずに処置したマウス由来の脾細胞は、106個の脾細胞当たり60個未満のSFCを生じた。この結果は、hsp70とHSV-2ペプチドの複合体がhsp70またはペプチド単独より免疫原性が強いことを実証した。アジュバントを加えると、図1Bに示すようにこの免疫応答が増加した。hsp70と49種ペプチドの複合体+QS21アジュバントを含有する医薬組成物を用いて処置したマウス由来の脾細胞は、106個の脾細胞当たり約450個のSFCを生じた。49種ペプチドを用いずにhsp70を用いて処理したマウス由来の脾細胞は、106個の脾細胞当たり5個未満のSFCしか生じなかった。49種ペプチドを用いてhsp70を用いずに処理したマウス由来の脾細胞は、106個の脾細胞当たり250個を超えるSFCを生じた。この結果は、本発明のhsp70とヘルペスウイルスペプチドの複合体が第2のアジュバントと併用すると高度に免疫原性となることを実証した。
【0198】
さらに免疫原性(ELISPOT)を研究するために、医薬組成物を100μl容で皮内注射し、それぞれのマウス(C57BL/6系統)が100μgのhsp70と5.5μgの全ペプチドプールを受け取るようにした。ワクチン接種を1週間後に繰り返した。対照群は、(i)ペプチド単独+QS21、または(ii)hsp70単独+QS21を用いて免疫した。最後のワクチン接種の1週間後に、マウスを犠牲にして脾臓を摘出した。次いで1x106個の脾細胞を、抗IFN-γ抗体をプレコートした96ウェルプレートの各ウェル中に分配した。リンパ球を刺激するために、10μgの49種ペプチドプールをウェルに加え、プレートを40時間37℃、5%CO2にてインキュベートした。インキュベーション後、細胞をプレートから洗い落とした。次いでプレートを第2のビオチンコンジュゲート抗IFN-γ抗体とともに、次いでストレプトアビジンコンジュゲート西洋ワサビペルオキシダーゼとともにインキュベートした。プレートは最終的にAEC(3-アミノ-9-エチル-カルバゾール)を基質として用いて発色させた。次いでサイトカインスポットをZellnet ELISPOTリーダーを用いて分析した。単一細胞基準でサイトカイン分泌細胞を表す、各ウェル中のスポットの数を計測してプロットした。hsp70と49種ペプチドの複合体を含有する医薬組成物を用いて処理したマウス由来の脾細胞は、106個の脾細胞当たり300個を超えるSFCを生じた。hsp70を用いて49種ペプチドを用いずに処理したマウス由来の脾細胞は、106個の脾細胞当たり20個未満のSFCしか生じなかった。49種ペプチドを用いてhsp70を用いずに処理したマウス由来の脾細胞は、106個の脾細胞当たり約80個のSFCを生じた。これらの結果は、本発明のhsp70とヘルペスウイルスペプチドの複合体が高度に免疫原性であるという知見をさらに裏付けるものであった。
【0199】
ヘルペスウイルス抗原特異的応答は持続性があった(図2)。0日目および14日目に49種ペプチドとhsp70の複合体+アジュバントを含有する医薬組成物を用いて免疫したマウスから28日目と84日目に脾細胞を採取した。これらの脾細胞は、28日目に採取したとき106個の脾細胞当たり500個ほどのSFCをもたらし、また84日目に採取したとき106個の脾細胞当たり約500個のSFCをもたらした。対照的に、hsp70+アジュバントのみを用いて免疫したマウスからの脾細胞は、106個の脾細胞当たり100個未満のSFCしか生じなかった。このデータは、ヘルペスウイルスペプチドとストレスタンパク質の複合体が免疫記憶応答を与えることを実証したが、このことは、本発明が提供する医薬組成物のようなワクチンはヘルペスウイルス感染に対して長期の免疫感作を賦与することを示している。
【0200】
6.4. in vivoでのHSP-ペプチド複合体の免疫原性と効力の測定
雌マウスにおいてQS-21アジュバント製剤中のhsp70-ヘルペスウイルスペプチド複合体がin vivoでHSVチャレンジからの保護を与えたかどうかを確認する研究を行った。
【0201】
医薬組成物のこれらの評価のために、雌Swiss Websterマウスを0日、7日および14日目に次の製剤を用いて皮内に免疫した(図3A、B、C、またはD):
1. GP/CFA、これはフロイントアジュバント(最初の免疫感作に対してはフロイント完全アジュバントを使用し、その後はフロイント不完全アジュバントを使用した)中に製剤化したHSV-2感染細胞ライセートからの全糖タンパク質であり、免疫感作ポジティブ対照として使用した;
2. 生理食塩水/CFA、これはプラセボを用いて製剤化したフロイントアジュバントであり、免疫感作ネガティブ対照として使用した;
3. mHSP70、100μg/用量のmHSP70;
4. QS-21、10μg/用量のQS-21;
5. 49種HSV-2ペプチド/QS-21、5.5μgの49種HSV-2ペプチド(複合体調製物中の量と同等)+10μg/用量のQS-21;または
6. mHSP70/49種HSV-2ペプチド/QS-21、100μg/用量の49種HSV-2ペプチドと複合体化したmHSP70(mHSP70:全ペプチドのモル比1:1)+10μg/用量のQS-21。
【0202】
マウスをデポ・プロベラ(depo-provera)により処置して発情サイクルを同期化し、そして28日目に腟内に5x105 pfuのHSV-2(186株)をチャレンジした。HSV-2誘導疾患および死亡率をワクチン接種から49日目まで評価した。
【0203】
図3Aは、GP/CFA(「糖タンパク質/CFA対照」)、生理食塩水/CFA(「プラセボ/CFA対照」)、およびQS-21(「アジュバント」)対照群に対するカプラン・マイヤーの生存率曲線(KaplanおよびMeier, J Am Stat Assoc. 50, 457-481, 1958)を示す。図3Bは、mHSP70、49種HSV-2ペプチド/QS-21(「49ペプチド+アジュバント」)、およびmHSP70/49種HSV-2ペプチド/QS-21(「mHSP/49ペプチド+アジュバント」)群に対するカプラン・マイヤーの生存率曲線(KaplanおよびMeier, J Am Stat Assoc. 50, 457-481, 1958)を示す。図3Bの矢印は、mHSP/49種ペプチド+アジュバント曲線が生理食塩水/CFA(ネガティブ対照)群と比較してログランク(Log-Rank)解析により有意差(P<0.05)のあることを示す。従って、mHSP70/49種ペプチド(mHSP70:全ペプチドのモル比1:1)+10μg/用量のQS21を用いて免疫したマウスは、生理食塩水/CFAネガティブ対照と比較して、ウイルスチャレンジ後に有意に改善された生存率を有する。同様の結果が近交系のBALB/cマウスについても得られた。
【0204】
図3Cは、GP/CFA(「糖タンパク質/CFA対照」)、生理食塩水/CFA(「プラセボ/CFA対照」)、およびQS-21(「アジュバント」)対照群における脱毛と紅斑(皮膚発赤)発生を示す。図3Dは、(i) mHSP70、(ii) 49種HSV-2ペプチド/QS-21(「49ペプチド+アジュバント」)、および(iii) mHSP70/49種HSV-2ペプチド/QS-21(「mHSP/49ペプチド+アジュバント」)群における脱毛と紅斑(皮膚発赤)発生を示す。図3Dの矢印は、mHSP/49ペプチド+アジュバント曲線が生理食塩水/CFA群と比較してログランク(Log-Rank)解析によって有意差(P<0.05)のあることを示す。従って、mHSP70/49種HSV-2ペプチド(mHSP70:全ペプチドのモル比1:1)+10μg/用量のQS-21を用いて免疫したマウスは、生理食塩水/CFAネガティブ対照と比較して、ウイルスチャレンジ後の脱毛と紅斑を有意に低減した。
【0205】
本明細書に引用した全ての参考文献は、それぞれ個々の出版物または特許または特許出願を特定してかつ個々に参照によりその全てが全ての目的に対して組み入れられると示したのと同じ程度に、本明細書に参照によりその全てがそして全ての目的に対して、組み入れられる。
【0206】
本発明の多数の修飾と改変は、当業者には明白であるように、本発明の精神と範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書に記載の特定の実施形態は例示の方法としてだけ提供するものであって、本発明は添付した特許請求の範囲ならびにかかる特許請求の範囲に権利が与えられた均等物の全範囲によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1】49種のヘルペスウイルスペプチドとhsp70の複合体は免疫原性がある。A: hsp70と49種のヘルペスウイルスペプチドの複合体を含有する医薬組成物を用いて処置したマウス由来の脾細胞は、in vitroでの培養脾細胞の刺激後に、106個の脾細胞当たり約140個のスポット形成細胞(SFC)をもたらした。B: アジュバントを49種のヘルペスウイルスペプチドとhsp70の複合体に加えると、この複合体に対する免疫応答が増強される。
【図2】49種のヘルペスウイルスペプチドとhsp70の複合体を用いて獲得した免疫応答は持続性がある。0日目および14日目に49種のヘルペスウイルスペプチドとhsp70の複合体とアジュバントとを含有する医薬組成物を用いて免疫感作したマウスから、脾細胞を28日目および84日目に採取した。この脾細胞は、28日目に採取すると106個の脾細胞当たり約400個のSFCをもたらし、84日目に採取すると106個の脾細胞当たり約500個のSFCをもたらした。
【図3】hsp70とHSV抗原性ペプチドの複合体はin vivoでマウスをHSV感染から防御する。雌Swiss Websterマウスを0日目、7日目および14日目に次の製剤を用いて皮内(i.d.)に免疫感作した:(1) GP/CFA;(2) 生理食塩水/CFA;(3) マウスHSP70(mHSP70);(4) QS-21;(5) 49種のHSV-2ペプチド/QS-21;または(6) mHSP70/49種HSV-2ペプチド/QS-21。A: GP/CFA(「糖タンパク質/CFA対照」)、生理食塩水/CFA(「プラセボ/CFA対照」)、およびQS-21(「アジュバント」)対照群に対するカプラン・マイヤーの生存率曲線。B: mHSP70、49種HSV-2ペプチド/QS-21(「49種ペプチド+アジュバント」)、およびmHSP70/49種HSV-2ペプチド/QS-21(「mHSP/49種ペプチド+アジュバント」)群に対するカプラン・マイヤーの生存率曲線。C: GP/CFA(「糖タンパク質/CFA対照」)、生理食塩水/CFA(「プラセボ/CFA対照」)、およびQS-21(「アジュバント」)対照群における脱毛と紅斑(皮膚発赤)発生。D: mHSP70、49種HSV-2ペプチド/QS-21(「49種ペプチド+アジュバント」)、およびmHSP70/49種HSV-2ペプチド/QS-21(「mHSP/49種ペプチド+アジュバント」)群における脱毛と紅斑(皮膚発赤)発生。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる抗原性ペプチドを含有する組成物であって、上記異なる抗原性ペプチドのそれぞれは、アミノ酸配列が相違するヘルペスウイルスペプチドのなかから選択された異なるヘルペスウイルスペプチドの1以上のHLA結合エピトープを含有し、上記それぞれのヘルペスウイルスペプチドのアミノ酸配列は配列番号1〜49からなる群から選択されることを特徴とする上記組成物。
【請求項2】
抗原性ペプチドと非共有結合で結合されたストレスタンパク質からなる、複数の異なる精製された複合体を含有する組成物であって、上記複数の異なる複合体はそれぞれ異なる抗原性ペプチドを含有し、上記異なる抗原性ペプチドのそれぞれは、アミノ酸配列が相違するヘルペスウイルスペプチドのなかから選択された異なるヘルペスウイルスペプチドの1以上のHLA結合エピトープを含有し、上記それぞれのヘルペスウイルスペプチドのアミノ酸配列は配列番号1〜49からなる群から選択されることを特徴とする上記組成物。
【請求項3】
上記異なる抗原性ペプチドがそれぞれ配列番号1〜49からなる群から選択された49種のヘルペスウイルスペプチドであることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
ストレスタンパク質を少なくとも20、30、または40種の異なる抗原性ペプチドとin vitroで複合体化することを含んでなる方法により調製された組成物であって、上記異なる抗原性ペプチドのそれぞれは、アミノ酸配列が相違するヘルペスウイルスペプチドのなかから選択された異なるヘルペスウイルスペプチドの1以上のHLA結合エピトープを含有し、上記アミノ酸配列は配列番号1〜49からなる群から選択されることを特徴とする上記組成物。
【請求項5】
上記異なる抗原性ペプチドがそれぞれ配列番号1〜49からなる群から選択されたアミノ酸配列で構成される20、30、40種またはそれ以上の異なるヘルペスウイルスペプチドであることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
ストレスタンパク質がhsp60、hsp70、またはhsp90ファミリーのストレスタンパク質のメンバーである、請求項2、3、4または5に記載の組成物。
【請求項7】
ストレスタンパク質がhsc70、hsp70、またはhsp90、hsp11O、grp170、gp96、カルレティキュリン、またはそれらの2以上の組み合わせである、請求項2、3、4または5に記載の組成物。
【請求項8】
ストレスタンパク質がヒトのストレスタンパク質である、請求項2、3、4または5に記載の組成物。
【請求項9】
さらに抗体を含有する、請求項1、2、3、4または5に記載の組成物。
【請求項10】
さらに生物学的応答改変因子を含有する、請求項1、2、3、4または5に記載の組成物。
【請求項11】
生物学的応答改変因子がIL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IFNα、IFN-β、IFN-γ、TNFα、TNFβ、G-CSF、GM-CSF、またはTGFβである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
さらに化学療法剤を含有する、請求項1、2、3、4または5に記載の組成物。
【請求項13】
化学療法剤がアシクロビル、バラシクロビル、ペンシクロビル、ファムシクロビル、シドホビル、およびホスホノ蟻酸、またはそれらの組み合わせである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
さらにアジュバントを含有する、請求項1、2、3、4または5に記載の組成物。
【請求項15】
アジュバントがサポニンまたは免疫賦活性核酸である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
免疫原性量の請求項1、2、3、4または5に記載の組成物および製薬上許容される担体を含有する医薬組成物。
【請求項17】
請求項1、2、3、または4に記載の組成物を含有する第1容器、およびアジュバント、化学療法剤、抗体、または生物学的応答改変因子を含有する少なくとも1つの容器を含んでなるキット。
【請求項18】
哺乳動物においてHSV-1またはHSV-2に対する免疫応答を惹起するための組成物を調製する方法であって、in vitroでストレスタンパク質を複数の異なる抗原性ペプチドと複合体化するステップを含んでなり、上記異なる抗原性ペプチドのそれぞれは、アミノ酸配列が相違するヘルペスウイルスペプチドのなかから選択された異なるヘルペスウイルスペプチドの1以上のHLA結合エピトープを含有し、上記それぞれのヘルペスウイルスペプチドのアミノ酸配列は配列番号1〜49からなる群から選択されることを特徴とする上記方法。
【請求項19】
哺乳動物においてHSV-1またはHSV-2に対する免疫応答を惹起するための医薬組成物を調製する方法であって、製薬上の担体を、抗原性ペプチドと非共有結合で結合されたストレスタンパク質からなる複数の異なる複合体と組み合わせることを含んでなり、上記複数の異なる複合体はそれぞれ異なる抗原性ペプチドを含有し、上記異なる抗原性ペプチドのそれぞれは、アミノ酸配列が相違するヘルペスウイルスペプチドのなかから選択された異なるヘルペスウイルスペプチドの1以上のHLA結合エピトープを含有し、上記それぞれのヘルペスウイルスペプチドのアミノ酸配列は配列番号1〜49からなる群から選択されることを特徴とする上記方法。
【請求項20】
上記抗原性ペプチドが化学合成または組換えDNA技法により調製されたものである、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
個体においてHSV-1またはHSV-2に対する免疫応答を惹起する方法であって、個体に、免疫原性量の請求項1、2、3、4、または5に記載の組成物を投与することを含んでなる上記方法。
【請求項22】
ヘルペスウイルスに感染した個体において該感染を治療する方法であって、治療上有効な量の請求項1、2、3、4、または5に記載の組成物を該個体に投与することを含んでなる上記方法。
【請求項23】
ヘルペスウイルス感染の予防を所望する個体において該感染を予防する方法であって、予防上有効な量の請求項1、2、3、4、または5に記載の組成物を該個体に投与することを含んでなる上記方法。
【請求項24】
上記感染が再発性の感染である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
感染がHSV-1による感染である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
感染がHSV-2による感染である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
感染がHSV-1による感染である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
感染がHSV-2による感染である、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
個体にアジュバント、抗体、生物学的応答改変因子、または化学療法剤を投与することをさらに含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
個体にアジュバント、抗体、生物学的応答改変因子、または化学療法剤を投与することをさらに含んでなる、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
個体にアジュバント、抗体、生物学的応答改変因子、または化学療法剤を投与することをさらに含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
請求項1、2、3、4、または5に記載の組成物を投与するステップと、アジュバント、抗体、生物学的応答改変因子、または化学療法剤を投与するステップとを連続して行う、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
請求項1、2、3、4、または5に記載の組成物を投与するステップと、アジュバント、抗体、生物学的応答改変因子、または化学療法剤を投与するステップとを同時に行う、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
上記化学療法剤がアシクロビル、バラシクロビル、ペンシクロビル、ファムシクロビル、シドホビル、およびホスホノ蟻酸、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
上記生物学的応答改変因子がIL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IFNα、IFN-β、IFN-γ、TNFα、TNFβ、G-CSF、GM-CSF、またはTGFβである、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
上記ストレスタンパク質がHSP70、HSC70、HSP90、HSP110、grp170、gp96、カルレティキュリン、またはそれらの組み合わせである、請求項21に記載の方法。
【請求項37】
個体がヒトである、請求項21に記載の方法。
【請求項38】
請求項1、2、3、4、または5に記載の組成物の上記投与が粘膜である、請求項21に記載の方法。
【請求項39】
請求項1、2、3、4、または5に記載の組成物の上記投与が皮内である、請求項21に記載の方法。
【請求項40】
請求項1、2、3、4、または5に記載の組成物の上記投与が皮下である、請求項21に記載の方法。
【請求項41】
上記異なる抗原性ペプチドが細胞またはウイルスから取得または精製されたものでない、請求項1に記載の組成物。
【請求項42】
上記異なる精製された複合体が細胞から取得または精製されたものでない、請求項2に記載の組成物。
【請求項43】
上記異なる抗原性ペプチドが、それぞれ、配列番号1〜49のアミノ酸配列を含有する抗原性ペプチド以外に、HSV2タンパク質のエピトープを含有する抗原性ペプチドを含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項44】
上記異なる抗原性ペプチドが、それぞれ、配列番号1〜49のアミノ酸配列を含有する抗原性ペプチドのエピトープ以外に、HSV2タンパク質のエピトープを含有する抗原性ペプチドを含まない、請求項2に記載の組成物。
【請求項45】
上記複数の異なる抗原性ペプチドの少なくとも50%が、配列番号1〜49からなる群から選択された異なるヘルペスウイルスペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項46】
上記複数の異なる複合体の少なくとも50%が、配列番号1〜49からなる群から選択されたヘルペスウイルスペプチドを含有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項47】
上記異なる抗原性ペプチドのそれぞれが、ヘルペスウイルスペプチドのそれぞれのアミノ酸配列に隣接するアミノ酸配列を含有しない、請求項1に記載の組成物。
【請求項48】
上記異なる抗原性ペプチドのそれぞれが、ヘルペスウイルスペプチドのそれぞれのアミノ酸配列に隣接するアミノ酸配列を含有しない、請求項2に記載の組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−505147(P2007−505147A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526385(P2006−526385)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/029908
【国際公開番号】WO2005/028496
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(503125237)アンティジェニクス インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】