説明

単純化された偏光回収システム

不規則に偏向された光を提供するランプと、該ランプからの光を誘導する結合器であって、前記ランプからの光を、前記結合器の軸に沿って誘導する結合器と、該結合器の一端に設置されたワイヤグリッド偏光器と、を有する偏向光源が提供される。この偏向光源は、ランプで形成された非所望の偏向を有する光の一部を回収する。また、光の偏向を所望の方向に戻す偏向光源を含む液晶オンシリコン(LCOS)式光エンジンが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶オンシリコン(LCOS)式光エンジンにおいて、より多くの所望の偏向の光を形成する機器および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶オンシリコン(LCOS)式結像器は、リアプロジェクションテレビジョン等の投写型システム向けに普及し始めている。LCOS投射システムには、偏向光が必要であり、この光は、LCOS式結像器によって変調される。通常の場合、偏光ビーム分割器(PBS)のような偏光手段を用いた偏向によって光が分離され、所望の偏向の光は、LCOS式結像器を通過し、非所望の偏向の光は、投射光路から回折される。投射システムに偏向光を利用することに関する一つの問題は、システム固有の損失に関するものであり、そのようなシステムでは、所望の偏向の光を形成する過程で、ランプで生成した光(すなわち非所望の偏向光)の半分(またはそれ以上)が「浪費」される。
【0003】
偏向光を提供するとともに、別の偏向の光の一部を回収するための一つの方法は、反射性表面に覆われた小さな入射開口および出力開口を有する結合器を使用することである。偏光手段は、結合器内に設置され、所望の偏向の光のみが結合器を通過することができる。1/4波長板(QWP)が出力開口を取り囲んでおり、光の偏向は、回転されたまま維持され、光が所望の偏向を有した状態で出力開口に入射するまで、光は、結合器内で逆向きに反射される。しかしながら、この方法は、複雑であり、製作コストおよび維持コストが高い。また、QWPおよび偏光手段によって生じる熱は、それらの部品が結合器内に設置されているため、逸散させることが難しい。さらに、QWPおよび偏光手段を結合器内に設置するためには、照明システム全体の大幅な設計見直しが必要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前述の問題を解決する偏向光源、および液晶オンシリコン(LCOS)式光エンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
不規則に偏向された光を提供するランプと、該ランプからの光を誘導する結合器であって、前記ランプからの光を、前記結合器の軸に沿って誘導する結合器と、該結合器の一端に設置されたワイヤグリッド偏光器と、を有する偏向光源が提供される。この偏向光源は、ランプから生じた非所望の偏向を有する光の一部を回収する。また、光の偏向を所望の方向に戻す偏向光源を含む液晶オンシリコン(LCOS)式光エンジンが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照して、以下に本発明の一実施例を示す。
【0007】
本発明の一実施例では、機器は、偏向光を提供するとともに、別の偏向を有する光の一部を回収する。ランプ10は、不規則な偏向の光2を生成する。ランプ10は、例えば、所望の方向に光を誘導する楕円型または放物線型の反射器(図示されていない)を有する水銀アークランプであり、オランダ、アイントホーフェンのフィリップス照明社のUHP(登録商標)ランプあるいは別のUHP式ランプであっても良い。
【0008】
不規則な偏向光2は、結合器20に入射し、この結合器は、不規則な偏向光を結合器20の軸に沿って誘導する。従来から知られているように、結合器20は、反射性内表面を有する細長い中空構造を有し、この内表面は、不規則に偏向された光2を反射し、光は、結合器20の入力端部22に設置された入射開口21から結合器20を通って、結合器20の出力端部24に設置された出力開口23まで誘導される。あるいは、結合器20は、例えば表面に設置された銀メッキのような、反射性コーティングを有する非中空の細長い透明構造を有しても良く、これにより、不規則に偏向された光2は、入射端部22に設置された入射開口21から結合器20を通り、出力端部24に設置された出力開口23まで誘導される。投写型システムに使用する場合、結合器20は、所望の被投射画像とアスペクト比(例えば9×16)が等しい、矩形状出力開口23を有することが好ましい。
【0009】
一次偏光器30は、結合器20の端部22、24に設置される。図1の実施例では、偏光器30は、反射式ワイヤグリッド偏光器であり、この反射式ワイヤグリッド偏光器は、可視光のスペクトル内で作動し、出力開口23に隣接し、出力開口23と揃うようにして、結合器20の出力端部24に設置される。また、図1に示す一例としての偏向光源では、一掃式偏光手段および偏光器30のみが必要となる。これは、複数の偏光器を使用する既存のシステムにはない改良点である。所望の偏向の光2’は、偏光器30を通過するが、別のあるいは非所望の偏向の光は反射されることは、当業者には明らかである。
【0010】
非所望の偏光を有する反射光4は、ランプ10に至るまで結合器20内を逆向きに誘導され、ランプ10で、結合器20に向かって逆向きに反射される。発明者らは、ランプによって、反射光4の一部が、非所望の偏光から所望の偏光に回転するようにシステムを設計している。すなわち、ランプ10によって反射された光の一部である回収光6は、所望の偏向を有するため、結合器20を通って誘導され、偏光器30を通過する。
【0011】
回収光6の一部は、再度反射され、再度回収される。全回収光6’は、この回収過程全体を通じて、偏光器30を通過した所望の偏向の光を累積したものに等しい。一例としての偏向光源によって提供された全偏向光の出力は、初期の所望の偏向光2’に、全回収光6’を加えたものに等しい。
【0012】
図2には、本発明の一実施例を示す。この図では、光の偏光を所望の方向に戻す偏向光源を用いたLCOS式光エンジンが提供される。ランプ10は、不規則な偏向光2を生成し、この光は、ランプ10内の放物線型または楕円型反射器(図示されていない)によって、結合器20の方に誘導される。不規則な偏向光2は、結合器20によって、入力端部22の入射開口21から、出力端部24の出力開口23に誘導される。偏光器30は、出力端部24に近接して、出力開口23と揃えて設置される。偏光器30は、可視光スペクトル内で作動する反射式ワイヤグリッド偏光器であることが好ましい。前述のように、ワイヤグリッド偏光器30の配向によって定まる好ましい偏向を有する光は、偏光器30を通過するが、非所望の偏向を有する光は、偏光器30によって反射される。また、所望の偏光を有する回収光6’も、偏光器を通過する。さらに、ワイヤグリッド偏光器30は、結合器20の端部近傍に設置されているため、結合器20からの光には発散する機会がなく、本発明の一実施例に使用されるワイヤグリッド偏光器30は、結合器20の出力開口23よりも僅かに大きくするだけで良い。
【0013】
偏光器30を通過した後、所望の偏光を有する偏向光2’、6’は、リレーレンズ組40によって、結像組立体に集束される。結像組立体は、偏光ビーム分割器(PBS)50と、LCOS結像器60とを有する。PBS50は、一つの配向の光を通過させ、反対の偏向の光を回折する。図2に示す実施例では、所望の偏向を有する光は、PBS50の第1の面51に入射し、第2の面52を通って、LCOS結像器60に回折される。LCOS結像器は、画素毎に光を変調して、変調光の画素マトリクス90を形成し、変調光の偏向を回転し、変調光を第2の面52に向けて逆向きに反射する。変調光の画素マトリクス90は、偏向光2’、6’の偏向とは逆の偏向を有するため、PBS50を通過して第3の面53から放射される。次に、投射型レンズ組(図示されていない)が、変調光のマトリクス90をスクリーン(図示されていない)上に投射し、視認可能な画像が形成される。
【0014】
偏向光2’、6’をLCOS式結像器60の方に誘導すること、および変調光の画素のマトリクス90を投射式レンズ組に誘導することに加えて、PBS50は、さらに偏向の一掃化を実施する(すなわち、非所望の偏向を有する光が漏洩して、LCOS結像器60に到達することを防止する)。図の実施例では、LCOS式投射光路を形成することが必要なため、偏向の一掃化にPBS50が使用されるが、偏向の一掃化に、直線偏光器等の他の偏光手段が使用されても良い。
【0015】
本発明の一つの利点は、既存の光エンジン(または結像器)の構造を変更する必要がないことである。従って、光エンジン構造の再設計が必要となるシステムに比べて、大幅なコスト削減が可能となる。また、本発明の一実施例に使用されるワイヤグリッド偏光器30では、この偏光器を結合器の出力開口に比べて僅かに大きくすることしか必要ではないため、ワイヤグリッド偏光器の表面積(さらにはそのコスト)は、結像組立体に近接して(すなわちリレーレンズ組の後段側に)設置された偏光器に比べて、少なくとも4分の1削減できる。偏光器30は、その位置が結合器20の端部22、24に近接しているため、偏光器30は、開口21、23の寸法に端部の漏洩を防ぐためのガード幅を加えた寸法とほぼ等しくなっていれば良い。従って、偏光器30は、結像組立体に近接して設置された偏光手段に比べてより小型にすることができ、より安価となる。
【0016】
大きな光パイプ(16×9×80mm)を有する結合器を用いた場合、ルーメン量は、約19%向上する。より一般的な寸法の光パイプ(8×4.5×40mm)を用いた場合、ルーメン量は、約14%向上する。
【0017】
前述の実施例には、本発明を実施するためのいくつかの可能性について示した。本発明の範囲および観念から逸脱しないで、多くの他の実施例を行うことが可能である。従って、前述の記載は、本発明の一例に過ぎず、本発明を限定するものと捉えてはならず、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載およびこれと等価なものによって定められる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例による偏向光源を示す図である。
【図2】本発明の一実施例による液晶オンシリコン(LCOS)式光エンジンを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不規則に偏向された光を提供するランプと、
該ランプからの光を誘導する結合器であって、前記ランプからの光を、前記結合器の軸に沿って誘導する結合器と、
該結合器の第1の端部に設置されたワイヤグリッド偏光器と、
を有する光源。
【請求項2】
前記ワイヤグリッド偏光器は、前記結合器の光入射端部に設置されることを特徴とする請求項1に記載の光源。
【請求項3】
前記ワイヤグリッド偏光器は、前記結合器の光出力端部に設置されることを特徴とする請求項1に記載の光源。
【請求項4】
前記ランプは、楕円型または放物線型の反射器を備える水銀アークランプであることを特徴とする請求項1に記載の光源。
【請求項5】
前記結合器の第2の端部は、いかなる偏光手段に対しても自由な端部であることを特徴とする請求項1に記載の光源。
【請求項6】
不規則に偏向された光を提供するランプと、
該ランプからの光を誘導する結合器であって、前記ランプからの光を、前記結合器の軸に沿って誘導する結合器と、
該結合器の第1の端部に設置されたワイヤグリッド偏光器と、
前記結合器からの偏向された光を、ビデオ信号に応じて画素毎に変調し、ビデオ画像を形成する液晶オンシリコン(LCOS)式結像器と、
を有する液晶オンシリコン(LCOS)式光エンジン。
【請求項7】
さらに、前記ワイヤグリッド偏光器と液晶オンシリコン(LCOS)式結像器の間に設置された一掃式偏光手段を有することを特徴とする請求項6に記載の液晶オンシリコン(LCOS)式光エンジン。
【請求項8】
前記一掃式偏光手段は、偏光ビーム分割器であることを特徴とする請求項7に記載の液晶オンシリコン(LCOS)式光エンジン。
【請求項9】
前記一掃式偏光手段は、直線偏光器であることを特徴とする請求項7に記載の液晶オンシリコン(LCOS)式光エンジン。
【請求項10】
前記ワイヤグリッド偏光器は、前記結合器の光入射端部に設置されることを特徴とする請求項6に記載の液晶オンシリコン(LCOS)式光エンジン。
【請求項11】
前記ワイヤグリッド偏光器は、前記結合器の光出力端部に設置されることを特徴とする請求項6に記載の液晶オンシリコン(LCOS)式光エンジン。
【請求項12】
前記ワイヤグリッド偏光器は、前記結合器の出力端部と同等の寸法であることを特徴とする請求項11に記載の液晶オンシリコン(LCOS)式光エンジン。
【請求項13】
前記ランプは、楕円型または放物線型の反射器を備える水銀アークランプであることを特徴とする請求項6に記載の液晶オンシリコン(LCOS)式光エンジン。
【請求項14】
前記結合器の第2の端部は、いかなる偏光手段に対しても自由な端部であることを特徴とする請求項6に記載の液晶オンシリコン(LCOS)式光エンジン。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−524131(P2007−524131A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500730(P2007−500730)
【出願日】平成16年2月25日(2004.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/005480
【国際公開番号】WO2005/085920
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】