単色X線の方法および装置
一部の態様によれば、画像化および/または放射線治療のためのX線装置が提供され、このX線装置は、電子を発生させることが可能な電子源と、電子源からの電子を受け取るように配置構成され、電子を照射されることに反応して広域スペクトル放射X線を放出する材料を含む、少なくとも1つの第1ターゲットと、この広域スペクトル放射X線の少なくとも一部を受け取るように配置構成され、第1ターゲットからの広域スペクトル放射X線による照射に反応して、単色放射X線を放出する材料を含む、少なくとも1つの第2ターゲットと、この少なくとも1つの第2ターゲットから放出される単色放射X線の少なくとも一部を検出するように配置される、少なくとも1つの検出器とを含む。一部の態様によれば、医療/臨床目的に好適で、病院および/または小さな臨床設定などの既存の医療施設での使用に適した、単色放射X線を発生させるための、比較的低コストで、比較的占有面積の少ないX線装置が提供される。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
従来の診断的X線撮影および癌治療は、診断および治療の間に、正常組織が不必要に晒される広域のエネルギー範囲にわたってX線を放出する、X線発生装置を使用する。線量を低減し、画像コントラストを改善する試みに特化した設定においては、単色放射線が使用されている。しかしながら、単色放射線を発生させるための従来のシステムは、法外なサイズ、コスト、および/または複雑性のために、臨床用途または商業用途には適さない場合がある。例えば、フィルターとして非効率的なブラッグ結晶を利用するか、または固体ターゲットX線蛍光体を使用して、単色放射線を発生させることは、非常に大きく、高価で、かつ強力な、広帯域シンクロトロン光源を必要とし、これは臨床設定に関しては実用的でないことが立証されている。
【0002】
他の従来技術としては、ポリキャピラリ光学素子を使用して、従来の実験室X線発生装置からのスループットを増大させることが挙げられるが、依然として、単色化するためにはブラッグ結晶が使用される。一部の治療用途では、皮膚への線量を低減するために、高エネルギー線形電子加速器が使用される。しかしながら、エネルギー特異性に対する制御は、間接的かつ最低限である。単一の放射線ビームを使用して、特定のタイプまたは深さの組織を標的にすることは、一般に不可能であり、悪性または良性のいずれかである組織のタイプについて、放射線は無差別である。更には、今日の治療施設の、コスト、インフラスチラクチャ、および人員の要件は高く、社会の医療ニーズの一部さえも満たす可能性は低い。単色ガンマ線源を使用する小線源治療もまた、治療上の利益をもたらし得るが、ガンマ線のエネルギーおよび半減期は物理学の自然法則によって定められているため、放射性核種の適切な選択肢は限定される。
【発明の概要】
【発明の効果】
【0003】
出願人は、広域スペクトル放射線を発生させるための標準的X線管を、蛍光ターゲットと組み合わせて、標的組織の画像化および放射線治療に好適な単色放射線を発生させることができることを理解している。本発明の態様を利用して、医療/臨床目的に好適で、病院などの既存の医療施設での使用に適した、単色放射X線を発生させるための、比較的低コストで、比較的占有面積の少ないX線装置を提供することができる。
【0004】
一部の実施形態は、電子を照射されることに反応して広域スペクトル放射X線を放出する第1ターゲットを含むX線管から、広域スペクトル放射X線を発生させることと、この広域スペクトル放射X線の少なくとも一部を、照射に反応して単色放射X線を放出する材料を含む第2ターゲットに照射するように方向付けることと、単色放射X線の少なくとも一部を、標的組織に照射するように方向付けることとを含む、単色放射線を発生させる方法を含む。
【0005】
一部の実施形態は、電子を発生させることが可能な電子源と、電子源からの電子を受け取るように配置構成され、電子を照射されることに反応して広域スペクトル放射X線を放出する材料を含む、少なくとも1つの第1ターゲットと、この広域スペクトル放射X線の少なくとも一部を受け取るように配置構成され、第1ターゲットからの広域スペクトル放射X線による照射に反応する材料を含む、少なくとも1つの第2ターゲットと、この少なくとも1つの第2ターゲットから放出される単色放射X線の少なくとも一部を検出するように配置される、少なくとも1つの検出器とを含む、X線装置を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】従来のX線管の概略図である。
【図2】電子(原子核よりも遙かに軽い)が原子核に非常に接近し、電磁相互作用によって軌跡の偏位が引き起こされ、電子がエネルギーを失い、X線光子が放出されるシナリオを示し、制動放射を最も単純な形態で説明する。
【図3】ターゲットから逃れようとする低エネルギーX線が吸収されて、低エネルギーでのスペクトルの特徴的なロールオーバーを引き起こす、典型的なX線管によって作り出される制動放射スペクトルを示す。
【図4】特徴的な輝線放射を発生させる物理現象を示す。
【図5】厚肉ターゲット制動放射および特徴的なモリブデン輝線放射を示す、モリブデン陽極を備えるX線管からの結合スペクトルを示す。
【図6A】光電効果を示す。
【図6B】K殻からのX線蛍光の原理を示す。
【図7】銅の陽極を備えるX線管によって発生した銅X線を、アルミニウム(Al)のターゲットに照射することによって作られた、X線蛍光スペクトルを示す。
【図8】ジルコニウムに関する、X線エネルギーの関数としての吸収係数を示し、不連続な急上昇または稜線は、ジルコニウム中の電子の結合エネルギーをかろうじて超えたところで、吸収が強化される様子を示す。
【図9】本発明の一部の実施形態による、単色X線システムを示す。
【図10】本発明の一部の実施形態による、選択された造影剤に同調された上述の単色X線装置を使用する画像化の方法を示す、フローチャートである。
【図11】本発明の一部の実施形態による、上述の単色X線装置を使用する放射線治療の方法を示す、フローチャートである。
【図12】臭化カリウム(KBr)に関する質量吸収係数を示す。
【図13A】ロジウム陽極を備える従来のX線管によって発生する厚肉ターゲット制動放射スペクトルを示す。
【図13B】図13Aの広帯域スペクトルを使用して、X線蛍光によって作り出される、ZrKαX線およびZrKβX線を示す。
【図14A】制動放射スペクトルを使用するKBrファントムの2−D等高線プロット(上)、および本発明の実施形態による、単色のZrKX線を使用するKBrファントムの2−D等高線プロットを、それぞれ示す。
【図14B】制動放射スペクトルを使用するKBrファントムのX線強度の3−Dプロット(上)、および本発明の一部の実施形態による、単色のZrKX線を使用するKBrファントムのX線強度の3−Dプロットを、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
上述のように、診断画像を作り出し、かつ/または放射線治療を実施するために、単色放射線を発生させることが可能な従来のX線システムは、そのようなシステムの製造、操作、および維持の、法外な高コスト、ならびに/あるいは臨床使用のためには遙かに大きすぎるシステム占有面積のために、臨床的および/または商業的な使用に関して、一般に好適ではない。結果として、そのような従来のシステムは、大きく、複雑で、高価な設備に投資している、比較的少数の研究施設での、それらの研究施設による調査への適用に限定される。病院および診療所などの医療施設は、診断/治療目的のための臨床設定で採用可能な単色X線機器に関しては、実行可能な選択肢を欠いたままである。
【0008】
出願人は、癌性腫瘍を効率的に診断して処置することができる、調整可能な単色放射X線を作り出すための、単純で、低コストの、テーブルトップの方法および装置を開発した。一部の実施形態によれば、広域のエネルギー範囲にわたってX線を発生させる従来のX線管を使用して、固体ターゲットに照射すると、次に固体ターゲットが、単色蛍光X線を放出する。この蛍光ターゲットは、単一の元素から作製してもよく、またはいくつかの元素の複合体であってもよい。これらの蛍光X線のエネルギーは、ターゲット材料の元素組成に固有のものである。単一元素から作製されるターゲットは、その蛍光X線のエネルギーが、癌性腫瘍などの特定の組織部位に送達されている造影剤中の主要元素の吸収端をかろうじて超えるように、選択することができる。
【0009】
この意味で、ターゲットからの蛍光X線の放出は、造影剤の吸収特性に同調される。すなわち、蛍光ターゲットは、造影剤に適合する材料を含む。造影剤は、臭素、ヨウ素、ガドリニウム、銀、金、プラチナ、35を超える原子番号を有する他の元素のうちの、任意の1つまたは組み合わせなどの、任意の好適な造影剤、あるいは任意の他の好適な造影剤とすることができる。造影剤は、X線造影剤、磁気共鳴造影剤、放射性薬剤、放射線治療剤、甲状腺関連剤、防腐剤、消毒剤、去痰剤、抗アメーバ剤、抗ウイルス剤、抗不整脈剤、抗新生物剤などの、造影剤のクラスのうちの少なくとも1つに属し得る。
【0010】
このような技術は、周囲組織と比較した造影剤中のX線吸収を強化し、これによって画像コントラストを改善するばかりではなく、診断放射線量を3桁分までも低下させる。一部の実施形態によれば、造影剤の吸収端の上下のエネルギーを有する蛍光X線を放出する、多元素ターゲットを選択することができる。吸収端の上下で同時に得られる吸収の差異によって、画像コントラストを更に改善することができる。従来のX線管の出力を、治療用途のために増大させることによって、本明細書に記載される標的能力技術は、腫瘍部位または造影剤が配置されるあらゆる場所での吸収効率を増大させ、一方で他の場所での放射線曝露を最小限に抑える。
【0011】
一部の実施形態によれば、入射電子ビームに反応して広域スペクトル放射線を作り出すターゲットの後に、入射広域スペクトル放射線に反応して単色放射X線を作り出す蛍光ターゲットを、少なくとも部分的に、連続させて組み合わせることによって、単色X線デバイスが提供される。用語「広域スペクトル放射線」は、陽極材料の特徴的な輝線の有無に関わらず、制動放射線を説明するために本明細書で使用される。そのようなデバイスの動作原理を、以下で更に詳細に説明する。
【0012】
厚肉ターゲット制動放射
【0013】
図1に概略的に示すように、X線管内で、電子は、陰極と呼ばれる加熱フィラメントから解放され、陽極と呼ばれる金属ターゲットに向かって、高電圧(例えば、〜50kV)によって加速される。この高エネルギー電子は、陽極内の原子と相互作用する。多くの場合、エネルギーE1を有する電子は、ターゲット内の原子核に接近し、その軌跡は、電磁相互作用によって変更される。この偏向のプロセスで、電子は原子核に向かって減速する。電子は、エネルギーE2まで減速する際に、エネルギーE2−E1を有するX線光子を放出する。この放射線は制動放射線と呼ばれ、その運動学を図2に示す。
【0014】
放出された光子のエネルギーは、入射電子の最大エネルギーEmaxまでの、いずれかの値を取り得る。電子は破壊されないため、電子は、そのエネルギーの全てを失うか、または陽極内の原子と結合するまで、複数の相互作用を受けることができる。初期の相互作用は、小さなエネルギー変化から大きなエネルギー変化まで、原子核への実際の角度および近接性に応じて様々である。結果として、制動放射線は、図3に示すように、概して連続的なスペクトルを有することになる。制動放射生成の確率は、Z2に比例し、ここでZは、ターゲット材料の原子番号であり、生成の効率は、ZおよびX線管の電圧に比例する。低エネルギーの制動放射X線は、以下で更に詳細に説明するように、内部深くから逃れようとする際に厚肉ターゲットの陽極によって吸収され、最低エネルギーでの強度曲線の折れ曲がりを引き起こすことに留意されたい。
【0015】
特徴的な輝線放射
【0016】
殆どの電子が減速し、その軌跡が変更される一方で、一部は、標的原子内の原子核を取り囲む、対応する軌道すなわち殻内に、エネルギーBEによって束縛されている電子と衝突する。図4に示すように、これらの殻は、K、L、M、Nなどによって示される。入来電子と束縛電子との衝突において、入来電子のエネルギーが、軌道周回電子のBEよりも大きい場合には、束縛電子は原子から排除される。例えば、図4に示すエネルギーE>BEkを有する衝撃電子は、K殻の電子を排除して、K殻内には空孔が残される。結果として生じる、励起してイオン化した原子は、外側の軌道内の電子が空孔を満たすと、脱励起する。この脱励起の間に、脱励起に関与する電子の最初のエネルギー準位と最終のエネルギー準位との差異に等しいエネルギーを有して、X線が放出される。軌道となる殻のエネルギー準位は、周期表上の各元素に固有であるため、このX線のエネルギーによって、元素が識別される。このエネルギーは単一性であり、スペクトルは広域連続帯ではなく、単色で表れる。ここで、単色とは、輝線のエネルギーの幅が、関与する原子遷移に伴う自然の輝線幅に等しいことを意味する。銅KαX線に関しては、自然の輝線幅は約4eVである。ZrKα、MoKα、およびPtKαに関しては、輝線幅はそれぞれ、約5.7eV、約6.8eV、約60eVである。陽極としてモリブデンターゲットを備えるX線管からの完全スペクトルを、図5に示す。モリブデンの原子エネルギー準位に固有の、特徴的な輝線が、厚肉ターゲット制動放射の上に重ね合わさって示されている。
【0017】
X線吸収およびX線蛍光
【0018】
X線管からのX線が、サンプルに打ち当たると、X線は、原子によって吸収されるか、または材料を通過して散乱するかのいずれかであり得る。X線が、図6Aで示すように、そのエネルギーの全てを最も内側の電子に転移させることによって原子に吸収されるプロセスは、光電効果と呼ばれる。これは、入射X線が、衝突の際に遭遇する軌道電子の束縛エネルギーよりも大きいエネルギーを有する場合に発生する。この相互作用では、光子は、そのエネルギーの全てを軌道電子に付与して、存在が消滅する。X線のエネルギーの殆どが、軌道電子の束縛エネルギーに打ち克つために必要とされ、残余のエネルギーは、電子を排除した上でその電子に付与され、殻内には空孔が残される。排除された自由電子は、光電子と呼ばれる。光電相互作用は、入射光子のエネルギーが、打ち当たる電子の束縛エネルギーを超過するものの、比較的その束縛エネルギーに近い場合に、最も発生しやすい。例として、光電相互作用は、23.2keVの束縛エネルギーを有するK殻の電子に関しては、入射光子が50keVである場合よりも、25keVである場合に、より発生しやすい。これは、光電効果が、X線のエネルギーのほぼ3乗に反比例するためである。
【0019】
原子の内側殻内の空孔は、その原子に関して不安定条件を提示する。原子が安定条件に戻る際に、外側の殻からの電子が内側の殻に転移し、このプロセスで、上記の「特徴的な輝線放射」のセクションで説明したように、対応する殻の2つの束縛エネルギー間の差異であるエネルギーを有する、特徴的なX線を放出する。この光子誘導のX線放出プロセスは、X線蛍光、またはXRFと呼ばれる。図6Bは、K殻からのX線蛍光を概略的に示し、アルミニウムのサンプルからの典型的なX線蛍光スペクトルを、図7に示す。特徴的なX線は、最初の空孔が生じた殻を示すKで標識される。更に、アルファ(α)およびベータ(β)を使用して、より高位の殻からの電子の遷移によって生じるX線を識別する。それゆえ、KαX線は、L殻からK殻への電子の遷移によって作り出され、KβX線は、M殻からK殻への電子の遷移によって作り出され、以下同様である。これらの単一エネルギー性の輝線は、広帯域の連続的放射線のバックグラウンドの上に存在するものではなく、むしろ、そのスペクトルは、制動放射を含んでいないという点に留意することが重要である。上述のように、X線管は、厚肉ターゲット制動放射、および陽極内の銅からの特徴的なX線を作り出す。しかし、X線管からの結合スペクトルの放出を使用して、アルミニウムのサンプルに照射する場合、X線蛍光を介して、単一エネルギー性の輝線、すなわちAlKαおよびAlKβのみが作り出される。
【0020】
上述のように、所定の吸収元素に関するX線吸収の確率は、入射光子のエネルギーの増大と共に低下する。しかしながら、この減少は、X線のエネルギーが、吸収体内の電子殻(K、L、Mなど)の束縛エネルギーに等しい場合の、急激な上昇によって中断される。これは、特定の殻内に空孔を生み出すことが可能な最低のエネルギーであって、端と称される。図8は、X線のエネルギーの関数としてのジルコニウムの吸収を示す。この吸収は、その質量減衰係数によって、縦座標軸上に定義される。L軌道およびK軌道の束縛エネルギーに対応する吸収端は、それぞれ約2.3keVおよび約18keVでの不連続な急上昇によって示される。周期表上のあらゆる元素は、X線のエネルギーの関数としての、その元素の吸収を説明する、同様の曲線を有する。
【0021】
以下は、本発明による方法および装置に関する、様々な概念ならびにそれらの実施形態の、より詳細な説明である。本明細書で説明する本発明の様々な態様を、数々の方法のうちのいずれかで実装し得ることを理解されたい。具体的な実装の実施例は、例示的な目的のみのために本明細書で提供される。更には、以下の実施形態で説明する本発明の様々な態様は、単独で、または任意の組み合わせで使用することができ、本明細書で明示的に説明する組み合わせに限定されるものではない。
【0022】
図9は、本発明の一部の実施形態による、単色X線を発生させるためのX線装置の概略図を示す。X線管1は、フィラメント(b)(陰極として動作する)を電圧(c)(典型的には5〜6ボルト)でオーム加熱することにより、フィラメントが電子(d)を放出することによって、厚肉ターゲット制動放射線を発生させる。この電子は、フィラメント(典型的には、ゼロ電位、すなわち接地電位である)に対する陽極の高電圧バイアス(f)のために、陽極(e)に向かって加速される。電子は、陽極によって減速される際に、図3に示すように制動放射線を発生させ、また多大な量のオーム出力が、陽極によって熱の形態で放散される。この熱は、陽極材料から真空エンクロージャーの外部に伝導させることができる。陽極材料に固有の特徴的な輝線もまた、電圧電位が十分に大きければ、陽極材料の電子衝撃によって作り出すことができる。この放射X線は、X線を高効率で透過させることができる真空気密のウィンドウ(g)(例えば、ベリリウム)を通過して、真空エンクロージャーから射出される。
【0023】
X線管1は、広域スペクトル放射線を発生させるための、標準的なX線管であってもよいことを理解されたい。例えば、このX線管は、医療用途で現行使用されている従来のX線管と類似のもの、または同じものとすることができる。したがって、本明細書で説明するX線装置の実施形態の一部は、比較的低コストの、テーブルトップの解決案として製造することが可能である。結果として、そのようなX線装置は、以下で更に詳細に説明するように、単色X線の診断用途および/または治療用途を実行するための、病院などの医療施設による、広範な採用に適するものとすることができる。
【0024】
X線管から放出されたX線ビーム2を、ターゲットへ入射するX線に反応して、ターゲット内の元素に特有の単色X線を作り出す、蛍光ターゲット3に照射する。この単色X線4は、拡散してコリメータ(例えば、ピンホールまたはスリット5)を通過し、サンプル6(例えば、以下で更に詳細に説明するような、画像化されるかまたは処置される標的組織)を通過する。他の構成要素を使用して、X線をコリメートし、ペンシルビーム、ファンビーム、または任意の他の形状のビームを形成してもよく、本発明の態様は、この点において限定されない。X線管、蛍光ターゲット、およびコリメータは、本明細書では、単色X線源と総称される。透過したX線は、X線検出器7によって検出され、サンプルの画像を作り出す。
【0025】
例えば、単色X線は、サンプルの2D断面を貫通し、最終的に断面の2D画像(「スライス」)を作り出すことができる。3D画像が所望される場合には、サンプルをステージ8上で回転させながら、連続的に2D画像を取得することができる。回転が完了すると、3DCT画像が再構築される。あるいは、X線源をサンプルの周囲で回転させて、サンプルの3D画像を得てもよい。他のメカニズムを使用して、X線源とサンプルとの相対的回転を作動させ、多数の投影角からのX線減衰データを得ることができ、本発明の態様は、この点において限定されない。一部の構成では、減衰データを得るために、X線源と協調させて検出器を回転させることが必要となることを理解されたい。
【0026】
出願人は、蛍光ターゲットによって発生する単色線のエネルギーよりも大きいエネルギーを有する特徴的な輝線を発生させる材料を、X線管内の陽極のために選択することが有益であることを理解している。これは、蛍光ターゲットからのX線の収率を向上させるが、本発明の実施形態についての要件ではない。スリットまたはピンホールの視界がサンプル全体を包囲し得ない一部の実施形態によれば、サンプルを、X線ビームから検出器までの照準線とは垂直の方向に移動させて、前述の画像化手順を繰り返すことができる。
【0027】
一部の実施形態によれば、1つ以上のX線レンズを使用して、より効率的に、陽極から放出される広域スペクトル放射X線を収集し、蛍光ターゲット上の比較的小さいスポット上に放射線を集束させることができる。例えば、ガラスキャピラリ光学素子を、陽極と蛍光ターゲットとの間に配置して、放射X線を収集し、集束させることができる。1つ以上のレンズを使用することで、蛍光ターゲットとサンプルとの間の、ピンホールまたは他のコリメータに対する必要性を取り除くことができる。この光学素子は、X線管によって放出されるX線を、より大量に収集するため、X線管の出力を低減することができる。X線管の出力の低減によって、この装置を、水冷式ではなく空冷式とすることが可能になり、このX線装置の複雑性およびコストを更に低減することができる。1つ以上のレンズは、単独で、または陽極と蛍光ターゲットとの間に配置構成した光学素子と組み合わせて、蛍光ターゲットとサンプルとの間に配置し、単色X線を集束させ得ることを理解されたい。
【0028】
一部の実施形態によれば、図9のX線装置は、パルス単色放射X線を発生させることが可能である。パルス放射X線は、結果として得られる画像内の、放射線曝露の間の人間被験者の動きによるモーションアーチファクトの低減および/または除去に有利な場合がある。例えば、連続X線放射を使用して、鼓動する心臓を画像化することは、心周期の間の異なる時間において、心臓は異なる位置/構成状態にあるため、結果として得られる画像内に、ぶれを生じさせる恐れがある。X線源をパルス化することにより、心周期の間のほぼ同時点で画像化が実行されるようにX線放射を心周期に同期させて、動きのぶれを低減させ、かつ/または除去することができる。そのような技術を使用して、心周期の任意の部分を画像化し得ることを理解されたい。更には、被験者の呼吸が、同様のモーションアーチファクトを生じさせる場合があり、既定の曝露スケジュールに従ってX線源をパルス化することによって、被験者の呼吸によって生じる動きを相殺することができる(例えば、呼吸周期のほぼ同時点の間に、画像化を実行することができる)。放射線のパルス化は、被験者の動きの他の原因と同期させてもよく、本発明の態様は、この点において限定されないことを理解されたい。
【0029】
一部の実施形態によれば、X線のパルス化は、X線管の内部で実行される。例えば、タイミング回路を実装して、陰極(例えば、フィラメント)から陽極(ターゲット)までの電子流を発生させる回路を、電子的に開閉することができる。このタイミング回路は、任意の所望のタイミングシーケンスに従って回路を開閉するように構成することができる。例えば、タイミング回路は、プログラムされたタイミングシーケンスに従って回路を開閉するクロックを有するマイクロコンピュータを使用して、制御することができ、このマイクロコンピュータは、任意の所望のタイミングシーケンス、または任意数の所望のタイミングシーケンスに従って、パルス放射X線を発生させるようにプログラムすることができる。
【0030】
一部の実施形態によれば、X線のパルス化は、放射X線自体に対して実行される。例えば、第1ターゲットから放出される広域スペクトル放射線、および/または蛍光ターゲットから放出される単色放射線のいずれかを、交互に遮断し、通過させるように、チョッパー(例えば、回転チョッパー)を配置して、所望のタイミングシーケンスに従った、パルス放射を達成することができる。2重のチョッパーを実装して、広域スペクトル放射線および単色放射線の双方を、交互に遮断し、通過させて、所望のタイミングシーケンス、または任意数の所望のタイミングシーケンスで、パルス放射を達成することができる。パルス放射X線を発生させる他の方法を使用してもよく、本発明の態様は、この点において限定されないことを理解されたい。電子ビームを電子的にパルス化するための技術を、放射X線を遮断/通過させるための技術と組み合わせてもよく、本発明の態様は、パルス放射線を発生させるための技術の、いずれのタイプまたは組み合わせでの使用に関しては、限定されないことを理解されたい。
【0031】
従来は、上述のような単色X線装置は、満足な画像を生成することは不可能であり、かつ/または放射線治療の実行には適さないと考えられていた。出願人は、以下で更に詳細に論じるように、そのような装置を、診断目的および治療目的のために使用することの予期せぬ有効性を、理解し、実証している。一部の実施形態によれば、本明細書で説明するX線装置を使用して、標的組織を画像化する。一部の実施形態によれば、この画像化された組織を使用して、生物学的異常(例えば、腫瘍)を検出することができ、かつ/または処置のために生物学的異常を位置決めすることができる。一部の実施形態によれば、本明細書で説明するX線装置を増大した出力レベルで使用して、位置決めされた生物学的異常を処置する(例えば、先行の画像化手順の間に位置決めされた標的組織を破壊する)。そのような技術の実施例を、以下で更に詳細に説明する。
【0032】
図10は、本発明の一部の実施形態による、選択された造影剤に同調された上述の単色X線装置を使用して、標的組織を画像化する方法を示す、フローチャートである。方法1000は、所望により2Dおよび3Dで画像化するために使用することができる。行為1010では、被験組織内に注入するための造影剤を選択する。次に造影剤中の主要元素を識別し、造影剤の主要元素における吸収端エネルギーよりもかろうじて高いエネルギーを有する単色X線を発生させる蛍光ターゲット材料を選択することができる(行為1020、1030)。方法1000は、造影剤と関連付けて説明されるが、本方法は造影剤を使用することなく実行できることを理解されたい。そのような状況では、蛍光ターゲットは、任意の好適なエネルギー準位で単色放射線を発生させる材料を含み得る。
【0033】
蛍光ターゲットから放出される特徴的なX線のエネルギーは、原子番号と共に増大する。したがって、造影剤を使用している場合、蛍光ターゲットは、造影剤の吸収端エネルギーを超える特徴的なX線を発生させる、周期表内の元素を含むように選択することができる。例えば、所定の造影剤中の主要元素がヨウ素(原子番号53を有する)である場合、ヨウ素のK吸収端のエネルギーは、33.24keVである。33.24keVよりも大きい特徴的なX線エネルギーを有する、周期表内の次の元素は、原子番号57を有するランタンである。ランタンのKX線は、ヨウ素の吸収端より0.16keV上回る、33.4keVのエネルギーを有する。造影剤中の主要元素の吸収端を超えるエネルギーを有するX線を作り出す、周期表内の次の元素を選択することが有効であり得るが、そのような元素が、あらゆる造影剤に関して実用的であるという可能性はない。したがって、造影剤を使用する場合、造影剤の主要元素の吸収端を超えるX線を作り出す任意の元素を使用することができ、本発明の態様は、この点において限定されない。
【0034】
広域スペクトル放射線を作り出す従来のX線管を使用して、蛍光ターゲットに照射することができる(行為1040)。例えば、X線管内の陰極と陽極との間の高電圧を、所望の蛍光X線のエネルギーの、少なくとも3〜5倍のエネルギーを有する広域スペクトル放射線を作り出す値に調節することができる。一部の実施形態では、この広域スペクトル放射線は、制動放射線に加えて、陽極材料からの特徴的な輝線放射を含む。入射広域スペクトル放射線に反応して、単色X線が、蛍光ターゲットから発生する(行為1050)。この単色X線は、標的組織に照射するように方向付けることができる(行為1060)。蛍光ターゲット上のスポットのサイズは、通常は直径が数ミリメートルであるため、ピンホールを使用して、より小直径のスポットから発生するX線源を確立し、画像における空間分解能を向上させることができる。このX線点源は、円錐形状に拡散する。これらのX線は、サンプル組織を通過して、2D画像化X線検出器によって検出される(1070)。
【0035】
次に、検出器によって取得された減衰データを使用して、標的組織の2D画像を再構築することができる(行為1080)。3DCTスキャンが所望される場合には、前述の技術のいずれかを使用して、標的組織の周囲の、種々の投影角または視野角で、連続的2D画像を取得することができる(例えば、X線放出と検出器との間の照準線に垂直な軸を中心とする種々の角度で、行為1040〜行為1080を繰り返すことができる)。方法1000は、連続X線生成、または任意の所望のタイミングシーケンスに従ったパルスX線生成のいずれかを使用して実行できることを理解されたい。
【0036】
一部の実施形態によれば、ピンホールを、スリット(または任意の他のコリメータ)に置き換えることができる。結果として得られるX線放出は、細いファンビームの形態を取る。X線ビームから検出器までの照準線に垂直な軸を中心として、組織を回転させ、3DCT画像を作り出すことができる。次に、近接する組織の別の3DCT画像を得るために、組織サンプルを前述の垂直軸に沿って移動させることができる。
【0037】
一部の実施形態によれば、造影剤が必要とされない場合がある。単色X線は、広帯域X線よりも高い画像コントラストを作り出すため、より稠密な組織中に選択的に吸収されるエネルギーを有するX線を発生させる蛍光ターゲットを選択することで十分な場合がある。
【0038】
図11は、本発明の一部の実施形態による、上述の単色X線装置を使用する放射線治療の方法を示す、フローチャートである。方法1100を使用して、例えば、癌性腫瘍を処置することができる(例えば、悪性組織に照射して、腫瘍を破壊することによる)。最初に、図10に関連して説明した方法を実行して、標的組織の2Dまたは3DのX線画像を作り出すことができる(例えば、行為1010〜行為1080を実行することができ、所望により行為1040〜行為1080を繰り返すことができる)。この手順は、画像化に適する比較的低い出力でX線管を動作させて、実行することができる。この手順は、治療が開始される直前に実行してもよく、または先行の画像診断の間に発見された腫瘍の位置を確認するための、反復手順として実行してもよい。
【0039】
標的組織を画像化した後、関心領域を位置決めする(例えば、画像化手順を介して、腫瘍が位置決めされる)(行為1185)。X線装置が、関心領域を標的とするように配置構成され(行為1190)、X線管の出力を、画像化に必要な比較的低いレベルを超えて増大させ、関心領域に照射することができる(行為1195)。高エネルギー単色X線の吸収は、腫瘍内に局在する造影剤によって増強される。例えば、造影剤が金を含む場合には、K殻のイオン化エネルギーは、約80keVである。これらの光子の減衰長は約20cmであるため、KX線は診断としての働きをするだけではなく、K放射線が腫瘍内の造影剤中の原子を励起することから、この処置の効果を高めることになる。高Z原子が脱励起する際に発生し、結果として生じるL殻の蛍光放射は、約1cmの短い減衰長を有するため、これらのLX線(Auでは9.7keV)は、組織を破壊する働きをする。腫瘍のサイズに応じて、腫瘍を包囲するための、より大きなピンホールが必要とされる場合があり、または腫瘍を完全に破壊するために、組織(またはX線源)を移動させるか、もしくは回転させることが必要な場合がある。
【0040】
したがって、本発明の様々な態様により、画像化および/または放射線治療に好適な単色放射線を発生させるための、比較的低コストで、比較的小さい占有面積のX線装置が可能になる。そのような装置は、臨床用/医療用の、X線診断/治療用途に関して、現在は入手不可能である。診療所および病院などの医療施設は、広域スペクトル放射線を放出するX線装置を使用して、そのような診断/治療用途を現在実行しているが、これは、画質、患者放射線量、付帯的組織損傷などに関して、多くの欠点を有している。
【0041】
一部の実施形態によれば、従来の、テーブルトップのX線管を使用して、ジルコニウム(Zr)の厚肉ターゲットに照射する。Zrは、蛍光KαX線および蛍光KβX線を、それぞれ15.77keVおよび17.67keVで放出する。これらのX線は、直径0.5mmのピンホールを通過し、次に被験サンプルを通過する。2D画像がX線検出器で作成される。サンプルは、拡散ビームに直交する軸を中心として回転させることができる。これによって、CT画像を得ることができる(図示せず)。この実証実験で使用したサンプルは、ファントム、すなわち生体組織をシミュレートするように製作された複合材料であった。このサンプルは、生体組織内の造影剤を模倣するために、臭化カリウム(KBr)の局所的濃縮を含んでいた。ブロモデオキシウリジン(BudR)の形態の臭素は、この実証実験のための関連選択肢であり、腫瘍細胞内に局在することから、造影剤として一般に使用される。単色ZrX線のエネルギーは、臭素吸収端のエネルギーをかろうじて超えるものであり、結果的に、周囲の材料よりも高効率で吸収される(例えば、図12では、垂直の点線は、それぞれZrKαおよびZrKβのX線の輝線のエネルギーに位置している。これらのエネルギーは、K吸収端のかろうじて上である。Kαの輝線の強度が優位である)。
【0042】
従来のX線管は、図13Aに示すように、厚肉ターゲット広帯域制動放射スペクトルを発生させる。このX線管はロジウム陽極を有し、スペクトル中の2つのピークは、X線管内の電子励起から生じる、ロジウムKαおよびロジウムKβの輝線放射である。図13Bにおけるスペクトルは、広域スペクトル放射線のX線をZrターゲットに照射する場合に、蛍光を介して作り出される、単色のZrKαおよびZrKβのX線を示す。広域スペクトル放射線で作成されたX線画像に関する、画質および総吸収線量を、単色スペクトルで作成された画像と比較する。散乱X線によって示される輝線は、検出器のアーチファクトであって、蛍光ターゲットからの放射線が多色性であることを示すものではなく、この放射線は単色性であることを理解されたい。
【0043】
これらの結果を図14Aおよび図14Bに示す。図14Aの上部分の、X線強度の2D等高線プロット、および図14Bの上部分の、X線強度の3Dプロットは、広帯域スペクトルを使用して作成された。これを達成するために、Zrターゲットをビームラインから取り除き、ピンホール、サンプル、およびX線検出器の組み合わせを、X線管への照準線内に直接配置した。これらの構成要素を、単色X線の測定のために、元の位置に戻した。単色放射線を使用して作成された、X線強度の2D等高線プロットおよびX線強度の3Dプロットを、それぞれ図14Aおよび図14Bの下部分に示す。これらの図は、コントラストが、単色性の画像でより良好であることを明確に実証している。更には、単色放射線を使用すると、サンプルへの吸収線量は1000倍低い。
【0044】
近年のナノバイオテクノロジーの進歩と組み合わせると、このテーブルトップの蛍光技術は、原子物理学の限界点まで単色性である放射X線を、単純かつ効率的に使用するため、その影響は多大なものとなる。初期の検出に関しては、この画像診断技術は、従来方法よりも、低い身体線量で、高い感度および高い特定性を達成することができる。治療に関しては、正常組織への線量もまた、顕著に低減される。こうした全てが、低コストかつ1つにまとめられ、典型的な医院または研究室に適合することができる。
【0045】
本発明の上述の実施形態は、数々の方法のうちのいずれかで実装することができ、本明細書で説明される実施例が限定するものではない。更に、本発明の様々な態様は、単独で、組み合わせて、または前述の実施形態では具体的に論じられていない様々な配置構成で使用することができ、それゆえ、その適用においては、前述の説明に記載されるか、もしくは図面に示された構成要素の詳細および配置構成に限定されない。
【0046】
特許請求の範囲での、特許請求要素を修飾する「第1」、「第2」、「第3」などの序数用語の使用は、それ自体では、1つの特許請求要素の、別の要素に対する、いかなる優先度、序列、または順位を意味することも、あるいは方法の行為が実行される時間的順序を意味することもなく、特定の名称を有する1つの特許請求要素を、同一の名称を有する別の要素(序数用語が使用されていない場合)から区別するための指標として単に使用され、特許請求要素を区別するものである。
【0047】
また、本明細書で使用する表現および用語法は、説明目的のためであって、限定するものとして見なすべきではない。「含む」、「備える」、または「有する」、「含有する」、「伴う」、ならびにそれらの変形の、本明細書での使用は、それ以降に記載する項目、およびその等価物、ならびに追加的項目を包含することを目的とする。
【背景技術】
【0001】
従来の診断的X線撮影および癌治療は、診断および治療の間に、正常組織が不必要に晒される広域のエネルギー範囲にわたってX線を放出する、X線発生装置を使用する。線量を低減し、画像コントラストを改善する試みに特化した設定においては、単色放射線が使用されている。しかしながら、単色放射線を発生させるための従来のシステムは、法外なサイズ、コスト、および/または複雑性のために、臨床用途または商業用途には適さない場合がある。例えば、フィルターとして非効率的なブラッグ結晶を利用するか、または固体ターゲットX線蛍光体を使用して、単色放射線を発生させることは、非常に大きく、高価で、かつ強力な、広帯域シンクロトロン光源を必要とし、これは臨床設定に関しては実用的でないことが立証されている。
【0002】
他の従来技術としては、ポリキャピラリ光学素子を使用して、従来の実験室X線発生装置からのスループットを増大させることが挙げられるが、依然として、単色化するためにはブラッグ結晶が使用される。一部の治療用途では、皮膚への線量を低減するために、高エネルギー線形電子加速器が使用される。しかしながら、エネルギー特異性に対する制御は、間接的かつ最低限である。単一の放射線ビームを使用して、特定のタイプまたは深さの組織を標的にすることは、一般に不可能であり、悪性または良性のいずれかである組織のタイプについて、放射線は無差別である。更には、今日の治療施設の、コスト、インフラスチラクチャ、および人員の要件は高く、社会の医療ニーズの一部さえも満たす可能性は低い。単色ガンマ線源を使用する小線源治療もまた、治療上の利益をもたらし得るが、ガンマ線のエネルギーおよび半減期は物理学の自然法則によって定められているため、放射性核種の適切な選択肢は限定される。
【発明の概要】
【発明の効果】
【0003】
出願人は、広域スペクトル放射線を発生させるための標準的X線管を、蛍光ターゲットと組み合わせて、標的組織の画像化および放射線治療に好適な単色放射線を発生させることができることを理解している。本発明の態様を利用して、医療/臨床目的に好適で、病院などの既存の医療施設での使用に適した、単色放射X線を発生させるための、比較的低コストで、比較的占有面積の少ないX線装置を提供することができる。
【0004】
一部の実施形態は、電子を照射されることに反応して広域スペクトル放射X線を放出する第1ターゲットを含むX線管から、広域スペクトル放射X線を発生させることと、この広域スペクトル放射X線の少なくとも一部を、照射に反応して単色放射X線を放出する材料を含む第2ターゲットに照射するように方向付けることと、単色放射X線の少なくとも一部を、標的組織に照射するように方向付けることとを含む、単色放射線を発生させる方法を含む。
【0005】
一部の実施形態は、電子を発生させることが可能な電子源と、電子源からの電子を受け取るように配置構成され、電子を照射されることに反応して広域スペクトル放射X線を放出する材料を含む、少なくとも1つの第1ターゲットと、この広域スペクトル放射X線の少なくとも一部を受け取るように配置構成され、第1ターゲットからの広域スペクトル放射X線による照射に反応する材料を含む、少なくとも1つの第2ターゲットと、この少なくとも1つの第2ターゲットから放出される単色放射X線の少なくとも一部を検出するように配置される、少なくとも1つの検出器とを含む、X線装置を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】従来のX線管の概略図である。
【図2】電子(原子核よりも遙かに軽い)が原子核に非常に接近し、電磁相互作用によって軌跡の偏位が引き起こされ、電子がエネルギーを失い、X線光子が放出されるシナリオを示し、制動放射を最も単純な形態で説明する。
【図3】ターゲットから逃れようとする低エネルギーX線が吸収されて、低エネルギーでのスペクトルの特徴的なロールオーバーを引き起こす、典型的なX線管によって作り出される制動放射スペクトルを示す。
【図4】特徴的な輝線放射を発生させる物理現象を示す。
【図5】厚肉ターゲット制動放射および特徴的なモリブデン輝線放射を示す、モリブデン陽極を備えるX線管からの結合スペクトルを示す。
【図6A】光電効果を示す。
【図6B】K殻からのX線蛍光の原理を示す。
【図7】銅の陽極を備えるX線管によって発生した銅X線を、アルミニウム(Al)のターゲットに照射することによって作られた、X線蛍光スペクトルを示す。
【図8】ジルコニウムに関する、X線エネルギーの関数としての吸収係数を示し、不連続な急上昇または稜線は、ジルコニウム中の電子の結合エネルギーをかろうじて超えたところで、吸収が強化される様子を示す。
【図9】本発明の一部の実施形態による、単色X線システムを示す。
【図10】本発明の一部の実施形態による、選択された造影剤に同調された上述の単色X線装置を使用する画像化の方法を示す、フローチャートである。
【図11】本発明の一部の実施形態による、上述の単色X線装置を使用する放射線治療の方法を示す、フローチャートである。
【図12】臭化カリウム(KBr)に関する質量吸収係数を示す。
【図13A】ロジウム陽極を備える従来のX線管によって発生する厚肉ターゲット制動放射スペクトルを示す。
【図13B】図13Aの広帯域スペクトルを使用して、X線蛍光によって作り出される、ZrKαX線およびZrKβX線を示す。
【図14A】制動放射スペクトルを使用するKBrファントムの2−D等高線プロット(上)、および本発明の実施形態による、単色のZrKX線を使用するKBrファントムの2−D等高線プロットを、それぞれ示す。
【図14B】制動放射スペクトルを使用するKBrファントムのX線強度の3−Dプロット(上)、および本発明の一部の実施形態による、単色のZrKX線を使用するKBrファントムのX線強度の3−Dプロットを、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
上述のように、診断画像を作り出し、かつ/または放射線治療を実施するために、単色放射線を発生させることが可能な従来のX線システムは、そのようなシステムの製造、操作、および維持の、法外な高コスト、ならびに/あるいは臨床使用のためには遙かに大きすぎるシステム占有面積のために、臨床的および/または商業的な使用に関して、一般に好適ではない。結果として、そのような従来のシステムは、大きく、複雑で、高価な設備に投資している、比較的少数の研究施設での、それらの研究施設による調査への適用に限定される。病院および診療所などの医療施設は、診断/治療目的のための臨床設定で採用可能な単色X線機器に関しては、実行可能な選択肢を欠いたままである。
【0008】
出願人は、癌性腫瘍を効率的に診断して処置することができる、調整可能な単色放射X線を作り出すための、単純で、低コストの、テーブルトップの方法および装置を開発した。一部の実施形態によれば、広域のエネルギー範囲にわたってX線を発生させる従来のX線管を使用して、固体ターゲットに照射すると、次に固体ターゲットが、単色蛍光X線を放出する。この蛍光ターゲットは、単一の元素から作製してもよく、またはいくつかの元素の複合体であってもよい。これらの蛍光X線のエネルギーは、ターゲット材料の元素組成に固有のものである。単一元素から作製されるターゲットは、その蛍光X線のエネルギーが、癌性腫瘍などの特定の組織部位に送達されている造影剤中の主要元素の吸収端をかろうじて超えるように、選択することができる。
【0009】
この意味で、ターゲットからの蛍光X線の放出は、造影剤の吸収特性に同調される。すなわち、蛍光ターゲットは、造影剤に適合する材料を含む。造影剤は、臭素、ヨウ素、ガドリニウム、銀、金、プラチナ、35を超える原子番号を有する他の元素のうちの、任意の1つまたは組み合わせなどの、任意の好適な造影剤、あるいは任意の他の好適な造影剤とすることができる。造影剤は、X線造影剤、磁気共鳴造影剤、放射性薬剤、放射線治療剤、甲状腺関連剤、防腐剤、消毒剤、去痰剤、抗アメーバ剤、抗ウイルス剤、抗不整脈剤、抗新生物剤などの、造影剤のクラスのうちの少なくとも1つに属し得る。
【0010】
このような技術は、周囲組織と比較した造影剤中のX線吸収を強化し、これによって画像コントラストを改善するばかりではなく、診断放射線量を3桁分までも低下させる。一部の実施形態によれば、造影剤の吸収端の上下のエネルギーを有する蛍光X線を放出する、多元素ターゲットを選択することができる。吸収端の上下で同時に得られる吸収の差異によって、画像コントラストを更に改善することができる。従来のX線管の出力を、治療用途のために増大させることによって、本明細書に記載される標的能力技術は、腫瘍部位または造影剤が配置されるあらゆる場所での吸収効率を増大させ、一方で他の場所での放射線曝露を最小限に抑える。
【0011】
一部の実施形態によれば、入射電子ビームに反応して広域スペクトル放射線を作り出すターゲットの後に、入射広域スペクトル放射線に反応して単色放射X線を作り出す蛍光ターゲットを、少なくとも部分的に、連続させて組み合わせることによって、単色X線デバイスが提供される。用語「広域スペクトル放射線」は、陽極材料の特徴的な輝線の有無に関わらず、制動放射線を説明するために本明細書で使用される。そのようなデバイスの動作原理を、以下で更に詳細に説明する。
【0012】
厚肉ターゲット制動放射
【0013】
図1に概略的に示すように、X線管内で、電子は、陰極と呼ばれる加熱フィラメントから解放され、陽極と呼ばれる金属ターゲットに向かって、高電圧(例えば、〜50kV)によって加速される。この高エネルギー電子は、陽極内の原子と相互作用する。多くの場合、エネルギーE1を有する電子は、ターゲット内の原子核に接近し、その軌跡は、電磁相互作用によって変更される。この偏向のプロセスで、電子は原子核に向かって減速する。電子は、エネルギーE2まで減速する際に、エネルギーE2−E1を有するX線光子を放出する。この放射線は制動放射線と呼ばれ、その運動学を図2に示す。
【0014】
放出された光子のエネルギーは、入射電子の最大エネルギーEmaxまでの、いずれかの値を取り得る。電子は破壊されないため、電子は、そのエネルギーの全てを失うか、または陽極内の原子と結合するまで、複数の相互作用を受けることができる。初期の相互作用は、小さなエネルギー変化から大きなエネルギー変化まで、原子核への実際の角度および近接性に応じて様々である。結果として、制動放射線は、図3に示すように、概して連続的なスペクトルを有することになる。制動放射生成の確率は、Z2に比例し、ここでZは、ターゲット材料の原子番号であり、生成の効率は、ZおよびX線管の電圧に比例する。低エネルギーの制動放射X線は、以下で更に詳細に説明するように、内部深くから逃れようとする際に厚肉ターゲットの陽極によって吸収され、最低エネルギーでの強度曲線の折れ曲がりを引き起こすことに留意されたい。
【0015】
特徴的な輝線放射
【0016】
殆どの電子が減速し、その軌跡が変更される一方で、一部は、標的原子内の原子核を取り囲む、対応する軌道すなわち殻内に、エネルギーBEによって束縛されている電子と衝突する。図4に示すように、これらの殻は、K、L、M、Nなどによって示される。入来電子と束縛電子との衝突において、入来電子のエネルギーが、軌道周回電子のBEよりも大きい場合には、束縛電子は原子から排除される。例えば、図4に示すエネルギーE>BEkを有する衝撃電子は、K殻の電子を排除して、K殻内には空孔が残される。結果として生じる、励起してイオン化した原子は、外側の軌道内の電子が空孔を満たすと、脱励起する。この脱励起の間に、脱励起に関与する電子の最初のエネルギー準位と最終のエネルギー準位との差異に等しいエネルギーを有して、X線が放出される。軌道となる殻のエネルギー準位は、周期表上の各元素に固有であるため、このX線のエネルギーによって、元素が識別される。このエネルギーは単一性であり、スペクトルは広域連続帯ではなく、単色で表れる。ここで、単色とは、輝線のエネルギーの幅が、関与する原子遷移に伴う自然の輝線幅に等しいことを意味する。銅KαX線に関しては、自然の輝線幅は約4eVである。ZrKα、MoKα、およびPtKαに関しては、輝線幅はそれぞれ、約5.7eV、約6.8eV、約60eVである。陽極としてモリブデンターゲットを備えるX線管からの完全スペクトルを、図5に示す。モリブデンの原子エネルギー準位に固有の、特徴的な輝線が、厚肉ターゲット制動放射の上に重ね合わさって示されている。
【0017】
X線吸収およびX線蛍光
【0018】
X線管からのX線が、サンプルに打ち当たると、X線は、原子によって吸収されるか、または材料を通過して散乱するかのいずれかであり得る。X線が、図6Aで示すように、そのエネルギーの全てを最も内側の電子に転移させることによって原子に吸収されるプロセスは、光電効果と呼ばれる。これは、入射X線が、衝突の際に遭遇する軌道電子の束縛エネルギーよりも大きいエネルギーを有する場合に発生する。この相互作用では、光子は、そのエネルギーの全てを軌道電子に付与して、存在が消滅する。X線のエネルギーの殆どが、軌道電子の束縛エネルギーに打ち克つために必要とされ、残余のエネルギーは、電子を排除した上でその電子に付与され、殻内には空孔が残される。排除された自由電子は、光電子と呼ばれる。光電相互作用は、入射光子のエネルギーが、打ち当たる電子の束縛エネルギーを超過するものの、比較的その束縛エネルギーに近い場合に、最も発生しやすい。例として、光電相互作用は、23.2keVの束縛エネルギーを有するK殻の電子に関しては、入射光子が50keVである場合よりも、25keVである場合に、より発生しやすい。これは、光電効果が、X線のエネルギーのほぼ3乗に反比例するためである。
【0019】
原子の内側殻内の空孔は、その原子に関して不安定条件を提示する。原子が安定条件に戻る際に、外側の殻からの電子が内側の殻に転移し、このプロセスで、上記の「特徴的な輝線放射」のセクションで説明したように、対応する殻の2つの束縛エネルギー間の差異であるエネルギーを有する、特徴的なX線を放出する。この光子誘導のX線放出プロセスは、X線蛍光、またはXRFと呼ばれる。図6Bは、K殻からのX線蛍光を概略的に示し、アルミニウムのサンプルからの典型的なX線蛍光スペクトルを、図7に示す。特徴的なX線は、最初の空孔が生じた殻を示すKで標識される。更に、アルファ(α)およびベータ(β)を使用して、より高位の殻からの電子の遷移によって生じるX線を識別する。それゆえ、KαX線は、L殻からK殻への電子の遷移によって作り出され、KβX線は、M殻からK殻への電子の遷移によって作り出され、以下同様である。これらの単一エネルギー性の輝線は、広帯域の連続的放射線のバックグラウンドの上に存在するものではなく、むしろ、そのスペクトルは、制動放射を含んでいないという点に留意することが重要である。上述のように、X線管は、厚肉ターゲット制動放射、および陽極内の銅からの特徴的なX線を作り出す。しかし、X線管からの結合スペクトルの放出を使用して、アルミニウムのサンプルに照射する場合、X線蛍光を介して、単一エネルギー性の輝線、すなわちAlKαおよびAlKβのみが作り出される。
【0020】
上述のように、所定の吸収元素に関するX線吸収の確率は、入射光子のエネルギーの増大と共に低下する。しかしながら、この減少は、X線のエネルギーが、吸収体内の電子殻(K、L、Mなど)の束縛エネルギーに等しい場合の、急激な上昇によって中断される。これは、特定の殻内に空孔を生み出すことが可能な最低のエネルギーであって、端と称される。図8は、X線のエネルギーの関数としてのジルコニウムの吸収を示す。この吸収は、その質量減衰係数によって、縦座標軸上に定義される。L軌道およびK軌道の束縛エネルギーに対応する吸収端は、それぞれ約2.3keVおよび約18keVでの不連続な急上昇によって示される。周期表上のあらゆる元素は、X線のエネルギーの関数としての、その元素の吸収を説明する、同様の曲線を有する。
【0021】
以下は、本発明による方法および装置に関する、様々な概念ならびにそれらの実施形態の、より詳細な説明である。本明細書で説明する本発明の様々な態様を、数々の方法のうちのいずれかで実装し得ることを理解されたい。具体的な実装の実施例は、例示的な目的のみのために本明細書で提供される。更には、以下の実施形態で説明する本発明の様々な態様は、単独で、または任意の組み合わせで使用することができ、本明細書で明示的に説明する組み合わせに限定されるものではない。
【0022】
図9は、本発明の一部の実施形態による、単色X線を発生させるためのX線装置の概略図を示す。X線管1は、フィラメント(b)(陰極として動作する)を電圧(c)(典型的には5〜6ボルト)でオーム加熱することにより、フィラメントが電子(d)を放出することによって、厚肉ターゲット制動放射線を発生させる。この電子は、フィラメント(典型的には、ゼロ電位、すなわち接地電位である)に対する陽極の高電圧バイアス(f)のために、陽極(e)に向かって加速される。電子は、陽極によって減速される際に、図3に示すように制動放射線を発生させ、また多大な量のオーム出力が、陽極によって熱の形態で放散される。この熱は、陽極材料から真空エンクロージャーの外部に伝導させることができる。陽極材料に固有の特徴的な輝線もまた、電圧電位が十分に大きければ、陽極材料の電子衝撃によって作り出すことができる。この放射X線は、X線を高効率で透過させることができる真空気密のウィンドウ(g)(例えば、ベリリウム)を通過して、真空エンクロージャーから射出される。
【0023】
X線管1は、広域スペクトル放射線を発生させるための、標準的なX線管であってもよいことを理解されたい。例えば、このX線管は、医療用途で現行使用されている従来のX線管と類似のもの、または同じものとすることができる。したがって、本明細書で説明するX線装置の実施形態の一部は、比較的低コストの、テーブルトップの解決案として製造することが可能である。結果として、そのようなX線装置は、以下で更に詳細に説明するように、単色X線の診断用途および/または治療用途を実行するための、病院などの医療施設による、広範な採用に適するものとすることができる。
【0024】
X線管から放出されたX線ビーム2を、ターゲットへ入射するX線に反応して、ターゲット内の元素に特有の単色X線を作り出す、蛍光ターゲット3に照射する。この単色X線4は、拡散してコリメータ(例えば、ピンホールまたはスリット5)を通過し、サンプル6(例えば、以下で更に詳細に説明するような、画像化されるかまたは処置される標的組織)を通過する。他の構成要素を使用して、X線をコリメートし、ペンシルビーム、ファンビーム、または任意の他の形状のビームを形成してもよく、本発明の態様は、この点において限定されない。X線管、蛍光ターゲット、およびコリメータは、本明細書では、単色X線源と総称される。透過したX線は、X線検出器7によって検出され、サンプルの画像を作り出す。
【0025】
例えば、単色X線は、サンプルの2D断面を貫通し、最終的に断面の2D画像(「スライス」)を作り出すことができる。3D画像が所望される場合には、サンプルをステージ8上で回転させながら、連続的に2D画像を取得することができる。回転が完了すると、3DCT画像が再構築される。あるいは、X線源をサンプルの周囲で回転させて、サンプルの3D画像を得てもよい。他のメカニズムを使用して、X線源とサンプルとの相対的回転を作動させ、多数の投影角からのX線減衰データを得ることができ、本発明の態様は、この点において限定されない。一部の構成では、減衰データを得るために、X線源と協調させて検出器を回転させることが必要となることを理解されたい。
【0026】
出願人は、蛍光ターゲットによって発生する単色線のエネルギーよりも大きいエネルギーを有する特徴的な輝線を発生させる材料を、X線管内の陽極のために選択することが有益であることを理解している。これは、蛍光ターゲットからのX線の収率を向上させるが、本発明の実施形態についての要件ではない。スリットまたはピンホールの視界がサンプル全体を包囲し得ない一部の実施形態によれば、サンプルを、X線ビームから検出器までの照準線とは垂直の方向に移動させて、前述の画像化手順を繰り返すことができる。
【0027】
一部の実施形態によれば、1つ以上のX線レンズを使用して、より効率的に、陽極から放出される広域スペクトル放射X線を収集し、蛍光ターゲット上の比較的小さいスポット上に放射線を集束させることができる。例えば、ガラスキャピラリ光学素子を、陽極と蛍光ターゲットとの間に配置して、放射X線を収集し、集束させることができる。1つ以上のレンズを使用することで、蛍光ターゲットとサンプルとの間の、ピンホールまたは他のコリメータに対する必要性を取り除くことができる。この光学素子は、X線管によって放出されるX線を、より大量に収集するため、X線管の出力を低減することができる。X線管の出力の低減によって、この装置を、水冷式ではなく空冷式とすることが可能になり、このX線装置の複雑性およびコストを更に低減することができる。1つ以上のレンズは、単独で、または陽極と蛍光ターゲットとの間に配置構成した光学素子と組み合わせて、蛍光ターゲットとサンプルとの間に配置し、単色X線を集束させ得ることを理解されたい。
【0028】
一部の実施形態によれば、図9のX線装置は、パルス単色放射X線を発生させることが可能である。パルス放射X線は、結果として得られる画像内の、放射線曝露の間の人間被験者の動きによるモーションアーチファクトの低減および/または除去に有利な場合がある。例えば、連続X線放射を使用して、鼓動する心臓を画像化することは、心周期の間の異なる時間において、心臓は異なる位置/構成状態にあるため、結果として得られる画像内に、ぶれを生じさせる恐れがある。X線源をパルス化することにより、心周期の間のほぼ同時点で画像化が実行されるようにX線放射を心周期に同期させて、動きのぶれを低減させ、かつ/または除去することができる。そのような技術を使用して、心周期の任意の部分を画像化し得ることを理解されたい。更には、被験者の呼吸が、同様のモーションアーチファクトを生じさせる場合があり、既定の曝露スケジュールに従ってX線源をパルス化することによって、被験者の呼吸によって生じる動きを相殺することができる(例えば、呼吸周期のほぼ同時点の間に、画像化を実行することができる)。放射線のパルス化は、被験者の動きの他の原因と同期させてもよく、本発明の態様は、この点において限定されないことを理解されたい。
【0029】
一部の実施形態によれば、X線のパルス化は、X線管の内部で実行される。例えば、タイミング回路を実装して、陰極(例えば、フィラメント)から陽極(ターゲット)までの電子流を発生させる回路を、電子的に開閉することができる。このタイミング回路は、任意の所望のタイミングシーケンスに従って回路を開閉するように構成することができる。例えば、タイミング回路は、プログラムされたタイミングシーケンスに従って回路を開閉するクロックを有するマイクロコンピュータを使用して、制御することができ、このマイクロコンピュータは、任意の所望のタイミングシーケンス、または任意数の所望のタイミングシーケンスに従って、パルス放射X線を発生させるようにプログラムすることができる。
【0030】
一部の実施形態によれば、X線のパルス化は、放射X線自体に対して実行される。例えば、第1ターゲットから放出される広域スペクトル放射線、および/または蛍光ターゲットから放出される単色放射線のいずれかを、交互に遮断し、通過させるように、チョッパー(例えば、回転チョッパー)を配置して、所望のタイミングシーケンスに従った、パルス放射を達成することができる。2重のチョッパーを実装して、広域スペクトル放射線および単色放射線の双方を、交互に遮断し、通過させて、所望のタイミングシーケンス、または任意数の所望のタイミングシーケンスで、パルス放射を達成することができる。パルス放射X線を発生させる他の方法を使用してもよく、本発明の態様は、この点において限定されないことを理解されたい。電子ビームを電子的にパルス化するための技術を、放射X線を遮断/通過させるための技術と組み合わせてもよく、本発明の態様は、パルス放射線を発生させるための技術の、いずれのタイプまたは組み合わせでの使用に関しては、限定されないことを理解されたい。
【0031】
従来は、上述のような単色X線装置は、満足な画像を生成することは不可能であり、かつ/または放射線治療の実行には適さないと考えられていた。出願人は、以下で更に詳細に論じるように、そのような装置を、診断目的および治療目的のために使用することの予期せぬ有効性を、理解し、実証している。一部の実施形態によれば、本明細書で説明するX線装置を使用して、標的組織を画像化する。一部の実施形態によれば、この画像化された組織を使用して、生物学的異常(例えば、腫瘍)を検出することができ、かつ/または処置のために生物学的異常を位置決めすることができる。一部の実施形態によれば、本明細書で説明するX線装置を増大した出力レベルで使用して、位置決めされた生物学的異常を処置する(例えば、先行の画像化手順の間に位置決めされた標的組織を破壊する)。そのような技術の実施例を、以下で更に詳細に説明する。
【0032】
図10は、本発明の一部の実施形態による、選択された造影剤に同調された上述の単色X線装置を使用して、標的組織を画像化する方法を示す、フローチャートである。方法1000は、所望により2Dおよび3Dで画像化するために使用することができる。行為1010では、被験組織内に注入するための造影剤を選択する。次に造影剤中の主要元素を識別し、造影剤の主要元素における吸収端エネルギーよりもかろうじて高いエネルギーを有する単色X線を発生させる蛍光ターゲット材料を選択することができる(行為1020、1030)。方法1000は、造影剤と関連付けて説明されるが、本方法は造影剤を使用することなく実行できることを理解されたい。そのような状況では、蛍光ターゲットは、任意の好適なエネルギー準位で単色放射線を発生させる材料を含み得る。
【0033】
蛍光ターゲットから放出される特徴的なX線のエネルギーは、原子番号と共に増大する。したがって、造影剤を使用している場合、蛍光ターゲットは、造影剤の吸収端エネルギーを超える特徴的なX線を発生させる、周期表内の元素を含むように選択することができる。例えば、所定の造影剤中の主要元素がヨウ素(原子番号53を有する)である場合、ヨウ素のK吸収端のエネルギーは、33.24keVである。33.24keVよりも大きい特徴的なX線エネルギーを有する、周期表内の次の元素は、原子番号57を有するランタンである。ランタンのKX線は、ヨウ素の吸収端より0.16keV上回る、33.4keVのエネルギーを有する。造影剤中の主要元素の吸収端を超えるエネルギーを有するX線を作り出す、周期表内の次の元素を選択することが有効であり得るが、そのような元素が、あらゆる造影剤に関して実用的であるという可能性はない。したがって、造影剤を使用する場合、造影剤の主要元素の吸収端を超えるX線を作り出す任意の元素を使用することができ、本発明の態様は、この点において限定されない。
【0034】
広域スペクトル放射線を作り出す従来のX線管を使用して、蛍光ターゲットに照射することができる(行為1040)。例えば、X線管内の陰極と陽極との間の高電圧を、所望の蛍光X線のエネルギーの、少なくとも3〜5倍のエネルギーを有する広域スペクトル放射線を作り出す値に調節することができる。一部の実施形態では、この広域スペクトル放射線は、制動放射線に加えて、陽極材料からの特徴的な輝線放射を含む。入射広域スペクトル放射線に反応して、単色X線が、蛍光ターゲットから発生する(行為1050)。この単色X線は、標的組織に照射するように方向付けることができる(行為1060)。蛍光ターゲット上のスポットのサイズは、通常は直径が数ミリメートルであるため、ピンホールを使用して、より小直径のスポットから発生するX線源を確立し、画像における空間分解能を向上させることができる。このX線点源は、円錐形状に拡散する。これらのX線は、サンプル組織を通過して、2D画像化X線検出器によって検出される(1070)。
【0035】
次に、検出器によって取得された減衰データを使用して、標的組織の2D画像を再構築することができる(行為1080)。3DCTスキャンが所望される場合には、前述の技術のいずれかを使用して、標的組織の周囲の、種々の投影角または視野角で、連続的2D画像を取得することができる(例えば、X線放出と検出器との間の照準線に垂直な軸を中心とする種々の角度で、行為1040〜行為1080を繰り返すことができる)。方法1000は、連続X線生成、または任意の所望のタイミングシーケンスに従ったパルスX線生成のいずれかを使用して実行できることを理解されたい。
【0036】
一部の実施形態によれば、ピンホールを、スリット(または任意の他のコリメータ)に置き換えることができる。結果として得られるX線放出は、細いファンビームの形態を取る。X線ビームから検出器までの照準線に垂直な軸を中心として、組織を回転させ、3DCT画像を作り出すことができる。次に、近接する組織の別の3DCT画像を得るために、組織サンプルを前述の垂直軸に沿って移動させることができる。
【0037】
一部の実施形態によれば、造影剤が必要とされない場合がある。単色X線は、広帯域X線よりも高い画像コントラストを作り出すため、より稠密な組織中に選択的に吸収されるエネルギーを有するX線を発生させる蛍光ターゲットを選択することで十分な場合がある。
【0038】
図11は、本発明の一部の実施形態による、上述の単色X線装置を使用する放射線治療の方法を示す、フローチャートである。方法1100を使用して、例えば、癌性腫瘍を処置することができる(例えば、悪性組織に照射して、腫瘍を破壊することによる)。最初に、図10に関連して説明した方法を実行して、標的組織の2Dまたは3DのX線画像を作り出すことができる(例えば、行為1010〜行為1080を実行することができ、所望により行為1040〜行為1080を繰り返すことができる)。この手順は、画像化に適する比較的低い出力でX線管を動作させて、実行することができる。この手順は、治療が開始される直前に実行してもよく、または先行の画像診断の間に発見された腫瘍の位置を確認するための、反復手順として実行してもよい。
【0039】
標的組織を画像化した後、関心領域を位置決めする(例えば、画像化手順を介して、腫瘍が位置決めされる)(行為1185)。X線装置が、関心領域を標的とするように配置構成され(行為1190)、X線管の出力を、画像化に必要な比較的低いレベルを超えて増大させ、関心領域に照射することができる(行為1195)。高エネルギー単色X線の吸収は、腫瘍内に局在する造影剤によって増強される。例えば、造影剤が金を含む場合には、K殻のイオン化エネルギーは、約80keVである。これらの光子の減衰長は約20cmであるため、KX線は診断としての働きをするだけではなく、K放射線が腫瘍内の造影剤中の原子を励起することから、この処置の効果を高めることになる。高Z原子が脱励起する際に発生し、結果として生じるL殻の蛍光放射は、約1cmの短い減衰長を有するため、これらのLX線(Auでは9.7keV)は、組織を破壊する働きをする。腫瘍のサイズに応じて、腫瘍を包囲するための、より大きなピンホールが必要とされる場合があり、または腫瘍を完全に破壊するために、組織(またはX線源)を移動させるか、もしくは回転させることが必要な場合がある。
【0040】
したがって、本発明の様々な態様により、画像化および/または放射線治療に好適な単色放射線を発生させるための、比較的低コストで、比較的小さい占有面積のX線装置が可能になる。そのような装置は、臨床用/医療用の、X線診断/治療用途に関して、現在は入手不可能である。診療所および病院などの医療施設は、広域スペクトル放射線を放出するX線装置を使用して、そのような診断/治療用途を現在実行しているが、これは、画質、患者放射線量、付帯的組織損傷などに関して、多くの欠点を有している。
【0041】
一部の実施形態によれば、従来の、テーブルトップのX線管を使用して、ジルコニウム(Zr)の厚肉ターゲットに照射する。Zrは、蛍光KαX線および蛍光KβX線を、それぞれ15.77keVおよび17.67keVで放出する。これらのX線は、直径0.5mmのピンホールを通過し、次に被験サンプルを通過する。2D画像がX線検出器で作成される。サンプルは、拡散ビームに直交する軸を中心として回転させることができる。これによって、CT画像を得ることができる(図示せず)。この実証実験で使用したサンプルは、ファントム、すなわち生体組織をシミュレートするように製作された複合材料であった。このサンプルは、生体組織内の造影剤を模倣するために、臭化カリウム(KBr)の局所的濃縮を含んでいた。ブロモデオキシウリジン(BudR)の形態の臭素は、この実証実験のための関連選択肢であり、腫瘍細胞内に局在することから、造影剤として一般に使用される。単色ZrX線のエネルギーは、臭素吸収端のエネルギーをかろうじて超えるものであり、結果的に、周囲の材料よりも高効率で吸収される(例えば、図12では、垂直の点線は、それぞれZrKαおよびZrKβのX線の輝線のエネルギーに位置している。これらのエネルギーは、K吸収端のかろうじて上である。Kαの輝線の強度が優位である)。
【0042】
従来のX線管は、図13Aに示すように、厚肉ターゲット広帯域制動放射スペクトルを発生させる。このX線管はロジウム陽極を有し、スペクトル中の2つのピークは、X線管内の電子励起から生じる、ロジウムKαおよびロジウムKβの輝線放射である。図13Bにおけるスペクトルは、広域スペクトル放射線のX線をZrターゲットに照射する場合に、蛍光を介して作り出される、単色のZrKαおよびZrKβのX線を示す。広域スペクトル放射線で作成されたX線画像に関する、画質および総吸収線量を、単色スペクトルで作成された画像と比較する。散乱X線によって示される輝線は、検出器のアーチファクトであって、蛍光ターゲットからの放射線が多色性であることを示すものではなく、この放射線は単色性であることを理解されたい。
【0043】
これらの結果を図14Aおよび図14Bに示す。図14Aの上部分の、X線強度の2D等高線プロット、および図14Bの上部分の、X線強度の3Dプロットは、広帯域スペクトルを使用して作成された。これを達成するために、Zrターゲットをビームラインから取り除き、ピンホール、サンプル、およびX線検出器の組み合わせを、X線管への照準線内に直接配置した。これらの構成要素を、単色X線の測定のために、元の位置に戻した。単色放射線を使用して作成された、X線強度の2D等高線プロットおよびX線強度の3Dプロットを、それぞれ図14Aおよび図14Bの下部分に示す。これらの図は、コントラストが、単色性の画像でより良好であることを明確に実証している。更には、単色放射線を使用すると、サンプルへの吸収線量は1000倍低い。
【0044】
近年のナノバイオテクノロジーの進歩と組み合わせると、このテーブルトップの蛍光技術は、原子物理学の限界点まで単色性である放射X線を、単純かつ効率的に使用するため、その影響は多大なものとなる。初期の検出に関しては、この画像診断技術は、従来方法よりも、低い身体線量で、高い感度および高い特定性を達成することができる。治療に関しては、正常組織への線量もまた、顕著に低減される。こうした全てが、低コストかつ1つにまとめられ、典型的な医院または研究室に適合することができる。
【0045】
本発明の上述の実施形態は、数々の方法のうちのいずれかで実装することができ、本明細書で説明される実施例が限定するものではない。更に、本発明の様々な態様は、単独で、組み合わせて、または前述の実施形態では具体的に論じられていない様々な配置構成で使用することができ、それゆえ、その適用においては、前述の説明に記載されるか、もしくは図面に示された構成要素の詳細および配置構成に限定されない。
【0046】
特許請求の範囲での、特許請求要素を修飾する「第1」、「第2」、「第3」などの序数用語の使用は、それ自体では、1つの特許請求要素の、別の要素に対する、いかなる優先度、序列、または順位を意味することも、あるいは方法の行為が実行される時間的順序を意味することもなく、特定の名称を有する1つの特許請求要素を、同一の名称を有する別の要素(序数用語が使用されていない場合)から区別するための指標として単に使用され、特許請求要素を区別するものである。
【0047】
また、本明細書で使用する表現および用語法は、説明目的のためであって、限定するものとして見なすべきではない。「含む」、「備える」、または「有する」、「含有する」、「伴う」、ならびにそれらの変形の、本明細書での使用は、それ以降に記載する項目、およびその等価物、ならびに追加的項目を包含することを目的とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ターゲットを含むX線管から、広域スペクトル放射X線を発生させることであって、前記第1ターゲットが、電子を照射されることに反応して前記広域スペクトル放射X線を放出することと、
前記広域スペクトル放射X線の少なくとも一部を、第2ターゲットに照射するように方向付けることであって、前記第2ターゲットが、前記照射に反応して単色放射X線を放出する材料を含むことと、
前記単色放射X線の少なくとも一部を、標的組織に照射するように方向付けることと、
を含む、単色放射線を発生させる方法。
【請求項2】
前記第2ターゲットが、前記標的組織に送達される造影剤に関連する原子の電子殻の束縛エネルギー準位を超えるエネルギー準位で、単色放射X線を放出する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的組織に送達される前記造影剤が、臭素、ヨウ素、ガドリニウム、銀、金、および/またはプラチナを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記造影剤が、X線造影剤、磁気共鳴造影剤、放射性薬剤、放射線治療剤、甲状腺関連剤、防腐剤、消毒剤、去痰剤、抗アメーバ剤、抗ウイルス剤、抗不整脈剤、および抗新生物剤からなる群のうちの少なくとも1つに属する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記単色放射X線が、選択されたタイミングシーケンスに従ってパルス化される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記放出される単色放射X線が、前記造影剤に関連するK端、L端、および/またはM端を超えるエネルギーを含むように、前記第2ターゲットが選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記標的組織を通って透過した前記単色放射X線の少なくとも一部を検出することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記検出された単色放射X線に少なくとも部分的に基づいて、少なくとも1つの画像を生成し、前記少なくとも1つの画像内に関心領域を位置決めすることを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記X線管の出力レベルを増大させて、前記単色放射X線を、前記関心領域に相当する前記標的組織の範囲内の位置に照射するように方向付けることを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記X線管が、前記標的組織の少なくとも一部を破壊するための十分な出力レベルで操作される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記X線管が、テーブルトップサイズの構成要素である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
電子を発生させることが可能な電子源と、
前記電子源からの電子を受け取るように配置構成される少なくとも1つの第1ターゲットであって、前記少なくとも1つの第1ターゲットは、前記電子を照射されることに反応して広域スペクトル放射X線を放出する材料を含むことと、
前記広域スペクトル放射X線の少なくとも一部を受け取るように配置構成される少なくとも1つの第2ターゲットであって、前記少なくとも1つの第2ターゲットは、前記第1ターゲットからの広域スペクトル放射X線による照射に反応して単色放射X線を放出する材料を含むことと、
前記少なくとも1つの第2ターゲットから放出される前記単色放射X線の少なくとも一部を検出するように配置される、少なくとも1つの検出器と、
を含む、X線装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの第2ターゲットが、前記標的組織に送達される造影剤に関連する原子の電子殻の束縛エネルギー準位を超えるエネルギー準位で、単色放射X線を放出する、請求項12に記載のX線装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの第2ターゲットが、複数個の第2ターゲットを含み、前記複数個の第2ターゲットのそれぞれが、広域スペクトル放射線による照射に反応して、対応する異なった造影剤の電子殻の束縛エネルギー準位を超えるエネルギー準位で、単色放射X線を放出する材料を含む、請求項13に記載のX線装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つの第2ターゲットが、第1蛍光ターゲットおよび第2蛍光ターゲットを含み、前記第1蛍光ターゲットが、広域スペクトル放射線による照射に反応して、造影剤に関連する吸収端を超えるエネルギー準位で、単色放射X線を放出する材料を含み、前記第2蛍光ターゲットが、広域スペクトル放射線による照射に反応して、造影剤に関連する吸収端よりも低いエネルギー準位で、単色放射X線を放出する材料を含む、請求項12に記載のX線装置。
【請求項16】
前記電子源および前記少なくとも1つの第1ターゲットが、テーブルトップサイズの占有面積を有するX線管内に収容される、請求項12に記載のX線装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つの第1ターゲットと前記少なくとも1つの第2ターゲットとの間に配置構成され、前記少なくとも1つの第2ターゲットに対する前記広域スペクトル放射X線を収集して集束させる、少なくとも1つのX線光学構成要素を更に含む、請求項12に記載のX線装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの第2ターゲットと前記標的組織との間に配置構成され、前記単色放射X線を収集して集束させる、少なくとも1つのX線光学構成要素を更に含む、請求項12に記載のX線装置。
【請求項19】
前記X線装置が画像化に使用されているか、または放射線治療に使用されているかに応じて、前記X線装置の前記出力レベルを変動させることが可能な、出力制御装置を更に含む、請求項12に記載のX線装置。
【請求項20】
前記単色放射X線を、選択されたタイミングシーケンスに従ってパルス化させるように構成された、少なくとも1つの構成要素を更に含む、請求項13に記載のX線装置。
【請求項1】
第1ターゲットを含むX線管から、広域スペクトル放射X線を発生させることであって、前記第1ターゲットが、電子を照射されることに反応して前記広域スペクトル放射X線を放出することと、
前記広域スペクトル放射X線の少なくとも一部を、第2ターゲットに照射するように方向付けることであって、前記第2ターゲットが、前記照射に反応して単色放射X線を放出する材料を含むことと、
前記単色放射X線の少なくとも一部を、標的組織に照射するように方向付けることと、
を含む、単色放射線を発生させる方法。
【請求項2】
前記第2ターゲットが、前記標的組織に送達される造影剤に関連する原子の電子殻の束縛エネルギー準位を超えるエネルギー準位で、単色放射X線を放出する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的組織に送達される前記造影剤が、臭素、ヨウ素、ガドリニウム、銀、金、および/またはプラチナを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記造影剤が、X線造影剤、磁気共鳴造影剤、放射性薬剤、放射線治療剤、甲状腺関連剤、防腐剤、消毒剤、去痰剤、抗アメーバ剤、抗ウイルス剤、抗不整脈剤、および抗新生物剤からなる群のうちの少なくとも1つに属する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記単色放射X線が、選択されたタイミングシーケンスに従ってパルス化される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記放出される単色放射X線が、前記造影剤に関連するK端、L端、および/またはM端を超えるエネルギーを含むように、前記第2ターゲットが選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記標的組織を通って透過した前記単色放射X線の少なくとも一部を検出することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記検出された単色放射X線に少なくとも部分的に基づいて、少なくとも1つの画像を生成し、前記少なくとも1つの画像内に関心領域を位置決めすることを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記X線管の出力レベルを増大させて、前記単色放射X線を、前記関心領域に相当する前記標的組織の範囲内の位置に照射するように方向付けることを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記X線管が、前記標的組織の少なくとも一部を破壊するための十分な出力レベルで操作される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記X線管が、テーブルトップサイズの構成要素である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
電子を発生させることが可能な電子源と、
前記電子源からの電子を受け取るように配置構成される少なくとも1つの第1ターゲットであって、前記少なくとも1つの第1ターゲットは、前記電子を照射されることに反応して広域スペクトル放射X線を放出する材料を含むことと、
前記広域スペクトル放射X線の少なくとも一部を受け取るように配置構成される少なくとも1つの第2ターゲットであって、前記少なくとも1つの第2ターゲットは、前記第1ターゲットからの広域スペクトル放射X線による照射に反応して単色放射X線を放出する材料を含むことと、
前記少なくとも1つの第2ターゲットから放出される前記単色放射X線の少なくとも一部を検出するように配置される、少なくとも1つの検出器と、
を含む、X線装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの第2ターゲットが、前記標的組織に送達される造影剤に関連する原子の電子殻の束縛エネルギー準位を超えるエネルギー準位で、単色放射X線を放出する、請求項12に記載のX線装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの第2ターゲットが、複数個の第2ターゲットを含み、前記複数個の第2ターゲットのそれぞれが、広域スペクトル放射線による照射に反応して、対応する異なった造影剤の電子殻の束縛エネルギー準位を超えるエネルギー準位で、単色放射X線を放出する材料を含む、請求項13に記載のX線装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つの第2ターゲットが、第1蛍光ターゲットおよび第2蛍光ターゲットを含み、前記第1蛍光ターゲットが、広域スペクトル放射線による照射に反応して、造影剤に関連する吸収端を超えるエネルギー準位で、単色放射X線を放出する材料を含み、前記第2蛍光ターゲットが、広域スペクトル放射線による照射に反応して、造影剤に関連する吸収端よりも低いエネルギー準位で、単色放射X線を放出する材料を含む、請求項12に記載のX線装置。
【請求項16】
前記電子源および前記少なくとも1つの第1ターゲットが、テーブルトップサイズの占有面積を有するX線管内に収容される、請求項12に記載のX線装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つの第1ターゲットと前記少なくとも1つの第2ターゲットとの間に配置構成され、前記少なくとも1つの第2ターゲットに対する前記広域スペクトル放射X線を収集して集束させる、少なくとも1つのX線光学構成要素を更に含む、請求項12に記載のX線装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの第2ターゲットと前記標的組織との間に配置構成され、前記単色放射X線を収集して集束させる、少なくとも1つのX線光学構成要素を更に含む、請求項12に記載のX線装置。
【請求項19】
前記X線装置が画像化に使用されているか、または放射線治療に使用されているかに応じて、前記X線装置の前記出力レベルを変動させることが可能な、出力制御装置を更に含む、請求項12に記載のX線装置。
【請求項20】
前記単色放射X線を、選択されたタイミングシーケンスに従ってパルス化させるように構成された、少なくとも1つの構成要素を更に含む、請求項13に記載のX線装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【公表番号】特表2012−524374(P2012−524374A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505892(P2012−505892)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/001142
【国際公開番号】WO2010/120377
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511250574)
【氏名又は名称原語表記】SILVER,Eric,H.
【住所又は居所原語表記】59 Maple Street,Needham,MA 02492 U.S.A.
【出願人】(511250585)
【氏名又は名称原語表記】AUSTIN,Gerald
【住所又は居所原語表記】10 Temple Street,Reading,MA 01867 U.S.A.
【出願人】(511250596)
【氏名又は名称原語表記】CALDWELL,David
【住所又は居所原語表記】195 River Street,Norwell,MA 02061 U.S.A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/001142
【国際公開番号】WO2010/120377
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511250574)
【氏名又は名称原語表記】SILVER,Eric,H.
【住所又は居所原語表記】59 Maple Street,Needham,MA 02492 U.S.A.
【出願人】(511250585)
【氏名又は名称原語表記】AUSTIN,Gerald
【住所又は居所原語表記】10 Temple Street,Reading,MA 01867 U.S.A.
【出願人】(511250596)
【氏名又は名称原語表記】CALDWELL,David
【住所又は居所原語表記】195 River Street,Norwell,MA 02061 U.S.A.
【Fターム(参考)】
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