説明

単量体に結合特異性がある結合体の反復鎖と多数単量体の複合体内での架橋結合の生成増加を通じた二量体及び多量体の生産方法

本発明は、単量体に結合特異性のある結合体が反復して連結している反復鎖を作製し、それを用いて反復鎖と多くの単量体からなる反復鎖−複数の単量体複合体を作り、複合体内で単量体間の架橋結合の形成を容易にすることで、多数の単量体が架橋結合で連結された多量体の生産方法に関するものである。より詳細には、本発明はタンパク質単量体に結合特異性を有する結合タンパク質が反復して連結している反復鎖組換えタンパク質を作製してそれを用いて反復鎖と多くの単量体による反復鎖−複数の単量体複合体を作り、複合体内で単量体間の架橋結合の形成を容易にすることで、多数の単量体が架橋結合で連結された多量体の生産方法に関するものである。より詳細には、本発明はタンパク質単量体に結合特異性を有する結合タンパク質が反復して連結している反復鎖組換えタンパク質を作製してそれを用いて反復鎖と多くの単量体による反復鎖−複数の単量体複合体を作って、複合体内で単量体間のジスルフィド結合架橋の形成を容易にすることで、多数の単量体がジスルフィド結合架橋で連結された多量体の生産方法に関するものである。より詳細には、連鎖球菌タンパク質GのドメインIII(Fab結合ドメイン)が反復して連結する組換え反復鎖タンパク質を骨格に用いて抗体タンパク質の単量体から反復鎖とその複数の単量体複合体を作り、複合体内で単量体間のジスルフィド結合架橋の形成を容易にすることで、多数の単量体がジスルフィド結合架橋で連結された二量体及び多量体を生産する方法に関するものである。本発明の方法は、既知のリフォールディング(refolding)方法に比べてジスルフィド結合架橋二量体の収率を最大200倍向上させることから、ジスルフィド結合架橋二量体を大量生産するのに有用に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単量体から二量体及び多量体を高い収率で生産する方法に関するものである。そのために、結合特異性がある結合体の反復鎖を用いて反復鎖−複数の単量体複合体を生産して、複合体内の単量体間の架橋結合形成が容易であることを利用して多量体を生産するものである。これは結合体の反復鎖を骨格に用いて反復鎖−複数の単量体複合体の形成を最大化して形成された反復鎖−複数の単量体複合体からジスルフィド結合架橋の生成を高めて、二量体及び多量体を大量生産する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抗体−毒素(Antibody-toxin)は、癌細胞に特異的に結合する抗体に毒素を結合させることで合成される(非特許文献1)。
【0003】
モノクローナル抗体(MAb)B3は、大腸癌、胃癌、卵巣癌、乳癌及び肺癌などの表面で過発現される炭水化物抗原(Le)に結合する(非特許文献2、3)。PE38は、シュードモナス外毒素(PE)の誘導体の一つである(非特許文献4、5)。
【0004】
抗体の抗原結合部位を含む断片としてFabは、Fd鎖(V及びCH1)ならびに軽鎖(V及びC)を含む。Fab抗体−毒素は、Fd鎖(V及びCH1)ならびに軽鎖(V及びC)を含む。Fab−毒素は、一本鎖Fv(scFv)−毒素に比べて二つの利点を有する。第一に、Fab−毒素の収率がscFv−毒素に比べて10倍高い(非特許文献6、7)。第二に、マウス血漿でFab−毒素の安定性が改善する(非特許文献8)。
【0005】
ジスルフィド結合された二価のFab−毒素二量体は、一価のscFv−毒素に比べて高い細胞毒性を有することが報告されている(非特許文献9、10、11)。ジスルフィド結合された二量体は、単量体であるFab−毒素のFabドメインとPE38との間に位置するシステイン(Cys)残基のジスルフィド結合を通じて製造される。
【0006】
二量体の抗体−毒素は、単量体の抗体−毒素に比べて様々な利点を有することが期待される。例えば、二量体の二つの抗原結合ドメインは、結合を増加させて高い複合度(avidity)を有するようにする。また、二価の二量体抗体−毒素は、標的細胞に同時に二つの毒素ドメインを運搬して、一価の単量体抗体−毒素に比べて高い細胞毒性によって標的細胞を死滅させることが可能である。同時に、Fab−毒素は、組換え抗体−毒素の生産のために度々利用されるscFv−毒素に比べて高い安定性を有する(非特許文献12)。
【0007】
B3(Fab)−ext−PE38がジスルフィド結合した二量体の[B3(Fab)−ext−PE38]は、モノクローナル抗体B3のFabドメインをシュードモナス外毒素A(Pseudomonas Aexotoxin A)誘導体であるPE38を結合させて製造することができ(特許文献1)、[B3(Fab)−ext−PE38]は、B3(Fab)−ext−PE38に比べて胃癌細胞株であるCRL−1739細胞株に対して約11倍高い細胞毒性を有することが報告されている(非特許文献10)。
【0008】
従来は、ジスルフィド結合された二量体をリフォールディング後に精製した(非特許文献9、10、11)。従来報告された、ジスルフィド結合された二量体のリフォールディング工程(refolding process)は、0.014%〜0.25%収率を増加させた。前記リフォールディング工程の間、ジスルフィド結合された二量体は2個の単量体の抗体−毒素のFabドメインとPE38との間の部位に位置するシステイン残基の無作為的接近によって形成された。前記リフォールディング工程がジスルフィド結合された二量体の収率を増加させるにもかかわらず、リフォールディング反応の主要産物である単量体のFab−毒素の収率が約10%に達する点に鑑みると、二量体の収率は非常に低かった。単量体である抗体−毒素が自らの間で自己結合親和性(self-binding-affinity)がないことから、架橋結合二量体はリフォールディング反応で単量体抗体−毒素のシステイン残基相互間の無作為的な衝突によって生成されるものである。ゆえに、リフォールディング過程中に生成される二量体の非常に低い収率は、システイン残基相互間の衝突頻度(collision frequency)が非常に低く、前記リフォールディング工程で単量体内のシステイン間の接近によるジスルフィド結合架橋の形成が容易でないことに起因する。
【0009】
したがって、今まで本発明者らは還元及び酸化、及び化学的架橋剤(chemical cross-linker)を使用して単量体である抗体−毒素からジスルフィド結合された二量体の生産を含む、ジスルフィド結合された二量体の多様な生産方法を試みたが、単純に還元、酸化、及び化学的架橋剤の方法を用いて二量体収率を向上させることはできなかった。
【0010】
そこで、本発明者らは単量体B3(Fab)−ext−PE38がジスルフィド結合された二量体[B3(Fab)−ext−PE38]をより多く生産するための方法を模索していたところ、連鎖球菌タンパク質G(Streptococcal protein G)のFab結合ドメインが2回以上反復される反復鎖組換えタンパク質を作製して、これを骨格(scaffold)として用いて複数の単量体抗体−毒素が同時に結合する複合体を作製した。タンパク質Gの三番目のドメイン(ドメインIII)は、IgGのFab断片に結合することができ、Fab断片のCH1ドメインはタンパク質Gのドメインに高い親和度で結合することができることが報告されている(非特許文献13)。前記リフォールディング工程に比べて本発明の前記反復鎖は、下記の利点を有している。前記反復鎖を構成するドメインは、単量体抗体−毒素に対して高い親和度で結合する。反復鎖を用いて生成された反復鎖−複数の単量体複合体内の単量体抗体−毒素の局所濃度(local concentration)を高めることができた。これは、単量体抗体−毒素のシステイン残基の接近頻度を高めて単量体間のジスルフィド結合を促進させることができ、その結果、ジスルフィド結合架橋二量体の大量生産を可能にした。このような効果の代表的な例としては、酵素反応速度論で説明する接近効果(proximity effect)により酵素反応の速度が顕著に増加することがある(非特許文献14)。したがって、前記反復鎖を単量体抗体−毒素と単純に混合することで複合体を手軽に製造することができ、前記複合体内単量体抗体−毒素のシステイン残基を還元及び酸化させることで、FabドメインとPE38間システイン残基のジスルフィド結合を促進して[B3(Fab)−ext−PE38]を大量生産することができることを確認して本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国登録特許第10−0566091号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Pastan I.ら,Annu Rev Med.2007年,第58巻,p.221−237
【非特許文献2】L.H.Paiら,Proc Natl Acad Sci USA,1991年,第88巻,p.3358−3362
【非特許文献3】I.Pastanら,Cancer Res.1991年,第51巻,p.3781−3787
【非特許文献4】J.Hwangら,Cell.1987年,第48巻,p.129−136
【非特許文献5】V.K.Chaudharyら,J Biol Chem,1990年,第265巻,p.16306−16310
【非特許文献6】J.Buchnerら,Biotechnology(NY).1991年,第9巻,p.157−162
【非特許文献7】J.Buchnerら,Biotechnology,1992年,第10巻,p.682−685
【非特許文献8】M.Choeら,Cancer Res.1994年,第54巻,p.3460−3467
【非特許文献9】S.H.Choiら,Bull.Kor.Chem.Soc.2001年,第22巻,p.1361−1365
【非特許文献10】J.H.Parkら,Mol Cells,2001年,第12巻,p.398−402
【非特許文献11】M.H.Yooら,J.Microbiol.Biotechnol.2006年,第16巻,p.1097−1103
【非特許文献12】D.Rothlisbergerら,J Mol Biol,2005年,第347巻,p.773−789
【非特許文献13】J.P.ら,Nature,1992年,第359巻,p.752−754
【非特許文献14】Nicholas C.PriceおよびLewis Stevens.Fundamentals of Enzymology,3rd Ed.Oxford University Press
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、単量体間に架橋結合を用いて単量体から多量体を大量生産することによって、単量体に対して結合特異性を有する結合体の反復鎖を骨格(scaffold)として用いて、単量体と結合させて、前記単量体の反復鎖−複数の単量体複合体を大量生産して生産された反復鎖−複数の単量体複合体を構成する単量体間に架橋結合を形成して、既存の架橋結合多量体生産方法に比べて単量体の鎖内相手がいないシステイン残基の接近頻度を高めることによって、架橋結合の形成を促進して前記単量体の多量体の生産を最大化する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために本発明は、
1)単量体に特異的に結合する結合体の反復鎖を製造する工程、
2)前記工程1)の反復鎖及び単量体を混合して、前記反復鎖と単量体との反復鎖−複数の単量体複合体を製造する工程、及び
3)前記工程2)の反復鎖−複数の単量体複合体内の単量体間に架橋結合を形成した多量体を分離する工程を含む、
架橋結合多量体の生産方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の生産方法を用いた例として、抗体−毒素をジスルフィド結合架橋で連結した二量体を生産した時、既存の報告されたリフォールディング(refolding)方法に比べて単量体抗体−毒素のジスルフィド結合架橋二量体の収率を約208倍増加させることで、二量体の生産量を最大化させることができた。本発明によって生産された二量体は、既に報告された単量体抗体−毒素に比べて高い抗原結合力、毒性及び安定性を有し、特に胃癌細胞株に対して約11倍高い細胞毒性を有することが知られており、これを大量生産することによって抗癌治療剤の開発に有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の架橋結合を用いた多量体生産方法の概要を示した図である。
【図2】図2は、本発明で精製されたタンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲルで確認した結果を示した図である。 図2Aは、タンパク質Gの反復鎖組換えタンパク質を還元SDS−試料緩衝溶液と混合した後、還元16%SDS−ポリアクリルアミドゲルで確認した結果であり、1番から7番はそれぞれTR1〜TR7タンパク質である。そして図2Bは、本発明で生産した抗体−毒素であるB3(Fab)−ext−PE38(M)及び[B3(Fab)−ext−PE38](D)を非還元8%SDS−ポリアクリルアミドゲルで確認した結果であり、矢印は上からそれぞれ[B3(Fab)−ext−PE38]、B3(Fab)−ext−PE38及びB3(Fd)−ext−PE38を示す(H6−B3(L)は、小分子量(約25kDa)を有するので図面に表示されなかった)。
【図3】図3は、B3(Fab)−ext−PE38とTR1〜TR7タンパク質との複合体から[B3(Fab)−ext−PE38]の形成をSDS−ポリアクリルアミドゲルで確認した結果を示した図である。 図3Aは、タンパク質試料(各10g)を金属キレートアガロースビーズに結合させて(1)40mM 2−メルカプトエタノールで30分間室温で還元した後(2)、タンパク質複合体をGSSGから酸化された5mMグルタチオンで2時間37℃で酸化した後(3)、各試料の1/2を非還元8%SDS−ポリアクリルアミドゲルを使用して分離した結果である(矢印は、上からそれぞれ[B3(Fab)−ext−PE38]、B3(Fab)−ext−PE38及びB3(Fd)−ext−PE38を示す)。そして、図3Bは、各試料の残り1/2を還元12%SDS−ポリアクリルアミドゲルを使用して分離した結果である(矢印は、B3(Fab)−ext−PE38に結合したTRタンパク質を示し、TR1タンパク質(分子量8kDa)は分離するにあたりサイズが小さすぎるため図面に表示されなかった)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明は、架橋結合によって形成された多量体の大量生産を目的とし、単量体に対して結合特異性を有する結合体の反復鎖を骨格(scaffold)として用いて、単量体と反復鎖との複合体を作製すると、複合体を構成する単量体の局所濃度(local concentration)を高めることによって単量体間の衝突頻度を高め、これにより架橋結合の生成を促進させて、架橋結合多量体の収率を向上させる方法を提供する。
【0019】
多数の単量体を架橋結合で連結させて多量体を作る過程は、架橋結合の形成がどの程度効率的であるかによって多量体の生産量が決定される。生体内で用いようとする物質の場合、多量体を形成する架橋結合は共有結合であれば生体内で単量体に分解されないで多量体の安定性を維持することができる。このような共有結合性架橋結合を形成するためには、共有結合を形成することができる化学的官能基間の接触がなければならないが、タンパク質のような巨大分子においてこのような化学的官能基は、タンパク質分子全体の大きさに比べて非常に小さな大きさである。したがって、巨大タンパク質分子が反応溶液において自由に動いている場合、非常に小さな部分である化学的官能基が互いに接触する確率は非常に小さく、かかる官能基が接触する確率を画期的に高める方法なしには効率的な多量体の生産が難しい。
【0020】
本発明は、このような生成効率が低い単量体間の架橋結合の形成を画期的に高めるために単量体に結合性がある結合体の反復鎖を作り、そこに単量体を結合させて単量体間の距離を数ナノメートル〜数十または数百ナノメートルサイズの分子サイズの水準になるようにすることで、単量体が溶液で自由に運動しながら接触するのとは異なり、限定された空間に固定されて分子サイズ程度の空間で動いて相互に接触するようにする。このような条件で、多数の単量体が付いている単一の反復鎖では、単量体の局地的濃度が非常に高い状態になり、一緒に付いている単量体間の接触頻度は非常に高くなって、それによって架橋結合を形成することができる化学的官能基間の接触も増加して、多量体の形成を画期的に増加させることができる。
【0021】
本発明が適用され得る対象は、単にタンパク質単量体とジスルフィド共有結合性架橋結合にのみ限られないで、有機化合物、生物分子、タンパク質などの単量体とアミド結合、エステル結合、グリコシド結合、エーテル結合などの共有結合にも適用されることは明白である。共有結合性架橋結合は、多量体の安定性を最も高める架橋結合であるが、この架橋結合は必ずしも共有結合に限られるものではない。すなわち、イオン結合などの架橋結合で多量体を形成する場合にも、本発明の思想が適用され得る。また、単量体間の架橋を形成するために、架橋鎖を入れて単量体−架橋鎖−単量体の形態で多量体を形成する場合にも、その多量体の形成効率を増加させるために本発明の思想を適用することができる(Greg T. Hermanson, Bioconjugate Techniques. Academic Press, Inc.,1995年、 Wong S.S., Chemistry of Protein Conjugation and Cross-Linking.CRC Press,Inc.,1991年)。
【0022】
具体的に、本発明による方法は、下記の工程を含む方法で行なわれることが好ましいが、これに限定されない:
1)単量体に特異的に結合する結合体の反復鎖を製造する工程、
2)前記工程1)の反復鎖及び単量体を混合して、前記反復鎖と単量体との反復鎖−複数の単量体複合体を製造する工程、及び
3)前記工程2)の反復鎖−複数の単量体複合体内の単量体間に架橋結合を形成した多量体を分離する工程。
【0023】
前記方法において、工程1)の単量体と単量体に特異的に結合する結合体はタンパク質から由来したものが好ましいが、これに限定されない。すなわち、前記単量体と結合体には、それら相互間に結合特異性を有するすべての分子を用いることができる。例えば、タンパク質とそれに特異的に結合する小さな有機化合物は、それぞれ単量体及びそれに対する結合特異性結合体として本発明の方法によって使用することができる。
【0024】
前記方法において、工程1)の結合特異性結合体の反復鎖を作製するにあたり、互いに異なる結合特異性結合体を有する反復鎖の作製が可能である。これを通じてそれぞれの結合体に特異的に結合する互いに異なる単量体間の異種二量体(heterodimer)及び異種多量体(heteromultimer)の作製が可能である。
【0025】
前記方法において、工程1)のタンパク質単量体及びその結合特異性タンパク質は、タンパク質の生来型(native form)に由来したものが好ましいが、これに限定されない。すなわち、組換え型の単量体も結合特異性を有する相手があれば本発明の方法によって架橋結合多量体生産に使用することができる。前記のタンパク質の遺伝情報をコードするDNA断片は、そのタンパク質を発現する生物体の染色体DNAまたはmRNAから順方向及び逆方向プライマー対を用いてPCRを通じてクローニングして製造することがより好ましいが、これに限定されない。
【0026】
前記方法において、工程3)の架橋結合はタンパク質単量体とジスルフィド共有結合性架橋結合だけでなく、有機化合物、生物分子またはタンパク質の単量体とアミド結合、エステル結合、グリコシド結合またはエーテル結合の共有結合も含まれる。共有結合性架橋結合が多量体の安定性を最も高める架橋結合であるが、前記架橋結合は共有結合にのみ限定されるのではなく、イオン結合によっても多量体が形成され得る。
【0027】
前記方法において、工程1)の反復鎖は、下記の工程を含む製造方法で製造することが好ましいが、これに限定されない。
1)結合特異性結合体タンパク質及びその間を連結するリンカーをコードするDNA断片を発現ベクターに反復してクローニングし、結合体タンパク質が反復するコンストラクトを製造する工程、
2)前記工程1)のコンストラクトを宿主細胞に形質転換させて形質転換体を製造する工程、及び
3)前記工程2)の形質転換体を培養した後、発現した反復鎖をクロマトグラフィーで分離及び精製する工程。
【0028】
前記コンストラクトは、反復鎖内の結合体タンパク質が3回以上反復された構造を有することが好ましいが、これに限定されない。
【0029】
前記コンストラクトは、結合体タンパク質がリンカー(linker)を通じて連結されていて、前記G4Sリンカーとしては、GGGGSを使用することができるが、これに限定されず、前記リンカーはさらに延長されてGGGGSGGGGSまたはGGGGSGGGGSGGGGSであり得るが、これに限定されない。前記G4Sリンカーは、非常に柔軟性を有する構造である(R.Araiら,Protein Eng,2001年,第14巻,p.529-532)。
【0030】
本発明では、結合体タンパク質及びリンカーをコードするDNA断片をNdeIとEcoRIで切断した後、前記のような酵素で切断したpCW1のベクター部位にクローニングしてプラスミド(plasmid)pTR1を製造した。また、結合体タンパク質及びG4SをコードするDNA断片をNdeIとBspEIで切断して、前記結合体タンパク質DNA断片、及び前記ドメイン間のリンカーとして一つのG4Sをコードする226bpのポリヌクレオチド断片を作製して、それを、pTR1をNdeIとAgeIで切断して得られたプラスミドの部位にクローニングして、プラスミドpTR2を製造した。前記のようなクローニング方法を7回まで反復して結合体タンパク質が7回反復するコンストラクトを有するプラスミドpTR7を製造した(表1参照)。前記プラスミドをE.coli BL21(DE3)に形質転換して過発現させた後、キレート化セファロース・ファスト・フロー・クロマトグラフィー(chelating sepharose fast flow chromatography)及びサイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)を用いて分離及び精製した。
【0031】
前記方法において、工程2)の単量体は前記の結合体タンパク質に特異的に結合する部位(結合ドメイン(B)(binding sequence))を有する。
【0032】
前記方法において、工程2)の反復鎖−複数の単量体複合体の形成において、互いに異なる結合特異性結合体の反復鎖を用いれば、それぞれの結合体に特異的に結合する互いに異なる単量体間の異種二量体(heterodimer)及び異種多量体(heteromultimer)の作製が可能である。
【0033】
前記方法において、工程2)の単量体複合体から架橋結合多量体の作製のために鎖内マッチレスシステイン(matchless-cysteine)を含むことが好ましいが、これに限定しない。すなわち、単量体間の架橋結合に使用し得る方法としては、前記の鎖内マッチレスシステイン間のジスルフィド結合架橋以外の汎用に使用される多様な種類の化学的架橋剤(chemical cross-linker)を使用することができる。単量体がシステインを含む場合、一つの鎖内マッチレスシステインを含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0034】
前記方法において、工程2)の単量体は、前記の単量体と機能性タンパク質が延長鎖(extension sequence, Ext)によって連結されて新しい単量体として使用することができる。
【0035】
前記方法において、機能性タンパク質は、酵素、毒素官能基タンパク質、ウイルスなどの生体、化合物、薬物活性のための薬物化合物、リポソーム、バイオセンサー、プロドラッグなどのような官能基(functional group)がすべて可能である。
【0036】
前記延長鎖(Ext)は、単量体から延長されて機能性タンパク質につながって、単量体と機能性タンパク質を融合させて、前記延長鎖(Ext)には鎖内マッチレスシステインが含まれ得、二つの単量体間の鎖内マッチレスシステインの酸化によってジスルフィド結合架橋が形成されることで二量体が成り立ち、またこの延長鎖(Ext)にはジスルフィド結合架橋で二量体を成すようにする鎖内マッチレスシステイン中の最後のシステインと異種官能基(F)間の柔軟なアミノ酸配列(Flx, flexible sequence)が含まれ、この柔軟鎖(Flx)はバルキー(bulky)ではないアミノ酸であるGASQEND(グリシン、アルラニン、セリン、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン、アスパラギン酸)を含む柔軟なアミノ酸配列からなることが好ましいが、これに限定されない。
【0037】
前記方法において、工程2)の混合は、前記単量体とを混合した後、3〜5℃で一晩中培養した後、35〜40℃で1〜2時間培養することが好ましく、4℃で一晩中培養した後、37℃で1時間培養することがさらに好ましいが、これに限定されない。
【0038】
前記方法において、工程3)の固定は前記単量体が骨格である反復鎖に結合したタンパク質複合体を金属キレート化セファロースビーズ(metal chelating sepharose bead)に固定させることが好ましいが、これに限定されない。ビーズに固定する場合、10℃で1時間固定することが好ましいが、これに限定されない。
【0039】
前記方法において、工程3)の架橋結合の形成において互いに異なる結合特異性を有する結合体の反復鎖によって形成された異種複数の単量体複合体内の互いに異なる単量体間の架橋結合を形成させることで、架橋結合異種多量体の作製が可能である。
【0040】
前記方法において、工程3)の架橋結合の形成は、既存に存在する多様な方法によって可能である(Greg T. Hermanson,Bioconjugate Techniques. Academic Press, Inc., 1995; Wong S.S., Chemistry of Protein Conjugation and Cross-Linking. CRC Press, Inc., 1991.)。ジスルフィド結合架橋を使用する場合、鎖内マッチレスシステインの官能基はまず還元されなければならないが、ここで還元は前記タンパク質複合体を2−メルカプトエタノールを含む還元緩衝溶液に添加して行なうことが好ましいが、これに限定されない。すなわち、前記還元において、単量体のシステイン残基の完全な還元のための2−メルカプトエタノールの添加量が、20〜40mMであることが好ましいが、これに限定されない。
【0041】
前記方法において、工程3)の架橋結合の形成においてジスルフィド結合架橋を用いる場合、各単量体の還元されたシステイン残基の酸化によってジスルフィド結合架橋による多量体が生産される。単量体間の酸化は、還元されたタンパク質複合体をグルタチオン酸化形態(GSSG)を含む酸化緩衝溶液に添加して行なうことが好ましいが、これに限定されない。
【0042】
本発明では、タンパク質複合体を室温で2−メルカプトエタノールを添加したTrisHCl(pH8.2)を添加して還元させることが好ましいが、これに限定されない。前記還元されたタンパク質複合体をMOPS(pH6.5)が含まれた洗浄緩衝溶液で1回洗浄することが好ましいが、これに限定されない。TrisHCl(pH8.2)で3回さらに洗浄した後、GSSG及びTrisHCl(pH8.2)を含んだ酸化緩衝溶液を添加して酸化反応させた後、37℃で2時間培養した。前記方法において培養温度と時間は、37℃と2時間が好ましいが、これに限定されない。
【0043】
前記方法において、工程3)の架橋結合多量体の分離は、SDS−PAGEを用いて行なうことが好ましいが、これに限定されず、一般的なタンパク質の分離及び精製のために使用される方法はすべて使用可能である。
【0044】
前記方法において、工程3)の多量体は単量体のジスルフィド結合二量体であることが好ましいが、これに限定されない。融合タンパク質分子形態の単量体は、「結合ドメイン−延長鎖(Ext)−機能性タンパク質」の形態で作られたもので、前記の延長鎖は、鎖内マッチレスシステインを含む場合に結合ドメイン−延長鎖(Ext)−機能性タンパク質構造の鎖内マッチレスシステインによって二つの分子の結合ドメイン−延長鎖(Ext)−機能性タンパク質間にジスルフィド結合架橋が作られることによって、[結合ドメイン−延長鎖(Ext)−機能性タンパク質]の形態で成り立ったものである。
【0045】
本発明者らは、発明を完成するために、単量体の結合ドメインとして抗体のタンパク質断片のFabを有する抗体−毒素、および結合特異性結合体タンパク質として連鎖球菌(Streptococcus)タンパク質GのFab結合ドメインを使用した。単量体としては、抗体−毒素の形態以外に抗体の断片であるFabを含む抗体分子(抗体分子単量体)が、すべて使用可能である。単量体間のジスルフィド結合架橋二量体([抗体分子単量体])の生産量を最大にするため、連鎖球菌タンパク質GのFab結合ドメインが2回以上反復する反復鎖組換えタンパク質をそれぞれ製造し、それを[抗体分子単量体]を製造するための骨格に使用した。具体的には、前記反復鎖に抗体分子単量体タンパク質を混合して一つの組換えタンパク質にいくつかの抗体分子単量体が非共有結合された反復鎖−抗体分子単量体複合体を製造した後、抗体分子単量体内システイン残基を還元及び酸化してFab断片と毒素との間にシステイン残基のジスルフィド結合を形成させることによって[抗体分子単量体]を製造した。
【0046】
本発明者らは、前記方法による[抗体分子単量体]の生産水準を既存のリフォールディング方法による生産水準と比較するため、SDS−PAGEで分離した後、密度分析を通じて[抗体分子単量体]の収率を分析した結果、本発明の方法による[抗体分子単量体]の収率が、既存に報告されたリフォールディングによる収率に比べて顕著に高かった。すなわち、[抗体分子単量体]の収率は、連鎖球菌タンパク質GのFab結合ドメインが2回以上反復する組換えタンパク質に結合された総抗体分子単量体の約36〜52%の範囲であり、これは既に報告されたリフォールディング収率に比べて約144〜208倍高い数値であることが分かった。
【0047】
結論としては、タンパク質GのFab結合ドメインの反復鎖を使用して結合された抗体分子単量体のジスルフィド結合架橋二量体を形成することができ、前記反復鎖の使用を通じて[抗体分子単量体]の生産を顕著に増加させることが分かる。タンパク質GのFab結合ドメインの反復鎖及び抗体分子単量体の結合特異性を用いれば、簡単に還元及び酸化によって[抗体分子単量体]を効率的に大量生産することができることが分かる。
【0048】
また、本発明は、結合特異性がある結合タンパク質反復鎖組換えタンパク質の発現をコードする遺伝子コンストラクトを提供する。
【0049】
本発明では、タンパク質GのドメインIII(Fab結合ドメイン)が反復された組換えタンパク質をコードする遺伝子コンストラクトを製造した。
【0050】
前記組換えタンパク質は、2個のFab結合ドメイン間に1つのリンカーであるG4S(GGGGS)を含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0051】
前記組換えタンパク質は、タンパク質GのドメインIII(Fab結合ドメイン)が3〜7回反復された構造であることが好ましいが、これに限定されない。
【0052】
また、本発明は、前記本発明による遺伝子コンストラクトを含む発現ベクターを提供する。
【0053】
前記発現ベクターは、所望する遺伝子にその遺伝子のmRNAへの転写及びタンパク質に翻訳に対する調節情報を有している特定の核酸配列が所望するタンパク質の遺伝子が良く発現してタンパク質の生産が可能になるように、所望の遺伝子に連結されているように有していることが好ましい。
【0054】
同時に、本発明は、前記本発明による発現ベクターを宿主細胞に形質転換させた形質転換体を提供する。
【0055】
前記発現ベクターの宿主細胞への導入は、形質転換(transformation)、トランスフェクション、コンジュゲーション、原形質体融合(protoplast fusion)、電気穿孔法、リン酸カルシウム沈殿、直接顕微注射(direct microinjection)などのいろいろな適切な方法の一つによって適切な宿主細胞内に導入することができる。
【0056】
前記宿主細胞は、原核細胞または真核細胞であり得る。好ましいのは、真核細胞、例えば、CHO細胞のような哺乳動物細胞であり、正確な部位で正確なフォールディングまたはグリコシレーションを含むタンパク質分子に対するタンパク質生成後の変形を提供する細胞であることが好ましいが、これに限定されない。
【0057】
本発明では、連鎖球菌タンパク質GのFab結合ドメインが3〜7回反復される組換えタンパク質を骨格に用いて、抗体分子単量体から[抗体分子単量体]を大量生産することができることを確認した。
【0058】
したがって、本発明の結合特異性結合体の反復鎖は、単量体間の二量体の生産を顕著に増加させるために用いることができ、これをコードする遺伝子コンストラクト、前記遺伝子コンストラクトを含む発現ベクター、及び前記発現ベクターを形質転換させた形質転換体は、抗体分子単量体間の架橋結合多量体の大量生産のために有用に使用することができる。
【0059】
[参考文献]
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31. Niculescu-Davaz, I.ら, Anticancer Drug Des. 1999年, 第14巻, p.517-538
32. SToldt, H.S.ら, Eur. J. Cancer, 1997年, 第33巻, p.186-192
33. Zachariou M., Affinity Chromatography: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology). Humana Press; 2nd edition.
【0060】
発明の実施のための形態
【0061】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。
【0062】
但し、下記の実施例は本発明を具体的に例示するものであり、本発明の内容が実施例によって限定されるのではない。
【0063】
<実施例1>
連鎖球菌タンパク質GのFab結合ドメインの反復鎖コンストラクトの製造
本発明者らは、タンパク質GのドメインIIIを韓国生命工学研究所遺伝子銀行(Korean Collection for Type Cultures, KCTC)から分譲された連鎖球菌(KCTC3098)の染色体DNAからP1[5’−GGGCATATGCATCACCATCACCATCACACCGGTACACCAGCCGTGACAA−3’(配列番号1)]とP2[5’−CCCGAATTCTTATCCGGACCCGCCTCCACCTTCAGTTACCGTAAA−3’(配列番号2)]プライマーを用いて、PCRを通じて直接的にクローニングした。前記PCR産物(243bp)をNdeIとEcoRIで切断した後、前記のような酵素で切断したpCW1のベクター部分にクローニングした。その後、前記ドメインIIIのコード配列をジデオキシDNA配列化によって確認した。各ドメインIII間のG4Sリンカーは、スペーサーで添加した。前記結果物であるプラスミドpTR1を再びNdeIとBspEIで切断した。その後、ドメインIII及び一つのG4Sをコードする225bp断片を、NdeIとAgeIで切断した同一なプラスミドの大きな断片に付けた。前記結果物であるプラスミドであるpTR2をNdeIとAgeIで切断した後、前記切断された大きな断片を226bp断片と付けて、それを「pTR3」とした。前記のようなクローニング方法を使用して、タンパク質GのドメインIIIを(pTR10)10回まで反復して製造した(表1)。以前に報告された方法を用いて、H6−B3(L)をコードするpMC75Hを製造した(韓国登録特許第10−0566091号参照)。
【0064】
【表1】

【0065】
SKPSIST:野生型ヒンジ配列(hinge sequence)の変形された配列(CKPCICT)、
ext,KASGC(GS):システイン残基(Cys residue)を有する延長ペプチド鎖、
:GGGGのアミノ酸配列、
PE38:38kDの切断したシュードモナス外毒素(truncated Pseudomonas Exotoxin)、
(His):6個のヒスチジンタグ(Histidine tag)、及び
DIII:連鎖球菌(Streptococcal)タンパク質GのドメインIII。
【0066】
以前に報告された方法を用いて、前記反復鎖コンストラクトを過発現させた(J.H.Parkら,Mol Cells,2001年,第12巻,p.398-402)。
【0067】
純粋な溶解物をキレート化セファロース・ファスト・フロー・クロマトグラフィー(Amersham Bioscience, Sweden)で分離した後、Hiload Superdex−75pgまたはHiload Superdex200pg(26/60)(Amersham Bioscience, Sweden)を使用してサイズ排除クロマトグラフィーで分離した。すべてのコンストラクトは、純度95%以上になるように精製した(図2のA)。
【0068】
<実施例2>
B3(Fab)−ext−PE38及び[B3(Fab)−ext−PE38]の製造
本発明者らは、B3(Fd)−ext−PE38及びH6−B3(L)の封入体の過発現、製造及びリフォールディングは以前に報告された方法にしたがって行なった(J.H.Parkら, Mol Cells, 2001年, 第12巻,p.398-402)。前記リフォールドされたタンパク質をQ−セファロースFF、Hitrapタンパク質G HP(Hitrap protein G HP)、及びHiload Superdex200pg(26/60)(Amersham Bioscience, Sweden)クロマトグラフィーを用いて精製した。
【0069】
具体的には、B3(Fab)−ext−PE38は、B3(Fd)−ext−PE38及びH6−B3(L)間内部鎖ジスルフィド結合によって製造した。内部鎖ジスルフィド結合に関連した二つのシステイン残基は、B3(Fd)−ext−PE38のCH1ドメイン及びH6−B3(L)のCドメインに位置した。また、[B3(Fab)−ext−PE38]は、リフォールディング過程の間B3(Fab)−ext−PE38内のextに位置する2個のシステイン残基間の内部鎖ジスルフィド結合によって製造した。サイズ排除クロマトグラフィー後、B3(Fab)−ext−PE38及び[B3(Fab)−ext−PE38]の精製は、非還元のSDS−ポリアクリルアミドゲルの密度分析を用いて95%以上に決定した(図2のB)。[B3(Fab)−ext−PE38]のリフォールディング収率は、約0.06%と示された。
【0070】
<実施例3>
タンパク質Gの反復鎖コンストラクト及びB3(Fab)−ext−PE38の結合
本発明者らは、精製されたタンパク質Gの反復鎖コンストラクトとB3(Fab)−ext−PE38間の結合反応を誘導するため、B3(Fab)−ext−PE38(715μg)とTRタンパク質(各28μg)を混合して4℃で一晩中培養した後、37℃で1時間培養した。その後、前記反応混合物をサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex200TMHR)で分離した。溶出したタンパク質複合体をB3(Fab)−ext−PE38単独(Kav=0.33)または、[B3(Fab)−ext−PE38]単独(Kav=0.20)を対照群に用いて比較した。溶出したタンパク質ピークのKav値を[数式1]を用いて計算した。
【0071】
【数1】

【0072】
ここで、Vはピークの溶出体積で、Vはカラムの空いた空間体積(void volume)で、これはブルーデキストラン2000の溶出体積で;Vは、Superdex200カラムの総容積(bed volume)である。
【0073】
TR3に結合されたB3(Fab)−ext−PE38(Kav=0.22)が、B3(Fab)−ext−PE38]の溶離体積に近接した。また、TR2を除くすべての複合体は、同時に少なくとも二つ以上のB3(Fab)−ext−PE38分子に結合した。TR3〜TR6までの複合体は二量体で示され、TR7〜10の複合体は三量体で示された。
【0074】
<実施例4>
タンパク質Gの反復鎖組換えタンパク質とB3(Fab)−ext−PE38が結合した複合体から[B3(Fab)−ext−PE38]の製造
本発明者らは、前記精製されたTR1〜10タンパク質及びそれに結合したB3(Fab)−ext−PE38を用いて[B3(Fab)−ext−PE38]を生産するため、グルタチオン酸化形態(GSSG)で酸化させた後、固定された分子を非還元(図2A)及び還元(図2B)SDS−PAGEによって分離した。
【0075】
具体的には、タンパク質複合体を金属キレート化セファロースビーズに10℃で1時間固定させた。10μlの金属キレート化セファロースビーズ[100mM TrisHCl(pH8.2)に50%懸濁]をそれぞれの反応混合物に添加した後、固定されたタンパク質複合体を室温で40mMの2−メルカプトエタノールを添加した100mM TrisHCl(pH8.2)を添加して還元した。B3(Fab)−ext−PE38のシステイン残基を還元させるために必要な2−メルカプトエタノールの濃度を決定するために行なった予備実験で、B3(Fab)−ext−PE38のシステイン残基の完全な還元は、20〜40mMの2−メルカプトエタノールの添加によって行われた。その後、還元されたタンパク質複合体を100mM MOPS(pH6.5)を含んだ洗浄緩衝溶液で1回洗浄した後、100mM TrisHCl(pH8.2)で3回さらに洗浄した。前記洗浄工程後、タンパク質複合体を5mMのGSSG及び100mMのTrisHCl(pH8.2)を含んだ酸化緩衝溶液に添加して酸化反応させた後、37℃で2時間培養した。前記酸化反応後、2X SDS試料緩衝溶液を添加した後、SDS−PAGE及びクマシー染色で分析した後に、濃度計測機を用いて密度分析を通じて[B3(Fab)−ext−PE38]の収率を分析した。また、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で、[B3(Fab)−ext−PE38]のバンドの強度を[B3(Fab)−ext−PE38]及びB3(Fab)−ext−PE38の強度の合計である総バンド強度で割った値を用いて[B3(Fab)−ext−PE38]の収率を算出した(表2)。B3(Fab)−ext−PE38単独及びTR1に結合されたB3(Fab)−ext−PE38を陰性対照群に使用した。
【0076】
【表2】

【0077】
その結果、[B3(Fab)−ext−PE38]は、B3(Fab)−ext−PE38単独、TR1、及びTR2複合体の3個の試料では検出されなかった。TR3〜TR7複合体の相互作用は、ジスルフィド結合された二量体の相当な生産を示した。TR3〜TR7複合体の試料で[B3(Fab)−ext−PE38]の収率は、それぞれ47%、44%、48%、36%及び52%を示した。[B3(Fab)−ext−PE38]の生産は、酸化剤添加後2時間以内になされ、追加的な培養に対して有意的な増加が示されなかった。これは、TRタンパク質に結合するB3(Fab)−ext−PE38分子のext内のシステイン残基は、反復鎖を通じて近くに近接して一緒に結合したことが分かった。[B3(Fab)−ext−PE38]に相応するバンドが非還元性ゲルで淡いバンドを示した。前記淡いバンドは、B3(Fd)−ext−PE38が還元性ゲルで有意な分解が起きず、B3(Fd)−ext−PE38及びH6−B3(L)間のジスルフィド結合が完璧に形成されない[B3(Fab)−ext−PE38]のまた他の形態であることが分かった。これは、既に報告された精製された抗体の還元性切断の観察によって分かることだった(T.Brodyら, Anal Biochem, 1997年, 第247巻, p.247-256)。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、架橋結合多量体を生産する方法として単量体と親和度を通じて特異的に結合する結合体の反復鎖を用いることによって、反復鎖−複数の単量体複合体の形成を促進させることができ、さらには生成された反復鎖−複数の単量体複合体を架橋結合多量体の形態で作製することができるというものである。これは、既存の架橋結合多量体生産方法と比較して顕著に高い生産率を示し、架橋結合二量体を大量生産することができるので、産業的に有用に用いることができる。
【0079】
単量体は、多くの種類の物質から作ることができ、それに対する例としては、リガンド、またはそのリガンドの結合性を有する一部切片、例えば、TGFα、TGFβ、IL2、IL6、TNF、GMSCF等々、また各種リガンド受容体またはその受容体の結合性を有する一部切片、例えば、TBP1、TBP2、IFNαまたはβ受容体、ゴナドトロピン受容体などの各種受容体が単量体を作るのに用いることができる(Nienhaus, G. Ulrich. Protein-ligand interactions: methods and applications. Humana Press, 2005年)。薬物前駆体変換、物質検出、物質分解、物質生成などの作用をする各種酵素、細胞殺傷効果を有する毒素官能基などを含むタンパク質、遺伝子治療のためのウイルスなどの生体、DNA伝達のためのカチオンテール組成物(tail-composition)、薬物活性のための薬物化合物などの化合物、薬物伝達のために作った化学工学的産物であるリポソーム、標的分子のリアルタイム検出のためのバイオセンサー、またはプロドラッグなどのような官能基(F)などを、単量体を作るのに用いることができる。[参照:(20. Farah, R.A.ら, Crit. Rev. Eukaryot. Gene Expr.1998年, 第8巻, p.321-356) (Trail, P.A.ら, Science, 1993年, 第261巻, p.212-215) (Hinman, L.M.ら, Cancer Res. 1993年, 第53巻, p.3336-3342) (Pastan, I. Biochim. Biophys. Acta, 1997年, 第1333巻, p.C1-C6) (Kreitman, P.J.ら, J. Clin. Oncol. 2000 1622-1636) (Zalutsky ,M.R. & Vaidyanathan, G. Curr. Pharm. Des. 2000年, 第6巻, p.1433-1455) (Goldenberg, D.M. in Clinical Uses of Antibodies (eds Baum,R.P.ら) 1-13 (Kluwer academic, The Netherlands, 1991年)) (Lode,H.N.& Reisfeld, R.A. Immunol. Res. 2000年, 第21巻, p.279-2880) (Penichet, M.L. & Morrison, S.L. J. Immmunol. Methods, 2001年, 第248巻, p.91-101) (Lasic, D.D. & Papahadjopoulos, D. Science, 1995年, 第267巻, p.1275-1276) (Park. J.W.ら, Proc. Natl Acad. Sci. USA, 1995年, 第92巻, p.1327-1331) (Niculescu-Davaz, I.ら, Anticancer Drug Des. 1999年, 第14巻, p.517-538) (SToldt, H.S.ら, Eur. J. Cancer, 1997年, 第33巻, p.186-192)]。
【0080】
前記のように自然界には、リガンドと受容体、抗体と抗原、及び同種二量体または異種二量体、さらには多量体を形成するタンパク質など、報告された結合親和関係を有する物質の種類が非常に多様である。このような場合、相互結合親和性を有する物質を、それぞれ単量体と結合体として用いて、本出願の方法によって単量体から架橋結合多量体を大量に製造することができる。
【0081】
本発明の方法によって作製された結合特異性反復鎖は、反復鎖−複数の単量体複合体を形成する特性があるので、この反復鎖を樹脂に固定化させることによって前記のバイオ産業及び医療産業分野における有用なタンパク質分子の純粋分離精製のための高効率の親和性精製(affinity purification)が可能であろう(Zachariou M., Affinity Chromatography: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology). Humana Press; 2nd edition)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)単量体に特異的に結合する結合体の反復鎖を製造する工程、
2)前記工程1)の反復鎖及び単量体を混合して、前記反復鎖と単量体の反復鎖−複数の単量体複合体を製造する工程、及び
3)前記工程2)の反復鎖−複数の単量体複合体内の単量体間の架橋結合を形成した多量体を分離する工程を含む、架橋結合を用いた多量体の生産方法。
【請求項2】
単量体に結合特異性のある結合体が反復して連結されている反復鎖と、複数の単量体が結合して形成された単量体間に架橋結合が形成されてなる多量体を分離する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
単量体がタンパク質の場合、該単量体に結合特異性のある結合タンパク質が反復して連結されている反復鎖組換えタンパク質と単量体とを混合して、前記反復鎖と複数の単量体が結合して形成された反復鎖−複数の単量体複合体内の単量体間に架橋結合が形成されてなる多量体を分離する工程を含むことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
反復鎖が、タンパク質GのFab結合ドメインであるドメインIIIが反復して連結されているドメインIIIの反復鎖組換えタンパク質であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
単量体が、抗体、リガンド、受容体もしくはそれらの切片、またはそれらの組換え体、またはそれらの誘導体、またはそれらと生化学官能基の融合体であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
単量体が、Fab断片であること、またはFab断片を含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
生化学官能基が、酵素、毒素官能基タンパク質、ウイルスなどの生体、化合物、薬物活性のための薬物化合物、リポソーム、バイオセンサー、プロドラッグのような官能基であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
多量体が、二量体以上であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−513656(P2013−513656A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544339(P2012−544339)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国際出願番号】PCT/KR2009/007510
【国際公開番号】WO2011/074717
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512156648)
【Fターム(参考)】