説明

単量体インスリン及びアシル化インスリンを含む可溶性製剤

【課題】単量体インスリン及びアシル化インスリンを含む可溶性製剤
【解決手段】単量体のインスリン及び可溶性のアシル化されたインスリン類縁体を混合することによって、可溶性のインスリン製剤を調製することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶性のアシル化されたインスリン類縁体及び単量体のインスリン又はヒトインスリンの混合物であり、好ましくは注入系で用いられる、物理学的安定性が改良された薬学的製剤に関する。さらに、本発明は請求項に記載されたさらなる側面に関する。
【0002】
本発明の目的は、従来技術における少なくとも幾つかの不都合な点を克服するか又は改良することである。以下に述べたより具体的な目的はおおよそ果たされている。
【背景技術】
【0003】
糖尿病とは、真性糖尿病及び尿崩症による過剰な尿排出があるヒトの疾患のための一般的な用語である。真性糖尿病は、グルコースを利用するための能力が部分的にまたは完全に欠損した代謝障害である。全住民の約5%が糖尿病を患っている。
【0004】
1920年代のインスリンの導入から、真性糖尿病の治療を改良するための継続的な進歩が行われてきた。極度な糖血症の回避を助けるために、糖尿病患者はしばしば、日に複数回の注射治療を行い、これは例えば、単量体のインスリンが各食事と共に投与され、また、アシル化された、または中間作用性のインスリンが基礎的な必要をカバーするために日に一回か二回投与されるなどによる。
【0005】
真性糖尿病の治療において、多くの種類のインスリン製剤、例えば通常のインスリン、イソフェンインスリン(NPHと呼ばれる)、インスリン亜鉛懸濁液(Semilente(R), Lente(R),及びUltralente(R)など)、及び二相性イソフェンインスリンなどが提案され、使用されてきた。糖尿病患者が数十年間にわたってインスリンによる治療を受ける場合、安全性及び生活の質のためにインスリン製剤の改良が主に要求される。商業的に入手可能なインスリン製剤の中には、作用の急速な開始によって特徴付けられるものもあり、他の製剤には比較的緩除な開始を有するがしかし延長された作用は全く示さないものもある。速効性インスリン製剤は通常はインスリンの溶液であり、一方、遅延された作用のインスリン製剤は、結晶形態及び/又は、亜鉛塩を単独で添加して、又はプロタミンを添加して、又はその両者を組み合わせて沈降させた非結晶形態でのインスリンを含む懸濁液であり得る。さらに、急速に開始する作用とより延長された作用の両方を有する製剤を使用する患者もある。そのような製剤は、プロタミンインスリン結晶が懸濁したインスリン溶液であり得る。インスリン溶液をインスリン懸濁液製剤と、当の患者に望ましい割合で混合することによって、患者自身が最終的な製剤を調製する患者もある。
【0006】
ヒトのインスリンは、それぞれ21と30のアミノ酸残基を有するいわゆるA鎖及びB鎖の二つのペプチド鎖から成る。このA鎖及びB鎖は、二つのシステインジスルフィド架橋によって相互接続されている。他種のほとんどのインスリンは、類似した構造を有しているが、しかし同じアミノ酸残基を同じ位置に含んでいるとは限らない。
【0007】
遺伝子工学として知られる方法の発展は、ヒトインスリンに類似する非常に多様なインスリン化合物を調製することを可能にした。これらのインスリンアナログでは、一以上のアミノ酸が、ヌクレオチド配列によってコードされ得る他のアミノ酸で置換されている。
【0008】
通常、インスリン製剤は皮下注射によって投与される。患者にとって重要なのは、注射からの時間の関数としての、グルコース代謝におけるインスリンの作用である、インスリン製剤の作用プロフィールである。このプロフィールにおいて、とりわけ、開始の時間、最大値、及び全作用期間が重要である。異なる作用プロフィールを有するインスリン製剤の多様性が、患者によって望まれ、要求されている。ある患者は同じ日に、非常に異なる作用プロフィールのインスリン製剤を使用することもある。要求される作用プロフィールは、例えば、時刻及び患者が食べた食事の量と成分に依存するようなものである。
【0009】
安定なインスリン製剤は特に、それらの製剤を上昇した温度及び/又は機械的ストレスに曝すような輸送デバイスにおける使用のために望まれている。例えば、安定なインスリン製剤は、連続的な注入系及びペン(pen)輸送デバイスにおいて使用するために望まれている。
【0010】
安定剤Genapol(R)(ポロキサマー171)は、長期時間のための、ポンプ(pumps)用のヒトインスリンを安定化するために使用されるが、幾つかの望ましくない影響を有する(Diabetes Metab. 26(2000),304-306)ために、安定化のための新しい方法が必要である。
【0011】
連続的な注入系において、インスリン製剤を含む液体をリザーバーから、通常は皮下、静脈、または腹腔内の貯蔵所(depot)に送り込む。このリザーバーは、定期的に交換されるか補充される必要があるが、患者の体に付着されるか、又は患者の体に埋め込まれる。何れの場合でも、患者の体の熱さ及び体の動揺、加えて管類及びポンプの乱れが、比較的高い量の熱−機械的エネルギーを製剤に付与する。リザーバーが充填される頻度を最小化すること、及びリザーバーのサイズを最小化することに関し、比較的高濃度のインスリンを有する製剤が非常に好都合である。ストレスの多い使用条件下において少なくとも一月は安定であるインスリン製剤が望まれている。
【0012】
連続的な注入系で用いられるインスリンの製剤は、数日間から数ヶ月間の範囲の期間、患者の体の熱及び動揺にさらされたとしても、可溶性のまま及び実質的に凝集しないままで維持されなければならない。不安定性は、その製剤が連続的注入系において曝される熱−機械的ストレスによって促進される。それ故、濃縮されたインスリン製剤の物理的安定性における改良が、それらが連続的注入系において首尾よく使用されることを可能にするために至急必要である。
【0013】
ポンプにおいて単量体のインスリンを用いることは普通になっている。しかしながら、ヒトインスリンと比較すると、単量体インスリンは不溶性フィブリルを形成する傾向が高い。
【0014】
とりわけ、連続的注入系でインスリン製剤を用いることに関して二つの主な問題がある:
1.インスリン成分のフィブリル化によって、カテーテルが詰まる、及び、
2.致死的なケトアシドーシスの急速な発達の危険性がある。ケトアシドーシスは、インスリン輸送の中断、例えばフィブリル化、ポンプの故障、又は患者が、切断した後にポンプを再びつけるのを忘れることによる中断の結果起こる。
【0015】
米国特許第4,476,118号に従って、改良された物理的安定性を有する溶解インスリンの薬学的溶液が、イオン化された亜鉛塩を用いて調製され得る。
【0016】
米国特許第4,472,385号に従って、連続的インスリン輸送装置に用いられることに特に適した、改良した物理的安定性を有する、溶解インスリンの薬学的溶液は、カルシウム又はマグネシウム塩を用いることによって調製可能である。
【0017】
米国特許第4,614,730号に従って、インスリン溶液はリン脂質を用いることで安定化され得る。
【0018】
米国特許第5,866,538号に従って、優れた化学的安定性を有するインスリン製剤は、グリセロール及び/又はマンニトール及びやや低い濃度のハロゲン化物の存在下において得られる。
【発明の開示】
【0019】
本発明の一つの目的は、特に注入系において使用されるのに適したインスリン製剤を提供することである。
【0020】
本発明の他の目的は、高い機械的エネルギーの入力に曝された時に優れた長期間物理的安定性を有するインスリン製剤を提供することである。
【0021】
本発明の他の目的は、高い温度に曝されたときに優れた長期間の物理的安定性を有するインスリン製剤を提供することである。
【0022】
本発明の他の目的は、高い温度及び機械的エネルギー入力に曝されたときに優れた長期間の物理的安定性を有するインスリン製剤を提供することである。
【0023】
本発明の他の目的は、フィブリル化傾向の低いインスリン製剤を提供することである。
【0024】
本発明の他の目的は、都合の良い作用プロフィールを有するインスリン製剤を提供することである。
【0025】
本発明の他の目的は、開始の速い作用及び遅延された作用の両者を有するインスリン製剤を供給することである。
【0026】
本発明の他の目的は、非溶解性物質を全く含まないか、又は少量のみ含むインスリン製剤を提供することである。
【0027】
[定義]
ここで用いられる「アミノ酸」という用語は、ヌクレオチド配列によってコードされ得るアミノ酸を指す。同様に、これは、ヒドロキシがカルボキシル基から取り除かれたアミノ酸、及び/又はアミノ基から水素が取り除かれたアミノ酸であるアミノ酸残基に適用される。同様に、ペプチド及びペプチド残基はアミノ酸残基からなる。
【0028】
ここで用いられる「ヒトインスリン類縁体」という用語は、一以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基と交換されたヒトインスリン、及び/又は一以上のアミノ酸残基が欠失したヒトインスリン、及び/又は一以上のアミノ酸残基が追加されたヒトインスリンを指す。これらのヒトインスリン類縁体は、糖尿病の患者の治療に用いられるのに十分高い抗糖尿病活性を有する。
【0029】
「アシル化されたインスリン類縁体」という用語は、ここで用いられる場合、一以上の親油性置換基を有するヒトインスリン又はヒトインスリン類縁体を指す。好ましい親油性置換基は、アシル基である。アシル化されたインスリン類縁体の例は、WO 95/07931及びWO 96/29344に記載されており、正確には、それらの請求項1に記載されている。これらの刊行物は参考として本願明細書に援用される。アシル化されたインスリン類縁体の具体的な例は、インスリンデテミア(即ち、LysB29(Nε-テトラデカノイル)des(B30)ヒトインスリン)である。
【0030】
「単量体のインスリン」という用語は、ここで用いられる場合、ヒトインスリンよりも自己会合(二量体及び六量体への)の傾向が少ないヒトインスリン類縁体を指す。さらなる情報は、Diabetes Care 13 (1990), 923-954を参考にでき、これは参考として援用される。単量体インスリンの例は、B28位置のProが、Asp、Lys、Leu、Val、又はAlaによって置換されたヒトインスリン;B29の位置のLysが任意に、Proで置換されたヒトインスリン;B28-30の位置のアミノ酸が欠失したヒトインスリン;又はB27の位置のアミノ酸が欠失したヒトインスリン;である。そのような単量体化合物のさらに詳細な説明は、米国特許第07/388,201号及び欧州特許公報第388,472号及び同第214,826 A2号に見られ、それらは全て参考として援用される。当該分野の技術者は、単量体インスリンに対する他の修飾が可能であることを認めるであろう。そのような修飾は、当該分野では広く受け入れられており、ヒトインスリンと比較して、それらは、B1の位置のPheのAspによる置換;B30の位置のThrのAlaによる置換;B9の位置のSerのAspによる置換;B1の位置のアミノ酸の欠失;任意に、B2の位置のThrの欠失;又はB30の位置のアミノ酸の欠失を含む。特に好ましくは、単量体インスリンはインスリンリスプロ(insulin lispro)(LysB28, PeoB29ヒトインスリン)及びインスリンアスパルト(insulin aspart)(AspB28ヒトインスリン)である。さらなる単量体インスリンは、インスリングルリシン(insulin glulisine)(LysB3, GluB29ヒトインスリン)(vide Diabetologia 42, suppl. 1, 頁A178, 要約#665)である。
【0031】
インスリンはヒトインスリン、ヒトインスリン類縁体、単量体インスリン加えてアシル化されたインスリンを意味する。
【0032】
「注入系」という用語は、ここで用いられる場合、延長された期間の間、液体を患者に連続的に非経口投与するための装置を指し、又は延長された期間、液体の投与毎に新しい投与サイトを確立することなく断続的に、液体を患者に非経口的に投与する装置を指す。該液体は、インスリン活性を有する化合物を含有する。該装置は、注入される前の液体のためのリザーバー、ポンプ、カテーテル、又はリザーバーをポンプを介して投与サイトと接続するための他の管類、及びポンプを制御するための制御要素を具備する。該装置は通常は腹膜内にされる埋め込みのために作成されても良い。そのような場合、インスリンのリザーバーは通常経皮的補給に適合される。そのような装置が埋め込まれた場合は、リザーバーの内容物は体温であり、また、患者の体の動きに曝されることは明らかである。
【0033】
「フィブリル化」という用語は、ここで用いられる場合、部分的に折りたたまれていないインスリン分子が相互作用して不溶性の直線的な凝集体を形成することによる物理的な仮定を指す。熱及び疎水的な表面の影響下で、インスリンはコンホメーション変化を起こし、連続的に結果として、直線的な凝集体及び粘性のゲルの形成、または不溶性沈殿物が生じる。フィブリル化の程度は、下記のストレス試験に記載したように測定できる。より詳細な説明は、J. Pharm. Science. 86 (1997), 517-525,によって与えられ、これは参考として援用される。
【0034】
「U」という用語は、ここで用いる場合、インスリンユニットのことをさす。現在用いられている(市販されている)インスリン(ウシ、ブタ、ヒト、リスプロ(lispro)、アスパルト、及びグラルギン(glargine))のほとんどは、1ユニットが6 nmolに等しい力価を有する。長時間作用性のアシル化インスリンは、ヒトインスリンと比較して減少した力価を有する。従って、インスリンデテミアでは1ユニットは24 nmolに相当する。他のインスリンでは、Uとnmolとの関係は測定可能であり、既知でない場合は、例えばヒトインスリンと同じ薬学的(血中グルコースの低下)効果を与える量を測定する事によって決定することができる。
【0035】
亜鉛の含有量は、理論値として六量体インスリン当たりで表される、即ち、全ての六量体インスリンが実際に六量体インスリンとして存在しているかどうかに関わらず、六分子の単量体インスリンあたりの亜鉛原子の数として表される。
【0036】
[発明の詳細な説明]
本発明は、可溶性のアシル化されたインスリン類縁体及び単量体のインスリン又はヒトインスリンの混合物に関する。驚くべきことに、そのような製剤は、例えば物理的ストレスに曝されたとき、実質的に改良された安定性を有することが見出された。例えば、本発明の製剤は、フィブリル化傾向が低い。本発明の製剤は、非溶解性物質を全く含まないか、又は少量しか含まない。さらに、前記製剤は急速な作用の開始と遅延された作用の両方を与える。これに加えて、前記製剤は、都合の良い作用プロフィールを有する。
【0037】
本発明の製剤の使用は、ポンプを介した通常のインスリン治療とは反対に、患者がある量の長時間作用性インスリン、即ちアシル化インスリンを受けることから、ケトアシドーシスの危険を減少する。
【0038】
広範な側面において、本発明は、可溶性のアシル化されたインスリン類縁体及び単量体のインスリン又はヒトインスリンを含む薬学的可溶性製剤であって、前記可溶性のアシル化されたインスリン類縁体と単量体のインスリン又はヒトインスリンとのモル比の下限が、7:93、好ましくは11:89、より好ましくは14:86であり、可溶性のアシル化されたインスリン類縁体と単量体のインスリン又はヒトインスリンとのモル比の上限が、57:43、好ましくは41:59、より好ましくは31:69、さらに好ましくは24:76、及びさらに好ましくは20:80であることを特徴とする製剤に関する。
【0039】
本発明の好ましい態様において、本発明の薬学的可溶性製剤は、可溶性のアシル化されたインスリン類縁体及び単量体のインスリン又はヒトインスリンを含み、ここで、可溶性のアシル化されたインスリン類縁体及び単量体のインスリン又はヒトインスリンの比は、モル対モルを基にして、約7:93〜約57:43の範囲である(モル対モルを基にして、7〜57%の含有量に相当)。当該分野の技術従事者、特に医師は、モルよりU(ユニット)に慣れているため、可溶性のアシル化されたインスリン類縁体及び単量体のインスリン又はヒトインスリンが同じ強度である場合、ユニット対ユニットを基にして、可溶性のアシル化されたインスリン類縁体が7〜57%である、と付け加える。しかしながら、可溶性のアシル化されたインスリン類縁体の強度が、単量体のインスリン又はヒトインスリンの強度の25%でしかない場合は、本発明の薬学的可溶性製剤は可溶性のアシル化されたインスリン類縁体及びヒトインスリン又は単量体のインスリンを含み、ここで、可溶性のアシル化されたインスリン類縁体及び単量体のインスリン又はヒトインスリンの比は、ユニット対ユニットを基にして、約2:98〜約25:75の範囲にあり、好ましくはユニット対ユニットを基にして、約3:97〜約15:85の範囲にあり、さらに好ましくは、ユニット対ユニットを基にして、約4:96〜約10:90の範囲にある。
【0040】
一つの態様に従って、本発明は、インスリンアスパルト及びインスリンデテミアを含有する薬学的可溶性製剤を包含せず、ここで、該インスリンアスパルト及びインスリンデテミアの比は、ユニット対ユニットを基にして、15:85〜85:15の範囲にあり、これはデテミア及びアスパルトの比がモル対モルを基にして、約41:59以下であることに相当する(我々のデンマーク特許第PA2002 00684を参照。その内容は参考として本明細書に援用される。)。
【0041】
他の態様に従って、本発明は、可溶性のアシル化されたインスリン類縁体及び単量体のインスリン又はヒトインスリンを含む薬学的可溶性製剤に関し、ここで、該可溶性のアシル化されたインスリン類縁体と単量体インスリン又はヒトインスリンとのモル比は、約11:89〜約41:59の範囲にあり、好ましくは約14:86〜約31:69の範囲にある。
【0042】
本発明の好ましい態様において、前記製剤は、連続的な注入ポンプにおける使用に適している。ここで、一つの側面において、本発明は本明細書に記載された可溶性のアシル化されたインスリン類縁体を含む連続的注入系におけるリザーバーに関する。他の側面において、本発明は、可溶性のアシル化されたインスリン類縁体及び単量体のインスリン又はヒトインスリンを含む薬学的可溶性製剤を含有するリザーバーに関し、ここで、前記可溶性のアシル化されたインスリン類縁体と単量体のインスリン又はヒトインスリンとのモル比の下限は、7:93、好ましくは11:89、より好ましくは14:86であり、前記可溶性のアシル化されたインスリン類縁体と単量体のインスリン又はヒトインスリンとのモル比の上限は、57:43、好ましくは41:59、より好ましくは31:69、さらに好ましくは24:76、及びさらに好ましくは20:80である。
【0043】
本発明の薬学的製剤は、適切な成分を溶解し混合して適切に所望の最終産物を与えることを含む薬学工業の従来の技術を用いて調製され得る。
【0044】
それ故、インスリンユニットで算出されたインスリンの総活性の、約1%〜約15%の量の可溶性のアシル化されたインスリン類縁体を用いて、単量体のインスリン又はヒトインスリンを含む水性溶液における改良された物理的安定性を有する薬剤を調製することが可能である。
【0045】
よって、一つの方法に従って、一方では可溶性のアシル化されたインスリン類縁体、他方では単量体のインスリン又はヒトインスリンがある量の水に溶解され、その総容量は、調製されるべき製剤の最終容量よりいくらか少ない。等張剤、保存剤、及び緩衝剤は、必要に応じて添加され、また、溶液のpH値は、必要であれば、酸、例えば塩化水素、又は塩基、例えば水酸化ナトリウム水溶液を必要とされるように用いて調整される。最後に、溶液の容量を水で調節し、所望の成分濃度にする。
【0046】
本発明の好ましい態様において、可溶性のアシル化されたインスリンアナログはインスリンデテミア(LysB29(Nε-テトラデカノイル)des(B30)ヒトインスリン)である。本発明のさらに好ましい態様において、アシル化されたインスリンは、LysB29(Nε-ヘキサデカノイル)des(B30)ヒトインスリン;LysB29(Nε-テトラデカノイル)ヒトインスリン;LysB29(Nε-ヘキサデカノイル)ヒトインスリン;LysB28(Nε-テトラデカノイル)LysB28ProB29ヒトインスリン;LysB28(Nε-ヘキサデカノイル) LysB28ProB29ヒトインスリン;LysB30(Nε-テトラデカノイル)ThrB29LysB30ヒトインスリン;LysB30(Nε-ヘキサデカノイル)ThrB29LysB30ヒトインスリン;LysB29(Nε-(N-ヘキサデカノイル-γ-グルタミル)des(B30)ヒトインスリン;LysB29(Nε-(N-リトコーリル-γ-グルタミル))des(B30)ヒトインスリン;LysB29(Nε-(ω-カルボキシヘプタデカノイル))des(B30)ヒトインスリン;又はLysB29(Nε-(ω-カルボキシヘプタデカノイル))ヒトインスリンである。
【0047】
本発明の好ましい態様において、ヒトインスリンが使用される。本発明の他の好ましい態様において、単量体のインスリンはインスリンアスパルトである。さらに好ましい態様において、単量体のインスリンはインスリンリスプロである。さらに好ましい態様において、単量体のインスリンはLysB3, GluB29ヒトインスリンである。
【0048】
本発明のさらに好ましい態様において、それらをヒトに非経口投与した後の最初の4時間以内における本発明の製剤からのインスリン活性の放出は、少なくとも約50%である。
【0049】
本発明の好ましい態様において、該製剤は、溶液に等張性を与える薬剤、抗菌性保存剤、pH緩衝剤、及び適切な亜鉛塩を含む。好ましい態様において、前記製剤のpH値は約7〜約8の範囲である。
【0050】
本発明のさらに好ましい態様において、該製剤のインスリン総量は、下限が10 U/ml、好ましくは40 U/ml、さらに好ましくは100 U/ml、さらに好ましくは150 U/mlの範囲にあり、上限が、1500 U/ml、好ましくは1000 U/ml、より好ましくは500 U/mlである。
【0051】
本発明の他の好ましい態様において、該製剤のインスリン総量は、約10 U/ml〜約1500 U/mlの範囲にあり、好ましくは約40 U/ml 〜約1000 U/mlの範囲にあり、より好ましくは約100 U/ml 〜約500 U/mlの範囲、例えば100、200、400、又は500 U/mlである。
【0052】
本発明の好ましい態様において、保存剤はフェノール、m-クレゾール、又はフェノール及びm-クレゾールの混合物である。本発明のさらに好ましい態様において、フェノール及び/又はm-クレゾールの総濃度は、約20 mM〜約50 mMの範囲であり、好ましくは約30 mM〜約45 mMの範囲である。フェノール及び/又はm-クレゾールの濃度は、とりわけ、インスリンの濃度に依存する。
【0053】
本発明の好ましい態様において、前記製剤は、インスリンが自由に使える亜鉛イオンを、六量体インスリン当たり約2.3〜約4.5 Zn2+の範囲内の割合(約0.38〜約0.75 Zn2+/単量体のインスリンに相当)で含む。本発明の製剤を調製するために用いられる該亜鉛塩は、例えば塩化亜鉛、酸化亜鉛、又は酢酸亜鉛である。
【0054】
本発明の好ましい態様において、等張剤は、約100〜約250 mMの範囲の濃度のグリセロール、マンニトール、ソルビトール、またはそれらの混合物である。
【0055】
本発明の他の好ましい態様において、該製剤はハロゲン化物イオンを、好ましくは塩化ナトリウムとして、約1〜約100 mM、好ましくは約5 mM〜約40 mMに相当する量で含む。
【0056】
本発明の好ましい態様において、前記pH緩衝剤はリン酸ナトリウム、TRIS(トロメタモル)、N−グリシルグリシン、又はL−アルギニンである。好ましくは、該pH緩衝剤は、約3 mM〜約20 mMの範囲の濃度の、好ましくは約5 mM〜約15 mMの範囲の濃度の、生理学的に許容される緩衝剤である。本発明の好ましい態様において、本発明の製剤のpH値は約7.0〜約8.0の範囲である。
【0057】
本発明の好ましい態様において、該製剤は、注入系に適した濃度でインスリンアスパルト及びインスリンデテミアの組み合わせを含む中性の、水性可溶性製剤であり、さらにその上、フェノール類の保存剤(総濃度が約30 mM〜約40 mMの範囲である)、等張剤としてグリセロール(総濃度が約0.17M)、第二リン酸ナトリウム(濃度が約5 mM〜約7 mMの範囲である)、約2.5〜約3.5 Zn2+/六量体インスリン又は約0.4〜約0.6 Zn2+/単量体のインスリンに相当する亜鉛イオンから基本的に成る。
【0058】
本発明の好ましい態様において、本発明の製剤は非溶解性物質を約0.1%以下、好ましくは0.01%(重量/重量)以下の含有量で含む。
【0059】
本発明の好ましい態様において、実施例1に記載された試験で測定されたとき、本発明の製剤の安定性因子は約2.5以上であり、好ましくは約4以上である。
【0060】
本発明の好ましい態様において、可溶性のアシル化されたインスリン類縁体は、単量体のインスリン又はヒトインスリンを含む水性溶液中における物理学的安定性を改良するために、インスリンの総量のうち、可溶性のアシル化されたインスリン類縁体と単量体のインスリン又はヒトインスリンとのモル比の下限が7%、好ましくは11%、より好ましくは14%であり、可溶性のアシル化されたインスリン類縁体と単量体のインスリン又はヒトインスリンとのモル比の上限が57%、好ましくは41%、より好ましくは31%、さらに好ましくは24%、及びさらに好ましくは20%である範囲の量で用いられる。
【0061】
本発明の製剤の投与は、通常の技術を有する医師に効果的であると知られている任意の経路を介して行われる。非経口的及び好ましくは皮下及び腹腔内投与が好ましい。
【0062】
糖尿病の治療のために投与される本発明の製剤の量は、多くの要因に依存するが、とりわけ、患者の性別、身体的な活性、及び年齢、患者の食餌、治療されるべき状態又は疾患の根底にある原因、投与経路、及び生体利用効率、投与されたインスリン又はインスリン類縁体の体内での持続性、用いられた具体的な製剤、用いられたインスリン又はインスリン類縁体の効力、他の薬剤との可能な組合せ、糖尿病の症例の重篤度、及び間隔がある場合は投与間の間隔に依存する。所望の結果を達成するための、本発明の製剤の用量及び注入速度及び投与頻度を滴定(titrate)することは、通常の医師の技術の範囲内である。本発明の製剤に用いられるインスリン成分の1日の用量は、当該分野の技術者によって、既知のインスリン成分のための方法と類似した方法で個々の患者のために決定されることが推奨される。
【0063】
ここにおける参考の記載は、それらが従来技術を構成するということを認めるものではない。
【0064】
ここで、「含む(comprise)」という語は、「含む(include)」、「含む(contain)」又は「含む(comprehend)」(例えばEPOガイドラインC4.13参照)の意味に幅広く解釈されるべきである。
【0065】
本発明は、以下の実施例によってさらに詳細に説明されるが、しかしながら、その保護範囲を限定するように解釈されるべきではない。先の詳細な説明、及び続く実施例に開示された特徴は、個々に、またそれらを任意に組合せての両方で、本発明のそれら多様な形態を理解する資料となる。
【0066】
[ストレス試験]
下記のように調製したインスリン溶液を、物理的ストレス試験に供した。
【0067】
それぞれのインスリン製剤の5つのサンプルを、Penfill(R) 1.5 mlカートリッジに詰めた。Hamilton(R)シリンジを用いて各カートリッジに100μLの空気を導入した後、サンプルを次の物理的ストレス試験に供した。
【0068】
カートリッジを、37℃±2℃の一定温度に維持する恒温機中に置かれた回転板に固定し、30 rpm(回転/分)の回転数で、1日4時間、360°回転させた。回転期間の間、カートリッジは37℃±2℃の一定温度で保管した。
【0069】
カートリッジの乳光を、通常の時間間隔−最初の週は日に一度、その後は週に3回、31日目まで−で視覚的な検査により評価した。乳光又は沈殿物が生じるか、裸眼で見えた場合、そのサンプルはフィブリル化したとみなされる。フィブリル化なしの日数をフィブリル化時間と定義する。サンプルの安定性因子は、前記サンプルのフィブリル化時間を、同様の実験で試験された標準参照サンプルのフィブリル化時間で割ることによって算出される。
【0070】
標準参照サンプルは、次のように調製されたインスリンアスパルト200 U/mlである。
【0071】
次の組成の溶液を調製した:インスリンアスパルト200 U/ml(1200 nmol/ml)、フェノール1.80 mg/ml(19 mM)、m-クレゾール2.06 mg/ml(19 mM)、グリセロール16 mg/ml(174 mM)、第二リン酸ナトリウム二水和物1.25 mg/ml(7 mM)、塩化ナトリウム0.58 mg/ml(10 mM)、塩化亜鉛を総濃度が39.2μg Zn2+/ml(3.0Zn2+/六量体)まで。塩化水素及び水酸化ナトリウムはインスリンの溶解及びpHを7.40に調整するために用いた。最後に、溶液を濾過滅菌し、無菌技術を用いて滅菌Penfill(R)カートリッジ1.5 mlに詰めた。
【0072】
[試験結果]
【表1】

【0073】
「s.d.」は標準偏差である。以下の実施例で記載するように、表中の「アスパルト/デテミア」の後に表されている数字、例えば75/25は、アスパルトとデテミアとの比が、インスリンユニットに基づいて75:25であることを示す。
【0074】
上記表における状況と同様の結果が、2.7 Zn2+/六量体及びpH値7.60、又は3.0 Zn2+/六量体及びpH値7.60の何れかを含む対応する製剤で得られた。
【0075】
上記試験結果から明らかなように、アスパルトのフィブリル化に対する安定性は、デテミアを加えることによって改良される。
【0076】
[実施例1]
98%(U/U)のインスリンアスパルト及び2%(U/U)のインスリンデテミアを含有する1 ml当たり200Uのインスリン。アスパルト/デテミアのモル比: 1:12.25、7.55mol-%に相当。
【0077】
次の組成を有する溶液を調製した:インスリンアスパルト196 U/ml(1176 nmol/ml)、インスリンデテミア4 U/ml(96 nmol/ml)、フェノール1.80 mg/ml(19 mM)、m-クレゾール2.06 mg/ml(19 mM)、グリセロール16 mg/ml(174 mM)、第二リン酸ナトリウム二水和物1.25 mg/ml(7 mM)、塩化ナトリウム0.58 mg/ml(10 mM)、塩化亜鉛及び酢酸亜鉛を総濃度が41.5μg Zn2+/ml(3.0Zn2+/六量体)まで。塩化水素及び水酸化ナトリウムはインスリンの溶解及びpHを7.40に調整するために用いた。最後に、溶液を濾過滅菌し、無菌技術を用いて滅菌Penfill(R)カートリッジ1.5 mlに詰めた。
【0078】
[実施例2]
95%(U/U)のインスリンアスパルト及び5%(U/U)のインスリンデテミアを含有する1 ml当たり200Uのインスリン。アスパルト/デテミアのモル比: 1:4.75、17.4mol-%に相当。
【0079】
次の組成を有する溶液を調製した:インスリンアスパルト190 U/ml(1140 nmol/ml)、インスリンデテミア10 U/ml(240 nmol/ml)、フェノール1.80 mg/ml(19 mM)、m-クレゾール2.06 mg/ml(19 mM)、グリセロール16 mg/ml(174 mM)、第二リン酸ナトリウム二水和物1.25 mg/ml(7 mM)、塩化ナトリウム0.58 mg/ml(10 mM)、塩化亜鉛及び酢酸亜鉛を総濃度が45.1μg Zn2+/ml(3.0Zn2+/六量体)まで。塩化水素及び水酸化ナトリウムはインスリンの溶解及びpHを7.40に調整するために用いた。最後に、溶液を濾過滅菌し、無菌技術を用いて滅菌Penfill(R)カートリッジ1.5 mlに詰めた。
【0080】
[実施例3]
90%(U/U)のインスリンアスパルト及び10%(U/U)のインスリンデテミアを含有する1 ml当たり200Uのインスリン。アスパルト/デテミアのモル比: 1:2.25、30.8mol-%に相当。
【0081】
次の組成を有する溶液を調製した:インスリンアスパルト180 U/ml(1080 nmol/ml)、インスリンデテミア20 U/ml(480 nmol/ml)、フェノール1.80 mg/ml(19 mM)、m-クレゾール2.06 mg/ml(19 mM)、グリセロール16 mg/ml(174 mM)、第二リン酸ナトリウム二水和物1.25 mg/ml(7 mM)、塩化ナトリウム0.58 mg/ml(10 mM)、塩化亜鉛及び酢酸亜鉛を総濃度が51.0μg Zn2+/ml(3.0Zn2+/六量体)まで。塩化水素及び水酸化ナトリウムはインスリンの溶解及びpHを7.40に調整するために用いた。最後に、溶液を濾過滅菌し、無菌技術を用いて滅菌Penfill(R)カートリッジ1.5 mlに詰めた。
【0082】
[実施例4]
75%(U/U)のインスリンアスパルト及び25%(U/U)のインスリンデテミアを含有する1 ml当たり200Uのインスリン。アスパルト/デテミアのモル比: 1:0.75、57.1mol-%に相当。
【0083】
次の組成を有する溶液を調製した:インスリンアスパルト150 U/ml(900 nmol/ml)、インスリンデテミア50 U/ml(1200 nmol/ml)、フェノール1.80 mg/ml(19 mM)、m-クレゾール2.06 mg/ml(19 mM)、グリセロール16 mg/ml(174 mM)、第二リン酸ナトリウム二水和物1.25 mg/ml(7 mM)、塩化ナトリウム0.58 mg/ml(10 mM)、塩化亜鉛及び酢酸亜鉛を総濃度が68.6μg Zn2+/ml(3.0Zn2+/六量体)まで。塩化水素及び水酸化ナトリウムはインスリンの溶解及びpHを7.40に調整するために用いた。最後に、溶液を濾過滅菌し、無菌技術を用いて滅菌Penfill(R)カートリッジ1.5 mlに詰めた。
【0084】
[実施例5]
95%(U/U)のインスリンアスパルト及び5%(U/U)のインスリンデテミアを含有する1 ml当たり100Uのインスリン
次の組成を有する溶液を調製した:インスリンアスパルト95 U/ml(570 nmol/ml)、インスリンデテミア5 U/ml(120 nmol/ml)、フェノール1.5 mg/ml(16 mM)、m-クレゾール1.7 mg/ml(16 mM)、グリセロール16 mg/ml(174 mM)、第二リン酸ナトリウム二水和物0.9 mg/ml(5 mM)、塩化ナトリウム0.58 mg/ml(10 mM)、塩化亜鉛及び酢酸亜鉛を総濃度が22.6μg Zn2+/ml(3.0Zn2+/六量体)まで。塩化水素及び水酸化ナトリウムはインスリンの溶解及びpHを7.40に調整するために用いた。最後に、溶液を濾過滅菌し、無菌技術を用いて滅菌Penfill(R)カートリッジ3.0 mlに詰めた。
【0085】
[実施例6]
90%(U/U)のインスリンアスパルト及び10%(U/U)のインスリンデテミアを含有する1 ml当たり100Uのインスリン
次の組成を有する溶液を調製した:インスリンアスパルト90 U/ml(540 nmol/ml)、インスリンデテミア10 U/ml(240 nmol/ml)、フェノール1.5 mg/ml(16 mM)、m-クレゾール1.7 mg/ml(16 mM)、グリセロール16 mg/ml(174 mM)、第二リン酸ナトリウム二水和物0.9 mg/ml(5 mM)、塩化ナトリウム0.58 mg/ml(10 mM)、塩化亜鉛及び酢酸亜鉛を総濃度が25.5μg Zn2+/ml(3.0Zn2+/六量体)まで。塩化水素及び水酸化ナトリウムはインスリンの溶解及びpHを7.40に調整するために用いた。最後に、溶液を濾過滅菌し、無菌技術を用いて滅菌Penfill(R)カートリッジ3.0 mlに詰めた。
【0086】
[実施例7]
95%(U/U)のインスリンアスパルト及び5%(U/U)のインスリンデテミアを含有する1 ml当たり400Uのインスリン
次の組成を有する溶液を調製した:インスリンアスパルト380 U/ml(2280 nmol/ml)、インスリンデテミア20 U/ml(480 nmol/ml)、フェノール1.8 mg/ml(19 mM)、m-クレゾール2.1 mg/ml(19 mM)、グリセロール16 mg/ml(174 mM)、第二リン酸ナトリウム二水和物0.9 mg/ml(5 mM)、塩化ナトリウム1.2 mg/ml(20 mM)、塩化亜鉛及び酢酸亜鉛を総濃度が90μg Zn2+/ml(3.0Zn2+/六量体)まで。塩化水素及び水酸化ナトリウムはインスリンの溶解及びpHを7.40に調整するために用いた。最後に、溶液を濾過滅菌し、無菌技術を用いて滅菌Penfill(R)カートリッジ1.5 mlに詰めた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性のアシル化されたインスリン類縁体及び単量体のインスリン又はヒトインスリンを含む薬学的可溶性製剤であって、前記可溶性のアシル化されたインスリン類縁体と単量体のインスリン又はヒトインスリンとのモル比の下限が、7:93、好ましくは11:89、より好ましくは14:86であり、前記可溶性のアシル化されたインスリン類縁体と単量体のインスリン又はヒトインスリンとのモル比の上限が、57:43、好ましくは41:59、より好ましくは31:69、さらに好ましくは24:76、及びさらに好ましくは20:80であることを特徴とする製剤。
【請求項2】
可溶性のアシル化されたインスリン類縁体及び単量体のインスリン又はヒトインスリンを含む薬学的可溶性製剤であって、前記可溶性のアシル化されたインスリン類縁体及び単量体のインスリン又はヒトインスリンの比が、モル対モルを基にして約7:93〜約57:43の範囲であり、好ましくはモル対モルを基にして約11:89〜約41:59の範囲であり、より好ましくはモル対モルを基にして約14:86〜約31:69の範囲であり、但し、前記可溶性のアシル化されたインスリン類縁体がインスリンデテミアであり、前記単量体のインスリンがインスリンアスパルトであるとき、デテミアとアスパルトとの比は、モル対モルを基にして約41:59以下であることを特徴とする製剤。
【請求項3】
pH値が約7〜約8の範囲である、上記請求項の何れか一項に記載の製剤。
【請求項4】
連続的な注入系において使用されるのに適する、上記請求項の何れか一項に記載の製剤。
【請求項5】
前記溶液に等張性を与える薬剤、抗菌性保存剤、pH緩衝剤、及び適切な亜鉛塩をさらに含む、上記請求項の何れか一項に記載の製剤。
【請求項6】
前記可溶性のアシル化されたインスリン類縁体は、インスリンデテミアである、上記請求項の何れか一項に記載の製剤。
【請求項7】
ヒトインスリンを含むことを特徴とする、上記請求項の何れか一項に記載の製剤。
【請求項8】
前記単量体のインスリンは、インスリンアスパルトである、前記請求項を除いた上記請求項の何れか一項に記載の製剤。
【請求項9】
前記単量体のインスリンは、インスリンリスプロである、前記二つの請求項を除いた上記請求項の何れか一項に記載の製剤。
【請求項10】
前記単量体のインスリンは、インスリングルリシン(LysB3 , GluB29ヒトインスリン)である、前記二つの請求項を除いた上記請求項の何れか一項に記載の製剤。
【請求項11】
前記単量体のインスリンは、インスリンアスパルト、インスリンリスプロ、及びインスリングルリシン(LysB3 , GluB29ヒトインスリン)とは異なるものである、前記4つの請求項を除いた上記請求項の何れか一項に記載の製剤。
【請求項12】
前記インスリンの濃度は、下限が10 U/ml、好ましくは40 U/ml、さらに好ましくは100 U/ml、さらに好ましくは150 U/mlであり、上限が1500 U/ml、好ましくは1000 U/ml、より好ましくは500 U/mlである範囲にある、上記請求項の何れか一項に記載の製剤。
【請求項13】
前記保存剤はフェノール、m-クレゾール、又はフェノール及びm-クレゾールの混合物である、上記請求項の何れか一項に記載の製剤。
【請求項14】
前記フェノール及び/又はm-クレゾールの濃度が、約20 mM〜約50 mMの範囲であり、好ましくは約30 mM〜約45 mMの範囲である、上記請求項の何れか一項に記載の製剤。
【請求項15】
インスリンが自由に使える亜鉛イオンを、インスリン六量体当たり約2.3〜約4.5 Zn2+の範囲の割合(インスリン単量体当たり約0.38〜約0.75 Zn2+の範囲に相当)で含む、上記請求項の何れか一項に記載の製剤。
【請求項16】
前記亜鉛塩は塩化亜鉛、酸化亜鉛、又は酢酸亜鉛である、上記請求項の何れか一項に記載の製剤。
【請求項17】
ハロゲン化物イオンを、好ましくは塩化ナトリウムとして、約1〜約100 mM、好ましくは約5〜約40 mMに相当する量で含む、上記請求項の何れか一項に記載の製剤。
【請求項18】
等張剤として、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、またはそれらの混合物を、約100〜約250 mMの範囲の濃度で含む、上記請求項の何れか一項に記載の製剤。
【請求項19】
前記pH緩衝剤はリン酸ナトリウム、TRIS(トロメタモル)、N−グリシルグリシン、又はL−アルギニンである、上記請求項の何れか一項に記載の製剤。
【請求項20】
前記pH緩衝剤は、約3 mM〜約20 mMの範囲の濃度の、好ましくは約5 mM〜約15 mMの範囲の濃度の、生理学的に許容される緩衝剤である、上記請求項の何れか一項に記載の製剤。
【請求項21】
インスリンアスパルト及びインスリンデテミアの組合せを、連続的な注入系に適切な濃度で含む水性の可溶性製剤であって;さらに、フェノール類の保存剤(総濃度が約30 mM〜約40 mM)、等張剤としてグリセロール(総濃度が約0.17M)、第二リン酸ナトリウム(濃度約5 mM〜約7 mM)、約2.5〜約3.5 Zn2+/六量体インスリン又は約0.4〜約0.6 Zn2+/単量体インスリンに相当する亜鉛イオンから基本的に成る、上記請求項の何れか一項に記載の製剤。
【請求項22】
可溶性のアシル化されたインスリン類縁体の使用であって、インスリンの総量のうちの、前記可溶性のアシル化されたインスリン類縁体と単量体のインスリン又はヒトインスリンとのモル比の下限が7%、好ましくは11%、より好ましくは14%であり、前記可溶性のアシル化されたインスリン類縁体と単量体のインスリン又はヒトインスリンとのモル比の上限が57%、好ましくは41%、より好ましくは31%、さらに好ましくは24%、及びさらに好ましくは20%の範囲である量の、単量体のインスリン又はヒトインスリンを含む水性溶液中における物理学的安定性を改良するための、可溶性のアシル化されたインスリン類縁体の使用。
【請求項23】
前記物理学的安定性の改良は、フィブリル化の減少又は回避である、上記使用に対する請求項の何れか一項に記載の使用。
【請求項24】
実施例1に記載された試験によって決定される製剤の安定性因子が、約2.5以上、好ましくは約4以上である、上記請求項に記載の使用。
【請求項25】
可溶性のアシル化されたインスリン類縁体の使用であって、インスリンの総量のうちの、前記可溶性のアシル化されたインスリン類縁体と単量体のインスリン又はヒトインスリンとのモル比の下限が7%、好ましくは11%、より好ましくは14%であり、前記可溶性のアシル化されたインスリン類縁体と単量体のインスリン又はヒトインスリンとのモル比の上限が57%、好ましくは41%、より好ましくは31%、さらに好ましくは24%、及びさらに好ましくは20%の範囲である量の、単量体のインスリン又はヒトインスリンを含む水性溶液中におけるケトアシドーシスの危険を減少させるための、可溶性のアシル化されたインスリン類縁体の使用。
【請求項26】
薬学的組成物に対する上記従属請求項の何れかに具体的に記載された特徴の何れかによって特徴付けられる、上記二つの請求項の何れか一項に記載の使用。
【請求項27】
製剤に対する上記請求項の何れか一項に記載の薬学的製剤の治療的に有効な量を患者に投与することを含む、そのような治療を必要とする患者において糖尿病を治療する方法。
【請求項28】
薬学的組成物に対する上記従属請求項の何れかに具体的に記載された特徴の何れかによって特徴付けられる、上記請求項に記載の方法。
【請求項29】
可溶性のアシル化されたインスリン類縁体を含む、連続的な注入系におけるリザーバー。
【請求項30】
上記請求項に記載のリザーバーであって、可溶性のアシル化されたインスリン類縁体及び単量体のインスリン又はヒトインスリンを含む薬学的可溶性製剤を含み、ここで、前記可溶性のアシル化されたインスリン類縁体と単量体のインスリン又はヒトインスリンとのモル比の下限が7:93、好ましくは11:89、より好ましくは14:86であり、前記可溶性のアシル化されたインスリン類縁体と単量体のインスリン又はヒトインスリンとのモル比の上限が57:43、好ましくは41:59、より好ましくは31:69、さらに好ましくは24:76、及びさらに好ましくは20:80であるリザーバー。
【請求項31】
薬学的組成物に対する上記従属請求項の何れかに具体的に記載された特徴の何れかによって特徴付けられる、上記請求項の何れか一項に記載のリザーバー。
【請求項32】
ここに記載された、何れかの新規な特徴又は該特徴の組合せ。

【公開番号】特開2012−233003(P2012−233003A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−173117(P2012−173117)
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【分割の表示】特願2004−503039(P2004−503039)の分割
【原出願日】平成15年5月2日(2003.5.2)
【出願人】(509091848)ノヴォ ノルディスク アー/エス (42)
【Fターム(参考)】