説明

単離されたルシフェラーゼおよびその使用

【課題】ルシフェラーゼまたはそれらの機能的等価物の配列、および、それらの使用方法を提供する。
【解決手段】ルシフェラーゼLuAL、Lu164、Lu16、Lu39、Lu45、Lu52およびLu22またはそれらの機能的等価物の配列、および、該配列がその5’側に位置する機能的プロモーターを含む、DNAまたはRNA分子。そのヌクレオチド配列によってコードされるペプチド。ルシフェラーゼの、細胞系用レポータ遺伝子としての使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ルシフェラーゼLuAL、Lu164、Lu16、Lu39、Lu45、Lu52およびLu22のヌクレオチドおよびアミノ酸配列およびそれらの活性および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
「ルシフェラーゼ」
発光(ルミネッセンス)は励起されたエミッター分子が引き起こす可視スペクトル範囲内の光子放射に与えられる用語である。蛍光とは対照的に、発光のエネルギーは短波長照射の形で外部から供給されるものではない。
【0003】
化学発光と生物発光とは明確に区別されている。化学発光は、励起分子を与える化学反応に与えられた用語であって、その励起分子自体では、励起水準にある電子が正常エネルギー水準に戻る時に光を放射する。生物発光は、この反応が酵素で触媒される時に使用される用語である。この反応に関与する酵素は、一般にルシフェラーゼと呼ばれる。
【0004】
発光生物の総説は、Hastings et al. 1995にも記載がある。
【発明の開示】
【0005】
ルシフェラーゼは、ペルオキシダーゼであるか、またはモノオキシゲナーゼおよびジオキシゲナーゼである。この酵素の基質は光放出産物のための出発物質を形成し、ルシフェリンと呼ばれる。その基質は種毎に異なっている。この系の量子収率は、変換される基質分子当り、0.1フォトンと0.9フォトンとの間にある(Idelgaufts, 1993)。
【0006】
ルシフェラーゼは、その起源またはその酵素的性質に基づいて分類できる。以下の表は、数型のルシフェラーゼについて全体像を示す。
【0007】
表1 細菌ルシフェラーゼ
【表1】

【0008】
表2 セレンテラジン依存性真核生物ルシフェラーゼ
【表2】

【0009】
表3 セレンテラジン非依存性真核生物ルシフェラーゼ
【表3】

【0010】
ルシフェラーゼは、その基質特異性に基づいても相互に区別できる。最重要な基質には、セレンテラジン(Jones et al. 1999)およびルシフェリン、およびこれら二化合物の誘導体が含まれる。これら基質の図およびそのルシフェラーゼによる変換について以下に記載する。
【0011】
「ルシフェラーゼ基質」
数種のルシフェラーゼ基質およびその変換については下記の実施例に記載する。本明細書に記載する基質は全て、光および二酸化炭素(CO2)の放出および酸素(O2)の消費を伴って、酵素的に変換される。補助因子またはエネルギー輸送体(たとえば、ホタル・ルシフェラーゼの場合のATP)に対するこの反応の依存性は、酵素特異的である。
【0012】
セレンテラジン
【化1】

エクオリンによるセレンテラジンからセレンテラミドへの変換であって、波長470nmの光放射を伴う。
【0013】
【化2】

ホタル・ルシフェラーゼによるルシフェリンからオキシルシフェリンへの変換であって、波長560nmの光放射を伴う。
【0014】
【化3】

ウミホタル・ルシフェリンからウミホタル・オキシルシフェリンへのウミホタル・ルシフェラーゼによる変換であって、波長460nmの光放射を伴う。
【0015】
「レポータシステム」
レポータ遺伝子または標識遺伝子は、ある遺伝子の遺伝子産物が単純な生化学的または組織化学的方法を使用すれば、容易に検出できるような遺伝子に、一般的に与えられる用語である。レポータ遺伝子には、少なくとも二つの型が認められている。
1)耐性遺伝子:耐性遺伝子は、その発現が抗生物質、その他、耐性遺伝子が存在しなければ細胞死を起こす物質の培養培地中における存在に対する耐性を細胞に与える遺伝子を示す用語である。
2)レポータ遺伝子:組換えDNA技術では、レポータ遺伝子の産物は融合標識または非融合標識として使用される。最も通常のレポータ遺伝子には、ベータガラクトシダーゼ(Alam et al. 1990)、アルカリフォスファターゼ(Yang et al. 1997;Cullen et al. 1992)、ルシフェラーゼおよびその他のフォトプロテイン(Shimomura, 1985; Philips GN, 1997; Snowdowne et al. 1984)が含まれる。
【0016】
「Metridia longa種の分類」
節足動物門→→甲殻綱→→櫂脚類
Metridia longa 種は甲殻綱、特に櫂脚類または動物プランクトンに属する。
【0017】
「cDNAの単離」
Metridia longa 種の生物発光活性を研究するため、白海で標本を採集し(カルテシュ(Kartesh)生物学研究所、ロシア)、液体窒素中に保存した。Metridia longaのcDNAライブラリーを調製するため、イソチオシアネートを用いるKrieg(Krieg et al. 1996)の方法により、RNAを単離した。
【0018】
cDNAは、RT−PCT法で調製した。そのために、RNA10μgと逆転写酵素(Superscript Gold II)とを次の方式でインキュベーションした。
【0019】
PCR 1. 30秒 95℃
2. 6分 68℃
3. 10秒 95℃
4. 6分 68℃
段階3、段階4: 17サイクル
【0020】
ポリメラーゼを不活化するため、反応産物とプロテイナーゼKとを、37℃で30分間インキュベーションし、cDNAをエタノールで沈降させた。cDNAを水に溶解し、SfiIとともに37℃で1時間インキュベーションした。反応産物をゲル濾過に付して、小さな断片を分離除去した。次にこの分画したcDNAをSfiI断片と脱リン酸化λTriplEx2ベクターとに結合した。λファージの発現ライブラリーを調製するために、次にin vitro パッケージングシステムにSMART・cDNAライブラリー組立てキット(Clontech社)を用いて、クローニングしたcDNA断片をλファージにパッケージした。
【0021】
セレンテラジン依存性ルシフェラーゼを発現する可能性のあるcDNA挿入体を含む組換えファージは、ライブラリースクリーニングを行うことによって確認した。
【0022】
そのために、E. coli XL1-Blueを含む菌叢を90mm培養皿に塗布し、37℃で10時間インキュベーションした。これを、培養皿当り2500ファージに感染させ、続いてこれを8時間37℃でインキュベーションして、プラークを形成させた。続いて培養皿を4℃に1時間放置して軟い寒天を固化させた。
【0023】
レプリカ平板培養を行うために、ニトロセルロース膜をE. coli XL1-Blue懸濁液で飽和した後、乾燥した。乾燥した膜をファージプラークに60秒間載せた後、新しい寒天プレート上に載せた。続いて、この寒天プレートを37℃で2時間インキュベーションし、SOB培地(+10mM−MgSO4、0.2%マルトース)を4ml添加した。この菌叢を脱着し、LB培地(+20mm−IPTG)に再懸濁し、37℃で1時間インキュベーションした。細菌を遠心分離で収集し、超音波で破砕し、セレンテラジンを添加した後に、光度計で生物発光活性を測定した。
【0024】
陽性の生物発光シグナルを示す培養プレートをセクターに分け、新たなレプリカ培養を行った。レプリカ培養は、個々の活性なプラークが確認されるまで続行した。陽性プラーク内にあるファージに、cDNA挿入物をサブクローニングするために[lacuna]、E. coli BM25.8株内のpTriplEx2ベクターにSMART・cDNAライブラリー組立てキットを製造社の指示書に従って使用してサブクローニングを行った。このpTriplEx2・cDNAをトランスフェクトしたE. coli を100μg/ml濃度のアンピシリンを含有するLB培地中、一夜37℃でインキュベーションした。オーバーエクスプレッションを達成するために、一夜培養物をLB培地で1:150に希釈し、37℃で1時間インキュベーションした。次に、IPTG(イソプロピルチオガラクトシド)を最終濃度20mMになるように加えることによって、インダクションを行った。誘導された培養物を37℃で1時間インキュベーションし、細菌を遠心分離によって収集した。この細胞をSM緩衝液0.5ml中、超音波で破砕した。セレンテラジン(10−4M、メタノール)10μLを添加した後に光度計で化学発光を測定した。
【0025】
セレンテラジン依存性ルシフェラーゼ活性を示すルシフェラーゼ3種を確認した。このルシフェラーゼをそれぞれLu164、LuAL、Lu22と命名した。これらルシフェラーゼについては、以下に詳記する。
【0026】
本発明は、このルシフェラーゼ3種の機能的等価物も包含する。機能的等価物とは、類似の基質スペクトルを持ち、分泌され、さらに少なくとも70%の相同性があるルシフェラーゼである。80%または90%の相同性は、好適である。95%の相同性は殊に好適である。
【0027】
このルシフェラーゼは、細胞系、特に受容体、イオンチャネル、トランスポータ、転写因子または誘導系のためのレポータ遺伝子としての使用に適する。
【0028】
このルシフェラーゼは、例えば力価測定のために、または生化学系、特にプロテイナーゼのための基質として、細菌系内で使用できる。
【0029】
このルシフェラーゼは、たとえば、ELISA、免疫組織化学またはウェスタンブロッティングのために、抗体、その他のタンパク質に結合したレポータ酵素としても使用できる。
【0030】
このルシフェラーゼは、BRET系(生物発光共鳴エネルギー遷移系)の中でも使用できる。
【0031】
このルシフェラーゼは、共焦点顕微鏡術のための、またはタンパク質−タンパク質相互作用の分析のための、融合タンパク質としての使用にも適している。
【0032】
このルシフェラーゼは、たとえばELISAまたは固定などのために、ビオチン、NHS、BrCNまたはその他の結合メディエータと結合したレポータ酵素としても使用できる。
【0033】
このルシフェラーゼは、さらに、たとえばノーザンおよびサザンブロッティングまたは実時間PCRなどのために、DNAまたはRNAオリゴヌクレオチドと結合したレポータ酵素としても使用できる。
【0034】
本発明はまた、野生型としてまたはタグタンパク質としての本ルシフェラーゼの精製に関し、さらに生体内翻訳系内におけるルシフェラーゼの使用に関する。
【0035】
ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列
LuAL
ルシフェラーゼLuALは、分子量23.7kDa、等電点8.32を有するタンパク質である。このコード化ヌクレオチド配列は以下のとおり:
【表4】

であり、これから次表のアミノ酸配列:
【表5】

、および次表のアミノ酸組成:
【表6】

が導かれる。
【0036】
Lu164
ルシフェラーゼLu164は、分子量23.8kDa、等電点7.81を有するタンパク質である。このコード化ヌクレオチド配列は次のとおり:
【表7】


であり、これから次表のアミノ酸配列:
【表8】

および次表のアミノ酸組成:
【表9】

が導かれる。
【0037】
Lu22
ルシフェラーゼLu22は、分子量20.2kDa、等電点7.89を有するタンパク質である。このコード化ヌクレオチド配列は次のとおり:
【表10】

であり、これから次表のアミノ酸配列:
【表11】



、および次表のアミノ酸組成:
【表12】

が導かれる。
【0038】
これらの配列は配列表にも記載する。
【0039】
ルシフェラーゼの酵素活性および生化学的特性
タンパク質LuAL、Lu164およびLu22は酵素であって、セレンテラジンを変換する時に光を放射する。それ故、いずれもルシフェラーゼ群に属する。ルシフェラーゼは、細菌および真核生物細胞の双方において有効に発現させることができる。真核生物細胞にて発現させるルシフェラーゼLuAL、Lu164およびLu22は分泌される。細菌で発現すると、分泌は起きない。
【0040】
ルシフェラーゼの活性は、温度依存的である。ルシフェラーゼLuALおよびLu164の至適温度は、各々22℃ (LuAL)、27℃(Lu164)と測定されている。ルシフェラーゼLu22活性の至適温度は、4℃またはそれ以下である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
実施例
プラスミド/組立て物
以下に記載する組立て物を製造するために使用するベクターは、Clontech社のベクターpcDNA3.1(+)とpTriplEx2、およびベクター pASMplr(cAMP感受性プロモータエレメント:creを有する当社内組立て物)であった。このベクターの誘導体は、pcDNA3−x、pTriplEx2−x およびpASM−xと命名した。
【0042】
LuAL
図1は、ベクターpTriplEx2−LuAL、pcDNA3−LuAL、およびpASM−LuALのプラスミド地図を示す。
【0043】
図2は、ベクターpTriplEx2−Lu164、pcDNA3−Lu164、およびpASM−Lu164のプラスミド地図を示す。
【0044】
図3は、ベクターpTriplEx2−Lu22、pcDNA3−Lu22、およびpASM−Lu22のプラスミド地図を示す。
【0045】
Lu164の基質としてのセレンテラジン誘導体
Lu164の基質を確認するために、各種セレンテラジン誘導体の10μL溶液(10−4M)を、各々CHO−pcDNA3−Lu164細胞系列からの上清液10μLとともに、インキュベーションし、発光を測定した。各セレンテラジンは、Molecular Probes社(米国)から購入した。
【0046】
ルシフェラーゼLuALおよびLu22の場合には、ルシフェラーゼLu164と比較して相違点が見当らなかった。未修飾セレンテラジン (図B、セレンテラジンa) が、Lu164、LuALおよびLu22のための至適基質であることが確認された。
【0047】
図4は、Lu164の基質になる可能性があるセレンテラジン誘導体を示し、ここに、8.7kV、30秒間光度計で測定した発光のグラフ(RLU=相対光度単位:relative light unit)とセレンテラジン誘導体の分子構造とを示す。
【0048】
セレンテラジンに依存するルシフェラーゼLu164、LuAL、およびLu22の酵素活性
細菌での発現
細菌発現は、この細菌を発現プラスミドpTriplEx2−Lu164、 pTriplEx2−LuAL、およびpTriplEx2−Lu22で形質転換した結果として、E. coli のBL21 (DE3) 株内で行った。形質転換した細菌をLB培地中、37℃で3時間インキュベーションし、1mM最終濃度になるようにIPTGを加えて4時間、発現を誘導した。誘導された細菌を、遠心分離で収集し、PBSに再懸濁し、超音波で破砕した。セレンテラジン(10−4M、メタノール)、またはルシフェリン(ホタル・ルシフェリン)を溶解液5μL(5mg/mL)に加え、化学発光を測定した。
【0049】
測定は、RLU(相対光度単位)によって9.5kV、30秒間行った。Lu164、LuAL、Lu22の各々の場合に、RLUの測定値230000、320000および260000が得られた。これら酵素を、各ベクターpTriplEx2−Lu164、pTriplEx2−LuALおよびpTriplEx2−Lu22を用いて、E. coli のBL21(DE3)株内で発現した。
【0050】
真核生物での発現
構成的真核生物発現は、一過性の実験で発現プラスミドpcDNA3−Lu164、pcDNA3−LuALおよびpcDNA3−Lu22で細胞を形質転換することによってCHO細胞内で行った。そのために、96穴マイクロタイタープレートの各ウェルに、DMEM−F12培地中の細胞10000個を塗布し、37℃で一夜インキュベーションした。このトランスフェクションは、製造社の指示書に従い、Fugene6キット(Roche社)を使用して行った。遺伝子移入を受けた細胞をDMEM−F12培地中、37℃で一夜インキュベーションした。セレンテラジン(10−4M、メタノール)添加後、培地(5μL)と細胞溶解液(5μL)の化学発光を室温、9.5kV、30秒間光度計で測定した。
【0051】
Lu164、LuALおよびLu22の場合に、各々測定値680000、670000及び510000RLU(相対光度単位)の値が得られた。発現は、ベクターpcDNA3−Lu164、pcDNA3−LuALおよびpcDNA3−Lu22を使用してCHO細胞内で行った。
【0052】
ルシフェラーゼLu164、 LuALおよびLu22の放射スペクトル
放射スペクトルを測定するために、E. coli のBL21(DE3)株細胞をプラスミドpTriplEx2−Lu164、pTriplEx2−LuALおよび pTriplEx2−Lu22で形質転換し、前記3.1に記載のようにしてオーバーエクスプレッションした。細菌溶解液100μL容にセレンテラジン(10−4M;50μL)を添加し、放射スペクトルを測定した。各ルシフェラーゼが発する放射スペクトルのグラフを以下に記載する。
【0053】
ルシフェラーゼLu164、LuALおよびLu22の場合には、基質の形質転換に起因する最大放射は、波長約490nmに起きた。
【0054】
図5は、細菌発現後に観察されるルシフェラーゼLu164(A)、LuAL(B)、およびLu22(C)の放射スペクトル(RLU=相対光度単位)を示す。
【0055】
Lu164およびLuALを例としての、CHO細胞からのルシフェラーゼLu164、LuALおよびLu22の分泌
真核生物細胞内でのルシフェラーゼLu164、LuALおよびLu22の発現を特徴付けるために、CHO細胞にプラスミドpcDNA3−LuAL、pcDNA3−Lu164およびpcDNA3−Fireluc、およびpcDNA3.1(+)を安定的に遺伝子移入した。得られたクローンは、DMEM−F12培地中で培養した。ホタル・ルシフェラーゼは、非分泌性ルシフェラーゼの陽性対照として使用した。プラスミドpcDNA3.1(+)は、CHO親細胞の内因性活性があれば検出するための対照プラスミドとして使用した。
【0056】
ルシフェラーゼの分泌を検出するために、384穴マイクロタイタープレートに細胞2000個を塗布した。24時間後、培地を去り、細胞をTyrode溶液で洗浄し、新鮮培地30μLを加えた。ホタル・ルシフェラーゼの場合には、セレンテラジン (10−4M)またはルシフェリンの5μLを加えた後、最初の測定(0時間)は、光度計で9.5kV、30秒間行った。それから1時間から5時間後に1時間から5時間の測定を行った。
【0057】
図6は、培地中におけるルシフェラーゼ活性の時間依存的増加を示す。ホタル・ルシフェラーゼは分泌されなかった。各ルシフェラーゼLuAL、Lu164およびLu22は分泌性のルシフェラーゼである。
【0058】
図6は、pcDNA3−LuAL、pcDNA3−Firefly、pcDNA3−Lu164またはpcDNA3(cDNA挿入のない対照ベクター)をCHO細胞に遺伝子移入した後のCHO細胞培地(5μL)内ルシフェラーゼ活性を示す。(RLU=相対光度単位;h=時間;Firefly=ホタル・ルシフェラーゼ)
【0059】
ルシフェラーゼ活性の温度依存性
ルシフェラーゼLu22、Lu164およびLuALの温度依存性を測定するために、CHO細胞にベクターpcDNA3−Lu22、pcDNA3−Lu164、pcDNA3−LuALを一過性に遺伝子移入し、上清液のルシフェラーゼ活性を0℃と47℃との間の温度で測定した。この測定のために、細胞上清液とセレンテラジン溶液とを5分間測定温度に順応させた。測定は光度計で9.5 kV、30秒間行った。
【0060】
図7は、ルシフェラーゼLuAL、Lu164およびLu22の場合に、温度に依存して発光が測定されることを示している。ルシフェラーゼ活性についての至適温度は、LuALでは27℃である。Lu164およびLu22の場合は、至適温度はそれぞれ22℃ および4℃またはそれ以下であることが観測された。
【0061】
図7は、pcDNA3−LuAL、pcDNA3−FireflyおよびpcDNA3−Lu164を遺伝子移入した後のCHO細胞培地(5μL)内温度依存性ルシフェラーゼ活性を示す。(RLU=相対光度単位;培地=DMEM−F12+10%FCS)
【0062】
ルシフェラーゼLu164、LuALおよびLu22のCHO細胞内誘導的発現;LuALを例として
この実験では、CHO細胞に、発現プラスミドpASM−LuALを一過性に遺伝子移入して真核生物での発現を誘導した。そのために、96穴マイクロタイタープレートにウェル当りDMEM−F12培地中の細胞10000個を塗布し、一夜37℃でインキュベーションした。遺伝子移入は、製造社の指示書に従ってFugene 6キット(Roche社)を使用して行った。遺伝子移入した細胞は、DMEM−F12培地中、37℃で一夜インキュベーションした。次に細胞をフォルスコリン(Forkolin;10−5M)で5時間誘導した。次に、セレンテラジン(10−4M、メタノール)を添加後、培地内および細胞溶解物内の化学発光を、9.5kV、30秒間、光度計で測定した。
【0063】
図8は、CHO細胞内におけるLuALの誘導性発現を示す。この発現は37℃で5時間フォルスコリン(10−5M )を用いて誘導した。この活性は、細胞上清液10μL中で測定した(RLU=相対光度単位;誘導係数=誘導RLU対非誘導RLUの比率)。
【0064】
受容体NPY2および受容体A2Aおよびレポータ遺伝子にLuALを使用するものを例としての、ルシフェラーゼLu164、LuALおよびLu22の細胞系内レポータ遺伝子としての使用
細胞に基づく系でGプロテイン共役受容体の活性化の受容体特異的リガンドによる分析を可能にするために、ルシフェラーゼLuALのcDNA配列を、発現ベクターpASMplrにクローニングした。この発現ベクター、pASMplrは、camp−感受性のプロモータエレメント(CRE)を含み、campの細胞内濃度を間接的に測定することを可能にする。この系では、ルシフェラーゼがレポータ遺伝子として役立っている。
【0065】
細胞系において、ルシフェラーゼLu22、Lu164、およびLu22をレポータ遺伝子として用いることが、Gプロテイン共役受容体NPY2 (神経ペプチド受容体2) およびA2A(アデノシン受容体2a)を例として、証明された。そのために、安定なクローンCHO−pASM−LuALに、ベクターpcDNA3−NPY2またはベクターpcDNA3−A2Aを一過性に遺伝子移入した。受容体NPY2はGi−共役受容体である一方で、A2A受容体はGs−共役受容体である。
【0066】
A2A受容体は、1μM−NECAを添加して4時間活性化した。NPY2受容体は、10−5Mフォルスコリンの存在下に10μM−NPY2ペプチドを加えることによって活性化した。ルシフェラーゼ活性は、セレンテラジン(10−4M)添加後、前記培地(30μL)中、光度計で9.5kV、30秒間測定した。
【0067】
図9は、細胞系のためのレポータ遺伝子としてのルシフェラーゼの使用を、Gプロテイン共役受容体であるA2AおよびNPY2を一例として示すものである。(RLU=相対光度単位)
【0068】
【表13】

【0069】
【表14】

【0070】
【表15】

【0071】
【表16】

【0072】
【表17】

【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】ベクターpTriplEx2−LuAL、pcDNA3−LuAL、およびpASM−LuALのプラスミド地図を示す。
【図2】ベクターpTriplEx2−Lu164、pcDNA3−Lu164、およびpASM−Lu164のプラスミド地図を示す。
【図3】ベクターpTriplEx2−Lu22、pcDNA3−Lu22、およびpASM−Lu22のプラスミド地図を示す。
【図4】8.7kV、30秒間光度計で測定した発光のグラフ(RLU=相対光度単位:relative light unit)とLu164の基質になる可能性があるセレンテラジン誘導体の分子構造とを示す。
【図5】細菌発現後に観察されるルシフェラーゼLu164(A)、LuAL(B)、およびLu22(C)の放射スペクトル(RLU=相対光度単位)を示す。
【図6】pcDNA3−LuAL、pcDNA3−Firefly、pcDNA3−Lu164またはpcDNA3(cDNA挿入のない対照ベクター)をCHO細胞に遺伝子移入した後のCHO細胞培地(5μL)内ルシフェラーゼ活性を示す。
【図7】pcDNA3−LuAL、pcDNA3−FireflyおよびpcDNA3−Lu164を遺伝子移入した後のCHO細胞培地(5μL)内温度依存性ルシフェラーゼ活性を示す。
【図8】CHO細胞内におけるLuALの誘導性発現を示す。37℃にて5時間フォルスコリン(10−5M )で細胞を誘導した。この活性は細胞上清液10μL中で測定した(RLU=相対光度単位;誘導係数=誘導RLU対非誘導RLUの比率)。
【図9】Gプロテイン共役受容体であるA2AおよびNPY2を一例としての、細胞系のためのレポータ遺伝子としてのルシフェラーゼの使用を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルシフェラーゼLuAL、Lu164、Lu16、Lu39、Lu45、Lu52またはLu22またはそれらの機能的等価物の配列を有する、DNAまたはRNA分子。
【請求項2】
該配列がその5’側に位置する機能的プロモーターを含む、請求項1に記載の分子。
【請求項3】
組換えDNAベクターまたはRNAベクターの一成分である、請求項2に記載の分子。
【請求項4】
請求項3に記載のベクターを有する生物。
【請求項5】
該DNA配列またはRNA配列と同一または相補的な、10個以上の連続したヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチド。
【請求項6】
請求項1に記載のヌクレオチド配列によってコードされるペプチド。
【請求項7】
Lu164、LuALまたはLu22に対する抗体によって免疫学的に認識される、5個以上の連続したアミノ酸を含む、ペプチド。
【請求項8】
請求項1から6までに記載したルシフェラーゼの、細胞系用レポータ遺伝子としての、使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−54689(P2008−54689A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264492(P2007−264492)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【分割の表示】特願2002−545175(P2002−545175)の分割
【原出願日】平成13年11月22日(2001.11.22)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】