説明

印刷による模様を受容する平面シート、該平面シートを製造する方法、および該平面シートの使用

2つの表面(18、20)のうちの一方の表面に、印刷による模様を受容する孔(16)が形成された平面シートにおいて、糸(12、14)、特に合成繊維を交差させて織製した織物片(10)が、2つの表面(18、20)に異なる色を有しており、明るい色の表面(20)が印刷による模様を有している。さらに詳しくは、織物片(10)は、単繊維または多繊維の合成織物であって、黒色の糸(12、14)で作られ、または黒色に染色された糸で作られており、一方の表面(20)が白色(24)に染色されている。糸は、同一レベルでけん縮され、明るい色の表面(20)が、高い白色度を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の、印刷による模様を受容する平面シートに関する。さらに、本発明は、前記平面シートの製造方法および前記平面シートの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
前面が白色であり裏面が黒色である有孔フィルムまたは紙からなる印刷用の基材(被印刷物)は、市場において入手することが可能であり、白色の前面に印刷が行われる。この印刷用の基材が、窓ガラスまたは透明な面を有する支持体に取り付けられた場合、印刷模様を外側(前面側)から二次元で見ることができ、内側(裏面側)からは、観察者は黒色の裏面を通して、例えば屋外を見ることができるが、白色の前面に存在する印刷模様は、観察者には見えない。この特徴によれば、第1に内側(裏面側)からは透明性であり、第2に日光に対する保護作用を得ることができるとともに、外から見られることを防止する大きな広告領域を前記窓ガラスまたは透明支持体上に生み出すことができる。例えば、屋外の環境がより明るいと仮定するならば、黒色の裏面によって観察者の視界には、この裏面の反対側である前面側で起きている事象が入ることになる。広告面、すなわち一方向からのみ透けて見える面の印刷は、例えばスクリーン印刷といったあらゆる印刷方法によって行なうことができる。
【0003】
スクリーン印刷方法は、中国において初めて用いられてから数世紀後の19世紀以降に欧州において普及した技術であり、受容面(印刷面)がスクリーン印刷フレームに張り渡され、画像がない領域(すなわち、印刷されない領域)がインクを通さないようステンシルによって覆われる。今日では、例えばラベル用の手作業で切り抜かれたステンシルのほかに、写真技術によって作られた直接ステンシルまたは間接ステンシルが通常使用される。直接ステンシルの場合には、エマルジョンを用いるステンシル、直接フィルムおよびエマルジョンを用いるステンシル、または直接フィルムおよび水を用いるステンシルの選択は、スクリーン印刷作業者の判断に任されている。
【0004】
さらに、国際公開第WO99/065680号パンフレットが、描像可能なコンポーネントを有するグラフィック・マルチコンポーネント基材を開示しており、このコンポーネントは、描像が可能な第1の主表面および第2の主表面を有している描像可能な有孔ポリマーフィルム上層と、この描像可能なフィルム上層の第2の主表面に取り付けられる不透明であって光を吸収する有孔ポリマーフィルム層と、さらに、第1の主表面および第2の主表面を有するほぼ透過性であるスクリム層からなる固定用コンポーネントとを含んでいる。この固定用コンポーネントを、前記描像可能なフィルム上層の前記第1の主表面に描像することにより形成された画像層に貼り付けるため、感圧接着剤層が前記スクリム層の第1の主表面に塗布され、熱活性接着剤の層が前記スクリム層の第2の主表面に塗布される。
【発明の開示】
【0005】
前記の従来の技術に鑑み、本発明の発明者は、冒頭において述べたようなシートの改良、特にシートの新規な用途を提供することを目的としている。
【0006】
独立請求項の教示により、この目的が達成され、従属請求項が有利な発展形態を示している。さらに、本発明の範囲には、明細書、図面および/または特許請求の範囲において開示される特徴のうちの少なくとも2つからなるあらゆる組み合わせが含まれる。寸法範囲が指定される場合には、前述の上下限値の範囲にある値もまた開示されたものとし、所望に応じて使用できるものとする。
【0007】
本発明によれば、糸、特にプラスチック繊維を交差させて織製した織物片の両表面に、異なる染色が施されており、より明るい色が染色された表面側に印刷による模様が施される。したがって、この表面が、一方向からのみ透けて見える面となる。印刷模様は、その表面の全面積にわたって、または部分的に施されてもよく、また、画像の再現および/または原稿の一部からなり、例えば広告用のデザインのためのものである。
【0008】
本発明によるシートは、好ましくは単繊維の合成織物であるが、多繊維の合成織物を使用することも可能である。合成織物は、精密に織製され、次いで可能なかぎり濃く黒色に染色され、引き続いてその合成織物の少なくとも一方の表面が、より大きな糸の表面を得る目的、および印刷画像の形成を改善する目的で、糸の交差部を同一高さに位置させるために、好ましくは所定の温度および所定の速度で高温ロールおよび低温ロールによる特殊なカレンダー加工によって平坦化される。これらの目的のために、織物片の厚さを小さくしてもよい。
【0009】
さらに、適切であれば、可融性の鞘を有する特有の糸(鞘糸)が使用され、織製作業の後で糸の交差部が溶かされることが、本発明の重要な点である。この方法で、糸のほつれを少なくすることができ、あるいは完全に防止することさえ可能である。
【0010】
本発明によれば、カレンダー加工の作業において、高温ロールが、印刷を施す面に主として使用され、低温ロールが、黒色のまま残る面に使用される。低温ロールは、背面(低温ロールが適用される面とは反対側の面)がほとんど、あるいは全く平坦化されないという効果を有しており、この効果により、織物および透明性が最適に維持される。
【0011】
本発明の他の特徴によれば、可能なかぎり高い白色度を有する白色の特別なインクが、織物片の一方の表面に塗布される。広告デザイン用のプリンタによって使用されるUV、溶剤、および水性インクなどの種々のインク系は、この白色インクと十分に結合する必要がある。
【0012】
本発明によれば、織物片全体を、黒色の糸で製造することも可能であり、次いで一方の表面を、前記白色インクで塗布することができる。
【0013】
本発明の範囲は、さらに、前述のシートを、一方の表面に印刷された広告用シートとしての使用を含んでおり、この広告シートは、特に、例えば窓ガラスの内側など、透明な支持体に貼り付けられる。この軽量な広告用シートは、すでに述べたように、一方の表面からは透けて見え、再使用可能である。
【0014】
本発明の他の利点、特徴、および詳細は、添付図面に示す本発明の好ましい実施形態の以下の説明で明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
織物片10は、黒色の糸12、14を交差させて網目状に織製される。交差する黒色の糸12、14が、ほぼ正方形の網目の孔16を画定している。これらの糸12、14は、特に単繊維または多繊維の合成織物のプラスチック繊維であり、黒色の材料または黒色に染色された材料から製造されている。
【0016】
糸12、14が、暗い色の表面18を形成し、他方の表面20には、高い白色度の白色染色層24が設けられている。図2において、白色染色層24の両側部は、表面20の黒色の網目領域22によって定められている。
【0017】
染色層24が画像を再現するための受容面として使用される構成は、図示されていない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】織物片の一方の表面を示す平面図である。
【図2】織物片の一方の表面を示す平面図である。
【符号の説明】
【0019】
10 織物片
12,14 糸
16 網目の孔
24 白色染色層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸(12,14)を交差させて織製した織物片(10)からなる平面シートであって、2つの表面(18、20)を有し、これら2つの表面(18、20)のうちの一方の表面に、印刷による模様を受容する孔(16)が形成されており、織物片(10)の両表面(18、20)が異なる色で染色されており、明るい色の表面(20)に、前記印刷による模様が施される平面シートにおいて、
前記織物片(10)が黒色の糸(12、14)によって織製され、一方の表面(20)に白色のインク(24)が塗布されて、前記明るい色の表面(20)が形成されていること、または
前記織物片(10)が黒色に染色された合成織物として形成され、一方の表面(20)に白色のインク(24)が塗布されて、前記明るい色の表面(20)が形成されていることを特徴とする平面シート。
【請求項2】
請求項1において、前記合成織物(10)が単繊維または多繊維からなることを特徴とする平面シート。
【請求項3】
請求項1または2において、前記明るい色の表面(20)のインク(24)が、比較的高い白色度を有していることを特徴とする平面シート。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項において、カレンダー加工により、糸(12,14)にけん縮を与えていることを特徴とする平面シート。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項において、前記糸(12、14)が可融性の鞘を有していることを特徴とする平面シート。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の平面シートを製造する方法において、
糸を交差させて織製した織物片(10)が、黒色に染色され、黒色に染色した後に、織物片(10)の一方の表面に白色のインクが塗布されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6において、前記平面シートが単繊維の合成織物からなり、少なくとも一方の表面が、黒色に染色された後に平坦化されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6において、前記平面シートが多繊維の合成織物からなることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか一項に記載の平面シートを製造する方法において、
黒色の糸を交差させて織製した織物片(10)の一方の表面に、白色のインクが塗布されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9において、前記平面シートが、単繊維の合成織物からなることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9において、前記平面シートが多繊維の合成織物からなることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項6または9において、比較的高い白色度を有しているインクが塗布されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項7から12のいずれか一項において、前記合成織物の厚さを、カレンダー加工によって小さくすることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10または11において、前記合成織物の両表面のうちの一方の表面が、平坦化されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13において、カレンダー加工が、前記織物片の、印刷される一方の表面を高温で処理し、黒色のままに残る他方の表面を低温で処理して行なわれることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15において、前記織物片の、印刷される一方の表面に1つまたは複数の高温ロールを、他方の表面に1つまたは複数の低温ロールを用いることによって、カレンダー加工を行うことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項7から16のいずれか一項において、糸にけん縮を与えることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項6から17のいずれか一項において、可融性の鞘を有している糸を用い、織製作業の後に糸の交差部が溶かされることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項6または9において、前記白色の表面に、画像および/または文字が印刷されることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1から5のいずれか一項に記載の平面シートを、一方の表面に印刷がされた広告用シートとして用いる使用方法。
【請求項21】
請求項20において、前記広告用シートを透明な支持体に貼り付けることを特徴とする使用方法。
【請求項22】
請求項21において、前記透明な支持体が窓ガラスであることを特徴とする使用方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−532799(P2007−532799A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508801(P2007−508801)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004023
【国際公開番号】WO2005/100668
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(502369414)ゼファー・アクチエンゲゼルシャフト (7)
【氏名又は名称原語表記】SEFAR AG
【Fターム(参考)】