説明

印刷インキ組成物

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、印刷インキ組成物に関わり、さらに詳しくは、コーヒー、ジュース等の飲料を入れる飲料缶の如き金属缶などに耐腐食性、装飾性等を付与するために利用される熱ラミネート用ポリエステルフィルム等の熱ラミネート用プラスチックフィルムの印刷に使用される印刷インキ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】コーヒー、ジュース等の飲料を入れる飲料缶の如き金属缶の外面には、耐腐食性、装飾性等を付与したり、あるいは内容物を表示するなどのために、一般に塗装および印刷が施されている。このような塗装および印刷を行う際には、従来、金属板に下塗り塗装(ホワイトコート)を施して、その上にオフセット印刷を行い、さらに上塗り塗装(クリヤーコート)を施した塗装金属板を金属缶に加工する方式が採用されていた。しかし、このような方式では、各々の工程で焼き付けを行って、塗料や印刷インキの乾燥ないし硬化を促進させなければならず、多大な時間とエネルギーが必要であった。そこで、前記方式に代えて、事前にグラビア印刷方式で印刷したプラスチックフィルムを熱硬化型接着剤により金属板に熱ラミネートして、ラミネート金属板を作製する方法が実用化され始めており、この方法では、前記方式より処理工程が少なくなり、生産性の向上とコストの低減が図れるという利点がある。また、前述したラミネート金属板に用いられる熱ラミネート用プラスチックフィルムとして、主にポリエステルフィルムが使用されており、このポリエステルフィルムは、従来から食品包装の分野で幅広く利用されている材料であるが、それにグラビア印刷する印刷インキ組成物は、ポリウレタン樹脂と塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体との混合物をバインダーとするものが主流となっている。しかしながら、このような印刷インキ組成物により印刷したラミネート金属板から加工された金属缶は、蒸気殺菌処理(レトルト処理)を施した場合、ネック部のような変形の大きい部分で、インキ層とポリエステルフィルムとの間に剥離を引き起こしたり、またラミネート層に水蒸気の透過による白化現象が発生するなどの問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、特に、ラミネート金属板から加工された金属缶の蒸気殺菌処理後においても、インキ層とプラスチックフィルムとの間に十分な密着性を保持でき、かつ水蒸気の透過によるラミネート層の白化現象を防止しうる、熱ラミネート用プラスチックフィルムの印刷に使用される印刷インキ組成物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、第一に、バインダーとして、(イ)フェノキシ樹脂と多塩基性カルボン酸無水物とのエステル化物からなるカルボキシル基含有フェノキシ樹脂あるいは(ロ)前記カルボキシル基含有フェノキシ樹脂とフェノキシ樹脂および/またはポリウレタン樹脂との混合物、を使用することを特徴とする熱ラミネート用プラスチックフィルムの印刷に使用され印刷インキ組成物、からなる。
【0005】本発明は、第二に、バインダーとして、(イ)フェノキシ樹脂と多塩基性カルボン酸無水物とのエステル化物からなるカルボキシル基含有フェノキシ樹脂あるいは(ロ)前記カルボキシル基含有フェノキシ樹脂とフェノキシ樹脂および/またはポリウレタン樹脂との混合物、を使用し、かつ組成物中にブロック化されたイソシアネート基を有する有機化合物を含有することを特徴とする熱ラミネート用プラスチックフィルムの印刷に使用される印刷インキ組成物、からなる。
【0006】本発明は、第三に、バインダーとして、(イ)フェノキシ樹脂と多塩基性カルボン酸無水物とのエステル化物からなるカルボキシル基含有フェノキシ樹脂あるいは(ロ)前記カルボキシル基含有フェノキシ樹脂とフェノキシ樹脂および/またはポリウレタン樹脂との混合物、を使用し、場合により組成物中にブロック化されたイソシアネート基を有する有機化合物を含有することを特徴とする印刷インキ組成物からなるグラビア印刷用の、熱ラミネート用プラスチックフィルムの印刷に使用される印刷インキ組成物、からなる。
【0007】以下、本発明を詳細に説明する。
バインダー本発明における熱ラミネート用プラスチックフィルムの印刷に使用される印刷インキ組成物(以下、単に「本発明の印刷インキ組成物」という。)は、バインダーとして、(イ)フェノキシ樹脂と多塩基性カルボン酸無水物とのエステル化物からなるカルボキシル基含有フェノキシ樹脂あるいは(ロ)前記カルボキシル基含有フェノキシ樹脂とフェノキシ樹脂および/またはポリウレタン樹脂との混合物(以下、(イ)と(ロ)をまとめて「カルボキシル基含有フェノキシ系バインダー」ともいう。)、を使用することを特徴とするものである。本発明におけるカルボキシル基含有フェノキシ樹脂の反応原料となるフェノキシ樹脂は、等モルもしくはほぼ等モルのエピクロロヒドリンとビスフェノール化合物との反応により得られる、分子鎖中にヒドロキシル基を有する熱可塑性樹脂である。また、該フェノキシ樹脂は、本発明におけるバインダー成分として、カルボキシル基含有フェノキシ樹脂と共に併用することができるものである。
【0008】フェノキシ樹脂に使用されるビスフェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA〔2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〕、ビスフェノールB〔2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン〕、ビスフェノールC〔2,2−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〕、ビスフェノールD〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン〕、ビスフェノールE(4,4’−ジヒドロキシビフェニル)、ビスフェノールF(3,3’−n−プロピル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル)等を挙げることができ、これらのうち、特に、ビスフェノールA、ビスフェノールFが好ましい。前記ビスフェノール化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0009】本発明におけるカルボキシル基含有フェノキシ系バインダーの主成分であるカルボキシル基含有フェノキシ樹脂は、前記フェノキシ樹脂と多塩基性カルボン酸無水物とのエステル化物からなる。前記多塩基性カルボン酸無水物は、カルボン酸無水物基を分子中に1個以上有することができ、その例としては、無水コハク酸、無水メチルコハク酸、無水2,2−ジメチルコハク酸、無水2,3−ジメチルコハク酸、無水トリメチルコハク酸、無水テトラメチルコハク酸、1,2−ブタンジカルボン酸二無水物、1,2,3−プロパントリカルボン酸無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水マレイン酸等の脂肪族多価カルボン酸無水物類;Δ1 −無水テトラヒドロフタル酸、Δ2 −無水テトラヒドロフタル酸、Δ3 −無水テトラヒドロフタル酸、Δ4 −無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロトリメリット酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ヘキサヒドロピロメリット酸等の脂環族多価カルボン酸無水物類;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3’,4’−ジカルボキシフェニル)プロパン、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ナフタリンジカルボン酸無水物、1,8−ナフタリンジカルボン酸無水物、無水クロレンド酸等の芳香族多価カルボン酸無水物類等を挙げることができる。これらの多塩基性カルボン酸無水物のうち、特に、無水コハク酸等が好ましい。前記多塩基性カルボン酸無水物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0010】本発明でいう「フェノキシ樹脂と多塩基性カルボン酸無水物とのエステル化」とは、該フェノキシ樹脂中のヒドロキシル基と該多塩基性カルボン酸無水物中の酸無水物基とが反応して、エステル基を形成するとともに、遊離カルボキシル基を生成する反応を意味し、この反応により、フェノキシ樹脂の側鎖にカルボキシル基を導入することができる。このようなエステル化反応は、従来公知の方法によって行うことができる。なお、前記エステル化反応に関わる多塩基性カルボン酸無水物が遊離カルボキシル基を有する場合、該カルボキシル基もヒドロキシル基とのエステル化に関与する可能性があるが、そのエステル化反応は平衡反応で、平衡に達するまでには長時間を要するため、通常の反応条件では反応収率が低く、本発明には実質的に支障を与えないが、反応を酸性触媒の不存在下(例えば、無触媒下あるいは酢酸ナトリウム、ピリジン等の塩基性触媒の存在下)で行うことにより、酸無水物基とヒドロキシル基とのエステル化反応の選択性を高めることができる。カルボキシル基含有フェノキシ樹脂におけるエステル化率(反応原料であるフェノキシ樹脂中のヒドロキシル基がエステル基に変換された割合)は、好ましくは0.01〜100%の範囲、さらに好ましくは0.05〜90%の範囲、特に好ましくは0.1〜80%の範囲である。この場合、前記エステル化率が0.01%以下では、インキ層とプラスチックフィルムとの密着性の改善効果が不十分となるおそれがある。
【0011】本発明におけるカルボキシル基含有フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10,000〜100,000の範囲、さらに好ましくは20,000〜80,000の範囲である。この場合、カルボキシル基含有フェノキシ樹脂の重量平均分子量が10,000未満では、得られるインキ層の強度が低下したり、プラスチックフィルムに対する密着性が低下して、蒸気殺菌処理後にインキ層とプラスチックフィルムとの界面で剥離しやすくなる傾向があり、一方100,000を超えると、得られるインキ組成物が粘稠となって、粘度調整が困難となる傾向があり、またこのような高分子量の樹脂は工業的に製造することが困難である。本発明において、カルボキシル基含有フェノキシ樹脂フェノキシ樹脂は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。カルボキシル基含有フェノキシ樹脂は、熱安定性および加工性に優れ、種々のプラスチックや熱硬化型接着剤との親和性も高い樹脂であり、本発明において、カルボキシル基含有フェノキシ樹脂をバインダーの主成分とすることにより、ポリエステルフィルムに代表されるプラスチックフィルムに対する密着性等に優れた印刷インキ組成物を得ることができる。
【0012】また、本発明において場合により使用されるフェノキシ樹脂は、熱安定性および加工性に優れ、種々の熱硬化型接着剤との親和性も高い樹脂であり、このような樹脂を本発明におけるバインダー成分として、カルボキシル基含有フェノキシ樹脂と併用することにより、優れた印刷インキ組成物を得ることができる。本発明におけるフェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10,000〜100,000の範囲、さらに好ましくは20,000〜80,000の範囲である。この場合、フェノキシ樹脂の重量平均分子量が10,000未満では、インキ層からの溶剤離れが損なわれて、ブロッキングを生じやすくなり、またプラスチックフィルムに対する密着性が低下して、蒸気殺菌処理後にインキ層とプラスチックフィルムとの界面で剥離しやすくなるおそれがあり、一方100,000を超えると、得られるインキ組成物が粘稠となって、粘度調整が困難となるおそれがあり、またこのような高分子量の樹脂は工業的に製造することが困難である。本発明において、フェノキシ樹脂は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0013】本発明におけるカルボキシル基含有フェノキシ樹脂(a)とフェノキシ樹脂(b)との重量比((a):(b))は、好ましくは20:80〜100:0の範囲、さらに好ましくは25:75〜100:0の範囲、特に好ましくは30:70〜100:0の範囲である。この場合、該重量比が20:80未満では、プラスチックフィルムに対する密着性性が低下して、蒸気殺菌処理後にインキ層とプラスチックフィルムとの界面で剥離しやすくなる傾向がある。
【0014】本発明においては、バインダー成分として、カルボキシル基含有フェノキシ樹脂あるいは該樹脂とフェノキシ樹脂との混合物と共に、ポリウレタン樹脂を併用することが好ましく、それによりインキ層に柔軟性を付与することができる。前記ポリウレタン樹脂は、有機ジイソシアネート化合物と有機ジヒドロキシ化合物とを主体とする成分の反応により得られる樹脂からなる。ポリウレタン樹脂に使用される有機ジイソシアネート化合物としては、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;シクロブチレン−1,3−ジイソシアネート、シクロペンチレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキシレン−2,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキシレン−2,6−ジイソシアネート、1,2−ジメチルシクロヘキシレン−3,5−ジイソシアネート、1,2−ジメチルシクロヘキシレン−3,6−ジイソシアネート、1,3−ジメチルシクロヘキシレン−4,6−ジイソシアネート、1,4−ジメチルシクロヘキシレン−2,5−ジイソシアネート、1,4−ジメチルシクロヘキシレン−2,6−ジイソシアネート、1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、シクロヘキシレン−1,3−ビス(イソシアネートメチル)、シクロヘキシレン−1,4−ビス(イソシアネートメチル)、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート等の脂環族ジイソシアート類;
【0015】フェニレン−1,3−ジイソシアネート、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、o−キシリレン−3,5−ジイソシアネート、o−キシリレン−3,6−ジイソシアネート、m−キシリレン−4,6−ジイソシアネート、p−キシリレン−2,5−ジイソシアネート、p−キシリレン−2,6−ジイソシアネート、ビフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシビフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアート類;これらの有機ジイソシアネートの化学量論的過剰量と活性水素を2個有する化合物との反応により得られる両末端イソシアネートプレポリマー類等を挙げることができる。前記有機ジイソシアネート化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0016】また、ポリウレタン樹脂に使用される有機ジヒドロキシ化合物としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、こはく酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカジオン酸等の1種以上のジカルボン酸とエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物等の1種以上のジオール成分との反応により得られる両末端ヒドロキシポリエステル類;ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体等の両末端ヒドロキシポリエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物等のジオール類等を挙げることができる。これらの有機ジヒドロキシ化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0017】ポリウレタン樹脂の製造方法としては、例えば、■有機ジイソシアネート化合物と有機ジヒドロキシ化合物とを、イソシアネート基過剰のモル比で反応させて、少なくとも分子鎖の片末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを合成し、これを鎖伸長剤(例えば、ポリアミン、多価アルコール等)で鎖伸長させるプレポリマー法、■有機ジイソシアネート化合物、有機ジヒドロキシ化合物および鎖伸長剤を一段で反応させるワンショット法等により製造することができる。また、これらの方法では、ポリウレタン樹脂の分子量を調節するために、鎖停止剤(例えば、モノアミン、1価アルコール等)を併用することもできる。前記■および■の方法では溶剤を使用しても使用しなくてもよいが、均一なポリウレタン樹脂を得るには前者が好ましく、この場合は得られたポリウレタン樹脂の溶液を、必要に応じて濃度を調節したのち、印刷インキ組成物の調製に供するのが好ましい。また後者の場合は、反応後に溶剤を加えてポリウレタン樹脂を溶解させるか、あるいは一旦固形のポリウレタン樹脂を得たのち溶剤に溶解させて、印刷インキ組成物の調製に供するのが好ましい。これらの場合に使用される溶剤としては、例えば、後述する印刷インキ組成物の調製に使用される溶剤と同様のものを挙げることができ、該溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0018】ポリウレタン樹脂は、反応原料中のイソシアネート基とヒドロキシル基とのモル比(イソシアネート基の数/ヒドロキシル基の数)により、分子鎖末端に存在する官能基が異なる。即ち、該モル比が1未満の場合は分子鎖の両末端がヒドロキシル基の樹脂が主体となり、該モル比が1の場合は分子鎖の両末端がイソシアネート基とヒドロキシル基の樹脂が主体となり、該モル比が1を超え2未満の場合は分子鎖の両末端がイソシアネート基の樹脂が主体となる。本発明におけるポリウレタン樹脂としては、分子鎖の少なくとも片末端にヒドロキシル基を有する樹脂が、顔料分散性が良く、柔軟性と密着性に優れている点で好ましい。
【0019】本発明におけるポリウレタン樹脂の数平均分子量は、好ましくは5,000〜200,000の範囲、さらに好ましくは10,000〜100,000の範囲、特に好ましくは15,000〜50,000の範囲である。この場合、ポリウレタン樹脂の数平均分子量が5,000未満では、インキ層からの溶剤離れが損なわれて、ブロッキングを生じやすくなり、またプラスチックフィルムに対する密着性が低下して、蒸気殺菌処理後にインキ層とプラスチックフィルムとの界面で剥離しやすくなる傾向があり、一方200,000を超えると、得られるインキ組成物が粘稠となって、粘度調整が困難となる傾向がある。本発明において、ポリウレタン樹脂は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0020】カルボキシル基含有フェノキシ系バインダーにおけるカルボキシル基含有フェノキシ樹脂(a)とフェノキシ樹脂(b)との合計量(a+b)に対するポリウレタン樹脂(c)の重量比〔(c):((a)+(b))〕は、好ましくは0:100〜70:30の範囲、さらに好ましくは5:95〜50:50の範囲、特に好ましくは10:90〜30:70の範囲である。この場合、該重量比が70:30を超えると、インキ層の強度が低下して、蒸気殺菌処理後にインキ層とプラスチックフィルムとが剥離しやすくなる傾向があり、また顔料分散性は向上するが、インキ層からの溶剤離れが損なわれて、ブロッキングを生じやすくなる傾向がある。
【0021】また、本発明においては、カルボキシル基含有フェノキシ系バインダー以外のバインダー(以下、「他のバインダー」という。)を併用することもできる。他のバインダーとしては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アセタール系樹脂、ケトン樹脂、ポリアミド樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、石油樹脂、塩素化ゴム、環化ゴム、セルロース誘導体、澱粉誘導体、ロジン誘導体、シェラック等を挙げることができる。これらの他のバインダーは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。本発明における他のバインダーの使用割合は、カルボキシル基含有フェノキシ系バインダーと他のバインダーとの合計量に対して、好ましくは0〜30重量%、さらに好ましくは0〜15重量%である。この場合、他のバインダーの使用割合が30重量%を超えると、インキ層とプラスチックフィルムとの密着性や、蒸気殺菌処理後におけるラミネート層の白化現象の防止効果が損なわれるおそれがある。
【0022】さらに、本発明においては、印刷インキ組成物中に、ブロック化されたイソシアネート基を有する有機化合物(以下、単に「ブロックイソシアネート化合物」という。)を硬化剤として配合することが好ましい。ブロックイソシアネート化合物を配合することにより、インキ層とプラスチックフィルムとの密着性をより改善でき、特に蒸気殺菌処理に対する適応性をさらに高めることができる。
【0023】ブロックイソシアネート化合物の原料となる有機イソシアネート化合物は、特に限定されるものではなく、公知の化合物を使用することができ、その例としては、前記ポリウレタン樹脂について例示した有機ジイソシアネート化合物等を挙げることができる。ブロックイソシアネート化合物の原料となる有機ジイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,2−ジメチルシクロヘキサン−3,5−ジイソシアネート、1,2−ジメチルシクロヘキサン−3,6−ジイソシアネート、1,3−ジメチルシクロヘキサン−4,6−ジイソシアネート、1,4−ジメチルシクロヘキサン−2,5−ジイソシアネート、1,4−ジメチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート等が好ましい。また、前記有機ジイソシアネート化合物と、多価アルコール、片末端もしくは両末端にヒドロキシル基を有するポリエーテル、片末端もしくは両末端にヒドロキシル基を有する低分子量ポリエステルや水の如き活性水素含有化合物との付加体、あるいは前記有機ジイソシアネート化合物の環化重合体等も、ブロックイソシアネート化合物の製造に使用される有機イソシアネート化合物として好ましく用いることができる。
【0024】また、前記有機イソシアネート化合物中のイソシアネート基をブロックするブロック化剤としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等のフェノール類;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等のラクタム類;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピルグリコールモノメチルエーテル、プロピルグリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコール等のアルコール類;ホルムアミドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム類;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の活性メチレン基含有化合物等を挙げることができる。これらのブロック化剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0025】本発明の印刷インキ組成物にブロックイソシアネート化合物を配合する場合におけるブロックイソシアネート化合物の含有率は、組成物の総量に対して、好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。この場合、ブロックイソシアネート化合物の含有率が1重量%未満では、インキ層とプラスチックフィルムとの密着性の改善効果、特に蒸気殺菌処理に対する適応性の改善効果が低下する傾向があり、一方15重量%を超えると、インキ層が脆くなり、ラミネート金属板や金属缶を加工する際の操作性が低下する傾向がある。
【0026】本発明の印刷インキ組成物は、カルボキシル基含有フェノキシ系バインダーを、顔料および溶剤を含む常用の他の印刷インキ配合成分と常法により混合して調製される。前記顔料は、所望の色調に応じて適宜選定され、特に限定されるものではないが、その例としては、アルミニウム粉末、二酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、イソインドリノンイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、キナクリドンレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等を挙げることができる。これらの顔料は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0027】また、前記溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、4,4−ジメチル−2−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、2−メチル−3−ヘキサノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−メチル−3−ヘプタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、5−ノナノン、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、シクロヘキサノン、2−アセチルシクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、1−デカロン、2−デカロン等のケトン系溶剤:ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素系溶剤;
【0028】1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、トリクロロメチルベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジオキサン、アニソール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤;
【0029】酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−プロポキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−フェノキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピルグリコールモノメチルエーテル、プロピルグリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコール等のアルコール系溶剤;N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N−ベンジル−2−ピロリドン、N−メチル−3−ピロリドン、N−アセチル−3−ピロリドン、N−ベンジル−3−ピロリドン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤等を挙げることができる。
【0030】これらの溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができるが、本発明においては、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、あるいはこれらの混合物が好ましく、特に、メチルエチルケトン、トルエン、あるいはこれらの混合物が好ましい。さらに、前記以外の配合成分としては、例えば、体質顔料、可塑剤、軟化剤、粘着剤、増膜助剤、ワックス、カップリング剤、分散剤等を挙げることができる。
【0031】本発明の印刷インキ組成物は、例えばコーヒー、ジュース等の飲料を入れる飲料缶の如き金属缶に耐腐食性や装飾性を付与したり、あるいは内容物を表示するためなどに用いられる熱ラミネート用ポリエステルフィルムのグラビア印刷に極めて好適に使用することができるほか、同様の目的で用いられる熱ラミネート用の他のプラスチックフィルムのグラビア印刷、さらにはポリエステルフィルムを含む種々の材料の他の様式の印刷にも幅広く使用することができる。本発明の印刷インキ組成物により例えばポリエステルフィルムをグラビア印刷する際には、単色グラビア印刷機、多色グラビア印刷機、ドラムタイプ印刷機等の公知の印刷機を採用することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】ここで、本発明の印刷インキ組成物の好ましい実施の形態をより具体的に例示すると、下記■〜■のとおりである。■ カルボキシル基含有フェノキシ樹脂が、重量平均分子量が10,000〜100,000の範囲、さらに好ましくは20,000〜80,000の範囲であり、エステル化率が0.01〜100%の範囲、さらに好ましくは0.05〜90%の範囲、特に好ましくは0.1〜80%の範囲であり、フェノキシ樹脂の重量平均分子量が10,000〜100,000の範囲、さらに好ましくは20,000〜80,000の範囲であり、ポリウレタン樹脂の数平均分子量が5,000〜200,000の範囲、さらに好ましくは10,000〜100,000の範囲、特に好ましくは15,000〜50,000の範囲である熱ラミネート用プラスチックフィルムの印刷に使用される印刷インキ組成物。■ カルボキシル基含有フェノキシ樹脂(a)とフェノキシ樹脂(b)との重量比((a):(b))が、20:80〜100:0の範囲、さらに好ましくは25:75〜100:0の範囲、特に好ましくは30:70〜100:0の範囲であり、カルボキシル基含有フェノキシ樹脂(a)とフェノキシ樹脂(b)との合計量((a)+(b))に対するポリウレタン樹脂(c)の重量比〔(c):((a)+(b))〕が、0:100〜70:30の範囲、さらに好ましくは5:95〜50:50の範囲、特に好ましくは10:90〜30:70の範囲である前記■記載の熱ラミネート用プラスチックフィルムの印刷に使用される印刷インキ組成物。■ 組成物中にブロックイソシアネート化合物を、組成物の総量に対して、1〜15重量%の範囲、さらに好ましくは1〜10重量%の範囲で含有する前記■または■記載の熱ラミネート用プラスチックフィルムの印刷に使用される印刷インキ組成物。■ カルボキシル基含有フェノキシ樹脂がビスフェノールA型フェノキシ樹脂と多塩基性カルボン酸無水物とのエステル化物および/またはビスフェノールF型フェノキシ樹脂と多塩基性カルボン酸無水物とのエステル化物からなり、フェノキシ樹脂がビスフェノールA型フェノキシ樹脂および/またはビスフェノールF型フェノキシ樹脂である前記■〜■のいずれかに記載の熱ラミネート用プラスチックフィルムの印刷に使用される印刷インキ組成物。■ 印刷インキ組成物がグラビア印刷用の印刷インキ組成物である前記■〜■のいずれかに記載の熱ラミネート用プラスチックフィルムの印刷に使用される印刷インキ組成物。
【0033】
【実施例】以下、実施例により本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。実施例および比較例における「部」および「%」は、重量基準である。実施例および比較例における評価は、次のようにして行った。
耐レトルト性試験ラミネート鋼板をオートクレーブに入れて、(α)1.4気圧および125℃または(β)2気圧および135℃の条件で、各々30分間水蒸気暴露を行ったのち、ラミネート層の密着性および白化状態を目視により観察し、異常が全く認められない場合を良好(○)、異常が多少認められたが実用可能な場合を普通(△)、実用レベルを超える異常が認められた場合を不良(×)として、評価した。
絞り試験ラミネート鋼板を、深絞りエリクセン成形機を用い、直径25mm×高さ8mmに、常温で絞り加工を行ったのち、オートクレーブに入れて、前記(α)または(β)の条件で、各々30分間水蒸気暴露を行って、ネック部の外観を目視により観察し、異常が全く認められない場合を良好(○)、異常が多少認められたが実用可能な場合を普通(△)、実用レベルを超える異常が認められた場合を不良(×)として、評価した。
プレス試験ラミネート鋼板を、プレス成形機を用い、直径50mm×高さ5mmに、常温でプレス加工を行ったのち、オートクレーブに入れて、前記(α)または(β)の条件で、各々30分間水蒸気暴露を行って、ネック部の外観を目視により観察し、異常が全く認められない場合を良好(○)、異常が多少認められたが実用可能な場合を普通(△)、実用レベルを超える異常が認められた場合を不良(×)として、評価した。
【0034】実施例1下記組成の印刷インキ組成物Aを、常法により調製した。
印刷インキ組成物A フタロシアニンブルー 10部カルボキシル基含有フェノキシ樹脂(注1) 15部 (重量平均分子量=40,000、固形分30%)
フェノキシ樹脂 9部 (重量平均分子量=40,000、商品名フェノトートPX−283、東都化 成(株)製)
ポリウレタン樹脂(注2) 15部 (数平均分子量=30,000、固形分30%)
メチルエチルケトン 26部トルエン 25部 100部 (注1) この樹脂は、下記〈参考製造例1〉により製造したものである。
(注2) この樹脂は、下記〈参考製造例2〉により製造したものである。
次いで、印刷インキ組成物Aを用いて、ポリエステルフィルムにグラビア印刷を行ったのち、該フィルムの印刷面に熱硬化型接着剤を、固形分で2g/m2 塗布した。その後、このフィルムを190℃の熱ロールによりクロム処理鋼板に熱圧着させ、220±5℃で焼き付けを行って、ラミネート鋼板を得た。このラミネート鋼板の評価結果を、表1に示す。印刷インキ組成物Aは、プレス試験で、水蒸気暴露条件が(β)の場合に異常が認められたが、残りの試験では異常がないか軽度であり、全体として良好な特性を有している。
【0035】〈参考製造例1〉攪拌機および温度計を備えたフラスコに、メチルエチルケトン280部およびフェノキシ樹脂(商品名フェノトートPX−283)120部を仕込んで、加熱溶解させたのち、共沸蒸留することにより系内の水分を除去した。次いで、フラスコに、無水コハク酸1.1部を加え、85℃で3時間反応させたのち、メチルエチルケトンを加えて、固形分30%のカルボキシル基含有フェノキシ樹脂溶液を得た。このカルボキシル基含有フェノキシ樹脂溶液は、粘度が450cps/25℃であり、またカルボキシル基含有フェノキシ樹脂は、重量平均分子量が40,000、エステル化率が2.6%であった。
【0036】〈参考製造例2〉攪拌機、温度計および窒素ガス導入管を備えたフラスコに、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールとの反応により得られた平均分子量2,000のポリエステルジオール1,000部およびイソホロンジイソシアネート200部を仕込み、窒素気流下、120℃で6時間反応させたのち、メチルエチルケトン300部を加えて、ポリウレタンプレポリマーの均一溶液1,500部を得た。次いで、イソホロンジアミン65.2部、ジ−n−ブチルアミン5.1部、メチルエチルケトン1,676部およびi−プロピルアルコール988部の混合物を、前記ポリウレタンプレポリマーの溶液に添加し、50℃で3時間反応させて、固形分30%のポリウレタン樹脂溶液を得た。このポリウレタン樹脂溶液は、粘度が1,800cps/25℃であり、またポリウレタン樹脂の数平均分子量が30,000であった。
【0037】実施例2実施例1で得た印刷インキ組成物Aの100部に、ブロックイソシアネート化合物(注3)(商品名デスモジュールTPLS2957、住友化学工業(株)製)6部を混合して、印刷インキ組成物Bを調製した。
(注3) この化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートの環化三量体のイソシアネート基をε−カプロラクタムでブロックした化合物である。
次いで、印刷インキ組成物Bを用い、実施例1と同様にして、ラミネート鋼板を得た。このラミネート鋼板の評価結果を、表1に示す。
【0038】実施例3下記組成の印刷インキ組成物Cを、常法により調製した。
印刷インキ組成物C 二酸化チタン 30部カルボキシル基含有フェノキシ樹脂(注1参照) 15部フェノキシ樹脂(商品名フェノトートPX−283) 9部ポリウレタン樹脂(注2参照) 15部メチルエチルケトン 16部トルエン 15部 100部印刷インキ組成物Cを用いて、実施例1と同様にして、ラミネート鋼板を得た。このラミネート鋼板の評価結果を、表1に示す。印刷インキ組成物Cは、プレス試験で、水蒸気暴露条件が(β)の場合に異常が認められたが、残りの試験では異常がないか軽度であり、全体として良好な特性を有している。
【0039】実施例4実施例3で得た印刷インキ組成物Cの100部に、ブロックイソシアナート化合物(商品名デスモジュールTPLS2957)6部を混合して、印刷インキ組成物Dを調製した。印刷インキ組成物Dを用いて、実施例1と同様にして、ラミネート鋼板を得た。
【0040】比較例1下記組成の印刷インキ組成物Eを、常法により調製した。
印刷インキ組成物E フタロシアニンブルー 10部塩化ビニル/酢酸ビニル樹脂 5部 (商品名ビニライトVAGH、ユニオンカーバイトコーポレーション(UCC )社製)
ポリウレタン樹脂(〈参考製造例〉により製造したもの) 30部メチルエチルケトン 30部トルエン 25部 100部印刷インキ組成物Eを用いて、実施例1と同様にして、ラミネート鋼板を得た。このラミネート鋼板の評価結果を、表1に示す。
【0041】比較例2比較例1で得た印刷インキ組成物Eの100部に、ブロックイソシアナート化合物(商品名デスモジュールTPLS2957)6部を混合して、印刷インキ組成物Fを調製した。印刷インキ組成物Fを用いて、実施例1と同様にして、ラミネート鋼板を得た。このラミネート鋼板の評価結果を、表1に示す。
【0042】比較例3下記組成の印刷インキ組成物Gを、常法により調製した。
印刷インキ組成物G 二酸化チタン 30部塩化ビニル/酢酸ビニル樹脂(商品名ビニライトVAGH) 5部ポリウレタン樹脂(〈参考製造例〉により製造したもの) 30部メチルエチルケトン 20部トルエン 15部 100部印刷インキ組成物Gを用いて、実施例1と同様にして、ラミネート鋼板を得た。このラミネート鋼板の評価結果を、表1に示す。
【0043】比較例4比較例3で得た印刷インキ組成物Gの100部に、ブロックイソシアナート化合物(商品名デスモジュールTPLS2957)6部を混合して、印刷インキ組成物Hを調製した。印刷インキ組成物Hを用いて、実施例1と同様にして、ラミネート鋼板を得た。このラミネート鋼板の評価結果を、表1に示す。
【0044】
【表1】


【0045】
【発明の効果】本発明の印刷インキ組成物を用い、ポリエステルフィルムに代表されるプラスチックフィルムに印刷した熱ラミネート用プラスチックフィルムは、飲料缶の如き金属缶に熱ラミネートしたとき、インキ層とプラスチックフィルムとの密着性、およびインキ層と熱硬化型接着剤層との密着性がともに優れ、蒸気殺菌処理後においても、これらの層間に剥離を生じることがなく、かつ水蒸気の透過によるラミネート層の白化現象を生じることもない。したがって、本発明の印刷インキ組成物は、特に、熱ラミネート用ポリエステルフィルムのグラビア印刷インキ組成物として極めて優れた特性を有するものであり、また他の種々の熱ラミネート用プラスチックフィルムのグラビア印刷および他の様式の印刷にも有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 バインダーとして、(イ)フェノキシ樹脂と多塩基性カルボン酸無水物とのエステル化物からなるカルボキシル基含有フェノキシ樹脂あるいは(ロ)前記カルボキシル基含有フェノキシ樹脂とフェノキシ樹脂および/またはポリウレタン樹脂との混合物、を使用することを特徴とする熱ラミネート用プラスチックフィルムの印刷に使用される印刷インキ組成物。
【請求項2】 カルボキシル基含有フェノキシ樹脂が、重量平均分子量が10,000〜100,000の範囲であり、エステル化率が0.01〜100%の範囲である請求項1記載の熱ラミネート用プラスチックフィルムの印刷に使用される印刷インキ組成物。
【請求項3】 フェノキシ樹脂の重量平均分子量が10,000〜100,000の範囲である請求項1または請求項2記載の熱ラミネート用プラスチックフィルムの印刷に使用される印刷インキ組成物。
【請求項4】 ポリウレタン樹脂の数平均分子量が5,000〜200,000の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の熱ラミネート用プラスチックフィルムの印刷に使用される印刷インキ組成物。
【請求項5】 カルボキシル基含有フェノキシ樹脂とフェノキシ樹脂との重量比が20:80〜100:0の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載の熱ラミネート用プラスチックフィルムの印刷に使用される印刷インキ組成物。
【請求項6】 カルボキシル基含有フェノキシ樹脂とフェノキシ樹脂との合計量に対するポリウレタン樹脂の重量比が0:100〜70:30重量%の範囲である請求項1〜5のいずれかに記載の熱ラミネート用プラスチックフィルムの印刷に使用される印刷インキ組成物。
【請求項7】 組成物中にブロック化されたイソシアネート基を有する有機化合物を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の熱ラミネート用プラスチックフィルムの印刷に使用される印刷インキ組成物。
【請求項8】 印刷インキ組成物がグラビア印刷用の印刷インキ組成物である請求項1〜7のいずれかに記載の熱ラミネート用プラスチックフィルムの印刷に使用され印刷インキ組成物。

【特許番号】特許第3167694号(P3167694)
【登録日】平成13年3月9日(2001.3.9)
【発行日】平成13年5月21日(2001.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−171848
【出願日】平成11年6月18日(1999.6.18)
【公開番号】特開2001−2970(P2001−2970A)
【公開日】平成13年1月9日(2001.1.9)
【審査請求日】平成11年6月18日(1999.6.18)
【出願人】(592215435)株式会社ティ−アンドケイ東華 (12)
【参考文献】
【文献】特開 平9−255751(JP,A)
【文献】特開 平2−43275(JP,A)
【文献】特開 平3−38335(JP,A)
【文献】特開 平3−293127(JP,A)
【文献】特公 昭46−1708(JP,B1)