説明

印刷インキ配合物中でのポリビニルイソアセタールの使用

【課題】印刷インキ用に、同時に高いTg及び低い粘度を有するが、その他に、その特性に関して、公知のポリビニルブチラールと著しくは異ならないポリビニルアセタールを使う。
【解決手段】ポリビニルアルコールのアセタール化のために慣用のn−ブチルアルデヒドの代わりに、例えばイソブチルアルデヒドを使用することによって、n−ブチルアルデヒドを基礎としている同じ化学組成の比較生成物と比べて、より低い粘度及びより高いガラス転移温度を示すポリビニルアセタールが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコールと分岐状脂肪族アルデヒドとの反応によって得られるポリビニルイソアセタール(Polyvinylisoacetalen)の印刷インキ用配合物中での使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアセタール、殊にポリビニルブチラールの、印刷インキ配合物中でのバインダーとしての使用は久しく公知である。
【0003】
このために、頻繁にポリビニルアセタールが(例えばフレキソ印刷インキ中でのバインダーとして)使用され、これは溶解した状態で可能な限り低い粘度を有する。そのため同時に印刷インキ中での高い顔料割合及びバインダー割合を実現することが可能であり、このことは、さらに所望の高いインキ強度につながる。
【0004】
かかるポリビニルアセタールの製造の場合、一般に、相応して粘度の低いポリビニルアルコールが原料として選択され、これは次いで、通常の場合、n−ブチルアルデヒドでアセタール化される。この手順の欠点としては、傾向的に見て変換率が減少する点、並びに低い分子量を伴う低いガラス転移温度と、それと結び付いた増大する粘着性とに基づき生成物の製造に際して困難な点である。その際、粘度の低いポリビニルアセタールに固有の低いTg(<65℃)は、例えばインキを印刷する際といった、最終的な適用においても困難をもたらす。
【0005】
印刷インキ中での使用のために、すでに多くの化学的に異なるポリビニルアセタールが提案されていた。例えば、ポリアビニルアセタールの製造のための原料として、第3級ビニルエステルと酢酸ビニルとの共重合体を使用することが公知であり、該共重合体は、さらに不純物として第3級エステル官能基を分子中に有している。そのうえ、ブチルアルデヒドに加えて、5〜10個の炭素原子を有する長鎖アルデヒドをアセタール化のために使用することが公知である。同じように、ポリビニルアルコールのアセタール化の後又はアセタール化の間、糖又はオリゴグリコールといった長鎖分子がポリマー鎖と反応し、かつ同様に不純物として作用する可能性がある。
【0006】
これらの方法の欠点は、高い複雑性及びブチルアルデヒドによるポリビニルアルコールの大規模工業的に確立されたアセタール化に比べて明らかにより高い費用がかかることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえ印刷インキ配合物用に望ましいとされるのは、同時に高いTg及び低い粘度を有するが、その他に、その特性に関して、なかでも極性及び製造法に関して、公知のポリビニルブチラールと著しくは異ならないポリビニルアセタールを使うことである。
【0008】
ポリビニルブチラールの工業生産のために使用されるブチルアルデヒドは、もっぱらn−ブチルアルデヒドから成る。これは推測されるに、プロペンのヒドロカルボニル化(オキソ法)によるその大規模工業生産に起因しており、これによって、熱力学的に制御してほぼ排他的にn−ブタノールが得られる。
【0009】
イソブチルアルデヒドによるポリビニルアルコールのアセタール化によって製造されたポリビニルブチラールは公知の化合物(例えば、Fitzhugh, Crozier, J. Pol. Sci. Vol. VIII, No.2, p. 225-241もしくはNakamura, Suzuki, J. Pol. Sci, Vol. 34, p. 3319-3328 (1996)からの化合物)であるが、しかし、n−ブチルアルデヒドと比較してイソブチルアルデヒドの乏しい工業的利用可能性に基づき技術的な意義を持たない。
【0010】
意想外にも、イソブチルアルデヒドを基礎とするポリビニルブチラールが、高いガラス転移温度及び低い粘度といった要求される特性を有し、同時に、しかし、極性に関しての著しい変化を示さず、かつ、それゆえ良好に顔料を湿潤させ、かつ、それゆえ印刷インキ中での使用に良好に適していることが見出された。この理論の正当性に関係せずに、これは分子の枝分かれにより説明されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ポリビニルアルコールのアセタール化のために慣用のn−ブチルアルデヒドの代わりに、例えばイソブチルアルデヒドを使用することによって、n−ブチルアルデヒドを基礎としている同じ化学組成の比較生成物と比べて、より低い粘度及びより高いガラス転移温度を示すポリビニルアセタールが得られる。この化合物類は、以下ではポリビニルイソアセタールと称される。
【0012】
本発明の対象は、印刷インキ配合物中でのバインダーとしてのポリビニルイソアセタールの使用であり、その際、ポリビニルイソアセタールのアセタール基は、ケト基に対してα位又はβ位に少なくとも1つの分岐を有する、4〜10個の炭素原子を有する1つ以上の脂肪族ケト化合物から生じる。
【0013】
印刷インキ適用における本発明によるポリビニルイソアセタールの使用によって、n−アセタール基を有するポリビニルアセタールを使用した場合より同じバインダー含有率にて低い粘度の利点が生まれる。印刷インキ/印刷インキ濃縮物中で、顔料及びバインダーは、ある一定の比(しばしば1:1.2)で存在するので、印刷インキの所定の最終粘度の場合、顔料及びバインダーの量は任意には高くならない。それから、比較的低い粘度を有するバインダーが提供される場合、これが全体の粘度に寄与する度合いも初めのうちは比較的低い。従って、顔料の割合は高められることができる。同時に、幾分多めのバインダーも加えられなければならない。全体の粘度は、しかし、所定の最大値を超えない。しかし、より多くの顔料及びバインダーを系に有しており、そのためより高いインキ強度が得られる。
【0014】
さらなる利点は、慣例のn−アセタールと比べてポリビニルイソアセタールの高められたTgである。これは印刷インキにおいて、その点では重要である。なぜなら、より高い温度安定性が、より低い粘着性及び表面上の印刷インキのより遅い軟化を意味するからである。早期の軟化は、場合により、積層用印刷インキ(Laminationsdruckfarben)では複合体の層間剥離につながる可能性がある。表面印刷(飲料用紙容器)の場合も、予定より早い印刷インキの軟化は欠点である。飲料用紙容器が互いに接着し合うか、もしくはインキが機能しなくなる可能性がある。
【0015】
本発明によるポリビニルイソアセタールは、有利には、ポリビニルアルコールと、アルデヒド基に対してα位又はβ位に少なくとも1つの分岐を有する、4〜10個の炭素原子を有する1つ以上の脂肪族アルデヒドとの反応によって得られる。
【0016】
本発明の範囲内では、有利には、そのアセタール基が、1つ以上の脂肪族アルデヒド又はイソブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、(α)−イソバレルアルデヒド[2−メチルブタナール]、(β)−イソバレルアルデヒド[3−メチルブタナール]及びピバリンアルデヒド[2,2−ジメチルプロパナール]の群のケト化合物から生じるポリビニルアセタールが使用される。
【0017】
選択的に、ポリビニルイソアセタールは、ポリビニルアルコールと
a)ケト基に対してα位又はβ位に少なくとも1つの分岐を有する、3〜10個の炭素原子を有する1つ以上の脂肪族ケト化合物及び
b)2〜10個の炭素原子を有する1つ以上のさらなる脂肪族ケト化合物
との並発反応によって生じることができる。
【0018】
ケト基に対してα位又はβ位に少なくとも1つの分岐を有する、4〜10個の炭素原子を有する脂肪族ケト化合物からのポリビニルイソアセタールのアセタール基の割合は、2〜10個の炭素原子を有するさらなる脂肪族ケト化合物からのポリビニルアセタールのアセタール基に対して20〜95モル%、有利には50〜90モル%であってよい。
【0019】
有利には、さらなる脂肪族ケト化合物としてアセトアルデヒド及び/又はn−ブチルアルデヒドが用いられる。
【0020】
本発明により使用されるポリビニルイソアセタールは、有利には、相応するポリビニル(n)アセタールより少なくとも10%低い粘度を有する。この比較のために、当然の事ながら、n/イソ−アセタール基を除いて、その他に化学的に同一なポリビニルイソアセタール及びポリビニル(n)アセタールが考慮されなければならない。粘度の測定は、実施例で挙げられた方法に従って行われる。
【0021】
高分子バインダーに加えて、印刷インキ配合物の慣用の成分は、溶媒及び場合により添加剤、例えばワックス、コバインダー(ケトン樹脂、ウレタン等)、並びに分散助剤及び接着促進剤である。本発明により、ポリビニルイソアセタールは、印刷インキ配合物に対して1〜30質量%の割合で使用される。
【0022】
本発明の範囲内では、ポリビニルイソアセタールと、従来技術から公知のn−アセタール基を有するポリビニルアセタールとの混合物を印刷インキ用バインダーとして使用することも可能である。
【0023】
それゆえ本発明のさらなる対象は、ポリビニルイソアセタールと、少なくとも1つのさらなるポリビニルアセタールとの混合物の印刷インキ配合物中でのバインダーとしての使用であり、その際、ポリビニルイソアセタールのアセタール基は、ケト基に対してα位又はβ位に少なくとも1つの分岐を有する、4〜10個の炭素原子を有する1つ以上の脂肪族ケト化合物から生じ、かつ少なくとも1つのさらなるポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールと、2〜10個の炭素原子を有する1つ以上のさらなる脂肪族ケト化合物との反応によって得られる。
【0024】
ポリビニルイソアセタールの使用について記載される特別な実施形態は、同じように、通常のポリビニルアセタールとの混合物での使用にも当てはまる。
【0025】
有利には、さらなるポリビニルアセタールは、例えばアセトアルデヒド及び/又はn−ブチルアルデヒドとポリビニルアルコールとの反応によって取得される。反応条件は、ポリビニルイソアセタールのそれに相当する。特に、ポリビニルアルコールとイソブチルアルデヒドとの反応によって得られるポリビニルイソアセタールと、ポリビニルアルコールとn−ブチルアルデヒドとの反応によって得られるポリビニルアセタールとからの混合物が使用される。
【0026】
有利には、本発明により使用される混合物は、10〜90質量%のポリビニルイソアセタール及び90〜10質量%のさらなるポリビニルアセタールを含有し、殊に50質量%ずつ含有する。
【0027】
ポリビニルイソアセタールの製造法は、n−アセタール基を有するポリビニルアセタールのそれと本質的には異ならない。本発明により使用されるポリビニルイソアセタールは、少なくとも1つのポリビニルアルコールと上述のケト化合物の少なくとも1つとの酸触媒作用下での反応によって得られる。この反応は当業者に公知であり、かつ例えばWO2009/132987A1又はEP09175666.8から読み取ることができる。
【0028】
一般に、ポリビニルアセタールの製造では、まずポリビニルアルコールが加熱下で水に溶解され、かつ反応容器中に約0〜20℃の温度で装入される。このために、第1のプロセス変形例においては、酸(HCl、HNO3又はH2SO4)が加えられるか、又はさらなる変形例においては、1つ以上のケト化合物又はアルデヒドが加えられる。ケト化合物又はアルデヒドとして、有利にはイソブチルアルデヒドが、ポリビニルイソブチラールの取得下で使用される。
【0029】
プロセス変形例に従って、上述の温度で、所望のケト化合物が加えられて、ポリビニルアルコールと酸の混合物が形成されるか、又は酸が加えられて、ポリビニルアルコールとケト化合物の混合物が形成される。そのつどの添加は、ポリビニルアセタールの所望のアセタール化度に達するまで行われ、かつ、これは固体として反応混合物から沈殿する。方法工程a)における酸もしくはケト化合物の添加は、様々な配量時間で、かつ/又は配量中断を伴って行うことができる。
【0030】
反応を完全なものにするために、反応混合物は、方法工程b)で30〜90℃、有利には35〜80℃に加熱され、かつ、この温度で、ある一定の時間保持される。いわゆるこの熱変性の場合、アセタール化反応を完全なものにすることに加えて、分子内アセタール交換反応もアセタールドメイン及びアルコールドメインの形成下で行われることができる。
【0031】
有利には、本発明により使用されるポリビニルイソアセタールは、10〜30%、特に有利には15%〜25%の残留アルコール含有率及び/又は62%〜89.5%、特に有利には67%〜84.5%のアセタール化度を有する。
【0032】
測定法:
a)ポリビニルアセテート含有率の測定
ポリビニルアセテート含有率は、物質1gのけん化に必要な苛性カリ溶液の量の使用量から生じるアセチル基の質量パーセント割合と理解される。
測定法(EN ISO 3681に依拠):
約2gの試験されるべき物質を、丸底フラスコ500ml中に1mgまで正確に量り入れ、エタノール90ml及びベンジルアルコール10mlで還流下で溶解する。冷却後、この溶液を0.01NのNaOHでフェノールフタレインに対して中性に調整する。引き続き、0.1NのKOH25.0mlを添加し、かつ還流下で1.5時間加熱する。フラスコを密閉して冷却し、かつアルカリ液の過剰量を0.1Nの塩酸で指示薬としてのフェノールフタレインに対して変色が消えなくなるまで逆滴定する。同様に、ブランク試料を処理する。PV−アセテート含有率は、次のように算出される:PV−アセテート含有率[%]=(b−a)*86/E、その際、a=試料用の0.1NのKOHの使用量(ml)、b=ブランク試験用の0.1NのKOHの使用量(ml)及びE=試験されるべき物質の乾燥状態での正味重量(g)。
【0033】
b)ポリビニルアルコール基含有率の測定
ポリビニルアルコール基含有率(ポリビニルアルコール含有率)は、ヒドロキシル基の割合であり、これは無水酢酸を後からアセチル化することによって検出可能である。
測定法(DIN 53240に依拠):
約1gのモビタールを、すり合わせ−エルレンマイヤーフラスコ300ml中に1mgまで正確に量り入れ、無水酢酸−ピリジン−混合物(23:77 V/V)10.0mlを加え、そして15〜20時間、50℃に加熱する。冷却後、1,2−ジクロロエタン17mlをさらに加え、かつ一時的に揺動する。引き続き、攪拌しながら水8mlを加え、フラスコをストッパーで密閉し、そして10分間攪拌する。フラスコの首とストッパーを脱イオン水50mlですすぎ、n−ブタノール5mlの層で覆い、かつ遊離酢酸を1Nの苛性ソーダ溶液でフェノールフタレインに対して滴定する。同様に、ブランク試料を処理する。ポリビニルアルコール含有率は、次のように算出される:ポリビニルアルコール含有率[%]=(b−a)*440/E、その際、a=試料用の1NのNaOHの使用量(ml)、b=ブランク試験用の1NのNaOHの使用量(ml)及びE=試験されるべき物質の乾燥状態での正味重量(g)。
【0034】
c)粘度の測定
使用されるポリビニルアセタールの粘度を、DIN 53015に従って、エタノール、n−ブタノール又はMEK(メチルエチルケトン)中での溶液を用いて20℃にてヘプラー粘度計で測定する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】エタノール中に溶解したポリビニルイソブチルアルデヒドアセタールの溶液粘度を示す図
【実施例】
【0036】
純粋及び混合のポリビニルイソアセタール及びポリビニルアセタールを、イソブチルアルデヒドもしくはn−ブチルアルデヒド及びアルデヒド混合物のイソブチルアルデヒド/アセトアルデヒドもしくはn−ブチルアルデヒド/アセトアルデヒドと、同じポリビニルアルコールとの酸触媒作用下での反応によって製造し、かつ印刷インキ配合物中でのそれらの使用について調べた。
【0037】
実施例1
3.06mPasの粘度(水中で4%)及び96.5モル%の加水分解度を有するポリビニルアルコール540gを、水6660mLに溶解する。イソブチルアルデヒド340gを加えた後、20%の塩酸溶液870mLの計量供給下で反応を4℃にて開始する。塩酸供給を終了した後、反応溶液を2時間にわたって36℃に加温し、そしてさらに2時間この温度で維持する。沈殿した固体を濾過分離し、そして十分に水で洗浄する。中和もしくはアルカリ化のために、生成物懸濁液に10%の苛性ソーダ溶液20mLを混ぜ、そして再び少しばかり加温する。過剰のアルカリ液を水での洗浄により除去する。引き続き、生成物を乾燥させる。
【0038】
比較例1
3.06mPasの粘度(水中で4%)及び96.5モル%の加水分解度を有するポリビニルアルコール540gを、水6660mLに溶解する。n−ブチルアルデヒド340gを加えた後、20%の塩酸溶液870mLの計量供給下で反応を4℃にて開始する。塩酸供給を終了した後、反応溶液を2時間にわたって36℃に加温し、そしてさらに2時間この温度で維持する。沈殿した固体を濾過分離し、そして十分に水で洗浄する。中和もしくはアルカリ化のために、生成物懸濁液に10%の苛性ソーダ溶液20mLを混ぜ、そして再び少しばかり加温する。過剰のアルカリ液を水での洗浄により除去する。引き続き、生成物を乾燥させる。
【0039】
実施例2
4.60mPasの粘度(水中で4%)及び98.5モル%の加水分解度を有するポリビニルアルコール684gを、水6516mLに溶解する。イソブチルアルデヒド394gを加えた後、20%の塩酸溶液820mLの計量供給下で反応を4℃にて開始する。塩酸供給を終了した後、反応溶液を2時間にわたって44℃に加温し、そしてさらに1.5時間この温度で維持する。沈殿した固体を濾過分離し、そして十分に水で洗浄する。中和もしくはアルカリ化のために、生成物懸濁液に10%の苛性ソーダ溶液20mLを混ぜ、そして再び少しばかり加温する。過剰のアルカリ液を水での洗浄により除去する。引き続き、生成物を乾燥させる。
【0040】
比較例2
4.06mPasの粘度(水中で4%)及び98.5モル%の加水分解度を有するポリビニルアルコール684gを、水6516mLに溶解する。n−ブチルアルデヒド394gを加えた後、20%の塩酸溶液820mLの計量供給下で反応を4℃にて開始する。塩酸供給を終了した後、反応溶液を2時間にわたって44℃に加温し、そしてさらに1.5時間この温度で維持する。沈殿した固体を濾過分離し、そして十分に水で洗浄する。中和もしくはアルカリ化のために、生成物懸濁液に10%の苛性ソーダ溶液20mLを混ぜ、そして再び少しばかり加温する。過剰のアルカリ液を水での洗浄により除去する。引き続き、生成物を乾燥させる。
【0041】
実施例3
9.94mPasの粘度(水中で4%)及び98.4モル%の加水分解度を有するポリビニルアルコール648gを、水6552mLに溶解する。イソブチルアルデヒド400gを加えた後、20%の塩酸溶液780mLの計量供給下で反応を4℃にて開始する。塩酸供給を終了した後、反応溶液を2時間にわたって48℃に加温し、そしてさらに2時間この温度で維持する。沈殿した固体を濾過分離し、そして十分に水で洗浄する。中和もしくはアルカリ化のために、生成物懸濁液に10%の苛性ソーダ溶液20mLを混ぜ、そして再び少しばかり加温する。過剰のアルカリ液を水での洗浄により除去する。引き続き、生成物を乾燥させる。
【0042】
比較例3
9.94mPasの粘度(水中で4%)及び98.4モル%の加水分解度を有するポリビニルアルコール648gを、水6552mLに溶解する。n−ブチルアルデヒド400gを加えた後、20%の塩酸溶液780mLの計量供給下で反応を4℃にて開始する。塩酸供給を終了した後、反応溶液を2時間にわたって48℃に加温し、そしてさらに2時間この温度で維持する。沈殿した固体を濾過分離し、そして十分に水で洗浄する。中和もしくはアルカリ化のために、生成物懸濁液に10%の苛性ソーダ溶液20mLを混ぜ、そして再び少しばかり加温する。過剰のアルカリ液を水での洗浄により除去する。引き続き、生成物を乾燥させる。
【0043】
実施例4(イソ−BuA+AcAからの混合アセタール)
3.06mPasの粘度(水中で4%)及び96.5モル%の加水分解度を有するポリビニルアルコール720gを、水6480mLに溶解する。アセトアルデヒド152.2及びイソブチルアルデヒド204.2gを加えた後、20%の塩酸溶液1330mLの計量供給下で反応を8℃にて開始する。塩酸供給を終了した後、反応溶液を2時間にわたって36℃に加温し、そしてさらに2時間この温度で維持する。沈殿した固体を濾過分離し、そして十分に水で洗浄する。中和もしくはアルカリ化のために、生成物懸濁液に10%の苛性ソーダ溶液40mLを混ぜ、そして再び少しばかり加温する。過剰のアルカリ液を水での洗浄により除去する。引き続き、生成物を乾燥させる。
【0044】
比較例4(n−BuA+AcAからの混合アセタール)
3.06mPasの粘度(水中で4%)及び96.5モル%の加水分解度を有するポリビニルアルコール720gを、水6480mLに溶解する。アセトアルデヒド152.2及びn−ブチルアルデヒド204.2gを加えた後、20%の塩酸溶液1330mLの計量供給下で反応を8℃にて開始する。塩酸供給を終了した後、反応溶液を2時間にわたって36℃に加温し、そしてさらに2時間この温度で維持する。沈殿した固体を濾過分離し、そして十分に水で洗浄する。中和もしくはアルカリ化のために、生成物懸濁液に10%の苛性アルカリ液40mLを混ぜ、そして再び少しばかり加温する。過剰のアルカリ液を水での洗浄により除去する。引き続き、生成物を乾燥させる。
【0045】
実施例/比較例1〜4からの得られた生成物から溶液を製造し、これらをその粘度に関して調べた。そのうえ、これらの生成物を分析的に特性決定した。結果は第1表に示されている。
【0046】
実施例1及び比較例1からの生成物において、印刷インキ適用に関する試験を実施した。結果は、第2表及び第3表に挙げられている。
【0047】
全てのポリビニルイソアセタールがポリビニルアセタールに比べてより低い粘度を有し、それによって印刷インキ配合物中で顔料及びバインダーから成るより高い固体割合に所定の最大粘度で達しうることがわかる。これによって、より高いインキ強度が得られる。得られた結果に応じて、全てのポリビニルイソアセタールはポリビニルアセタールに比べてより高いガラス転移温度(Tg)を有する。これは最終的な適用において、不所望とされる粘着性の明らかな低下をもたらす。
【0048】
図1に示されるように、エタノール中に溶解したポリビニルイソブチルアルデヒドアセタールは、一般に印刷インキ濃縮物の製造のために使用される固体濃度(>20%)にて明らかにより低い溶液粘度を有している。これによりインキ濃縮物もしくは印刷インキの所定の粘度にてより多くのバインダー及び顔料の使用が可能となる。それによって、同じ印刷粘度にてより高いインキ強度が得られる。これらのより高いインキ強度はまた、より高い印刷速度の適用を可能にし、このことは、より高い処理量ひいては印刷プロセスにおける時間の節約につながる。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷インキ配合物中でのバインダーとしてのポリビニルイソアセタールの使用において、該ポリビニルイソアセタールのアセタール基が、ケト基に対してα位又はβ位に少なくとも1つの分岐を有する、4〜10個の炭素原子を有する1つ以上の脂肪族ケト化合物から生じることを特徴とする、印刷インキ配合物中でのバインダーとしてのポリビニルイソアセタールの使用。
【請求項2】
前記ポリビニルアセタールが、ポリビニルアルコールと
a)ケト基に対してα位又はβ位に少なくとも1つの分岐を有する、4〜10個の炭素原子を有する1つ以上の脂肪族ケト化合物及び
b)2〜10個の炭素原子を有する1つ以上のさらなる脂肪族ケト化合物
との並発反応によって生じることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
ケト基に対してα位又はβ位に少なくとも1つの分岐を有する、4〜10個の炭素原子を有する脂肪族ケト化合物として、イソブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、(α)−イソバレルアルデヒド[2−メチルブタナール]、(β)−イソバレルアルデヒド[3−メチルブタナール]及びピバリンアルデヒド[2,2−ジメチルプロパナール]の群の少なくとも1つの化合物が使用されることを特徴とする、請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
前記ポリビニルイソアセタールが、10%〜30%の残留アルコール含有率を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
前記ポリビニルイソアセタールが、62%〜89.5%のアセタール化度を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
前記ポリビニルイソアセタールが、相応するポリビニル(n)アセタールより少なくとも10%低い粘度を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
ポリビニルイソアセタールと、少なくとも1つのさらなるポリビニルアセタールとの混合物のバインダーとしての印刷インキ配合物中での使用において、該ポリビニルイソアセタールのアセタール基が、ケト基に対してα位又はβ位に少なくとも1つの分岐を有する、4〜10個の炭素原子を有する1つ以上の脂肪族ケト化合物から生じ、かつ該少なくとも1つのさらなるポリビニルアセタールが、ポリビニルアルコールと、2〜10個の炭素原子を有する1つ以上のさらなる脂肪族ケト化合物との反応によって得られることを特徴とする、ポリビニルイソアセタールと、少なくとも1つのさらなるポリビニルアセタールとの混合物のバインダーとしての印刷インキ配合物中での使用。
【請求項8】
前記ポリビニルイソアセタールが、ポリビニルアルコールとイソブチルアルデヒドとの反応によって得られ、かつ前記ポリビニルアセタールが、ポリビニルアルコールとn−ブチルアルデヒドとの反応によって得られることを特徴とする、請求項7記載の使用。

【図1】
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【公開番号】特開2012−25953(P2012−25953A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157510(P2011−157510)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(507052393)クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (29)
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Brueningstrasse 50, D−65926 Frankfurt , Germany
【Fターム(参考)】