説明

印刷システム、印刷制御方法および印刷制御プログラム

【課題】GPSを用いて取得する位置情報に基づいて印刷画質を向上させる。
【解決手段】印刷位置を示す位置情報をGPSを用いて取得する位置情報取得手段と、データ通信ネットワークを介して前記印刷位置に対応する気象に関する気象情報を取得する気象情報取得手段と、前記気象情報に基づいて前記印刷位置での印刷動作を補正する補正手段と、を備える印刷システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷システム、印刷制御方法および印刷制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来,GPS(Global Positioning System)を用いて取得する位置情報の様々な活用が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−264101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、プリンターによって実行される印刷処理において位置情報を画質向上に活用する技術はない。
【0005】
本発明は,GPSを用いて取得する位置情報に基づいて印刷画質を向上させることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するための印刷システムは、印刷位置を示す位置情報をGPSを用いて取得する位置情報取得手段と、データ通信ネットワークを介して前記印刷位置に対応する気象に関する気象情報を取得する気象情報取得手段と、前記気象情報に基づいて前記印刷位置での印刷動作を補正する補正手段と、を備える。
インクやトナーの特性や、インクを吐出する機構の特性は、温度、湿度、気圧等の気象条件に応じて変わる。また気象条件は時と場所に応じて異なる。そこで、GPSを用いて印刷位置を特定し、データ通信ネットワークを通じて印刷位置に対応した気象情報を取得し、気象情報に基づいて印刷動作を補正することにより、印刷画質を向上させることができる。
【0007】
(2)上記目的を達成するための印刷システムにおいて、印刷時刻を特定する印刷時刻特定手段をさらに備え、前記気象情報取得手段は、前記印刷位置及び前記印刷時刻に対応する気象に関する気象情報を取得してもよい。
気象条件は時々刻々と変化するが、大量部数を印刷する場合や高精細な大判印刷では印刷開始から印刷終了まで長時間に及ぶ場合もある。また、印刷ジョブが大量に蓄積されている場合には、印刷要求の発生から印刷開始まで長時間に及ぶ場合もある。将来の印刷時刻を特定して将来の気象条件を特定し、将来の気象条件に応じて将来の印刷動作を補正することにより、将来の印刷動作によって得られる印刷画質を向上させることができる。なお、印刷時刻は印刷開始から印刷終了までの時刻であればよい。
なお、請求項に記載された各手段の機能は、構成自体で機能が特定されるハードウェア資源、プログラムにより機能が特定されるハードウェア資源、又はそれらの組み合わせにより実現される。また、これら各手段の機能は、各々が物理的に互いに独立したハードウェア資源で実現されるものに限定されない。さらに、本発明は印刷制御方法としても、印刷制御プログラムとしても、印刷制御プログラムの記録媒体としても成立する。むろん、そのコンピュータプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態にかかる模式図。
【図2】本発明の実施形態にかかるフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下,本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。尚,各図において対応する構成要素には同一の符号が付され,重複する説明は省略される。
【0010】
1.第一実施例
図1に本発明にかかる印刷システムの一実施例としてのプリンター1を示す。プリンター1は,媒体にインクを定着させることによって画像を形成するシリアル型インクジェットプリンターである。プリンター1は,媒体Pに向けてインク滴を吐出する記録ヘッド11と,媒体Pに対して記録ヘッド11を主走査方向及び副走査方向に相対的に移動させる搬送ユニット20と、制御部40と、GPS信号処理部30とを備えている。
【0011】
搬送ユニット20は,媒体Pを主走査方向に対して垂直な副走査方向に移動させるために,給紙ローラー22,中継ローラー21a,21b,副走査ローラー17a,17b,17c,17d,電動機26,モータードライバー45,ガイド25,プラテン19,紙検出センサー18等からなる副搬送部を備えている。給紙ローラー22は,トレイ27から最上部の媒体Pを1枚ずつ取り出して媒体Pをその先端が中継ローラー21a,21bに到達するまで搬送するためのローラーである。中継ローラー21a,21bは,トレイ27から給紙ローラー22によって搬送された媒体Pを副走査ローラー17c,17dが保持できる位置まで搬送するローラーである。モータードライバー45は電動機26を駆動する回路である。電動機26は,給紙ローラー22と中継ローラー21a,21bと副走査ローラー17b,17dとを同時に回転させる。ガイド25は中継ローラー21a,21bと給紙ローラー22によって搬送される媒体Pを副走査ローラー17c,17dが保持できる位置まで案内する形態を有する壁である。副走査ローラー17a,17b,17c,17dはトレイ27から取り出され中継ローラー21a,21bによって搬送された媒体Pを副走査方向に搬送する。プラテン19は,記録ヘッド11の直下に設けられ,媒体Pを記録ヘッド11に対して位置決めする棒状部材である。紙検出センサー18は,プラテン19の上流側の近傍に設けられた光センサーである。紙検出センサー18は図示しない発光部と受光部とを備え,発光部から受光部までの光路を媒体Pが遮ることにより,カット紙の先端が紙検出センサー18の光路に到達したことを検出する。
【0012】
また搬送ユニット20は,媒体Pに対して記録ヘッド11を主走査方向に移動させるために,キャリッジ13,ガイド14,無端ベルト15,電動機16,モータードライバー47等からなる主搬送部を備えている。キャリッジ13は,インクタンク12および記録ヘッド11を搭載して往復移動する支持部材である。ガイド14は,図2に示すホームポジションHからアウェイポジションLまでキャリッジ13の移動を主走査方向に案内する棒状部材である。無端ベルト15は,図示しないプーリーに架け渡され,キャリッジ13を主走査方向に牽引する。電動機16は無端ベルト15が架け渡されているプーリーを回転させるステッピングモーターである。モータードライバー47は電動機16を駆動する回路である。
【0013】
記録ヘッド11はピエゾ方式やサーマル方式といった周知のインク吐出機構を備え,トレイ27から供給された媒体Pに対してインク滴を多数のノズルから吐出して定着させる。インク滴の吐出タイミングは記録ヘッド11が主走査方向に所定距離移動する度に図示しないエンコーダーから出力される信号の立ち上がりまたは立ち下がりに対応する。インクタンク12は,記録ヘッド11に供給されるインクを色別に貯蔵する容器である。ヘッドコントローラー46は印刷データに基づいて記録ヘッド11を駆動する回路である。
GPS信号処理部30は、GPS衛星からGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいてプリンター1の位置を特定可能な位置情報を出力する。
【0014】
制御部40は,図示しないCPU(Central Processing Unit),メインメモリ,不揮発性メモリ,入出力部等で構成されるコンピューターを含む。不揮発性メモリにはモータードライバー45,47およびヘッドコントローラー46を制御するための印刷制御プログラムが記憶されている。CPUはメインメモリにロードされる印刷制御プログラムを実行するプロセッサである。CPUが印刷制御プログラムを実行することにより、制御部40は気象情報取得部31,印刷時刻特定部32,補正部33、印刷データ取得部34および印刷制御部35として機能する。印刷データ取得部34は、印刷要求を発生させるPC(Personal Computer)や携帯電話端末から印刷データを含む印刷ジョブを印刷要求毎に取得して蓄積する。印刷時刻特定部32は、印刷データ取得部34が蓄積する印刷ジョブに基づいて印刷開始時刻および印刷終了時刻を特定する。気象情報取得部31は、位置情報に基づいて特定するプリンター1の位置と印刷時刻特定部32によって特定された印刷開始時刻及び印刷終了時刻に基づいてインターネット3を介して気象情報サーバー2から気象情報を取得する。補正部33は、気象情報取得部31が取得した気象情報に基づいて印刷ジョブ毎に印刷動作を補正する。印刷制御部35は、印刷データ取得部34が蓄積している印刷ジョブを取得し、印刷ジョブに基づいて印刷を実行する。
【0015】
図2はプリンター1を用いた印刷方法を示すフローチャートである。図2に示す処理はプリンター1が印刷要求を取得すると起動し、印刷制御プログラムを実行する制御部40によって制御される。印刷要求の取得は、印刷データを含む印刷ジョブをPCや携帯電話端末からプリンター1が受信することによって行われる。
【0016】
印刷ジョブを取得すると、制御部40は印刷位置を特定する(S100)。具体的には、制御部40はGPS信号処理部30から位置情報を取得し、取得した位置情報に基づいて特定される位置を印刷位置として特定する。
【0017】
また制御部40は、印刷ジョブを取得すると、取得した印刷ジョブの実行時刻すなわち印刷時刻を特定する(S101)。具体的には、制御部40は、今回取得した印刷ジョブに含まれている印刷データを解析することによって印刷所要時間を予測し、予測した印刷所要時間を記憶する。また制御部40は、過去に取得して蓄積している印刷ジョブに基づいて予測して記憶した印刷所要時間を積算して現在時刻に加算することによって今回取得した印刷ジョブの実行開始時刻すなわち印刷開始時刻を特定する。さらに今回取得した印刷ジョブの印刷所要時間を印刷開始時刻に加算して印刷終了時刻を特定する。
【0018】
次に制御部40は、印刷位置および印刷時刻に基づいて気象情報サーバー2からインターネットを介して気象情報を取得する(S102)。プリンター1から気象情報サーバー2への気象情報の要求と気象情報サーバー2からプリンター1への気象情報の送信はHTTP等のプロトコルを用いて送信される。具体的には、まず、制御部40は予め設定されているURLに印刷位置および印刷時刻を送信する。このURLは気象情報を提供する気象情報サーバー2が気象情報の要求を受け付けるURLである。気象情報をプリンター1に送信する気象情報サーバー2は、受信した印刷位置が属する地域の、受信した印刷時刻に対応する気象情報を抽出してプリンター1に送信する。気象情報としては印刷時刻に応じて現在または将来の気圧、気温および湿度が送信される。例えば気象情報サーバー2において、現在の気圧、気温および湿度と3時間後の予想気圧、予想気温および予想温度が1時間毎に各地域について更新されるとする。この場合、印刷開始時刻と印刷終了時刻の中間の時刻が現在時刻の1時間30分後よりも前の時刻であれば、現在の気圧、気温および湿度が気象情報サーバー2からプリンター1に送信される。また印刷開始時刻と印刷終了時刻の中間の時刻が現在時刻の1時間30分後よりも後の時刻であれば、更新時刻から3時間後の気圧、気温および湿度が気象情報サーバー2からプリンター1に送信される。
【0019】
気象情報を取得した制御部40は、取得した気象情報に基づいて印刷動作を補正する(S103)。具体的には例えば、制御部40は気温、湿度および気圧に応じて記録ヘッド11の動作を最適化するパラメーターを保持するルックアップテーブルを参照することによって、取得した気象情報が示す気温、湿度および気圧に対応する最適なパラメーターを取得する。制御部40のROMに記憶するルックアップテーブルに保持するパラメーターとしては、例えば記録ヘッド11のアクチュエーターである圧電素子を駆動する信号を選択するための設定値や圧電素子を駆動する信号を印加するタイミングを調整するための設定値などが考えられる。圧電素子を駆動する信号を変化させることによって、記録ヘッド11のノズルから吐出されるインク滴の量が変化する。圧電素子の駆動タイミングを変化させることによって、記録ヘッド11のノズルから吐出されるインク滴の記録媒体への着弾位置が変化する。気温が上がればインクの粘性が落ちるため、インク滴の吐出量が減り、インク滴の吐出タイミングが遅れるように圧電素子の駆動信号や駆動タイミングを変化させればよい。湿度が上がれば印刷用紙にインクが浸透しにくくなる、すなわち印刷色が濃くなるため、インク滴の吐出量が減るように圧電素子の駆動信号を変化させればよい。気象情報が示す気温、湿度および気圧に対応する最適なパラメーターは、対応する印刷ジョブに関連づけて記憶される。
【0020】
制御部40は、印刷ジョブを順に実行する(S104)。このときステップS103で関連づけられたパラメーターがヘッドコントローラー46に設定されることによって印刷動作が印刷時の気温、湿度および気圧に最適化して制御される。
【0021】
以上説明した実施例によると、印刷ジョブの取得時に、当該印刷ジョブの実行時のプリンター1の地域の気象に関する気象情報をGPSとインターネット3を用いて取得しておき、印刷ジョブの実行時には印刷ジョブの取得時に取得した気象情報に基づいて印刷動作が補正される。このため、印刷動作を印刷時の気温、湿度および気圧に最適化することができ、その結果、印刷画質を向上させることができる。
【0022】
2.他の実施形態
尚,本発明の技術的範囲は,上述した実施例に限定されるものではなく,本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば上記実施例では、プリンター1にGPS信号処理部を備える例について説明したが、プリンターに印刷ジョブを送信するPCや携帯電話端末からこれらの位置情報をプリンターが取得してもよい。プリンターにGPS信号処理部を備える場合には、GPS信号によって求まる位置がプリンターの位置と常に正確に一致することが保証されるのに対し、プリンターに対して無線通信を介して印刷ジョブを送信可能な携帯電話端末等から位置情報を取得する場合には、そのような保証がない。しかし、通常の使用形態では、印刷物をプリンターから取り出せる位置にいるユーザーが携帯電話端末等から印刷ジョブを送信するため問題にはならない。
【0023】
また上記実施例では、インクジェットプリンターについて説明したが、色材としてトナーを用いるレーザープリンターや昇華型プリンターであっても、気温や湿度や気圧によって特性が変化するため、これらのプリンターに本発明を適用することも有用である。
また上記実施例では、将来の印刷時刻に対応する気象情報に基づいて将来の印刷動作を補正する例を説明したが、印刷開始時に現在の気象情報を取得して印刷動作を補正してもよい。
また上記実施例では、インターネットを介して気象情報サーバーからプリンターが気象情報を取得する例について説明したが、プリンターと気象情報サーバーとの通信ネットワークはインターネットに限定されないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0024】
1…プリンター,1…印刷システム,3…インターネット,11…記録ヘッド,12…インクタンク,13…キャリッジ,14…ガイド,15…無端ベルト,16…電動機,17a,17b,17c,17d…副走査ローラー,18…紙検出センサー,19…プラテン,20…搬送ユニット,21a,21b…中継ローラー,22…給紙ローラー,25…ガイド,26…電動機,27…トレイ,30…信号処理部,31…気象情報取得部,32…印刷時刻特定部,33…補正部,34…印刷データ取得部,35…印刷制御部,40…制御部,45…モータードライバー,45…モータードライバー,46…ヘッドコントローラー,47…モータードライバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷位置を示す位置情報をGPSを用いて取得する位置情報取得手段と、
データ通信ネットワークを介して前記印刷位置に対応する気象に関する気象情報を取得する気象情報取得手段と、
前記気象情報に基づいて前記印刷位置での印刷動作を補正する補正手段と、
を備える印刷システム。
【請求項2】
印刷時刻を特定する印刷時刻特定手段をさらに備え、
前記気象情報取得手段は、前記印刷位置及び前記印刷時刻に対応する気象に関する気象情報を取得する、
請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
印刷位置を示す位置情報をGPSを用いて取得し、
データ通信ネットワークを介して前記印刷位置に対応する気象に関する気象情報を取得し、
前記気象情報に基づいて前記印刷位置での印刷動作を補正する、
ことを含む印刷制御方法。
【請求項4】
印刷位置を示す位置情報をGPSを用いて取得する位置情報取得手段と、
データ通信ネットワークを介して前記印刷位置に対応する気象に関する気象情報を取得する気象情報取得手段と、
前記気象情報に基づいて前記印刷位置での印刷動作を補正する補正手段と、
してコンピューターを機能させる印刷制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−206365(P2012−206365A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73572(P2011−73572)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】