説明

印刷システムおよび印刷方法

【課題】印刷画像において細線が途切れるのを有効に防止することが可能な印刷システムおよび印刷方法を提供すること。
【解決手段】印刷システム10は、印刷元データを閾値を用いたディザマスクにより印刷データに変換するハーフトーン処理手段20(243)と、閾値を変更する閾値変更手段20(24c)と、印刷元データから細線を検出する印刷元データ細線検出手段20(24b)と、細線が検出された位置に対応する印刷データの位置に噴射ヘッド32からインクを噴射させる命令が存在するか否かを判定する判定手段20(245)と、印刷元データから印刷データへの変換を制御する制御手段20(246)とを有し、制御手段20(246)は、上述の命令が存在しないと判定されると、細線の連続性を高める値へと閾値を変更し、変更後の閾値を用いたディザマスクにより再度、ハーフトーン処理手段20(243)で印刷データを生成させる制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システムおよび印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画像データの注目画素が線の縁であるか否か、または線の中であるか否かを検知し、注目画素が線の縁または線の中と検知された場合に、その注目画素を線と検知する、という技術内容について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−222374号公報(要約等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクジェット式の印刷装置を用いて印刷を行う場合において、ドットによって形成される線が細線であり、その濃度が薄い場合には、その細線が途切れる状態で印刷されることがある。たとえばCAD(Computer Aided Design)ソフトを用いて作成されたデータ中には、細線が多く存在するため、そのような場合には、細線の途切れが顕著となる。
【0005】
しかしながら、たとえば特許文献1に開示の技術内容においても、上述のような細線の途切れを防止するための手法は開示されていない。
【0006】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたもので、印刷画像において細線が途切れるのを有効に防止することが可能な印刷システムおよび印刷方法を提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の印刷システムは、印刷元データから印刷データを生成し、この印刷データに従い噴射ヘッドからインクを噴射させて印刷を行うための印刷システムであって、印刷元データを閾値を用いたディザマスクにより印刷データに変換するハーフトーン処理手段と、閾値を変更する閾値変更手段と、印刷元データから細線を検出する印刷元データ細線検出手段と、印刷元データ細線検出手段にて細線が検出された位置に対応する印刷データの位置に噴射ヘッドからインクを噴射させる命令が存在するか否かを判定する判定手段と、印刷元データから印刷データへの変換を制御する制御手段と、を有し、制御手段は、判定手段において命令が存在しないと判定された場合、閾値変更手段において細線の連続性を高める値へと閾値を変更する制御を行うと共に、変更された閾値を用いたディザマスクにより再度、ハーフトーン処理手段において印刷データを生成させる制御を行うものである。
【0008】
このように構成する場合には、印刷元データ細線検出手段で細線が存在すると判定され、判定手段において噴射ヘッドからインクを噴射させる命令が存在しない場合には、制御手段は閾値変更手段において細線の連続性を高めるようにディザマスクの閾値を変更する制御を行う。このように閾値を変更し、変更後のディザマスクに基づいてハーフトーン処理手段によってハーフトーン処理を行うと、インクの噴射によるドットの形成箇所を増やすことが可能となる。そのため、細線の連続性を高めることが可能となり、印刷画像において細線が途切れるのを低減可能となる。
【0009】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、印刷システムはさらに記録率テーブル変更手段を備え、制御手段は、判定手段において命令が存在しないと判定された場合には、記録率テーブル変更手段によって変更前よりも細線の連続性を高める記録率テーブルへと変更する制御を行うと共に、変更された記録率テーブルにより再度、ハーフトーン処理手段において印刷データを生成させる制御を行う、ことが好ましい。
【0010】
このように構成する場合には、記録率テーブル変更手段によって、変更された後の記録率テーブルは、細線の連続性が高められるものとなる。そのため、変更後の記録率テーブルに基づいてハーフトーン処理を行うと、インクの噴射によるドットの形成箇所を一層増やすことが可能となり、細線の連続性を一層高めることが可能となり、印刷画像において細線が途切れるのを一層低減可能となる。
【0011】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、記録率テーブル変更手段により変更された記録率テーブルに基づいて噴射ヘッドでのインクの噴射によるドットの形成の方が、変更前の記録率テーブルに基づいて噴射ヘッドでのインクの噴射によるドットの形成よりも、ドットのサイズが小さく、かつドットの個数が多くなる、ことが好ましい。
【0012】
このように構成する場合には、記録率テーブル変更手段によって、記録率テーブルを変更した後にインクの噴射によるドットを形成すると、変更前と比較して、ドットのサイズが小さくなり、かつドットの個数が多くなる。ここで、ドットのサイズが大きく、かつドットの個数が少ない場合には、ドットが離散的となり、かつドット間に隙間が空く場合が多い。しかしながら、ドットのサイズを小さくし、かつドットの個数を多くすることにより、インクの噴射量が大きく変わらない状態でありながらも、ドット間の隙間が空くのを低減可能となる。それにより、細線の連続性を一層高めることが可能となり、印刷画像において細線が途切れるのを低減可能となる。
【0013】
また、本発明の他の側面は、印刷元データから印刷データを生成し、この印刷データに従い噴射ヘッドからインクを噴射させて印刷を行うための印刷方法であって、印刷元データを閾値を用いたディザマスクにより印刷データに変換するハーフトーン処理ステップと、印刷元データから細線を検出する印刷元データ細線検出ステップと、印刷元データ細線検出ステップにて細線が検出された位置に対応する印刷データの位置に噴射ヘッドからインクを噴射させる命令が存在するか否かを判定する判定ステップと、印刷元データから印刷データへの変換を制御する制御ステップと、印刷データに従い前記噴射ヘッドからインクを噴射させて印刷を行う印刷ステップと、を有し、制御ステップでは、判定ステップにおいて命令が存在しないと判定された場合、閾値変更手段によって細線の連続性を高める値へと閾値を変更する制御を行うと共に、変更された閾値を用いたディザマスクにより再度、ハーフトーン処理ステップにおいて印刷データを生成させる制御を行う、ことが好ましい。
【0014】
このように構成する場合には、印刷元データ細線検出ステップで細線が存在すると判定され、判定ステップにおいて噴射ヘッドからインクを噴射させる命令が存在しない場合には、制御ステップでは閾値変更手段によってディザマスクの閾値が、細線の連続性を高めるように変更する制御が行われる。このように閾値を変更することにより、変更後のディザマスクに基づいてハーフトーン処理ステップによってハーフトーン処理を行い、その後印刷ステップでインクの噴射を行うと、ドットの形成箇所を増やすことが可能となる。そのため、細線の連続性を高めることが可能となり、印刷画像において細線が途切れるのを低減可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る細線の途切れのイメージを示す図である。
【図2】ディザマスクの閾値変更によりドットを増やすイメージを示す図である。
【図3】記録率テーブルを変更するイメージを示す図である。
【図4】記録率テーブルを変形するイメージの例を示す図である。
【図5】印刷システムの概略的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態に係る印刷システム10および印刷方法について、図面を参照しながら説明する。なお、最初に発明の概要について説明する。
【0017】
<1.概要>
図1(A)は、印刷画像中の細線に、途切れが発生している状態を示す図であり、図1(B)は細線の途切れが改善された状態を示している。たとえばCAD(Computer Aided Design)ソフトを用いて作成されたCADデータ(印刷元データ)のように、細線が多いものを、後述する印刷装置30を用いて印刷する場合において、細線の濃度が薄い場合には、図1(A)に示すように、細線が途切れる状態で印刷されることがある。これは、印刷装置30で印刷するために、データにハーフトーン処理を行うと、中間的な階調表現のためにドットを形成する箇所とドットを形成しない箇所とが存在するためである。
【0018】
そこで、本実施の形態においては、(1)ディザマスクの閾値を変更して、ドットを形成する箇所を増やすようにしている。以下、そのための手法について述べる。
【0019】
図2は、ディザマスクの閾値の変更により、ドットを形成する箇所を増やすイメージを示す図である。図2に示すように、通常のディザマスクD1を用いて印刷を行うと、ドットが形成される箇所は、細線を形成する画素の並びの方向(細線の長手方向)のうちの一部のみ(図2に示すものでは4画素のうち、一画素分のみ)となっている。これに対して、図2に示すように、通常のディザマスクD1のそれぞれの閾値を低下させたディザマスクD2を用いるようにして、印刷を行う。すると、図2に示すように、細線の長手方向において、ドットが形成される箇所を多くすることが可能となる。なお、以下の説明においては、ディザマスクD1とディザマスクD2とを区別する必要がない場合には、ディザマスクDと称呼する。また、図2に示すディザマスクD2の閾値は、ディザマスクD1の閾値を一律約75%に低下させたものとなっているが、そのようにせずに、ディザマスクD1の閾値を低下させる割合を個々の閾値毎に変えるようにしても良い。
【0020】
ここで、図2に示すように、ディザマスクD1をディザマスクD2へ変更する処理のみを行うようにしても良いが、以下のように、大ドット、中ドット、小ドットが発生する比率を変化させる記録率テーブルを用いるようにしても良い。
【0021】
図3は、小ドット(S)、中ドット(M)、大ドット(L)が発生する比率を変化させる記録率テーブルDTを用いる場合の一例を示す図である。なお、図3(A)は変更前の記録率テーブルDT1を示し、図3(B)は変更後の記録率テーブルDT2を示す。図3(B)に示すように、記録率テーブルDTの変更後においては、細線を構成するある画素における階調値に変更はなくても、小ドット、中ドット、大ドットのそれぞれのインクが噴射され易い状態となっている。なお、図3(A)における変更前の階調値が0〜255のときの小ドット、中ドット、大ドットの記録率の変化が、図3(B)における変更後のものでは0〜191のときの小ドット、中ドット、大ドットの記録率の変化に対応している。
【0022】
すなわち、図3(A)では、変更前の記録率テーブルDT1における階調値が0〜255のときの小ドット、中ドット、大ドットの記録率の変化を、変更後における記録率テーブルDT2においては階調値0〜N(Nは255よりも小さい値であり図3(B)に示すものでは191)のときの小ドット、中ドット、大ドットの記録率の変化となるように階調値方向に圧縮した状態となっている。ただし、それぞれのドットの記録率の最大値は変わらなければ、小ドット、中ドット、大ドットの記録率の変化は、どのようなものであっても良い。なお、図3(B)に示す変更後の記録率テーブルDT2を用いて印刷を行うと、上述したディザマスクD2を経過して印刷される等により、ドットの発生確率を上昇させることが可能となる。同様に、上述したディザマスクD2を経過して印刷される等により、形成されるドットのサイズを大きくすることが可能となる。
【0023】
なお、以下の説明においては、記録率テーブルDT1と記録率テーブルDT2とを区別する必要がない場合には、記録率テーブルDTと称呼する。
【0024】
また、記録率テーブルDTの変更は、図4に示すようにしても良い。図4(A)は変更前の記録率テーブルDT1を用いてドットを形成した場合を示し、図4(B)は変更後の記録率テーブルDT3を用いてドットを形成した場合を示す。図4(B)における記録率テーブルDT3においては、小ドット(S)の記録率が顕著に上昇し、中ドット(M)がそれに次ぎ、大ドット(L)の記録率が下がる状態となっている。ここで、図4(A)に示すように変更前の記録率テーブルDT1を用いる場合、形成されるドットが、大ドット(L)の1個だけであるとする。これに対して、図4(B)に示すような記録率テーブルDT3を用いて印刷を行う場合、小さいサイズのドットが複数個形成される。図4(B)では、たとえば小ドット(S)が3個形成されている。
【0025】
すなわち、図4(A)に示す通常の記録率テーブルDT1を用いる場合と、図4(B)に示す記録率テーブルDT3を用いる場合とを比較すると、図4(B)に示す記録率テーブルDT3を用いる方が、形成されるドットのサイズを小さくすることが可能となると共に、形成されるドットの個数を多くすることが可能となる。ここで、図4(B)に示す記録率テーブルDT3を用いる場合、印刷媒体に付着するインク量は、記録率テーブルDT1を用いる場合と比較して、同等であることが好ましい。
【0026】
なお、図4(B)に示すような小さいサイズのドットが複数個形成されるような印刷は、記録率テーブルDT3単独で実現されても良く、記録率テーブルDT3と上述したディザマスクD2を経過して印刷される等により実現されても良い。
【0027】
以上が本発明の概要である。それにより、図1(B)に示すように、細線の濃度が薄い場合に印刷媒体に印刷を行っても、当該細線が途切れる場合を低減することが可能となる。なお、細線の濃度が薄い場合とは、印刷装置30で印刷可能な色成分が濃くなく、その色成分がゼロでもなく、中間的な色合いの場合を指す。
【0028】
なお、上述した図2に示すようなディザマスクDの変更の処理、および図3、図4に示すような記録率テーブルDTの変更の処理は、印刷対象となるデータ(印刷元データ)の中のうち、細線が存在する部分のみに行うようにすることが好ましいが、印刷元データの全体に対して、上述した処理を行うようにしても良く、印刷元データの中のうち細線を含む所定の領域内において(印刷元データの中から細線を含む部分を他の領域から区分して)上述した処理を行うようにしても良い。
【0029】
<2.印刷システム20およびデータ処理について>
続いて、上述したような本実施の形態における発明を実現するための印刷システム10およびデータ処理について説明する。
【0030】
(2−1)印刷システム10の構成について
図5は、本発明の一実施の形態に係る印刷システム10の概略的な構成を示すブロック図である。この印刷システム10は、コンピューター20と印刷装置30とを有していて、コンピューター20に印刷装置30が接続されている。ここで、印刷システム10は、コンピューター20と印刷装置30とによって構成されていても良く、印刷装置30のみによって構成されていても良い。
【0031】
なお、コンピューター20は、細線抽出プログラム24bが実行されることにより請求項でいう印刷元データ細線検出手段の一例に対応する。また、コンピューター20は、ハーフトーン変更プログラム24cが実行されることにより請求項でいう閾値変更手段の一例に対応する。また、コンピューター20は、プリンタードライバープログラム24d(特にハーフトーンモジュール243)が実行されることにより請求項でいうハーフトーン処理手段の一例に対応する。また、コンピューター20は、プリンタードライバープログラム24d(特に判定モジュール245)が実行されることにより請求項でいう判定手段の一例に対応する。また、コンピューター20は、プリンタードライバープログラム24d(特に制御モジュール246)が実行されることにより請求項でいう制御手段の一例に対応する。
【0032】
図5において、コンピューター20はCPU21とRAM22とROM23と外部記憶装置24と外部インターフェース25とビデオインターフェース26と入力インターフェース27とバス28とから構成されている。バス28は、コンピューター20を構成する各要素21〜27の間でのデータ通信を実現するものであり、図示しないチップセット等によって通信が制御されている。外部記憶装置24には、オペレーティングシステム(OS)を含む各種プログラムやデータが記憶されており、その中にはアプリケーションプログラム24a、細線抽出プログラム24b、ハーフトーン変更プログラム24c、およびプリンタードライバープログラム24dが存在する。そして、HDDやフラッシュメモリといった外部記憶装置24に記憶されているプログラムやデータをRAM22に展開しながらCPU21がプログラムやデータに準じた演算を実行する。
【0033】
外部インターフェース25は、印刷装置30やネットワーク等の外部装置に接続され、その外部装置からの印刷データや制御データを受け取ると共に、外部装置への各種データの通知を行う。そのような外部インターフェース25としては、例えばUSB規格に準じたものがある。ビデオインターフェース26はコンピューター20を外部のディスプレイ40に接続し、ディスプレイ40に画像を表示するためのインターフェースである。入力インターフェース27はコンピューター20を外部のキーボード50とマウス60等のような入力手段に接続し、それらの入力手段からの入力信号をコンピューター20が取得するためのインターフェースである。
【0034】
アプリケーションプログラム24aは、たとえばCADデータ等のような印刷対象となるデータ(このようなデータは、請求項でいう印刷元データに対応する。)が作成されたり、外部インターフェース25等から画像データ等の印刷元データを取り込む機能を有している。このアプリケーションプログラム24aは、図示外のビデオドライバを介して、印刷元データをディスプレイ40に表示させる。また、アプリケーションプログラム24aは、プリンタードライバープログラム24dを介して、印刷元データに所定のデータ処理を施した後に、印刷装置30に出力する。
【0035】
細線抽出プログラム24bは、印刷元データ中に細線が存在するか否かを判定し、印刷元データ中に細線が存在する場合には、その細線を抽出するためのプログラムである。細線が存在するか否かの判定は、同じ階調値または類似する階調値の画素が所定の閾値以上連続しているか否かにより行う。すなわち、CADソフト等で作成される細線は、同じ階調値または類似する階調値の画素が並んで形成されているため、細線抽出プログラム24bにおいては、同じ階調値または類似する階調値の画素が所定の閾値以上連続しているか否かによって、細線が存在しているか否かの判定を行っている。
【0036】
また、細線抽出プログラム24bは、細線が存在すると判定された場合には、印刷元データのどの部位に細線が存在しているのかを抽出する処理を行う。そして、細線が存在する部位に関する情報を、プリンタードライバープログラム24d側に出力する。なお、細線抽出プログラム24bがプリンタードライバープログラム24dに出力するデータは、印刷元データから抽出された細線または細線を含む所定の領域のデータ(第1データ)と、印刷元データから抽出された細線または細線を含む所定の領域を除いたデータ(第2データ)とをそれぞれ別個にプリンタードライバープログラム24dに出力するようにしても良い。
【0037】
また、ハーフトーン変更プログラム24cは、図2に示すように、ディザマスクDの閾値を変更する処理を行う。また、図3または図4に示すような記録率テーブルDTを変更する処理を行う場合には、ハーフトーン変更プログラム24cは、図3または図4に示すように、記録率テーブルDTを変更する処理を行う。ただし、かかるディザマスクDの閾値を変更する処理および/または記録率テーブルDTを変更する処理は、上述した細線抽出プログラム24b、またはハーフトーン変更プログラム24cにおいて行うようにしても良い。
【0038】
プリンタードライバープログラム24dは、画像取得モジュール241と、色変換モジュール242と、ハーフトーンモジュール243と、印刷データ出力モジュール244と、判定モジュール245と、制御モジュール246とを備え、その他、データとして、記録率テーブルDTとディザマスクDを有している。画像取得モジュール241は、アプリケーションプログラム24aから、印刷の対象となる印刷元データの取得を行う。色変換モジュール242は、予め用意された色変換テーブルを参照して、印刷元データの色成分R,G,Bを印刷装置30が表現可能な色成分(たとえばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色)に変換する。
【0039】
ハーフトーンモジュール243は、色変換後の中間データを、二値化または多値化されたドットの分布によって表すハーフトーン処理を行う。本実施例では、このハーフトーン処理として、通常のディザマスクD、または図2に示すような変更後のディザマスクDを用いて、組織的ディザ法により処理を行う。さらにハーフトーンモジュール243は、CMYK表色系によって表された中間データを、記録率テーブルDT(記録率テーブルDTを変更した場合には変更後の記録率テーブルDT2または記録率テーブルDT3)を参照して、たとえば大、中、小の3種類のドットの組み合わせからなるビットマップデータに変換する。なお、ハーフトーン処理後のビットマップデータを、請求項における印刷データに対応するものとしても良い。
【0040】
なお、ハーフトーンモジュール243は、上述した第2データには通常のハーフトーン処理を行い、上述した第1データには図2に示すディザマスクD2を用いてディザ処理を行うようにしても良い。さらに上述した第1データには、図3または図4に示す記録率テーブルDT2または記録率テーブルDT3を参照した処理を行うようにしても良い。
【0041】
印刷データ出力モジュール244は、ハーフトーン処理によって得られた各色のドットの配置を表すデータを、印刷装置30の印刷ヘッド32によるドットの形成順序に合わせて並び替え、印刷データとして印刷装置30に出力する。
【0042】
判定モジュール245は、細線抽出プログラム24bにて細線が検出された位置に対応する印刷データの位置に、印刷ヘッド32からインクを噴射させる命令が存在するか否かを判定する。すなわち、判定モジュール245は、細線抽出プログラム24bにて細線が検出された位置に対応する印刷データの位置に、ドットが形成されるか否かを判定する。
【0043】
制御モジュール246は、印刷元データからハーフトーン処理後のビットマップデータまたはドットの形成順序に合わせて並び替えられた印刷データへの変換を制御する。この制御においては、制御モジュール246は、判定モジュール245において、インクを噴射させる命令が存在しないと判定された場合(ドットが形成されないと判定された場合)、ハーフトーン変更プログラム24cにおいてディザマスクD1の閾値を下げる制御を行うと共に、下げられた閾値を用いたディザマスクD2により再度、ハーフトーン処理モジュール243において、ハーフトーン処理後のビットマップデータを生成させる制御を行う。
【0044】
また、印刷装置30には、制御部31と印刷ヘッド32が設けられている。制御部31は印刷データ出力モジュール244から受け取った印刷データに基づいて、印刷ヘッド32(請求項でいう噴射ヘッドの一例に対応)を駆動させるための駆動信号を作成する。なお、この印刷ヘッド32は、インク量の異なる複数種類(大、中、小)のインク滴を噴射することで、複数種類のサイズのドットを形成することを可能としても良い。
【0045】
また、印刷ヘッド32は、シアンインク(C)、マゼンタインク(M)、イエローインク(Y)、ブラックインク(K)とを少なくとも噴射可能としている。ただし、これら以外の色のインクを噴射可能としていても良い。
【0046】
(2−2)データ処理について
続いて、上述した印刷システム10におけるデータ処理(画像処理)について説明する。
【0047】
画像取得モジュール241がアプリケーションプログラム24aからRGB表色系のデータを受け取ると、解像度変換等の所定の処理後に、色変換モジュール242によって、印刷装置30で印刷可能な色成分(たとえばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色)に色変換する。
【0048】
その後ハーフトーンモジュール243は、通常のディザマスクD1を用いてディザ処理を行い、さらにCMYK表色系によって表された画像データを、記録率テーブルDTを参照して、たとえば大、中、小の3種類のドットの組み合わせからなるビットマップデータに変換する(ハーフトーン処理ステップに相当)。
【0049】
また、ハーフトーン処理とは別に、細線抽出プログラム24bはアプリケーションプログラム24aから印刷元データを受け取って、印刷元データ中に細線が存在するか否かを判定する(印刷元データ細線検出ステップに相当)。また、この判定において細線が存在すると判定された場合には、細線抽出プログラム24bは、印刷元データのどの部位に細線が存在しているのかを抽出する処理を行う。そして、細線が存在する部位に関する情報を、プリンタードライバープログラム24d側に出力する。なお、かかる細線抽出プログラム24bを有しないものとしても良い。また、上述した第1データおよび第2データとをそれぞれ別個にプリンタードライバープログラム24dに出力するようにしても良い。
【0050】
また、ハーフトーン処理後および細線の検出後に、判定モジュール245は、細線抽出プログラム24bにて細線が検出された位置に対応する印刷データの位置に、印刷ヘッド32からインクを噴射させる命令が存在するか否か、すなわち、ドットが形成されるか否かを判定する(判定ステップに相当)。
【0051】
この判定の後に、制御モジュール246は、判定モジュール245において、インクを噴射させる命令が存在しないと判定された場合(ドットが形成されないと判定された場合)、ハーフトーン変更プログラム24cにおいてディザマスクD1の閾値を下げる制御を行う。そして、制御モジュール246は、下げられた閾値を用いたディザマスクD2により再度、ハーフトーン処理モジュール243において、ハーフトーン処理後のビットマップデータを生成させる制御を行う(制御ステップに相当)。
【0052】
なお、制御モジュール246は、印刷元データの全体または細線を含む所定領域に対して図3に示す記録率テーブルDT2または図4に示す記録率テーブルDT3を用いるように、変更することも可能である。また、このハーフトーン処理においては、上述した第2データには通常のハーフトーン処理を行うと共に、上述した第1データには図2に示すディザマスクD2を用いてディザ処理を行うようにしても良い。さらに上述した第1データには、図3または図4に示す記録率テーブルDT2または記録率テーブルDT3を参照した処理を行うようにしても良い。また、制御モジュール246による再度のハーフトーン処理は、一度のみ行うようにすることが処理負荷上、好ましいが、二度以上、再度のハーフトーン処理を行うようにしても良い。
【0053】
このようなハーフトーン処理を行った後に印刷を行うと(印刷ステップに相当)、図1(B)に示すように、細線が途切れる状態が改善される。
【0054】
その後、印刷データ出力モジュール244は、ハーフトーン処理がなされたビットマップデータから、印刷ヘッド32によるドットの形成順序に合わせて並び替えた印刷データを生成する。
【0055】
<3.本実施の形態における効果>
以上のような構成の印刷システム10および印刷方法によると、細線抽出プログラム24bに基づいて細線が存在すると判定され、判定モジュール245において印刷ヘッド32からインクを噴射させる命令が存在しない場合(ドットが形成されないと判定された場合)には、制御モジュール246はハーフトーン変更プログラム24cによって細線の連続性を高めるようにディザマスクの閾値を変更する制御を行う。このように閾値を変更し、変更後のディザマスクD2に基づいてハーフトーン処理を行うと、インクの噴射によるドットの形成箇所を増やすことが可能となる。そのため、細線の連続性を高めることが可能となり、印刷画像において細線が途切れるのを低減可能となる。
【0056】
また、本実施の形態においては、ハーフトーン変更プログラム24cが、図3または図4に示すように記録率テーブルDTを変更する場合には、その変更後の記録率テーブルDT2または記録率テーブルDT3に基づいてハーフトーン処理を行うと、インクの噴射によるドットの形成箇所を一層増やすことが可能となる。それにより、細線の連続性を一層高めることが可能となり、印刷画像において細線が途切れるのを一層低減可能となる。
【0057】
ここで、図4に示すような記録率テーブルDT3へと変更し、その変更後にインクの噴射によるドットを形成すると、変更前と比較して、ドットのサイズが小さくなり、かつドットの個数が多くなる。ここにおいて、ドットのサイズが大きく、かつドットの個数が少ない場合には、ドットが離散的となり、かつドット間に隙間が空く場合が多い。しかしながら、ドットのサイズを小さくし、かつドットの個数を多くすることにより、インクの噴射量が大きく変わらない状態でありながらも、ドット間の隙間が空くのを低減可能となる。それにより、細線の連続性を一層高めることが可能となり、印刷画像において細線が途切れるのを低減可能となる。
【0058】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施の形態について述べたが、本発明は、種々変形可能である。以下、それについて述べる。
【0059】
(4−1)変形例その1
上述の実施の形態では、細線抽出プログラム24bは、細線が存在すると判定された場合に、ハーフトーン変更プログラム24cでディザマスクDの閾値を変更する処理を行っている。しかしながら、予め閾値が変更されたディザマスクD2を単数または複数準備しておき、細線が存在すると判定された場合に、ハーフトーン変更プログラム24cでは準備されたディザマスクD2の中のいずれかを用いるようにしても良い。そのようにすると、ディザマスクDの変更の際に、処理が高速化される。
【0060】
(4−2)変形例その2
また、上述の実施の形態では、ハーフトーン変更プログラム24cでは、図3に示すような記録率テーブルDT2または図4に示すような記録率テーブルDT3に変更する処理を行っている。しかしながら、予め変更されている記録率テーブルDT2または記録率テーブルDT3を単数または複数準備しておき、記録率テーブルDTを変更する場合に、ハーフトーン変更プログラム24cでは準備された記録率テーブルDT2または記録率テーブルDT3の中のいずれかを用いるようにしても良い。そのようにすると、記録率テーブルDTの変更の際に、処理が高速化される。
【0061】
(4−3)変形例その3
また、上述の実施の形態においては、印刷媒体の種類については、特段考慮していないが、上述したディザマスクDの変更、および/または記録率テーブルDTの変更においては、印刷媒体の種類を考慮して、印刷媒体の種類ごとに変更後のディザマスクD、および/または変更後の記録率テーブルDTが異なるものとしても良い。このようにすると、印刷媒体の種類に応じて、ディザマスクDの変更、および/または記録率テーブルDTの変更が最適化される。
【0062】
(4−4)変形例その4
上述の実施の形態では、たとえば図1等において、濃度が薄い場合に途切れが生じる細線として、細線の幅方向(短手方向)の画素数が1個のみのものが示されている。しかしながら、細線の幅方向(短手方向)の画素数は1個のみには限らず、たとえば2個以上等のように複数個並んでいるものであっても良い。このような細線であっても、濃度が薄い場合に途切れが生じる場合があるからである。なお、濃度が薄い場合の細線の途切れは、複数色のインクの噴射によって形成されても良く、単数のインクの噴射によって形成されても良い。
【0063】
(4−5)変形例その5
上述の実施の形態では、印刷元データの各画素の階調値が、ディザマスクDの閾値よりも大きい場合に、ドットが形成される(印刷ヘッド32からインクが噴射される)ものとしている。しかしながら、印刷元データの各画素の階調値が、ディザマスクDの閾値よりも小さい場合に、ドットが形成される(印刷ヘッド32からインクが噴射される)ものとしても良く、この場合には、ディザマスクD1の閾値を上げるようにして、ディザマスクD2を作成するものとなる。
【0064】
(4−6)変形例その6
上述の実施の形態においては、印刷ヘッド32を有する印刷装置30によって、印刷画像を形成するものとしている。しかしながら、印刷画像は、印刷装置30によって形成されるものには限られず、たとえば複写機等のような印刷装置30は異なる手段によって形成されるものであっても良い。
【0065】
(4−7)変形例その7
また、上述の実施の形態において、印刷装置30の概念には、インク以外の他の液体(液体そのものや、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流動性を有する材質を含む)を噴射したり噴射したりする流体噴射装置を含むようにすることもできる。
【符号の説明】
【0066】
10…印刷システム、20…コンピューター(印刷元データ細線検出手段の一例、判定手段の一例、閾値変更手段の一例、制御手段の一例、ハーフトーン処理手段の一例に対応)、21…CPU、22…RAM、23…ROM、24…外部記憶装置、24a…アプリケーションプログラム、24b…細線抽出プログラム、24c…ハーフトーン変更プログラム、24d…プリンタードライバープログラム、25…外部インターフェース、26…ビデオインターフェース、27…入力インターフェース、28…バス、30…印刷装置、31…制御部、32…印刷ヘッド(噴射ヘッドの一例に対応)、40…ディスプレイ、50…キーボード、60…マウス、241…画像取得モジュール、242…色変換モジュール、243…ハーフトーンモジュール、244…印刷データ出力モジュール、D,D1,D2…ディザマスク、DT,DT1,DT2,DT3…記録率テーブル



【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷元データから印刷データを生成し、この印刷データに従い噴射ヘッドからインクを噴射させて印刷を行うための印刷システムであって、
前記印刷元データを閾値を用いたディザマスクにより印刷データに変換するハーフトーン処理手段と、
前記閾値を変更する閾値変更手段と、
前記印刷元データから細線を検出する印刷元データ細線検出手段と、
前記印刷元データ細線検出手段にて細線が検出された位置に対応する前記印刷データの位置に前記噴射ヘッドからインクを噴射させる命令が存在するか否かを判定する判定手段と、
前記印刷元データから前記印刷データへの変換を制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、前記判定手段において前記命令が存在しないと判定された場合、前記閾値変更手段において前記細線の連続性を高める値へと前記閾値を変更する制御を行うと共に、変更された前記閾値を用いた前記ディザマスクにより再度、前記ハーフトーン処理手段において前記印刷データを生成させる制御を行う、
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
請求項1記載の印刷システムであって、この印刷システムはさらに記録率テーブル変更手段を備え、
前記制御手段は、前記判定手段において前記命令が存在しないと判定された場合には、前記記録率テーブル変更手段によって変更前よりも前記細線の連続性を高める記録率テーブルへと変更する制御を行うと共に、変更された前記記録率テーブルにより再度、前記ハーフトーン処理手段において前記印刷データを生成させる制御を行う、
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項3】
請求項2記載の印刷システムであって、
前記記録率テーブル変更手段により変更された前記記録率テーブルに基づいて前記噴射ヘッドでの前記インクの噴射によるドットの形成の方が、変更前の前記記録率テーブルに基づいて前記噴射ヘッドでの前記インクの噴射によるドットの形成よりも、ドットのサイズが小さく、かつドットの個数が多くなるように前記記録率テーブル変更手段は前記記録率テーブルを変更する、
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項4】
印刷元データから印刷データを生成し、この印刷データに従い噴射ヘッドからインクを噴射させて印刷を行うための印刷方法であって、
前記印刷元データを閾値を用いたディザマスクにより印刷データに変換するハーフトーン処理ステップと、
前記印刷元データから細線を検出する印刷元データ細線検出ステップと、
前記印刷元データ細線検出ステップにて細線が検出された位置に対応する前記印刷データの位置に前記噴射ヘッドからインクを噴射させる命令が存在するか否かを判定する判定ステップと、
前記印刷元データから前記印刷データへの変換を制御する制御ステップと、
前記印刷データに従い前記噴射ヘッドから前記インクを噴射させて印刷を行う印刷ステップと、
を有し、
前記制御ステップでは、前記判定ステップにおいて前記命令が存在しないと判定された場合、閾値変更手段によって前記細線の連続性を高める値へと前記閾値を変更する制御を行うと共に、変更された前記閾値を用いた前記ディザマスクにより再度、前記ハーフトーン処理ステップにおいて前記印刷データを生成させる制御を行う、
ことを特徴とする印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−157998(P2012−157998A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17630(P2011−17630)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】