説明

印刷システムおよび印刷方法

【課題】電子メール等によってプリンターを利用できるクラウドコンピューティングシステムにおいて,スパムによる無駄な印刷を防止する。
【解決手段】識別子と印刷対象とを含む印刷依頼を送信する印刷依頼部を備え、前記識別子によって識別される任意の無線端末と、前記印刷依頼を受信する印刷依頼受信部と、前記印刷対象に対応する印刷情報を前記識別子に対応付けて送信する印刷情報送信部と、を備える印刷依頼制御サーバーと、前記任意の無線端末の識別子を検出する無線端末検出部と、前記検出された識別子に対応する前記印刷情報を前記印刷依頼制御サーバーから受信する印刷情報受信部と、前記印刷情報に基づいて印刷を制御する印刷制御手段と、を備えるプリンターと、を備える印刷システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,印刷制御システム、プリンター、印刷依頼制御サーバー、印刷依頼制御方法および印刷制御方法に関し,特に,プリンターに対応付けられた通信アカウントにメッセージやファイルを送信することによってプリンターを利用できるクラウドコンピューティングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来,電子メールを受信し当該電子メールの本文や添付ファイルを印刷する機能を備えたクラウドコンピューティングシステムが知られている(例えば特許文献1)。このクラウドコンピューティングシステム(以下,単に印刷システムという。)は,特定の電子メールを受信すると電子メールの本文や添付ファイルに基づいて特定のプリンターに対応した印刷データを生成するサーバーと,サーバーから印刷データを取得して印刷を実行するプリンターとを備えている。したがって印刷システムの利用者は,PC(Personal Computer),スマートフォン等の通信端末にプリンタードライバーがインストールされていない場合であっても,印刷システムに登録されているプリンターを利用することが可能になる。この印刷システムにおいては,印刷対象を受信するための電子メールアドレスをプリンターに割り当てることを含むプリンターの登録処理がサーバーにおいてなされると,当該電子メールアドレスを知っている任意のユーザーが当該プリンターを利用可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−369110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし,上記印刷システムにおいては,プリンターに割り当てられた電子メールアドレスにスパムが送信されると、無駄な印刷が実行されるという問題がある。
【0005】
本発明は,電子メール等によってプリンターを利用できるクラウドコンピューティングシステムにおいて,スパムによる無駄な印刷を防止することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するための印刷システムは、識別子と印刷対象とを含む印刷依頼を送信する印刷依頼部を備え、前記識別子によって識別される任意の無線端末と、前記印刷依頼を受信する印刷依頼受信部と、前記印刷対象に対応する印刷情報を前記識別子に対応付けて送信する印刷情報送信部と、を備える印刷依頼制御サーバーと、前記任意の無線端末の識別子を検出する無線端末検出部と、前記検出された識別子に対応する前記印刷情報を前記印刷依頼制御サーバーから受信する印刷情報受信部と、前記印刷情報に基づいて印刷を制御する印刷制御手段と、を備えるプリンターと、を備える。
本発明によると,プリンターに無線端末が接近すると,その無線端末の通信識別子に対応付けられた印刷情報をプリンターが取得可能になる。したがってプリンターの近くに位置するユーザーは、無線端末の通信識別子と印刷対象を含む印刷依頼を印刷依頼制御サーバーに送信することによって、印刷対象に対応する印刷情報をプリンターに取得させることができる。このようにしてプリンターが印刷情報を取得するにあたって無線端末の通信識別子を用いることにより、スパムによる無駄な印刷を防止することができる。
(2)上記目的を達成するための印刷システムにおいて、前記印刷依頼は、前記通信識別子を含む電子メールアドレスを宛先とする電子メールであってもよい。
この構成を採用すると、ユーザーは無線端末に備わる汎用的な電子メール送信機能を用いて印刷依頼を送信できるようになる。
(3)上記目的を達成するための印刷システムにおいて、前記印刷情報は、前記印刷対象をそのまま含んでも良い。
この構成を採用する場合、ユーザーから送信された印刷対象は印刷依頼制御サーバーを経てそのままプリンターに届くことになる。したがって印刷依頼制御サーバーの負荷を低減することができる。
(4)上記目的を達成するための印刷システムにおいて、前記印刷依頼制御サーバーは、前記印刷対象を変換することによって前記印刷情報を生成する印刷情報生成部をさらに備えてもよい。
この構成を採用する場合、印刷依頼制御サーバーにおいて印刷対象をプリンターに適した印刷データに変換して印刷情報としてプリンターに送信することができるため、様々なフォーマットの印刷対象を印刷データに変換する機能をプリンターに備える必要が無く、また、印刷対象をプリンターに適した印刷データに変換する機能を備えていない無線端末からでもプリンターに印刷を実行させることが可能になる。
【0007】
なお,請求項に記載された各手段の機能は,構成自体で機能が特定されるハードウェア資源,プログラムにより機能が特定されるハードウェア資源,又はそれらの組み合わせにより実現される。また,これら各手段の機能は,各々が物理的に互いに独立したハードウェア資源で実現されるものに限定されない。さらに,本発明はプリンターとしても、1台又は複数台のサーバーコンピューターからなる印刷依頼制御サーバーとしても印刷依頼制御方法としても,上記した機能をコンピューターに実現させるコンピュータープログラムとしても,そのプログラムの記録媒体としても成立する。むろん,そのコンピュータープログラムの記録媒体は,磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし,今後開発されるいかなる記録媒体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第一実施例としての印刷システムを示すブロック図である。
【図2】本発明の第一実施例としての印刷制御方法を示すシーケンス図である。
【図3】本発明の第二実施例としての印刷システムを示すブロック図である。
【図4】本発明の第二実施例としての印刷制御方法を示すシーケンス図である。
【図5】本発明の第三実施例としての印刷システムを示すブロック図である。
【図6】本発明の第三実施例としての印刷制御方法を示すシーケンス図である。
【図7】本発明の第三実施例の変形例としての印刷制御方法を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下,本発明の複数の実施例を添付図面を参照しながら説明する。尚,各図において対応する構成要素には同一の符号が付され,重複する説明は省略される。
1.第一実施例
1−1.印刷システム
図1は本発明の第一実施例としての印刷システムを示すブロック図である。印刷システムは,無線端末2の通信識別子を含む電子メールアドレスに電子メールを送信することによって電子メールの本文および添付ファイルを印刷できるクラウドコンピューティングシステムとして構成され,インターネット4を介して接続された印刷依頼制御サーバー1と,プリンター3と、任意の無線端末2とで構成される。
【0010】
印刷依頼制御サーバー1は,SMTPサーバーとして機能するコンピューターである。印刷依頼制御サーバー1は、各種のコンピュータープログラムを実行することにより、印刷依頼としての電子メールを受信する印刷依頼受信部11と、受信した電子メールを記憶する印刷情報記憶部12と、要求に応じて電子メールを送信する印刷情報送信部13として機能する。具体的には、印刷依頼制御サーバー1は、予め決められたドメイン名によってインターネットにおいて識別されるコンピューターであって、当該ドメイン名を宛先に含む任意の電子メールを受信して蓄積する。また印刷依頼制御サーバー1は、MUA(Mail User Agent)から、当該MUAに割り当てられている電子メールアドレスに対して送信された電子メールを要求されると、要求された電子メールを当該MUAに対して送信する。
【0011】
プリンター3は、電子メールを送受信するためのMUAとしての印刷情報受信部31と、電子メールから印刷対象を取得するとともに印刷対象に基づいて印刷を制御する印刷制御部32と、インクジェット方式やレーザー方式といった周知の構成を備えた印刷部33と、無線端末検出部34とを備えている。印刷情報受信部31と印刷制御部32と無線端末検出部34はプロセッサとRAMと入出力機構とを備えるコンピューターと周知の無線LAN通信回路によって構成される。無線端末検出部34は、無線LANを介して他の無線通信機器と通信する機能の他、他の無線通信機器の通信識別子を取得する機能を備えている。
【0012】
無線端末2は、電子メールを送受信するためのMUAとしてのメール通信部21と、無線端末2の通信識別子と印刷依頼制御サーバー1のドメイン名を含む電子メールアドレスに印刷対象を含む電子メール(印刷依頼メール)を送信する印刷依頼生成部22とを備えている。印刷依頼生成部22は、無線端末2の通信識別子を取得し、予め登録されている印刷依頼制御サーバー1のドメイン名と組み合わせた電子メールアドレスを生成し、生成した電子メールアドレスを宛先に設定する。通信識別子としては、例えばSSID、MACアドレスなどを利用できる。例えば無線端末2の通信識別子が"xxxxxx"、印刷依頼制御サーバー1のドメイン名が"yyyyyy"であるとすると、印刷依頼生成部22が生成する電子メールアドレスは"xxxxxx@yyyyyy"となる。また印刷依頼生成部22は、印刷対象を選択するためのユーザーインターフェースを提供する。例えば印刷依頼生成部22は、ファイルシステムを呼び出して印刷対象となるファイルをユーザーに選択させ、選択されたファイルを電子メールに添付する。なお、予め登録されている印刷依頼制御サーバー1のドメイン名と無線端末2の通信識別子とを組み合わせた電子メールアドレスを、一般的なMUAであるメール通信部21にユーザーに入力させることとすれば、印刷依頼生成部22を省略することもできる。
【0013】
1−2.印刷依頼制御方法
次に、上述した印刷システムを用いた印刷依頼制御方法を図2に基づいて説明する。
プリンター3によって印刷物を出力しようとするユーザーは、印刷依頼生成部22を操作して、任意の無線端末から当該無線端末の通信識別子に対応するとともに印刷依頼制御サーバー1のドメイン名を含む電子メールアドレスに印刷対象を含む電子メール(印刷依頼メール)をメール通信部21を介して送信する(S100)。印刷依頼メールには、本文または添付ファイルに印刷対象としてのテキストデータや画像データを含めることができる。無線端末2のユーザーは、インターネットに接続できる環境であれば、どこにいても印刷依頼メールを送信することができる。
【0014】
無線端末2から印刷依頼メールが送信されると、印刷依頼制御サーバー1はインターネット4を介してその印刷依頼メールを受信して記憶する(S200)。印刷依頼としての電子メールの宛先には無線端末2の通信識別子が含まれているため、印刷依頼制御サーバー1は、無線端末2の通信識別子に対応付けて印刷情報としての印刷対象を記憶することになる。なお、印刷情報記憶部12は、印刷依頼制御サーバー1に割り当てられているドメイン宛に送信される全ての電子メールを受信して記憶するため、受信してから一定時間が経過した電子メールを順次削除したり、記憶する電子メールの数に上限を設け、上限を超える電子メールを蓄積した場合には、旧い電子メールから順に削除することが望ましい。
【0015】
一方、プリンター3の無線端末検出部34は、無線LANを通じて定期的に通信識別子を問い合わせる(S300)。具体的には、プリンター3が接続されている無線LANを通じて通信識別子を問い合わせるブロードキャストを実行し、その無線LANに他の無線端末が存在する場合には、他の無線端末からその通信識別子を受信する(S102)。通信識別子を問い合わせるこの処理は定期的に実施されるため、プリンター3が接続されている無線LANに接続可能な領域に無線端末2がある場合には、無線端末2の通信識別子がプリンター3によって検出される。
【0016】
無線端末2の通信識別子を検出したプリンター3は、検出した通信識別子に対応する電子メールアドレス宛の電子メールの転送を印刷依頼制御サーバー1に対して要求する(S302)。すなわち、プリンター3が接続されている無線LANと接続可能な領域に無線端末2が進入すると、印刷情報受信部31は、無線端末2の通信識別子に対応する電子メールアドレス宛の電子メールを印刷依頼制御サーバー1が記憶していないか、印刷依頼制御サーバー1に対して問い合わせる。
【0017】
印刷依頼制御サーバー1は、問い合わせを受けた電子メールを記憶している場合には、問い合わせ元のプリンターに対して、その電子メールを送信する(S202)。具体的には、プリンター3が無線端末2の通信識別子を含む電子メールアドレスに対して送信された電子メールの転送を要求したときに、印刷依頼制御サーバー1が無線端末2の通信識別子と本文または添付ファイルを印刷依頼メールとして記憶している場合には、その印刷依頼メールがプリンター3に対して送信される。
【0018】
プリンター3は、検出した通信識別子を含む電子メールアドレスに対して送信された電子メールを受信すると(S304)、印刷情報としての本文または添付ファイルに基づいて印刷を実行する(S306)。具体的には、印刷情報受信部31が印刷情報としての本文または添付ファイルを含む電子メールを受信すると、印刷制御部32が電子メールから本文および添付ファイルを取得して印刷データに変換し、印刷データに基づいて印刷部33を制御することによって、無線端末2が印刷依頼制御サーバー1に送信した印刷対象が印刷部33によって印刷される。
その後、プリンター3は印刷完了を印刷依頼制御サーバー1に通知し、印刷依頼制御サーバー1は印刷完了を履歴情報に記録して、終了する。このとき、印刷依頼制御サーバー1は印刷完了を無線端末2に通知してもよい。
【0019】
以上説明した実施例によると、プリンターが印刷対象を受信するための電子メールの宛先が固定されておらず、プリンターによって動的に生成されるため、プリンターがスパムを受信することによって無駄な印刷が実行されることが防止される。また、無線端末は、プリンターに割り当てられている電子メールアドレスを取得せずに印刷依頼メールを送信できるため、無線端末の近くに存在するプリンターを利用することが容易になる。
【0020】
2.第二実施例
2−1.印刷システム
図3は本発明の第二実施例としての印刷システムを示すブロック図である。本実施例は、第一実施例で説明した印刷依頼生成部22が無線端末2に無く、また、印刷情報生成部14が印刷依頼制御サーバー1に追加されている点において、第一実施例と異なっている。
本実施例において、印刷依頼制御サーバー1は、所定のコンピュータープログラムを実行することにより、印刷対象としての電子メールの本文または添付ファイルを印刷情報としての印刷データに変換する印刷情報生成部14としても機能する。
【0021】
2−2.印刷依頼制御方法
図4は、本実施例の印刷システムを用いた印刷依頼制御方法を示すシーケンスチャートである。
プリンター3によって印刷物を出力しようとするユーザーは、メール通信部21を操作して、任意の無線端末から当該無線端末の通信識別子と印刷依頼制御サーバー1のドメイン名を含む電子メールアドレスに印刷対象を含む電子メール(印刷依頼メール)を送信する(S101)。第一実施例で説明した印刷依頼生成部22が無い無線端末2のユーザーは、MUAとして機能する一般的な電子メール送受信プログラムを起動し、印刷対象としてのファイルを添付したり、印刷対象としての本文を記述し、無線端末2の通信識別子と印刷依頼制御サーバー1のドメイン名とを組み合わせた電子メールアドレスを宛先に設定して印刷依頼メールを作成し、作成した印刷依頼メールを送信する。
プリンター3は、無線端末の通信識別子を検出すると、検出した通信識別子に対応する印刷データを要求する(S303)。具体的には、プリンター3が接続されている無線LANと接続可能な領域に無線端末2が進入すると、印刷情報受信部31は、無線端末2の通信識別子を印刷依頼制御サーバー1に送信し、送信した通信識別子に対応する電子メールの本文または添付ファイルを印刷データに変換するように印刷依頼制御サーバー1に対して要求する。
【0022】
印刷依頼制御サーバー1は、印刷データを要求されると、プリンター3から受信した通信識別子に対応する電子メールの本文または添付ファイルから印刷データを生成し(S210)、生成した印刷データをプリンター3に送信する(S212)。具体的には、まず印刷情報生成部14は、印刷データを要求されると、プリンター3から受信した通信識別子を宛先に含む電子メールを印刷情報記憶部12が記憶しているか否かを判定する。適合する電子メールを印刷情報記憶部12が記憶している場合には、印刷情報生成部14は、適合する電子メールから印刷対象としての本文または添付ファイルを取得し、取得した本文または添付ファイルから、印刷データを要求したプリンター3に適合した印刷データを生成し、生成した印刷データをプリンター3に送信する。
【0023】
プリンター3は、検出した通信識別子に対応する印刷データを印刷依頼制御サーバー1から受信すると(S305)、印刷データに基づいて印刷を実行する(S307)。具体的には、印刷情報受信部31が印刷情報としての印刷データを受信すると、印刷制御部32が印刷データに基づいて印刷部33を制御することによって、無線端末2が印刷依頼制御サーバー1に送信した印刷対象が印刷部33によって印刷される。
【0024】
本実施例によると、印刷依頼制御サーバーにおいて印刷対象をプリンターに適した印刷データに変換して印刷情報としてプリンターに送信することができるため、様々なフォーマットの印刷対象を印刷データに変換する機能をプリンターまたは無線端末に備える必要が無くなる。
【0025】
3.第三実施例
3−1.印刷システム
図5は本発明の第三実施例としての印刷システムを示すブロック図である。本実施例の印刷システムは、インターネット4に接続された許可端末5を含み、印刷依頼制御サーバー1が印刷許可制御部15を備え、プリンター3が許可依頼部35を備えている点において、第二実施例と異なっている。
【0026】
許可端末5は、プリンター3の管理者と同一の者によって管理されるパーソナルコンピューター、携帯電話等の通信端末であって、プリンター3に対応付けて印刷依頼制御サーバー1にXMPPアカウント名、電子メールアドレスなどの通信識別子が登録されている。許可端末5は、XMPP(eXtensible Messaging and Presence Protocol)、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)等のプロトコルに基づいて印刷依頼制御サーバー1と通信する機能を有する。
【0027】
本実施例において、印刷依頼制御サーバー1は、所定のコンピュータープログラムを実行することにより、印刷依頼メール毎にプリンター3による印刷の実行を許可するか否かを判定する印刷許可制御部15としても機能する。
プリンター3に備わるコンピューターは、所定のコンピュータープログラムを実行することにより、無線端末の通信識別子を印刷依頼制御サーバー1に送信する許可依頼部35としても機能する。
【0028】
3−2.印刷依頼制御方法
図4は、本実施例の印刷システムを用いた印刷依頼制御方法を示すシーケンスチャートである。
プリンター3は、無線端末の通信識別子を検出すると、検出した通信識別子に対応する印刷の許可を印刷制御サーバー1に対して要求する(S301)。具体的には、プリンター3が接続されている無線LANと接続可能な領域に無線端末2が存在することを検出すると、許可依頼部35は、無線端末2の通信識別子とプリンター3の識別子とを印刷依頼制御サーバー1に送信することによって、当該通信識別子を有する無線端末2から印刷制御サーバー1が受信する印刷依頼メールに基づく印刷データを要求する。
【0029】
印刷依頼制御サーバー1は、プリンターから任意の無線端末の通信識別子を受信して印刷データを要求され、かつ、任意の無線端末から印刷依頼メールを受信した場合、これらの無線端末から送信された印刷依頼メールに基づいてプリンターに印刷を実行させるか否かを許可フラグに基づいて判定する(S204)。許可フラグは、"許可"または"不許可"を印刷依頼制御サーバー1に予め登録されたプリンターの識別子毎、無線端末の通信識別子毎に示す二値のデータである。許可フラグが"許可"を示している場合にはS210の処理に進む。
【0030】
許可フラグが"不許可"を示している場合、印刷依頼制御サーバー1は、受信した印刷依頼メールに応じて印刷の実行を許可するように、無線端末の通信識別子を検出して印刷の許可を要求したプリンターに対応する許可端末に依頼する(S206)。具体的には、印刷許可制御部15が、許可依頼情報をプリンター3に対応付けて登録されている許可端末5に送信することによって、プリンター3による印刷の実行許可を依頼する。
【0031】
許可依頼情報を受信した許可端末5のユーザーは、許可依頼情報に基づいて印刷の実行を許可するか否かを判断し、判断結果を印刷依頼制御サーバー1に送信する(S500)。このときユーザーは、特定の通信識別子を有する通信端末から送信される印刷依頼メールに応じて自分が管理するプリンターに印刷を実行させるか否かを許可依頼情報に基づいて判断することになるため、許可依頼情報には判断材料となる情報が含まれることが望ましい。
【0032】
例えば、印刷許可の要求元であるプリンター3から取得した無線端末2の通信識別子そのものが許可依頼情報となる場合であっても、許可依頼情報に含まれる通信識別子に相当する部分のフォーマットが通信識別子のフォーマットと一致していれば、ユーザーは、無線端末2の通信識別子を宛先に含む印刷依頼メールがプリンター3と無線通信した無線端末から送信されたと推定することはできる。例えばMACアドレスが通信識別子として用いられる場合には、許可依頼情報が16進数表現の12桁の数字になっていれば、ユーザーは印刷依頼メールがプリンター3と無線通信した無線端末であると推定し、その推定に基づいて印刷の実行を許可し、許可依頼情報が16進数表現の12桁の数字になっていなければ印刷の実行を許可しないことができる。
【0033】
また例えば、印刷依頼制御サーバー1は、プリンター3から取得した通信識別子に基づいて、プリンター3と許可端末5の管理者が判断しやすい許可依頼情報を生成しても良い。具体的には、プリンター3から取得した通信識別子が16進数表現の12桁の数字になっているか否かを判定し、なっている場合には、例えば"あなたのプリンターの近くにいる人から印刷許可の依頼が来ています。"というメッセージを許可端末5に表示するための許可依頼情報を生成し、なっていない場合には、"不明な人から印刷許可の依頼が来ています。"というメッセージを許可端末5に表示するための許可依頼情報を生成してもよい。また例えば、印刷依頼メールの発信元アドレスを許可依頼情報に含めても良い。印刷依頼メールの発信元アドレスが許可依頼情報に含まれると、ユーザーは発信元アドレスのドメイン名から印刷依頼メールが信用できるか否かを判断することができる。ただしこの場合、プリンター3は通信識別子とともに印刷依頼メールの発信元アドレスを印刷依頼制御サーバー1に送信する必要がある。さらに、印刷依頼メールの発信元アドレスに基づいて印刷依頼メールが信用できるか否かを印刷依頼制御サーバー1が判定し、判定結果を許可依頼情報に含めても良い。
【0034】
許可端末5のユーザーから判断結果を受信すると、印刷依頼制御サーバー1は、判断結果が"許可"である場合には、許可フラグを"許可"に更新し、判断結果が"不許可"である場合には、許可フラグを"不許可"に維持する(S208)。
【0035】
S204の判定において許可フラグが"許可"である場合、もしくは、S208において許可フラグが"許可"に更新された場合、印刷依頼制御サーバー1は、許可をされた旨又は許可をされている旨をプリンター3に通知したのち、プリンター3から受信した通信識別子を宛先に含む電子メールの本文または添付ファイルから印刷データを生成し(S210)、生成した印刷データをプリンター3に送信する(S212)。
その後、プリンター3は受信した印刷データに基づいて印刷を実行する。
一方、S208において許可フラグが"不許可"に維持された場合、印刷依頼制御サーバー1は、許可されなかった旨をプリンター3に通知したのち、処理を終了する。また、必要に応じて、印刷依頼制御サーバー1は、許可されなかった旨を無線端末2に対して通知してもよい。
【0036】
本実施例によると、印刷依頼制御サーバー1に登録されたプリンターと無線LANで通信可能な領域に無線端末が進入すると、自動的に当該無線端末からの印刷依頼に応じて印刷が実行されるように、許可依頼が印刷依頼制御サーバー1からプリンターの管理者が管理する許可端末に送信される。そして、プリンターの管理者が無線端末からの印刷依頼メールに応じた印刷をいったん許可すると、それ以後は、プリンターと無線LANで通信可能な領域の外からでも当該無線端末から印刷依頼メールを送信すれば、当該プリンターに印刷を実行させることができる。
【0037】
なお、プリンターと無線LANで通信可能な領域に進入した履歴のある無線端末からの印刷依頼メールに応じた印刷を常に許可するようにしてもよい。図7は、この場合の印刷依頼制御方法の流れを示している。具体的には、プリンター3から送信された通信識別子を受信すると(S301)、印刷依頼制御サーバー1は、許可端末5に許可依頼情報を送信することなく、通信識別子を送信したプリンター3の識別子と当該プリンター3から受信した通信識別子とに対応する許可フラグを"許可"に更新(S208)すればよい。
【0038】
3.他の実施形態
本発明は上述した実施例の他、上述した実施例同士を組み合わせたり、それらに下記の実施形態を組み合わせる等、様々な態様で実施することができるため、本発明の技術的範囲が上述した実施例に限定されることはない。
【0039】
例えば、上述の実施例では、印刷依頼メールを送信した無線端末の通信識別子がプリンターによって検出されると、自動的に印刷依頼メールに含まれる印刷対象が印刷される例を説明したが、印刷前に無線端末のユーザーの実行指示をプリンターにおいて受け付けても良い。具体的には、印刷依頼メールをプリンターが受信すると、プリンターは印刷依頼メールの送信元または宛先の電子メールアドレスを選択可能にプリンターのディスプレイに表示する。そして、表示された電子メールアドレスを選択することによってユーザーが印刷の実行を指示すると、プリンターは、選択された電子メールアドレスに対応する印刷依頼メールの印刷対象について印刷を実行すればよい。これにより、ユーザーが意図していないプリンターにおいて、印刷依頼メールに基づいた印刷が実行されることを防止できる。
【0040】
また例えば、プリンターから印刷依頼制御サーバーに対して印刷依頼メールを問い合わせるときに、プリンターの機種情報を印刷依頼制御サーバーに通知してもよい。機種に応じて印刷データを生成する機能を印刷依頼制御サーバーに備えておけば、プリンターから取得する機種情報に基づいて当該プリンターに最適な印刷データを生成してプリンターに送信することが可能になる。これにより、印刷データを生成する機能を持たないプリンターであっても、テキストデータや画像データといった汎用的なデータ形式の印刷対象を電子メールで送信することによって任意の無線端末から利用できるようになる。
【0041】
また、プリンター3は、赤外線通信等の無線LAN以外の方法を用いて通信識別子を問い合わせるようにしてもよい。
また、印刷依頼メールには無線端末の通信識別子が含まれているのであれば、メールアドレスに含んでいなくても構わない。例えば、印刷依頼メールの件名や、本文に無線端末の通信識別子を含んでいても構わない。
また、第二実施例や第三実施例では、本システムに対応したプリンターは、共通の形式の印刷データが印刷可能であれば、プリンターからの要求を待つことなく、印刷依頼メールを受信したことに応じて印刷データの生成を行ってもよい。
無線端末は、メール以外の方法で印刷依頼を行ってもよく、通信識別子もプリンタが知ることができて無線端末を特定できる情報であれば他の情報であってもよく、これらを導くことができる情報であってもよい。
【0042】
また、第三実施例では、印刷を実行させるプリンターを特定する情報が印刷依頼メールに含まれていないにも関わらず、プリンターと無線通信できない領域から送信される印刷依頼メールに応じて当該プリンターにおいて印刷が実行されるため、1通の印刷依頼メールを送信することによって複数台のプリンターが印刷を実行することがあり得る。そこで、印刷を実行させるプリンターを特定するために、印刷依頼メールの宛先、件名、本文などのいずれかに無線端末の通信識別子とともにプリンターの識別子を含めても良い。具体的には例えば、無線端末2の通信識別子が"xxxxxx"、プリンター3の識別子が"zzzzz"、印刷依頼制御サーバー1のドメイン名が"yyyyyy"であるとすると、"zzzzz.xxxxxx@yyyyyy"を宛先として印刷依頼メールを送信すればよい。これにより、この印刷依頼メールを受信した印刷依頼制御サーバー1は、プリンター3のみに対して印刷を実行させることが可能になる。なお、プリンター3が無線端末2の通信識別子を検出する際に、プリンター3から無線端末2にプリンター3の通信識別子が送信されるため、プリンター3の通信識別子を無線端末2が取得することは可能である。
また、印刷許可制御部15が送信する許可依頼情報には、印刷依頼メールに関する他の情報を許可端末5のユーザーの判断材料として含めるようにしてもよい。印刷依頼メールに関する他の情報とは例えば、印刷依頼メールの受信時刻、印刷依頼メールの内容(件名や本文や添付ファイルなど)、印刷依頼メールの内容の印刷ページ数、である。許可端末5のユーザーは、印刷依頼メールの受信時刻からプリンターのそばで印刷依頼メールを送信したのか、印刷依頼メールの内容から印刷しても問題のない内容か、許可しても構わない人物からか、印刷依頼メールの内容の印刷依頼メールの内容からこれぐらいなら印刷しても構わないか、等を判断して許可・不許可を決めることができる。
【符号の説明】
【0043】
1…印刷依頼制御サーバー、2…無線端末、3…プリンター、4…インターネット、11…印刷依頼受信部、12…印刷情報記憶部、13…印刷情報送信部、14…印刷情報生成部、15…印刷許可制御部、21…メール通信部、22…印刷依頼生成部、31…メール通信部、32…印刷制御部、33…印刷部、34…無線端末検出部、35…許可依頼部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別子と印刷対象とを含む印刷依頼を送信する印刷依頼部を備え、前記識別子によって識別される任意の無線端末と、
前記印刷依頼を受信する印刷依頼受信部と、前記印刷対象に対応する印刷情報を前記識別子に対応付けて送信する印刷情報送信部と、を備える印刷依頼制御サーバーと、
前記任意の無線端末の識別子を検出する無線端末検出部と、前記検出された識別子に対応する前記印刷情報を前記印刷依頼制御サーバーから受信する印刷情報受信部と、前記印刷情報に基づいて印刷を制御する印刷制御手段と、を備えるプリンターと、
を備える印刷システム。
【請求項2】
前記印刷依頼は、前記識別子を含む電子メールアドレスを宛先とする電子メールである、
請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記印刷情報は、前記印刷対象をそのまま含む、
請求項1または2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記印刷依頼制御サーバーは、前記印刷対象を変換することによって前記印刷情報を生成する印刷情報生成部をさらに備える請求項1または2に記載の印刷システム。
【請求項5】
任意の無線端末の通信識別子を検出する無線端末検出部と、
前記検出された通信識別子に対応する印刷情報を受信する印刷情報受信部と、
前記印刷情報に基づいて印刷を制御する印刷制御部と、
を備えるプリンター。
【請求項6】
通信識別子によって識別される任意の無線端末から前記通信識別子と印刷対象とを含む印刷依頼を受信する印刷依頼受信部と、
前記任意の無線端末の通信識別子を検出したプリンターに、当該通信識別子に対応付けて前記印刷対象に対応する印刷情報を送信する印刷情報送信部と、
を備える印刷依頼制御サーバー。
【請求項7】
通信識別子によって識別される任意の無線端末から前記通信識別子と印刷対象とを含む印刷依頼を受信し、
前記任意の無線端末の通信識別子を検出したプリンターに、当該通信識別子に対応付けて前記印刷対象に対応する印刷情報を送信する、
印刷依頼制御方法。
【請求項8】
任意の無線端末の通信識別子を検出し、
前記検出された通信識別子に対応する印刷情報を受信し、
前記印刷情報に基づいて印刷を制御する、
ことを含む印刷制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−12171(P2013−12171A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−5949(P2012−5949)
【出願日】平成24年1月16日(2012.1.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】