説明

印刷システム

【課題】 印刷内容が著作権管理されたアート作品等を認証IDやパスワードが漏洩することなく簡単に複製し、確実に廃棄の確認ができることを目的とする。
【解決手段】 印刷済み書類を本体内に取り込み、この画像を読み取る手段、読み取った画像の一部または全部を解析し、画像を識別する手段、識別した画像から対応するデータファイルを選択する手段、選択された画像を印刷する手段、前記画像読み取りと同時に印刷済み書類を破棄する手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷システム、印刷装置に関し、特に著作権管理された印刷書類の管理方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷システムでは、例えばサーバー上に保管されている印刷データをローカルのコンピュータにダウンロードしてプリンタに送信することにより、所定の印刷物を印刷することができる。ここで、印刷内容が著作権管理されたアート作品や機密書類の場合、オペレータが認証ID、パスワード等をローカルのコンピュータに入力して、サーバー上に保管されている印刷データをダウンロードし、印刷することになる。
【0003】
このような認証IDやパスワードを打ち込む手間を省くため、印刷用紙に認証用RFIDタグを設け、特定の用紙にしか印刷できないようにする印刷システムが提案されている。(例えば特許文献1)
また、機密書類が再利用されないようにするため、機密書類を裁断する印刷装置が提案されている。(例えば特許文献2)これは使用済み用紙を再利用する場合に、機密書類や再利用不可の書類を分別して裁断する装置である。
【特許文献1】特開2004-66692号公報
【特許文献2】特開2000-159410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の印刷装置、特に大判印刷装置の高性能化で、これらで印刷された印刷物が1枚1枚著作権管理されたアート作品として流通している。
【0005】
販売や展示のために配布した印刷物が、汚れや経年変化による劣化、見学者による破損等を受けて、これを破棄し再印刷する必要が生じる場合がある。印刷データは厳重にパスワード管理されているが、印刷はデータ管理元から離れた場所にある展示現場や印刷センターで行うことも多く、これらの現場に認証IDやパスワードを連絡する場合、これが漏洩することがあった。また、専任の管理者を派遣するにはコストや時間がかかり、印刷現場のローカルコンピュータ上で印刷物とデータファイル名の対応をとり、ファイル名を正しく入力する必要もあり煩雑な作業であった。
【0006】
特許文献1のRFIDを使用する方法では、事前に高価なRFIDを埋め込んだ専用用紙を印刷現場に配布する必要があった。さらに破損した印刷物が正しく破棄されたか確認する方法がなかった。特許文献2にある文書破棄の方法ではデータ管理元に破棄した印刷物の情報が伝わらないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の目的を達成するため、例えば以下の構成を備える。
【0008】
すなわち、印刷済み書類を本体内に取り込み、この画像を読み取る手段、読み取った画像の一部または全部を解析し、画像を識別する手段、識別した画像から対応するデータファイルを検索する手段、検索された画像を印刷する手段、前記画像読み取りと同時に印刷済み書類を破棄する手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
販売や展示のために配布した印刷物が、汚れや経年変化による劣化、見学者による破損等を受けて、これを破棄し再印刷する必要が生じた場合、オペレータはその印刷物を本発明を適用した印刷装置に読み取らせ、その画像情報をサーバーに送信し画像認識させ、サーバーから対応する印刷データをダウンロード、印刷することができる。印刷後の印刷データは自動的に破棄される。オペレータは認証IDやパスワードを入力したり、サーバー上のデータファイルを検索したりする必要もなく簡単な操作で迅速にこれらを行うことができる。オペレータは非熟練者などだれでもよく、認証IDやパスワードを配布する必要もないのでこれらが漏洩することもなくない。読み取らせた印刷物はそのまま印刷装置内で破棄されるので無制限にコピーが出回ることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の詳細を実施例の記述に従って説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明の印刷システムにおける、印刷書類の保護方法及び装置の実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【0012】
同図において1は印刷装置、2はクライアントコンピュータ、3は印刷データ管理装置、4はネットワークである。
【0013】
印刷装置1は印刷処理全般を制御する制御部101、印刷媒体に印刷を行うプリントエンジンからなる印刷部102、ネットワーク4と接続しデータの授受を行うI/F部103、印刷媒体の画像情報を読み取る画像読み取り部104、印刷物を破棄する印刷物破棄部105、画像読み取り部104で読み取り後の印刷媒体を一時的に格納する印刷媒体格納部106、制御部101に接続しオペレータが印刷装置全体の操作指示入力や操作結果や印刷装置の状態を表示する操作部107からなる。操作部107は、制御部101、I/F部103、ネットワーク4を介して印刷データ管理装置3の操作指示入力やその状態表示を行うことが可能である。
【0014】
クライアントコンピュータ2はネットワーク4に接続し、印刷装置1を制御して印刷処理や画像読み取り処理の指示、状態の取得表示、さらに印刷データ管理装置3を制御して印刷データの登録やダウンロードなどの処理指示、状態の取得表示などを行う。また、アプリケーションプログラムにより印刷データの作成も行うことが可能である。
【0015】
印刷データ管理装置3はいわゆるデータサーバ装置であり、印刷データや画像識別情報、印刷データと画像識別情報を関連付ける管理情報などを格納するデータ格納部108、印刷データ管理装置3全体を制御する制御部109、ネットワーク4に接続してデータの授受を行うI/F部110、制御部109に処理指示入力や状態取得表示などを行う操作部111からなる。
【0016】
次に本発明の実施例の動作について説明する。
【0017】
印刷データ登録について図3のフローチャートで説明する。印刷データ登録ではオペレータは認証IDやパスワード入力を行う必要がある。
【0018】
先ずオペレータは印刷データファイルを用意する(ステップS301)。印刷データファイルはクライアントコンピュータ2の描画のアプリケーションプログラムで作成したり、不図示の他のコンピュータで作成したものをクライアントコンピュータ2に一時的にダウンロードしたりしたものでもよい。印刷データファイルは各種PDL言語で記述されたものや、PDF形式、TIFF形式など様々の形式がある。
【0019】
次にオペレータはクライアントコンピュータ2の印刷プログラムを起動し、印刷データを印刷する(ステップS302)。これがオリジナルの印刷物になる。
【0020】
次にオペレータはクライアントコンピュータ2の登録プログラムを起動し、印刷データファイルと登録先を指定する(ステップS303)。印刷データの登録先は例えば、図1の印刷データ管理装置3にする。
【0021】
登録プログラムは先に印刷したオリジナルの印刷物を印刷装置1の画像読み取り部104で読み込み(ステップS304)、あらかじめ定めた解像度に全体を縮小し、色形式がRGB形式のビットマップデータに変換した画像識別用データファイルを作成する。他の画像識別用データと識別できればよいので、画像の一部分、例えば先端部分、後端部分、中央部分でもよいし、縮小しないこともCMYK形式のままでも可能である。
【0022】
また別の方法として、直接、印刷データファイルから画像識別用データファイルを作成することも可能である。これは、印刷データファイルを解釈し印字用ビットマップデータに変換し、同様にして、全体を縮小し、色データを印刷で使われるCMYK形式からRGB形式に変換したものである。この場合ステップS302のオリジナルの印刷を省くことも可能である。
【0023】
次にクライアントコンピュータ2の登録プログラムは、印刷データと画像識別用データファイルを印刷データ管理装置3に送信する(ステップS305)。
【0024】
印刷データ管理装置3の制御部109はI/F部110を介して送られた印刷データと画像識別用データファイルをデータ格納部108に格納する(ステップS306)。
【0025】
次に、印刷データ管理装置3の制御部109はそれら両方のファイル名を関連付けた画像管理テーブルに記述し、登録作業を終了する(ステップS307)。
【0026】
図4の400は画像管理テーブルのフォーマットを示す図である。図4で列401は画像識別用データファイル名を記述する列で、行406、407、408、...各行に画像識別用データファイル名が、例えばimageIndex1.idx、imageIndex2.idx、imageIndex3.idx、...と記述されている。列402は印刷データファイル名を記述する列で、列401に対応して、各行に例えばimageData1.jpeg、imageData2.pdf、imageData3.tif、...と記述される。ここで、印刷データファイル名の代わりに別の印刷データ管理装置の画像管理テーブルへのリンクを示すポインタ、行409の列402の(a)を記述してもよい。列403は印刷枚数である。ステップS304の画像識別用データファイルを作成で、オリジナルを印刷し、画像識別用データを作成した場合は画像登録時1で、オリジナルを印刷せず印刷データから直接画像識別用データファイルを作成した場合は0である。オリジナルを複数印刷するごとに+1される。列404は更新日付で再印刷した日付が記述される。
【0027】
ここで、印刷データファイルの登録だけ行うことも可能である。この場合、列401の画像識別用データファイル名の欄は空白のままである。
【0028】
列405は登録した印刷装置名を記述する。
【0029】
次に本実施例の印刷物の再印刷方法について図5のフローチャートで説明する。
【0030】
オペレータは印刷装置1の操作部107から再印刷指示を入力する(ステップS501)。印刷装置1は画像読み取り部の準備をし、データ管理装置3と通信して画像識別データ受信待ち状態にする(ステップS502)。オペレータは操作部107の表示装置で準備がととのったのを確認したら、画像読み取り部104に再印刷したい印刷物を挿入する(ステップS503)。
【0031】
印刷装置1は印刷物を前述のように事前に定めてあった解像度(縮小率)、読み取り領域で読み取り、データ管理装置3に送信する(ステップS504)。
【0032】
印刷装置1は読み取りつつ印刷物を印刷物破棄部に導きこれを破棄する(ステップS505)。破棄方法はカッターで細かく裁断してもよいし、再利用できないように別の画像を重ねて印刷してもよい。
【0033】
所定の読み取りが終了したら、データ管理装置3はデータ格納部108にある画像管理テーブルに登録してある画像識別用データと比較する(ステップS506)。データ管理装置3の制御部109は、図4の画像管理テーブル400の列401の画像識別用ファイル406、407、408・・を順に開き、送られてきたデータと比較する。
【0034】
一致したデータがあったら対応する列402の印刷データファイル名を取得し、このファイルの内容を印刷装置1に送信する(ステップS507)。次に図4の画像管理テーブル400の列404の更新日付を現在の日時修正する。ここで一致したデータがなかったらエラー終了する。列404の更新日付は前回から一定期間以上経過していないときに再印刷を許可しないなどの処理に利用する。
【0035】
印刷装置1は送られてきた印刷データを印刷部102で印刷する(ステップS508)。
【0036】
印刷後に印刷装置1は送られてきた印刷データを破棄する。ここで、印刷処理を行わない選択もできる。これは不要になった印刷物は破棄する印刷物破棄モードである。この場合、図4の画像管理テーブル400の列403印刷枚数を−1する。
【実施例2】
【0037】
次に印刷物の再印刷方法の第2の実施例について図6のフローチャートで説明する。
【0038】
オペレータは印刷装置1の操作部107から再印刷指示を入力する(ステップS601)。印刷装置1は画像読み取り部の準備をし、データ管理装置3と通信して画像識別データ受信待ち状態にする(ステップS602)。
【0039】
オペレータは操作部107の表示装置で準備がととのったのを確認したら、画像読み取り部104に再印刷したい印刷物を挿入する(ステップS603)。
【0040】
印刷装置1は印刷物を前述のように事前に定めてあった解像度(縮小率)、読み取り領域で読み取り、データ管理装置3に送信する(ステップS604)。
【0041】
所定の読み取りが終了したら、印刷装置1は読み取りを終えた印刷物を印刷媒体格納部106に導き格納する(ステップS605)。
【0042】
一方、読み取りが終了したら、データ管理装置3はデータ格納部108にある画像管理テーブルに登録してある画像識別用データと比較する(ステップS606)。データ管理装置3の制御部109は、図4の画像管理テーブル400の列401の画像識別用ファイル406、407、408・・・を順に開き、送られてきたデータと比較する。
【0043】
一致したデータがあったら対応する列402の印刷データファイル名を取得し、このファイルの内容を印刷装置1に送信する(ステップS607)。図4の画像管理テーブル400の列404の更新日付を現在日時に修正する。
【0044】
印刷装置1は送られてきた印刷データを印刷部102で印刷する(ステップS608)。
【0045】
印刷装置1は印刷媒体格納部106に格納してあった印刷物を印刷物破棄部105に導き破棄する(ステップS609)。破棄方法はカッターで細かく裁断してもよいし、再利用できないように別の画像を重ねて印刷してもよい。
【0046】
ステップS606で、一致したデータがなかったら、印刷媒体格納部106に格納してあったオリジナル印刷物を印刷装置1から排出し、操作部107の表示装置に再印刷不可の旨を表示する(ステップS610)。
【0047】
ステップS606で、印刷装置1の名前と図4の画像管理テーブル400の列405の印刷装置の名前が一致しなければ再印刷を拒否することも可能である。
【実施例3】
【0048】
実施例1と実施例2では再印刷処理のための画像識別データとして、印刷画像そのものを使用していたが、これをバーコード、数字、文字列、電子透かし等で代用してもよい。図3のフローチャートの画像登録時、ステップS302のオリジナルデータ印刷時、画像の余白部分や、印刷媒体の裏面などにこれらを印字する。ステップS304の画像識別用データファイルの作成時、これらを読み込み画像識別用データとして登録する。再印刷はこれらを使用して実施例1と実施例2と同様にして行うことが可能である。
【実施例4】
【0049】
図2は実施例1の構成に印刷装置5を付加したものである。印刷装置5は印刷装置1と同様の物である。アート作品など一度に公開するオリジナル作品数を制限を加えたい場合がある。例えば、別地域に配置してある印刷装置1と印刷装置5において、印刷装置1で印刷、公開する。公開終了後、実施例1で説明した破棄モードで、オリジナル破棄を確認し、別地域に配置してある印刷装置5で印刷、公開を行う。本実施例でこれらの作業が簡単かつ確実に行うことが可能である。第4の実施例について図7のフローチャートで説明する。印刷装置1で印刷するデータファイルを用意する(ステップS701)。印刷装置1でオリジナルの印刷及び画像識別用データの登録(ステップS702)。これらの処理は実施例1と同様である。印刷されたオリジナル印刷物を展示する(ステップS703)。次に印刷装置1でオリジナル破棄する(ステップS704)。印刷装置1は画像識別データを印刷装置5に送信(ステップS705)。印刷装置5でこの画像識別データを用いてオリジナルの印刷(ステップS706)。展示を行う(ステップS707)。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施例のデータ処理の基本構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第4の実施例のデータ処理の基本構成を示すブロック図である。
【図3】印刷データ登録についてのフローチャートである。
【図4】画像管理テーブルのフォーマットを示す図である。
【図5】印刷物の再印刷方法についてのフローチャートである。
【図6】第2の実施例についてのフローチャートである。
【図7】第4の実施例についてのフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1 印刷装置
2 クライアントコンピュータ
3 印刷データ管理装置
4 ネットワーク
101 印刷処理全般を制御する制御部
102 印刷媒体に印刷を行うプリントエンジンからなる印刷部
103 I/F部
104 画像読み取り部
105 印刷物破棄部
106 印刷媒体格納部
107 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷情報を記憶するサーバーと、サーバーに印刷情報を要求し、印刷情報をダウンロードして印刷する印刷装置からなる印刷システムにおいて、
印刷媒体に印刷された画像情報を読み取る手段、前記読み取り手段で読み取った画像情報を識別し対応する印刷情報を検索する画像識別検索手段、前記画像識別検索手段により検索された印刷情報を印刷する手段、前記読み取り手段と同一筐体内にあり、読み取りと同時に印刷媒体を破棄する手段、前記印刷媒体を破棄する手段により破棄したことを登録する手段、とを備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
印刷情報を記憶するサーバーと、サーバーに印刷情報を要求し、印刷情報をダウンロードして印刷する印刷装置からなる印刷システムにおいて、
印刷媒体に印刷された画像情報を読み取る手段、読み取り後の印刷媒体を筐体内に保持する手段、前記読み取り手段で読み取った画像情報を識別し対応する印刷情報を検索する画像識別検索手段、前記画像識別検索手段により検索された印刷情報を印刷する手段、前記画像識別検索手段で画像情報が検索された後に、前記保持手段に保持してある印刷媒体を破棄する手段、前記印刷媒体を破棄する手段により破棄したことを登録する手段、とを備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項3】
画像識別検索手段は同一印刷装置から出力された印刷媒体上の画像を識別することを特徴とする請求項1記載の印刷システム。
【請求項4】
画像識別検索手段は同一印刷装置から出力された印刷媒体上の画像を識別することを特徴とする請求項2記載の印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−101664(P2009−101664A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277779(P2007−277779)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】