説明

印刷ヘッドのキャリッジへの取り付け位置の調整が可能な印刷装置

【課題】複数のドット形成要素が形成する各ドットの副走査方向の位置ずれを解消することを目的とする。
【解決手段】本発明の印刷装置のキャリッジ1は、印刷ヘッドを、キャリッジ上に、主走査の方向と交わる方向について異なる位置で固定できる第1の調整部83,86,87と、印刷ヘッドを、キャリッジ上に、印刷媒体のうち印刷ヘッドと向かい合う部分が構成する平面と交わる方向を軸として、異なる回転角度で固定できる第2の調整部82,84,85と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のドット形成要素で印刷用紙上にドットを形成して画像を形成する印刷装置に関し、特に、各ドット形成要素が形成するドットの副走査方向の位置ずれを解消する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像の印刷装置として、インクジェットプリンタが広く普及している。
インクジェットプリンタにおいては、ノズルが多数形成された印刷ヘッドがキャリッジ上に固定されている。そして、キャリッジが印刷用紙と向かい合う位置で往復動され、主走査が行われる間に、ノズルからインク滴が吐出されて、印刷用紙上にドットが形成される。印刷用紙上のある位置において、主走査の方向についてドットの形成が完了すると、印刷用紙が送られ、別の位置にドットを形成する。このような印刷装置において、ドットの形成位置が設計時の想定位置からずれている場合には、主走査方向については、ドットの形成タイミングをずらすことで、ズレを解消することができる(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−296648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、印刷用紙の送り方向(副走査方向)のドット形成位置ズレについては、ドットの形成タイミングをずらすことで解消することはできない。従来は、このような副走査方向のドット形成位置のずれを解消するための工夫が十分になされていなかった。
【0005】
この発明は、従来技術における上述の課題を解決するためになされたものであり、複数のドット形成要素で印刷用紙上にドットを形成して画像を形成する印刷装置において、ドットの副走査方向の位置ずれを解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明では、印刷媒体上にドットを形成することにより画像の印刷を行う印刷装置を対象として所定の処理を行う。この印刷装置は、印刷媒体上にドットを形成するための複数のドット形成要素が設けられたドット記録ヘッドと、ドット記録ヘッドが設けられているキャリッジと、キャリッジと印刷媒体の少なくとも一方を移動させて主走査を行う主走査駆動部と、ドット記録ヘッドと主走査駆動部とを制御する制御部と、を備える。
【0007】
この印刷装置のキャリッジは、印刷ヘッドを、キャリッジ上に、主走査の方向と交わる方向について異なる位置で固定できる第1の調整部と、印刷ヘッドを、キャリッジ上に、印刷媒体のうち印刷ヘッドと向かい合う部分が構成する平面と交わる方向を軸として、異なる回転角度で固定できる第2の調整部と、を備える。このような態様とすれば、主走査の方向とは異なる方向についてのドット形成位置ずれを調整できる。
【0008】
なお、キャリッジは、さらに、印刷ヘッドを、キャリッジ上に、印刷媒体のうち印刷ヘッドと向かい合う部分との間の距離を変えて固定できる第3の調整部を備えることが好ましい。このような態様とすれば、印刷ヘッドと印刷媒体との間隔を調整することができる。
【0009】
また、キャリッジが、印刷ヘッドを複数有しており、第1および第2の調整部は、一つの印刷ヘッドに対してそれぞれ少なくとも一つずつ設けられている場合には、印刷装置を以下のような態様とすることが好ましい。すなわち、印刷装置は、複数の印刷ヘッドに対して相対的に移動できるように設けられ、第1および第2の調整部を駆動することができる調整駆動部を備えることが好ましい。そして、調整駆動部の数は印刷ヘッドの数よりも少ないことが好ましい。このような態様においては、調整駆動部は、複数の印刷ヘッドに対して相対的に移動できるので、比較的少数の調整駆動部で比較的多数の印刷ヘッドの調整を行うことができる。
【0010】
なお、調整駆動部は、キャリッジとは独立に、主走査の方向と交わる方向に移動することができることが好ましい。このような態様とすれば、簡易な機構で調整駆動部をキャリッジに対して2次元的に相対移動させることができる。
【0011】
また、第1の調整部は、回転されることで、主走査の方向と交わる方向について印刷ヘッドの位置を変えることができる第1の軸部を備えていることが好ましく、第2の調整部は、回転されることで、印刷ヘッドの回転角度を変えることができる第2の軸部を備えていることが好ましい。そして、第1および第2の軸部の回転軸の方向は、いずれも主走査の方向および調整駆動部の移動方向に対して垂直であることが好ましい。このような態様とすれば、調整駆動部は、キャリッジおよび印刷ヘッドと干渉しないで各調整部を駆動しやすい。
【0012】
また、複数のドット形成要素が、主走査の方向と交わる方向について異なる位置に設けられている2以上のドット形成要素を含む場合には、以下のような態様とすることが好ましい。すなわち、印刷装置は、印刷媒体に記録された画像を読みとることができるセンサを備えることが好ましい。そして、そのような印刷装置において、主走査を行いつつ、上記の2以上のドット形成要素で印刷媒体上にそれぞれドットを形成して、主走査の方向と交わる方向について異なる位置にあり、主走査の方向に伸びる2以上の検査用パターンを印刷する。
【0013】
その後、センサで2以上の検査用パターンを読み取る。そして、センサで読みとった2以上の検査用パターンのデータに基づいて、印刷ヘッドの主走査の方向と交わる方向についての位置の設定値と、回転角度の設定値と、の少なくとも一方を決定する。その設定値にしたがって、調整駆動部に調整部を駆動させる。このような態様とすれば、実際の印刷結果に応じて印刷ヘッドの調整を行うことができる。
【0014】
また、複数のドット形成要素が、主走査の方向と交わる方向に沿ってそれぞれ設けられている2以上のドット形成要素列を含む場合には、次のような態様とすることもできる。すなわち、各ドット形成要素列に含まれるドット形成要素を使用して同一のタイミングで印刷媒体上にドットを形成して、ドット形成要素列ごとに検査用パターンを印刷する。そして、センサで検査用パターンを読み取る。その後、センサで読みとった検査用パターンのデータに基づいて、印刷ヘッドの主走査の方向と交わる方向についての位置の設定値と、回転角度の設定値と、の少なくとも一方を決定する。このような態様としても、実際の印刷結果に応じて印刷ヘッドの調整を行うことができる。
【0015】
なお、印刷ヘッドの調整は以下のような順序で行うことが好ましい。すなわち、まず、印刷ヘッドの、キャリッジ上への取り付け角度であって、印刷媒体のうち印刷ヘッドと向かい合う部分が構成する平面と交わる方向を軸とする、取り付け角度を調整する。そして、印刷ヘッドの、キャリッジ上への取り付け位置であって、主走査の方向と交わる方向についての取り付け位置を調整する。その後、各ドット形成要素によるドットの形成タイミングを調整する。このような態様とすれば、各ドット形成要素によって形成されるドットの、副走査方向の間隔、位置、主走査方向の位置ずれを効率的に解消することができる。
【0016】
なお、この発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、印刷方法および印刷装置、印刷制御方法および印刷制御装置、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、この発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.装置の構成:
A1.プリンタ全体の構成:
A2.ヘッドベースユニットおよびヘッド調整駆動部の構成:
A3.制御部の構成:
B.印刷ヘッドの調整:
B1.印刷処理実行中のインクの補充:
B2.画像の印刷の合間に行うインクの補充:
C.第2実施例:
D.第3実施例:
E.変形例:
E1.変形例1:
E2.変形例2:
E3.変形例3:
E4.変形例4:
E5.変形例5:
E6.変形例6:
【0018】
A.装置の構成:
A1.プリンタ全体の構成:
図1は、本発明の一実施例としてのプリンタ200の構成の概略を示す斜視図である。このプリンタ200は、例えばJIS規格のA列0番用紙やB列0番用紙やロール紙といった比較的大型の印刷用紙Pに対応したプリンタである。印刷用紙Pは、給紙部210から印刷部220に供給される。印刷部220は、供給された印刷用紙Pにインクを吐出することによって印刷を行う。印刷部220で印刷された印刷用紙Pは、排紙部230に排出される。
【0019】
給紙部210は、印刷用紙Pとしてのロール紙をセット可能なロール紙ホルダ211を備えている。ロール紙ホルダ211は、ロール紙を保持するスピンドル212と、スピンドル212の着脱および懸架が可能な第1スピンドル受け213と第2スピンドル受け214とを備えている。2つのスピンドル受け213、214は、プリンタ200上部に備えられている2本の支持柱215にそれぞれ設けられている。スピンドル212は、中央にロール紙が装着された後、両端が第1スピンドル受け213と第2スピンドル受け214とに装着される。
【0020】
排紙部230は、ロール紙を巻き取り可能な巻き取りホルダ231を備えている。巻き取りホルダ231は、印刷部220で印刷されたロール紙を巻き取るスピンドル232と、スピンドル232の着脱および懸架が可能な第1スピンドル受け233と第2スピンドル受け234とを備えている。2つのスピンドル受け233、234は、プリンタ200下部に備えられている2本の支持柱235にそれぞれ設けられている。スピンドル232は、両端が第1スピンドル受け233と第2スピンドル受け234とに装着され、図示しない駆動手段により回転可能となっている。なお、スピンドル212を駆動手段により回転させ、印刷用紙Pを巻き上げる構成にすることもできる。また、後述の様に、排紙ローラー等の紙送り手段を印刷部220内に設け、紙送り手段を駆動させることにより、印刷用紙Pを排出する構成とすることもできる。
【0021】
印刷部220の上面には、印刷モードなどの入力が可能な入力部としての入出力部240が設けられている。
【0022】
図2は、印刷部220の構成を説明する説明図である。印刷部220は、複数の印刷ヘッド(後述する)が設置されたキャリッジ1を有している。このキャリッジ1には、印刷ヘッドが利用するインクを一時的に貯留する複数のサブタンクセット3Sが搭載されている。キャリッジ1は、キャリッジモータ100によって駆動される駆動ベルト101に連結されており、主走査ガイド部材102に案内されて、主走査方向MSに沿って移動することが可能である。これら、キャリッジモータ100、駆動ベルト101および主走査ガイド部材102が、特許請求の範囲にいう「主走査駆動部」に相当する。
【0023】
キャリッジ1の主走査方向の移動範囲における印刷用紙Pの両端部には、ノズルの吐出検査を行う第1検査部10Aと第2検査部10Bとが設けられている。
第2検査部10Bの横には、ノズルのワイピングを行うワイパ部30と、ノズル群を密封してクリーニングを行うキャップ部20と、サブタンクセット3Sにインクを供給するためのメインタンク9とが設けられている。
【0024】
また、ワイパ部30とキャップ部20の間には、ヘッド調整駆動部70が設けられている。このヘッド調整駆動部70は、キャリッジ1が通過する空間よりも印刷用紙から離れた位置に架設された軸部材であって、印刷用紙Pの搬送方向に架設されたスライド軸71上に、スライド可能に設けられている。スライド軸71の一端の近辺には搬送モータ72が設けられており、スライド軸71の他端の近辺にはプーリ73が設けられている。搬送モータ72とプーリ73の間には、無端の駆動ベルト74がスライド軸71を平行に張られており、ヘッド調整駆動部70はこの駆動ベルト74に取り付けられている。その結果、搬送モータ72が駆動ベルト74を動かすと、ヘッド調整駆動部70は、スライド軸71上で印刷用紙Pの搬送方向に沿って移動する。ヘッド調整駆動部70の詳細な構成については後述する。
【0025】
キャリッジ1は、印刷を行うときには、印刷用紙Pと向かい合う位置において主走査方向に移動しながら、ノズルから印刷用紙Pにインクを吐出して印刷を行う。印刷を行わないときには、キャリッジ1はキャップ部20と向かい合う位置に移動する。
【0026】
サブタンクセット3Sとメインタンク9とはインク供給路103によって接続されている。この実施例では、ブラックK、シアンC、淡シアンLC、マゼンタM、淡マゼンタLM、イエローYの6種類のインクのサブタンク3a〜3fがあり、対応する6つのメインタンク9a〜9fと、それぞれ接続されている。なお、以下で、プリンタの各構成、機能をサブタンク3a〜3f、メインタンク9a〜9fを用いて説明する際に、インク色を区別する必要がない場合には、サブタンクはサブタンク3として説明し、メインタンクはメインタンク9として説明する。
【0027】
なお、利用可能なインクは6種類に限らず、4種類のインク(例えば、ブラックK、シアンC、マゼンタM、イエローY)や、7種類のインク(例えば、ブラックK、淡ブラックLK、シアンC、淡シアンLC、マゼンタM、淡マゼンタLM、イエローY)を利用することもできる。利用可能なインクの種類は、ユーザの要望に応じて決めることができる。
【0028】
図3は、1つの印刷ヘッド6の下面におけるノズルの配列を示す説明図である。印刷ヘッド6は3つのノズルプレート2a、2b、2cを有している。1つのノズルプレートの下面には、異なるインクを吐出することが可能な2つのノズル群が備えられており、印刷ヘッド6全体で6つのノズル群を有している。この実施例では、それぞれのノズル群に異なるインクが割り当てられているが、このうちの複数のノズル群から同じインクを吐出するようにしても良い。
【0029】
図4は、キャリッジ1の概略構成を示す説明図である。この実施例では、印刷ヘッド6が、キャリッジ1上に合計17個配置されている。各印刷ヘッドは、副走査方向SSについて異なる位置に設けられている。そして、17個の印刷ヘッド6上に設けられたブラックK、シアンC、淡シアンLC、マゼンタM、淡マゼンタLM、イエローYの各色のノズル(図3参照)は、矢印Apで示した範囲内について、副走査方向SSに関して均等の間隔で配されている。よって、このプリンタは、比較的広い領域の印刷を一度に行うことが可能であり、比較的大型の印刷用紙を用いる場合でも、高速に印刷を行うことができる。
【0030】
A2.ヘッドベースユニットおよびヘッド調整駆動部70の構成:
図5は、ヘッドベースユニット80を示す平面図である。ヘッドベースユニット80は、一つの印刷ヘッド6を取り付けられて、キャリッジ1上に取り付けられる部品である。すなわち、キャリッジ1上に設けられた17個の印刷ヘッド6は、それぞれヘッドベースユニット80を介してキャリッジ1に取り付けられている。ヘッドベースユニット80は、固定ベースユニット81と、回転ベースユニット82と、スライドベースユニット83と、を有している。
【0031】
固定ベースユニット81は、ねじ81aによって四隅をキャリッジ1に固定され、キャリッジ1に取り付けられる。固定ベースユニット81上には、軸82aを中心にして回転可能なように、回転ベースユニット82が取り付けられる。
軸82aは、印刷ヘッドと向かい合う位置にある印刷用紙の平面に対して垂直な方向に設けられている。回転ベースユニット82は、矢印A2に示すように、軸82aを中心にして左右に5度ずつ回転可能である。
【0032】
固定ベースユニット81上には、カム84が設けられている。カム84は、軸82aと平行に設けられた軸84aを中心にして回転可能である。カム84の一端は回転ベースユニット82に接しており、図5において破線および矢印A4およびA2で示すように、カム84の回転角度に応じて、回転ベースユニット82は軸82aを中心とする回転角度を変える。この軸84aが特許請求の範囲にいう「第2の軸部」に相当する。
【0033】
また、固定ベースユニット81上には、凸部81bが設けられており、凸部81bにはバネ85が取り付けられている。バネ85は、カム84が接している側面とは反対側の側面で回転ベースユニット82と接しており、回転ベースユニット82をカム84に押しつけている。なお、カム84を回転させるためには、バネ85の力より大きな力を要する。このため、カム84は、回転ベースユニット82を介してバネ85に押されているが、バネ85の力によっては回転されない。これら、回転ベースユニット82、軸82a、カム84、バネ85が、特許請求の範囲にいう「第2の調整部」に相当する。
【0034】
回転ベースユニット82上には、スライドピン82b、82cが設けられている。スライドピン82b、82cは、固定ベースユニット81がキャリッジ1に取り付けられた状態で、ほぼキャリッジ1の搬送方向と垂直な方向に並ぶ。
【0035】
スライドベースユニット83は、スライド溝83b、83cを有している。スライド溝83b、83cは、長方形の穴であり、スライドベースユニット83が回転ベースユニット82に取り付けられた状態において、それぞれスライドピン82b、82cに貫通される。スライド溝83b、83cおよびスライドピン82b、82cによって、スライドベースユニット83は、回転ベースユニット82上に、スライド可能に取り付けられる。スライドベースユニット83のスライドの方向は、固定ベースユニット81がキャリッジ1に取り付けられた状態で、ほぼキャリッジ1の搬送方向と垂直な方向である。
【0036】
回転ベースユニット82上には、カム86が設けられている。軸86aは、図5に示すように、スライド溝83b、83cが並ぶ線と同じ線上に設けられる。
カム86は、軸82aと平行に設けられた軸86aを中心にして回転可能である。この軸86aが特許請求の範囲にいう「第1の軸部」に相当する。カム84の一端はスライドベースユニット83に接しており、図5において一点鎖線および矢印A6,A3で示すように、カム86の回転角度に応じて、スライドベースユニット83は、回転ベースユニット82上でスライドする。
【0037】
また、固定ベースユニット81上には、凸部82dが設けられており、凸部82dにはバネ87が取り付けられている。バネ87は、カム86が接している側面とは反対側の側面でスライドベースユニット83と接しており、スライドベースユニット83をカム86に押しつけている。なお、カム86を回転させるためには、バネ87の力より大きな力を要する。このため、カム86は、スライドベースユニット83を介してバネ87に押されているが、バネ87の力によっては回転されない。これら、スライドベースユニット83、スライドピン82b、82c、カム86およびバネ87が、特許請求の範囲にいう「第1の調整部」に相当する。
【0038】
スライドベースユニット83には、貫通孔83aが設けられている。スライドベースユニット83の貫通孔83aには印刷ヘッド6が取り付けられる。なお、図示しないが、固定ベースユニット81と回転ベースユニット82にも、図5において貫通孔83aと重なる位置にそれぞれ貫通孔が設けられている。回転ベースユニット82に設けられた貫通孔は、貫通孔83aよりも大きく、固定ベースユニット81に設けられた貫通孔は、回転ベースユニット82に設けられた貫通孔よりも大きい。その結果、貫通孔83aに印刷ヘッドが取り付けられた状態では、印刷ヘッド6のノズル列が設けられた面は、これらの貫通孔を通じて、直接、印刷用紙と向かい合う。
【0039】
以上のような構成により、スライドベースユニット83の貫通孔83aに取り付けられた印刷ヘッド6は、キャリッジ1上で、スライド溝83b、83cに沿ってスライド可能であり、軸82aを中心にして回転可能である。
【0040】
図6は、キャリッジ1を背面側から見た説明図である。なお、図6には、ヘッド調整駆動部70およびスライド軸71も示されている。図6に示すように、ヘッドベースユニット80(図5参照)上に取り付けられた印刷ヘッド6が、合計17個キャリッジ1上に取り付けられる。なお、キャリッジ1上には、光学センサ1aが設けられている。光学センサ1aは、印刷用紙上に印刷された画像を読みとることができる。
【0041】
図7は、ヘッド調整駆動部70と、ヘッドベースユニット80および印刷ヘッド6を示す説明図である。ヘッド調整駆動部70は、回転軸70aが接続された調整モータ70bと、回転軸70cが接続された調整モータ70dとを備えている。回転軸70aは、矢印A7に示すように、軸方向に伸縮可能に設けられており、先端が凸曲面状に設けられている。一方、カム84の軸84aは、ヘッド調整駆動部70と向かい合う側の端面が凹曲面状に設けられている。同様に、回転軸70cも、矢印A8に示すように、軸方向に伸縮可能に設けられており、先端が凸曲面状に設けられている。そして、カム86の軸86aは、ヘッド調整駆動部70と向かい合う側の端面が凹曲面状に設けられている。
【0042】
キャリッジ1の主走査方向の位置を調整し、ヘッド調整駆動部70の副走査方向の位置を調整すると、図6に示すように、キャリッジ1上のあるヘッドベースユニット80とヘッド調整駆動部70を互いにほぼ重なる位置に配することができる。このとき、ヘッドベースユニット80の軸84aとヘッド調整駆動部70の回転軸70aの中心軸がほぼ一致し、ヘッドベースユニット80の軸86aとヘッド調整駆動部70の回転軸70cの中心軸がほぼ一致する。
【0043】
図6および図7の状態において、回転軸70aが伸びてその先端が軸84aの端部と接触する。そして、回転軸70aが調整モータ70bによって回転されることにより、摩擦力で軸84aが回転され、カム84の回転角度が適宜の角度に設定される。同様に、回転軸70cが伸びてその先端が軸86aの端部と接触する。そして、回転軸70cが調整モータ70dによって回転されることにより、摩擦力で軸86aが回転され、カム86の回転角度が適宜の角度に設定される。
【0044】
以上のようにして、各ヘッドベースユニット80上の印刷ヘッド6は、回転角度と副走査方向の位置を調整される。各ヘッドベースユニット80とヘッド調整駆動部70との相対位置は、キャリッジモータ100を駆動してキャリッジ1の主走査方向の位置を調節し、搬送モータ72を駆動してヘッド調整駆動部70の副走査方向(印刷用紙の送りの方向)の位置を調節して、一致される。本実施例では、ヘッド調整駆動部70は、キャリッジ1に対して独立に副走査方向SSに移動するように設けられている。よって、キャリッジ1による主走査とあわせて、簡易な機構で各ヘッドベースユニット80とヘッド調整駆動部70の位置あわせを行うことができる。
【0045】
また、回転軸70a,70cの先端は凸曲面状に設けられており、軸84a,86aの端面は凹曲面状に設けられているので、回転軸70a,70cの先端が軸84a,86aの端面に押しつけられたときにも、軸84a,86aが回転してしまうことがない。また、回転軸70a,70cの先端は凸曲面状に設けられており、軸84a,86aの端面は凹曲面状に設けられているので、回転軸70a,70cの中心軸と軸84a,86aの中心軸が多少ずれていても、回転軸70a,70cの回転力を軸84a,86aに伝達することができる。
【0046】
A3.制御部の構成:
図8は、制御部としての制御回路40を中心としたプリンタ200の構成を示すブロック図である。この印刷システムは、印刷制御装置としてのコンピュータ90を備えている。なお、プリンタ200とコンピュータ90とは、広義の「印刷装置」と呼ぶことができる。
【0047】
制御回路40は、CPU41と、プログラマブルROM(PROM)43と、RAM44と、文字のドットマトリクスを記憶したキャラクタジェネレータ(CG)45とを備えた算術論理演算回路として構成されている。この制御回路40は、さらに、外部のモータ等とのインタフェースを専用に行うI/F専用回路50と、このI/F専用回路50に接続され、印刷ヘッド6を駆動してノズルプレート2よりインクを吐出させるヘッド駆動回路61と、紙送りモータ、キャリッジモータ100、搬送モータ72、調整モータ70b、70dを駆動するモータ駆動回路62と、各バルブを駆動するバルブ駆動回路65と、入力部としての入出力部240と、を備えている。
【0048】
B.印刷ヘッドの調整:
図9は、印刷ヘッドの調整の手順を表すフローチャートである。印刷ヘッドの調整を行う場合には、CPU41は、まず、ステップS10で、モータ70bを駆動してキャリッジ上の17個の印刷ヘッド6の回転角度をそれぞれ調整する。
ステップS10の調整によって、同一の印刷ヘッドに設けられたノズルが形成するドット同士の副走査方向の相対位置が、適切に設定される。印刷ヘッドが傾いている場合には、印刷ヘッド内の各ノズルの副走査方向の間隔が狭まるため、各ノズルが形成するドットの副走査方向の間隔も狭くなる。しかし、ステップS10の調整を行うことによって、印刷ヘッド内の各ノズルが形成するドットの副走査方向の間隔を適切に調整することができる。
【0049】
そして、ステップS20で、CPU41は、モータ70dを駆動して各印刷ヘッド同士の副走査方向の位置を調節する。ステップS20の調整によって、異なる印刷ヘッドに含まれるノズルが形成するドット同士の相対位置が、適切に設定される。その後、ステップS30で、各印刷ヘッドからのインク滴の吐出タイミングを調整して、主走査方向のドット形成位置の調整を行う。
【0050】
このような順序でドット形成位置を調整することで、後に行った調整によって、再度、先に行った調整のやり直しをしなければならなくなる可能性を低減できる。すなわち、各ノズルが形成するドットの形成位置を、主走査方向および副走査方向について、効率的に調整することができる。以下で、各ステップにおける調整値の設定方法について説明する。
【0051】
B1.各印刷ヘッドの角度の調整:
図10は、各印刷ヘッドの角度の調整を行う際に使用される検査用パターンを示す説明図である。各印刷ヘッドの角度の調整を行う際には、CPU41は、まず、印刷用紙上に検査用パターンT10を印刷する。検査用パターンT10は、一度の主走査で各印刷ヘッドについて一つ印刷される。しかし、以下では、説明を簡単にするため、一つの印刷ヘッドとその検査用パターンT10を取り上げて説明する。なお、検査用パターンT10を印刷するCPU41が、特許請求の範囲にいう「パターン印刷部」に相当する。CPU41の機能部としての「パターン印刷部」を図8に示す。
【0052】
検査用パターンT10のうち、左半分の部分である検査用サブパターンT11は、ブラックノズル列Kの上端のノズルで形成される。そして、T10のうち、右半分の部分である検査用サブパターンT12は、イエロノズル列Yの上端のノズルで形成される。図10(a)に示すように、印刷ヘッド6が傾いていなければ、検査用サブパターンT11とT12は、主走査方向MSに沿って一直線上に形成される。しかし、図10(b)に示すように、印刷ヘッド6が傾いていれば、検査用サブパターンT11とT12は、副走査方向にずれて形成される。
【0053】
検査用パターンT10を印刷した後、CPU41は、キャリッジ1上の光学センサ1aで検査用パターンT10を読み込む。なお、CPU41が、特許請求の範囲にいう「パターン読み取り部」に相当する。一度の副走査で検査用パターンT10全体を読み込むことができない場合は、複数回の副走査で検査用パターンT10全体を読み込んでもよいし、1回の副走査で検査用サブパターンT11とT12の接続部分のみを読み込むこととしてもよい。
【0054】
CPU41は、検査用サブパターンT11とT12の副走査方向のずれ量d11に基づいて、印刷ヘッド6の傾きを計算する。すなわち、CPU41は、特許請求の範囲にいう「設定値決定部」にも相当する。CPU41の機能部としての「パターン読み取り部」および「設定値決定部」を図8に示す。ブラックノズル列とイエロノズル列の間隔をLnとすると、印刷ヘッド6の傾きθは以下の式で得られる。
【0055】
θ=arcsin(d11/Ln) ・・・(1)
【0056】
CPU41は上記の式(1)で求めたθに基づいて、調整モータ70bを制御し、印刷ヘッド6の傾きを調整する(図7および図5参照)。すなわち、CPU41は、特許請求の範囲にいう「ヘッド調節部」に相当する。CPU41の機能部としての「ヘッド調節部」を図8に示す。
【0057】
B2.異なる印刷ヘッド間の相対位置の調整:
図11は、異なる印刷ヘッド間の相対位置の調整を行う際に使用される検査用パターンを示す説明図である。異なる印刷ヘッド間の相対位置の調整を行う際には、CPU41は、まず、印刷用紙上に、検査用パターンT20を印刷する。検査用パターンT20は、一度の主走査で、各印刷ヘッドについて一つ印刷される。しかし、以下では、説明を簡単にするため、二つの印刷ヘッド6a,6bとその検査用サブパターンT20a,T20bを取り上げて説明する。なお、検査用パターンT20を印刷するCPU41は、特許請求の範囲にいう「パターン印刷部」に相当する。
【0058】
それぞれの検査用サブパターンT20a,T20bは、印刷ヘッド6a,6bのブラックノズル列Kの上端のノズルで形成される。印刷ヘッド6a,6bのブラックノズル列Kの上端のノズル同士の、副走査方向SSについての間隔の設計値をL20とする。図11(a)に示すように、印刷ヘッド6bが印刷ヘッド6aに対してずれていなければ、検査用サブパターンT20aとT20bの間隔は、L20と等しくなる。しかし、図11(b)に示すように、印刷ヘッド6bが印刷ヘッド6aに対してずれていれば、検査用サブパターンT20aとT20bは、副走査方向にずれて形成される。なお、図11(b)において、ずれていない場合の印刷ヘッド6bの位置および検査用パターンT20bを破線で示す。
【0059】
検査用サブパターンT20a,T20bを印刷した後、CPU41は、キャリッジ1上の光学センサ1aで検査用サブパターンT20a,T20bを読み込む。すなわち、CPU41は、特許請求の範囲にいう「パターン読み取り部」に相当する。CPU41は、検査用サブパターンT20a,T20bの副走査方向の間隔L21を測定し、印刷ヘッド6bのずれ量d21を計算する。印刷ヘッド6aを基準としたときの、印刷ヘッド6bの相対位置のずれ量d21は以下の式で得られる。
【0060】
d21=L21−L20 ・・・(2)
【0061】
制御部は上記の式(2)で求めたd21に基づいて、調整モータ70dを制御し、印刷ヘッド6bの副走査方向の位置を調整する(図7および図5参照)。すなわち、CPU41は、特許請求の範囲にいう「設定値決定部」および「ヘッド調整部」に相当する。なお、17個の印刷ヘッドの相対位置は、副走査方向について最も下流にある印刷ヘッドを基準としてそれぞれ調整されるものとする。
【0062】
B3.インク滴の吐出タイミングの調整:
図12は、検査用パターンT30の例を示す説明図である。インク滴の吐出タイミングを調整して、主走査方向のドット形成位置を調整する際には、検査用パターンT30を印刷する。この検査用パターンT30は、主走査方向のドット形成位置を調節するノズル列と、基準となるノズル列と、の二つのノズル列のノズルで、それぞれ印刷された複数の縦罫線で構成されている。ここでは、ある印刷ヘッドのブラックノズル列Kを基準として、その印刷ヘッドのシアンノズル列Cのドットの主走査方向の形成位置を調節する場合について説明する。
【0063】
ブラックノズル列Kによって形成される罫線T31は、主走査方向MSについて一定の間隔で記録される。一方、シアンノズル列Cによって形成される罫線T32は、主走査方向の位置を1/1440インチ単位で順次ずらして形成される。この結果、印刷用紙上には、ブラックの縦罫線T31とシアンの縦罫線T32との相対位置が1/1440インチずつずれていくような、複数組の縦罫線対T33が印刷される。複数組の縦罫線対T33の下には、ズレ調整番号の数字が印刷される。ズレ調整番号は、好ましい補正状態を示す補正情報としての機能を有する。ここで、「好ましい補正状態」とは、主走査方向のドット形成位置を調節するノズル列によるドットの記録位置(または記録タイミング)が適切な調整値で補正され、基準となるノズル列によって形成されたドットの主走査方向の位置とほぼ一致した状態をいう。なお、図12の例では、ズレ調整番号が4である縦罫線対が、好ましい補正状態を示している。ユーザは、検査用パターンT30を観察して、入出力部240からズレ調整番号4を入力する。
【0064】
CPU41は、画像印刷を行う際には、図12の検査用パターンT30においてズレ調整番号が4のときの調整値に基づいて、シアンノズル列からのインク滴の吐出タイミングを調整する。その結果、そのシアンノズル列が形成するシアンドットは、基準となるブラックノズル列が形成するブラックドットに対して、適切な位置に形成される。このようにして、各ノズル列によるドットの主走査方向の形成位置は調整される。なお、本実施例では、17個の印刷ヘッドの各ノズル列のドット形成位置は、副走査方向について最も下流にある印刷ヘッドのブラックノズル列を基準としてそれぞれ調整されるものとする。
【0065】
以上に説明したような3つの調整を行うことで(図9)、印刷用紙上に形成するドットの位置を、主走査方向(キャリッジ1の移動方向)および副走査方向(印刷用紙の送り方向)について、適切に調整することができる。
【0066】
C.第2実施例:
図13は、第2実施例のヘッド調整駆動部70pとヘッドベースユニット80pおよび印刷ヘッド6を示す説明図である。第2実施例のヘッドベースユニット80pは、矢印A10に示すように、印刷ヘッド6と向かい合う位置にある印刷用紙に対して垂直な方向について、異なる位置に印刷ヘッドを取り付けることができる。すなわち、印刷ヘッド6のノズルが設けられている面と、印刷用紙との間隔を調整することができる。他の点は、第1実施例の印刷装置と同様である。
【0067】
ヘッドベースユニット80pは、第1実施例のねじ81a(図5および図7参照)に代えて、ねじ81cで四隅をキャリッジ1に固定されている。4本のねじ81cは、ヘッドベースユニット80pをキャリッジ1との間に透き間をあけて固定している。4本のねじ81cは、印刷ヘッドと向かい合う印刷用紙に対して垂直な方向を軸とするように設けられている。ねじ81cが回転されると、矢印A10に示すように、キャリッジ1とヘッドベースユニット80pとの間隔が変わる。ねじ81cは、ヘッド調整駆動部70pと向かい合う側の端面が凹曲面状に設けられている。
【0068】
また、第2実施例のヘッド調整駆動部70pは、第1実施例の構成に加えて、さらに、回転軸70eが接続された調整モータ70fと、回転軸70gが接続された調整モータ70h、回転軸70iが接続された調整モータ70jと、回転軸70kが接続された調整モータ70lとを備えている。各回転軸70e,70g,70i,70kは、軸方向に伸縮可能に設けられており、先端が凸曲面状に設けられている。なお、図13は側面図であるので、他の調整モータや回転軸と重なる位置にある、回転軸70i、調整モータ70j、回転軸70kおよび調整モータ70lは、示していない。
【0069】
キャリッジ1の主走査方向の位置を調整し、ヘッド調整駆動部70の副走査方向の位置を調整すると、キャリッジ1上のあるヘッドベースユニット80とヘッド調整駆動部70を互いにほぼ重なる位置に配することができる(図6参照)。
このとき、ヘッドベースユニット80pの4本のねじ81cとヘッド調整駆動部70pの各回転軸70e,70g,70i,70kの中心軸はそれぞれほぼ一致する。
【0070】
そのような状態において、各回転軸70e,70g,70i,70kが伸びてその先端が各ねじ81cの端部と接触する。そして、回転軸70e,70g,70i,70kが各調整モータによって回転されることにより、摩擦力でねじ81cが回転され、ヘッドベースユニット80pとキャリッジ1との間隔が調整される。その結果、印刷ヘッド6のノズルが設けられている面と、印刷用紙との間隔が調整される。
【0071】
このような態様とすれば、印刷ヘッド6のノズルが設けられている面と、印刷用紙との間隔を調整することができる。なお、ねじ81cが、特許請求の範囲にいう「第3の調整部」に相当する。
【0072】
第2実施例においては、4本のねじ81c、軸84a、軸86aは、互いに平行な方向を軸として回転するように設けられている。このため、ヘッド調整駆動部70は、容易にこれらの調整用部材を操作することができる。また、4本のねじ81c、軸84a、軸86aの軸方向が、キャリッジ1の移動方向(主走査の方向)およびヘッド調整駆動部70の移動方向と垂直であるため、キャリッジ1やヘッド調整駆動部70の構造物と干渉しない方向から、回転軸70a,70c,70e,70g,70i,70kを、4本のねじ81c、軸84a、軸86aに接続することができる。なお、軸の方向が、キャリッジ1の移動方向およびヘッド調整駆動部70の移動方向に対して「垂直である」とは、軸の方向が、キャリッジ1の移動方向と調整駆動部70の移動方向とによって規定される平面に対して90度プラスマイナス10度で交わることを意味する。
【0073】
D.第3実施例:
図14は、各印刷ヘッドの角度の調整を行う際に使用される他の検査用パターンを示す説明図である。各印刷ヘッドの角度の調整を行う際には(図9のステップS10参照)、印刷用紙上に、検査用パターンT40a,T40bのようなパターンを印刷して調整量を決定することもできる。検査用パターンT40a,T40bは、一度の主走査で、各印刷ヘッドについて一つ印刷される。しかし、以下では、説明を簡単にするため、二つの印刷ヘッド6a,6bとその検査用パターンT40a,T40bを取り上げて説明する。
【0074】
それぞれの検査用パターンT40a,T40bは、印刷ヘッド6a,6bのブラックノズル列Kの複数のノズルから同時にインク滴を吐出して形成される。各ノズル列は、図3に示すように副走査方向に沿って配されているべきものであるので、印刷ヘッド6a,6bが適正な角度でキャリッジ1に取り付けられていれば、検査用パターンT40a,T40bは、互いに平行になり、かつ、その向きは副走査方向に平行であるはずである。しかし、図14に示すように、印刷ヘッド6bが印刷ヘッド6aに対して傾いていれば、検査用パターンT40aとT40bは、所定の角度θをなす。
【0075】
検査用パターンT40a,T40bを印刷した後、CPU41は、キャリッジ1上の光学センサ1aで検査用パターンT40a,T40bを読み込む。その後、CPU41は、検査用パターンT40a,T40bのなす角度θを計算する。
【0076】
CPU41は上記のθに基づいて、調整モータ70bを制御し、印刷ヘッド6の傾きを調整する(図7および図5参照)。なお、17個の印刷ヘッドの相対位置は、副走査方向について最も下流にある印刷ヘッドのブラックノズル列を基準としてそれぞれ回転角度を調整されるものとする。このような態様としても、各印刷ヘッドの回転角度を調整することができる。
【0077】
E.変形例:
なお、この発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0078】
E1.変形例1:
上記実施例では、カムとバネを使用して印刷ヘッドの傾きを調整し、印刷ヘッドの副走査方向の位置を調整していた(図5参照)。しかし、ねじ、ウォームギアなど他の手段を使用して、印刷ヘッドの傾きや副走査方向の位置を調整することもできる。また、上記実施例では、ねじを使用して印刷ヘッドの印刷用紙との間隔を調整していた(図13参照)。しかし、ウォームギア、カムなど他の手段を使用して、印刷ヘッドの印刷用紙との間隔を調整することもできる。
【0079】
また、ヘッド調整駆動部70は、上記各実施例のように(図5、図13参照)、印刷ヘッドの傾きや位置を変える部材を直接操作しなければならいわけではない。すなわち、印刷ヘッドの傾きや位置を変える部材と、ヘッド調整駆動部70が走査する部材との間に動作を伝達する他の部材が設けられていてもよい。ただし、ヘッド調整駆動部70が操作する部材は、その部材からヘッド調整駆動部70に向かう方向を軸として回転されることで操作される部材であることが好ましい。そのような態様とすれば、ヘッド調整駆動部70は、容易にその部材を操作することができる。
【0080】
また、上記実施例では、スライドベースユニット83は、印刷ヘッド6を、印刷用紙の送りの方向について異なる位置に固定できるように設けられていた(図5参照)。しかし、スライドベースユニット83は、印刷用紙の送りの方向とは異なる方向について、異なる位置に固定できるような態様とすることもできる。
すなわち、印刷装置は、印刷ヘッドを、キャリッジ上に、主走査の方向と交わる方向について異なる位置で固定できるような調整部を備えていればよい。たとえば、副走査方向と交わる方向についてスライド可能なように印刷ヘッドを設けることとすれば、次のような利点がある。すなわち、副走査方向に沿ってスライド可能なように印刷ヘッドを設けた態様に比べて、印刷ヘッドを大きく移動させて、副走査方向についての位置を微妙に調整することができる。
【0081】
そして、上記実施例では、回転ベースユニット82は、印刷ヘッド6を、印刷ヘッド6と向かい合う位置にある印刷用紙に対して垂直な方向を軸として、異なる回転角度で固定できるように設けられていた(図5参照)。しかし、回転ベースユニット82は、印刷用紙に垂直な方向とは異なる方向を軸として、異なる回転角度で固定できるような態様としてもよい。すなわち、印刷装置は、印刷ヘッドを、キャリッジ上に、印刷媒体のうち印刷ヘッドと向かい合う部分が構成する平面と交わる方向を軸として、異なる回転角度で固定できる調整部を備えていればよい。なお、「印刷媒体のうち印刷ヘッドと向かい合う部分が構成する平面」は、ロールなどの搬送手段で搬送される印刷媒体のうち、印刷ヘッドと向かい合う位置にあってドットが形成される状態にある部分の、印刷媒体の平面である。平面状のプラテンが設けられている場合には、この平面はプラテンの平面と等しい。なお、印刷媒体が構成する平面と回転軸が交わる角度は、垂直以外の角度であってもよい。
【0082】
E2.変形例2:
上記実施例においては、各印刷ヘッドの相対位置は、副走査方向について最も下流にある印刷ヘッドを基準としてそれぞれ調整されていた。しかし、基準となる印刷ヘッドは任意の印刷ヘッドとすることができる。また、各ノズル列のドット形成位置は、副走査方向について最も下流にある印刷ヘッドのブラックノズル列を基準としてそれぞれ調整されていた。しかし、基準となるノズル列は任意のノズル列とすることができる。ただし、目視しやすいインク色のノズル列であることが好ましい。
【0083】
E3.変形例3:
上記実施例では、キャリッジ1は、すべての印刷ヘッドの回転角度、副走査方向の位置が調整できる機構を備えていた。しかし、キャリッジ1は、そのような調整機構を備えない印刷ヘッドを有していてもよい。すなわち、少なくとも一部の印刷ヘッドについて、回転角度、副走査方向の位置が調整できる機構を備えていればよい。
【0084】
E4.変形例4:
上記実施例では、ヘッド調整駆動部70は、キャリッジ1とは独立に移動するものであった(図2参照)。しかし、スライド軸71をキャリッジ1上に設けて、ヘッド調整駆動部70をキャリッジ1と一体で移動するように設けることもできる。すなわち、ヘッド調整駆動部70は、キャリッジ1上の各印刷ヘッドに対して移動できるように設けることができる。ただし、ヘッド調整駆動部70の数は、印刷ヘッドの数よりも少なくすることが好ましい。そのようにすることで、印刷装置の重量を軽減し、印刷装置の製造コストを低減することができる。
【0085】
なお、ヘッド調整駆動部70をキャリッジ1と一体で移動するように設ける態様において、印刷ヘッド6がキャリッジ上に2次元的に配されている場合には、ヘッド調整駆動部70もキャリッジ上で2次元的に移動できるように設けることが好ましい。たとえば、キャリッジ1上において、主走査方向および副走査方向について移動できるようなスライド機構(スライド軸やスライドガイド)を備えることが好ましい。
【0086】
E5.変形例5:
この発明はドラムスキャンプリンタにも適用可能である。この発明は、いわゆるインクジェットプリンタのみではなく、一般に、印刷ヘッドからインクを吐出することによって画像を印刷する印刷装置に適用することができる。このような印刷装置としては、例えばファクシミリ装置や、コピー装置がある。
【0087】
E6.変形例6:
上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、プリンタ200内の制御回路40(図8参照)の機能の一部を、コンピュータ90が実行するようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の一実施例としてのプリンタの構成の概略を示す斜視図。
【図2】印刷部の構成を説明する説明図。
【図3】1つの印刷ヘッドの下面におけるノズルの配列を示す説明図。
【図4】キャリッジの概略構成を示す説明図。
【図5】ヘッドベースユニットを示す平面図。
【図6】キャリッジを背面側から見た説明図。
【図7】ヘッド調整駆動部と、ヘッドベースユニットおよび印刷ヘッドを示す説明図。
【図8】制御部としての制御回路を中心としたプリンタの構成を示すブロック図。
【図9】印刷ヘッドの調整の手順を表すフローチャート。
【図10】各印刷ヘッドの角度の調整を行う際に使用される検査用パターンを示す説明図。
【図11】異なる印刷ヘッド間の相対位置の調整を行う際に使用される検査用パターンを示す説明図。
【図12】検査用パターンの例を示す説明図。
【図13】第2実施例のヘッド調整駆動部とヘッドベースユニットおよび印刷ヘッドを示す説明図。
【図14】各印刷ヘッドの角度の調整を行う際に使用される他の検査用パターンを示す説明図。
【符号の説明】
【0089】
1…キャリッジ、1a…光学センサ、2…ノズルプレート、2a…ノズルプレート、3…サブタンク、3S…サブタンクセット、3a〜3f…サブタンク、6,6a,6b…印刷ヘッド、9,9a〜9f…メインタンク、10A…第1検査部、10B…第2検査部、20…キャップ部、30…ワイパ部、40…制御回路、41…CPU、44…RAM、50…I/F専用回路、61…ヘッド駆動回路、62…モータ駆動回路、64…ポンプ駆動回路、65…バルブ駆動回路、70,70p…ヘッド調整駆動部、70a,70c,70e,70g,70i,70k…回転軸、70b,70d,70f,70h,70j,70l…調整モータ、71…スライド軸、72…搬送モータ、73…プーリ、74…駆動ベルト、80,80p…ヘッドベースユニット、81…固定ベースユニット、81a,81c…ねじ、81b…凸部、82…回転ベースユニット、82a…軸、82b,82c…スライドピン、82d…凸部、83…スライドベースユニット、83a…貫通孔、83b…スライド溝、84…カム、84a…軸、85…バネ、86…カム、86a…軸、87…バネ、90…コンピュータ、100…キャリッジモータ、101…駆動ベルト、102…主走査ガイド部材、103…インク供給路、200…プリンタ、210…給紙部、211…ロール紙ホルダ、212…スピンドル、215…支持柱、220…印刷部、230…排紙部、231…ホルダ、232…スピンドル、235…支持柱、240…入出力部、A2…回転ベースユニット82の動きを示す矢印、A3…スライドベースユニット83の動きを示す矢印、Ap…ノズルが設けられている副走査方向の範囲を示す矢印、C…シアンノズル列、K…ブラックノズル列、Ln…ブラックノズル列とイエロノズル列の間隔、L20…ブラックノズル列の上端のノズル同士の間隔の設計値、L21…検査用サブパターンT20aとT20bの間隔、LC…淡シアンノズル列、LK…淡ブラックノズル列、LM…淡マゼンタノズル列、M…マゼンタノズル列、MS…主走査方向、P…印刷用紙、SS…副走査方向、T10…印刷ヘッドの回転角度を調整するための検査用パターン、T11,T12…検査用サブパターン、T20,T20a,20b…印刷ヘッドの副走査方向のズレを調整するための検査用パターン、T30…インク滴の吐出タイミングを調整するための検査用パターン、T31…基準ノズル列が形成する縦罫線、T32…調整対象ノズル列が形成する縦罫線、T33…縦罫線対、T40,T40a,40b…印刷ヘッドの回転角度を調整するための検査用パターン、Y…イエロノズル列、d11…検査用サブパターンの副走査方向のずれ量、d21…検査用サブパターンの副走査方向のずれ量、θ…検査用サブパターンのずれ角。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体上にドットを形成することにより画像の印刷を行う印刷装置であって、
前記印刷媒体上にドットを形成するための複数のドット形成要素が設けられたドット記録ヘッドと、
前記ドット記録ヘッドが設けられているキャリッジと、
前記キャリッジと前記印刷媒体の少なくとも一方を移動させて主走査を行う主走査駆動部と、
前記ドット記録ヘッドと、主走査駆動部と、を制御する制御部と、を備え、
前記キャリッジは、
前記印刷ヘッドを、前記キャリッジ上に、前記主走査の方向と交わる方向について異なる位置で固定できる第1の調整部と、
前記印刷ヘッドを、前記キャリッジ上に、前記印刷媒体のうち前記印刷ヘッドと向かい合う部分が構成する平面と交わる方向を軸として、異なる回転角度で固定できる第2の調整部と、を備える印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置であって、
前記キャリッジは、さらに、前記印刷ヘッドを、前記キャリッジ上に、前記印刷媒体のうち前記印刷ヘッドと向かい合う部分との間の距離を変えて固定できる第3の調整部を備える印刷装置。
【請求項3】
請求項1記載の印刷装置であって、
前記キャリッジは、前記印刷ヘッドを複数有しており、
前記第1および第2の調整部は、一つの印刷ヘッドに対してそれぞれ少なくとも一つずつ設けられており、
前記印刷装置は、さらに、前記複数の印刷ヘッドに対して相対的に移動できるように設けられ、前記第1および第2の調整部を駆動することができる調整駆動部を備え、
前記調整駆動部の数は前記印刷ヘッドの数よりも少ない、印刷装置。
【請求項4】
請求項3記載の印刷装置であって、
前記調整駆動部は、前記キャリッジとは独立に、前記主走査の方向と交わる方向に移動することができる、印刷装置。
【請求項5】
請求項3記載の印刷装置であって、
前記第1の調整部は、回転されることで、前記主走査の方向と交わる方向について前記印刷ヘッドの位置を変えることができる第1の軸部を備えており、
前記第2の調整部は、回転されることで、前記印刷ヘッドの前記回転角度を変えることができる第2の軸部を備えており、
前記第1および第2の軸部の回転軸の方向は、いずれも前記主走査の方向および前記調整駆動部の移動方向に対して垂直である、印刷装置。
【請求項6】
請求項3記載の印刷装置であって、さらに、
印刷媒体に記録された画像を読みとることができるセンサを備え、
前記複数のドット形成要素は、前記主走査の方向と交わる方向について異なる位置に設けられている2以上のドット形成要素を含み、
前記制御部は、
前記主走査を行いつつ、前記2以上のドット形成要素で前記印刷媒体上にそれぞれドットを形成して、前記主走査の方向と交わる方向について異なる位置にあり、前記主走査の方向に伸びる2以上の検査用パターンを印刷するパターン印刷部と、
前記センサで前記2以上の検査用パターンを読み取るパターン読み取り部と、
前記センサで読みとった前記2以上の検査用パターンのデータに基づいて、前記印刷ヘッドの前記主走査の方向と交わる方向についての位置の設定値と、前記回転角度の設定値と、の少なくとも一方を決定する設定値決定部と、
前記設定値にしたがって、前記調整駆動部に前記調整部を駆動させるヘッド調節部と、を備える、印刷装置。
【請求項7】
請求項3記載の印刷装置であって、さらに、
印刷媒体に記録された画像を読みとることができるセンサを備え、
前記複数のドット形成要素は、前記主走査の方向と交わる方向に沿ってそれぞれ設けられている2以上のドット形成要素列を含み、
前記制御部は、
前記各ドット形成要素列に含まれるドット形成要素を使用して同一のタイミングで前記印刷媒体上にドットを形成して、前記ドット形成要素列ごとに検査用パターンを印刷するパターン印刷部と、
前記センサで前記検査用パターンを読み取るパターン読み取り部と、
前記センサで読みとった前記検査用パターンのデータに基づいて、前記印刷ヘッドの前記主走査の方向と交わる方向についての位置の設定値と、前記回転角度の設定値と、の少なくとも一方を決定する設定値決定部と、
前記設定値にしたがって、前記調整駆動部に前記調整部を駆動させるヘッド調節部と、を備える、印刷装置。
【請求項8】
印刷媒体上にドットを形成することにより画像の印刷を行う印刷装置の調整方法であって、(a)前記印刷媒体上にドットを形成するための複数のドット形成要素を備えたドット記録ヘッドを備えるキャリッジを備え、前記キャリッジと前記印刷媒体の少なくとも一方を移動させて主走査を行いつつドットを形成する印刷装置を準備する工程と、(b)前記印刷ヘッドの、前記キャリッジ上への取り付け角度であって、前記印刷媒体の前記印刷ヘッドと向かい合う部分が構成する平面と交わる方向を軸とする取り付け角度を調整する工程と、(c)前記印刷ヘッドの、前記キャリッジ上への取り付け位置であって、前記主走査の方向と交わる方向についての取り付け位置を調整する工程と、(d)前記各ドット形成要素によるドットの形成タイミングを調整する工程と、を備える、印刷装置の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−183903(P2008−183903A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42550(P2008−42550)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【分割の表示】特願2002−303668(P2002−303668)の分割
【原出願日】平成14年10月18日(2002.10.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】