説明

印刷ポリエステルフィルム及び印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体

【課題】接着剤層に金属粉末が分散されたものと同等のメタリック感を有する色調が得られ、缶体材料用金属板に対する接着性が阻害されない印刷ポリエステルフィルム及び印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体を提供する。
【解決手段】印刷ポリエステルフィルム1は、缶体材料用金属板11に熱硬化型樹脂系接着剤層4を介して加熱接着されて保護被覆層12を形成する。基体ポリエステルフィルム2の一方の面に顔料を含む樹脂組成物からなる印刷層3が設けられ、印刷層3上に鱗片状ガラス粉末が分散された熱硬化型樹脂系接着剤層4が設けられている。鱗片状ガラス粉末は、表面に金属又は金属酸化物からなるコーティング層を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ポリエステルフィルム及び缶胴部外面側に該印刷ポリエステルフィルムからなる保護被覆層を備える印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料物等の容器に使用される金属缶体の缶外面に印刷ポリエステルフィルムからなる保護被覆層を設け、該印刷ポリエステルフィルムにより該金属缶体に所定の表示を行うと共に、デザイン等の画像により美粧性を付与することが行われている。
【0003】
前記印刷ポリエステルフィルムとして、例えば、一方の面に顔料を含む樹脂組成物がグラビア印刷されてなる印刷層と、該印刷層上に設けられた熱硬化型樹脂系接着剤層とを備え、該熱硬化型樹脂系接着剤層を介して缶胴部に加熱接着されていると共に、該熱硬化型樹脂系接着剤層に金属粉末が分散されているものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
前記印刷ポリエステルフィルムによれば、前記熱硬化型樹脂系接着剤層に前記金属粉末を分散させることにより、従来より大粒径の金属粉末を多量に使用することができ、金属缶体の缶胴部に熱接着されたときに、従来の印刷フィルムでは得られなかった優れたメタリック感を有する色調を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−201856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記印刷ポリエステルフィルムは、熱硬化型樹脂系接着剤層に従来より大粒径の金属粉末を多量に分散させて用いるため、缶体材料用金属板に対する接着性が阻害されることがあるという不都合がある。
【0007】
本発明は、かかる不都合を解消して、熱硬化型樹脂系接着剤層に前記金属粉末が分散されたものと同等以上のメタリック感と、光が強く反射することにより出現する光輝度感とを有する色調を得ることができると共に、缶体材料用金属板に対する接着性が阻害されることの無い印刷ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明の目的は、缶胴部外面側に前記印刷ポリエステルフィルムからなる保護被覆層を備える印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明は、缶体材料用金属板に熱硬化型樹脂系接着剤層を介して加熱接着されて保護被覆層を形成する印刷ポリエステルフィルムであって、該印刷ポリエステルフィルムは、基体ポリエステルフィルムの一方の面に顔料を含む樹脂組成物からなる印刷層が設けられ、該印刷層上に鱗片状ガラス粉末が分散された熱硬化型樹脂系接着剤層が設けられており、該鱗片状ガラス粉末は、表面に金属又は金属酸化物からなるコーティング層を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明では、前記熱硬化型樹脂系接着剤層に前記コーティング層を備える鱗片状ガラス粉末が分散されていることにより、入射光を該鱗片状ガラス粉末で反射することができる。前記鱗片状ガラス粉末は、前記コーティング層により可視光透過率を低減させることができ、前記印刷ポリエステルフィルムに対する入射光の反射率を向上させることができる。
【0011】
従って、本発明によれば、前記熱硬化型樹脂系接着剤層に金属粉末が分散されている場合に比較して、前記鱗片状ガラス粉末の分散量がより少量でも該金属粉末と同等以上のメタリック感と、光が強く反射することにより出現する光輝度感とを有する色調を得ることができる。また、本発明によれば、前記熱硬化型樹脂系接着剤層における前記鱗片状ガラス粉末の分散量を低減できるので、前記缶体材料用金属板に対する接着性が阻害されることを防止することができる。
【0012】
前記コーティング層を形成する金属としては、例えば、銀、チタン等を挙げることができる。また、前記コーティング層を形成する金属酸化物としては、例えば、ルチル型二酸化チタン等を挙げることができる。
【0013】
本発明において、前記鱗片状ガラス粉末としては、平均厚さが15μm以下の範囲にあり、面方向の大きさが15〜50μmの範囲にあるものを用いることができる。
【0014】
また、本発明において、前記鱗片状ガラス粉末は、前記熱硬化型樹脂系接着剤層の全量に対して、1〜18質量%の範囲で含まれていることが好ましい。
【0015】
前記熱硬化型樹脂系接着剤層に含まれる前記鱗片状ガラス粉末が、該熱硬化型樹脂系接着剤層の全量に対して1質量%未満であるときには、前記印刷ポリエステルフィルムに対する入射光を十分に反射することができないことがある。また、前記熱硬化型樹脂系接着剤層に含まれる前記鱗片状ガラス粉末が、該熱硬化型樹脂系接着剤層の全量に対して18質量%を超えると、それ以上に前記印刷ポリエステルフィルムに対する入射光を反射する効果が得られない上、該印刷ポリエステルフィルムの缶体材料用金属板に対する接着性が損なわれることがある。
【0016】
また、本発明の印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体は、缶体材料用金属板により形成された缶体の缶胴部外面側に対し、一方の面に顔料を含む樹脂組成物からなる印刷層が設けられ、該印刷層上に鱗片状ガラス粉末が分散された熱硬化型樹脂系接着剤層が設けられており、該鱗片状ガラス粉末は、表面に金属又は金属酸化物からなるコーティング層を備える印刷ポリエステルフィルムを、該熱硬化型樹脂系接着剤層を介して加熱接着することにより保護被覆層を形成してなることを特徴とする。
【0017】
本発明の印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体によれば、前記印刷ポリエステルフィルムからなる前記保護被覆層を備えることにより、缶胴部の所定の表示及びデザイン等の画像に、優れたメタリック感と、光が強く反射することにより出現する光輝度感とを有する色調を付与することができる。
【0018】
本発明の印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体において、前記缶体材料用金属板により形成された缶体は、短冊状の該缶体材料用金属板の両端縁を溶接してなる溶接缶体であってもよく、該缶体材料用金属板を絞り加工若しくはしごき加工してなる有底円筒状缶体であってもよい。前記溶接缶体は、両端に缶蓋を二重巻締めすることにより、いわゆる3ピース缶体を形成することができる。また、前記有底円筒状缶体は開放端に缶蓋を二重巻締めすることにより、いわゆる2ピース缶体を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る印刷ポリエステルフィルムの構成例を示す説明的断面図。
【図2】図1に示す印刷ポリエステルフィルムからなる保護被覆層が形成された缶体材料用金属板の構成を示す説明的断面図。
【図3】本発明に係る溶接缶体の缶胴部の要部の構成を示す説明的断面図。
【図4】本発明に係る有底円筒状缶体の構成を示す説明的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0021】
図1(a)に示す本実施形態の印刷ポリエステルフィルム1は、缶体材料用金属板に接着されて保護被覆層を形成するものである。印刷ポリエステルフィルム1は、基体となるポリエステルフィルム2の一方の面に、顔料を含む樹脂組成物からなる印刷層3と、印刷層3の上に設けられた熱硬化型樹脂系接着剤層4とを備え、熱硬化型樹脂系接着剤層4は鱗片状ガラス粉末を含んでいる。また、印刷ポリエステルフィルム1は、基体となるポリエステルフィルム2の他方の面(印刷層3と反対側の面)に、硬化オーバーコート層5を備えている。
【0022】
本実施形態の印刷ポリエステルフィルム1は、缶体材料用金属板に接着された後に所望により硬化オーバーコート層5が形成されるものであってもよい。この場合、印刷ポリエステルフィルム1は、図1(b)に示すように、基体となるポリエステルフィルム2の印刷層3と反対側の面に、硬化オーバーコート層5を備えていない。
【0023】
次に、基体となるポリエステルフィルム2としては、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合により得られるポリエステルフィルムであって、透明性等に優れているものが適している。また、ポリエステルフィルム2は、印刷層3を設けるための強度及び前記缶体材料用金属板に接着される際の熱処理に対する寸法安定性が要求される。
【0024】
そこで、ポリエステルフィルム2は、ポリエチレンナフタレート等の耐熱性ポリエステルフィルム、一軸又は二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルム等であることが好ましい。特に、ポリエステルフィルム2は、材料物性的には150℃に30分保持したときの長手方向の熱収縮率が1.2%以下、幅方向の熱収縮率が0%の二軸延伸ポリエステルフィルムであることが好ましい。
【0025】
また、ポリエステルフィルム2は、5〜50μmの範囲の厚さを有することが好ましい。ポリエステルフィルム2の厚さが5μm未満であるときには、印刷ポリエステルフィルム1による保護被覆層が形成された缶体材料用金属板を缶体に加工するときに、ポリエステルフィルム1が傷付きやすく、ピンホール等が発生して、缶体の腐食、金属の溶出を防止する効果が十分に得られないことがある。また、ポリエステルフィルム2の厚さが50μmを超えるときには残留応力が大きくなり、前記缶体の缶胴部にネックイン加工等の絞り加工を施すと、印刷ポリエステルフィルム1の前記缶体材料用金属板に対する密着性が低下する傾向がある。
【0026】
次に、印刷層3は、従来公知の顔料を含む樹脂組成物からなり、基体となるポリエステルフィルム2の一方の面上に例えばグラビア印刷等により形成される。前記樹脂組成物としては、グラビア印刷等に用いられる従来公知の樹脂組成物を用いることができる。このような樹脂組成物として、例えば、エポキシブチラール系樹脂とポリイソシアネート系樹脂とからなる樹脂組成物又は、ポリエステルポリウレタン樹脂とポリイソシアネート系樹脂とからなる樹脂組成物を挙げることができる。
【0027】
次に、熱硬化型樹脂系接着剤層4は、熱硬化型樹脂系接着剤組成物に鱗片状ガラス粉末が分散されている。前記熱硬化型樹脂系接着剤組成物としては、エポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤を含む樹脂組成物、ポリエステル樹脂とアミノプラスト樹脂とを含む樹脂組成物又は、ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート化合物とを含む樹脂組成物等を挙げることができる。
【0028】
また、熱硬化型樹脂系接着剤層4は、ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート化合物とを含む樹脂組成物からなるときには、さらに、ブロックされていないイソシアネート化合物を含むことが好ましい。前記樹脂組成物は、前記ブロックされていないイソシアネート化合物を使用直前に混合することにより、ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物を反応させて粘度調整を行うことができ、前記鱗片状ガラス粉末の分散安定性の確保と、塗装作業性との両者に好適な適性粘度範囲にすることができる。
【0029】
また、前記鱗片状ガラス粉末は、表面に銀、チタン等の金属又はルチル型二酸化チタン等の金属酸化物からなるコーティング層を備えている。前記鱗片状ガラス粉末は、前記コーティング層により可視光透過率を低減させることができ、印刷ポリエステルフィルム1に対する入射光の反射率を向上させることができる。
【0030】
前記鱗片状ガラス粉末は、例えば、平均厚さが15μm以下の範囲にあり、面方向の大きさが15〜50μmの範囲にあるものを用いることができる。また、前記鱗片状ガラス粉末は、熱硬化型樹脂系接着剤層4の全量に対して、例えば、1〜18質量%の範囲で含まれる。
【0031】
次に、硬化オーバーコート層5は、熱硬化型樹脂からなり、ポリエステルフィルム2の印刷層3と反対側の面上に形成される。前記熱硬化型樹脂は、高温短時間で被覆硬化層を形成する樹脂であることが好ましく、例えば、エポキシ樹脂とアミノプラスト樹脂とからなり、短時間硬化触媒として有機酸またはリン酸、ポリリン酸等の無機酸が添加されているものが好ましい。また、前記熱硬化型樹脂は、硬化オーバーコート層5の耐傷付性の向上、滑り性向上のために、シリコン或はワックスが添加されていることが好ましい。
【0032】
次に、本実施形態の印刷ポリエステルフィルム1の製造方法について説明する。
【0033】
まず、原反フィルムを所定幅毎に裁断して長尺状としたポリエステルフィルム2に熱処理を施し、残留応力を緩和する。次に、ポリエステルフィルム2の一方の面に印刷層3を形成し、印刷層3と反対側の面に硬化オーバーコート層5を形成する。
【0034】
次に、印刷層3の上に、前記鱗片状ガラス粉末を含む熱硬化型樹脂系接着剤層4を形成することにより、印刷ポリエステルフィルム1を得る。ここで、熱硬化型樹脂系接着剤層4を、ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート化合物とを含む樹脂組成物により形成するときには、ブロックされていないイソシアネート化合物を使用直前に混合することが好ましい。
【0035】
次に、印刷ポリエステルフィルム1を用いる本実施形態の印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体について説明する。
【0036】
本実施形態の印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体が溶接缶体であるときには、まず、図2に示す缶体材料用金属板11を形成する。缶体材料用金属板11は、その缶外面となる側の両側端縁部11a,11aを除いた部分に、図1に示す印刷ポリエステルフィルム1が熱硬化型樹脂系接着剤層4を介して熱接着されて保護被覆層12が形成されている。尚、図2において、印刷ポリエステルフィルム1は印刷層3及び硬化オーバーコート層5を省略して示している。
【0037】
また、缶体材料用金属板11の缶内面となる側の両側端縁部11b,11bを除いた部分には、透明なポリエステルフィルム13が印刷ポリエステルフィルム1と同様の熱硬化型樹脂系接着剤層14を介して熱接着されて内面保護被覆層15が形成されている。
【0038】
缶体材料用金属板11としては、島状錫メッキ鋼板(TNS板)、薄錫メッキ鋼板(LTS板)、ティン・フリー鋼板(TFS板)、アルミニウム板及びそれらの表面に各種表面処理を施した表面処理金属板等を挙げることができるが、島状錫メッキ鋼板又は薄錫メッキ鋼板が特に適している。
【0039】
保護被覆層12及び内面保護被覆層15が形成された缶体材料用金属板11は図2に矢示するように丸められ、図3示のように両側端縁部11a,11aを重ね合わせて溶接接合することにより缶胴部16が形成され、溶接缶体とされる。缶胴部16の保護被覆層12及び内面保護被覆層15が形成されていない部分には、公知の被覆補正塗料17により、被覆補正がなされる。そして、缶胴部16の両端縁部をネックイン加工、フランジ加工したのち、両端に別途製造された缶蓋を二重巻締めすることにより、3ピース缶体を形成することができる。
【0040】
次に、本実施形態の印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体が有底円筒状缶体であるときには、まず、図4(a)に示すように表裏両面にポリエステルフィルム21,22が接着された缶体材料用金属板23を絞り加工またはしごき加工することにより、有底円筒状缶体24を形成する。缶体材料用金属板23としては、ティン・フリー鋼板、アルミニウム板及びそれらの表面に各種表面処理を施した表面処理金属板等を用いることができる。
【0041】
次に、図4(b)に示すように、有底円筒状缶体24の缶胴部に印刷ポリエステルフィルム1が熱硬化型樹脂系接着剤層4(図示せず)を介して熱接着されて保護被覆層25が形成される。そして、開放端部にネックイン加工26及びフランジ加工27が施されたのち、別途製造された缶蓋を二重巻締めすることにより、2ピース缶体を形成することができる。
【0042】
尚、缶体材料用金属板23は表裏両面にポリエステルフィルム21,22が接着されていないものであってもよい。
【0043】
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例】
【0044】
〔実施例1〕
本実施例では、まず、基体となるポリエステルフィルム2として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面に印刷層3を形成した。印刷層3は、エポキシブチラール樹脂とポリイソシアネート系樹脂とからなる樹脂組成物を用い、白色顔料を含む白色インキ層と、該樹脂組成物のみからなり顔料を含まない透明インキ層とを設けた。
【0045】
次に、ポリエステルフィルム2の印刷層3と反対側の面に、エポキシ樹脂とアミノプラスト樹脂とからなる熱硬化型樹脂組成物を用いて硬化オーバーコート層5を形成した。
【0046】
次に、ポリエステルフィルム2の印刷層3上に熱硬化型樹脂系接着剤層4を形成し、印刷ポリエステルフィルム1を得た。
【0047】
熱硬化型樹脂系接着剤層4は、ポリエステル樹脂と、該ポリエステル樹脂の全量の2質量%のブロック化イソホロンジイソシアネート化合物を含む熱硬化型樹脂系接着剤組成物からなり、全量に対して4質量%の鱗片状ガラス粉末を含んでいる。前記鱗片状ガラス粉末は、平均厚さが2μm、面方向の大きさの平均(以下、平均粒子径という)が25μmであり、表面に銀メッキからなるコーティング層を備え、可視光透過率が16%である。
【0048】
また、熱硬化型樹脂系接着剤層4は、使用直前にブロック化されていないイソシアネート化合物を配合して形成した。
【0049】
次に、本実施例で得られた印刷ポリエステルフィルム1を、島状錫メッキ鋼板からなる缶体材料用金属板11の缶外面となる側の両側端縁部11a,11aを除いた部分に、前記熱硬化型樹脂系接着剤層4を介して熱接着し、保護被覆層12を形成した。
【0050】
次に、前記缶体材料用金属板11の缶内面となる側の両側端縁部11b,11bを除いた部分に、透明なポリエステルフィルム13を前記熱硬化型樹脂系接着剤層4と同一の樹脂組成物のみからなり、鱗片状ガラス粉末を全く含まない熱硬化型樹脂系接着剤層14を介して熱接着して、内面保護被覆層15を形成した。
【0051】
次に、保護被覆層12及び内面保護被覆層15が形成された缶体材料用金属板11を、図2に矢示するように丸め、図3示のように両側端縁部11a,11aを重ね合わせて溶接接合することにより缶胴部16を形成して、溶接缶体とした。缶胴部16の保護被覆層12及び内面保護被覆層15が形成されていない部分には、公知の被覆補正塗料17により、被覆補正を行った。そして、缶胴部16の両端縁部をネックイン加工、フランジ加工したのち、両端に別途製造された缶蓋を二重巻締めすることにより、高さ103.9mm、直径52.5mmの3ピース缶体を形成し、本実施例の印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体とした。
【0052】
次に、本実施例で得られた印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体の前記白色インキ層及び前記透明インキ層について、メタリック感の指標として、L*a*b*表色系の明度L*値を測定した。
【0053】
前記明度L*値は、分光測色計(コニカミノルタ社製、商品名:CM−3500d)を用い、パルスキセノンランプを光源とする波長400〜700nmの範囲の光線を、前記印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体の缶胴部に垂直に照射することにより測定した。照射光の直径は11mm、測定部分の直径は8mmであり、測定時間は約2.5秒であった。測定結果を表1に示す。
【0054】
〔実施例2〕
本実施例では、平均厚さが2μm、平均粒子径が25μmであり、表面に銀メッキからなるコーティングを備えている鱗片状ガラス粉末を用い、熱硬化型樹脂系接着剤層4がその全量に対して12質量%の鱗片状ガラス粉末を含むようにした以外は、実施例1と全く同一にして印刷ポリエステルフィルム1を得た。
【0055】
次に、本実施例で得られた印刷ポリエステルフィルム1を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、3ピース缶体を形成し、本実施例の印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体とした。
【0056】
次に、本実施例で得られた印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体の前記白色インキ層及び前記透明インキ層について、メタリック感の指標としての明度L*値を、実施例1と全く同一にして測定した。測定結果を表1に示す。
【0057】
〔実施例3〕
本実施例では、平均厚さが2μm、平均粒子径が40μmであり、表面に銀メッキからなるコーティングを備えている鱗片状ガラス粉末を用い、熱硬化型樹脂系接着剤層4がその全量に対して4質量%の鱗片状ガラス粉末を含むようにした以外は、実施例1と全く同一にして印刷ポリエステルフィルム1を得た。
【0058】
次に、本実施例で得られた印刷ポリエステルフィルム1を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、3ピース缶体を形成し、本実施例の印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体とした。
【0059】
次に、本実施例で得られた印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体の前記白色インキ層及び前記透明インキ層について、メタリック感の指標としての明度L*値を、実施例1と全く同一にして測定した。測定結果を表1に示す。
【0060】
〔実施例4〕
本実施例では、平均厚さが2μm、平均粒子径が40μmであり、表面に銀メッキからなるコーティングを備えている鱗片状ガラス粉末を用い、熱硬化型樹脂系接着剤層4がその全量に対して12質量%の鱗片状ガラス粉末を含むようにした以外は、実施例1と全く同一にして印刷ポリエステルフィルム1を得た。
【0061】
次に、本実施例で得られた印刷ポリエステルフィルム1を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、3ピース缶体を形成し、本実施例の印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体とした。
【0062】
次に、本実施例で得られた印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体の前記白色インキ層及び前記透明インキ層について、メタリック感の指標としての明度L*値を、実施例1と全く同一にして測定した。測定結果を表1に示す。
【0063】
〔比較例1〕
本比較例では、前記鱗片状ガラス粉末に代えて、平均粒子径30μmのアルミニウム粉末を用い、熱硬化型樹脂系接着剤層4がその全量に対して65質量%のアルミニウム粉末を含むようにした以外は、実施例1と全く同一にして印刷ポリエステルフィルムを得た。
【0064】
次に、本比較例で得られた印刷ポリエステルフィルムを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、3ピース缶体を形成し、本比較例の印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体とした。
【0065】
次に、本比較例で得られた印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体の前記白色インキ層及び前記透明インキ層について、メタリック感の指標としての明度L*値を、実施例1と全く同一にして測定した。測定結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
表1から、鱗片状ガラス粉末を含有する熱硬化型樹脂系接着剤層を用いて形成した印刷ポリエステルフィルムを用いる実施例1〜4の印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体によれば、鱗片状ガラス粉末の含有量をアルミニウム粉末の含有量より低減しても、アルミニウム粉末を含有する熱硬化型樹脂系接着剤層を用いて形成した印刷ポリエステルフィルムを用いる比較例1の印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体と同等以上のメタリック感と、光が強く反射することにより出現する特に優れた光輝度感とを得ることができることが明らかである。
【符号の説明】
【0068】
1…缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルム、 2…基体となるポリエステルフィルム、 3…印刷層、 4…熱硬化型樹脂系接着剤層、 11,23…缶体材料用金属板、 12,25…保護被覆層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶体材料用金属板に熱硬化型樹脂系接着剤層を介して加熱接着されて保護被覆層を形成する印刷ポリエステルフィルムであって、
該印刷ポリエステルフィルムは、基体ポリエステルフィルムの一方の面に顔料を含む樹脂組成物からなる印刷層が設けられ、該印刷層上に鱗片状ガラス粉末が分散された熱硬化型樹脂系接着剤層が設けられており、該鱗片状ガラス粉末は、表面に金属又は金属酸化物からなるコーティング層を備えることを特徴とする印刷ポリエステルフィルム。
【請求項2】
請求項1記載の印刷ポリエステルフィルムにおいて、前記鱗片状ガラス粉末は、平均厚さが15μm以下の範囲にあり、面方向の大きさが15〜50μmの範囲にあることを特徴とする印刷ポリエステルフィルム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の印刷ポリエステルフィルムにおいて、前記鱗片状ガラス粉末は、前記熱硬化型樹脂系接着剤層の全量に対して、1〜18質量%の範囲で含まれていることを特徴とする印刷ポリエステルフィルム。
【請求項4】
缶体材料用金属板により形成された缶体の缶胴部外面側に対し、一方の面に顔料を含む樹脂組成物からなる印刷層が設けられ、該印刷層上に鱗片状ガラス粉末が分散された熱硬化型樹脂系接着剤層が設けられており、該鱗片状ガラス粉末は、表面に金属又は金属酸化物からなるコーティング層を備える印刷ポリエステルフィルムを、該熱硬化型樹脂系接着剤層を介して加熱接着することにより保護被覆層を形成してなることを特徴とする印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体。
【請求項5】
請求項4記載の印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体において、前記缶体材料用金属板により形成された缶体は、短冊状の該缶体材料用金属板の両端縁を溶接してなる溶接缶体又は該缶体材料用金属板を絞り加工若しくはしごき加工してなる有底円筒状缶体であることを特徴とする印刷ポリエステルフィルム被覆金属缶体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−86413(P2013−86413A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230538(P2011−230538)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(505440295)北海製罐株式会社 (58)
【Fターム(参考)】