説明

印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物、及び印刷ロール

【課題】 耐溶剤性と耐水性が共に優れる印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物、及び該組成物を用いてなる印刷ロールを提供する。
【解決手段】 ポリイソシアネート(A)とポリエステルポリオール(B)を用いて得られるウレタンエラストマー組成物であって、前記ポリエステルポリオール(B)が、水酸基含有成分として1,3−プロパンジオールを必須とし、カルボキシル基含有成分としてコハク酸を必須としてなることを特徴とする印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物、及び、前記印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物を成形してなることを特徴とする印刷ロールを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物、及び該組成物を用いてなる印刷ロールに関する。更に詳しくは、印刷ロールの弾性部材に適したウレタンエラストマーを形成するための組成物、及び前記ウレタンエラストマー組成物を用いて成形してなる印刷ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷ロールは、用いられる印刷インキが溶剤系インキであるため、高い耐溶剤性が求められてきた。しかしながら、近年では、環境や生体への悪影響が懸念されるようになり、徐々に溶剤系インキから水性インキへと移行し、水性インキの使用量が増加してきている。
【0003】
そのため、水性インキには、今まで溶剤系インキに求められていた耐溶剤性とは別に、優れた耐水性も必須性能として同時に要求されるようになってきた。
【0004】
また、水性インキには、少量の有機溶剤を含有していたり、あるいは、洗浄溶剤が使用されたりするため、従来の溶剤系インキと同様、優れた耐溶剤性も要求されている。
【0005】
これまでに、ポリウレタンエラストマー用ポリエステルを加熱し、可塑剤を注入して攪拌し、硬化剤を注入して攪拌し、減圧脱水した後型に注入し、加熱して硫化後に離型する印刷機用ポリウレタンローラの製造方法であって、可塑剤がフタル酸ジエチル、硬化剤がトリレンジイソシアネートを含んで構成されている印刷機用ポリウレタンローラの製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
特許文献1記載の製造方法は、従来のウレタンローラーよりも硬度を低くして、印刷性能を向上させると共に、インキの溶剤の影響を受け難い、ポリウレタンローラを提供できるという。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の製造方法で得られる印刷機用ポリウレタンローラは、耐溶剤性を重視するあまり、原料に用いるポリエステルポリオールのエステル基含有濃度を高く設定しているために、耐水性や耐久性に劣り、実用上問題があった。
【0008】
また、印刷ロールの弾性部材を構成する、JIS−A硬度が20〜90のウレタンエラストマーを形成するための組成物であって、ポリイソシアネートと、ポリカーボネート系ポリオールを必須成分とするポリオールとを含有するウレタンエラストマー形成性組成物、及び、前記ウレタンエラストマー形成性組成物を成形型内で硬化処理して成形される弾性部材を備えてなる印刷ロールが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
特許文献2記載の組成物は、耐水性、耐溶剤性及び耐アルカリ性が良好で、水性インクと接触する印刷ロールの弾性部材として好適なウレタンエラストマーを形成することができるという。前記印刷ロールは、耐水性、耐溶剤性及び耐アルカリ性が良好な弾性部材を備えてなるので、水性インキによる美麗な画像を長期にわたり印刷することができるという。
【0010】
しかしながら、特許文献2記載のポリカーボネート系ポリオールを用いたウレタンエラストマー形成性組成物では、耐水性(即ち、耐加水分解性)は良好であるものの、水性インキに含まれる溶剤、あるいは、洗浄に使用される溶剤に対して、耐溶剤性に未だ劣るという問題があった。
【0011】
以上のように、従来の技術は、性能的に未だ不充分であり、耐溶剤性と耐水性性が共に優れる印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物、及びそれを用いてなる印刷ロールの開発が切望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−301335号公報
【0013】
【特許文献2】特開2004−217844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、耐溶剤性と耐水性が共に優れる印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物、及びそれを用いてなる印刷ロールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリイソシアネートとポリエステルポリオールとを用いて得られるウレタンエラストマー組成物において、前記ポリエステルポリオールが、水酸基含有ニ官能成分として1,3−プロパンジオールを必須とし、カルボキシル基含有成分としてコハク酸を必須としてなることにより、優れた耐溶剤性と耐水性とを共に有する印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物、及び印刷ロールを得ることができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0016】
即ち、本発明は、ポリイソシアネート(A)とポリエステルポリオール(B)とを用いて得られるウレタンエラストマー組成物であって、前記ポリエステルポリオール(B)が、水酸基含有ニ官能成分として1,3−プロパンジオールを必須とし、カルボキシル基含有成分としてコハク酸を必須としてなることを特徴とする印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物に関するものである。
【0017】
また、本発明は、前記印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物を成形してなることを特徴とする印刷ロールに関するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物は、優れた耐溶剤性と耐水性とを共に有している。また、本発明の印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物を成形してなる印刷ロールは、優れた耐溶剤性と耐水性に共に有しているので、従来の溶剤系インキのみならず、水性インキを用いた印刷にも有用であり、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷など、各種印刷に用いられる印刷ロールを挙げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物は、ポリイソシアネート(A)とポリエステルポリオール(B)とを用いて得られるウレタンエラストマー組成物であって、前記ポリエステルポリオール(B)が、水酸基含有ニ官能成分として1,3−プロパンジオールを必須とし、カルボキシル基含有成分としてコハク酸を必須としてなる。
【0020】
前記ポリイソシアネート(A)としては、特に限定されず、従来公知のものが使用できる。具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト(略称MDI;その4,4’体、2,4’体又は2,2’体、若しくはそれらの混合物)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネ−ト(TDI;その2,4体、又は2,6体、若しくはそれらの混合物)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネ−ト、あるいはイソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)等の脂環族系ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート等が挙げられ、これらは単独でも2種以上を併用してもよい。これらの中でも、適度な反応性と、優れた機械的強度、耐溶剤性などの理由から、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが好ましい。
【0021】
本発明の印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物で用いるポリエステルポリオール(B)は、水酸基含有ニ官能成分として1,3−プロパンジオールを必須成分とするものである。
【0022】
本発明では、前記水酸基含有ニ官能成分の全部が1,3−プロパンジオールであってもよいが、水酸基含有ニ官能成分の一部として1,3−プロパンジオールと共に、1,3−プロパンジオール以外の水酸基含有ニ官能成分を用いてもよい。
【0023】
前記1,3−プロパンジオール以外の水酸基含有ニ官能成分としては、特に限定はしないが、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,3’−ジメチロールへプタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)へプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられ、これらの中でも、耐溶剤性やハンドリング性の点で、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコールが好ましく、エチレングリコールがより好ましい。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0024】
また、開環重合系ポリエステルポリオールを用いることができ、例えば、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン等の環状エステル化合物(即ち、ラクトン類)の開環重合により得られるポリカプロラクトンポリオール、ポリブチロラクトンポリオール等の開環重合系ポリエステルポリオールを挙げることができる。
【0025】
前記ポリエステルポリオール(B)には、本発明の目的を阻害しない範囲で、水酸基含有多官能成分を用いてもよい。前記水酸基含有多官能成分とは、分子内に水酸基を有する三官能以上のポリオールをいう。
【0026】
前記水酸基含有多官能成分としては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール等の三官能成分、あるいは、トリメチロールプロパンやペンタエリスリトール等の二量体、ソルビトール等の糖類等の三官能を越える成分が挙げられ、これらの中でも、ハンドリング性の点で、トリメチロールプロパン、グリセリンが好ましく、トリメチロールプロパンがより好ましい。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記のような水酸基含有多官能成分を適量併用することにより、耐溶剤性の向上、具体的には、溶剤によるウレタンエラストマーの膨潤を防ぐことができる。
【0028】
前記水酸基含有ニ官能成分の組成比は、エチレングリコール(EG)/1,3−プロパンジオール(1,3PG)=10/90〜90/10モル比であり、且つ、水酸基含有ニ官能成分/水酸基含有多官能成分=90/10〜99/1モル比であることが好ましく、EG/1,3PG=30/70〜70/30モル比であり、且つ、水酸基含有ニ官能成分/水酸基含有多官能成分=93/7〜97/3モル比がより好ましい。
【0029】
前記水酸基含有ニ官能成分の組成比において、EG/1,3PGモル比が10/90モル比よりも小さい場合は、1,3PGに対してEGが不足するため、低極性溶剤に対する耐久性に劣り、好ましくない。また、EG/1,3PGモル比が90/10モル比よりも大きい場合は、EGが過剰過ぎるため、ポリエステルポリオールの粘度が高くなり過ぎて、ハンドリング性に劣り、好ましくない。
【0030】
また、水酸基含有ニ官能成分/水酸基含有多官能成分モル比が、99/1モル比よりも大きい場合は、水酸基含有ニ官能成分に対して水酸基含有多官能成分が不足するため、架橋密度が低くなり、耐溶剤性が低下し、好ましくない。また、水酸基含有ニ官能成分/水酸基含有多官能成分モル比が、90/10モル比よりも小さい場合は、水酸基含有ニ官能成分に対して水酸基含有多官能成分が過剰過ぎるため、架橋密度が高くなり、ポリエステルポリオールの粘度が高くなり過ぎて、ハンドリング性に劣り、ゲル化の恐れもあり、好ましくない。
【0031】
また、本発明で用いるポリエステルポリオール(B)は、カルボキシル基含有成分としてコハク酸を必須成分とするものである。
【0032】
本発明では、前記カルボキシル基含有成分の全てがコハク酸であってもよいが、カルボキシル基含有成分の一部としてコハク酸と共に、コハク酸以外のカルボキシル基含有成分を用いてもよい。
【0033】
前記コハク酸以外のカルボキシル基含有成分としては、特に限定はしないが、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸などの脂肪族多塩基酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式多塩基酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族多塩基酸等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0034】
本発明の印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物は、ポリエステルポリオール(B)を必須にしてなるが、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどのポリエステルポリオール以外のポリオールを、本発明の目的を阻害しない範囲で用いることができる。
【0035】
前記ポリエステルポリオール(B)の数平均分子量(以下、「Mn」ともいう。)は、1000〜3000の範囲が好ましく、1500〜2500の範囲がより好ましい。前記ポリエステルポリオール(B)のMnが、1000未満である場合には、弾性不足となる傾向があり好ましい。また、前記(B)のMnが、3000を超える場合には、ハンドリング性が低下する傾向があり好ましくない。
【0036】
本発明の印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物において、ポリイソシアネート(A)の有するイソシアネート基のモル数を[NCO]、ポリエステルポリオール(B)の有する水酸基のモル数を[OH]〕と表した場合に、前記ポリイソシアネート(A)とポリエステルポリオール(B)との当量比([NCO]/[OH])は、好ましくは0.90〜1.10の範囲であり、より好ましくは1.00〜1.05の範囲である。前記(A)と(B)との当量比([NCO]/[OH])がかかる範囲であれば、印刷ロールに適した表面硬度と弾性を得ることができる。
【0037】
本発明の印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、通常のエラストマー組成物(ポリウレタン原料)に使用されている各種公知の添加剤を任意成分として含有することができる。
【0038】
かかる任意成分としては、特に限定しないが、例えば、触媒、可塑剤、酸化防止剤、脱泡剤、消泡剤、紫外線吸収剤、反応調節剤、補強剤、充填剤、着色剤(染料または顔料)、離型剤、安定剤、光安定剤、電気絶縁性向上剤、防かび剤、有機酸の金属塩、ワックス(アミド系他)、金属酸化物、金属水酸化物などの増量剤などを挙げることができる。
【0039】
本発明の印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物の調整法は、特に限定しないが、一例を挙げるならば、ポリイソシアネート(A)と、ポリエステルポリオール(B)を必須成分とするポリオールと、各種添加剤などを攪拌混合し、必要に応じて真空脱泡処理することにより調製することができる。
【0040】
本発明の印刷ロールは、本発明の印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物を成形型内で硬化処理して成形されるウレタンエラストマーの成形物である。
【0041】
本発明でいう「印刷ロール」としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷など、各種印刷に使用可能な種々のロール(インキ呼出し、インキ練り、インキ着け等など)を挙げることができる。
【0042】
本発明の印刷ロールを構成するウレタンエラストマーは、従来公知の成形方法で成形できるが、例えば、以下に示す工程(1)〜(3)により成形される。
【0043】
工程(1):ポリイソシアネート(A)、ポリエステルポリオール(B)、その他任意成分である添加剤などを手動又は混合機にて攪拌混合、次いで真空脱泡することにより本発明のウレタンエラストマー組成物を得る。
工程(2):前記ウレタンエラストマー組成物を予め予熱した型内に注入し、特定の温度条件にて硬化処理を行い、ポリイソシアネート(A)と、ポリエステルポリオール(B)とを反応させる。
工程(3):硬化処理後の成形物を成形型から取り出し、目的の印刷ロールを得ることができる。
【0044】
混合方法としては、手動混合、機械混合等、特に限定するものではなく、各種公知の方法を採用することができる。
【0045】
硬化処理の養生条件(温度、時間など)は、特に限定はしないが、60〜150℃で1〜24時間が好ましく、80〜120℃で2〜16時間がより好ましい。
【0046】
使用する成形型は、予熱されていることが好ましく、予熱温度としては、特に限定しないが、60〜150℃が好ましい。
【0047】
尚、このウレタンエラストマーが芯金を被覆するエラストマー層である場合、当該芯金を成形型に組み込むこと以外は前述の成形方法と同様の操作で、目的の印刷ロールが得られる。成形済みのウレタンエラストマーを芯金に装着して印刷ロールを構成しても本発明の効果を損なうことはない。
【0048】
本発明の印刷ロールを構成するウレタンエラストマーは、耐溶剤性と耐水性に共に優れバランスのとれた性能を有しているので、溶剤系インキでも水系インキでも何れに用いても、硬度や質量の変化が極めて小さく、安定性に優れている。
【0049】
従って、本発明の印刷ロールによれば、溶剤系インキでも水性インクでも美麗な画像を長期にわたり安定的に印刷することができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例により、一層具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。尚、本発明で用いた測定方法及び評価方法は、以下の通りである。
【0051】
〔ポリエステルポリオール(B)の溶融粘度の測定方法〕
各ポリエステルポリオール(B)の75℃の加熱溶融状態での溶融粘度(mPa・s)を下記条件にて測定した。
測定機器:デジタルコーンビスコメーター(M・S・Tエンジニアリング株式会社製)
コーン直径:24.0mm
角度 :0.5°
【0052】
〔ポリエステルポリオール(B)の融点の測定方法〕
各ポリエステルポリオール(B)約10mgを測定容器中に秤量し、示差走査熱量測定装置(型式:DSC 220C、セイコー電子工業株式会社製)(以下「DSC」と省略する。)を用いて、窒素ガス流量50ml/分、加熱速度10℃/分で20℃から210℃まで昇温し、次いで、210℃で3分間ホールドさせた後、冷却速度50℃/分で−100℃まで降温し、再度、2次昇温を200℃まで行うことにより、チャート上に描かれたDSC曲線から融点(℃)を求めた。
【0053】
〔成形方法〕
ポリイソシアネート(A)であるハイプロックス1225(商標、DIC株式会社製、クルードMDI)と各ポリエステルポリオール(B)を[NCO]/[OH]=1.00当量比の配合比率で配合し攪拌混合し、2mm厚のシート状金型、及び、直径4.0cm×厚み1.2cmの円柱金型に注入し、120℃乾燥機で2時間、一次硬化させ、更に110℃乾燥機で16時間、二次硬化させ、目的のウレタンエラストマーの成形物を成形する。
【0054】
〔JIS−A硬度の測定方法〕
上記の如く作成した円柱を試験体として、日本工業規格 JIS−K−6253に規定するデューロメータ硬さ試験に準じて、JIS−A硬度を測定する。
【0055】
〔耐水性試験〕
(1)耐水性試験方法
上記の如く作成した2mm厚のシートを5.0cm×2.5cmに打ち抜き、その試験体をイオン交換水中40℃で3日間浸漬後の質量変化率を下式にて測定する。
(2)質量変化率の計算方法
質量変化率(%)=W/W×100
式中、WとWは下記を意味する。
:浸漬前のシートの質量
:イオン交換水中40℃で3日間浸漬後のシートの質量
(3)耐水性試験結果の評価
耐水性試験結果の評価は、以下の基準に従い行った。
耐水性試験の評価
◎:102.5%未満、耐水性に優れる。
○:102.5%以上103.0%未満、耐水性が良好である。
△:103.0%以上103.5%未満、やや耐水性に劣る。
×:103.5%以上、、耐水性に極めて劣る。
【0056】
〔耐湿熱性試験〕
(1)耐湿熱性試験方法
上記の硬度測定に使用した試験体を75℃で相対湿度95%の雰囲気下に設定した恒温恒湿槽中に放置し、3日後の硬度を測定して硬度変化率(%)を下式にて算出し、耐湿熱性を評価する。
(2)硬度変化率の計算方法
3日後の硬度変化率(%)=H/H×100
式中、HとHは下記を意味する。
:試験前の円柱のJIS−A硬度
:75℃95%雰囲気下で3日間養生した後の円柱のJIS−A硬度
(3)耐湿熱性試験結果の評価
耐湿熱性試験結果の評価は、以下の基準に従い行った。
耐湿熱性試験の評価
◎:90%以上、耐湿熱性に優れる。
○:85%以上90%未満、耐湿熱性が良好である。
△:80%以上85%未満、耐湿熱性にやや劣る。
×:80%未満、耐湿熱性に極めて劣る。
【0057】
〔耐溶剤性試験〕
(1)耐溶剤性試験方法
上記の硬度測定に使用した試験体を夫々、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、ブチルセロソルブの中に25℃3日間浸漬後、硬度変化率(%)を下式に従い算出し、耐溶剤性を評価する。
(2)硬度変化率の計算方法
3日後の硬度変化率(%)=h/h×100
式中、hとhは下記を意味する。
:試験前の円柱のJIS−A硬度
:各溶剤に25℃3日間浸漬した後の円柱のJIS−A硬度
(3)耐溶剤性試験結果の評価
耐溶剤性試験結果の評価は、以下の基準に従い行った。
耐溶剤性試験の評価
◎:95%以上、耐溶剤性に優れる。
○:90%以上95%未満、耐溶剤性が良好である。
△:85%以上90%未満、耐溶剤性にやや劣る。
×:〜85%未満、耐溶剤性に極めて劣る。
【0058】
〔ポリエステルポリオール(B1)〜(B9)の合成(合成例1〜9)〕
【0059】
〔合成例1〕
2リットル4つ口フラスコに、1,3プロパンジオール(以下「1,3PD」と略す。)713部、エチレングリコール(以下「EG」と略す。)65部、トリメチロールプロパン(以下「TMP」と略す。)58部、コハク酸(以下「SucA」と略す。)1175部、テトラブチルチタネート0.06部仕込み、窒素導入管より窒素気流下、220℃で24時間反応させた。反応後、得られたポリエステルポリオール(B1)は、常温で白色固体であり、酸価が0.45、水酸基価が59.6であった。
【0060】
〔合成例2〕
2リットル4つ口フラスコに、1,3PD 565部、EG 197部、TMP 58部、SucA 1197部、テトラブチルチタネート0.06部仕込み、窒素導入管より窒素気流下、220℃で24時間反応させた。反応後、得られたポリエステルポリオール(B2)は、常温で白色固体であり、酸価が0.37、水酸基価が59.5であった。
【0061】
〔合成例3〕
2リットル4つ口フラスコに、1,3PD 411部、EG 335部、TMP 59部、SucA 1219部、テトラブチルチタネート0.06部仕込み、窒素導入管より窒素気流下、220℃で24時間反応させた。反応後、得られたポリエステルポリオール(B3)は、常温で白色固体であり、酸価が0.40、水酸基価が59.9であった。
【0062】
〔合成例4〕
2リットル4つ口フラスコに、1,3PD 251部、EG 477部、TMP 59部、SucA 1243部、テトラブチルチタネート0.06部仕込み、窒素導入管より窒素気流下、220℃で24時間反応させた。反応後、得られたポリエステルポリオール(B4)は、常温で白色固体であり、酸価が0.35、水酸基価が60.3であった。
【0063】
〔合成例5〕
2リットル4つ口フラスコに、1,3PD 85部、EG 625部、TMP 61部、SucA 1266部、テトラブチルチタネート0.06部仕込み、窒素導入管より窒素気流下、220℃で24時間反応させた。反応後、得られたポリエステルポリオール(B5)は、常温で白色固体であり、酸価が0.32、水酸基価が59.1であった。
【0064】
〔合成例6〕
2リットル4つ口フラスコに、ジエチレングリコール(以下「DEG」と略す。) 613部、EG 239部、TMP 52部、SucA 1079部、テトラブチルチタネート0.06部仕込み、窒素導入管より窒素気流下、220℃で24時間反応させた。反応後、得られたポリエステルポリオール(B6)は、淡黄色粘稠液体であり、酸価が0.41、水酸基価が60.2であった。
【0065】
〔合成例7〕
2リットル4つ口フラスコに、DEG 577部、1,4−ブチレングリコール(以下「1,4BG」と略す。) 327部、TMP 49部、SucA 1011、テトラブチルチタネート0.06部仕込み、窒素導入管より窒素気流下、220℃で24時間反応させた。反応後、得られたポリエステルポリオール(B7)は、淡黄色粘稠液体であり、酸価が0.41、水酸基価が60.7であった。
【0066】
〔合成例8〕
2リットル4つ口フラスコに、DEG 560部、1,5ペンタンジオール(以下「1,5PD」と略す。) 366部、TMP 49部、SucA 979部、テトラブチルチタネート0.06部仕込み、窒素導入管より窒素気流下、220℃で24時間反応させた。反応後、得られたポリエステルポリオール(B8)は、淡黄色粘稠液体であり、酸価が0.41、水酸基価が60.2であった。
【0067】
〔合成例9〕
2リットル4つ口フラスコに、1,3PD 369部、EG 301部、TMP 53部、アジピン酸(以下「AA」と略す。) 1339部、テトラブチルチタネート0.06部仕込み、窒素導入管より窒素気流下、220℃で24時間反応させた。反応後、得られたポリエステルポリオール(B9)は、常温で白色固体であり、酸価が0.30、水酸基価が59.0であった。
【0068】
〔実施例1〜5〕及び〔比較例1〜4〕
<ワンショット法による成形>
実施例1〜5及び比較例1〜4として、夫々、ポリイソシアネート(A)としてハイプロックス1225(クルードMDI、DIC株式会社製)、及び合成例1〜9で得られたポリエステルポリオール(B1)〜(B9)とを、[NCO]/[OH]=1.00当量比の配合比率で混合攪拌し、印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物を混合液として調整した。前記印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物を2mm厚のシート状金型、及び、直径4.0cm×厚み1.2cmの円柱金型に注入した。
それら金型を熱風乾燥機中、120℃で2時間加熱して、一次硬化させ、更に、110℃で16時間、二次硬化させて、印刷ロール用熱硬化性ポリウレタン成形物を作製した。この成形物を以下の試験に供する。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
表1及び表2記載の略号は、下記を意味する。
EG ;エチレングリコール
SucA ;コハク酸
1,3PD ;1,3−プロパンジオール
1,4BG ;1,4−ブタンジオール
DEG ;ジエチレングリコール
1,5PD ;1,5−ペンタンジオール
TMP ;トリメチロールプロパン
MEK ;メチルエチルケトン
AA ;アジピン酸
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物は、耐溶剤性と耐水性に共に優れているので、該印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物を用いて成形してなる本発明の印刷ロールは、溶剤系インキのみならず、水性インキを用いた印刷にも適しており、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷など、各種印刷に用いられる印刷ロールに極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート(A)とポリエステルポリオール(B)とを用いて得られるウレタンエラストマー組成物であって、前記ポリエステルポリオール(B)が、水酸基含有ニ官能成分として1,3−プロパンジオールを必須とし、カルボキシル基含有成分としてコハク酸を必須としてなることを特徴とする印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物。
【請求項2】
前記水酸基含有ニ官能成分が、1,3−プロパンジオール及びエチレングルコールである請求項1記載の印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物。
【請求項3】
前記ポリエステルポリオール(B)において、水酸基含有ニ官能成分の組成が、エチレングリコール/1,3−プロパンジオール=10/90〜90/10モル比であり、且つ、水酸基含有ニ官能成分/水酸基含有多官能成分=90/10〜99/1モル比である請求項1又は2記載の印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物。
【請求項4】
前記ポリエステルポリオール(B)において、水酸基含有多官能成分としてトリメチロールプロパンを用いてなる請求項3記載の印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物を成形してなることを特徴とする印刷ロール。

【公開番号】特開2010−234530(P2010−234530A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81881(P2009−81881)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】