説明

印刷制御プログラム、印刷制御装置及び印刷システム

【課題】試し印刷と通常印刷とを同一の印刷装置に振り分けて処理させることができる印刷制御プログラム、印刷制御装置及び印刷システムを提供することを課題とする。
【解決手段】コンピュータを、同一の入稿データ21から生成した通常印刷の印刷データ及び試し印刷の印刷データが同一の印刷装置30で印刷されるように、通常印刷条件を設定した通常印刷の印刷データ及び試し印刷条件を設定した試し印刷の印刷データを生成する印刷データ生成手段11−15、通常印刷の印刷データ及び試し印刷の印刷データを受信し、通常印刷条件及び試し印刷条件に従い、通常印刷の印刷データ及び試し印刷の印刷データを同一の印刷装置30に印刷させる印刷データ管理手段16として機能させる印刷制御プログラムにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷制御プログラム、印刷制御装置及び印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷制御プログラムや印刷装置は試し印刷やサンプル印刷と呼ばれる機能(以下では単に試し印刷機能と呼ぶ)を実装していることが多い。試し印刷機能は、例えば特殊紙を使用せずに普通紙を使って印刷する、複数部数印刷時に先に一部のみ印刷する、などの機能を指す場合が多い(例えば特許文献1、2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、印刷装置は様々な後処理機能をサポートするようになり、例えば給紙から製本まで行えるものも登場している。また、商業印刷業界にはPOD(Print On Demand )と呼ばれる、比較的小ロットの印刷物を短納期で顧客に納品するといったPOD業務が出現している。POD業務では複数の顧客からの受注が同時に発生することが多い。
【0004】
また、POD業務では、例えば一台の印刷制御装置と複数の印刷装置とを含む印刷システムが利用される。このような印刷システムに含まれる印刷装置は、給紙トレイの用紙サイズ、モノクロ/カラー印刷、後処理機能(例えばステープルやパンチ)などの能力が異なっている。
【0005】
例えばPOD業務ではコストを抑えるため、特殊紙を使用せずに普通紙を使った印刷物を一部印刷する試し印刷が利用される。ところで、印刷の失敗を防止するために行うという性格上、試し印刷は通常印刷と同一の印刷装置で処理することが望ましい。
【0006】
一台の印刷制御装置と複数の印刷装置とを含む印刷システムでは複数の顧客からの受注が同時に発生している場合、複数の試し印刷及び通常印刷の要求を、印刷装置に要求する能力に基づき、印刷制御装置が印刷装置に振り分けていた。
【0007】
しかしながら、試し印刷と通常印刷とは印刷装置に要求する能力が異なっている。したがって、印刷制御装置は試し印刷と通常印刷とを異なる印刷装置に振り分けて処理させてしまう可能性があり、問題であった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、試し印刷と通常印刷とを同一の印刷装置に振り分けて処理させることができる印刷制御プログラム、印刷制御装置及び印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明は、コンピュータを、同一の入稿データから生成した通常印刷の印刷データ及び試し印刷の印刷データが同一の印刷装置で印刷されるように、通常印刷条件を設定した前記通常印刷の印刷データ及び試し印刷条件を設定した前記試し印刷の印刷データを生成する印刷データ生成手段、前記通常印刷の印刷データ及び前記試し印刷の印刷データを受信し、前記通常印刷条件及び前記試し印刷条件に従い、前記通常印刷の印刷データ及び前記試し印刷の印刷データを同一の印刷装置に印刷させる印刷データ管理手段として機能させる印刷制御プログラムであることを特徴とする。
【0010】
なお、本発明の構成要素、表現または構成要素の任意の組合せを、方法、装置、システム、コンピュータプログラム、記録媒体、データ構造などに適用したものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、試し印刷と通常印刷とを同一の印刷装置に振り分けて処理させることができる印刷制御プログラム、印刷制御装置及び印刷システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】POD業務全体の流れを示す一例の説明図である。
【図2】本実施例の印刷システムの一例の構成図である。
【図3】PCの一例のハードウェア構成図である。
【図4】本実施例の印刷システムの他の例の一例の説明図である。
【図5】印刷データ管理部による印刷キューの管理の一例の概要図である。
【図6】通常印刷の印刷データによる試し印刷の印刷データの不当な追い越しを防止する処理手順の一例を表したフローチャートである。
【図7】印刷キューの状態遷移を表した一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を、以下の実施例に基づき図面を参照しつつ説明していく。
【0014】
(POD業務全体の流れ)
図1はPOD業務全体の流れを示す一例の説明図である。図1において、顧客1は最終的な印刷成果物を得る者である。顧客1は、印刷業者の印刷システム2に対して印刷原稿を入稿する。印刷原稿の入稿方法には、インターネット等のネットワークを利用した電子入稿や、フレキシブルディスク(FD)又は光磁気ディスク(MO)などの記録媒体を利用した電子入稿、紙媒体による紙入稿、など様々な形態がある。
【0015】
印刷業者は印刷原稿の入稿データ3に対して、印刷前工程処理4を実施する。印刷前工程処理4は例えば電子入稿の場合、入稿データ3が正しく印刷できるデータかどうかの検査等である。また、印刷前工程処理4は例えば紙入稿の場合、スキャンデータの画像補正やページ番号や章番号の追加作業等である。
【0016】
さらに、印刷前工程処理4は構成編集、印刷用紙の選択などの印刷設定や面付け設定などである。このように、印刷前工程処理4では様々な工程が必要である。印刷前工程処理4の妥当性の確認は、印刷業者が頻繁に試し印刷を行う要因の一つである。
【0017】
また、POD業務では顧客1によるサンプル確認が行われることもある。サンプル確認とは、印刷成果物と同じものを先に1部もしくは数部だけ印刷して、顧客1による確認を行うものである。POD業務では印刷部数が多い場合、印刷前工程処理4のミスで再印刷が必要になってしまうと、印刷業者にとって多額の損害が出る場合もある。
【0018】
このため、POD業務ではサンプル確認によって顧客の了承を得てから印刷するという工程がよく行われる。サンプル確認のための印刷成果物を得るためにも、試し印刷機能は重要となる。サンプル確認を行うか否かは普通、顧客1との契約によって決まる。
【0019】
印刷工程処理5は通常印刷又は試し印刷の印刷指示によって、印刷装置7に印刷処理を実行させる。また、POD業務では、顧客から再印刷を請け負う場合もある。再印刷の際には、入稿データ3から再度、印刷前工程処理4を実施する方法もある。
【0020】
しかし、普通は印刷前工程処理4の結果も含めて保存データ6として保存しておくのが一般的である。保存データ6を保存しておいた場合、印刷業者は顧客から再印刷の指示だけ貰えればよく、サンプル確認なども不要な場合が多い。保存データ6を保存しておいた場合、印刷業者が行う試し印刷は保存データ6の取り違えを防止できればよく、サンプル確認のための試し印刷と内容が大きく異なる。
【0021】
(印刷システムの全体構成)
図2は本実施例の印刷システムの一例の構成図である。図2の印刷システム9は印刷制御装置10と印刷装置30とがLAN(Local Area Network)などのネットワークを介して接続される。なお、印刷システム9はステープル装置や断裁機などの後処理装置を含んでいてもよい。印刷制御装置10は、通常印刷条件情報設定部11、通常印刷実行処理部12、試し印刷条件情報設定部13、試し印刷条件情報保持部14、試し印刷実行処理部15、印刷データ管理部16、試し印刷条件関連付け部17、印刷装置情報保持部19を有する。また、印刷データ管理部16は印刷キュー20を有する。試し印刷条件関連付け部17は関連付け自動化部18を有する。
【0022】
例えば図2の通常印刷条件情報設定部11及び試し印刷条件情報設定部13が行う処理は図1の印刷前工程処理に相当する。図2の通常印刷実行処理部12及び試し印刷条件情報保持部14が行う処理は図1の印刷工程処理5に相当する。
【0023】
印刷データ管理部16は、それぞれの印刷装置30から給紙トレイの用紙サイズ、モノクロ/カラー印刷やステープルやパンチなどの後処理機能などの能力情報を取得し、印刷装置情報24として印刷装置30ごとに印刷装置情報保持部19に保持させる。
【0024】
通常印刷条件情報設定部11は、印刷装置情報24を参照して通常印刷条件情報22を設定する。通常印刷時、通常印刷実行処理部12は入稿データ21及び通常印刷条件情報22を受信し、操作者31の通常印刷操作に従い、入稿データ21及び通常印刷条件情報22から生成した印刷データ(後述する印刷データA2)を印刷データ管理部16に送信する。
【0025】
試し印刷条件情報設定部13は、印刷装置情報24を参照して試し印刷条件情報23を設定する。試し印刷条件情報保持部14は試し印刷条件情報23を保持する。また、試し印刷時、試し印刷実行処理部15は操作者31の試し印刷操作に従い、入稿データ21及び試し印刷条件情報23を受信し、入稿データ21及び試し印刷条件情報23から生成した印刷データ(後述する印刷データA1)を印刷データ管理部16に送信する。
【0026】
言い換えれば、通常印刷実行処理部12は通常印刷条件情報22に従った印刷制御を印刷データ管理部16経由で印刷装置30に対して行う。また、試し印刷実行処理部15は試し印刷条件情報23に従った印刷制御を印刷データ管理部16経由で印刷装置30に対して行う。
【0027】
なお、同一の入稿データ21に対応する通常印刷条件情報22と試し印刷条件情報23とで設定される印刷装置30は同一とする。通常印刷条件情報22及び試し印刷条件情報23に含まれる印刷装置30などの各情報は操作者31の要求により変更できる。
【0028】
印刷制御装置10は操作者31が試し印刷操作を行った場合、通常印刷条件情報22でなく試し印刷条件情報23を印刷条件として取得し、この印刷条件に従った印刷制御を印刷装置30に対して行う。このように、印刷制御装置10は通常印刷と異なる印刷条件での試し印刷を、容易に行うことが出来る。
【0029】
また、試し印刷条件関連付け部17は入稿データ21と試し印刷条件情報23とを関連付ける。試し印刷実行処理部15は、入稿データ21に関連付けられた試し印刷条件情報23を容易に取得できる。試し印刷実行処理部15は入稿データ21に関連付けられた試し印刷条件情報23に従った印刷制御を印刷データ管理部16経由で印刷装置30に対して行う。したがって、操作者31は単に入稿データ21の試し印刷操作を行うことで試し印刷条件情報23に対応した試し印刷の結果(印刷成果物)を得ることが出来る。
【0030】
また、試し印刷条件関連付け部17は関連付け自動化部18を有する。関連付け自動化部18は入稿データ21と試し印刷条件情報23との関連付けを自動的に行う。このように印刷制御装置10は入稿データ21が入稿された時点で、自動的に試し印刷条件情報23との関連付けが行われるため、操作者31が試し印刷条件情報23の設定を間違えるなどの操作ミスも、減らすことが出来る。
【0031】
印刷データ管理部16は通常印刷実行処理部12又は試し印刷実行処理部15から印刷データを受信する。印刷データ管理部16は通常印刷実行処理部12から通常印刷の印刷データを受信する。また、印刷データ管理部16は試し印刷実行処理部15から試し印刷の印刷データを受信する。印刷データ管理部16は受信した印刷データの印刷装置30への出力順を管理する。なお、印刷データ管理部16による印刷データの出力順の管理の詳細は後述する。
【0032】
印刷データ管理部16は同じ入稿データ21に対して試し印刷と通常印刷とを行った場合に、印刷キュー20による印刷データの出力順を管理することで、同じ入稿データ21の通常印刷が試し印刷を追い越して印刷しないことを保証する。なお、同じ入稿データ21の通常印刷及び試し印刷の印刷データは、例えば印刷データ名などを利用することで識別できる。
【0033】
(印刷制御装置のハードウェア構成)
図2の印刷制御装置10は例えば図3に示すようなハードウェア構成のPCにより実現される。図3はPCの一例のハードウェア構成図である。PC40はバス49で相互に接続されている入力装置41、出力装置42、記録媒体読取装置43、補助記憶装置44、主記憶装置45、演算処理装置46及びインタフェース装置47を含む。
【0034】
入力装置41はキーボードやマウス等である。入力装置41は各種信号を入力するために用いられる。出力装置42はディスプレイ装置等である。出力装置42は各種ウインドウやデータ等を表示するために用いられる。インタフェース装置47は、モデム,LANカード等である。インタフェース装置47はインターネットやLANなどのネットワークに接続するために用いられる。
【0035】
印刷制御装置10に搭載される印刷制御プログラムは、PC40を制御する各種プログラムの少なくとも一部である。印刷制御プログラムは例えば記録媒体48の配布やネットワーク等からのダウンロードなどによって提供される。
【0036】
記録媒体48はCD−ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等の様に情報を光学的,電気的或いは磁気的に記録する記録媒体、ROM、フラッシュメモリ等の様に情報を電気的に記録する半導体メモリ等、様々なタイプの記録媒体を用いることができる。
【0037】
印刷制御プログラムを記録した記録媒体48が記録媒体読取装置43にセットされることにより、印刷制御プログラムは記録媒体48から記録媒体読取装置43を介して補助記憶装置44にインストールされる。ネットワーク等からダウンロードされた印刷制御プログラムはインタフェース装置47を介して補助記憶装置44にインストールされる。
【0038】
補助記憶装置44は印刷制御プログラム、必要なファイル、データ等を格納する。主記憶装置45は印刷制御プログラムの起動時に、補助記憶装置44から印刷制御プログラムを読み出して格納する。そして、演算処理装置46は主記憶装置45に格納された印刷制御プログラムに従って、各種処理を実現している。
【0039】
(印刷システムの他の例)
図4は本実施例の印刷システムの他の例の一例の説明図である。印刷前工程処理4では入稿データ21に対して通常印刷条件及び試し印刷条件を設定する。なお、印刷前工程処理4の具体的な実装は、本実施例で問わない。印刷前工程処理4はアプリケーションプログラムとしてPC40上で動作してもよいし、印刷装置30内の機能として搭載されていてもよい。また、印刷前工程処理4はPOD業務用の印刷装置30によく用いられるデジタルフロントエンド(以下ではDFEと呼ぶ)サーバと呼ばれるコンピュータ上で動作されてもよい。
【0040】
入稿データ21のファイル形式は、電子入稿の場合、例えばPDFデータなどが一般的である。しかし、本実施例では特にファイル形式について問題にしない。入稿データ21のファイル形式は例えばWord(登録商標)などのワープロソフトやExcel(登録商標)などの表計算ソフトなど、一般的なアプリケーションプログラムのデータであってもよい。また、紙入稿の場合、入稿データ21のファイル形式はスキャナで読み取った画像データであってもよい。
【0041】
印刷前工程処理4では入稿データ21に対して、通常印刷条件及び試し印刷条件を設定する。なお、通常印刷条件及び試し印刷条件の設定は、給紙トレイの用紙サイズ、モノクロ/カラー印刷やステープルやパンチなどの後処理機能などの印刷装置30の能力を示す印刷装置情報24を参照して行われる。
【0042】
設定された通常印刷条件及び試し印刷条件は、印刷データ51(印刷データA)として入稿データと共に印刷工程処理5に送られる。印刷工程処理5では操作者31からの印刷指示によって、印刷データAを印刷装置30が解釈可能な印刷データ52(印刷データA2)又は印刷データ53(印刷データA1)に変換した後、印刷データ管理部16に送信する。
【0043】
印刷工程処理5の具体的な実装も印刷前工程処理4と同様、本実施例で問わない。印刷工程処理5はアプリケーションプログラムとしてPC40上で動作してもよいし、印刷装置30内やDFEサーバ上の機能として搭載されていてもよい。
【0044】
印刷工程処理5では、通常印刷操作又は試し印刷操作の何れかの操作を操作者31から指示される。印刷工程処理5では、試し印刷操作を指示された場合、印刷データAを印刷データA1に変換した後、印刷データ管理部16に送信する。通常印刷操作を指示された場合、印刷工程処理5では印刷データAを印刷データA2に変換した後、印刷データ管理部16に送信する。
【0045】
なお、試し印刷条件としては、例えば特殊紙の使用有無、給紙トレイの設定、印刷装置30の設定および印刷装置30の後処理機能の設定などが考えられる。その他、試し印刷条件は入稿データ21と関連付けられるものであれば、どのような設定も含めることができることは自明である。本実施例は、試し印刷条件が、印刷装置30や使用する用紙媒体によって変更されるものではなく、入稿データ21あるいは入稿した顧客などによって設定を変える必要がある場合に、より効果を発揮する。
【0046】
POD業務では、試し印刷として「特殊紙を全て使って最終成果物と同じ体裁の印刷物を1部得たい」「特殊紙は使わずにコストを抑えたい」などの要求が生じている。この要求は印刷装置30や使用する用紙媒体によって異なるのでなく、普通、印刷システム9Aに入稿された入稿データ21毎に異なる。
【0047】
例えば顧客から繰り返し発注され、既に何度も印刷している再印刷の入稿データ21は印刷条件の内容に間違いがある可能性は低く、特殊紙を全て使って印刷したとしても無駄になる可能性が低い。一方、新規に入稿された入稿データ21は印刷条件の内容に間違いがある可能性が高く、何度も印刷し直す可能性が残っているため、コストの高い特殊紙を使って印刷すると無駄になる可能性が高い。
【0048】
このように、試し印刷条件は入稿データ21が新規又は再印刷のどちらであるか、顧客との契約によってサンプル確認が必要か否か、などで内容が変更される。操作者31は特に試し印刷条件の内容を気にする必要がなく、印刷工程処理5に対して試し印刷操作(試し印刷の印刷指示)を行えばよい。
【0049】
図4の印刷システム9Aでは、入稿データ21と通常印刷条件及び試し印刷条件との関連付けを、入稿データ21と通常印刷条件及び試し印刷条件とを印刷データAという一纏まりで取り扱うことで実現している。
【0050】
印刷データAの具体的なファイル形式は様々考えられるが、例えばZIPやLHAなどの圧縮・アーカイブ形式で1ファイルにする方法でもよいし、HTMLやXMLなどの形式で、関連付けをリンクで表現してもよい。
【0051】
また、図4の印刷システム9Aでは、一般にJDFなどのジョブ定義フォーマットを用いることで、入稿データ21に対する通常印刷条件を定義することは可能である。JDFはXMLのフォーマットを踏襲しており、個別定義の拡張を許している。そこで、試し印刷条件はJDFを内部的に拡張し、追加しても良い。
【0052】
入稿データ21と通常印刷条件及び試し印刷条件とを一纏まりにした印刷データAを保存データ6として保存しておけば、印刷データAは再印刷時にも利用できる。また、通常印刷条件及び試し印刷条件を印刷条件テンプレート55として事前に用意しておけば、図4の印刷システム9Aでは印刷前工程処理4で通常印刷条件及び試し印刷条件を容易に設定できる。
【0053】
印刷データA1及びA2の具体的な形式は、実際に印刷する印刷装置30の仕様に依存するので、本実施例で問わない。一般的に、印刷データA1及びA2の入稿データ部分は印刷装置30のPDL(ページ記述言語)に変換される。また、印刷データA1及びA2の試し印刷条件又は通常印刷条件(印刷設定部分)は、PJLなどのジョブ記述言語に変換される。
【0054】
また、印刷装置30が例えばJDFをサポートしているのであれば、印刷データA1及びA2の試し印刷条件又は通常印刷条件をJDFで記述しておけば、印刷工程処理5における変換処理は不要となる。また、印刷データA1及びA2は印刷データ管理部16で出力順(印刷順)などが管理される。また、印刷データAは印刷工程処理5に限らず、印刷データ管理部16で印刷データA1又はA2に変換しても良い。
【0055】
また、図4の印刷システム9Aでは、入稿データ21Aと通常印刷条件及び試し印刷条件とを自動的に関連付ける手段の一例として、既存のホットフォルダ(Hot Folder)54を使用している。
【0056】
ホットフォルダ54は、データの着信を監視するためのフォルダである。ホットフォルダ54では投入された入稿データ21Aを、どのように処理するかを定義できる。ホットフォルダ54に通常印刷条件及び試し印刷条件のための印刷条件テンプレート55との関連付けを一度定義すれば、操作者31は入稿データ21Aをホットフォルダ54に投入するだけで通常印刷条件及び試し印刷条件との関連付けを自動的に行うことができる。したがって、印刷システム9Aでは操作者31が通常印刷条件又は試し印刷条件の設定を間違えるなどの操作ミスを減らすことができる。
【0057】
また、ホットフォルダ54は複数用意して、それぞれのホットフォルダ54毎に設定を変えることもできる。例えばインターネット経由の電子入稿などの場合、入稿データ21Aの転送先のホットフォルダ54を業務毎、顧客毎に分けるなどの方法で、印刷システム9Aは業務毎、顧客毎に最適な試し印刷設定を自動で行うこともできる。ホットフォルダ54は例えば同様の着信監視をもった仕掛けに置き換えることもできる。
【0058】
(印刷データ管理部の処理手順)
図5は印刷データ管理部による印刷キューの管理の一例の概要図である。印刷データ管理部16は、印刷装置30単位に印刷キュー20を有する。印刷キュー20は印刷データに対応させて、例えばジョブID、印刷データ名、進捗、サイズ、種別などの情報を保持する。印刷キュー20は印刷装置30に対し、通常、印刷データを順次送信し、印刷装置30に印刷データを印刷させる。
【0059】
印刷装置30を有効利用するため、印刷キュー20は印刷装置30に搭載されている用紙サイズの印刷データを優先的に印刷装置30へ送信して印刷させることができる。図5の印刷装置情報24の例では、印刷装置30にA4又はA5の用紙サイズしか搭載されていない。
【0060】
印刷データ名「データA1」の印刷データ101は、使用する用紙サイズがA3であるために、用紙交換を行わなければ印刷されない。また、印刷データ名「データB」の印刷データ102は使用する用紙サイズがA5であるために、印刷される。また、印刷データ名「データA2」の印刷データ103は使用する用紙サイズがA4であるために、印刷される。
【0061】
つまり、図5の印刷キュー20の例では、印刷データ名「データB」の印刷データ102が印刷された後、印刷データ名「データA2」の印刷データ103が印刷される。印刷データ名「データA1」の印刷データ101は印刷装置30にA3の用紙サイズを搭載する用紙交換を行ったあと、印刷される。
【0062】
ところで、試し印刷は必ず通常印刷よりも先に印刷されなければ、試し印刷を行う意味がなくなる。印刷データ名「データA1」の印刷データ101は印刷データ名「データA2」の印刷データ103の試し印刷であるため、通常印刷の印刷データ103の前に印刷されなければ試し印刷としての有効性が無くなってしまう。本実施例の印刷データ管理部16では、通常印刷の印刷データ103による試し印刷の印刷データ101の不当な追い越しを防止するための仕組みを設けている。
【0063】
図6は通常印刷の印刷データによる試し印刷の印刷データの不当な追い越しを防止する処理手順の一例を表したフローチャートである。
【0064】
なお、図6のフローチャートに記載されている入替元印刷データとは、印刷キュー20において入替先印刷データに後続する印刷データであり、入替先印刷データと印刷順を入れ替える対象となる印刷データである。また、入替先印刷データとは、印刷キュー20において入替元印刷データに先行する印刷データであり、入替元印刷データと印刷順を入れ替える対象となる印刷データである。
【0065】
例えば図5の印刷キュー20の場合、印刷データ名「データA1」の印刷データ101と印刷データ名「データB」の印刷データ102との関係は、印刷データ101が入替先印刷データとなり、印刷データ102が入替元印刷データとなる。
【0066】
ステップS1において、印刷データ管理部16は入替元印刷データの位置と入替先印刷データの位置とを設定する。例えば図5の印刷キュー20の場合、入替元印刷データの位置として印刷データ名「データB」の印刷データ102が設定され、入替先印刷データの位置として印刷データ名「データA1」の印刷データ101が設定される。
【0067】
ステップS2において、印刷データ管理部16は入替元印刷データが印刷条件を満たしているかを判断する。入替元印刷データが印刷条件を満たしていない場合は、入替元印刷データの印刷順を入替先印刷データと入れ替える必要がないため、ステップS10の処理に移行する。
【0068】
なお、図5の印刷キュー20の場合、印刷データ管理部16は入替元印刷データである印刷データ102が印刷条件を満たしていると判断する。入替元印刷データが印刷条件を満たしている場合、印刷データ管理部16はステップS3において、入替先元印刷データが印刷条件を満たしているかを判断する。
【0069】
入替先印刷データが印刷条件を満たしている場合は、入替元印刷データの印刷順を入替先印刷データと入れ替える必要がないため、ステップS10の処理に移行する。なお、図5の印刷キュー20の場合、印刷データ管理部16は入替先印刷データである印刷データ101が印刷条件を満たしていないと判断する。入替先印刷データが印刷条件を満たしていない場合、印刷データ管理部16はステップS4において入替元印刷データ及び入替先印刷データの印刷データ名を比較する。
【0070】
入替元印刷データ及び入替先印刷データの印刷データ名が同じでなければ、印刷データ管理部16はステップS7において入替元印刷データ及び入替先印刷データの印刷順を入れ替える。なお、図5の印刷キュー20の場合、印刷データ管理部16は印刷データ101及び102を入れ替える。
【0071】
入替元印刷データ及び入替先印刷データの印刷データ名が同じであるか否かの判断は同一の入稿データ21に対応する印刷データであるか否かの判断の一例である。なお、図5の印刷キュー20の場合、印刷データ名「データA1」と印刷データ名「データA2」とは数字部分を無視することで同一と判断できる。
【0072】
ステップS4において、入替元印刷データ及び入替先印刷データの印刷データ名が同じであれば、印刷データ管理部16はステップS5において、入替元印刷データの種別が試し印刷を表しているか判断する。印刷データ管理部16は、入替元印刷データの種別が試し印刷を表している場合、ステップS7において入替元印刷データ及び入替先印刷データの印刷順を入れ替える。また、印刷データ管理部16は入替元印刷データの種別が試し印刷を表していない場合、ステップS6において、入替先印刷データの種別が通常印刷を表しているか判断する。
【0073】
印刷データ管理部16は、入替先印刷データの種別が通常印刷を表している場合、入替元印刷データ及び入替先印刷データの種別がともに通常印刷であるため、ステップS7において入替元印刷データ及び入替先印刷データの印刷順を入れ替える。また、印刷データ管理部16は入替先印刷データの種別が通常印刷を表していない場合、同一の入稿データ21に対応する通常印刷の印刷データが試し印刷の印刷データを不当に追い越すことを防止するため、入替元印刷データ及び入替先印刷データの入れ替えを行わず、ステップS10の処理に移行する。
【0074】
ステップS7の処理後、印刷データ管理部16は入替先印刷データが先頭であるか否かを判断する。入替先印刷データが先頭であれば、印刷データ管理部16はステップS10の処理に移行する。
【0075】
入替先印刷データが先頭でなければ、印刷データ管理部16はステップS9において入替先印刷データの位置を更新し、ステップS2の処理に戻る。また、印刷データ管理部16はステップS10において、入替元印刷データが最後であるかを判定する。入替元印刷データが最後でなければ、印刷データ管理部16はステップS11において、入替先印刷データおよび入替元印刷データの位置を更新し、ステップS2の処理に戻る。
【0076】
なお、図5の印刷キュー20の場合、印刷データ管理部16は、入替元印刷データの位置を印刷データ名「データA2」の印刷データ103に更新し、入替先印刷データの位置を印刷データ名「データA1」の印刷データ101に更新する。
【0077】
図7は印刷キューの状態遷移を表した一例の説明図である。図7の印刷キュー200は図5の印刷キュー20と同様である。印刷データ名「データA1」の印刷データ201は図7の印刷装置情報24の場合、A3の用紙サイズが印刷装置30のトレイに搭載されている全ての用紙サイズA4、A5と一致せず、印刷を保留している状態である。
【0078】
そこで、印刷データ管理部16は印刷装置30のトレイに搭載されている用紙サイズA4、A5と用紙サイズが一致する後続の印刷データの印刷順を上げて印刷装置30に印刷させる。図6のフローチャートの処理を1回実行すると、印刷データ名「データB」の印刷データ202は印刷データ名「データA1」の印刷データ201と印刷データ名が一致しないため、印刷データ201と入れ替わり、印刷キュー210に示すように印刷順が先頭となる。そして、印刷データ202は印刷装置30で印刷されたあと、印刷キュー210から削除される。
【0079】
また、図6のフローチャートの処理の2回目の実行で、印刷データ名「データA2」の印刷データ203は入替先印刷データが印刷データ名「データA1」の印刷データ201であり、同一の印刷データ名であり、先に試し印刷を実行するため、印刷データ201との印刷順の入れ替えが発生せず、印刷データ201の後にそのまま位置付けられる。印刷装置情報24は、定期的に更新されるか、または、印刷装置30の能力に変更があった場合に更新されることが望ましい。
【0080】
(まとめ)
本実施例によれば、試し印刷の印刷データ53と通常印刷の印刷データ52とを同一の印刷装置30に振り分けて印刷できる。また、本実施例によれば、入稿データ21の通常印刷の印刷データ52と試し印刷の印刷データ53とが同時に印刷キュー20に登録された時に、通常印刷の印刷データ52よりも試し印刷の印刷データ53を先に印刷装置30で印刷させることを保証する印刷制御機能を提供できる。
【0081】
その他、本実施例によれば通常印刷条件とは別に試し印刷条件を設定できるので、顧客の欲求に合った試し印刷機能を提供できる。また、本実施例によれば入稿データ21に応じて自動的に試し印刷条件を切り替えることができるので、使い勝手の良い試し印刷機能を提供できる。また、本実施例によれば入稿データ21と試し印刷条件との関連付けを自動化することができるので、操作誤りの少ない試し印刷機能を提供できる。
【0082】
以上、本実施例によれば、印刷システム9に入稿された入稿データ21を試し印刷する試し印刷機能の使い勝手を向上できる。
【0083】
本発明は、具体的に開示された実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。なお、特許請求の範囲に記載した印刷データ生成手段の処理は印刷前工程処理4及び印刷工程処理5に相当する。印刷データ管理手段は印刷データ管理部16に相当する。印刷条件情報設定手段の処理は印刷前工程処理4に相当する。通常印刷実行処理手段は通常印刷実行処理部12に相当する。試し印刷実行処理手段は試し印刷実行処理部15に相当する。
【符号の説明】
【0084】
1 顧客
2、9 印刷システム
3、21、21A 入稿データ
4 印刷前工程処理
5 印刷工程処理
6 保存データ
7、30 印刷装置
10 印刷制御装置
11 通常印刷条件情報設定部
12 通常印刷実行処理部
13 試し印刷条件情報設定部
14 試し印刷条件情報保持部
15 試し印刷実行処理部
16 印刷データ管理部
17 試し印刷条件関連付け部
18 関連付け自動化部
19 印刷装置情報保持部
20、200、210、220 印刷キュー
22 通常印刷条件情報
23 試し印刷条件情報
24 印刷装置情報
31 操作者
40 PC
41 入力装置
42 出力装置
43 記録媒体読取装置
44 補助記憶装置
45 主記憶装置
46 演算処理装置
47 インタフェース装置
48 記録媒体
49 バス
51−53、101−103、201−203 印刷データ
54 ホットフォルダ(Hot Folder)
55 印刷条件テンプレート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】
【特許文献1】特開2005−234812号公報
【特許文献2】特開2007−28105号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
同一の入稿データから生成した通常印刷の印刷データ及び試し印刷の印刷データが同一の印刷装置で印刷されるように、通常印刷条件を設定した前記通常印刷の印刷データ及び試し印刷条件を設定した前記試し印刷の印刷データを生成する印刷データ生成手段、
前記通常印刷の印刷データ及び前記試し印刷の印刷データを受信し、前記通常印刷条件及び前記試し印刷条件に従い、前記通常印刷の印刷データ及び前記試し印刷の印刷データを同一の印刷装置に印刷させる印刷データ管理手段
として機能させる印刷制御プログラム。
【請求項2】
前記印刷データ生成手段は、前記通常印刷条件及び前記試し印刷条件に、前記通常印刷の印刷データ及び前記試し印刷の印刷データの何れかであるかを表す種別情報を含ませて設定すること
を特徴とする請求項1記載の印刷制御プログラム。
【請求項3】
前記印刷データ生成手段は、
前記通常印刷条件及び前記試し印刷条件の両方を設定した印刷データを生成する印刷条件情報設定手段と、
前記通常印刷条件及び前記試し印刷条件の両方を設定した印刷データから前記通常印刷条件を設定した通常印刷の印刷データを生成して前記印刷データ管理手段に送信する通常印刷実行処理手段と、
前記通常印刷条件及び前記試し印刷条件の両方を設定した印刷データから前記試し印刷条件を設定した試し印刷の印刷データを生成して前記印刷データ管理手段に送信する試し印刷実行処理手段と、
を有することを特徴とする請求項2記載の印刷制御プログラム。
【請求項4】
前記印刷データ管理手段は印刷キューを有し、同一の入稿データから生成した前記通常印刷の印刷データ及び前記試し印刷の印刷データが前記印刷キューに登録されると、前記試し印刷の印刷データより先に前記通常印刷の印刷データが印刷されないように、前記印刷キューにおける前記通常印刷の印刷データと前記試し印刷の印刷データとの印刷順の入れ替えを管理すること
を特徴とする請求項2又は3記載の印刷制御プログラム。
【請求項5】
同一の入稿データから生成した通常印刷の印刷データ及び試し印刷の印刷データが同一の印刷装置で印刷されるように、通常印刷条件を設定した前記通常印刷の印刷データ及び試し印刷条件を設定した前記試し印刷の印刷データを生成する印刷データ生成手段と、
前記通常印刷の印刷データ及び前記試し印刷の印刷データを受信し、前記通常印刷条件及び前記試し印刷条件に従い、前記通常印刷の印刷データ及び前記試し印刷の印刷データを同一の印刷装置に印刷させる印刷データ管理手段と
を有することを特徴とする印刷制御装置。
【請求項6】
コンピュータにより実行可能な請求項1に記載の印刷制御プログラムと、画像形成装置とを有することを特徴とする印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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