説明

印刷制御装置、それを用いた画像形成装置並びにプリントサーバ、印刷制御方法、及び印刷制御プログラム

【課題】印刷ジョブの処理順序を自動的に設定し、ユーザに待たされ感を生じさせないようにする。
【解決手段】CPU26は印刷処理の制御をチップセット25を介して各部に行う。展開順設定部31は、印刷ジョブを受付するごとに、印刷ジョブデータから展開順を設定する。印刷順設定部32は、受け付けた印刷ジョブの関連情報に基づいて、印刷部14の印刷処理状況から印刷ジョブの処理順を設定する。処理実行制御部33は、展開順と印刷順に基づいて各部の処理実行を制御する。展開部34は、受付した印刷データの展開処理を行う。展開部34は、印刷ジョブを時分割処理などにより、2つまで同時処理が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ページ記述言語で記載された印刷データを印刷可能なラスタデータに展開する印刷制御装置、それを用いた画像形成装置並びにプリントサーバ、印刷制御方法、及び印刷制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、FAX、複写機あるいはこれらの機能を有する複合機などの従来の画像形成装置では、通常、印刷ジョブを受け付けた順で印刷処理を行っている。受け付けた印刷ジョブの印刷データは、ページ記述言語(PDL)で記述されており、画像形成装置にて印刷するには、印刷データを印刷可能なラスタデータ(ビットマップデータ)に展開(変換)する処理を行っている。しかしながら、印刷ジョブによっては、展開処理能力しだいで展開完了までに時間がかかる。そのため、後発の印刷ジョブを受付しても、前の印刷ジョブの処理が完了していないため、すべての印刷ジョブ処理が待たされていた。もしくは、人間が優先順位を上げる指令を与えて印刷ジョブ処理の順番を決める必要があった。
【0003】
この課題を解決するために、複数の展開部を持ち、受付したジョブすべてを並行して展開処理し、展開完了したものから印刷できるようにしたものが考えられていた(特許文献1)。あるいは、印刷データをページ単位ごとに分割し、やはり複数の展開部で処理していた(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−3188号公報
【特許文献2】特開平10−154050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし前記特許文献の技術では、複数の展開部が必要となり、装置が複雑・高額になるといった問題や、複数の展開部以上の数のジョブを受付した時などは、同様に待たされることになっていた。
従って、画像形成装置に、大きな印刷ジョブデータ(印刷量が多く、画像展開及び印刷に時間がかかるジョブ)の後に小さな印刷ジョブデータ(印刷量が少なく、画像展開及び印刷に時間が短くて済むジョブ)があった場合、大きな印刷データの処理(画像展開、印刷実行)が終了するまで、次のジョブが実行されず、ユーザに待たされ感が生ずる結果となっていた。
【0006】
本発明は、斯かる実情に鑑み、印刷ジョブの処理順序を自動的に設定し、ユーザに待たされ感を生じさせないようにする印刷制御装置、それを用いた画像形成装置並びにプリントサーバ、印刷制御方法、及び印刷制御プログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、受け付けた印刷ジョブの印刷データを展開処理する展開部と、展開処理されたデータを印刷処理する印刷部とに投入して印刷処理を行う制御をする印刷制御装置において、
前記印刷ジョブの受付時刻、データ種類、データサイズ、印刷枚数から、前記印刷ジョブの展開から印刷処理終了までの時間を推定して、印刷ジョブの展開処理と印刷処理の順序を決定することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、展開処理の順序を設定する展開順設定手段と、印刷処理の順序を設定する印刷順設定手段と、設定された処理順序に基づいて、前記展開部と前記印刷部に処理を行わせる処理実行制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記展開順設定手段が、前記印刷ジョブの展開処理が終了するまでの残り時間を示す所要展開残時間と、前記印刷ジョブの印刷がスタートしてから印刷処理が終了するまでの残り時間を示す印刷残時間と、を算出し、展開投入しているあるいは展開投入したことがある印刷ジョブは所要展開残時間、展開投入していない印刷ジョブは全処理展開残時間を算出し、最も値の小さなものを最優先の展開処理順位とすることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記印刷順設定手段が、前記印刷ジョブの展開処理が終了したときに印刷部が他の印刷ジョブの処理中である場合に、印刷中の印刷ジョブの所要印刷残時間より印刷順を設定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、受け付けた印刷ジョブの印刷データを展開処理する展開部と展開処理されたデータを印刷処理する印刷部を備えた画像形成装置において、前記印刷制御装置を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、ネットワークを介して受け付けた印刷ジョブの印刷を行う印刷部に接続し、該印刷部に対して印刷制御を行うプリントサーバにおいて、前記印刷制御装置を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明は、受け付けた印刷ジョブの印刷データを展開処理する展開部と、展開処理されたデータを印刷処理する印刷部とに投入して印刷処理を行う制御をする印刷制御方法において、
前記印刷ジョブの受付時刻、データ種類、データサイズ、印刷枚数に基づいて、前記印刷ジョブの展開処理が終了するまでの残り時間を示す所要展開残時間と、前記印刷ジョブの印刷がスタートしてから印刷処理が終了するまでの残り時間を示す印刷残時間と、を算出するステップと、展開投入しているあるいは展開投入したことがある印刷ジョブは所要展開残時間、展開投入していない印刷ジョブは全処理展開残時間を算出し、最も値の小さなものを最優先の展開処理順位とするステップと、前記印刷ジョブの展開処理が終了したときに印刷部が他の印刷ジョブの処理中である場合に、印刷中の印刷ジョブの所要印刷残時間より印刷順を設定するステップと、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明は、コンピュータに、請求項7に記載の印刷制御方法のステップを実行させるための印刷制御プログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の展開バッファを持つことなく複数の印刷ジョブの効率処理ができ、大きいデータのジョブによって小さいデータのジョブが待たされることがないだけでなく、大きいジョブの待ち時間も短く出来る。そのため、プリンタの停止時間(非搬送状態)を極力なくすことになり、ユーザに待たされ感を生じさせない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る画像形成装置を示す複合機を含む画像形成システムを示すブロック図である。
【図2】画像形成装置の印刷制御の処理を示すフローチャートである。
【図3】ステップS3の処理を示すフローチャートである。
【図4】ステップS8の処理を示すフローチャートである。
【図5】図1の複合機を用いて各印刷ジョブをそれぞれ単独で処理した場合のタイムチャートである。
【図6】従来の印刷ジョブの連続処理を示すタイムチャートである。
【図7】本発明の印刷ジョブの処理を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る画像形成装置を示す複合機を含む画像形成システムを示すブロック図である。この画像形成システムは、画像形成装置である複合機10A,10Bと、ネットワーク(LAN/WAN)20を介して複合機接続するプリントサーバ40、端末50A,50B,50Cから構成される。
【0018】
図1に示すように、複合機10Aは、HDDなどの大容量記憶装置11、原稿を読み込んで画像データとするスキャナユニット12、複写機能、FAX機能、印刷機能などを実行制御するMFP(Multifunction Peripheral)コントローラ13、電子写真方式などで印刷を行う印刷部14から構成されている。MFPコントローラ13は、I/F(インターフェース)21,22,23、ネットワークI/F24、チップセット25、CPU26、主記憶装置28、計時装置29から構成される。本実施形態において、MFPコントローラ13は、印刷制御装置として機能するものである。CPU26は、その機能として、展開順設定部31、印刷順設定部32、処理実行制御部33、展開部34を備える。
【0019】
I/F21は大容量記憶装置11とチップセット25を接続し、I/F22はスキャナユニット12とチップセット25を接続し、I/F23は印刷部14とチップセット25を接続して情報のやり取りを仲介する。ネットワークI/F24はネットワーク20とチップセット25を接続して情報のやり取りを仲介する。
【0020】
CPU26は印刷処理の制御をチップセット25を介して各部に行う。展開順設定部31は、印刷ジョブを受付するごとに、印刷ジョブデータから展開順を設定する。印刷順設定部32は、印刷部14の印刷処理状況から印刷ジョブの処理順を設定する。処理実行制御部33は、展開順と印刷順に基づいて各部の処理実行を制御する。展開部34は、受付した印刷データの展開処理を行う。展開部34は、印刷ジョブを時分割処理などにより、2つまで同時処理が可能である。本実施形態では、CPU26が展開処理を行うものとしているが、CPU26の外部に、例えば展開ASICのように、専用の展開装置を別に備えてもよい。また、このような展開装置は一つに限らず、複数備えても構わない。また、展開部34において、印刷ジョブを2つまで同時処理が可能としているが、それ以上の印刷ジョブを処理可能としてもよい。
チップセット25は、CPU26と各部をつないでCPU26の制御信号に従って各部の制御処理を行うものである。
【0021】
主記憶装置28は、制御処理を行う上でデータを一旦記憶する。計時装置29は時刻をカウントしており、現在の時刻データを出力できる。
なお、複合機10Bも複合機10Aと同じ構造である。
【0022】
以下に、MFPコントローラ13の制御処理について説明する。
端末50A,50B,50Cやプリントサーバ40からのプリントジョブ(印刷ジョブ)は、ネットワーク20を介して複合機10A,10Bに送出される。あるいは、複合機10A,10Bのスキャナユニットから読み込んだコピー画像などを印刷ジョブとする。
【0023】
ネットワーク20経由でネットワークI/F24に、あるいはスキャナユニット12経由でI/F22に受付した印刷ジョブは、チップセット25に出力され、ジョブキューである主記憶装置28あるいは外部の大容量記憶装置11に一旦記憶される。印刷ジョブの受付が完了したら、CPU26の処理実行制御部33は、計時装置29に現在時刻を確認し、その日時を受付時刻として、印刷ジョブデータとともに記録する。また、受付した印刷ジョブの種類とデータサイズを、印刷ジョブデータとともに記録する。また、印刷ジョブのデータ中に含まれる印刷用紙及び枚数情報を、印刷ジョブデータとともに記録する。
【0024】
CPU26の処理実行制御部33は、ジョブキューに保存された印刷ジョブデータとその関連情報から所要展開残時間、所要印刷残時間を算出し、さらにこれらに基づいて受付した印刷ジョブと展開処理中の印刷ジョブの展開順を設定する。
ここで、所要展開残時間とは、展開処理が終了するまでの残り予想時間である。所要印刷残時間とは、印刷がスタートしてから印刷処理が終了するまでの残り予想時間である。転写・定着・用紙搬送・排紙までの処理時間も含まれる。なお、所要印刷残時間は、排紙完了までの時間ではなく、次ジョブ投入可能になる時間までとしてもよい。
【0025】
所要展開残時間は、例えば印刷ジョブ種類がスキャナユニット12からのコピー処理の場合、RGB信号をKCMY信号もしくはKのみの信号に変換し、場合によっては圧縮伸長する時間であり、全受付印刷データに定数を乗ずる、というように算出する。また、ネットワーク経由のプリンタで、プリンタ言語で送られている時、文字データ、矩形図形、典型的な処理定数を過去の経験から準備し、データ量にそれら定数を乗じて、総和を取り時間を算出する。
【0026】
展開した印刷ジョブは、主記憶装置28あるいは大容量記憶装置11に記憶しておく。例えば、0.25秒おきに、CPU26は印刷データの展開状況を確認し、すでに展開が始まり展開途中のものは現在までの展開時間を加味したうえで、再度所要展開残時間を算出し直す。展開処理が終了したものから順に印刷部14で印刷処理を行うが、処理が重なる場合があるので、CPU26の印刷順設定部32により、印刷順を設定し、タイミングを合わせ、印刷部14に、展開されて記憶されている画像データを送信する。
【0027】
以下に、画像形成装置の印刷制御の動作について説明する。図2は画像形成装置の印刷制御の処理を示すフローチャート、図3はステップS3の処理を示すフローチャート、図4はステップS8の処理を示すフローチャートである。
【0028】
ステップS1において、MFPコントローラ(印刷制御装置)13が新たな印刷ジョブを一つ受け付ける。ステップS2において、CPU26の処理実行制御部33は、ネットワーク20経由でネットワークI/F24に、あるいはスキャナユニット12経由でI/F22に受付した印刷ジョブに対し、管理番号をつけて、ジョブキューとする主記憶装置28あるいは外部の大容量記憶装置11に記憶する。さらに、CPU26の処理実行制御部33は、計時装置29に現時刻を確認し、ジョブキューに受付時刻を記録するジョブ種類(コピーかプリントか、プリントならどのプリント言語か等)とデータサイズから、データから画像処理を行って印刷できる画像をプリントエンジンに対し送付準備完了できる時間を予想し、所要展開残時間としてジョブキューに保存する。
ジョブキューに記憶した印刷ジョブの関連情報に基づいて、印刷ジョブの受付順に、以下の処理を行う。
【0029】
図1の実施形態においては、展開部34は一つで、同時に処理できるジョブ数を2つとしているが、展開部も展開ジョブ数もこれに限定されるわけではないので、図3の処理フローではそれを考慮した記載となっている。
展開部34に既に投入されている(完了したものを除く)ジョブ数をN(整数)とし、展開部34の数をM(整数)とする。
【0030】
ステップS3において、展開順設定部31は、所要展開処理時間と所要印刷残時間から展開順を設定する。その処理手順は図3に示す。
CPU26の展開順設定部31は、記憶された印刷ジョブデータの関連情報(印刷ジョブ種類・サイズ・印刷枚数)から、展開部34における印刷ジョブの画像展開順を設定する。図3に示すように、受付した印刷ジョブの所要展開残時間と所要印刷残時間を算出する。そして、受付した印刷ジョブの全処理残時間として[所要展開残時間×(N+1)/M+所要印刷残時間]を算出する(ステップS21)。展開順設定部31は、展開部34に投入されているジョブ数Nが0か、N>0かを確認し(ステップS22)、N=0の場合は、ステップS4に進む。N>0の場合は、展開部34で展開処理を行っている印刷ジョブの所要展開残時間を算出する(ステップS23)。
【0031】
展開順設定部31は、受付した印刷ジョブの全処理残時間と、展開部34で処理できず待ち状態になっている全処理残時間と、停止・退避状態となっている印刷ジョブの所要展開残時間と、展開部34で展開処理を行っている印刷ジョブの所要展開残時間とを比較して(ステップS24)、最小値を最優先処理順とし、それ以外は受付順とする(ステップS25)。最小値のジョブは、受付印刷ジョブ、展開待ち印刷ジョブ、退避印刷ジョブのいずれかどうかを確認する(ステップS26)。このいずれかであれば、新たに展開部34に印刷ジョブを投入することになり、ステップS27に進む。いずれでもない場合は新たに展開部34に印刷ジョブを投入しないので、ステップS4に進む。
【0032】
ステップS27において、展開部34に新たに印刷ジョブが投入されると、展開順設定部31は、展開部34の同時処理可能な印刷ジョブ数であるかを確認する。同時処理可能なジョブ数であれば、ステップS4に進む。
ステップS28において、最小値ではないジョブが、展開投入ジョブの場合は、受付が新たのものから展開処理を停止・退避(大容量記憶装置11や主記憶装置28に保存)とし、受付印刷ジョブの場合は、展開待ち状態(大容量記憶装置11や主記憶装置28に保存せず、待機状態にする)とする。
【0033】
ステップS4において、CPU26の処理実行制御部33が印刷ジョブを展開部34に投入する指示を出し、展開部34は展開処理を実行する。ただし、展開リソースに投入するジョブの個数を展開部34の機能に応じ、制限しても良い。例えば、展開部34が時分割処理が可能で、印刷ジョブ2つまで投入可能(ただし展開時間は倍になる)などと制限してもよい。
【0034】
ステップS5において、処理実行制御部33は、展開部34に投入した印刷ジョブの中で処理終了のものがあるかを確認し(ステップS5)、印刷ジョブの展開が終了していれば、その印刷ジョブの所要展開残時間を0にし(ステップS6)、ステップS8以降の印刷ジョブの印刷処理に進む。また、同時に展開部34の中に印刷ジョブがあるかを確認し(ステップS7)、あればステップ4に戻り展開処理も続ける。
【0035】
次に、展開済(所要展開残時間が0)のジョブを印刷部14にジョブを投入する処理を行う。
まず、ステップS8において、展開済の印刷ジョブの印刷順を設定する。この処理については図4に示す。CPU26の印刷順設定部32が、印刷部14が空いているか(印刷ジョブ投入可能か)を確認する(ステップS31)。印刷部14が空いていれば、ステップS9に進み、処理実行制御部33が展開済み印刷データを印刷部14に投入する。印刷部14が空いていなければ、ステップS32に進み、印刷中ジョブの所要印刷残時間から印刷部への投入時期を設定する。次に、ステップS9において、印刷時期がくれば、処理実行制御部33が印刷部14に印刷ジョブを投入し印刷処理を行う。処理実行制御部33は、印刷処理が終了したかを確認し(ステップS10)、終了していれば、その印刷ジョブの所要印刷残時刻0とする(ステップS11)。
【0036】
ステップS12において、展開処理スタートから見て一定時間経過するまで(例:0.25秒)待つ。待ち終わったら、展開部に投入されている印刷ジョブに関し、所要展開残時間を見直し更新する。印刷部14に投入されている印刷ジョブに関し、所要印刷残時間を見直し更新する。
【0037】
ステップS13において、処理実行制御部33は、ジョブキューのジョブが全て完了したかを確認し、完了していれば処理を終了し、完了していなければ、ステップS3に戻る。
【0038】
それでは、具体的例として処理タイムチャートを図5〜7に示す。
図5は、図1の複合機10を用いて各印刷ジョブをそれぞれ単独で処理した場合のタイムチャートである。
【0039】
印刷ジョブA〜Dは、A4サイズ縦を印刷するジョブである。この複合機は、ファーストプリントタイムをTf秒、印刷枚数をA4縦 v枚/分の性能を有する。この複合機10を使用して、A4縦をa枚印刷すると、印刷終了までの時間は、[{60(秒/分)/v(枚/分)}×a(枚)]+[Tf(秒)−{60(秒/分)/v(枚/分)}×1(枚)]の式で簡単に推測できる。
【0040】
上述の式の中で[Tf(秒)−{60(秒/分)/v(枚/分)}×1(枚)]は、紙の給紙から搬送・排紙にかかるオーバヘッドである。連続印刷1枚あたりの印刷時間は、[{60(秒/分)/v(枚/分)}×1(枚)]である。連続印刷した印刷ジョブの印刷が終了後、次の連続印刷処理の印刷ジョブを投入するまでは、この1枚当たりの印刷時間分だけ待ち時間を必要とする。
【0041】
このタイムチャートでは、ファーストプリントタイムTf=10秒、印刷枚数 A4縦 30枚/分の複合機を用いたものとする。この場合、上記式より、A4縦 a枚を印刷部が印刷する処理時間は2a+8(秒)であり、印刷部14の次の印刷ジョブ投入までの空き時間は2(秒)である。
【0042】
また、図5には、印刷ジョブA〜Dの処理時間は、以下の通りである。
・印刷ジョブA:待ちなし処理時間98秒=展開処理時間60秒+印刷処理時間38秒(印刷枚数15枚)
・印刷ジョブB:待ちなし処理時間32秒=展開処理時間20秒+印刷処理時間12秒(印刷枚数2枚)
・印刷ジョブC:待ちなし処理時間30秒=展開処理時間2秒+印刷処理時間28秒(印刷枚数12枚)
・印刷ジョブD:待ちなし処理時間11秒=展開処理時間1秒+印刷処理時間10秒(印刷枚数1枚)
【0043】
ここで、複合機10には、図1に示すように、展開部34は、同時処理が可能な印刷ジョブは2つまで(2つの時の展開時間は倍)とする。
【0044】
図6は、従来の印刷ジョブの連続処理を示すタイムチャートである。この場合は、各印刷ジョブが受付順に処理を行った場合を示す。各印刷ジョブA〜Dは、3秒毎に受付したとする。すなわち、図6は、A→(3秒後)→B→(3秒後)→C→(3秒後)→Dの順で印刷ジョブが発生したときの処理時間を示している。
【0045】
印刷ジョブAは最初に受け付けたジョブであり、その処理時間は、図5に示したものと同じである。従って、処理時間(展開処理+印刷処理)は98秒を要する。次に3秒後に印刷ジョブBを受付した場合、印刷ジョブAの展開処理が終了するまでは、展開部34に印刷ジョブを投入できない。従って、印刷ジョブBを受け付けてから展開部34に印刷ジョブBを投入するまで、57秒の展開部待ち状態が生じることとなる。そして、印刷ジョブAの展開処理が終了してから展開部34に印刷ジョブを投入し、20秒の展開処理を行う。しかし、印刷ジョブBの展開処理が終了しても印刷処理が終了していないため、印刷部14に印刷ジョブBを投入できず、16秒の印刷待ちが生じる。図5は、各ジョブ毎に処理する場合を想定しているので、次のジョブを投入するまでの空き時間に2秒を要しているが、図6の場合は各印刷ジョブを連続処理するので、空き時間2秒は不要である。従って、印刷ジョブBにおける印刷待ち時間は16秒となる。そして印刷部14での印刷処理時間は12秒である。
【0046】
印刷ジョブCは、印刷ジョブBの受付の3秒後に受け付ける。そこから、印刷ジョブBの展開処理が終了するまでは、展開部34に投入できない。従って、受け付けから展開部待ちが74秒生じることになる。印刷ジョブBの展開処理が終了してから、展開部34に印刷ジョブCを投入し、展開処理を2秒行う。次に印刷部14の印刷処理が終了していないので、印刷部待ちが34秒生じるが、連続印刷処理を行うので、次の印刷処理まで空き時間2秒は不要である。そして、印刷ジョブBの印刷処理が終了後、印刷部14において、印刷ジョブCの印刷処理を28秒行う。
【0047】
印刷ジョブDは、印刷ジョブCの受付の3秒後に受け付ける。そこから、印刷ジョブCの展開処理が終了するまでは、展開部34に投入できない。従って、受け付けから展開部待ちが73秒生じることになる。印刷ジョブCの展開処理が終了してから、展開部34に印刷ジョブDを投入し、展開処理を1秒行う。次に印刷部14の印刷処理が終了していないので、印刷部待ちが59秒生じる。連続印刷処理を行うので、次の印刷処理まで空き時間2秒は不要である。そして、印刷ジョブCの印刷処理が終了後、印刷部14において、印刷ジョブDの印刷処理を10秒行う。
【0048】
図6には、各印刷ジョブA〜Dの追加待時間と非印刷待時間が示されている。追加待時間とは、展開部待ち時間と印刷部待ち時間の合計である。非印刷待時間とは印刷部が全く動作していないにも関わらず、ジョブ待ちをしている時間である。非印刷待時間は、外部から見ると、止まっているように見えるので、ユーザの待たされ感が大きい。
【0049】
図6に示すように、以下の結果となった。
・印刷ジョブA:追加待ち0秒 非印刷待時間60秒
・印刷ジョブB:追加待ち73秒 非印刷待時間57秒
・印刷ジョブC:追加待ち108秒 非印刷待時間54秒
・印刷ジョブD:追加待ち132秒 非印刷待時間51秒
追加待ち合計313秒 非印刷待合計222秒
【0050】
図7は、本発明の印刷ジョブの処理を示すタイムチャートである。この場合は、図2〜4のフローチャートに従った処理を行う。
【0051】
まず、印刷ジョブAは、印刷ジョブBを受け付けるまでの3秒間は、展開部34において展開処理を行う。印刷ジョブBを受け付けたとき、CPU26の展開順設定部31は、展開処理順を設定する。印刷ジョブBを受け付けたとき、印刷ジョブAの展開処理完了時間は57秒である。これに対し、印刷ジョブBの処理時間は、[20×(1+1)+12=53]秒である。従って、印刷ジョブBは最優先に処理するところであるが、展開部34には2つまで印刷ジョブを投入できるので、印刷ジョブA,Bの両方を同時処理させる。
【0052】
次に、印刷ジョブBを受け付けてから3秒後に印刷ジョブCを受け付けたとき、印刷ジョブAの展開残時間は55.5秒、印刷ジョブBの展開残時間は18.5秒である。これは、展開処理時間が2倍掛かるため、3秒後では展開時間が1.5秒しか経過していないためである。印刷ジョブAの所要展開残時間は[55.5×2=111]秒、印刷ジョブBの所要展開残時間は[18.5×2=37]秒、印刷ジョブCの全処理残時間は[2×(2+1)+28=34]秒となる。従って、値の小さい印刷ジョブCの展開処理を最優先で行うが、展開部34では2つの印刷ジョブを同時処理可能であるので、印刷ジョブAとBでは、最後に展開部34に投入した印刷ジョブBの展開データを主記憶装置28に一旦退避させる。そして、印刷ジョブA,Cを同時に展開部34で展開処理を行う。
【0053】
次に、印刷ジョブCを受け付けてから3秒後に印刷ジョブDを受け付けたとき、印刷ジョブAの展開残時間は54秒、印刷ジョブBは退避状態、印刷ジョブCの展開残時間は0.5秒である。これは、展開処理時間が2倍掛かるため、3秒後では展開時間が1.5秒しか経過していないためである。印刷ジョブAの展開残時間は[54×2=108]秒、印刷ジョブCの展開残時間は[0.5×2=1]秒、印刷ジョブDの全処理残時間は[1×(2+1)+10=13]秒となる。従って、最小値の印刷ジョブCの展開処理と最初に展開処理を行っている印刷ジョブAを展開部34で処理を行う。印刷ジョブDは、受付したばかりのジョブであるので、展開待ち状態とする。
【0054】
印刷ジョブDの展開が終了した時、図5の単独処理で考えると、ジョブAの展開残時間が52.5秒と、ジョブBの展開残時間が18.5秒、ジョブDの展開残時間1秒となっている。実際には、展開部34で二つ同時処理を行うと二倍の時間がかかるので、印刷ジョブAの展開残時間は[52.5×2=105]秒、印刷ジョブBの展開残時間は[18.5×2=37]秒、印刷ジョブDの全処理残時間は[1×(2+1)+10=13]秒となる。従って、値の最も小さい印刷ジョブDを展開部34に投入し、さらに最初に投入した印刷ジョブAと同時処理を行う。なお、印刷ジョブCは、展開処理を終了したジョブで、印刷部14が空いているので、印刷処理を行う(印刷処理時間28秒)。
【0055】
印刷ジョブDの展開処理は1×2=2秒で終了する。このときの印刷ジョブAの展開残時間は52.5秒(単独展開処理の場合の時間)である。印刷ジョブC,Dにおいて展開処理は終了しているので、印刷ジョブCについて、印刷ジョブAと同時に展開処理を行う。このとき、印刷ジョブCの退避時間は6秒である。
【0056】
このとき印刷ジョブDの印刷処理は、まだ印刷ジョブCの印刷処理が行われているので、これが終了するまで、印刷部待ち状態となる(印刷部待ち時間24秒)。印刷部待ち後の印刷処理は印刷ジョブCの印刷処理に続く連続処理となるので、印刷のための空き時間2秒は不要である。従って、印刷ジョブCの計算上の印刷処理完了時間より2秒早く印刷ジョブDの処理をスタートさせる。
【0057】
印刷ジョブCの展開処理は、18.5×2=37秒後に終了し、この時点で印刷部14は空いているので直ちに印刷ジョブCの印刷処理に入る。印刷ジョブCの展開処理が終了した時点で、印刷ジョブAの展開残は34秒であり、印刷ジョブA以外には展開処理を行っていないので、処理時間も1つ印刷ジョブの処理時間となる。34秒後に印刷ジョブAの印刷処理に入る。
【0058】
結果として、図7の場合は、以下の結果となる。
・印刷ジョブA: 追加待ち23秒 非印刷待時間10秒
・印刷ジョブB: 追加待ち26秒 非印刷待時間7秒
・印刷ジョブC: 追加待ち2秒 非印刷待時間4秒
・印刷ジョブD: 追加待ち26秒 非印刷待時間1秒
追加待ち合計77秒 非印刷待合計22秒
【0059】
こうして、本発明は、図6に比較して図7の方が、明らかに追加待ち時間と非印刷時間が減少し、効率的な処理順を設定するので、効率的な処理が可能で、ユーザの待たされ感も解消される。
【0060】
本実施形態は、複合機10A,10BのMFPコントローラ13において、印刷するための画像展開処理と印刷処理の制御を行うものであるが、ネットワーク20に接続されるプリントサーバ40において、この制御を行っても構わない。プリントサーバ40は、前述のMFPコントローラ13と同様の展開処理及び印刷処理の制御処理を行って、ネットワーク20を介して制御信号を送り、複合機10A,10Bの印刷部14を利用して印刷を行うことも可能である。
【0061】
また、CPU26の制御機能は、このような機能の処理内容を記述したプログラムが提供され、それをCPU26が実行することにより実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどがある。
【符号の説明】
【0062】
10A,10B 複合機
11 大容量記憶装置
12 スキャナユニット
13 MFPコントローラ
14 印刷部
20 ネットワーク
21,22,23 I/F
24 ネットワークI/F
25 チップセット
28 主記憶装置
29 計時装置
31 展開順設定部
32 印刷順設定部
33 処理実行制御部
34 展開部
40 プリントサーバ
50A,50B,50C 端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け付けた印刷ジョブの印刷データを展開処理する展開部と、展開処理されたデータを印刷処理する印刷部とに投入して印刷処理を行う制御をする印刷制御装置において、
前記印刷ジョブの受付時刻、データ種類、データサイズ、印刷枚数から、前記印刷ジョブの展開から印刷処理終了までの時間を推定して、印刷ジョブの展開処理と印刷処理の順序を決定することを特徴とする印刷制御装置。
【請求項2】
展開処理の順序を設定する展開順設定手段と、
印刷処理の順序を設定する印刷順設定手段と、
設定された処理順序に基づいて、前記展開部と前記印刷部に処理を行わせる処理実行制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項3】
前記展開順設定手段は、
前記印刷ジョブの展開処理が終了するまでの残り時間を示す所要展開残時間と、前記印刷ジョブの印刷がスタートしてから印刷処理が終了するまでの残り時間を示す印刷残時間と、を算出し、
展開投入しているあるいは展開投入したことがある印刷ジョブは所要展開残時間、展開投入していない印刷ジョブは全処理展開残時間を算出し、最も値の小さなものを最優先の展開処理順位とすることを特徴とする請求項2に記載の印刷制御装置。
【請求項4】
前記印刷順設定手段は、
前記印刷ジョブの展開処理が終了したときに印刷部が他の印刷ジョブの処理中である場合に、印刷中の印刷ジョブの所要印刷残時間より印刷順を設定することを特徴とする請求項2または3に記載の印刷制御装置。
【請求項5】
受け付けた印刷ジョブの印刷データを展開処理する展開部と展開処理されたデータを印刷処理する印刷部を備えた画像形成装置において、
請求項1から4のいずれか一項に記載の印刷制御装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
ネットワークを介して受け付けた印刷ジョブの印刷を行う印刷部に接続し、該印刷部に対して印刷制御を行うプリントサーバにおいて、
請求項1から4のいずれか一項に記載の印刷制御装置を備えることを特徴とするプリントサーバ。
【請求項7】
受け付けた印刷ジョブの印刷データを展開処理する展開部と、展開処理されたデータを印刷処理する印刷部とに投入して印刷処理を行う制御をする印刷制御方法において、
前記印刷ジョブの受付時刻、データ種類、データサイズ、印刷枚数に基づいて、前記印刷ジョブの展開処理が終了するまでの残り時間を示す所要展開残時間と、前記印刷ジョブの印刷がスタートしてから印刷処理が終了するまでの残り時間を示す印刷残時間と、を算出するステップと、
展開投入しているあるいは展開投入したことがある印刷ジョブは所要展開残時間、展開投入していない印刷ジョブは全処理展開残時間を算出し、最も値の小さなものを最優先の展開処理順位とするステップと、
前記印刷ジョブの展開処理が終了したときに印刷部が他の印刷ジョブの処理中である場合に、印刷中の印刷ジョブの所要印刷残時間より印刷順を設定するステップと、
を有することを特徴とする印刷制御方法。
【請求項8】
コンピュータに、請求項7に記載の印刷制御方法のステップを実行させるための印刷制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−6195(P2012−6195A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142714(P2010−142714)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】