印刷制御装置および印刷装置
【課題】シートの波状の変形に起因する印刷済み画像のムラを抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】仮に、入力画像データが階調値の均一な画像を表し、かつ、印刷時にシートが変形せずに平らな状態で搬送される場合に、シート上の複数の第1種領域に印刷される複数の第1種の印刷済み部分画像の濃度が、シート上の複数の第2種領域に印刷される複数の第2種の印刷済み部分画像の濃度とは異なるように、入力画像データを利用する補正処理を実行して補正済画像データを生成する。
【解決手段】仮に、入力画像データが階調値の均一な画像を表し、かつ、印刷時にシートが変形せずに平らな状態で搬送される場合に、シート上の複数の第1種領域に印刷される複数の第1種の印刷済み部分画像の濃度が、シート上の複数の第2種領域に印刷される複数の第2種の印刷済み部分画像の濃度とは異なるように、入力画像データを利用する補正処理を実行して補正済画像データを生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷のための画像処理に関し、特に、印刷時にシートが変形された状態で搬送される場合の画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
インクドットを記録媒体(例えば、紙)に形成する印刷が知られている。このような印刷では、記録媒体が、インクドットの形成に起因して、プラテンから記録ヘッド方向へ浮く場合がある。例えば、記録媒体が、丸まってしまい、プラテンから記録ヘッド方向へ浮く場合がある。高品位な印刷結果を得るために、このような記録媒体の浮きを抑制する技術が提案されている。例えば、特許文献1では、記録媒体を波打ち形状にすることによって、記録媒体を記録ヘッド方向に浮かなくする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−138923号公報
【特許文献2】特開2004−106978号公報
【特許文献3】特開2007−59972号公報
【特許文献4】特開平07−285251号公報
【特許文献5】特開2001−261188号公報
【特許文献6】特開2004−122609号公報
【特許文献7】特開2003−040507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、記録媒体(シートとも呼ぶ)を波状に変形させた状態で搬送する場合には、印刷ヘッドとシートとの間の距離が、シート上の位置に依存して異なり得る。この結果、シートの波状の変形に起因して、印刷済み画像にムラが生じる可能性があった。
【0005】
本発明の主な利点は、シートの波状の変形に起因する印刷済み画像のムラを抑制することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]第1方向に沿って前記シートを波状に変形させた状態で、前記シートを前記第1方向と交差する第2方向に搬送するシート搬送部と、液滴を吐出する複数のノズルを有する印刷ヘッドと、前記第1方向と平行に前記印刷ヘッドを移動させるヘッド移動部と、前記印刷ヘッドの移動中に前記印刷ヘッドを駆動することによって前記波状に変形したシートに向かって前記液滴を吐出させる印刷ヘッド駆動部と、を含む印刷実行部に、印刷を実行させる印刷制御装置であって、補正用データを利用して補正処理を実行することによって、入力画像データから補正済画像データを生成する処理を実行する補正済データ生成部と、前記補正済画像データを前記印刷実行部に供給する補正済データ供給部と、を備え、前記補正済画像データを生成する前記処理は、仮に、前記入力画像データが階調値の均一な画像を表し、かつ、印刷時に前記シートが変形せずに平らな状態で搬送される場合に、前記シート上の複数の第1種領域に印刷される複数の第1種の印刷済み部分画像の濃度が、前記シート上の複数の第2種領域に印刷される複数の第2種の印刷済み部分画像の濃度とは異なるように、前記入力画像データを利用する前記補正処理を実行して前記補正済画像データを生成する処理を含み、前記複数の第1種領域と前記複数の第2種領域とは前記第2方向に沿って延びる領域であり、前記各第1種領域と前記各第2種領域とは前記第1方向に沿って交互に並んでいる、印刷制御装置。
【0008】
この構成によれば、仮に、入力画像データが階調値の均一な画像を表し、かつ、印刷時にシートが変形せずに平らな状態で搬送される場合に、シート上の複数の第1種領域に印刷される複数の第1種の印刷済み部分画像の濃度が、シート上の複数の第2種領域に印刷される複数の第2種の印刷済み部分画像の濃度と異なるように、入力画像データを利用する補正処理が実行されて補正済画像データが生成される。このため、シートの波状の変形に起因する印刷済み画像の濃度ムラを低減することができる。
【0009】
[適用例2]第1方向に沿って前記シートを波状に変形させた状態で、前記シートを前記第1方向と交差する第2方向に搬送するシート搬送部と、液滴を吐出する複数のノズルを有する印刷ヘッドと、前記第1方向と平行に前記印刷ヘッドを移動させるヘッド移動部と、前記印刷ヘッドの移動中に前記印刷ヘッドを駆動することによって前記波状に変形したシートに向かって前記液滴を吐出させる印刷ヘッド駆動部と、を含む印刷実行部に印刷を実行させる印刷制御装置に、印刷制御処理のためのデータを提供する提供装置であって、テスト画像を表すテスト画像印刷データを利用して前記印刷実行部によって印刷された印刷済みテスト画像を光学的に読み取ることによって得られる読取データを取得するデータ取得部であって、前記テスト画像印刷データは、互いに濃度の異なる複数の基準画像であって、前記各基準画像内で階調値が均一な前記複数の基準画像を含む前記テスト画像を表し、前記印刷済みテスト画像における複数の印刷済みの基準画像のそれぞれは、前記複数の第1種領域の少なくとも1つに印刷される第1種の印刷済み部分基準画像と、前記複数の第2種領域の少なくとも1つに印刷される第2種の印刷済み部分基準画像と、を含む、データ取得部と、前記読取データを解析する解析部と、前記解析部による解析の結果を用いて、印刷制御処理で利用される補正用データの少なくとも一部を規定する補正規定データを生成する補正用データ生成部と、前記補正規定データを前記印刷制御装置に提供するデータ提供部と、を備える提供装置。
【0010】
この構成によれば、印刷済みテスト画像の読取データを利用することによって、適切に補正規定データを提供することができる。
【0011】
[適用例3]適用例2に記載の提供装置であって、さらに、ネットワークに接続するためのインタフェースを含み、前記データ取得部は、前記ネットワークを通じて前記読取データを取得し、前記データ提供部は、前記ネットワークを通じて前記補正規定データを提供する、提供装置。
【0012】
この構成によれば、提供装置は、ネットワークを通じて、適切に、補正用データを提供することができる。
【0013】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、印刷制御方法および印刷制御装置、印刷方法および印刷装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】印刷装置600のブロック図である。
【図2】印刷装置600の説明図である。
【図3】液滴D1、D2の着弾位置を示す説明図である。
【図4】補正用総合データ134の作成のフローチャートである。
【図5】テスト画像の説明図である。
【図6】解析の概要を示す説明図である。
【図7】第1補正用データ134a(振幅係数データ134a)を示すグラフである。
【図8】第2補正用データ134b(振幅データ134b)を示すグラフである。
【図9】印刷処理のフローチャートである。
【図10】補正処理Sc2のフローチャートである。
【図11】印刷処理における輝度(濃度)の変化例を示す概略図である。
【図12】第2実施例の補正処理Sc2のフローチャートである。
【図13】第2実施例のテスト画像の説明図である。
【図14】第3実施例のハーフトーン処理の概略図である。
【図15】ハーフトーン処理のフローチャートである。
【図16】ステップS560のフローチャートである。
【図17】第4実施例における振幅データ134bGを示す概略図である。
【図18】第5実施例における印刷システム1000bの構成を示すブロック図である。
【図19】第6実施例における印刷装置600cの構成を示すブロック図である。
【図20】基準ギャップの別の実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.第1実施例:
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。図1は、本発明の一実施例としての印刷装置600のブロック図である。この印刷装置600は、制御装置100と、印刷実行部200と、を含む。
【0016】
制御装置100は、印刷装置600の動作を制御するコンピュータである。制御装置100は、CPU110と、DRAM等の揮発性メモリ120と、EEPROM等の不揮発性メモリ130と、タッチパネル等の操作部170と、液晶ディスプレイ等の表示部180と、外部装置との通信のためのインタフェースである通信部190と、を備える。通信部190は、例えば、いわゆるUSBインタフェース、または、IEEE802.3に準拠したインタフェースであってよい。
【0017】
不揮発性メモリ130は、プログラム132と、補正用データ134と、マトリクス136と、を格納している。補正用データ134は、第1補正用データ134aと第2補正用データ134bとを含む(以下、補正用データ134を、補正用総合データ134とも呼ぶ)。CPU110は、プログラム132を実行することによって、プリンタドライバM100の機能を含む種々の機能を実現する。プリンタドライバM100は、印刷対象の画像データ(「対象画像データ」とも呼ぶ)を利用して、印刷実行部200に印刷を実行させる。対象画像データは、例えば、外部装置(例えば、コンピュータまたはUSBフラッシュメモリ)から印刷装置600に供給された画像データである。
【0018】
本実施例では、プリンタドライバM100は、補正用データ取得部M102と、補正済データ生成部M104と、補正済データ供給部M106と、を含む。後述するように、補正用データ取得部M102は、補正用総合データ134を不揮発性メモリ130から取得する。補正済データ生成部M104は、補正用総合データ134を利用して補正処理を実行することによって、対象画像データから補正済の印刷データ(「補正済画像データ」とも呼ぶ)を生成する。補正済データ供給部M106は、補正済画像データを印刷実行部200に供給する。印刷実行部200は、受信した補正済画像データに従って、印刷を実行する。
【0019】
印刷実行部200は、インクの液滴をシート(印刷媒体)に向かって吐出することによって、シート上にドットを形成する。印刷済画像は、ドットのパターンによって表される。印刷実行部200は、制御回路210と、印刷ヘッド250と、ヘッド移動部240と、シート搬送部260と、を含む。印刷ヘッド250の底面には、インクの液滴を吐出する複数のノズルが設けられている(図示省略)。本実施例では、印刷ヘッド250は、シアンとマゼンタとイエロとブラックとの4種類のインクを吐出可能である。シート搬送部260は、シートを、所定の搬送方向に搬送する。ヘッド移動部240は、印刷ヘッド250を、搬送方向と直交する方向に移動させる。印刷ヘッド250が、シートと対向する位置を移動しつつインクの液滴をシートに向かって吐出する動作と、シート搬送部260が、シートを搬送する動作と、の繰り返しによって、画像の印刷が進行する。制御回路210は、ヘッド移動部240を制御する移動制御部212と、印刷ヘッド250を制御するヘッド駆動部214と、シート搬送部260を制御する搬送制御部216と、を含む。制御回路210は、制御装置100からの補正済画像データ(印刷データ)に従ってヘッド移動部240と、印刷ヘッド250と、シート搬送部260と、を制御する。
【0020】
図2(A)は、印刷装置600の斜視図を示す。図中には、3つの方向Dx、Dy、Dzが示されている。2つの方向Dx、Dyは、それぞれ、水平な方向であり、Dz方向は、鉛直上方向である。Dy方向は、Dx方向と直交する方向である。Dy方向は、印刷ヘッド250の移動方向と平行である(以下、Dy方向を「第1方向Dy」とも呼ぶ)。Dx方向は、シート300の搬送方向と同じである(以下、Dx方向を「搬送方向Dx」または「第2方向Dx」とも呼ぶ)。以下、Dx方向を「+Dx方向」とも呼び、Dx方向の反対方向を「−Dx方向」とも呼ぶ。+Dy方向、−Dy方向、+Dz方向、−Dz方向についても、同様である。
【0021】
シート搬送部260は、搬送モータ263と、第1ローラ261と、第2ローラ262と、シート台265と、押圧部269と、を含む。シート台265は、シート300を、下面から、おおよそ水平に、支持する。2つのローラ261、262は、シート台265の上面と対向する位置に、配置されている。第1ローラ261は、シート台265の−Dx方向側の部分と対向し、第2ローラ262は、シート台265の+Dx方向側の部分と対向する。各ローラ261、262は、Dy方向と平行なローラであり、搬送モータ263によって、回転駆動される。シート300は、ローラ261、262とシート台265との間に挟持され、回転するローラ261、262によって搬送方向Dxに搬送される。
【0022】
本実施例では、印刷装置600が、特定サイズの長方形シート(例えば、A4サイズの紙)に印刷を行う場合には、長方形シートの短辺が搬送方向Dxと平行であり、長辺が第1方向Dyと平行となるように、シートが配置される。この結果、シートの長辺が搬送方向Dxと平行である場合と比べて、印刷装置600の搬送方向Dxのサイズを小さくすることができる。
【0023】
ヘッド移動部240は、移動モータ242と、支持軸244と、を含む。支持軸244は、第1ローラ261と第2ローラ262との間に配置され、第1方向Dyと平行に延びる。支持軸244は、印刷ヘッド250を、支持軸244に沿ってスライド可能に、支持する。移動モータ242は、図示しないベルトによって印刷ヘッド250に接続されている。移動モータ242は、印刷ヘッド250を、第1方向Dyと平行に、移動させる。本実施例では、ヘッド駆動部214(図1)は、印刷ヘッド250が第1方向Dyに移動する最中と、印刷ヘッド250が第1方向Dyの反対方向(−Dy方向)に移動する最中と、のそれぞれにおいて、印刷ヘッド250を駆動して液滴を吐出させる(双方向印刷)。
【0024】
図2(B)は、ヘッド移動部240とシート搬送部260との拡大斜視図を示す。図中では、シート台265の搬送方向Dxと垂直な断面(2つのローラ261、ローラ262の間の位置の断面)も示されている。図示するように、シート台265は、複数の低支持部265aと、複数の高支持部265bと、を含む。高支持部265bは、低支持部265aと比べて、高い位置でシート300を支持する。低支持部265aと高支持部265bとは、第1方向Dyに沿って交互に並んで配置されている。図2(C)は、高支持部265bの断面図を示し、図2(D)は、低支持部265aの断面図を示す。図2(C)、図2(D)は、いずれも、搬送方向Dxと鉛直上方向Dzとに平行な断面を示す。
【0025】
図2(C)に示すように、高支持部265bは、−Dx方向側から+Dx方向側に並んで配置された5つの部分265b1〜265b5を含む。第1部分265b1は、第1ローラ261と対向する部分であり、第3部分265b3は、印刷ヘッド250(複数のノズル250n)と対向する部分であり、第5部分265b5は、第2ローラ262と対向する部分である。これら3つの部分265b1、265b3、265b5は、それぞれ、同じ高さの上面を有し、シート300を下面から支持する(以下、これらの部分の上面の高さを「基準高さSH」と呼ぶ)。残りの2つの部分265b2、265b4は、基準高さSHよりも下方に凹んでおり、シート300から離れている。なお、図示するように、印刷ヘッド250には、搬送方向Dxの位置が互いに異なる複数のノズル250nが設けられている。本実施例では、CMYKのインク毎に、そのような複数のノズル250nが設けられている。
【0026】
図2(D)に示すように、低支持部265aは、−Dx方向側から+Dx方向側に並んで配置された5つの部分265a1〜265a5を含む。第1部分265a1と第5部分265a5とは、図2(C)の第1部分265b1と第5部分265b5と、それぞれ同じである。第3部分265a3は、図2(C)の第3部分265b3と同様に、印刷ヘッド250(複数のノズル250n)と対向する。ただし、第3部分265a3の上面の高さは、基準高さSHよりも低い。また、第3部分265a3の上面は、−Dx側から+Dx側へ向けて斜め上方向に傾斜している(第2ローラ262に近いほど、高い)。残りの2つの部分265a2、265a4は、基準高さSHよりも下方に凹んでおり、シート300から離れている。
【0027】
第2部分265a2の上方には、押圧部269が配置されている。押圧部269は、第1部分265a1の上面と対向する位置から、搬送方向Dx側に向けて、斜め下方向に傾斜して延びる。押圧部269の搬送方向Dx側の端の高さは、基準高さSHよりも低い。第1ローラ261と第1部分265a1との間から送り出されたシート300は、押圧部269によって曲げられて、基準高さSHよりも下方に送られる。押圧部269の搬送方向Dx側では、シート300は、第3部分265a3に下面を支持されて、徐々に基準高さSHに近づく。ただし、印刷ヘッド250(複数のノズル250n)と対向する位置では、シート300の高さは、基準高さSHよりも低い。第3部分265a3の搬送方向Dx側では、シート300は、第2ローラ262と第5部分265a5とに挟まれる。
【0028】
図2(B)に示すように、本実施例では、押圧部269および低支持部265aと、高支持部265bと、が第1方向Dyに沿って交互に並ぶ。これにより、シート搬送部260は、第1ローラ261と第2ローラ262との間で搬送方向Dxと交差する第1方向Dyに沿って波状に変形させた状態で、シート300を搬送方向Dxに搬送する。シート300を波状に変形させる理由は、シート300が丸まることに起因してシート300がシート台265から印刷ヘッド250側へ浮き上がることを抑制するためである。シート300が変形せずに平らなまま搬送されると仮定すると、ノズル250nからインクの液滴を受けたシートが、図2(C)の符号302で示すように意図せずに変形する可能性がある。このような意図しない変形は、印刷不良を引き起こし得る。特に、本実施例では、長方形シートの短辺が搬送方向Dxと平行であり、長辺が第1方向Dyと平行である。この場合には、長辺が搬送方向Dxと平行である場合と比べて、意図しない変形が生じる可能性が高い。そこで、本実施例の印刷装置600は、搬送方向Dxと交差する第1方向Dyに沿って波状にシート300を変形させることによって、意図しない変形を抑制する。
【0029】
図3は、印刷ヘッド250から吐出された液滴D1、D2の、シート上の着弾位置(第1方向Dyの位置)を示す。第1液滴D1は、+Dy方向に移動する印刷ヘッド250から吐出される液滴を示し、第2液滴D2は、−Dy方向に移動する印刷ヘッド250から吐出される液滴を示す。また、図3(A)は、変形せずに平らなシート300f(以下、「基準シート300f」とも呼ぶ)に印刷を行う仮想的な場合を示し、図3(B)は、波状に変形した実施例のシート300に印刷を行う場合を示す。
【0030】
ノズル250nは、鉛直下方に向けて、液滴D1、D2を吐出する。また、ノズル250nは、液滴D1、D2の吐出時に、シート300、300fの上方で、水平に移動する。従って、シート300、300fから見ると、液滴D1、D2は、印刷ヘッド250の移動方向に向かって、斜めに飛ぶ。図3(A)に示すように、同じ目標位置Py1にドットを形成するためには、+Dy方向に移動する印刷ヘッド250は、目標位置Py1よりも−Dy方向側の位置で第1液滴D1を吐出し、−Dy方向に移動する印刷ヘッド250は、目標位置Py1よりも+Dy方向側の位置で第2液滴D2を吐出する。このように、液滴D1、D2の吐出タイミングが調整される。
【0031】
図3(A)中のギャップGPsは、ノズル面npと基準シート300fとの間のギャップを示す。ここで、ノズル面npは、複数のノズル250nの位置を含む平面であり、移動するノズル250nが通過し得る位置を含む平面である。本実施例では、ノズル面npは、おおよそ水平な平面である。ギャップは、ノズル面npと垂直に測定した、ノズル面npとシートとの間の距離である。以下、基準シート300fのギャップGPsを、基準ギャップGPsとも呼ぶ。
【0032】
図3(B)に示すように、実際に利用されるシート300は、第1方向Dyに沿って波状に変形している。本実施例では、シート300における最も高い部分(高支持部265bに支持される部分)のギャップが、基準ギャップGPsと同じである。以下、基準シート300fに相当する平面300sを「基準面300s」と呼ぶ。基準面300sの高さは、図2(C)、図2(D)の基準高さSHと同じである。
【0033】
図示するように、シート300上の領域は、第1方向Dyに沿って交互に並ぶ第1種領域A1と第2種領域A2とに区分される。第1種領域A1は、押圧部269によって押さえられる部分を含む領域である。第2種領域A2は、高支持部265bによって支持される部分を含む領域である。
【0034】
本実施例においても、ノズル250nから基準ギャップGPsだけ離れた平らな基準面300sに印刷することを想定して、液滴D1、D2の吐出タイミングが調整される。図3(B)には、図3(A)と同じ目標位置Py1にドットを形成するために吐出された液滴D1、D2が示されている。基準面300sから遠い第1種領域A1に印刷を行う場合には、液滴D1、D2の着弾位置は、目標位置Py1からズレてしまう。第1液滴D1の着弾位置は、目標位置Py1から印刷ヘッド250の移動方向側(+Dy方向側)にズレた位置であり、第2液滴D2の着弾位置は、目標位置Py1から印刷ヘッド250の移動方向側(−Dy方向側)にズレた位置である。このようなドットの位置ズレは、ノズル面npとシート300との間のギャップと、基準ギャップGPsと、の間の差が大きいほど、大きい。
【0035】
一般に、目標濃度の色を印刷するために、互いに重ならない複数のドットが形成される。ここで、ギャップと基準ギャップGPsとの差が大きい場合には、ドットの位置ズレに起因して、一部のドットが他のドットと重なり得る。この結果、印刷済画像の濃度が、目標濃度よりも薄くなる場合がある(印刷済画像が明るくなる場合がある)。このような濃度のズレは、基準面300sに近い第2種領域A2と比べて、基準面300sから遠い第1種領域A1の方が、大きい。印刷済画像の観察者は、第1種領域A1と第2種領域A2との間の濃度の差を、濃度ムラとして、認識する。このような濃度ムラを抑制するために、印刷装置600(図1)は、印刷のための画像処理において、補正用総合データ134を利用した画像補正を行う。
【0036】
なお、第1種領域A1と第2種領域A2とは、ノズル面npから、押圧部269の最も低い部分と高支持部265bの上面との間の位置までのギャップ(「ギャップ閾値GPth」と呼ぶ)を用いて、区別することができる。すなわち、第1種領域A1は、ギャップがギャップ閾値GPth以上の範囲内にある領域である。第2種領域A2は、ギャップがギャップ閾値GPth未満の範囲内にある領域である。ギャップ閾値GPthは、例えば、押圧部269の最も低い部分と高支持部265bの上面との間の中間の高さに相当するギャップであり得る。
【0037】
次に、補正用総合データ134(図1)について説明する。補正用総合データ134は、図3(B)で説明した濃度ムラを低減するための濃度の補正量を定める。本実施例では、補正用総合データ134は、印刷装置600の出荷時に、予め、不揮発性メモリ130に格納される。補正用総合データ134の作成は、印刷装置600の製造者によって、行われる。
【0038】
図4は、補正用総合データ134の作成のフローチャートである。最初のステップS100は、テスト画像の印刷である。図5(A)は、テスト画像データ400dの説明図である。テスト画像データ400dは、複数(ここでは、10個)の基準画像B1i〜B10iを含むテスト画像400iを表す。各基準画像B1i〜B10iは、互いに輝度値が異なる一様なグレー画像である。図示された輝度値YB1〜YB10は、基準画像B1i〜B10iのそれぞれの輝度値を示す。輝度値YB1〜YB10の順番は、暗い順(濃度の高い順)である。各基準画像B1i〜B10iは、印刷された場合に第1方向Dy方向に沿って延びる矩形画像を表している。各基準画像B1i〜B10iは、印刷済の基準画像が印刷装置600の印刷可能範囲の−Dy方向側の端から+Dy方向の端までの全体を覆うのに十分な大きさを有する。これらの基準画像B1i〜B10iは、印刷された場合に−Dx方向に沿って順番に並ぶように、構成されている。なお、テスト画像データ400dは、マトリクス状に並ぶ複数の画素毎の画素データを含む。1つの画素の画素データは、その画素の色を表す階調値(例えば、赤(R)緑(G)青(B)のそれぞれの階調値)を表している。各基準画像B1i〜B10i内では、階調値は均一である。
【0039】
図5(B)は、印刷済テスト画像400の説明図である。印刷装置600は、テスト画像データ400dを用いて、濃度(例えば、輝度値)の補正をせずに、テスト画像400iを、波状に変形したシート300に印刷する。この印刷の結果に得られる画像が、印刷済テスト画像400である。印刷済テスト画像400は、複数の基準画像B1i〜B10i(図5(A))にそれぞれ対応する複数の印刷済基準画像B1〜B10を含む。各印刷済基準画像B1〜B10は、印刷装置600の印刷可能範囲PAの−Dy方向の端から+Dy方向の端まで、第1方向Dyに沿って延びる。図示するように、各印刷済基準画像B1〜B10は、複数の第1種領域A1に印刷された複数の部分画像と、複数の第2種領域A2に印刷された複数の部分画像とを含む。そして、図3(B)で説明したように、第1種領域A1では、第2種領域A2と比べて、濃度が薄い(画像が明るい)。なお、テスト画像400iの印刷に利用されるシート300は、印刷装置600で利用可能な最大サイズのシートであることが好ましい。こうすれば、印刷可能範囲PAの−Dy方向の端から+Dy方向の端までの全範囲を覆う印刷済テスト画像400を得ることができる。そして、第1方向Dyの全範囲をカバーする印刷済テスト画像を利用して補正用総合データ134を決定できるので、印刷可能範囲PA内の種々の位置に適した補正用総合データ134を得ることができる。
【0040】
図4の次のステップS110は、印刷済テスト画像400の光学的な読み取りである。本実施例では、いわゆる光学スキャナが、印刷済テスト画像400を読み取ることによって、印刷済テスト画像400を表す画像データ(「読取データ」とも呼ぶ)を生成する。読取データは、マトリクス状に並ぶ複数の画素毎の画素データを含む。1つの画素の画素データは、その画素の色を表す階調値(例えば、赤(R)緑(G)青(B)のそれぞれの階調値)を表している。
【0041】
次のステップS120は、読取データの解析である。図6は、解析の概要を示す説明図である。読取データは、図5(B)に示す複数の印刷済基準画像B1〜B10を表す複数の基準画像データを含む。図6の上部の基準画像データBjは、1つの印刷済基準画像を表すデータを示す。ステップS120では、1つの印刷済基準画像は、第1方向Dyに沿って並ぶn個(nは2以上の整数)の印刷済部分画像に区分される。そして、1つの印刷済基準画像を表す基準画像データBjは、n個の印刷済部分画像を表すn個の部分データSA(1)〜SA(n)に、区分される。そして、部分データSA(1)〜SA(n)毎に、平均輝度値Ya(1)〜Ya(n)が算出される。平均輝度値Ya(1)〜Ya(n)の算出は、基準画像毎に行われる。
【0042】
図6の下部のグラフは、平均輝度値Yaの位置依存性を示す。横軸は、第1方向Dyの位置Pyを示し、縦軸は、平均輝度値Yaを示す。位置Pyは、平均輝度値Yaの算出に利用される部分データSAによって表される部分画像の第1方向Dyの位置である。グラフ中には、10個の印刷済基準画像B1〜B10に対応する10個のグラフが、示されている。各グラフには、対応する印刷済基準画像と同じ符号B1〜B10が付されている。横軸には、高支持部265b(図2)の位置Pyb1〜Pyb7と、押圧部269の位置Pya1〜Pya6と、が示されている。図示するように、各印刷済基準画像B1〜B10の平均輝度値Yaは、第1方向Dyの位置Pyに応じて、波状に変化する。具体的には、押圧部269の位置Pya1〜Pya6では、平均輝度値Yaは比較的大きく(明るく)、高支持部265bの位置Pyb1〜Pyb7では、平均輝度値Yaは比較的小さい(暗い)。換言すれば、押圧部269の位置Pya1〜Pya6では、濃度は比較的小さく(淡く)、高支持部265bの位置Pyb1〜Pyb7では、濃度は比較的大きい(濃い)。
【0043】
本実施例では、このような印刷済画像の明るさ(濃度)のムラを抑制するために、輝度値の補正が行われる。具体的には、押圧部269の位置Pya1〜Pya6では、輝度値を相対的に低くし、高支持部265bの位置Pyb1〜Pyb7では、輝度値を相対的に高くする。
【0044】
図7は、第1補正用データ134a(以下、「振幅係数データ134a」と呼ぶ)を示すグラフである。縦軸は振幅係数Amcを示し、横軸は第1方向Dyの位置Pyを示す。振幅係数Amcは、輝度値の補正を行う場合の、補正量の大きさを表す係数である(振幅係数Amcが大きいほど、補正量が大きくなる(輝度値が小さくなる))。本実施例では、押圧部269の位置Pya1〜Pya6では、振幅係数Amcは「1」に設定され、高支持部265bの位置Pyb1〜Pyb7では、振幅係数Amcは「0」に設定される。すなわち、ギャップが、図3の基準面300sのギャップ(基準ギャップGPs)と同じである位置Pyでは、振幅係数Amcは、「0」である。他の位置Pyでは、振幅係数Amcは、線形補間によって決定される。振幅係数データ134aは、各位置Pya1〜Pya6、Pyb1〜Pyb7の振幅係数Amcを表すテーブルデータである。
【0045】
なお、他の位置Pyの振幅係数Amcは、線形補間に限らず、他の種々の補間(例えば、スプライン関数や正弦関数を用いた補間)によって決定されてもよく、また、変形したシートの実際の形状に応じて決定されてもよい。一般的には、振幅係数データ134aとしては、第1方向Dyの印刷位置が第1種領域A1内にある場合と第2種領域A2内にある場合とで補正量が異なるように、補正量の印刷位置依存性を規定するデータを採用可能である。ここで、振幅係数データ134aは、第1種領域A1において、第2種領域A2と比べて、濃度が相対的に高くなるような補正量を規定することが好ましい。また、振幅係数データ134aは、振幅係数Amcと位置Pyとの関係を定める他の任意の形式のデータであってよい(例えば、振幅係数Amcと位置Pyとの関係を定めるルックアップテーブル)。なお、振幅係数データ134aは、印刷済テスト画像400とは独立に、予め決められている。
【0046】
図6には、各グラフ(B1〜B10)の振幅Am1〜Am10が示されている。これらの振幅Am1〜Am10は、移動平均を用いたスムージング後の最大値と最小値との間の差を示す。スムージングの方法としては、移動平均を用いる方法に限らず、他の任意の方法を採用可能である。また、このようにして算出される振幅Am1〜Am10は、複数の第1種領域A1の複数の印刷済部分基準画像における濃度(輝度)と、複数の第2種領域A2の複数の印刷済部分基準画像における濃度(輝度)と、の間の濃度差を表している、ということができる。なお、このような濃度差の算出方法は、上述の方法に限らず、種々の方法を採用可能である。例えば、第1種領域A1の部分基準画像内の平均輝度値と、第2種領域A2の部分基準画像内の平均輝度値と、の間の差分を、濃度差(振幅Am1〜Am10)として採用してもよい。
【0047】
図示するように、振幅Am1〜Am10は、元の基準画像B1i〜B10iの輝度値YB1〜YB10に依存して異なる。具体的には、明るい基準画像(例えば、第10基準画像B10i)と暗い基準画像(例えば、第1基準画像B1i)とに関しては、振幅が小さく、それらの中間の明るさの基準画像に関しては、振幅が大きくなる。本実施例では、画像の明るさ(濃度)応じて異なる濃度ムラを抑制するために、補正量は、輝度値Yに応じて変化する。
【0048】
図8は、第2補正用データ134b(以下、「振幅データ134b」と呼ぶ)を示すグラフである。縦軸は、振幅Amを示し、横軸は、輝度値Yを示す。振幅Amは、輝度値の補正を行う場合の、補正量の大きさを表す(振幅Amが大きいほど、補正量が大きい(輝度値が小さくなる))。本実施例では、テスト画像データ400d(図5)の10個の輝度値YB1〜YB10においては、振幅Amは、読取データから算出された10個の振幅Am1〜Am10に、それぞれ設定される。他の輝度値Yでは、振幅Amは、線形補間によって決定される。このように、振幅データ134bは、各基準画像B1i〜B10iの各輝度値YB1〜YB10(濃度)に対応付けられる各補正量が、印刷済みの複数の基準画像B1〜B10から算出された複数の振幅Am1〜Am10(濃度差)のうちの対応する振幅が大きいほど、大きくなるように、補正量の輝度値(濃度)依存性を規定するデータである。例えば、5番目の基準画像B5iの輝度値YB5に対応付けられる補正量は、印刷済の基準画像B5から算出された振幅Am5が大きいほど、大きい。振幅データ134bは、各輝度値YB1〜YB10の振幅Amを表すテーブルデータである。なお、他の輝度値Yの振幅Amは、線形補間に限らず、他の種々の補間(例えば、スプライン関数を用いた補間)によって決定されてもよい。また、振幅データ134bは、振幅Amと輝度値Yとの関係を定める他の任意の形式のデータであってよい(例えば、振幅Amと輝度値Yとの関係を定めるルックアップテーブル)。
【0049】
図4の次のステップS130は、補正用総合データ134(振幅係数データ134aおよび振幅データ134b)の作成である。振幅係数データ134aは、図7で説明したように、印刷済テスト画像400とは独立に、予め決定される。振幅データ134bは、図8で説明したように、印刷済テスト画像400の読取データの解析結果に応じて決定される。作成された補正用総合データ134は、印刷装置600(図1)の不揮発性メモリ130に格納される。
【0050】
次に、補正用総合データ134を利用した印刷について説明する。図9は、印刷装置600(図1)によって実行される印刷処理のフローチャートである。プリンタドライバM100は、ユーザの指示(例えば、ユーザによる操作部170の操作や、通信部190に接続されたコンピュータ(図示せず)からのコマンド)に応じて、印刷処理を開始する。プリンタドライバM100は、印刷対象の対象画像データを、通信部190に接続された外部装置から取得する。
【0051】
最初のステップS200では、補正済データ生成部M104(図1)は、対象画像データを、ビットマップデータに変換する(ラスタライズ処理)。ビットマップデータに含まれる画素データは、例えば、赤(R)と緑(G)と青(B)の3つの色成分の階調値(例えば、0〜255の256階調)で画素の色を表すRGB画素データである。また、ビットマップデータの画素密度は、印刷解像度(ドットの最高密度)と同じである。
【0052】
ステップS200の次のステップScAでは、補正済データ生成部M104(図1)は、画像補正Scを行う。本実施例では、補正済データ生成部M104は、この画像補正Scにおいて、上述した補正用総合データ134に従ってビットマップデータの輝度値を補正する。この画像補正Scの詳細については、後述する。なお、画像補正Scは、ステップScAの代わりに、ステップScB、または、ステップS220において、実行され得る。ステップScBで画像補正Scを行う構成については、第2、第4実施例で説明し、ステップS220で画像補正Scを行う構成については、第3実施例で説明する。以下、画像補正Scの対象の画像データを「入力画像データ」と呼ぶ。また、画像補正Scから、印刷データの生成(後述するステップS220)までの一連の処理の全体が、「補正用データを利用して補正処理を実行することによって、入力画像データから補正済画像データ(具体的には、補正済の印刷データ)を生成する処理」の例である(以下、「補正済画像データ生成処理」、より具体的に、「補正済印刷データ生成処理」とも呼ぶ)。
【0053】
次のステップS210では、補正済データ生成部M104(図1)は、補正済のビットマップデータに含まれるRGB画素データを、シアンとマゼンタとイエロとブラックとの4つの色成分の階調値(ドット形成状態の総数(本実施例では、4値)よりも多い階調数。例えば、0〜255の256階調)で画素の色を表すCMYK画素データに変換する(色変換処理)。色変換処理は、RGB画素データとCMYK画素データとを対応付けるルックアップテーブルを用いて行われる。
【0054】
次のステップS220では、補正済データ生成部M104(図1)は、CMYK画素データを含むビットマップデータを、各画素毎のドットの形成状態を表すドットデータに変換する(ハーフトーン処理)。本実施例では、補正済データ生成部M104は、マトリクス136を利用した誤差拡散法に従って、ドットデータを生成する。ただし、ドット形成状態を決定する方法としては、誤差拡散法に限らず、他の任意の方法(例えば、ディザマトリクスを利用する方法)を採用可能である。また、ドット形成状態の総数は、CMYK画素データの階調数(ここでは、256)よりも少なく2以上の種々の数(例えば、2階調や4階調)を採用可能である。
【0055】
次のステップS230では、補正済データ生成部M104(図1)は、ドットデータから印刷データを生成する。印刷データは、印刷実行部200によって解釈可能なデータ形式で表されたデータである。本実施例では、補正済データ生成部M104は、いわゆる双方向印刷を実行するように、印刷データを生成する。
【0056】
次のステップS240では、補正済データ供給部M106は、印刷データを印刷実行部200に供給する。印刷実行部200は、受信した印刷データに従って、画像を印刷する。
【0057】
次に、画像補正Scについて説明する。最初のステップSc1では、補正用データ取得部M102(図1)が、補正用総合データ134(振幅係数データ134aと振幅データ134b)を、不揮発性メモリ130から取得する。次のステップSc2では、補正済データ生成部M104が、補正用総合データ134を利用した補正処理を実行する。なお、ステップSc1は、補正処理Sc2よりも前の任意のタイミングで実行されてよい。
【0058】
図10は、補正処理Sc2のフローチャートである。この補正処理Sc2は、画素毎に行われる。最初のステップS300では、補正済データ生成部M104(図1)は、振幅係数データ134aを参照して、処理対象の画素(以下「注目画素」と呼ぶ)の第1方向Dyの位置Pyに対応付けられた振幅係数Amcを取得する(図7参照)。
【0059】
次のステップS310では、補正済データ生成部M104は、注目画素の階調値Rin、Gin、Binを取得する。
【0060】
次のステップS320では、補正済データ生成部M104は、注目画素の階調値Rin、Gin、Binを利用して、輝度値Yinを算出する。本実施例では、階調値Rin、Gin、Binから輝度値Yinへの変換式として、以下の変換式が採用される。
Yin = 0.29891 * Rin + 0.58661 * Gin + 0.11448 * Bin
(「*」は乗算記号。以下同じ)
【0061】
次のステップS330では、補正済データ生成部M104は、振幅データ134bを参照して、輝度値Yinに対応付けられた振幅Amを取得する(図8参照)。
【0062】
次のステップS340では、補正済データ生成部M104は、輝度値Yinと、振幅係数Amcと、振幅Amとを利用して、補正済輝度値Ycを算出する。本実施例では、補正済輝度値Ycは、以下の式に従って算出される。
Yc = Yin − Am*Amc
この式から理解できるように、振幅Amが大きいほど、補正済輝度値Ycは小さくなる。また、振幅係数Amcが大きいほど、補正済輝度値Ycは小さくなる。
【0063】
次のステップS350では、補正済データ生成部M104は、補正済輝度値Ycを利用して、補正済階調値Rc、Gc、Bcを、算出する。本実施例では、補正済階調値Rc、Gc、Bcは、RGB色空間とYCbCr色空間との間の以下の変換式に従って、算出される。
Rc = Yc + 1.40200 * Cr
Gc = Yc - 0.34414 * Cb - 0.71414 * Cr
Bc = Yc + 1.77200 * Cb
ここで、Cr、Cbは、以下の式に従って、算出される。
Cb= -0.16874 * Rin - 0.33126 * Gin + 0.5 * Bin
Cr = 0.5 * Rin - 0.41869 * Gin - 0.08131 * Bin
【0064】
以上のように、各画素の階調値が補正される。
【0065】
図11は、印刷処理における輝度(濃度)の変化例を示す概略図である。図11(A)は、入力画像データIDin(画像補正Scによる補正前のビットマップデータ)を示す。入力画像データIDinは、階調値の均一なグレー画像を表す(以下、「入力画像Iin」とも呼ぶ)。図11(C)は、第1方向Dyの位置Pyと、輝度値Yと、の関係を示すグラフである。入力輝度値Y1は、入力画像データIDinによって表される輝度値である。入力輝度値Y1は、位置Pyに依存せずに、一定である。
【0066】
図11(B)は、入力画像データIDinに画像補正Scを実行することによって生成される補正済ビットマップデータIDcを示す。図中の領域A1、A2と方向Dx、Dyとは、補正済ビットマップデータIDcが印刷される場合の印刷済画像に基づく領域A1、A2と方向Dx、Dyとを示している。補正済ビットマップデータIDcは、第1種領域A1の濃度が、第2種領域A2の濃度と比べて、高い画像を表している(以下「補正画像Ic」と呼ぶ)。図11(C)に示す補正済輝度値Y2は、補正済ビットマップデータIDcによって表される輝度値である。補正済輝度値Y2は、押圧部269の位置Pya1〜Pya6の周辺(第1種領域A1)では、高支持部265bの位置Pyb1〜Pyb7の周辺(第2種領域A2)と比べて、小さい。仮に、補正済ビットマップデータIDcを、平らなシート(例えば、図3(B)の基準シート300f)に印刷した場合には、印刷済画像の輝度値は、補正済輝度値Y2のように変化する(例えば、押圧部269を取り外して印刷を行う場合)。
【0067】
図11(D)は、第1方向Dyの位置Pyと、仮想輝度値Yapと、の関係を示すグラフである。仮想輝度値Yapは、画像補正Scを行わずに、入力画像データIDinを用いて、波状に変形したシート上に印刷された印刷済入力画像の輝度値である。仮想輝度値Yapは、図6の平均輝度値Yaと同様に、算出される。仮想輝度値Yapは、図6のグラフと同様に、位置Pyに依存して波状に変化する。
【0068】
図11(E)は、第1方向Dyの位置Pyと、印刷済輝度値Ypと、の関係を示すグラフである。印刷済輝度値Ypは、補正済ビットマップデータIDcを、波状に変形したシート上に印刷して得られる印刷済画像の輝度値である。この印刷済輝度値Ypは、図6の平均輝度値Yaと同様の方法に従って、取得される。印刷済輝度値Ypは、シートの波状の変形に起因する輝度(濃度)の変化(図11(D)の仮想輝度値Yapのような変化)と、画像補正Scによる輝度の変化(図11(C)の補正済輝度値Y2のような変化)と、を総合して得られる輝度である。ここで、補正済輝度値Y2の変化パターンは、仮想輝度値Yapの変化パターンにおける山と谷とを入れ替えたパターンと、おおよそ同じである。従って、印刷済輝度値Ypの位置Pyに依存する変化は、入力画像データIDinを補正せずに印刷した場合(図11(D)参照)と比べて、小さくなる。
【0069】
以上、グレー画像を印刷する場合について説明したが、他の種々の色を表す画像を印刷する場合も、図10の手順に従って階調値が補正される。グレー(より一般的には、無彩色)とは異なる有彩色の画像を印刷する場合にも、図3(B)で説明したように、ドットの位置ズレが生じる。すなわち、有彩色画像を印刷する場合にも、無彩色画像を印刷する場合と同様に、第1方向Dyの位置に応じて濃度(明るさ)が変化する(濃度ムラが生じる)。有彩色画像の色は無彩色画像の色と異なるが、輝度値Yが小さいほどドットのパターンによって表される濃度が高いという特性は、有彩色画像と無彩色画像とに共通である。従って、有彩色画像を印刷する場合も、無彩色画像を印刷する場合と同様に補正処理Sc2を行うことによって、濃度ムラを抑制することができる。
【0070】
このように、第1実施例では、図11(C)に示すように、仮に、入力画像データIDin(図11(A))が階調値の均一な画像を表し、かつ、印刷時にシートが変形せずに平らな状態で搬送される場合には(例えば、図3(B)の基準シート300fに印刷する場合)、印刷済画像の輝度値(濃度)は、補正済輝度値Y2のように、第1方向Dyの位置Pyに依存して変化する。この場合、印刷済画像は、図11(B)に示す補正画像Icと、同様の画像である。すなわち、複数の第1種領域A1と複数の第2種領域A2とは、搬送方向Dxに沿って延びる領域であり、第1種領域A1と第2種領域A2とは、第1方向Dyに沿って交互に並ぶ。そして、第1種領域A1の印刷済部分画像の濃度が、第2種領域A2の印刷済部分画像の濃度よりも、高い。このように、図10の補正処理Sc2は、補正済輝度値Y2が示すように、第1種領域A1に印刷される部分画像の輝度(濃度)が、第2種領域A2に印刷される部分画像の輝度(濃度)とは異なるように、より具体的には、第1種領域A1に印刷される部分画像の輝度(濃度)が、第2種領域A2に印刷される部分画像の輝度(濃度)よりも低くなる(高くなる)ように、階調値を補正する。従って、シートの波状の変形に起因する印刷済画像の濃度ムラを低減することができる。
【0071】
また、図3には、特定範囲GRがハッチングで示されている。特定範囲GRは、ノズル面npとシートとの間のギャップがギャップ閾値GPth未満の範囲である。図示すように、第1種領域A1は、シート300とノズル250n(ノズル面np)との間のギャップが特定範囲GRの外にある領域であり、第2種領域A2は、ギャップが特定範囲GR内にある領域である。図11(C)の補正済輝度値Y2のように、補正処理Sc2は、第1種領域A1と第2種領域A2との間で濃度(輝度値)を異ならせるので、一部の領域(第1種領域A1)のギャップが特定範囲GRから外れることに起因する印刷済み画像の濃度ムラを低減することができる。特に、第2種領域A2のギャップの範囲である特定範囲GRが、ギャップ閾値GPth未満の範囲であるので、比較的ギャップが大きい第1種領域A1と、比較的ギャップが小さい第2種領域A2との間の濃度ムラを低減することができる。ここで、図11(C)の補正済輝度値Y2のように、補正処理Sc2は、第1種領域A1の濃度が第2種領域A2の濃度と比べて高くなるように、階調値を補正する。従って、シート300の波状の変形に起因して、第1種領域A1の印刷済み部分画像の濃度が、第2種領域A2の印刷済み部分画像の濃度と比べて、薄くなる場合に、第1種領域A1の印刷済み部分画像の濃度を、第2種領域A2の印刷済み部分画像の濃度に近づけることができるので、濃度ムラを抑制することができる。
【0072】
また、第1実施例では、補正処理Sc2(図10)の対象の画像データ(入力画像データ)は、RGBの各色成分の階調値で色を表す画像データ(ビットマップデータ)である。補正済データ生成部M104(図1)は、補正用総合データ134を参照することによって、入力画像データの注目画素のRGB階調値Rin、Gin、Binに対応付けられた輝度値Yinと、注目画素の第1方向Dyの位置Py(印刷位置)とを用いて、補正量(振幅Am*振幅係数Amc)を特定し、特定された補正量に従って、補正済RGB階調値Rc、Gc、Bcを算出する(図10)。そして、補正済データ生成部M104は、補正済RGB階調値Rc、Gc、Bcに従って、補正済印刷データを生成する(図9:S210〜S230)。このように、補正量が、注目画素の第1方向Dyの印刷位置に応じて変化するので、シート300の第1方向Dyに沿った波状の変形に起因する濃度ムラを抑制することができる。さらに、補正量が、注目画素のRGB階調値Rin、Gin、Bin(より具体的には、輝度値Yin(RGB階調値Rin、Gin、Binに対応付けられた濃度に対応する))に応じて変化するので、濃度ムラの特性がRGB階調値に応じて異なる場合であっても、適切に、濃度ムラを抑制することができる。特に、本実施例では、RGB階調値によって表される輝度値に対して補正が行われる。この結果、印刷画像の濃度を適切に補正することができる。
【0073】
また、第1実施例では、図2、図3に示すように、シート搬送部260は、シート300を下面から支持する複数の高支持部265bを含む。複数の高支持部265bは、第1方向Dyと平行に移動する印刷ヘッド250に対向する位置に、第1方向Dyに沿って並んで配置されている。また、シート搬送部260は、シート300を、上面から、下方に向かって(より具体的には、高支持部265bとシート300との接触位置(基準高さSH)よりも下方に向かって)押圧する複数の押圧部269を含む。各押圧部269の第1方向Dyの位置は、隣り合う2つの高支持部265bの間に配置されている。従って、シート搬送部260は、シート300を適切に波状に変形させることができる。特に、本実施例では、複数の押圧部269の第1方向Dyの位置と、複数の高支持部265bの第1方向Dyの位置とは、交互に並んでいる。従って、シート300が、山と谷とを繰り返す波状に変形するので、シート300が、図2(C)の符号302で示すように、意図せずに変形する可能性を低減できる。
【0074】
B.第2実施例:
図12は、第2実施例の補正処理Sc2のフローチャートである。第2実施例では、第1実施例とは異なり、画像補正Sc(図9)がステップScAではなくステップScBで行われる。補正処理Sc2の対象の画像データ(入力画像データ)は、色変換処理(S210)後の画像データ(CMYKの各色成分の階調値で色を表すビットマップデータ)である。第2実施例では、補正処理Sc2は、CMYKの色成分毎に、かつ、印刷画素毎に、行われる。また、第1実施例の振幅データ134b(図1、図8)の代わりに、CMYKの色成分毎に準備された振幅データが利用される。振幅係数データ134aは、第1実施例と同じである。補正用データ取得部M102は、画像補正ScのステップSc1では、振幅係数データ134aと、CMYKのそれぞれの振幅データと、を取得する。画像補正Sc以外の処理の内容と、印刷装置600の構成とは、第1実施例と同じである。
【0075】
以下、シアンC成分の処理を例として、説明を行う。最初のステップS400では、補正済データ生成部M104(図1)は、振幅係数データ134aを参照して、処理対象の画素(注目画素)の第1方向Dyの位置Pyに対応付けられた振幅係数Amcを取得する(図8)。
【0076】
次のステップS410では、補正済データ生成部M104は、注目画素のシアンの階調値Cinを取得する。
【0077】
次のステップS420では、補正済データ生成部M104は、シアン用の振幅データ(以下「シアン振幅データ134bC」とも呼ぶ)を参照して、シアン階調値Cinに対応付けられた振幅CAmを取得する。シアン振幅データ134bCは、第1実施例の振幅データ134bと同様に、テスト画像を利用して決定される。決定の手順は、図4の第1実施例と同じである。
【0078】
図13(A)は、シアン振幅データ134bCの決定に利用されるテスト画像データ400Cdの説明図である。第2実施例では、テスト画像データ400Cdは、CMYKの各色成分の階調値によって複数の画素のそれぞれの色を表している。テスト画像データ400Cdによって表されるテスト画像400Ciは、図5(A)の基準画像B1i〜B10iとそれぞれ同じ形状を有する基準画像Bc1i〜Bc10iを含む。シアン用の基準画像Bc1i〜Bc10iは、シアン濃度(シアン階調値)が互いに異なる一様なシアン色領域である(シアン以外の色成分の階調値はゼロである)。図示されたシアン階調値CB1〜CB10は、基準画像Bc1i〜Bc10iのそれぞれのシアン階調値を示す。シアン階調値CB1〜CB10の順番は、濃度の高い順(暗い順)である。
【0079】
図13(B)は、印刷済テスト画像400Cの説明図である。印刷装置600(図1)は、テスト画像データ400Cdを用いて、濃度の補正をせずに、テスト画像400Ciをシート300に印刷する。印刷済テスト画像400Cは、図5(B)の印刷済基準画像B1〜B10と同様の形状を有する印刷済基準画像Bc1〜Bc10を含む。印刷済基準画像Bc1〜Bc10は、図13(A)の基準画像Bc1i〜Bc10iに、それぞれ対応する。図示を省略するが、印刷済基準画像Bc1〜Bc10は、図5(B)の印刷済基準画像B1〜B10と同様に、複数の第1種領域A1と複数の第2種領域A2とを含む。そして、第1種領域A1では、第2種領域A2と比べて、印刷画像が明るい(見た目のシアン濃度が薄い)。
【0080】
印刷済テスト画像400Cを用いて、図6で説明した方法と同じ方法に従って、各シアン階調値CB1〜CB10の振幅CAmが決定される。振幅CAmは、印刷済テスト画像400Cの読取データの階調値(例えば、RGBの階調値)を利用して算出される。具体的には、RGBの階調値を用いて算出されるシアン成分の階調値の変化に従って、振幅CAmが決定される。図13(C)は、シアン階調値Cinと、振幅CAmとの関係(すなわち、シアン振幅データ134bC)を示すグラフである。シアン階調値CB1〜CB10においては、振幅CAmは、読取データから算出された値に決定される。他のシアン階調値Cinにおいては、振幅CAmは、補間によって決定される。
【0081】
図12の次のステップS430では、補正済データ生成部M104は、シアン階調値Cinと、振幅係数Amcと、振幅CAmとを用いて、補正済階調値Ccを算出する。本実施例では、補正済階調値Ccは、以下の式に従って算出される。
Cc = Cin + CAm*Amc
この式から理解できるように、振幅係数Amcが大きいほど、補正済階調値Ccは大きくなる。第1種領域A1においては、第2種領域A2と比べて振幅係数Amcが大きいので、第2種領域A2と比べて印刷画像のシアン濃度を高めることができる。この結果、第1種領域A1と第2種領域A2との間のシアンの濃度の差を低減することができる。より一般的には、補正量(CAm*Amc)が、第1方向Dyの印刷位置に応じて変化するので、シート300の第1方向Dyに沿った波状の変形に起因する濃度ムラを抑制することができる。また、振幅CAmが大きいほど、補正済階調値Ccは大きくなる。ここで、振幅CAmは、シアン階調値Cinに応じて変化する。すなわち、補正量がシアン階調値Cinに応じて変化する。従って、濃度ムラの特性が、シアン階調値Cinに応じて異なる場合であっても、適切に、濃度ムラを抑制できる。
【0082】
シアン以外の色成分(マゼンタ、イエロ、ブラック)についても、同様に、同じ色のインクを利用したテスト画像を利用して、振幅データが決定される。そして、補正済データ生成部M104は、シアン階調値Cinから補正済階調値Ccを算出するのと同様に、他の色成分の補正済階調値を決定する。そして、補正済データ生成部M104は、インク色の補正済階調値に従って、ドット形成状態を決定する(図9:S220)。
【0083】
以上のように、第2実施例では、補正済データ生成部M104は、入力画像データのCMYKの各色成分の階調値(インク色階調値と呼ぶ)に対して補正を行い、補正済のインク色階調値に従って、補正済印刷データを生成するので、印刷画像の濃度を適切に補正することができる。また、第2実施例では、補正済データ生成部M104は、振幅係数データ134aと、CMYK毎の振幅データと、を参照することによって、入力画像データの注目画素のインク色階調値(例えば、シアン階調値Cin)と、注目画素の第1方向Dyの位置Py(印刷位置)とを用いて、補正量(例えば、振幅CAm*振幅係数Amc)を特定し、特定された補正量に従って、補正済インク色階調値(例えば、補正済階調値Cc)を算出する(図12)。そして、補正済データ生成部M104は、補正済インク色階調値に従って、補正済印刷データを生成する(図9:S220〜S230)。このように、補正量が、注目画素の第1方向Dyの印刷位置に応じて変化するので、シート300の第1方向Dyに沿った波状の変形に起因する濃度ムラを抑制することができる。さらに、補正量が、注目画素のインク色階調値に応じて変化するので(例えば、シアンの補正量は、シアン階調値Cinに応じて変化する)、濃度ムラの特性がインク色階調値に応じて異なる場合であっても、適切に、濃度ムラを抑制することができる。
【0084】
また、第2実施例では、画像補正Scの対象の画像データと画像補正Scの内容とを除いた他の構成は、第1実施例と同じである。従って、第2実施例は、第1実施例と同様の種々の効果を奏する。
【0085】
C.第3実施例:
図14は、第3実施例のハーフトーン処理の概略図であり、図15は、ハーフトーン処理のフローチャートである。第3実施例では、画像補正Sc(図9)は、ハーフトーン処理(S220)に組み込まれる。すなわち、ハーフトーン処理が画像補正Scに対応する。補正処理Sc2の対象の画像データは、第2実施例と同様に、色変換処理(S210)後の画像データ(CMYKの各色成分の階調値で色を表すビットマップデータ)である。ただし、第3実施例では、CMYKの補正済階調値は決定されずに、補正処理Sc2(すなわち、ハーフトーン処理)を通じて、ドット形成状態が決定される。補正用の振幅データは、図13で説明した第2実施例と同じである(CMYKの色成分毎に、準備される)。振幅係数データ134aは、図7の第1実施例と同じである。画像補正Sc(ステップS220)以外の処理の内容と、印刷装置600の構成とは、第1実施例と同じである。
【0086】
図15のフローチャートに沿って、説明を行う。図15の処理は、インク色毎、かつ、画素毎に、実行される。この処理によって、画素毎のドット形成状態が決定される。本実施例では、ドット形成状態は、互いにインク量(すなわち、ドットのサイズ(ドットによって表現される濃度))の異なる以下の4つの状態の中から決定される。
A)大ドット
B)中ドット(中ドットの濃度<大ドットの濃度)
C)小ドット(小ドットの濃度<中ドットの濃度)
D)ドット無し
【0087】
最初のステップS500では、補正済データ生成部M104(図1)は、マトリクス136(図1)と、誤差バッファEB(図14)と、を用いて、処理対象の画素(注目画素)の誤差値Etを算出する。後述するように、誤差バッファEBは、各画素における濃度誤差(階調の誤差値)を格納している。誤差バッファEBは、揮発性メモリ120(図1)に、設けられている。マトリクス136は、注目画素の周辺の所定の相対位置に配置された画素に、ゼロより大きい重みを割り当てている。図14のマトリクス136では、記号「+」が注目画素を表し、周辺の画素に重みa〜mが割り当てられている。重みa〜mの合計は1である。補正済データ生成部M104は、この重みに従って、周辺の画素の誤差値の重み付き和を、注目画素の誤差値Etとして算出する。次に、補正済データ生成部M104は、誤差値Etと、注目画素の階調値(以下、入力階調値Vinとも呼ぶ。例えば、シアンの階調値)との和を、第1階調値Vaとして算出する。なお、図14に示すマトリクス136は、−Dy方向にドット状態決定処理が進行する場合のマトリクスである。+Dy方向にドット状態決定処理が進行する場合には、注目画素を中心に第1方向Dyの相対位置を反転させたマトリクスが利用される。
【0088】
続くステップS510〜S540では、補正済データ生成部M104は、第1階調値Vaと、3つの閾値Th1〜Th3と、の間の大小関係に基づいて、注目画素のドット形成状態を決定する。本実施例では、入力階調値Vinは、0〜255の256段階で表される。第1閾値Th1は、小ドットを出力するための閾値である(例えば、ゼロ)。第2閾値Th2は、中ドットを出力するための閾値である(例えば、84)。第3閾値Th3は、大ドットを出力するための閾値である(例えば、170)。
【0089】
補正済データ生成部M104は、以下のように、ドット形成状態を決定する。
A)第1階調値Va>第3閾値Th3(S510:Yes):ドット形成状態=「大ドット」(S515)
B)第1階調値Vaが第3閾値Th3以下であり、かつ、第1階調値Va>第2閾値Th2(S520:Yes):ドット形成状態=「中ドット」(S525)
C)第1階調値Vaが第2閾値Th2以下であり、かつ、第1階調値Va>第1閾値Th1(S530:Yes):ドット形成状態=「小ドット」(S535)
D)第1階調値Vaが第1閾値Th1以下である(S530:No):ドット形成状態=「ドット無し」(S540)
【0090】
ドット形成状態の決定の次のステップS550では、補正済データ生成部M104は、決定されたドット形成状態に対応付けられた階調値(ドット階調値Vbと呼ぶ)を取得する。本実施例では、以下のようにドット階調値が設定されている。
A)大ドット:ドット階調値Vb=255
B)中ドット:ドット階調値Vb=170
C)小ドット:ドット階調値Vb=84
D)ドット無し:ドット階調値Vb=ゼロ
ドット階調値Vbは、ドット形成状態によって表される階調値(濃度)を表している。このような対応関係は、ドット階調値テーブルとして、補正済データ生成部M104に予め組み込まれている。
【0091】
次のステップS560では、補正済データ生成部M104は、ドット階調値Vbから補正済ドット階調値Vcを決定する。補正済ドット階調値Vcの決定は、上述の補正用総合データ134を利用して行われる。この処理の詳細については、後述する。
【0092】
次のステップS570では、補正済データ生成部M104は、対象誤差値Eaを算出する。対象誤差値Eaは、以下の式で表される。
対象誤差値Ea=第1階調値Va−補正済ドット階調値Vc
補正済データ生成部M104は、算出した対象誤差値Eaを、注目画素の誤差値として、誤差バッファEBに登録する。
【0093】
図16は、ステップS560のフローチャートである。以下、シアンC成分の処理を例として説明を行う。最初のステップS562では、補正用データ取得部M102(図1)が、補正用総合データ134(振幅係数データ134aとCMYKの色成分毎の振幅データ)を不揮発性メモリ130から取得する。補正用データ取得部M102は、このステップS562を、ステップS560の最初の代わりに、ステップS560よりも先の任意の段階(例えば、図9のステップS220の最初の段階)で実行してもよい。
【0094】
続くステップS564、S565、S566は、図12のステップS400、S410、S420と、それぞれ同じである。次のステップS567では、補正済データ生成部M104は、ドット階調値Vbと、振幅係数Amcと、振幅CAmとを用いて、補正済ドット階調値Vcを算出する。本実施例では、補正済ドット階調値Vcは、以下の式に従って算出される。
Vc = Vb − CAm*Amc
この式から理解できるように、振幅CAmが大きいほど、補正済ドット階調値Vcは小さくなる。また、振幅係数Amcが大きいほど、補正済ドット階調値Vcは小さくなる。補正済ドット階調値Vcが小さくなることは、図15のステップS570で算出される対象誤差値Eaが大きくなることを、意味している。対象誤差値Eaが大きくなると、注目画素から周囲の画素に伝搬する誤差値Etが大きくなるので、周囲の画素で濃度の高いドットが形成されやすくなる。第1種領域A1では、第2種領域A2と比べて振幅係数Amcが大きいので、第2種領域A2と比べて印刷画像のシアン濃度を高めることができる。この結果、第1種領域A1と第2種領域A2との間のシアン濃度の差を低減することができる。より一般的には、補正量(CAm*Amc)が、第1方向Dyの印刷位置に応じて変化するので、シート300の第1方向Dyに沿った波状の変形に起因する濃度ムラを抑制することができる。また、振幅CAmが大きいほど、補正済ドット階調値Vcは小さくなる。ここで、振幅CAmは、シアン階調値Cinに応じて変化する。すなわち、補正量がシアン階調値Cinに応じて変化する。従って、濃度ムラの特性が、シアン階調値Cinに応じて異なる場合であっても、適切に、濃度ムラを抑制できる。
【0095】
シアン以外の色成分(マゼンタ、イエロ、ブラック)についても、同様に、ドット形成状態が決定される。
【0096】
以上のように、第3実施例では、補正処理Sc2(図14)の対象の画像データ(入力画像データ)は、CMYKの各色成分の階調値(インク色階調値)で色を表す画像データ(ビットマップデータ)である。そして、補正済データ生成部M104は、注目画素のインク色階調値(例えば、シアン階調値Cin)と注目画素の第1方向Dyの位置Pyとから補正量(例えば、振幅CAm*振幅係数Amc)を特定し、補正量を利用する誤差拡散法に従って、注目画素のドット形成状態を決定する。従って、印刷画像の濃度を適切に補正することができる。特に、本実施例では、補正量は、注目画素の誤差値(対象誤差値Ea)の決定に利用される。従って、ドット形成状態を補正量に応じて補正することができる。また、誤差拡散法に従ったドット形成状態の決定に利用される補正量が、注目画素の第1方向Dyの印刷位置に応じて変化するので、シート300の第1方向Dyに沿った波状の変形に起因する濃度ムラを抑制することができる。さらに、補正量が、注目画素のインク色階調値に応じて変化するので(例えば、シアンの補正量は、シアン階調値Cinに応じて変化する)、濃度ムラの特性がインク色階調値に応じて異なる場合であっても、適切に、濃度ムラを抑制することができる。
【0097】
なお、第3実施例では、画像補正Scの対象の画像データと画像補正Scの内容とを除いた他の構成は、第1実施例と同じである。従って、第3実施例は、第1実施例と同様の種々の効果を奏する。
【0098】
また、補正済ドット階調値Vcの算出式としては、上述の算出式に限らず、補正量(CAm*Amc)に応じてドット階調値が補正される種々の式を採用可能である。例えば、以下の算出式を採用してもよい。
Vc = Vb − CAm*Amc*(Vb/Vbmax)
ここで、最大ドット階調値Vbmaxは、複数のドット形成状態のドット階調値Vbのうちの最大値である。補正量に追加された比率(Vb/Vbmax)は、最大のドット形成状態に対する、決定されたドット形成状態の濃度比率を示している。本実施例では、最大ドット階調値Vbmaxは、大ドットのドット階調値Vb(255)である。このような比率を利用すれば、補正済データ生成部M104は、ドット階調値Vbに適した補正量を利用することができる。
【0099】
なお、補正量を、注目画素のドット形成状態の決定に利用してもよい。例えば、補正済データ生成部M104は、第1階調値Vaに補正量を加算して得られる第2階調値と、3つの閾値Th1〜Th3と、の間の大小関係に基づいて、注目画素のドット形成状態を決定してもよい。ここで、ドット形成状態の総数としては、4に限らず、CMYK画素データの階調数(ここでは、256)よりも少なく2以上の種々の数(例えば、2)を採用可能である。
【0100】
D.第4実施例:
図17は、第4実施例における振幅データ134bGを示す概略図である。第4実施例においては、第1実施例と同様に、図9のステップScAで、画像補正Scが行われる。ただし、図5、図6、図8に示す第1実施例とは異なり、第4実施例では、輝度値を利用せずに、RGBのそれぞれの階調値が補正される。補正に利用される振幅は、輝度値Yinの代わりに、注目画素の階調値Rin、Gin、Bin(すなわち、注目画素の色)に応じて、決定される。また、補正に利用される振幅は、RGBの色成分毎に、準備される。振幅係数データ134aは、第1実施例と同じである。補正用データ取得部M102(図1)は、画像補正ScのステップSc1では、振幅係数データ134aと、RGBのそれぞれの振幅データと、を取得する。画像補正Sc以外の処理の内容と、印刷装置600の構成とは、第1実施例と同じである。
【0101】
図17には、RGBの3つの階調値Rin、Gin、Binで表される色立体CCが示されている。入力画像データによって表される色は、この色立体CC内の点(色点とも呼ぶ)で表される。振幅データ134bGは、予め決められた複数の色点のそれぞれにおける、RGBの振幅RAm、GAm、BAmを定めている。複数の色点は、無彩色の色点に加えて、種々の有彩色の色点を含む。図17中には、振幅データ134bGに含まれる複数の色点のうちの一部の色点CP1〜CP9のそれぞれの階調値と振幅とが示されている。例えば、第5色点CP5は、階調値(Rin,Gin,Bin)=(167,0,88)であり、振幅(RAm,GAm,BAm)=(17.5,0,6.8)である。複数の色点のそれぞれの振幅は、色点毎に準備された基準画像を含むテスト画像を利用して、決定される。補正用データの生成の手順は、図4に示す実施例と同じである。
【0102】
図17の下部には、テスト画像データ400Gdが示されている。テスト画像データ400Gdは、振幅データ134bGに含まれる複数の色点にそれぞれ対応付けられた複数の基準画像を表している。色点と基準画像とは一対一に対応付けられている。本実施例の基準画像と図5(A)の基準画像との間の差異は、本実施例の基準画像の色が、グレーではなく、対応する色点の色であることだけである。図中には、第5色点CP5に対応付けられた第5基準画像Bp5iが示されている。この第5基準画像Bp5iは、第5色点CP5と同じRGBの階調値によって表される一様な画像である。
【0103】
図17の下部には、印刷済テスト画像400Gが示されている。印刷済テスト画像400Gは、図4の実施例と同様に、テスト画像データ400Gdを印刷することによって、形成される。図中には、第5基準画像Bp5iに対応付けられた印刷済第5基準画像Bp5が示されている。図示を省略するが、印刷済第5基準画像Bp5は、複数の第1種領域A1と複数の第2種領域A2とに亘って、印刷されている。そして、第1種領域A1では、第2種領域A2と比べて、印刷済画像jの濃度が薄い(印刷済画像が明るい)。
【0104】
図17の下部のグラフは、読取データのRGBのそれぞれの平均階調値Ra、Ga、Baの位置依存性の一例を示している。読取データは、図4の実施例と同様に、印刷済テスト画像400Gを光学的に読み取ることによって、生成される。図6の実施例とは異なり、本実施例では、平均輝度値Yaの代わりに、RGBの各色成分の平均階調値Ra、Ga、Baが算出される。そして、RGBの各色成分の振幅RAm、GAm、BAmが算出される。図中のグラフは、印刷済第5基準画像Bp5から得られるグラフを示す。RGBの各色成分の振幅RAm5、GAm5、BAm5は、第5色点CP5に対応付けられた振幅として利用される。
【0105】
なお、補正対象のRGB画像データの画素値が、予め決められた複数の色点とは異なる色を表す場合には、その色の近傍の複数の色点を用いた補間によって、RGBの各色成分の振幅RAm、GAm、BAmが算出される。そして、以下の式に従って、補正が行われる。
Rc = Rin − RAm*Amc
Gc = Gin − GAm*Amc
Bc = Bin − BAm*Amc
ここで、Rin、Gin、Binは、補正前のRGBの階調値を示し、Rc、Gc、Bcは、補正済のRGBの階調値を示す。この式は、第1実施例の補正済輝度値Ycの算出式と同様の式である。振幅RAm、GAm、BAmが大きいほど、補正済階調値Rc、Gc、Bcは小さくなる。また、振幅係数Amcが大きいほど、補正済階調値Rc、Gc、Bcは小さくなる。補正済階調値Rc、Gc、Bcが小さいほど、印刷画像の濃度が高くなる(印刷画像が明るくなる)。従って、本実施例では、第1実施例と同様に、第1種領域A1の印刷済画像の濃度が、補正によって高くなる。この結果、濃度ムラを抑制される。
【0106】
また、本実施例では、振幅データ134bGは、RGBの色成分毎に振幅RAm、GAm、BAmを定めている。すなわち、RGBの色成分毎に、補正が行われる。従って、本実施例では、輝度値を補正する場合と比べて、きめ細かい補正が可能である。この結果、印刷済画像の濃度ムラを、より適切に抑制することができる。
【0107】
また、本実施例では、振幅データ134bGは、複数の無彩色点と複数の有彩色点とのそれぞれのRGBの振幅RAm、GAm、BAmを定めている。すなわち、振幅データ134bGは、RGBの色成分の組み合わせ毎に、振幅RAm、GAm、BAmを定めている。従って、種々の色の印刷画像の濃度ムラを抑制できる。
【0108】
また、第4実施例では、補正処理でRGBの色成分毎に補正を行う点を除いた他の構成は、第1実施例と同じである。従って、第4実施例は、第1実施例と同様の種々の効果を奏する。
【0109】
E.第5実施例:
図18は、第5実施例における印刷システム1000bの構成を示すブロック図である。この印刷システム1000bは、ネットワーク900と、ネットワーク900を介して互いに接続された印刷装置600bとサーバ500と、を含む。本実施例では、印刷装置600bは、自ら、テスト画像400を印刷し、読取データを生成する。サーバ500は、印刷装置600bから読取データを取得し、振幅データ134bを生成する。印刷装置600bは、サーバ500から、振幅データ134bを取得し、印刷に利用する。テスト画像を利用した振幅データ134bの生成の手順の概略は、図4の実施例と同じである。以下、第1実施例と同じ振幅データ134bを生成することとして説明を行う。印刷装置600bによって実行される印刷処理は、第1実施例の印刷処理と同じである。振幅係数データ134aは、上述の各実施例と同様に、印刷装置600bに予め組み込まれている。
【0110】
次に、印刷装置600bの構成について説明する。印刷装置600bの構成は、テスト画像を利用した振幅データ134bの生成のための変更を図1の印刷装置600に加えて得られる。本実施例の印刷装置600bのための変更は、以下の通りである。
(A)制御装置100bのCPU110の機能に、テスト画像印刷データ供給部M107と、データ送信部M110と、の機能が追加されている。
(B)印刷装置600bに、スキャナ290が追加されている。
(C)不揮発性メモリ130に、テスト画像データ400dが格納されている。
本実施例では、スキャナ290は、種々のシートを光学的に読み取る汎用の光学スキャナである。また、制御装置100bのハードウェア構成は、図1の制御装置100の構成と同じである。また、印刷装置600bの他の構成は、図1に示す印刷装置600の構成と、同じである(図18では、一部の構成の図示が省略されている)。通信部190は、ネットワーク900に接続されている。
【0111】
サーバ500は、CPU510と、DRAM等の揮発性メモリ520と、EEPROM等の不揮発性メモリ530と、通信部590と、を有するコンピュータである。通信部590は、ネットワーク900に接続するためのインタフェースである。不揮発性メモリ530は、プログラム532を格納する。CPU510は、プログラム532を実行することによって、データ取得部M111と、解析部M109と、補正用データ生成部M108と、データ提供部M112と、のそれぞれの機能を実現する(機能の詳細については、後述)。
【0112】
次に、振幅データ134bの生成について説明する。印刷装置600bは、ユーザの指示に応じて、テスト画像の印刷を行う。最初のステップS600では、テスト画像印刷データ供給部M107は、テスト画像データ400dを不揮発性メモリ130から取得する。次のステップS610では、テスト画像印刷データ供給部M107は、テスト画像データ400dを印刷データ400dpに変換し、印刷データ400dp(以下、「テスト画像印刷データ400dp」とも呼ぶ)を印刷実行部200に供給する。元のテスト画像データ400dは、図5(A)のテスト画像データ400dと同じである。テスト画像印刷データ400dpは、テスト画像データ400dを用いて、濃度補正をせずに、生成される。テスト画像印刷データ400dpは、テスト画像データ400dのテスト画像400i(図5)と同じ、濃度ムラのない画像を表している。なお、テスト画像データ400dからテスト画像印刷データ400dpへの変換は、補正済データ生成部M104によって行われてもよい。
【0113】
次のステップS620で、印刷実行部200は、受信したテスト画像印刷データ400dpに従って、テスト画像400を印刷する。次のステップS630では、ユーザは、印刷済テスト画像400を、スキャナ290に、読み取らせる。スキャナ290は、印刷済テスト画像400を表す読取データを生成する。なお、スキャナ290は、印刷済テスト画像400の読み取り専用の装置であってもよい。例えば、印刷ヘッド250(図2)に固定されたスキャナが、テスト画像400の印刷と並行して、印刷済テスト画像400の読み取りを進行してもよい。
【0114】
続けて、データ送信部M110は、スキャナ290から読取データを取得し(ステップS700)、ネットワーク900を通じて読取データをサーバ500に送信する(ステップS710)。ステップS715では、サーバ500のデータ取得部M111は、ネットワーク900を通じて取得した読取データを、解析部M109に供給する。ステップS717では、解析部M109は、読取データを解析することによって、振幅Am1〜Am10(図6)を算出する。ステップS720では、補正用データ生成部M108は、算出された振幅Am1〜Am10を利用して、振幅データ134bを生成する。振幅データ134bは、補正用総合データ134の少なくとも一部を規定する補正規定データの例である。ステップS730では、補正用データ生成部M108は、生成した振幅データ134bを、不揮発性メモリ530に格納する。
【0115】
次に、データ提供部M112は、不揮発性メモリ530から振幅データ134bを取得し(ステップS740)、ネットワーク900を通じて振幅データ134bを印刷装置600bに送信する(ステップS750)。印刷装置600bの補正用データ取得部M102は、サーバ500からの振幅データ134bを取得し、取得した振幅データ134bを不揮発性メモリ130に格納する(ステップS760)。なお、振幅係数データ134aは、予め、不揮発性メモリ130に格納されている。図9のステップSc1では、補正用データ取得部M102は、不揮発性メモリ130から補正用総合データ134を取得する。この補正用総合データ134は、印刷済テスト画像400の解析結果を用いて生成されるデータである、ということができる。
【0116】
以上のように、印刷装置600bは、振幅データ134bの生成のためのテスト画像400を自ら印刷する。そして、印刷実行部200によって実際に印刷された印刷済テスト画像400に応じて生成された補正用データ(具体的には、振幅データ134b)が補正処理に利用される。従って、印刷装置600bは、自己の印刷実行部200に適した補正を行うことができる。この結果、印刷済画像の濃度ムラを、適切に抑制できる。
【0117】
また、サーバ500は、印刷済テスト画像400の読取データを取得するデータ取得部M111と、読取データを解析する解析部M109と、解析結果を用いて振幅データ134bを生成する補正用データ生成部M108と、振幅データ134bを制御装置100bに提供するデータ提供部M112と、を備える。従って、サーバ500は、印刷済テスト画像400の読取データを利用することによって、適切に振幅データ134bを提供することができる。なお、振幅データ134bは、補正用総合データ134の少なくとも一部を規定する補正規定データの例である。
【0118】
なお、サーバ500のデータ提供部M112は、テスト画像400を印刷した印刷装置600bに限らず、他の印刷装置(例えば、第1実施例の印刷装置600)に、振幅データ134bを供給してもよい。いずれの場合も、サーバ500のデータ取得部M111は、通信部590に接続されたネットワーク900を通じて読取データを取得し、サーバ500のデータ提供部M112は、そのネットワーク900を通じて振幅データ134bを提供することが好ましい。こうすれば、サーバ500は、ネットワーク900を通じて、適切に、振幅データ134bを提供することができる。
【0119】
また、印刷装置600bからスキャナ290とデータ送信部M110とを省略してもよい。この場合には、印刷装置600bとは別に準備されたスキャナ290を利用して読取データを生成すればよい。
【0120】
また、補正用データ生成部M108は、振幅データ134bと振幅係数データ134aとを含む補正用総合データ134を生成し、データ提供部M112は、補正用総合データ134を印刷装置600bに提供してもよい。この場合、補正用データ生成部M108によって生成されるデータ(補正用総合データ134)は、補正用総合データ134の少なくとも一部(ここでは、全部)を規定する補正規定データの例である。また、テスト画像と振幅データとしては、第1実施例と同じものに限らず、上述の各実施例のものを採用可能である。
【0121】
F.第6実施例:
図19は、第6実施例における印刷装置600cの構成を示すブロック図である。本実施例では、印刷装置600cは、自ら、テスト画像400を印刷し、読取データを生成し、読取データを解析し、そして、振幅データ134bを生成する。印刷装置600cの構成は、読取データから振幅データ134bを生成するための変更を図18の印刷装置600bに加えて得られる。本実施例の印刷装置600cのための変更は、以下の通りである。
(A)制御装置100cのCPU110の機能に、補正用データ生成部M108と、解析部M109と、読取データ取得部M114と、の機能が追加されている。
補正用データ生成部M108と解析部M109とは、図18のサーバ500に設けられる補正用データ生成部M108と解析部M109と、それぞれ同じである。制御装置100cのハードウェア構成は、図18の制御装置100bの構成と同じである。また、印刷装置600cの他の構成は、図18の印刷装置600bの構成と、同じである(図19では、一部の構成の図示が省略されている)。
【0122】
次に、振幅データ134bの生成について説明する。図示されたステップS600〜S630の処理は、図18のステップS600〜S630の処理と、同じである。続くステップS640では、読取データ取得部M114は、読取データをスキャナ290から取得する。次のステップS645では、解析部M109は、取得された読取データを解析することによって、振幅Am1〜Am10(図6)を算出する。次のステップS650では、補正用データ生成部M108は、算出された振幅Am1〜Am10を利用して、振幅データ134b(第2補正用データ134b)を生成する。次のステップS660では、補正用データ生成部M108は、生成した振幅データ134bを、不揮発性メモリ130に格納する。なお、振幅係数データ134aは、予め、不揮発性メモリ130に格納されている。従って、補正用データ生成部M108は、振幅データ134bを生成することによって、補正用総合データ134の生成を完了することができる。印刷時には、補正用データ取得部M102は、補正用データ生成部M108によって生成された補正用総合データ134を、不揮発性メモリ130から取得する。
【0123】
以上のように、制御装置100cは、読取データの解析と、補正用データ(具体的には、振幅データ134b)の生成とを行うので、印刷実行部200に適した補正用データを、容易に利用することができる。また、印刷装置600cは、自ら印刷したテスト画像400を利用して、自ら振幅データ134b(補正用総合データ134)を生成する。従って、印刷装置600bは、自己の印刷実行部200に適した補正用総合データ134を利用することができる。また、印刷装置600cは、サーバ500を利用せずに、単独で、補正用総合データ134を生成することができる。この結果、印刷装置600cのユーザの利便性を向上できる。
【0124】
なお、印刷装置600cからスキャナ290を省略してもよい。この場合には、印刷装置600cとは別に準備されたスキャナ290を利用して読取データを生成すればよい。また、不揮発性メモリ130が予め振幅係数データ134aを格納せずに、補正用データ生成部M108が、振幅データ134bと振幅係数データ134aとを含む補正用総合データ134を生成してもよい。また、印刷装置600cは、生成した振幅データ134b(あるいは、補正用総合データ134)を、図示しないサーバに送信してもよい。そして、サーバは、受信したデータを、他の印刷装置に提供してもよい。また、テスト画像と振幅データとしては、第1実施例と同じものに限らず、上述の各実施例のものを採用可能である。
【0125】
G.第7実施例:
図20(A)は、基準ギャップの別の実施例を示す説明図である。図20(A)は、図3(B)と同様に、液滴D1、D2の着弾位置と、シート300とを示している。この実施例では、図1、図2に示す印刷装置600が利用される。そして、シート300の高支持部265bに支持される部分の代わりに、押圧部269によって下方に押さえられる部分のギャップGPsaが、基準ギャップとして利用される(以下、ノズル250n(ノズル面np)から基準ギャップGPsaだけ離れた平面300saを「基準面300sa」と呼ぶ)。本実施例では、液滴D1、D2の吐出タイミングは、基準面300saに印刷する場合を想定して、調整されている(図中では、液滴D1、D2が第1方向Dyの同じ目標位置Py1にドットを形成することが想定されている)。従って、ギャップが小さいほど、すなわち、シート300がノズル250nに近いほど、ドットの位置ズレが大きくなる。そこで、本実施例では、ギャップがギャップ閾値GPth以上の範囲(特定範囲GRa)内にある第2種領域A2aでは、濃度が相対的に低く補正され、ギャップが特定範囲GRaの外にある第1種領域A1aでは、濃度が相対的に高く補正される。図中では、特定範囲GRaがハッチングで示されている。
【0126】
振幅係数Amcの位置Py依存性のパターンは、図7の実施例の振幅係数Amcの「1」と「0」とを入れ替えたパターンと同じである。すなわち、押圧部269の位置Pya1〜Pya6では、振幅係数Amcは「0」に設定され、高支持部265bの位置Pyb1〜Pyb7では、振幅係数Amcは「1」に設定される(図示省略)。すなわち、ギャップが、基準面300saの基準ギャップGPsaと同じである位置(第1方向Dyの位置Py)では、振幅係数Amcは「0」である。振幅Amは、図4の手順に従って決定される。
【0127】
図20(B)は、基準ギャップの更に別の実施例を示す説明図である。図20(B)も、図20(A)と同様に、+Dy方向に移動する印刷ヘッド250から吐出される液滴D1a、D1bと、−Dy方向に移動する印刷ヘッド250から吐出される液滴D2a、D2bと、の着弾位置と、シート300とを示している。この実施例では、図1、図2に示す印刷装置600が利用される。そして、押圧部269の最も低い部分と高支持部265bの上面との間の中間位置のギャップGPsbが、基準として利用される(以下、ノズル250n(ノズル面np)からギャップGPsbだけ離れた平面300sbを「基準面300sb」と呼ぶ)。液滴D1a、D1b、D2a、D2bの吐出タイミングは、基準面300sbに印刷する場合を想定して、調整されている(図中では、液滴D1a、D2aが同じ目標位置Py1aにトッドを形成することが想定され、液滴D1b、D2bが同じ目標位置Py1bにドットを形成することが想定されている)。従って、ギャップが基準のギャップGPsbから離れるほど、ドットの位置ズレが大きくなる。そこで、本実施例では、ギャップと基準ギャップGPsbとの間の差の絶対値が特定の値以下である範囲GRb内にギャップがある第2種領域A2bでは、濃度が相対的に低く補正され、ギャップが範囲GRb外にある第1種領域A1b1、A1b2では、濃度が相対的に高く補正される。図中では、範囲GRbがハッチングで示されている。
【0128】
振幅係数Amcの位置Py依存性は、以下の通りである。すなわち、押圧部269の位置Pya1〜Pya6と、高支持部265bの位置Pyb1〜Pyb7と、のそれぞれにおいて、振幅係数Amcは「1」に設定される。隣り合う押圧部269と高支持部265bとの間の中間位置において、具体的には、ギャップが、基準面300sbの基準ギャップGPsbと同じである位置(第1方向Dyの位置Py)では、振幅係数Amcは「0」に設定される。振幅Amは、図4の手順に従って決定される。
【0129】
なお、図20(A)、図20(B)のそれぞれは、上述の各実施例に適用可能である。
【0130】
H.変形例:
(1)印刷済画像の濃度は、単位面積当たりのインク量によって表され、明るさと逆の相関がある。従って、明るさと相関があるパラメータ(例えば、輝度値Yや、RGB階調値)は、濃度を表すパラメータでもある。濃度を直接的に表すパラメータ(例えば、インク色階調値)の代わりに、明るさと相関があるパラメータを補正する場合も、「濃度を補正している」ということができる。例えば、いわゆるL*a*b*色空間で表された画像データを画像補正Scの対象として採用し、L*成分の階調値を補正してもよい。
【0131】
(2)上記各実施例において、画像補正Scの対象の画像データ(入力画像データ)の色空間は、RGB色空間またはCMYK色空間に限らず、他の種々の色空間(例えば、CMY色空間、YCbCr色空間、または、L*a*b*色空間)であってもよい。また、入力画像データの画素密度は、印刷解像度と異なっていてもよい。例えば、図9のステップ200(ラスタライズ)の前の画像データが、画像補正Scの対象であってもよい。
【0132】
(3)印刷実行部の構成としては、上記各実施例の印刷実行部200の構成に限らず、種々の構成を採用可能である。例えば、印刷実行部が利用可能なインクとしては、CMYKの4種類のインクに限らず、1以上の種々のインクを採用可能である。また、図3で説明したドットの位置ズレは、双方向印刷を行う場合に限らず、単方向印刷を行う場合にも、生じ得る。従って、上述した各実施例の画像補正Scを、単方向印刷を行う印刷実行部に適用してもよい。また、ドット形成状態の総数としては、2または4に限らず、2以上の種々の数を採用可能である。
【0133】
(4)図2(D)に示すように、ノズル250nとシート300との間のギャップは、搬送方向Dxの位置に応じて異なり得る。本実施例では、−Dx方向側のノズル250nの位置よりも、+Dx方向側のノズル250nの位置の方が、ギャップが小さい。そこで、上記各実施例において、補正済データ生成部M104は、ノズル250nの搬送方向Dxの位置に応じて、補正量を変化させてもよい。この際、補正済データ生成部M104は、第1方向Dyの位置Pyに応じて補正量を変化させるのと同様に、ドット形成時の搬送方向Dxの位置に応じて補正量を変化させる。また、テスト画像の印刷は、ギャップの最も大きいノズル250nによって行われることが好ましい。
【0134】
(5)上記各実施例において、補正用総合データ134は、シート(印刷媒体)の種類毎に、準備されてもよい。シートの種類は、例えば、「光沢紙」や「マット紙」といった一般的な種類の中から選択されてもよく、また、シートの型番によって種類が特定されてもよい。補正用データ取得部M102は、シートの種類に対応付けられた補正用総合データ134を取得する。こうすれば、補正済データ生成部M104は、シートの種類に適した補正を行うことができる。
【0135】
また、サーバ(例えば、図18のサーバ500)は、複数種類のシートのための複数種類の補正用総合データ134(または、振幅データ134b)を、メモリ(例えば、不揮発性メモリ530)に格納してもよい。そして、印刷制御装置(例えば、補正用データ取得部M102)は、ユーザによって指定された種類のシートに対応付けられた補正用総合データ134(または、振幅データ134b)を、ネットワークを介して、上記サーバから取得してもよい。
【0136】
(6)上記各実施例において、テスト画像の構成としては、図5、図13、図17の構成に限らず、種々の構成を採用可能である。一般には、テスト画像印刷データは、互いに濃度の異なる複数の基準画像であって、各基準画像内で階調値が均一な複数の基準画像を含むテスト画像を表し、印刷済テスト画像における複数の印刷済基準画像のそれぞれは、複数の第1種領域の少なくとも1つに印刷される第1種の印刷済部分基準画像と、複数の第2種領域の少なくとも1つに印刷される第2種の印刷済部分基準画像と、を含むことが好ましい。例えば、複数の基準画像が、複数枚のシートに分散して印刷されてもよい。1つの基準画像が、印刷可能範囲PA(図5)の−Dy方向の端から+Dy方向の端までの間の一部の範囲にのみ、印刷されてもよい。
【0137】
また、解析部M109と補正用データ生成部M108とは、以下のように、補正用データを生成することが好ましい。すなわち、解析部M109は、複数の印刷済基準画像のそれぞれに関して、印刷済みテスト画像を光学的に読み取ることによって得られる読取データによって表される濃度の差を算出する。この濃度差は、第1種の印刷済み部分基準画像における濃度と第2種の印刷済み部分基準画像における濃度との間の濃度差である。補正用データ生成部M108は、テスト画像印刷データによって表される基準画像のそれぞれの濃度に対応付けられる補正量が、印刷済みの基準画像から算出された濃度差が大きいほど大きく、かつ、シート300上の第1方向Dyの印刷位置が第1種領域内にある場合と第2種領域内にある場合とで補正量が異なるように、補正用データを生成する。この構成によれば、シート300上の第1方向Dyの印刷位置が第1種領域内にある場合と第2種領域内にある場合とで補正量が異なるように補正用データが生成されるので、シートの第1方向に沿った波状の変形に起因する濃度ムラを抑制することができる。さらに、印刷済みの基準画像から算出された濃度差が大きいほど補正量が大きくなるように補正用データが生成されるので、濃度ムラの特性が濃度に応じて異なる場合であっても、適切に、濃度ムラを抑制することができる。
【0138】
(7)上記各実施例では、第1補正用データ134a(振幅係数データ134a)と第2補正用データ134b(振幅データ134b)とが互いに独立であるが、補正済データ生成部M104は、第1補正用データ134aと第2補正用データ134bとを結合して得られる補正用データを、利用してもよい。例えば、補正用データは、輝度値Yinと第1方向Dyの位置Pyとの組み合わせと、補正量と、を対応付けるルックアップテーブルであってもよい。
【0139】
(8)上記各実施例において、シート搬送部260の構成としては、図1、図2に示す構成に限らず、種々の構成を採用可能である。例えば、低支持部265aが省略されてもよい。また、押圧部269は、種々の部材を用いて構成されてよく、例えば、硬質樹脂部材を用いて構成されてもよく、板バネ等の弾性体を用いて構成されてもよい。また、支持部265a、265bの第1部分265a1、265b1の代わりに、第1ローラ261と対向する従動ローラが設けられてもよい。同様に、第5部分265a5、265b5の代わりに、第2ローラ262と対向する従動ローラが設けられてもよい。
【0140】
(9)上記各実施例において、基準ギャップGPs、GPsa、GPsbは、印刷結果を利用して特定することができる。すなわち、第1方向Dyの位置Pyが互いに異なる複数の直線(搬送方向Dxに沿って延びる直線)を表す画像データを用いて印刷を行う。ギャップが基準ギャップに近い印刷領域(位置Py)では、ドットの位置ズレが小さいので、直線がはっきりと印刷される。一方、ギャップが基準ギャップから遠い印刷領域(位置Py)では、ドットの位置ズレが大きいので、直線がぼやけて印刷される。このように、直線がはっきりと印刷された位置Pyにおけるギャップが、基準ギャップである。また、第1種領域と第2種領域とは、以下のように特定することができる。すなわち、第1種領域は、第2種領域と比べて、実際のギャップと特定された基準ギャップとの間の差の絶対値が大きい領域である。
【0141】
(10)上記各実施例において、各制御装置100、100b、100cと、印刷実行部200とが、互いに異なる筐体に収容された独立の装置として、実現されてもよい。また、上記各実施例において、ネットワークを介して互いに通信可能な複数のコンピュータが、印刷のための画像処理に要する機能を一部ずつ分担して、全体として、印刷のための画像処理の機能を提供してもよい。このように、印刷制御装置(例えば、制御装置100、100b、100c)は、複数のコンピュータを含むコンピュータシステムによって構成されてもよい(このようなコンピュータシステムを利用する技術は、クラウドコンピューティングとも呼ばれる)。
【0142】
(11)上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、図1の補正済データ生成部M104の機能を、論理回路を有する専用のハードウェア回路によって実現してもよい。
【0143】
また、本発明の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、メモリーカードやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスクドライブ等のコンピュータに接続されている外部記憶装置も含んでいる。
【0144】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0145】
100、100b、100c...制御装置、110...CPU、120...揮発性メモリ、130...不揮発性メモリ、132...プログラム、134...補正用データ、134a...振幅係数データ(第1補正用データ)、134b...振幅データ(第2補正用データ)、134bC...シアン振幅データ、134bG...振幅データ、136...マトリクス、170...操作部、180...表示部、190...通信部、200...印刷実行部、210...制御回路、212...移動制御部、214...ヘッド駆動部、216...搬送制御部、240...ヘッド移動部、242...移動モータ、244...支持軸、250...印刷ヘッド、250n...ノズル、260...シート搬送部、261...第1ローラ、262...第2ローラ、263...搬送モータ、265...シート台、265a...低支持部、265b...高支持部、269...押圧部、290...スキャナ、300...シート、300f...基準シート、300s、300sa、300sb...基準面、400、400C、400G...印刷済テスト画像、400d、400Cd、400Gd...テスト画像データ、400i、400Ci...テスト画像、400dp...テスト画像印刷データ、500...サーバ、510...CPU、520...揮発性メモリ、530...不揮発性メモリ、532...プログラム、590...通信部、600、600b、600c...印刷装置、900...ネットワーク、1000b...印刷システム、M100...プリンタドライバ、M102...補正用データ取得部、M104...補正済データ生成部、M106...補正済データ供給部、M107...テスト画像印刷データ供給部、M110...データ送信部、M111...データ取得部、M109...解析部、M108...補正用データ生成部、M112...データ提供部、M114...読取データ取得部、EB...誤差バッファ、np...ノズル面、
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷のための画像処理に関し、特に、印刷時にシートが変形された状態で搬送される場合の画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
インクドットを記録媒体(例えば、紙)に形成する印刷が知られている。このような印刷では、記録媒体が、インクドットの形成に起因して、プラテンから記録ヘッド方向へ浮く場合がある。例えば、記録媒体が、丸まってしまい、プラテンから記録ヘッド方向へ浮く場合がある。高品位な印刷結果を得るために、このような記録媒体の浮きを抑制する技術が提案されている。例えば、特許文献1では、記録媒体を波打ち形状にすることによって、記録媒体を記録ヘッド方向に浮かなくする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−138923号公報
【特許文献2】特開2004−106978号公報
【特許文献3】特開2007−59972号公報
【特許文献4】特開平07−285251号公報
【特許文献5】特開2001−261188号公報
【特許文献6】特開2004−122609号公報
【特許文献7】特開2003−040507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、記録媒体(シートとも呼ぶ)を波状に変形させた状態で搬送する場合には、印刷ヘッドとシートとの間の距離が、シート上の位置に依存して異なり得る。この結果、シートの波状の変形に起因して、印刷済み画像にムラが生じる可能性があった。
【0005】
本発明の主な利点は、シートの波状の変形に起因する印刷済み画像のムラを抑制することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]第1方向に沿って前記シートを波状に変形させた状態で、前記シートを前記第1方向と交差する第2方向に搬送するシート搬送部と、液滴を吐出する複数のノズルを有する印刷ヘッドと、前記第1方向と平行に前記印刷ヘッドを移動させるヘッド移動部と、前記印刷ヘッドの移動中に前記印刷ヘッドを駆動することによって前記波状に変形したシートに向かって前記液滴を吐出させる印刷ヘッド駆動部と、を含む印刷実行部に、印刷を実行させる印刷制御装置であって、補正用データを利用して補正処理を実行することによって、入力画像データから補正済画像データを生成する処理を実行する補正済データ生成部と、前記補正済画像データを前記印刷実行部に供給する補正済データ供給部と、を備え、前記補正済画像データを生成する前記処理は、仮に、前記入力画像データが階調値の均一な画像を表し、かつ、印刷時に前記シートが変形せずに平らな状態で搬送される場合に、前記シート上の複数の第1種領域に印刷される複数の第1種の印刷済み部分画像の濃度が、前記シート上の複数の第2種領域に印刷される複数の第2種の印刷済み部分画像の濃度とは異なるように、前記入力画像データを利用する前記補正処理を実行して前記補正済画像データを生成する処理を含み、前記複数の第1種領域と前記複数の第2種領域とは前記第2方向に沿って延びる領域であり、前記各第1種領域と前記各第2種領域とは前記第1方向に沿って交互に並んでいる、印刷制御装置。
【0008】
この構成によれば、仮に、入力画像データが階調値の均一な画像を表し、かつ、印刷時にシートが変形せずに平らな状態で搬送される場合に、シート上の複数の第1種領域に印刷される複数の第1種の印刷済み部分画像の濃度が、シート上の複数の第2種領域に印刷される複数の第2種の印刷済み部分画像の濃度と異なるように、入力画像データを利用する補正処理が実行されて補正済画像データが生成される。このため、シートの波状の変形に起因する印刷済み画像の濃度ムラを低減することができる。
【0009】
[適用例2]第1方向に沿って前記シートを波状に変形させた状態で、前記シートを前記第1方向と交差する第2方向に搬送するシート搬送部と、液滴を吐出する複数のノズルを有する印刷ヘッドと、前記第1方向と平行に前記印刷ヘッドを移動させるヘッド移動部と、前記印刷ヘッドの移動中に前記印刷ヘッドを駆動することによって前記波状に変形したシートに向かって前記液滴を吐出させる印刷ヘッド駆動部と、を含む印刷実行部に印刷を実行させる印刷制御装置に、印刷制御処理のためのデータを提供する提供装置であって、テスト画像を表すテスト画像印刷データを利用して前記印刷実行部によって印刷された印刷済みテスト画像を光学的に読み取ることによって得られる読取データを取得するデータ取得部であって、前記テスト画像印刷データは、互いに濃度の異なる複数の基準画像であって、前記各基準画像内で階調値が均一な前記複数の基準画像を含む前記テスト画像を表し、前記印刷済みテスト画像における複数の印刷済みの基準画像のそれぞれは、前記複数の第1種領域の少なくとも1つに印刷される第1種の印刷済み部分基準画像と、前記複数の第2種領域の少なくとも1つに印刷される第2種の印刷済み部分基準画像と、を含む、データ取得部と、前記読取データを解析する解析部と、前記解析部による解析の結果を用いて、印刷制御処理で利用される補正用データの少なくとも一部を規定する補正規定データを生成する補正用データ生成部と、前記補正規定データを前記印刷制御装置に提供するデータ提供部と、を備える提供装置。
【0010】
この構成によれば、印刷済みテスト画像の読取データを利用することによって、適切に補正規定データを提供することができる。
【0011】
[適用例3]適用例2に記載の提供装置であって、さらに、ネットワークに接続するためのインタフェースを含み、前記データ取得部は、前記ネットワークを通じて前記読取データを取得し、前記データ提供部は、前記ネットワークを通じて前記補正規定データを提供する、提供装置。
【0012】
この構成によれば、提供装置は、ネットワークを通じて、適切に、補正用データを提供することができる。
【0013】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、印刷制御方法および印刷制御装置、印刷方法および印刷装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】印刷装置600のブロック図である。
【図2】印刷装置600の説明図である。
【図3】液滴D1、D2の着弾位置を示す説明図である。
【図4】補正用総合データ134の作成のフローチャートである。
【図5】テスト画像の説明図である。
【図6】解析の概要を示す説明図である。
【図7】第1補正用データ134a(振幅係数データ134a)を示すグラフである。
【図8】第2補正用データ134b(振幅データ134b)を示すグラフである。
【図9】印刷処理のフローチャートである。
【図10】補正処理Sc2のフローチャートである。
【図11】印刷処理における輝度(濃度)の変化例を示す概略図である。
【図12】第2実施例の補正処理Sc2のフローチャートである。
【図13】第2実施例のテスト画像の説明図である。
【図14】第3実施例のハーフトーン処理の概略図である。
【図15】ハーフトーン処理のフローチャートである。
【図16】ステップS560のフローチャートである。
【図17】第4実施例における振幅データ134bGを示す概略図である。
【図18】第5実施例における印刷システム1000bの構成を示すブロック図である。
【図19】第6実施例における印刷装置600cの構成を示すブロック図である。
【図20】基準ギャップの別の実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.第1実施例:
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。図1は、本発明の一実施例としての印刷装置600のブロック図である。この印刷装置600は、制御装置100と、印刷実行部200と、を含む。
【0016】
制御装置100は、印刷装置600の動作を制御するコンピュータである。制御装置100は、CPU110と、DRAM等の揮発性メモリ120と、EEPROM等の不揮発性メモリ130と、タッチパネル等の操作部170と、液晶ディスプレイ等の表示部180と、外部装置との通信のためのインタフェースである通信部190と、を備える。通信部190は、例えば、いわゆるUSBインタフェース、または、IEEE802.3に準拠したインタフェースであってよい。
【0017】
不揮発性メモリ130は、プログラム132と、補正用データ134と、マトリクス136と、を格納している。補正用データ134は、第1補正用データ134aと第2補正用データ134bとを含む(以下、補正用データ134を、補正用総合データ134とも呼ぶ)。CPU110は、プログラム132を実行することによって、プリンタドライバM100の機能を含む種々の機能を実現する。プリンタドライバM100は、印刷対象の画像データ(「対象画像データ」とも呼ぶ)を利用して、印刷実行部200に印刷を実行させる。対象画像データは、例えば、外部装置(例えば、コンピュータまたはUSBフラッシュメモリ)から印刷装置600に供給された画像データである。
【0018】
本実施例では、プリンタドライバM100は、補正用データ取得部M102と、補正済データ生成部M104と、補正済データ供給部M106と、を含む。後述するように、補正用データ取得部M102は、補正用総合データ134を不揮発性メモリ130から取得する。補正済データ生成部M104は、補正用総合データ134を利用して補正処理を実行することによって、対象画像データから補正済の印刷データ(「補正済画像データ」とも呼ぶ)を生成する。補正済データ供給部M106は、補正済画像データを印刷実行部200に供給する。印刷実行部200は、受信した補正済画像データに従って、印刷を実行する。
【0019】
印刷実行部200は、インクの液滴をシート(印刷媒体)に向かって吐出することによって、シート上にドットを形成する。印刷済画像は、ドットのパターンによって表される。印刷実行部200は、制御回路210と、印刷ヘッド250と、ヘッド移動部240と、シート搬送部260と、を含む。印刷ヘッド250の底面には、インクの液滴を吐出する複数のノズルが設けられている(図示省略)。本実施例では、印刷ヘッド250は、シアンとマゼンタとイエロとブラックとの4種類のインクを吐出可能である。シート搬送部260は、シートを、所定の搬送方向に搬送する。ヘッド移動部240は、印刷ヘッド250を、搬送方向と直交する方向に移動させる。印刷ヘッド250が、シートと対向する位置を移動しつつインクの液滴をシートに向かって吐出する動作と、シート搬送部260が、シートを搬送する動作と、の繰り返しによって、画像の印刷が進行する。制御回路210は、ヘッド移動部240を制御する移動制御部212と、印刷ヘッド250を制御するヘッド駆動部214と、シート搬送部260を制御する搬送制御部216と、を含む。制御回路210は、制御装置100からの補正済画像データ(印刷データ)に従ってヘッド移動部240と、印刷ヘッド250と、シート搬送部260と、を制御する。
【0020】
図2(A)は、印刷装置600の斜視図を示す。図中には、3つの方向Dx、Dy、Dzが示されている。2つの方向Dx、Dyは、それぞれ、水平な方向であり、Dz方向は、鉛直上方向である。Dy方向は、Dx方向と直交する方向である。Dy方向は、印刷ヘッド250の移動方向と平行である(以下、Dy方向を「第1方向Dy」とも呼ぶ)。Dx方向は、シート300の搬送方向と同じである(以下、Dx方向を「搬送方向Dx」または「第2方向Dx」とも呼ぶ)。以下、Dx方向を「+Dx方向」とも呼び、Dx方向の反対方向を「−Dx方向」とも呼ぶ。+Dy方向、−Dy方向、+Dz方向、−Dz方向についても、同様である。
【0021】
シート搬送部260は、搬送モータ263と、第1ローラ261と、第2ローラ262と、シート台265と、押圧部269と、を含む。シート台265は、シート300を、下面から、おおよそ水平に、支持する。2つのローラ261、262は、シート台265の上面と対向する位置に、配置されている。第1ローラ261は、シート台265の−Dx方向側の部分と対向し、第2ローラ262は、シート台265の+Dx方向側の部分と対向する。各ローラ261、262は、Dy方向と平行なローラであり、搬送モータ263によって、回転駆動される。シート300は、ローラ261、262とシート台265との間に挟持され、回転するローラ261、262によって搬送方向Dxに搬送される。
【0022】
本実施例では、印刷装置600が、特定サイズの長方形シート(例えば、A4サイズの紙)に印刷を行う場合には、長方形シートの短辺が搬送方向Dxと平行であり、長辺が第1方向Dyと平行となるように、シートが配置される。この結果、シートの長辺が搬送方向Dxと平行である場合と比べて、印刷装置600の搬送方向Dxのサイズを小さくすることができる。
【0023】
ヘッド移動部240は、移動モータ242と、支持軸244と、を含む。支持軸244は、第1ローラ261と第2ローラ262との間に配置され、第1方向Dyと平行に延びる。支持軸244は、印刷ヘッド250を、支持軸244に沿ってスライド可能に、支持する。移動モータ242は、図示しないベルトによって印刷ヘッド250に接続されている。移動モータ242は、印刷ヘッド250を、第1方向Dyと平行に、移動させる。本実施例では、ヘッド駆動部214(図1)は、印刷ヘッド250が第1方向Dyに移動する最中と、印刷ヘッド250が第1方向Dyの反対方向(−Dy方向)に移動する最中と、のそれぞれにおいて、印刷ヘッド250を駆動して液滴を吐出させる(双方向印刷)。
【0024】
図2(B)は、ヘッド移動部240とシート搬送部260との拡大斜視図を示す。図中では、シート台265の搬送方向Dxと垂直な断面(2つのローラ261、ローラ262の間の位置の断面)も示されている。図示するように、シート台265は、複数の低支持部265aと、複数の高支持部265bと、を含む。高支持部265bは、低支持部265aと比べて、高い位置でシート300を支持する。低支持部265aと高支持部265bとは、第1方向Dyに沿って交互に並んで配置されている。図2(C)は、高支持部265bの断面図を示し、図2(D)は、低支持部265aの断面図を示す。図2(C)、図2(D)は、いずれも、搬送方向Dxと鉛直上方向Dzとに平行な断面を示す。
【0025】
図2(C)に示すように、高支持部265bは、−Dx方向側から+Dx方向側に並んで配置された5つの部分265b1〜265b5を含む。第1部分265b1は、第1ローラ261と対向する部分であり、第3部分265b3は、印刷ヘッド250(複数のノズル250n)と対向する部分であり、第5部分265b5は、第2ローラ262と対向する部分である。これら3つの部分265b1、265b3、265b5は、それぞれ、同じ高さの上面を有し、シート300を下面から支持する(以下、これらの部分の上面の高さを「基準高さSH」と呼ぶ)。残りの2つの部分265b2、265b4は、基準高さSHよりも下方に凹んでおり、シート300から離れている。なお、図示するように、印刷ヘッド250には、搬送方向Dxの位置が互いに異なる複数のノズル250nが設けられている。本実施例では、CMYKのインク毎に、そのような複数のノズル250nが設けられている。
【0026】
図2(D)に示すように、低支持部265aは、−Dx方向側から+Dx方向側に並んで配置された5つの部分265a1〜265a5を含む。第1部分265a1と第5部分265a5とは、図2(C)の第1部分265b1と第5部分265b5と、それぞれ同じである。第3部分265a3は、図2(C)の第3部分265b3と同様に、印刷ヘッド250(複数のノズル250n)と対向する。ただし、第3部分265a3の上面の高さは、基準高さSHよりも低い。また、第3部分265a3の上面は、−Dx側から+Dx側へ向けて斜め上方向に傾斜している(第2ローラ262に近いほど、高い)。残りの2つの部分265a2、265a4は、基準高さSHよりも下方に凹んでおり、シート300から離れている。
【0027】
第2部分265a2の上方には、押圧部269が配置されている。押圧部269は、第1部分265a1の上面と対向する位置から、搬送方向Dx側に向けて、斜め下方向に傾斜して延びる。押圧部269の搬送方向Dx側の端の高さは、基準高さSHよりも低い。第1ローラ261と第1部分265a1との間から送り出されたシート300は、押圧部269によって曲げられて、基準高さSHよりも下方に送られる。押圧部269の搬送方向Dx側では、シート300は、第3部分265a3に下面を支持されて、徐々に基準高さSHに近づく。ただし、印刷ヘッド250(複数のノズル250n)と対向する位置では、シート300の高さは、基準高さSHよりも低い。第3部分265a3の搬送方向Dx側では、シート300は、第2ローラ262と第5部分265a5とに挟まれる。
【0028】
図2(B)に示すように、本実施例では、押圧部269および低支持部265aと、高支持部265bと、が第1方向Dyに沿って交互に並ぶ。これにより、シート搬送部260は、第1ローラ261と第2ローラ262との間で搬送方向Dxと交差する第1方向Dyに沿って波状に変形させた状態で、シート300を搬送方向Dxに搬送する。シート300を波状に変形させる理由は、シート300が丸まることに起因してシート300がシート台265から印刷ヘッド250側へ浮き上がることを抑制するためである。シート300が変形せずに平らなまま搬送されると仮定すると、ノズル250nからインクの液滴を受けたシートが、図2(C)の符号302で示すように意図せずに変形する可能性がある。このような意図しない変形は、印刷不良を引き起こし得る。特に、本実施例では、長方形シートの短辺が搬送方向Dxと平行であり、長辺が第1方向Dyと平行である。この場合には、長辺が搬送方向Dxと平行である場合と比べて、意図しない変形が生じる可能性が高い。そこで、本実施例の印刷装置600は、搬送方向Dxと交差する第1方向Dyに沿って波状にシート300を変形させることによって、意図しない変形を抑制する。
【0029】
図3は、印刷ヘッド250から吐出された液滴D1、D2の、シート上の着弾位置(第1方向Dyの位置)を示す。第1液滴D1は、+Dy方向に移動する印刷ヘッド250から吐出される液滴を示し、第2液滴D2は、−Dy方向に移動する印刷ヘッド250から吐出される液滴を示す。また、図3(A)は、変形せずに平らなシート300f(以下、「基準シート300f」とも呼ぶ)に印刷を行う仮想的な場合を示し、図3(B)は、波状に変形した実施例のシート300に印刷を行う場合を示す。
【0030】
ノズル250nは、鉛直下方に向けて、液滴D1、D2を吐出する。また、ノズル250nは、液滴D1、D2の吐出時に、シート300、300fの上方で、水平に移動する。従って、シート300、300fから見ると、液滴D1、D2は、印刷ヘッド250の移動方向に向かって、斜めに飛ぶ。図3(A)に示すように、同じ目標位置Py1にドットを形成するためには、+Dy方向に移動する印刷ヘッド250は、目標位置Py1よりも−Dy方向側の位置で第1液滴D1を吐出し、−Dy方向に移動する印刷ヘッド250は、目標位置Py1よりも+Dy方向側の位置で第2液滴D2を吐出する。このように、液滴D1、D2の吐出タイミングが調整される。
【0031】
図3(A)中のギャップGPsは、ノズル面npと基準シート300fとの間のギャップを示す。ここで、ノズル面npは、複数のノズル250nの位置を含む平面であり、移動するノズル250nが通過し得る位置を含む平面である。本実施例では、ノズル面npは、おおよそ水平な平面である。ギャップは、ノズル面npと垂直に測定した、ノズル面npとシートとの間の距離である。以下、基準シート300fのギャップGPsを、基準ギャップGPsとも呼ぶ。
【0032】
図3(B)に示すように、実際に利用されるシート300は、第1方向Dyに沿って波状に変形している。本実施例では、シート300における最も高い部分(高支持部265bに支持される部分)のギャップが、基準ギャップGPsと同じである。以下、基準シート300fに相当する平面300sを「基準面300s」と呼ぶ。基準面300sの高さは、図2(C)、図2(D)の基準高さSHと同じである。
【0033】
図示するように、シート300上の領域は、第1方向Dyに沿って交互に並ぶ第1種領域A1と第2種領域A2とに区分される。第1種領域A1は、押圧部269によって押さえられる部分を含む領域である。第2種領域A2は、高支持部265bによって支持される部分を含む領域である。
【0034】
本実施例においても、ノズル250nから基準ギャップGPsだけ離れた平らな基準面300sに印刷することを想定して、液滴D1、D2の吐出タイミングが調整される。図3(B)には、図3(A)と同じ目標位置Py1にドットを形成するために吐出された液滴D1、D2が示されている。基準面300sから遠い第1種領域A1に印刷を行う場合には、液滴D1、D2の着弾位置は、目標位置Py1からズレてしまう。第1液滴D1の着弾位置は、目標位置Py1から印刷ヘッド250の移動方向側(+Dy方向側)にズレた位置であり、第2液滴D2の着弾位置は、目標位置Py1から印刷ヘッド250の移動方向側(−Dy方向側)にズレた位置である。このようなドットの位置ズレは、ノズル面npとシート300との間のギャップと、基準ギャップGPsと、の間の差が大きいほど、大きい。
【0035】
一般に、目標濃度の色を印刷するために、互いに重ならない複数のドットが形成される。ここで、ギャップと基準ギャップGPsとの差が大きい場合には、ドットの位置ズレに起因して、一部のドットが他のドットと重なり得る。この結果、印刷済画像の濃度が、目標濃度よりも薄くなる場合がある(印刷済画像が明るくなる場合がある)。このような濃度のズレは、基準面300sに近い第2種領域A2と比べて、基準面300sから遠い第1種領域A1の方が、大きい。印刷済画像の観察者は、第1種領域A1と第2種領域A2との間の濃度の差を、濃度ムラとして、認識する。このような濃度ムラを抑制するために、印刷装置600(図1)は、印刷のための画像処理において、補正用総合データ134を利用した画像補正を行う。
【0036】
なお、第1種領域A1と第2種領域A2とは、ノズル面npから、押圧部269の最も低い部分と高支持部265bの上面との間の位置までのギャップ(「ギャップ閾値GPth」と呼ぶ)を用いて、区別することができる。すなわち、第1種領域A1は、ギャップがギャップ閾値GPth以上の範囲内にある領域である。第2種領域A2は、ギャップがギャップ閾値GPth未満の範囲内にある領域である。ギャップ閾値GPthは、例えば、押圧部269の最も低い部分と高支持部265bの上面との間の中間の高さに相当するギャップであり得る。
【0037】
次に、補正用総合データ134(図1)について説明する。補正用総合データ134は、図3(B)で説明した濃度ムラを低減するための濃度の補正量を定める。本実施例では、補正用総合データ134は、印刷装置600の出荷時に、予め、不揮発性メモリ130に格納される。補正用総合データ134の作成は、印刷装置600の製造者によって、行われる。
【0038】
図4は、補正用総合データ134の作成のフローチャートである。最初のステップS100は、テスト画像の印刷である。図5(A)は、テスト画像データ400dの説明図である。テスト画像データ400dは、複数(ここでは、10個)の基準画像B1i〜B10iを含むテスト画像400iを表す。各基準画像B1i〜B10iは、互いに輝度値が異なる一様なグレー画像である。図示された輝度値YB1〜YB10は、基準画像B1i〜B10iのそれぞれの輝度値を示す。輝度値YB1〜YB10の順番は、暗い順(濃度の高い順)である。各基準画像B1i〜B10iは、印刷された場合に第1方向Dy方向に沿って延びる矩形画像を表している。各基準画像B1i〜B10iは、印刷済の基準画像が印刷装置600の印刷可能範囲の−Dy方向側の端から+Dy方向の端までの全体を覆うのに十分な大きさを有する。これらの基準画像B1i〜B10iは、印刷された場合に−Dx方向に沿って順番に並ぶように、構成されている。なお、テスト画像データ400dは、マトリクス状に並ぶ複数の画素毎の画素データを含む。1つの画素の画素データは、その画素の色を表す階調値(例えば、赤(R)緑(G)青(B)のそれぞれの階調値)を表している。各基準画像B1i〜B10i内では、階調値は均一である。
【0039】
図5(B)は、印刷済テスト画像400の説明図である。印刷装置600は、テスト画像データ400dを用いて、濃度(例えば、輝度値)の補正をせずに、テスト画像400iを、波状に変形したシート300に印刷する。この印刷の結果に得られる画像が、印刷済テスト画像400である。印刷済テスト画像400は、複数の基準画像B1i〜B10i(図5(A))にそれぞれ対応する複数の印刷済基準画像B1〜B10を含む。各印刷済基準画像B1〜B10は、印刷装置600の印刷可能範囲PAの−Dy方向の端から+Dy方向の端まで、第1方向Dyに沿って延びる。図示するように、各印刷済基準画像B1〜B10は、複数の第1種領域A1に印刷された複数の部分画像と、複数の第2種領域A2に印刷された複数の部分画像とを含む。そして、図3(B)で説明したように、第1種領域A1では、第2種領域A2と比べて、濃度が薄い(画像が明るい)。なお、テスト画像400iの印刷に利用されるシート300は、印刷装置600で利用可能な最大サイズのシートであることが好ましい。こうすれば、印刷可能範囲PAの−Dy方向の端から+Dy方向の端までの全範囲を覆う印刷済テスト画像400を得ることができる。そして、第1方向Dyの全範囲をカバーする印刷済テスト画像を利用して補正用総合データ134を決定できるので、印刷可能範囲PA内の種々の位置に適した補正用総合データ134を得ることができる。
【0040】
図4の次のステップS110は、印刷済テスト画像400の光学的な読み取りである。本実施例では、いわゆる光学スキャナが、印刷済テスト画像400を読み取ることによって、印刷済テスト画像400を表す画像データ(「読取データ」とも呼ぶ)を生成する。読取データは、マトリクス状に並ぶ複数の画素毎の画素データを含む。1つの画素の画素データは、その画素の色を表す階調値(例えば、赤(R)緑(G)青(B)のそれぞれの階調値)を表している。
【0041】
次のステップS120は、読取データの解析である。図6は、解析の概要を示す説明図である。読取データは、図5(B)に示す複数の印刷済基準画像B1〜B10を表す複数の基準画像データを含む。図6の上部の基準画像データBjは、1つの印刷済基準画像を表すデータを示す。ステップS120では、1つの印刷済基準画像は、第1方向Dyに沿って並ぶn個(nは2以上の整数)の印刷済部分画像に区分される。そして、1つの印刷済基準画像を表す基準画像データBjは、n個の印刷済部分画像を表すn個の部分データSA(1)〜SA(n)に、区分される。そして、部分データSA(1)〜SA(n)毎に、平均輝度値Ya(1)〜Ya(n)が算出される。平均輝度値Ya(1)〜Ya(n)の算出は、基準画像毎に行われる。
【0042】
図6の下部のグラフは、平均輝度値Yaの位置依存性を示す。横軸は、第1方向Dyの位置Pyを示し、縦軸は、平均輝度値Yaを示す。位置Pyは、平均輝度値Yaの算出に利用される部分データSAによって表される部分画像の第1方向Dyの位置である。グラフ中には、10個の印刷済基準画像B1〜B10に対応する10個のグラフが、示されている。各グラフには、対応する印刷済基準画像と同じ符号B1〜B10が付されている。横軸には、高支持部265b(図2)の位置Pyb1〜Pyb7と、押圧部269の位置Pya1〜Pya6と、が示されている。図示するように、各印刷済基準画像B1〜B10の平均輝度値Yaは、第1方向Dyの位置Pyに応じて、波状に変化する。具体的には、押圧部269の位置Pya1〜Pya6では、平均輝度値Yaは比較的大きく(明るく)、高支持部265bの位置Pyb1〜Pyb7では、平均輝度値Yaは比較的小さい(暗い)。換言すれば、押圧部269の位置Pya1〜Pya6では、濃度は比較的小さく(淡く)、高支持部265bの位置Pyb1〜Pyb7では、濃度は比較的大きい(濃い)。
【0043】
本実施例では、このような印刷済画像の明るさ(濃度)のムラを抑制するために、輝度値の補正が行われる。具体的には、押圧部269の位置Pya1〜Pya6では、輝度値を相対的に低くし、高支持部265bの位置Pyb1〜Pyb7では、輝度値を相対的に高くする。
【0044】
図7は、第1補正用データ134a(以下、「振幅係数データ134a」と呼ぶ)を示すグラフである。縦軸は振幅係数Amcを示し、横軸は第1方向Dyの位置Pyを示す。振幅係数Amcは、輝度値の補正を行う場合の、補正量の大きさを表す係数である(振幅係数Amcが大きいほど、補正量が大きくなる(輝度値が小さくなる))。本実施例では、押圧部269の位置Pya1〜Pya6では、振幅係数Amcは「1」に設定され、高支持部265bの位置Pyb1〜Pyb7では、振幅係数Amcは「0」に設定される。すなわち、ギャップが、図3の基準面300sのギャップ(基準ギャップGPs)と同じである位置Pyでは、振幅係数Amcは、「0」である。他の位置Pyでは、振幅係数Amcは、線形補間によって決定される。振幅係数データ134aは、各位置Pya1〜Pya6、Pyb1〜Pyb7の振幅係数Amcを表すテーブルデータである。
【0045】
なお、他の位置Pyの振幅係数Amcは、線形補間に限らず、他の種々の補間(例えば、スプライン関数や正弦関数を用いた補間)によって決定されてもよく、また、変形したシートの実際の形状に応じて決定されてもよい。一般的には、振幅係数データ134aとしては、第1方向Dyの印刷位置が第1種領域A1内にある場合と第2種領域A2内にある場合とで補正量が異なるように、補正量の印刷位置依存性を規定するデータを採用可能である。ここで、振幅係数データ134aは、第1種領域A1において、第2種領域A2と比べて、濃度が相対的に高くなるような補正量を規定することが好ましい。また、振幅係数データ134aは、振幅係数Amcと位置Pyとの関係を定める他の任意の形式のデータであってよい(例えば、振幅係数Amcと位置Pyとの関係を定めるルックアップテーブル)。なお、振幅係数データ134aは、印刷済テスト画像400とは独立に、予め決められている。
【0046】
図6には、各グラフ(B1〜B10)の振幅Am1〜Am10が示されている。これらの振幅Am1〜Am10は、移動平均を用いたスムージング後の最大値と最小値との間の差を示す。スムージングの方法としては、移動平均を用いる方法に限らず、他の任意の方法を採用可能である。また、このようにして算出される振幅Am1〜Am10は、複数の第1種領域A1の複数の印刷済部分基準画像における濃度(輝度)と、複数の第2種領域A2の複数の印刷済部分基準画像における濃度(輝度)と、の間の濃度差を表している、ということができる。なお、このような濃度差の算出方法は、上述の方法に限らず、種々の方法を採用可能である。例えば、第1種領域A1の部分基準画像内の平均輝度値と、第2種領域A2の部分基準画像内の平均輝度値と、の間の差分を、濃度差(振幅Am1〜Am10)として採用してもよい。
【0047】
図示するように、振幅Am1〜Am10は、元の基準画像B1i〜B10iの輝度値YB1〜YB10に依存して異なる。具体的には、明るい基準画像(例えば、第10基準画像B10i)と暗い基準画像(例えば、第1基準画像B1i)とに関しては、振幅が小さく、それらの中間の明るさの基準画像に関しては、振幅が大きくなる。本実施例では、画像の明るさ(濃度)応じて異なる濃度ムラを抑制するために、補正量は、輝度値Yに応じて変化する。
【0048】
図8は、第2補正用データ134b(以下、「振幅データ134b」と呼ぶ)を示すグラフである。縦軸は、振幅Amを示し、横軸は、輝度値Yを示す。振幅Amは、輝度値の補正を行う場合の、補正量の大きさを表す(振幅Amが大きいほど、補正量が大きい(輝度値が小さくなる))。本実施例では、テスト画像データ400d(図5)の10個の輝度値YB1〜YB10においては、振幅Amは、読取データから算出された10個の振幅Am1〜Am10に、それぞれ設定される。他の輝度値Yでは、振幅Amは、線形補間によって決定される。このように、振幅データ134bは、各基準画像B1i〜B10iの各輝度値YB1〜YB10(濃度)に対応付けられる各補正量が、印刷済みの複数の基準画像B1〜B10から算出された複数の振幅Am1〜Am10(濃度差)のうちの対応する振幅が大きいほど、大きくなるように、補正量の輝度値(濃度)依存性を規定するデータである。例えば、5番目の基準画像B5iの輝度値YB5に対応付けられる補正量は、印刷済の基準画像B5から算出された振幅Am5が大きいほど、大きい。振幅データ134bは、各輝度値YB1〜YB10の振幅Amを表すテーブルデータである。なお、他の輝度値Yの振幅Amは、線形補間に限らず、他の種々の補間(例えば、スプライン関数を用いた補間)によって決定されてもよい。また、振幅データ134bは、振幅Amと輝度値Yとの関係を定める他の任意の形式のデータであってよい(例えば、振幅Amと輝度値Yとの関係を定めるルックアップテーブル)。
【0049】
図4の次のステップS130は、補正用総合データ134(振幅係数データ134aおよび振幅データ134b)の作成である。振幅係数データ134aは、図7で説明したように、印刷済テスト画像400とは独立に、予め決定される。振幅データ134bは、図8で説明したように、印刷済テスト画像400の読取データの解析結果に応じて決定される。作成された補正用総合データ134は、印刷装置600(図1)の不揮発性メモリ130に格納される。
【0050】
次に、補正用総合データ134を利用した印刷について説明する。図9は、印刷装置600(図1)によって実行される印刷処理のフローチャートである。プリンタドライバM100は、ユーザの指示(例えば、ユーザによる操作部170の操作や、通信部190に接続されたコンピュータ(図示せず)からのコマンド)に応じて、印刷処理を開始する。プリンタドライバM100は、印刷対象の対象画像データを、通信部190に接続された外部装置から取得する。
【0051】
最初のステップS200では、補正済データ生成部M104(図1)は、対象画像データを、ビットマップデータに変換する(ラスタライズ処理)。ビットマップデータに含まれる画素データは、例えば、赤(R)と緑(G)と青(B)の3つの色成分の階調値(例えば、0〜255の256階調)で画素の色を表すRGB画素データである。また、ビットマップデータの画素密度は、印刷解像度(ドットの最高密度)と同じである。
【0052】
ステップS200の次のステップScAでは、補正済データ生成部M104(図1)は、画像補正Scを行う。本実施例では、補正済データ生成部M104は、この画像補正Scにおいて、上述した補正用総合データ134に従ってビットマップデータの輝度値を補正する。この画像補正Scの詳細については、後述する。なお、画像補正Scは、ステップScAの代わりに、ステップScB、または、ステップS220において、実行され得る。ステップScBで画像補正Scを行う構成については、第2、第4実施例で説明し、ステップS220で画像補正Scを行う構成については、第3実施例で説明する。以下、画像補正Scの対象の画像データを「入力画像データ」と呼ぶ。また、画像補正Scから、印刷データの生成(後述するステップS220)までの一連の処理の全体が、「補正用データを利用して補正処理を実行することによって、入力画像データから補正済画像データ(具体的には、補正済の印刷データ)を生成する処理」の例である(以下、「補正済画像データ生成処理」、より具体的に、「補正済印刷データ生成処理」とも呼ぶ)。
【0053】
次のステップS210では、補正済データ生成部M104(図1)は、補正済のビットマップデータに含まれるRGB画素データを、シアンとマゼンタとイエロとブラックとの4つの色成分の階調値(ドット形成状態の総数(本実施例では、4値)よりも多い階調数。例えば、0〜255の256階調)で画素の色を表すCMYK画素データに変換する(色変換処理)。色変換処理は、RGB画素データとCMYK画素データとを対応付けるルックアップテーブルを用いて行われる。
【0054】
次のステップS220では、補正済データ生成部M104(図1)は、CMYK画素データを含むビットマップデータを、各画素毎のドットの形成状態を表すドットデータに変換する(ハーフトーン処理)。本実施例では、補正済データ生成部M104は、マトリクス136を利用した誤差拡散法に従って、ドットデータを生成する。ただし、ドット形成状態を決定する方法としては、誤差拡散法に限らず、他の任意の方法(例えば、ディザマトリクスを利用する方法)を採用可能である。また、ドット形成状態の総数は、CMYK画素データの階調数(ここでは、256)よりも少なく2以上の種々の数(例えば、2階調や4階調)を採用可能である。
【0055】
次のステップS230では、補正済データ生成部M104(図1)は、ドットデータから印刷データを生成する。印刷データは、印刷実行部200によって解釈可能なデータ形式で表されたデータである。本実施例では、補正済データ生成部M104は、いわゆる双方向印刷を実行するように、印刷データを生成する。
【0056】
次のステップS240では、補正済データ供給部M106は、印刷データを印刷実行部200に供給する。印刷実行部200は、受信した印刷データに従って、画像を印刷する。
【0057】
次に、画像補正Scについて説明する。最初のステップSc1では、補正用データ取得部M102(図1)が、補正用総合データ134(振幅係数データ134aと振幅データ134b)を、不揮発性メモリ130から取得する。次のステップSc2では、補正済データ生成部M104が、補正用総合データ134を利用した補正処理を実行する。なお、ステップSc1は、補正処理Sc2よりも前の任意のタイミングで実行されてよい。
【0058】
図10は、補正処理Sc2のフローチャートである。この補正処理Sc2は、画素毎に行われる。最初のステップS300では、補正済データ生成部M104(図1)は、振幅係数データ134aを参照して、処理対象の画素(以下「注目画素」と呼ぶ)の第1方向Dyの位置Pyに対応付けられた振幅係数Amcを取得する(図7参照)。
【0059】
次のステップS310では、補正済データ生成部M104は、注目画素の階調値Rin、Gin、Binを取得する。
【0060】
次のステップS320では、補正済データ生成部M104は、注目画素の階調値Rin、Gin、Binを利用して、輝度値Yinを算出する。本実施例では、階調値Rin、Gin、Binから輝度値Yinへの変換式として、以下の変換式が採用される。
Yin = 0.29891 * Rin + 0.58661 * Gin + 0.11448 * Bin
(「*」は乗算記号。以下同じ)
【0061】
次のステップS330では、補正済データ生成部M104は、振幅データ134bを参照して、輝度値Yinに対応付けられた振幅Amを取得する(図8参照)。
【0062】
次のステップS340では、補正済データ生成部M104は、輝度値Yinと、振幅係数Amcと、振幅Amとを利用して、補正済輝度値Ycを算出する。本実施例では、補正済輝度値Ycは、以下の式に従って算出される。
Yc = Yin − Am*Amc
この式から理解できるように、振幅Amが大きいほど、補正済輝度値Ycは小さくなる。また、振幅係数Amcが大きいほど、補正済輝度値Ycは小さくなる。
【0063】
次のステップS350では、補正済データ生成部M104は、補正済輝度値Ycを利用して、補正済階調値Rc、Gc、Bcを、算出する。本実施例では、補正済階調値Rc、Gc、Bcは、RGB色空間とYCbCr色空間との間の以下の変換式に従って、算出される。
Rc = Yc + 1.40200 * Cr
Gc = Yc - 0.34414 * Cb - 0.71414 * Cr
Bc = Yc + 1.77200 * Cb
ここで、Cr、Cbは、以下の式に従って、算出される。
Cb= -0.16874 * Rin - 0.33126 * Gin + 0.5 * Bin
Cr = 0.5 * Rin - 0.41869 * Gin - 0.08131 * Bin
【0064】
以上のように、各画素の階調値が補正される。
【0065】
図11は、印刷処理における輝度(濃度)の変化例を示す概略図である。図11(A)は、入力画像データIDin(画像補正Scによる補正前のビットマップデータ)を示す。入力画像データIDinは、階調値の均一なグレー画像を表す(以下、「入力画像Iin」とも呼ぶ)。図11(C)は、第1方向Dyの位置Pyと、輝度値Yと、の関係を示すグラフである。入力輝度値Y1は、入力画像データIDinによって表される輝度値である。入力輝度値Y1は、位置Pyに依存せずに、一定である。
【0066】
図11(B)は、入力画像データIDinに画像補正Scを実行することによって生成される補正済ビットマップデータIDcを示す。図中の領域A1、A2と方向Dx、Dyとは、補正済ビットマップデータIDcが印刷される場合の印刷済画像に基づく領域A1、A2と方向Dx、Dyとを示している。補正済ビットマップデータIDcは、第1種領域A1の濃度が、第2種領域A2の濃度と比べて、高い画像を表している(以下「補正画像Ic」と呼ぶ)。図11(C)に示す補正済輝度値Y2は、補正済ビットマップデータIDcによって表される輝度値である。補正済輝度値Y2は、押圧部269の位置Pya1〜Pya6の周辺(第1種領域A1)では、高支持部265bの位置Pyb1〜Pyb7の周辺(第2種領域A2)と比べて、小さい。仮に、補正済ビットマップデータIDcを、平らなシート(例えば、図3(B)の基準シート300f)に印刷した場合には、印刷済画像の輝度値は、補正済輝度値Y2のように変化する(例えば、押圧部269を取り外して印刷を行う場合)。
【0067】
図11(D)は、第1方向Dyの位置Pyと、仮想輝度値Yapと、の関係を示すグラフである。仮想輝度値Yapは、画像補正Scを行わずに、入力画像データIDinを用いて、波状に変形したシート上に印刷された印刷済入力画像の輝度値である。仮想輝度値Yapは、図6の平均輝度値Yaと同様に、算出される。仮想輝度値Yapは、図6のグラフと同様に、位置Pyに依存して波状に変化する。
【0068】
図11(E)は、第1方向Dyの位置Pyと、印刷済輝度値Ypと、の関係を示すグラフである。印刷済輝度値Ypは、補正済ビットマップデータIDcを、波状に変形したシート上に印刷して得られる印刷済画像の輝度値である。この印刷済輝度値Ypは、図6の平均輝度値Yaと同様の方法に従って、取得される。印刷済輝度値Ypは、シートの波状の変形に起因する輝度(濃度)の変化(図11(D)の仮想輝度値Yapのような変化)と、画像補正Scによる輝度の変化(図11(C)の補正済輝度値Y2のような変化)と、を総合して得られる輝度である。ここで、補正済輝度値Y2の変化パターンは、仮想輝度値Yapの変化パターンにおける山と谷とを入れ替えたパターンと、おおよそ同じである。従って、印刷済輝度値Ypの位置Pyに依存する変化は、入力画像データIDinを補正せずに印刷した場合(図11(D)参照)と比べて、小さくなる。
【0069】
以上、グレー画像を印刷する場合について説明したが、他の種々の色を表す画像を印刷する場合も、図10の手順に従って階調値が補正される。グレー(より一般的には、無彩色)とは異なる有彩色の画像を印刷する場合にも、図3(B)で説明したように、ドットの位置ズレが生じる。すなわち、有彩色画像を印刷する場合にも、無彩色画像を印刷する場合と同様に、第1方向Dyの位置に応じて濃度(明るさ)が変化する(濃度ムラが生じる)。有彩色画像の色は無彩色画像の色と異なるが、輝度値Yが小さいほどドットのパターンによって表される濃度が高いという特性は、有彩色画像と無彩色画像とに共通である。従って、有彩色画像を印刷する場合も、無彩色画像を印刷する場合と同様に補正処理Sc2を行うことによって、濃度ムラを抑制することができる。
【0070】
このように、第1実施例では、図11(C)に示すように、仮に、入力画像データIDin(図11(A))が階調値の均一な画像を表し、かつ、印刷時にシートが変形せずに平らな状態で搬送される場合には(例えば、図3(B)の基準シート300fに印刷する場合)、印刷済画像の輝度値(濃度)は、補正済輝度値Y2のように、第1方向Dyの位置Pyに依存して変化する。この場合、印刷済画像は、図11(B)に示す補正画像Icと、同様の画像である。すなわち、複数の第1種領域A1と複数の第2種領域A2とは、搬送方向Dxに沿って延びる領域であり、第1種領域A1と第2種領域A2とは、第1方向Dyに沿って交互に並ぶ。そして、第1種領域A1の印刷済部分画像の濃度が、第2種領域A2の印刷済部分画像の濃度よりも、高い。このように、図10の補正処理Sc2は、補正済輝度値Y2が示すように、第1種領域A1に印刷される部分画像の輝度(濃度)が、第2種領域A2に印刷される部分画像の輝度(濃度)とは異なるように、より具体的には、第1種領域A1に印刷される部分画像の輝度(濃度)が、第2種領域A2に印刷される部分画像の輝度(濃度)よりも低くなる(高くなる)ように、階調値を補正する。従って、シートの波状の変形に起因する印刷済画像の濃度ムラを低減することができる。
【0071】
また、図3には、特定範囲GRがハッチングで示されている。特定範囲GRは、ノズル面npとシートとの間のギャップがギャップ閾値GPth未満の範囲である。図示すように、第1種領域A1は、シート300とノズル250n(ノズル面np)との間のギャップが特定範囲GRの外にある領域であり、第2種領域A2は、ギャップが特定範囲GR内にある領域である。図11(C)の補正済輝度値Y2のように、補正処理Sc2は、第1種領域A1と第2種領域A2との間で濃度(輝度値)を異ならせるので、一部の領域(第1種領域A1)のギャップが特定範囲GRから外れることに起因する印刷済み画像の濃度ムラを低減することができる。特に、第2種領域A2のギャップの範囲である特定範囲GRが、ギャップ閾値GPth未満の範囲であるので、比較的ギャップが大きい第1種領域A1と、比較的ギャップが小さい第2種領域A2との間の濃度ムラを低減することができる。ここで、図11(C)の補正済輝度値Y2のように、補正処理Sc2は、第1種領域A1の濃度が第2種領域A2の濃度と比べて高くなるように、階調値を補正する。従って、シート300の波状の変形に起因して、第1種領域A1の印刷済み部分画像の濃度が、第2種領域A2の印刷済み部分画像の濃度と比べて、薄くなる場合に、第1種領域A1の印刷済み部分画像の濃度を、第2種領域A2の印刷済み部分画像の濃度に近づけることができるので、濃度ムラを抑制することができる。
【0072】
また、第1実施例では、補正処理Sc2(図10)の対象の画像データ(入力画像データ)は、RGBの各色成分の階調値で色を表す画像データ(ビットマップデータ)である。補正済データ生成部M104(図1)は、補正用総合データ134を参照することによって、入力画像データの注目画素のRGB階調値Rin、Gin、Binに対応付けられた輝度値Yinと、注目画素の第1方向Dyの位置Py(印刷位置)とを用いて、補正量(振幅Am*振幅係数Amc)を特定し、特定された補正量に従って、補正済RGB階調値Rc、Gc、Bcを算出する(図10)。そして、補正済データ生成部M104は、補正済RGB階調値Rc、Gc、Bcに従って、補正済印刷データを生成する(図9:S210〜S230)。このように、補正量が、注目画素の第1方向Dyの印刷位置に応じて変化するので、シート300の第1方向Dyに沿った波状の変形に起因する濃度ムラを抑制することができる。さらに、補正量が、注目画素のRGB階調値Rin、Gin、Bin(より具体的には、輝度値Yin(RGB階調値Rin、Gin、Binに対応付けられた濃度に対応する))に応じて変化するので、濃度ムラの特性がRGB階調値に応じて異なる場合であっても、適切に、濃度ムラを抑制することができる。特に、本実施例では、RGB階調値によって表される輝度値に対して補正が行われる。この結果、印刷画像の濃度を適切に補正することができる。
【0073】
また、第1実施例では、図2、図3に示すように、シート搬送部260は、シート300を下面から支持する複数の高支持部265bを含む。複数の高支持部265bは、第1方向Dyと平行に移動する印刷ヘッド250に対向する位置に、第1方向Dyに沿って並んで配置されている。また、シート搬送部260は、シート300を、上面から、下方に向かって(より具体的には、高支持部265bとシート300との接触位置(基準高さSH)よりも下方に向かって)押圧する複数の押圧部269を含む。各押圧部269の第1方向Dyの位置は、隣り合う2つの高支持部265bの間に配置されている。従って、シート搬送部260は、シート300を適切に波状に変形させることができる。特に、本実施例では、複数の押圧部269の第1方向Dyの位置と、複数の高支持部265bの第1方向Dyの位置とは、交互に並んでいる。従って、シート300が、山と谷とを繰り返す波状に変形するので、シート300が、図2(C)の符号302で示すように、意図せずに変形する可能性を低減できる。
【0074】
B.第2実施例:
図12は、第2実施例の補正処理Sc2のフローチャートである。第2実施例では、第1実施例とは異なり、画像補正Sc(図9)がステップScAではなくステップScBで行われる。補正処理Sc2の対象の画像データ(入力画像データ)は、色変換処理(S210)後の画像データ(CMYKの各色成分の階調値で色を表すビットマップデータ)である。第2実施例では、補正処理Sc2は、CMYKの色成分毎に、かつ、印刷画素毎に、行われる。また、第1実施例の振幅データ134b(図1、図8)の代わりに、CMYKの色成分毎に準備された振幅データが利用される。振幅係数データ134aは、第1実施例と同じである。補正用データ取得部M102は、画像補正ScのステップSc1では、振幅係数データ134aと、CMYKのそれぞれの振幅データと、を取得する。画像補正Sc以外の処理の内容と、印刷装置600の構成とは、第1実施例と同じである。
【0075】
以下、シアンC成分の処理を例として、説明を行う。最初のステップS400では、補正済データ生成部M104(図1)は、振幅係数データ134aを参照して、処理対象の画素(注目画素)の第1方向Dyの位置Pyに対応付けられた振幅係数Amcを取得する(図8)。
【0076】
次のステップS410では、補正済データ生成部M104は、注目画素のシアンの階調値Cinを取得する。
【0077】
次のステップS420では、補正済データ生成部M104は、シアン用の振幅データ(以下「シアン振幅データ134bC」とも呼ぶ)を参照して、シアン階調値Cinに対応付けられた振幅CAmを取得する。シアン振幅データ134bCは、第1実施例の振幅データ134bと同様に、テスト画像を利用して決定される。決定の手順は、図4の第1実施例と同じである。
【0078】
図13(A)は、シアン振幅データ134bCの決定に利用されるテスト画像データ400Cdの説明図である。第2実施例では、テスト画像データ400Cdは、CMYKの各色成分の階調値によって複数の画素のそれぞれの色を表している。テスト画像データ400Cdによって表されるテスト画像400Ciは、図5(A)の基準画像B1i〜B10iとそれぞれ同じ形状を有する基準画像Bc1i〜Bc10iを含む。シアン用の基準画像Bc1i〜Bc10iは、シアン濃度(シアン階調値)が互いに異なる一様なシアン色領域である(シアン以外の色成分の階調値はゼロである)。図示されたシアン階調値CB1〜CB10は、基準画像Bc1i〜Bc10iのそれぞれのシアン階調値を示す。シアン階調値CB1〜CB10の順番は、濃度の高い順(暗い順)である。
【0079】
図13(B)は、印刷済テスト画像400Cの説明図である。印刷装置600(図1)は、テスト画像データ400Cdを用いて、濃度の補正をせずに、テスト画像400Ciをシート300に印刷する。印刷済テスト画像400Cは、図5(B)の印刷済基準画像B1〜B10と同様の形状を有する印刷済基準画像Bc1〜Bc10を含む。印刷済基準画像Bc1〜Bc10は、図13(A)の基準画像Bc1i〜Bc10iに、それぞれ対応する。図示を省略するが、印刷済基準画像Bc1〜Bc10は、図5(B)の印刷済基準画像B1〜B10と同様に、複数の第1種領域A1と複数の第2種領域A2とを含む。そして、第1種領域A1では、第2種領域A2と比べて、印刷画像が明るい(見た目のシアン濃度が薄い)。
【0080】
印刷済テスト画像400Cを用いて、図6で説明した方法と同じ方法に従って、各シアン階調値CB1〜CB10の振幅CAmが決定される。振幅CAmは、印刷済テスト画像400Cの読取データの階調値(例えば、RGBの階調値)を利用して算出される。具体的には、RGBの階調値を用いて算出されるシアン成分の階調値の変化に従って、振幅CAmが決定される。図13(C)は、シアン階調値Cinと、振幅CAmとの関係(すなわち、シアン振幅データ134bC)を示すグラフである。シアン階調値CB1〜CB10においては、振幅CAmは、読取データから算出された値に決定される。他のシアン階調値Cinにおいては、振幅CAmは、補間によって決定される。
【0081】
図12の次のステップS430では、補正済データ生成部M104は、シアン階調値Cinと、振幅係数Amcと、振幅CAmとを用いて、補正済階調値Ccを算出する。本実施例では、補正済階調値Ccは、以下の式に従って算出される。
Cc = Cin + CAm*Amc
この式から理解できるように、振幅係数Amcが大きいほど、補正済階調値Ccは大きくなる。第1種領域A1においては、第2種領域A2と比べて振幅係数Amcが大きいので、第2種領域A2と比べて印刷画像のシアン濃度を高めることができる。この結果、第1種領域A1と第2種領域A2との間のシアンの濃度の差を低減することができる。より一般的には、補正量(CAm*Amc)が、第1方向Dyの印刷位置に応じて変化するので、シート300の第1方向Dyに沿った波状の変形に起因する濃度ムラを抑制することができる。また、振幅CAmが大きいほど、補正済階調値Ccは大きくなる。ここで、振幅CAmは、シアン階調値Cinに応じて変化する。すなわち、補正量がシアン階調値Cinに応じて変化する。従って、濃度ムラの特性が、シアン階調値Cinに応じて異なる場合であっても、適切に、濃度ムラを抑制できる。
【0082】
シアン以外の色成分(マゼンタ、イエロ、ブラック)についても、同様に、同じ色のインクを利用したテスト画像を利用して、振幅データが決定される。そして、補正済データ生成部M104は、シアン階調値Cinから補正済階調値Ccを算出するのと同様に、他の色成分の補正済階調値を決定する。そして、補正済データ生成部M104は、インク色の補正済階調値に従って、ドット形成状態を決定する(図9:S220)。
【0083】
以上のように、第2実施例では、補正済データ生成部M104は、入力画像データのCMYKの各色成分の階調値(インク色階調値と呼ぶ)に対して補正を行い、補正済のインク色階調値に従って、補正済印刷データを生成するので、印刷画像の濃度を適切に補正することができる。また、第2実施例では、補正済データ生成部M104は、振幅係数データ134aと、CMYK毎の振幅データと、を参照することによって、入力画像データの注目画素のインク色階調値(例えば、シアン階調値Cin)と、注目画素の第1方向Dyの位置Py(印刷位置)とを用いて、補正量(例えば、振幅CAm*振幅係数Amc)を特定し、特定された補正量に従って、補正済インク色階調値(例えば、補正済階調値Cc)を算出する(図12)。そして、補正済データ生成部M104は、補正済インク色階調値に従って、補正済印刷データを生成する(図9:S220〜S230)。このように、補正量が、注目画素の第1方向Dyの印刷位置に応じて変化するので、シート300の第1方向Dyに沿った波状の変形に起因する濃度ムラを抑制することができる。さらに、補正量が、注目画素のインク色階調値に応じて変化するので(例えば、シアンの補正量は、シアン階調値Cinに応じて変化する)、濃度ムラの特性がインク色階調値に応じて異なる場合であっても、適切に、濃度ムラを抑制することができる。
【0084】
また、第2実施例では、画像補正Scの対象の画像データと画像補正Scの内容とを除いた他の構成は、第1実施例と同じである。従って、第2実施例は、第1実施例と同様の種々の効果を奏する。
【0085】
C.第3実施例:
図14は、第3実施例のハーフトーン処理の概略図であり、図15は、ハーフトーン処理のフローチャートである。第3実施例では、画像補正Sc(図9)は、ハーフトーン処理(S220)に組み込まれる。すなわち、ハーフトーン処理が画像補正Scに対応する。補正処理Sc2の対象の画像データは、第2実施例と同様に、色変換処理(S210)後の画像データ(CMYKの各色成分の階調値で色を表すビットマップデータ)である。ただし、第3実施例では、CMYKの補正済階調値は決定されずに、補正処理Sc2(すなわち、ハーフトーン処理)を通じて、ドット形成状態が決定される。補正用の振幅データは、図13で説明した第2実施例と同じである(CMYKの色成分毎に、準備される)。振幅係数データ134aは、図7の第1実施例と同じである。画像補正Sc(ステップS220)以外の処理の内容と、印刷装置600の構成とは、第1実施例と同じである。
【0086】
図15のフローチャートに沿って、説明を行う。図15の処理は、インク色毎、かつ、画素毎に、実行される。この処理によって、画素毎のドット形成状態が決定される。本実施例では、ドット形成状態は、互いにインク量(すなわち、ドットのサイズ(ドットによって表現される濃度))の異なる以下の4つの状態の中から決定される。
A)大ドット
B)中ドット(中ドットの濃度<大ドットの濃度)
C)小ドット(小ドットの濃度<中ドットの濃度)
D)ドット無し
【0087】
最初のステップS500では、補正済データ生成部M104(図1)は、マトリクス136(図1)と、誤差バッファEB(図14)と、を用いて、処理対象の画素(注目画素)の誤差値Etを算出する。後述するように、誤差バッファEBは、各画素における濃度誤差(階調の誤差値)を格納している。誤差バッファEBは、揮発性メモリ120(図1)に、設けられている。マトリクス136は、注目画素の周辺の所定の相対位置に配置された画素に、ゼロより大きい重みを割り当てている。図14のマトリクス136では、記号「+」が注目画素を表し、周辺の画素に重みa〜mが割り当てられている。重みa〜mの合計は1である。補正済データ生成部M104は、この重みに従って、周辺の画素の誤差値の重み付き和を、注目画素の誤差値Etとして算出する。次に、補正済データ生成部M104は、誤差値Etと、注目画素の階調値(以下、入力階調値Vinとも呼ぶ。例えば、シアンの階調値)との和を、第1階調値Vaとして算出する。なお、図14に示すマトリクス136は、−Dy方向にドット状態決定処理が進行する場合のマトリクスである。+Dy方向にドット状態決定処理が進行する場合には、注目画素を中心に第1方向Dyの相対位置を反転させたマトリクスが利用される。
【0088】
続くステップS510〜S540では、補正済データ生成部M104は、第1階調値Vaと、3つの閾値Th1〜Th3と、の間の大小関係に基づいて、注目画素のドット形成状態を決定する。本実施例では、入力階調値Vinは、0〜255の256段階で表される。第1閾値Th1は、小ドットを出力するための閾値である(例えば、ゼロ)。第2閾値Th2は、中ドットを出力するための閾値である(例えば、84)。第3閾値Th3は、大ドットを出力するための閾値である(例えば、170)。
【0089】
補正済データ生成部M104は、以下のように、ドット形成状態を決定する。
A)第1階調値Va>第3閾値Th3(S510:Yes):ドット形成状態=「大ドット」(S515)
B)第1階調値Vaが第3閾値Th3以下であり、かつ、第1階調値Va>第2閾値Th2(S520:Yes):ドット形成状態=「中ドット」(S525)
C)第1階調値Vaが第2閾値Th2以下であり、かつ、第1階調値Va>第1閾値Th1(S530:Yes):ドット形成状態=「小ドット」(S535)
D)第1階調値Vaが第1閾値Th1以下である(S530:No):ドット形成状態=「ドット無し」(S540)
【0090】
ドット形成状態の決定の次のステップS550では、補正済データ生成部M104は、決定されたドット形成状態に対応付けられた階調値(ドット階調値Vbと呼ぶ)を取得する。本実施例では、以下のようにドット階調値が設定されている。
A)大ドット:ドット階調値Vb=255
B)中ドット:ドット階調値Vb=170
C)小ドット:ドット階調値Vb=84
D)ドット無し:ドット階調値Vb=ゼロ
ドット階調値Vbは、ドット形成状態によって表される階調値(濃度)を表している。このような対応関係は、ドット階調値テーブルとして、補正済データ生成部M104に予め組み込まれている。
【0091】
次のステップS560では、補正済データ生成部M104は、ドット階調値Vbから補正済ドット階調値Vcを決定する。補正済ドット階調値Vcの決定は、上述の補正用総合データ134を利用して行われる。この処理の詳細については、後述する。
【0092】
次のステップS570では、補正済データ生成部M104は、対象誤差値Eaを算出する。対象誤差値Eaは、以下の式で表される。
対象誤差値Ea=第1階調値Va−補正済ドット階調値Vc
補正済データ生成部M104は、算出した対象誤差値Eaを、注目画素の誤差値として、誤差バッファEBに登録する。
【0093】
図16は、ステップS560のフローチャートである。以下、シアンC成分の処理を例として説明を行う。最初のステップS562では、補正用データ取得部M102(図1)が、補正用総合データ134(振幅係数データ134aとCMYKの色成分毎の振幅データ)を不揮発性メモリ130から取得する。補正用データ取得部M102は、このステップS562を、ステップS560の最初の代わりに、ステップS560よりも先の任意の段階(例えば、図9のステップS220の最初の段階)で実行してもよい。
【0094】
続くステップS564、S565、S566は、図12のステップS400、S410、S420と、それぞれ同じである。次のステップS567では、補正済データ生成部M104は、ドット階調値Vbと、振幅係数Amcと、振幅CAmとを用いて、補正済ドット階調値Vcを算出する。本実施例では、補正済ドット階調値Vcは、以下の式に従って算出される。
Vc = Vb − CAm*Amc
この式から理解できるように、振幅CAmが大きいほど、補正済ドット階調値Vcは小さくなる。また、振幅係数Amcが大きいほど、補正済ドット階調値Vcは小さくなる。補正済ドット階調値Vcが小さくなることは、図15のステップS570で算出される対象誤差値Eaが大きくなることを、意味している。対象誤差値Eaが大きくなると、注目画素から周囲の画素に伝搬する誤差値Etが大きくなるので、周囲の画素で濃度の高いドットが形成されやすくなる。第1種領域A1では、第2種領域A2と比べて振幅係数Amcが大きいので、第2種領域A2と比べて印刷画像のシアン濃度を高めることができる。この結果、第1種領域A1と第2種領域A2との間のシアン濃度の差を低減することができる。より一般的には、補正量(CAm*Amc)が、第1方向Dyの印刷位置に応じて変化するので、シート300の第1方向Dyに沿った波状の変形に起因する濃度ムラを抑制することができる。また、振幅CAmが大きいほど、補正済ドット階調値Vcは小さくなる。ここで、振幅CAmは、シアン階調値Cinに応じて変化する。すなわち、補正量がシアン階調値Cinに応じて変化する。従って、濃度ムラの特性が、シアン階調値Cinに応じて異なる場合であっても、適切に、濃度ムラを抑制できる。
【0095】
シアン以外の色成分(マゼンタ、イエロ、ブラック)についても、同様に、ドット形成状態が決定される。
【0096】
以上のように、第3実施例では、補正処理Sc2(図14)の対象の画像データ(入力画像データ)は、CMYKの各色成分の階調値(インク色階調値)で色を表す画像データ(ビットマップデータ)である。そして、補正済データ生成部M104は、注目画素のインク色階調値(例えば、シアン階調値Cin)と注目画素の第1方向Dyの位置Pyとから補正量(例えば、振幅CAm*振幅係数Amc)を特定し、補正量を利用する誤差拡散法に従って、注目画素のドット形成状態を決定する。従って、印刷画像の濃度を適切に補正することができる。特に、本実施例では、補正量は、注目画素の誤差値(対象誤差値Ea)の決定に利用される。従って、ドット形成状態を補正量に応じて補正することができる。また、誤差拡散法に従ったドット形成状態の決定に利用される補正量が、注目画素の第1方向Dyの印刷位置に応じて変化するので、シート300の第1方向Dyに沿った波状の変形に起因する濃度ムラを抑制することができる。さらに、補正量が、注目画素のインク色階調値に応じて変化するので(例えば、シアンの補正量は、シアン階調値Cinに応じて変化する)、濃度ムラの特性がインク色階調値に応じて異なる場合であっても、適切に、濃度ムラを抑制することができる。
【0097】
なお、第3実施例では、画像補正Scの対象の画像データと画像補正Scの内容とを除いた他の構成は、第1実施例と同じである。従って、第3実施例は、第1実施例と同様の種々の効果を奏する。
【0098】
また、補正済ドット階調値Vcの算出式としては、上述の算出式に限らず、補正量(CAm*Amc)に応じてドット階調値が補正される種々の式を採用可能である。例えば、以下の算出式を採用してもよい。
Vc = Vb − CAm*Amc*(Vb/Vbmax)
ここで、最大ドット階調値Vbmaxは、複数のドット形成状態のドット階調値Vbのうちの最大値である。補正量に追加された比率(Vb/Vbmax)は、最大のドット形成状態に対する、決定されたドット形成状態の濃度比率を示している。本実施例では、最大ドット階調値Vbmaxは、大ドットのドット階調値Vb(255)である。このような比率を利用すれば、補正済データ生成部M104は、ドット階調値Vbに適した補正量を利用することができる。
【0099】
なお、補正量を、注目画素のドット形成状態の決定に利用してもよい。例えば、補正済データ生成部M104は、第1階調値Vaに補正量を加算して得られる第2階調値と、3つの閾値Th1〜Th3と、の間の大小関係に基づいて、注目画素のドット形成状態を決定してもよい。ここで、ドット形成状態の総数としては、4に限らず、CMYK画素データの階調数(ここでは、256)よりも少なく2以上の種々の数(例えば、2)を採用可能である。
【0100】
D.第4実施例:
図17は、第4実施例における振幅データ134bGを示す概略図である。第4実施例においては、第1実施例と同様に、図9のステップScAで、画像補正Scが行われる。ただし、図5、図6、図8に示す第1実施例とは異なり、第4実施例では、輝度値を利用せずに、RGBのそれぞれの階調値が補正される。補正に利用される振幅は、輝度値Yinの代わりに、注目画素の階調値Rin、Gin、Bin(すなわち、注目画素の色)に応じて、決定される。また、補正に利用される振幅は、RGBの色成分毎に、準備される。振幅係数データ134aは、第1実施例と同じである。補正用データ取得部M102(図1)は、画像補正ScのステップSc1では、振幅係数データ134aと、RGBのそれぞれの振幅データと、を取得する。画像補正Sc以外の処理の内容と、印刷装置600の構成とは、第1実施例と同じである。
【0101】
図17には、RGBの3つの階調値Rin、Gin、Binで表される色立体CCが示されている。入力画像データによって表される色は、この色立体CC内の点(色点とも呼ぶ)で表される。振幅データ134bGは、予め決められた複数の色点のそれぞれにおける、RGBの振幅RAm、GAm、BAmを定めている。複数の色点は、無彩色の色点に加えて、種々の有彩色の色点を含む。図17中には、振幅データ134bGに含まれる複数の色点のうちの一部の色点CP1〜CP9のそれぞれの階調値と振幅とが示されている。例えば、第5色点CP5は、階調値(Rin,Gin,Bin)=(167,0,88)であり、振幅(RAm,GAm,BAm)=(17.5,0,6.8)である。複数の色点のそれぞれの振幅は、色点毎に準備された基準画像を含むテスト画像を利用して、決定される。補正用データの生成の手順は、図4に示す実施例と同じである。
【0102】
図17の下部には、テスト画像データ400Gdが示されている。テスト画像データ400Gdは、振幅データ134bGに含まれる複数の色点にそれぞれ対応付けられた複数の基準画像を表している。色点と基準画像とは一対一に対応付けられている。本実施例の基準画像と図5(A)の基準画像との間の差異は、本実施例の基準画像の色が、グレーではなく、対応する色点の色であることだけである。図中には、第5色点CP5に対応付けられた第5基準画像Bp5iが示されている。この第5基準画像Bp5iは、第5色点CP5と同じRGBの階調値によって表される一様な画像である。
【0103】
図17の下部には、印刷済テスト画像400Gが示されている。印刷済テスト画像400Gは、図4の実施例と同様に、テスト画像データ400Gdを印刷することによって、形成される。図中には、第5基準画像Bp5iに対応付けられた印刷済第5基準画像Bp5が示されている。図示を省略するが、印刷済第5基準画像Bp5は、複数の第1種領域A1と複数の第2種領域A2とに亘って、印刷されている。そして、第1種領域A1では、第2種領域A2と比べて、印刷済画像jの濃度が薄い(印刷済画像が明るい)。
【0104】
図17の下部のグラフは、読取データのRGBのそれぞれの平均階調値Ra、Ga、Baの位置依存性の一例を示している。読取データは、図4の実施例と同様に、印刷済テスト画像400Gを光学的に読み取ることによって、生成される。図6の実施例とは異なり、本実施例では、平均輝度値Yaの代わりに、RGBの各色成分の平均階調値Ra、Ga、Baが算出される。そして、RGBの各色成分の振幅RAm、GAm、BAmが算出される。図中のグラフは、印刷済第5基準画像Bp5から得られるグラフを示す。RGBの各色成分の振幅RAm5、GAm5、BAm5は、第5色点CP5に対応付けられた振幅として利用される。
【0105】
なお、補正対象のRGB画像データの画素値が、予め決められた複数の色点とは異なる色を表す場合には、その色の近傍の複数の色点を用いた補間によって、RGBの各色成分の振幅RAm、GAm、BAmが算出される。そして、以下の式に従って、補正が行われる。
Rc = Rin − RAm*Amc
Gc = Gin − GAm*Amc
Bc = Bin − BAm*Amc
ここで、Rin、Gin、Binは、補正前のRGBの階調値を示し、Rc、Gc、Bcは、補正済のRGBの階調値を示す。この式は、第1実施例の補正済輝度値Ycの算出式と同様の式である。振幅RAm、GAm、BAmが大きいほど、補正済階調値Rc、Gc、Bcは小さくなる。また、振幅係数Amcが大きいほど、補正済階調値Rc、Gc、Bcは小さくなる。補正済階調値Rc、Gc、Bcが小さいほど、印刷画像の濃度が高くなる(印刷画像が明るくなる)。従って、本実施例では、第1実施例と同様に、第1種領域A1の印刷済画像の濃度が、補正によって高くなる。この結果、濃度ムラを抑制される。
【0106】
また、本実施例では、振幅データ134bGは、RGBの色成分毎に振幅RAm、GAm、BAmを定めている。すなわち、RGBの色成分毎に、補正が行われる。従って、本実施例では、輝度値を補正する場合と比べて、きめ細かい補正が可能である。この結果、印刷済画像の濃度ムラを、より適切に抑制することができる。
【0107】
また、本実施例では、振幅データ134bGは、複数の無彩色点と複数の有彩色点とのそれぞれのRGBの振幅RAm、GAm、BAmを定めている。すなわち、振幅データ134bGは、RGBの色成分の組み合わせ毎に、振幅RAm、GAm、BAmを定めている。従って、種々の色の印刷画像の濃度ムラを抑制できる。
【0108】
また、第4実施例では、補正処理でRGBの色成分毎に補正を行う点を除いた他の構成は、第1実施例と同じである。従って、第4実施例は、第1実施例と同様の種々の効果を奏する。
【0109】
E.第5実施例:
図18は、第5実施例における印刷システム1000bの構成を示すブロック図である。この印刷システム1000bは、ネットワーク900と、ネットワーク900を介して互いに接続された印刷装置600bとサーバ500と、を含む。本実施例では、印刷装置600bは、自ら、テスト画像400を印刷し、読取データを生成する。サーバ500は、印刷装置600bから読取データを取得し、振幅データ134bを生成する。印刷装置600bは、サーバ500から、振幅データ134bを取得し、印刷に利用する。テスト画像を利用した振幅データ134bの生成の手順の概略は、図4の実施例と同じである。以下、第1実施例と同じ振幅データ134bを生成することとして説明を行う。印刷装置600bによって実行される印刷処理は、第1実施例の印刷処理と同じである。振幅係数データ134aは、上述の各実施例と同様に、印刷装置600bに予め組み込まれている。
【0110】
次に、印刷装置600bの構成について説明する。印刷装置600bの構成は、テスト画像を利用した振幅データ134bの生成のための変更を図1の印刷装置600に加えて得られる。本実施例の印刷装置600bのための変更は、以下の通りである。
(A)制御装置100bのCPU110の機能に、テスト画像印刷データ供給部M107と、データ送信部M110と、の機能が追加されている。
(B)印刷装置600bに、スキャナ290が追加されている。
(C)不揮発性メモリ130に、テスト画像データ400dが格納されている。
本実施例では、スキャナ290は、種々のシートを光学的に読み取る汎用の光学スキャナである。また、制御装置100bのハードウェア構成は、図1の制御装置100の構成と同じである。また、印刷装置600bの他の構成は、図1に示す印刷装置600の構成と、同じである(図18では、一部の構成の図示が省略されている)。通信部190は、ネットワーク900に接続されている。
【0111】
サーバ500は、CPU510と、DRAM等の揮発性メモリ520と、EEPROM等の不揮発性メモリ530と、通信部590と、を有するコンピュータである。通信部590は、ネットワーク900に接続するためのインタフェースである。不揮発性メモリ530は、プログラム532を格納する。CPU510は、プログラム532を実行することによって、データ取得部M111と、解析部M109と、補正用データ生成部M108と、データ提供部M112と、のそれぞれの機能を実現する(機能の詳細については、後述)。
【0112】
次に、振幅データ134bの生成について説明する。印刷装置600bは、ユーザの指示に応じて、テスト画像の印刷を行う。最初のステップS600では、テスト画像印刷データ供給部M107は、テスト画像データ400dを不揮発性メモリ130から取得する。次のステップS610では、テスト画像印刷データ供給部M107は、テスト画像データ400dを印刷データ400dpに変換し、印刷データ400dp(以下、「テスト画像印刷データ400dp」とも呼ぶ)を印刷実行部200に供給する。元のテスト画像データ400dは、図5(A)のテスト画像データ400dと同じである。テスト画像印刷データ400dpは、テスト画像データ400dを用いて、濃度補正をせずに、生成される。テスト画像印刷データ400dpは、テスト画像データ400dのテスト画像400i(図5)と同じ、濃度ムラのない画像を表している。なお、テスト画像データ400dからテスト画像印刷データ400dpへの変換は、補正済データ生成部M104によって行われてもよい。
【0113】
次のステップS620で、印刷実行部200は、受信したテスト画像印刷データ400dpに従って、テスト画像400を印刷する。次のステップS630では、ユーザは、印刷済テスト画像400を、スキャナ290に、読み取らせる。スキャナ290は、印刷済テスト画像400を表す読取データを生成する。なお、スキャナ290は、印刷済テスト画像400の読み取り専用の装置であってもよい。例えば、印刷ヘッド250(図2)に固定されたスキャナが、テスト画像400の印刷と並行して、印刷済テスト画像400の読み取りを進行してもよい。
【0114】
続けて、データ送信部M110は、スキャナ290から読取データを取得し(ステップS700)、ネットワーク900を通じて読取データをサーバ500に送信する(ステップS710)。ステップS715では、サーバ500のデータ取得部M111は、ネットワーク900を通じて取得した読取データを、解析部M109に供給する。ステップS717では、解析部M109は、読取データを解析することによって、振幅Am1〜Am10(図6)を算出する。ステップS720では、補正用データ生成部M108は、算出された振幅Am1〜Am10を利用して、振幅データ134bを生成する。振幅データ134bは、補正用総合データ134の少なくとも一部を規定する補正規定データの例である。ステップS730では、補正用データ生成部M108は、生成した振幅データ134bを、不揮発性メモリ530に格納する。
【0115】
次に、データ提供部M112は、不揮発性メモリ530から振幅データ134bを取得し(ステップS740)、ネットワーク900を通じて振幅データ134bを印刷装置600bに送信する(ステップS750)。印刷装置600bの補正用データ取得部M102は、サーバ500からの振幅データ134bを取得し、取得した振幅データ134bを不揮発性メモリ130に格納する(ステップS760)。なお、振幅係数データ134aは、予め、不揮発性メモリ130に格納されている。図9のステップSc1では、補正用データ取得部M102は、不揮発性メモリ130から補正用総合データ134を取得する。この補正用総合データ134は、印刷済テスト画像400の解析結果を用いて生成されるデータである、ということができる。
【0116】
以上のように、印刷装置600bは、振幅データ134bの生成のためのテスト画像400を自ら印刷する。そして、印刷実行部200によって実際に印刷された印刷済テスト画像400に応じて生成された補正用データ(具体的には、振幅データ134b)が補正処理に利用される。従って、印刷装置600bは、自己の印刷実行部200に適した補正を行うことができる。この結果、印刷済画像の濃度ムラを、適切に抑制できる。
【0117】
また、サーバ500は、印刷済テスト画像400の読取データを取得するデータ取得部M111と、読取データを解析する解析部M109と、解析結果を用いて振幅データ134bを生成する補正用データ生成部M108と、振幅データ134bを制御装置100bに提供するデータ提供部M112と、を備える。従って、サーバ500は、印刷済テスト画像400の読取データを利用することによって、適切に振幅データ134bを提供することができる。なお、振幅データ134bは、補正用総合データ134の少なくとも一部を規定する補正規定データの例である。
【0118】
なお、サーバ500のデータ提供部M112は、テスト画像400を印刷した印刷装置600bに限らず、他の印刷装置(例えば、第1実施例の印刷装置600)に、振幅データ134bを供給してもよい。いずれの場合も、サーバ500のデータ取得部M111は、通信部590に接続されたネットワーク900を通じて読取データを取得し、サーバ500のデータ提供部M112は、そのネットワーク900を通じて振幅データ134bを提供することが好ましい。こうすれば、サーバ500は、ネットワーク900を通じて、適切に、振幅データ134bを提供することができる。
【0119】
また、印刷装置600bからスキャナ290とデータ送信部M110とを省略してもよい。この場合には、印刷装置600bとは別に準備されたスキャナ290を利用して読取データを生成すればよい。
【0120】
また、補正用データ生成部M108は、振幅データ134bと振幅係数データ134aとを含む補正用総合データ134を生成し、データ提供部M112は、補正用総合データ134を印刷装置600bに提供してもよい。この場合、補正用データ生成部M108によって生成されるデータ(補正用総合データ134)は、補正用総合データ134の少なくとも一部(ここでは、全部)を規定する補正規定データの例である。また、テスト画像と振幅データとしては、第1実施例と同じものに限らず、上述の各実施例のものを採用可能である。
【0121】
F.第6実施例:
図19は、第6実施例における印刷装置600cの構成を示すブロック図である。本実施例では、印刷装置600cは、自ら、テスト画像400を印刷し、読取データを生成し、読取データを解析し、そして、振幅データ134bを生成する。印刷装置600cの構成は、読取データから振幅データ134bを生成するための変更を図18の印刷装置600bに加えて得られる。本実施例の印刷装置600cのための変更は、以下の通りである。
(A)制御装置100cのCPU110の機能に、補正用データ生成部M108と、解析部M109と、読取データ取得部M114と、の機能が追加されている。
補正用データ生成部M108と解析部M109とは、図18のサーバ500に設けられる補正用データ生成部M108と解析部M109と、それぞれ同じである。制御装置100cのハードウェア構成は、図18の制御装置100bの構成と同じである。また、印刷装置600cの他の構成は、図18の印刷装置600bの構成と、同じである(図19では、一部の構成の図示が省略されている)。
【0122】
次に、振幅データ134bの生成について説明する。図示されたステップS600〜S630の処理は、図18のステップS600〜S630の処理と、同じである。続くステップS640では、読取データ取得部M114は、読取データをスキャナ290から取得する。次のステップS645では、解析部M109は、取得された読取データを解析することによって、振幅Am1〜Am10(図6)を算出する。次のステップS650では、補正用データ生成部M108は、算出された振幅Am1〜Am10を利用して、振幅データ134b(第2補正用データ134b)を生成する。次のステップS660では、補正用データ生成部M108は、生成した振幅データ134bを、不揮発性メモリ130に格納する。なお、振幅係数データ134aは、予め、不揮発性メモリ130に格納されている。従って、補正用データ生成部M108は、振幅データ134bを生成することによって、補正用総合データ134の生成を完了することができる。印刷時には、補正用データ取得部M102は、補正用データ生成部M108によって生成された補正用総合データ134を、不揮発性メモリ130から取得する。
【0123】
以上のように、制御装置100cは、読取データの解析と、補正用データ(具体的には、振幅データ134b)の生成とを行うので、印刷実行部200に適した補正用データを、容易に利用することができる。また、印刷装置600cは、自ら印刷したテスト画像400を利用して、自ら振幅データ134b(補正用総合データ134)を生成する。従って、印刷装置600bは、自己の印刷実行部200に適した補正用総合データ134を利用することができる。また、印刷装置600cは、サーバ500を利用せずに、単独で、補正用総合データ134を生成することができる。この結果、印刷装置600cのユーザの利便性を向上できる。
【0124】
なお、印刷装置600cからスキャナ290を省略してもよい。この場合には、印刷装置600cとは別に準備されたスキャナ290を利用して読取データを生成すればよい。また、不揮発性メモリ130が予め振幅係数データ134aを格納せずに、補正用データ生成部M108が、振幅データ134bと振幅係数データ134aとを含む補正用総合データ134を生成してもよい。また、印刷装置600cは、生成した振幅データ134b(あるいは、補正用総合データ134)を、図示しないサーバに送信してもよい。そして、サーバは、受信したデータを、他の印刷装置に提供してもよい。また、テスト画像と振幅データとしては、第1実施例と同じものに限らず、上述の各実施例のものを採用可能である。
【0125】
G.第7実施例:
図20(A)は、基準ギャップの別の実施例を示す説明図である。図20(A)は、図3(B)と同様に、液滴D1、D2の着弾位置と、シート300とを示している。この実施例では、図1、図2に示す印刷装置600が利用される。そして、シート300の高支持部265bに支持される部分の代わりに、押圧部269によって下方に押さえられる部分のギャップGPsaが、基準ギャップとして利用される(以下、ノズル250n(ノズル面np)から基準ギャップGPsaだけ離れた平面300saを「基準面300sa」と呼ぶ)。本実施例では、液滴D1、D2の吐出タイミングは、基準面300saに印刷する場合を想定して、調整されている(図中では、液滴D1、D2が第1方向Dyの同じ目標位置Py1にドットを形成することが想定されている)。従って、ギャップが小さいほど、すなわち、シート300がノズル250nに近いほど、ドットの位置ズレが大きくなる。そこで、本実施例では、ギャップがギャップ閾値GPth以上の範囲(特定範囲GRa)内にある第2種領域A2aでは、濃度が相対的に低く補正され、ギャップが特定範囲GRaの外にある第1種領域A1aでは、濃度が相対的に高く補正される。図中では、特定範囲GRaがハッチングで示されている。
【0126】
振幅係数Amcの位置Py依存性のパターンは、図7の実施例の振幅係数Amcの「1」と「0」とを入れ替えたパターンと同じである。すなわち、押圧部269の位置Pya1〜Pya6では、振幅係数Amcは「0」に設定され、高支持部265bの位置Pyb1〜Pyb7では、振幅係数Amcは「1」に設定される(図示省略)。すなわち、ギャップが、基準面300saの基準ギャップGPsaと同じである位置(第1方向Dyの位置Py)では、振幅係数Amcは「0」である。振幅Amは、図4の手順に従って決定される。
【0127】
図20(B)は、基準ギャップの更に別の実施例を示す説明図である。図20(B)も、図20(A)と同様に、+Dy方向に移動する印刷ヘッド250から吐出される液滴D1a、D1bと、−Dy方向に移動する印刷ヘッド250から吐出される液滴D2a、D2bと、の着弾位置と、シート300とを示している。この実施例では、図1、図2に示す印刷装置600が利用される。そして、押圧部269の最も低い部分と高支持部265bの上面との間の中間位置のギャップGPsbが、基準として利用される(以下、ノズル250n(ノズル面np)からギャップGPsbだけ離れた平面300sbを「基準面300sb」と呼ぶ)。液滴D1a、D1b、D2a、D2bの吐出タイミングは、基準面300sbに印刷する場合を想定して、調整されている(図中では、液滴D1a、D2aが同じ目標位置Py1aにトッドを形成することが想定され、液滴D1b、D2bが同じ目標位置Py1bにドットを形成することが想定されている)。従って、ギャップが基準のギャップGPsbから離れるほど、ドットの位置ズレが大きくなる。そこで、本実施例では、ギャップと基準ギャップGPsbとの間の差の絶対値が特定の値以下である範囲GRb内にギャップがある第2種領域A2bでは、濃度が相対的に低く補正され、ギャップが範囲GRb外にある第1種領域A1b1、A1b2では、濃度が相対的に高く補正される。図中では、範囲GRbがハッチングで示されている。
【0128】
振幅係数Amcの位置Py依存性は、以下の通りである。すなわち、押圧部269の位置Pya1〜Pya6と、高支持部265bの位置Pyb1〜Pyb7と、のそれぞれにおいて、振幅係数Amcは「1」に設定される。隣り合う押圧部269と高支持部265bとの間の中間位置において、具体的には、ギャップが、基準面300sbの基準ギャップGPsbと同じである位置(第1方向Dyの位置Py)では、振幅係数Amcは「0」に設定される。振幅Amは、図4の手順に従って決定される。
【0129】
なお、図20(A)、図20(B)のそれぞれは、上述の各実施例に適用可能である。
【0130】
H.変形例:
(1)印刷済画像の濃度は、単位面積当たりのインク量によって表され、明るさと逆の相関がある。従って、明るさと相関があるパラメータ(例えば、輝度値Yや、RGB階調値)は、濃度を表すパラメータでもある。濃度を直接的に表すパラメータ(例えば、インク色階調値)の代わりに、明るさと相関があるパラメータを補正する場合も、「濃度を補正している」ということができる。例えば、いわゆるL*a*b*色空間で表された画像データを画像補正Scの対象として採用し、L*成分の階調値を補正してもよい。
【0131】
(2)上記各実施例において、画像補正Scの対象の画像データ(入力画像データ)の色空間は、RGB色空間またはCMYK色空間に限らず、他の種々の色空間(例えば、CMY色空間、YCbCr色空間、または、L*a*b*色空間)であってもよい。また、入力画像データの画素密度は、印刷解像度と異なっていてもよい。例えば、図9のステップ200(ラスタライズ)の前の画像データが、画像補正Scの対象であってもよい。
【0132】
(3)印刷実行部の構成としては、上記各実施例の印刷実行部200の構成に限らず、種々の構成を採用可能である。例えば、印刷実行部が利用可能なインクとしては、CMYKの4種類のインクに限らず、1以上の種々のインクを採用可能である。また、図3で説明したドットの位置ズレは、双方向印刷を行う場合に限らず、単方向印刷を行う場合にも、生じ得る。従って、上述した各実施例の画像補正Scを、単方向印刷を行う印刷実行部に適用してもよい。また、ドット形成状態の総数としては、2または4に限らず、2以上の種々の数を採用可能である。
【0133】
(4)図2(D)に示すように、ノズル250nとシート300との間のギャップは、搬送方向Dxの位置に応じて異なり得る。本実施例では、−Dx方向側のノズル250nの位置よりも、+Dx方向側のノズル250nの位置の方が、ギャップが小さい。そこで、上記各実施例において、補正済データ生成部M104は、ノズル250nの搬送方向Dxの位置に応じて、補正量を変化させてもよい。この際、補正済データ生成部M104は、第1方向Dyの位置Pyに応じて補正量を変化させるのと同様に、ドット形成時の搬送方向Dxの位置に応じて補正量を変化させる。また、テスト画像の印刷は、ギャップの最も大きいノズル250nによって行われることが好ましい。
【0134】
(5)上記各実施例において、補正用総合データ134は、シート(印刷媒体)の種類毎に、準備されてもよい。シートの種類は、例えば、「光沢紙」や「マット紙」といった一般的な種類の中から選択されてもよく、また、シートの型番によって種類が特定されてもよい。補正用データ取得部M102は、シートの種類に対応付けられた補正用総合データ134を取得する。こうすれば、補正済データ生成部M104は、シートの種類に適した補正を行うことができる。
【0135】
また、サーバ(例えば、図18のサーバ500)は、複数種類のシートのための複数種類の補正用総合データ134(または、振幅データ134b)を、メモリ(例えば、不揮発性メモリ530)に格納してもよい。そして、印刷制御装置(例えば、補正用データ取得部M102)は、ユーザによって指定された種類のシートに対応付けられた補正用総合データ134(または、振幅データ134b)を、ネットワークを介して、上記サーバから取得してもよい。
【0136】
(6)上記各実施例において、テスト画像の構成としては、図5、図13、図17の構成に限らず、種々の構成を採用可能である。一般には、テスト画像印刷データは、互いに濃度の異なる複数の基準画像であって、各基準画像内で階調値が均一な複数の基準画像を含むテスト画像を表し、印刷済テスト画像における複数の印刷済基準画像のそれぞれは、複数の第1種領域の少なくとも1つに印刷される第1種の印刷済部分基準画像と、複数の第2種領域の少なくとも1つに印刷される第2種の印刷済部分基準画像と、を含むことが好ましい。例えば、複数の基準画像が、複数枚のシートに分散して印刷されてもよい。1つの基準画像が、印刷可能範囲PA(図5)の−Dy方向の端から+Dy方向の端までの間の一部の範囲にのみ、印刷されてもよい。
【0137】
また、解析部M109と補正用データ生成部M108とは、以下のように、補正用データを生成することが好ましい。すなわち、解析部M109は、複数の印刷済基準画像のそれぞれに関して、印刷済みテスト画像を光学的に読み取ることによって得られる読取データによって表される濃度の差を算出する。この濃度差は、第1種の印刷済み部分基準画像における濃度と第2種の印刷済み部分基準画像における濃度との間の濃度差である。補正用データ生成部M108は、テスト画像印刷データによって表される基準画像のそれぞれの濃度に対応付けられる補正量が、印刷済みの基準画像から算出された濃度差が大きいほど大きく、かつ、シート300上の第1方向Dyの印刷位置が第1種領域内にある場合と第2種領域内にある場合とで補正量が異なるように、補正用データを生成する。この構成によれば、シート300上の第1方向Dyの印刷位置が第1種領域内にある場合と第2種領域内にある場合とで補正量が異なるように補正用データが生成されるので、シートの第1方向に沿った波状の変形に起因する濃度ムラを抑制することができる。さらに、印刷済みの基準画像から算出された濃度差が大きいほど補正量が大きくなるように補正用データが生成されるので、濃度ムラの特性が濃度に応じて異なる場合であっても、適切に、濃度ムラを抑制することができる。
【0138】
(7)上記各実施例では、第1補正用データ134a(振幅係数データ134a)と第2補正用データ134b(振幅データ134b)とが互いに独立であるが、補正済データ生成部M104は、第1補正用データ134aと第2補正用データ134bとを結合して得られる補正用データを、利用してもよい。例えば、補正用データは、輝度値Yinと第1方向Dyの位置Pyとの組み合わせと、補正量と、を対応付けるルックアップテーブルであってもよい。
【0139】
(8)上記各実施例において、シート搬送部260の構成としては、図1、図2に示す構成に限らず、種々の構成を採用可能である。例えば、低支持部265aが省略されてもよい。また、押圧部269は、種々の部材を用いて構成されてよく、例えば、硬質樹脂部材を用いて構成されてもよく、板バネ等の弾性体を用いて構成されてもよい。また、支持部265a、265bの第1部分265a1、265b1の代わりに、第1ローラ261と対向する従動ローラが設けられてもよい。同様に、第5部分265a5、265b5の代わりに、第2ローラ262と対向する従動ローラが設けられてもよい。
【0140】
(9)上記各実施例において、基準ギャップGPs、GPsa、GPsbは、印刷結果を利用して特定することができる。すなわち、第1方向Dyの位置Pyが互いに異なる複数の直線(搬送方向Dxに沿って延びる直線)を表す画像データを用いて印刷を行う。ギャップが基準ギャップに近い印刷領域(位置Py)では、ドットの位置ズレが小さいので、直線がはっきりと印刷される。一方、ギャップが基準ギャップから遠い印刷領域(位置Py)では、ドットの位置ズレが大きいので、直線がぼやけて印刷される。このように、直線がはっきりと印刷された位置Pyにおけるギャップが、基準ギャップである。また、第1種領域と第2種領域とは、以下のように特定することができる。すなわち、第1種領域は、第2種領域と比べて、実際のギャップと特定された基準ギャップとの間の差の絶対値が大きい領域である。
【0141】
(10)上記各実施例において、各制御装置100、100b、100cと、印刷実行部200とが、互いに異なる筐体に収容された独立の装置として、実現されてもよい。また、上記各実施例において、ネットワークを介して互いに通信可能な複数のコンピュータが、印刷のための画像処理に要する機能を一部ずつ分担して、全体として、印刷のための画像処理の機能を提供してもよい。このように、印刷制御装置(例えば、制御装置100、100b、100c)は、複数のコンピュータを含むコンピュータシステムによって構成されてもよい(このようなコンピュータシステムを利用する技術は、クラウドコンピューティングとも呼ばれる)。
【0142】
(11)上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、図1の補正済データ生成部M104の機能を、論理回路を有する専用のハードウェア回路によって実現してもよい。
【0143】
また、本発明の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、メモリーカードやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスクドライブ等のコンピュータに接続されている外部記憶装置も含んでいる。
【0144】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0145】
100、100b、100c...制御装置、110...CPU、120...揮発性メモリ、130...不揮発性メモリ、132...プログラム、134...補正用データ、134a...振幅係数データ(第1補正用データ)、134b...振幅データ(第2補正用データ)、134bC...シアン振幅データ、134bG...振幅データ、136...マトリクス、170...操作部、180...表示部、190...通信部、200...印刷実行部、210...制御回路、212...移動制御部、214...ヘッド駆動部、216...搬送制御部、240...ヘッド移動部、242...移動モータ、244...支持軸、250...印刷ヘッド、250n...ノズル、260...シート搬送部、261...第1ローラ、262...第2ローラ、263...搬送モータ、265...シート台、265a...低支持部、265b...高支持部、269...押圧部、290...スキャナ、300...シート、300f...基準シート、300s、300sa、300sb...基準面、400、400C、400G...印刷済テスト画像、400d、400Cd、400Gd...テスト画像データ、400i、400Ci...テスト画像、400dp...テスト画像印刷データ、500...サーバ、510...CPU、520...揮発性メモリ、530...不揮発性メモリ、532...プログラム、590...通信部、600、600b、600c...印刷装置、900...ネットワーク、1000b...印刷システム、M100...プリンタドライバ、M102...補正用データ取得部、M104...補正済データ生成部、M106...補正済データ供給部、M107...テスト画像印刷データ供給部、M110...データ送信部、M111...データ取得部、M109...解析部、M108...補正用データ生成部、M112...データ提供部、M114...読取データ取得部、EB...誤差バッファ、np...ノズル面、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って前記シートを波状に変形させた状態で、前記シートを前記第1方向と交差する第2方向に搬送するシート搬送部と、液滴を吐出する複数のノズルを有する印刷ヘッドと、前記第1方向と平行に前記印刷ヘッドを移動させるヘッド移動部と、前記印刷ヘッドの移動中に前記印刷ヘッドを駆動することによって前記波状に変形したシートに向かって前記液滴を吐出させる印刷ヘッド駆動部と、を含む印刷実行部に、印刷を実行させる印刷制御装置であって、
補正用データを利用して補正処理を実行することによって、入力画像データから補正済画像データを生成する処理を実行する補正済データ生成部と、
前記補正済画像データを前記印刷実行部に供給する補正済データ供給部と、
を備え、
前記補正済画像データを生成する前記処理は、仮に、前記入力画像データが階調値の均一な画像を表し、かつ、印刷時に前記シートが変形せずに平らな状態で搬送される場合に、前記シート上の複数の第1種領域に印刷される複数の第1種の印刷済み部分画像の濃度が、前記シート上の複数の第2種領域に印刷される複数の第2種の印刷済み部分画像の濃度とは異なるように、前記入力画像データを利用する前記補正処理を実行して前記補正済画像データを生成する処理を含み、
前記複数の第1種領域と前記複数の第2種領域とは前記第2方向に沿って延びる領域であり、前記各第1種領域と前記各第2種領域とは前記第1方向に沿って交互に並んでいる、印刷制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷制御装置であって、
前記第1種領域は、前記シートと前記ノズルとの間のギャップが特定範囲外にある領域であり、
前記第2種領域は、前記ギャップが前記特定範囲内にある領域である、印刷制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷制御装置であって、
前記特定範囲は、前記ギャップが特定の閾値未満の範囲である、印刷制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の印刷制御装置であって、
前記補正済画像データを生成する前記処理は、仮に、前記入力画像データが階調値の均一な画像を表し、かつ、印刷時に前記シートが変形せずに平らな状態で搬送される場合に、前記複数の第1種の印刷済み部分画像の濃度が、前記複数の第2種の印刷済み部分画像の濃度よりも、高くなるように、前記入力画像データを利用する前記補正処理を実行して前記補正済画像データを生成する処理を含む、印刷制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷制御装置であって、
前記入力画像データは、複数の画素のそれぞれの色を、RGBの各色成分の階調値で表し、
前記補正用データは、前記画素の前記RGBの階調値と、前記画素の前記第1方向の印刷位置と、に応じて変化する補正量を定め、
前記補正済データ生成部は、前記補正済画像データを生成する前記処理において、
前記補正用データを参照することによって、前記画素の前記RGBの階調値と、前記画素の前記第1方向の印刷位置と、を用いて、前記補正量を特定し、
前記特定された補正量に従って、補正済RGB階調値を算出し、
前記補正済RGB階調値に従って、前記補正済画像データを生成する、印刷制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷制御装置であって、
前記入力画像データは、複数の画素のそれぞれの色を、前記液滴の色成分の階調値であるインク色階調値で表し、
前記補正用データは、前記画素の前記インク色階調値と、前記画素の前記第1方向の印刷位置と、に応じて変化する補正量を定め、
前記補正済データ生成部は、前記補正済画像データを生成する前記処理において、
前記補正用データを参照することによって、前記画素の前記インク色階調値と、前記画素の前記第1方向の印刷位置と、を用いて、前記補正量を特定し、
前記特定された補正量に従って、補正済インク色階調値を算出し、
前記補正済インク色階調値に従って、前記補正済画像データを生成する、印刷制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷制御装置であって、
前記入力画像データは、複数の印刷画素のそれぞれの色を、前記液滴の色成分の階調値であるインク色階調値で表し、
前記補正用データは、前記印刷画素の前記インク色階調値と、前記印刷画素の前記第1方向の位置と、に応じて変化する補正量を定め、
前記補正済画像データは、前記複数の印刷画素のそれぞれのドット形成状態を表し、
前記補正済データ生成部は、前記補正済画像データを生成する前記処理において、
前記補正用データを参照することによって、注目画素の前記インク色階調値と、前記注目画素の前記第1方向の位置と、を用いて、前記補正量を特定し、
前記補正量を利用する誤差拡散法に従って、前記注目画素のドット形成状態を決定する、印刷制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の印刷制御装置であって、
前記補正済データ生成部は、前記ドット形成状態の決定において、
前記注目画素の前記インク色階調値と、前記注目画素の周辺に位置する周辺画素で得られる誤差値と、を利用して、前記注目画素の前記ドット形成状態と、前記注目画素の前記ドット形成状態に応じた前記注目画素の誤差値と、を決定し、
前記特定された補正量を、前記注目画素の誤差値の決定、または、前記注目画素の前記ドット形成状態の決定、において利用する、印刷制御装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の印刷制御装置であって、さらに、
テスト画像を表すテスト画像印刷データを前記印刷実行部に供給するテスト画像印刷データ供給部と、
前記印刷実行部によって印刷された印刷済みテスト画像の解析結果を用いて生成される補正用データを取得する補正用データ取得部と、
を備える、印刷制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の印刷制御装置であって、さらに、
前記印刷済みテスト画像を光学的に読み取ることによって得られる読取データを取得する読取データ取得部と、
前記読取データを解析する解析部と、
前記解析部による解析の結果を用いて、前記補正用データを生成する補正用データ生成部と、
を備え、
前記補正用データ取得部は、前記補正用データ生成部によって生成された前記補正用データを取得する、印刷制御装置。
【請求項11】
請求項10に記載の印刷制御装置であって、
前記テスト画像印刷データは、互いに濃度の異なる複数の基準画像であって、前記各基準画像内で階調値が均一な前記複数の基準画像を含む前記テスト画像を表し、
前記印刷済みテスト画像における複数の印刷済みの基準画像のそれぞれは、前記複数の第1種領域の少なくとも1つに印刷される第1種の印刷済み部分基準画像と、前記複数の第2種領域の少なくとも1つに印刷される第2種の印刷済み部分基準画像と、を含み、
前記解析部は、前記複数の印刷済みの基準画像のそれぞれに関して、前記読取データによって表される濃度の差であって、前記第1種の印刷済み部分基準画像における濃度と前記第2種の印刷済み部分基準画像における濃度との間の前記濃度差を、算出し、
前記補正用データ生成部は、
前記テスト画像印刷データによって表される前記基準画像のそれぞれの濃度に対応付けられる前記補正量が、前記印刷済みの基準画像から算出された前記濃度差が大きいほど大きく、かつ、前記シート上の第1方向の印刷位置が前記第1種領域内にある場合と前記第2種領域内にある場合とで前記補正量が異なるように、補正用データを生成する、印刷制御装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の前記印刷制御装置と、
前記印刷実行部と、
を備える、印刷装置。
【請求項13】
請求項12に記載の印刷装置であって、
前記シート搬送部は、
前記第1方向と平行に移動する前記印刷ヘッドに対向する位置に前記第1方向に沿って並んで配置され、前記シートを前記シートの下面から支持する複数の支持部と、
前記シートを、前記シートの上面から下方に向かって押圧する複数の押圧部であって、前記各押圧部の前記第1方向の位置が、前記複数の支持部のうちの隣り合う2つの前記支持部の間に配置された、複数の押圧部と、
を備える、印刷装置。
【請求項1】
第1方向に沿って前記シートを波状に変形させた状態で、前記シートを前記第1方向と交差する第2方向に搬送するシート搬送部と、液滴を吐出する複数のノズルを有する印刷ヘッドと、前記第1方向と平行に前記印刷ヘッドを移動させるヘッド移動部と、前記印刷ヘッドの移動中に前記印刷ヘッドを駆動することによって前記波状に変形したシートに向かって前記液滴を吐出させる印刷ヘッド駆動部と、を含む印刷実行部に、印刷を実行させる印刷制御装置であって、
補正用データを利用して補正処理を実行することによって、入力画像データから補正済画像データを生成する処理を実行する補正済データ生成部と、
前記補正済画像データを前記印刷実行部に供給する補正済データ供給部と、
を備え、
前記補正済画像データを生成する前記処理は、仮に、前記入力画像データが階調値の均一な画像を表し、かつ、印刷時に前記シートが変形せずに平らな状態で搬送される場合に、前記シート上の複数の第1種領域に印刷される複数の第1種の印刷済み部分画像の濃度が、前記シート上の複数の第2種領域に印刷される複数の第2種の印刷済み部分画像の濃度とは異なるように、前記入力画像データを利用する前記補正処理を実行して前記補正済画像データを生成する処理を含み、
前記複数の第1種領域と前記複数の第2種領域とは前記第2方向に沿って延びる領域であり、前記各第1種領域と前記各第2種領域とは前記第1方向に沿って交互に並んでいる、印刷制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷制御装置であって、
前記第1種領域は、前記シートと前記ノズルとの間のギャップが特定範囲外にある領域であり、
前記第2種領域は、前記ギャップが前記特定範囲内にある領域である、印刷制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷制御装置であって、
前記特定範囲は、前記ギャップが特定の閾値未満の範囲である、印刷制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の印刷制御装置であって、
前記補正済画像データを生成する前記処理は、仮に、前記入力画像データが階調値の均一な画像を表し、かつ、印刷時に前記シートが変形せずに平らな状態で搬送される場合に、前記複数の第1種の印刷済み部分画像の濃度が、前記複数の第2種の印刷済み部分画像の濃度よりも、高くなるように、前記入力画像データを利用する前記補正処理を実行して前記補正済画像データを生成する処理を含む、印刷制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷制御装置であって、
前記入力画像データは、複数の画素のそれぞれの色を、RGBの各色成分の階調値で表し、
前記補正用データは、前記画素の前記RGBの階調値と、前記画素の前記第1方向の印刷位置と、に応じて変化する補正量を定め、
前記補正済データ生成部は、前記補正済画像データを生成する前記処理において、
前記補正用データを参照することによって、前記画素の前記RGBの階調値と、前記画素の前記第1方向の印刷位置と、を用いて、前記補正量を特定し、
前記特定された補正量に従って、補正済RGB階調値を算出し、
前記補正済RGB階調値に従って、前記補正済画像データを生成する、印刷制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷制御装置であって、
前記入力画像データは、複数の画素のそれぞれの色を、前記液滴の色成分の階調値であるインク色階調値で表し、
前記補正用データは、前記画素の前記インク色階調値と、前記画素の前記第1方向の印刷位置と、に応じて変化する補正量を定め、
前記補正済データ生成部は、前記補正済画像データを生成する前記処理において、
前記補正用データを参照することによって、前記画素の前記インク色階調値と、前記画素の前記第1方向の印刷位置と、を用いて、前記補正量を特定し、
前記特定された補正量に従って、補正済インク色階調値を算出し、
前記補正済インク色階調値に従って、前記補正済画像データを生成する、印刷制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷制御装置であって、
前記入力画像データは、複数の印刷画素のそれぞれの色を、前記液滴の色成分の階調値であるインク色階調値で表し、
前記補正用データは、前記印刷画素の前記インク色階調値と、前記印刷画素の前記第1方向の位置と、に応じて変化する補正量を定め、
前記補正済画像データは、前記複数の印刷画素のそれぞれのドット形成状態を表し、
前記補正済データ生成部は、前記補正済画像データを生成する前記処理において、
前記補正用データを参照することによって、注目画素の前記インク色階調値と、前記注目画素の前記第1方向の位置と、を用いて、前記補正量を特定し、
前記補正量を利用する誤差拡散法に従って、前記注目画素のドット形成状態を決定する、印刷制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の印刷制御装置であって、
前記補正済データ生成部は、前記ドット形成状態の決定において、
前記注目画素の前記インク色階調値と、前記注目画素の周辺に位置する周辺画素で得られる誤差値と、を利用して、前記注目画素の前記ドット形成状態と、前記注目画素の前記ドット形成状態に応じた前記注目画素の誤差値と、を決定し、
前記特定された補正量を、前記注目画素の誤差値の決定、または、前記注目画素の前記ドット形成状態の決定、において利用する、印刷制御装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の印刷制御装置であって、さらに、
テスト画像を表すテスト画像印刷データを前記印刷実行部に供給するテスト画像印刷データ供給部と、
前記印刷実行部によって印刷された印刷済みテスト画像の解析結果を用いて生成される補正用データを取得する補正用データ取得部と、
を備える、印刷制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の印刷制御装置であって、さらに、
前記印刷済みテスト画像を光学的に読み取ることによって得られる読取データを取得する読取データ取得部と、
前記読取データを解析する解析部と、
前記解析部による解析の結果を用いて、前記補正用データを生成する補正用データ生成部と、
を備え、
前記補正用データ取得部は、前記補正用データ生成部によって生成された前記補正用データを取得する、印刷制御装置。
【請求項11】
請求項10に記載の印刷制御装置であって、
前記テスト画像印刷データは、互いに濃度の異なる複数の基準画像であって、前記各基準画像内で階調値が均一な前記複数の基準画像を含む前記テスト画像を表し、
前記印刷済みテスト画像における複数の印刷済みの基準画像のそれぞれは、前記複数の第1種領域の少なくとも1つに印刷される第1種の印刷済み部分基準画像と、前記複数の第2種領域の少なくとも1つに印刷される第2種の印刷済み部分基準画像と、を含み、
前記解析部は、前記複数の印刷済みの基準画像のそれぞれに関して、前記読取データによって表される濃度の差であって、前記第1種の印刷済み部分基準画像における濃度と前記第2種の印刷済み部分基準画像における濃度との間の前記濃度差を、算出し、
前記補正用データ生成部は、
前記テスト画像印刷データによって表される前記基準画像のそれぞれの濃度に対応付けられる前記補正量が、前記印刷済みの基準画像から算出された前記濃度差が大きいほど大きく、かつ、前記シート上の第1方向の印刷位置が前記第1種領域内にある場合と前記第2種領域内にある場合とで前記補正量が異なるように、補正用データを生成する、印刷制御装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の前記印刷制御装置と、
前記印刷実行部と、
を備える、印刷装置。
【請求項13】
請求項12に記載の印刷装置であって、
前記シート搬送部は、
前記第1方向と平行に移動する前記印刷ヘッドに対向する位置に前記第1方向に沿って並んで配置され、前記シートを前記シートの下面から支持する複数の支持部と、
前記シートを、前記シートの上面から下方に向かって押圧する複数の押圧部であって、前記各押圧部の前記第1方向の位置が、前記複数の支持部のうちの隣り合う2つの前記支持部の間に配置された、複数の押圧部と、
を備える、印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−111872(P2013−111872A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260756(P2011−260756)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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