説明

印刷制御装置

【課題】
本発明の課題は、印刷装置に温度センサ湿度センサが備えられていない印刷装置であっても温度湿度の変化に応じて適切な印刷条件を設定することができる印刷制御手段を提供することである。
【解決手段】
本発明は、時刻を通知する時計部と、温度及び湿度との組み合せと印刷条件Pmとの関係を示す印刷条件管理テーブルと、温度と湿度から前記印刷条件管理テーブルを参照して対応する印刷条件Pmを設定する印刷条件設定手段を備え、各温度、湿度の組み合せ情報を時間帯別に割り付け、更に前記時間帯別に割り付けた温度、湿度の組み合せ情報を日毎に管理した温湿度分類データを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温湿度変化に伴なう印刷条件設定手段を備えた印刷制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置内および印刷装置近傍の温度・湿度の変化による印刷装置や印刷用紙の特性変化に対応するため適宜印刷条件を設定する印刷装置およびその制御方法が考案されていた。
【0003】
感光体ドラムを有するレーザープリンタの場合、感光体ドラム回りに除電手段を設け、除電手段によって記録紙を除電(マイナス電荷を印加)して、容易に感光体ドラムから剥離できるようにしている。ここで、印刷装置の設置場所の温度や湿度の変化によって用紙の帯電量が異なり、適用される記録紙の厚さや腰、カール等によって剥離しやすさが異なるため、常に一定の除電電圧では、うまく剥離できない場合がある。そこで、除電手段による記録紙を剥離するための電圧は、装置の置かれた場所の環境温度湿度や、使用する記録紙の特性に基づいて決定し、最適な除電電圧を得るようにしている。
【0004】
例えば、感光体に巻き付きかけた用紙を剥離させる際に温湿度を温湿度センサで検出し、その温度と湿度のマトリクス表を用いて剥離電流の設定値を変更する手段を備える電子写真装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、同様に温湿度センサによる印刷条件の変更例として、感光体へのトナーの付着状態を安定させるために感光体の表面を一様に帯電させるための帯電ローラに対して湿度センサからのデータに応じて印加する電源制御回路を備えた画像形成装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
上記した画像形成装置は、温湿度センサの出力を読み込むことでその都度測定された温度湿度に関する情報から印刷条件を補正することができ、温度湿度に配慮した印刷が可能となる。
【0007】
一方、温度湿度環境による印刷条件を変更する別の例としては、気温が低い場合や湿度が高い場合などはトナーが定着しにくいので、温度計湿度計から読み取った温度湿度情報をモニタディスプレイ付きの入力手段から設定し、印刷環境の温度及び湿度の組み合せと印刷時間間隔との関係を記憶したテーブルから印刷時間間隔を決定することで、印刷環境に適した印刷間隔を設定しデータ送信間隔を制御する印刷制御装置が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
上記した印刷制御装置は、温度湿度の変化に応じて温度湿度情報を入力することで温度湿度センサが装着されていない印刷装置でも印刷条件を変更することができ、その都度印刷品質に影響を及ぼす温度湿度に配慮した印刷が可能となる。
【0009】
しかし、上記した電子写真装置及び画像形成装置によれば、温度湿度センサを備えることで温度湿度に関係する印刷条件を自動的に設定可能となるが、温度湿度センサを備えていない既存の印刷装置に対して温度湿度センサの追加工を施すとなるとコスト面で見合わないケースが考えられる。
【0010】
一方、上記した印刷制御装置によれば、ディスプレイ付きの入力手段より入力された温度湿度情報から温度及び湿度の組み合せと印刷条件との関係を記憶したテーブルを参照して印刷条件の変更を行えるため、温度湿度センサが装着されていない印刷装置でも印刷条件を変更可能となる。しかし、ユーザはその日毎の各時間帯における温度湿度の変化によって印刷品質や印刷動作への影響を考慮しなければならないため、その都度温度湿度情報を入力する作業負担が発生する。
【0011】
【特許文献1】特許公開2001−83808号公報
【0012】
【特許文献2】特許公開2001−27836号公報
【特許文献3】特許公開2000−280578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、印刷装置に温度センサ湿度センサが備えられていない印刷装置であっても温度湿度の変化に応じて適切な印刷条件を設定することができる印刷制御手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題は、時刻を通知する時計部と、温度及び湿度との組み合せと印刷条件Pmとの関係を示す印刷条件管理テーブルと、温度と湿度から前記印刷条件管理テーブルを参照して対応する印刷条件Pmを設定する印刷条件設定手段を備え、各温度、湿度の組み合せ情報を時間帯別に割り付け、更に前記時間帯別に割り付けた温度、湿度の組み合せ情報を日毎に管理した温湿度分類データを備えることによって解決される。
【0015】
また、前記温度湿度分類データは日毎に天気情報を有し、天気の種類によって分類されていることによって解決される。
【0016】
また、ユーザ設定の入力を可能とする入力手段と、時刻を通知する時計部と、温度及び湿度との組み合せと前記印刷条件Pmとの関係を示す印刷条件管理テーブルと、温度と湿度から前記印刷条件管理テーブルを参照して対応する前記印刷条件Pmを設定する印刷条件設定手段を備え、前記入力手段から温度、湿度及びその日の天気の情報が入力されたとき、入力時刻より前記温度、湿度を特定の時間帯毎に分類し、前記分類した温度、湿度情報を日毎に管理し前記日毎に管理する温度、湿度情報を入力された日の天気の種類によって分類した温湿度分類データを記録保存する手段を備えることによって解決される。
【0017】
また、前期入力手段によって前記温湿度分類データの各時間帯毎に分類されている温度、湿度の情報を書き変え、同じ種類の天気で異なる日に記録保存された温度、湿度情報がある場合は天気の種類毎に何れか1つその日の温度、湿度情報を選定し、各天気の代表温湿度データとして登録する編集手段を備えることによって解決される。
【0018】
また、前記入力手段から天気、温度、湿度が入力されると前記各天気の代表温湿度データのうち前記入力された天気と同じ種類の天気のデータを選択し、前記選択した代表温湿度データの前記入力時刻に相当する時間帯に分類されている温度、湿度と前記入力された温度、湿度との差を算出し、前記選択した代表温湿度データの各時間帯毎に分類されている各温度、各湿度から前記算出した温度、湿度の差をそれぞれ差し引き、前記選択した代表温湿度データから修正温湿度データを作成する手段を備えることによって解決される。
【0019】
また、前記修正温湿度データの示す各時間帯の境界時刻を認知し、その境界時刻に達するかどうかを監視する手段を備え、前記境界時刻に達する毎に前記修正温湿度データの前記境界時刻直後の時間帯に分類されている温度と湿度を参照して、更に前記印刷条件設定手段にて前記印刷条件管理テーブルを参照して対応する前記印刷条件Pmを設定する手段を備えることによって解決される。
【0020】
また、前記印刷条件Pmを更新する2つの印刷条件Ps0およびPsを備え、印刷装置内の発熱体が発熱停止してから発熱開始するまでの時間t2を計る手段と、前記発熱体が発熱開始してから発熱停止するまでの時間t1を計る手段を備え、常温付近の特定の温度から前記発熱体が発熱開始してから前記印刷装置内部の温度、湿度が安定領域に達するまでの時間tsと、前記発熱体が発熱停止してから印刷装置内部の温度、湿度が安定する領域に達するまでの時間teと、前記発熱体が発熱開始してから、前記印刷装置内部の温度、湿度が安定領域に達するまでの時間より短い時間tgとを備え、前記時間t1が常温付近の特定の温度から前記発熱体が発熱開始になってから印刷装置内部の温度、湿度が安定領域に達するまでの時間tsよりも短く、かつ時間t2が、前記発熱体が発熱停止になってから印刷装置内部の温度、湿度が安定する領域に達するまでの時間teより長い場合、または前記時間t1が前記時間tgよりも短い場合に前記印刷条件Pmを前記印刷条件Ps0に更新する手段と、前記時間t1及び前記時間t2が上記条件以外の場合に前記印刷条件Pmを前記印刷条件Psに更新する手段を備えることによって解決される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る印刷制御装置によれば、印刷装置の設置環境と印刷装置内の発熱体によって変化する温度湿度に対し適切な印刷条件を設定可能となるため、これらの要因によって温度湿度が変化する印刷品質と印刷動作の改善が見込める。また、印刷装置に温度センサ湿度センサが備えられていない印刷装置であっても温度湿度の変化に応じて適切な印刷条件を設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に,本発明を実施例によって説明する。
【実施例1】
【0023】
本発明の実施例を図1のブロック図、図2のフローチャート、図3、図4の操作パネル表示例、図5、図6、図7、図8のデータテーブル、図9、図10のフローチャートを使用して説明する。
【0024】
図1は、印刷装置および印刷制御装置の構成を示すブロック図である。1は上位装置、2は印刷装置である。印刷装置2は操作パネル3、印刷制御装置4、機構部13で構成される。操作パネル3はLCDまたはCRTなどの表示機能とタッチパネルなどのスイッチ機能が付いている。印刷制御装置4は操作パネル制御部5、バス6、外部I/F部7、CPU8、時計部9、メモリ10、HDD12、機構制御部11で構成されている。操作パネル制御部5は操作パネル3の表示機能およびスイッチ機能を制御する。バス6は、操作パネル制御部5、外部I/F部7、CPU8、時計部9、メモリ10、HDD12の各周辺回路を接続している。外部I/F部7は上位装置1とネットワーク接続するインターフェース部で、印刷データやその他のデータを上位装置と送受信する。CPU8は演算処理と判断を行うとともに各周辺を統括制御する。時計部9は時刻を刻み、CPU8により時刻が読み出される。メモリ10はHDD12から読み出したデータやプログラムを格納しCPUの演算・判断のワークエリアとして使用される。HDD12には印刷制御装置のプログラム、温湿度分類データ、各温度・湿度対印刷条件を示す印刷条件対応表(印刷条件管理テーブル)、その他のデータが格納されている。機構制御部11は機構部13の動作制御を行う。機構部13は印刷に必要な機構(給紙部、排紙部、転写部、定着部など)を有し、機構制御部11の指示に従い動作する。
【0025】
温度計14、湿度計15は印刷装置2の近くにあり、黙示測定ができる。
【0026】
次に、上記のように構成された図1の印刷装置における本発明の動作を以下に説明する。
【0027】
図2は、本発明である1日の環境温度変化に応じて印刷条件を補正する処理を示すフローチャートである。電源をオンして印刷制御装置4に備わるHDD12から所定のプログラムとデータがメモリ10にロードされると初期化を行い起動が完了した後(ステップ201)、温度湿度に応じて印刷条件を補正する温度湿度補正機能が有効/無効どちらの設定になっているかを判断する(ステップ202)。温湿度補正機能が無効の場合は印刷条件を補正せず本フローチャートの示す処理を終了する。温度湿度補正機能が有効に設定されている場合は所定の温湿度補正画面を操作パネル3に表示させユーザがそのときの天気、温度、湿度、及び印刷条件の補正機能を有効にするか無効にするかなど所定の設定を行う(ステップ203)。画面表示の際にはHDD12に保存されている画面で表示すべき設定内容を読み取り、その設定内容を表示内容に反映させる。
図3および図4は、ステップ203でユーザが所定の設定行う際に使用する画面の1例を示すが、画面のデザインを含むユーザーインターフェースはこれに限るものではない。図3の画面では今日の天気、現在の気温、現在の湿度の設定と、そこで設定した天気、気温、湿度を温湿度履歴として残すか残さないか(残す場合は「とる」を選択)の設定を行うことができる。この「今日の天気」は天気マークを選択することで、「現在の気温」および「現在の湿度」は上下矢印ボタンを押すことでそれぞれ設定が可能である。「キャンセル」ボタンを押すことで図3および図4の画面で設定した新たな設定を無効として前回設定された設定内容を有効するとともに本画面を閉じて次のステップ(ステップ204)に移行する。一方、「確定」ボタンを押すことで図3および図4で設定した新たな設定を有効として本画面を閉じてHDD12に図3および図4で設定された内容を保存する。次のステップ(ステップ204)に移行する。画面右上に表示されている年月日時刻は時計部9の示す時刻であり、温湿度履歴を残す場合、この時刻情報が適用される。
【0028】
「次の画面へ」ボタンを押すと図4の画面に移行する。図4の画面では「補正機能」の「有効」「無効」ボタンを選択押下することで印刷条件の補正を行うか行わないかの設定を行う。「温湿度分類データ」の項では印刷条件の補正に温湿度分類データの情報を使用する(「有効」ボタンを押す)か使用しない(「無効」ボタンを押す)かの設定と、温湿度分類データの編集(「編集」ボタンを押す)と初期化(「初期化」ボタンを押す)を行うことができる。温湿度分類データの内容および編集については後述のステップ207で説明する。「”6”時間毎に温湿度補正画面を表示」の項では、「有効」のボタンを押すとステップ203の操作が前記「確定」ボタンを押して終了した時刻から6時間おきに図3の画面を操作パネル3に表示させてユーザに所定の設定を促す機能を有効にする。“6”の下に位置する上下矢印ボタンによってN時間おきに設定可能である。“6”に設定されていてこの機能が有効のとき図3の画面が6時間おきに表示されるがそのときユーザが印刷装置付近にいなくても認知できるようにブザーやライトなどを機能させると便利である。また、上下矢印ボタンで何時間おきに図3の画面を表示させるか設定することができる。本項で「無効」が選択された場合はこの図3を何時間おきに表示させる機能を無効にできる。「前の画面へ」ボタンを押すと図3の画面に戻る。
【0029】
以上がステップ203でユーザが設定する内容であり、ユーザの設定操作が終了し次第ステップ204に移行する。ステップ204ではステップ203の設定操作で図4の「補正機能」が無効となっているときはステップ205の印刷条件補正を行わずステップ206に移行する。「補正機能」が有効となっている場合、図3の「現在の温度」および「現在の湿度」で設定された温度、湿度に適する印刷条件をHDD12に格納されている各温度・湿度対印刷条件を示す印刷条件対応表(印刷条件管理テーブル)から選択して設定する(ステップ205)。図7に前記印刷条件対応表の1例を示す。印刷条件Pmについて、各温度帯、各湿度帯の組み合せに適する値(Pm1〜Pm9)が示されている。ステップ203で設定された温度、湿度がこの対応表のどの温度帯、湿度帯の組み合せに該当するかを認知することで、印刷条件を決定することができる。ステップ205の処理が終了した後ステップ206に移行する。
【0030】
次いで、ステップ206で温湿度履歴を「とる」、「とらない」、どちらの設定になっているかを判定し、「とらない」の設定になっているときにはステップ210に移行し、「とる」の設定になっているときはステップ207に移行する。ステップ207では温湿度分類データの追加・更新を行う。その具体的な説明を次に示す。図5は温湿度分類データの1例を示すものである。このデータは1日の天気と各時間帯毎の温度Tと湿度Wを示すものである。
【0031】
図5の温湿度分類データ中の黒反転表示部はユーザが温度計14、湿度計15で測定した温度、湿度の履歴データである。ステップ203で天気、測定温度、測定湿度の情報を操作パネル3から入力した後、確定操作を行うとその日まだ前記入力確定操作が行われていなければ、その日の履歴を記録するためその日の天気情報(例えば「晴れ1」)を付した新たなデータ列を作成し、該当する時間帯の履歴情報をHDD12に格納する。また、同じ日の同じ時間帯に入力時刻の異なった温度、湿度情報の履歴をとる操作がなされ確定操作が行われた場合は新しい温度、湿度情報を有効にしHDD12に格納する。図5の例では天気が「晴れ1」でその日の3時〜6時の間にユーザが温度計14、湿度計15で測定して得られた温度:T1b1、湿度W1b1が入力、確定されていることを示す。尚、6時〜9時(T1c1、W1c1)、12時〜15時(T1e1、W1e1)、15時〜18時(T1f1、W1f1)、18時〜21時(T1g1、W1g1)も同様の操作で履歴がとられている。
【0032】
一方、図5の黒反転していない部分は温度計14、湿度計15で測定して得られた温度、湿度を入力した履歴情報ではなく、図4に示す画面中「温湿度分類データ」の「編集」ボタンを押下した後に図5の表の内容を操作パネル3に表示させて、直接データ列の各時間帯に希望する温度、湿度を入力してHDD12に格納したものである。ユーザの都合で必ずしも全ての時間帯で履歴情報が採取できるとは限らず、また、印刷装置または設置環境によってはポイントの時間帯でむしろ特別な値を適用したほうがいい場合もありうる。採取しその日の履歴がとられた後にステップ203で図5の表の内容を画面を操作パネル3に表示させて、0時〜3時(T1a1、W1a1)、9時〜12時(T1a1、W1a1)、21時〜24時(T1h1、W1h1)、の想定される温度、湿度を直接入力し確定操作を行っている。
【0033】
尚、図5の下表に加えるデータ列の数は異なる日に履歴をとる毎に増えていくが、作成できるデータ列の数量に制限があり、データ列の数量が制限を超える場合はいずれかのデータ列の内容をクリアする。
【0034】
図5の列上に「■」マークがついているデータ列は、ステップ203で図4に示す画面中「温湿度分類データ」の「編集」ボタンを押下した後に図5の温湿度分類データの内容を操作パネル3に一覧表示させて、天気毎に示されたデータ列の中から晴れ、くもり、雨のそれぞれの天気について1つずつ選択し、確定操作を行いHDD12に格納してできたものである(各天気の代表温湿度データ)。このように予め天気毎に1つデータを選択しておいた上で、同じくステップ203で図3の画面の「今日の天気」で天気情報が設定されたときにここから同じ天気種のデータを1つ選定する。ここでは下矢印マークがついているデータ列「晴れ2」がステップ203にて図3画面の「今日の天気」で設定された天気種「晴れ」と同じで現在選定されている状態にあることを示している。
【0035】
さて、ステップ207で温湿度分類データの追加・更新処理が終了したのち、温湿度分類データが「有効」か「無効」かどちらに設定されているかを判断し(ステップ208)、「有効」が設定されている場合はステップ209に進む。この時点で前述の通り、ステップ203にてユーザの「今日の天気」の設定操作によって図5の温湿度分類データ中で下矢印が付いているデータ列が選定されている。このデータ列の温度、湿度情報のうち現在の時刻が当てはまる時間帯のものを選択してステップ203で設定された温度、湿度との差を求める。次に前記データ列中の全ての時間帯の温度、湿度データからこの差を差し引いて前記データ列を修正する(修正温湿度データ)。図6はその概念図で、現在の時刻が3時から6時の間であって、ステップ3で設定された温度Tiと湿度Wiが、温湿度分類データから選定されているデータ列「晴れ2」の温度T1bと湿度W1bよりそれぞれ2℃と10%高い例を示している。前記選定されているデータ列の温度T1bと湿度W1bをそれぞれ2℃および10%低い「T1b−2」と「W1b−10」に置き換えるとともに、他の時間帯の温度と湿度データも同様の計算をして置き換え、温湿度分類データのデータ列「晴れ2」について修正温湿度データを作成する。
【0036】
次いで、ステップ210で「時刻1」の監視を開始する。「時刻1」とは次回印刷条件を補正すべき時刻のことで、この時刻は温湿度分類データが示す各時間帯の各境界時刻のことである。まず、現在の時刻を含む時間帯「S」とその次の時間帯「S+1」の境界時刻が次に訪れる時刻1である。前記時刻1が訪れた後は時間帯「S+1」と次の時間帯「S+2」との境界時刻がその次の時刻1となる。この時刻1は、後に説明するステップ215にて印刷条件を補正する時期を指定する意味がある。
【0037】
一方、ステップ208で温湿度分類データが「有効」、「無効」のどちらに設定されているかを判断して「無効」が設定されている場合は印刷条件を補正しないため時刻1を監視する必要がなく、時刻1の監視をOFFにする(ステップ211)。
【0038】
時刻1監視ON(ステップ210)または時刻1監視OFF(ステップ211)が完了した後、ステップ212に移行して図4の画面例にてステップ203で設定した「N時間毎に温湿度補正画面を表示」が「有効」に設定されているとき時刻2の監視をONにして(ステップ213)、「無効」に設定されているとき時刻2の監視をOFFにする(ステップ214)。時刻2とはステップ203が終了してからN時間毎の時刻である。温湿度分類データに新たな履歴情報を作成する際、各時間帯毎に天気、温度、湿度情報を操作パネル3から入力するのが理想的なので、N時間毎に入力すべき時期が来たことをユーザに通知する目的がある。
【0039】
ステップ213、214の後はこのフロー処理を終了する。
【0040】
一方、図2フローは、図3、図4の画面を表示しての各項目の有効/無効設定変更、および図5の温湿度分類データの参照と編集を行いたい場合や、特定の時刻になって設定場面を表示させたい場合にも使用できるようにサブルーチン「設定更新」としてコールされたときにも処理がスタートする。
【0041】
「設定更新」が他の処理からコールされたならば、まず操作パネル3のメニュー画面などからの画面表示要求であるかを判断する(ステップ212)。もしそうであればステップ203に移行し、その後は前記説明のフロー処理を行う。もし不定期な画面表示要求でない場合はステップ213に移行して時刻2監視ONが設定されていて且つ時刻2に達したかを判定する。達している場合はステップ203に移行し、その後は前記説明のフロー処理を行う。これは前述のステップ212、213の設定によるもので、ユーザに天気、温度、湿度の履歴をとるようN時間毎に画面を表示して促す目的がある。時刻2に達していないまたは時刻2監視OFFのとき、ステップ214に移行し時刻1監視がON設定されていて且つ時刻1に達したかを判定する。達した場合、ステップ215にて図5温湿度分類データの上図の内容から、その日操作パネル3から設定された天気情報とステップ215がコールされたときの時刻に該当する温度と湿度を選定し、印刷条件の補正を行う。
【0042】
一方、このフローは、図3、図4の画面を表示しての各項目の有効/無効設定変更、および図5の温湿度分類データの参照と編集を行いたい場合や、特定の時刻になって設定場面を表示させたい場合にも使用できるようにサブルーチン「設定更新」としてコールされたときにも処理がスタートする。
【0043】
「設定更新」が他の処理からコールされたならば、まず操作パネル3のメニュー画面などからの画面表示要求であるかを判断する(ステップ215)。もしそうであればステップ203に移行し、その後は前記説明の処理フローを行う。もし画面表示要求でない場合はステップ216に移行して時刻2監視ONが設定されていて且つ時刻2に達したかを判定する。達している場合はブザーを鳴らし(ステップ217)、ステップ203に移行し、その後は前記説明のフロー処理を行う。これはステップ217、218で解説したようにユーザに天気、温度、湿度の履歴をとるようN時間毎に画面を表示して促す目的がある。時刻2に達していないまたは時刻2監視OFFのとき、ステップ218に移行し時刻1監視がON設定されていて且つ時刻1に達したかを判定する。達した場合、ステップ209の図6の修正温湿度データより、時刻1の時間帯に割り当てられた温度、湿度から、図7の印刷条件管理テーブルにて該当する印刷条件Pmを選定し、図1の機構制御部11に通知する(ステップ219)。機構制御部11はこの印刷条件Pmに基づいて機構部13に適切な設定を行なう。
【0044】
以上説明した本発明によれば、各印刷環境において1日の環境温度変化に対応した印刷条件の補正を操作パネルから最小で1日1回その日の天気、その時の印刷装置付近の温度、湿度を入力することで実施することが可能になる。
【0045】
次に、印刷装置内部の発熱体から影響を受ける温度、湿度の変化に応じて印刷条件を補正する手段について説明する。この補正手段は、図1のブロック図に示す印刷装置2および印刷制御装置4で構成される。以下、図7、図8のデータテーブル、図9、図10の動作フローチャートを使って実施例を説明する。
【0046】
印刷装置2の定着機やその他の装置に代表される発熱体(以下、発熱体という)は、発熱開始から発熱体の温度が安定するまでの間、印刷装置2内部の温度、湿度変化が生じるため印刷動作や品質を安定させる目的で希望の印刷条件に変更できると便利である。
【0047】
図8は、図7に示す印刷条件Pm(Pm1〜Pm9)に適用すべき印刷条件Ps0(Ps01〜Ps09)と印刷条件Ps(Ps1〜Ps9)について示している。印刷条件Ps0(Ps01〜Ps09)は発熱体が発熱開始してから印刷装置2内部の温度や湿度の時間変化が安定するまでの間に適用するもので、一方、印刷条件Ps(Ps1〜Ps9)は印刷装置2内部の温度や湿度の時間変化が安定してから適用するものである。
【0048】
図9は、発熱体が発熱開始し始めてからの印刷条件Pm(Pm1〜Pm9)を更新する処理フローについて示している。この図の説明上、この処理フローに付帯する処理を図10で先に説明する必要があるため図10から説明を行なうことにする。
【0049】
図10は、発熱体が発熱停止してからフラグAをONにし、発熱停止時刻(tq)をHDD12に記録保存するまでの処理フローを示す。まず発熱体が発熱停止(発熱体がOFF)になったことを確認し(ステップ1001)、ステップ1002にて発熱体が発熱開始(発熱体がON)してからの時間t1が特定の時間tgより短いと判断した場合はフラグAをONにして(ステップ1003)、ステップ1004に移行する。ステップ1002にて前記時間t1が特定の時間tgと同じかそれより長いと判断した場合は、ステップ1004に直接移行する。その後、発熱体がOFFした時の時刻tqをHDD12に記録保存して図10の処理フローを終了する。
【0050】
ここで、特定の時間tgは、発熱体がONになってから、印刷装置2内部の温度、湿度が安定領域に達するまでの時間より短い時間であって、発熱体がONになってからOFFになるまでの時間が時間tgより短い場合は印刷装置2内部の温度、湿度が安定領域に達しない状態で発熱体がOFFになったことを示し、フラグAをONしてこの情報をHDD12に記録保存する。
【0051】
次に、図9の発熱体が発熱開始し始めてからの印刷条件Pm(Pm1〜Pm9)を更新する処理フローについて説明する。
【0052】
まず、ステップ901で発熱体が発熱開始(発熱体がON)したことを確認し、ステップ902で発熱体がステップ901より以前に発熱停止(発熱体がOFF)した時刻tqと発熱体がONになった時刻(ステップ902の時刻)との時間差t2を記録保存する。次に、ステップ903で発熱体ONからの時間t1を計るタイマが稼動しているかどうかを判断し、t1のタイマ稼動していない時は、ステップ904でt1のタイマを開始し、ステップ905に移行する。ステップ903の分岐で既にt1のタイマを稼動している場合はステップ905に移行する。ステップ905の分岐で、時間t1が常温付近の特定の温度から発熱体がONになってから印刷装置2内部の温度、湿度が安定領域に達するまでの時間tsよりも短く(0<t1<ts)、かつ時間t2が、発熱体がOFFになってから印刷装置2内部の温度、湿度が安定する領域に達するまでの時間teより長い(te<t2)場合はステップ906に移行する。一方、ステップ905の分岐で上記条件に当てはまらない場合はステップ909でフラグAがONかOFFかを判定し、フラグAがONのときステップ906に移行し、フラグAがOFFのときはステップ907に移行する。前述の通り、フラグAがONとなっているときは、発熱体がONになってから、印刷装置2内部の温度、湿度が安定領域に達するまでの時間より短い時間に発熱体がOFFされたことを示している。つまり、ステップ905およびステップ909の判定でステップ906に移行するのは、発熱体がONになってから印刷装置2内部の温度、湿度が刻々と変化して安定領域に達していない場合であって、ステップ910に移行するのは、逆に印刷装置2内部の温度、湿度が安定領域に達している場合である。ステップ906、ステップ910ではそれぞれの場合で適切な印刷条件を組込む処理をする。まず、ステップ906に移行した場合、図7の印刷条件管理テーブルの印刷条件Pm(Pm1〜Pm9)を図8に示す印刷条件Ps0(Ps01〜Ps09)に書き書換えて図1のHDD12に保存する。
【0053】
一方、ステップ910では図7の印刷条件管理テーブルの印刷条件Pm(Pm1〜Pm9)を図8に示す印刷条件Ps(Ps1〜Ps9)に書き書換えて図1のHDD12に保存する。ステップ906に次いで、ステップ907、ステップ908は発熱体がONになってからの時間t1が印刷装置内部の温度、湿度が安定領域に達する時間tsより大きい場合(ts<t1)にフラグAをリセットして図9の処理フローを終了するが、逆にt1がtsと同じかそれよりも小さい場合はフラグAのリセットを行わず、図9のフローを終了する。
【0054】
一方、ステップ910から移行した後は、ステップ911では発熱体がONになってからの時間t1と発熱体がOFFになってからONになるまでの時間t2とをリセットして図9の処理フローを終了する。
【0055】
以上が、印刷装置内部の発熱体から影響を受ける温度、湿度の変化に応じて印刷条件を補正する手段である。本補正手段により、印刷装置内の発熱体の発熱開始、発熱停止による印刷装置内の温度、湿度変化に対応した印刷条件の補正を温度センサおよびユーザの設定操作を必要とすることなく実施できる。
【0056】
また、図2の処理フローで説明した図7の印刷条件Pm(Pm1〜Pm9)に、図9、図10の動作フローで説明した図8の印刷条件Ps0(Ps01〜Ps09)と印刷条件Ps(Ps1〜Ps9)を適用することで、印刷装置の設置環境による温度、湿度変化と印刷装置内部の発熱体による温度、湿度変化に応じた印刷条件の設定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明による実施例のブロック図である。(実施例1)
【図2】本発明による実施例の処理フローである。(実施例1)
【図3】本発明による実施例の操作パネル画面表示である。(実施例1)
【図4】本発明による実施例の操作パネル画面表示である。(実施例1)
【図5】本発明による実施例の温湿度分類データ説明図である。
【図6】本発明による実施例の温湿度分類データの修正説明図である。(実施例1)
【図7】本発明による実施例の印刷条件管理テーブル説明図である。(実施例1)
【図8】本発明による実施例の2つの印刷条件を示す説明図である。(実施例1)
【図9】本発明による実施例の処理フローである。(実施例1)
【図10】本発明による実施例の処理フローである。(実施例1)
【符号の説明】
【0058】
1は上位装置、2は印刷装置、3は操作パネル、4は印刷制御装置、5は操作ネル制御部、6はバス、7は外部I/F部、8はCPU、9は時計部、10はメモリ、11は機構制御部、12はHDD、13は機構部、14は温度計、15は湿度計である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻を通知する時計部と、温度及び湿度との組み合せと印刷条件Pmとの関係を示す印刷条件管理テーブルと、温度と湿度から前記印刷条件管理テーブルを参照して対応する印刷条件Pmを設定する印刷条件設定手段を備え、各温度、湿度の組み合せ情報を時間帯別に割り付け、更に前記時間帯別に割り付けた温度、湿度の組み合せ情報を日毎に管理した温湿度分類データを備えたことを特徴とする印刷制御装置。
【請求項2】
前記温度湿度分類データは日毎に天気情報を有し、天気の種類によって分類されていることを特徴とする請求項1記載の印刷制御装置。
【請求項3】
ユーザ設定の入力を可能とする入力手段と、時刻を通知する時計部と、温度及び湿度との組み合せと前記印刷条件Pmとの関係を示す印刷条件管理テーブルと、温度と湿度から前記印刷条件管理テーブルを参照して対応する前記印刷条件Pmを設定する印刷条件設定手段を備え、前記入力手段から温度、湿度及びその日の天気の情報が入力されたとき、入力時刻より前記温度、湿度を特定の時間帯毎に分類し、前記分類した温度、湿度情報を日毎に管理し前記日毎に管理する温度、湿度情報を入力された日の天気の種類によって分類した温湿度分類データを記録保存する手段を備えたことを特徴とする印刷制御装置。
【請求項4】
前期入力手段によって前記温湿度分類データの各時間帯毎に分類されている温度、湿度の情報を書き変え、同じ種類の天気で異なる日に記録保存された温度、湿度情報がある場合は天気の種類毎に何れか1つその日の温度、湿度情報を選定し、各天気の代表温湿度データとして登録する編集手段を備えること特徴とする、請求項2または請求項3記載の印刷制御装置。
【請求項5】
前記入力手段から天気、温度、湿度が入力されると前記各天気の代表温湿度データのうち前記入力された天気と同じ種類の天気のデータを選択し、前記選択した代表温湿度データの前記入力時刻に相当する時間帯に分類されている温度、湿度と前記入力された温度、湿度との差を算出し、前記選択した代表温湿度データの各時間帯毎に分類されている各温度、各湿度から前記算出した温度、湿度の差をそれぞれ差し引き、前記選択した代表温湿度データから修正温湿度データを作成する手段を備えることを特徴とする、請求項2、請求項3および請求項4の何れかに記載の印刷制御装置。
【請求項6】
前記修正温湿度データの示す各時間帯の境界時刻を認知し、その境界時刻に達するかどうかを監視する手段を備え、前記境界時刻に達する毎に前記修正温湿度データの前記境界時刻直後の時間帯に分類されている温度と湿度を参照して、更に前記印刷条件設定手段にて前記印刷条件管理テーブルを参照して対応する前記印刷条件Pmを設定する手段を備えることを特徴とする、請求項5記載の印刷制御装置。
【請求項7】
前記印刷条件Pmを更新する2つの印刷条件Ps0およびPsを備え、印刷装置内の発熱体が発熱停止してから発熱開始するまでの時間t2を計る手段と、前記発熱体が発熱開始してから発熱停止するまでの時間t1を計る手段を備え、常温付近の特定の温度から前記発熱体が発熱開始してから前記印刷装置内部の温度、湿度が安定領域に達するまでの時間tsと、前記発熱体が発熱停止してから印刷装置内部の温度、湿度が安定する領域に達するまでの時間teと、前記発熱体が発熱開始してから、前記印刷装置内部の温度、湿度が安定領域に達するまでの時間より短い時間tgとを備え、前記時間t1が常温付近の特定の温度から前記発熱体が発熱開始になってから印刷装置内部の温度、湿度が安定領域に達するまでの時間tsよりも短く、かつ時間t2が、前記発熱体が発熱停止になってから印刷装置内部の温度、湿度が安定する領域に達するまでの時間teより長い場合、または前記時間t1が前記時間tgよりも短い場合に前記印刷条件Pmを前記印刷条件Ps0に更新する手段と、前記時間t1及び前記時間t2が上記条件以外の場合に前記印刷条件Pmを前記印刷条件Psに更新する手段を備えることを特徴とする、請求項6記載の印刷制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−11029(P2006−11029A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187803(P2004−187803)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】