説明

印刷制御装置

【課題】カット紙印刷装置で出力した印刷済みの用紙に対するセキュリティが確保でき、大量印刷行業務において印刷装置の状態によるスタッカやホッパの施錠及び開錠を設定することにより容易に印刷済みの用紙をスタッカから取り出せたり、印刷前の用紙をホッパに補給したりできる印刷制御装置を提供する。
【解決手段】カット紙印刷装置を操作する操作パネルと複数の鍵付きスタッカとホッパのどちらか、または両方を有し、鍵付きスタッカに排紙した用紙を鍵でスタッカを開錠しないと取り出せない、鍵付きホッパには鍵でホッパを開錠しないと用紙を補給できないもので、印刷開始前にプリンタの状態による開錠指定を受け付ける操作パネルを有し、プリンタの状態が印刷開始前に指定した状態に遷移した時、鍵を使用せずに鍵付きスタッカから用紙を取り出せ、或いは鍵を使用せずに鍵付きホッパに用紙を補給する機能を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速カット紙プリンタで出力した印刷済みの用紙に対するセキュリティが確保でき、また高速カット紙プリンタでの大量印刷行業務においてプリンタの状態によるスタッカとホッパの施錠及び開錠を設定することにより容易に用紙が取り出せる印刷制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタ出力した印刷物に対するセキュリティが重要となってきた。このことから、プリンタで出力した印刷済みの用紙を排出するスタッカに鍵を付けることで、許可されて無い人が印刷物を取り出せないようなプリンタ製品が出てきた。スタッカに排紙した印刷物のセキュリティに関しては、上位装置からパスワード付の印刷データを送信しパスワードを入力しなければスタッカより印刷物を取り出せないものが考えられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この場合、印刷データと一緒に鍵を解除する為のパスワードを送信する必要がある、またパスワード入力以外にもカード認証等があるが全て印刷データと共にプリンタに送信する必要がある。このような技術は、一般のオフィスで複数の利用者でプリンタを共有して使う場合には、印刷出力した人とは別の人が印刷済みの用紙を持ち去るのを防ぐには有効な技術である。しかしながら、高速で大量に印刷するプリンタは、信頼できる専任のオペレータが印刷前の用紙をホッパに補給したり、印刷済みの用紙をスタッカから取り出すなどの操作を行うので、このように印刷物と用紙を取り出す人の照合を行う必要はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鍵の種類には暗証番号付き電子キーやカード認証を用いた電子式や、金属製の鍵を取り付け施錠する鍵などがある。一方、高速に大量印刷を行なうプリンタの場合には、頻繁にスタッカから印刷済みの用紙を取り出す操作が発生する。さらに言えば、他のスタッカに印刷出力中に満杯のスタッカから印刷済みの用紙を取り出すことで、印刷出力する動作を止めずに長時間連続出力することで効率的な印刷出力を可能にしている。
【0005】
すなわち、大量印刷を目的とする高速カット紙プリンタでは、印刷業務が停止しない方法として、スタッカが満杯になると次のスタッカに順次切り替わり全てのスタッカが満杯になる前に、満杯になったスタッカの用紙を取り除くことで印刷業務が停止しないで連続して印刷できるようになっている。このような大量印刷を目的とする高速カット紙プリンタを使用する運用環境では、信頼できる専任のオペレータがプリンタの操作を行うので、専任のオペレータがプリンタを操作している限りはスタッカやホッパを施錠する必要がない。スタッカやホッパを施錠する必要があるのは、専任のオペレータがプリンタを離れている時であり、その時に許可されていない人がスタッカやホッパから用紙を持ち去るのを防ぐ為である。
【0006】
印刷済みのスタッカに排紙されている用紙の持ち出しを防ぐのは情報漏洩の観点から必要であるが、ホッパの印刷前の用紙についても社名や社印などが事前に印刷されているプレプリント用紙の持ち去りについても偽造防止などの観点から必要である。
【0007】
このため、このような運用環境でのスタッカやホッパの施錠については、オペレータが該当するホッパやスタッカの操作が必要なときには自動的に開錠され、オペレータが操作を必要としないホッパやスタッカについては施錠されたままであれば、使い勝手がよくかつセキュリティが保たれる。
【0008】
プリンタに装備している全スタッカが満杯になり印刷業務が停止しないように用紙を取り出そうとしたとき、鍵付きのスタッカから用紙を取り出す必要があり、例えば2000枚格納できるスタッカが2台装備し、100枚/分の印刷性能を持つプリンタで印刷した場合、スタッカ2台全てが満杯になるのに印刷開始から40分後なので、印刷開始から20分後に1つ目のスタッカが満杯になりその後次のスタッカが満杯になる20分間の間に鍵を借り用紙を取り出す必要がある。また、ホッパについても同様に2000枚装填できるホッパであれば、20分で用紙切れとなり、印刷業務が停止しないように用紙切れとなったホッパに印刷前の用紙を補給する必要がある。このような作業状況では、満杯になった鍵付きのスタッカやホッパをその都度手動で開錠していたのでは使い勝手が悪く、印刷業務が停止する要因となる可能性もある。
【0009】
以上のように、高速カット紙プリンタで大量印刷を行う業務での印刷物に対するセキュリティと、高速カット紙プリンタの特徴である印刷業務を停止することなく連続印刷を容易にできる使い勝手のよい操作性が必要となる。
【0010】
本発明の目的は、高速カット紙プリンタで出力した印刷済みの用紙に対するセキュリティが確保でき、また高速カット紙プリンタでの大量印刷行業務においてプリンタの状態によるスタッカやホッパの施錠及び開錠を設定することにより容易に印刷済みの用紙をスタッカから取り出せたり、印刷前の用紙をホッパに補給したりできる印刷制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明の第1の手段は、カット紙印刷装置を操作する操作パネルと複数の鍵付きスタッカとホッパのどちらか、または両方を有し、鍵付きスタッカに排紙した用紙を鍵でスタッカを開錠しないと取り出せない、鍵付きホッパには鍵でホッパを開錠しないと用紙を補給できない印刷装置において、
印刷開始前にプリンタの状態による開錠指定を受け付ける操作パネルを有し、プリンタの状態が印刷開始前に指定した状態に遷移した時、鍵を使用せずに鍵付きスタッカから用紙を取り出せ、或いは鍵を使用せずに鍵付きホッパに用紙を補給する機能を有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、印刷装置の状態による鍵付きスタッカと鍵付きホッパの施錠及び開錠を指定する項目を複数登録しておき、印刷開始前に事前に登録した複数の施錠及び開錠項目から選択可能としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、従来使用していた印刷データをそのまま使用し、プリンタの状態により鍵付きスタッカとホッパのどちらか、または両方を施錠または開錠するかを設定することができ、高速カット紙プリンタで大量印刷を行う業務でもスタッカに排出した印刷済みの用紙に対するセキュリティと、高速カット紙プリンタの特徴である印刷業務を停止することなく連続印刷を容易にできる使い勝手のよい印刷制御装置が提供可能となる。
【0014】
また、プリンタ状態による施錠及び開錠設定を、事前にプリンタへ登録し、登録した項目を選択することで、JOB毎に施錠及び開錠指定する手間が省け、また設定誤りを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係る印刷制御装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例に係る鍵付きスタッカの使用の有無で排紙先を判別するフローチャートである。
【図3】本発明の実施例に係る印刷中にスタッカが満杯状態になった場合のフローチャートである。
【図4】本発明の実施例に係るオフライン状態での施錠、開錠の処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例に係る用紙ジャム発生状態での施錠、開錠の処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例に係る用紙なしでの施錠、開錠の処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例に係る鍵付きスタッカの施錠/開錠設定の切り替えを示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例に係る鍵付きホッパの施錠/開錠設定の切り替えを示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施例に係る鍵付きスタッカ及びホッパ制御テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、鍵付きスタッカとホッパを有するプリンタで、プリンタの状態により鍵付きスタッカやホッパを施錠するか開錠するかが設定でき、高速カット紙プリンタで大量印刷を行う業務で印刷物に対するセキュリティと、高速カット紙プリンタの特徴である印刷業務を停止することなく連続印刷することを特徴とする。
【0017】
プリンタの状態には、スタッカ満杯、オフライン、用紙ジャム、用紙なしがあり、スタッカ満杯でスタッカより用紙を取り出す場合は、スタッカ満杯で開錠と指定し、オフラインや用紙ジャムでもスタッカやホッパの鍵を開錠する指定を行なうことも可能であるが、オフライン状態や用紙ジャムの状態では既に印刷が停止しているので、セキュリティを優先して開錠しない指定が一般的であり、また、用紙無しについては、用紙のないホッパに対し施錠しなくて良いため開錠にするのが一般的である。
【0018】
スタッカの場合、全ての状態で開錠と指定した場合は、鍵付きスタッカと鍵なしスタッカを含めて使用でき、鍵付きスタッカは、開錠状態で使用する。いずれか1つでも施錠を指定した場合は、鍵付きスタッカのみ使用するようにする。
【0019】
また、施錠/開錠の切り替えは、鍵付きスタッカに用紙が無い時のみとし、鍵付きスタッカに用紙がある状態で開錠条件を変更すると鍵付きスタッカに入っている用紙のセキュリティが守れなくなるため変更不可とする。
【0020】
また、用紙補給時の施錠及び開錠指定の変更は、プリンタの印刷中又は停止中に関係なく切り替えられることが必要となる。よってパスワードの入力を必須としパスワードを知る専用のオペレータのみ施錠及び開錠指定の変更が可能とする。
【0021】
プリンタの状態をスタッカ満杯、オフライン、用紙ジャム、用紙なしとしているが条件を変更しても構わない。
【0022】
また、施錠及び開錠設定をJOB毎に指定するのは手間が掛かるし、また設定誤りが発生する場合がある、その為、JOB名とそれにあった施錠及び開錠設定を事前にプリンタへ登録することにより、印刷起動する前に、登録したJOB名を選択するだけで施錠状態を簡単に設定できるようにする。プリンタに登録方法として、登録番号とJOB名を登録しそれに合った施錠及び開錠設定を登録することを特徴とする。
【0023】
図1は、本発明の実施例に係る印刷制御装置を示すブロック図である。
【0024】
本発明の印刷制御装置102は、プリンタを操作する操作パネル101と、鍵付きスタッカ103と、鍵無しスタッカ104と、鍵付きホッパ105で構成している。図1の例では鍵付きスタッカ103を5台、鍵無しスタッカ104を5台装備し、鍵付きホッパ105を3台装備している。
【0025】
印刷開始する前に、操作パネル101より、プリンタの状態による施錠及び開錠設定を行う。指定方法として操作パネル101より直接プリンタの状態による施錠及び開錠設定を行う方法と、請求項2の事前にプリンタへ個別に登録し、登録した内容を選択するケースとがある。事前登録する利点として、印刷JOBが変わるたびに再指定する手間が省け、また、施錠及び開錠設定の誤りを防ぐことが出来る。
【0026】
事前登録する方法として操作パネル101から登録No、JOB名を入力し、次にプリンタの状態でのスタッカ及びホッパの施錠及び開錠設定を行う。
【0027】
それぞれ指定した項目は、図9のテーブルに登録する。登録したときの例を、図9の(登録例)の登録番号0001は、全てのプリンタの状態で施錠としている例である。
【0028】
登録番号0002は、頻繁に発生するスタッカ満杯時と、用紙なし時に開錠としている登録例である。登録番号0003は、全てのケースでスタッカ及びホッパの開錠を指定しているケースである。
【0029】
選択方法として、操作パネル101を操作し、事前登録した登録No.とJOB名のどちらか、または、両方を表示し、オペレータが選択する。また、プリンタの状態の例として、スタッカ満杯時、オフライン時、用紙ジャム時、用紙なしを例としている。
【0030】
スタッカ満杯時の開錠の選択は、大量印刷を行う際に全スタッカに用紙が満杯になる前にスタッカの用紙を鍵なしで取り出せ、操作性が良くなる、オフライン時のスタッカ及びホッパの開錠は、1JOB終了後プリンタオフライン指定するJOBの場合、印刷途中又は印刷停止では用紙を取り除くには鍵が必要だが、1JOB印刷後開錠するので鍵なしで用紙が取り出せる。
【0031】
また、用紙ジャム時で開錠は、ジャムリカバリができないプリンタにおいて用紙ジャムが発生するたびにスタッカから用紙を取り出す必要がある場合に指定する。用紙なし時の開錠指定は、用紙補給を鍵なしで行う時に指定する。
【0032】
上位装置より印刷データを送信すると、図2のステップ201でデータを受信し、ステップ202で、鍵付きスタッカを使用するかの判定を行い、使用しない場合はステップ204の鍵付きスタッカ又は鍵なしスタッカへ排紙を行い鍵付きスタッカへ排紙する場合は、開錠状態で使用する。鍵付きスタッカを使用する場合は、ステップ205の鍵付きスタッカへ排紙する。
【0033】
印刷中にスタッカが満杯状態になった場合、図3のステップ302で現在の指定がスタッカ満杯で開錠指定となっている場合はステップ304の鍵付きスタッカ開錠し、またスタッカ満杯で施錠としている場合は、施錠状態のまま(303)とする。
【0034】
印刷中又は印刷停止中にオフライン状態になった場合、図4のステップ402で現在の指定がオフラインで開錠指定となっている場合はステップ404の鍵付きスタッカ開錠し、また、オフラインで施錠としている場合は、鍵付きスタッカを施錠状態のまま(403)とする。
【0035】
印刷中に用紙ジャムが発生した場合、図5のステップ502で現在の指定が用紙ジャムで開錠指定となっている場合はステップ504の鍵付きスタッカ開錠し、また用紙ジャムで施錠としている場合は、鍵付きスタッカを施錠状態のまま(503)とする。
【0036】
印刷なしは、図6のステップ602で現在の指定が用紙なしで開錠指定となっている場合はステップ604の鍵付きホッパを開錠し、施錠指定いている場合は、鍵付きホッパ施錠状態のまま(603)とする。
【0037】
鍵付きスタッカの施錠/開錠設定の切り替えを図7のフローで示す。操作パネル101から施錠/開錠設定の切り替えた時、ステップ702で施錠を選択したかの判定を行い、プリンタの状態がどのような場合でも開錠するとした場合は、ステップ705へ進み変更可能となり、プリンタの状態により施錠するとした場合は、ステップ704で鍵付きスタッカに用紙が入っているか判断し、用紙が無い場合は、ステップ705へ進み変更可能となり、用紙がある場合は、ステップ703で鍵付きスタッカの用紙取り出し要求を行う。
【0038】
これは、鍵付きスタッカに用紙がある状態で施錠/開錠条件を変更してしまうとセキュリティを守れない為変更できないようにする。
【0039】
鍵付きホッパの施錠/開錠設定の切り替えを図8のフローで示す。
【0040】
鍵付きホッパの施錠/開錠設定変更は、ステップ802のパスワードの入力を要求しステップ803でパスワードが正しければステップ803で変更可能とする。パスワードを入力するのは、許可されていない人がホッパから用紙を持ち去るのを防ぐためである。
【符号の説明】
【0041】
101:操作パネル、102:印刷制御装置、103:鍵付きスタッカ、104:鍵無しスタッカ、105:鍵付きホッパ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0042】
【特許文献1】特開平07−98691号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カット紙印刷装置を操作する操作パネルと複数の鍵付きスタッカとホッパのどちらか、または両方を有し、鍵付きスタッカに排紙した用紙を鍵でスタッカを開錠しないと取り出せない、鍵付きホッパには鍵でホッパを開錠しないと用紙を補給できない印刷装置において、
印刷開始前に印刷装置の状態による開錠指定を受け付ける操作パネルを有し、印刷装置の状態が印刷開始前に指定した状態に遷移した時、鍵を使用せずに鍵付きスタッカから用紙を取り出せ、或いは鍵を使用せずに鍵付きホッパに用紙を補給する機能を有することを特徴とする印刷制御装置。
【請求項2】
印刷開始前に事前に登録した複数の施錠及び開錠項目から選択可能としたことを特徴とする請求項1記載の印刷制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−194939(P2010−194939A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44032(P2009−44032)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】