説明

印刷可能な塗料

【解決手段】支持体用のプライマレス塗料組成物であって、水分散性ポリマーであるバインダーと、水分散性であり、該水分散性ポリマーと混和性があり又は該水分散性ポリマーに結合するエチレン性不飽和化合物であって、インクと共有結合を形成することができるエチレン性不飽和化合物と、塗料を支持体に結合するのに適した架橋剤とを含む塗料組成物を提供する。
【効果】該塗料組成物を基板に被覆し、印刷可能なフィルムを形成することができる。本発明による印刷されたフィルムは、例えば、ボトルのような容器に使用されるラベルに使用してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷することができる改良された塗料に関する。特に、本発明は、放射線硬化性インクとともに使用した場合、良好な接着性を有する改良された印刷可能なフィルムに関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷された製品の多様化により、様々なシート状の材料、例えば、紙、合成紙、熱可塑性樹脂フィルムなどのポリマーフィルム、金属箔、金属で被覆されたシートなどに印刷することが求められている。これらの印刷品目は、オフセット印刷、グラヴィア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷及び凸版印刷によるなどの方法によって印刷される。これらの印刷方法では、放射線硬化性インクは素早く硬化し、該放射線硬化性インクを使用する印刷方法は取扱い性に優れた方法であるため、放射線硬化性インクを使用する方法が近年一般的になってきている。放射線硬化性インクは、包装、ラベル及び非吸収性印刷材料の印刷において有用であることが知られている。放射線硬化性印刷インクは、概して、不飽和アクリレート類、ポリエステル類、光重合開始剤及び添加剤を含む。しかし、電子ビーム線硬化インクでは、光重合開始剤を省略してもよい。
【0003】
印刷される品目上に放射線硬化性インクを被覆した後、印刷は放射線に曝され、たちまち硬化する。連続印刷では、300m/分の印刷速度が達成される。現在、シート状の印刷可能な品目に対する大きな需要がある。
【0004】
印刷用シートは、良好なシート走行性及び抗ブロッキング性、シートの表面上でのインクの均一な広がりを作る特性、ならびに制電性を有することが望まれる。これらの一般的に要求される特性の他に、放射線硬化性インクを使用する印刷方法では、印刷用シートには、特に、放射線硬化されたインクに強く密着する特性が必要とされる。
【0005】
特に、例えば、ボトルのラベル市場において、ラベルとして使用される放射線硬化性インクが印刷されたポリマーフィルムは、冷凍水条件に対する耐性(得られた製品を冷凍庫又は氷バケツ中で貯蔵するのを可能にする)及び例えば、水蒸気に曝すような滅菌プロセス(予めラベルが付けられたボトルを充填のために清潔にされることを確実にするため)に対する耐性の両方を備えるべきである。
【0006】
特許文献1は、支持層と、該支持体の少なくとも片面上にある表面層とを含む印刷用シートであって、前記表面層は、少なくともアクリレート系ポリマーと、不飽和化合物(けい皮酸又はその誘導体)とを含む印刷シートを開示する。この文献は、けい皮酸の代わりに他のモノマーを使用する可能性については何も教示していない。
【0007】
特許文献2は、改良されたバインダー、インク受容組成物、ならびにバインダー、特定の充填剤及び媒染剤を含む塗布基板と言われるものが開示されている。好ましいバインダーとして、少なくとも1種の耐湿磨耗性が強化されたモノマーで作られた1種以上のアクリル系共重合体が挙げられる。ここで開示される塗料組成物は、完全に飽和であり、媒染剤及び/又は充填剤によって提供されるインク受理性(ink receptivity)を有する。
【0008】
特許文献3は、インク受理性より保護性を意図する塗料用途のための、共混合ポリウレタン−ポリビニルエステル組成物を開示する。この文献は、製造過程の間に完全に硬化される、水分散性UVハイブリッド塗料の使用を示唆する。
【0009】
特許文献4は、基板と、該基板の少なくとも片面を被覆し、水分散性ポリマー及びエチレン性不飽和化合物を含む少なくとも1つの表面層とを含む印刷可能なフィルムを開示する。しかし、該製品は、高価であり、多成分系という性質のため製造が複雑である可能性がある。この文献は、十分なレベルの密着性を提供するために、基板と表面層との間の中間にプライマを使用することを教示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第410051号明細書
【特許文献2】国際公開第02/048260号パンフレット
【特許文献3】国際公開第01/60878号パンフレット
【特許文献4】米国特許公開第2002/0098340号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、先に列挙したシート状に形成される材料、特にポリマーフィルムは、印刷及び硬化後、特にこれらが極端な条件である場合、放射線硬化性インクに十分密着しない。したがって、印刷され放射線硬化されたインクには、印刷され放射線硬化されたインクがポリマーフィルムから分離するという問題がある。
【0012】
印刷可能なフィルムの分野においては、費用効率が高く、製造しやすく、かつ適切な接着性も有する製品を得るため、改良を必要としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第一の態様では、水分散性ポリマーであるバインダーと、
水分散性であり、かつ前記水分散性ポリマーと混和性のある又は水分散性該ポリマーに結合するエチレン性不飽和化合物であって、インクと共有結合を形成することができるエチレン性不飽和化合物と、
塗料を支持体に結合するのに適した架橋剤と、
を含む支持体用プライマレス塗料を提供する。
【0014】
本発明で支持体として使用することができる適切な基板は、ポリマーフィルム、特にポリオレフィンフィルム、紙、合成紙、織布、不織布、セラミックシート、金属板、及びこれらの材料の組合せによって形成される多層複合シートである。ラベルとして使用される印刷可能なフィルムとしては、ポリオレフィンフィルムが好ましく、配向ポリプロピレンフィルムが特に好ましく、欧州特許公開第0202812号明細書による配向ポリプロピレンフィルムがさらにより好ましい。
【0015】
本明細書でいう印刷可能なフィルムは、直接インクを付着することができるフィルム、すなわち、表面層が粘着性インクの引張り力に十分耐えるくらい強く、該表面層の他の部分は、表面から引き離され、剥けとして知られる欠点を有してもよいフィルムである。
【0016】
塗料配合物、得られる塗料、及び塗布製品は、プライマを含まない。これにより、コストの点ばかりでなく、製造装置及び簡潔性の点でも利点がある。さらに、プライマレス系は、印刷性の改良を可能にする。プライマを開示する大量の従来技術は、本発明のプライマレス系から離れたものを教示する。
【0017】
いくつかの従来技術系では、開放された印刷可能表面が、ポリマー(例えば、アクリル系ポリマー)と、エチレン性不飽和化合物(例えば、Cytec Industries
Inc.のEbecryl(登録商標))との間の相互反応により得られる。フィルムを印刷し、湿ったインクが塗布表面に密着し、次いで印刷されたフィルムを放射線硬化させた時、UV開始剤(インクに含まれている)により、Ebecrylがインクと架橋するラジカル硬化反応が開始し、こうしてインクをフィルムの表面に結合する。当業者は、概して、硬く、印刷できないフィルムが形成される恐れがあるため、被膜をフィルムに結合させる目的のために、架橋剤の使用を避け、代わりに、従来技術系では、塗料をフィルムに結合させる目的で、普通、フィルムと塗料との間に別のプライマ層を使用している。
【0018】
驚くべきことに、本発明者らは、良好な印刷性のような他の品質を落とすことなく結合を行うために、架橋剤を塗料配合物中に使用できることを発見した。本発明者らは、架橋剤を使用して、フィルム表面上の官能基を塗料組成物の成分中の官能基と結合できることを発見した。
また、架橋剤は、耐水性のあるフィルムも過度に硬くすることなく提供し、これは、表面はまだ容易に印刷することができることを意味する。事実、印刷性の改善が見られる。
【0019】
架橋剤は、効果的な印刷性が得られるとともに、効果的な密着(及び場合によっては、耐水性も)を付与できるように使用される。
発明者らは、イソシアネートは自己架橋し、硬い、不粘着性ポリ尿素成分を得る可能性があることを発見しているので、非イソシアネート系架橋剤が好ましい。発明者らは、カルボジイミド、特にアジリジン架橋剤で良好な結果を得ているので、これらの架橋剤が好ましい。当業者は、結合作用を提供し、効果的な印刷性をもたらす他の架橋剤も本発明の範囲内であることを理解するであろう。
【0020】
再び、本発明の系は、プライマベースの従来の系と対比すると、フィルムとトップコートとの間の界面にのみ存在し、トップコートそれ自身の中には存在しない別のプライマ層によって、結合が形成されるものである。
【0021】
本発明では、架橋剤は、概して、エチレン性不飽和化合物と反応することができ、これは、水分散性ポリマーの骨格の一部及び/又は側鎖を形成してもよいし、しなくてもよい。場合によっては、化学相互作用は、これらの2種の材料とポリマーも含む3方向相互作用であり、これにより、インクの受容及び後続の放射線硬化による硬化のために、フィルム表面上にプレポリマーが効果的に形成される。
【0022】
さらに、架橋剤は、概して、塗料組成物中に、水分散性ポリマーの架橋に必要な化学量論的な量を超える量で存在する。これにより、エチレン性不飽和化合物との反応に利用できる架橋剤がいくらか残ることを可能にする。
【0023】
本発明のプライマレス系では、架橋剤は、塗料全体に存在するのが好ましい。架橋剤は、該架橋剤がその上の官能基(例えば、フィルム上の酸基、水酸基及びアミノ基)に結合するフィルム(基板)から、架橋剤がポリマーを架橋し、エチレン性不飽和化合物と化学的に相互作用するトップコート全体を通り抜け、架橋剤がエチレン性不飽和化合物を固定し、まだエチレン性不飽和化合物上にインクとの結合に利用される官能基を残している表面まで達するのが好ましい。
系中に存在するエチレン性不飽和化合物は、インクが系に被覆される時点で、その不飽和基の少なくともいくらかを保持していることが、本発明の重要な特徴である。言い換えれば、塗料は、エチレン性不飽和基が化合物から完全に除かれるまでは硬化せず、塗面に被覆されたインクに対する結合を防止するエチレン性不飽和化合物を含む。
本発明の塗料配合物に使用されるエチレン性不飽和化合物は、(その1個以上のエチレン性不飽和基を介して)塗膜に被覆されたインクに結合する性能を持っていなければならない。
最初はエチレン性不飽和化合物が配合されるが、次いでインクを付着させる前に、インクの密着のために、不十分なエチレン性不飽和基が塗膜に残るように硬化させる塗料配合物は、本発明によるものではない。
【0024】
成分の組合せは、架橋しすぎて、硬い印刷できないフィルムをもたらすことなく、必要量を超える架橋剤を使用することができるようなものである。
好ましい架橋剤の中には、代わりに、加水分解によって過剰な架橋の問題を避けることができるものもある。
エチレン性不飽和化合物との反応;ポリマーを考慮する3方向相互作用;例えば、ポリマー製造において酸官能性のレベルを制限することなどの材料の特定の官能性;架橋剤の量;及び最初の重合時のモノマーの選択は、ある役割を果たすことができ、それにしたがって当業者は、変更することができる。
【0025】
架橋剤とエチレン性不飽和化合物との間の化学的相互作用のメカニズムは、場合によっては、例えば、マイケル付加又はそれに代えて/それに加えてベイリス−ヒルマン反応のような不飽和(エチレン性)結合による塩基誘発求核付加反応であってもよい。
【0026】
塗料組成物は、水性組成物が好ましく、あるいは溶剤(例えば、MEK-メチルエチルケトン−又は酢酸イソプロピル)系も使用することができる。有機溶剤系は、場合によっては、ポリエステルバインダー及び/又は芳香族架橋剤と組合わせて使用してもよい。
【0027】
エチレン性不飽和化合物は、(溶解と対立するものとして)水に対し分散性がある又は混和性があるのが好ましい。
【0028】
本発明の塗料は、先に述べた基板の少なくとも一表面を被覆する層を形成してもよい。水分散性ポリマーは、水分散性アクリレート類、ウレタン類、ウレタンアクリレート類、スチレンブタジエン/無水マレイン酸共重合体及びこれらの混合物から選択されてもよいが、これらは、限定ではなく例示である。水分散性ポリマーは、平滑なフィルムが形成されたインク受容面を形成する。
【0029】
水分散性ポリマーとして使用されるアクリルポリマーとして、少なくとも1種の(メタ)アクリル型モノマーと場合によっては他のビニル系又はアリル系化合物のフリーラジカル付加重合によって得られる(共)重合体が挙げられる。該アクリルポリマーは、平滑なフィルムが形成されたインク受容面を提供する。
【0030】
様々なアクリルポリマーが、この要求を満たすことができる。適切なアクリルポリマーは、(メタ)アクリル酸又はアルキル(メタ)アクリレート(ここで、アルキル基は、1〜10個の炭素原子を有する)のホモポリマー、又は2種以上の該(メタ)アクリル型モノマー及び場合によっては他のビニル系又はアリル系化合物の共重合体である。
【0031】
先に記載したように、水分散性ウレタンポリマーも適切に使用される。アクリルポリマーと同様に、このウレタンポリマーは、平滑なフィルムが形成された、インク受容面を提供できるべきであることが必須である。
【0032】
様々なウレタンポリマーがこの要求を満たすことができる。適切なウレタンポリマーは、例えば、少なくとも過剰量の有機ポリイソシアネートと、少なくとも2個のイソシアネートと反応しうる基を含む有機化合物と、アニオン性塩の官能基(又は酸基であって、次いで前記アニオン性塩の基に変換されてもよい酸基)又は非イオン性基を含むイソシアネートと反応しうる化合物と、活性水素含有鎖延長剤とを反応させることにより形成される末端イソシアネート含有ポリウレタンプレポリマーの反応生成物である。
【0033】
水分散性ポリマーは、UV硬化性の水系又は溶剤系である印刷インクを受容する表面を残しながら、最終フィルム特性として十分な耐水性を提供するために、架橋密度を制限するのに十分な低い量の反応性官能基を有する。10重量%未満の反応性官能基が存在するのが好ましい。
【0034】
水分散性ポリマーの量は、塗料組成物の乾燥後の重さの点から、例えば、10〜98%、好ましくは60〜95%、さらに好ましくは74〜92%である。
【0035】
表面層は、エチレン性不飽和化合物も含む。
【0036】
エチレン性不飽和化合物は、水分散性ポリマーと、水相中の湿った段階では混和性があり、乾燥した段階では相溶性があるように選択される。したがって、エチレン性不飽和化合物は、放射線硬化性インクが一度硬くなった表面層に浸透するのを容易にする可塑剤として作用する。あるいは、又はそれ加え、エチレン性不飽和化合物は、水分散性ポリマーの一部、例えば、ポリマーの官能性側鎖として提供されてもよい。
【0037】
また、エチレン性不飽和化合物は、インクを硬化するために印刷フィルムを照射に供する時、表面層に浸透しているインクの不飽和成分と反応できなければならない。
【0038】
表面層のエチレン性不飽和化合物と放射線硬化性インクの不飽和化合物との間のこの反応により、これらの化合物の間に化学結合が形成され、同時に表面層が架橋され、これによって最終の耐性製品が製造される。
【0039】
エチレン性不飽和化合物は、1分子当たり1〜10個の二重結合を含むのが好ましく、1分子当たり(又は化合物が水分散性ポリマーの側鎖、あるいは一部として提供される場合は、1官能基当たり)2〜5個の二重結合を含むのがさらにより好ましい。
【0040】
適切なエチレン性不飽和化合物は、[アルファ],[ベータ]−エチレン性不飽和酸、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸、イタコン酸又はシトラコン酸、マレイン酸又はフマル酸などと、ポリオール類又はアルコキシ化ポリオール類とのエステル誘導体である。
他の適切なエチレン性不飽和化合物として、エチレン性不飽和アルコール類及びそのエトキシル化変性体と反応したイソシアネートプレポリマー又はオリゴマーの誘導体、例えば、ヒドロキシルエチルメタクリレートと反応したDesmodur(Bayer)3官能性イソシアネートが挙げられる。言い換えれば、本発明で使用されるエチレン性不飽和化合物は、1個以上のエステル結合に加え、あるいはその代わりに、1個以上のウレタン結合を含んでもよい。
【0041】
適切なポリオール類は、飽和脂肪族ジオール類を含む。
該飽和脂肪族ジオール類として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−及び1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び2−メチル−1,3−プロパンジオールのようなものが挙げられる。
グリセロール、1,1,1−トリメチロールプロパン、ビスフェノールA及びこれの水素化誘導体も使用してよい。
適切なアルコキシル化ポリオール類として、先に列挙したポリオール類のエトキシル化又はプロポキシル化誘導体が挙げられる。
【0042】
本発明により使用することができるエチレン性不飽和化合物の例は、多官能性アクリレート類である。
該多官能性アクリレート類とは、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、2,2−ジオノールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレートなどのような2官能性アクリレート類;ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどのような3官能性アクリレート類;及び4官能性アクリレート類のようなものである。
【0043】
これらのアクリレート誘導体に対応するメタクリレート誘導体も使用することができることは理解されるべきである。
【0044】
さらに、テトラアリルオキシエタンのようなポリアリル誘導体も適切であることが発見された。この点で適切な材料は、Ebecrylという商標でCytecIndustries Inc.から市販されている。
【0045】
エチレン性不飽和化合物の量は、例えば、アクリルポリマーの約2〜約90重量%が可能であり、好ましくは約2〜約15%又は2〜10%である(本明細書では、%は全て乾燥重量基準である)。
【0046】
適切な架橋剤として、カルボジイミド及びアジリジン架橋剤、ならび例えば国際公開02/31016号パンフレットに開示されている架橋剤が挙げられる。
架橋剤は、基材とトップコートとの間の界面で、カルボキシル基、水酸基又はアミノ官能基の間で結合を形成することができる。
【0047】
また、架橋剤は、一度硬化すると、放射線硬化性インクの表面層への容易な浸透を可能にする表面層をもたらしながら、フィルム上に析出する表面層の、最終製品の固さ及び/又は耐水性を改善することもできる。
【0048】
例えば、1〜10%の、より好ましくは1〜5%又は2〜5%の架橋剤が使用される。
【0049】
例えば、ポリマーがアクリルポリマーの場合、架橋剤の量は、アクリルポリマーの10重量%までが可能であり、好ましくはアクリルポリマーの1〜5重量%である。
【0050】
表面層は、必要に応じて、1つのシートの、別のシートへのブロッキングを阻止するために、及びシート走行性、制電性、非透明性、その他を改良するために、他の全ての追加物質を含むことができる。これらの追加物質は、一般的に、全量が、アクリル系ポリマーの約40重量%を超えない量で加えられる。
該追加物質として、例えば、ポリエチレンオキサイド、シリカ、シリカゲル、クレイ、タルク、珪藻土、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸アルミニウム、合成ゼオライト、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、リトポン、サチン白、などのような顔料、並びに陽イオン、陰イオン及び非イオン静電防止剤などを使用してもよい。
【0051】
例えば、インク密着促進剤及び表面硬化剤として、例えばコロイダルシリカを使用してもよい。インク密着促進剤及び表面硬化剤は、例えば、5〜20%の量で存在してもよい。
【0052】
使用される適切な抗ブロッキング材料として、シリカ、クレイ、フィルムを形成しないポリマー(例えば、PMMA分散液及びビーズ)が挙げられ、例えば、0.1〜3%、好ましくは0.1〜1.0%の添加量で含まれる。
【0053】
水を使用して、約5〜20%の塗料固形物を得てもよい。
【0054】
本発明によれば、表面層は、水性分散液として、基板上に約0.5〜約2.5g/mで、ローラー塗布、ブレード塗布、スプレー塗布、エアーナイフ塗布、ロッドバー塗布、反転グラビア印刷などの方法により、基板に被覆され、次いで例えば熱風炉中で乾燥される。
【0055】
したがって、乾燥工程後、表面層は、架橋剤によって平滑に架橋された水分散性ポリマーと、アクリルポリマーマトリックス中に含まれるエチレン性不飽和化合物とを含む。これにより、放射線硬化性インクが容易に表面層に浸透できるとともに、それに続くエチレン性不飽和化合物との反応が可能になる。
【0056】
本発明では、プライマを使用しない。しかし、表面層を被覆する前に、もし十分な官能性が基板の表面にない場合は、場合によっては、湿潤性及び密着性を改良する目的で、従来の方法により前処理を行うことができる。この目的のため、例えば、コロナ作用、コロナ放電、火炎又は酸化剤によって基板を前処理することができるが、組成物の被覆の目的でシート状製品の表面を改良する目的の全ての公知の技術が適していることは理解されるべきである。
【0057】
基板の裏面、すなわち、表面層に被覆されていない面は、一般的に、感圧性接着剤で構成される感圧型接着剤層で被覆することができる。さらに、必要に応じて、剥離剤で構成される剥離フィルム又はシートで感圧型接着剤層を被覆することができる。本発明による印刷用シートを含むこのラミネートは、殆どの種類の表面に貼付される接着ラベルとして使用することができる。
【0058】
したがって、本発明の他の態様は、一面だけが表面層で被覆され、他の面は剥離フィルム又はシートで被覆されている感圧型接着剤層が被覆されている基板を含むラベルに用いられる印刷可能なフィルムに関する。
【0059】
本発明の他の態様は、印刷可能なフィルムを製造する方法であって、基板の少なくとも一面を、水分散性ポリマーと、エチレン性不飽和化合物と、適切な架橋剤と、場合によっては従来の添加剤とを含む水性分散液で塗布する工程と、さらに、そのようにして得た塗料を乾燥する工程とを含む方法に関する。
【0060】
印刷可能なフィルムを製造する方法は、場合によっては、基板の少なくとも一面を塗布する工程の前に、さらに、基板の前処理工程(例えば、コロナ放電処理)を含んでもよい。
【0061】
ラベルの製造に関する特定の実施形態では、前記基板の一面だけを表面層で塗布し、そのようにして得た一面塗布基板を、感圧性接着剤又は別法で塗布するが、感圧性接着剤を、塗布された基板と組合わせた剥離ライナーから転写してもよい。
【0062】
本発明の他の目的は、少なくとも一面が、水分散性ポリマーと、エチレン性不飽和化合物と、適切な架橋剤とを含む表面層で被覆された基板を含む印刷されたフィルムであって、該基板の塗布面は、放射線硬化性インクを使用して、オフセット印刷、グラヴィア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷及び凸版印刷など従来の方法で印刷され、次いで放射線硬化された、印刷されたフィルムに関する。
【0063】
放射線硬化用のインク配合物は、一般的に、顔料、展色剤、溶剤及び添加剤を含む。これらの系の溶剤は、それ自身反応しうる、低粘度モノマー(すなわち、反応性希釈剤として使用される)である。
展色剤は、普通、表面層のエチレン性不飽和化合物と反応することができるアクリレート誘導体のような、不飽和モノマー、プレポリマー又はオリゴマーから誘導される樹脂で構成される。
UVインクに関して、「添加剤」は、UV光の光子に反応して、系の反応を開始する光重合開始剤を大量に含む。
【0064】
UVインクの配合は以下のように一般化される。
顔料 15〜20%
プレポリマー 20〜35%
展色剤 10〜25%
光重合開始剤 2〜10%
他の添加剤 1〜5%.
【0065】
電子線硬化性インクに関しては、「添加剤」は、一般的に光重合開始剤を含まない。
【0066】
希釈剤と呼ばれることもある低粘度モノマーは、最終のポリマーマトリックスに完全に組み込まれ始めることになる、化学反応を起こすことができる。
【0067】
展色剤は、配合物の「硬質樹脂」部分を提供する。概して、これらは、例えば、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、カプロラクトンと水酸基を有する不飽和化合物との反応生成物などの、エチレン性基を有する化合物との反応によって変性された、ウレタン類、エポキシド類、ポリエステル類のような合成樹脂から誘導される。
【0068】
それぞれの塗布方法に求められる粘度を達成するために、使用されるプレポリマー及びモノマーの選択によって、適正な調整を行うことができる。
【0069】
本発明の他の態様は、印刷フィルムを製造する方法であって、
a)基板に水分散性ポリマーと、エチレン性不飽和化合物と、適切な架橋剤とを含む水性分散液を塗布する工程と、
b)そのようにして得た塗料を乾燥する工程と、
c)乾燥塗膜に放射線硬化性インクを付着させる工程と、
d)インクをUV又はEB照射により硬化する工程と、
を含む方法に関する。
【0070】
なお、この方法のそれぞれの工程は、従来の表面層と同様に、同じ条件(速度、コスト、その他)で行われてもよい。
【0071】
最後に、本発明は、本発明により、印刷可能なフィルムにインクを付着することによって得られた印刷されたフィルム、特にそのようにして得られた印刷されたラベルにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明による塗布されたフィルムの例を、概略的に、原寸に比例していない図1で示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0073】
本発明を説明する目的で、以下の実施例を示すが、該実施例では、標準の技術に従って基板フィルムに塗布してもよい。
【0074】
これらの実施例で使用された原料は、以下の供給業者から供給した。
Cytec Surface Specialties S.A./N.V. Anderlechtstraat, 33, 1620 Drogenbos;
Alberdingk Boley GmbH Europe Headquarters, Duesseldorfer Str. 53, 47829 Krefeld, Germany;
Cray Valley Laporte Road, Stallingborough, North East Lincolnshire, DN41 8DR; Xama Aziridenes Flevo Chemie (Nederland) B.V., Havendijk 8a,3846 AD Harderwijk,
The Netherlands;
Gasil Silica INEOSSilicas Limited, Warrington, England WA5 1AB; Baxenden Chemicals Ltd, Paragon Works, Worsley Street, Rising Bridge, Accrington, BB5 2SL;
Bayer Material Science 100 Bayer Road, Pittsburgh, PA 15205;
Grace Davison Oak Park Business Centre, Alington Road, Little Barford, St. Neots, Cambs PE19 6WL;
NIPPON SHOKUBAI EUROPE N.V. Haven 1053, Nieuwe Weg1, B-2070 Zwijndrecht, Belgium;
Nissando Industries Inc. 1-2-3, Onodai Midori-ku, China; DSM NeoResins+ Sluisweg 12, PO Box 123 5140 AC Waalwijk, The Netherlands.
【0075】
試料1
アクリル系共重合体(Craymul 8500; Cray Valley)
82.8(74.0〜90.9)%
シリカ(Gasil HP250; Crossfield)
0.2(0.1〜1.0)%
コロイダルシリカ(Ludox x30; GRACE Davison)
12(5〜20)%
Ebecryl 160(Cytec)
3(2〜10)%
XAMA−7(多官能性アジリジン架橋剤;Bayer Polymers)
2(2〜5)%
約5〜20%の塗料固形物とする水
【0076】
試料2
アクリル系共重合体(Craymul 8405; Cray Valley)
81.5(74.0〜90.9)%
シリカ(Seahostar KE250; Nippon Shokubai)
0.5(0.1〜1.0)%
コロイダルシリカ(Bindzil 15/500; GRACE Davison)
5〜20%
Ebecryl 160(Cytec)
5(2〜10)%
PFAZ322(多官能性アジリジン架橋剤;Bayer Polymers)
3(2〜5)%
約5〜20%の塗料固形物とする水
【0077】
試料3
PU分散液(Witcobond 315−40; Baxenden Chemicals)
33%
アクリル系共重合体(Craymul 8500; Cray Valley)
42.8(41.0〜57.9)%
シリカ(Seahostar KE250; Nippon Shokubai)
0.5(0.1〜1.0)%
コロイダルシリカ(Ludox x30; GRACE Davison)
15(5〜20)%
Ebecryl 160(Cytec)
5(2〜10)%
XAMA−2(多官能性アジリジン架橋剤;Bayer Polymers)
3.7(2〜5)%
約5〜20%の塗料固形物とする水
【0078】
(前記試料1〜3でカッコ内に記載は記載した材料の好ましい範囲であり、カッコの前に記載した数字は好ましい範囲内における配合物の特定の例である。)
【0079】
以下で、本発明によるさらに特定された配合物を製造、又は記載した抗ブロッキング成分が存在しない実験用に適切な形態で製造し、記載するように試験を行った。
【0080】
実施例1
【0081】
【表1】



【0082】
実施例2
【0083】
【表2】




【0084】
実施例3
【0085】
【表3】




【0086】
実施例4
【0087】
【表4】




【0088】
実施例5
【0089】
【表5】




【0090】
さらに他の本発明により意図される特定の配合物は以下の通りである。
【0091】
実施例6
【0092】
【表6】




【0093】
実施例7
【0094】
【表7】




【0095】
これらの試料及び実施例の系は、架橋剤が消費される前に、約8〜12時間の有用なポットライフを有するべきである。それにもかかわらず、さらに架橋剤を添加することにより、最終のフィルム製品に重大な影響を与えることなく形成を実現する。
【0096】
前記実施例1〜5の特定の配合物をフィルムに塗布した後、塗布フィルムを熱風炉で乾燥し、次いで市販のUV硬化性スクリーンインクを用いて、5〜15g/m2の量で、スクリーン印刷法により印刷した。例として、富士フィルム・セリコール(FUJIFILM SERICOL)のRN752 & 650−CWHD、パラゴン・インクス(PARAGON INKS)のUVSF−172インク、ノルコート(NORCOTE)のRSPシリーズインク、又はフリント・インクス(FLINT INKS)のコンビホワイト(Combiwhite)USW90004&UVOSCREEN II(tm)インクがある。
【0097】
このようにして得た印刷フィルムは、100〜200W/cmの電力の、代表的な取引条件のUVランプを使用して、50〜100m/分の代表的な印刷速度でUV硬化させた。
【0098】
最終的に得られた印刷されたフィルムを、以下の方法で試験した。
高温(通常、>90℃)及び低温(0℃)で非常に湿った状態に曝し、次いで、すぐに引掻き試験を行った。実施例1〜5はそれぞれ、高温試験をパスし、実施例3は、4℃で行った変更した低温試験をパスした。
【0099】
実施例6及び7のそれぞれ、及び試料1〜3に従って配合した特定の実施例に関しても、同じ結果が期待される。
結果は、本発明の新しいプライマレス系は、ラベル業界、例えば、飲料水業界に適切な優れた印刷フィルムを提供することを示していた。
【産業上の利用可能性】
【0100】
また、本開示の技術は、以下のような構成を取ることも可能である。
〔1〕 水分散性ポリマーであるバインダーと、水分散性であり、かつ該水分散性ポリマーと混和性のある又は該水分散性ポリマーに結合するエチレン性不飽和化合物であって、インクと共有結合を結合することができるエチレン性不飽和化合物と、塗料を支持体に結合するのに適した架橋剤と、を含む支持体用プライマレス塗料組成物。
〔2〕 最終製品における結合が、架橋剤とエチレン性不飽和化合物との間に起こる前記〔1〕に記載の塗料組成物。
〔3〕 印刷に適する、平滑なフィルムが形成されたインク受容面を提供することができる前記〔1〕又は〔2〕に記載の塗料組成物。
〔4〕 塗料組成物の乾燥後、前記水分散性ポリマーが10〜98重量%の量で存在する前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の塗料組成物。
〔5〕 塗料組成物の乾燥後、該エチレン性不飽和化合物が2〜90重量%の量で存在する前記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の塗料組成物。
〔6〕 塗料組成物の乾燥後、前記架橋剤が1〜5重量%の量で存在する前記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の塗料組成物。
〔7〕 前記水分散性ポリマーが、水分散性アクリレート類、ウレタン類、ウレタンアクリレート類、スチレンブタジエン/無水マレイン酸共重合体及びこれらの混合物から選択される前記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の塗料組成物。
〔8〕 前記架橋剤が、カルボジイミド架橋剤又はアジリジン架橋剤である前記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の塗料組成物。
〔9〕 インクを塗膜に被覆した時に、塗膜中に存在するエチレン性不飽和基によって、エチレン性不飽和化合物がインクと共有結合を形成することができる前記〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の塗料組成物。
〔10〕 塗料を塗布工程でフィルムに被覆し、塗布されたフィルムを印刷ステーションに供給する際、インクを塗膜に被覆する前記〔9〕に記載の塗料組成物。
〔11〕 基板と、前記〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載の塗料組成物から形成される少なくとも1つの表面層とを含み、プライマ層を含まない印刷可能なフィルム。
〔12〕 基板と、印刷に適した第一表面層であって、前記〔1〕〜〔10〕のいずれか1項に記載の塗料組成物から形成され、プライマ層を含まない第一表面層と、密着に適した第二表面層とを含む印刷可能なフィルム。
〔13〕 第二表面層が、前記〔1〕〜〔10〕のいずれか1項に記載の塗料組成物から形成され、プライマ層を含まない請求項12に記載の印刷可能なフィルム。
〔14〕 基板が、ポリマーフィルム、ポリオレフィンフィルム、紙、合成紙、織布、不織布、セラミックシート、金属繊維シート、金属で被覆されたシート(フィルム)、金属箔、金属板及びこれらの材料を組み合わせて形成される多層複合シートからなる群から選択される前記〔11〕〜〔13〕のいずれか1項に記載の印刷可能なフィルム。
〔15〕 基板が、配向ポリプロピレンフィルムである前記〔11〕〜〔14〕のいずれか1項に記載の印刷可能なフィルム。
〔16〕 一面だけが表面層で塗布され、基板の裏面は、感圧型接着剤層で被覆されている前記〔11〕〜〔15〕のいずれか1項に記載の印刷可能なフィルム。
〔17〕 前記〔11〕〜〔16〕のいずれか1項に記載の印刷可能なフィルムを含み、さらに印刷が施された印刷フィルム。
〔18〕 基板の少なくとも1つの面を、前記〔1〕〜〔10〕のいずれか1項に記載の塗料を含む水性分散液で塗布する工程と、さらに、そのようにして得た塗料を乾燥する工程を含む前記〔11〕〜〔17〕のいずれか1項に記載の印刷可能なフィルムを製造する方法。
〔19〕 前記〔18〕に記載の工程を含み、さらに、乾燥塗膜に放射線硬化性インクでインクを付着する工程と、UV又はEB照射でインクを硬化させる工程とを含む前記〔17〕に記載の印刷されたフィルムを製造する方法。
〔20〕 前記〔19〕の方法により得ることが可能な印刷されたフィルム。
〔21〕 ラベル形態のフィルムであって、該フィルムは、印刷前又は後に、感圧型接着剤層及び場合によっては剥離フィルムと組合わされる前記〔16〕、〔17〕又は〔20〕に記載の印刷されたフィルム。
〔22〕 塗料を塗布工程でフィルムに被覆し、塗布されたフィルムを印刷ステーションに供給する際に、インクを塗膜に被覆する前記〔18〕、〔19〕又は〔20〕に記載の方法。
〔23〕 前記〔21〕に記載のラベルが貼られたボトルをはじめとする容器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分散性ポリマーであるバインダーと、
水分散性であり、かつ該水分散性ポリマーと混和性のある又は該水分散性ポリマーに結合するエチレン性不飽和化合物であって、インクと共有結合を結合することができるエチレン性不飽和化合物と、
フィルム表面上の官能基を塗装組成物の成分中の官能基と結合させ、塗料を支持体に結合するのに適した架橋剤と、
を含む支持体用プライマレス塗料組成物。
【請求項2】
前記架橋剤が塗装全体に存在し、及び前記架橋剤がその上の官能基に結合するフィルム(基板)から、架橋剤がポリマーを架橋し、エチレン性不飽和化合物と化学的に相互作用するトップコート全体を通り抜け、架橋剤がエチレン性不飽和化合物を固定し、エチレン性不飽和化合物上にインクとの結合に利用される官能基を残している支持体表面にまで達するものである、請求項1記載の支持体用プライマレス塗料組成物。
【請求項3】
前記化学的相互作用は、前記エチレン性不飽和化合物、前記架橋剤及びポリマーを含む3方向相互作用であり、これによりインクの受容及びその後の硬化のために、フィルム表面上にプレポリマーが効果的に形成される、請求項2記載の支持体用プライマレス塗料組成物。
【請求項4】
さらに塗料を支持体に結合させ、効果的に密着させ、前記架橋剤が効果的に耐水性もある支持体を提供する、請求項1〜3のいずれか1項記載の支持体用プライマレス塗料組成物。
【請求項5】
前記架橋剤は、支持体に塗料を結合させ、効果的に密着させるための量を塗料組成物中に提供されている、請求項1〜4のいずれか1項記載の支持体用プライマレス塗料組成物。
【請求項6】
前記架橋剤の量は、(a)前記架橋剤自体の性質;(b)加水分解に対する架橋剤の能力;(c)エチレン性不飽和化合物との架橋剤の反応性の性質;(d)架橋剤、エチレン性不飽和化合物とポリマーとの間で任意に調整する3方向相互作用の性質;(e)ポリマー中の酸官能性のレベルでの組成物中の材料の官能性;に関し、これらから1種以上選択される請求項5記載の支持体用プライマレス塗料組成物。
【請求項7】
前記架橋剤は、水溶性ポリマーの架橋に必要な化学量論的な量を超える量で存在する、請求項5又は6記載の支持体用プライマレス塗料組成物。
【請求項8】
前記架橋剤は、塗料組成物中、1〜10重量%である、請求項1〜7のいずれか1項記載の支持体用プライマレス塗料組成物。
【請求項9】
前記架橋剤は、塗料組成物中、2〜5重量%である、請求項8項記載の支持体用プライマレス塗料組成物。
【請求項10】
最終製品における結合が、架橋剤とエチレン性不飽和化合物との間に起こる請求項1〜9のいずれか1項に記載の支持体用プライマレス塗料組成物。
【請求項11】
印刷に適する、平滑なフィルムが形成されたインク受容面を提供することができる請求
項1〜10のいずれか1項に記載の支持体用プライマレス塗料組成物。
【請求項12】
塗料組成物の乾燥後、前記水分散性ポリマーが10〜98重量%の量で存在する請求項
1〜11のいずれか1項に記載の支持体用プライマレス塗料組成物。
【請求項13】
塗料組成物の乾燥後、該エチレン性不飽和化合物が2〜90重量%の量で存在する請求
項1〜12のいずれか1項に記載の支持体用プライマレス塗料組成物。
【請求項14】
前記水分散性ポリマーが、水分散性アクリレート(共)重合体、ウレタン(共)重合体、ウレタンアクリレート(共)重合体、スチレンブタジエン/無水マレイン酸共重合体及びこれらの混合物から選択される請求項1〜13のいずれか1項に記載の支持体用プライマレス塗料組成物。
【請求項15】
前記架橋剤が、カルボジイミド架橋剤又はアジリジン架橋剤である請求項1〜14のいずれか1項に記載の支持体用プライマレス塗料組成物。
【請求項16】
インクを塗膜に被覆した時に、塗膜中に存在するエチレン性不飽和基によって、エチレン性不飽和化合物がインクと共有結合を形成することができる請求項1〜15のいずれか1項に記載の支持体用プライマレス塗料組成物。
【請求項17】
基板と、請求項1〜16のいずれか1項に記載の塗料組成物から形成される少なくとも1つの表面層とを含み、プライマ層を含まない印刷可能なフィルム。
【請求項18】
基板と、印刷に適した第一表面層であって、請求項1〜16のいずれか1項に記載の塗料組成物から形成され、プライマ層を含まない第一表面層と、密着に適した第二表面層とを含む印刷可能なフィルム。
【請求項19】
第二表面層が、請求項1〜16のいずれか1項に記載の塗料組成物から形成され、プライマ層を含まない請求項18に記載の印刷可能なフィルム。
【請求項20】
基板が、ポリマーフィルム、ポリオレフィンフィルム、紙、合成紙、織布、不織布、セ
ラミックシート、金属繊維シート、金属で被覆されたシート(フィルム)、金属箔、金属
板及びこれらの材料を組合わせて形成される多層複合シートからなる群から選択される請
求項17〜19のいずれか1項に記載の印刷可能なフィルム。
【請求項21】
基板が、配向ポリプロピレンフィルムである請求項17〜20のいずれか1項に記載の
印刷可能なフィルム。
【請求項22】
一面だけが表面層で塗布され、基板の裏面は、感圧型接着剤層で被覆されている請求項17〜21のいずれか1項に記載の印刷可能なフィルム。
【請求項23】
請求項17〜22のいずれか1項に記載の印刷可能なフィルムを含み、さらに印刷が施された印刷フィルム。
【請求項24】
基板の少なくとも1つの面を、請求項1〜16のいずれか1項に記載の塗料を含む水性分散液で塗布する工程と、さらに、そのようにして得た塗料を乾燥する工程を含む請求項17〜23のいずれか1項に記載の印刷可能なフィルムを製造する方法。
【請求項25】
請求項24に記載の工程を含み、さらに、乾燥塗膜に放射線硬化性インクでインクを付着する工程と、UV又はEB照射でインクを硬化させる工程とを含む請求項23に記載の印刷されたフィルムを製造する方法。
【請求項26】
請求項25の方法により得ることが可能な印刷されたフィルム。
【請求項27】
ラベル形態のフィルムであって、該フィルムは、印刷前又は後に、感圧型接着剤層および場合によっては剥離フィルムと組合わされる請求項24、25又は26に記載の印刷されたフィルム。
【請求項28】
ラベル形態のフィルムであって、該フィルムは、印刷前又は後に、感圧型接着剤層及び場合によっては剥離フィルムと組合わされる請求項23又は請求項27に記載の印刷されたフィルム。
【請求項29】
請求項28に記載のラベルが貼られたボトルをはじめとする容器。

【図1】
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【公開番号】特開2012−136700(P2012−136700A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−14942(P2012−14942)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【分割の表示】特願2011−540209(P2011−540209)の分割
【原出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(505300508)イノヴィア フィルムズ リミテッド (14)
【Fターム(参考)】