説明

印刷可能配合物としての感光性ポリマー組成物

本発明は、特に画像を表示するためのホログラフィック媒体の製造に適している、特定のウレタンアクリレートに基づく新規な感光性ポリマーの、印刷方法における書き込みモノマーとしての用途に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に画像を表示するためのホログラフィック媒体の製造に適している、特定のウレタンアクリレートに基づく新規な感光性ポリマーの、印刷方法における書き込みモノマーとしての用途に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性ポリマーは、2つのコヒーレント光源の重ね合わせを照射すると、感光性ポリマーにおいて三次元構造体が生じる材料であり、この構造体は一般に、屈折率の領域を変えることによって、感光性ポリマー材料に書き込むことができる。そのような構造体はホログラムと称され、回折光学素子と記載することもできる。そのようなホログラムが発現する光学的機能は、特定の光照射に依存する。
【0003】
可視領域における光学用途のためのホログラムの支持体として感光性ポリマーを使用するためには、一般に、高い回折効果を有する無色または非常に淡い色の材料が、光照射後に必要とされる。ホログラフィーが開発されてから、ハロゲン化銀フィルム、特に解像力の高いハロゲン化銀フィルムがこの目的のために使用されてきた。二クロム酸塩ゼラチン(DCG)、二クロム酸塩含有ゼラチンフィルム、またはハロゲン化銀とDCGの混合物も使用されている。いずれの材料も、ホログラムの形成のために化学的な後処理を必要とする。このことは、工業的方法に追加コストをもたらし、化学的現像溶液の取扱いを必要とする。更に、湿式化学法は、フィルムの膨潤およびその後の収縮をもたらす。これらは、ホログラムにおける色シフトをもたらす場合があり、望ましくない。
【0004】
US 4959284は、特に、有機溶媒に可溶性の熱可塑性樹脂(例えば、ポリ酢酸ビニル、セルロースアセトブチレートまたはポリメチルメタクリレート−スチレンコポリマー)、光開始剤および少なくとも1種のビニルシクロプロパン誘導体からなる感光性ポリマーを記載している。更に、EP 352774 A1は、他のビニル基を含有するモノマー、例えば、N−ビニルピロリドン、フェノキシエチルアクリレートおよびトリオール(例えば、トリメチロールプロパン(TMPTA)およびエトキシル化トリメチロールプロパン(TMPEOTA))のアクリレート、或いは他のアクリレートまたはアクリルアミドを記載している。そのような感光性ポリマーは、比較的長い熱処理の後にのみ利用可能なホログラムを示すことが、この業界で知られている。O'Neillらはその概説論文(Applied Optics, 第41巻、第5号、第845頁以下、2002)において、上記材料だけでなく、熱可塑性樹脂とアクリルアミドとから得られる感光性ポリマーも議論している。アクリルアミドの望ましくない毒性プロフィールに加えて、そのような生成物は、明るいホログラムを示さない。
【0005】
光の影響下に光感受性が変化する染料を配合する、ホログラフ的に活性な材料も知られている(Luoら、Optics Express, 第13巻、第8号、2005, 第3123頁)。同様に、Bieringer(Springer Series in Optical Sciences (2000), 76, 第209〜228頁)は、光の影響下に異性化することができる同様のポリマー結合染料である、いわゆるフォトアドレス可能なポリマーを記載している。光照射によって、いずれの物質にもホログラムを組み込むことができ、これらの材料をホログラフィックデータストレージに使用することができる。しかしながら、これらの生成物は、もちろん強く着色しており、従って先に記載した用途には適していない。
【0006】
近年、熱可塑性樹脂からではなく、架橋ポリマーから得られた感光性ポリマーが記載されている。US 020070077498は、ポリウレタンマトリックスに溶解した2,4,6−トリブロモフェニルアクリレートを記載している。同様に、US 6103454は、4−クロロフェニルアクリレート、4−ブロモスチレンおよびビニルナフタレンのような重合性成分を含んでなるポリウレタンマトリックスを記載している。これらの配合物は、ホログラフィックデータストレージのため、並びに電子検出器によってのみ読み取ることができる多数のしかしながら非常に弱いホログラムが書き込まれ、そして読み取られるホログラフィック用途のために開発された。可視領域全体における光学用途のためには、そのような配合物は適していない。
【0007】
更に、天然不飽和油、光開始剤および添加剤の混合物と二官能性アクリレートとを含有する低粘性感光性ポリマー配合物が記載されている(DE 102004030019、WO 2005124456)。
【0008】
未公開のPCT/EP2008/002464、EP 08017279.4、EP 08017277.8、EP 08017273.7、EP 08017275.2は、ポリウレタンマトリックス中の書き込みモノマーとしてのウレタンアクリレート配合物を開示している。これらから出発して、特定の状況下で、そのような感光性ポリマー配合物の印刷が可能であることが見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US 4959284
【特許文献2】EP 352774 A1
【特許文献3】US 020070077498
【特許文献4】US 6103454
【特許文献5】DE 102004030019
【特許文献6】WO 2005124456
【特許文献7】PCT/EP2008/002464
【特許文献8】EP 08017279.4
【特許文献9】EP 08017277.8
【特許文献10】EP 08017273.7
【特許文献11】EP 08017275.2
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】O'Neillら、Applied Optics, 第41巻、第5号、第845頁以下、2002
【非特許文献2】Luoら、Optics Express, 第13巻、第8号、2005, 第3123頁)
【非特許文献3】Bieringer, Springer Series in Optical Sciences (2000), 76, 第209〜228頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
A)NCO基が主として脂肪族的に結合し、1.6〜2.05のヒドロキシ官能価を有するヒドロキシ官能性化合物に基づくイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを、少なくとも含有するポリイソシアネート成分、
B)イソシアネート反応性ポリエーテルポリオール、
C)少なくとも1個の芳香族構成単位を含有し、405nmで1.50超の屈折率を有し、NCO基およびOH基を含有しない、ウレタンアクリレートおよび/またはウレタンメタクリレート、
D)ラジカル安定剤、
E)ホウ酸塩と、400〜800nmのスペクトル域を少なくとも部分的にカバーする吸収帯を有する1種以上の染料との組み合わせに基づく光開始剤、
F)任意に触媒、
G)任意に助剤および添加剤
を含んでなる、印刷に適したポリウレタン組成物に関する。
【0012】
本発明はまた、本発明のポリウレタン組成物を、フィルムに、印刷インキ成分または印刷インキとして適用する、印刷したフィルムの製造方法に関する。
【0013】
本発明は更に、印刷したフィルムのフィルム構造体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】反射型ホログラムを書き込むためのλ=633nm(He−Neレーザー)でのホログラフィック媒体試験装置の配置を示す。
【図2】回折効率、理論ブラッグ曲線および透過強度の測定データの、中心回転角Ω−α−シフトに対するプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に必須である成分A)のプレポリマーは、触媒および溶媒を任意に使用した、適当な化学量論での、モノマーイソシアネート、オリゴマーイソシアネートまたはポリイソシアネートA1)とイソシアネート反応性化合物A2)との反応によって、当業者にそれ自体よく知られている方法で得ることができる。
【0016】
このような方法で、ウレタン基、アロファネート基、ビウレット基および/またはアミド基を含有するイソシアネート官能性プレポリマーを調製することができる。
【0017】
適当なポリイソシアネートA1)は、当業者にそれ自体知られている、脂肪族、脂環式、芳香族または芳香脂肪族のジイソシアネートおよびトリイソシアネートの全てであり、それらがホスゲン法によって得られたのか、或いはホスゲンフリー法によって得られたのかは重要ではない。加えて、ウレタン、ウレア、カルボジイミド、アシルウレア、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、オキサジアジントリオン、ウレトジオンまたはイミノオキサジアジンジオン構造を含有する、単量体ジイソシアネートおよび/またはトリイソシアネートの比較的高い分子量の二次製品を、いずれの場合にも、単独でまたは互いの混合物として使用することもでき、そのような二次製品は、当業者にそれ自体よく知られている。
【0018】
成分A1)として使用することができる好ましい単量体ジイソシアネートまたはトリイソシアネートは、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、および/またはイソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(TIN)である。TIN、TMDIおよびHDIが特に好ましく、HDIが非常に好ましい。
【0019】
好ましくは1.9〜2.01、特に好ましくは2.0のヒドロキシ官能価を有するヒドロキシ官能性化合物を、プレポリマーの合成のためのイソシアネート反応性化合物A2)として使用する。
【0020】
上記官能価範囲のオリゴマーまたはポリマーイソシアネート反応性化合物がこの目的に適しており、その例は、低分子量短鎖の脂肪族、芳香脂肪族または脂環式ジオール、即ち2〜20個の炭素原子を含有するそのようなジオールである。ジオールの例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、ジエチルオクタンジオール位置異性体、1,3−ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル 2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネートである。
【0021】
上記官能価範囲の比較的高分子量の脂肪族および脂環式ポリオール、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ヒドロキシ官能性アクリル樹脂、ヒドロキシ官能性ポリウレタン、ヒドロキシ官能性エポキシ樹脂または対応するハイブリッドも適している。
【0022】
そのようなポリエーテルポリオールとして、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシド、およびそれらの混合付加物およびグラフト生成物、並びに二価アルコールまたはその混合物の縮合によって得られたポリエーテルポリオール、並びに二価アルコールのアルコキシル化によって得られたポリエーテルポリオールを挙げることができる。好ましい二官能性ポリエーテルポリオールは、200〜18000g/molの数平均分子量、好ましくは600〜8000g/molの数平均分子量、特に好ましくは1000〜4500g/molの数平均分子量を有する、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)、およびそれらのランダムコポリマーまたはブロックコポリマーとしての化合物、並びにそれらの混合物である。
【0023】
成分A2)として、650〜4500g/molの数平均分子量、好ましくは1000〜4100g/molの数平均分子量、特に好ましくは1900g/mol〜2100g/molの数平均分子量、並びに上記範囲の官能価を有するポリ(プロピレンオキシド)を使用することがとりわけ好ましい。
【0024】
プレポリマーの合成では、ウレタン化のための化学量論量で、成分A1)のイソシアネートを、成分A2)のアルコールと反応させて、ウレタン基を形成する。先に記載したジイソシアネート、トリイソシアネートおよびポリイソシアネートとの反応のために、この場合に適当なアルコールは、先に記載したタイプのオリゴマーまたはポリマー、第一級または第二級の二官能性アルコールの全てである。ウレタンプレポリマーに関しては、これらは、好ましくは、エタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールまたはテトラプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドおよび/または他の1−アルカンオキシドのブロックポリマーおよび/またはブロックコポリマー、ポリ(THF)、10000g/molまでの数平均分子量を有する、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびポリアクリレートポリオール、並びにそれらの所望の混合物である。
【0025】
アロファネート化のためのプレポリマーの合成では、まず、ウレタンを与える化学量論比で、成分A1)のイソシアネートを、成分A2)のアロファネートと反応させる。次いで、更なるイソシアネートと反応させてアロファネートを形成する。この場合、ウレタンをもたらすジイソシアネート、トリイソシアネートまたはポリイソシアネートとの反応のためのアルコールとして、先に記載したタイプのオリゴマーまたはポリマー、第一級または第二級の二官能性アルコールが適している。アロファネートへの更なる反応のため、単量体ジイソシアネートまたはトリイソシアネートである、HDI、TMDIおよびTINを添加することが好ましい。
【0026】
好ましいプレポリマーは、脂肪族イソシアネート官能性化合物とオリゴマーまたはポリマーイソシアネート反応性化合物とから得られた、ウレタンまたはアロファネートであり、プレポリマーは、200〜10000g/molの数平均分子量および1.9〜5.0のイソシアネート官能価を有する。脂肪族イソシアネート官能性化合物とオリゴマーまたはポリマーポリオールとから調製し、1.9〜2.1のイソシアネート官能価および650〜8200g/molの数平均分子量を有するウレタン、並びに脂肪族イソシアネート官能性化合物とオリゴマーまたはポリマーポリオールまたはそれらの所望の混合物とから調製し、2.0超〜3.2または3.9〜4.2のイソシアネート官能価および650〜8200g/molの数平均分子量を有するアロファネートがとりわけ好ましい。脂肪族イソシアネート官能性化合物とオリゴマーまたはポリマーポリオールとから調製し、1.9〜2.1のイソシアネート官能価および1900〜4100g/molの数平均分子量を有するウレタン、並びに脂肪族イソシアネート官能性化合物とオリゴマーまたはポリマーポリオールまたはそれらの所望の混合物とから調製し、2.0超〜3.2または3.9〜4.2の官能価および1900〜4100g/molの数平均分子量を有するアロファネートが非常に好ましい。
【0027】
上記プレポリマーは、好ましくは1重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満、とりわけ好ましくは0.2重量%未満の、単量体イソシアネート残留含量を有する。
【0028】
もちろん、成分A)は、本発明に必須の上記プレポリマー以外に、更なるイソシアネートをある割合で含有してもよい。この目的のために、芳香族、芳香脂肪族、脂肪族および脂環式のジイソシアネート、トリイソシアネートまたはポリイソシアネートが適している。そのようなジイソシアネート、トリイソシアネートまたはポリイソシアネートの混合物を使用することもできる。適当なジイソシアネート、トリイソシアネートまたはポリイソシアネートの例は、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,8−ジイソシアナト−4−(イソシアナトメチル)オクタン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよび/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、異性体ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタンおよびそれらの所望の異性体含量を有する混合物、イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、異性体シクロヘキサンジメチレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネートおよび/または2,6−トルイレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートまたは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、またはそれらのウレタン、ウレア、カルボジイミド、アシルウレア、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、オキサジアジントリオン、ウレトジオンまたはイミノオキサジアジンジオン構造を含有する誘導体、およびそれらの混合物である。適当な方法によって過剰ジイソシアネートが除去された、オリゴマー化および/または誘導体化ジイソシアネートに基づくポリイソシアネート、特にヘキサメチレンジイソシアネートに基づくものが好ましい。HDIのオリゴマーイソシアヌレート、ウレトジオンおよびイミノオキサジアジンジオン並びにそれらの混合物がとりわけ好ましい。
【0029】
上記イソシアネート成分A)は、任意に、被覆技術から当業者に知られているブロッキング剤と完全にまたは部分的に反応させたイソシアネートを、完全にまたはある割合で含有してもよい。ブロッキング剤の例として以下を挙げることができる:アルコール、ラクタム、オキシム、マロン酸エステル、アルキルアセトアセテート、トリアゾール、フェノール、イミダゾール、ピラゾールおよびアミン、例えば、ブタノンオキシム、ジイソプロピルアミン、1,2,4−トリアゾール、ジメチル−1,2,4−トリアゾール、イミダゾール、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセトンオキシム、3,5−ジメチルピラゾール、ε−カプロラクタム、N−tert−ブチルベンジルアミン、シクロペンタノンカルボキシエチルエステル、或いはこれらブロッキング剤の所望の混合物。
【0030】
成分A)として、本発明に必須の上記プレポリマーのみを使用することが特に好ましい。
【0031】
本質的に、成分B)として、一分子あたり平均して少なくとも1.5個のイソシアネート反応性基を好ましくは含有する、多官能性イソシアネート反応性ポリエーテルポリオールの全てを使用することができる。
【0032】
本発明において、イソシアネート反応性群は好ましくはヒドロキシ化合物である。
【0033】
上記したタイプの適当な多官能性イソシアネート反応性化合物は、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオールおよび/またはポリウレタンポリオール、好ましくはヒドロキシ官能性ポリエーテルポリオールである。
【0034】
ポリエーテルポリオールは、場合により、ヒドロキシ官能性スターター分子での環状エーテルのブロック付加生成物である。適当な環状エーテルは、例えば、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリンおよびそれらの所望の混合物である。
【0035】
2以上のヒドロキシ官能価を有する多価アルコール、並びに第一級または第二級アミンおよびアミノアルコールを、スターターとして使用することができる。それらの例は、エタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールまたはテトラプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロールまたはそれらの所望の混合物である。
【0036】
そのようなポリエーテルポリオールは、好ましくは500〜8500g/mol、特に好ましくは1000〜6500g/mol、とりわけ好ましくは1900〜4500g/molの数平均分子量を有する。ヒドロキシ官能価は、好ましくは1.5〜4.0、特に好ましくは1.8〜3.0である。
【0037】
加えて、成分B)の要素として、低分子量(即ち500g/mol未満の分子量)を有し、短鎖を有する(即ち2〜20個の炭素原子を含有する)、脂肪族、芳香脂肪族または脂環式の二官能性、三官能性または多官能性アルコールが存在してもよい。純ヒドロキシ官能性ポリエーテルポリオールの使用が好ましい。
【0038】
成分B)の好ましい化合物は、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーとしてのそれらの化合物、並びにプロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドのブロックコポリマーである。生成物全体の重量パーセントに基づくエチレンオキシドの割合は、好ましくは55%未満、特に好ましくは55%〜45%または30%未満、非常に好ましくは10%未満である。
【0039】
プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドに基づき、親ポリエーテルの総質量に基づいて10重量%未満のエチレンオキシドの割合を有し、2000〜4200g/molの数平均分子量を有する二官能性ポリエーテルポリオールを、成分B)の特に好ましい化合物として使用する。
【0040】
成分A)およびB)は、感光性ポリマー配合物の調製において、典型的には0.9〜1.2、好ましくは0.95〜1.05のOH/NCO比で使用する。
【0041】
成分C)として、少なくとも1個の芳香族構成単位を含有し、405nmで1.50超の屈折率を有する、ウレタンアクリレートおよび/またはウレタンメタクリレートを使用する。ウレタン(メタ)アクリレートは、少なくとも1個のウレタン結合を付加的に含有し、少なくとも1個のアクリレート基またはメタクリレート基を含有する化合物を意味すると理解される。そのような化合物は、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートとイソシアネート官能性化合物との反応によって得られることが知られている。
【0042】
この目的のために使用できるイソシアネートの例は、芳香族、芳香脂肪族、脂肪族および脂環式のジイソシアネート、トリイソシアネートまたはポリイソシアネートである。そのようなジイソシアネート、トリイソシアネートまたはポリイソシアネートの混合物を使用することもできる。適当なジイソシアネート、トリイソシアネートまたはポリイソシアネートの例は、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,8−ジイソシアナト−4−(イソシアナトメチル)オクタン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよび/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタンおよびそれらの所望の異性体含量を有する混合物、イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、異性体シクロヘキサンジメチレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネートおよび/または2,6−トルイレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートまたは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、およびトリス(p−イソシアナトフェニル)チオホスフェート、またはそれらのウレタン、ウレア、カルボジイミド、アシルウレア、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、オキサジアジントリオン、ウレトジオンまたはイミノオキサジアジンジオン構造を含有する誘導体、およびそれらの混合物である。芳香族ジイソシアネート、トリイソシアネートまたはポリイソシアネートが好ましい。
【0043】
ウレタンアクリレートの調製に適したヒドロキシ官能性アクリレートまたはメタクリレートは、例えば、以下のような化合物である:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリ(ε−カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレート、例えばTone(登録商標) M100(Dow(ドイツ国シュバルバッハ在))、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、エトキシル化、プロポキシル化またはアルコキシル化された、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール)およびそれらの工業用混合物の、ヒドロキシ官能性モノアクリレート、ヒドロキシ官能性ジアクリレートまたはヒドロキシ官能性テトラアクリレート。2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、およびポリ(ε−カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレートが好ましい。加えて、単独のまたは前記モノマー化合物と組み合わせた、アクリレート基および/またはメタクリレート基を含有するイソシアネート反応性オリゴマーまたはポリマー不飽和化合物も適している。それ自体知られており、ヒドロキシル基を含有し、20〜300mgKOH/gのOH含量を有するエポキシ(メタ)アクリレート、またはヒドロキシル基を含有し、20〜300mgKOH/gのOH含量を有するポリウレタン(メタ)アクリレート、または20〜300mgKOH/gのOH含量を有するアクリル化ポリアクリレート、またはそれらの互いの混合物、およびそれらのヒドロキシル基含有不飽和ポリエステルとの混合物、およびそれらとポリエステル(メタ)アクリレートとの混合物、またはヒドロキシル基含有不飽和ポリエステルとポリエステル(メタ)アクリレートとの混合物を使用することもできる。ヒドロキシル基を含有し、所定のヒドロキシ官能価を有するエポキシアクリレートが好ましい。ヒドロキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレートは、とりわけ、アクリル酸および/またはメタクリル酸と、モノマー、オリゴマーまたはポリマーの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ヘキサンジオールおよび/またはブタンジオールの、エポキシド(グリシジル化合物)またはそれらのエトキシル化および/またはプロポキシル化誘導体との反応生成物に基づく。更に、アクリル酸および/またはメタクリル酸とグリシジル(メタ)アクリレートとの既知の反応から得られるような、所定の官能価を有するエポキシアクリレートも好ましい。
【0044】
少なくとも1個の芳香族構成単位を含有する、上記したタイプのウレタン(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。これらのウレタン(メタ)アクリレートは、405nmで、典型的には1.50超、好ましくは1.55超、特に好ましくは1.58超の屈折率を有する。
【0045】
成分C)として使用される特に好ましい化合物は、芳香族イソシアネートと、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキシドモノ(メタ)アクリレートおよびポリ(ε−カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレートとに基づく、ウレタンアクリレートおよびウレタンメタクリレートである。
【0046】
特に好ましい態様では、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートでの、芳香族トリイソシアネート(とりわけ好ましくはトリス(4−フェニルイソシアナト)チオホスフェート)または芳香族ジイソシアネート三量体(例えばトルエンジイソシアネート)の付加生成物を、成分C)として使用する。別の特に好ましい態様では、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートでの、3−チオメチルフェニルイソシアネートの付加生成物を、成分C)として使用する。
【0047】
例として"Methoden der organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry]" (Houben-Weyl), 第4版、第XIV/1巻、第433頁以下、Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1961に記載されているような、例えば重合禁止剤および酸化防止剤が、成分D)の化合物として適している。適当な物質の例は、フェノール、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、クレゾール、ヒドロキノン、ベンジルアルコール、例えばベンズヒドロール、任意にキノン、例えば2,5−ジ−tert−ブチルキノン、任意に芳香族アミン、例えばジイソプロピルアミンまたはフェノチアジンである。
【0048】
2,6−ジ−tert−ブチル−4−メイルフェノール、フェノチアジン、p−メトキシフェノール、2−メトキシ−p−ヒドロキノン、およびベンズヒドロールが好ましい。
【0049】
1種以上の光開始剤を成分E)として使用する。それらは通常、化学線によって活性化されて、対応する重合性基の重合を開始することができる開始剤である。光開始剤は、それ自体既知の市販化合物であり、一分子(I型)開始剤と二分子(II型)開始剤とに分類されている。更に、化学的性質に依存して、これらの開始剤は、前記重合のラジカル状態、アニオン状態(または)、カチオン(または混合)状態に使用される。
【0050】
本発明では、EP−A 0223587に記載され、アンモニウムアリールボレートと1種以上の染料との混合物からなる光開始剤系のようなII型開始剤を使用する。アンモニウムアリールボレートとして、例えば、テトラブチルアンモニウムトリフェニルヘキシルボレート、テトラブチルアンモニウムトリス−(3−フルオロフェニル)ヘキシルボレート、およびテトラブチルアンモニウムトリス−(3−クロロ−4−メチルフェニル)ヘキシルボレートが適している。適当な染料は、例えば、ニューメチレンブルー、チオニン、ベーシックイエロー、ピナシアノールクロリド、ローダミン6G、ガロシアニン、エチルバイオレット、ビクトリアブルーR、セレスチンブルー、キナルジンレッド、クリスタルバイオレット、ブリリアントグリーン、アストラゾンオレンジG、ダロウレッド、ピロニンY、ベーシックレッド29、ピリリウムI、シアニンおよびメチレンブルー、アズールA(Cunninghamら、RadTech '98 North America UV/EB Conference Proceedings, シカゴ、1998年4月19日〜22日)である。
【0051】
好ましい光開始剤E)は、テトラブチルアンモニウムテトラヘキシルボレート、テトラブチルアンモニウムトリフェニルヘキシルボレート、テトラブチルアンモニウムトリス(3−フルオロフェニル)ヘキシルボレートおよびテトラブチルアンモニウムトリス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ヘキシルボレート(成分E1)と、染料、例えば、アストラゾンオレンジG、メチレンブルー、ニューメチレンブルー、アズールA、ピリリウムI、サフラニンO、シアニン、ガロシアニン、ブリリアントグリーン、クリスタルバイオレット、エチルバイオレットおよびチオニン(成分E2)との混合物である。青感性染料、緑感性染料および赤感性染料(例えば、アストラゾンオレンジG、エチルバイオレットおよびニューメチレンブルー)と前記ホウ酸塩の1つとの組み合わせが、特に好ましい。
【0052】
場合により、成分F)の化合物として1種以上の触媒を使用できる。これらは、ウレタン生成を促進する触媒である。この目的のための既知の触媒は、例えば、オクタン酸錫、オクタン酸亜鉛、ジラウリン酸ジブチル錫、ジメチルビス[(1−オキソネオデシル)オキシ]スタンナン、ジカルボン酸ジメチル錫、ジルコニウムビス(エチルヘキサノエート)、ジルコニウムアセチルアセトネート、または第三級アミン、例えば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデカン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−1−メチル−2H−ピリミド(1,2−a)ピリミジンである。
【0053】
ジブチル錫ジラウレート、ジメチルビス[(1−オキソネオデシル)オキシ]スタンナン、ジメチル錫ジカルボキシレート、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデカン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−1−メチル−2H−ピリミド(1,2−a)ピリミジンが好ましい。
【0054】
印刷用途では、満足な印刷イメージをもたらす印刷可能組成物を得るために、添加剤G)を使用することが重要である。それらは、例えば、溶媒、可塑剤、均展剤、消泡剤または接着促進剤のような、被覆技術分野で常套の添加剤であり得る。好ましく使用する可塑剤は、良好な溶解性、低揮発性、および高沸点を有する液体である。例えばポリジメチルシロキサンのような界面活性化合物を、均展剤として使用することができる。1つのタイプの添加剤を複数種同時に使用することが有利な場合もある。もちろん、複数のタイプの添加剤を複数種使用することが有利な場合もある。
【0055】
本発明の感光性ポリマー配合物は、感光性ポリマー配合物に基づいて、好ましくは少なくとも10重量%、特に好ましくは少なくとも15重量%、とりわけ好ましくは少なくとも20重量%の本発明に必須の不飽和ウレタンC)を、書き込みモノマーとして、成分A)に含有する。しかしながら、これらの書き込みモノマーC)の割合は、配合物全体に基づいて、好ましくは70重量%以下、特に好ましくは50重量%以下である。
【0056】
印刷イメージの均展性および安定性を確立するために、選択した印刷方法に適合した適当な粘度を確立することに加えて、感光性ポリマー配合物の表面張力を、良好な印刷イメージを得るために適合させなければならない。これは、例えば、分離、消泡または均展のための適当な添加剤を添加することによって達成する。これらは、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリマー、消泡用ポリシロキサン、疎水性固体および乳化剤、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサンまたは非イオン性ポリアクリレートコポリマーを用いた当業者によく知られている試みによる一連の実験によって確かめることができ、印刷機に最適化することができる。
【0057】
典型的な感光性ポリマー組成物は以下を含んでなる:
10〜30重量%の成分A)、
25〜74.497重量%の成分B)、
10〜40重量%の成分C)、
0〜1重量%のラジカル安定剤D)、
0.5〜3重量%の光開始剤E1)、
各々の場合に0.001〜0.2重量%の、吸収スペクトルが赤、緑および青のレーザー波長に調整されている3種の染料E2)、
0〜4重量%の触媒F)、
5〜25重量%の助剤および添加剤G)。
【0058】
好ましくは、本発明のポリウレタン組成物は以下を含んでなる:
15〜30重量%の成分A)、
30〜56.96重量%の成分B)、
20〜35重量%の成分C)、
0.01〜0.5重量%のラジカル安定剤D)、
1〜3重量%の光開始剤E1)、
各々の場合に0.01〜0.2重量%の、吸収スペクトルが赤、緑および青のレーザー波長に調整されている3種の染料E2)、
0〜1重量%の触媒F)、
7〜20重量%の助剤および添加剤G)。
【0059】
本発明のポリウレタン組成物は、特に好ましくは以下を含んでなる:
17〜30重量%の成分A)、
40〜48.37重量%の成分B)、
25重量%の成分C)、
0.02〜0.1重量%のラジカル安定剤D)、
1〜1.5重量%の光開始剤E1)、
各々の場合に0.03〜0.1重量%の、吸収スペクトルが赤、緑および青のレーザー波長に調整されている3種の染料E2)、
0.02〜0.1重量%の触媒F)、
8〜15重量%の助剤および添加剤G)。
【0060】
本発明はまた、本発明に必須のプレポリマーベースポリウレタン組成物を用いて、支持体層(I)としての透明基材に印刷することによって得られた物品に関する。
【0061】
支持体層(I)の好ましい材料または材料複合体は、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸セルロース、水和セルロース、硝酸セルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、ポリエポキシド、ポリスルホン、三酢酸セルロース(CTA)、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリジシクロペンタンジエンまたはそれらの混合物に基づく。また、ラミネートフィルムまたは共押出フィルムのような材料複合体を、支持フィルム(I)として使用することもできる。材料複合体の例は、スキームA/B、A/B/AまたはA/B/C(例えば、PC/PET、PET/PC/PETおよびPC/TPU(TPU=熱可塑性ポリウレタン))の1つに従った構成を有する二層フィルムおよび三層フィルムである。支持フィルム(I)としてPCおよびPETを使用することが、特に好ましい。
【0062】
光学的に透明な、即ち曇りのない透明支持体(I)が好ましい。曇りは、曇り度によって測定することができ、その値は、3.5%未満、好ましくは1%未満、特に好ましくは0.3%未満である。
【0063】
曇り度は、光照射した試料によって順方向に散乱された透過光の割合を示す。従って、曇り度は、透明材料の不透明または曇り、並びに透明性に悪影響を及ぼす材料またはその表面における、定量化材料欠陥、粒子、不均質性または結晶相境界を表す尺度である。曇り度の測定方法は、規格ASTM D 1003に記載されている。
【0064】
好ましくは、支持体(I)は、大きすぎない複屈折、即ち典型的には1000nm未満、好ましくは700nm未満、特に好ましくは300nm未満の平均光学的遅延を有する。
【0065】
遅延Rは、複屈折Δnおよび支持体厚さdの数学的結果である。遅延の客観的自動測定は、イメージング偏光計(例えば、ilis GmbH製StainMatic(登録商標)M3/Mモデル)を用いて実施する。
【0066】
遅延は、垂直入射で測定する。支持体(I)について示された遅延値は、横方向の平均値である。
【0067】
片側または両側に可能な被膜を有する支持体(I)は、典型的には5〜2000μm、好ましくは8〜300μm、特に好ましくは30〜200μm、とりわけ125〜175μmまたは30〜45μmの厚さを有する。
【0068】
印刷によって適用された感光性ポリマー層(II)は、好ましくは200μm以下、特に好ましくは3〜100μm、とりわけ好ましくは15〜60μmの、層(II)に適用された感光性ポリマー層の全てに基づいた総層厚を有する。
【0069】
構成要素(I)および(II)に加えて、フィルム複合体は、感光性ポリマー層を汚れおよび環境の影響から保護するために、感光性ポリマー層(II)上に1つ以上のカバー層(III)を有することができる。この目的のために、プラスチックフィルムまたはプラスチックフィルム複合系およびクリヤコートを使用することができる。
【0070】
支持体層に使用した材料に類似しているフィルム材料を、カバー層(III)として使用することが好ましく、前記フィルム材料は、典型的には5〜200μm、好ましくは8〜125μm、特に好ましくは20〜50μmの厚さを有する。
【0071】
可能な限り滑らかな表面を有するカバー層(III)が好ましい。DIN EN ISO 4288 "Geometric Product Specification (GPS) - Surface Texture・・・"、試験条件R3z両面に従って測定される粗さを、尺度として用いる。好ましい粗さは、2μm以下、好適には0.5μm以下である。
【0072】
20〜60μmの厚さを有するPEフィルムまたはPETフィルムを、カバー層(III)として使用することが好ましい。40μm厚のポリエチレンフィルムを使用することが特に好ましい。
【0073】
更なる保護層、例えば支持フィルム(I)がより下にある層を使用することもできる。
【0074】
フィルムおよび被膜を製造するため並びに映像ホログラムを記録するための本発明の印刷方法は、好ましくは、成分A)以外の本発明のポリウレタン組成物の合成成分を均一に混合し、基材または型への適用直前に成分A)を混合する方法で実施する。
【0075】
当業者に知られており、特に、逆圧と関係なく、脈動をほとんど示さず、正確に輸送するポンプシステムの全てが、輸送と計量供給中に必要な精度とに適している。従って、膜ポンプ、ギアポンプ、偏心スクリューポンプ(Mohnoポンプ)、蠕動ポンプおよびピストンポンプが好ましい。ギアポンプおよび偏心スクリューポンプ(Mohnoポンプ)が特に好ましい。
【0076】
好ましい計量供給量は、2ml/分〜1000ml/分の範囲、特に好ましくは2ml/分〜100ml/分の範囲である。
【0077】
混合には、混合技術から当業者にそれ自体知られている方法および装置の全て、例えば、撹拌槽或いは動的ミキサーおよび静的ミキサーを使用できる。しかしながら、デッドスペースのないまたは小さいデッドスペースしかない装置が好ましい。更に、混合すべき二成分が非常に激しく極めて短時間で混合される方法が好ましい。特に動的ミキサー、とりわけ、成分がミキサー内でしか互いに接触しない動的ミキサーが、この目的に適している。
【0078】
この手順の間の温度は0〜100℃、好ましくは10〜80℃、特に好ましくは20〜60℃である。
【0079】
必要ならば、減圧下(例えば1mbar)で、各成分または混合物全体の揮発分除去を実施することもできる。得られる媒体中の残留気体による気泡形成を防ぐために、特に成分A)の混合後に、揮発分を除去することが好ましい。
【0080】
成分A)の添加前、混合物を貯蔵安定中間生成物として、場合により数ヶ月間、貯蔵することができる。
【0081】
本発明のポリウレタン組成物の成分A)を混合した後、組成に応じて室温で数秒から数時間以内に硬化する、透明な液状組成物が得られる。
【0082】
ポリウレタン組成物の合成成分の比、タイプおよび反応性は、好ましくは、成分A)の混合後に硬化が室温で数分から1時間以内に起こるように調整する。好ましい態様では、混合後に組成物を30〜180℃、好ましくは40〜120℃、特に好ましくは50〜100℃の温度に加熱することによって、硬化を促進する。
【0083】
硬化挙動に関する上記調整は、特に各々の場合に利用可能な成分および合成成分の、とりわけ、好ましい合成成分の上記量的範囲内における日常実験として、当業者には容易に実施できる。
【0084】
全成分を完全に混合した直後、本発明のポリウレタン組成物は、25℃で、典型的には10〜100,000mPas・s、好ましくは100〜20,000mPas・s、特に好ましくは200〜10,000mPas・s、とりわけ好ましくは500〜5000mPas・sの粘度を有するので、ポリウレタン組成物は、溶媒を含有しなくても、非常に良好な加工性を有する。適当な溶媒を含有する溶液では、25℃で、10,000mPas・s未満、好ましくは2000mPas・s未満、特に好ましくは500mPas・s未満の粘度を確立することができる。
【0085】
0.004重量%〜0.1重量%の触媒含量で、80℃×6分未満で硬化する前記タイプのポリウレタン組成物が有利であることが見出された。0.01重量%〜0.08重量%の触媒濃度が好ましく、0.03重量%〜0.06重量%の触媒濃度が特に好ましい。
【0086】
当業者に既知の常套の印刷方法の全てが、基材の適用に適しており、その例は特に、ナイフ塗布、キャスティング、印刷、スクリーン印刷、噴霧またはインクジェット印刷である。好ましい適用法は、スクリーン印刷およびインクジェット印刷である。
【0087】
一般に、印刷方法は、二次元の原型の複製を作るための手順および作業方法を意味すると理解される。古い印刷方法では、印刷機によって、印刷インキを、原型から、印刷される材料の上に移動させる。新しい印刷方法では、この目的のためにデジタル印刷システムを使用する。最初に挙げた印刷方法は、製造段階において、印刷版製造と印刷ランとに分けられる。印刷版の特性に依存して、種々の印刷方法に分類される。
【0088】
凸版印刷では、印刷部品の全ては平面内で隆起されており、インク塗布され、印刷インキを印刷媒体に放つ。活版印刷では、印刷版は、活字および/または機械植字ライン、ステロタイプおよび電気版からなる。間接凸版印刷(レターセット印刷)では、印刷版は、一般にエッチングされた湾曲金属版(ラップアラウンド版)からなる。フレキソ印刷(フレキソグラフィー、かつてのアニリン印刷、アニリンゴム版印刷、ゴム版印刷)では、印刷版は、軟質のゴムまたはプラスチックからなる。
【0089】
平版印刷では、印刷版の印刷部品および非印刷部品は、実質的に平面内にある。印刷版が印刷部品にのみインキを受け入れるように、印刷版は化学的に処理されている。
【0090】
グラビア印刷では、低粘性インキを印刷くぼみに導入する。印刷版表面をドクターブレードで再び清浄し、その上にくぼみを作成する(輪転グラビア(凹版印刷)、凹版行印刷、鋼版彫刻など)。
【0091】
スクリーン印刷では、印刷媒体上にスキージによってテンプレート(印刷フレーム上の(例えば人工絹を含んでなる)延伸スクリーン)を介して印刷インキをプレスする。
【0092】
パッド印刷または間接グラビア印刷では、1つの表面(一般にグラビア印刷版)から別の表面(例えば、コップ、ボールペン)に、(多孔性シリコーンゴムを含んでなる)パッドによって原型を移動する。従って、原型は、変形印刷媒体のくぼみに適用することもできる。
【0093】
スタンピングでは、印刷媒体に個々の印刷版をプレスする。
【0094】
フロッタージュでは、文字列を彫り込んだ、大理石版、花崗岩版または石灰岩版が、版として機能する。このリトグラフ印刷版の上に湿った紙を置き、彫り込まれた文字列のくぼみに布地で紙をプレスする。その後、紙に解墨をはけ塗りする。くぼみは、白く残って読み取ることができ、ネガの複製が形成される。
【0095】
顔料捺染に対して、ピグメントグラフィーには、ソフトグラウンドエッチング法およびスクリーン印刷方法が、最後に、独立したグラフィックアート法として含まれる。トレース印刷として70年代に米国のAl Bernsteinによってもたらされた印刷技術では、個々の印刷版を切断し、ポジ−ネガ工程に通す。これにより、ポシュワールとは対照的に、非常に微細な線および点を印刷することができる。この印刷方法では、印刷スクリーンを介して印刷インキ、着色顔料を手動ではけ塗りし、次いで固定させる。
【0096】
インクジェットプリンターは、インキ中の水を加熱する加熱素子によって、微細なインキ滴を形成する。これは、微細な蒸気泡の爆発をもたらし、その圧力によって、ノズルからインキ滴を押し出す。本発明では2つのシステムを使用する:DeskjetシリーズのLexmarkおよびHPは、実質的に2つのプレートからなるフラットノズル要素を使用している。紙に面するプレートは、微細なノズル口を有し、蒸気泡はこのノズル口の反対に生じる(サイドシューター)。この方式は、製造するのが非常に簡単なので経済的ではあるが、プリントヘッドの限られた寿命といった欠点を有する。これらのプリンターの全てにおいて、交換できるプリントヘッドを使用する。インクジェットプリンターでは、キャノン製品が、ノズルが加熱素子に対して直角に存在するインクジェット技術で作動する(エッジシューター)。この方式は、放出圧力が圧電素子ではなく蒸気泡によって生じること以外は、ピエゾ方式と極めて類似している。個々の加熱素子は、10kHzまでの周波数で作動する。
【0097】
ピエゾプリンターは、細いノズルによって印刷インキを押し出すために、電圧下で変形するための、圧電セラミック素子における圧電効果を利用している。インキは滴を形成する。その滴体積は、適用した電気パルスの大きさによって制御することができる。圧電性結晶の運転周波数は、23kHzまでの範囲である。
【0098】
バルブプリンターには、滴がノズルから放たれるときに開く個々のバルブが、ノズルの上に取り付けられている。
【0099】
本発明は更に、映像ホログラムを記録するための、光学素子および画像を製造するための、表示ための、本発明の印刷物品の使用、並びに本発明のポリウレタン組成物を用いたホログラムの記録方法、並びに本発明のポリウレタン組成物から得られる媒体またはホログラフィックフィルムに関する。
【0100】
本発明のポリウレタン組成物を用いて、適当な照射方法によって、可視領域全体および近紫外領域(300〜800nm)での光学用途のためのホログラムを製造することができる。映像ホログラムは、当業者に既知の方法によって記録することができるホログラムの全てを包含し、とりわけ、インライン(ガボール)ホログラム、オフアクシスホログラム、全開口トランスファーホログラム、白色光透過型ホログラム(レインボーホログラム)、デニシュークホログラム、オフアクシス反射型ホログラム、エッジリットホログラム、およびホログラム立体画像を包含する。反射型ホログラム、デニシュークホログラム、透過型ホログラムが好ましい。レンズ、ミラー、偏向ミラー、フィルター、散乱スクリーン、回折素子、ライトコンダクター、導波管、映写スクリーンおよび/またはマスクのような光学素子が好ましい。しばしば、これら光学素子は、どのようにホログラムを照射するかおよびホログラムが何次元であるかによって周波数選択性を示す。
【0101】
また、本発明のポリウレタン組成物によって、ホログラフィー像またはホログラフィックディスプレーを製造することもでき、その例は、個人肖像写真のため、セキュリティードキュメントにおける生体認証表示のためのホログラフィー像またはホログラフィックディスプレー、或いは一般に、広告、セキュリティーラベル、商標保護、商標ブランド設定、ラベル、意匠要素、装飾、イラスト、回数券、イメージなどの画像または画像構造物の、並びにとりわけ前記製品と組み合わせたデジタルデータを表すことのできる画像の、ホログラフィー像またはホログラフィックディスプレーである。照射される角度、照射に使用される光源(可動光源を含む)等に依存して、ホログラフィー像は三次元画像の印象を与えることができるが、画像シーケンス、短編映画または多くの様々な対象物を表すこともできる。これらの様々な設計可能性の故に、ホログラム、特に体積ホログラムは、前記用途にとっての魅力的な技術的解決法である。
【実施例】
【0102】
出発物質:
Desmodur(登録商標)XP 2599は、NCO含量5.6〜6.4%を有し、Acclaim 4200を用いて調製したヘキサンジイソシアネートの完全アロファネートであって、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン在)製の実験用製品である。
ポリオール1(Acclaim(登録商標) 4200)は、数平均分子量4000g/molを有する、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン在)製のポリプロピレンオキシドである。
ウレタンアクリレート1は、2−ヒドロキシエチルアクリレートとトリス(p−イソシアナトフェニル)チオホスフェートとに基づくウレタンアクリレートであって、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン在)製の実験用製品である。
Fomrez(登録商標) UL28:ウレタン化触媒、ジメチルビス[(1−オキソネオデシル)オキシ]スタンナン、Momentive Performance Chemicals(米国コネティカット州ウィルトン在)社製の市販品(N−エチルピロリドン中10%濃度溶液として使用する)。
CGI 909は、Ciba Inc.(スイス国バーゼル在)によって2009年に市販された実験用製品である。
ニューメチレンブルー(亜鉛不含有):Sigma-Aldrich Chemie GmbH(ドイツ国シュタインハイム在)製の染料。
エチルバイオレット:MP Biomedicals LLC(米国オハイオ州ソロン在)製の染料。
アストラゾンオレンジG:Sigma-Aldrich Chemie GmbH(ドイツ国シュタインハイム在)製の染料。
Byk 310:BYK-Chemie GmbH(ドイツ国ヴェーゼル在)製のシリコーン系界面活性剤(約25%濃度のキシレン溶液)、約2200g/molの数平均分子量。
【0103】
回折効率DEおよび屈折率差Δnの測定:
図1に示した測定装置を用い、実験の部で製造した本発明の媒体および比較媒体を、ホログラム特性について試験した。
【0104】
貼り合わせ用フィルムをフィルム複合体から剥がす。次いで、基材フィルムが外を向くように、感光性ポリマー材料をガラスに貼り合わせる。
【0105】
空間フィルター(SF)およびコリメーターレンズ(CL)を用いて、He−Neレーザー光線(発光波長633nm)を平行均一光線に変換した。虹彩絞り(I)によって、信号光線と参照光線の最終断面を確立する。虹彩絞りの開口径は4mmである。偏光依存性ビームスプリッター(PBS)は、レーザー光線を2つの均一偏光コヒーレント光線に分ける。λ/2プレートによって、参照光線の出力を0.5mWに調節し、信号光線の出力を0.65mWに調節した。試料を取り除いた状態で、半導体検出器(D)を用いて出力を測定した。参照光線の入射角(α)は21.8°、信号光線の入射角(β)は41.8°である。試料(媒体)の位置で、2つの重なった光線の干渉場は、試料への2つの入射光線の角2等分線と垂直である明暗縞の回折格子を生じた(反射型ホログラム)。媒体における縞間隔は、約225nmである(媒体の屈折率は約1.49である)。
【0106】
以下の方法で、ホログラムを媒体に書き込んだ。
照射時間tの間、両方のシャッター(S)を開放する。その後、シャッター(S)を閉じた状態で、媒体を5分間おいて、まだ重合されていない書き込みモノマーを拡散させた。ここで、書き込まれたホログラムを、以下の方法で読み込んだ。信号光線のシャッターは閉じたままであった。参照光線のシャッターを開放した。参照光線の虹彩絞りを1mm未満の直径まで閉じた。これにより、媒体の回転角(Ω)の全てに対して、光線は、先に書き込まれたホログラムに常に完全に存在することが確実になった。コンピューター制御の下、回転台は、0.05°の角度ステップ幅でΩ=0°からΩ=20°までの角度範囲をカバーした。各々の角度に近づくと、相応の検出器Dを用いて、ゼロ次透過した光線の出力を測定し、検出器Dを用いて、一次回折した光線の出力を測定した。以下の式:
【数1】

の商として、各々の角度Ωに近づいた時点での回折効率ηを得た。Pは回折光線の検出器での出力であり、Pは透過光線の検出器での出力である。
【0107】
前記方法によって、ブラッグ曲線(これは、回折効率ηを、書き込まれたホログラムの回転角Ωの関数として表す。)を測定し、コンピューターに保存した。また、ゼロ次透過した強度を、回転角Ωに対してプロットし、コンピューターに保存した。
【0108】
ホログラムの最大回折効率(DE=ηmax)、即ち回折効率のピーク値を測定した。この最大値を測定するために、場合により、回折光線の検出器の位置を変える必要があった。
【0109】
次に、角度の関数としての測定ブラッグ曲線および透過強度変化から、結合波理論(H. Kogelnik, The Bell System Technical Journal, 第48巻、1969年11月、第9号、第2909頁〜第2947頁参照)を用いて、感光性ポリマー層の屈折率差Δnおよび厚さdを決定した。その方法を以下に示す。
【0110】
Kogelnikによれば、反射型ホログラムのブラッグ曲線η/(Ω)について、以下の式があてはまる。
【数2】

ここで、
【数3】

である。
【0111】
Φは回折格子厚さであり、χは離調パラメーターであり、Ψは書き込まれた屈折率格子の傾斜角である。α’およびβ’は、ホログラムの書き込みの際の角度αおよびβに相当するが、媒体内にある。ΔΘは、媒体内で測定された角度離調、即ち角度α’からの偏差である。ΔΩは、媒体の外面で測定された角度離調、即ち角度αからの偏差である。nは、感光性ポリマーの平均屈折率であり、1.504に設定した。
【0112】
次いで、以下の式のように、χ=0、即ちΔΩ=0に対して最大回折効率(DE=ηmax)を得る。
【数4】

【0113】
図2に、回折効率、理論ブラッグ曲線および透過強度の測定データの、中心回転角Ω−α−シフトに対するプロットを示す。光重合中の幾何学的収縮および平均屈折率変化の故に、DEを測定する角度がαと異なるので、X軸の中心をこのシフト付近におく。シフトは、典型的には0°〜2°である。
【0114】
DEはわかっているので、Kogelnikによる理論ブラッグ曲線の形状は、もっぱら感光性ポリマー層厚dによって決まる。次いで、DEの測定値と理論値とが常に一致するように、与えられた厚さdに対し、DEによってΔnを補正する。そして、理論ブラッグ曲線の第一二次極小の角度位置が透過強度の第一二次極大の角度位置と一致し、加えて、理論ブラッグ曲線と透過強度の半値全幅(FWHM)が一致するまで、dを適合させる。
【0115】
反射型ホログラムの方向はΩスキャンによる再構成時に付随的に回転するが、回折光の検出器は測定可能な角度範囲しか検出できないので、幅広のホログラム(小さいd)のブラッグ曲線は、適当に検出器の位置を調節しても、Ωスキャンで完全には検出されず、中心領域しか検出されない。従って、ブラッグ曲線に相補的である透過強度の形状を、層厚さdを適合させるために付加的に使用する。
【0116】
ホログラムの書き込み中にDEが飽和値に達する、入射レーザー光線の平均エネルギー線量を測定するため、組成物について、この手順を、様々な媒体で、様々な照射時間tに対して場合により数回繰り返した。平均エネルギー線量Eを以下の式から得る。
【数5】

【0117】
使用した角度αおよびβで、媒体において同じ出力密度が達成されるように、部分光線の出力を適合させた。
【0118】
ウレタンアクリレート1の調製
まず、0.1gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、0.05gのジブチル錫ジラウレート(Desmorapid Z、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン在))、および213.07gの酢酸エチル中27%濃度トリス(p−イソシアナトフェニル)チオホスフェート溶液(Desmodur(登録商標)RFE、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン在)の製品)を、500ml容の丸底フラスコに導入し、60℃に加熱した。次いで、42.37gの2−ヒドロキシエチルアクリレートを滴加し、イソシアネート含量が0.1%未満に低下するまで、混合物を更に60℃で維持した。その後、冷却し、酢酸エチルを真空下で完全に除去した。半結晶性固体として、生成物を得た。
【0119】
ホログラフィック媒体を製造するため、成分C)、成分D)(成分C中に既に予備溶解させておいてもよい)並びに任意に成分G)および成分F)を成分B)に、場合により60℃で、溶解し、十分に混合する。次いで、成分E)を純粋な状態またはNEP中希釈溶液として、暗闇または適当な照明の下で計量添加し、再び混合する。場合により、乾燥炉内で60℃で10分以下の時間加熱する。得られた混合物は、10mbar未満で撹拌しながら揮発分除去することができる。
【0120】
このようにして得た感光性ポリマー配合物を、スクリーン印刷のための調製済みスクリーンに適用し、半自動運転または完全自動運転で加工する。この目的のために、印刷パラメーター、例えばスキージ速度を、印刷イメージに適合させることができる。配合物は、印刷される基材の上に、スキージによって、テンプレート(メッシュ)を介してプレスされる。その後、フラッドスキージによって再びスクリーンを満たし、新たなサイクルを開始する。印刷後、スクリーン印刷機から基材を取り出し、乾かす。乾燥は、後続のトンネル乾燥機、或いは独立してラックトロリー内または炉内で実施することができる。
【0121】
印刷した基材を約80℃で乾燥し、次いで、先に記載したカバー層の1つで覆い、光を通さないパッケージに入れる。
【0122】
感光性ポリマー層の厚さdは、対応する被覆デバイスの被覆パラメーターから得ることができるが、この被覆パラメーターは当業者に知られている。
【0123】
本発明の方法を説明するために以下に実施例を記載するが、これらを、限定するものとして理解すべきではない。特に記載のない限り、感光性ポリマーのパーセントの全ては重量パーセントに基づく。
【0124】
印刷可能配合物1の調製
実施例1:
13.75gのウレタンアクリレート1、次いで0.028gのFomrez(登録商標)UL 28および2.75gのByk 310、最後にN−エチルピロリドン1.95g中の0.825gのCGI 909、0.028gのニューメチレンブルー、0.028gのエチルバイオレットおよび0.028gのアストラゾンオレンジGの溶液を、暗闇の中で、26.1gのポリオール1に段階的に添加し、混合して透明溶液を得た。続いて、9.45gのDesmodur(登録商標)XP 2599を30℃で添加し、再び混合した。その後、得られた液状物質を175μm厚のポリカーボネートフィルムに印刷し、80℃で10分間乾燥し、PEフィルムを貼り合わせた。
【0125】
印刷の実施例:
ESC社製半自動スクリーン印刷機AT-80 Pを用い、布地PES 80/55 PW(VS-Monoprint Polyester)を含んでなるスクリーンを介して、上記した印刷可能配合物をプレスした。この布地の場合、スクリーン開口面積は約31%である。実験では、この装置において、スキージ速度を遅くすると、より良好な印刷イメージが形成されることが見出された。しかしながら、この結果は、各々の場合において個々の要素(スキージゴム、スキージ角度、布地タイプなど)の相互作用の全てに依存するので、分離して見なければならない。AT-80 Pを用い、中程度/より迅速なスキージ速度で、機能的なパターンを製造することも可能であった。
【0126】
線量Eで、以下の測定値Δnを得た。
【表1】

【0127】
上記記載において、Δnの値および必要線量は、本発明の感光性ポリマーが、ホログラフィック媒体として非常に適していることを示している。スクリーン印刷機においてスキージ速度を遅くすると、特に良好なホログラフィック媒体を得ることができる。
【符号の説明】
【0128】
M ミラー
S シャッター
SF 空間フィルター
CL コリメーターレンズ
λ/2 λ/2プレート
PBS 偏光感受型ビームスプリッター
D 検出器
I 虹彩絞り
α 21.8°
β 41.8°

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)NCO基が主として脂肪族的に結合し、1.6〜2.05のヒドロキシ官能価を有するヒドロキシ官能性化合物に基づくイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを、少なくとも含有するポリイソシアネート成分、
B)イソシアネート反応性ポリエーテルポリオール、
C)少なくとも1個の芳香族構成単位を含有し、405nmで1.50超の屈折率を有し、NCO基およびOH基を含有しない、ウレタンアクリレートおよび/またはウレタンメタクリレート、
D)ラジカル安定剤、
E)ホウ酸塩と、400〜800nmのスペクトル域を少なくとも部分的にカバーする吸収帯を有する1種以上の染料との組み合わせに基づく光開始剤、
F)任意に触媒、
G)任意に助剤および添加剤
を含んでなる、印刷に適したポリウレタン組成物。
【請求項2】
成分A)におけるプレポリマーとして、脂肪族イソシアネート官能性化合物とオリゴマーまたはポリマーイソシアネート反応性化合物とのウレタンまたはアロファネートが使用され、プレポリマーが200〜10000g/molの数平均分子量および1.9〜5.0のイソシアネート官能価を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン組成物。
【請求項3】
成分B)として、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドに基づき、親ポリエーテルの総質量に基づいて10重量%未満のエチレンオキシドの割合を有し、2000〜4200g/molの数平均分子量を有する二官能性ポリエーテルポリオールが使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリウレタン組成物。
【請求項4】
成分C)におけるウレタンアクリレートとして、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートでの、芳香族トリイソシアネートまたは芳香族ジイソシアネート三量体の付加生成物が使用されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン組成物。
【請求項5】
15〜30重量%の成分A)、
30〜56.96重量%の成分B)、
20〜35重量%の成分C)、
0.01〜0.5重量%のラジカル安定剤D)、
1〜3重量%の光開始剤E1)、
各々の場合に0.01〜0.2重量%の、吸収スペクトルが赤、緑および青のレーザー波長に調整されている3種の染料E2)、
0〜1重量%の触媒F)、
7〜20重量%の助剤および添加剤G)
を特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタン組成物を、支持体層(I)に、印刷インキ成分として適用する、基材に印刷する方法。
【請求項7】
支持体層(I)が、任意にラミネートフィルムまたは共押出フィルムとしての、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸セルロース、水和セルロース、硝酸セルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、ポリエポキシド、ポリスルホン、三酢酸セルロース(CTA)、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリジシクロペンタンジエンまたはそれらの混合物に基づくことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
印刷によって適用された感光性ポリマー層(II)が3〜100μmの総層厚を有することを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
印刷工程後、感光性ポリマー層(II)にカバー層(III)を適用することを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
カバー層(III)の材料が支持体層(I)の材料と同じであることを特徴とする、請求項6〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれかに記載の方法によって得られる印刷物品。
【請求項12】
映像ホログラムを記録するため、光学素子、画像、表示を製造するため、本発明のポリウレタン組成物を用いたホログラムの記録方法のため、本発明のポリウレタン組成物から得られる媒体またはホログラフィックフィルムのための、請求項11に記載の印刷物品の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−517514(P2012−517514A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549467(P2011−549467)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000618
【国際公開番号】WO2010/091807
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】