説明

印刷品質検査装置

【課題】蛍光印刷と通常印刷を同時に検知することにより蛍光印刷の印刷位置ずれを検知することのできる印刷品質検査装置を提供する。
【解決手段】紫外線ランプ11は、読取面24に紫外線を照射することによって蛍光印刷されている紙葉類Pの蛍光剤Paを励起発光させる。蛍光検知部30と紫外線検知部20は、読取面24の同一検知位置を同一タイミングで検知する。蛍光検知部30は、励起発行された蛍光を光学フィルタ22で透過させラインセンサ23aで検知し、紫外線検知部20は、読取面から反射される紫外線を光学フィルタ32で透過させ、紫外線(可視光)に感度を有するラインセンサ33aで検知する。紙葉類が読取面を通過することによって検知データが読み込まれメモリに記憶される。このようにして記憶された蛍光画像データ及び可視光画像データから蛍光印刷の印刷位置ずれを検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有価証券などの紙葉類の印刷品質検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有価証券などの紙葉類を処理する紙葉類処理装置は、処理単位に応じて一括して投入された紙葉類束から取出装置によって紙葉類を1枚ずつ取出して搬送し、紙葉類判別装置によって当該紙葉類の品質(形状、損傷、印刷など)を判別し、正常な券(以下、正券と称する。)、不良券(以下、損券と称する。)及び搬送異状券や2枚取り券などの排除券に区分して集積装置によって一次集積し、その一次集積された枚数が所定の枚数に達した場合には、紙帯などで施封する装置である。
【0003】
上記紙葉類には、蛍光印刷と通常の印刷が同時に施される場合がある。この種の蛍光印刷と通常の印刷の印刷品質を検査する従来の方法を、以下図3を参照して説明する。
【0004】
図3は、従来の蛍光印刷を検査する蛍光検査装置200の構成を示す側断面図である。
【0005】
従来の蛍光検査装置200は、紫外線ランプ110、蛍光検知部140及びデータ処理部150などで構成される。このように構成された蛍光検査装置200は、上記紙葉類処理装置(図示しない)の搬送路160に配置される。図は、このようにして搬送路160に配置された状態を示す。搬送路160は、搬送ベルト及び搬送ローラ161a・161b、162a・162bなどで構成され、被検出媒体である紙葉類Pを図示矢印A方向に挟持搬送する。
【0006】
搬送された紙葉類Pが読取面124に到達すると、紫外線ランプ110から照射された紫外線が蛍光印刷に使用される蛍光インクに含有された蛍光剤Paを照射することによって当該蛍光剤Paが励起され励起光である蛍光が放射される。この際、読取面124から、当該箇所を照射した紫外線も反射されて上記蛍光と共に放射される。
【0007】
このようにして、紙葉類Pが搬送されることにより、当該紙葉類Pの蛍光印刷部分が読取面124を通過することにより、紫外線及びこの紫外線によって励起された励起光が搬送に伴って順次放射される。
【0008】
放射された紫外線及び蛍光は、蛍光検知部140のレンズ121を透して光学フィルタ122に入射される。光学フィルタ122は、入射された紫外線及び蛍光の中の紫外線を遮断する。この結果、カメラ123には、蛍光のみが入射される。
【0009】
レンズ121は、カメラ123内のラインセンサ123aに読取面124の画像を撮像する際、読取面124での読取範囲の設定、ピント調整に用いられる。
【0010】
このようにして入射された励起光は、1走査ごとにカメラ内のセンサ123aで読み込まれ、読み込まれたデータは、データ処理部150に出力される。
【0011】
このようにして紙葉類Pが読取面を通りすぎると、紙葉類Pの蛍光検知データが全て読み取られる。また、読み取れたデータは、データ処理部150で処理され、蛍光印刷の印刷位置及びその内容が検査される。従って、この蛍光印刷位置の判断は、事前に評価された標準的な紙葉類端(先端又は側端)からの標準的な蛍光印刷位置に対する検知した蛍光印刷位置を検証することにより行っている。なお、一般的な蛍光検知方法として紫外線を媒体に照射し、その反射光を受光部で検知するブリーチ発光検知を行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−288629号公報 (第4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の蛍光検知装置では、紙葉類の蛍光印刷以外の部分は励起発光しないため、当該蛍光検査装置から得られる画像は黒化した画像となり、蛍光印刷以外の一般的な印刷模様を同時に検出することができず、紙葉類の端面の位置と蛍光発光印刷との相対的な位置関係を認識することができなかった。その結果、蛍光印刷が紙葉類の端面に対して位置ずれして印刷される不良印刷を検出できないという課題があった。
【0013】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、蛍光印刷の印刷位置ずれを検知することのできる印刷品質検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の印刷品質検査装置は、搬送される紙葉類が読取面を通過する際に当該読取面を照射し、その読取面から放射される光を読み取り印刷品質を検査する印刷品質検査装置であって、前記読取面に紫外線を照射する紫外線ランプと、前記紙葉類が通常印刷及び蛍光印刷されたものであり、当該紙葉類が前記読取面にあるとき、当該紙葉類に照射された紫外線によって励起された励起光である蛍光を検知する蛍光検知手段と、当該紙葉類に照射された紫外線の反射光を検知する紫外線検知手段と、前記蛍光検知手段及び前記紫外線検知手段によって前記紙葉類の同一箇所を読み取り、前記蛍光検知手段で読み取った蛍光画像データ及び前記紫外線検知手段で読み取った紫外線反射画像データを記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された前記蛍光画像データ及び前記紫外線反射画像データから蛍光印刷の印刷位置ずれを検査する検査手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、蛍光印刷と通常印刷の印刷ずれを検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1による印刷品質検査装置としての蛍光検査装置100の側断面図である。図2は、図1に示す紫外線ランプ11・蛍光の分光分布及び光学フィルタ22・32の分光感度特性を示す図である。以下、図1及び図2を参照して蛍光検査装置100を説明する。
【0018】
蛍光検査装置100は、紫外線ランプ11、検知部40及びデータ処理部50などで構成される。
【0019】
このように構成された蛍光検査装置100は、例えば、上述した紙葉類処理装置(図示しない)の搬送路60に配置される。図はこのようにして搬送路60に配置された状態を示す。
【0020】
搬送路60は、搬送ローラ61a・61b、62a・62b及びこれに掛け回された搬送ベルトなどで構成され、紙葉類Pをこの搬送ベルトで挟持して図示矢印A方向に搬送する。図示した例は、検知部40による蛍光検知部30又は紫外線検知部20の主走査方向(搬送路60に直交する奥行き方向)の読取範囲を十分にとるために当該部分に搬送ベルトを掛け回さず、上述した搬送ローラ61a・61b、62a・62bの配置間隔を調整することによって紙葉類Pを搬送する場合を示す。
【0021】
紫外線ランプ11は、読取面24に紫外線を照射するランプである。この紫外線ランプ11は、紙葉類Pが蛍光印刷されている場合、その印刷インクに含有されている蛍光剤Paを励起する波長を含んでいる。この紫外線の対波長に対する発光強度分布を図2(1)aに示す。
【0022】
検知部40は、蛍光検知部30及び紫外線検知部20で構成される。
【0023】
蛍光検知部30は、図3に示す従来の蛍光検知装置140と同様に構成される。すなわち、読取面24からの反射光はレンズ31で集光される。レンズ31で集光された光は光学フィルタ32を通過する。この光学フィルタ32(第1の光学フィルタ)は、読取面24から放射される励起発光(蛍光)波長域は透過するがそれ以外の波長域を遮断する特性を有する。このときの蛍光の対波長に対する発光強度分布を図2(2)aに示す。また、光学フィルタ32の対波長に対する分光感度特性を図2(2)bに示す。
【0024】
この結果、蛍光のみがこの光学フィルタ32を通過する。
【0025】
このようにして光学フィルタ32を通過した光は、この蛍光波長域に感度のあるカメラ33(第1の読取手段)のラインセンサ33aで検出される。このラインセンサ33aは、搬送方向と直交する方向(この方向を主走査方向と称する。)に配列されたCCD(Charge Coupled Device)センサなどで構成され、所定の速度で走査されて1ラインが読み取られる。その読み取りデータは、データ処理部50に送信され、データ処理部50のメモリに保存される。なお、カメラ33は、図2(2)にカメラ33の検知領域を示すように、可視領域に感度を有する通常の可視カメラを用いて構成することができる。
【0026】
データ処理部50は、一種のマイクロコンピュータシステムであり、入力される画像を記憶手段としてのメモリと与えられた画像データを解析するプロセッサ(CPU)を有している。このように構成されたデータ処理部50において、蛍光検知部30から出力された主走査方向の蛍光画像データを1ライン分メモリに記憶する。紙葉類Pが搬送路60によって搬送されることにより、紙葉類Pの全範囲の蛍光画像データが記憶される。
【0027】
紫外線検知部20のカメラ23は、紫外線領域に感度を有するラインセンサ23aを有しており、紫外線を検知することができる。
【0028】
このように構成された紫外線検知部20には、光学フィルタ22が用いられている。この光学フィルタ(第2の光学フィルタ)22及びカメラ23(第2の読取手段)以外は蛍光検知部30同様に構成されるため、上述した蛍光検知部30と同様部分の説明は省略し、光学フィルタ22の説明を行う。
【0029】
光学フィルタ22は、紫外線ランプ10から照射された紫外線が紙葉類Pで反射された紫外線を透過するフィルタである。この光学フィルタ22は、当該紫外線以外の可視領域は遮断するように構成される。この光学フィルタ22の分光感度特性を図2(1)bに示す。
【0030】
このようにして、紫外線検知部20によって紫外線が検知される。検知された紫外線反射画像データは、データ処理部50に記憶される。また、上述した蛍光画像データ同様に、紙葉類Pが搬送路60によって搬送されることにより紙葉類P全範囲の紫外線反射画像データが記憶される。
【0031】
なお、上述した蛍光検知部30と紫外線検知部20は、読取面24を同時に検知するため紙葉類Pの同一箇所を検知することができ、紙葉類Pの印刷部に関する紫外線反射画像データと紙葉類Pの蛍光印刷に関する蛍光画像データとの印刷位置ずれを検知することが可能になる。すなわち、データ処理部50のCPUは、検査手段として紫外線反射画像データ及び蛍光画像データをその相対的な位置、及び量を検査することにより蛍光画像データの印刷ずれを検査することができる。
【0032】
可視光画像の印刷位置に対して特徴有る部分にさらに蛍光印刷する場合が多いため、一般的には可視光画像データを基準として蛍光印刷位置ずれを検査する場合が多いがこれに限るものではない。
【0033】
すなわち、上記紫外線検知部20で検出された可紫外線反射画像データを用いて、紙葉類Pに印刷された蛍光印刷以外の一般の印刷模様を検出することができる。
【0034】
また、上記蛍光検知部30で検出された蛍光画像データを用いて、紙葉類Pに印刷された蛍光印刷の蛍光発光量、発光模様を検出することができる。
【0035】
ここで、上記紫外線検知部20と蛍光検知部30とは、予め同じ読取面24を検知するように設定されているため、もしくは、両者の相対的な位置関係が正確に把握されているため、可視光画像データから得られる蛍光印刷以外の印刷模様の位置に対する蛍光画像データから得られる蛍光印刷の相対的な位置関係を検査することができる。
【0036】
上述したように、本発明の実施例によれば、蛍光検査装置100を用いて、蛍光印刷と通常の印刷が施されている紙葉類Pに対して、通常印刷及び蛍光印刷の印刷品質又は通常印刷と蛍光印刷の印刷位置ずれを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例1による印刷品質検査装置としての蛍光検査装置100の側断面図。
【図2】図1に示す紫外線ランプ・蛍光の分光分布及び光学フィルタの分光感度特性を示す図。
【図3】従来の蛍光検査装置。
【符号の説明】
【0038】
P 紙葉類
Pa 蛍光剤
11 紫外線ランプ
20 紫外線検知部
21、31 レンズ
22、32 光学フィルタ
23、33 カメラ
23a、33a ラインセンサ
24 検知面
30 蛍光検知部
40 検知部
50 データ処理部
60 搬送路
100 蛍光検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される紙葉類が読取面を通過する際に当該読取面を照射し、その読取面から放射される光を読み取り印刷品質を検査する印刷品質検査装置であって、
前記読取面に紫外線を照射する紫外線ランプと、
前記紙葉類が通常印刷及び蛍光印刷されたものであり、当該紙葉類が前記読取面にあるとき、当該紙葉類に照射された紫外線によって励起された励起光である蛍光を検知する蛍光検知手段と、
当該紙葉類に照射された紫外線の反射光を検知する紫外線検知手段と、
前記蛍光検知手段及び前記紫外線検知手段によって前記紙葉類の同一箇所を読み取り、前記蛍光検知手段で読み取った蛍光画像データ及び前記紫外線検知手段で読み取った紫外線反射画像データを記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶された前記蛍光画像データ及び前記紫外線反射画像データから蛍光印刷の印刷位置ずれを検査する検査手段と、
を備えたことを特徴とする印刷品質検査装置。
【請求項2】
前記蛍光検知手段は、
前記読取面の所定の位置にある前記紙葉類から放射される光を集光するレンズと、
このレンズによって集光された光の中の蛍光発光波長領域を透過する分光特性を備えた第1の光学フィルタと、
この第1の光学フィルタを透過した蛍光を読み取る第1の読取手段と、
を備え、
前記紫外線検知手段は、
前記読取面の所定の位置にある前記紙葉類から反射される光を集光するレンズと、
このレンズによって集光された光の中の前記紫外線ランプの発光波長領域を透過する分光特性を備えた第2の光学フィルタと、
この第2の光学フィルタを透過した紫外線を読み取る第2の読取手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の印刷品質検査装置。
【請求項3】
前記第2の読取手段は、
紫外線領域に感度を有するラインセンサを有することを特徴とする請求項2記載の印刷品質検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−48437(P2009−48437A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214372(P2007−214372)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】