説明

印刷情報読取装置

【課題】印刷情報を、手ぶれ等の影響を受けることなく常に高精度に読み取ることができるようにする。
【解決手段】リモートコントローラ1Aの筐体17aの先端側の上面部及び底面部にそれぞれ第1及び第2の窓18a,19aを設け、これらの窓18a,19a間にプリズム31a,32aからなる光学系30を配置する。そして、第1の窓18aから入射しかつ上記プリズム32a,31aを透過した照明光OL1を、第2の窓19aを介して上記印刷シート20に照射し、その反射光である二次元コード21の光学像を、上記第2の窓19aからプリズム31aに導入したのち当該プリズム31a内でその上面及び下面により順次全反射させて側面から導出することにより、カメラ10に結像させるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カメラを使用して二次元コード等の印刷情報を読み取る印刷情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次元コードを利用した情報の検索サービスや提供サービスが普及している。この種のサービスは、例えば新聞や雑誌等の印刷物に表示された、QRコードに代表される二次元コードをカメラにより撮像し、その画像データから上記二次元コードに含まれるURL(Uniform Resource Locator)を認識する。そして、このURLをもとにインターネットに対しアクセスすることにより、対応するWebサーバから検索情報や商業情報を取得するものである。この種のサービスを利用すると、ユーザはURLをキー操作により入力する必要がなくなり、また誤ったアクセスを減らすことができるので大変便利である。
【0003】
しかしながら、二次元コードを読み取る際、一般にユーザはカメラが内蔵された読取装置を手で把持して二次元コードを撮像する。このため、二次元コードの全体がカメラの撮像範囲(フレーム)内に収まらず、その結果二次元コードを正しく読み取ることができない場合がある。
【0004】
そこで従来では、例えば携帯電話機等のようにディスプレイを備えた装置を使用し、読み取りに先立ちカメラで撮像した二次元コードの画像をディスプレイに表示させて、読取対象の二次元コードが撮像範囲内に収まっているか否かを確認できるようにしている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−277445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このような従来の読取装置では、ユーザが装置を手で把持した状態で二次元コードを撮像するため、手ぶれ等の影響により二次元コードの読取精度の低下を生じやすい。また、ディスプレイとその表示駆動回路を備えることが必要となる。このため、例えばテレビジョン受信機やビデオ記録再生装置等のリモートコントローラを読取装置として使用する場合には、リモートコントローラにカメラばかりでなくディスプレイとその表示駆動回路を設けなければならず、装置の大型化とコストアップを招く。
【0007】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、印刷情報を手ぶれ等の影響を受けることなく常に高精度に読み取ることが可能な印刷情報読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためにこの発明の1つの観点は、媒体に印刷された印刷情報を読み取る印刷情報読取装置にあって、当該装置の筐体の上面部及び底面部にそれぞれ第1及び第2の窓を設けると共に、筐体内の上記第1の窓と第2の窓との間に光学系を配置し、上記第2の窓が上記媒体上の印刷情報が印刷された範囲を含むように配置された状態で、上記光学系により、上記第1の窓を介して第1の入射角度の範囲で入射された照明光を透過させて上記第2の窓を介して上記媒体の印刷情報に照射すると共に、当該照射により生成される上記印刷情報の光学像を上記第2の窓を介して導入したのち全反射させて上記筐体内へ導出し、カメラに結像させるように構成したものである。
【0009】
したがってこの発明の1つの観点によれば、筐体の底面部を、その第2の窓が上記媒体上の印刷情報が印刷された範囲を含むように配置すると、筐体上面部の第1の窓から第1の入射角度の範囲で入射される照明光が光学系を通して印刷媒体に照射されて印刷情報が照明され、この印刷情報の光学像が光学系により全反射されて筐体内のカメラに結像される。このため、筐体の底面部を印刷媒体上に載置した状態で印刷情報が撮像されるので、手ぶれ等の影響を受けることなく高精度の読取処理が可能となる。
【0010】
またこの発明の1つの観点は、以下のような態様を備えることも特徴とする。
第1の態様は、上記光学系が、上記第1の窓を介して第2の入射角度の範囲で入射された照明光を透過させたのち上記第2の窓を介して上記媒体の印刷情報に照射すると共に、当該照射により生成される上記印刷情報の光学像を上記第2の窓を介して導入したのち透過させて上記第1の窓から上記筐体外へ導出する機能をさらに備えるものである。
このように構成すると、読み取り時においてユーザは、筐体が媒体上の適切な位置に配置されているか否かを第1の窓を通して確認することができ、これによりさらに正確な読み取りを行うことが可能となる。また、印刷情報の画像を表示させるためのディスプレイとその表示駆動回路が不要となり、これにより装置の小型化と低価格化が可能となる。
【0011】
第2の態様は、上記光学系が、第1の窓に対向する第1の面と、第2の窓に対向する第2の面と、カメラに対向する第3の面を有し、かつ上記第1の面と第2の面との間の角度が第1の角度に設定されたくさび形状をなす第1のプリズムを備える。そして、上記第1の窓を介して第1の入射角度の範囲で入射した照明光を第1の面から第1のプリズム内に導入して第2の面から導出することにより上記印刷情報に照明し、この照明による印刷情報の光学像を第2の面から第1のプリズム内に導入したのち当該第1のプリズム内で第1の面及び第2の面により順次全反射させて第3の面から導出することにより上記カメラに結像させるように構成したものである。
【0012】
このようにすると、1個のプリズムにより、照明光を導入して印刷情報を照明する機能と、印刷情報の光学像を全反射させて筐体内のカメラに結像させる機能の両方を発揮させることが可能となり、これにより少数の光学系部品を使用するだけで印刷情報の読み取りを実現することができる。また、印刷情報の光学像は第1の面及び第2の面によりそれぞれ全反射されて、つまり2回全反射されてカメラに結像されるので、印刷情報の正立像をカメラで撮像することが可能となる。このため、カメラによる受像後にその画像データを反転処理する必要がなくなり、読取回路部の処理負担を軽減することができる。
【0013】
第3の態様は、上記光学系が、第1の窓に対向する第1の面と、上記第2の窓に対向する第2の面と、上記カメラに対向する第3の面を有し、かつ上記第1の面と第2の面との間の角度が上記第1の角度より大きい第2の角度に設定されたくさび形状をなす第2のプリズムを備える。そして、上記第1の窓を介して第1の入射角度の範囲で入射した照明光を第1の面から第2のプリズム内に導入して第2の面から導出することにより上記印刷情報に照射し、上記印刷情報の光学像を第2の面から第2のプリズム内に導入して当該第2のプリズム内で第1の面により全反射させて第3の面から導出することにより上記カメラに結像させるように構成したものである。
【0014】
このように構成することによっても、上記第1の態様と同様に、1個のプリズムにより、照明光を導入して印刷情報を照明する機能と、印刷情報の光学像を全反射させて筐体内のカメラに結像させる機能の両方を発揮させることが可能となり、これにより少数の光学系部品により印刷情報の読取りを実現できる。また、第1の面による全反射可能な角度の範囲を大きくすることが可能となり、これにより筐体内におけるカメラの配置位置の自由度を高めることが可能となる。
【0015】
第4の態様は、上記光学系が、上記第1の窓と上記第1又は第2のプリズムの第1の面との間に配置され、上記第1の窓を閉塞する第1の面と、上記第1又は第2のプリズムの第1の面に対し間隙を有する状態で対向する第2の面を有する第3のプリズムをさらに備える。そして、上記第1の窓を介して入射した照明光を第1の面から第3のプリズム内に導入してその第2の面から上記間隙を介して上記第1又は第2のプリズムの第1の面に入射させるように構成したものである。
【0016】
このようにすると、筐体の第1の窓が第3のプリズムにより閉塞される。このため、第1の窓から筐体内への塵埃の進入を阻止することが可能となる。また第3のプリズムを適宜配置することで筐体を補強することが可能となる。したがって、第3のプリズムにより装置の構造上の信頼性を高めることができる。
【0017】
第5の態様は、上記第1又は第2のプリズムにより、上記第2の窓を閉塞して筐体の底面と平坦な面を形成し、この平坦面により上記媒体上の上記印刷情報が印刷された範囲に当接して当該範囲を平坦化するように構成したものである。
このように構成すると、印刷情報を読み取る際に、媒体上の印刷情報が印刷された部位を平坦化することができる。このため、印刷媒体に皺や反り等があっても、これらを矯正して平坦な状態で印刷情報を読取処理することが可能となり、これによりさらに高精度の読取りが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
すなわち、この発明の一観点によれば、手ぶれ等の影響を受けることなく高精度の読取処理を可能とした印刷情報読取装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明に係わる印刷情報読取装置の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示した印刷情報読取装置の縦断面図である。
【図3】図2に示した印刷情報読取装置の要部である光学系の構成とその動作説明に用いる図である。
【図4】図3に示した光学系の境界部分の拡大図である。
【図5】この発明の第1の実施形態に係わる印刷情報読取装置の回路構成を示すブロック図である。
【図6】この発明に係わる印刷情報読取装置の第2の実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1はこの発明に係わる印刷情報読取装置の第1の実施形態を示す斜視図、図2はその縦断面図である。
第1の実施形態に係わる印刷情報読取装置は、印刷情報として二次元コード(QRコード)を読み取るもので、テレビジョン受信機又はビデオ記録再生装置で使用されるリモートコントローラに設けられる。
【0021】
リモートコントローラ1Aは、長方形状をなすスティック型の筐体17aを有し、この筐体17aの上面にはテンキーボタン9や複数の機能キーボタンが配設されている。機能キーボタンの中には、二次元コードの読取指示を入力するための読取ボタン11と、読み取った二次元コードの解読データの送信指示を入力するための送信ボタン12が含まれる。
【0022】
一方、筐体17a内にはカメラ10と、リモートコントローラ1Aを動作させるために必要な回路ユニット(図示せず)が内蔵されている。カメラ10は、撮像素子として例えばCCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を使用したものである。
【0023】
また、筐体17aの先端部には通信用の窓(図示せず)が設けられ、この通信用の窓には通信部13が取着されている。この通信部13は、例えば赤外線を用いた信号送信器とその送信制御回路とからなり、図示しないテレビジョン受信機又はビデオ記録再生装置に向けて、遠隔操作信号や、読み取った二次元コードの解読データを送信するために使用される。
【0024】
ところで、筐体17aの先端側の上面部にはアクリル樹脂からなる透明な第1の窓18aが、また底面部には同じくアクリル樹脂からなる透明な第2の窓19aがそれぞれ設けられている。この第2の窓19aの面位置は筐体17aの底面の面位置と一致するように設定されている。
【0025】
筐体17a内の上記第1及び第2の窓18a,19a間には、読取用光学系30が設置されている。この読取光学系30は、第2の窓19a側に配置された読み取り用のプリズムと31aと、第1の窓18a側に配置される補強用のプリズム32aとから構成される。これらのプリズム31a,32aは何れもアクリル樹脂をくさび形に成形したもので、先端部の角度が何れも20度に設定されている。プリズム31aはその下面が上記第2の窓19aと密着した状態に設置され、プリズム32aはその上面が上記第1の窓18aと密着した状態に設置される。この設置構造により、プリズム32aと第1の窓18aとの境界面、及びプリズム31aと第2の窓19aとの境界面で、それぞれ光の反射又は屈折が発生しないようにしている。
【0026】
また、プリズム31a,32aは、プリズム31aの上面とプリズム32aの下面との間に、厚さの薄い空気層33aが介在するように設置される。これは、プリズム31aの上面において後述する二次元コード21の光学像を全反射させるためである。
なお、筐体17a内の上記プリズム31a,32aが収容される部位の内壁面は、上方に向かって開口するようにテーパ状に形成されており、これにより二次元コード21上に筐体17aの壁面による照明光の陰ができる限り生じないようにしている。
【0027】
ところで、プリズム31aは、二次元コード21の光学像をカメラ10に結像させる第1の機能と、二次元コード21の光学像をユーザに視認させる第2の機能を備える。
第1の機能は、図2に示すように、筐体17aの第1の窓18aから第1の入射角度の範囲で入射しかつ上記プリズム32a,31aを透過した照明光OL1を、第2の窓19aを介して上記印刷シート20に照射する。そして、その反射像である二次元コード21の光学像を、上記第2の窓19aからプリズム31aに導入したのち当該プリズム31a内でその上面及び下面により順次全反射させて側面から導出することにより、上記カメラ10に結像させる。
【0028】
第2の機能は、第1の窓18aから第2の入射角度の範囲で入射しかつ上記プリズム32a,31aを透過した照明光を、第2の窓19aを介して上記印刷シート20に照射する。そして、その反射光である二次元コード21の光学像をプリズム31aに導入して透過させ、さらにプリズム32aを透過させて第1の窓18aから二次元コード視認用の光学像OL2として筐体17aの上方へ導出する。
【0029】
図3は、上記第1及び第2の機能の具体例を説明するための図である。なお、同図においてプリズム31a,32aの各面における光の入射角及び出射角は何れもプリズム面の垂線に対する角度として示している。
【0030】
先ず、図中(2) は、第1の窓18aを介して入射された照明光OL1がプリズム32a,31aをそれぞれ透過して二次元コード21に照射され、当該二次元コード21の光学像がプリズム31a内のb−d面及びc−d面で順次全反射してカメラ10に結像するときの光の経路の1つを例示したものである。
いま、プリズム31aの先端部の角度が20度に設定されているものとすると、アクリル樹脂の屈折率は“1.49”であることから、プリズム31aのb−d面において二次元コードの光学像が全反射するときの最小の出射角は、同図(4) に示すように42.2度となる。この条件のもとでは、プリズム31aのb−c面から出射される光学像の水平面に対する角度は31.67度となる。したがって、この水平面に対する角度31.67度以下の範囲にカメラ10を配置すれば、二次元コードの光学像をカメラ10に結像させることが可能となる。
【0031】
次に、図中(3) は、第1の窓18aを介して入射された照明光がプリズム32a,31aをそれぞれ透過して二次元コード21に照射され、当該二次元コード21の光学像がプリズム31a,32aをそれぞれ透過して第1の窓18aから視認用の光学像OL2として出射されるときの光の経路の1つを例示したものである。
プリズム32aにも、前記プリズム31aと同様、先端部の角度が20度に設定され、かつ屈折率が“1.49”のアクリル樹脂を使用した場合、例えば図中(1) に示すようにプリズム32a内のb−d面に対する照明光の入射角が42.2度以上になると、照明光はb−d面を透過せずに全反射してしまう。このときの全反射された照明光のa−b面からの出射角は55.4度である。したがって、ユーザはこの55.4度より大きい角度の範囲に視線を置いて第1の窓18aを視認することにより、二次元コード21を視認することが可能となる。
【0032】
なお、プリズム32aとプリズム31aとの間には、先に述べたように空気層33aを介在配置させている。しかし、この空気層33aの間隔はきわめて小さく設定してあるので、プリズム32a,31aの面を通過する際に発生する屈折もきわめて小さくすることが可能となる。図4にその様子を示す。
【0033】
また、リモートコントローラ1Aの回路ユニットは次のように構成される。図5はその機能構成を示すブロック図である。すなわち、回路ユニットは、通信部13と、情報読取部14と、データ記憶部15と、効果音出力部16と、バッテリを備える電源回路部(図示せず)とから構成される。
【0034】
情報読取部14は、読取ボタン11の操作を検出すると、カメラ10を起動して当該カメラ10から二次元コード21の画像信号を読み込み、この読み込んだ画像信号から二次元コード21を解読する。そして、解読が正しく行われたか否かを判定し、正しく行われた場合にはその旨の鳴音信号を効果音出力部16へ出力すると共に、上記解読結果を表すデータをデータ記憶部15へ出力する。なお、解読が正しく行われなかった場合にも、その旨の鳴音信号を効果音出力部16へ出力する。なお、この情報読取部14の機能は、中央処理ユニット(CPU:Central Processing Unit)にアプリケーション・プログラムを実行させることにより実現される。
【0035】
データ記憶部15は、記憶媒体として例えばEEPROM又はRAMを使用したもので、上記情報読取部14から出力される二次元コードの解読結果を表すデータを、予め決められた領域に記憶する。
効果音出力部16は、例えばサウンダ又はスピーカからなり、上記情報読取部14から供給された鳴音信号に応じた鳴音を発生する。
通信部13は、送信ボタン12が押下された場合に、送信制御回路により上記データ記憶部15から上記二次元コード21の解読結果を表すデータを読み出し、この読み出したデータを信号送信器から赤外線信号として送信する。なお、通信部13は赤外線を使用するものに限らず、Bluetooth(登録商標)等の特定小電力を使用する無線インタフェースを使用することも可能である。
【0036】
次に、以上のように構成された装置による二次元コード21の読取動作を説明する。
二次元コード21を読み取ろうとする場合、ユーザは先ずリモートコントローラ1Aの底面部を印刷シート20上に置く。この状態では、第1の窓18aを介して入射された照明光がプリズム32a,31aをそれぞれ透過して印刷シート20に照射され、当該印刷シート20の光学像がプリズム31a,32aをそれぞれ透過して第1の窓18aから視認用の光学像OL2として出射される。このときの視認用の光学像OL2の光の経路の一例を図3の(3) に示す。
【0037】
この状態で、ユーザは自身の視線方向を図3に示したようにプリズム32aの上面、つまり第1の窓18aの上面に対し55.4度より大きい角度範囲に合わせる。そうすると、ユーザは第1の窓18aを介して印刷シート20上の記載情報を視認可能となり、この状態でリモートコントローラ1Aを移動させることにより、図1に示すように印刷シート20の二次元コード21が印刷された範囲が第2の窓19a内に収容されるように位置決めすることができる。
【0038】
読み取り位置が決まると、第1の窓18a、プリズム32a,31a及び第2の窓19aをそれぞれ透過した照明光OL1が印刷シート20の二次元コード21に照射される。そして、この照明の反射像である二次元コード21の光学像が、第2の窓19aを介してプリズム31aに入射されたのち当該プリズム31a内でその上面及び下面により順次全反射され、プリズム31aの側面から出射されてカメラ10に結像される。このときの照明光OL1及び二次元コードの光学像の光の経路の一例を図3の(2) に示す。
【0039】
そして、この状態でユーザがリモートコントローラ1Aの読取ボタン11を押下すると、情報読取部14によりカメラ10が起動される。この結果、上記プリズム31aにより結像された二次元コード21の光学像がカメラ10により撮像され、その画像信号が情報読取部14に取り込まれる。情報読取部14は、上記取り込んだ二次元コード21の画像信号に対し二次元コード21の解読処理を行い、解読が正しく行われたか否かを判定する。そして、解読が正しく行われた場合には、その旨の鳴音を効果音出力部16から出力させると共に、上記解読結果を表すデータを出力してデータ記憶部15内の予め決められた領域に記憶させる。なお、解読が正しく行われなかった場合には、その旨の鳴音を上記効果音出力部16から出力させる。
【0040】
ユーザが、解読が正しく行われたことを上記鳴音により確認し、送信ボタン12を押下したとする。そうすると通信部13内の送信制御回路は、上記データ記憶部15から上記二次元コード21の解読結果を表すデータを読み出し、この読み出したデータに対応する赤外線信号を送信器から図示しないテレビジョン受信機又はビデオ記録再生装置に向けて送信させる。
【0041】
テレビジョン受信機又はビデオ記録再生装置は、上記二次元コード21の解読結果を表すデータを受信すると、この受信したデータに基づいて例えば番組の録画予約の登録処理を行う。また、テレビジョン受信機又はビデオ記録再生装置がインターネット等の通信ネットワークに接続可能であれば、上記データをこの通信ネットワークを介してWebサーバへ送信し、Webサーバから配信される番組関連情報や商業サービス情報を受信して画面に表示させる。
【0042】
以上述べたように第1の実施形態では、リモートコントローラ1Aの筐体17aの先端側の上面部及び底面部にそれぞれ第1及び第2の窓18a,19aを設け、これらの窓18a,19a間にプリズム31a,32aからなる光学系30を配置する。そして、第1の窓18aから入射しかつ上記プリズム32a,31aを透過した照明光OL1を、第2の窓19aを介して上記印刷シート20に照射し、その反射光である二次元コード21の光学像を、上記第2の窓19aからプリズム31aに導入したのち当該プリズム31a内でその上面及び下面により順次全反射させて側面から導出することにより、カメラ10に結像させるようにしている。
【0043】
またそれと共に、第1の窓18aから入射しかつ上記プリズム32a,31aを透過した照明光を、第2の窓19aを介して上記印刷シート20に照射し、その反射光である二次元コード21の光学像をプリズム31a,32aをそれぞれ透過させて第1の窓18aから二次元コード視認用の光学像OL2として筐体17a上方へ導出するようにしている。
【0044】
したがって、二次元コード21を読み取る場合にユーザは、第1の窓19aを介して二次元コード視認用の光学像OL2を視認しながら筐体17aを移動させることにより、印刷シート20に印刷された二次元コード21が第2の窓19aの範囲内に収容されるように位置決めすることができる。そして、この位置決めがなされると、当該二次元コード21の光学像が第2の窓19aからプリズム31aに導入されたのち、当該プリズム31a内でその上面及び下面により順次全反射されて側面から導出され、カメラ10に結像される。このため、二次元コード21の撮像範囲を確認するためのディスプレイとその表示駆動回路が不要となり、これによりリモートコントローラ1Aの小型化と低価格化を図ることが可能となる。
【0045】
また、筐体17aの底面を印刷シート20上に載置した状態で二次元コード21の撮像が行われるので、手ぶれなどの影響もなくすことができる。しかも、第2の窓19aの面位置を筐体17aの底面の面位置と一致させているので、筐体17aの底面を印刷シート20上に載置したときに印刷シート20上の二次元コード21が印刷された部位を平坦化することができる。このため、二次元コード21に皺や反り等があっても、これらを矯正して平坦な状態で二次元コード21を読み取ることが可能となり、これによりさらに高精度の読取りが可能となる。
【0046】
またこの実施形態では、二次元コード21の光学像はプリズム31a内で2回全反射されてカメラ10に結像されるので、二次元コード21の正立像をカメラ10で撮像することが可能となり、これにより撮像後の画像データを反転処理する必要がなくなり、画像処理を簡単化することができる。
【0047】
さらにこの実施形態では、読み取り用光学系として1個のプリズム31aを用いるだけで、照明光OL1を導入して二次元コード21を照明する機能と、この二次元コード21の光学像を全反射させて筐体17a内のカメラ10に結像させる機能の両方を発揮させることができ、これにより少数の光学系部品を使用するだけで二次元コード21の読み取りを実現できる利点がある。
【0048】
さらにこの実施形態では、第1の窓18aと読み取り用のプリズム31aとの間に補強用のプリズム32aを配置するようにしている。このため、筐体17aの第1の窓18aがプリズム32aにより閉塞される。このため、第1の窓18aから筐体17a内への塵埃の進入を阻止することが可能となる。また、プリズム32aを筐体17aの両側面に当接させるように配置することで筐体17aを補強することが可能となる。したがって、プリズム32aにより装置の構造上の信頼性を高めることができる。
【0049】
(第2の実施形態)
この発明の第2の実施形態は、読み取り用のプリズムとして先端部の角度が30度に設定されたプリズムを設ける。そして、二次元コード21の光学像を当該プリズムにより1回だけ全反射させて筐体外へ導出し、カメラ10に結像させるように構成したものである。
【0050】
図6は、この発明に係わる印刷情報読取装置の第2の実施形態を示す縦断面図である。同図において、リモートコントローラ1Bの筐体17bの先端側の上面部にはアクリル樹脂からなる透明な第1の窓18bが、また底面部には同じくアクリル樹脂からなる透明な第2の窓19bがそれぞれ設けられている。この第2の窓19bの面位置は筐体17bの底面の面位置と一致するように設定されている。
【0051】
筐体17b内の上記第1及び第2の窓18a,19a間には、読み取り用の光学系が設置されている。この読み取り用の光学系は、第2の窓19b側に配置された読み取り用のプリズムと31bと、第1の窓18b側に配置される補強用のプリズム32bとから構成される。これらのプリズム31b,32bは、何れもアクリル樹脂をくさび形に成形したもので、先端部の角度が何れも30度に設定されている。
【0052】
また、プリズム31bの下面及びプリズム32bの上面は、それぞれ前記第1の実施形態と同様に第2の窓19b及び第1の窓18bと密着した状態に設置される。この構造により、プリズム32bと第1の窓18bとの境界面、及びプリズム31bと第2の窓19bとの境界面で、それぞれ光の反射又は屈折が発生しないようにしている。
【0053】
さらに、プリズム31b,32bは、プリズム31bの上面とプリズム32bの下面との間に、厚さの薄い空気層33bが介在するように配置される。これは、プリズム31bの上面において後述する二次元コード21の光学像を全反射させるためである。
なお、筐体17b内の上記プリズム31b,32bの収容される部位の内壁面は、上方に向かって開口するようにテーパ状に形成されており、これにより二次元コード21上に筐体17bの壁面による照明光の陰ができる限り生じないようにしている。
【0054】
ところでプリズム31bは、第1の実施形態と同様に、二次元コード21の光学像をカメラ10に結像させる第1の機能と、二次元コード21の光学像をユーザに視認させる第2の機能を備えている。
第1の機能は、図6に示すように、筐体17bの第1の窓18bから第1の入射角度の範囲で入射しかつ上記プリズム32b,31bを透過した照明光OL1を、第2の窓19bを介して上記印刷シート20に照射する。そして、その反射像である二次元コード21の光学像を、上記第2の窓19bからプリズム31bに導入したのち当該プリズム31b内でその上面により1回全反射させて側面から導出することにより、上記カメラ10に結像させる。
【0055】
第2の機能は、第1の窓18bから第2の入射角度の範囲で入射しかつ上記プリズム32b,31bを透過した照明光を、第2の窓19bを介して上記印刷シート20に照射する。そして、その反射光である二次元コード21の光学像をプリズム31bに導入して透過させ、さらにプリズム32bを透過させて第1の窓18bから二次元コード視認用の光学像として筐体17bの上方へ導出する。
【0056】
このような構成であるから、二次元コード21を読み取ろうとする場合にユーザは、先ずリモートコントローラ1Bの底面部を印刷シート20上に置く。この状態では、第1の窓18bを介して入射された照明光がプリズム32b,31bをそれぞれ透過して印刷シート20に照射され、当該印刷シート20の光学像がプリズム31b,32bをそれぞれ透過して第1の窓18bから視認用の光学像として出射される。なお、この視認用の光学像の視認可能範囲は、プリズム32bの材料が持つ固有の屈折率(1.49)と、反射面の角度(30度)により決まる。したがって、ユーザは自身の視線方向を上記視認可能な角度範囲に合わせることにより、第1の窓18bを介して印刷シート20上の記載情報を視認可能となる。そして、この状態でリモートコントローラ1Bを移動させることにより、図1に示すように印刷シート20の二次元コード21が第2の窓19a内に収容されるように位置決めすることができる。
【0057】
読み取り位置が決まると、第1の窓18b、プリズム32b,31b及び第2の窓19bをそれぞれ透過した照明光OL1が印刷シート20の二次元コード21に照射される。そして、この照明の反射像である二次元コード21の光学像が、第2の窓19bを介してプリズム31bに入射されたのち当該プリズム31b内でその上面により全反射され、プリズム31bの側面から出射されてカメラ10に結像される。なお、このときのカメラ10による撮影可能範囲も、前記第1の実施形態と同様にプリズム32bの材料が持つ固有の屈折率(1.49)と、反射面の角度(30度)により決まる。
【0058】
そして、この状態でユーザがリモートコントローラ1Bの読取ボタン11を押下すると、情報読取部14によりカメラ10が起動され、上記プリズム31bにより結像された二次元コード21の光学像がカメラ10により撮像される。以後の画像信号の取り込みから解読データの送信までの動作は前記第1の実施形態と同じである。
【0059】
以上述べたように第2の実施形態では、リモートコントローラ1Bの筐体17bの先端側の上面部及び底面部にそれぞれ第1及び第2の窓18b,19bを設け、これらの窓18b,19b間に先端部の角度が30度に設定されたプリズム31a,31bを配置している。そして、第1の窓18bから入射しかつ上記プリズム32b,31bを透過した照明光OL1を第2の窓19bを介して上記印刷シート20に照射し、その反射像である二次元コード21の光学像を当該プリズム31bにより1回だけ全反射させて筐体17b内へ導出し、カメラ10に結像させるようにしている。
【0060】
したがって、この実施形態においても前記第1の実施形態と同様の効果を得ることができ、しかもプリズム31bの上面における全反射可能な角度の範囲を大きくすることができるので、筐体17b内におけるカメラ10の配置位置の自由度をより高めることが可能となる。
【0061】
(その他の実施形態)
第1及び第2の実施形態では、テレビジョン受信機又はビデオ記録再生装置のリモートコントローラに印刷情報読取装置を設けた場合を例にとって説明したが、パーソナル・コンピュータや調理機器、カーナビゲーション機器等で使用するリモートコントローラにも、この発明は適用可能である。
【0062】
また、第1及び第2の実施形態では、第1の窓18a,18bとプリズム32a,32b、及び第2の窓19a,19bとプリズム31a,31bとをそれぞれ別の部品により構成したが、プリズム32a,32bの一部により第1の窓18a,18bを構成し、プリズム31a,31bの一部により第2の窓19a,19bを構成するようにしてもよい。また第1及び第2の実施形態では、読み取り用のプリズム31a,31bに加えて補強用のプリズム32a,32bを設けたが、この補強用のプリズム32a,32bは必ずしも設ける必要はない。
【0063】
その他、プリズムの角度や設置位置、筐体内におけるカメラの設置位置、筐体の形状、印刷情報の種類などについても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0064】
要するにこの発明は、上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1A,1B…印刷情報読取装置(リモートコントローラ)、9…テンキーボタン、10…カメラ、11…読取ボタン、12…送信ボタン、13…通信部、14…情報読取部、15…データ記憶部、16…効果音出力部、30…読取光学系、31a,31b…読み取り用のプリズム、32a,32b…補強用のプリズム、33a…空気層、17a,17b…筐体、18a,18b…第1の窓、19a,19b…第2の窓、20…印刷シート、21…二次元コード(QRコード)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に印刷された印刷情報を読み取る印刷情報読取装置において、
上面部に第1の窓を備えると共に底面部に第2の窓を備え、読み取り時に当該第2の窓が前記媒体上の印刷情報が印刷された範囲を含むように配置される筐体と、
前記筐体内の前記第1の窓と第2の窓との間に配置され、前記第1の窓を介して第1の入射角度の範囲で入射された照明光を透過させたのち前記第2の窓を介して前記媒体の印刷情報に照射すると共に、当該照射により生成される前記印刷情報の光学像を前記第2の窓を介して導入したのち全反射させて前記筐体内へ導出する光学系と、
前記筐体内に設けられ、前記光学系により筐体内に導出された前記印刷情報の光学像を受光して画像信号に変換し出力するカメラと
を具備することを特徴とする印刷情報読取装置。
【請求項2】
前記光学系は、
前記第1の窓を介して第2の入射角度の範囲で入射された照明光を透過させたのち前記第2の窓を介して前記媒体の印刷情報に照射すると共に、当該照射により生成される前記印刷情報の光学像を前記第2の窓を介して導入したのち透過させて前記第1の窓から前記筐体外へ導出する機能を、さらに備えることを特徴とする請求項1記載の印刷情報読取装置。
【請求項3】
前記光学系は、
前記第1の窓に対向する第1の面と、前記第2の窓に対向する第2の面と、前記カメラに対向する第3の面を有し、かつ前記第1の面と第2の面との間の角度が第1の角度に設定されたくさび形状をなす第1のプリズムを備え、
前記第1の窓を介して第1の入射角度の範囲で入射した照明光を第1の面から第1のプリズム内に導入して第2の面から導出することにより前記印刷情報を照明し、この照明により生成される前記印刷情報の光学像を第2の面から第1のプリズム内に導入したのち当該第1のプリズム内で第1の面及び第2の面により順次全反射させて第3の面から導出することにより前記カメラに結像させることを特徴とする請求項1又は2記載の印刷情報読取装置。
【請求項4】
前記光学系は、
前記第1の窓に対向する第1の面と、前記第2の窓に対向する第2の面と、前記カメラに対向する第3の面を有し、かつ前記第1の面と第2の面との間の角度が前記第1の角度より大きい第2の角度に設定されたくさび形状をなす第2のプリズムを備え、
前記第1の窓を介して第1の入射角度の範囲で入射した照明光を第1の面から第2のプリズム内に導入して第2の面から導出することにより前記印刷情報に照射し、前記印刷情報の光学像を第2の面から第2のプリズム内に導入して当該第2のプリズム内で第1の面により全反射させて第3の面から導出することにより前記カメラに結像させることを特徴とする請求項1又は2記載の印刷情報読取装置。
【請求項5】
前記光学系は、
前記第1の窓と前記第1又は第2のプリズムの第1の面との間に配置される第3のプリズムをさらに備え、
前記第3のプリズムは、前記第1の窓を閉塞する第1の面と、前記第1又は第2のプリズムの第1の面に対し間隙を有する状態で対向する第2の面を有し、前記第1の窓を介して入射した照明光を第1の面から第3のプリズム内に導入してその第2の面から前記間隙を介して前記第1又は第2のプリズムの第1の面に入射させることを特徴とする請求項3又は4記載の印刷情報読取装置。
【請求項6】
前記第1又は第2のプリズムは、その第2の面が前記第2の窓において前記筐体の底面と平坦面を形成し、これにより前記媒体上の前記印刷情報が印刷された範囲に当接して当該範囲を平坦化する機能を有することを特徴とする請求項3又は4記載の印刷情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−108114(P2011−108114A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264203(P2009−264203)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】