説明

印刷情報読取装置

【課題】手ぶれ等の影響を受けることなく常に高精度の読取処理を可能とし、かつ光透過部材だけであれば全反射するはずの印刷情報の光学像をカメラに結像させる。
【解決手段】筐体17の先端側の上面部及び下面部にそれぞれ開口窓を設けて、筐体17内の上記開口窓間に非中空のプリズム30を配置すると共に、このプリズム30の下面に透光性弾性部材31を密着設置している。そして、二次元コード21を読み取る際に、筐体17の底面を印刷シート20に押し付けることで、透光性弾性部材31の弾性変形を利用して透光性弾性部材31と印刷シート20との間に空気層が介在しないようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カメラを使用して二次元コード等の印刷情報を読み取る印刷情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次元コードを利用した情報の検索サービスや提供サービスが普及している。この種のサービスは、例えば新聞や雑誌等の印刷物に表示された、QRコードに代表される二次元コードをカメラにより撮像し、その画像データから上記二次元コードに含まれるURL(Uniform Resource Locator)を認識する。そして、このURLをもとにインターネットに対しアクセスすることにより、対応するWebサーバから検索情報や商業情報を取得するものである。この種のサービスを利用すると、ユーザはURLをキー操作により入力する必要がなくなり、また誤ったアクセスを減らすことができるので大変便利である。
【0003】
しかしながら、二次元コードを読み取る際、一般にユーザはカメラが内蔵された読取装置を手で把持して二次元コードを撮像する。このため、二次元コードの全体がカメラの撮像範囲(フレーム)内に収まらず、その結果二次元コードを正しく読み取ることができない場合がある。
【0004】
そこで従来では、例えば携帯電話機等のようにディスプレイを備えた装置を使用し、読み取りに先立ちカメラで撮像した二次元コードの画像をディスプレイに表示させて、読取対象の二次元コードが撮像範囲内に収まっているか否かを確認できるようにしている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−277445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このような従来の読取装置では、ユーザが装置を手で把持した状態で二次元コードを撮像するため、手ぶれ等の影響により二次元コードの読取精度の低下を生じ易い。また、二次元コードの読取位置を確認するために、ディスプレイとその表示駆動回路を備える必要がある。このため、例えばテレビジョン受信機やビデオ記録再生装置等のリモートコントローラを読取装置として使用する場合には、リモートコントローラにカメラばかりでなくディスプレイとその表示駆動回路を設けなければならず、装置の大型化とコストアップを招く。
【0007】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、手ぶれ等の影響を受けることなく常に高精度の読取処理を可能とし、かつ光透過部材だけであれば全反射するはずの印刷情報の光学像をカメラに結像させることが可能な印刷情報読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためにこの発明の1つの観点は、媒体に印刷された印刷情報をカメラで読み取る印刷情報読取装置にあって、筐体の上面部及び下面部にそれぞれ第1及び第2の窓を設け、筐体内の上記第1の窓と第2の窓との間に非中空の光透過部材を配置すると共に、この光透過部材の下面に透光性弾性部材を密着設置する。そして、上記第1の窓を介して第1の角度で入射しかつ上記光透過部材を透過した照明光を、上記透光性弾性部材を通して上記媒体の印刷情報に照射すると共に、当該照射光の上記印刷情報による反射光学像を、上記透光性弾性部材を通して上記光透過部材に入射したのち、当該光透過部材を透過させてその側面から筐体内へ導出して上記カメラに結像させるように構成したものである。
【0009】
したがって、この発明の1つの観点によれば、筐体の下面部を、その第2の窓が上記媒体上の印刷情報が印刷された範囲を含むように配置すると、筐体上面部の第1の窓から入射された照明光が光学系を通して印刷媒体に照射されて印刷情報が照明され、この印刷情報の光学像が光学系を介して筐体内のカメラに結像される。このため、筐体の下面部を印刷媒体上に載置した状態で印刷情報が撮像されるので、手ぶれ等の影響を受けることなく高精度の読取処理が可能となる。
【0010】
しかも、光透過部材の下面に透光性弾性部材を密着設置し、読み取り時にこの透光性弾性部材により上記光透過部材と上記媒体との間を気密状態に維持するようにしたことにより、光透過部材のみであればその下面で全反射してしまい印刷情報に照射されない照明光が、光透過部材から透光性弾性部材を通して印刷媒体の印刷情報に照射される。そして、その反射光である印刷情報の光学像が、上記透光性弾性部材を逆方向に通って光透過部材に入射され、この光透過部材を透過してカメラに結像される。すなわち、光透過部材のみであれば全反射するはずの印刷情報の光学像をカメラに結像させることができる。
【0011】
また、この発明の1つの観点は以下のような態様を備えることを特徴とする。
第1の態様は、上記光学系により、上記第1の窓を介して第2の角度で入射しかつ上記光透過部材を透過した照明光を上記透光性弾性部材を通して上記媒体の印刷情報に照射すると共に、当該照射光の上記印刷情報による反射光学像を上記透光性弾性部材を通して上記光透過部材に入射したのち当該光透過部材を透過させて上記第1の窓からユーザ確認光として筐体外へ出射するようにしたものである。
このようにすると、ユーザは第1の窓を介して印刷情報を視認しながらその位置合わせを行うことが可能となる。このため、印刷情報の画像を表示させるためのディスプレイとその表示駆動回路が不要となり、これにより装置の小型化と低価格化が可能となる。
【0012】
第2の態様は、透光性弾性部材を、上記光透過部材と同等の屈折率を有しかつ厚み方向に弾性を有する樹脂シートにより構成したものである。
このようにすると、例えば媒体上に微小な凹凸があり、光透過部材と媒体との間の間隔が不均一だったとしても、透光性弾性部材が持つ厚さ方向の弾性により上記間隔の不均一を吸収して、光透過部材と媒体との間を気密に維持することが可能となり、これにより照明光及び印刷情報による反射光学像を部分的な欠損等を生じることなく通過させることができる。
【0013】
第3の態様は、上記光学系に、上記光透過部材の側面に密接するように配置される光偏向部材をさらに設け、この光偏向部材により、上記光透過部材の側面から導出された上記印刷情報の反射光学像を斜視像から平面像に変換して上記カメラに結像させるように構成したものである。
このようにすると、印刷情報の光学像をカメラに結像される前に平面像に変換することができ、これによりカメラによる受像後にその画像データを斜視像から平面像に変換するための画像処理を行う必要がなくなり、情報読取部の処理負荷を大幅に軽減することができる。
【0014】
第4の態様は、上記光学系を、上記透光性弾性部材の面位置が上記筐体の底面の面位置より突出するように配置するようにしたものである。
このようにすると、印刷情報を読み取る際に、透光性弾性部材の弾性変形をより有効に利用して、透光性弾性部材を媒体上により確実に密接させることが可能となり、さらに印刷媒体に皺や反り等があってもこれらを矯正して平坦な状態で印刷情報を読取処理することが可能となり、これによりさらに高精度の読取りが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
すなわちこの発明によれば、手ぶれ等の影響を受けることなく常に高精度の読取処理を可能とし、かつ光透過部材だけであれば全反射するはずの印刷情報の光学像をカメラに結像させることが可能な印刷情報読取装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係わる印刷情報読取装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示した印刷情報読取装置の縦断面図である。
【図3】プリズムの基本動作を示す図である。
【図4】この発明の一実施形態に係わる印刷情報読取装置の回路構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
図1はこの発明に係わる印刷情報読取装置の一実施形態を示す斜視図、図2はその縦断面図である。
この実施形態に係わる印刷情報読取装置は、印刷情報として二次元コード(QRコード)を読み取るもので、テレビジョン受信機又はビデオ記録再生装置で使用されるリモートコントローラに設けられる。
【0018】
リモートコントローラ1は、長方形状をなすスティック型の筐体17を有し、この筐体17の上面にはテンキーボタン9や複数の機能キーボタンが配設されている。機能キーボタンの中には、二次元コードの読取指示を入力するための読取ボタン11と、読み取った二次元コードの解読データの送信指示を入力するための送信ボタン12が含まれる。
【0019】
一方、筐体17内にはカメラ10と、リモートコントローラ1を動作させるために必要な回路ユニット(図示せず)が内蔵されている。カメラ10は、撮像素子として例えばCCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を使用したものである。
【0020】
また、筐体17の先端部には通信用の窓(図示せず)が設けられ、この通信用の窓には通信部13が取着されている。この通信部13は、例えば赤外線を用いた信号送信器とその送信制御回路とからなり、図示しないテレビジョン受信機又はビデオ記録再生装置に向けて、遠隔操作信号や、読み取った二次元コードの解読データを送信するために使用される。
【0021】
ところで、筐体17の先端側の上面部及び下面部にはそれぞれ開口窓が設けられており、これらの開口窓により形成される筐体17内の空間部には、読取光学系が収容されている。この読取光学系は、光透過部材としての読取用のプリズム30と、透光性弾性部材31と、光偏向部材としての偏向プリズム32とから構成される。プリズム30は、アクリル樹脂を縦断面が台形状又は平行四辺形状となるように成形した非中空の光透過部材からなり、その上面の面位置が筐体17の上面の面位置と一致するように配置されている。
【0022】
また、上記プリズム30の下面には、当該下面との間に空気層が介在しないように透光性弾性部材31が密着設置されている。この透光性弾性部材31は、厚さ方向に弾性を有する樹脂シートからなる。この樹脂シートには、上記プリズム30と同等の屈折率を持つ材料が用いられる。例えば、アクリル樹脂からなるプリズム30の屈折率を“1.49”とすると、透光性弾性部材31にも1.49か又はそれに近い屈折率を有する材料が選択される。
【0023】
上記透光性弾性部材31の面位置は、筐体17の底面の面位置よりも例えば1〜2mm程度突出するように設定される。これは、二次元コード21を読み取る際に、透光性弾性部材31の弾性変形をより有効に利用して、当該透光性弾性部材31を印刷シート20に対しより確実に密接させるためである。
【0024】
さらに、前記プリズム30の側面には、空気層が介在しないように密接した状態で偏向用プリズム32が配置されている。この偏向用プリズム32は、上記プリズム30の側面から入射された二次元コード21の光学像を斜視像から平面像に変換して、カメラ10に結像させる機能を有する。なお、この偏向用プリズム32にも、上記プリズム30と同じアクリル樹脂が用いられる。
【0025】
なお、筐体17内の上記プリズム30が収容される部位の先端側内壁面は、上方に向かって開口するようにテーパ状に形成されている。このテーパ状の斜面構造を採用したことにより、印刷シート20の二次元コード21上に、筐体17による照明光OL1の陰が生じ難いようにしている。
【0026】
また、リモートコントローラ1の回路ユニットは次のように構成される。図4はその機能構成を示すブロック図である。すなわち、回路ユニットは、通信部13と、情報読取部14と、データ記憶部15と、効果音出力部16と、バッテリを備える電源回路部(図示せず)とから構成される。
【0027】
情報読取部14は、読取ボタン11の操作を検出すると、カメラ10を起動して当該カメラ10から二次元コード21の画像信号を読み込み、この読み込んだ画像信号から二次元コード21を解読する。そして、解読が正しく行われたか否かを判定し、正しく行われた場合にはその旨の鳴音信号を効果音出力部16へ出力すると共に、上記解読結果を表すデータをデータ記憶部15へ出力する。なお、解読が正しく行われなかった場合にも、その旨の鳴音信号を効果音出力部16へ出力する。なお、この情報読取部14の機能は、中央処理ユニット(CPU:Central Processing Unit)にアプリケーション・プログラムを実行させることにより実現される。
【0028】
データ記憶部15は、記憶媒体として例えばEEPROM又はRAMを使用したもので、上記情報読取部14から出力される二次元コードの解読結果を表すデータを、予め決められた領域に記憶する。
効果音出力部16は、例えばサウンダ又はスピーカからなり、上記情報読取部14から供給された鳴音信号に応じた鳴音を発生する。
通信部13は、送信ボタン12が押下された場合に、送信制御回路により上記データ記憶部15から上記二次元コード21の解読結果を表すデータを読み出し、この読み出したデータを信号送信器から赤外線信号として送信する。なお、通信部13は赤外線を使用するものに限らず、Bluetooth(登録商標)等の特定小電力を使用する無線インタフェースを使用することも可能である。
【0029】
次に、以上のように構成された装置による二次元コード21の読取動作を説明する。
二次元コード21の読み取りを行おうとする場合、ユーザは先ずリモートコントローラ1の筐体17底面部を印刷シート20上の任意の位置に置く。このとき、透光性弾性シート31の弾性変形を利用して筐体17を印刷シート20に対し押し付けるようにする。この状態では、筐体17の上面開口窓から垂直に近い角度で入射した照明光OL2は、図2に示すようにプリズム30を透過しさらに透光性弾性部材31を透過したのち、印刷シート20に照射される。
【0030】
そして、上記照射光の上記印刷シート20による反射光は、上記透光性弾性部材31に逆方向から入射し、この透光性弾性部材31を透過しさらにプリズム30を透過したのち、その上面からユーザ確認光として筐体17外へ出射される。したがって、ユーザは筐体17の上面開口窓を通して印刷シート20の光学像を視認することが可能となる。そして、この光学像を視認しながらリモートコントローラ1を移動させることにより、図1に示すように印刷シート20上の二次元コード21の印刷位置にリモートコントローラ1を位置合わせすることができる。
【0031】
さて、上記位置合わせが終了した状態において、筐体17の上面開口窓から入射した照明光OL1が、プリズム30を透過してその下面に到達する。このとき、プリズム30の下面には、プリズム30との間に空気層を介在しないように密接した状態で透光性弾性部材31が貼付されている。しかも、この透光性弾性部材31は印刷シート20に対しその弾性変形を利用して押し付けられており、これにより透光性弾性部材31と印刷シート20との間も空気層が介在しない状態に維持されている。このため、上記照明光OL1は、図2に示すようにプリズム30から透光性弾性部材31に反射することなく入射し、当該透光性弾性部材31を透過して印刷シート20に照射される。
【0032】
そして、上記照射光の上記二次元コード21による反射光、つまり二次元コード21の光学像は、図2に示すように上記透光性弾性部材31に対し反射することなく入射し、当該透光性弾性部材31を透過したのち、ここでも反射することなくプリズム30に入射される。そして、この入射光がプリズム30の側面から偏向用プリズム32に入射され、この偏向用プリズム32により斜視像から平面像に変換されたのち筐体17内へ出射されて、カメラ10に結像される。
【0033】
この状態で、ユーザがリモートコントローラ1の読取ボタン11を押下すると、情報読取部14によりカメラ10が起動される。この結果、上記カメラ10において上記結像された二次元コード21の光学像が撮像走査され、その画像信号が情報読取部14に取り込まれる。情報読取部14は、上記取り込んだ二次元コード21の画像信号に対し二次元コード21の解読処理を行い、解読が正しく行われたか否かを判定する。そして、解読が正しく行われた場合には、その旨の鳴音を効果音出力部16から出力させると共に、上記解読結果を表すデータを出力してデータ記憶部15内の予め決められた領域に記憶させる。なお、解読が正しく行われなかった場合には、その旨の鳴音を上記効果音出力部16から出力させる。
【0034】
ユーザが、解読が正しく行われたことを上記鳴音により確認し、送信ボタン12を押下したとする。そうすると通信部13内の送信制御回路は、上記データ記憶部15から上記二次元コード21の解読結果を表すデータを読み出し、この読み出したデータに対応する赤外線信号を送信器から図示しないテレビジョン受信機又はビデオ記録再生装置に向けて送信させる。
【0035】
テレビジョン受信機又はビデオ記録再生装置は、上記二次元コード21の解読結果を表すデータを受信すると、この受信したデータに基づいて例えば番組の録画予約の登録処理を行う。また、テレビジョン受信機又はビデオ記録再生装置がインターネット等の通信ネットワークに接続可能であれば、上記データをこの通信ネットワークを介してWebサーバへ送信し、Webサーバから配信される番組関連情報や商業サービス情報を受信して画面に表示させる。
【0036】
以上詳述したようにこの実施形態では、筐体17の先端側の上面部及び下面部にそれぞれ開口窓を設けて、筐体17内の上記開口窓間に非中空のプリズム30を配置すると共に、このプリズム30の下面に透光性弾性部材31を密着設置している。そして、二次元コード21を読み取る際に、筐体17の底面を印刷シート20に押し付けることで、透光性弾性部材31の弾性変形を利用して透光性弾性部材31と印刷シート20との間に空気層が介在しないようにしている。
したがって、筐体17下面を印刷シート20上に載置した状態で二次元コード21を読み取ることが可能となるので、手ぶれ等の影響を受けることなく常に高精度の読取処理を行うことができる。
【0037】
しかも、プリズム30の下面に透光性弾性部材31を密着設置し、かつ二次元コード21を読み取る際に透光性弾性部材31の弾性変形を利用して透光性弾性部材31と印刷シート20との間に空気層が介在しない構造としたことにより、以下のような作用効果が奏せられる。図3はこの作用効果を説明するための図である。
【0038】
すなわち、プリズム30から出射される光学像を筐体17内のカメラ10に結像させるためには、例えば図3の(2)に示すようにプリズム30に対し水平に近い角度で照明光OL1を入射させる必要がある。しかし、このようにすると照明光OL1はプリズム30の下面において全反射してしまい、この結果二次元コード21の光学像をカメラ10に結像させることができない。照明光OL1がプリズム30の下面において全反射するときの反射角度は、プリズム30がアクリル樹脂(屈折率=1.49)からなる場合、図4中の(1)に示すように42.2度以上であり、この条件では照明光はプリズム30内の下面と上面との間で全反射を繰り返してしまう。
【0039】
これに対し、照明光OL1がプリズム30の下面で全反射しないようにするために、プリズム30の下面に対する照明光OL1の反射角が上記42.2度未満となるように照明光をプリズム30に入射したとする。この場合、照明光OL1は図3の(3)に示すように二次元コード21に照射されるが、その反射光はプリズム30を透過してその上面から筐体17外へ出射してしまい、カメラ10に結像させることができない。
【0040】
そこで、この実施形態のようにプリズム30の下面に透光性弾性部材31を密着設置する。そうすると、プリズム30に入射した照明光OL1は、プリズム30の下面で反射することなく透光性弾性部材31に入射し、この透光性弾性部材31を透過したのち印刷シート20上の二次元コード21に照射される。そして、この照射光の二次元コード21による反射光である二次元コード21の光学像は、上記透光性弾性部材31に逆方向に入射して透過したのち、プリズム30との境界面で反射することなくプリズム30に入射して透過したのち、当該プリズム30の側面から偏向用プリズム32を介して筐体17内へ出射してカメラ10に結像される。すなわち、プリズム30だけであれば全反射するはずの二次元コード21の光学像を、カメラ10に結像させることができる。
【0041】
また、上記照射光OL2の上記印刷シート20による反射光は、上記透光性弾性部材31及びプリズム30を順次透過してその上面からユーザ確認光として筐体17外へ出射する。したがって、ユーザは二次元コード21の反射光学像を筐体17の上面開口窓から視認しながら、二次元コード21に対するリモートコントローラ1の位置合わせを行うことができる。このため、ユーザによる確認のための二次元コード21の画像を表示させるためのディスプレイとその表示駆動回路が不要となり、これにより装置の小型化と低価格化が可能となる。
【0042】
さらにこの実施形態では、プリズム30の側面に偏向用プリズム32を密着配置し、上記プリズム30の側面から出射した二次元コード21の光学像を上記偏向用プリズム32により斜視像から平面像に変換してカメラ10に結像させるようにしている。したがって、二次元コード21の光学像をカメラ10に結像される前に斜視像から平面像に変換することができ、これによりカメラ10による受像後にその画像データを斜視像から平面像に変換する処理を行う必要がなくなって、情報読取部14の処理負荷を軽減することができる。
【0043】
さらにこの実施形態では、透光性弾性部材31の面位置が筐体17の底面の面位置より突出するように設定されている。このため、二次元コード21を読み取る際に、透光性弾性部材31の弾性変形をより有効に利用して、透光性弾性部材31を印刷シート20上により確実に密接させることが可能となる。また、印刷シート20に皺や反り等があっても、これらを矯正して平坦な状態で二次元コード21を読取処理することが可能となり、これによりさらに高精度の読取りが可能となる。
【0044】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、透光性弾性部材31は厚さ方向だけでなく面方向にも弾性変形すると、二次元コード21の光学像が透光性弾性部材31を透過する際に歪み等を生じるおそれがある。したがって、透光性弾性部材31は厚さ方向にのみ弾性変形する材料又は構造を採用するとよい。また、透光性弾性部材31に柔軟性の高い材質を採用すると表面の摩擦力が増加する場合がある。この場合には、摩擦係数を減少させるために透光性弾性部材31の表面をコーティング処理するとよい。
【0045】
また、前記実施形態では、テレビジョン受信機又はビデオ記録再生装置のリモートコントローラに印刷情報読取装置を設けた場合を例にとって説明したが、パーソナル・コンピュータや調理機器、カーナビゲーション機器等で使用するリモートコントローラにも、この発明は適用可能である。
【0046】
その他、光透過部材や透光性弾性部材の材質や形状、厚さ、設置位置、筐体内におけるカメラの設置位置、筐体の形状、印刷情報の種類などについても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0047】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…印刷情報読取装置(リモートコントローラ)、9…テンキーボタン、10…カメラ、11…読取ボタン、12…送信ボタン、13…通信部、14…情報読取部、15…データ記憶部、16…効果音出力部、17…筐体、20…印刷シート、21…二次元コード(QRコード)、30…プリズム、31…透光性弾性部材、32…偏向用プリズム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に印刷された印刷情報を読み取る印刷情報読取装置において、
上面部に第1の窓を備えると共に下面部に第2の窓を備え、読み取り時に当該第2の窓が前記媒体上の印刷情報が印刷された範囲を含むように配置される筐体と、
前記筐体内の前記第1の窓と第2の窓との間に配置される非中空の光透過部材と、この光透過部材の下面に密着設置され、読み取り時に前記光透過部材と前記媒体との間を気密状態に維持する透光性弾性部材とを備え、前記第1の窓を介して第1の角度で入射しかつ前記光透過部材を透過した照明光を前記透光性弾性部材を通して前記媒体の印刷情報に照射すると共に、当該照射光の前記印刷情報による反射光学像を前記透光性弾性部材を通して前記光透過部材に入射したのち当該光透過部材を透過させてその側面から前記筐体内へ導出する光学系と、
前記筐体内に設けられ、前記光学系により筐体内に導出された前記印刷情報の反射光学像を受光して画像信号に変換し出力するカメラと
を具備することを特徴とする印刷情報読取装置。
【請求項2】
前記光学系は、前記第1の窓を介して第2の角度で入射しかつ前記光透過部材を透過した照明光を前記透光性弾性部材を通して前記媒体の印刷情報に照射すると共に、当該照射光の前記印刷情報による反射光学像を前記透光性弾性部材を通して前記光透過部材に入射したのち当該光透過部材を透過させて前記第1の窓からユーザ確認光として筐体外へ出射することを特徴とする請求項1記載の印刷情報読取装置。
【請求項3】
前記透光性弾性部材は、前記光透過部材と同等の屈折率を有しかつ厚み方向に弾性を有する樹脂シートにより構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の印刷情報読取装置。
【請求項4】
前記光学系は、前記光透過部材の側面に密接するように配置される光偏向部材をさらに備え、この光偏向部材により、前記光透過部材の側面から導出された前記印刷情報の反射光学像を斜視像から平面像に変換して前記カメラに結像させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の印刷情報読取装置。
【請求項5】
前記光学系は、前記透光性弾性部材の面位置が前記筐体の底面の面位置より突出するように配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の印刷情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−113211(P2011−113211A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267824(P2009−267824)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】