説明

印刷方法、および半導体装置

【課題】電子部品の樹脂製パッケージ表面に密着性が高く、耐擦過性の優れ信頼性の高いマーキングを施す印刷方法を提供する。
【解決手段】パッケージ基材または半導体基材を被記録媒体として、前記被記録媒体外表面に放射線硬化型インクをインクジェット装置により吐出し、所定パターンを印刷する印刷方法であって、前記放射線硬化型インクは重合性化合物を前記放射線硬化型インクの総質量の25質量%以上65質量%以下を含み、前記重合性化合物はN―ビニルカプロラクタムを前記放射線硬化型インクの総重量の5質量%以上20質量%以下を含み、前記被記録媒体の外表面と、前記放射線硬化型インクによる前記所定パターンの印刷層と、の間にプライマー層を形成する印刷方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷方法、および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、耐水性、耐溶剤性、および耐擦過性などの良好な画像を被記録媒体の表面に形成する方法として、放射線を照射すると硬化する放射線硬化型インク組成物を、インクジェット装置によってインクを吐出して画像を形成する方法が用いられている。また、様々な機器に使用されている半導体素子を樹脂パッケージした半導体装置に代表される電子部品には、部品の種別、メーカー、型番などの情報をパッケージ表面に印刷表示し、識別できるようにすることが通常行われている。そのため、安定した品質と、低コストで行える電子部品表面へのマーキング印刷技術が求められている。
【0003】
特許文献1には、紫外線を照射することによって定着できるインクを用い、トレイに整列させた電子部品に液滴を吐出させる、すなわちインクジェットによってマーキングを行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−274335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の特許文献1の方法による電子部品のマーキングの場合、樹脂パッケージ成形時における金型からの離型性を高めるために塗布されている離型剤が表面に残り、紫外線によって硬化した印刷マーキングの電子部品との密着性、あるいは耐擦過性を低下させる虞があった。
【0006】
そこで、電子部品の樹脂製パッケージ表面に密着性が高く、耐擦過性に優れ、信頼性の高いマーキングを施す印刷方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも上述の課題の一つを解決するように、下記の形態または適用例として実現され得る。
【0008】
〔適用例1〕本適用例の印刷方法は、パッケージ基材または半導体基材を被記録媒体として、前記被記録媒体外表面に放射線硬化型インクをインクジェット装置により吐出し、所定パターンを印刷する印刷方法であって、前記放射線硬化型インクは重合性化合物を前記放射線硬化型インクの総質量の25質量%以上65質量%以下を含み、前記重合性化合物はN−ビニルカプロラクタムを前記放射線硬化型インクの総重量の5質量%以上20質量%以下を含み、前記被記録媒体の外表面と、前記放射線硬化型インクによる前記所定パターンの印刷層と、の間にプライマー層を形成することを特徴とする。
【0009】
本適用例の印刷方法によれば、重合性化合物中にN−ビニルカプロラクタムを放射線硬化型インクの総質量の5〜20質量%含むことによって、インクの密着性、耐擦性、およびアルコール耐性に優れた印刷マークを得ることができ、被記録媒体と印刷マークとの間にプライマー層を備えることで、被記録媒体と印刷マークとの密着性を向上させ、耐擦過性の優れた印刷マークを得ることができる。
【0010】
〔適用例2〕上述の適用例において、前記プライマー層は、メルカプト基を含むシランカップリング剤を含むことを特徴とする。
【0011】
上述の適用例によれば、ラジカル反応性を有するシランカップリング剤がプライマー層に含まれることにより、密着性の高い印刷マークを得ることができ、特に電子吸引性が高いメルカプト基を有するシランカップリング剤を含むことで、インクとの密着性を高めることができる。
【0012】
〔適用例3〕上述の適用例において、前記プライマー層は、エポキシシクロヘキシル基を含むシランカップリング剤を含むことを特徴とする。
【0013】
上述の適用例によれば、ラジカル反応性を有するシランカップリング剤がプライマー層に含まれることにより、密着性の高い印刷マークを得ることができ、特に電子吸引性が高いエポキシシクロヘキシル基を有するシランカップリング剤を含むことで、インクとの密着性を高めることができる。
【0014】
〔適用例4〕上述の適用例において、前記プライマー層は、イソシアナート基を含むシランカップリング剤を含むことを特徴とする。
【0015】
上述の適用例によれば、ラジカル反応性を有するシランカップリング剤がプライマー層に含まれることにより、密着性の高い印刷マークを得ることができ、特に電子吸引性が高いイソシアナート基を有するシランカップリング剤を含むことで、インクとの密着性を高めることができる。
【0016】
〔適用例5〕上述の適用例による印刷方法によって前記所定パターンが印刷された半導体装置。
【0017】
本適用例によれば、密着性の高い印刷マークをパッケージ表面に備える半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係る半導体装置を示し、(a)は平面外観図、(b)は(a)A−A´の部分断面図。
【図2】第1実施形態に係るプライマー層の印刷形態の例を示す部分平面図。
【図3】第2実施形態に係る印刷方法を示すフローチャート。
【図4】第2実施形態に係る印刷方法を示す断面図。
【図5】実施例1〜15、比較例1〜5に係る放射線硬化型インクの組成を示す。
【図6】実施例1〜15、比較例1〜5に係るプライマー液の組成を示す。
【図7】実施例1〜15、比較例1〜5の評価結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、一例として本実施形態に係る印刷方法によって所定のマークが印刷される半導体装置を示す、(a)は平面外観図、(b)は(a)のA−A´部の部分断面図である。図1(b)に示すように、半導体装置100は、内部に半導体素子10と、フレーム20と、がワイヤー10aによってワイヤーボンディングされ、樹脂パッケージ30によって一体成形されている。また、図1(a)に示すように、樹脂パッケージ30の印刷面30a上には、会社名マーク41、機種コード42、製造番号43などの所定パターンとしての印刷マーク40が印刷されている。
【0021】
図1(b)に示すように、印刷マーク40と樹脂パッケージ30の印刷面30aとの間にはプライマー層50が形成されている。プライマー層50は、印刷面30a全面に形成されていても良いが、図2(a)に示すように、印刷マーク40の印刷領域にプライマー層51を形成してもよく、図2(b)に示すように、印刷マーク40の各文字よりわずかに太くプライマー層52を形成してもよい。
【0022】
半導体装置100に印刷される印刷マーク40は、後述するインクジェット装置からインクを吐出し、所定の印刷マーク40を形成する。この吐出されるインクは、放射線硬化型インクを用い、放射線として例えば紫外線を吐出されたインクに照射することにより、インクを硬化、定着させることができるものである。以下に放射線硬化型インクの組成物に含まれるか、あるいは含まれ得る添加剤(成分)について説明する。
【0023】
〔重合性化合物〕
本実施形態に係る半導体装置100への印刷マーク40の印刷インク組成物には、光重合開始剤の作用により光照射時に重合され、インクが硬化、定着させることができる重合性化合物が添加される。
【0024】
(モノマーA)
重合性化合物の一つとしてモノマーAが添加される。モノマーAは、分子中にビニル基及び(メタ)アクリル基を共に有する化合物であり、下記一般式(1)で示される。
【0025】
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 …(1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類である。
【0026】
インク組成物がモノマーAを含有することにより、インクの硬化性などを良好なものとすることができる。
【0027】
上記の一般式(1)において、R2で表される2価の有機残基としては、炭素数2〜20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキレン基、構造中にエーテル結合及びエステル結合の少なくとも一方による酸素原子を有する炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数6〜11の置換されていてもよい2価の芳香族基が好適である。これらの中でも、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、及びブチレン基などの炭素数2〜6のアルキレン基、オキシエチレン基、オキシn−プロピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数2〜9のアルキレン基が好適に用いられる。
【0028】
上記の一般式(1)において、R3で表される炭素数1〜11の1価の有機残基としては、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基、炭素数6〜11の置換されていてもよい芳香族基が好適である。これらの中でも、メチル基又はエチル基である炭素数1〜2のアルキル基、フェニル基及びベンジル基などの炭素数6〜8の芳香族基が好適に用いられる。
【0029】
上記の有機残基が置換されていてもよい基である場合、その置換基は、炭素原子を含む基及び炭素原子を含まない基に分けられる。まず、上記置換基が炭素原子を含む基である場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数にカウントされる。炭素原子を含む基として、以下に限定されないが、例えばカルボキシル基、アルコキシ基が挙げられる。次に、炭素原子を含まない基として、以下に限定されないが、例えば水酸基、ハロ基が挙げられる。
【0030】
上記の一般式(1)で表されるモノマーAの具体例としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、及び(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。
【0031】
上記したものの中でも、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5−ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチルが好ましい。
【0032】
これらの中でも、低粘度で、引火点が高く、かつ、硬化性に優れるため、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルが好ましく、さらに、臭気が低く、皮膚への刺激を抑えることができ、かつ、反応性及び密着性に優れるため、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルがより好ましい。
【0033】
(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及び(メタ)アクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられ、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及びアクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられる。
【0034】
モノマーAは、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、20〜50質量%含まれ、好ましくは22〜40質量%含まれる。含有量が上記範囲内であると、インクの密着性、耐擦性、及びアルコール耐性を良好なものとすることができる。
【0035】
上記一般式(1)で表されるモノマーAの製造方法としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法B)、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法C)、(メタ)アクリル酸無水物と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法D)、(メタ)アクリル酸エステル類と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル交換する方法(製法E)、(メタ)アクリル酸とハロゲン含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法F)、(メタ)アクリル酸アルカリ(土類)金属塩とハロゲン含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法G)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類とカルボン酸ビニルとをビニル交換する方法(製法H)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類とアルキルビニルエーテル類とをエーテル交換する方法(製法I)が挙げられる。
【0036】
これらの中でも、本実施形態に所望の効果を一層発揮することができるため、製法Eが好ましい。
【0037】
(N−ビニルカプロラクタム)
本実施形態において、N−ビニルカプロラクタムは必須の重合性化合物である。インク組成物が重合性化合物として上記モノマーAに加えてN−ビニルカプロラクタムを含有することにより、インクの密着性、耐擦性、及びアルコール耐性を良好なものとすることができる。
【0038】
N−ビニルカプロラクタムは、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、5〜20質量%含まれ、好ましくは6〜10質量%含まれる。モノマーAの含有量が上述の範囲内であることに加えて、N−ビニルカプロラクタムの含有量が上記範囲内であると、インクの密着性、耐擦性、及びアルコール耐性に優れたものとなる。
【0039】
(上記以外の重合性化合物)
上記以外の重合性化合物(以下、「その他の重合性化合物」という。)としては、従来公知の、単官能、2官能、及び3官能以上の多官能といった種々のモノマー及びオリゴマーが使用可能である。上記モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸やそれらの塩又はエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタンが挙げられる。また、上記オリゴマーとしては、例えば、直鎖アクリルオリゴマー等の上記のモノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0040】
また、他の単官能モノマーや多官能モノマーとして、N−ビニルカプロラクタム以外のN−ビニル化合物を含んでいてもよい。そのようなN−ビニル化合物として、例えば、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、及びアクリロイルモルホリン、並びにそれらの誘導体が挙げられる。
【0041】
その他の重合性化合物のうち、(メタ)アクリル酸のエステル、即ち(メタ)アクリレートが好ましく、2官能以上である多官能の(メタ)アクリレートがより好ましく、多官能のアクリレートがさらに好ましい。特に、本実施形態のインク組成物が、重合性化合物として、上記所定量のモノマーA及びN−ビニルカプロラクタムに加えて多官能アクリレートをも含むことで、インクの密着性、耐擦性、及びアルコール耐性に優れたものとなる。
【0042】
上記(メタ)アクリレートのうち、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0043】
上記(メタ)アクリレートのうち、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート、並びに、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート等のペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のジペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、及びトリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等のトリペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、及びテトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート等のテトラペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカ(メタ)アクリレート及びペンタペンタエリスリトールドデカ(メタ)アクリレート等のペンタペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート、並びにこれらのエチレンオキサイド(EO)付加物及びプロピレンオキサイド(PO)付加物のうち少なくともいずれか等、3官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0044】
これらの中でも、その他の重合性化合物は、上記のとおり、多官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。多官能(メタ)アクリレートの中でも、上記のペンタエリスリトール骨格を有する多官能(メタ)アクリレートが好ましく、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのうち少なくともいずれかがより好ましく、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートのうち少なくともいずれかがさらに好ましい。上記の場合、インクの粘度が低下し、かつ、インクにおける架橋密度が増大する。
【0045】
なお、単官能(メタ)アクリレートの中では、粘度及び臭気を低減させるため、フェノキシエチル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートのうち少なくとも一方が好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましく、フェノキシエチルアクリレートがさらに好ましい。
【0046】
上記その他の重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記その他の重合性化合物は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、5〜50質量%含まれるとよい。中でも多官能アクリレートは、インクの密着性、耐擦性、及びアルコール耐性に極めて優れるため、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、5〜20質量%含まれることが好ましく、8〜15質量%含まれることがより好ましい。
【0048】
以上、説明した重合性化合物は、インク組成物の総重量(100質量%)に対して、25〜65質量%含まれることが好ましい。
【0049】
〔重合禁止剤〕
本実施形態のインク組成物は、重合禁止剤を含んでもよい。重合禁止剤として、以下に限定されないが、例えば、p−メトキシフェノール、クレゾール、t−ブチルカテコール、ジ−t−ブチルパラクレゾール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、α−ナフトール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−ブチルフェノール)、及び4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール化合物、p−ベンゾキノン、アントラキノン、ナフトキノン、フェナンスラキノン、p−キシロキノン、p−トルキノン、2,6−ジクロロキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジカプロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジアシロキシ−p−ベンゾキノン、ヒドロキノン、2,5−ジーブチルヒドロキノン、モノ−t−ブチルヒドロキノン、モノメチルヒドロキノン、及び2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン等のキノン化合物、フェニル−β−ナフチルアミン、p−ベンジルアミノフェノール、ジ−β−ナフチルパラフェニレンジアミン、ジベンジルヒドロキシルアミン、フェニルヒドロキシルアミン、及びジエチルヒドロキシルアミン等のアミン化合物、ジニトロベンゼン、トリニトロトルエン、及びピクリン酸などのニトロ化合物、キノンジオキシム及びシクロヘキサノンオキシム等のオキシム化合物、フェノチアジン等の硫黄化合物が挙げられる。
【0050】
〔光重合開始剤〕
本実施形態のインク組成物は、光重合開始剤を含むことが好ましい。上述の重合性化合物として光重合性の化合物を用いることにより、光重合開始剤の添加を省略することが可能である。しかし、光重合開始剤を用いた方が、重合の開始を容易に調整することができ、好適である。
【0051】
上記の光重合開始剤は、放射線の照射による光重合によって、被記録媒体の表面に存在するインクを硬化させて画像を形成するために用いられる。ここで、前記放射線としては、γ線、β線、電子線、紫外線(UV)、可視光線及び赤外線が挙げられる。中でも、安全性に優れ、且つ光源にかかるコストを抑えることができるため、紫外線が好ましい。光重合開始剤としては、光のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重合を開始させるものであれば、制限はないが、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0052】
上記の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。
【0053】
これらの中でも、特にインクの硬化性を良好にすることができるため、アシルホスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物のうち少なくともいずれかが好ましく、アシルホスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物がより好ましい。
【0054】
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、及びビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドが挙げられる。
【0055】
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、BASF社製)、Speedcure TPO(Lambson製)、KAYACURE DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、及びユベクリルP36(UCB社製)などが挙げられる。
【0056】
上記光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
光重合開始剤は、放射線硬化速度を十分に発揮させ、且つ、光重合開始剤の溶け残りや光重合開始剤に由来する着色を避けるため、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、5〜20質量%含まれることが好ましい。
【0058】
特に、上記のとおり、インク組成物に含まれる光重合開始剤がアシルホスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物である場合、前記アシルホスフィンオキサイド化合物が、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、好ましくは7.0質量%以上含まれ、より好ましくは7.0〜15.0質量%含まれる。加えて、前記チオキサントン化合物が、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、好ましくは0.3質量%以上含まれ、より好ましくは0.5〜4.0質量%含まれる。この場合、インクの硬化性を極めて良好にすることができる。
【0059】
〔色材〕
本実施形態のインク組成物は、色材をさらに含むことが好ましい。色材は、顔料及び染料のうち少なくとも一方を用いることができる。
【0060】
(顔料)
本実施形態において、色材として顔料を用いることにより、インク組成物の耐光性を良好なものとすることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
【0061】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
【0062】
有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
【0063】
更に詳しくは、ブラックインクとして使用されるカーボンブラックとして、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(キャボット社(CABOT JAPAN K.K.)製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ(Degussa)社製)が挙げられる。
【0064】
ホワイトインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントホワイト 6、18、21が挙げられる。
【0065】
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180が挙げられる。
【0066】
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、又はC.I.ピグメントヴァイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
【0067】
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バット ブルー 4、60が挙げられる。
【0068】
また、マゼンタ、シアン、及びイエロー以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン 7,10、C.I.ピグメントブラウン 3,5,25,26、C.I.ピグメントオレンジ 1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63が挙げられる。
【0069】
上記顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
上記の顔料を使用する場合、その平均粒子径は300nm以下が好ましく、50〜250nmがより好ましい。平均粒子径が上記の範囲内にあると、インク組成物における吐出安定性や分散安定性などの信頼性に一層優れるとともに、優れた画質の画像を形成することができる。ここで、本明細書における平均粒子径は、動的光散乱法により測定される。
【0071】
(染料)
本実施形態において、色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0072】
上記染料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
色材の含有量は、優れた隠蔽性及び色再現性が得られるため、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、1〜20質量%が好ましい。
【0074】
〔分散剤〕
本実施形態のインク組成物が顔料を含む場合、顔料分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。その具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及びエポキシ樹脂のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。高分子分散剤の市販品として、味の素ファインテクノ社製のアジスパーシリーズ、アベシア社(Avecia Co.)から入手可能なソルスパーズシリーズ(Solsperse 36000等)、BYK社製のディスパービックシリーズ、楠本化成社製のディスパロンシリーズが挙げられる。
【0075】
〔スリップ剤〕
本実施形態のインク組成物は、優れた耐擦性が得られるため、スリップ剤(界面活性剤)をさらに含んでもよい。スリップ剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが特に好ましい。具体例としては、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(以上、BYK社製)を挙げることができる。
【0076】
〔その他の添加剤〕
本実施形態のインク組成物は、上記に挙げた添加剤以外の添加剤(成分)を含んでもよい。このような成分としては、特に制限されないが、例えば従来公知の、重合促進剤、浸透促進剤、及び湿潤剤(保湿剤)、並びにその他の添加剤があり得る。上記のその他の添加剤として、例えば従来公知の、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、放射線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤が挙げられる。
【0077】
[被記録媒体]
本実施形態の放射線硬化型インクジェット用インク組成物は、後述するインクジェット記録方法を利用して、被記録媒体上に吐出されること等により、記録物が得られる。この被記録媒体としては、パッケージ基材が好ましい。なぜなら、パッケージ基材等にマーキングする際に用いられるインクには、優れた密着性、耐擦性、及びアルコール耐性が求められるからである。なお、被記録媒体として、半導体基材のようなシリコン等の無機質材であってもよい。
【0078】
なお、上記で定義したように、パッケージ基材は、半導体素子等を封入する保護基材を意味し、半導体基材は、半導体素子等であって直接基材にもなるウエハーも含む意味である。そして、上記の半導体素子等を封入して製造されたものが電子部品(ICパッケージ)となる。この電子部品を一以上集積して構成されたものが電子機器となる。
【0079】
パッケージ基材の規格としては、例えば、PGA(Pin Grid Array)、DIP(Dual Inline Package)、SIP(Single Inline Package)、ZIP(Zigzag Inline Package)、DO(Diode Outline)パッケージ、及びTO(Transistor Outline)パッケージ等の挿入形パッケージ、並びにP−BGA(Plastic Ball grid array)、T−BGA(Tape Ball grid array)、F−BGA(Fine Pitch Ball grid array)、SOJ(Small Outline J−leaded)、TSOP(Thin Small Outline Package)、SON(Small Outline Non−lead)、QFP(Quad Flat Package)、CFP(Ceramic Flat Package)、SOT(Small Outline Transistor)、PLCC(Plastic leaded chip carrier)、LGA(Land grid array)、LLCC(Lead less chip carrier)、TCP(Tape carrier package)、LLP(Leadless Leadframe Package)、及びDFN(Dual Flatpack Non−lead)等の表面実装型パッケージが挙げられる。
【0080】
パッケージ基材の市販品として、例えば、東芝セミコンダクター社(Toshiba Semi−Conductor Co., Ltd.)製の汎用ロジックICパッケージ(SOP14−P−300−1.27A)、ルネサスエレクトロニクス社(Renesas Electronics Corporation)製の表面実装型パッケージ(UPA2350B1G)、シャープ社(Sharp Corporation)製の面実装型パッケージ(P−LFBGA048−0606)、及びローム社(ROHM Co., Ltd.)製のシリアルEEPROM(BR24L01A)が挙げられる。
【0081】
パッケージ基材の材質としては、電子部品本体へのインクの浸透を防ぐため、非吸収性材質が挙げられる。この非吸収性材質の具体例としては、以下に限定されないが、金、銀、銅、アルミニウム、鉄−ニッケル系合金、ステンレス、及び真鋳などの金属、並びに半導体(例えばシリコン)、炭化物、窒化物(例えば窒化珪素)、及びホウ化物などの無機物質、並びにシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリメチルメタアクリレート(PMMA)等の有機物質が挙げられる。
【0082】
中でも、インクとの密着性に優れるため、パッケージ基材としては、シリコーン樹脂又はエポキシ樹脂がより好ましい。このように、シリコーン樹脂又はエポキシ樹脂からなるパッケージ基材等を電子部品の封止材として用いることで、パッケージ基材の外面に、上記実施形態のインク組成物を好適に記録(マーキング)することができる。
【0083】
次に図1(b)に示すプライマー層50について説明する。プライマー層50にはラジカル反応性を有するカップリング剤を含む。カップリング剤がラジカル反応性を有するとは、ラジカル反応を生じて重合(高分子量化)に寄与する官能基や結合を有する、ということである。本実施形態に係る半導体装置100のプライマー層50には、下記に示す一般式で表される有機ケイ素化合物を含む。
【0084】
【化1】

【0085】
(式中、R1は重合可能な反応基を有する有機基、R2は炭素数1〜6の炭化水素基である。X1は加水分解性基であり、nは0または1である。)これら有機ケイ素化合物は、シランカップリング剤とも呼ばれ、樹脂パッケージ30と印刷マーク40との間に形成することにより樹脂パッケージ30と印刷マーク40との密着性能を向上させることができる。R1は重合可能な反応基を有する有機基であり、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシシクロヘキシル基、メルカプト基、シアノ基、イソシアネート基、アミノ基等の重合可能な反応基である。R2は炭素数1〜6の炭化水素基であるが、その具体的例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ビニル基、フェニル基等が挙げられる。またX1は加水分解可能な官能基でありその具体的なものとして、メトキシ基,エトキシ基,メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基,ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等が挙げられる。
【0086】
プライマー層50を形成するための組成物は、上述の有機ケイ素化合物であるシランカップリング剤を溶剤に希釈、調整し、インクジェットなどの印刷、もしくはディッピング法などにより印刷面30aに印刷、塗布した後、溶剤を蒸散させシランカップリング剤を含むプライマー層50が形成される。溶剤としては、水、アルコール類、エーテル類、芳香族類などが用いられるが、プライマー組成物中の各成分の安定性、相溶性、親和性などから、水、アルコール類が好ましい。
【0087】
本実施形態に係る半導体装置100へのマーク印刷には、R1の重合可能な反応基を有する有機基として、メルカプト基、エポキシシクロヘキシル基、イソシアネート基を有するシランカップリング剤が好適に用いられる。
【0088】
メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0089】
エポキシシクロヘキシル基を有するシランカップリング剤としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0090】
イソシアネート基を有するシランカップリング剤としては、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0091】
(第2実施形態)
第1実施形態に係る半導体装置100の印刷マーク40の印刷方法について説明する。図3は本実施形態に係る印刷方法を示すフローチャートである。
【0092】
〔S1:前処理工程〕
図4(a)に示すように、印刷前の半導体装置100aに対して、樹脂パッケージ30の印刷面30aを洗浄する前処理工程(S1)を行う。前処理工程(S1)は、本実施形態では活性光線Lを照射し印刷面30aの濡れ性を向上させる。活性光線としては、低電圧水銀灯200より600mJ/cm2のエネルギーの光線を180℃に加熱した雰囲気中において照射する。
【0093】
〔S2:プライマー剤塗布(印刷)工程〕
前処理工程(S1)が終了した後、プライマー剤塗布(印刷)工程(S2)に移行する。本実施形態においては、インクジェット装置による印刷によってプライマー層が形成される形態にて説明するが、これに限定されない。例えば、ディッピング法、噴き付け、あるいはスクリーン印刷やオフセット印刷などの印刷法であっても良い。
【0094】
図4(b)に示すように、プライマー剤塗布(印刷)工程(S2)は、インクジェット装置300に備える液滴吐出部300aより調整されたプライマー液Pを印刷面30a上に吐出し、プライマー塗布層50aを形成する。プライマー塗布層50aは、乾燥後に100〜200nmの厚みのプライマー層50となるように設定された塗布厚みで形成される。このとき、インクジェット装置300と半導体装置100aとは、相対的に移動させることにより、図2に示すように印刷マーク40に対して所定の形状で塗布(印刷)する。
【0095】
〔S3:乾燥工程〕
プライマー剤塗布(印刷)工程(S2)において印刷面30aに塗布(印刷)されたプライマー塗布層50aを、乾燥工程(S3)において溶剤を蒸散させ、シランカップリング剤を含むプライマー層50を形成する。乾燥工程(S3)における乾燥条件は、100℃雰囲気中に5分間放置する。なお、乾燥条件はプライマー剤の溶剤、シランカップリング剤の濃度などにより適宜決定すればよいが、半導体素子10、樹脂パッケージ30などにダメージを与えない条件範囲で決定する。
【0096】
〔S4:マーク印刷工程〕
次にマーク印刷工程(S4)に移行する。マーク印刷工程(S4)は、図4(c)に示すように、S2,S3工程によって形成されたプライマー層50上に所定の印刷マークとなるよう、インクジェット装置310に備える液滴吐出部310aより、調合された放射線硬化型インク液Qを吐出させ、印刷マーク層40aを形成する。印刷マーク層40aの層厚は、後述する印刷マーク40とした場合に識別可能となるように設定すればよい。
【0097】
〔S5:放射線照射工程〕
S4において、所定の印刷マークが印刷された後、放射線照射工程(S5)に移行する。本実施形態では、放射線として紫外線を用いた例を説明する。図4(d)に示すように、所定の印刷マークに形成された印刷マーク層40aに対して、発光ピーク波長が、好ましくは350〜400nmの範囲、より好ましくは365〜395nmの範囲にある放射線としての紫外線Uを紫外線照射装置400より照射する。
【0098】
また、照射エネルギーは、800mJ/cm2以下が好ましく、200〜700mJ/cm2がより好ましい。紫外線照射装置400の放射線源としては紫外線発光ダイオード(UV−LED)を用いることが好ましいが、これに限定されず紫外線レーザーダイオード(UV−LD)を用いても良い。
【0099】
〔S6:加熱工程〕
S5において、印刷マーク層40aを硬化させた後、さらに印刷マーク層40aの硬度を増すために加熱工程(S6)に移行する。加熱工程(S6)では、印刷マーク層40aが形成された半導体装置100を180℃、60分間の加熱をする。これにより図1に示す印刷マーク40を備える半導体装置100を得ることができる。なお、S5において印刷マーク40の硬度が十分に得られる場合には、加熱工程(S6)は行わなくても良い。
【0100】
上述の工程によって形成されるプライマー層50(図1参照)は、樹脂パッケージ30に対して高い密着性を有し、印刷マーク40はプライマー層50に対して高い密着性を有している。従って、印刷マーク40は、樹脂パッケージ30に対して高い密着性を実現することができる。
【0101】
なお、上記工程において、マーク印刷工程(S4)及び放射線照射工程(S5)を同じ工程内で行ってもよい。この場合、液滴吐出部310aに紫外線照射装置400を搭載し、半導体装置100a上に吐出した放射線硬化型インク液Qに対し、紫外線Uを照射してもよい。
【実施例】
【0102】
以下、本発明の実施形態を実施例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0103】
[組成物1〜4]
図5に示す成分を、図5に示す組成(単位:質量%)となるように添加し、これを常温で1時間混合撹拌して完全に溶解させた。これを、さらに5μmのメンブランフィルターでろ過して、各放射線硬化型インクジェットインク用組成物1〜4を得た。なお、図5に示す成分は以下のものを用いた。
〔重合性化合物〕
・N−ビニルカプロラクタム(BASF社製、図5ではNVCと略記した。)
・VEEA(アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、日本触媒社(Nippon Shokubai Co., Ltd.)製商品名、図5ではVEEAと略記した。)
・PET3A(ペンタエリスリトールトリアクリレート、大阪有機化学工業社(OSAKA ORGANIC CHEMICAL INDUSTRY LTD.)製商品名、図5ではPET3Aと略記した。)
・ビスコート#192(フェノキシエチルアクリレート、大阪有機化学工業社製商品名、図5ではPEAと略記した。)
〔光重合開始剤〕
・IRGACURE 819(BASF社製商品名、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、固形分100%、図5では819と略記した。)
・DAROCURE TPO(BASF社製商品名、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、固形分100%、図5ではTPOと略記した。)
〔スリップ剤〕
・シリコーン系表面調整剤 BYK−UV3500(ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、BYK社製商品名、図5ではUV3500と略記した。)
〔重合禁止剤〕
・p−メトキシフェノール(関東化学社(KANTO CHEMICAL CO., INC)製、図5ではMEHQと略記した。)
〔顔料〕
・R−630(酸化チタン、石原産業社(ISHIHARA SANGYO KAISHA, LTD.)製商品名、図5では酸化Tiと略記した。)
〔分散剤〕
・Solsperse 36000(LUBRIZOL社製商品名、図5ではSol36000と略記した。)
【0104】
[プライマー1〜9]
プライマー層を形成するプライマー液として、プライマー1〜9を、以下の溶剤に対してシランカップリング剤を図6に示す濃度に調整し、プライマー液を作成した。
〔溶剤〕
メシチレン(Mesitylene:1,3,5−trimethylbenzene)を溶剤として、以下のシランカップリング剤が1〜5質量%となるように希釈した。
〔シランカップリング剤〕
・2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランとして、エポキシシクロヘキシル(チッソ株式会社製)を用いた。
・3−メルカプトプロピルトリメトキシシランとして、メルカプトプロピル(チッソ株式会社製)。
・3−イソシアナートプロピルトリエトキシシランとして、イソシアナート(Gelest株式会社製)を用いた。
【0105】
[樹脂パッケージ基材]
パッケージ基材として、エポキシ樹脂(シャープ社製、面実装型パッケージ、型番「P−LFBGA048−0606」)を用いた。
【0106】
[実施例1〜15、比較例1〜5]
樹脂パッケージ基材を低圧水銀下にて前処理を行った。前処理を行った樹脂パッケージ基材上に、図7に示す実施例1〜15、および比較例1〜5に示すプライマー液をインクジェットプリンター(PX−7550S〔商品名〕、セイコーエプソン社(Seiko Epson Corporation)製)を用いて、塗布厚が100nmとなるようにベタパターン画像を印刷し、100℃で5分間の乾燥を行った(プライマー層の形成)。
【0107】
形成されたプライマー層の上に、インクジェットプリンター(PX−7550S〔商品名〕、セイコーエプソン社(Seiko Epson Corporation)製)を用いて、プライマー層が形成されたパッケージ基材上に、実施例1〜15、および比較例1〜5に示す組成物による印刷物の膜厚が10μmとなるようなベタパターン画像を印刷するとともに、以下の条件で放射線を照射させることでインクを硬化させた。放射線の照射条件は、波長395nm、照射強度400mW/cm2、最大積算照射量600mJ/cm2であった。さらに本硬化させるために、180℃で60秒間、加熱した。なお、上述のベタパターン画像は、記録解像度で規定される最小記録単位領域である画素の全ての画素に対してドットを記録した画像である。
【0108】
得られた記録物、即ちパッケージ基材上にインクが記録されて硬化、形成された図7に示す実施例1〜15、および比較例1〜5に示すものについて、下記の評価を室温下で行った。
【0109】
[評価項目]
各実施例及び比較例で調製した放射線硬化型インクジェット用インク組成物について、以下の方法により密着性を評価した。
【0110】
〔密着性〕
JIS K−5600−5−6(ISO2409)(塗料一般試験法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法))に準じて、上記の基材とベタ印刷により形成された画像との密着性の評価を行った。ここで、上記クロスカット法について説明する。
【0111】
切込み工具として単一刃切り込み工具(一般に市販されているカッター)と、単一刃切り込み工具を用いて等間隔に切り込むためのガイドと、を用意した。
【0112】
まず、塗膜に対して垂直になるように切込み工具の刃を当てて、記録物に6本の切り込みを入れた。この6本の切込みを入れた後、90°方向を変え、既に入れた切り込みと直交するよう、さらに6本の切り込みを入れた。
【0113】
次に、約75mmの長さになるよう透明付着テープ(幅25±1mm)を取り出し、塗膜に形成された格子状にカットした部分にテープを貼り、塗膜が透けて見えるように十分指でテープを擦った。次に、付着して5分以内に60°に近い角度で、0.5〜1.0秒で確実に引き離した。
【0114】
評価基準は以下のとおりである。◎及び○が実用上許容できる評価基準である。評価結果を図7に示す。
◎:どの格子の目にも剥がれがない。
○:格子の一部に剥がれが認められる。
△:格子の50%以上に剥がれが認められる。
×:全面に剥がれが認められる。
【0115】
図7に示す結果より、プライマー液におけるシランカップリング剤の濃度は1%以上で5%以下が好ましく、3%以下がなお好ましい。比較例4,5に示す結果から、シランカップリング剤を含むプライマー層を形成しても、N−ビニルカプロラクタム(図5に示す重合性化合物「NVC」)を含まない放射線硬化型インク(図5に示す組成物4)では、所定の密着性を得ることができない。しかし、N−ビニルカプロラクタム(図5に示す重合性化合物「NVC」)を5〜20%含む放射線硬化型インク(図5に示す組成物1,2,3)では、シランカップリング剤を含むプライマー層上に印刷されることで、高い密着性を得ることがでる。
【符号の説明】
【0116】
10…半導体素子、20…フレーム、30…樹脂パッケージ、40…印刷マーク、50…プライマー層、100…半導体装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージ基材または半導体基材を被記録媒体として、前記被記録媒体外表面に放射線硬化型インクをインクジェット装置により吐出し、所定パターンを印刷する印刷方法であって、
前記放射線硬化型インクは重合性化合物を前記放射線硬化型インクの総質量の25質量%以上65質量%以下を含み、前記重合性化合物はN−ビニルカプロラクタムを前記放射線硬化型インクの総重量の5質量%以上20質量%以下を含み、
前記被記録媒体の外表面と、前記放射線硬化型インクによる前記所定パターンの印刷層と、の間にプライマー層を形成する、
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記プライマー層は、メルカプト基を含むシランカップリング剤を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記プライマー層は、エポキシシクロヘキシル基を含むシランカップリング剤を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記プライマー層は、イソシアナート基を含むシランカップリング剤を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の印刷方法によって前記所定パターンが印刷された半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−192539(P2012−192539A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56259(P2011−56259)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】