説明

印刷方法

【課題】 比較的少数の色のインクを組合わせて、多くの色の表示を行うことができ、色インクのみで凹凸感も表現することができる印刷方法を提供する。
【解決手段】 (a)の本発明の印刷物1では、被印刷体2の表面に、スクリーン印刷で複数のインク層3a,3b,3c,3d,3e,…が順次形成され、積層状態の組合せで、多くの表示色4a,4b,4c,4d,4e,…を表現することができる。(b)の従来の印刷物11では、被印刷体2の表面に、多色のインクを調合して、それぞれインク層13a,13b,13c,13d,13eとして形成するけれども、インクの数が多くなり、版の数や必要な工程数が増大してしまう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多色のカラー印刷が可能な印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、凸版、平版、凹版のいわゆる三版式の印刷とともに、スクリーン版を用いるスクリーン印刷も行われている。三版式の印刷では、版画線の上にインクを載せ、これを被印刷体に転移させるのに対し、スクリーン印刷では、版画線の孔を通してインクを被印刷体に転移させる。したがって、使用可能なインクの種類が多くなる(たとえば、非特許文献1参照)。
【0003】
また、スクリーン印刷では、他の印刷技法に比較して、厚いインク層を形成することもできる。油絵の具を使用して作成される絵画を、忠実な色彩で再現することもできる。原画を異なる色彩の領域に区分し、各領域毎に色を再現するインクを調合し、色の数だけの版を使用してスクリーン印刷を行えばよい。各色のインク層は充分に厚く形成されるので、調合した色を確実に表示することができる。また、表面に透明で厚い層を形成するようにすれば、凹凸感も表すことができる。
【0004】
ただし、スクリーン印刷の場合、濃から淡へ、明から暗へ、また一つの色から別の色へと階調が変化するグラデーションの表現は、版の制約が多く、他の印刷方式と比較して困難がともなうとされている。
【0005】
【非特許文献1】日本スクリーン印刷技術協会編集委員会編、「新版スクリーン印刷ハンドブック」、昭和63年1月31日、p.1〜6,p.365〜368
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
色の表示は、色相、彩度および明度の違いで行われる。絵画などでは、ブラシなどの操作で、色の境界が必ずしも明確ではなく、自然な感じで階調が移り変るグラデーション領域も形成されている。グラデーションでの階調変化を滑らかに再現しようとすると、少しずつ色が異なる多くのインクが必要となるので、従来の印刷技法では、色は変えずに、ドット径を変える、またはドットパターンの分布密度の変化でグラデーションの階調を表現している。しかしながら、同一色のインクに関して、単一の濃度でドット径を変えて階調を表現するだけでは、グラデーションに滑らかさが不足してしまう。多くの色を調合して使い分ける場合は、必要な版の数が多くなり、印刷の工程数も多くなってしまう。
【0007】
さらにスクリーン印刷で凹凸感を出すために、透明な層を表面に形成するためには、透明な層形成用のスクリーン版も必要となる。透明層を1層だけ形成するだけでは、立体的な凹凸感は充分ではないので、複数の層を形成するようにすると、さらにスクリーン版と工程とが必要となる。
【0008】
本発明の目的は、比較的少数の色のインクを組合わせて、多くの色の表示を行うことができ、色インクのみで凹凸感も表現することができる印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、原色系を含む複数の色の透明インクを順次印刷してインク層を形成しながら、該複数までのインク層の積層状態の選択的な組合せで、該複数を超える数の色を表示可能にすることを特徴とする印刷方法である。
【0010】
本発明に従えば、透明インクを印刷するので、各インク層は厚く形成することができる。形成されるインク層は原色系を含んで透明であり、下地にあるインク層の色の影響を受けるので、複数層までの組合せで多くの色を表現することができる。色を透明インクの組合せと印刷パターンとで表示するので、比較的少数の色のインクを組合わせて、多くの色の表示を行うことができ、色インクのみで凹凸感も表現することができる。
【0011】
また本発明は、前記色を表示するための前記積層状態の組合せを、前記透明インクの印刷順序を予め定めておいた上で、表示可能な各色毎に、前記複数までのインク層の組合せと、各インク層の印刷パターンとを、予め標準化しておき、
該標準化に従って各透明インクの層を印刷によって選択的に形成しながら、各色の表示を行うこと特徴とする。
【0012】
本発明に従えば、複数の透明インクの組合せと、インク層を形成する印刷パターンとを、表示する色に対して予め標準化しておくので、安定して色の再現を行うことができる。被印刷体上に、透明インクの層を順次印刷する過程で、表示する色に応じて、組合せを選択するので、多くの透明インクを使用する色の部分には多くのインク層が積層され、深い色調と濃厚感を表現することができる。積層厚が色によって異なるので、色の違いとともに、凹凸感の違いを表現することができる。
【0013】
また本発明で、前記原色系には、濃度の異なる複数の透明インクが用意され、
同色系で濃度の異なる複数の透明インクを、高濃度側が上になるように積重ねることで、滑らかなグラデーションを再現することを特徴とする。
【0014】
本発明に従えば、同色系で濃度が異なる透明インクの層を重ねることで、濃度の急激な変化がなく、滑らかなグラデーションで、自然な変化を表現することができる。高濃度側が上になるように積重ねるので、濃色を重厚に表現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、印刷によって形成されるインク層は透明であるので、下地にあるインク層の色の影響を受け、原色系を含む複数のインク層の積層状態の選択的な組合せで、比較的少数の色のインクを組合わせでも、多くの色の表示を行うことができ、色インクのみで凹凸感も表現することができる。
【0016】
また本発明によれば、表示する色に対し、透明インクの組合せと、組合わせるドットのパターンとを、予め標準化しておき、安定して色を再現することができる。多くの透明インクを使用する色の部分には多くのインク層が積層され、深い色調と濃厚感を表現することができ、凹凸感の違いも表現することができる。
【0017】
また本発明によれば、同色系で濃度が異なる透明インクの層を重ね、滑らかなグラデーションで、自然な変化を表現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の実施の一形態で形成される印刷物と従来の印刷物とを、模式的な断面構成で比較して示す。図1(a)に示す本発明の印刷物1では、被印刷体2の表面に、複数のインク層3a,3b,3c,3d,3e,…が順次スクリーン印刷で形成されている。複数のインク層3a,3b,3c,3d,3e,…の積層状態の組合せで、インク層3a,3b,3c,3d,3e,…の層数よりも多くの表示色4a,4b,4c,4d,4e,…を表現することができる。各インク層3a,3b,3c,3d,3e,…は、それぞれ透明なインクをスクリーン印刷して形成している。透明なインクには、インク皮膜を作る成分である樹脂類や、着色料、助剤などが含まれる。樹脂類としては熱可塑性や熱硬化性、または紫外線硬化性などの合成樹脂で、無色透明、またはこれに近いものを使用し、無機顔料や有機顔料、増量剤などを配合して、濃度や透明度が調整される。
【0019】
図1(b)は、従来の印刷物11を示す。従来の印刷物11では、被印刷体2の表面に、複数のインク層13a,13b,13c,13d,13e,…を、各色の領域毎に並べてカラー画像を表示する。インク層13a,13b,13c,13d,13e,…は、C(シアン)、M(マゼンタ)およびY(イエロー)の三原色とK(ブラック)との基本的な4色を含む。各原色とは異なる色は、複数の原色のインクをドットパターンなどとして組合せて表示する。インクジェット方式の印刷などでは、原色系のインクとして、濃度の異なる複数の色を用いる場合もある。スクリーン印刷やオフセット印刷では、原色のドットパターンの組合せで色を表示するのではなく、予め表示する色に合わせてインクを調合しておき、調合した色で、直接インク層を形成することもできる。ただし、インクの数が多くなり、版の数や必要な工程数が増大してしまう。
【0020】
図2は、インク層23a,23b,23c;33a,33b,33cの積層状態の組合せで、インク層23a,23b,23c;33a,33b,33cの数よりも多くの色34a,34b,34c,34d,34e,34f,34gを表示可能な原理を示す。図2(a)に示すように、被印刷体2の表面に、第1の色23でドット密度が異なる複数のインク層23a,23b,23cを形成し、第1の色33でドット密度が異なる複数のインク層33a,33b,33cを形成する。たとえば、インク層23a,33aは、ベタ塗りであり、インク層23b,33bは、大径のドットであり、インク層23c,33cは小径のドットであるとする。第2の色のインク層33aは、第1の色のインク層23a,23bの上に形成する。第2の色のインク層34bは、第1の色のインク層23b,23cの上に形成する。第2の色のインク層33cは、第1の色のインク層23cと被印刷体2の表面上とに形成する。第1の色のインク層23aには、第2の色のインク層33aに覆われない部分があり、その部分は色34aとして見える。第2の色のインク層33aは、下地が第1の色のインク層23aの部分と、第1の色のインク層23bの部分とがあり、異なった色34b,34cとして見える。第2の色のインク層33bについても、下地の第1の色のインク層23b,23cの違いを反映して、異なる色34d,34eとして見える。第2の色のインク層33cは、第1の色のインク層12cと被印刷体2の表面との下地の違いを反映して、異なる色34f,34gとして見える。
【0021】
図2(b)は、図2(a)の2色のインク23,33についての組合せで実現される表示色を示す。「a」、「b」、「c」は、インク層23a,33a;23b,33b;23c,33cの参照符のうち、参照番号の後に負荷している符号に対応し、印刷パターンを示す。なお、たとえば第2の色33aは、図2(a)のように、第1の色23a,23bばかりではなく、第1の色23cや被印刷体2の表面に直接形成することもできる。したがって図2(b)の組合せは可能な全部を示すものではなく、図2(a)に対応する部分的な範囲のみを示している。図2(a)のように、各インク層23a,23b,23c;33a,33b,33cがそれぞれ3つの印刷パターンに分けて印刷される場合、印刷されない場合を含めると、上側の第2の色33の各インク層33a,33b,33cは、下側の第1の色23として4種類と組合わせることができる。下側の第1の色23の各インク層23a,23b,23cのみの場合もある。全くインク層を形成しない被印刷体2の表面色の場合もある。
【0022】
したがって、全ての可能な組合せで表示可能な色は、4×4=16種類となる。たとえば、C(シアン)系2色、M(マゼンタ)系2色、Y(イエロー)系2色とK(ブラック)1色とを用いると、合計7色を用いることになる。図2(a)と同様に、各色で3種類の印刷パターンを使用すると、4×4×4×4×4×4×4=16384であり、組合せの全部を実現することができなくても、約16000色程度の表示が可能となる。CMYの各原色の複数色は、たとえば濃度を異ならせればよい。各原色を3色以上にして、さらに実現可能な色の数を増加させることもできる。
【0023】
以上のような多くの色の数を、図1(b)に示すような従来の印刷技法で実現するとすれば、ある程度はドットパターンや網点などの組合せでグラデーションを実現しても、100以上の多くの版と工程とを必要とする。本発明による図1(a)の印刷技法では、CMYの各原色を2色とする場合、2+2+2+1=7色分の版とスクリーン印刷工程とを実行すればよい。
【0024】
なお、図2(a)で、第1の色23と第2の色33とを積層する順序を変えると表示色も変り、さらに多くの色を表示することができる。すなわち、透明インクをスクリーン印刷するので、各インク層23a,23b,23c;33a,33b,33cは厚く形成することができる。形成されるインク層23a,23b,23c;33a,33b,33cはは透明であるので、下地にあるインク層の色の影響を受け、複数層の組合せで多くの色34a,34b,34c,34d,34e,34f,34gを表現することができる。
【0025】
しかしながら、同一の印刷物1でインク層の積層順序を変えるためには、同一の色のインクを複数回使用し、各回で版を変更することが必要となる。そこで、表示する色に対する複数の透明インクの組合せと、色を組合わせるドットのパターンとを、複数の透明インクの印刷順序も含めて予め標準化しておく。この標準化では、同色系の色では、濃淡の違いに応じ、淡色側を先に印刷し、濃色側を後で印刷するようにする。原色系の違いも含めて、使用する色とその印刷順序とを予め設定して標準化しておく。標準化に従って各透明インクの層をスクリーン印刷によって選択的に形成しながら、各色の表示を行う。
【0026】
すなわち、複数の透明インクの組合せと、色を組合わせるドットのパターンとを、表示する色に対して予め標準化しておくので、安定して色の再現を行うことができる。被印刷体2上に、透明インクのインク層23a,23b,23c;33a,33b,33cを順次スクリーン印刷する過程で、表示色34a,34b,34c,34d,34e,34f,34gに応じて、組合せを選択するので、多くの透明インクを使用する色の部分には多くのインク層23a,23b,23c;33a,33b,33cが積層され、深い色調と濃厚感を表現することができる。積層厚が色によって異なるので、色の違いとともに、凹凸感の違いを表現することができる。
【0027】
図3は、図1(a)に示すような印刷物1を製造する概略的な手順を示す。ステップs1では、印刷すべき原稿の画像入力を行う。原稿の画像は、原画からカラースキャナで読込んで入力することができる。また、コンピュータグラフィックスとして、画像データを直接作成することもできる。ステップs2では、入力された画像について、どのような色彩の部分に分けられるかの色彩分析を行う。色彩分析では、画像上で一定の色とみなされる領域が図2(a)に示すような複数の表示色34a,34b,34c,34d,34e,34f,34gのいずれに属するかを判定する。領域の表示色34a,34b,34c,34d,34e,34f,34gのいずれに属するかが判定されると、図2(b)に示すように、その表示色34a,34b,34c,34d,34e,34f,34gを実現するインク23,33とドットのパターンとが決る。次のステップs3では、各インク23,33に対応して、スクリーン印刷版を製造する製版を行う。各色のスクリーン印刷版では、標準化されたドットパターンで階調が表示される。次のステップs4では、標準化に従ってインク23,33を順次的に使用し、各インク毎に製造されているスクリーン印刷版を使用して多色のスクリーン印刷を行う。1つの色でスクリーン印刷を行った後では、インクが乾燥してインク層が形成されてから次の色でのスクリーン印刷を行う。
【0028】
本実施形態のように、複数回のスクリーン印刷で表示色を得る場合、スクリーン印刷の工程間で、被印刷体2に対するスクリーン印刷版の位置がずれると、表示色も変ってしまう。このため、スクリーン印刷装置で被対象物2にスクリーン印刷を行う際には、被対象物の位置ずれが生じないようにする必要がある。また、1つのインクを被対象物2の表面にスクリーン印刷する毎に、充分にインクを乾燥させて、インク層23a,23b,23c;33a,33b,33cを形成させなければならない。下側のインク層23a,23b,23cが乾燥不充分であると、上側のインク層33a,33b,33cとの間で混色が生じ、目的とする表示色34a,34b,34c,34d,34e,34f,34gとは異なる色で表示されてしまうおそれがある。ただし、乾燥中に被印刷体2やインク層23a,23b,23c;33a,33b,33cが伸縮したり変形したりすると、次のインクのスクリーン印刷時に位置ずれが生じてしまうので、工程管理を充分に行う必要がある。
【0029】
図4は、(a)で本発明による印刷物1の製造単価を、従来の多色シルクスクリーン印刷であるシルク版画、およびインクジェット印刷との間で、印刷枚数を変えながら比較する例を示す。実線が本発明の印刷物1について示し、一点鎖線は、図1(b)に示すような多色シルク版画について示し、破線はインクジェット印刷について示す。従来の多色シルク版画は、多くの版と工程とを要するので、単価は高くなる。インクジェット印刷は、版が不要であるので、初期の単価は低く、印刷枚数によらず、ほぼ一定となる。ただし、インクとしてジェットを良好に形成しうるものを使用する必要があり、インクのコストは比較的高くなる。本発明による印刷物1では、印刷枚数が多くなると、版に対する費用の負担が減少し、単価は低下し、この例では、約100枚以上になると、インクジェット印刷よりも単価は低下する。
【0030】
図4(b)は、印刷物1の印刷枚数に応じて必要となる制作期間を実線で、一点鎖線の従来の多色シルク版画、および破線のインクジェット印刷と比較して示す。印刷物1や従来の多色シルク版画では、版を必要とする分だけ、版が不要なインクジェット印刷に比較して、初期の制作期間が長くなり、印刷枚数が少なければ、インクジェット印刷よりも長期間を要する。ただし、版を使用しての印刷となるので、本発明の印刷物1に対する印刷自体は短時間で終了する。したがって、印刷枚数が多ければ、インクジェット印刷よりも印刷速度が速くなり、制作期間も短縮される。インクジェット印刷では、ヘッドが移動して被印刷体の表面を走査しながら印刷を行うので、印刷枚数が多くなると、枚数に正比例して製作期間も対応して長くなってしまう。本発明の印刷物1では、複数回のスクリーン印刷と乾燥とを繰返すけれども、印刷枚数が多くなると、1つの色の印刷と乾燥とを連続的に行い、100枚等の一定以上のロット枚数の場合、次の色の印刷に移る段階では、先に印刷したもののインク層の乾燥が終了しており、直ちに次の色の印刷を行うことができ、さらに後で印刷するものの順番になるころにはその乾燥も終了しているので、乾燥時間が必要であっても、その影響を無視することができるようになる。
【0031】
図5は、本発明の印刷物1の多色スクリーン印刷、従来の多色シルクスクリーン印刷によるシルク版画、およびインクジェット印刷の各印刷技法で得られる特性評価を比較して示す。原画の再現性、表現の細かさ、色の階調、およびグラデーション表現では、本発明とインクジェットとが優良であり、シルク版画は良好である。インクの厚みの凹凸感では、インク層を積層する本発明が優良であり、スクリーン印刷として厚いインク層を得ることができるシルク版画が良好である。インクジェットでは、インクの厚みを厚くすることはできない。色の深み濃厚感では、スクリーン印刷として厚いインク層を得ることができる本発明とシルク版画とが優良であり、インクジェットでは濃厚感を得ることは困難である。耐候性(色あせ・温湿度)については、耐光性がある顔料を充分に使用することができる本発明とシルク版画とが優良である。インクジェットは、ノズルに詰るような粒子が大きい顔料を使用することは困難である。温湿度による影響は、本発明やシルク版画はインク層が厚く形成されるので影響を受けにくく、優良である。インクジェットでは、細かいドットパターンが温湿度の変化の影響を受けるおそれがある。
【0032】
以上のように、本発明の印刷物1では、他の印刷技法と、原画の再現性、表現の細かさ、色の階調、グラデーション表現、インクの厚み・凹凸感および色の深み・濃厚感などの特性レベル評価を比較しても、いずれの項目でも優良であることが判る。また、耐候性などの印刷面の物理的耐性評価でも、他の印刷技法と比較して、優良であることが判る。
【0033】
さらに、印刷物1では、CMYの各原色系に、濃度の異なる複数の透明インクが用意され、同色系で濃度の異なる複数の透明インクを積重ねることで、滑らかなグラデーションで、濃度の急激な変化がなく、自然な変化を表現することができる。さらに高濃度側が上になるように積重ねるので、濃色を重厚に表現することができる。
【0034】
なお、印刷物1の表面にクリアの印刷を行ったり、一部に不透明色や金属粉や金属箔などを付加することもできる。また、スクリーン印刷は厚いインクの層を形成するので好ましいけれども、他の印刷技法にも、同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の一形態で形成される印刷物と従来の印刷物とを比較して示す模式的な断面図である。
【図2】インク層の積層状態の組合せで、インク層の数よりも多くの色を表示可能な原理を示す模式的な断面図および図表である。
【図3】図1(a)に示すような印刷物1を製造する概略的な工程を示す製造行程図である。
【図4】本発明による印刷物1の製造単価および制作期間を、従来の多色シルク版画、およびインクジェット印刷との間で、印刷枚数を変えながら比較する例を示すグラフである。
【図5】本発明の印刷物1の多色スクリーン印刷、従来のシルク版画、およびインクジェット印刷の各印刷技法で得られる特性評価を比較して示す図表である。
【符号の説明】
【0036】
1 印刷物
2 被印刷体
3a,3b,3c,3d,23,23a,23b,23c,33a,33b、33c インク層
4a,4b,4c,4d,4e,4f,34a,34b,34c,34d,34e,34f,34g 表示色

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原色系を含む複数の色の透明インクを順次印刷してインク層を形成しながら、該複数までのインク層の積層状態の選択的な組合せで、該複数を超える数の色を表示可能にすることを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記色を表示するための前記積層状態の組合せを、前記透明インクの印刷順序を予め定めておいた上で、表示可能な各色毎に、前記複数までのインク層の組合せと、各インク層の印刷パターンとを、予め標準化しておき、
該標準化に従って各透明インクの層を印刷によって選択的に形成しながら、各色の表示を行うこと特徴とする請求項1記載の印刷方法。
【請求項3】
前記原色系には、濃度の異なる複数の透明インクが用意され、
同色系で濃度の異なる複数の透明インクを、高濃度側が上になるように積重ねることで、滑らかなグラデーションを再現することを特徴とする請求項1または2記載の印刷方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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