説明

印刷材収容体および印刷システム

【課題】簡単な構成で情報を記録できる印刷材収容体を提供する。あるいは、印刷装置の構成の簡略化、または、処理の効率化を図る。
【解決手段】印刷材収容体は、書込部を備えた印刷装置に装着される。書込部は、書込部と印刷材収用体とが第1の方向に相対移動して、印刷材収容体に情報を書き込む。印刷材収用体は、印刷材収容体の使用の程度に関する、更新され得る第1の情報を、非電子的な方法を用いて、更新可能に記録するための第1の記録部と、印刷材収容体に関係する情報であって、印刷装置の動作に関する、更新され得る第2の情報を、非電子的な方法を用いて、更新可能に記録するための第2の記録部とを備える。第1の方向への相対移動が開始される前の書込部と印刷材収用体との相対位置から、印刷材収用体が書込部に対して相対移動する方向に向かって、第2の記録部、第1の記録部の順に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷材収容体に情報を記録する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置に装着される印刷材収容体に半導体メモリーを搭載する技術が提案されている。この半導体メモリーには、例えば、印刷材収容体に収容された印刷材の色の種別や、印刷材の残量が記録される。印刷材の色の種別を印刷材収容体側で記録することで、印刷装置は、装着された印刷材収容体の色の種別が適正であるか否かを判断できる。また、印刷材の残量を印刷材収容体側で記録することで、ユーザーによって、印刷材収容体が印刷装置から一旦取り外され、再度、装着された場合であっても、印刷装置は、当該印刷装置が採用するインク残量検出方式の種類によらず、インク残量を適正に把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−34946号公報
【特許文献2】特開2010−31106号公報
【特許文献3】特開平6−255120号公報
【特許文献4】特開2000−218816号公報
【特許文献5】特開2003−11469号公報
【特許文献6】特開2010−18024号公報
【特許文献7】特開2011−56739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半導体メモリーを搭載する印刷材収容体は、その構造が比較的複雑となる。また、環境対応の観点からも従来の半導体メモリーよりも環境負荷の低い代替技術に置換することが望ましい。かかる印刷材収容体を装着する印刷装置についても同様である。そのため、簡単な構成で情報を記録できる印刷材収容体が求められる。また、印刷装置についても構成を簡略化することや、処理を効率化することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]印刷装置に装着される印刷材収容体であり、前記印刷装置として、前記印刷材収容体に情報を書き込んで記録する書込部であって、前記書込部と前記印刷装置に装着された前記印刷材収用体とが第1の方向に相対移動することにより、前記印刷材収容体に前記情報を書き込んで記録する書込部を備えた印刷装置に装着される印刷材収容体であって、前記印刷材収容体の使用の程度に関する、更新され得る第1の情報を、非電子的な方法を用いて、更新可能に記録するための第1の記録部と、前記印刷材収容体に関係する情報であって、前記印刷装置の動作に関する、更新され得る第2の情報を、非電子的な方法を用いて、更新可能に記録するための第2の記録部とを備え、前記第1の記録部および前記第2の記録部は、前記印刷材収容体が前記印刷装置に装着された状態において、前記第1の方向への前記相対移動が開始される前の前記書込部と前記印刷材収用体との相対位置から、前記印刷材収用体が前記書込部に対して相対移動する方向に対して、前記第2の記録部が手前側に、前記第1の記録部が奥側となるように前記印刷材収容体上に配置された印刷材収容体。
【0007】
かかる印刷材収容体によれば、第1の情報および第2の情報は、非電子的な方法を用いて記録されるので、印刷材収容体および印刷装置の構成は、比較的簡単なものとなる。第1の情報は、例えば、印刷装置が、印刷材収容体の使用の程度を把握するために利用される。第2の情報は、例えば、印刷装置や印刷材収用体の製造業者が印刷材収用体を回収した際に、印刷装置または印刷材収用体の品質向上の検討に利用することができる。適用例1の印刷材収容体によれば、第1の記録部に書き込みを行う際の書込部と印刷材収用体との相対移動の距離を、第2の記録部に書き込みを行う際の書込部と印刷材収用体との相対移動の距離よりも短くすることができる。ここで、第1の情報は、概して、第2の情報よりも高い頻度で更新されることが求められる。したがって、更新頻度が相対的に高い第1の情報を書き込む際の処理速度を高めて、処理を効率化および高速化することができる。
【0008】
[適用例2]前記印刷装置として、前記印刷材収容体に記録された情報を読み取る読取部であって、前記読取部と前記印刷装置に装着された前記印刷材収用体とが第2の方向に相対移動することにより、前記印刷材収容体に記録された前記情報を読み取る読取部を備えた印刷装置に装着される適用例1記載の印刷材収容体であって、前記印刷材収容体を識別するための識別情報が記録された識別情報記録部を備え、前記印刷材収容体が前記印刷装置に装着された状態において、前記識別情報記録部は、前記第1の記録部および前記第2の記録部よりも、前記第2の方向への前記相対移動が開始される前の前記読取部と前記印刷材収用体との相対位置から、前記読取部が前記印刷材収用体に対して相対移動する方向側に配置された印刷材収容体。
【0009】
かかる構成の印刷材収容体によれば、第1の記録部、第2の記録部および識別情報記録部についての適用例2以外の配置と比べて、読取部と印刷材収用体とが相対移動して、識別情報記録部に記録された識別情報を読み込む際の相対移動の距離が長くなることを抑制することができる。したがって、印刷装置が認証情報を読み込む際の処理速度を高めて、処理を効率化および高速化することができる。なお、第2の方向は、第1の方向と同一の方向であってもよいし、異なる方向であってもよい。
【0010】
[適用例3]前記第1の情報は、前記印刷材収容体に収容された印刷材の残量に関する情報である適用例1または適用例2記載の印刷材収容体。
【0011】
印刷材の残量に関する情報は、比較的高い頻度での更新が求められる。したがって、適用例3の印刷材収容体によれば、適用例1の効果を好適に奏する。ユーザーによって、印刷材収容体が印刷装置から一旦取り外され、再度、装着された場合であっても、印刷装置は、印刷装置が採用する印刷材の残量検出方式の種類によらず、印刷材の残量を適正に把握することができる。具体的には、例えば、印刷材の使用量をカウントすることで、印刷材の残量を検出する方式を採用する印刷装置においても、印刷材の残量を適正に把握することができる。また、印刷材の残量に関する情報は、ユーザーにとって有用な情報であるので、印刷材の残量に関する情報を視認可能に第1の記録部に記録する構成とすれば、ユーザーの利便性が向上する。
【0012】
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれか記載の印刷材収容体であって、前記第2の情報は、前記印刷材収容体に収容された前記印刷材を使用して前記印刷装置において実行されたメンテナンスの履歴に関連するメンテナンス情報、前記印刷材収容体に関して前記印刷装置において検出したエラーの履歴に関するエラー情報、および、前記印刷材収容体の着脱履歴に関する着脱情報のうちの少なくとも1つを含む印刷材収容体。
【0013】
適用例4が特定する各種情報は、印刷装置や印刷材収用体の製造業者が印刷材収用体を回収した際に、好適に利用することができる。したがって、適用例4の印刷材収容体の構成によれば、製造業者の利便性が向上する。また、これらの各種情報は、第1の情報と比べて、更新頻度が高いレベルで求められない。したがって、適用例4の印刷材収容体によれば、適用例1の効果を好適に奏する。
【0014】
[適用例5]前記第2の記録部において、前記第2の情報は、視認不可能、かつ、機械的に読み取り可能に記録される適用例1ないし適用例4のいずれか記載の印刷材収容体。
【0015】
第2の情報は、ユーザーにとって必ずしも必要ではないが、ユーザー以外の者にとって有用となる情報である。適用例5の印刷材収容体によれば、かかる第2の情報を不可視に記録するので、ユーザーが混乱する状況を回避できる。例えば、第2の情報が視認されて、ユーザーが、その情報が何を意味するのか気になるようなことがない。その結果、ユーザーの利便性が向上する。
【0016】
[適用例6]適用例5記載の印刷材収容体であって、前記第2の記録部は、感熱材料の一部分の領域が熱を受けて変色することによって、前記第2の情報が記録される第1の層であって、前記変色が生じていない領域の一部分が前記熱を受けることによって、前記第2の情報が更新される第1の層と、前記第1の層よりも外方側に配置され、可視光線のうちの少なくとも一部の波長領域の光線を吸収するとともに、近赤外光線が透過する性質を有する第2の層とを備えた印刷材収容体。
【0017】
かかる構成の印刷材収容体によれば、第1の層に記録された第2の情報を、簡単な構成で、視認不可能、かつ、機械的に読み取り可能に記録することができる。
【0018】
[適用例7]印刷装置と、該印刷装置に装着される印刷材収用体とを備えた印刷システムであって、前記印刷材収用体は、前記印刷材収容体の使用の程度に関する、更新され得る第1の情報を、非電子的な方法を用いて、更新可能に記録するための第1の記録部と、前記印刷材収容体に関係する情報であって、前記印刷装置の動作に関する、更新され得る第2の情報を、非電子的な方法を用いて、更新可能に記録するための第2の記録部とを備え、前記印刷装置は、前記第1の記録部に前記第1の情報を書き込んで記録するとともに、前記第2の記録部に前記第2の情報を書き込んで記録する書込部であって、該書込部と前記印刷装置に装着された前記印刷材収用体とが一定の方向に相対移動することにより、前記第1の記録部への前記第1の情報の書き込み、および、前記第2の記録部への前記第2の情報の書き込みを行う書込部を備え、前記第1の記録部および前記第2の記録部は、前記印刷材収容体が前記印刷装置に装着された状態において、前記第1の方向への前記相対移動が開始される前の前記書込部と前記印刷材収用体との相対位置から、前記印刷材収用体が前記書込部に対して相対移動する方向に対して、前記第2の記録部が手前側に、前記第1の記録部が奥側となるように前記印刷材収容体上に配置された印刷システム。
【0019】
かかる構成の印刷システムは、適用例1の印刷材収容体と同様の効果を奏する。適用例7の印刷システムに、適用例2〜6の構成を適用することも可能である。
【0020】
また、本発明は、上述した形態のほかに、印刷材収容体への情報記録方法、第1の記録部および第2の記録部を少なくとも備えるラベル等の形態でも実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】印刷装置20の概略構成を示す説明図である。
【図2】印刷ヘッドユニット60にインクカートリッジ70aを装着した状態を示す斜視図である。
【図3】インクカートリッジ70aに貼り付けられたラベルLAを示す説明図である。
【図4】識別情報記録部130の断面構成を示す説明図である。
【図5】第2の記録部120の断面構成と、情報が更新される様子とを示す説明図である。
【図6】インクカートリッジ70に貼り付けられたラベルLAの表示態様の変化を示す説明図である。
【図7】第2の記録部120に記録された情報の読み取り、および、情報の記録の方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
A.実施例:
図1は、本発明の印刷装置の実施例としてのプリンター20の概略構成を示す。プリンター20は、制御ユニット30と、印刷ヘッドユニット搬送機構40と、紙搬送機構50と、印刷ヘッドユニット60と、メンテナンスユニット65と、読取ユニット80と、書込ユニット90と、操作パネル98と、メモリーカードスロット99とを備えている。
【0023】
制御ユニット30は、CPU31、RAM37、EEPROM38を備える。制御ユニット30は、プリンター20の動作全般を制御する。CPU31は、不揮発性記憶媒体としてのEEPROM38に記憶されたプログラムを、揮発性記憶媒体としてのRAM37に展開し、実行することにより、出力部32、残量検出部33、エラー検出部34、着脱検出部35としても機能する。これらの各機能部の詳細については後述する。
【0024】
印刷ヘッドユニット搬送機構40は、モーター41、駆動ベルト42、プーリー43およびシャフト44を備える。シャフト44は、後述するプラテン52の軸と平行に設けられる。このシャフト44は、印刷ヘッドユニット60を摺動可能に保持する。印刷ヘッドユニット搬送機構40は、モーター41を駆動させることにより、印刷ヘッドユニット60をシャフト44に沿って、つまり、プラテン52の軸方向に往復動させる。この印刷ヘッドユニット60の往復道の方向を主走査方向ともいう。
【0025】
紙搬送機構50は、モーター51とプラテン52とを備えている。紙搬送機構50は、モーター51を駆動させることにより、印刷媒体Pを搬送する。印刷媒体Pは、主走査方向と直交する方向に搬送される。プラテン52上の印刷ヘッド61と対向する位置において、印刷媒体Pが搬送される方向を副走査方向ともいう。
【0026】
印刷ヘッドユニット60は、印刷ヘッド61とフォルダー62とを備えている。フォルダー62には、印刷材収容体としてのインクカートリッジが装着される。インクカートリッジには、印刷材としてのインクが収容される。フォルダー62は、インクカートリッジを着脱可能に構成される。本実施例では、インクカートリッジは、重力方向の上方からフォルダー62に装着される。また、本実施例では、6つのインクカートリッジ70a〜70fがフォルダー62に装着される。インクカートリッジ70a〜70fには、相互に性状が異なるインクが収容される。本実施例では、インクカートリッジ70a〜70fは、シアンインク、マゼンタインク、イエロインク、ブラックインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインクをそれぞれ収容する。フォルダー62に装着可能なインクカートリッジの数は、1つ以上であればよい。また、同一の性状のインクが収容される複数のインクカートリッジがフォルダー62に装着されてもよい。以下の説明において、インクカートリッジ70a〜70fを総称して、インクカートリッジ70ともいう。また、インクカートリッジ70a〜70fの構成要素を総称する場合には、「a」〜「f」の文字を除いた符号を用いて呼ぶこととする。
【0027】
印刷ヘッド61の下部(プラテン52側)には、上述の各色のインクに対応するノズル列が形成されている。フォルダー62にインクカートリッジ70a〜70fを装着すると、インクカートリッジ70a〜70fから印刷ヘッド61へのインクの供給が可能となる。印刷ヘッド61は、インクカートリッジ70a〜70fからインクの供給を受けて、インクを印刷媒体Pに吐出する。
【0028】
メンテナンスユニット65は、インクカートリッジ70に収容されたインクを使用してメンテナンス動作を行う機構である。メンテナンスユニット65は、印刷媒体Pが配置される位置から退避した位置に設けられる。本実施例では、メンテナンスユニット65は、メンテナンス動作として、フラッシングとクリーニングとを実行可能に構成されている。フラッシングとは、印刷ヘッド61のインク吐出口の乾燥を防止するために、インクを吐出する動作である。インクは、メンテナンスユニット65が備えるインク回収ボックスに向けて吐出される。クリーニングとは、印刷ヘッド61が備えるノズルに生じた吐出不良、つまり、ノズルの目詰まりを解消する動作である。メンテナンスユニット65は、ヘッドキャップおよび吸引ポンプを備えている。クリーニングでは、印刷ヘッドユニット60をヘッドキャップの位置まで移動させた状態で、印刷ヘッド61の下面(ノズルが形成される面)にヘッドキャップを装着し、ヘッドキャップ内部を吸引ポンプで吸引することで、ノズルの目詰まりを解消する。クリーニングにより、所定量のインクが消費される。
【0029】
かかるフラッシングおよびクリーニングを実行するタイミングは、適宜設定することができる。本実施例では、フラッシングは、プリンター20の電源投入時に実行される。また、フラッシングは、所定量の印刷を連続して行う場合に、印刷ヘッドユニット60が所定回数だけ往復動するたびに実行される。また、本実施例では、クリーニングは、ユーザーによる手動操作に基づいて実行される。例えば、操作パネル98を介して、クリーニングの実行指示を受け付けた場合に、制御ユニット30は、クリーニングを実行する。
【0030】
メンテナンスユニット65が行うメンテナンス動作は、上述の例に限らず、種々の構成とすることができる。例えば、メンテナンスユニット65は、ノズルの目詰まりを検出する機構を備えていていてもよい。かかる機構には、種々の公知の手法を採用することができる。例えば、メンテナンスユニット65は、電気的にノズルの目詰まりを検知してもよい。かかる方式では、印刷ヘッド61の下面のノズル基板と対向する電極部材が用意される。この電極部材とノズル基板との間に、電極部材を正極、ノズル基板を負極として直流電圧を印加すると、両部材間に電界が発生する。かかる状態でノズルから電極部材側に向けてインクを吐出すると、インクは、吐出される瞬間、ノズル基板によって負に帯電する。この負に帯電して吐出されたインクが電極部材に近づくにつれて、静電誘導によって電極部材では正電荷が増加するので、電極部材とノズル基板との間の静電容量が増加する。上述の動作によって、インクの吐出に伴う静電誘導によって発生する誘導電流を検知できなかった場合、制御ユニット30は、ノズルの目詰まりが生じていると判断する。なお、制御ユニット30は、ノズルの目詰まりを検出した場合に、自動的に、クリーニングを実行してもよい。
【0031】
読取ユニット80は、インクカートリッジ70a〜70fに記録された情報を読み取る。書込ユニット90は、インクカートリッジ70a〜70fに情報を書き込む。本実施例では、読取ユニット80および書込ユニット90は、重力方向において、印刷ヘッドユニット60の上方に設置されている。また、読取ユニット80および書込ユニット90は、所定の位置に固定的に設置されている。読取ユニット80および書込ユニット90の詳細については後述する。
【0032】
操作パネル98は、ユーザーが入力するプリンター20の動作の指示を受け付けるUI(User Interface)である。本実施例では、操作パネル98は、ディスプレイである。操作パネル98は、ディスプレイに表示されるGUI(Graphical User Interface)によって、動作の指示を受け付ける。メモリーカードスロット99は、記憶媒体としてのメモリーカードを接続可能なインターフェースである。メモリーカードスロット99は、メモリーカードから印刷対象のデータの入力を受け付ける。なお、プリンター20は、印刷対象のデータを、プリンター20の外部から受け取ってもよい。例えば、プリンター20は、プリンター20に接続されるパーソナルコンピューターから、印刷データを受け取ってもよい。
【0033】
かかるプリンター20において、制御ユニット30は、印刷ヘッドユニット搬送機構40によって印刷ヘッドユニット60を主走査方向に往復動させ、その動きに合わせて、紙搬送機構50によって印刷媒体Pを副走査方向に搬送する。また、制御ユニット30は、印刷ヘッドユニット搬送機構40および紙搬送機構50の動きに合わせて、所要のタイミングでノズルを駆動し、印刷媒体P上に、入力された印刷データに基づいた色のインクドットを形成し、印刷を実行する。
【0034】
かかるプリンター20において、印刷処理が実行されていない状態、すなわち、印刷ヘッドユニット搬送機構40が停止された状態では、印刷ヘッドユニット60は、予め定められた位置に停止する。かかる位置をホームポジションHPともいう。本実施例では、ホームポジションHPは、主走査方向において、印刷媒体Pが設置される位置から退避した位置に定められている。図1では、印刷ヘッドユニット60がホームポジションHPに停止した状態を示している。また、読取ユニット80および書込ユニット90は、主走査方向において、印刷媒体P、印刷ヘッドユニット60のホームポジションHP、読取ユニット80および書込ユニット90の順に並ぶように配置されている。つまり、読取ユニット80および書込ユニット90は、ホームポジションHPから見て、印刷媒体Pと反対側に配置されている。
【0035】
ただし、ホームポジションHPは、上述の例に限らず、主走査方向の任意の位置に設定可能である。同様に、読取ユニット80および書込ユニット90の位置は、主走査方向の任意の位置に配置可能である。プリンター20は、インクカートリッジ70a〜70fを着脱する際の印刷ヘッドユニット60の位置が、読取ユニット80および書込ユニット90の位置と主走査方向に重複しないように構成されていればよい。
【0036】
本願では、副走査方向と反対の方向を、XYZ直交座標系のX方向ともいう。主走査方向において、印刷媒体Pの設置位置からホームポジションHPに向かう方向をY方向ともいう。重力方向において、下方から上方に向かう方向をZ方向ともいう。
【0037】
図2は、インクカートリッジ70aが印刷ヘッドユニット60に装着された状態を示す。本実施例では、インクカートリッジ70aの筐体は、6面体の形状を有する。フォルダー62の−Z方向は、印刷ヘッド61と一体化されている。本実施例では、印刷ヘッドユニット60は、フォルダー62の−X,Y,−Y,Zの4方向からユーザーが印刷ヘッドユニット60を視認できるように、プリンター20に装着されている。フォルダー62のZ方向は、開口している。この開口から−Z方向に向けて、インクカートリッジ70aは、フォルダー62に装着される。つまり、インクカートリッジ70aは、フォルダー62への装着状態において、インクカートリッジ70aの筐体のうちの上面71aがフォルダー62から完全に露出した状態となる。このとき、インクカートリッジ70aの筐体のうちの、X方向の側面72aは、フォルダー62から一部分が露出した状態となる。インクカートリッジ70aの筐体のうちの、−X方向の側面73aは、フォルダー62にほぼ覆われた状態となる。なお、インクカートリッジ70b〜70fは、インクカートリッジ70aと同様にして、Y方向に並んでフォルダー62に装着される。
【0038】
かかるインクカートリッジ70aの上面71aには、第1の記録部110、第2の記録部120および識別情報記録部130が形成されている。本実施例においては、第1の記録部110、第2の記録部120および識別情報記録部130は、所定の印刷がなされたラベルLAとして構成される。これらのラベルLAは、接着剤によって、上面71aに貼り付けられている。ラベルLAの貼り付けは、インクカートリッジ70aの出荷までの段階で行われる。インクカートリッジ70b〜70fにも、インクカートリッジ70aと同様にして、ラベルLAが貼り付けられている。本実施例では、ラベルLAは、第1の記録部110、第2の記録部120および識別情報記録部130が印刷された1つのラベルである。かかる構成により、ラベルLAを上面71aに貼り付ける際に、第1の記録部110、第2の記録部120および識別情報記録部130の相対位置関係の位置決めが不要となる。ただし、第1の記録部110、第2の記録部120および識別情報記録部130は、複数のラベルに分散的に印刷されていてもよい。
【0039】
図3は、第1の記録部110、第2の記録部120および識別情報記録部130の詳細を示す。第1の記録部110、第2の記録部120および識別情報記録部130は、Y方向に向かって、第2の記録部120、第1の記録部110、識別情報記録部130の順に並んで配置されている。Y方向は、本実施例では、インクカートリッジ70が配列される方向である。
【0040】
図4は、識別情報記録部130の断面構成を示す。図4では、識別情報記録部130の−Y方向から見た断面構成を示している。識別情報記録部130は、識別情報を記録するための領域である。識別情報は、識別情報記録部130を備えるインクカートリッジ70を識別するための情報である。本実施例では、識別情報は、インクの性状に関する情報を含む。この識別情報は、本実施例では、製造ロット番号、インクの種類(ここでは、色の種別およびインクの型番)、インクの使用期限に関する情報、プリンター20に対応する純正品であることを表す情報を含んでいる。インクは、時間経過に伴い劣化するので、製造から所定期間の間に使用することが望ましい。このため、識別情報には、インクの使用期限に関する情報が含まれる。本実施例では、インクの使用期限に関する情報は、インクの製造日である。インクの使用期限に関する情報には、上述の所定期間を表す情報を含んでもよい。なお、識別情報の内容は、上述の例に限るものではなく、適宜設定すればよい。例えば、識別情報は、上述した情報の少なくとも1つを含むものとしてもよい。
【0041】
識別情報記録部130に記録された識別情報は、読取ユニット80によって読み取られ(詳細は後述)、制御ユニット30が実行する認証処理に使用される。認証処理では、識別情報に基づいて、プリンター20にとって、インクカートリッジ70が望ましい状態であるか否かの判断に使用される。「状態」には、仕様が含まれる。望ましい仕様の類型としては、例えば、インクカートリッジに収容されたインクの性状や、カートリッジの形状を例示することができる。「望ましくない状態」とは、インクカートリッジ70がもともと望ましくないことを含む。また、「望ましくない状態」とは、もともとは、インクカートリッジ70が望ましいものであったが、現状は、望ましいものでなくなっていることを含む。例えば、インクの使用期限を超過したインクカートリッジ70や、ユーザーによって、プリンター20に適合しないインクが補充されたインクカートリッジ70は、後者に該当する。
【0042】
認証処理を開始するタイミングは、適宜設定すればよいが、インクカートリッジ70が交換された可能性があること、または、インクが補充されたことが推定されるタイミングとすることが望ましい。本実施例では、以下の3つのタイミングとしている。
(1)第1のタイミング:プリンター20の電源が投入されたとき
(2)第2のタイミング:インクカートリッジ70a〜70fのいずれかが新たに装着されたとき
(3)第3のタイミング:印刷実行時
【0043】
第1および第3のタイミングでは、インクカートリッジ70の全てに対して、順次、認証処理が実行される。第2のタイミングでは、新たに装着されたインクカートリッジ70に対してのみ、認証処理が実行される。
【0044】
認証処理では、具体的には、識別情報の具体的な項目の各々が、プリンター20に予め登録された条件を満たすか否かが判断される。予め登録された条件とは、例えば、製造ロット番号が、所定の範囲の値であること、インクの色の種別が、インクカートリッジ70の装着位置に対応する色であること、インクの型番が所定の値であること、製造日から所定の時間が経過していないことなどである。識別情報の具体的な項目の全てについて、登録された条件を満たす場合には、認証は成功である。一方、識別情報の具体的な項目の少なくとも1つが登録された条件を満たさない場合には、認証は失敗である。認証に失敗したことは、フォルダー62に装着されたインクカートリッジ70が、プリンター20にとって望ましくない状態であることを意味する。
【0045】
認証処理によって、認証に失敗した場合には、制御ユニット30は、出力部32の処理として、報知処理を行う。報知処理は、ユーザーに報知するための情報を出力する処理である。報知の内容は、例えば、インクカートリッジ70がプリンター20にとって望ましくない状態であること、認証に失敗したことなどとすることができる。出力の態様として、本実施例では、操作パネル98に報知メッセージを表示可能に出力することとした。ただし、出力の態様は、種々の態様とすることができる。例えば、報知メッセージを表す画像をプリンター20で印刷してもよい。あるいは、プリンター20がパーソナルコンピューターに接続されている場合には、パーソナルコンピューターが備えるディスプレイに表示可能に、報知メッセージを出力してもよい。これらのように報知処理を行えば、ユーザーによってプリンター20に装着されるインクカートリッジ70が、プリンター20にとって望ましい状態でない場合に、その旨をユーザーに報知することができる。その結果、ユーザーが望ましい状態のインクカートリッジ70をプリンター20に装着すれば、印刷品質の低下やプリンター20の不具合の発生を抑制することができる。
【0046】
かかる識別情報が記録される識別情報記録部130は、本実施例では、非電子的な方法を用いて、視認不可能、かつ、光学的に読み取り可能に記録される。識別情報記録部130には、インクカートリッジ70の出荷までの段階で、識別情報が予め記録される。本実施例では、識別情報記録部130は、記録層131と、隠蔽層132とを備えている。つまり、識別情報記録部130は、記録層131と隠蔽層132との2層構造である。記録層131は、インクカートリッジ70側に形成される。隠蔽層132は、インクカートリッジ70(記録層131)の外方側に形成される。なお、識別情報記録部130は、2層構造に限られない。例えば、識別情報記録部130は、隠蔽層132と反対側に、上面71aに接着するための粘着層を備えていてもよい。
【0047】
本実施例では、記録層131において、識別情報は、模様によって記録される。この模様は、予め定められた規則に従って表される模様である。この模様は、当該規則に基づき、機械的に読み取り可能である。かかる模様として、例えば、一次元コードまたは二次元コードを採用してもよい。こうしたコードとしては、周知のバーコード、QRコード(登録商標)を例示できる。
【0048】
本実施例の記録層131は、所定以上の温度の熱を受けることによって、色が変化する性質を有している。換言すれば、記録層131は、熱を受けることによって、光の吸収率が変化する性質を有している。この吸収率の変化は、不可逆的に生じる。吸収率が変化する光には、近赤外線の少なくとも一部の波長領域の光を含む。本実施例では、記録層131は、熱を受けることによって、光の吸収率が不可逆的に高くなる。記録層131において、上述した識別情報を表す模様は、熱を受けることによって不可逆的に形成される。本実施例では、記録層131は、人の目で観察する場合、熱を受ける前は白色を呈し、熱を受けた後は黒色を呈する。図4に示す記録層131は、熱を受けていない第1の領域133と、熱を受けて色が変化した第2の領域134とを備えている。この第2の領域134は、記録層131に記録される情報を表す模様を構成する。なお、第2の領域134に代えて、第1の領域133が、記録層131に記録される情報を表す模様を構成してもよい。また、熱を受けることによる記録層131の色の変化は、必ずしも不可逆的でなくてもよい。
【0049】
こうした性質を有する記録層131は、周知の感熱発色剤を使用して形成することができる。本実施例では、基材(ここではラベルLAの材質)上に感熱発色剤を印刷することによって、記録層131が形成される。印刷の方法は、種々の公知の方法、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法を使用することができる。基材は、特に限定するものではなく、例えば、アートコート紙、上質紙等の用紙、ポリエステル樹脂シート、塩化ビニルシートなどを使用することができる。
【0050】
感熱発色剤としては、公知の種々の感熱発色剤を使用することができる。例えば、感熱発色剤として、特開59−199757号公報、特開昭62−243653号公報、特開平6−24140号公報、特開平7−172050号公報、特開平10−100544号公報に記載された感熱発色剤を使用してもよい。例えば、特開59−199757号公報には、感熱発色性を有するフルオレン化合物が記載されている。特開昭62−243653号公報には、感熱発色性を有するジビエル化合物が記載されている。
【0051】
隠蔽層132は、記録層131に記録された情報を隠蔽するための層である。本実施例では、隠蔽層132は、記録層131に記録された情報、つまり、模様を視認不可能にする性質を有している。本願において、視認可能とは、人間の目で直接見えることをいう。直接見えるとは、特別な装置を使用しなくても見えることをいう。視認不可能とは、視認可能ではないことをいう。隠蔽層122は、具体的には、可視光線のうちの少なくとも一部の波長領域の光線を吸収し、近赤外光線を透過する性質を有している。可視光線とは、一般的には、380〜780nmの波長域の電磁波として定義できる。近赤外線は、可視光線の赤色より波長が長く、遠赤外線より波長が短い波長域の電磁波である。近赤外線は、一般的には、780nm〜2.5μmの波長域の電磁波として定義できる。かかる隠蔽層132は、記録層131上に、上述した隠蔽層132の性質を有する印刷材を使用して印刷することにより、形成することができる。印刷の方法は、記録層131の形成と同様に、種々の公知の方法を使用することができる。本実施例では、隠蔽層132は、人間の目には、記録層131に表される模様に関係なく、黒色に視認される。
【0052】
隠蔽層132の性質を有する印刷材としては、公知の種々の印刷材を使用することができる。例えば、印刷材として、特開平8−34946号公報や、特開2010−31106号公報に記載されたインクを使用してもよい。特開平8−34946号公報には、硫化ビスマス微粉末を色材の主成分としたインクが記載されている。より具体的には、プレポリマー・モノマー・光重合開始剤・補助剤などからなる紫外線硬化型インクと、フェノール樹脂、アルキット樹脂、アマニ油、ドライヤー等からなる酸化重合型インクとが記載されている。特開2010−31106号公報には、ペリレン顔料を用いたインクが記載されている。ペリレン顔料は、分子固有の吸収バンドと分子間相互作用に起因する吸収バンドの双方で可視光領域の波長を覆い、可視光のうちの一部の波長の光は透過するが、人間の目には、黒色に視認される。
【0053】
このように、識別情報記録部130は、隠蔽層132を備えているために、ユーザーは、識別情報記録部130、より具体的には、記録層131に記録された情報を視認することはできない。
【0054】
ここで、説明を図3に戻す。第1の記録部110は、第1の記録部110を備えるインクカートリッジ70の使用の程度に関する、更新され得る情報(以下、第1の情報ともいう)を、更新可能に記録するための領域である。第1の情報は、非電子的な方法を用いて記録される。本実施例では、第1の記録部110には、インクカートリッジ70に収容されたインクの残量に関する情報が記録される。本実施例では、第1の記録部110は、インク残量表示部111と、使用済表示部112とを備えている。
【0055】
インク残量表示部111は、インクカートリッジ70に収容されたインクの残量を、複数の段階で段階的に記録するための領域である。インク残量は、制御ユニット30の残量検出部33の処理として検出される。本実施例においては、フォルダー62は、インクカートリッジ70を挟むように、平行に配置された2つの平板状の電極によって構成されたコンデンサ構造を有している。電極間に挟まれたインクカートリッジ70の各々に対応するコンデンサの静電容量は、インクの消費に応じて変化する。制御ユニット30は、このコンデンサの静電容量を測定することにより、インク残量を検出する。インク残量は、静電容量の関数や、静電容量とインク残量とを対応付けたマップなどを用いて求めることができる。かかるインク残量検出方式は、例えば、特開2006−327111号公報に記載されている。
【0056】
インク残量の把握方法は、本実施例の方法に限らず、種々の公知の方法を使用することができる。例えば、制御ユニット30は、インク吐出量をカウントすることで、インク残量を推定してもよい。なお、本実施例では、インクカートリッジ70と制御ユニット30とは、電気的に接続されていないが、インクカートリッジ70が、制御ユニット30と電気的に接続可能な端子を備え、当該端子を介して制御ユニット30と電気的に接続されている場合には、インクカートリッジ70側でインク残量を検出することも可能である。例えば、インクカートリッジ70が導電性インクを収容する場合には、インクカートリッジ70は、インク収容室内に1対の電極を備えていてもよい。この電極間に存在するインクが消費されると、電極間で通電しなくなるので、制御ユニット30は、上述の端子を介して、インクの消費を検出することができる。1対の電極を、インクの液面レベルに対して多段階に設ければ、インク残量を多段階に検出することができる。
【0057】
インク残量表示部111での記録には、本実施例では、感熱発色剤が利用される。具体的には、白色の基材(ここでは、ラベルLAの材質)上に、感熱発色剤を含む印刷材を使用して、全面的に印刷したものを、インク残量表示部111として使用する。つまり、インク残量表示部111での記録は、熱を受けて変色することにより行われる。基材には、識別情報記録部130の基材と同様に、各種印刷媒体を使用することができる。本実施例では、熱を受けた場合の感熱発色剤の色の変化は、不可逆的に生じる。感熱発色剤には、記録層131に使用するものと同種のものを使用してもよい。インク残量表示部111における色の変化は、不可逆的でなくてもよい。
【0058】
使用済表示部112は、インクカートリッジ70に収容されたインクの残量が、予め定められた使用限界(以下、インクエンドともいう)に達したことを表示するための領域である。本実施例では、使用済表示部112での記録には、感熱発色剤が利用される。具体的には、白色の基材(ここでは、ラベルLAの材質)上に、感熱発色剤を含む印刷材を使用して、表示すべき文字を印刷したものを、使用済表示部112として使用する。なお、印刷材は、文字を形成するべき領域に代えて、文字を形成するべき領域以外の領域にのみ印刷してもよい。あるいは、印刷材は、全ての領域に全面的に印刷してもよい。基材や感熱発色剤には、インク残量表示部111と同一のものを使用してもよい。
【0059】
第2の記録部120は、当該第2の記録部120を備えるインクカートリッジ70に関係する情報であって、プリンター20の動作に関する、更新され得る情報(以下、第2の情報ともいう)を、更新可能に記録するため領域である。第2の情報は、非電子的な方法を用いて記録される。
【0060】
図5は、第2の記録部120の断面構成を示す。図5では、第2の記録部120の−Y方向から見た断面構成を示している。図5(A)は、インクカートリッジ70の初期使用時、すなわち、インクカートリッジ70が初めて使用される際の第2の記録部120の状態を示す。図5(A)に示すように、第2の記録部120は、本実施例では、識別情報記録部130と同一の構成を有している。すなわち、第2の記録部120は、記録層121と隠蔽層122とを備えている。記録層121は、識別情報記録部130の記録層131に対応する。隠蔽層122は、識別情報記録部130の隠蔽層132に対応する。第2の記録部120の構造や材料については、上述した識別情報記録部130について述べた全ての事項を適用可能である。
【0061】
図5(A)に示すように、インクカートリッジ70の初期使用時においては、記録層121は、熱を受けていない第1の領域123のみで形成される。つまり、記録層121に第2の情報は記録されていない。記録層121には、プリンター20によるインクカートリッジ70の使用段階において、インクカートリッジ70の使用の状況に応じた情報が更新可能に記録される。
【0062】
記録層121に記録される第2の情報は、本実施例では、メンテナンス情報、エラー情報、着脱情報を含む。メンテナンス情報は、インクカートリッジ70に収容されたインクを使用して、インクカートリッジ70が装着されたプリンター20において実行されたメンテナンスの履歴に関連する情報である。エラー情報は、インクカートリッジ70に関してプリンター20において検出したエラーの履歴に関する情報である。着脱情報は、インクカートリッジ70をプリンター20に装着したこと、および、インクカートリッジ70をプリンター20から取り外したことの少なくとも一方を検知したことの履歴、つまり、インクカートリッジ70の着脱履歴に関する情報である。
【0063】
本実施例では、メンテナンス情報は、メンテナンスユニット65を使用して行われたクリーニングの回数を含む。また、メンテナンス情報は、メンテナンスユニット65を使用して行われたフラッシングによって、インクが消費された量を含む。インクの消費量は、例えば、フラッシングを行った回数に、フラッシング1回あたりのインク吐出量を乗じて求めることができる。フラッシング1回あたりのインク吐出量は、予め一定の量に定めておいてもよい。あるいは、1回のフラッシングを行うたびに、制御ユニット30が、インク吐出数から、インクの吐出量を計算により求めてもよい。これらのメンテナンス情報は、対応する事象が生じた際に、制御ユニット30によって、RAM37またはEEPROM38に記録される。
【0064】
本実施例では、エラー情報は、インク残量に関するエラーの有無およびエラー回数を含む。インク残量に関するエラーは、制御ユニット30のエラー検出部34の処理として検出される。インク残量に関するエラーは、具体的には、プリンター20において、以下のようにして検出される。
【0065】
制御ユニット30は、所定のタイミングで、インクカートリッジ70のインク残量を、上述した方法によって検出する。次に、制御ユニット30は、読取ユニット80を使用して、インク残量表示部111に記録された情報、つまり、インク残量表示部111に表された表示を読み取る。次に、制御ユニット30は、インク残量の検出結果と、インク残量表示部111の読み取り結果が表すインクの消費段階との整合性をチェックする。両者が整合していないこと、つまり矛盾することは、ユーザーが、インクカートリッジ70にインクを補充したことを意味する。ここで補充されたインクは、プリンター20にとって望ましくない仕様である可能性がある。そこで、制御ユニット30は、両者の不整合を、インク残量に関するエラーとして検出する。このようにして検出されたエラーの回数は、制御ユニット30によって、RAM37またはEEPROM38に記録される。なお、エラーを検出した場合、制御ユニット30は、上述の報知処理と同様に、ユーザーに報知を行ってもよい。
【0066】
かかるエラー検出動作において、インク残量を検出する所定のタイミングは、適宜設定することができるが、インク残量が変化した可能性があることが推定されるタイミングとすることが望ましい。本実施例では、所定のタイミングとして、以下の3つのタイミングが設定されている。
(1)第4のタイミング:プリンター20の電源が投入されたとき
(2)第5のタイミング:インクカートリッジ70a〜70fのいずれかが新たに装着されたとき
(3)第6のタイミング:プリンター20での印刷量が所定数に達したとき
【0067】
第4および第6のタイミングでは、インクカートリッジ70の全てに対して、順次、第1の表示処理が実行される。第5のタイミングでは、新たに装着されたインクカートリッジ70に対してのみ、インク残量の検出が行われる。第5のタイミングは、例えば、インクカートリッジ70がフォルダー62に収容されたことを、物理的または光学的に検知するセンサーを用いて検知することができる。かかるセンサーとしては、例えば、フォトインターラプターを例示できる。なお、インクカートリッジ70が、制御ユニット30との間での電気的な接続を行うための端子を備えている場合には、第5のタイミングは、電気的に検知されてもよい。つまり、制御ユニット30は、当該端子を介して、制御ユニット30とインクカートリッジ70とが電気的に接続されたことを検知してもよい。第6のタイミングは、印刷量と相関関係を有する指標値を用いて、制御ユニット30が決定してもよい。指標値としては、例えば、印刷枚数であってもよいし、インク吐出数と、ドットサイズとから計算されるインク吐出量であってもよい。
【0068】
本実施例では、着脱情報は、インクカートリッジ70をプリンター20に装着した回数と、インクカートリッジ70をプリンター20から取り外した回数とを含む。インクカートリッジ70の着脱の検出は、制御ユニット30の着脱検出部35の処理として実行される。具体的な検出方法については、上記の第5のタイミングの検出方法として述べたとおりである。このようにして検出された着脱回数は、制御ユニット30によって、RAM37またはEEPROM38に記録される。
【0069】
また、本実施例では、記録層121に記録される第2の情報は、インクカートリッジ70を使用してプリンター20によって印刷された印刷枚数を含む。記録層121に記録される、これらの第2の情報は、インクカートリッジ70、または、プリンター20およびインクカートリッジ70が、製造業者に回収された際に、読み取られて使用される。例えば、メンテナンス情報、印刷枚数などは、製造業者によるインクカートリッジ70やプリンター20の品質向上の検討に使用することができる。また、エラー情報、着脱情報、印刷枚数などは、プリンター20またはインクカートリッジ70に故障が生じ、製造業者が修理のために故障品を回収した際、当該修理を保証範囲内とするか否かの判断に使用することができる。以上の説明からも明らかなように、記録層121に記録される第2の情報は、プリンター20またはインクカートリッジ70の性能に関する履歴情報として捉えることもできる。あるいは、記録層121に記録される第2の情報は、プリンター20またはインクカートリッジ70の保証判断情報として捉えることもできる。
【0070】
記録層121に記録される第2の情報の項目は、上述した例に限らず、適宜設定することができる。例えば、当該第2の情報は、メンテナンス情報、エラー情報、着脱情報のうちの、いずれか1つ、または、2つであってもよい。あるいは、当該第2の情報は、第1の記録部110に記録される情報を含んでもよい。あるいは、エラー情報は、識別情報に基づく認証の失敗回数を含んでもよい。
【0071】
図5(B)は、記録層121が更新された後の第2の記録部120の断面構成を示す。図示するように、記録層121は、その一部が書込ユニット90によって加熱されて、図5(A)において第1の領域123であった領域の一部が黒色に変化し、熱を受けて色が変化した第2の領域124が形成されている。
【0072】
本実施例においては、記録層121は、上述した第2の情報の各項目に対して、それぞれ専用の記録領域が割り当てられている。各項目の更新は、対応する領域を加熱することによって行われる。また、本実施例では、記録層121は、熱を受けて不可逆的に変色することから、第2の情報の各項目のうちの、回数に関する項目は、回数をインクリメントするように記録される。本実施例では、図5(B)に示すように、記録層121の更新のたびに、インクリメントすべき回数が、第2の領域124によって表される一次元コードによって記録される。インクリメントすべき回数は、1回に限らず、2回以上であってもよい。例えば、インクリメントすべき回数が2つ記録されており、それらの値が、値2、値4である場合には、延べ回数が6回として把握される。つまり、制御ユニット30は、回数の増加をカウントしておき、増加した回数に相当する値に対応する模様、例えば、一次元コードを記録層121に記録してもよい。ただし、回数に比例して、第2の領域124の幅が増加する要領で、記録層121に第2の領域124が記録されてもよい。
【0073】
かかる第1の記録部110および第2の記録部120への情報の書き込みは、書込ユニット90を使用して行われる。また、識別情報記録部130に記録された識別情報の読み込みは、読取ユニット80を使用して行われる。本実施例では、プリンター20は、識別情報記録部130に加え、第1の記録部110および第2の記録部120の情報の読み込みも可能な構成としている。書込ユニット90による書き込み動作、および、読取ユニット80による読み込み動作については、後述する。
【0074】
図6は、第1の記録部110および第2の記録部120の表示の態様の変化を示す。図6において、インク残量表示部111は、インクカートリッジ70のインクが1/3程度消費された場合に記録される表示態様を示している。インク残量表示部111の表示は、インク残量の低下量に応じて、HレベルからLレベルに向かって(Y方向に向かって)、段階的に白から黒に変化する。かかる変化は、書込ユニット90を使用して、黒に変化させるべき領域を加熱することによって生じる。段階数は任意に設定すればよい。本実施例では、インク残量表示部111の表示は、異なるタイミングで白から黒に変化した複数の黒の領域間には、わずかに白の領域が位置するように表示される。つまり、インク残量が低下し、その低下量に応じた領域が新たに加熱される際、以前に加熱されて黒に変色した領域に対して、所定距離だけ離隔した位置から、新たな加熱が行われる。かかる構成とすれば、ユーザーは、インク消費の履歴を事後的に確認することができ、利便性が向上する。
【0075】
図6において、使用済表示部112は、インクカートリッジ70がインクエンドに達したことに起因して、書込ユニット90によって加熱されて、表示態様が変化した状態を示している。使用済表示部112には、インクエンドに達したことを示す文字情報として、「ink end」が視認可能に表示されている。かかる文字情報は、感熱発色剤を含む印刷材を使用して印刷された領域が、加熱によって黒色に変色したことによって記録、つまり、表示される。かかる表示を行う場合、本実施例では、使用済表示部112は、全面的に加熱される。このため、文字を形成するべき領域のみを加熱する制御が不要となり、制御ユニット30の制御負荷が軽減される。
【0076】
使用済表示部112に対して、文字を形成するべき領域以外の領域に対してのみ当該印刷材によって印刷を予め行った場合には、使用済表示部112には、黒色の背景中に白色の文字が表示されることになる。また、使用済表示部112の全ての領域に全面的に当該印刷材によって印刷が行われる場合には、文字を形成するべき領域のみ、または、文字を形成するべき領域以外の領域のみを加熱する制御を行ってもよい。なお、使用済表示部112に表示する文字の内容は、任意に設定すればよい。
【0077】
図6において、第2の記録部120は、記録層121が、図5(A)に示した状態から図5(B)に示した状態に更新された後の表示態様を示す。上述したように、第2の記録部120は、表面に隠蔽層122を備えている。このため、記録層121に記録された情報が更新されても、図6に示すように、その変化は視認されない。
【0078】
図7は、読取ユニット80および書込ユニット90の概略構成を示す。本実施例では、読取ユニット80は、書込ユニット90よりも印刷ヘッドユニット60のホームポジションHP側に設けられる。読取ユニット80は、識別情報記録部130に記録された識別情報を読み取る。また、本実施例では、読取ユニット80は、第1の記録部110および第2の記録部120に記録された情報を読み取り可能に構成されている。識別情報記録部130を読み取るのは、上述した認証処理を行うためである。第1の記録部110を読み取るのは、上述したように、インク残量に関するエラーを検出するためである。第2の記録部120を読み取るのは、本実施例では、ユーザーが入力する指示を受け付けて、第2の記録部120に記録された情報を操作パネル98に表示するためである。かかる構成とすれば、ユーザーが第2の記録部120に記録された情報を確認したい場合に、ユーザーの要望に応えることができ、ユーザーの利便性が向上する。ただし、かかる構成は、採用しなくてもよい。つまり、第2の記録部120は、読取ユニット80によって、読み取り可能に構成されていなくてもよい。また、認証処理を行わない場合には、識別情報記録部130は、読取ユニット80によって、読み取り可能に構成されていなくてもよい。読取ユニット80による読み取り動作は、光学的手法を用いて行われる。
【0079】
図7に示すように、読取ユニット80は、照射部81と受光部82とを備えている。照射部81および受光部82は、読取ユニット80の−Z方向の端面に設けられている。−Z方向の端面は、インクカートリッジ70が印刷ヘッドユニット搬送機構40によって読取ユニット80の直下(−Z方向)に移動した場合に、インクカートリッジ70と対向する面である。照射部81は、赤外線LEDを内蔵している。照射部81は、インクカートリッジ70の読み取り対象に向けて、近赤外線NIRを照射する。図7では、照射部81が第2の記録部120に向けて近赤外線NIRを照射している様子を示している。近赤外線NIRは、隠蔽層122を透過し、記録層121の反射率に応じた量の近赤外線NIRが記録層121で反射する。
【0080】
受光部82は、受光素子を備えており、反射した近赤外線NIRを受光する。本実施例では、受光素子として、CCD(Charge Coupled Device)カメラを用いた。なお、受光素子は、受光した近赤外線を電気信号に変換可能なものであればよい。例えば、受光素子は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラであってもよい。読取ユニット80は、受光部82で受光し、変換された電気信号を、内蔵する回路(図示省略)で符号化し、制御ユニット30に出力する。記録層121を構成する第1の領域123と第2の領域124とでは、反射率が異なるので、符号化結果から、記録層121に記録された情報を読み取ることができる。符号化は、制御ユニット30で行ってもよい。照射部81および受光部82の位置関係、および、照射部81の指向性は、照射部81の照射光が記録層121で反射し、受光部82によって適切に受光できるように設定される。読取ユニット80は、識別情報記録部130についても、第2の記録部120と同様の手法で、識別情報を読み取り可能である。また、第1の記録部110は、隠蔽層を備えていないが、読取ユニット80は、第2の記録部120の読み取りと同一の手法で、第1の記録部110を読み取ることができる。
【0081】
読取ユニット80による、第1の記録部110、第2の記録部120および識別情報記録部130の読み取り動作は、読取ユニット80とインクカートリッジ70とを相対移動させつつ行われる。本実施例では、読取ユニット80およびインクカートリッジ70のうちのインクカートリッジ70が移動する構成である。具体的には、制御ユニット30は、印刷ヘッドユニット搬送機構40を用いて、インクカートリッジ70が装着された印刷ヘッドユニット60をホームポジションHPから主走査方向(Y方向)に沿って移動させつつ、照射部81および受光部82を使用して、各読み取り位置の情報を読み取る。かかる印刷ヘッドユニット60の移動は、印刷時とは異なる動作モード(以下、読取動作モードともいう)によって実現される。つまり、制御ユニット30は、読取動作モードでは、読み取りに適した走査速度で印刷ヘッドユニット60を移動させる。読取動作モードは、読み取りを行っているときと、読み取りを行っていないとき(読み取り位置までの単なる移動のとき)とで異なる移動速度を設定してもよい。読み取りを行っていないときは、読み取りを行っているときよりも、高速としてもよい。
【0082】
本実施例では、読取ユニット80およびインクカートリッジ70は、1つの方向(主走査方向)に対してのみ相対移動する。このため、読取ユニット80は、第1の記録部110、第2の記録部120および識別情報記録部130が配置された範囲(図3の幅W1)を全て読み取り可能に構成されている。つまり、受光部82は、印刷ヘッドユニット60が読取ユニット80に対して相対移動する方向と直交する方向(Xおよび−X方向)において、幅W1以上の幅にわたって設けられている。本実施例では、図3に示したように、第1の記録部110、第2の記録部120および識別情報記録部130は、Xおよび−X方向における幅が、Y方向に最大限重複するように配置されている。かかる配置は、かかる配置を採用しない場合と比べて、読取ユニット80の読み取り範囲を小さくすることができる。つまり、読取ユニット80を小型化でき、その結果、低コスト化できる。
【0083】
書込ユニット90は、発熱部91を備えている。発熱部91は、印刷ヘッドユニット60が読取ユニット80に対して相対移動する方向と直交する方向(Xおよび−X方向)に、複数配列されている。発熱部91の配列範囲は、幅W1以上の幅にわたる。発熱部91は、電極と発熱抵抗体とを備え、電極に通電することで発熱抵抗体が発熱する。複数の発熱部91は、発熱部91ごとに個別的に、発熱のON/OFF制御が可能である。発熱部91は、感熱媒体と接触した状態で発熱することで、感熱媒体の接触箇所を変色させる。かかる書込ユニット90として、感熱式プリンターや熱転写式プリンターに使用するサーマルヘッドを利用してもよい。
【0084】
書込ユニット90は、発熱部91によって、第2の記録部120の所要箇所を加熱して、記録層121に情報を記録する。図7では、記録層121の一部の領域に、発熱により、情報を記録している様子を示している。同様に、書込ユニット90は、第1の記録部110を加熱して、第1の記録部110に上述した態様で、情報を記録する。
【0085】
かかる第1の記録部110および第2の記録部120への書き込み動作は、書込ユニット90とインクカートリッジ70とを相対移動させつつ行われる。本実施例では、書込ユニット90およびインクカートリッジ70のうちのインクカートリッジ70が移動する構成である。具体的には、制御ユニット30は、印刷ヘッドユニット搬送機構40を用いて、インクカートリッジ70が装着された印刷ヘッドユニット60をホームポジションHPから主走査方向(Y方向)に沿って移動させつつ、複数の発熱部91の発熱の有無を個別的に制御して、所要箇所を加熱する。かかる印刷ヘッドユニット60の移動は、印刷時および読取動作モードとは異なる動作モード(以下、書込動作モードともいう)によって実現される。つまり、制御ユニット30は、書込動作モードでは、書き込みに適した走査速度で印刷ヘッドユニット60を移動させる。書込動作モードは、書き込みを行っているときと、書き込みを行っていないとき(書き込み位置までの単なる移動のとき)とで異なる移動速度を設定してもよい。書き込みを行っていないときは、書き込みを行っているときよりも、高速としてもよい。
【0086】
本実施例においては、インク残量表示部111への書き込みの可否は、インク残量を検出した際に判断される。具体的には、制御ユニット30は、インク残量表示部111に表示する各段階に対応するインク残量(または静電容量)を記憶している。また、制御ユニット30は、前回、インク残量表示部111への書き込みを行った際のインク残量を記憶している。制御ユニット30は、インク残量を検出したときに、検出したインク残量と、前回、インク残量表示部111への書き込みを行った際のインク残量とを参照し、この2つのインク残量が属する段階が、異なる段階である場合に、インク残量表示部111の更新、つまり、新たな書き込みが必要であると判断する。判断の結果、インク残量表示部111の更新が必要であれば、制御ユニット30は、書込ユニット90を使用して、検出したインク残量に対応する段階まで変色するように、インク残量表示部111に書き込みを行う。
【0087】
制御ユニット30は、インク残量表示部111への書き込みの可否の判断を省略して、常に、インク残量を検出したときに、インク残量表示部111への書き込みを実行してもよい。こうすれば、インク残量の検出処理が実行される前に、インクカートリッジ70が交換されていたとしても、インク残量表示部111に正確な情報を表示できる。なお、インクカートリッジ70が交換されておらず、かつ、インク残量表示部111の更新が必要ない場合には、既に加熱されて変色した領域が再度加熱されることとなる。この場合、インク残量表示部111の表示に変化は生じない。
【0088】
本実施例では、使用済表示部112への書き込みの可否は、インク残量を検出した際に判断される。インクエンドが検出された場合、制御ユニット30は、使用済表示部112への書き込みを行う。インクエンドは、インクカートリッジ70内のインクが一切なくなった状態に限定されない。インクエンドは、例えば、次回、印刷が実行される場合に、印刷の実行中にインクが一切なくなる可能性があるインク残量として、適宜設定してもよい。本実施例では、インク残量表示部111の表示の複数の段階のうちの最後の段階がインクエンドに相当する。
【0089】
本実施例では、第2の記録部120への書き込みの可否は、プリンター20の電源を切る旨の指示をプリンター20が受け付けた際に判断される。制御ユニット30は、第2の記録部120への書き込みの可否の判断を前回行ってから、今回の判断を行うまでの間に、第2の記録部120に記録されるべき第2の情報の各項目の更新状況を記憶している。そして、少なくとも1つの項目について更新されている場合に、更新された項目について、第2の記録部120への書き込みを行う。つまり、制御ユニット30は、予め定められた期間の間、第2の記録部120に記録される第2の情報の更新状況を記憶しておき、当該期間の経過後に、当該期間内に生じた事象に対応する第2の情報を一括して、第2の記録部120に書き込む。当該期間は、一定間隔で定められてもよいし、所定のイベントが任意のタイミングで発生するまでの期間として定められてもよい。かかる構成とすれば、回数に関する第2の情報の各項目が、回数「1回」ずつインクリメントされるように第2の記録部120に記録される場合と比べて、不可逆的に情報が記録される第2の記録部120の有限の領域を、効率的に利用することができる。なお、第2の記録部120に記録される第2の情報は、高い更新頻度が求められるものではないので、上述したように、情報をある程度まとめて記録しても、支障は生じない。以上の説明からも明らかなように、本実施例においては、第1の記録部110の更新の判断のタイミングは、第2の記録部120の更新の判断のタイミングよりも、頻度が高く設定されている。
【0090】
上述したプリンター20において、第1の記録部110(インク残量表示部111および使用済表示部112)は、請求項の第1の記録部に該当する。第2の記録部120は、請求項の第2の記録部に該当する。記録層121は、請求項の第1の層に該当する。隠蔽層122は、請求項の第2の層に該当する。識別情報記録部130は、請求項の識別情報記録部に該当する。書込ユニット90は、請求項の書込部に該当する。読取ユニット80は、請求項の読取部に該当する。
【0091】
上述したプリンター20およびインクカートリッジ70によれば、第1の記録部110および第2の記録部120によって、インクカートリッジ70に関する各種情報を記録することができる。これらの情報は、熱を受けることにより、感熱材が変色する態様で記録されるので、電気的な方法を使用する記憶媒体、例えば、半導体メモリーを必要としない。その結果、インクカートリッジ70およびプリンター20の構成を比較的簡単にすることができる。しかも、金属材料を必要としないので、環境負荷を抑制できる。
【0092】
上述したインクカートリッジ70の第1の記録部110および第2の記録部120は、インクカートリッジ70がプリンター20に装着された状態において、書込ユニット90とインクカートリッジ70とのY方向への相対移動が開始される前の書込ユニット90とインクカートリッジ70との相対位置(インクカートリッジ70はホームポジションHPに位置する)から、インクカートリッジ70が書込ユニット90に対して相対移動するY方向に向かって、第2の記録部120、第1の記録部110の順に、インクカートリッジ70上に配置されている。つまり、インクカートリッジ70が書込ユニット90に対して相対移動するY方向に対して、第2の記録部120が手前側に、第1の記録部110が奥側に配置されている。ここで、第1の記録部110に記録される第1の情報は、概して、第2の記録部120に記録される第2の情報よりも高い更新頻度が求められる。つまり、第1の情報は、第2の情報よりも高い頻度で更新されることが求められる。また、第1の情報および第2の情報の内容の違いや、上述した第1の情報および第2の情報の書き込みの可否の判断タイミングの違いに起因して、第1の情報は、概して、第2の情報よりも高い頻度で更新されることが多い。したがって、プリンター20およびインクカートリッジ70によれば、第1の記録部110に書き込みを行う際の書込ユニット90とインクカートリッジ70との相対移動の距離を、第2の記録部120に書き込みを行う際の書込ユニット90とインクカートリッジ70との相対移動の距離よりも短くすることができる。その結果、更新頻度が相対的に高い第1の記録部110を書き込む際の処理速度を高めて、処理を効率化および高速化することができる。また、インクカートリッジ70と書込ユニット90との相対移動の方向は、1つの方向のみであるから、プリンター20の構成を簡単にすることができる。
【0093】
また、インクカートリッジ70の識別情報記録部130は、インクカートリッジ70がプリンター20に装着された状態において、第1の記録部110および第2の記録部120よりも、読取ユニット80とインクカートリッジ70とのY方向への相対移動が開始される前の読取ユニット80とインクカートリッジ70との相対位置(インクカートリッジ70はホームポジションHPに位置する)から、読取ユニット80がインクカートリッジ70に対して相対移動する方向側に配置されている。プリンター20およびインクカートリッジ70によれば、それ以外の配置と比べて、読取ユニット80とインクカートリッジ70とが相対移動して、識別情報記録部130に記録された識別情報を読み込む際の相対移動の距離が長くなることを抑制することができる。したがって、プリンター20が認証情報を読み込む際の処理速度を高めて、処理を効率化および高速化することができる。上述した認証処理のタイミングおよび第1の記録部110および第2の記録部120への書き込みのタイミングによれば、認証処理の頻度は、概して、第1の記録部110および第2の記録部120への書き込みの頻度よりも高くなるので、かかる効果はいっそう顕著となる。
【0094】
また、第1の記録部110には、インク残量に関する情報が記録されるので、ユーザーによって、インクカートリッジ70がプリンター20から一旦取り外され、再度、装着された場合であっても、プリンター20は、インク残量の検出方式の種類によらず、インク残量を適正に把握することができる。例えば、プリンター20は、インク吐出量からインク残量を把握する方式を採用しても、インク残量を適正に把握することができる。また、第1の記録部110において、インク残量に関する情報は、視認可能に記録されるので、ユーザーの利便性が向上する。
【0095】
また、第2の記録部120には、第2の情報が、視認不可能、かつ、光学的に読み取り可能に記録される。第2の情報は、ユーザーにとって必ずしも必要ではないが、ユーザー以外の者にとって有用となる情報である。かかる第2の記録部120によれば、ユーザーが混乱する状況を回避できる。例えば、第2の情報が視認されて、ユーザーが、その情報が何を意味するのか気になるようなことがない。その結果、ユーザーの利便性が向上する。しかも、ユーザーは、視認可能なインク残量に関する情報を見やすくなる。つまり、ユーザーにとって、有用な情報と、有用でない情報とが多数混在して記録されることによって、ユーザーが有用な情報を視認により確認しにくくなることを抑制できる。
【0096】
また、インクカートリッジ70によれば、第2の記録部120を、記録層121および隠蔽層122を備える構成とすることで、簡単な構成で、視認不可能、かつ、光学的に読み取り可能に記録することができる。また、プリンター20は、同一の方法を用いて、第1の記録部110および第2の記録部120への書き込みを行うので、書込ユニット90を第1の記録部110と第2の記録部120との間で共通的に使用することができる。したがって、プリンター20の構成を簡単にすることができる。
【0097】
B.変形例:
B−1.変形例1:
インク残量表示部111への第1の情報の記録は、文字情報を記録する態様であってもよい。かかる場合、感熱発色剤を使用して、表示させる文字に対応する文字をインク残量表示部111に予め印刷しておいてもよい。また、使用済表示部112への表示、つまり、記録は、文字情報による記録に限らない。例えば、インクエンドが検出された場合に、使用済表示部112に単に色変化を生じさせるだけの構成であってもよい。かかる場合、使用済表示部112には、熱を受けることによって色変化を生じない態様で、色の変化を生じる領域を説明するための文字情報が付されていてもよい。以上のように、第1の記録部110への記録は、文字情報、模様、色などを利用して行うことができる。
【0098】
また、第1の記録部110への第1の情報の記録は、感熱材を加熱することによって行う構成に限られない。第1の記録部110への第1の情報の記録は、非電子的な方法を用いて、更新可能に記録できる構成であればよい。非電子的な方法とは、材質の特性の変化に基づく方法、印刷による方法、形状を変化させる方法などとしてもよい。上述した実施例の方法は、材質の特性の変化に基づく方法に含まれる。上述した実施例以外の方法として、例えば、第1の記録部110への記録は、印刷材による記録であってもよい。かかる場合、書込ユニット90は、スタンプユニットであってもよい。あるいは、インクカートリッジ70と書込ユニット90との相対移動が、印刷ヘッド61と独立して行える構成を採用する場合には、書込ユニット90として、印刷ヘッド61を用いてもよい。あるいは、第1の記録部110への記録は、第1の記録部110の形状を変化させることによってもよい。例えば、第1の記録部110にパンチ孔を形成してもよい。かかる場合、書込ユニット90は、パンチ孔形成ユニットであってもよい。あるいは、第1の記録部110への記録は、水分によって色変化を生じさせることによってもよい。水分を所定量含有することにより、変色する材料は、例えば、特開平10−2893号公報に記載されている。特開平10−2893号公報には、水をはじきにくい用紙に対して、水溶性染料を含有した水無平版用印刷インクを印刷した水濡れ感知印刷物が記載されている。かかる材料を使用する場合、書込ユニット90は、水を含む液体を噴霧するユニットであってもよい。第1の記録部110への書き込み手段と、第2の記録部120への書き込み手段とは、異なるものであってもよい。また、第1の記録部110は、必ずしも、第1の情報を視認可能に記録するものでなくてもよい。
【0099】
B−2.変形例2:
第2の記録部120への記録は、感熱材を加熱することによって行う構成に限られない。第2の記録部120への情報の記録は、非電子的な方法を用いて、更新可能に記録できる構成であればよい。非電子的な方法とは、材質の特性の変化に基づく方法、印刷による方法、形状を変化させる方法などとしてもよい。上述した実施例の方法は、材質の特性の変化に基づく方法に含まれる。また、材質の特性の変化に基づく方法として、例えば、第1の記録部110への記録は、磁気的な方法を用いて行ってもよい。かかる場合、例えば、鉄道の乗車券などに使用される周知の方法を使用することができる。つまり、第2の記録部120は、磁気記録層として構成されてもよい。磁気記録層は、例えば、特開昭48−25503号公報、特開昭51−65606号公報などに記載されている。かかる場合、読取ユニット80は、磁気読取ユニットであってもよい。書込ユニット90は、磁気書込ユニットであってもよい。また、第2の記録部120への記録は、視認可能に行われてもよい。例えば、第2の記録部120は、第1の記録部110と同様の方法で、情報を記録するものであってもよい。
【0100】
B−3.変形例3:
第1の記録部110に記録する第1の情報は、インク残量に関する情報に限らず、インクカートリッジ70の使用の程度に関するものであればよい。「使用の程度」は、「消耗の程度」と捉えてもよい。第1の情報は、インクカートリッジ70の使用実績に基づいて更新され得る情報と捉えてもよい。例えば、第1の記録部110に記録する情報は、インクの使用期限に関する情報であってもよい。インクの使用期限は、インクの品質保証の観点から設定される。例えば、インク残量表示部111には、インクの使用期限までの残り時間や、インクの製造日から使用期限に至る経過時間が段階的に記録されてもよい。使用済表示部112には、インクの使用期限に達したことを記録してもよい。インクの製造日は、識別情報記録部130に記録された情報を利用することができる。
【0101】
B−4.変形例4:
第1の記録部110、第2の記録部120および識別情報記録部130の少なくとも一部は、インクカートリッジ70の筐体にラベルLAを貼り付けて形成されることに限らない。これらの少なくとも一部は、インクカートリッジ70の筐体に直接的に印刷されていてもよい。かかる場合、これらの少なくとも一部について、基材はなくてもよい。例えば、感熱発色剤を含む印刷材を使用して、インクカートリッジ70の筐体に直接的に印刷を行ってもよい。
【0102】
B−5.変形例5:
上述の実施例においては、プリンター20として、インクカートリッジ70が印刷ヘッド61とともに主走査方向に走査する、いわゆるオンキャリッジ方式について示した。ただし、プリンター20は、インクカートリッジ70が印刷ヘッド61とともに走査しない、いわゆるオフキャリッジ方式であってもよい。オフキャリッジ方式では、インクカートリッジ70を装着するフォルダー62は、印刷ヘッド61とは別の場所に設けられる。印刷ヘッド61は、フォルダー62に装着されたインクカートリッジ70からチューブなどの配管を介してインクの供給を受ける。
【0103】
B−6.変形例6:
上述の実施例においては、書込ユニット90およびインクカートリッジ70のうちのインクカートリッジ70が移動することにより、書込ユニット90が、第1の記録部110および第2の記録部120への書き込みを行う構成としたが、インクカートリッジ70に代えて、書込ユニット90が移動する構成としてもよい。あるいは、書込ユニット90およびインクカートリッジ70の両方が移動して行ってもよい。これらの点は、読取ユニット80とインクカートリッジ70との相対移動についても同様に適用可能である。また、これらの点は、オンキャリッジ方式、オフキャリッジ方式のいずれにも適用可能である。
【0104】
また、読取ユニット80または書込ユニット90と、インクカートリッジ70との相対移動の方向は、1つの方向(1次元の方向)に限らない。この相対移動の方向は、2次元の方向としてもよい。例えば、相対移動の方向は、第1の方向と、それに直交する第2の方向であってもよい。あるいは、相対移動の方向は、3次元の方向であってもよい。また、読取ユニット80とインクカートリッジ70との相対移動の方向と、書込ユニット90とインクカートリッジ70との相対移動の方向とは、異なっていてもよい。
【0105】
B−7.変形例7:
複数のインクカートリッジ70をプリンター20に装着する際の、複数のインクカートリッジ70の配置は、任意に設定することができる。例えば、図2では、複数のインクカートリッジ70を、インクカートリッジ70の筐体の短手方向(Y,−Y方向)に配列する構成を示したが、複数のインクカートリッジ70は、インクカートリッジ70の筐体の長手方向(X,−X方向)に配列してもよい。かかる場合、例えば、X方向に沿って、第1の記録部110および第2の記録部120を並べて配置してもよい。かかる場合、X方向を、書込ユニット90とインクカートリッジ70との相対移動の方向としてもよい。
【0106】
また、第1の記録部110第2の記録部120および識別情報記録部130は、上面71上に配置されることに限らず、プリンター20の機能の支障とならない任意の面に配置してよい。例えば、図2において、側面72aのうちのフォルダー62から露出した領域に第1の記録部110、第2の記録部120および識別情報記録部130を配置してもよい。第1の記録部110は、インクカートリッジ70がプリンター20に装着された状態で視認可能な箇所に配置することが望ましい。こうすれば、ユーザーは、インクカートリッジ70をフォルダー62から取り外さなくても、第1の記録部110に記録された第1の情報を視認できる。例えば、図2において、フォルダー62の−X方向が開放されている場合には、第1の記録部110および第2の記録部120を側面73aに配置してもよい。また、第1の記録部110、第2の記録部120および識別情報記録部130は、必ずしも、インクカートリッジ70の同一面に配置されている必要はなく、第1の記録部110および第2の記録部120と、識別情報記録部130とが異なる面に配置されていてもよい。
【0107】
以上の説明からも明らかなように、第1の記録部110、第2の記録部120および識別情報記録部130の配置は、複数のインクカートリッジ70の配列方法、読取ユニット80および書込ユニット90とインクカートリッジ70との相対移動の方向などに応じて、適宜設定することができる。
【0108】
B−8.変形例8:
上述の実施例では、インクカートリッジ70に情報を記録する態様について例示したが、上述した実施例は、印刷動作、または、時間経過により消耗する種々の印刷用部品に適用可能である。例えば、印刷ヘッドに適用してもよい。この場合、インク残量表示部111には、インク残量に代えて、印刷ヘッド61の使用の程度を表示してもよい。使用の程度としては、例えば、印刷ヘッド61のパス(主走査)数、印刷枚数、インク吐出数などとしてもよい。また、使用済表示部112には、印刷ヘッド61が使用限界に達したことを表す情報を記録(表示)してもよい。
【0109】
B−9.変形例9:
プリンター20は、印刷ヘッドユニット60が移動しつつインクを吐出するシリアル式プリンターに限らず、種々のプリンターとすることができる。例えば、固定された印刷ヘッドからインクを吐出するラインプリンターであってもよい。また、プリンター20は、インクジェット式プリンターに限らず、各種流体を使用して印刷を行う種々の印刷装置とすることができる。例えば、プリンター20は、レーザープリンターであってもよい。
【0110】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上で説明した実施例や構成に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができる。例えば、上述した各適用例の構成要素や、実施形態中の要素は、本願の課題の少なくとも一部を解決可能な態様、または、上述した各効果の少なくとも一部を奏する態様において、適宜、組み合わせ、省略、上位概念化を行うことが可能である。また、本願発明は、様々な変形や均等な構成を含むものである。さらに、開示された発明の様々な要素は、様々な組み合わせおよび構成で開示されたが、それらは例示的な物であり、各要素はより多くてもよく、また少なくてもよく、要素は一つであってもよい。それらの態様は本願発明の範囲に含まれる。
【0111】
例えば、上述したインクカートリッジ70は、インク残量表示部111および使用済表示部112のうちの、インク残量表示部111のみを備えていてもよい。あるいは、インクカートリッジ70は、識別情報記録部130を備えていなくてもよい。この場合、プリンター20は、読取ユニット80を備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0112】
20…プリンター
30…制御ユニット
31…CPU
32…出力部
33…残量検出部
34…エラー検出部
35…着脱検出部
37…RAM
38…EEPROM
40…印刷ヘッドユニット搬送機構
41…モーター
42…駆動ベルト
43…プーリー
44…シャフト
50…紙搬送機構
51…モーター
52…プラテン
60…印刷ヘッドユニット
61…印刷ヘッド
62…フォルダー
65…メンテナンスユニット
70a〜70f…インクカートリッジ
71a…上面
72a,73a…側面
80…読取ユニット
81…照射部
82…受光部
90…書込ユニット
91…発熱部
98…操作パネル
99…メモリーカードスロット
110…第1の記録部
111…インク残量表示部
112…使用済表示部
120…第2の記録部
121…記録層
122…隠蔽層
123…第1の領域
124…第2の領域
130…識別情報記録部
131…記録層
132…隠蔽層
133…第1の領域
134…第2の領域
P…印刷媒体
LA…ラベル
HP…ホームポジション
NIR…近赤外線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置に装着される印刷材収容体であり、
前記印刷装置として、前記印刷材収容体に情報を書き込んで記録する書込部であって、前記書込部と前記印刷装置に装着された前記印刷材収用体とが第1の方向に相対移動することにより、前記印刷材収容体に前記情報を書き込んで記録する書込部を備えた印刷装置に装着される印刷材収容体であって、
前記印刷材収容体の使用の程度に関する、更新され得る第1の情報を、非電子的な方法を用いて、更新可能に記録するための第1の記録部と、
前記印刷材収容体に関係する情報であって、前記印刷装置の動作に関する、更新され得る第2の情報を、非電子的な方法を用いて、更新可能に記録するための第2の記録部と
を備え、
前記第1の記録部および前記第2の記録部は、前記印刷材収容体が前記印刷装置に装着された状態において、前記第1の方向への前記相対移動が開始される前の前記書込部と前記印刷材収用体との相対位置から、前記印刷材収用体が前記書込部に対して相対移動する方向に対して、前記第2の記録部が手前側に、前記第1の記録部が奥側となるように前記印刷材収容体上に配置された
印刷材収容体。
【請求項2】
前記印刷装置として、
前記印刷材収容体に記録された情報を読み取る読取部であって、前記読取部と前記印刷装置に装着された前記印刷材収用体とが第2の方向に相対移動することにより、前記印刷材収容体に記録された前記情報を読み取る読取部を備えた印刷装置に装着される
請求項1記載の印刷材収容体であって、
前記印刷材収容体を識別するための識別情報が記録された識別情報記録部を備え、
前記印刷材収容体が前記印刷装置に装着された状態において、前記識別情報記録部は、前記第1の記録部および前記第2の記録部よりも、前記第2の方向への前記相対移動が開始される前の前記読取部と前記印刷材収用体との相対位置から、前記読取部が前記印刷材収用体に対して相対移動する方向側に配置された
印刷材収容体。
【請求項3】
前記第1の情報は、前記印刷材収容体に収容された印刷材の残量に関する情報を含む請求項1または請求項2記載の印刷材収容体。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか記載の印刷材収容体であって、
前記第2の情報は、前記印刷材収容体に収容された前記印刷材を使用して前記印刷装置において実行されたメンテナンスの履歴に関連するメンテナンス情報、前記印刷材収容体に関して前記印刷装置において検出したエラーの履歴に関するエラー情報、および、前記印刷材収容体の着脱履歴に関する着脱情報のうちの少なくとも1つを含む
印刷材収容体。
【請求項5】
前記第2の記録部において、前記第2の情報は、視認不可能、かつ、機械的に読み取り可能に記録される請求項1ないし請求項4のいずれか記載の印刷材収容体。
【請求項6】
請求項5記載の印刷材収容体であって、
前記第2の記録部は、
感熱材料の一部分の領域が熱を受けて変色することによって、前記第2の情報が記録される第1の層であって、前記変色が生じていない領域の一部分が前記熱を受けることによって、前記第2の情報が更新される第1の層と、
前記第1の層よりも外方側に配置され、可視光線のうちの少なくとも一部の波長領域の光線を吸収するとともに、近赤外光線が透過する性質を有する第2の層とを備えた
印刷材収容体。
【請求項7】
印刷装置と、該印刷装置に装着される印刷材収用体とを備えた印刷システムであって、
前記印刷材収用体は、
前記印刷材収容体の使用の程度に関する、更新され得る第1の情報を、非電子的な方法を用いて、更新可能に記録するための第1の記録部と、
前記印刷材収容体に関係する情報であって、前記印刷装置の動作に関する、更新され得る第2の情報を、非電子的な方法を用いて、更新可能に記録するための第2の記録部と
を備え、
前記印刷装置は、
前記第1の記録部に前記第1の情報を書き込んで記録するとともに、前記第2の記録部に前記第2の情報を書き込んで記録する書込部であって、該書込部と前記印刷装置に装着された前記印刷材収用体とが一定の方向に相対移動することにより、前記第1の記録部への前記第1の情報の書き込み、および、前記第2の記録部への前記第2の情報の書き込みを行う書込部を備え、
前記第1の記録部および前記第2の記録部は、前記印刷材収容体が前記印刷装置に装着された状態において、前記第1の方向への前記相対移動が開始される前の前記書込部と前記印刷材収用体との相対位置から、前記印刷材収用体が前記書込部に対して相対移動する方向に対して、前記第2の記録部が手前側に、前記第1の記録部が奥側となるように前記印刷材収容体上に配置された
印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−94983(P2013−94983A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237043(P2011−237043)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】