説明

印刷機構、印刷装置および印刷方法

【課題】長尺基材に印刷される複数の印刷パターンについて、隣り合う一対の印刷パターンの間隔を小さくすることができ、このことにより、長尺基材への面付けを有効に行うことができ、印刷効率を向上させることができる印刷機構、印刷装置および印刷方法を提供する。
【解決手段】印刷定盤34内には、間欠的に搬送される長尺基材Sが通る通路42が形成されている。この通路42における印刷定盤34の上面34a側の開口42aが、スキージ38により孔版36が印刷定盤34に押し付けられたときにおける当該孔版36の印刷領域36aよりも長尺基材Sの搬送方向における下流側に位置するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間欠的に搬送される長尺基材に印刷を行う印刷機構、この印刷機構を備えた印刷装置および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フィルム、樹脂、金属箔等の長尺基材に、レジストパターンや導電パターン等を印刷するようなスクリーン印刷装置が広く知られている。例えば特許文献1等に開示されるように、スクリーン印刷装置は、巻回状の長尺基材を送出する送出部と、送出部から送出された長尺基材を間欠的に搬送する搬送部と、送出部から送出された長尺基材に印刷を行う印刷部と、印刷部により印刷が行われた長尺基材を巻き取る巻取部とを備えている。また、特許文献2や特許文献3等に開示されるように、スクリーン印刷装置では、印刷部において、印刷定盤の上面に沿って長尺基材が間欠的に搬送されるようになっており、この印刷定盤の上方にはスクリーン版やメタルマスク版等からなる孔版が配置されている。そして、孔版上に設けられたスキージが、長尺基材を挟んで孔版を印刷定盤に押し付けながら孔版上で移動することにより、孔版上にある導電ペースト等の印刷材料を、印刷定盤と孔版との間にある長尺基材に転写するようになっている。より詳細には、孔版には、1または複数の貫通孔が形成された印刷領域が設けられており、スキージは、この印刷領域を介して、孔版上にある印刷材料を長尺基材に転写するようになっている。
【0003】
このようなスクリーン印刷装置では、印刷部において長尺基材に印刷を行うときには搬送部は長尺基材を完全に停止させるようになっている。そして、長尺基材に印刷が行われた後、搬送部は長尺基材を所定の距離だけ移動させ、長尺基材における印刷がまだ行われていない箇所を印刷部の印刷定盤上に位置させる。そして、長尺基材が停止した後、印刷部において、長尺基材における印刷がまだ行われていない箇所に印刷を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−273748号公報
【特許文献2】特開2003−124607号公報
【特許文献3】特開2006−62233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のスクリーン印刷装置では、上述したように、長尺基材は間欠的に搬送されるようになっている。しかしながら、このようなスクリーン印刷装置では、長尺基材に印刷される一の印刷パターンと、当該一の印刷パターンの次に印刷される他の印刷パターンとの間隔が大きくなってしまうという問題がある。すなわち、長尺基材に印刷される複数の印刷パターンについて、隣り合う一対の印刷パターンの間隔が大きくなってしまうという問題がある。なぜならば、従来のスクリーン印刷装置では、一般的に、スキージの長さは、長尺基材の搬送方向における孔版の印刷領域の長さよりも十分に大きいため、長尺基材に印刷される各印刷パターンの間隔を大きくしなければ、長尺基材に一の印刷パターンを印刷する際にこの印刷パターンの前に既に長尺基材に印刷された印刷パターンをスキージが押圧してしまい、この印刷パターンを傷つけてしまうおそれがあったからである。
【0006】
また、このような問題点を解消するために、スキージの長さを、長尺基材の搬送方向における孔版の印刷領域の長さとほぼ同じか、あるいは孔版の印刷領域の長さよりもわずかに大きくする方法が考えられる。しかしながら、孔版上で往復移動することによりスキージの両端部は一般的に摩耗しやすいため、スキージの長さが十分に大きくない場合には、スキージの両端部が摩耗すると、印刷材料を孔版上から印刷定盤と孔版との間にある長尺基材に十分に転写することができないおそれがある。このことにより、スキージの長さが十分に大きくない場合には、印刷を長期間行うと、長尺基材に印刷された印刷パターンの端部がかすれてしまうという問題が生じることがある。
【0007】
このため、一般的には、スキージの長さは、長尺基材の搬送方向における孔版の印刷領域の長さよりも十分に大きなものとなっている。しかしながら、この場合には、前述したように、長尺基材に印刷される複数の印刷パターンについて、隣り合う一対の印刷パターンの間隔が大きくなってしまうため、印刷効率が悪いという問題があった。
【0008】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、長尺基材に印刷される複数の印刷パターンについて、隣り合う一対の印刷パターンの間隔を小さくすることができ、このことにより、長尺基材への面付けを有効に行うことができ、印刷効率を向上させることができる印刷機構、印刷装置および印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、間欠的に搬送される長尺基材に印刷を行う印刷機構であって、長尺基材がその上面に沿って間欠的に搬送される印刷定盤と、前記印刷定盤の上方に離間して設けられ、1または複数の貫通孔が形成された印刷領域を有する孔版と、長尺基材を挟んで前記孔版を前記印刷定盤に押し付けながら当該孔版上で往復移動を行い、前記孔版上にある印刷材料を、当該孔版の前記印刷領域を介して、前記印刷定盤と前記孔版との間にある長尺基材に転写するスキージと、を備え、前記印刷定盤内には、間欠的に搬送される長尺基材が通る通路が形成されており、前記通路における前記印刷定盤の上面側の開口が、前記スキージにより前記孔版が前記印刷定盤に押し付けられたときにおける当該孔版の前記印刷領域よりも長尺基材の搬送方向における下流側に位置するようになっていることを特徴とする印刷機構である。
【0010】
このような印刷機構によれば、印刷定盤内には、間欠的に搬送される長尺基材が通る通路が形成されており、この通路における印刷定盤の上面側の開口が、スキージにより孔版が印刷定盤に押し付けられたときにおける当該孔版の印刷領域よりも長尺基材の搬送方向における下流側に位置するようになっている。このことにより、印刷機構において、スキージにより印刷材料が転写された長尺基材は、印刷定盤の上面側に形成された開口を介して、印刷定盤内に形成された通路に送られる。そして、この通路を通過した長尺基材は、例えば印刷定盤の側面から出るようになる。このように、スキージにより印刷材料が転写された長尺基材は、すぐに印刷定盤内の通路に入るため、長尺基材に印刷される複数の印刷パターンについて、隣り合う一対の印刷パターンの間隔を小さくすることができる。すなわち、隣り合う一対の印刷パターンの間隔を小さくした場合でも、長尺基材に一の印刷パターンを印刷する際に、この印刷パターンの前に既に長尺基材に印刷された印刷パターンは通路の中に入っているため、この印刷パターンをスキージが押圧してしまい傷つけてしまうことがない。
【0011】
本発明の印刷機構においては、前記スキージは、長尺基材の搬送方向に対して直交する方向に沿って往復移動を行うようになっていてもよい。
【0012】
この際に、前記通路における前記印刷定盤の上面側の開口は、前記スキージの一対の端部のうち長尺基材の搬送方向における下流側の端部よりも、長尺基材の搬送方向における上流側に位置するようになっていることが好ましい。
【0013】
あるいは、前記スキージは、長尺基材の搬送方向に沿って往復移動を行うようになっていてもよい。
【0014】
本発明の印刷機構においては、前記印刷定盤に設けられた前記通路の幅は、間欠的に搬送される長尺基材の幅よりも大きくなっていることが好ましい。
【0015】
本発明の印刷機構においては、前記印刷定盤内には、間欠的に搬送される長尺基材が通る追加の通路が更に形成されており、前記追加の通路における前記印刷定盤の上面側の開口が、前記スキージにより前記孔版が前記印刷定盤に押し付けられたときにおける当該孔版の前記印刷領域よりも長尺基材の搬送方向における上流側に位置するようになっていることが好ましい。
【0016】
この際に、前記スキージは、長尺基材の搬送方向に対して直交する方向に沿って往復移動を行うようになっていてもよい。
【0017】
この場合には、前記追加の通路における前記印刷定盤の上面側の開口は、前記スキージの一対の端部のうち長尺基材の搬送方向における上流側の端部よりも、長尺基材の搬送方向における下流側に位置するようになっていることが好ましい。
【0018】
あるいは、前記スキージは、長尺基材の搬送方向に沿って往復移動を行うようになっていてもよい。
【0019】
本発明の印刷機構においては、前記孔版の上方において前記スキージから離間して設けられ、当該スキージと一体的に往復移動を行うスクレーパを更に備え、前記孔版上において前記スキージと前記スクレーパとの間に印刷材料が載置されるようになっており、前記スキージおよび前記スクレーパが一方の方向に移動する際には前記スキージにより前記孔版上にある印刷材料が前記印刷定盤と前記孔版との間にある長尺基材に転写され、前記スキージおよび前記スクレーパが前記一方の方向とは反対方向に移動する際には前記スクレーパにより印刷材料が前記孔版上で搬送されるようになっていてもよい。
【0020】
本発明は、間欠的に搬送される長尺基材に印刷を行う印刷機構であって、長尺基材がその上面に沿って間欠的に搬送される印刷定盤と、前記印刷定盤の上方に離間して設けられ、1または複数の貫通孔が形成された印刷領域を有する孔版と、長尺基材を挟んで前記孔版を前記印刷定盤に押し付けながら当該孔版上で往復移動を行い、前記孔版上にある印刷材料を、当該孔版の前記印刷領域を介して、前記印刷定盤と前記孔版との間にある長尺基材に転写するスキージと、を備え、前記スキージは、長尺基材の搬送方向に対して直交する方向に沿って往復移動を行うようになっており、当該スキージの幅は、長尺基材の搬送方向における前記印刷定盤の上面の長さよりも大きくなっており、前記スキージにより前記孔版が前記印刷定盤に押し付けられたときにおける当該スキージの両端部の下方にはそれぞれ案内部材が設けられており、これらの案内部材により前記スキージが往復移動を行う際に当該スキージの両端部が案内されるようになっていることを特徴とする印刷機構である。
【0021】
このような印刷機構によれば、スキージの幅が、長尺基材の搬送方向における印刷定盤の上面の長さよりも大きくなっているので、スキージにより印刷材料が転写された長尺基材は、すぐに印刷定盤の上面と孔版との間に挟まれることがなくなり、このことにより、長尺基材に印刷される複数の印刷パターンについて、隣り合う一対の印刷パターンの間隔を小さくすることができる。すなわち、隣り合う一対の印刷パターンの間隔を小さくした場合でも、長尺基材に一の印刷パターンを印刷する際に、この印刷パターンの前に既に長尺基材に印刷された印刷パターンは印刷定盤の上面と孔版との間に挟まれることがなくなるため、この印刷パターンをスキージが押圧してしまい傷つけてしまうことがない。また、もし案内部材が設けられていない場合には、スキージにより孔版が印刷定盤に押し付けられたときにこのスキージの両端部が下方に押し込まれ、孔版に局所的な力が働くことにより、孔版が破損してしまうおそれがあるという問題がある。これに対し、スキージにより孔版が印刷定盤に押し付けられたときにおける当該スキージの両端部の下方にそれぞれ案内部材を設けることにより、スキージの両端部が案内部材上で案内されるようになるので、スキージにより孔版が印刷定盤に押し付けられたときでも孔版が破損してしまうことを抑制することができる。
【0022】
本発明は、長尺基材を送出する送出部と、前記送出部により送出された長尺基材に印刷を行う、上述の様々な印刷機構のうちいずれか一つの印刷機構と、を備えたことを特徴とする印刷装置である。
【0023】
本発明の印刷装置においては、前記印刷機構により印刷が行われた長尺基材の乾燥を行う乾燥部を更に備えていてもよい。
【0024】
あるいは、前記印刷機構により印刷が行われた長尺基材における印刷材料の硬化を行う硬化部を更に備えていてもよい。
【0025】
本発明は、間欠的に搬送される長尺基材に印刷を行う印刷方法であって、印刷定盤の上面に沿って長尺基材を間欠的に搬送する工程と、長尺基材を挟んでスキージが孔版を印刷定盤に押し付けながら当該孔版上で往復移動を行い、前記孔版上にある印刷材料を、当該孔版における1または複数の貫通孔が形成された印刷領域を介して、前記印刷定盤と前記孔版との間にある長尺基材に転写する工程と、印刷材料が転写された長尺基材を、前記印刷定盤の上面側に形成された開口を介して、前記印刷定盤内に形成された通路に送る工程と、を備えたことを特徴とする印刷方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の印刷機構、印刷装置および印刷方法によれば、長尺基材に印刷される複数の印刷パターンについて、隣り合う一対の印刷パターンの間隔を小さくすることができ、このことにより、長尺基材への面付けを有効に行うことができ、印刷効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一の実施の形態による印刷装置の構成の概略を示す構成図である。
【図2】図1に示す印刷装置における印刷機構の構成を示す上面図である。
【図3】図2に示す印刷機構をA−A方向から見たときの側面図である。
【図4】(a)〜(d)は、図2に示す印刷機構をB−B方向から見たときの側断面図である。
【図5】(a)は、本発明による印刷装置を用いたときにおける、長尺基材に印刷された印刷パターンを示す図であり、(b)は、従来の印刷装置を用いたときにおける、長尺基材に印刷された印刷パターンを示す図である。
【図6】図1に示す印刷装置における印刷機構の他の構成を示す上面図である。
【図7】図6に示す印刷機構をC−C方向から見たときの側面図である。
【図8】図1に示す印刷装置における印刷機構の更に他の構成を示す側面図である。
【図9】図1に示す印刷装置における印刷機構の更に他の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の一の実施の形態について説明する。図1乃至図5は、本実施の形態に係る印刷機構およびこの印刷機構を備えた印刷装置を示す図である。このうち、図1は、本実施の形態による印刷装置の構成の概略を示す構成図であり、図2は、図1に示す印刷装置における印刷機構の構成を示す上面図であり、図3は、図2に示す印刷機構をA−A方向から見たときの側面図である。また、図4(a)〜(d)は、図2に示す印刷機構をB−B方向から見たときの側断面図であり、図5(a)は、本実施の形態による印刷装置を用いたときにおける、長尺基材に印刷された印刷パターンを示す図であり、図5(b)は、従来の印刷装置を用いたときにおける、長尺基材に印刷された印刷パターンを示す図である。
【0029】
図1に示すように、本実施の形態による印刷装置10は、巻回状の長尺基材Sを送出する送出部(給紙部)20と、送出部20により送出された長尺基材Sの印刷を行う印刷機構30と、印刷機構30により印刷が行われた長尺基材Sの乾燥を行う乾燥部50と、乾燥部50により乾燥が行われた長尺基材Sを巻き取る巻取部60とを備えている。なお、本実施の形態の印刷装置10において印刷が行われる長尺基材Sは、フィルム、樹脂、金属箔等の細長いシート材料から構成されている。この長尺基材Sの幅の大きさは例えば400mmとなっている。
【0030】
また、本実施の形態による印刷装置10では、長尺基材Sは間欠的に搬送されるようになっている。より具体的には、印刷機構30において長尺基材Sに印刷を行うときには長尺基材Sを完全に停止するようになっており、長尺基材Sに印刷が行われた後、長尺基材Sを所定の距離だけ移動させ、長尺基材Sにおける印刷がまだ行われていない箇所を印刷機構30における印刷定盤34(後述)上に位置させるようになっている。そして、長尺基材Sが停止した後、印刷機構30において、長尺基材Sにおける印刷がまだ行われていない箇所に印刷を行う。このように、長尺基材Sに対して所定の距離分の搬送および停止を繰り返し行うことを、本願明細書では「長尺基材Sを間欠的に搬送する」という。
【0031】
送出部20は送出ローラ22を有しており、この送出ローラ22に長尺基材Sが巻回されるようになっている。そして、この送出ローラ22から印刷機構30に向かって長尺基材Sが送出されるようになっている。
【0032】
印刷機構30は、長尺基材Sがその上面に沿って間欠的に搬送される印刷定盤34と、印刷定盤34の上方に離間して設けられた孔版36と、孔版36の上方に設けられたスキージ38とを備えている。ここで、孔版36としては、例えばスクリーン版やメタルマスク版等が用いられるようになっている。また、図2に示すように、孔版36には、1または複数の貫通孔が形成された印刷領域36aが設けられている。そして、スキージ38は、長尺基材Sを挟んで孔版36を印刷定盤34に押し付けながら当該孔版36上で往復移動を行うようになっており、このことにより、孔版36上にある印刷材料P(図4参照)を、孔版36の印刷領域36aを介して、印刷定盤34と孔版36との間にある長尺基材Sに転写するようになっている。なお、印刷材料Pとしては、例えば導電ペースト等が用いられるようになっている。
【0033】
以下、このような印刷機構30の構成の詳細について図2乃至図4を用いて説明する。図2に示すように、スキージ38は、長尺基材Sの搬送方向(図2における左方向)に対して直交する方向(図2における上下方向)に沿って往復移動を行うようになっている。
【0034】
孔版36の外形寸法は、図2において例えば縦750mm、横750mmとなっている。一方、孔版36に形成された印刷領域36aの外形寸法は、図2において例えば縦350mm、横350mmとなっている。また、スキージ38の長さは、図2における孔版36の横方向長さ(750mm)よりは小さいが印刷領域36aの横方向長さ(350mm)よりは大きくなっている。具体的には、スキージ38の長さは、例えば500mmとなっている。また、孔版36は、長方形や正方形の中空の枠体からなる孔版支持部37により支持されるようになっている。
【0035】
また、孔版36の上方において、スクレーパ40がスキージ38から離間して設けられている。このスクレーパ40はスキージ38と一体的に往復移動を行うようになっている。より詳細には、図4に示すように、スキージ38およびスクレーパ40はスキージ支持部41により支持されるようになっている。そして、図示しない駆動部により、スキージ支持部41が図4における左右方向に移動させられるようになっている。このことにより、スキージ38およびスクレーパ40は、図2の上下方向に沿って一体的に往復移動を行うようになっている。
【0036】
スキージ38およびスクレーパ40の動作について、図4を用いてより詳細に説明する。まず、図4(a)に示すように、孔版36上においてスキージ38とスクレーパ40との間に印刷材料Pが載置される。そして、スキージ38およびスクレーパ40が図4における左方向に移動する際にはスキージ38がスキージ支持部41から下方に伸びることにより孔版36が長尺基材Sを挟んで印刷定盤34に押し付けられるようになる。このことにより、スキージ38が図4における左方向に移動すると、孔版36上にある印刷材料Pがスキージ38により印刷定盤34と孔版36との間にある長尺基材Sに転写される。なお、このような動作が行われる間は、長尺基材Sは停止している。そして、図4(b)に示すように、スキージ38およびスクレーパ40が左方向に移動し終わると、スキージ38がスキージ支持部41に向かって上方に退避し、図4(c)に示すように、孔版36が印刷定盤34上の長尺基材Sから離間するようになる。その後、図4(d)に示すように、スキージ38およびスクレーパ40が図4における右方向に移動する。この際に、スクレーパ40により印刷材料Pが孔版36上で右方向に搬送されるようになる。このようにして、次の印刷に備えて、スキージ38およびスクレーパ40が元の位置に戻るとともに、印刷材料Pも元の位置に戻るようになる。なお、スクレーパ40により印刷材料Pが孔版36上で右方向に搬送される間、長尺基材Sは所定の距離だけ移動し、長尺基材Sにおける印刷がまだ行われていない箇所が孔版36における印刷領域36aの真下に位置するようになる。
【0037】
図2において、長尺基材Sにおける参照符号S1で示される二点鎖線の箇所は、印刷機構30によりこれから印刷が行われるべき領域を示し、長尺基材Sにおける参照符号S2で示される実線の箇所は、印刷機構30により既に印刷が行われたパターン印刷を示している。
【0038】
本実施の形態の印刷機構30では、印刷定盤34の上面34a(図3参照)には、長尺基材Sを吸着固定するための吸引孔(図示せず)が設けられている。また、図1乃至図3に示すように、印刷定盤34内には、間欠的に搬送される長尺基材Sが通る通路42が形成されている。そして、図2に示すように、この通路42における印刷定盤34の上面34a側の開口42aは、スキージ38により孔版36が印刷定盤34に押し付けられたときにおける当該孔版36の印刷領域36aよりも長尺基材Sの搬送方向における下流側(すなわち、図2における左側)に位置するようになっている。このことにより、スキージ38により印刷材料Pが転写された長尺基材Sは、印刷定盤34の上面34a側に形成された開口42aを介して、印刷定盤34内に形成された通路42に送られるようになる。
【0039】
印刷定盤34内に設けられた通路42の幅(図2における上下方向の幅)は、間欠的に搬送される長尺基材Sの幅よりも大きくなっている。具体的には、長尺基材Sの幅が例えば400mmであるのに対し、通路42の幅は例えば440mmとなっている。
【0040】
また、上述のような通路42における印刷定盤34の上面34a側の開口42aは、スキージ38の一対の端部38a、38bのうち長尺基材Sの搬送方向における下流側の端部38aよりも、長尺基材Sの搬送方向における上流側(すなわち、図2における右側)に位置するようになっている。このことにより、スキージ38により孔版36が印刷定盤34に押し付けられたときにおいて、スキージ38の端部38aは開口42a上ではなく印刷定盤34上に位置するようになる。もしスキージ38の端部38aが開口42a上に位置したときには、スキージ38により孔版36が印刷定盤34に押し付けられたときにこのスキージ38の端部38aが開口42a内に入り込み、孔版36に局所的な力が働くことにより、孔版36が破損してしまうおそれがあるという問題がある。これに対し、本実施の形態では、スキージ38の端部38aが開口42a上ではなく印刷定盤34上に位置するようになるので、スキージ38により孔版36が印刷定盤34に押し付けられたときでも孔版36が破損してしまうことを抑制することができる。
【0041】
そして、スキージ38の端部38aが開口42a上ではなく印刷定盤34上に位置することにより、スキージ38により孔版36上の印刷材料Pを長尺基材Sに転写する際に、このスキージ38は開口42aを覆いながら図2における上下方向に移動するようになる。
【0042】
乾燥部50にはヒータ52が設けられている。このヒータ52によって、印刷機構30により印刷が行われた長尺基材Sの乾燥が行われるようになっている。
【0043】
巻取部60は巻取ローラ62を有しており、この巻取ローラ62に長尺基材Sが巻き取られるようになっている。
【0044】
次に、このような構成からなる本実施の形態の印刷装置10の動作について説明する。
【0045】
まず、送出部20の送出ローラ22から長尺基材Sが送出され、この長尺基材Sは印刷機構30の印刷定盤34上に送られる。この際に、長尺基材Sは間欠的に搬送されるようになる。そして、長尺基材Sにおける印刷が行われるべき箇所が孔版36における印刷領域36aの真下に位置すると、長尺基材Sが停止する。この際に、印刷定盤34の上面34aに設けられた吸引孔により、長尺基材Sが吸着固定される。その後、図4(a)に示すように、スキージ38が長尺基材Sを挟んで孔版36を印刷定盤34に押し付けながら、スキージ38およびスクレーパ40が一体的に図4における左方向に移動する。このことにより、孔版36上にある印刷材料Pが、孔版36の印刷領域36aを介して、印刷定盤34と孔版36との間にある長尺基材Sに転写される。
【0046】
スキージ38により長尺基材Sに印刷が行われた後、長尺基材Sは再び搬送されるようになる。また、スキージ38がスキージ支持部41に向かって上方に退避し、その後、図4(d)に示すように、スキージ38およびスクレーパ40が図4における右方向に移動する。この際に、スクレーパ40により印刷材料Pが孔版36上で右方向に搬送される。このようにして、次の印刷に備えて、スキージ38およびスクレーパ40が元の位置に戻るとともに、印刷材料Pも元の位置に戻る。そして、長尺基材Sが所定の距離だけ搬送され、長尺基材Sにおける印刷がまだ行われていない箇所が孔版36における印刷領域36aの真下に位置すると、長尺基材Sが再び停止し、次の印刷が行われるようになる。
【0047】
また、印刷機構30において、スキージ38により印刷材料Pが転写された長尺基材Sは、印刷定盤34の上面34a側に形成された開口42aを介して、印刷定盤34内に形成された通路42に送られる。そして、この通路42を通過した長尺基材Sは、印刷定盤34の側面から出るようになる。
【0048】
印刷機構30により印刷が行われた長尺基材Sは、次に乾燥部50に送られる。乾燥部50において、ヒータ52により熱が与えられることにより、長尺基材Sの乾燥が行われる。乾燥部50により乾燥が行われた長尺基材Sは、巻取部60の巻取ローラ62により巻き取られる。なお、本実施の形態の印刷装置10では、巻取部60の巻取ローラ62により長尺基材Sが巻き取られる代わりに、裁断機(図示せず)により長尺基材Sが所定のサイズに裁断されて収納部(図示せず)に収納されるようになっていてもよい。
【0049】
以上のように本実施の形態の印刷装置10および印刷方法によれば、印刷定盤34内には、間欠的に搬送される長尺基材Sが通る通路42が形成されており、この通路42における印刷定盤34の上面34a側の開口42aが、スキージ38により孔版36が印刷定盤34に押し付けられたときにおける当該孔版36の印刷領域36aよりも長尺基材Sの搬送方向における下流側に位置するようになっている。このことにより、印刷機構30において、スキージ38により印刷材料Pが転写された長尺基材Sは、印刷定盤34の上面34a側に形成された開口42aを介して、印刷定盤34内に形成された通路42に送られる。そして、この通路42を通過した長尺基材Sは、印刷定盤34の側面から出るようになる。このように、スキージ38により印刷材料Pが転写された長尺基材Sは、すぐに印刷定盤34内の通路42に入るため、長尺基材Sに印刷される複数の印刷パターンについて、隣り合う一対の印刷パターンの間隔を小さくすることができる。すなわち、隣り合う一対の印刷パターンの間隔を小さくした場合でも、長尺基材Sに一の印刷パターンを印刷する際に、この印刷パターンの前に既に長尺基材Sに印刷された印刷パターンは通路42の中に入っているため、この印刷パターンをスキージ38が押圧してしまい傷つけてしまうことがない。
【0050】
このことについて図5を用いてより詳細に説明する。図5(a)は、本実施の形態による印刷装置10を用いたときにおける、長尺基材Sに印刷された印刷パターンを示す図であり、図5(b)は、従来の印刷装置を用いたときにおける、長尺基材Sに印刷された印刷パターンを示す図である。また、図5において、参照符号S1は、印刷機構30によりこれから長尺基材Sに印刷が行われるべき領域を示し、参照符号S2は、印刷機構30により長尺基材Sに既に印刷が行われた印刷パターンを示している。
【0051】
図5(a)に示すように、本実施の形態による印刷装置10を用いた場合には、スキージ38により印刷材料Pが転写された長尺基材Sは、すぐに印刷定盤34内の通路42に入るため、長尺基材Sに印刷される複数の印刷パターンについて、隣り合う一対の印刷パターンの間隔を例えば50mmという比較的短い距離にすることができる。これに対し、図5(b)に示すように、従来の印刷装置を用いた場合には、長尺基材Sに印刷される複数の印刷パターンについて、隣り合う一対の印刷パターンの間隔を例えば200mm以上としなければならない。従来の印刷装置では、長尺基材Sに印刷される各印刷パターンの間隔を大きくしなければ、長尺基材Sに一の印刷パターンを印刷する際にこの印刷パターンの前に既に長尺基材Sに印刷された印刷パターンをスキージが押圧してしまい、この印刷パターンを傷つけてしまうおそれがあるからである。これに対し、本実施の形態による印刷装置10では、スキージ38により印刷材料Pが転写された長尺基材Sは、すぐに印刷定盤34内の通路42に入るため、長尺基材Sに印刷される各印刷パターンの間隔が小さい場合でも、既に長尺基材Sに印刷された印刷パターンをスキージ38が押圧して傷つけてしまうことはない。
【0052】
このように、本実施の形態の印刷装置10および印刷方法によれば、長尺基材Sに印刷される複数の印刷パターンについて、隣り合う一対の印刷パターンの間隔を小さくすることができる。
【0053】
また、本実施の形態の印刷装置10では、スキージ38は、長尺基材Sの搬送方向に対して直交する方向に沿って往復移動を行うようになっており、通路42における印刷定盤34の上面34a側の開口42aは、スキージ38の一対の端部38a、38bのうち長尺基材Sの搬送方向における下流側の端部38aよりも、長尺基材Sの搬送方向における上流側に位置するようになっている。このため、スキージ38の端部38aが開口42a上ではなく印刷定盤34上に位置するようになるので、スキージ38により孔版36が印刷定盤34に押し付けられたときでも孔版36が破損してしまうことを抑制することができる。
【0054】
なお、本実施の形態による印刷装置10は、上記の態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。本実施の形態による印刷装置10の他の例について、図6および図7を用いて説明する。ここで、図6は、図1に示す印刷装置10における印刷機構30の他の構成を示す上面図であり、図7は、図6に示す印刷機構30をC−C方向から見たときの側面図である。
【0055】
図6および図7に示す印刷機構30では、印刷定盤34内において、通路42の他に、間欠的に搬送される長尺基材Sが通る追加の通路44が更に形成されている。そして、図6に示すように、この追加の通路44における印刷定盤34の上面34a(図7参照)側の開口44aは、スキージ38により孔版36が印刷定盤34に押し付けられたときにおける当該孔版36の印刷領域36aよりも長尺基材Sの搬送方向における上流側(すなわち、図6における右側)に位置するようになっている。このことにより、孔版36の印刷領域36aの真下の箇所に送られる長尺基材Sは、印刷定盤34の上面34a側に形成された開口44aを介して、印刷定盤34内に形成された追加の通路44から印刷定盤34上に送られるようになる。
【0056】
印刷定盤34内に設けられた追加の通路44の幅(図6における上下方向の幅)は、間欠的に搬送される長尺基材Sの幅よりも大きくなっている。具体的には、長尺基材Sの幅が例えば400mmであるのに対し、追加の通路44の幅は例えば440mmとなっている。
【0057】
また、上述のような追加の通路44における印刷定盤34の上面34a側の開口44aは、スキージ38の一対の端部38a、38bのうち長尺基材Sの搬送方向における上流側の端部38bよりも、長尺基材Sの搬送方向における下流側(すなわち、図6における左側)に位置するようになっている。このことにより、スキージ38により孔版36が印刷定盤34に押し付けられたときにおいて、スキージ38の端部38bは開口44a上ではなく印刷定盤34上に位置するようになる。もしスキージ38の端部38bが開口44a上に位置したときには、スキージ38により孔版36が印刷定盤34に押し付けられたときにこのスキージ38の端部38bが開口44a内に入り込み、孔版36に局所的な力が働くことにより、孔版36が破損してしまうおそれがあるという問題がある。これに対し、本実施の形態では、スキージ38の端部38bが開口44a上ではなく印刷定盤34上に位置するようになるので、スキージ38により孔版36が印刷定盤34に押し付けられたときでも孔版36が破損してしまうことを抑制することができる。
【0058】
そして、スキージ38の端部38bが開口44a上ではなく印刷定盤34上に位置することにより、スキージ38により孔版36上の印刷材料Pを長尺基材Sに転写する際に、このスキージ38は開口44aを覆いながら図6における上下方向に移動するようになる。
【0059】
図6および図7に示す印刷機構30によれば、印刷定盤34内には、通路42の他に、間欠的に搬送される長尺基材Sが通る追加の通路44が更に形成されており、この追加の通路44における印刷定盤34の上面34a側の開口44aが、スキージ38により孔版36が印刷定盤34に押し付けられたときにおける当該孔版36の印刷領域36aよりも長尺基材Sの搬送方向における上流側に位置するようになっている。このことにより、孔版36の印刷領域36aの真下の箇所に送られる長尺基材Sは、印刷定盤34の上面34a側に形成された開口44aを介して、印刷定盤34内に形成された追加の通路44から印刷定盤34上に送られるようになる。このような印刷機構30は、とりわけ当該印刷機構30の上流側において長尺基材Sに対して光学系フィルム等の成膜処理を行う際に、以下に示すような作用効果を奏することができるようになる。すなわち、印刷機構30の上流側において長尺基材Sに対して成膜処理が行われる場合には、印刷機構30において、スキージ38が長尺基材Sを挟んで孔版36を印刷定盤34に押し付けながら当該孔版36上で往復移動を行う際に、スキージ38によって押圧されることにより孔版36が長尺基材S上の成膜材料(例えば、光学系フィルム等)に接触し、この成膜材料を傷つけてしまうおそれがある。これに対し、印刷定盤34内に、通路42の他に、間欠的に搬送される長尺基材Sが通る追加の通路44を更に形成した場合には、この追加の通路44から開口44aを介して孔版36の印刷領域36aの真下の箇所に長尺基材Sが送られるようになるので、長尺基材Sの搬送方向における孔版36の印刷領域36aの上流側の箇所で、長尺基材S上の成膜材料が孔版36により傷つけられてしまうことを抑制することができる。
【0060】
また、図6および図7に示す印刷機構30では、スキージ38は、長尺基材Sの搬送方向に対して直交する方向に沿って往復移動を行うようになっており、追加の通路44における印刷定盤34の上面34a側の開口44aは、スキージ38の一対の端部38a、38bのうち長尺基材Sの搬送方向における上流側の端部38bよりも、長尺基材Sの搬送方向における下流側に位置するようになっている。このため、スキージ38の端部38bが開口44a上ではなく印刷定盤34上に位置するようになるので、スキージ38により孔版36が印刷定盤34に押し付けられたときでも孔版36が破損してしまうことを抑制することができる。
【0061】
また、本実施の形態による印刷機構30において、スキージ38は、長尺基材Sの搬送方向に対して直交する方向に沿って往復移動を行うことに限定されることはない。代わりに、スキージ38は、長尺基材Sの搬送方向に沿って往復移動を行うようになっていてもよい。図8に、スキージ38が長尺基材Sの搬送方向に沿って往復移動を行うような印刷機構30を示す。
【0062】
図8に示すように、更なる変形例における印刷機構30において、スキージ38は、図8の矢印に示すように、長尺基材Sの搬送方向に沿って往復移動を行うようになっている。また、図8に示す印刷機構30でも、印刷定盤34内には、間欠的に搬送される長尺基材Sが通る通路42が形成されている。そして、図8に示すように、この通路42における印刷定盤34の上面34a側の開口42aは、スキージ38により孔版36が印刷定盤34に押し付けられたときにおける当該孔版36の印刷領域(図8では図示せず)よりも長尺基材Sの搬送方向における下流側(すなわち、図8における左側)に位置するようになっている。このことにより、スキージ38により印刷材料Pが転写された長尺基材Sは、印刷定盤34の上面34a側に形成された開口42aを介して、印刷定盤34内に形成された通路42に送られるようになる。
【0063】
図8に示すような印刷機構30でも、図2や図3等に示す印刷機構30と同様に、スキージ38により印刷材料Pが転写された長尺基材Sは、印刷定盤34の上面34a側に形成された開口42aを介して、印刷定盤34内に形成された通路42に送られる。そして、この通路42を通過した長尺基材Sは、印刷定盤34の側面から出るようになる。このように、スキージ38により印刷材料Pが転写された長尺基材Sは、すぐに印刷定盤34内の通路42に入るため、長尺基材Sに印刷される複数の印刷パターンについて、隣り合う一対の印刷パターンの間隔を小さくすることができる。すなわち、隣り合う一対の印刷パターンの間隔を小さくした場合でも、長尺基材Sに一の印刷パターンを印刷する際に、この印刷パターンの前に既に長尺基材Sに印刷された印刷パターンは通路42の中に入っているため、この印刷パターンをスキージ38が押圧してしまい傷つけてしまうことがない。
【0064】
また、図8に示すような印刷機構30において、図6や図7等に示す印刷機構30と同様に、印刷定盤34内において、通路42の他に、間欠的に搬送される長尺基材Sが通る追加の通路(図8では図示せず)が更に形成されていてもよい。この場合、この追加の通路における印刷定盤34の上面34a側の開口は、スキージ38により孔版36が印刷定盤34に押し付けられたときにおける当該孔版36の印刷領域36aよりも長尺基材Sの搬送方向における上流側に位置するようになっている。このことにより、孔版36の印刷領域36aの真下の箇所に送られる長尺基材Sは、印刷定盤34の上面34a側に形成された開口を介して、印刷定盤34内に形成された追加の通路から印刷定盤34上に送られるようになる。
【0065】
また、本発明による印刷機構の更に他の構成について図9を用いて説明する。図9に示す印刷機構30は、長尺基材Sがその上面34aに沿って間欠的に搬送される印刷定盤34と、印刷定盤34の上方に離間して設けられ、1または複数の貫通孔が形成された印刷領域(図9では図示せず)を有する孔版36と、孔版36の上方に設けられたスキージ38とを備えている。スキージ38は、長尺基材Sを挟んで孔版36を印刷定盤34に押し付けながら当該孔版36上で往復移動を行い、孔版36上にある印刷材料Pを、当該孔版36の印刷領域を介して、印刷定盤34と孔版36との間にある長尺基材Sに転写するようになっている。図9に示す印刷機構30では、スキージ38は、長尺基材Sの搬送方向に対して直交する方向に沿って往復移動を行うようになっている。また、図9に示すように、印刷定盤34は、その縦断面が台形形状となっており、スキージ38の幅は、長尺基材Sの搬送方向(図9における左右方向)における印刷定盤34の上面34aの長さよりも大きくなっている。
【0066】
図9に示す印刷機構30では、スキージ38により孔版36が印刷定盤34に押し付けられたときにおける当該スキージ38の両端部38a、38bの下方にはそれぞれ案内部材48が設けられている。そして、これらの案内部材48により、スキージ38が図9に示す紙面に対して直交する方向に往復移動を行う際に、当該スキージ38の両端部38a、38bが案内されるようになっている。
【0067】
図9に示すような印刷機構30によれば、スキージ38の幅は、長尺基材Sの搬送方向(図9における左右方向)における印刷定盤34の上面34aの長さよりも大きくなっているので、スキージ38により印刷材料Pが転写された長尺基材Sは、すぐに印刷定盤34の上面34aと孔版36との間に挟まれることがなくなり、このことにより、長尺基材Sに印刷される複数の印刷パターンについて、隣り合う一対の印刷パターンの間隔を小さくすることができる。すなわち、隣り合う一対の印刷パターンの間隔を小さくした場合でも、長尺基材Sに一の印刷パターンを印刷する際に、この印刷パターンの前に既に長尺基材Sに印刷された印刷パターンは印刷定盤34の上面34aと孔版36との間に挟まれることがなくなるため、この印刷パターンをスキージ38が押圧してしまい傷つけてしまうことがない。また、もし案内部材48が設けられていない場合には、スキージ38により孔版36が印刷定盤34に押し付けられたときにこのスキージ38の両端部38a、38bが下方に押し込まれ、孔版36に局所的な力が働くことにより、孔版36が破損してしまうおそれがあるという問題がある。これに対し、スキージ38により孔版36が印刷定盤34に押し付けられたときにおける当該スキージ38の両端部38a、38bの下方にそれぞれ案内部材48を設けることにより、スキージ38の両端部38a、38bが案内部材48上で案内されるようになるので、スキージ38により孔版36が印刷定盤34に押し付けられたときでも孔版36が破損してしまうことを抑制することができる。
【0068】
また、本発明による印刷装置10の更に他の変形例として、印刷機構30により印刷が行われた長尺基材Sの乾燥を行う乾燥部50の代わりに、印刷機構30により印刷が行われた長尺基材Sにおける印刷材料Pの硬化を行う硬化部が設けられていてもよい。このような硬化部は、長尺基材Sに対して例えば紫外線を照射することにより、この長尺基材Sにおける印刷材料Pを硬化するようになっている。
【符号の説明】
【0069】
10 印刷装置
20 送出部
22 送出ローラ
30 印刷機構
34 印刷定盤
36 孔版
36a 印刷領域
37 孔版支持部
38 スキージ
38a、38b 端部
40 スクレーパ
41 スキージ支持部
42 通路
42a 開口
44 追加の通路
44a 開口
48 案内部材
50 乾燥部
52 ヒータ
60 巻取部
62 巻取ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間欠的に搬送される長尺基材に印刷を行う印刷機構であって、
長尺基材がその上面に沿って間欠的に搬送される印刷定盤と、
前記印刷定盤の上方に離間して設けられ、1または複数の貫通孔が形成された印刷領域を有する孔版と、
長尺基材を挟んで前記孔版を前記印刷定盤に押し付けながら当該孔版上で往復移動を行い、前記孔版上にある印刷材料を、当該孔版の前記印刷領域を介して、前記印刷定盤と前記孔版との間にある長尺基材に転写するスキージと、
を備え、
前記印刷定盤内には、間欠的に搬送される長尺基材が通る通路が形成されており、前記通路における前記印刷定盤の上面側の開口が、前記スキージにより前記孔版が前記印刷定盤に押し付けられたときにおける当該孔版の前記印刷領域よりも長尺基材の搬送方向における下流側に位置するようになっていることを特徴とする印刷機構。
【請求項2】
前記スキージは、長尺基材の搬送方向に対して直交する方向に沿って往復移動を行うようになっていることを特徴とする請求項1記載の印刷機構。
【請求項3】
前記通路における前記印刷定盤の上面側の開口は、前記スキージの一対の端部のうち長尺基材の搬送方向における下流側の端部よりも、長尺基材の搬送方向における上流側に位置するようになっていることを特徴とする請求項2記載の印刷機構。
【請求項4】
前記スキージは、長尺基材の搬送方向に沿って往復移動を行うようになっていることを特徴とする請求項1記載の印刷機構。
【請求項5】
前記印刷定盤に設けられた前記通路の幅は、間欠的に搬送される長尺基材の幅よりも大きくなっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の印刷機構。
【請求項6】
前記印刷定盤内には、間欠的に搬送される長尺基材が通る追加の通路が更に形成されており、前記追加の通路における前記印刷定盤の上面側の開口が、前記スキージにより前記孔版が前記印刷定盤に押し付けられたときにおける当該孔版の前記印刷領域よりも長尺基材の搬送方向における上流側に位置するようになっていることを特徴とする請求項1記載の印刷機構。
【請求項7】
前記スキージは、長尺基材の搬送方向に対して直交する方向に沿って往復移動を行うようになっていることを特徴とする請求項6記載の印刷機構。
【請求項8】
前記追加の通路における前記印刷定盤の上面側の開口は、前記スキージの一対の端部のうち長尺基材の搬送方向における上流側の端部よりも、長尺基材の搬送方向における下流側に位置するようになっていることを特徴とする請求項7記載の印刷機構。
【請求項9】
前記スキージは、長尺基材の搬送方向に沿って往復移動を行うようになっていることを特徴とする請求項6記載の印刷機構。
【請求項10】
前記孔版の上方において前記スキージから離間して設けられ、当該スキージと一体的に往復移動を行うスクレーパを更に備え、
前記孔版上において前記スキージと前記スクレーパとの間に印刷材料が載置されるようになっており、前記スキージおよび前記スクレーパが一方の方向に移動する際には前記スキージにより前記孔版上にある印刷材料が前記印刷定盤と前記孔版との間にある長尺基材に転写され、前記スキージおよび前記スクレーパが前記一方の方向とは反対方向に移動する際には前記スクレーパにより印刷材料が前記孔版上で搬送されるようになっていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の印刷機構。
【請求項11】
間欠的に搬送される長尺基材に印刷を行う印刷機構であって、
長尺基材がその上面に沿って間欠的に搬送される印刷定盤と、
前記印刷定盤の上方に離間して設けられ、1または複数の貫通孔が形成された印刷領域を有する孔版と、
長尺基材を挟んで前記孔版を前記印刷定盤に押し付けながら当該孔版上で往復移動を行い、前記孔版上にある印刷材料を、当該孔版の前記印刷領域を介して、前記印刷定盤と前記孔版との間にある長尺基材に転写するスキージと、
を備え、
前記スキージは、長尺基材の搬送方向に対して直交する方向に沿って往復移動を行うようになっており、当該スキージの幅は、長尺基材の搬送方向における前記印刷定盤の上面の長さよりも大きくなっており、
前記スキージにより前記孔版が前記印刷定盤に押し付けられたときにおける当該スキージの両端部の下方にはそれぞれ案内部材が設けられており、これらの案内部材により前記スキージが往復移動を行う際に当該スキージの両端部が案内されるようになっていることを特徴とする印刷機構。
【請求項12】
長尺基材を送出する送出部と、
前記送出部により送出された長尺基材に印刷を行う、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の印刷機構と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項13】
前記印刷機構により印刷が行われた長尺基材の乾燥を行う乾燥部を更に備えたことを特徴とする請求項12記載の印刷装置。
【請求項14】
前記印刷機構により印刷が行われた長尺基材における印刷材料の硬化を行う硬化部を更に備えたことを特徴とする請求項12記載の印刷装置。
【請求項15】
間欠的に搬送される長尺基材に印刷を行う印刷方法であって、
印刷定盤の上面に沿って長尺基材を間欠的に搬送する工程と、
長尺基材を挟んでスキージが孔版を前記印刷定盤に押し付けながら当該孔版上で往復移動を行い、前記孔版上にある印刷材料を、当該孔版における1または複数の貫通孔が形成された印刷領域を介して、前記印刷定盤と前記孔版との間にある長尺基材に転写する工程と、
印刷材料が転写された長尺基材を、前記印刷定盤の上面側に形成された開口を介して、前記印刷定盤内に形成された通路に送る工程と、
を備えたことを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−232526(P2012−232526A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103590(P2011−103590)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】