説明

印刷機

【課題】印刷用紙を把持しているグリッパを突出位置から退避位置に位置変更させるときの、印刷用紙の搬送方向の位置ずれを抑制することで印刷品質を確保することができる印刷機を提供する。
【解決手段】搬送されてきた印刷用紙の先端を把持するように構成されたグリッパ20が、胴10Aに形成された凹部10Kに設けられ、グリッパ20は、胴10Aの外周面から径方向外側に突出した突出位置と胴10Aの外周面から径方向内側に引退した退避位置とに位置変更自在となるように、回動軸芯X1回りで回動自在に構成されている印刷機であって、回動軸芯X1は、凹部10Kを構成する側壁のうちの印刷用紙搬送方向上流側の側壁10aと胴10Aの外周面との接続部Jに配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送されてきた印刷用紙の先端を把持するように構成されたグリッパが設けられた印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷機は、印刷用紙の先端を把持して該紙を胴の外周面上に保持して搬送することができるように、胴の外周面から径方向外側に一部が突出した開閉自在なグリッパを胴に形成された凹部に備えている。かかる印刷機にあっては、上流側の胴のグリッパで把持した印刷用紙を胴の回転により胴の外周面上に保持しつつ搬送し、この上流側の胴のグリッパと下流側の胴のグリッパとが相対する回転位置となったときに、上流側の胴のグリッパは、把持している印刷用紙を放すべく、開放動作し、同時に下流側の胴のグリッパが放された印刷用紙を把持すべく、開放状態から閉じ状態に切り替わることにより、両グリッパ間で、紙の咥え替えが行われ、上流側の胴で搬送されてきた印刷用紙を下流側の胴に受け渡すことができる。
【0003】
ところで、このような印刷機においては、印刷用紙に印刷を行うためのインクジェット式の印刷部が胴に対して近接して配置されていたり、印刷された印刷用紙に表面処理を施すことができる処理装置の処理部が胴に保持されている紙に押し付け可能に設けられたりする。このような場合、グリッパが胴の外周面から径方向外側に突出したまま胴を回転させると、グリッパが前記印刷部や処理部に衝突して、両者が破損してしまう。
【0004】
上記破損を阻止するために、グリッパが胴の外周面から径方向外側に突出した突出位置と胴の外周面から径方向内側に引退した退避位置との間で位置変更できるように、当該グリッパを所定の軸芯回りで回動自在に構成した印刷機を、出願人は既に提案している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−23945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記グリッパを備えさせる凹部は、印刷用紙搬送方向に対向した一対の側壁を備え、それら側壁のうち、印刷用紙搬送方向上流側の側壁が、底壁から胴の径方向外方へ向けて延設される主壁部と、主壁部と胴の外周面とを接続すべく、主壁部から搬送方向上流側に斜め外方に延出する延出部とを備えている。従って、印刷用紙を把持したグリッパが所定の軸芯回りで回動することによって、凹部外に突出した突出位置から凹部内の退避位置に移動することができる。
【0007】
ところが、上記印刷機にあっては、グリッパの回動中心となる前記軸芯が、グリッパが配備されている凹部における印刷用紙搬送方向上流側の主壁部の延長上に設定されていたため、次のような不都合が発生していた。
【0008】
印刷用紙を把持した状態でグリッパが回動すると、印刷用紙は、その回動に伴ってその先端が凹部内に曲がりながら回動する。しかし、印刷用紙が曲がりながら回動する支点は、側壁の延出部と胴の外周面との接続部にある。つまり、グリッパが回動するのは、主壁部の延長上の回動中心であるのに対して、印刷用紙が曲がる支点は、側壁の延出部と胴の外周面との接続部であり、回動中心と支点とが違う位置となる。そのため、グリッパの回動距離と印刷用紙の回動距離とが相違し、紙の位置ずれが発生する。その結果、印刷位置の精度が低下して、印刷品質が低下するという不都合が発生していた。
【0009】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、印刷用紙を把持しているグリッパを突出位置から退避位置に位置変更させるときの、印刷用紙の搬送方向の位置ずれを抑制することで印刷品質を確保することができる印刷機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る印刷機は、搬送されてきた印刷用紙の先端を把持するように構成されたグリッパが、胴に形成された凹部に設けられ、前記グリッパは、胴の外周面から径方向外側に突出した突出位置と胴の外周面から径方向内側に引退した退避位置とに位置変更自在となるように、回動軸芯回りで回動自在に構成されている印刷機であって、前記回動軸芯は、前記凹部を構成する側壁のうちの印刷用紙搬送方向上流側の側壁と胴の外周面との接続部又は接続部の近傍位置に配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、グリッパを回動軸芯回りで回動させることによって、突出位置から退避位置に位置変更させることができるので、障害物との衝突を回避することができる。印刷用紙を把持してグリッパが回動する場合、印刷用紙の先端が曲がりながら回動する。この時の印刷用紙の曲がる支点は、凹部を構成する側壁のうちの印刷用紙搬送方向上流側の側壁と胴の外周面との接続部、つまりグリッパの回動軸芯となり、印刷用紙の曲がる支点とグリッパの回動軸芯とがほぼ一致する。その結果、グリッパの回動距離と印刷用紙の回動距離とが等しくなり、紙の位置ずれが発生せず、印刷品質を確保することができる。
【0012】
また、本発明に係る印刷機は、前記側壁は、凹部を構成する底壁から胴の径方向外方へ向けて延設される主壁部と、主壁部と胴の外周面とを接続すべく、主壁部から搬送方向上流側に斜め外方に延出する延出部とを備え、前記回動軸芯は、延出部と胴の外周面との接続部又は接続部の近傍位置に配置されていてもよい。
【0013】
かかる構成によれば、印刷用紙を把持してグリッパが回動することにより、印刷用紙が曲げられ、曲げられた先端を延出部に沿わせることができ、印刷用紙が搬送方向に位置ずれすることを抑制できる。
【0014】
また、本発明に係る印刷機は、前記延出部は、平面であり、胴の外周面に屈曲して接続されていてもよい。
【0015】
また、本発明に係る印刷機は、前記グリッパは、爪と爪台とを有し、前記印刷用紙を把持したグリッパが退避位置に位置した状態において前記側壁の延出部と爪台の上面とが略面一状になるように構成されていてもよい。
【0016】
かかる構成によれば、延出部の延長上に爪台上面が位置するから、印刷用紙を把持したグリッパの退避位置において印刷用紙の先端部を真っ直ぐにすることができ、位置ずれを効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0017】
以上の如く、本発明によれば、グリッパの回動軸芯を、印刷用紙の曲がる支点にほぼ一致させることによって、印刷用紙を把持しているグリッパを突出位置から退避位置に位置変更させるときの、印刷用紙の搬送方向の位置ずれを抑制することで印刷品質を確保することができる印刷機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷機の概略の全体側面図を示す。
【図2】同実施形態に係る印刷機の圧胴の平面図を示す。
【図3】圧胴に備えているグリッパが突出位置に位置している状態の側面図を示す。
【図4】圧胴に備えているグリッパが退避位置に位置している状態の側面図を示す。
【図5】(a)は、グリッパが突出位置に位置している状態の爪と爪台の拡大側面図、(b)はグリッパが退避位置に位置している状態の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る印刷機の一実施形態について、図1〜図5を参酌して説明する。
【0020】
印刷機は、図1に示すように、刷版を作成して印刷用紙に印刷を行うためのオフセット方式の第1印刷装置1と、印刷用紙毎に印刷内容が異なる印刷を行うためのインクジェット方式の第2印刷装置2と、第2印刷装置2にて印刷した印刷用紙上のインクを乾燥させるための乾燥装置3と、乾燥後において印刷用紙の表面にニスを塗布するための処理装置4と、第1印刷装置1にて印刷した印刷用紙上のインク及び処理装置4にて塗布されたニスを乾燥して排紙するための排紙装置5とを備えている。尚、以下において、印刷機の長手方向(印刷用紙の搬送方向)を前後方向とし、印刷機の短手方向(印刷用紙の搬送幅方向)を左右方向として説明する。
【0021】
第1印刷装置1と第2印刷装置2とを設けることによって、あらゆるニーズに対応した印刷物の作成を可能にしている。例えば、広告宣伝用の画像を印刷してダイレクトメールに利用する圧着ハガキを作成する場合、第1印刷装置1により共通する(同じパターンの)画像や文字を印刷用紙に印刷し、印刷された印刷用紙に、第2印刷装置2により、例えば宛名や個人情報などの異なるパターンの画像や文字を印刷することができる。尚、第1印刷装置1と第2印刷装置2とを同時に駆動する他、それぞれ単独で駆動してもよい。
【0022】
第1印刷装置1は、紙積み台6からフィーダ装置7により一枚ずつ印刷用紙(枚葉紙)を送り出すための給紙部8と、この給紙部8からの印刷用紙に4色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の印刷を行うための4台の印刷ユニット9,10,11,12とを備えている。ここでは、4色の印刷が行えるように4台の印刷ユニット9〜12を備えているが、4色以外の色、つまり1色又は2色以上の印刷が行えるように印刷ユニットを備えさせてもよい。
【0023】
前記印刷ユニット9〜12は、印刷用圧胴9A〜12Aを備え、これら印刷用圧胴9A〜12Aの搬送方向上流側のそれぞれには、各印刷用圧胴へ印刷用紙を渡すための渡し胴9B〜12Bを備えている。尚、前記渡し胴9B〜12Bのうちの搬送方向始端側に位置する径の小さな渡し胴9Bを給紙胴とも言い、この渡し胴9Bとフィーダ装置7と紙積み台6とから給紙部8を構成している。そして、前記胴9A〜12A及び渡し胴10B〜12Bのそれぞれには、送り出されてきた印刷用紙を爪台22と爪23とで把持するグリッパ20(図3参照)を円周方向の2箇所(1箇所又は3箇所以上でもよい)に備えている。尚、前記径の小さな渡し胴9Bにも、図示していないが、印刷用紙を爪台と爪とで把持するグリッパを円周方向の1箇所に備えている。
【0024】
圧胴10Aは、図2〜図5に示すように、周方向の二箇所(図2〜図5では一箇所のみ図示している)に左右幅方向全域に亘る凹部10Kが形成され、この凹部10Kは、径方向内側に位置する底壁41と、この底壁41の前後端から径方向外方へ向けて延設される前後一対の側壁10a,10aとを備えている。これら側壁10a,10aのうちの印刷用紙搬送方向上流側の側壁10aは、径方向外方へ向けて延設される主壁部42と、主壁部42の径方向外方側端と圧胴10Aの外周面とを接続すべく、主壁部42から搬送方向上流側に斜め外方に延出する延出部43とを備えている。
【0025】
凹部10Kの左右両端のそれぞれには、後述するベースプレート21の前端部21B,21Cが入り込む空間が前方に形成される補助凹部44が備えられているが、ベースプレート21を前端部21B,21Cが無い長方形状に構成すれば、補助凹部44は、無くてもよい。
【0026】
圧胴10Aに備えたグリッパ20について説明する。グリッパ20は、図3及び図4に示すように、前記凹部10K内に設けられ、第1回動軸芯X1回りで回動させることにより圧胴10Aの外周面上の印刷用紙を把持した状態で、圧胴10Aの外周面から径方向外側に突出した突出位置(図3参照)と圧胴10Aの外周面から径方向内側に引退した退避位置(図4参照)とに位置変更自在に構成されている。また、前記突出位置において第1回動軸芯X1とは異なる第2回動軸芯X2回りで回動させることにより圧胴10Aの外周面上の印刷用紙Pを把持するべく閉じた把持状態(図3参照)と突出位置で把持した印刷用紙を放すべく開放した把持解除状態(図示せず)とに切替え自在に構成されている。尚、第1回動軸芯X1及び第2回動軸芯X2は、圧胴10Aの回動軸芯と平行になっている。
【0027】
まず、グリッパ20が、開閉して印刷用紙を把持する構成について説明すれば、図2及び図3に示すように、グリッパ20は、凹部10K内に固定され、左右方向に長い横長状で板状の支持部材としてのベースプレート21に所定間隔置きに固定された多数(図2では14個であるが、圧胴10Aの左右の幅の大きさなどに応じて変更できる)の爪台22と、前記ベースプレート21の上に回転自在に支持された回動軸24に一体回転自在に取り付けられ、前記爪台22の上端に位置した印刷用紙を挟持するように図示していないバネにて爪台22側へ回転付勢された多数(爪台22と同数)の爪23とを備えている。
【0028】
前記ベースプレート21は、長方形状の本体部21Aと、本体部21Aの左右方向両端部の前端から前方に突出した左右一対の前側部21B,21Cとを備えている。そして、本体部21Aの前端部に、左右方向に所定間隔を置いて爪台22を備えている。
【0029】
回動軸24の左右両端が、圧胴10Aの左右両端に回転自在に支持され、回動軸24の両端のうち、一端(図2において左端)が左右方向外方へ突出され、その突出端にアーム25の一端が連結され、アーム25の他端には、ローラ26が回転自在に取り付けられている。一方、印刷機の左右側壁27,28のうちの左側の側壁27には、紙咥えカム29が固定され、紙咥えカム29の外周に形成のカム面29a上を前記ローラ26が走行するように構成されている。尚、爪23を爪台22へ閉じる側への回動軸24の回転を規制するためのストッパー30を備えている。
【0030】
従って、圧胴10Aが回転することにより、紙咥えカム29の凹凸状のカム面29a上をローラ26が走行することで、アーム25が揺動する。このアーム25の揺動により、回動軸24がその第2軸芯X2回りで回転し、爪台22に接当する閉じ位置側に回転付勢されている爪23を印刷用紙の受渡しタイミングに同期して解放位置に操作し、その後において、印刷用紙の先端が爪台22と爪23との間に挿入された後に閉じ位置に切替え操作することによって、印刷用紙を挟持し、次の引き放しタイミングに同期して開放するべく、爪23を爪台22に対して開放位置に操作することができるようになっている。
【0031】
次に、グリッパ20が、圧胴10Aの外周面からそれの径方向外側に突出する突出位置と該外周面から内側に引退する退避位置に位置変更する構成について説明する。図2及び図3に示すように、ベースプレート21の前側部21B,21Cに、ベースプレート21を揺動するための回動軸を構成する支点ピン31,32をベースプレート21に連結部材33を介してそれぞれ固定し、前記左右の支点ピン31,32のうち、右側の支点ピン32が左右方向外側に突出され、その突出端にアーム34の一端が連結され、アーム34の他端には、ローラ35が回転自在に取り付けられている。一方、印刷機の左右側壁27,28のうちの右側の側壁28には、旋回カム36が固定され、旋回カム36の外周に形成のカム面36a上を前記ローラ35が走行するように構成されている。
【0032】
従って、圧胴10Aが回転することにより、旋回カム36のカム面36a上をローラ35が走行することで、アーム34が揺動する。このアーム34の揺動により、支点ピン31,32が回転し、ベースプレート21が支点ピン31,32の第1軸芯X1周りで下方に揺動され、ベースプレート21に取り付けられているグリッパ20が突出位置から退避位置に位置変更される(図4参照)。尚、図3では、グリッパ20が突出位置から退避位置に位置変更される直前の状態、つまり旋回カム36の凸状に形成されたカム面36aをローラ35が走行する直前の状態を示し、図3から圧胴10Aが回転することにより、図4に示すように、グリッパ20が突出位置から退避位置に位置変更される。また、グリッパ20の突出位置から退避位置に位置変更することによって、障害物との衝突を回避することができる。障害物は、胴(圧胴だけでなく、渡し胴も含む)に対して近接して配置されているインクジェット式の印刷部や胴に対してギャップの無い状態で配置されているブランケット胴(ゴム胴)の他、印刷用紙に押し付けて印刷用紙に表面処理を施すことができる処理装置の処理部などがある。
【0033】
ベースプレート21の底面には、凹部21bが形成され、その凹部21bに、グリッパ20を突出位置側へ揺動付勢するためのローラ37がコイルスプリング37Sを介して当接される一方、グリッパ20の突出位置が常に所定位置になるように、突出位置側へ移動するベースプレート21の上面21aに当接してベースプレート21の突出位置側への移動を制限するための複数(図2では4個であるが、個数は限定されない)のストッパー38を備えている。このようにストッパー38を備えさせることにより、グリッパ20の突出位置の精度を高めることができる。
【0034】
グリッパ20を突出位置と退避位置とに位置変更させるための第1回動軸芯X1は、延出部43と圧胴10Aの外周面との接続部に配置されている。つまり、グリッパ20を図5(a)の突出位置から図5(b)の退避位置に位置変更する場合に、印刷用紙Pが凹部10Kの内部に曲がりながら回動する支点に第1回動軸芯X1を配置している。
【0035】
延出部43は、側壁10aから印刷用紙搬送方向上流側に斜め外方側に向かって延びる平面であり、圧胴10Aの外周面に屈曲して接続されている。
【0036】
グリッパ20は、図5(a),(b)に示すように、爪23と爪台22とを有し、印刷用紙を把持したグリッパ20が退避位置に位置した状態において主壁部42の延出部43の表面(外面)43aと爪台22の上面22aとが面一状(略面一状でもよい)になるように構成されている。
【0037】
従って、第1回動軸芯X1を印刷用紙Pが凹部の内部に曲げられて回動する支点(接続部Jと同一の位置)に一致させることによって、図5(b)に示すように、グリッパ20を退避位置に位置させた場合に、印刷用紙Pが凹部10Kの内部に曲げられて回動する支点(接続部Jと同一の位置)から印刷用紙Pの先端までの長さ(距離)L1が凹部10Kの内部に入り込む前の長さ(距離)Lと同一にすることができるので、印刷用紙Pが圧胴10Aの外面に対して印刷用紙搬送方向で位置ずれすることがない。また、第1軸芯X1に対して比較例として凹部10Kの印刷用紙搬送方向上流側の主壁部42の直上方に第3軸芯X3を設けた場合を示している。比較例の軸芯X3でグリッパ20を退避位置に位置させると、印刷用紙Pが凹部10Kの内部に曲げられて回動する支点(接続部Jと同一の位置)から印刷用紙Pの先端までの長さ(距離)L2が前記長さ(距離)Lよりも短くなり、印刷用紙Pが弛んでしまい、印刷用紙Pの位置が印刷用紙搬送方向で位置ずれしてしまう。ここでは、第1回動軸芯X1を接続部Jに配置しているが、接続部Jに対して印刷用紙搬送方向の前後に少しずれた位置、つまり接続部Jの近傍位置であってもよい。尚、図示していないが、軸芯X3が第1回動軸芯X1よりも印刷用紙搬送方向上流側に大きく外れた位置に配置した場合には、印刷用紙Pが凹部10Kの内部に曲げられて回動する支点(接続部Jと同一の位置)から印刷用紙Pの先端までの長さ(距離)が前記長さ(距離)Lよりも長くなり、印刷用紙Pが引っ張られてしまい、印刷用紙Pの位置が印刷用紙搬送方向で位置ずれしてしまう。
【0038】
また、図5(b)に示すように、グリッパ20が、退避位置に位置した状態において延出部43の表面43aと爪台22の上面22aとが面一状(略面一状でもよい)になっていることから、印刷用紙を把持したグリッパ20の退避位置において印刷用紙Pの先端部を真っ直ぐにすることができ、位置ずれを効果的に防止できる。
【0039】
図1に戻って、第2印刷装置2は、印刷胴13と、印刷胴13の搬送方向上流側に配置され前記印刷ユニット12からの印刷用紙を受け取って印刷胴13に搬送するための渡し胴14と、印刷胴13に受け取った印刷用紙の表面にインクを吐出するためのインクジェットヘッド15とを備えている。印刷胴13及び渡し胴14のそれぞれには、送り出されてきた印刷用紙を爪台と爪とで把持するグリッパ(図示せず)を円周方向の2箇所(1箇所又は3箇所以上でもよい)に備えている。
【0040】
乾燥装置3は、乾燥胴16と、乾燥胴16の搬送方向上流側に配置され前記第2印刷装置2からの印刷用紙を受け取って乾燥胴16に搬送するための渡し胴17と、乾燥胴16の直上方に配置され乾燥胴16に受け取った印刷用紙の表面のインクを乾燥させるための乾燥部本体18とを備えている。
【0041】
処理装置4は、2台のニスを塗布するニスユニット54,55から構成され、前側に位置する第1ニスユニット54は、ニス胴56と、ニス胴56の搬送方向上流側に配置され前記乾燥装置3からの印刷用紙を受け取ってニス胴56に受け渡すための渡し胴57とを備えている。また、後側に位置する第2ニスユニット55は、ニス胴58と、ニス胴58の搬送方向上流側に配置され前記第1ニスユニット54からの印刷用紙を受け取ってニス胴58に受け渡すための渡し胴59とを備えている。ニス胴56,58及び渡し胴57,59のそれぞれには、送り出されてきた印刷用紙を爪台と爪とで把持するグリッパ(図示せず)を円周方向の2箇所(1箇所又は3箇所以上でもよい)に備えている。
【0042】
排紙装置5は、無端状に構成されたチェーンに複数のグリッパを備えたチェーン搬送装置から構成している。尚、本実施形態では、排紙装置5を備えた印刷機を示しているが、排紙装置5を省略した印刷機であってもよい。又、本実施形態では、印刷用紙として枚葉紙を用いているが、連続する長尺な用紙であってもよい。
【0043】
尚、本発明に係る印刷機における印刷用紙の把持装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0044】
前記実施形態では、側壁10aから印刷用紙搬送方向上流側に斜め外方側に向かって延びて圧胴10Aの外周面に接続される延出部43の表面43aを平面から構成したが、外側に突出する湾曲面から構成してもよい。また、延出部43を省略してもよい。
【0045】
また、前記実施形態では、紙咥えカム29と旋回カム36とを設けて、グリッパ20の開閉動作と凹部10Kへの出退動作とを機械的に行うように構成したが、グリッパ20の開閉動作と凹部10Kへの出退動作を行わせる電動モータなどのアクチュエータを設けるとともに、動作タイミングを設定するための位置検出センサ及び位置検出センサからの検出信号に基づいてアクチュエータの駆動を制御する制御部を設けて実施してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…第1印刷装置、2…第2印刷装置、3…乾燥装置、4…処理装置、5…排紙装置、6…紙積み台、7…フィーダ装置、8…給紙部、9〜12…印刷ユニット、9A〜12A…印刷用圧胴、9B〜12B…渡し胴、10A…圧胴、10E…延出部(テーパー面)、10K…凹部、10a…側壁、10b…外周面、13…印刷胴、14…渡し胴、15…インクジェットヘッド、16… 乾燥胴、17…渡し胴、18…乾燥部本体、20…グリッパ、21…ベースプレート、21A…本体部、21B,21C…前側部、21B,21C…前端部、21a…上面、21b…凹部、22…爪台、22a…上面、23…爪、24…回動軸、25…アーム、26…ローラ、27…側壁、27,28…左右側壁、28…側壁、29…カム、29a…カム面、30…ストッパー、31,32…支点ピン、33…連結部材、34…アーム、35…ローラ、35a…カム面、36…旋回カム、36a…カム面、37…ローラ、37S…コイルスプリング、38…ストッパー、40…テーパー面、41…底壁、42…主壁部、43…延設部、44…補助凹部、54,55…ニスユニット、56,58…ニス胴、57,59…渡し胴、J…接続部、P…印刷用紙、X1,X2,X3…軸芯、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されてきた印刷用紙の先端を把持するように構成されたグリッパが、胴に形成された凹部に設けられ、前記グリッパは、胴の外周面から径方向外側に突出した突出位置と胴の外周面から径方向内側に引退した退避位置とに位置変更自在となるように、回動軸芯回りで回動自在に構成されている印刷機であって、
前記回動軸芯は、前記凹部を構成する側壁のうちの印刷用紙搬送方向上流側の側壁と胴の外周面との接続部又は接続部の近傍位置に配置されていることを特徴とする印刷機。
【請求項2】
前記側壁は、凹部を構成する底壁から胴の径方向外方へ向けて延設される主壁部と、主壁部と胴の外周面とを接続すべく、主壁部から搬送方向上流側に斜め外方に延出する延出部とを備え、前記回動軸芯は、延出部と胴の外周面との接続部又は接続部の近傍位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷機。
【請求項3】
前記延出部は、平面であり、胴の外周面に屈曲して接続されていることを特徴とする請求項2に記載の印刷機。
【請求項4】
前記グリッパは、爪と爪台とを有し、前記印刷用紙を把持したグリッパが退避位置に位置した状態において前記側壁の延出部と爪台の上面とが略面一状になるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−139874(P2012−139874A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293176(P2010−293176)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】