説明

印刷機

【課題】反転渡し胴から反転胴への枚葉紙の受け渡しの精度を向上した印刷機を提供することをその課題とする。
【解決手段】反転渡し胴15が反転胴17に枚葉紙を受け渡す時、図2、4、6に示すように、第1アーム21はカムフォロア21dとカムの作用により、ばねの付勢力に抗して時計方向に回動し、これにより第2アーム27が時計方向、第3アーム29が反時計方向に回動し、捕捉部材Cは反転渡し胴15の回転方向と逆方向、すなわち時計方向に回動した状態となる。よって、吸引孔C3を備えた後端載置面C2は反転渡し胴15の外周面15bと同一周面上に位置する。このように構成することにより、枚葉紙の後端を反転胴17に精度よく確実に受け渡すことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片面及び両面印刷可能な印刷機に関するものであり、特に両面印刷時に反転渡し胴上の枚葉紙を吸着保持しながら伸張させるように構成した技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、片面及び両面印刷可能な印刷機は、裏面を印刷可能にするための反転機構を有しており、この反転機構の一部である反転渡し胴には、枚葉紙の後端を吸引する為の捕捉部材が設けられている。特許文献1にはこの技術に関する開示があり、両面印刷時には、この捕捉部材が枚葉紙の後端を吸着保持しながら反転渡し胴の回転方向とは逆に回動し、枚葉紙の後端を伸張させ、反転胴へ枚葉紙を受け渡すよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−120749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが特許文献1の構成では、図示からも分かるとおり、捕捉部材は回動する前に胴周面と同一高さにあるため、捕捉部材が回動した時に、捕捉部材が胴周面よりも胴の径方向で胴の中心側へ落ち込むので、枚葉紙の後端に段差が生じ、反転胴への受け渡しにおいて、受け渡し精度が低下する可能性があった。これは、捕捉部材の回動半径が胴の半径よりも小さいため、回動軌跡が胴外周面の軌跡と一致しないからである。よって受け渡しにおいて改善の余地があった。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、反転渡し胴から反転胴への枚葉紙の受け渡しの精度を向上した印刷機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、枚葉紙を供給する渡し胴13と、枚葉紙を反転させるための反転機構を備えた反転胴17と、該渡し胴13と該反転胴17との間に配置され、該渡し胴13から供給される枚葉紙をその外周面15bに載置し、該反転胴17に受け渡す反転渡し胴15とを有し、該反転渡し胴15には枚葉紙の後端を該反転胴17に受け渡す際に、枚葉紙の後端を伸張させる方向へ移動する捕捉部材Cが備えられ、該捕捉部材Cには枚葉紙の後端を載置する後端載置面C2が設けられた印刷機において、該捕捉部材Cが枚葉紙の後端を伸張させる方向へ移動する時、該後端載置面C2が該反転渡し胴15の外周面15bと同一周面上に位置することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、該捕捉部材Cが枚葉紙の後端を伸張させる方向と逆方向へ移動する時、該後端載置面C2が該反転渡し胴15の外周面15bよりも該反転渡し胴15の径方向で突出した位置にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明による印刷機によれば、捕捉部材が枚葉紙の後端を伸張させる方向へ移動する時、後端載置面が反転渡し胴の外周面と同一周面上に位置するので、枚葉紙の後端を反転胴に精度よく確実に受け渡すことのできる印刷機を得ることが可能となる。
【0009】
また、本発明による印刷機によれば、捕捉部材が枚葉紙の後端を伸張させる方向と逆方向へ移動する時、後端載置面が反転渡し胴の外周面よりも反転渡し胴の径方向で突出した位置にあるので、上述の効果に加え、渡し胴から供給される枚葉紙を反転渡し胴に早く確実に保持させることのできる印刷機を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の印刷機の一例を示す、一部を省略した概略断面側面図である。
【図2】反転渡し胴を示す、一部を省略した断面図である。
【図3】反転渡し胴の部分拡大断面図である。
【図4】反転渡し胴の図3と同様の部分拡大断面図である。
【図5】反転渡し胴の図3、4とは異なる部分拡大断面図である。
【図6】反転渡し胴の図5と同様の部分拡大断面図である。
【図7】図5の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1は本発明の印刷機の一例を示す、一部を省略した概略断面側面図である。図1に示す通り、本実施形態に係る印刷機は枚葉オフセット印刷機である。この印刷機は、印刷用紙としての枚葉紙を送り出すための図示しない給紙部と、この給紙部からの枚葉紙に印刷を行うための印刷ユニットA1及び印刷ユニットB3と、枚葉紙を排紙するための図示しない排紙部とを備えている。なお、印刷機を構成する各部の具体的な構成は図に示すものに限定されるものではない。
【0013】
前記印刷ユニットA1,印刷ユニットB3は、それぞれ、インキローラ群5、版胴7、ゴム胴9、圧胴11を供えている。印刷ユニットA1,B3間には、両面印刷時に枚葉紙を反転させる機構が設けられている。具体的には、印刷ユニットA1の圧胴11から供給される枚葉紙を受け取る渡し胴13、該渡し胴13から枚葉紙を受け取る反転渡し胴15、そして該反転渡し胴15から枚葉紙を受け取る反転胴17である。
【0014】
図2は反転渡し胴15を示す、一部を省略した断面図である。反転渡し胴15には枚葉紙の前端を把持する一対のグリッパ19が設けられており、外周面15b上に枚葉紙を2枚搬送できるように構成されている。また、枚葉紙の後端を載置して吸引し、伸張させる捕捉部材Cもグリッパ19に対応して一対設けられている。反転渡し胴15はグリッパ19と捕捉部材Cを1セットとして、左右対称な形状となっている。捕捉部材Cは軸C1を支点として回動可能に構成されている。
【0015】
図3は反転渡し胴15の部分拡大断面図である。反転渡し胴15には第1アーム21がその軸21aを軸支されて回動可能に設けられている。第1アーム21の一端には当接部21bが設けられており、この当接部21bが反転渡し胴15に設けられたストッパー23に当接することにより第1アーム21の回動は停止するようになっている。第1アーム21の他端にはローラ21cが設けられており、反転渡し胴15に設けられた係合片25(図2)と係合して、捕捉部材Cの回動を停止するように構成されている。
【0016】
第1アーム21にはカムフォロア21dが設けられており、印刷ユニット内に固定された図示しないカムと当接している。カムは非円形で高低面を有している。第1アーム21は図示しないばねにより常時反時計方向に付勢されているが、反転渡し胴15の回転に伴い、カムフォロア21dがカムの高い面に当接する時ばねの付勢力に抗して時計方向に回動する。図4にはこの高いカム面CSが二点鎖線で示されている。
【0017】
図5は反転渡し胴15の図3、4とは異なる部分拡大断面図である。第1アーム21の軸21aには第2アーム27がその一端を固定されている。第2アーム27の他端には第3アーム29の一端が軸止されている。第3アーム29の多端は捕捉部材Cの中間部に軸止されている。
【0018】
図5〜図7bに示すとおり、捕捉部材Cの上部には枚葉紙の後端が載置される後端載置面C2が設けられている。後端載置面C2には吸引孔C3が設けられており、吸引孔C3はバルブC4を介して連通路C5に連通している。バルブC4は略円筒状で、その円筒面に吸引孔C3と連通する穴部が設けられており、その取手を把持して回転させることにより、図示しないポンプによる吸引作用が連通路C5を介して働いて枚葉紙を吸引する位置と、吸引しない位置とに選択可能である。
【0019】
本実施形態の作用について説明する。反転渡し胴15が渡し胴13から枚葉紙を受け取る時、図3、5,7に示すように、第1アーム21はばねの付勢力により反時計方向に回動し、これにより捕捉部材Cは反転渡し胴15の回転方向、すなわち反時計方向に回動した状態となっている。よって、図7に示すように、吸引孔C3を備えた後端載置面C2は反転渡し胴15の外周面15bよりも突出した位置にある。このように構成することにより、渡し胴13から受け渡された枚葉紙の後端をより早く吸着、載置することができ、枚葉紙を反転渡し胴15に確実に保持させることが可能となる。
【0020】
反転渡し胴15が反転胴17に枚葉紙を受け渡す時、図2、4、6に示すように、第1アーム21はカムフォロア21dとカムの作用により、ばねの付勢力に抗して時計方向に回動し、これにより第2アーム27が時計方向、第3アーム29が反時計方向に回動し、捕捉部材Cは反転渡し胴15の回転方向と逆方向、すなわち時計方向に回動した状態となる。よって、吸引孔C3を備えた後端載置面C2は反転渡し胴15の外周面15bと同一周面上に位置し、枚葉紙を伸張させる。このように構成することにより、枚葉紙の後端を反転胴17に精度よく確実に受け渡すことが可能となる。
【0021】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、前述の実施形態では、枚葉紙を渡し胴13から受け取る時、後端載置面C2が反転渡し胴15の外周面15bよりも突出した位置にあるように構成していたが、枚葉紙を渡し胴13から受け取る時も、枚葉紙を反転胴17へ受け渡す時も、常に後端載置面C2を反転渡し胴15の外周面15bと同一周面上に位置するように構成してもよい。この場合、捕捉部材Cを反転渡し胴15の軸15aに回動可能に設けることで実現が可能となる。
【0022】
また、捕捉部材Cは軸C1を支点として回動可能に構成されていたが、この構成に限られず、たとえば渡し胴15の径方向や外周面15bの接線方向にスライド移動するようなものであってもよい。
【0023】
また、前述の実施形態では、枚葉オフセット印刷機であったが、これに限定されず、枚葉紙を搬送する胴を有する印刷機であればグラビア印刷機やインクジェット印刷機のようなものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係る印刷機の搬送胴は、両面印刷が可能な印刷機において極めて有用である。
【符号の説明】
【0025】
1…印刷ユニットA、3…印刷ユニットB、13…渡し胴、15…反転渡し胴、17…反転胴、19…グリッパ、21…第1アーム、23…ストッパー、25…係合片、27…第2アーム、29…第3アーム、C…捕捉部材、C1…軸、C2…後端載置面、C3…吸引孔、C4…バルブ、C5…連通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉紙を供給する渡し胴と、枚葉紙を反転させるための反転機構を備えた反転胴と、該渡し胴と該反転胴との間に配置され、該渡し胴から供給される枚葉紙をその外周面に載置し、該反転胴に受け渡す反転渡し胴とを有し、該反転渡し胴には枚葉紙の後端を該反転胴に受け渡す際に、枚葉紙の後端を伸張させる方向へ移動する捕捉部材が備えられ、該捕捉部材には枚葉紙の後端を載置する後端載置面が設けられた印刷機において、該捕捉部材が枚葉紙の後端を伸張させる方向へ移動する時、該後端載置面が該反転渡し胴の外周面と同一周面上に位置することを特徴とする印刷機。
【請求項2】
該捕捉部材が枚葉紙の後端を伸張させる方向と逆方向へ移動する時、該後端載置面が該反転渡し胴の外周面よりも該反転渡し胴の径方向で突出した位置にあることを特徴とする請求項1記載の印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−96476(P2012−96476A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246952(P2010−246952)
【出願日】平成22年11月3日(2010.11.3)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)