説明

印刷濃度判定システム

【課題】本発明は、特に磁性紛を含有する印刷インキによる印刷の濃度を判定する印刷濃度判定システムに関し、磁気印刷に対する1度の読み取りでどのような濃度程度かを判定させることを目的とする。
【解決手段】磁気印刷体32における磁気データの適正な記録、消去を行う印刷濃度を含む複数段階の印刷濃度を単一のセンサからの検出値による複数段階の明度状態で区分させて当該区分された明度状態と当該区分に対応させたセンサの検出値に対する閾値とが関連付けられた濃度判定テーブル28を備え、濃度判定手段24がセンサ13からの検出値に基づいて、閾値毎にその大小を演算し、濃度判定テーブル28から何れの明度に対する印刷濃度かを判定させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に磁性紛を含有する印刷インキによる印刷の濃度を判定する印刷濃度判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、帳票体のマッチング用磁気マークの印刷、磁気カードにおける磁気部分の磁気印刷、MICR(Magnetic Ink Character Recognition)印刷などにおいては、所定の磁性紛を含有させた印刷インキを用いて磁気印刷することが一般に行われるようになってきている。このような磁気印刷は、磁気データが確実に記録されることを前提として適切なインキ量での印刷が望まれる。
【0003】
従来、電子写真プリンタや画像形成装置等での印刷に対する濃度調整について種々提案されている。例えば、下記特許文献1では、MICR文字を印字するときの磁性紛含有印刷インキによる印字濃度の調整において、静電潜像電位を制御する電圧(制御電圧)と印字濃度との相関関係に基づいて、第一の制御電圧で設定して印字した第一のMICR文字の磁気信号強度を調べ、次に、第二の制御電圧に設定して印字した第二のMICR文字の磁気信号強度を調べることで、最適な磁気信号強度となる制御電圧を得ることが提案されている。
【0004】
一方、磁気印刷ではないが、下記特許文献2では、連続階調パターンを実際に記録媒体上に出力して濃度又は色度を測定することで適切な階調補正を可能とすることを目的として、連続する階調パターンを生成してトナーにより記録媒体に転写し、当該階調パターンをセンサで連続階調パターンの色度を順次読み取って印刷条件を設定することが提案されている。また、下記特許文献3では、画像濃度測定用パターンを用いた画像形成条件の調整を行う前に、記録材上の端部余白領域に検査用パターンを形成してその濃度をカラーセンサで検出することによって基準濃度との濃度差を検出し、この濃度差が許容値を超えたか否かを判別し、許容値を超えた場合にのみ画像形成条件の調整を行うことが提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−056526号公報
【特許文献2】特開2005−319675号公報
【特許文献3】特開2006−201613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特に磁気印刷では、印刷濃度が薄いと磁気データの記録が不確実となり、印刷濃度が濃かったり、濃すぎたりするとインキ量の無駄が発生することとなる。しかしながら、上記特許文献1では、2回以上の印字、磁気データの書き込み、読み取りを行わなければならず、その分の工程を必要とするという問題がある。また、特許文献2では、転写した階調パターンをパターン毎に色度を読み取らなければならず、この工程や時間を要するという問題がある。仮に、黒白の2パターンとしても当該2パターンが適切に印刷されているか否かを判定することに過ぎず、1度の読み取りでどのような濃度程度かを判定することはできない。さらに、上記特許文献3では、基準濃度との濃度差を検出するも、上記同様に、1度の読み取りでどのような明度程度かの判定することができないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は上記課題に鑑みなされたもので、磁気印刷に対する1度の読み取りでどのような濃度程度かを判定する印刷濃度判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、磁性紛を含有する印刷インキにより、磁気データを記録、消去自在な磁気印刷体を印刷する際の濃度を判定する印刷濃度判定システムであって、前記印刷された磁気印刷体に対して、少なくとも明度を得るための検出を行う単一のセンサと、前記磁気印刷体における磁気データの適正な記録、消去を行う印刷濃度を含む複数段階の印刷濃度を前記センサからの検出値による複数段階の明度状態で区分し、当該区分された明度状態と当該センサの検出値を当該区分に対応させた閾値とが関連付けられた濃度判定テーブルと、前記センサからの検出値に基づいて、前記閾値毎にその大小を演算し、前記濃度判定テーブルを参照して、何れの明度に対する印刷濃度かを判定する濃度判定手段と、を有する構成とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、磁気印刷体における磁気データの適正な記録、消去を行う印刷濃度を含む複数段階の印刷濃度を単一のセンサからの検出値による複数段階の明度状態で区分させて当該区分された明度状態と当該区分に対応させたセンサの検出値に対する閾値とが関連付けられた濃度判定テーブルを備え、センサからの検出値に基づいて、閾値毎にその大小を演算し、濃度判定テーブルから何れの明度に対する印刷濃度かを判定させる構成とすることにより、磁気印刷に対するセンサによる1度の読み取りでどのような濃度程度かを判定することができ、ひいては磁気データ記録を確実とさせ、インキ量の無駄を回避させることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の最良の実施形態を図により説明する。
図1に、本発明に係る印刷濃度判定システムのブロック等構成図を示す。図1(A)は、本発明に係る印刷濃度判定システム11であり、印刷濃度判定処理部12を備え、当該印刷濃度判定処理部12に対してセンサ13が接続され、入力手段14及び表示手段15が適宜接続されて構成される。
【0011】
上記印刷濃度判定処理部12は、制御手段21、バス22、インタフェース(IF)23、濃度判定手段24、記憶部25及び表示制御手段26を適宜備え、記憶部25には設定閾値27及び濃度判定テーブル28の記憶領域が形成される。上記制御手段21は、このシステムを統括的に制御するもので図示しないROM等にプログラムが格納されている。上記IF23は、接続されるセンサ13、入力手段14及び表示手段15との信号授受の整合性を取るためのプログラム乃至電子回路である。
【0012】
上記濃度判定手段24は、センサ13からの検出値(受光量の信号)に基づいて、後述の複数の閾値毎にその大小を演算し、濃度判定テーブル28(後述する)を参照して、何れの明度に対する印刷濃度かを判定するプログラムである。上記表示制御手段26は、上記濃度判定手段24で判定した結果を表示部15に表示するためのプログラム乃至電子回路である。
【0013】
上記記憶部25に記憶される設定閾値27は、センサ13からの検出値(受光量)から磁気印刷の濃度の段階を判定するために設定された複数の閾値が記憶される(図2で説明する)。当該閾値の設定は、例えばオペレータが入力手段14より入力することで行われる。上記記憶部25に記憶される濃度判定テーブル28は、詳細を図2で説明するが、センサ13からの検出値(受光量)と磁気印刷の濃度に対する明度状態としての明度範囲とが関連付けられたものである。
【0014】
上記センサ13は印刷濃度の明度を得るために単一で備えられるもので、図1(B)に示すように、発光部13A及び受光部13Bで構成され、例えば紙葉等の基材31上に磁性紛が含有された印刷インキで印刷された磁気印刷体32に対して発光部13Aから照射させ、その反射光を受光部13Bで受光し、その受光量を検出値の信号として濃度判定手段24に送出する。検出値は、当該センサ13を駆動する電圧値や電流値によって決定される。当該磁気印刷体32は、磁気データの適正な記録、消去を行うためのものである。
【0015】
上記のような構成は、例えばコンピュータによる印刷制御として実現することができ、この場合には入力手段14はキーボードやマウスに相当し、ディスプレイが上記表示手段A15に相当する。
【0016】
ここで、図2に、図1の濃度判定テーブルの説明図を示す。図2(A)において、まず、磁気印刷体32における磁気データの適正な記録、消去を行う印刷濃度を含む複数段階、例えば6段階の印刷濃度を明度状態(明度範囲)で区分し、センサ13の検出値(受光量)を当該区分に対応させたA〜Eの5段階の閾値が上記設定閾値27として記憶部25に記憶される。このA〜Eの5段階の閾値に対して上記印刷濃度の明度範囲が関連付けられ、当該明度範囲に対する印刷濃度の適正状態が適宜関連付けられたものである。
【0017】
ここで、明度とは、物体(磁気印刷体32)表面の相対的な明るさに関する色感覚の属性、及びそれを同一条件で照明した白色面を基準として尺度化したもので、本発明における明度状態は、これをセンサ13の受光量で対応させたものである。
【0018】
図2(A)、(B)に示すように、例えば明度レベル「0」の黒から明度レベル「2000超」の白までとし、明度範囲「2000超」を閾値Aで判別し、明度範囲「1601〜2000」を閾値A及びBで判別し、明度範囲「1201〜1600」を閾値B及びCで判別し、明度範囲「801〜1200」を閾値C及びDで判別し、明度範囲「401〜800」を閾値D及びEで判別し、明度範囲「400以下」を閾値Eで判別される。
【0019】
そして、明度範囲「2000超」を「薄過ぎ(不適正)」、明度範囲「1601〜2000」を「薄い(警告)」、明度範囲「1201〜1600」を「適正」、明度範囲「801〜1200」を「適正」、明度範囲「401〜800」を「濃い(警告)」、明度範囲「400以下」を「濃過ぎ(不適正)」のように印刷濃度適正状態で表している。
【0020】
ここで、「薄過ぎ(不適正)」は磁気データの記憶には不適切な印刷濃度であることを意味し、「薄い(警告)」は、磁気データは記憶できるもののデータ読み取りに不確定さを有することを意味している。また、「濃い(警告)」及び「濃過ぎ(不適正)」はインキ量が無駄であることを意味している。そして、「適正」は、印刷インキを無駄にせずに、磁気印刷体32における磁気データの適正な記録、消去を行う印刷濃度であることを意味している。なお、「適正」が明度範囲「1201〜1600」及び「801〜1200」であるから閾値Cを省略することができるが、ここでは閾値を等間隔とするために含ませている。
【0021】
そこで、図3に、図1における印刷濃度判定処理のフローチャートを示す。上記濃度判定手段24は、センサ13より受光信号(受光量)を入力すると(ステップ(S)1)、当該受光量が閾値Aを越える場合(「N」)には(S2)、「薄過ぎ(不適正)」と判定して表示手段15に表示させる(S3)。当該受光量が閾値A以下(「Y」)であり、閾値Bを越える場合(「N」)には(S4)、「薄い(警告)」と判定して表示手段15に表示させる(S5)。
【0022】
続いて、当該受光量が閾値B以下(「Y」)であり、閾値Cを越える場合(「N」)には(S6)、「適正」と判定して表示手段15に表示させる(S7)。当該受光量が閾値C以下(「Y」)であり、閾値Dを越える場合(「N」)には(S8)、「適正」と判定して表示手段15に表示させる(S9)。当該受光量が閾値D以下(「Y」)であり、閾値Eを越える場合(「N」)には(S10)、「濃い(警告)」と判定して表示手段15に表示させる(S11)。そして、当該受光量が閾値E以下の場合(「Y」)には(S10)、「濃過ぎ(不適正)」と判定して表示手段15に表示させるものである(S12)。
【0023】
なお、上記実施形態は、センサ13からの受光量に対して印刷濃度の薄い(明度が大きい)方からの閾値で濃度適正状態を判定した場合を示したが、印刷濃度の濃い(明度が小さい)からの閾値で濃度適正状態を判定してもよい。
【0024】
このように、磁気印刷体32に対するセンサ13による1度の読み取りでどのような濃度程度かを判定することができ、ひいては磁気データ記録を確実とさせ、インキ量の無駄を回避させることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の印刷濃度判定システムは、帳票体のマッチング用磁気マークの印刷、磁気カードの磁気印刷、MICR印刷などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る印刷濃度判定システムのブロック等構成図である。
【図2】図1の濃度判定テーブルの説明図である。
【図3】図1における印刷濃度判定処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0027】
11 印刷濃度判定システム
12 印刷濃度判定処理部
13 センサ
24 濃度判定手段
28 濃度判定テーブル
32 磁気印刷体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性紛を含有する印刷インキにより、磁気データを記録、消去自在な磁気印刷体を印刷する際の濃度を判定する印刷濃度判定システムであって、
前記印刷された磁気印刷体に対して、少なくとも明度を得るための検出を行う単一のセンサと、
前記磁気印刷体における磁気データの適正な記録、消去を行う印刷濃度を含む複数段階の印刷濃度を前記センサからの検出値による複数段階の明度状態で区分し、当該区分された明度状態と当該センサの検出値を当該区分に対応させた閾値とが関連付けられた濃度判定テーブルと、
前記センサからの検出値に基づいて、前記閾値毎にその大小を演算し、前記濃度判定テーブルを参照して、何れの明度に対する印刷濃度かを判定する濃度判定手段と、
を有することを特徴とする印刷濃度判定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−76273(P2010−76273A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247464(P2008−247464)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】