説明

印刷版、及びこれを用いた導電性部材の製造方法

【課題】ドクタリング工程を要する印刷方式において、ドクターブレード摺動方向に対して0°のストライプパターンを微細で高精度、且つ安定的に形成することができる印刷版を提供する。
【解決手段】 表面上に多数の帯状の凹部27を有する印刷版であって、帯状の凹部27の長尺方向が、印刷方向と同一方向であり、且つ帯状の凹部27の少なくとも一方の長尺方向終端部29が、末端に向かって、その幅が徐々に減少している先細り形状を有することを特徴とする印刷版、及びその印刷版を用いる導電性部材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア印刷法やグラビアオフセット印刷法等のドクターブレード及び凹版を用いる印刷法により、印刷用インクをストライプ状に支持体上に印刷するための印刷版に関し、特に、導電性インク等の高粘度な印刷用インクを、微細なストライプ状に高精度に印刷することができる印刷版に関する。さらに、この印刷版を使用したパターン電極等の導電性部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンス(EL)素子、プラズマディスプレイパネル(PDP)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)などの、いわゆるフラットパネルディスプレイ(FPD)には、所定のパターン電極を備える画素電極基板や駆動回路基板が用いられている。また、液晶(LCD)に代わる情報表示装置として、例えば、少なくとも一方が透明である2枚の対向する基材間に、表示媒体を封入した後、あるいは、隔壁により互いに隔離されたセルを形成し、セル内に表示媒体を封入した後、表示媒体に所定のパターン電極により電界を与え、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示パネル等の情報表示装置も開発されている(特許文献1)。
【0003】
このような情報表示装置に用いられるパターン電極としては、特にストライプ状のパターン電極が、形成が容易であり、優れた導電性を有することから好ましく用いられる。
【0004】
従来、基材上にパターン電極を形成する際は、金属等の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、化学蒸着法(CVD)、塗布法等で薄膜状に形成した後、金属膜をエッチングする方法が用いられている。しかしながら、金属等の材料をスパッタリング法などにより薄膜状に形成する従来の方法では、工程数が多いだけでなく、高価な設備も必要となり、製造コストが高くなる問題があった。さらに、エッチング工程における廃液が環境へ高い負荷をかける問題もある。
【0005】
一方、微細で高精度のストライプパターンを簡易且つ低コストな方法で形成できるパターン電極の作製方法として、ダイレクトグラビア印刷法(「グラビア印刷法」とも言う)やグラビアオフセット印刷法を用いる方法が開発されている(特許文献2)。ここで、グラビア印刷法について、図8を用いて説明する。
【0006】
図8は、グラビア印刷装置を説明するための概略断面図である。図8に示す装置では、円筒状の印刷版91がインク槽92に貯留された印刷用インク93にその下部が浸漬するように配設され、印刷版91の上部にはドクターブレード94と円筒状の圧胴95が配置されており、印刷版グラビアロール91と圧胴95とで基材96を挟圧して走行させる。印刷版91の外周面上には、印刷用インク93を収容するためのパターン状の凹部97が形成されている。この装置を用いたグラビア印刷は、印刷版91を時計回りに回転させることによって、印刷用インク93を印刷版91の外周面上に付着させて上昇せしめ、ドクターブレード94によって凹部97内に充填された印刷用インク93を残しつつ、表面の不要な印刷用インク93を掻き取った後、圧胴95で挟圧して走行する基材96に、凹部内の印刷用インク93を転写することによって行なわれる。これにより、凹部の形状に対応した印刷パターン98が基材96上に印刷される。そして、上記のパターン電極等の導電性部材を製造する場合は、印刷用インクに導電性インクを用いることで行われる。この場合、用途、形状に応じて、種々のパターンの電極を形成できることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−11227号公報
【特許文献2】特開平7−128520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のようなグラビア印刷法やグラビアオフセット印刷法等、印刷版の凹部に印刷用インクを充填中又は充填後にドクタリング工程(ドクターブレードによって余分なインクを取り除く工程)を要する印刷方式においては、ドクターブレードの掻き取り方向(摺動方向ともいう)に対して、0°のストライプパターン(以後、「0°ストライプパターン」という)を、特に高粘度な印刷用インクにより、微細で高精度、且つ安定的に形成することは困難であるとされている。
【0009】
図1に、0°ストライプパターンを説明するために、0°ストライプパターンの凹部を有する円筒状の印刷版とドクターブレードの概略斜視図を示す。図示の通り、印刷版11の外周面上には、ストライプパターンの凹部17が形成されており、印刷版11の印刷方向(即ち、回転方向)、及びそれと反対方向のドクターブレード14の掻き取り方向と、ストライプパターンの凹部17の長手方向とが一致している。0°ストライプパターンは、例えば、矩形状の基材に効率的にストライプパターンを形成する場合に有用である。
【0010】
従来技術において、0°ストライプパターンを形成する印刷版は、例えば図7に示すようなストライプパターンの凹部の形状を有する。図7(a)は従来の印刷版の凹部の一部の概略平面図を示し、図7(b)は、図7(a)における破線部(終端部89)の拡大図である。上述の通り、0°ストライプパターンの場合は、ドクターブレードの掻き取り方向と、印刷版のストライプパターンの凹部87の長手方向が一致している。そして図7(b)に示す通り、凹部87の終端部89は、コの字状(パターン形成ライン長辺Lとパターン形成ライン短辺Mで構成される角度が90°)である。そのため、(i)余剰なインクによるドクタリング不良、(ii)ストライプパターンの凹部の終端部との連続的な接触による、ドクターブレードの刃先欠け、等の問題が生じることになる。
【0011】
(i)については、ドクターブレードによりインクがストライプパターンの凹部に充填される際、その凹部の終端部(図7(b)の短辺M)において逃げ場がなくなった余剰のインクによってドクターブレードの刃先が持ち上がり、インクの除去が不十分となる。その結果として、終端部パターンの形成不良が生じる。これは用いるインクが高粘度になるほど顕著に生じる。この現象がパターン電極を作製する際に生じた場合、短絡又は交差した不良回路が形成されることになる。(i)の現象は、インクを低粘度化することにより、ある程度防止することができるが、特に導電性インクの場合は性能が低下するため、対応が困難である。また、(ii)については、印刷回数又はインキング(インク着肉)時間に応じて顕著になる。これは、印刷版のストライプパターンの凹部の終端部(図7(b)の短辺M)とドクターブレードの刃先との接触磨耗が生じるためである。刃先が欠けた場合は、微細なストライプパターンを形成することは不可能になるため、ドクターブレードの交換が必要になる。
【0012】
従って、本発明の目的は、印刷版の凹部に印刷用インクを充填中又は充填後にドクタリング工程を要する印刷方式において、0°ストライプパターンを微細で高精度、且つ安定的に形成することができる印刷版を提供することにある。
【0013】
また、本発明の目的は、この印刷版を用いたパターン電極等の導電性部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、表面上に多数の帯状の凹部を有する印刷版であって、前記帯状の凹部の長尺方向が、印刷方向と同一方向であり、且つ前記帯状の凹部の少なくとも一方の長尺方向終端部が、末端に向かって、その幅が徐々に減少している先細り形状を有することを特徴とする印刷版によって達成される。
【0015】
これにより、印刷版の0°ストライプパターンの凹部の終端部に、ドクターブレードの長さ方向と水平方向の辺(図7(b)の短辺M)が無い形状とすることができる。従って、ドクターブレードにより印刷用インクが凹部に充填される際、0°ストライプパターンの凹部の終端部において余剰の印刷用インクの排出が良好になり、凹部の終端部における余剰なインクによるドクタリング不良を防止でき、且つ凹部終端部との連続的な接触によるドクターブレードの刃欠けを防ぐことができる。
【0016】
本発明の印刷版の好ましい態様は以下の通りである。
(1)ドクターブレードを当該印刷版表面上に摺動させることにより、印刷用インクを前記帯状の凹部に充填する工程を含む印刷方式に用いられ、前記帯状の凹部の長尺方向が、前記ドクターブレードの摺動方向と同一方向であり、且つ前記帯状の凹部の長尺方向終端部が、前記ドクターブレードの摺動方向と同一方向に向かって、その幅が徐々に減少している先細り形状を有する。
(2)前記先細り形状が、前記帯状の凹部の一方の長辺Lにおける前記先細り形状が開始している先細り開始位置S、及び他方の長辺Lにおける前記先細り形状が開始している先細り開始位置Sから前記先細り形状が収束している先細り末端Eに収束する先細り形状であり、且つS及びEを結ぶ直線Mと長辺Lとにより形成される角度α、並びにS及びEを結ぶ直線Mと長辺Lとにより形成される角度βの両方が105°以上、180°未満である。
(3)前記先細り形状が、前記帯状の凹部の一方の長辺Lにおける先細り形状が開始している先細り開始位置Sから他方の長辺L上にある先細り形状が収束している先細り末端Eに収束する先細り形状であり、且つS及びEを結ぶ直線Mと長辺Lとにより形成される角度αが105°以上、180°未満である。
(2)又は(3)により、帯状の凹部の長尺方向終端部が、ドクターブレードの長さ方向に対して平均15°以上90°未満の角度を有する先細り形状を有することとなり、より効果的な有効なドクタリング不良の防止、及びドクターブレードの刃欠け防止が可能となる。
(4)前記角度α及び/又は角度βが、115°以上、170°以下である。これにより、更に効果的なドクタリング不良の防止、及びドクターブレードの刃欠け防止が可能となる。
(5)前記先細り形状が、前記先細り開始位置Sから前記先細り末端Eに至る直線、及び/又は前期先細り開始位置Sから前記先細り末端Eに至る直線で形成されている。これにより、帯状の凹部を形成する場合に、単純な直線で構成された形状となり、製造し易くなる。
(6)前記先細り形状が、前記先細り開始位置S、前記先細り開始位置S、及び前記先細り末端Eを通る曲線で形成されている。これにより、ドクターブレードによる印刷用インクの凹部への充填の際、帯状の凹部の終端部における余剰の印刷用インクの排出が更に良好になり、よりドクタリング不良を防止することができる。
(7)前記曲線が、円弧状又は楕円弧状であり、当該円弧又は楕円弧の中心Cと、前記先細り末端Eとの間の距離rと、前記帯状の凹部の短尺方向の距離wとの関係が、下記式(I):
r≧w/8 (I)
を満たす。これにより、更に効果的なドクタリング不良の防止、及びドクターブレードの刃欠け防止が可能となる。
(8)前記距離rと前記距離wとの関係が、下記式(II):
3・w≦r≦w/8 (II)
を満たす。
(9)前記印刷版が、円筒版である。
【0017】
また、上記目的は、本発明の印刷版の表面上に導電性インクを供給する工程、ドクターブレードを前記印刷版表面上に摺動させることにより、導電性インクを前記帯状の凹部に充填する工程、及び前記帯状の凹部内に充填された導電性インクを基材上に転写することにより、前記基材上にストライプ状の導電層を形成する工程を有し、且つ前記ドクターブレードを、その長さ方向と前記印刷版の帯状の凹部の長尺方向とが直行するように配置し、印刷版表面上を、前記帯状の凹部の先細り形状を有する終端部の方向に摺動させることを特徴とする導電性部材の製造方法によって達成される。これにより、高粘度の導電性インクを用いても、ドクタリング工程を含む印刷方式によって、微細で高精度な0°ストライプパターンを有する導電性部材を、安定的に製造することができる。
【0018】
本発明の導電性部材の製造方法においては、前記導電性インクが、導電性粒子及びバインダ樹脂を含むペースト、又は導電性高分子を含むペーストであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の印刷版によれば、0°ストライプパターンの凹部の終端部において余剰の印刷用インクの排出を良好にすることにより、凹部終端部における余剰なインクによるドクタリング不良を防止でき、且つ凹部終端部との連続的な接触によるドクターブレードの刃欠けを防ぐことができる。これにより、微細で高精度の0°ストライプパターンを、安定的に形成することができる。従って、本発明の導電性部材の製造方法によれば、短絡又は交差等の不良のない、ストライプパターンを有する導電性部材を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の印刷版の代表例とドクターブレードの関係を示す概略斜視図である。
【図2】図2(a)は、本発明の印刷版の帯状の凹部の好適態様を説明するための概略平面図であり、図2(b)は、図2(a)の破線部の拡大図である。
【図3】図3(a)及び(b)は、本発明の印刷版の帯状の凹部の好適態様における先細り形状のバリエーションを示す概略平面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の印刷版の帯状の凹部の好適態様を説明するための概略平面図であり、図4(b)は、図4(a)の破線部の拡大図である。
【図5】図5(a)及び(b)は、本発明の印刷版の帯状の凹部の好適態様における先細り形状のバリエーションを示す概略平面図である。
【図6】図6(a)〜(c)は、本発明の印刷版の帯状の凹部の先細り形状の好適態様を説明するための概略平面図である。
【図7】図7(a)は、従来技術の印刷版の帯状の凹部を説明するための概略平面図であり、図7(b)は、図7(a)の破線部の拡大図である。
【図8】グラビア印刷装置を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明の印刷版の代表的な例とドクターブレードの関係を示す概略斜視図である。円筒状の印刷版11は、その外周表面上に多数の帯状の凹部17を有する。この帯状の凹部17の長尺方向は、円筒状の印刷版11の印刷方向(矢印A)、及び印刷版11の印刷方向と反対方向になるドクターブレード14の摺動方向(矢印B)と同一方向である。また、各帯状の凹部は、相互に平行に設けられている。本発明において、このような帯状のパターンを0°ストライプパターンともいう。本発明の印刷版は、ドクターブレード14を表面上に摺動させることによって帯状の凹部17に印刷用インクを充填する工程を含む印刷方式に用いられ、印刷用インクを0°ストライプパターンで印刷するためのものである。
【0023】
なお、本発明において、印刷版における印刷方向とは、被印刷物の走行方向を意味する。したがって、印刷版が平版であった場合にはこの印刷版の長さ方向を意味し、印刷版が円筒状であった場合にはこの印刷版の円周方向(更には回転方向)を意味する。
【0024】
そして、帯状の凹部17は所定の範囲にストライプパターンを形成するため、必然的に、長尺方向に終端部19及び20が存在する。本発明の印刷版の帯状の凹部17は、その長尺方向の終端部19において、末端に向かって、即ち、ドクターブレード14の摺動方向(矢印B)と同一方向に向かって、その幅が徐々に減少している先細り形状を有している(図1では図示していない)。なお、ドクターブレード14の摺動時に初めに接触する帯状の凹部17の長尺方向の終端部20については、どのような形状でも良い。
【0025】
先細り形状とすることにより、終端部19が、ドクターブレードの長さ方向と水平方向の辺(図7(b)の短辺M)を有さない形状となる。そうすると、印刷版11の表面上に供給された印刷用インクを、ドクターブレード14によって、凹部17に充填すると共に、余剰のインクを印刷版11から掻き取り除去する際に、余剰のインクが0°ストライプパターンの凹部17の終端部19において、せき止められることなく、スムーズに排出されることになる。従って、凹部17の終端部19における余剰なインクによるドクタリング不良を防止でき、ドクターブレード14の長さ方向と水平方向の辺との連続的な接触によるドクターブレード14の刃欠けを防ぐことができる。
【0026】
本発明の印刷版は、情報表示パネル用のパターン電極や光学フィルタ用電磁波シールド層、及びプリント基板等、電子部品における微細なストライプパターンを有する導電層を形成するために好適に用いられる。したがって、印刷版における帯状の凹部の幅は、5〜500μm、特に10〜300μmとするのが好ましい。印刷版において隣接する凹部間の間隔は、1〜100μm、特に5〜50μmとするのが好ましい。また、印刷版における帯状の凹部の深さは、1〜50μm、特に1〜20μmとするのが好ましい。
【0027】
次に、本発明の印刷版の帯状の凹部の好適態様を、図面を用いて詳細に説明する。
【0028】
図2(a)は、本発明の印刷版の帯状の凹部の一好適態様を説明するための概略断面図であり、図2(b)は、図2(a)の破線部の拡大図である。図2(a)に示す通り、ドクターブレードの摺動方向と、印刷版の各帯状の凹部27の長手方向が一致している(0°ストライプパターン)。そして帯状の凹部27の長尺方向の終端部29(ドクターブレードと最後に接触する終端部)は、ドクターブレードの摺動方向と同一方向に向かって細くなる先細り形状を有している。図2(b)に示す通り、先細り形状は、帯状の凹部27の長辺Lの先細り開始位置S、及び長辺Lの先細り開始位置Sから先細り末端Eに収束している。即ち、図2(b)における先細り形状は、S及びEを結ぶ直線Mと、S及びEを結ぶ直線Mとによって形成されている。そして、直線Mと長辺Lとにより形成される角度α、直線Mと長辺Lとにより形成される角度βの両方が105°以上、180°未満であることが好ましい。この範囲の角度とすることで、終端部29が、ドクターブレードの長さ方向に対して15°以上、90°未満の角度を有する先細り形状を有することになる。これにより凹部27からの印刷用インクの排出がよりスムーズになり、より効果的に、帯状の凹部の終端部における余剰なインクによるドクタリング不良の防止や、ドクターブレードの刃欠け防止をすることができる。角度α及び角度βが105°未満の場合は、本発明における先細り形状の効果が低くなる場合がある。また、角度α及び角度βを大きくし過ぎると、終端部の先細り形状が長くなり過ぎることになるため、帯状の凹部の設計が難しくなる場合がある。従って、角度α及び角度βは、更に、115°以上、170°以下であることが好ましい。この範囲の角度とすることで、更に効果的に、ドクタリング不良の防止や、ドクターブレードの刃欠け防止をすることができる。角度α及び角度βは同一でも異なっていても良く、直線M及び直線Mの長さは同一でも異なっていても良い。
【0029】
また、図2(b)においては、先細り形状は直線Mと、直線Mとによって形成されているが、SとEを結ぶ線、及び/又はSとEを結ぶ線は、図2(b)のようなSとE、及びSとEを直接結ぶ直線でなくても良い。図3(a)及び(b)は、本発明の印刷版の帯状の凹部の一好適態様における先細り形状のバリエーションを示す概略平面図である。図3(a)は図2(b)と異なり、先細り開始位置Sから先細り末端Eに至る線は屈折部Pを有し、先細り開始位置Sから先細り末端Eに至る線は屈折部Qを有している。先細り末端Eに向かって先細り形状を示せば、屈折部は1ヶ所より多くても良い。
【0030】
また、図3(b)は図2(b)と異なり、先細り開始位置Sから先細り末端Eに至る線、及び先細り開始位置Sから先細り末端Eに至る線は曲線である。先細り末端Eに向かって先細り形状を示せば、曲線は円弧状、楕円弧状、二次曲線でも自由曲線でも良い。これらの場合も、仮にSとEを結ぶ直線M、及びSとEを結ぶ直線Mを引き(破線で示す)、その直線Mと直線Lとにより形成される角度α、及び直線Mと直線Lとにより形成される角度βが、上記の範囲の角度であることが好ましい。更に、SとEを結ぶ線、及び/又はSとEを結ぶ線は、全ての部分で、長辺L及び/又は長辺Lの方向に対して、上記の範囲の角度であることが好ましい。
【0031】
図4(a)は、本発明の印刷版の帯状の凹部の別の一好適態様を説明するための概略平面図であり、図4(b)は、図4(a)の破線部の拡大図である。図4(a)に示す通り、ドクターブレードの摺動方向と、印刷版の各帯状の凹部37の長手方向が一致している(0°ストライプパターン)。そして帯状の凹部37の長尺方向の終端部39(ドクターブレードと最後に接触する終端部)は、ドクターブレードの摺動方向と同一方向に向かって細くなる先細り形状を有している。図4(b)に示す通り、先細り形状は、帯状の凹部37の一方の長辺Lの先細り開始位置Sから他方の長辺L上にある先細り末端Eに収束している。即ち、図4(b)における先細り形状は、S及びEを結ぶ直線Mと、長辺Lよって形成されている。そして、直線Mと長辺Lとにより形成される角度αが105°以上、180°未満であることが好ましい。この範囲の角度とすることで、終端部39が、ドクターブレードの長さ方向に対して15°以上、90°未満の角度を有する先細り形状を有することになる。これにより凹部37からの印刷用インクの排出がよりスムーズになり、より効果的に、帯状の凹部の終端部における余剰なインクによるドクタリング不良の防止や、ドクターブレードの刃欠け防止をすることができる。角度αが105°未満の場合は、本発明における先細り形状の効果が低くなる場合がある。また、角度αを大きくし過ぎると、終端部の先細り形状が長くなり過ぎることになるため、帯状の凹部の設計が難しくなる場合がある。従って、角度αは、更に、115°以上、170°以下であることが好ましい。この範囲の角度とすることで、更に効果的に、ドクタリング不良の防止や、ドクターブレードの刃欠け防止をすることができる。なお、図4(b)において、先細り開始位置を有する長辺が長辺Lで、先細り末端Eを有する長辺が長辺Lであっても良い。
【0032】
また、図4(b)においては、先細り形状は直線Mと、長辺Lとによって形成されているが、SとEを結ぶ線は直線でなくても良い。図5(a)及び(b)は、本発明の印刷版の帯状の凹部の一好適態様における先細り形状のバリエーションを示す概略平面図である。図5(a)は図4(b)と異なり、先細り開始位置Sから先細り末端Eに至る線は屈折部Pを有している。先細り末端Eに向かって先細り形状を示せば、屈折部は1ヶ所より多くても良い。また、図5(b)は図4(b)と異なり、先細り開始位置Sから先細り末端Eに至る線は曲線である。先細り末端Eに向かって先細り形状を示せば、曲線は円弧状、楕円弧状、二次曲線でも自由曲線でも良い。これらの場合も、仮にSとEを結ぶ直線Mを引き(破線で示す)、その直線Mと直線Lとにより形成される角度αが、上記の範囲の角度であることが好ましい。更に、SとEを結ぶ線は、全ての部分で、長辺Lの方向に対して、上記の範囲の角度であることが好ましい。
【0033】
本発明の印刷版の帯状の凹部の先細り形状は、帯状の凹部を形成する場合に、製造し易いことから、図2(b)又は図4(b)に示したような、単純な直線で構成された、先細り開始位置Sから先細り末端Eに至る直線、及び/又は先細り開始位置Sから先細り末端Eに至る直線で形成されていることが好ましい。
【0034】
また、図6(a)〜(c)は、本発明の印刷版の帯状の凹部の先細り形状の好適態様を説明するための概略平面図である。図6(a)〜(c)の先細り形状は、帯状の凹部の長辺Lにおける先細り開始位置S、及び長辺Lにおける先細り開始位置Sから先細り末端Eに向かって細くなる先細り形状であり、且つS、S及びEを全て通る曲線で形成されている。これらの先細り形状についても、図3に示した先細り形状のバリエーションの場合と同様に、仮にSとEを結ぶ直線M、及びSとEを結ぶ直線Mを引き(破線で示す)、その直線Mと直線Lとにより形成される角度α、及び直線Mと直線Lとにより形成される角度βが、上記の範囲の角度であることが好ましい。
【0035】
上記の曲線は、円弧状、楕円弧状、二次曲線でも自由曲線でも良い。図6(a)においては先細り形状が自由曲線で形成されており、図6(b)においては先細り形状が円弧状に形成されており、図6(c)においては先細り形状が楕円弧状に形成されている。このような滑らかな曲線で形成された終端部を有することにより、ドクターブレードによる印刷用インクの凹部への充填の際、帯状の凹部の終端部における余剰の印刷用インクの排出が更に良好になる。従って、より効果的に、帯状の凹部の終端部における余剰なインクによるドクタリング不良を防止することができる。
【0036】
また、図6(a)又は(b)に示したような円弧状又は楕円弧状が好ましく、且つ図6(a)における円弧又は図6(b)における楕円弧の中心Cと、先細り末端Eとの間の距離r(即ち、円弧又は楕円弧の半径)と、帯状の凹部の短尺方向の距離(即ち、帯状の凹部の幅)wとの関係が、下記式(I):
r≧w/8 (I)
を満たすことが好ましい。このような先細り形状とすることにより、更に効果的に、ドクタリング不良の防止、及びドクターブレードの刃欠け防止をすることができる。距離rが、距離wの1/8未満の場合は、先細り形状の効果が低くなる場合がある。また、距離rが大きすぎると、終端部の先細り形状が長くなり過ぎることになるため、帯状の凹部の設計が難しくなる場合がある。従って、距離rは、距離wとの関係において、更に下記式(II):
3・w≧r≧w/8 (II)
を満たすことが好ましい。
【0037】
本発明の印刷版の材質は、銅、鉄等の金属、セラミックス、樹脂等いずれを使用してもよい。また、これらの金属の上にクロム、セラミックス、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等をメッキすることにより、印刷版の耐刷力を高めることもできる。
【0038】
印刷版の形状は、平版でも円筒版(シリンダー)いずれでもよい。一般的なグラビア印刷やグラビアオフセット印刷に使用できる円筒版が好ましい。印刷版に所定の画線部を形成するには、エッチング法やレーザー彫刻法など、従来公知の方法を用いて行えばよい。
【0039】
<導電性部材の製造方法>
本発明の印刷版によれば、高粘度の印刷用インクであっても、微細で高精度な0°ストライプパターンを短絡や交差なく、安定的に形成することができる。従って、電子部品用の微細なストライプパターンを有するパターン電極や、プリント基板等の導電層を有する導電性部材を製造するために好適に用いられる。
【0040】
このような導電層を形成するためには、導電性インクを、上述した印刷版を用いたグラビア印刷法又はグラビアオフセット印刷法により、基材に転写する方法を用いることができる。例えば、グラビア印刷法では、印刷版の表面上に導電性インクを供給する工程、ドクターブレードを印刷版表面上に摺動させることにより、導電性インクを前記帯状の凹部に充填すると共に余剰の導電性インクを掻き落す工程、及び前期帯状の凹部内に充填された導電性インクを基材上に転写することにより、基材上にストライプ状の導電層を形成する工程を有する方法を用いることができる。
【0041】
また、グラビアオフセット印刷法では、印刷版の表面上に導電性インクを供給する工程、ドクターブレードを印刷版表面上に摺動させることにより、導電性インクを前記帯状の凹部に充填すると共に余剰の導電性インクを掻き落す工程、及び前記帯状の凹部内に充填された導電性インクを、印刷版と接触して回転している中間ロールもしくはブランケットロール上に転写させ、その後中間ロールもしくはブランケットロール上に転写させた導電性インクを、基材上に転写することにより、基材上にストライプ状の導電層を形成する工程を有する方法を用いることができる。
【0042】
このように本発明の印刷版を用いて、印刷用インクを0°ストライプパターンで基材上に印刷するには、前記印刷版を従来公知のグラビア印刷装置やグラビアオフセット印刷装置に組み込んで行うことができる。
【0043】
例えば、図8に示すグラビア印刷装置は、ロール状の印刷版91を、その中心軸を中心として、時計方向に回転可能に支持した状態で、前記印刷版91の下半分を、インク槽92中に収容した印刷用インク93に浸漬し、かつ上端に、基材96を挟んで、その中心軸を中心として、反時計方向に回転可能に支持した圧胴95を配置させることで構成されている。
【0044】
また、印刷版91の、前記印刷用インク93の液面より上側で、かつ印刷版91の回転方向の上流側の位置(図において左側)には、ドクターブレード94が摺接されている。ドクターブレード94が印刷版上を摺動することにより、印刷版91の表面に付着した余剰の印刷用インク93を掻き落とし、印刷版91の外周面上に形成した帯状の凹部97内にのみに選択的に印刷用インク93が充填される。
【0045】
そして、印刷版91と圧胴95との間に、例えば、帯状の基材96を挟んだ状態で、印刷版91と圧胴95とを、それぞれ、図中に矢印で示す方向に回転させると共に、基材96を、前記回転に合わせて、図中に矢印Aで示す方向に搬送させる。これにより、印刷版91が回転して、凹部内に充填された印刷用インク93が基材96の片面に転写されて、凹部97の平面形状に対応したストライプ状の印刷パターン98が形成される。印刷用インク93が導電性インクであれば、所定のパターンの導電層を有する導電性部材が得られる。
【0046】
本発明の導電性部材の製造方法においては、図1に示すように、ドクターブレード14を、その長さ方向と本発明の印刷版の帯状の凹部17の長尺方向とが直行するように配置し、印刷版11表面上を帯上の凹部17の先細り形状を有する終端部19の方向に摺動させることになる。これにより、高粘度の導電性インクであっても、微細で高精度な0°ストライプパターンの導電層を有する導電性部材を、安定的に製造することができる。
【0047】
導電性インクとしては、導電性粒子及びバインダ樹脂を含むペースト(1)、導電性高分子を含むペースト(2)などが好ましく挙げられる。
【0048】
ペースト(1)に用いられる導電性粒子としては、アルミニウム、ニッケル、インジウム、クロム、金、バナジウム、スズ、カドミウム、銀、プラチナ、銅、チタン、コバルト、鉛等の金属、合金;或いはITO、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム−酸化スズ(ITO、いわゆるインジウムドープ酸化スズ)、酸化スズ−酸化アンチモン(ATO、いわゆるアンチモンドープ酸化スズ)、酸化亜鉛−酸化アルミニウム(ZAO;いわゆるアルミニウムドープ酸化亜鉛)等の導電性酸化物等を挙げることができる。
【0049】
導電性粒子の平均粒子径は、10nm〜100μm、特に10nm〜5μmであるのが好ましい。このような導電性粒子であれば、微分散して、優れた導電性を発揮することができる。
【0050】
ペースト(1)における導電性粒子の含有量は、バインダ樹脂100質量部に対して、100〜5000質量部、特に300〜3500質量部とするのが好ましい。
【0051】
ペースト(1)に用いられるバインダ樹脂としては、熱可塑性、熱硬化型、又は光(一般に紫外線)硬化型の樹脂である。具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、含ケイ素樹脂等を挙げることができる。また、これらのモノマー及びオリゴマーを用いることもできる。この場合、ペースト(1)には重合開始剤がさらに用いられ、紫外線などの活性エネルギー線の照射により、印刷後のペーストを硬化させることもできる。
【0052】
ペースト(1)は、バインダ樹脂及び導電性粒子を適宜有機溶剤中に分散させたものである。有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、イソプロピルアルコール等のアルコール類を挙げることができる。
【0053】
ペースト(2)に用いられる導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリシラン、ポリフルオレン、及びポリフェニレンビニレンが好ましく挙げられる。これらは一種単独で用いられてもよく、必要に応じて二種以上を併用してもよい。なかでも、ポリチオフェン、ポリアニリンを使用するのが好ましく、ポリチオフェンを使用するのが特に好ましい。これらの導電性高分子であれば、微細なパターンを有し、優れた導電性を有する導電性パターン層を形成することが可能となる。
【0054】
ポリチオフェンは、下記一般式(1)
【0055】
【化1】

【0056】
(式中、R及びRは、相互に独立して水素原子若しくはC〜Cアルキル基を表し、又はR及びRが共になって置換されていてもよいC〜Cアルキレン基を表し、nは50〜1000の整数を表す)で示される繰り返し単位を有するのが好ましい。
【0057】
一般式(1)において、R及びRが共になって形成する置換基を有していてもよいC〜Cアルキレン基として、具体的には、アルキル基で置換されたメチレン基、任意にC〜C12アルキル基またはフェニル基で置換されたエチレン−1,2基、プロピレン−1,3基またはシクロヘキシレン−1,2基を形成する基などが挙げられる。
【0058】
一般式(1)におけるR及びRとして、好ましくはメチル基またはエチル基であるか、R及びRが共になって形成するメチレン基、エチレン−1,2基またはプロピレン−1,3基である。
【0059】
ポリチオフェンとして、特に好ましくは、下記一般式(2)
【0060】
【化2】

【0061】
(式中、pは50〜1000の整数を表す)で示される繰り返し単位を有する。
【0062】
ペースト(2)における導電性高分子の含有量は、ペースト(2)の全量に対して2〜20質量%、特に5〜10質量%であるのが好ましい。これにより、ペースト(2)のレベリング性を向上させることができる。
【0063】
ペースト(2)は、上述した導電性高分子の他に、さらにドーパント(電子供与剤)を含有するのが好ましい。ドーパントとして具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリスチレンスルホン酸、及びポリビニルスルホン酸が好ましく挙げられる。これらは、導電性高分子溶液における溶解性又は分散性に優れる、さらに導電性パターン層の導電性を向上させることが可能となる。なかでも、ポリスチレンスルホン酸が好ましい。なお、ドーパントは、一種単独で用いられてもよく、必要に応じて二種以上を併用してもよい。ドーパントの数平均分子量Mnは、1,000〜2,000,000、特に2,000〜500,000であるのが好ましい。
【0064】
ペースト(2)におけるドーパントの含有量は、導電性高分子100質量部に対して、1〜100質量部、特に5〜50質量部とするのが好ましい。
【0065】
ペースト(2)に用いられる溶剤としては、水、ヘキサン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が好ましく挙げられる。
【0066】
本発明の方法において、導電性インクは、25℃において、一般に1〜100Pa・s、である。本発明の印刷版を用いることで、高粘度のインクでも、帯状の凹部の終端部におけるインクの排出を向上させ、微細で高精度なストライプパターンを形成できるので、導電性インクの粘度は、5〜80Pa・sが好ましく、特に10〜50Pa・sが好ましい。
【0067】
これにより、 導電性ペーストを基材上に印刷する際に、基材の走行速度は、0.5〜50m/分、特に1〜20m/分とするのが好ましい。このような走行速度であれば、微細なストライプパターンの導電層を高精度で印刷することができる。
【0068】
印刷した導電性インクを硬化させるには、導電性インクに用いられた成分に応じて行えばよい。例えば、加熱、又は紫外線、X線、γ線、電子線などの光照射により行うことができる。
【0069】
導電性インクは、印刷した後、好ましくは80〜160℃、より好ましくは90〜130℃で加熱することにより硬化させるのがよい。乾燥温度が80℃未満では溶媒の蒸発速度が遅く十分な成膜性が得られない恐れがあり、160℃を超えると導電性インクに用いられた成分の熱分解が生じる恐れがある。塗布後に熱乾燥させる場合の乾燥時間は5秒〜30分が好ましい。
【0070】
本発明の方法において、導電性インクを塗布する基材としては、透明性および可とう性を備え、その後の処理に耐えるものであれば特に制限はない。基材の材質としては、例えば、ガラス、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、(PET)、ポリブチレンテレフタレート)、アクリル樹脂(例、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、セルローストリアセテート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等を挙げることができる、これらの中で、加工処理(加熱、溶剤、折り曲げ)による劣化が少なく、透明性の高い材料であるPET、PC、PMMAが好ましい。また、基材は、これらの材質からなるシート、フィルム、又は板として用いられる。
【0071】
また、これらの基材の表面には、ポリエステルポリウレタンなどの接着樹脂を塗布することにより易接着処理が行われていてもよい。
【0072】
基材の厚みは特に限定されないが、通常は、使用時の形態や必要とされる機械的強度に応じて、0.05〜5mmの範囲内で適宜設定される。
【0073】
また、本発明の印刷版により形成される導電層のストライプパターンの幅は、印刷版が有する帯状の凹部の幅と対応している。導電層のストライプパターンの幅は、5〜500μm、特に10〜300μmであるのが好ましい。導電層のストライプパターン間に形成される凹部の幅は、1〜100μm、特に5〜50μmであるのが好ましい。導電層のストライプパターンの高さは、1〜50μm、特に1〜20μmであるのが好ましい。
【0074】
上述した方法により、ストライプパターンを有する導電層を基材上に形成することにより製造された導電性部材は、各種用途に用いることができるが、情報表示パネル用のパターン電極、光学フィルタ用電磁波シールド層、及びプリント基板として用いられるのが好ましい。
【実施例】
【0075】
以下に実施例を示し、本発明についてさらに詳述する。
(実施例1)
1.印刷版の作製
アルミニウムシリンダー上に50μmのクロム膜をメッキし、その表面にレーザー彫刻法により、印刷版の外周面上に、帯状の凹部の長尺方向がドクターブレードの摺動方向と同一方向(0°ストライプパターン)で、下記に示すストライプパターンが形成されたロール状の印刷版(直径φ200mm)を使用した。
[ストライプパターン(図2)]
帯状の凹部の幅: 250μm
隣接する凹部間の間隔: 10μm
帯状の凹部の長さ: 50mm
帯状の凹部の深さ: 10μm
帯状の凹部本数: 100本
終端部の先細り形状:形状は図2(b)の通りで、図中の角度α;135°、角度β;135°で作製。
2.導電性インクの調製
下記材料:
飽和共重合ポリエステル樹脂; 9質量部
銀微粒子(平均粒子径:1μm); 77質量部
2−ブトキシエチルアセテート; 5質量部
2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセテート; 9質量部
を計量、混合し30分間攪拌・分散処理を印刷用導電性インクを調製した。この導電性インクの粘度は25Pa・sであった。
3.印刷
上記印刷版を組み込んだグラビアオフセット印刷装置により、上記導電性インクを、易接着層を有するPETフィルム(O3LF8(帝人デュポンフィルム社製))の易接着層面に印刷してPETフィルム上にストライプパターンの導電層を形成した。このとき、印刷速度は3m/分とし、ドクターブレードと印刷版のブレード後方表面とが作る角度を50°とし、印刷版に当接するドクターブレードの先端の圧力(ドクターブレード圧)を0.2MPaとした。また、ドクターブレードの刃先欠けの状況についても調べるため、印刷を50枚連続で行った。
4.評価
印刷1枚目及び50枚目に得られたストライプパターンの導電層について、外観形状をマイクロスコープ(キーエンス社製)で観察し、パターン終端部の形状、及び終端部以外の外観品位等を評価した。ストライプパターンの短絡、断線等がない高精度のストライプパターンの場合を○とし、短絡、断線、印刷スジ等の不良が認められた場合を×とした。
【0076】
(実施例2)
印刷版の外周面上に形成されたストライプパターンを下記の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして導電層を形成し、評価した。
【0077】
[ストライプパターン(図4)]
帯状の凹部の幅: 250μm
隣接する凹部間の間隔: 10μm
帯状の凹部の長さ: 50mm
帯状の凹部の深さ: 10μm
帯状の凹部本数: 100本
終端部の先細り形状:形状は図4(b)の通りで、図中の角度α;135°で作製。
【0078】
(実施例3)
印刷版の外周面上に形成されたストライプパターンを下記の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして導電層を形成し、評価した。
【0079】
[ストライプパターン(図6(b))]
帯状の凹部の幅: 250μm
隣接する凹部間の間隔: 10μm
帯状の凹部の長さ: 50mm
帯状の凹部の深さ: 10μm
帯状の凹部本数: 100本
終端部の先細り形状:形状は図6(b)の通りで、図中の距離r(円弧の半径);125μm(=距離w/2)で作製。
【0080】
(比較例1)
印刷版の外周面上に形成されたストライプパターンを下記の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして導電層を形成し、評価した。
【0081】
[ストライプパターン(図7)]
帯状の凹部の幅: 250μm
隣接する凹部間の間隔: 10μm
帯状の凹部の長さ: 50mm
帯状の凹部の深さ: 10μm
帯状の凹部本数: 100本
終端部の先細り形状:形状は図7(b)の通り。
(評価結果)
評価結果を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
表1に示す通り、実施例1〜3の場合、1枚目に形成された導電層、及び50枚目に形成された導電層とも、パターン終端部についても、終端部以外についても良好な形状、外観品位を示した。これに対し、比較例1では、1枚目に形成された導電層の終端部に短絡が認められ、50枚目に形成された導電層では、更に終端部以外において、印刷スジが発生し、ドクターブレードの刃先欠けが生じたことが示された。以上により、本発明の印刷版の効果が認められた。
【0084】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0085】
11、91:印刷版
14、94:ドクターブレード
17、27、37、87、97:凹部
19、20、29、39、89:凹部終端部
93:印刷用インク
95:圧胴
96:基材
98:印刷パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上に多数の帯状の凹部を有する印刷版であって、
前記帯状の凹部の長尺方向が、印刷方向と同一方向であり、且つ前記帯状の凹部の少なくとも一方の長尺方向終端部が、末端に向かって、その幅が徐々に減少している先細り形状を有することを特徴とする印刷版。
【請求項2】
ドクターブレードを当該印刷版表面上に摺動させることにより、印刷用インクを前記帯状の凹部に充填する工程を含む印刷方式に用いられ、
前記帯状の凹部の長尺方向が、前記ドクターブレードの摺動方向と同一方向であり、且つ前記帯状の凹部の長尺方向終端部が、前記ドクターブレードの摺動方向と同一方向に向かって、その幅が徐々に減少している先細り形状を有することを特徴とする請求項1に記載の印刷版。
【請求項3】
前記先細り形状が、前記帯状の凹部の一方の長辺Lにおける前記先細り形状が開始している先細り開始位置S、及び他方の長辺Lにおける前記先細り形状が開始している先細り開始位置Sから前記先細り形状が収束している先細り末端Eに収束する先細り形状であり、且つ
及びEを結ぶ直線Mと長辺Lとにより形成される角度α、並びにS及びEを結ぶ直線Mと長辺Lとにより形成される角度βの両方が105°以上、180°未満である請求項1又は2に記載の印刷版。
【請求項4】
前記先細り形状が、前記帯状の凹部の一方の長辺Lにおける先細り形状が開始している先細り開始位置Sから他方の長辺L上にある先細り形状が収束している先細り末端Eに収束する先細り形状であり、且つ
及びEを結ぶ直線Mと長辺Lとにより形成される角度αが105°以上、180°未満である請求項1又は2に記載の印刷版。
【請求項5】
前記角度α及び/又は角度βが、115°以上、170°以下である請求項3又は4に記載の印刷版。
【請求項6】
前記先細り形状が、前記先細り開始位置Sから前記先細り末端Eに至る直線、及び/又は前記先細り開始位置Sから前記先細り末端Eに至る直線で形成されている請求項3〜5のいずれか1項に記載の印刷版。
【請求項7】
前記先細り形状が、前記先細り開始位置S、前記先細り開始位置S、及び前記先細り末端Eを通る曲線で形成されている請求項3又は5に記載の印刷版。
【請求項8】
前記曲線が、円弧状又は楕円弧状であり、当該円弧又は楕円弧の中心Cと、前記先細り末端Eとの間の距離rと、前記帯状の凹部の短尺方向の距離wとの関係が、下記式(I):
r≧w/8 (I)
を満たす請求項7に記載の印刷版。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の印刷版の表面上に導電性インクを供給する工程、
ドクターブレードを前記印刷版表面上に摺動させることにより、導電性インクを前記帯状の凹部に充填する工程、及び
前記帯状の凹部内に充填された導電性インクを基材上に転写することにより、前記基材上にストライプ状の導電層を形成する工程を有し、且つ
前記ドクターブレードを、その長さ方向と前記印刷版の帯状の凹部の長尺方向とが直行するように配置し、印刷版表面上を、前記帯状の凹部の先細り形状を有する終端部の方向に摺動させることを特徴とする導電性部材の製造方法。
【請求項10】
前記導電性インクが、導電性粒子及びバインダ樹脂を含むペースト、又は導電性高分子を含むペーストである請求項9に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−20404(P2012−20404A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157518(P2010−157518)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】