説明

印刷版原版の包装方法および印刷版原版の包装体

【課題】印刷版原版の品質を維持しながら、印刷版原版またはその積層体を繰り返し包装することができる簡易な包装方法を提供すること。
【解決手段】印刷版原版またはその積層体を包装材により包装し、粘着力が0.2N/cm〜3.0N/cmの粘着材により包装材を固定する印刷版原版の包装方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷版原版を包装材により包装し、粘着材で包装材を固定する印刷版原版の包装方法および包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷版原版としては、例えば、紫外線や可視光に対して感光性を有するものが広く使用されている。また、赤外線、レーザー光などの光に対して感熱性を有するものが広く使用されている。このような感光層、感熱層を有する印刷版原版は、運搬中や保管中に感光波長域の光に曝光されることにより、画像形成能が低下する場合がある。また、運搬中や保管中に結露が発生することによっても画像形成能が低下する場合がある。このため、印刷版原版や、印刷版原版を数枚から数十枚積層した積層体を包装する際には、一般的に遮光性および防湿性を有する包装材が用いられている。
【0003】
例えば、印刷版原版のうち、平版印刷版原版の包装方法として、例えば、積層板に内装紙を巻き付ける巻き付け工程、内装紙を積層板に接着させるプレ接着工程と接着工程、内装紙を折り畳んで密封する折り畳み工程からなる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、曝光による画像形成能の低下を防ぐ方法として、金属支持体上の片面のみに画像形成面を有する平版印刷版原版を、包装紙の開封面および非開封面がともに金属支持体面となるように積層して包装紙により包装する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−253964号公報
【特許文献2】特開2008−246684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
印刷版原版を使用する際には、包装された印刷版原版またはその積層体から必要枚数の印刷版原版を取り出し、残りの印刷版原版またはその積層体は、再度包装材により包装して保管することが一般的である。しかしながら、粘着材を剥離した際に包装材の紙粉などが粘着材に転写されて粘着力が低下し、再度包装材を固定することが困難となる場合があった。そのため、印刷版原版の保管中の曝光や過度の吸湿を防止するためには、包装を開封するたびに新しい粘着材を使用する必要があり、廃棄物が増加する課題があった。また、一般的に、包装材を固定するためには、粘着力が4.0N/cm程度の粘着材が使用されていたが、粘着材の粘着力が高すぎる場合には、粘着材を包装材から剥離する際に包装材を破損する場合があった。この場合、包装材の破損部から進入した光による曝光や過度の吸湿を防止するためには、包装材を補修する必要が生じていた。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み、印刷版原版の品質を維持しながら、印刷版原版またはその積層体を繰り返し包装することができる簡易な包装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、印刷版原版またはその積層体を包装材により包装し、粘着力が0.2N/cm〜3.0N/cmの粘着材により前記包装材を固定する印刷版原版の包装方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、印刷版原版の品質を維持しながら、印刷版原版またはその積層体を繰り返し包装することができ、廃棄物の削減にも寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の包装方法の一態様を示す概略図
【図2】本発明の包装方法の一態様を示す概略図
【図3】本発明の包装方法の一態様を示す概略図
【図4】本発明の包装方法の一態様を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、印刷版原版の一例として、平版印刷版原版を例に挙げ、本発明について説明する。平版印刷版原版としては、例えば、陽極酸化処理などを施したアルミニウム板などの支持体上に、紫外線や可視光、赤外線、レーザー光などの光に対して感光性または感熱性を有する層を有する印刷版原版や、アルミニウム板などの支持体上に、紫外線や可視光、赤外線、レーザー光などの光に対して感光性または感熱性を有する層およびインキ反発層を有する印刷版原版などが挙げられる。
【0011】
包装材としては、例えば、アルミクラフト紙、クラフト紙、フィルムラミネートクラフト紙、黒色ポリエチレン袋などが挙げられる。遮光性と防湿性の観点から、アルミクラフト紙が好ましい。
【0012】
本発明は、粘着力が0.2N/cm〜3.0N/cmの粘着材により包装材を固定する点を特徴とする。粘着力が0.2N/cm未満であると、輸送中や保管中に粘着材が剥がれ、包装材を固定できない場合がある。0.5N/cm以上が好ましい。一方、粘着力が3.0N/cmより高いと、開封時に包装材が破れる。1.0N/cm以下が好ましい。ここで、本発明において、粘着力の測定方法は、JIS Z 0237(2000)粘着力試験方法による。
【0013】
粘着材の材質としては、例えば、ビニールテープ、クラフトテープ、紙テープ、ポリプロピレンテープ等が挙げられる。取り扱い性の観点から、クラフトテープが好ましい。
【0014】
次に、添付図面に従って本発明の包装方法の例について説明する。
【0015】
図1〜4は、本発明の方法の一態様を示す概略図である。平版印刷版原版10は、長方形の金属支持体上に、感光層または感熱層、さらに必要によりインキ反発層などの画像形成面を有する。平版印刷版原版のうち、画像形成面を10P、金属支持体面を10Qと記載する。なお、平版印刷版原版10は、露光や現像などの画像形成に必要な処理が施される前段階のものをさす。
【0016】
図1に示すように、各平版印刷版原版10の間に合紙11を重ね合わせ、最上面および最下面が平版印刷版原版10の金属支持体面10Qとなるように平版印刷版原版10を積層し、積層体12を構成することが好ましい。なお、このような構成であれば、平版印刷版原版10の具体的な構成は、特に限定されない。
【0017】
平版印刷版原版10を積層し、積層体12を図2に示すように、アルミクラフト紙13によって包装する。このアルミクラフト紙13を使用して、積層体12が外部から遮断されるように包装することで、積層体12を確実に遮光および防湿することができる。
【0018】
アルミクラフト紙13の長辺13Lの長さは、図2に示すように、積層体12の長辺12Lとアルミクラフト紙13の短辺13Sとが平行になるようにアルミクラフト紙13の略中央に積層体12を置き、アルミクラフト紙13を積層体12の長辺12Lに沿って両側から折り曲げた状態で、アルミクラフト紙13の短辺13Sの近傍が部分的に重なり合う程度であることが好ましい(図3参照)。また、アルミクラフト紙13の短辺13Sの長さは、この短辺13Sの近傍が部分的に重なり合った状態から、さらにアルミクラフト紙13の長辺13L側を折りこんだとき、積層体12の上面と平面視して部分的に重なる程度であることが好ましい(図3参照)。
【0019】
最後に、図4に示すように、粘着テープ14によってアルミクラフト紙13を所定位置で貼り付け、不用意にアルミクラフト紙13が広がったり脱落したりしないように固定する。これにより、開封面が上面に配置された平版印刷版原版の包装体15が形成される。
【0020】
本発明により、印刷版原版の品質を維持しながら、印刷版原版またはその積層体を繰り返し包装することができ、製造上または印刷現場での繰り返し接着が可能となる。さらに、粘着材剥離時の包装材の破損を抑制することが可能となるため、粘着材を繰り返し使用することができ、廃棄物の削減にも寄与することができる。
【実施例】
【0021】
まず、実施例および比較例における評価方法について説明する。
【0022】
(1)粘着テープの粘着力
JIS Z 0237(2000)粘着力試験方法で測定した。
【0023】
(2)包装材の固定
包装体のアルミクラフト紙の所定位置に5.0cm×4.0cm角の粘着テープを貼り付けた後、剥離・再貼り付けの組み合わせを100回行った。不用意にアルミクラフト紙が広がったり脱落したりするまでの回数を評価した。
【0024】
(3)包装材の破れ
包装体のアルミクラフト紙の所定位置に5.0cm×4.0cm角の粘着テープを貼り付け、5時間静置した後、粘着テープを剥離し、包装材の破れの有無を目視にて評価した。
【0025】
実施例1
画像形成面に合紙として新聞用晒紙を付設した“東レ水なし平版”VG5タイプを、最上部の1枚を除き画像形成面が上向きとなるように積層し、最上部の1枚を裏返して上下面とも金属支持体面となるように積層した。前記積層束を、坪量75g/mのクラフト紙に7μmのアルミ箔を施し、20μmのポリエチレン層を貼り合わせて成る包装材を用いて、積層束上部が開封面となるように包装し、包装体を得た。粘着材として、粘着力が0.68N/cmの粘着テープを用いて上記評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0026】
比較例1
粘着材として、キクラフトテープBK(菊水製、粘着力4.00N/cm)を用いた以外は実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【符号の説明】
【0028】
10 平版印刷版原版
10P 平版印刷版原版の画像形成面
10Q 平版印刷版原版の金属支持体面
11 合紙
12 積層体
12L 積層体長辺
12S 積層体短辺
13 アルミクラフト紙
13L アルミクラフト紙長辺
13S アルミクラフト紙短辺
14 粘着テープ
15 平版印刷版原版の包装体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷版原版またはその積層体を包装材により包装し、粘着力が0.2N/cm〜3.0N/cmの粘着材により前記包装材を固定する印刷版原版の包装方法。
【請求項2】
前記包装材がアルミクラフト紙である請求項1に記載の印刷版原版の包装方法。
【請求項3】
印刷版原版またはその積層体が包装材により包装され、粘着力が0.2N/cm〜3.0N/cmの粘着材により前記包装材が固定されてなる印刷版原版の包装体。
【請求項4】
前記包装材がアルミクラフト紙である請求項3に記載の印刷版原版の包装体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−95100(P2013−95100A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241806(P2011−241806)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】